迷宮災厄戦⑤〜セピア色に閉幕を
●閉幕の後先
そこはセピア色に褪せた不思議な花園が広がる国だった。
名を『遠き日の憧憬の花園』。
何故、セピア色に色褪せた花々が咲くのか、誰も知らない。だが、確実に言えることが一つだけある。
この花園に満ちる『瘴気の蒸気』を放つオウガの存在だ。
この『瘴気の蒸気』を放つのは『魔導蒸気機関』を、その身に埋め込まれたオウガは、存在するだけで瘴気を放ち続け、通常のオウガよりも強化された肉体でもって、この『遠き日の憧憬の花園』を舞台に舞う。
「ああ、今までの私はなんて非力な体だったのでしょう。こんなにも力が溢れている。とめどなく、あふれるように」
『閉幕のアリス』と呼ばれるアリスを装ったオウガは背に『魔導蒸気機関』を背負うように組み込まれていた。
力があふれるという言葉のままに、その背中に組み込まれた『魔導蒸気機関』から止めどなく溢れ出る『瘴気の蒸気』が、この花園に充満していく。
強化された肉体のせいであろうか。次々とあふれる『瘴気の蒸気』は、『魔導蒸気機関』を備えない者にとっては毒そのものであり、周囲に生命の存在は感じられない。
そう、此処『遠き日の憧憬の花園』は、まさに生命を拒絶する花園。
あふれる『瘴気の蒸気』が存在する限り、この場所に生命は育まれることはなく、映し出される光景は死せる生命のセピア色だけ。
「さあ、いらっしゃい。猟兵達。私は非力に見えるかも知れないけれど……もう人を騙す必要なんて無いくらいに、強くなってしまったんだから。私のハートボムで、粉微塵に……ああ、いけないわ。私ったら」
思わず舌なめずりをする『閉幕のアリス』。
そこにあったのは弱々しいアリスを模した表情はなかった。あるのは、獰猛なる捕食者の顔のみ。
「粉微塵にしてしまったら、食べる所がなくなってしまうものね? 大丈夫、ちゃんと優しく殺して差し上げるわ―――?」
●迷宮災厄戦
グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)の姿であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回皆さんが向かっていただく戦場は、『遠き日の憧憬の花園』と呼ばれる場所です」
その地は理由はわからないが、セピア色の花園しかなく、もうもうと溢れ出る『瘴気の蒸気』によって満たされている。
この『瘴気の蒸気』は、その名の通り有害なるものである。
これにどうやって対抗し、対応するかが勝負の分かれ目となるだろう。
「この場で確認されているオウガの名は『閉幕のアリス』。通常であれば、アリスの振りをして油断を誘い、アリスを襲うのですが……」
そう、その名が示すとおり普通のアリスのように弱々しい少女の姿をしたオウガなのだ。しかし、言葉を区切ったナイアルテが懸念する通り、このオウガは普通のオウガではない。
「このオウガ、『閉幕のアリス』は背に負ったように組み込まれた『魔導蒸気機関』によって強化された肉体を持っています。さらに先程言いました、『瘴気の蒸気』を『魔導蒸気機関』から溢れさえ、周囲を汚染しながら皆さんに襲いかかってくるのです」
通常であれば不意打ち、だまし討ちが当然であるのだが、今回に限って言えば強化された肉体を誇るように、不意打ち無しで猟兵達を仕留めようとしてくるだろう。
その自信に裏付けされたように、『閉幕のアリス』は見合うだけの力を発揮する。
使うハートボムと呼ばれる一撃は、打撃、投擲、射撃と多様な攻撃手段で持って猟兵たちを付け狙うだろう。
「瘴気の蒸気だけでも、厄介極まりないですが、強化された肉体はさらに厄介です。強大な個体としての自負も相まって高揚しているのでしょう、普段以上の力が出ているはずです。危険なオウガですが、どうがお願いいたします……」
そう言ってナイアルテは頭を下げ、猟兵たちを見送る。
搦手を使わなくなった強化されたオウガ。
それは単純になったとも言えるが、周囲を包み込む瘴気の蒸気が、猟兵たちを苦しめるだろう。
けれど、ナイアルテは信じている。
数々の世界を渡り歩き、何度も大規模な戦いを制してきた猟兵たちを―――!
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『迷宮災厄戦』の戦争シナリオとなります。
遠き日の憧憬の花園にて待ち受ける『魔導蒸気機関』によって強化された『閉幕のアリス』と汚染する『蒸気の瘴気』を躱し、彼女を打倒しましょう。
※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……「瘴気の蒸気」への対抗手段を考える。
それでは、迷宮災厄戦を戦い抜く皆さんのキャラクターの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『閉幕のアリス』
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POW : ハートボム(打撃武器運用)
単純で重い【ハートボム】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : ハートボム(投擲武器運用)
【接触地点で大爆発するハートボム】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ : ハートボム(射撃武器運用)
レベル×5本の【愛】属性の【着弾地点を貫く、ハートボム】を放つ。
イラスト:銅貨
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
村崎・ゆかり
瘴気に犯された花園か。今のアリスラビリンスを象徴してるようだわ。
飛鉢法で上空に待機して瘴気の到達高度の上を行く。これで瘴気の影響は取り除けるはず。
「式神使い」の黒鴉召喚で作り出した式の群を「偵察」に出し、オウガの正確な位置を補足する。
式とは視聴覚だけを連携するよう調節しておくわ。
朽ちたら即座に次の群を送り出す。
オウガのいるポイントを確認したら、「全力魔法」雷の「属性攻撃」「範囲攻撃」「神罰」の九天応元雷声普化天尊玉秘宝経で、大規模な落雷を叩き付ける。腐った花園ごと消し飛ばすわ。
逃げるようなら黒鴉の式に追わせて、引き続き落雷で攻撃を続ける。
オウガが投げたハートボムは、薙刀で打ち返してあげましょ。
遠き日の憧憬の花園は、セピア色であった。
咲く花々も全てが同じような色味をもっていて、どこにも違いが見出だせなかった。流れる水も、そよぐ木々も、何もかもが色褪せていた。
その色褪せる原因となっているのが、『瘴気の蒸気』である。あちらこちらに濛々とあふれるのは、魔導蒸気機関から排出されているからだ。
この花園において、一人のオウガ『閉幕のアリス』と呼ばれるアリスに偽装したオウガが、それに当たる。背中に魔導蒸気機関が埋め込まれ、通常のオウガよりも肉体的にも強化された個体だ。
「ああ、早くおいでなさい。猟兵さん。私の生まれ変わった体を、力を、早く戦いに活かしたくて仕方ないの」
可愛らしい見た目とは裏腹な好戦的な口調。
跳ねるようにウサギのぬいぐるみを振り回し、その強化された肉体を誇るようであった。だまし討ち、不意打ち、そのどれもが嘗ての『閉幕のアリス』の戦い方であった。
けれど、それは嘗ての『閉幕のアリス』である。
魔導蒸気機関の組み込まれた体は、以前とは似ても似つかない。
「―――見つけた」
一羽の黒鴉が、その姿を捉えていた。それを目ざとく見つけた『閉幕のアリス』が駆け出す。
一瞬で黒鴉は『瘴気の蒸気』に飲み込まれて溶けるようにして消え失せる。それが猟兵の放った式神であると看破したのだろう。『閉幕のアリス』は喜び勇むように飛び跳ねるようにして駆け出す。その視線の先に、この式神を放った猟兵がいるのだと、戦えるのだと、狂喜していた。
「……瘴気に犯された花園か。今のアリスラビリンスを象徴してるようだわ」
空飛ぶ鉄鉢に乗り、上空で待機していた村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は、遠き日の憧憬の花園に広がるセピア色を見て、そう評した。
迷宮災厄戦。
それが今まさに行なわれている戦いの名だ。『オウガ・オリジン』と『蝋書家』……そして、猟兵に寄る大決戦。考えることが多いが、今は目の前のオウガに集中する他無い。
彼女にとって最大の懸念は『瘴気の蒸気』であった。
どれほどの効果範囲があるのかもわからず、その毒性は言わずとも避けなければならない。故に飛鉢法にて空飛ぶ鉄鉢に乗って『瘴気の蒸気』が届かぬ上空へと退避したのだ。
だが、それだけでは此方も攻撃ができない。ならば、と放った黒鴉の式神にオウガである『閉幕のアリス』を探索させていたのだ。
群れで放てば、反応が消失した箇所に『閉幕のアリス』が存在している。
視覚情報だけを共有していた黒鴉が潰える瞬間に送られてきた情報。背中に魔導蒸気機関を埋め込まれた幼い少女の姿は、間違えること無くオウガである『閉幕のアリス』。
「すぐにこちらに気がつく……しかもやたら速い!」
次々と式神である黒鴉を送り出しては、性格な位置を把握する。
だが、即座に『瘴気の蒸気』によって失墜していく黒鴉たち。それは即ち、『閉幕のアリス』の移動速度の速さを物語っている。
これでは当てることが困難である。だが、ゆかりは慌てない。あちらがこちらを視認しているようにいどうしているというのであれば、移動速度から位置を予測すればいいのだ。
「移動速度の速さが仇となったわね! 強化されてはしゃいだっていうのかしら、力に溺れた者らしく―――!」
なんのことはない。
どれだけ早く動こうが、自分へと最短距離で駆け抜ける『閉幕のアリス』は、点だ。ならば、こちらは黒鴉の式神が潰えていく範囲から位置が割り出せる。
「九天応元雷声普化天尊! 疾っ!」
放たれるユーベルコード、九天応元雷声普化天尊玉秘宝経(キュウテンオウゲンライセイフカテンソンギョクヒホウキョウ)の一撃は、激烈なる落雷によって、点ではなく面で制圧する。
ピンポイントで狙うならばまだしも、周囲を巻き添えにしても雷撃が放つことができるのであれば、ゆかりにとって狙いは甘く見ても十分のおつりがくる。
「―――!!」
遠くで悲鳴が聞こえる。
周囲の視界が阻害されるほどの雷撃の一撃だ。それこそ強化された肉体……視覚すらも過敏になっているのだろう。そこに視界を塗りつぶす紫電が走ればどうなるか。もう答えはわかりきっている。
「腐った花園ごと消し飛びなさい。驕れる者久しからず。そういう宿命だと知って、ね」
再び放たれる雷撃が、セピア色の花園を紫電で焼き尽くす。
その光景はあらゆる者を白き光で照らし尽くし、色褪せた花園であっても、その白さで持って在りし日の花の彩を取り戻すのであった―――!
大成功
🔵🔵🔵
須藤・莉亜
「空気が悪いねぇ、ここは。」
煙草より身体に悪そうだ。
周囲の瘴気は暴食外套に食らってもらうのと、異空間収納のすゝめに収納してみようか。一応、Morteにガスマスクに変わってもらって、それもつけとこうかな。
UCは呪具解放【血飲み子】を発動。白啜を召喚し、敵さんの感覚を狂わせて、他の敵さんが僕に見える様にしてもらう。
相打ちしてくれたら重畳。そうじゃなくても動きが鈍れば、その隙に攻撃してバラしにかかろう。
僕の姿が敵さんに見える様にしてくれたら、吸血しやすいんだけどねぇ…。
そこまでしてくれるかな?
「これは敵さんだから、存分に壊してくれて良いよ。」
だから白啜。あんまし僕の血を抜かないでね…。
激烈なる雷撃の連撃がセピア色に色褪せた花園に閃く。
それは猟兵のユーベルコードの輝きであった。この『遠き日の憧憬の花園』は、すべてがセピア色に色褪せている。
何もかもだ。
花も、せせらぎに流れる水でさえも色褪せたセピア色。その原因たるものが、この花園には存在している。
オウガ、『閉幕のアリス』。その背に負うようにして組み込まれた『魔導蒸気機関』より溢れ出る『瘴気の蒸気』があらゆるものを汚染していく。
毒性あることは勿論であろう。
何よりも、組み込まれたオウガの身体能力は凄まじいほどに強化されている。本来であれば、だまし討ち、不意打ちが基本的な戦術であろうアリスに擬態したオウガである『閉幕のアリス』でさえも、己の身体能力を誇示するように戦うのだ。
「雷撃で数が減っても平気へっちゃら! なんていったって、私はいっぱいいるのだから!」
そう叫ぶが、確実に雷撃の影響を受けていることは明白だった。ただ、その数は未だ健在であるということは間違いなく、己の存在を誇示するように跳ねるようにして猟兵の姿を探す『閉幕のアリス』。
そんな『閉幕のアリス』の前に現れたのは須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)であった。
「空気が悪いねぇ、ここは」
煙草の煙よりも体に悪そうだと言いながら、吸血衝動の代償として吸う煙草の火をもみ消してから、ポータブル灰皿に押し込む。
「あなた……この瘴気の蒸気の立ち込める花園にいて平気なの? なんで?」
『閉幕のアリス』は突如として現れた莉亜に驚きを示す。
何故ならば、その背に負う『魔導蒸気機関』から排出される『瘴気の蒸気』は毒性があるのだ。普通に立っていられるのがおかしい。
だが、莉亜はこともなげに言う。
「暴食外套っていうんだけれど、まあ、説明しても意味分かんないかもね」
実際には持ち主である彼の意志に応じてあらゆるモノを喰らう外套が『瘴気の蒸気』を吸い込み、さらには生物以外のあらゆるものを収納する魔導書によって、彼の周囲に存在する『瘴気の蒸気』を無効化しているのだ。
説明するのが面倒だからという理由もあったが、わざわざ敵さんに手の内を知らせる必要もないと考えたのだ。
「まあ、確かに面倒な能力だと思うよ。でも、面倒なだけだ」
手にした使い魔が変じたガスマスクを口元に当てる。これでどんな不測の事態が起ころうとも、『瘴気の蒸気』は意味をなさない。
「ちゃんと説明しなさいよ! 私がわからないって、そんなことあるわけないでしょう!」
はなたれるハートボムの矢。一斉には垂れる矢は次々と着地点を貫いて、ハート型の穴を穿つ。
それを躱しながら、莉亜は戦場となった花園を駆け抜けていく。
「嫌だよ。面倒……うん、惑わして狂わして啜って壊す。…って彼女は言ってます。超怖い」
ユーベルコード、呪具解放【血飲み子】(ジュグカイホウ・チノミゴ)が発動する。血飲み子と呼ばれる白い大鎌の力が開放される。
それは敵である『閉幕のアリス』たちの感覚を狂わせ、互いを莉亜と認識させるのだ。『閉幕のアリス』たちにとって、現れた莉亜はいけ好かない猟兵である。
見た瞬間に互いが互いであることを忘れて、己達の強化された身体能力で持って同士討ちを始めるのだ。
「僕の姿が敵さんに見えるようにしてくれたら、吸血しやすいんだけどねぇ……」
そうすれば、敵は自分に向かってくる。
現状は互いに互いを同士討ちし続ける『閉幕のアリス』ばかりだ。
すきを見て攻撃しようと思ったのだが、同じ身体能力同志である。互いに互いを潰し合おうとすれば、当然のように同時に消滅してしまう。
こうなってしまうと自分が吸血行為を行う隙もなくなってしまうのだ。
「……流石にそこまではサービス過剰かなぁ……まあ、でもこれは敵さんだから、存分に壊してくれて良いよ」
ユーベルコードに寄って召喚された白啜と呼ばれる悪魔に語りかける。
言うまでもなく、ユーベルコードに寄る代償が発生しているのだ。こうしている間も、彼の血液は悪魔である白啜へと吸い上げられている。
楽をできていいが、コレはこれでキツい。なまじ数が多いからなおさらだ。
「……あんまし僕の血を抜かないでね……」
加減して、と言うが白啜はわかっているのか、わかっていないのか、曖昧な返事しかしてくれない。
まあ、それでもいいか。そう思いながら、同士討ち続く花園に『閉幕』の帳が降りるのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
ソナタ・アーティライエ
瘴気に蝕まれた花園……
その痛ましい光景に胸を割かれるような悲しみを感じてしまいます
元凶たるオウガを排し、綺麗で平和な花園を取り戻しましょう
青く澄んだ瞳こそ、[浄化]や[破魔]の力をこの身に宿す聖なる証
そのまなざしの前に穢れは霧散し、色付く世界を映しだしてくれるはず
とは言え元を絶たなければ元の木阿弥
親愛なる友に助けを求め、強化されたオウガに立ち向かいます
相棒たるアマデウスの変化した竪琴を奏で歌うのは【幻獣交響曲第126番『神鎗』】
自身とラヴェルの浄化の力を合わせて、なおも吐き出される瘴気を切り裂き突っ切り
投擲の狙いをつけさせないスピードで突撃を仕掛けますね
アドリブ・連携歓迎です
何もかもがセピア色に染まった花園―――『遠き日の憧憬の花園』にオウガたる『閉幕のアリス』たちが蠢く。
その背に負った『魔導蒸気機関』から濛々と溢れ出る『瘴気の蒸気』が花園に充満していく。
猟兵達の戦いが始まり、雷撃に寄ってセピア色を目もくらむような明滅する白色に染まり、そして数多の『閉幕のアリス』が感覚を狂わされ同士討ちを始める。
それでもなお、『閉幕のアリス』の数は未だ多い。
それこそ、この花園を埋め尽くさんばかりの勢いで存在しているのだ。元はアリスに擬態し、不意打ちやだまし討ちを行うオウガたち。
けれど、組み込まれた『魔導蒸気機関』によって強化された身体能力は、彼女たちを大胆不敵にさせる。それは慢心とも呼ぶのかも知れない。
「瘴気に蝕まれた花園……」
そのセピア色の花園を見て、ソナタ・アーティライエ(未完成オルゴール・f00340)は悲嘆に暮れていた。
痛ましいと思えるその心は、ミレナリィドールである彼女の胸を割かれるような痛みを訴えていた。『瘴気の蒸気』に犯された大地が、果たしてオウガを排除するだけでもとに戻るかはわからない。
けれど、それでもとソナタは思ったのだ。綺麗で平和な花園を取り戻したいと。
その青く澄んだ瞳に宿るのは浄化と破魔の力。
それこそが彼女の身に宿った聖なる証。
「わたしには見えています。本来の彩を、その花園のあるべき姿を」
『瘴気の蒸気』は、その瞳の前に霧散し消える。だが、彼女の考える通り、それは元の木阿弥である。
いくら彼女の瞳が浄化の力を持っていたとして、集団で『瘴気の蒸気』を撒き散らす『魔導蒸気機関』を備えた『閉幕のアリス』たち……その大元を立断たなければならない。
そんな彼女の前に躍り出るのは、身体強化された『閉幕のアリス』たち。愛らしい姿のアリスに擬態していながらも、『瘴気の蒸気』を振りまく元凶である。
「いたわ! いたわ! 可愛らしい猟兵が! 爆発させてあげましょう! 粉微塵に吹き飛ばしてあげましょう!」
はなたれるハートボムの投擲。次々と爆発を起こし、ソナタを巻き込む。
「……来て、ラヴェル」
しかし、その爆発がソナタに届くことは無かった。
ハートボムの爆発が晴れていく……その奥に存在する影。確実にソナタを爆発に巻き込んだはずだった。けれど、その爆発の中から響き渡るのは―――。
幻獣交響曲第126番『神鎗』(オトメニヨリソウシュゴノケモノ)。
彼女を守るようにそばに寄り添うのは、浄化の光宿す真珠色の角を持つユニコーン。どれだけの『瘴気の蒸気』を溢れさせようとも、その真珠色の角が放つ光は、全て浄化の光。
ありとあらゆる浮上を一切合切振り払う神鎗。
銀龍アマデウスが変じた竪琴を奏でるソナタは奏者。歌われる声は、まさしく絶世のもの。清らかなる乙女しか背に乗せることのない一角獣ユニコーン、ラヴェルがソナタを背に乗せ駆け出す。
「そんな、瘴気の蒸気が効かないっ、それどころか、払われている―――」
驚愕する『閉幕のアリス』たち。だが、その驚愕の一瞬に神速の勢いで突撃してくるユニコーンの一撃に吹き飛ばされていく。
あるものは浄化の力籠められし一角に貫かれ。あるものは強靭なる足によって蹴り飛ばされる。
ソナタは謳う。
高潔なる魂の輝きが彼女に宿る限り、悪しき闇を祓う。それこそが、彼女の歌。
彼女の身体が人のものでなかったとしても、器でしかなかったのだとしても、その宿りし魂は高潔そのものである。
故に奏でられる旋律と共に『閉幕のアリス』たちを打倒し続ける。
花々の美しさを知らず、その彩の尊さを知らない彼女たちに、ソナタが傷つけられることなどない。
響く歌声は高らかに。
『魔導蒸気機関』からあふれる『瘴気の蒸気』の尽くを浄化せしめるのだった―――!
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
閉幕のアリスか
文字通り終わってしまった存在なら
残念だけど骸の海に返すしかないね
無念かもしれないけど
化けて出るのは勘弁してくれよ
…オブビリオンは化けて出てるっていうのかな?
瘴気の蒸気は厄介だね
でも蒸気なら冷やせば氷になって落ちるよね
邪神の涙を使用して蒸気ごと敵を凍らせてしまおう
投擲される爆弾はガトリングガンで迎撃したり
神気で時間を停めて防御したりするよ
こちらに注意を惹きつつ
氷から創った使い魔達をこっそり近づけ
凍結攻撃で混乱させよう
こちらの死角をカバーするように動いて貰おうか
冷気耐性で耐えつつ敵を氷像に変えてこう
僕は体が凍っても邪神の繰り糸で動けるよ
邪神の体だからね、人間と違って割といい加減なんだ
全てがセピア色に染まる『遠き日の憧憬の花園』。
その地においてもオウガの脅威は当然のごとく存在する。『閉幕のアリス』と呼ばれるオウガの群れ。
普段はアリスに擬態し不意打ちやだまし討ちを行うオウガであるが、背に負うようにして組み込まれた『魔導蒸気機関』により身体能力が強化されている。
それ故に、誇示するような行動を取り始めるのだ。跳ねるように駆け出し、背に負った『魔導蒸気機関』から排出される『瘴気の蒸気』をくゆらせながら花園を疾駆する。
標的たる猟兵を撃滅せんと、喜び勇むように跳ね回る。
「うふふ! 身体が強いってこんなにも気分が良いものなのね! 乱暴者のオウガたちが何故あんなにも暴力をふるいたがるのかよくわかったわ! だってこんなにも弱いものいじめって楽しんだから!」
もはや、そこにあるのは手に入れた己の力を誇示し、振るうこと以外考えられないといった傲慢たる意志。
「閉幕のアリス、か……文字通り終わってしまった存在なら、残念だけど骸の海に返すしかないよね。無念かも知れないけれど、化けて出てくるのは勘弁してくれよ」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、目の前に駆けてくる『閉幕のアリス』たちを見やり、頭を振る。
いや、違うな、と晶は考え直す。
「……オブリビオンは化けて出るっていうのかな?」
骸の海より染み出したものであるから、化けて、というのとはニュアンスが違うような気がするが、特に違いもあるまい。
あふれる『瘴気の蒸気』は毒性のある蒸気である。
それを吸い込んだり、触れてしまえばどうなるかはもうわかっている。この地に満ちるセピア色の花々が、それを物語っている。
「瘴気の蒸気は厄介だね……でも」
晶のユーベルコード、邪神の涙(ゼロ・ケルビン)が発動する。
それは自らも徐々に凍りつつ範囲内に極低温の物質を放ち続ける。それは瘴気が蒸気である以上、冷やせば体積が増し重くなり、地面へと堕ちる。
そして、その極低温の物質は、蒸気を一瞬で凍りつかせるだけにとどまらない。晶に襲いかかろうとしてた『閉幕のアリス』たちが、空中で一瞬にして凍りつき地面に落ちて砕け散る。
「人間にはできない無茶だよなぁ……これ」
次々と凍りつき氷像となる『閉幕のアリス』たち。だが、彼女たちも負けじとハートボムを投擲してくる。しかし、それも晶の持つ携行型ガトリングガンの斉射によって空中で爆散する。
互いに遠距離で攻撃を交わすしか無い。なぜなら、晶に近づけば凍りつかされ、逆に晶は徐々に自身もまた凍りついていくが故に動くことが叶わない。
「―――って、相手は思っているんだろうね」
だが、凍りついた晶の体は明らかにおかしな行動を取る。凍りついていれば、その体は凍結し動けないはず。
けれど、それに反するように晶は駆け出す。俊敏な動き。まるで凍りついていることなど嘘のように滑らかに動くのだ。
それこそ何か見えない糸に操られているかのように。
「僕は身体が凍っても邪神の操る糸で動けるのさ。邪神の身体だからね、人間と違って割といい加減なんだ」
氷から作り出した使い魔たちが凍結攻撃で『閉幕のアリス』たちを撹乱する。
その隙に近づいては、『閉幕のアリス』たちを次々と氷像へと変えていく。ガトリングガンで斉射すれば、氷像をは砕かれ、骸の海へと還っていく。
周囲のあらゆる者が凍りつき、動くものがいなくなったとき、漸く晶は凍えるような吐息を吐き出して息をつく。
「だからといって、体の節々が動きにくくなるっていう感覚は、何時までたっても慣れないけれどね」
セピア色の花々が、凍りつき、霜が降りてわずかに嘗ての彩を取り戻す。
その光景を見て、晶はさらなる戦場を求めて『遠き日の憧憬の花園』を後にするのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
ガンズ・ハルモニア
ガンキューブに搭乗。操縦。
まってほしい。この鋼鉄の箱ならば瘴気も意味を為さないのでは?
あ、まってなんか装甲値が微妙にダメージ負ってる気がする!
電子纏装甲!電子纏装甲!!(継戦能力)
『ガンフリーマシン』発動。
主砲が蒸気で痛い!(代償でしばらく使えないだけ)弾き飛ばせー!
ミサイル一斉発射。瞬間移動、アリス集団の後ろに転移。
こんにちは。おはよう。こんばんは。
ガンマシンキャノンで魔導蒸気機関に制圧射撃。再転移。
今あなた達の後ろにいるの。アンブッシュ死すべし。でも有効だよね。
周囲一帯にミサイル爆撃!蒸気吹き飛ばし。
転移で爆撃範囲から逃げる。
やられるととてもイラっとくる。しかしやると楽しい。
闇の魅力、怖い
『瘴気の蒸気』が満ち溢れるセピア色の『遠き日の憧憬の花園』に一つの奇妙な物体が浮かんでいた。
名をガンキューブ。大型浮遊箱型兵器。何故、その巨体が浮かぶのか、搭乗しているガンズ・ハルモニア(ガンガンガン・f17793)でさえ理解していなかった。
理解しているのは、己がガンキューブを動かすことが出来るということだけ。
「瘴気の蒸気……毒性があるのか。だが、まってほしい。この鋼鉄の箱なら瘴気を意味を為さないのでは?」
グリモア猟兵からは、セピア色の花園に満ちる『瘴気の蒸気』に対する対策を取ってほしいと言われていたが、この密閉性確かなガンキューブの堅牢なる装甲の前には蒸気とか入り込む隙間もないだろうというのが、ガンズの考えだった。
実際、彼女の考えの通り、大型浮遊箱型兵器であるガンキューブの気密性は確かなものであった。
ガンズの登場しているコクピットの中に『瘴気の蒸気』が侵入してくる気配はない。これならば、この地にあふれるオウガ……『閉幕のアリス』に組み込まれた『魔導蒸気機関』からはなたれ続ける『瘴気の蒸気』など意味を成すことはないだろう。
そう思っていたのだ。
だが―――!
「あ、まってなんか装甲値が微妙にダメージ負ってる気がする! あれ、なんかパラメーターおかしいことなってない!? 電子纏装甲! 電子纏装甲!」
そう、『瘴気の蒸気』は特殊な装甲に覆われているガンキューブの表面を侵し始めていたのだ。慌てて自己修復機能を持つ電子纏装甲を展開し、処置に当たる。
そんなふうにバタバタしていると、あっという間に『閉幕のアリス』たちに取り囲まれてしまう。あわや大ピンチである。
「不思議な、まあるいのが浮かんでいるわ。みんなで囲んでボコボコにしてしまいましょう」
手にしたハートボムの打撃武器を手に『閉幕のアリス』たちが一斉にガンズへと飛びかかる。
瞬間、ガンズのユーベルコード、ガンフリーマシン(ノーガン・フリースペース・テレポートマシンガン)が発動する。
ボコボコにされる寸前に発動したそれは、高速転移モードへと移行する。一瞬で彼女たちの攻撃を躱し、機体に内蔵された自動追尾型ミサイルの斉射を行う。
はなたれたミサイルの爆風が晴れると、そこにはもうガンキューブの機体はなかった。
「こんにちは。おはよう。こんばんは。そしてさようなら」
一瞬でガンキューブの機体は『閉幕のアリス』たちの背後を取る。主砲の機能を一時的に封印しているため、主砲の攻撃は行えないが、そこは大型浮遊箱型兵器たるガンキューブの面目躍如の活躍である。
感知している『閉幕のアリス』たちの存在する範囲内に次々に転移し続け、ガンマシンキャノンで背後を取った『閉幕のアリス』たちの背に負った『魔導蒸気機関』を狙って制圧射撃を行う。
次々と身体強化の要である『魔導蒸気機関』を失ってしまう『閉幕のアリス』たち。さらに再転移し、姿をくらますガンズ。
「今あなたたちの後ろにいるの。アンブッシュ死すべし。でも有効だよね」
一斉にはなたれる周囲を巻き込むミサイル爆撃。『瘴気の蒸気』ごと吹き飛ばす一撃はガンキューブすらも範囲の中に巻き込むが、ユーベルコードの力は未だ残っている。
再転移し、その爆風の範囲から逃れたガンズは、ガンキューブの中より爆発の中に巻き込まれて霧散し、骸の海へと還っていく『閉幕のアリス』たちを見送る。
「やられると、とてもイラっとくる。しかしやると楽しい。闇の魅力……怖い」
と言いつつ、じつにすっきりとした顔をしているのは敢えて触れぬようにしておこう。
きっと日々のフラストレーション……バーチャルゲームか何かで溜まった鬱憤というものがあるのだろう。
その八つ当たり的な攻撃にさらされてしまったオウガ、『閉幕のアリス』には同情を禁じ得ないが、これは『迷宮災厄戦』である。
戦わなければ、無辜たるアリスたちが犠牲となってしまう。それ故にガンズはガンキューブを再び次なる戦場へと飛来させるのであった―――。
大成功
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黒髪・名捨
●心境
瘴気か…まったくこれが無ければ綺麗な場所…なんだろーなぁ。
面倒だが、片付けるぞ。色々。
(合法阿片で『ドーピング』しながら)吸うならやっぱりこっちだな。
●行動
んじゃ、
まずは寧々の『結界術』で花園を覆ってもらい。
オレの『浄化』術で瘴気を打ち払う。
あ、寧々も手伝ってくれるのか(『神罰』プラスで浄化の結界を強化)
大体晴れてきたな。
残ってる分は『環境耐性』と『限界突破』で無視だ。
影響出る前に倒す(脳筋思考)
長い髪の毛で足元を『なぎ払い』『体勢を崩す』
そしてー『怪力』『破魔』の一撃必殺!!
これでてめぇのハートを(物理的に)ぶち抜いてやる
色褪せたセピア色であったとしても、そこに美を見出す者もいる。
何が美しく、何が美しくないのか。
その線引は誰しもの中に存在しているであろうし、かといってそれを他者との違いの物差しにするのは間違いであろう。
「瘴気か……まったこれがなければ綺麗な場所……なんだろうーなぁ。面倒だが、片付けるぞ。色々」
キセルから、ぷか、と煙をくゆらせながら合法阿片を混ぜた煙草を吸い上げるのは、黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)であった。
ドーピングする目的もあったのだが、どちらかという個人的嗜好による所が多い。『瘴気の蒸気』を吸うよりも、こちらを吸う方が格段にいいし、個人的にもキセルをくゆらせる時間というのはリラックスできる時間なのだ。
なにせ『迷宮災厄戦』たる大きな戦いの道程は長い。まだまだ戦いは続くのだから、小休止というも大切だ。
喋る蛙である寧々と共に花園を結界術で覆う。これは『瘴気の蒸気』が他へと拡散されることを防ぐためだ。
さらに一箇所に集めた『瘴気の蒸気』を一気に浄化の術で打ち払う。蛙の寧々も手伝ってくれるのか、浄化の結界がさらに強化されて、徐々に『瘴気の蒸気』が晴れていく。
「寧々も手伝ってくれたことだし、な……後は……影響が出る前に倒す」
我ながら脳筋思考であることは否めない。
だが、のんびりと事を構える時間も惜しい。オウガの群れである『閉幕のアリス』たちが次々と名捨を取り囲む。
自分たちが放った『瘴気の蒸気』が晴れてしまったことに気がついたのだろう。
「どうして払ってしまうのかしら。こんなにも芳しい香りだというのに。猟兵の皆さんはこぞって、これを嫌って払ってしまう。信じられないわ!」
一斉にハートボムの打撃武器を手に取って、名捨に接近戦を挑む。
愚かな、という他無い。いくら身体能力が強化されているからと言って、それは愚策に過ぎない。
徒手空拳であることを侮るのであれば、大いなる間違いである。
一瞬で名捨の長い髪が、襲いかかる『閉幕のアリス』たちの一体の足を掴んで地面に叩きつける。次の瞬間、名捨の体は宙に浮き、引きずり倒した『閉幕のアリス』へと怪力に寄る破魔の一撃を叩き込んでいた。
致命的な一撃。
それは一瞬の出来事であった。
瞬きをした次の瞬間、己達の仲間である『閉幕のアリス』の一体が霧散し、骸の海へと還っていっている。
何が起きたのかと理解するよりも早く、次々と周囲の『閉幕のアリス』が霧散していく。わけがわらかない。
「なんでなんで!? なんで目で捉えられないの!」
ご、と鈍い音がする。
それも暗転し、わけもわからずに消えていく『閉幕のアリス』たち。
そう、徒手空拳であることを侮ったからだ。何も武器を持っていないのではない。その体、五体の全てが武装であるのだ。
何処からでも攻撃を放つことができ、あらゆる挙動が攻撃の初動である。
「これでてめぇのハートをぶち抜いてやる」
はなたれるユーベルコードの一撃必殺の拳があらゆる体勢から、致命の一撃となって『閉幕のアリス』たちを尽く一撃で霧散させていく。
まさに悪夢そのものであったことだろう。
物理的に撃ち抜かれる心の臓。『魔導蒸気機関』によって強化された身体能力であっても追いつくことの敵わない名捨の膂力は、彼女たちにとっての誤算。
そして、瞬く間に『閉幕のアリス』たちを骸の海へと還し、『瘴気の蒸気』が晴れた花園にて名捨は再びキセルを手に取る。
「やっぱり、瘴気のない場所で吸うのは、格別だな」
一仕事終えた後だからでは、と寧々がつぶやいた気がしたが、うまいものは何時吸ってもうまいのだ、と名捨はつぶやいて、紫煙燻らせ、セピアの花園に思いをはせるのであった―――。
大成功
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