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迷宮災厄戦④〜はっぴーえんどぱわー~

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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●きぐるみぱわー
 不思議の国の愉快な仲間がひょこりひょこりと訪れたのは、愉快な仲間が巨大なきぐるみへと変化する、不思議な力の働く国だった。
「あら、丁度いいところに。協力してくださるわね?」
 じぃーー、と。背中のチャックを全開にして、その中へと潜り込むのは黒髪の美しい女性。
 オウガである彼女は、着心地を確かめるように数度身体を蠢かせる。
 それに応じて、愉快な仲間はその分厚い蔵書のような身体をぱたぱたと蠢かせ、ぱらら、ページを幾つもめくる。
「素敵ね、良い感じよ。でも……」
 ぱらら。めくった最後のページに綴られた、「めでたしめでたし」の文字に、気に入らないというように眉を寄せた。
 破り捨ててしまいたいところだが、きぐるみ状態の愉快な仲間には傷はつかないようで。
 まぁいいわと切り替えて、女性は巨大化した愉快な仲間を操作して、不思議の国を蹂躙するのであった。

●はっぴーえんどぱわー
「愉快な仲間に乗り込んで戦うらしいよ」
 字面からして愉快だねぇ、とどことなくのんびりと口にしたのはエンティ・シェア(欠片・f00526)。
 メモをちらりと確かめてから、集う者らを見渡して更に語る。
「なんでも、その不思議の国では愉快な仲間が巨大化してきぐるみになるらしい。勿論猟兵になった者も同様だよ」
 きぐるみになった愉快な仲間は背中にチャックが付いており、開けて中に乗り込むことが出来るそう。
 そしてそれによりパワーアップするのだそう。
「敵はそれを利用して、この世界に訪れた愉快な仲間を着込んで居るようなんだ」
 敵が乗り込んだ愉快な仲間は、端的に言えば動く本だ。それはとある国の花達が丹精込めて作り上げ、猫の作家が幸せな結末を願って物語を綴った本。
 本来の彼らはハッピーエンドパワーを放出する事が可能だが、オウガにとってハッピーエンドは無縁な存在。ゆえに、乗り込んだオウガは、それを使用することは出来ないようだ。
「まぁ、敵自身の技は使いたい放題だけどね」
 無数の騎士やメイドの軍勢を召喚したり、髪で出来た狐の噛みつきを的に扇からの一閃を放ってきたり、お茶屋お菓子を楽しまない者の速度を遅くしたり。
 ただでさえ厄介な力も、パワーアップしているとのことだ。
 しかし、と。エンティは人差し指を立てて微笑む。
「郷に入っては郷に従え。我々もきぐるみ合体することで、パワーアップすることが可能だよ」
 しかも、猟兵達がハッピーエンドを望むなら、その世界にいる本達の力を借りることも可能だという。
 敵よりも一つ多く攻撃の手段を得られるというわけだと笑って見せてから、ふと思い出したように手のひらを打つ。
「きぐるみ化した愉快な仲間への攻撃は、全て中の人が請け負うことになる。だから、彼らを傷つける心配はないよ」
 猟兵達の力になりたいと勇ましく旅立ってきた彼らは猟兵が乗り込むことを拒みはしないだろう。
 勿論、仲の良い愉快な仲間の猟兵と協力して挑んでも良い。
 いずれにせよ、利用されてしまっている者を開放するためにも、敵を倒さねばならない。
 任せたよ、と囁いて、エンティはグリモアの先にアリスラビリンスへの道を開くのであった。


里音
 大乱闘愉快な仲間達。

 今回のシナリオは「きぐるみ愉快な仲間」の許可を得て、乗り込んで戦うことでプレイングボーナスを得られます。
 本型の愉快な仲間達には、声を掛けて一言でもお願いすれば拒むことはしません。
 必須ではありませんが、ご自分の『幸せな体験談』などを教えてあげると、喜んで乗せてくれる上に、ハッピーエンドパワーが増幅されるでしょう。
 ハッピーエンドパワーはビーム的な衝撃波として任意のタイミングで放てます。
 好きな技名などを付けて撃ったりすると里音がはしゃぎます。

 当シナリオは人数控えめでスピード重視の運営となる可能性が高いです。
 ボス戦なので成功可能人数に達した辺りで纏めての描写になる想定です。
 多くを採用できない場合がありますので、予めご了承くださいませ。

 皆様のプレイングをお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『黒百合の女王・ミスト』

POW   :    私の愛しき騎士とメイド達、私の声に答えて
戦闘用の、自身と同じ強さの【レベル×5の剣や槍で戦う騎士】と【レベル×5の魔法や飛び道具で戦うメイド】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD   :    私の狐達から逃げられるかしら?
【伸縮自在の髪の狐達の噛みつき】が命中した対象に対し、高威力高命中の【扇による一閃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    さぁ遠慮せず、食べて飲んで楽しみましょう?
【メイド達が用意するお茶やお菓子】を給仕している間、戦場にいるメイド達が用意するお茶やお菓子を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。

イラスト:灰ノ瀬のん

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は推葉・リアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ディルク・ドライツェーン
きぐるみ…ぬいぐるみに乗って戦うのかっ
すっごい楽しそうだな~♪
アイツら倒す為にも、オレもお願いして乗り込むぞ!

なぁ、オレもお前達と一緒にアイツらと戦いたいっ
力貸してくれないか?
幸せな体験…ここ最近はいっつも幸せだなっ!
ずっと1人だったオレに、すっごい大事な宝物の相棒が出来たからっ
それに猟兵のやつらも面白いやつら多くて毎日楽しいんだ♪

愉快な仲間に乗り込んだら敵をUCでぶっ飛ばしに行くっ!
【怪力】【吹き飛ばし】で敵のUCに噛みつかれないように
距離取りつつ戦うぜっ
【第六感】で隙を見つけたら、ビーム撃ってみっか!
技名…そうだな、じゃあオウガブレイカーでいこうぜっ




 ふわふわ、ふよふよ。浮いているのは厚みも装丁もばらばらな幾つもの本。
 それらは全て見上げるほどの大きさで、背中――背表紙の部分にチャックが付いている。
 そしてグリモア猟兵からは、これに『乗り込んで』戦うと良いという言葉がかけられていた。
「きぐるみ……ぬいぐるみに乗って戦うのかっ。すっごい楽しそうだな~♪」
 今は少しばかり遠く、離れた場所にいるようだが、同じようにきぐるみに乗ったオウガが暴れているらしい。
 この本達の仲間でもある者を開放するためにも、ぜひとも、力を貸してもらわねば。
「なぁ、オレもお前達と一緒にアイツらと戦いたいっ! 力貸してくれないか?」
 ディルク・ドライツェーン(琥珀の鬼神・f27280)が浮かぶ本の一つに声をかければ、その本は自らをぱたぱたと羽ばたくように動かしながら、くるりと背中を向けてきた。
 ありがとなっ。と満面の笑顔でチャックを下ろし、中へと乗り込んで見れば、なるほど、不思議なパワーに包まれる心地だった。
「あ、そうだ、お前達は幸せが好きなんだよな」
 声をかければ、そうだよ、そうだよと、わくわくするような声が返されて。
 うんうん、と頷きながら、ディルクは嬉しそうな笑顔で語りだす。
「ここ最近はいっつも幸せだなっ! ずっと1人だったオレに、すっごい大事な宝物の相棒が出来たからっ」
 相棒。口にするだけで、表情が緩む。実験体としての存在から開放された後も、一人で転々と流されるようにして生きるばかりだった。
 けれど、相棒はそんな自分を拾い上げてくれた。ただの用心棒から、相棒という存在として、傍に置いてくれた。
「それに猟兵のやつらも面白いやつら多くて毎日楽しいんだ♪」
 相棒と共に幾つか仕事もしたし、色んな人と会ってきた。そのどれもが、一人でいた時には考えられないほどの幸福感を与えてくれるものなのだ。
 ディルクの言葉に、素敵、素敵ね、と本が囁く度、不思議パワーが増幅したような気がする。
 これなら、きっと。
「よーし、敵をぶっ飛ばしに行くっ!」
 いざ発進。ぐん、と進みだしたディルクは、程なくして件の女性オウガ――『黒百合の女王・ミスト』が乗り込むきぐるみを見つけた。
 そうして、突進するような勢いのまま、拳(どこが拳かとか考えてはいけない)を叩きつける。
「オレともっと遊ぼうぜっ!」
 破壊のオーラを纏った拳は、自慢の怪力でもって、ミストを吹き飛ばした。
「まぁ、私の邪魔をなさるの?」
 ひどいひと。声と共に、ミストのきぐるみから髪の先が絡んだような狐が生える。それが大口を開けて噛みつこうとするのを見とめ、ディルクは咄嗟に距離を取り、回避する。
「あれに噛みつかれたらもっと強いのが来るからな……」
 気をつけないと。呟くディルクに、ねぇねぇ、と本が呼びかける。
「ん? お、アレだなっ。よし、撃ってみっか!」
 オウガには使いこなせないハッピーエンドパワー。ディルクの幸せな体験で増幅されている力が、ぎゅん、と凝縮される。
「何か技名……そうだな、じゃあオウガブレイカーでいこうぜっ」
 行け、オウガブレイカー!
 掛け声に合わせるようにして、放たれた衝撃波。それを受けたミストは「きゃあ」と悲鳴を上げて吹き飛ばされた。
「まだまだ、どんどんいくぜっ」
 楽しげな声は、ディルクのもののみにあらず。乗り込んだきぐるみも、攻撃を受けたはずのきぐるみさえも、楽しげに笑う中、ミストだけは、きぐるみの内側で歯噛みしているのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ライラック・エアルオウルズ
本の中へ飛び込みたい、
――を物理で叶えられるとは
御互いに不思議な心地だろうが、
力を貸してくれるかい?

慣れぬ着ぐるみに蠢きつつ、
語るのは何時かの物語

君の作家とは顔馴染みでね
彼処で綴ったしあわせは、
僕にとって想い出深くあるよ
皆の想いを連ねるようにして、
彼に贈った――特別な物語
彼の喜ぶ顔も、皆の喜ぶ顔も
僕には勿体無い程に、
実に尊くあるものだった

ああ、故にこそ
しあわせを覆させはしないさ

騎士達に《属性攻撃:氷》放ち、
手足を凍らせて行動妨害
攻撃は《オーラ防御》で弾き
《全力魔法》で線引き、敵薙いで
隙突き、女王に反撃したなら
最後に刻むのは、ハッピーエンド

さあ、教えてあげよう
『ハッピーエンドの綴り方』を




 本の中へ飛び込みたい。
 それは、ライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)のささやかな望み。
「――を物理で叶えられるとは」
 ライラックの望みとしては、物語の中に、という意味だったわけだが、これはこれで、楽しくはあるのかもしれない。
「御互いに不思議な心地だろうが、力を貸してくれるかい?」
 尋ねたライラックに、本のきぐるみと化した愉快な仲間は二つ返事で頷いた。
 きぐるみを日常的に着込む習慣などはなく、慣れないものだが、乗り込んでみたその中は不思議と力が満ちてくる暖かな空間で。
 綴られた物語がぱらぱらと、さながら電子書籍の如く内側でも覗き見れる事に気が付いて、ライラックはふと微笑む。
「君の作家とは顔馴染みでね」
 以前、忙しい猫作家に手を貸して、彼の国を『救った』ことがある。
 その話は、当然新米の本達の間にさえ語り継がれ、あるいは綴り、紡がれて。どの本にとっても馴染み深い話となっている。
 彼処で綴ったしあわせが、ライラックにとって想い出深くあると語る声に、当事者と見えられた事の喜びからか、本がはしゃいでいるように感じた。
 くす、と。微笑まし気に笑って。ライラックのしあわせ語りは続く。
「皆の想いを連ねるようにして、彼に贈った――特別な物語」
 読んだことはあるだろうか。誰かに読まれているのだろうか。そう思うと少しだけくすぐったい心地になるが、贈った時の、作家猫や皆の喜ぶ顔を思い起こせば、そんなささやかな気恥ずかしさははらりと解ける。
「僕には勿体無い程に、実に尊くあるものだった」
 もう、懐かしむほど以前のことだと思うのは、この世界が今正に戦争という過渡期の只中にあるがゆえだろうか。
 けれど、そんな中でも。彼らがしあわせであることは、十分すぎるほど、感じられた。
 知っている、知っているわ。
 とてもすてきなものがたり。
 私達の大事な大事な宝物。
 ああ、と。吐き出した息は、感慨に深く浸るもの。不思議な力が満ちるのを感じながら、ライラックは目の前の敵を、見据える。
「――故にこそ。しあわせを覆させはしないさ」
 ずらり、居並んだ騎士とメイドの大軍勢。きぐるみに比べれば小さく見えるそれらを従える本のきぐるみも、元はと言えばあの世界の住民だ。
 汚される前に、取り戻さねば。
「お行きなさい」
 黒百合の女王、ミストの号令に、騎士達は剣や槍を構えて突撃し、メイド達は魔術を練り上げる。
 その最前列へと、ライラックは氷の魔術を放ち、足止めを。手足が凍りついて動けない者を避けて迂回してくるならば、そちらにもまた氷を、あるいは己を纏うオーラで受けて、防御する。
 無論、その繰り返しではジリ貧となるばかり。打開すべくライラックが掲げるのは、黒いインク。
 ――白紙に戻らず、残るは紙屑。
 ぽたり、ぐしゃぐしゃ。垂れた傍から塗りつぶされる真っ黒は、紙に綴られた物語をころすもの。
 打ち捨てられた没原稿と同じように、女王が描く騎士とメイドに囲まれた日常を打ち消していく。
 インクに切断されると同時、騎士もメイドも、まるで初めからそこに居なかったかのように掻き消えて。丸裸になった女王陛下に向けるよう、ライラックはさらり、指先で文字を綴る。
「さあ、教えてあげよう。『ハッピーエンドの綴り方』を」
 物語を愛する彼に相応しいのは、めでたしめでたしで締めくくられた最後の一頁。
 それが齎すしあわせを凝縮して、放てば。
 本はふくよかに笑い、女王は、苛立つように嘆くのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クレア・オルティス
アドリブOK

物語って…誰かの想いがカタチになったものだよね…
それが捻じ曲げられて…これほど悲しいことはないよね…

私の幸せな体験談…?それはね…きっと、これから起こること全て…
でもそれは私一人ではできなくて…だから、私にチカラをかして…?
チカラをあわせて戦って…勝利をこの手に掴むの…最高の物語、ハッピーエンドを一緒に作ろうよ…!きぐるみ愉快な仲間に話し協力を仰ぐ

さあ立ち向かおう…!私達は無敵…!ミラクルドリームレインボーエターナルハッピーエンドビーム!

指定UCで対象を眠らせたら、あとは闇属性の魔法陣を展開し全てを消し去る
深い眠りの中、恐怖も痛みも感じることなく一瞬で…おやすみなさい…永遠に…


清川・シャル
ハッピーならおまかせあれ!年中ハッピー!なぜならリア充だから!現役JCのリア充なめんなよです!
エピソードは沢山ありますが、大好きな親友や婚約者が居て不幸な訳ないですよね。一緒に色んな世界を旅してるんです、いいでしょう!
そんな訳でライドオン!ありがとう!
激痛耐性と見切りを使って避けたり受けたりしながら攻撃のタイミングを見計らいます
よし、今だ、喰らえ「鬼子裂破!」
そーちゃんは持てると思いますので力の限り振り回します
羅刹の力なめんなよです!UC起動!
着ぐるみって初めてなんですけど、悪くないですね




 ハッピーならおまかせあれ!
 そう意気込んで本の愉快な仲間達の前に立ったのは清川・シャル(無銘・f01440)だ。
 なぁになぁにと興味津々に近寄ってくる彼らに、シャルはえへんと胸を張る。
「年中ハッピー! なぜならリア充だから! 現役JCのリア充なめんなよです!」
 じぇーしーってなぁに、と本の身体ごと傾け疑問を訴えるような顔をしながらも、にこにこと満面の笑顔のシャルを見ていると、ほわほわと温かい気持ちになるらしく。
 ねぇねぇ、じぇーしーってなぁに。りあじゅうってなぁにとぐいぐい行く勢いで幸せな物語をねだる。
 そんな光景を横目に、クレア・オルティス(天使になりたい悪魔の子・f20600)はきぐるみと化した愉快な仲間の体にそっと触れてみた。
 ぱらり、ほんの少しめくってみたページには、びっしりと文字が連ねられている。
 誰かがこの本に託した、想いが。
(物語って……誰かの想いがカタチになったものだよね……それが捻じ曲げられて…これほど悲しいことはないよね……)
 予知では、破り取ってしまおうかなどと言っていた。もしもあのオウガの暴挙を許し、野放しにしてしまえば、彼らのような幸せな物語だって奪いつくされてしまうかもしれない。
 それは、いやだ。
 きゅ、と決意するように手のひらを握りしめたクレアに、ねぇねぇ、と本が声をかけてくる。
 貴方の幸せなお話は、なぁに、と。
「私の幸せな体験談……?」
 改めて考えてみると、どう言葉にしたものか。ゆっくりと考えてから、クレアはぽつりと告げる。
「それはね……きっと、これから起こること全て……」
 誰かと楽しくお話することも、見たことのない景色と出会うことも、美味しいものを食べることも、たくさんあるだろう。
 そんなささやかな日常を、クレアは幸せだと思う。
 ひょっとしたら、シャルにとっての幸せも、同じなのだろうか。
 ちらりと見た先では、シャルがやはり笑顔満面で語っている。
「エピソードは沢山ありますが、大好きな親友や婚約者が居て不幸な訳ないですよね」
 大切な人を脳裏に思い描くだけでも、表情が緩んでしまうもの。
 そんな存在が何人も傍にいてくれる毎日が、幸せでないはずがないのだ。
「一緒に色んな世界を旅してるんです、いいでしょう!」
 自慢げな顔は、同時に誇らしげでもある。大好きな人達と共に過ごす毎日がたまらなく幸福なのだと、心から主張する笑顔に、本達はきゃぁきゃぁと嬉しそうに声を上げる。
 クレアもまた、幸せな空気が伝播したように、ふ、と微笑んで。話しかけてきた本を見上げた。
「私の幸せもね、私一人ではできなくて……だから、私にチカラをかして……?」
 ヒトの形であったなら、手のひらに当たるだろう表紙の端をそっと、繋ぐように摘んで、クレアはその顔に笑顔を咲かせる。
「チカラをあわせて戦って……勝利をこの手に掴むの……。最高の物語、ハッピーエンドを一緒に作ろうよ……!」
 ね、と。ねだるような笑顔。その、幸せを願ってやまない顔に、否やなど言えようものか。
 だって、この本達はハッピーエンドが大好きなのだから!
 シャルの周りに居た本達も、私が私がとシャルの搭乗権を取り合っていたが、最終的には平和的に譲り合って一人に決める。
 ありがとう! と笑顔で乗り込んだシャルを追い、クレアもまたきぐるみに乗り込んでそれぞれに敵へと向かっていく。
 迎え撃つのは剣と槍を構えた騎士と魔法を取り扱うメイドの軍団。
「よーし、こい!」
 全力で迎え撃つ構えのシャルが勢いよく前進すれば、浮遊する本が意のままに動き、硬い表紙でビシバシと敵を薙ぎ払う。
 あちらからの攻撃を見極め見切りながら、時に陣形を崩すようにビシバシを繰り返すシャルを援護するように、クレアは幸せをたっぷりと含んでパワー全開のビームを凝縮させる。
「さあ立ち向かおう……! 私達は無敵……!」
 強く強く互いに鼓舞し合いながら、最後には口を揃えて、唱える。
「ミラクルドリームレインボーエターナルハッピーエンドビーム!」
 ちゅどーん!
 きらきらしくて華やかなビームが眼前の敵を蹴散らす爽快な光景に、楽しげに口角を上げながら、シャルもまた、ハッピーエンドパワーを放つ。
「喰らえ、鬼子裂破!」
 どかーん!
 クレアとは方向性の違う技名になぞらえたかのように、咆哮じみた衝撃波が炸裂する。
 またしても派手に蹴散らされた軍勢に、黒百合の女王、ミストはわなわなと震え、残る騎士やメイド達になおも進軍を命じる。
 だが、突如として戦場に白薔薇の香りが満ちたかと思うと、ふらり、眠りに誘われた者達が次々と倒れていくではないか。
「おやすみなさい……」
 苦しむ必要なんて無い。痛い思いも知らなくて良い。
 静かに、安らかに、眠るように終わらせられるなら、それはきっと、優しい終焉。
 にじみ出るような闇色の魔法を伴いながら、クレアが舞い散らせた花吹雪が残る軍勢をも根こそぎ眠らせては、夢に沈むようにそのいのちを終わらせていく。
 そうしてミストだけが残された状態になったのを見計らい、シャルはその手に――手がないので中空に、愛用の金棒を掲げた。
 勿論サイズもきぐるみ仕様。凄い。よく出来てる。
 なんて感心している場合ではないが、愉快な気分になるのは、どうしたって止められない。
「地獄へWelcome」
 渾身の一撃を込めた金棒は、重く、鋭く、ミストが着込むきぐるみに食い込み、地面へと叩き伏せる。
 増幅されたパワー故か、いつもより豪快に地面すら抉る金棒、『そーちゃん』の威力に、シャルは声を上げた。
「羅刹の力なめんなよです!」
 地面で暫し蹲るミストのきぐるみからは、「うそよ、何で私が――」と小さく呟く声が聞こえてくる。
 姿が見えないわけだが随分と効いているのは間違いないと確かめながら、シャルは空中で自在に操れる金棒を振り回しした。
「着ぐるみって初めてなんですけど、悪くないですね」
 実際のきぐるみはもっと動きにくいかもしれないけれど。今日はきっと、心から楽しむ日なのだろう!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
清史郎さん(f00502)と

まずは手伝ってくれる子を探さなきゃですネ?

赤色の本に声かけ
ね、君
力貸してくれない?

お礼の話…
幸せってーと大げさかもしれないケド
清史郎さんとこうやって一緒に仕事できんのはちょっと嬉しい
うん、面白いんだよ
だから今日もきっと楽しいと思…
ふふ、ほら、既にちょっと面白いでしょ?

お邪魔しますと本の中
清史郎さーん、着心地どうですか

一先ずお菓子でも楽しみません?
とびっきり甘いの下さいな
はい、清史郎さん

隙に花片で攻撃
これなら本たちも怖くないでしょ…ってこれだけじゃダメ?
え…えー、もー
お菓子的な幸せ……甘い…
清史郎さんに圧倒されつつもふきだすように笑って
俺も、それー!とビームを出す


筧・清史郎
綾華(f01194)と

俺は、ふわもこ動物さん図鑑に声を(動物大好き
俺を乗せてくれないか?

俺の幸せ談か
綾華と、くれーぷという甘味を原宿で食した時は幸せだったな
カスタードイチゴチョコケーキスペシャルショコラソースがけのホイップクリーム2倍
あとはバディペット達との出会いか
ポポ丸(ひよこ)とわたあめ(二尾狐)は極上のふわもふだ
綾華と共に赴いている今も愉快で幸せだな

うむ、着ぐるみな本の乗り心地はふわもこで非常に良い(微笑み
甘い物はとても好きだ、存分に楽しもう
これで更に幸せだな

桜吹雪舞わせつつ、はっぴーびーむを
いざ、スイートアニマルドリーム桜スペシャルのはっぴーマシマシふわもこびーむを見舞ってやろう(きり




 黒百合の女王・ミストは猟兵達の攻撃と本達のハッピーエンドパワーを受け、随分と疲弊しているようだ。
 しかし、それでもなお、きぐるみで戦い続ける以上、生身で挑むのは無謀な相手。
「まずは手伝ってくれる子を探さなきゃですネ?」
 視線を巡らせれば、最早彼らが味方であることを察した本達が自らを使ってと近寄ってくる。
「もてもてだな」
「清史郎さんこそ」
 浮世・綾華(千日紅・f01194)が目についた赤い色の表紙を持つ本に助力を求めている傍らで、筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)は幾つもの本達を見比べて。
「俺を乗せてくれないか?」
 最終的に声を掛けたのは、ふわもこな動物がたくさん描かれた図鑑だった。
 表紙からしてふわふわのもこもこが一杯で可愛らしい。動物大好きな清史郎としては見逃せないポイントだ。
 しかもそれがきぐるみになっている今、更に手触りすらももふもふなのである。実に清史郎らしいと、綾華は非そり、微笑んだ。
 選ばれたそれぞれは嬉しそうに背表紙を向け、いっそ急くようにして二人の搭乗を許諾する。
 そんな彼らのチャックを開けて中を覗き込みながら、綾華は彼らが好むという幸せな話をお礼として口にした。
「幸せってーと大げさかもしれないケド、清史郎さんとこうやって一緒に仕事できんのはちょっと嬉しい」
「そうなのー?」
「うん、面白いんだよ」
 温和で人の好さそうな好青年にしか見えない彼がどう面白いのか。興味津々といった様子の本が、ひょいひょいと綾華と清史郎を見比べる。
 語れるエピソードはたくさんあるが、今はそれを全部話している時間がないのが惜しい所。
 けれど、今だって。
「俺の幸せ談か。綾華と、くれーぷという甘味を原宿で食した時は幸せだったな」
 ほぅ、と。それを食べた時の口いっぱいに広がった素晴らしい甘さを思い起こして表情を緩める清史郎。
 あれは確か、カスタードイチゴチョコケーキスペシャルショコラソースがけのホイップクリーム2倍だったんだと呪文のようなメニュー内容に、本は疑問符を浮かべるような動きをしたが、清史郎の表情が幸せそうだったのだから、きっととっても甘くてとっても美味しいメニューだったのだろうなとうんうん頷く。
 あとはバディペット達との出会いだろうかと、ふわもこな二匹を紹介する。
「ポポ丸とわたあめは極上のふわもふだ」
 まんまるちっちゃいふわふわなひよこと、もふもふなの二尾が揺れる狐の愛らしさをこんこんと語る清史郎と、それを聞く本の間には、実に和やかな雰囲気が漂っていた。
 これから戦に赴くのだとは思えないくらい、穏やかで幸せな時間。
 そんな彼らを、ほあー、と言うような様子で眺めていた赤い本に、綾華はくすくすと笑いながら、ほら、と囁く。
「既にちょっと面白いでしょ?」
「とっても楽しそうー」
 ひとしきり語り終え、なんだかほわほわしている二人に気付いた清史郎は、目一杯語った相手に、もう一つ、と指を立て、声を潜めた。
「綾華と共に赴いている今も愉快で幸せだな」
「まぁ、まぁ。うふふ、素敵ね、素敵だわ」
 楽しいお喋りはここまで。お邪魔しますといよいよ本の中に乗り込んだ綾華は、不思議な力が満ちているきぐるみの中、居心地を確かめるように身体を蠢かせて、同じ状態の清史郎を振り返る。
「清史郎さーん、着心地どうですか」
「うむ、着ぐるみな本の乗り心地はふわもこで非常に良い」
 顔は見えなくなったが、声音でわかる。とても穏やかに和やかに微笑んでいるのだろう。
 不思議と、中からでも蔵書の内容が閲覧できるとあって、ぱらぱらぱらぱらとふわもこ図鑑を堪能しまくっている。
 そんな彼らとの対峙に、ふふ、うふふ、と少しばかり暗い響きのする笑みをこぼしながら、ミストはあくまで女王然と振る舞い、メイドを幾人も侍らせた。
「さぁ遠慮せず、食べて飲んで楽しみましょう?」
 拒めば速度を5分の1に落とされる厄介なお茶やお菓子たち。
 けれどそれを理解しているからこそ、二人は純粋にそれらを楽しむのだ。
「一先ずお菓子でも楽しみません? とびっきり甘いの下さいな」
「な……」
「甘い物はとても好きだ、存分に楽しもう」
「そんな、悠長な……」
 あまりにあっさりとお茶会に乗ってこられ、ミストは動揺しながらもお茶を口にする。
 けれど、皮肉なことに。より楽しんでいるのは、彼らの方で。
「これで更に幸せだな」
「はい、清史郎さん」
 のんびりゆったり。僕にも私にも後でちょうだいとねだる愉快な仲間達も交えて送るきぐるみな時間は、彼らの幸福感を膨らませ、存分にハッピーエンドパワーを増幅させていくのだ。
 そんな彼らののんびり具合が腹立たしいのか、じたばたと地団駄を踏んだミストは、もういい、とメイドを下がらせ、油断しきっているように見える二人へ、攻撃を仕掛けようと、した。
 だが、そんなことはお見通し。お茶を楽しむ彼らを包むように、花吹雪が舞う。
 ひらり儚い薄紅の桜と、ましろな菊。グラデーションのような二色が中空で踊る光景は、雅やかで、華やかで。
「これなら本たちも怖くないでしょ……ってこれだけじゃダメ?」
「はっぴーびーむを」
 切り刻むような鋭利さをも併せ持つ花弁に任せるだけでは足りぬと自己主張してくる本達と清史郎に、綾華は「えー、もー」と言いながらも、折角だからと技名なんてものをふと思案して。
「お菓子的な幸せ……甘い……」
「なるほど、いざ、スイートアニマルドリーム桜スペシャルのはっぴーマシマシふわもこびーむを見舞ってやろう」
 きりっ。綾華の呟きに着想を得た清史郎が、至極真面目な顔で告げた。
 勿論ふわもこ図鑑はノリノリでハッピーエンドパワーを溜め始める。
「ぷ、は……。俺も、それー!」
 技名復唱は無理だけど、と、吹き出すように笑った勢いで同調すれば、赤い本もまた、勢いよくパワーを溜めて。
 舞い散る花弁に翻弄されていたミストは、そんな二人の――四人の攻撃を、躱すことなど出来なかった。
 ハッピーエンドに断末魔は似合わない。全部全部飲み込んで、最後に残ったのは中身がいなくなって軽くなった本のきぐるみが、ぱたぱた、くるくると自分の様子を確かめる姿だけ。
「やったー!」
 ぴょいん、と。嬉しそうに跳ねる本達の動きに驚かされつつも、共に無事を喜び合って。
 彼らの物語は、今宵もめでたしめでたしで、幕を下ろすのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月03日


挿絵イラスト