迷宮災厄戦④〜ようこそ、着ぐるみバレエの国へ!
●大きな愉快な仲間のいるところ
『着ぐるみだと? 全くふざけやがって。悪逆非道をモットーとするこの俺に、こんな愉快な格好が似合う訳無いだろう!』
男は怒っていた。静かに怒っていた。
『だがこの国の制圧は急務、手段を選んでいられないのも確かだな』
男は眉間に深い皺を刻みつつ、大きな溜息を一つ吐く。
スキンヘッドにサングラス、鍛えられた筋肉質な体格は、愉快な仲間達の集まるこの国において、異質な空気を放っていた。
男はサングラスの奥の目を細め、通りかかった愉快な仲間に声をかける。
『おいそこの白鳥きぐるみ、ちょっと身体貸せ』
「え? ヘンタイさん? 不審者さん?……こわ、めっちゃこわ!?」
『誰がヘンタイだ、誰が!!』
ドスの利いた声で凄みながら、白鳥きぐるみの首を鷲掴みにする男。
「イタイ、イタイ!! な、何するんだよう!」
『ほほう、なかなか面白い構造をしているな。このチャックが例の……』
「うわー!? ヤメテ! 背中はヤメテ!!」
嫌がる白鳥の背中のチャックを開けて、力任せにその内部へと入り込む男。
白鳥きぐるみを着込んだ男は、その着心地を確かめるようにその場でくるりと回転した。
『ふむ、動き易さは悪くないか。だが優雅さに欠けるな。白鳥を名乗るなら、やはりこれを着るべきだろう。俺の気に入りだ、悪くないだろう?』
男は着たばかりのきぐるみの上に、自前の衣装を無理やり着込んだ。
白鳥さんは涙目だ。
「うう、こんな格好……彼女に見られたら、ボクもうお婿に行けないよ」
『だったら彼女にも着せてやればいい、どうせこの国は俺が支配するんだ、住民のきぐるみ全てに着せてやろう。この、素晴らしきバレエ衣装を!!』
白鳥きぐるみを包むのは、動きに合わせ軽やかに舞うスカートと、不自然に突き出したもう一つの白鳥の頭。
白鳥のバレエ衣装を着せられて、さめざめと泣く白鳥きぐるみの内側で、ニヤリと笑うこの男こそ、この国を脅かす強力なオウガ……『バレエのおっちゃん』その人だった。
●グリモアベース
「皆!? きぐるみの国が、きぐるみの国がぁああああっ!!!!!!」
それは悲鳴か歓声か。集まった猟兵達が目にしたのは、感極まった声を上げる一体の黒猫きぐるみだった。
文月・統哉(着ぐるみ探偵・f08510)は、そのもふもふとした両手をバタバタバタと動かしながら、状況を説明する。
「『迷宮災厄戦』、アリスラビリンスでの戦争が始まったのは、既に皆知ってるだろうか」
オブリビオン・フォーミュラである『オウガ・オリジン』に、その力を奪って他世界への侵略を開始した『猟書家』と名乗る者達。開戦早々から状況は実に複雑だ。
そんな戦場の一つを、統哉もまた予知したという。
「俺が予知したのは、大きな愉快な仲間のいるところだ。とある強力なオウガに襲撃されている」
「大きな愉快な仲間?」
耳慣れない言葉に、猟兵の一人が首を傾げた。
「そう、大きな愉快な仲間のいるところ。というのもね、この国を訪れた愉快な仲間たちは皆、身長が2倍になって、きぐるみ化してしまうんだ!」
――『きぐるみ化』、その言葉に赤の瞳をキラキラと輝かせる統哉。
きぐるみの国の存在が、きぐるみ仲間の存在が、とてもとても嬉しいらしい。
「このきぐるみ化現象、効果は愉快な仲間限定だけど、愉快な仲間であれば猟兵でもきぐるみになれるぞ。背中にチャックも付いててな……」
きぐるみ化した愉快な仲間に中の人は居ないけど、背中にチャック、ここは重要なポイントだ。
「そう、着ぐるみというからには勿論、中に入って着込む事も出来るのだ!!」
どどーん!! クロネコ着ぐるみの胸をぐんと反らして、ドヤ顔で語る統哉だった。
「しかもね、この着ぐるみ愉快な仲間たち、ふわもこ可愛いだけじゃないんだぜ。乗り込んだ人の戦闘力が数倍にパワーアップするおまけ付き!」
おまけ付き!……いや、おまけじゃなくて真面目に高い効果を持っていた。着ぐるみパワーは凄いのだ。
だが凄いからこそ、悪用しようと企む輩もいる訳で。
「強力なオウガが狙ってる。きぐるみさんを無理やり着込んで、大暴れしようとしてるんだ」
このオウガを倒し、愉快な仲間たちを助けて欲しいと統哉は言った。
「でね、今回の作戦で最も重要なのが、きぐるみ愉快な仲間たちとの協力だ」
許可を貰ってきぐるみな彼らを着る事で、猟兵達の力もパワーアップする事が出来る。
彼らを戦闘に巻き込む事にはなるが、全てのダメージは『着ている人』に通るので、協力してくれたきぐるみ達がダメージを受ける心配はない。その辺は安心して戦って欲しい。
「彼らとの協力が、この戦いの鍵を握るのは間違いないよ。より深く絆を結ぶ事が出来たなら、強力な必殺技だって生み出せるかもかもしれないね!」
きぐるみ達との共闘。そんな熱い戦いの予感に、再び目を輝かせる統哉。
そこには、皆なら大丈夫だと、信頼の気持ちが現れていた。
ふわもこの手でグリモアを掲げ、猟兵達を送り出す黒猫きぐるみ。
「彼らの事、どうかどうか宜しくな!」
クロネコ
お世話になっております、或は初めましてなクロネコです。
戦争が始まったと思ったら、まさかのきぐるみ戦場が!!!
これは書かねば、書かねば……という事で、お送りさせて頂きます。
●このシナリオについて
戦争シナリオです。【ボス戦】の一章のみで構成されています。
『「きぐるみ愉快な仲間」の許可を得て、乗り込んで戦う』事で、プレイングボーナスが得られます。
●きぐるみについて
相棒として、お好きなきぐるみさんを指定してください。お任せもOKです。指定の無い場合は、こちらでマッチングさせて頂きます。
ご自身が愉快な仲間な猟兵さんは、ご自身がきぐるみ姿となります。そのまま他のきぐるみさんに乗ってもいいですし、他の猟兵の方に乗って貰う形の共同プレイングも可能です。
●執筆について
プレイングの受付期間に関しては、MSページにてお知らせします。(今回の執筆は、早めに行えればと思っています。)
皆様のふわもこカッコいいプレイング、お待ちしています!!
第1章 ボス戦
『バレエのおっちゃん』
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POW : 漢の美麗なバレエキック
【バレエのダンスを踊りながら繰り出すキック】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 漢の華麗なバレエキック
敵を【バレエのダンスを踊りながら繰り出すキック】で攻撃する。その強さは、自分や仲間が取得した🔴の総数に比例する。
WIZ : 漢の綺麗なバレエキック
【バレエのダンスを踊りながら繰り出すキック】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【をキックの衝撃派によって破壊し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:正成
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠竹城・落葉」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ようこそ、きぐるみバレエの国へ
ふわりとした風の感触と共に、猟兵達は地面へと降り立った。
森に面した湖の岸辺、木漏れ日の優しい光の中で、色とりどりの花が軽やかな風に揺れている。
「かわいいのですっ!」
目の前に広がるメルヘンな世界に、琶咲・真琴(今は幼き力の継承者・f08611)は思わず感嘆の声を上げた。ふわり舞う灰色の髪に揺れるのは、ロップイヤーな白いウサミミ。
「不思議の国へようこそ!……なんてね♪」
揺れる白ウサミミに応えるように、黒いウサミミをぴょこんと立ててお道化てみせるのは、時計ウサギのラフィ・シザー(【鋏ウサギ】・f19461)。
「勿論俺も、この国は初めてなんだけど……さて、住民たちはどこだろね?」
くるりと周囲を見渡せば、木や岩の陰に、モコモコした何かが動いてるような? その数、目に付いただけでも1、2、3、4……ざっと数十体はいるだろうか。
「おぉ!着ぐるみな愉快な仲間たちがたくさんだ!」
早速の出会いに、ラフィは再び声を弾ませた。
ふわもこ愛らしいきぐるみ達が、木の陰からこちらの様子を窺っている。
大きくなった身体は全然隠せていないけど、それもまたご愛敬というものだ。
「突然オウガに襲撃されて、皆さん警戒しているみたいですね」
「なるほど、それで身を隠していると……」
ボストンテリアなきぐるみ少年の状況分析に、黒のゴシックスーツに艶やかな赤い髪の女性が頷いた。
「というか、こっちにも着ぐるみが?」
「あ、私は猟兵です。そしてこれは普段着」
ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)の零した疑問に、ボストンテリアな着ぐるみ……雨咲・ケイ(人間の學徒兵・f00882)は、真面目な顔で応えたのだった。
「わあ、あっちも着ぐるみ、こっちも着ぐるみ♪」
そんな彼らはさておいて、次々と見つけてはしゃぐのは、木元・祭莉(おいらおいら詐欺・f16554)。弾む声は、まるでかくれんぼでもしているかのよう。
『わあ、見つかった!?』
「だいじょうぶ、コワくない、コワくない」
「がうっ!」
驚いて顔を出したきぐるみ愉快な仲間たちを、キラキラとした目で迎える木元・杏(だんごむしサイコー・f16565)。祭莉の双子の妹だ。
アルファ・オメガ(もふもふペット・f03963)もまた、ケットシーの両手を広げ、そのふわもこぶりで仲間だとアピールする。もふもふは正義、きっと想いは伝わるはず……はず?
顔を見合わせるきぐるみ達。
どうやら無事に、敵意が無い事は伝わったようだった。
『キミたちは……オウガではなさそうだけど、アリスなの?』
「そうね、わたしはアリスの一人、でも今は、猟兵の一人でもある、よ」
ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)の返答に、胸をなで下ろすきぐるみ達。
『そうか、猟兵さん……猟兵さんだって!?』
『わわわ、猟兵さん! 猟兵さんだ!』
『みんな、猟兵さんが来てくれたよ!!』
次々と姿を現せば、周囲は着ぐるみ達でいっぱいになっていった。
ふわもこが広がる光景に、リタ・キャバリエーレ(空を夢見た翼・f22166)の心も弾むよう。
このフワモコさんたちに包まれてお昼寝したら気持ち良さそう……なんて事も頭を過りつつ、いやいやお仕事はちゃんとしないとと、虹色の翼をゆるりとはためかせ、両の手を握り直す。
『わわわ、猟兵さんならおもてなししなきゃ! お茶、お茶はどこに……』
『いやいや今はそうじゃなくて、ええと、そうだ、助けて! 変なオウガが広場で踊ってるの!』
あわあわと慌てふためくきぐるみ達の指さす方を見て見れば、広場の中央、石造りの舞台の上で、くるくるくると踊る影が見えた。
「あの動きは……間違いない」
ひと夏の思い出が、ガーネットの頭を過る。あれはちょうど一年ぐらい前だったか。着ぐるみによりシルエットこそ変わっているが、純白のチュチュを身に付けて、ブレの無い見事なピルエットでくるくると回る様は、既視感アリアリの光景だった。
「間違いない、ガチョウのおっちゃんだ」
「ガチョウおじさん」
杏がコクリと頷いた。
「ガチョウのおっちゃん!」
「ガチョウのおじさんですね」
祭莉と真琴も頷いた。
「そうなの? あれが、ガチョウ……」
初めて見る光景に、ミアがなるほどと頷く。
「いや、白鳥だから! というか、名前は一応、バレエのおっちゃんだから!」
思わずツッコミの声を入れたのは、レテイシャ・マグナカルタ(孤児院の長女・f25195)だった。
金の髪に、ドラゴンの青い角が勇ましい。この世界、ツッコミ役はとても貴重である。
頼もしいレティシャの言葉に、感心したように再び頷くミア。
アリスラビリンスに来る前の記憶をほぼ失っているミアにとって、世界は広く、何もかもが新鮮だった。
「そう、あれが白きガチョウのバレエ……」
……。
ああ、どこからツッコんでいけばいいのだろうか。そもそも、あの敵の在り様がおかしいのだ。そう、全てはおっちゃんが悪い。レティシャは空を仰いだ。
「今日もいい天気だね」
そんな猟兵達のやりとりはさておいて、おっちゃんを……いや、おっちゃんの着る白鳥の着ぐるみを、心配そうに見つめる着ぐるみ達。
その姿を前にして、リタの、そしてミアの胸が痛む。
「確かにバレエも素晴らしいけれど、無理やりは良くないわ」
ぷんすこと、頬を膨らませて怒るリタ。
「きぐるみになったみんなと遊んだら楽しそうなのに、悪いことに利用されちゃうのは悲しい、ね……」
ミアも頷く。
愉快な仲間のみんなには、たくさんたくさん助けられたから、だから。
今度はわたしが、みんなを助ける……!
「愉快な仲間のみんなを助けるために、わたしも戦う、よ」
口数は少ないけれど、感情表現は苦手だけれど、そう伝えたミアの表情は、青空の様に晴れやかだった。
ミア・ミュラー
きぐるみになったみんなと遊んだら楽しそうなのに、悪いことに利用されちゃうのは悲しい、ね……。けど、愉快な仲間のみんなを助けるために、わたしも戦う、よ。……ところであの衣装は、なに?
まずはきぐるみの愉快な仲間に乗せてもらわないと、ね。オウガは白鳥だからわたしも何か鳥さんに乗りたい、な。ん、あのオウガを倒さないとみんなあんな感じの変な格好に、なっちゃう。みんなを助けるために、力を貸してほしい、の。
敵の攻撃でこの国が壊れるのは、よくない。だから【雷盾】で周りのものを盾に変えてキックを直接受け止めて感電させる、よ。あっ、あの変な衣装も盾に変えちゃおう、かな。最後はオウガの周りを盾で囲んで、一斉攻撃。
●長老さんはまだまだ現役
『猟兵さん、わしらを助けて、くださるのですか?』
ミアの伝えた言葉を受け、前に進み出たのは、ふんわりとした羽に覆われた、フクロウのきぐるみさんだった。村一番の長老で、この村の村長らしい。
「ん、あのオウガを倒さないとみんなあんな感じの変な格好に、なっちゃう」
表情はそのままに、コクリと頷くミア。
純白のチュチュは、先ほど初めて目にしたミアだったが、ふわもこ着ぐるみに無理やり着せたあの姿には、やはり違和感を感じていた様だ。
ありがとうと、フクロウの村長は翼を広げて微笑んだ。
助けたいと思ってくれた、ミアたちのその気持ちが嬉しくて。
「ならばわしを使うといい。わしとてまだまだ現役だ、若い者に負けはせんよ?」
亀の甲より年の功、村の事なら誰よりも知っている。きっと何かの役に立つだろうと。
それはミアにとってもありがたく。
「わたしからも、おねがいする、よ。みんなを助けるために、力を貸してほしい、の」
ミアは再びコクリと頷いた。
●ミアinフクロウ村長
「なかなかの強敵ね」
『やれやれ、これじゃ広場が幾つあっても足りんのう』
広場の地面は、バレエのおっちゃんの綺麗なキックによって、既にぼこぼこに削られていた。
『遅いぞ猟兵どもよ、お陰でダンスの練習がこんなにたくさん出来たではないか』
抉れた地面は己の実力の証であると、誇らしげに胸を張るバレエのおっちゃん。
こんな敵を、これ以上野放しには出来ないと、ミアはフクロウ村長の着ぐるみと共に、改めて気を引き締める。
やはり厄介なのは、大地を削ってしまうほどのあのキック。彼の攻撃でこの国が壊れてしまうのはよくないと、ミアは考えた。ここは攻撃を盾で受け止めて、攻勢に出る為の機を窺うべきなのかもしれない。
『其は雷……遮り、迸れ』
周囲の空気がチリチリと音を立てた。やがて無機物が空へ跳ね、ミアの手元へと集まってゆく。
それは無機物を変換して作る雷の盾。勿論只の盾ではない。受けた攻撃に反電する、攻撃の刃。
『お嬢さん、無機物ならあの炭焼き小屋の屋根と、森の入口の大岩も使うといい。それから……』
フクロウ村長は、村の事ならよく知っていた。勿論、無機物がどこに隠れているのかも。
「わかったわ、ありがとう、ね」
ミアは短く礼を言うと、手元へさらに力を込める。
作ったのは大きな盾、6枚。おっちゃんを囲む様に配置して、徐々にその範囲を狭めていく。
『そんな盾、俺の鍛え抜いた跳躍力ならいくらでも飛び越えられる!』
バレエのおっちゃんは、ニヤリと笑うと上方へジャンプした。
盾の壁を余裕しゃくしゃくの顔で乗り越えて、広場に設置された舞台の中央へと降り立つバレエのおっちゃん。
しかしそれは、ミアの狙い通りだった。石造りの舞台がぐらりと揺らぐ。
『……まさか!?』
舞台は大きく揺れたかと思うと、そのものが雷の盾となり、その上に乗るおっちゃんを感電させた。
ビリビリ、ビリビリビリ。
『くそ、油断したか……』
ビリビリと感電しながらも、悔しさに悪態をつくバレエのおっちゃんなのだった。
大成功
🔵🔵🔵
リタ・キャバリエーレ
確かにバレエも素晴らしいけれど、無理やりは良くないわ
力を貸してね
と愉快な仲間(着ぐるみお任せ)をもぐり込み
ちゃんと羽もしまうわよ
(相棒の虎狼丸はお留守番)
フワモコ感に心弾ませつつ、お仕事はしっかりと
バレエには回転も大切っていうけれど私だって負けないわよ
愉快な仲間と力を合わせて、軸をばらさないように気をつけてグラン・ピルエットの要領でなるべく相手の攻撃を【見切り】つつ【怪力】も生かし連続攻撃(UC)を叩き込むわ
ついでに【衝撃波】て【吹き飛ばせ】たらラッキーね
(味方を巻き込まないように注意)
そんなふうに無理やり押し付けるなんて優雅どころか無粋の極みよ
アドリブ
絡み歓迎
●ハムスターと膨らむ頬袋
(じぃー……)
バレエのおっちゃんのダンスを、リタは再び観察していた。
おっちゃんのダンスはとても正確だ。滑らかな手の動きも、軽やかなジャンプも、とてもきぐるみを身に纏っての業とは思えない。そこに至るまでには、きっと血の滲むような努力が重ねられたのだろう。
元来努力家であるリタには、それがよく分かった。本人は楽しんでいるのだからいいのだろうが、付き合わされている白鳥さんはどうなのか……。
だからこそ、リタはその頬を再びぷくっと膨らませた。
「確かにバレエも素晴らしいけれど、無理やりは良くないわ」
やはり放っては置けないと、静かに決意を固めるリタだった。
そんな彼女の隣で、同じくぷくっと頬を膨らませるのは、カリカリと木の実を齧るハムスター……の着ぐるみさんだった。
『全くだワ。このアタシを差し置いて、素人の白鳥ヤロウを選ぶなんて、見る目無いわよネ、アイツ』
振り返ったリタに、ハムスターのきぐるみは微笑んだ。
「アンタ、アイツと戦うんでしょ? だったらアタシを使いなさいヨ。これでもプロのダンサー、後悔はさせないワ!」
そう言ってアラベスクのポーズを取るハムスター。
その優美な姿は、どこまでもフワフワのモコモコで。彼女もまた、ただ者では無いようだ。
そう、彼女には、おっちゃんのバレエに対抗できそうな何かがあった。
それが何なのか、今のリタにはまだ分からないけれど、それでもこの出会いには意味がある……きっと、たぶん。
「ありがとう、力を貸してね」
ふわもこに高鳴る胸を抑えつつ、リタもまた微笑んだ。
●リタinハムスター先生
しばし後、ハムスターの着ぐるみを着たリタは、戦場に立っていた。
虹色の羽は、綺麗に着ぐるみの中に納まっている。
相棒の虎狼丸も、今日ばかりはお留守番だ。
「バレエには回転も大切っていうけれど私だって負けないわよ」
くるくる回ると際限なく回るおっちゃんに、密かに対抗意識を燃やすリタ。
それはきぐるみのハムスター先生も同様で。
『リタ、大丈夫アナタならできるワ。大切なのは軸をばらさないこと、今までの練習を思い出して』
リタの頭を、数分前の光景が過る。鬼のようなハムスター先生のアドバイスと、掛け声に合わせ、グラン・ピルエットを練習したあの時を。
大丈夫、おっちゃんのバレエキックの攻撃は何度も観察して既に見切っている。あとはタイミングを合わせるだけ。
『何だ新手か? そのポーズ、お前もバレエの使い手だな』
「あなたがバレエの使い手? そんなふうに無理やり押し付けるなんて優雅どころか無粋の極みよ」
『ほほう、威勢のいい事だ。いいだろう、最後にどちらが立っているか、勝負してやるぜ……とう!』
白鳥きぐるみを着たバレエのおっちゃんが、大空を華麗に舞った。
もう後戻りはできない。着地する、次の瞬間が勝負だ。
『さあ行くわよ、アン・ドゥ・トロワ!』
繰り出された華麗なバレエキックをふわりと避けて、リタがその手に持つのは愛用の武器カダル。普段は獣さんと意志疎通するための音色を奏でるそれも、戦いにおいては姿を変えて、大きな大きなハンマーへと変貌していた。その大きさたるや、実に61m。まるで高層ビルの様なそれを持ち前の怪力で支えつつ、回転のエネルギーを乗せ、今こそ華麗に、グラン・ピルエット!!!
――ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
きぐるみの国を、衝撃波が駆け抜ける。
近くの木が吹っ飛び、岩が吹っ飛び、おっちゃんが吹っ飛んだ。
勿論、味方や着ぐるみ達を巻き込むような事は無く、怪我人はいないのだが、なかなかの迫力だったのは間違いない。
『……ふふ、流石リタ、凄まじい威力ネ』
ユーベルコードと着ぐるみバレエの合わせ技。愛弟子の発揮した想像以上の破壊力に、目頭を熱くするハムスター先生。
(「……でも周辺への威力がちょっとありすぎて」)
使い過ぎには注意しよう。そう思ったリタと、ハムスター先生だった。
大成功
🔵🔵🔵
ガーネット・グレイローズ
久しぶりだな、バレエのおっちゃん!
覚えてない? なんでもない、こっちの話だ!
着ぐるみ愉快な仲間に話しかけて、協力を要請。着ぐるみの姿はお任せ
「あのおっさんをここから追い出すために、キミの力を貸して欲しい。
具体的には私がキミの中に入って戦うことになる。協力してくれるかい?」
首尾よく着ぐるみの中に入れたら体にブラッドエーテルの波動を流し、
身軽さを活かして格闘戦の開始。
「バレエなら、私も昔ちょっとだけ習っていたんだ!」
必殺のキックを<ジャンプ>で躱し、そのまま空中から宇宙カラテの奥義、
【烈紅閃】の一撃だ! バレエのリズムに合わせて、空中連続蹴りを
叩き込むぞ。
※アドリブ・絡み歓迎!
●お姉さまと赤い星
「さて、パワーアップしたおっちゃんと戦うとなれば、こちらも対策は必用だろう」
(「何しろあのおっちゃんだ、どんなカオスが待っているか分からない……」)
ガーネットもまた、戦いの準備を進めていた。
それは、運命の出会いだったのかも知れない。
(『白い肌にすらりとした手足、宝石のように艶やかな髪に、深く聡明な赤い瞳……』)
少女は胸の高鳴りのままにその言葉を紡ぎ出した。
『お姉さま、どうか私と踊ってください。そして、舞台に輝くあの星に!』
そう高らかに歌うのは、赤い星……いや、赤い海星。赤いヒトデの着ぐるみだった。
くるくるとまわり、ジャンプ!
それはまるで、夜空に輝く星のよう。軽やかに煌びやかに空を舞い……べちっ!?
そのまま地面に落ちたのだが、気にせず立ち上がり、決めポーズ!!
優雅さはさておいて、その不屈の根性は本物の様だ。
……ガーネットは考える、考える。
(「彼女なら、あのおっちゃんにも勝てるかもしれない、色んな意味で」)
ガーネットはすっと手を伸ばし、ヒトデのその赤い手を取った。
「あのおっさんをここから追い出すために、キミの力を貸して欲しい」
その所作は、とても優雅で上品で、ヒトデ少女の心はメロメロだ。
「具体的には私がキミの中に入って戦うことになる。協力してくれるかい?」
『はい、よろこんで!』
●ガーネットin赤い海星
『お姉さま、さあ参りましょう。今こそ二人輝く時!』
優雅な所作でくるりと回り、舞台へと舞い降りる赤い星。
舞台の中央で、ガーネットは静かに目を閉じた。
感じるのは、ブラッドエーテルの波動だ。自らのサイキックエナジーのエーテル体を、海星着ぐるみの中へと流し込む。
そうすることで、着ぐるみの身体が、まるで自身の身体の様にガーネットには感じられた。
「バレエなら、私も昔ちょっとだけ習っていたんだ」
優雅に、華麗に、上品に、夜空を舞う星のように。
ブラッドエーテルによってより身軽になった身体でくるりと舞うガーネットのその様に、おっちゃんも感嘆の声を上げた。
というかおっちゃん、吹っ飛ばされた先からいつの間にか戻って来ていた。しぶとい、実にしぶとい。
『やるじゃないか。だが、この俺について来られるかな?」
くるくると回り、華麗なキックを繰り出すバレエのおっちゃん。
その必殺ともいうべき技は、逆境に晒される事で更に威力を増していた。
しかしガーネットも慌てはしない。華麗なキックを華麗なジャンプでひらりと躱す。
(「これならば出来るかもしれない。あの、宇宙カラテの奥義を!」)
「多少手荒にいかせてもらうぞ。穿ち、砕く!」
『きゃー、お姉さま、かっこいい!!』
海星着ぐるみの声援を受けながら、鮮血のように紅いエーテルが、着ぐるみの中を駆けた。
バレエのリズムに合わせてふわりと舞い、鋭い一撃がおっちゃんを襲う。
『なんのっ』
身体を捻り、躱すバレエのおっちゃん。
しかし、ガーネットの攻撃はこれだけではなかった。
『……連撃、だとっ!?』
ただでさえ素早い一撃を放つユーベルコードに、着ぐるみパワーが加わったのだ。そのスピードは3倍以上。
夜空に輝く赤い星の連撃により、再び空へと舞い上げられ、星となったおっちゃんだった。
大成功
🔵🔵🔵
ラフィ・シザー
おぉ!着ぐるみな愉快な仲間たちがたくさんだ!さて俺も誰かに力を借りないと…あっ!
そこの黒兎なきぐるみさん?同じ黒兎のよしみだ一緒に戦わないかい?
ダメージは俺しか感じないから痛い思いはさせないぜ!
バレエのおっちゃんか…今は白鳥さんの中に入ってるわけだけど…うーん、まぁ、最近はそう言う系統のバレエもあるから否定はしないけど。
俺はもうちょっと優雅にいきたいね。
敵の攻撃は【ダンス】で避けるぜ。
ふふっ、うさぎさんが踊ってるみたいで可愛いだろ。
UC【悪い子のクリスマス】でクランプスを召喚して悪いオウガを攻撃だ!…これ、クランプスも大きくなんのかな?
●黒兎さんと正義の味方
それぞれのやりかたで、相棒となるきぐるみを見つけていく猟兵達。
「さて俺も誰かに力を借りないと……あっ!」
視線を感じて振り向くラフィ。
目に入ったのは、岩陰から覗く黒いウサミミだった。
あれはきっと黒兎さんに違いない。そっと近づき声をかける。
「そこの黒兎なきぐるみさん? 同じ黒兎のよしみだ一緒に戦わないかい?」
『はううっ!?』
見つかった事にびっくりして、ぴょこんと飛び上がる黒兎きぐるみさん。
ラフィの姿を認めると、キラキラと目を輝かせながらも、再び頭を抑え蹲る。
『いやいや、ボクが戦いなんて、そんな』
ふるふるふると、緊張したまま首を振る黒兎。
『だってほら、痛そうだし、痛かったらボク、泣いちゃうだろうし』
「あ、そこは大丈夫だってさ。ダメージは俺しか感じないから痛い思いはさせないぜ!」
『痛くないの……?』
その言葉に少しだけホッとした様子で、ラフィを見上げた黒兎だった。
憧れのヒーローと一緒に戦える、それは黒兎の少年にとって、夢みたいな出来事で。
『でも……ボク弱いしさ、戦うどころか、喧嘩だってしたこと無いし、きっと迷惑かけちゃうよ?』
恐る恐る尋ねる黒兎に、ラフィはにこりと笑ってウインクを返した。
「大丈夫、俺が戦い方を教えてやるからさ、そこは大船に乗った気持ちでいてくれよな」
『本当に? こんなボクで良いのかな、いいのならどうぞ使って、猟兵さん!』
先程までの緊張はどこへやら、ぴょこんと跳ねて喜ぶ黒兎。
「はは、そうこなくっちゃ♪」
交渉成立、笑顔で握手をする二人だった。
●ラフィin黒兎
「バレエのおっちゃんか…今は白鳥さんの中に入ってるわけだけど…うーん、まぁ、最近はそう言う系統のバレエもあるから否定はしないけど。俺はもうちょっと優雅にいきたいね。」
ラフィの呟きに、彼の着る黒兎のきぐるみも、そうだそうだと同意する。
「まだ怖いか?」
『ええと、ちょこっと』
きぐるみの返事に、ははと笑うラフィ。
その怖さを払うように、ダンスのステップを踏んでいく。
「ふふっ、うさぎさんが踊ってるみたいで可愛いだろ?」
おっちゃんの綺麗なキックをするりと避けて、くるりとターン♪
バレエではないけれど、そのリズム感はなかなかのものだった。
ラフィをすり抜けたおっちゃんの足は、そのまま地面に突き刺さり、衝撃波が大地を抉る。
『うわわわわわわ!?』
間近で起きた衝撃に、慌てて目を瞑る黒兎着ぐるみだった。
「大丈夫大丈夫、ほら、痛くないだろ?」
実際のところ、ダメージは全て中の人に、着ぐるみにはかすり傷一つ入りはしないのだ。ラフィが生きて着ぐるみを着ている限り、彼は誰より安全だ。
「全く、黒兎は怖がりだな」
攻撃の度に慌てる黒兎君の様子に、はははと笑うラフィだった。
●
戦いはそのまま、ステップとキックの応酬を繰り返す。
途中仲間の戦闘を挟みながら、彼らは戦況をじっと見守っていた。
「おっちゃんにも疲れが出て来たみたいだね、そろそろ仕込み時、かな?」
ふわりと兎のダンスを踊りながら、ニヤリと笑うラフィ。
黒兎の着ぐるみ少年も、すっかり戦いのリズムに慣れた様子で、確りと前を見て戦場に立っていた。
「頑張った黒兎に、俺のとっておきを見せてあげるよ」
『とっておき?』
「そう、とっておき」
ニヤリと笑い取り出したのは、兎型のメルヘンランプ。
「今だけはクリスマスって事で♪ 悪い子はどこだろうな? クランプス」
ラフィの口がそう告げると、ランプから現れたのは、頭に羊の角を生やした悪魔。
その姿を見て、小さく悲鳴を上げる黒兎の少年。
鉤爪の名を持つ彼の悪魔は、クリスマスの日に悪い子を捕まえてしまうのだ。
彼への報酬は……やっぱり悪い子なのだろうか。
「おっちゃんは随分年だけど、まあ、悪い事してるのは間違いないだろ?」
おっちゃんと、おっちゃんに着られて泣いている白鳥きぐるみを見て、なるほどと頷くクランプス。
承知したと頷いて、鉤爪と鞭を構えた。
「……これクランプスは大きくなんのかな?」
それは、ラフィの発した小さな呟き。クランプスは愉快な仲間ではないから、着ぐるみ化はしないし、大きくもならない。
しかし、ラフィのその言葉に何を思ったか、クランプスは、その場でちょっとだけ背伸びをした。
大成功
🔵🔵🔵
琶咲・真琴
WIZ
うさぎさん、うさぎさん
よかったら、ボクと一緒に戦いませんか?
同じうさみみ同士、息が合うと思うんです
皆と一緒に楽しく暮らすためにも
あのおじさんオウガをぶっ飛ばしてしまいましょうっ!
うさぎの着ぐるみさんからOKをもらったら、着させてもらって
いざ、出陣ですっ!
おじさんが地形を壊す前に
早業・高速詠唱・多重詠唱などでUCを発動
おじさんのバレエ靴(重要)とその進路先の地形を粘着性を最大限まで高めた弾で塗り固め、動きの阻害と体勢崩し狙い 誘導弾・スナイパーなど
動きが鈍ったら
今度は粘着性なし且つよく滑るUCの弾を一斉射撃
攻撃は持てる技術とうさぎさん信じて回避
必要あらばカウンターです!
アドリブ・連携歓迎
●白兎さんとメイド服
「うさぎさん、うさぎさん。よかったら、ボクと一緒に戦いませんか?」
フワフワモコモコのメルヘンチックな白兎さんにそう声を掛けたのは、ニッコリ笑顔の真琴だった。
『キミは……アリス? それとも時計ウサギ?』
そう聞き返す白兎さん。
なるほど真琴の着ているウサミミメイド服は、フリルが可愛いエプロンドレスにウサミミを合わせた姿。とても可愛くメルヘンちっく。この国に住む白兎さんの目にも、とても馴染んで見えたらしい。
「ふふふ、ボクはアリスでも時計ウサギでもないけれど、同じうさみみ同士、息が合うと思うんです」
そう言って、白兎さんの手をぎゅっと握る真琴。
熱意ある紫の瞳が、白兎さんの赤い瞳をじいっと見つめた。
『わわ、わわわわわ!?』
忽ち顔を赤くする白兎さん……いや、これはピンク兎さん?
『……その、オレ、人間の女の子とは、あんまりお話したことなくて』
視線を宙に泳がせながら、ごにょごにょごにょと口ごもる兎さん。
急に小さくなった言の葉は、真琴の耳には届かずに。
とはいえ白兎さんも嫌がっている訳では無い様子。
「皆と一緒に楽しく暮らすためにも、あのおじさんオウガをぶっ飛ばしてしまいましょうっ!」
幼いながらも力強く呼びかける真琴を前に、白兎さんの胸の奥を何かが射貫いた。……きゅん。
『……お、オレでよければ』
もう観念したとばかりに、白兎さんの口がそう紡ぐ。
「ありがとうなのです!」
兎さんの両の手を握り喜ぶ真琴、屈託のない笑顔は天使のよう。
(『幼いながらも戦うこの子の力になれるなら……』)
そう決意して、背中のチャックに手をかける白兎さん。
……しかし、彼はまだ知らなかった、真琴が男の子であるという事を。
……そして真琴も知らなかった、自分がナチュラルに女の子だと思われている事を。
果たしてこの真実は明るみに出るのか出ないのか。
「いざ、出陣ですっ!」
●真琴in白兎さん
「白兎さん、行きますよ!」
『お、おう、いつでも行きやがれ!』
戦場へと飛び出す真琴と白兎着ぐるみ。
そこには勿論、白鳥の着ぐるみを着た、バレエのおっちゃんがいる訳で。
『なんだ、黒兎が居ると思ったら。白兎も居やがったか。どいつもこいつもぴょんぴょんぴょんぴょん良く跳ねやがる』
次から次に出てくる猟兵達に、呆れた様な疲れた様な声を出すバレエのおっちゃん。
しかし、そのバレエダンスのステップは、鈍る様子など微塵も見られなかった。
ステップを重ねて、重ねて、遂に放たれるおっちゃんの綺麗なバレエキック!
しかし勿論、真琴と白兎も負けてはいない。
身を低め、キックを躱したならば、高速詠唱でユーベルコードを発動する。
「この世を彩りしものよ、舞い踊れっ!―――神羅写成・彩色演舞っ!!」
放たれたのは、395本にも及ぶ、魔法の塗料弾。
その内の一部は、おっちゃんのバレエ靴へと命中した。
『……む、これは!?』
それは、粘着性を最大限まで高めた塗料弾。地面へと達した足を、しっかりと縫い留める。
『うお!?と、と、と!?』
――ビタンっ!!
勢いのまま倒れこみ、顔面を思いっきり地面にぶつけたおっちゃんだった。
『おー、これまた見事に転んだもんだ』
なかなかの頭脳戦、元より脳まで筋肉で出来ていそうなバレエのおっちゃんはさておいて、真琴のそのお手並みに感心する白兎さん。
「まだまだ、体勢を崩させたここからが勝負だよっ!」
作戦の成功に満面の笑顔を浮かべつつ、更なる追い討ちをかけていく真琴の抜かりなさに、頼もしさと共に、末恐ろしさを感じる白兎さんだった。
大成功
🔵🔵🔵
木元・祭莉
アンちゃん(f16565)とー。
わあ、あっちも着ぐるみ、こっちも着ぐるみ♪
どうもデス!(ぺこり)
え、くるくる回る、固ゆでっぽいおっちゃんが出た?
ん、わかった。
夏休みのかんさつにっきにご協力を……じゃなくて。
おっちゃん駆除したいから、ご協力願いマス!!
せっかくアリスだし……あ。
キレイな薄桃色のフラミンゴさん、ご協力お願いしまっす!
さあ、クローケーの開幕だよー♪(ばっさばさ)
おっちゃん見つけたら、UC発動!
ほら、アンちゃんの傍に向日葵が!(そっち)
みんなが見惚れたところで……
ふっふっふー、満を持して!
まつミンゴ、いっきまーっす!
大きく振りかぶってー。
だんごむしローリングアターック!!(投球!)
木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と
フラミンゴまつりんととてとて進んで
まつりん、そのまま翼を広げて
(ワキにもふっ)
ん、フラミンゴ、もふもふ…(堪能
…む?
はたと気が付けば目の前に、黒くて丸い…だんごむし、の、着ぐるみさん!
こんにちは!
わたし、この間からだんごむしスキー(こくり
光に当たると輝くツヤが素敵
硬めのわがままぼでぃ、サイコー
一緒にこの世界、守りたい
まずはあのオウ…(指差し
オ…?ガチョウおじさんから
許可頂けたらだんごむし着ぐるみ着込んで
…あ、向日葵たくさん
ふふ、と嬉しそうに笑っ……む?
丸まり投球されおじさんに突撃!
【鎌鼬】を仕込み、キックする足を突撃がてら、ぶすっ!
これぞわたし達のだんごパワー!
●まつりんとフラミンゴ
つぎつぎと着ぐるみの相棒さんの協力を得ていく仲間たち。
勿論、木元兄妹も負けてはいられない。
「夏休みのかんさつにっきにご協力を……じゃなくて」
ええと、ええとと、言葉を探す祭莉。
「おっちゃん駆除したいから、ご協力願いマス!!」
そんな祭莉の呼びかけに、なんだなんだと集まって来る着ぐるみ達。
中にはニワトリさんもハトさんもいたけれど……祭莉の目を惹いたのは、薄桃色のフラミンゴさんだった。
(「そうだ、せっかくアリスラビリンスなんだし……あ、そこの」)
「キレイな薄桃色のフラミンゴさん、ご協力お願いしまっす!」
にこにこ笑顔で元気よく!
そんな祭莉の勢いに、フラミンゴさんもタジタジだ。
しかしフラミンゴさんにもまた、協力したい理由があった。
「……友達の白鳥さんを助けたいの?」
話を聞いて隣にいた杏が問えば、言葉少なにそうだと頷くフラミンゴ。
二人は親友で、良きライバルであるらしい。
「ふうん、だったら決まりだね♪」
お互いに助けたいなら話は早い、頷き合う祭莉とフラミンゴだった。
フラミンゴの背中をするっと開けて、ぐいっと入る祭莉。
内部も柔らかく、ほどよい温度。暑過ぎないのはこの時期本当に有難い。
「くるっと回って、まつミンゴ!」
『まつミンゴ!』
フラミンゴさん、意外とノリはいいようです。
そんな二人にとてとてと駆け寄る杏。
「まつりん、そのまま翼を広げて」
何だろうと首を傾げつつ、言われるままに翼を広げるまつミンゴ。
ふふふと、杏の口元がゆるんだ。
杏は家にニワトリを飼っている。毎日のお世話は欠かさない。
故に知っていたのだ、翼の下のこの部分に、極上のもふもふの羽があることを!
きらりと目を光らせて、フラミンゴのワキにダイブする杏。
(もふうっ!)
柔らかな感触が杏を包む。
「ふふ、羽毛布団みたい。これならぐっすり眠れそう……」
「わー。寝ちゃダメだってばー!」
慌てるまつミンゴ達なのだった。
●杏ちゃんとだんごむし
「で、杏ちゃんはどうするの?」
「む、どうしよう……」
もふもふばかりしている場合では無かった。
杏もまた、着ぐるみさんに協力をお願いしなくては。
「……む?」
はたと気が付けば目の前に、黒くて丸い…だんごむし、の、着ぐるみさんが!
杏の中を電流が走った。
このこにしよう、もうこのこしかいない!
「こんにちは! わたし、この間からだんごむしスキー」
少々声が裏返りながらも、スキーな気持ちを伝える杏。
コクリと頷く様にお辞儀をしてから、その顔を覗き込む。
少し恥ずかしがり屋さんなのか、むずむずと丸まろうとするだんごむし。
その様子に杏はピンときた。
これは褒め褒め作戦の出番、溢れる思いのたけを語らねば!
「光に当たると輝くツヤが素敵」
「硬めのわがままぼでぃ、サイコー」
言葉を重ねるごとに、益々照れていくのか、黒光りする外殻がほんのり赤くなるだんごむし。
むむ、もうひと押しだ。
「一緒にこの世界、守りたい」
『……ボクでも、守れる?』
だんごむしの小さな呟き。
「ん、一緒に守ろう?」
その呟きに、杏はコクリと頷いた。
「だから、まずはあのオウ……」
指さす先には踊るオウガ、例のおっちゃんの姿がある。
「オ……? オ……ガチョウおじさんから!」
あれはやっぱりガチョウだと思う、杏なのであった。
●祭莉inフラミンゴ、杏inだんごむし
「さあ、クローケーの開幕だよー♪」
フラミンゴの翼をばっさばっさと羽ばたかせ、勢いよく飛び出す祭莉。
「いた、くるくる回る、固ゆでっぽいおっちゃん!」
『白鳥!』
白鳥の着ぐるみに純白のチュチュ、狙うべきオウガはあれで間違いないだろう。
見つけるなり祭莉は、夏花の後継人(サンサンフラワーズ)のユーベルコードを発動する。
身構える隙すら与えずに、たくさんの向日葵がバレエのおっちゃんの周囲に……いや、杏の周囲に咲いた。
『……え?? そっち!?』
フラミンゴの驚きを他所に、周囲の皆の視線が向日葵へと注がれる。
「……あ、向日葵たくさん」
杏ももれなく見惚れていた。ふふ、と嬉しそうに笑っ……む?
「ふっふっふー、満を持して! まつミンゴ、いっきまーっす!」
まつミンゴは大きく振りかぶった、そして繰り出される必殺技。
「だんごむしローリングアターック!!」
それは兄妹の、そして人と着ぐるみの、新しい合体技が生まれた瞬間だった。
投げるまつミンゴ。投げられるあんゴムシ。
丸まり投球されたあんゴムシは、バレエのおっちゃんめがけて飛んで行く。
だがおっちゃんも、ただ黙って見ているだけではなかった。
おっちゃんには、バレエで鍛えた屈強な足があった。
おっちゃんは足を振り上げ、キックの構え!!
だが、だんごむしローリングアタックもまた、それだけでは終わらないのだ。
「逃げないで?」
おっちゃんの足がだんごむしを蹴り飛ばそうと接触する瞬間に、杏のユーベルコード鎌鼬が発動する。
固く丸まっていた筈のだんごむしが開き、うさ印の護身刀による素早い一撃が、おっちゃんの脛を襲った。
……ぶすっ!
『ぐわっ!?』
「ふふ、これぞわたし達のだんごパワー!」
転がるおっちゃん、そして転がるだんごむし。
それは一瞬の、本当に一瞬の出来事だった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルファ・オメガ
がう、なんてこったい
いつも言ってるけどボクは天然もふもふ派だよ
でもきぐるみを捨て置くことは出来ないんだ!
強敵だからね
ボクもきぐるみ愉快な仲間の力を借りるしかない!
「がう、お願い。キミのもふもふをボクに貸してほしい」
☆お相手お任せ
了承をもらったら背中のチャックを開けて、ボクin
そして、満を持しての【すーぱー・もふもふぱわー!】
そう! もふもふぱわーとは! ボクのもふもふ力ではないのだ!
というわけで、もふもふぱわー×きぐるみぱわーで、すーぱーもふぐるみぱわーだよ!
「くらえー! すーぱー! もふもふ! きーっく!!」
足の先端に猫と(乗ったきぐるみの)にくきゅうマークが浮かび上がるよきっと!
●アルファと妖怪プリンもってけ
アルファはいつも言っていた。ボクは天然もふもふ派だと。
でも、きぐるみを捨て置くことは出来なかった。
アルファの周りには、いつも着ぐるみがいたから。
彼らはみんな仲間だから、これまでも、これからも。
そしてきっと、目の前にいる彼も……。
『黄色い身体は卵色、茶色の帽子はカラメルの色♪』
歌に合わせてフルフルと身体を揺らし、美味しそうにプリンを食べている。
その身体は滑らかなもふもふに包まれていて。
そう、彼は動物さんでも植物さんでもなく、プリンな着ぐるみ愉快な仲間だった。
ごくりと唾をのむアルファ。
いや、決してお腹が空いている訳ではない、ないのだ。
ついでにお腹もぐうと鳴ったけど、それはそれ、今は置いておくとしよう。
(「そう、ボクが今するべきことはひとつ」)
「がう、お願い。キミの力をボクに貸してほしい!」
『いいよー』
渡されるスプーン、そしてお皿に乗ったプリン。
アルファはお礼を言ってそれを受け取ると、口に運ぶ。
つるんと滑らかな感触と共に、優しい甘みが口の中に広がった。
とてもおいしいプリンだった。ごちそうさま。
「……」
『……もっと食べる? たくさんあるよ?』
「がう、お願い……」
いや、そうじゃない、そうじゃなかった。
「がう、お願い。キミのもふもふをボクに貸してほしい!」
『もふもふ?』
一呼吸置いて、首を傾げるプリンきぐるみ。
この国にきてまだ日の浅い彼にとって、自分がもふもふであるという事に、なかなか思い至らない。
まるまる一分ほど経って、漸く自分の事だと気づいたのか、黄色い身体を嬉しそうに揺らし、一つこくんと頷いた。
『いいよー』
●アルファinプリン
「黄色い身体は卵色、茶色い帽子はカラメル色♪」
アルファはプリンになっていた。そしてプリンを食べていた。
(「……いや、これは、サボっている訳じゃないからね? よりプリンくんの気持ちに近づくために……」)
言い訳はさておいて、戦う準備は万端だった。
『むむ、お前、美味しそうな物を食べているな? ちょっと寄越せ』
プリンに釣られ、やってくるバレエのおっちゃん。
『いいよー』
「……いいんだ!?」
束の間のプリンタイム。
アルファとプリンきぐるみ用、おっちゃんと白鳥きぐるみ用、合わせて4つのプリンが用意された。
爽やかな風が、広場を吹き抜けていった。
さあ、プリンぱわーも注入して、準備は万端だ。
心なしか艶やかな顔をして、対峙する4人。
『かかってこい、美味しかったプリンの礼に、俺の美麗なバレエキックをお見舞いしてやる』
「ボクたちも見せてあげるよ。ボクたちの力を!」
さあ、今こそこの力を使う時なのだ。
満を持しての、すーぱー・もふもふぱわー!(モフモフハセントウリョク)!
アルファを包むプリンきぐるみの周囲を、不思議なもふもふぱわーが覆っていく。
それは元来『もふもふは正義』と信じる心に比例した戦闘力増強と、高い飛翔能力をあたえるものだが……。
「そう! もふもふぱわーとは! ボクだけのもふもふ力ではないのだ!」
もふもふのアルファをつつむ、もふもふのプリンきぐるみ。そして、それを包むすーぱー・もふもふぱわー。その辿り着く先は。
「もふもふぱわー × きぐるみぱわーで、すーぱーもふぐるみぱわーだよ!」
『……く、この力強いもふもふ力、もふもふがゲシュタルト崩壊しそうだぜ』
もふもふの勢いに押されて、体勢を崩すバレエのおっちゃん。
『……だが、まだまだ!』
倒れそうな身体をギリギリで踏みとどまらせ、ピルエットのポーズに。
更に回転を加速して、大きくジャンプ!
超高速かつ大威力の、美麗なバレエキックがアルファとプリンを襲う。
「くらえー! すーぱー! もふもふ! きーっく!!」
プリンの足(足ってどこだ?)の先端に、猫とプリンのにくきゅうマークが浮かび上がった。
交差するキックとキック。
『……これが、すーぱーもふぐるみぱわー』
おっちゃんのつるんとした頭には、にくきゅうマークの跡がしっかりとついていた。
衝撃と共に身体を包んだ、あのもふっとした感触。
敗れてもなお満足そうな顔をして、吹っ飛んでいくバレエのおっちゃんだった。
大成功
🔵🔵🔵
雨咲・ケイ
【文月探偵倶楽部】
なんと、またしてもきぐるみを
悪用する輩が現れましたか!
ともかく一刻も早く救出しましょう。
ミニチュアシュナウザーのきぐるみに
協力を依頼します。
「あのような輩がこの国を支配したとあっては
色々な意味で大変な事になります。
どうか協力してください」
と礼。
着る前にちょっともふりましょう。
(ボストンテリアもいいのですが
ミニシュナもいいんですよね…)
【POW】で行動。
【グラップル】による接近戦を仕掛けます。
確かに無駄に華麗で見事な動きですね……。
ですが【学習力】で覚えました。
美麗なバレエキックに【カウンター】で
【光明流転】を放ち『もふもふ投げ』を
決めましょう。
アドリブ・共闘歓迎です。
●ミニチュアシュナウザーとボストンテリア、そして時々執事服
「しかし、またしてもきぐるみを悪用する輩が現れるとは。ともかく一刻も早く救出しましょう」
そう決意するケイの前に現れる影。
『お前さては……鬼狂魅(きぐるみ)闘法の使い手だな?』
びしっと指摘するその声の主は、ミニチュアシュナウザー、きぐるみ愉快な仲間の少年だった。
「何故、その名を……!」
突然の指摘に、ケイもまた警戒を強める。
自分で言うのもなんだが、鬼狂魅(きぐるみ)闘法は超マイナーな武術だ。一体どうやって、少年はそれを知り得たのか……? 思い当たるのは一つだけだった。
「……あ、一週間前の、あの戦場の?」
わくわくと目を輝かせ、こくこく頷くミニシュナ少年。
『なんかドーンで、バーンで、凄かったって!?』
……要約すると、あの時の戦闘を見たという友達の話が羨ましくて、一度会ってみたかったらしい。
ここで会えたのは偶然か、はたまた必然なのか。苦笑してしまうケイなのだった。
『折角だからさ、俺も使ってよ! どうせなら、新技作ろうぜ、新技!』
新技……確かにそれも悪くない。そして何よりも、ケイには彼の力が必要だった。
故に、ケイからもお願いする。
「あのような輩がこの国を支配したとあっては、色々な意味で大変な事になります。どうか協力してください」
……そして、お願いはもう一つ。
もふもふもふ。
『うひゃ、うひゃひゃひゃひゃ!! くすぐったい、くすぐったい!!』
着る前に、ちょっとだけもふらせて貰うケイ。
(「ボストンテリアもいいのですが、ミニシュナもいいんですよね…」)
いつもと違う長毛種の毛並は、とても柔らかく、ふかふかしていた。
●ケイinミニチュアシュナウザー
そして彼らは戦場に立つ。
『少年よ、いい目をしているな、それは求道者の目だ』
アラベスクの構えを取りながら、バレエのおっちゃんが言った。
白鳥のステップを踏みながらのキック、キック、キック。
「武述の道もバレエの道も、探求し極めるもの、と?」
ケイも勿論負けてはいない。
ミニチュアシュナウザーのもふもふの手で受け、足でいなし、尻尾で弾く。
『そうだ、俺もまた道を求める者、バレエの限界を超え、極悪非道を極めるのだ』
『……極悪非道って時点で、道踏み外してるんじゃ』
付き合わされている白鳥には迷惑過ぎる話である。
『悪役が悪事を働かなくてどうする。小さな悪事からコツコツと』
ふざけた格好をしていても、悪事に対して意外と真面目なおっちゃんであった。
実際、バレエのおっちゃんの動きは見事だった。
時に激しく時に繊細に、表現力豊かなダンス技術は、きぐるみの指の先まで滑らかで隙が無い。
ケイにとっても、学ぶべきところが沢山あった。
だが一方で、彼がきぐるみを着てからまだそれほど時間が経っていないのも事実。
まだきぐるみの特性を掴み切れてはいない模様、勝機はきっとそこにある!
バレエのおっちゃんが動いた。
グラン・ピルエットからの、ジャンプ、そして繰り出される、漢の美麗なバレエキック!
ケイも動いた。
ユーベルコード光明流転(コウミョウルテン)を発動、気の流れを素早く読む。
「見えましたよ……。次の一手が」
迫りくるキック。超高速のこの一撃は、完全に避け切る事は難しいだろう。
半歩下がり打撃の中心から身体をずらしつつ、きぐるみのもふもふとした腹で受け止める。
まともに喰らえばケイの腹は抉られていたに違いない。
だが、ケイにはきぐるみがあるのだ。
きぐるみの力を知り尽くしたケイの力を倍増させる、このミニチュアシュナウザーのきぐるみパワーが!
ケイは、おっちゃんの放った漢の美麗なバレエキックを受けきった。
目の前には、振り切ったまま体勢の戻っていないおっちゃんの足。
ケイはもふもふの腕でその足を掴むと、ぐるりと廻し投げ飛ばす!
宙を飛んだバレエのおっちゃんは、綺麗な放物線を描き、やがて地面へと落下した。
『……決まったぁ、もふもふ投げ!!』
間近で見る戦いに、ミニチュアシュナウザーの少年は大はしゃぎだ。
『ぐぅ……見事な投げだった。気に入ったぞ少年』
地面からゆっくりと身を起こすバレエのおっちゃん。
苦し気に息を荒げながらも、その表情はどこか晴れやかだ。
『お前にこれをやろう。これは道を求める者にこそ相応しい』
おっちゃんが着ぐるみの懐から取り出したのは、白鳥のチュチュと対を成す、黒鳥のチュチュ。
「お断りします」
即答でお断りするケイだった。
大成功
🔵🔵🔵
レテイシャ・マグナカルタ
アドリブ連携歓迎
●きぐるみ
他の人と被ってなければ敵に着られた白鳥の彼女をそうとは知らずに
被っていれば別の白鳥
「……ってわけなんだ。頼む、そいつを助ける為にもアンタの力を借りてぇ!」
手前ぇ自身で大事な国や人を傷つけさせられるなんて許せない助けたいって気持ちを込めて説得するぜ
●戦い
あっちは足技使いみてぇだな、へ、ならどっちが上手く舞えるか勝負だぜ!
オレも翼はあるからな、空を飛ぶ感覚には慣れてる
空中から強襲して体当たり押し倒して殴りつけ
敵が起き上がって飛ばされても直ぐに復帰
真っすぐに突撃拳で真っ向勝負だ!
●メタ
彼の姿を彼女が笑わずむしろ心配したり
戦い中に密着したりの結果
その後仲が深まってたら嬉しい
●レテイシャと黒鳥の少女
広場の方から戦闘音が聞こえてくる。
状況を確認する為、レテイシャは岩陰から広場の様子を窺った。
バレエのおっちゃんは、先程まで広場の石舞台でダンスの練習に勤しんでいたが、いよいよ本格的に仲間との交戦が始まった様だ。
(「急いだ方が良さそうだな」)
そう判断し立ち上がろうとしたレテイシャの視線が、一人の着ぐるみを捉える。
先程までのレテイシャと同じように、岩陰から戦闘の様子を窺っていた。
(「……黒鳥?」)
気づかわし気な様子が気になって、声をかける。
「どうしたんだいそんなところで」
『……!?』
黒い翼に赤い嘴、それは黒鳥の少女だった。
驚いたのか、一瞬身を竦ませるも、その場を動こうとはしない。
その視線の先には、バレエのおっちゃん……の着ている白鳥の着ぐるみがいた。
「アイツの事が心配なのかい?」
コクリと頷く黒鳥の少女。
「まあ、とりあえずはさ、着ぐるみとして使われてる限り、ダメージは全部あのおっちゃんの方に入る。アイツが直接傷つくことはないんだろうけど……」
……それでも。
「それでも、手前ぇ自身で大事な国や人を傷つけさせられるなんて、辛いよな、きっと」
『……』
振り返り、今度はレテイシャの事をじっと見る黒鳥の少女。
「オレはアイツを助けたい。だって、こんなの許せねぇし!」
そう言って、レテイシャはふわりと笑った。
「……ってわけなんだ。頼む、アイツを助ける為にもアンタの力を借りてぇ!」
猟兵と、きぐるみ愉快な仲間の力が合わされば、あのおっちゃんとも十分に戦えるのだ。
レテイシャは説得を重ねた、黒鳥の目を真っ直ぐに見て。
『私で、私で力になれるなら』
そう答えた少女の瞳には、大切な人を助けたい、そんな強い決意が籠められていた。
●レテイシャin黒鳥
広場の中心、ボロボロに崩れた石舞台の上に、彼は、彼らは居た。
『ちっ、また新手が来やがったか』
『あれはまさか……黒鳥さん!?』
『白鳥さん!』
「白鳥、助けに来たぞ!」
白鳥とバレエのおっちゃんの前に現れたのは、黒鳥のきぐるみを着たレテイシャだった。
『む? 白鳥よ、お前の知り合いか?』
『……いや、その』
『ははーん、さてはさっき言ってた彼女だな? ん?』
『!?』
『ならばお前の為に、俺もひと肌脱いでやろう。この晴れ姿を見せつけてやろうじゃないか!』
『ヤメテ! 恥ずかしいからまじヤメテ!』
『なあに心配するな。この衣装と華麗なダンスを見れば彼女だってイチコロだ。そしてこの黒鳥の衣装を……』
『マッテ!! 彼女には、彼女にだけは!!』
白鳥の悲痛な叫びを聞いているのかいないのか、バレエのおっちゃんは不敵な笑みを浮かべながら、レヴェランスのポーズでお辞儀した。
『やあやあお嬢さん方、きぐるみバレエの舞台へようこそ』
「手前ぇがバレエのおっちゃんだな、全くふざけた格好しやがって」
『どいつもこいつも、この芸術性が理解できないとは残念な。だが安心しろ、お前達の分もある』
バレエのおっちゃんが取り出したのは、白鳥のチュチュと対を成す、黒鳥のチュチュだった。
「いや、いらねーしっ!」
『ならば力づくで着せるのみ!』
「は! 上等だ。ならどっちが上手く舞えるか勝負だぜ!」
優雅に腕を持ち上げて、片足を後ろに振り上げて、静かにポーズを決めるバレエのおっちゃん。
レテイシャもまた、きぐるみの黒い翼を大きく広げた。
「オレも翼はあるからな、空を飛ぶ感覚には慣れている。あっちは足技使いみてぇだが、負ける気はねぇよ」
『レテイシャさん、お気をつけて』
「おうよ、任せとけ!」
先に動いたのはレテイシャだった。
大空へはばたく黒鳥、狙うは空中からの強襲だ。
(「小細工は要らない、真っ向勝負!」)
空高く翔けのぼり、一気に急降下。加速するスピードそのままに、拳を固め、白鳥へと突撃する。
『いい度胸だ、だが甘い!』
きぐるみの白き翼を広げ、盾として受け止めるバレエのおっちゃん。
正面からぶつかり合う白鳥と黒鳥、凄まじい衝撃が両者を襲い、吹き飛ばした。
『ぐ、まだまだ!!』
レテイシャは直ぐに起き上がり、再び突撃する。
おっちゃんもまた起き上がる。
しかしおっちゃんには切り札が残っていた。繰り出すのは、漢の美麗なバレエキック!
『ヤメロォオオオオオオオ!!』
『……な、なんだと!?』
それは白鳥の叫びだった。
黒鳥を傷付けたくない、その強き想いが、制御できぬ筈のきぐるみの動きを抑え込む。
ステップの乱れは一瞬だった、だがそれで十分だ。
「もらったぁ!!」
レティシャの、黒鳥の拳が、バレエのおっちゃんの顎を正確に捉えた。
●きぐるみーな、バレリーナ
「みなさん今です、今なら!」
石舞台を雷の盾で覆い、フクロウの翼を広げてミアが叫ぶ。
「待っていたわ、この時を!」
ハムスター先生のきぐるみと共に、リタもまた躍り出る。
「そうだね、フィナーレと行こうじゃないか」
空から舞い降りるのは、赤い海星を着たガーネット。
「さあてクランプス、いよいよ出番だぜ」
黒兎のラフィの隣には、鉤爪と鞭を構えた悪魔の姿。
「白兎さん、ボク達も行きましょう、仕上げなのですよ」
白兎の真琴の手に召喚される、色とりどりの塗料弾。
「杏ちゃん、いっくよー!」
「むんっ、がんばる」
まつミンゴは、あんゴムシをえいやーっと投げ。
「ボクの、プリンの、みんなのもふもふをここに!!」
アルファによって増幅されていくもふもふパワー。
「進むべき道は、この先に!」
ケイとミニチュアシュナウザー、番犬達が戦場を駆け。
「そうさ俺だけじゃねぇ、皆の力で、今助けてやるぜ、はくちょおぉおおおおお!!」
猟兵達のきぐるみを、アルファのもふもふパワーが包んだ。
ラフィの声を受け、クランプスがバレエのおっちゃんの背中に鞭を打つ。
リタのハンマーが弾き飛ばし、ミアの雷の盾が受け止めた。
真琴の塗料弾がおっちゃんの右足を地面に捕らえ、杏の護身刀が左足を刺し、祭莉の拳が腕を、ケイの拳が腹を、ガーネットの蹴りが胸を抉った。
『ぐ、ここまでか……』
ここまで倒されても吹き飛ばされても、しぶとく立ち上がってきたバレエのおっちゃんも、遂に限界を迎え、膝を付く。
その魂を、待ってましたと喰らうクランプス。……げふ。
倒れ込む白鳥のきぐるみを、レテイシャと黒鳥が受け止めた。
『迎えに来たよ、白鳥さん』
『全く無茶して……ありがとう』
こうしてきぐるみの国に、再び平和が訪れたのだった。
大成功
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