4
狐狸庵・新装開店

#サムライエンパイア

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サムライエンパイア


0




「うどんとそば、あなたはどちらが好きですか?」
 青白い肌に亜麻色の髪を携えた、やせっぽちのグリモア猟兵 ジョルジュ・ドヌール(咎人が来たりて咎を討つ・f05225)が貴方たちにそう告げる。

 ここは総ての可能性や因果が集まる場所「グリモアベース」。
 そんな世界の一角に設えられた和風の小部屋。その中央に設えられた炬燵で冷え切った身体を暖めながら、ちゅるん──とうどんを啜って彼は言う。

「どちらも美味しい麺類ですが、最近サムライエンパイアは逢佐香(あふさか)の国で急速に夜泣きそばが流行しているようです」
 ──その裏には、どうやらオブリビオンがいるらしい、と言葉を切ってから出汁に浮かべたお揚げをうどんと共にもうひと手繰り。お汁をたっぷりと含んだ油揚げにかじりつけば、丁寧に取った合わせ出汁の香りが口の中いっぱいに漂う。

「人の好みはそうそう一日や二日で変わるものじゃありません。もともと蕎麦を食べる文化があまりない逢佐香の地で、突然にうどん屋を駆逐する勢いで蕎麦が流行るのには必ずや理由があります」
 グリモア猟兵の視た予知の限りでは、その陰にはオブリビオン──それも、人を化かして喜ぶ類の化生の者がいるらしい。
 あなた達は急ぎ現地へ向かい、実際に夜泣き蕎麦屋の様子を窺って妖怪変化が働く悪戯の証拠を掴む必要がある……。オブリビオンは狡猾なため、なかなか最初は尻尾を出さないだろう。根気よく、地道に調査を重ねて真実へたどり着いて欲しい。
 そう一息に言い切ると、ジョルジュは空になった器を横へ押しやって立ち上がる。

「そうそう、疑惑の蕎麦屋ですが味は確かなものらしいですよ」
 思い出したように告げると、そのまま彼はサムライエンパイアへのゲートを開く。ゲート越しに、遠く五点鍾が響いた。


かもねぎ
 こんにちは、かもねぎと申します。私は蕎麦が好きです。かも南蛮、美味しいですよね。
 まだまだ寒い季節ですので温かいお蕎麦・おうどんで温まりましょう。

 ちょっと重めの話が続いたので、軽めのシナリオとなっています。オブリビオンの悪行は困ったものですが、UDCアースやダークセイヴァーほどのシリアスにはならない予定です。

 尚、本シナリオで使用されている地名等その他の固有名詞は実在の物と一切関係がありません。
31




第1章 冒険 『町外れの蕎麦屋』

POW   :    ガラの悪い輩に拳で聞いてみる

SPD   :    攫われそうな旅人の後をつけて様子を見る

WIZ   :    蕎麦屋にアルバイトとして潜入

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 その蕎麦屋──『狐狸庵』は、逢佐香の国、川内(かわち)の地にあった。都へ抜ける街道沿いの一里塚の傍、背後には黒々と広がる森が借景となっている……。色鮮やかに染め抜かれた藍染の暖簾には白字で勢いよく書かれた『狐狸庵』の屋号が躍る。

「そば~~打ち立ての香り高い蕎麦はいらんかね~?」
 店の前には、看板娘だろうか。前掛けに手を突っ込んで暖を取りながら、年の頃10代後半に見える女性が通りを行く旅人らに声を掛ける。

 見目麗しい少女に目を奪われてか、何人かの男性が連れだって『狐狸庵』へ吸い込まれていく。その背を押すようにしながら、少女は声を張って店内に呼びかける。

「は~い!お客様、ご案内♬」

 その声は、離れたところから様子を窺がう猟兵たちにもよく届いた。
逢坂・理彦
うどんも蕎麦もお揚げさんが入ってれば俺はそれで満足しちゃったりするんだけど。趣向が急に同じものになるのはちょっと不思議だよね。一応その辺のブームなのかとも、とも思うけど…美人な女の子が関わってると途端に怪しくなるっていうか…名前も狐狸庵だしねぇ。お仲間(妖狐)の仕業かもだよねぇ。
とりあえず引っかかりそうなお兄さんの後ろをついて歩いてみようか。
【聞き耳】を使って話をばっちり聞かせてもうよ。


藤野・いろは
うどんと蕎麦ですか、どちらかといえば蕎麦のほうが好みですね
全うな方法で流行るのであれば良いかと思いますが、グリモア猟兵の方が察知したということは事件の予感しかしませんね

SPDで攫われそうな旅人の後をつけて様子を見て回りましょうか
【忍び足】でこっそりと足取りをつけていけばなにかわかる筈です

……それにしても『狐狸庵』とは随分と胡散臭い名前です
狐や狸のオブリビオンも非常に多い、十分に警戒して調査をしていきましょう
改変アドリブ絡み歓迎


マオ・ライコウ
もともと蕎麦が一般的じゃない地域でいきなり美味しい蕎麦屋がやってきたって話なら、確かに一時的に流行りはするとは思うけれども……。

……細かいこと考えるより、とりあえずは実際にアルバイトとして潜入してみましょ。
ユーベルコードを使った戦闘だの何だのはひとまず後回し。
まずはこの蕎麦屋のカラクリを暴く方が先決よ。

人を化かして喜ぶって言うくらいなんだから、とりあえず注目するべきは食材かしら。実際に出す料理にどんな物が入ってるのか、しっかり見極めさせていただくわ。
あと、もちろん店員──特に、オーナー?店長?まあそういう立場の人には注目しておかないとね。
最も、そう簡単に尻尾を出してはくれないんでしょうけどね。


摩訶鉢特摩・蓮華
お蕎麦良いよね!うどんも美味しいけど、蓮華はやっぱりお蕎麦のほうが好き♪でも無理やり流行らせるのは良くないって思うな。
もしそうなら、ちょっとお灸を据えてあげなきゃね!

急に流行りだしたっていうのが怪しいよね。かなり強引な手段を使ってるのかな?柄の悪い人たちを雇ってうどん屋さんに嫌がらせをしたりとか?わかんないけど…
とりあえず狐狸庵に出入りしてるチンピラっぽい人を締め上げて、何か悪い事をしてないか聞いてみよう。
「ねぇ、お兄さ~ん。蓮華とイイコトしない?」
うまく誘き寄せられたら締め上げて、狐狸庵に関することを聞いてみよう。傷口から炎を吹き出して脅しをかけるのもいいかもね♪

狐狸庵のそば食べてみたい


加賀宮・識
食べ物、それも大好きな蕎麦を悪事に使うんじゃない。全く…。

【WIZ】

とりあえず、潜入して様子をみてみよう。詳しい内情を知るには内側からの情報も必要だ。

共に捜査している仲間達がいるなら潜入することを告げ邪魔にならないように。

ここはぐっと我慢とプライドを捨て暖簾をくぐる。

「すみませーん、蕎麦が大好きなので是非ここでアルバイトさせて下さいっ」

いつもとは正反対の可愛らしい感じで。
バレないように、怪しまれないように。

でも、ぶちギレそうだ…。


城石・恵助
【POW】
蕎麦がうどんを駆逐する勢いで…それは確かに変だな
ああ、僕はうどん派だ

これは蕎麦自体に何か秘密があるのかもしれない
やはり実際食べてみるべきじゃないかな
というわけで客として店に入ってお蕎麦を注文しよう
決して僕が食べたいだけとかそういうのではないよ

蕎麦が来たら見た目と香りを堪能してからいただきます
!?
なるほどこれは…一杯だけだとちょっとよくわからないな
【大食い】でもっとよく食べてみよう

合間に店内の様子を観察したり、他のお客さんと会話もしてみる
あの娘美人ですねとか、このお店繁盛してるみたいですねとか
店の噂を引き出す方向に持っていきたいな

食べ過ぎもよくないしね
10杯くらいでごちそうさまをしよう



●蕎麦と坊主は田舎がよい
 都から延びる東海道。その街道沿いの塚の傍と言えど、確かに『狐狸庵』の賑わいは他の店……団子に汁粉、竹皮で包んだ握り飯を売る旅籠と比べても目立っていた。
 旅人だけではなく、周囲の村落の住民と思しき若い衆らもまた、吸い込まれるように『狐狸庵』へと入っていく。それらの人だかりがまた人目を惹いて、道行く旅人たちも店の暖簾を潜る。

「うーん……もともとお蕎麦が一般的じゃない地域で、おいしい蕎麦屋が出来たって話ならみんなが飛びつくのも分からない話ではないんだけれど……?」
「まっとうな商いで流行るのなら良いのですが、グリモア猟兵の予知となれば──やはりこれはオブリビオン絡みの事件なのでしょうね」
 件の蕎麦屋──『狐狸庵』を遠巻きに見ながら、マオ・ライコウ(お人好しの雷撃猫・f02889)と藤野・いろは(天舞万紅・f01372)は顔を突き合わせて相談を重ねていた。あれこれと想像はたくましくなれど、イマイチ決定的な証拠がない。
 それもこれも、具体的に「なんで突然に『狐狸庵』が流行り始めたのか」がまだ分からないからだ。うーん?と首をひねってマオの猫耳がピクピクと動く。

「詳しい内情を知るには、やはり内側から物事を見る必要があるだろう」
 加賀宮・識(焔術師・f10999)は内心の怒りに重石を付けて沈めると、極めて冷静に意見を述べた。おいしい食事、それも蕎麦をこよなく愛する識にとって、悪事のダシに蕎麦が使われるのは到底許すことが出来ない所業だった。
「だから、私は『狐狸庵』に潜入調査する」
 我慢とプライドを笑顔の裏に押しとどめて、彼女は努めて明るい声で周囲の猟兵たちに宣言した。

「あ、それなら蓮華はお客さんの役をするよ!お店に出入りしてるガラの悪い人とか、そんなお兄さんがいたら捕まえて、何か悪い事してないか聞いてみるね♪」
 摩訶鉢特摩・蓮華(紅蓮眼・f09007)はどこか楽し気な様子で識の言葉を引き継いで、自身の考えを付け足す。その言葉には、城石・恵助(口裂けグラトニー・f13038)も「ああ、僕もそうしよう」と同調する。
「本当はうどん派なんだけど──」と前置きしつつ、恵助は熱のこもった口調で語る。
「いや、やはり人気が出るからには蕎麦自体もきっとおいしいに違いない。何か秘密があるのかも……」
 そのためには、実際に食べてみるのが一番だと主張する恵助。
「そうだそうだ!食べてみよう~!」
 味方を得て蓮華も声を一層弾ませる。

 ──この二人、仕事にかこつけて蕎麦を食べたいだけなのでは?
 すこし、そんな白い視線が彼らに突き刺さった。

「あはは、まぁでも分担は大事だよね」
 少し弛緩した空気を適度に引き締めながら、逢坂・理彦(妖狐の妖剣士・f01492)はそれぞれの方針をまとめていく。おまけとばかりに「うどんも蕎麦もお揚げさんが入ってれば、俺はそれで……」と身もふたもない事を言いながらも、自身は店の外に潜んで様子を窺うことを提案した。

 調査の方針がまとまったところで、猟兵たちはそれぞれの役目を果たすために散っていく。

●蕎麦蒔き苺
「私、お蕎麦が大好きなんです。ぜひここでご奉公させてもらえませんかっ?」
「私も手伝ってあげるわ。このお店、これだけ流行ってるんだもの。人手は足りないんじゃないかしら?」
 識とマオは連れ立って店の勝手から中を覗いて呼びかける。にっこり営業スマイルを貼り付けた識に対して、マオはどことなく強がったような、ツンと澄ました表情で。

「おぉ~?お嬢ちゃんたち、何もんでぇ。ずいぶんとめんこい恰好だなぁ」
 二人の声に気が付いて、炊事場からは顔と前掛けを白い粉だらけにした男がぬっと顔をだす。どうやらこの店の主人のようだ。

 かくかくしかじかと事前に示し合わせた通りの口上を並べ立てると、見慣れぬ娘らの姿に少し訝し気な顔をしながらも主人は首を縦に振って二人を店員として雇う事に。
「よっしゃ、確かに最近の忙しさだと人手はいくらあっても足りねぇ。仕事の細かいことは……狸子(りこ)の奴に聞いてくんな!」
 そう言って後の話を狸子と言うらしい、先輩の店員に引き継ぐと店の主人は「あぁ忙しい」と零しつつ、そば打ち台へと向き直る。

「──あなたたち、新しい奉公人?」
 狸子と名乗った少女は、先だって店の前で呼び込みをしていた少女であった。

「お客さんが来たら席へ通して、注文を聞く。蕎麦が打ち上がったら、盆へ乗せてお客さんの席までお運びする。食事が終わったお客さんがいたら、お茶をお出ししてお代を頂いてね」
 飛び込みで店に立つことになったマオと識にまかせられた仕事はそれだけ。
 頑張ってね──と声を掛けて裏手へ狸子は戻りかけ、「そうそう、炊事場ではお鍋に火がかかってるけど、くれぐれもそれは触らないでね」と念を押す。二人が顔を見合わせてから頷くと、今度こそ狸子は目隠し代わりの暖簾の奥に引っ込んでいった。

●蕎麦の一むずり
 店に奉公人が増えたのと前後して。
 蓮華と恵助は客として『狐狸庵』の藍染暖簾をくぐっていた。

「このお店では何が人気なのかな?」
 そう言ってぐるりと店内を見渡すと、職人だろうか。腕まくりにねじり鉢巻きをした男が恵助に声を掛ける。
「なんでぇ、坊主。この店の噂を聞いてきたんじゃないのか」
 ──噂?と首を傾げた恵助と蓮華に、男は笑って噂の詳細を語って聞かせる。なんでも、この店の一番の売りは『たぬきそば』だとのこと。特製の甘く炊き上げた油揚げがは、薫り高くのど越しの良い蕎麦と相まって肉体労働を生業とする職人や農民、疲れた足を休めようと店に立ち寄った旅人に人気らしい。

「お蕎麦、いいよね!それじゃあ、蓮華もそれを頼んでみるよ」
 椅子に座って待つこと暫く。蓮華と恵助の前にはそれぞれ温かく湯気が立ち上る蕎麦が一杯ずつ運ばれてくる。丼を配膳してきたマオと識に軽く目線で合図すると、蓮華と恵助は「いただきます」と手を合わせてたぬきそばを食べ始める。

「なるほど、これは──!?」
 湯気と共にふわっと香る鰹出汁の香りに、ツユを一口飲めばキリっとした醤油と昆布の風味が口の中いっぱいに広がる。蕎麦を手繰ってすすれば打ち立ての蕎麦は芳しく口の中で踊る。蕎麦の上に乗せられた油揚げは、しっかりと湯通しされて油臭くなく、甘辛く江戸風に炊きあげられたツユをじっくりと含んでじんわりと滋味豊かに甘さが染みだしてくる。
「一杯だけだとちょっとよくわからないな──?」
 そんなことを良いながら、無我夢中で食べ進めていく恵助。気が付けば、またたく間に彼の横には10杯の丼が積み重なっていた。

「いい喰いっぷりだな、坊主!」
 先ほどの男が話しかけてくると、店内に居た他の客もやんやと恵助を誉めそやす。

 皆の注目が恵助へ移ったその隙に、手早く一杯だけたぬきそばを平らげた蓮華は、こっそりと店の片隅に居た素浪人風の男に耳打ちする。
「ねぇ、お兄さ~ん。蓮華とイイコトしない?」
 妙齢の女性としての風貌と、やや幼げに映る物言いのギャップに好からぬ想像を逞しくしたか。素浪人は平静を装いながらも鼻の下を伸ばして応えると、支払いを済ませて立ち上がる。
「ほら、こっち──こっち」
 店を出た蓮華に先導されるまま、素浪人は店の裏に広がる森へと付いていく。その背中を見とがめるものは誰もいなかった。

●蕎麦種三角 絵描きは五岳
「『狐狸庵』とは……名前からしてまた、ずいぶんと胡散臭いものですよね」
 森の木陰から店の様子を窺いつつ、いろはは傍らに腰かけた理彦に問いかける。
「うん、そうだね──俺のお仲間の仕業、かもだよねぇ」
 どこまで本気か分からない、そんな調子で──自慢の尻尾の手入れをしながら理彦は答える。
 しかし──だ。これなら俺たちも店内に入って蕎麦を頼んだ方が良かったかもしれないね。日の当たらない木立の寒さに身をぶるりと振るわせて、彼がそう付け加える。

「……しっ、静かに。蓮華さんが出てきましたよ」
 視線は『狐狸庵』の店先に向けたまま、押し殺した声でそっといろはが言う通り、確かに店からは一人の男を先導して蓮華が出てくるのが見えた。

「よし、じゃあ──行こうか」
 理彦もそれを見て立ち上がると、音もなく枯れ葉の敷き詰められた森の中を行く。

 ──気が付けば。甘い期待に内心で浮つきながら森を歩いていた素浪人は、蓮華にいろは、加えて理彦にすっかり囲まれていたのであった。

「……なんだ、お前さんら」
 仕組まれた、と悟って素浪人は腰に下げた刀に手を伸ばす。
「おっと、俺たちはちょっとばかりあんたと話がしたいだけなんだ」
 素浪人が抵抗する気配を感じて理彦は素早く間合いを詰めると、パン!と手で叩いて抜身の刀を叩き落す。

 どさり、と土の上に落ちた刀を拾って泥を払うと、「ごめんね~お兄さん。ダマしたみたいで」と、蓮華は顔の前で手を合わせて許しを請う。

「おとなしく答えてくれれば、僕たちもあなたに危害は与えない」
 剣の柄に手を軽く添えながら、いろはは殺気だけで男の動きを圧していく。男も剣の腕で渡世を凌いでいる者。眼前に立つ少女が、自身よりも遥かに格上であることを察しては観念したように息を吐いた。

「──元は、別の名前の冴えねぇ蕎麦屋だったんだヨ」
 諦めてどさりと腰を落とした素浪人は、やけばちな態度で問われるままに答える。彼の話によれば、潰れる寸前だった蕎麦屋に突然やってきたのは狸子と呼ばれる少女。住み込みで働く彼女が仕込む油揚げを使った『たぬきそば』は瞬く間に人気となり、いまの賑わいになったのだとか。
 その看板メニューを宣伝する意味で、屋号も『狐狸庵』へと様変わりしたようだ。

「単なるブームの可能性も考えられたけど、美人な女の子が関わってると途端に怪しくなるっていうか……」
「蓮華と期待してたようなこと、狸子さんはやってるのかな?」
「人を騙して誑かす──狐や狸のオブリビオンかもしれませんね」

 男を解放したその後で。三人は今後の方針を話し合うのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『楽市楽座』

POW   :    屋台を出してお客さんから情報を聞き出す。ついでに美味しい物を売る。

SPD   :    お店を回って情報を聞き出す。ついでに何か買う。

WIZ   :    ゴザを敷いてお店を出し、お客さんから情報を聞き出す。ついでに珍しい物を売る。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 『狐狸庵』の賑わいには狸子と名乗る少女の陰があった。また、看板メニューとなった『たぬきそば』は人々の舌を魅了してやまない絶品の味らしい。
 猟兵たちは、疑惑の少女を追い詰めるために更なる証拠を求め、『狐狸庵』が仕入れをしているという市へと向かった──
摩訶鉢特摩・蓮華
狸子さんが作った油揚げのおかげで人気が出たみたいなんだよね。
ということはその油揚げの作り方に秘密がある?材料、調味料…とにかく市でたくさんお店を回って色々な情報を聞いてみよう!

まずは狸子さんが仕入れをしてるお店を見つける為に虱潰しにお店を回るよ。
各店の品物を褒めながら買い物をしつつ世間話から狐狸庵のお蕎麦の話に持っていって、狸子さんが使ってるお店を聞き出そう。
聞けたら今度はそのお店へ行って、同じように話を振りつつお蕎麦好きもアピールして、狸子さんがどんな物を買ってるか聞いてみるよ。

あと普通なら見かけないような場所で狸子さんを見なかったかとかも聞けたらいいな。
特別な物を買ってるかもしれないしね!


逢坂・理彦
お揚げさん入りのお蕎麦があったならたべたかったなぁ…いやちゃんと依頼もやるよ〜楽市楽座でいろいろみてまわってそこで情報を集めてみるよ。あそこにある根付のお店とかおせんべい屋さんとか…お店の人には【誘惑】でお客さんの話は【聞き耳】でしっかり聞くよー。


向坂・要
たぬきそば、ってーとお揚げがあるやつとないやつって認識が別れますが今回はお揚げさんがある方なご様子で

そいつぁなにより、なんて思いつつ
美味いもんに罪はありやせんからねぇ

とはいえ、素直に楽しむ為にも、と

元々油揚げとかが好物な事もありそこらへん絡めつつ情報収集

流通経路やらなんやら含めて怪しいもんがねぇかも調べておきたいとこですねぃ

必要そうなら分体も放ちますが今回は必要ない、ですかね?


マオ・ライコウ
実際に店員として見てみて、怪しかったのはやっぱりあの狸子って人よね。
わざわざ鍋に触れないよう念押しして来たのも気になるわ。

さて、じゃあゴザ敷いて行商のふりをしつつ、情報収集といきましょうか。
売るのは……サムライエンパイアとは違う世界の物なら物珍しく見えるかしら。金貨とか、そんなに高価じゃない宝石を使ったアクセサリーなんか。

「逢佐香の国には初めて来たけど、ここでは蕎麦が流行ってるのね」みたいな感じでお客さんに切り出して、狸子が来る前後の店のことと、狸子の出自と、あとは件の蕎麦屋が仕入れをしてる店について訊いてみるわ。
仕入先がわかれば、蕎麦屋で使ってる食材もわかるはずだしね。


城石・恵助
僕は特に売れるものもないし、情報は足で稼ぐよ
食べ物を扱うお店を色々回ってみよう。狐狸庵の取引先もあるかもしれない
お店で買い食いをしながら、うまいうまいっていっぱい褒めて心象を上げて
怪しまれないように世間話の体で話を振ろうかな

この間狐狸庵で食べてきたんだけどね
看板娘の狸子ちゃん、美人だし気立てもいいし何より料理がうまい!
お近づきになりたいけど、仕事中は忙しそうだし
何かいい方法はないかなぁ?

使用【POW】 大食い・コミュ力
やっぱりたくさん店を回って美味しそうにいっぱい食べるのが大事だと思うんだ
たぬきそばは実に興味深い味であった
今度はどんな味に出会えるか、楽しみだなぁ
いや僕が食べたいだけなわけでは略




「うーん、お揚げさんいりのお蕎麦。俺も食べたかったなぁ」
 市を歩いて回りながら、名残惜し気に理彦は呟いた。隣を歩く恵助からその味の感想を聞くにつれ、食べ逃した『たぬきそば』が彼の心を捉えて離さない。
 ぜいたく品の味醂や砂糖を使って甘く味付けした出汁がしみ込んだ熱々の油揚げの味は如何ばかりのものか……気もそぞろに市をぶらぶらと歩きまわり、聞き込みを勧める理彦のしょんぼりと尾が垂れ下がった後ろ姿を見て、「──下手に話したのは悪いことをしたかな?」と恵助は内心で手を合わせる。


「やっぱり、怪しかったのはあの狸子って人よね」
「うんうん。蓮華もそう思うよ!」
 買い出しのお使いを頼まれて店を出たマオと蓮華は、店から離れ、周囲に人が居ないことを確認してお互いの意見を交換する。
「──最後にわざわざお揚げを炊いている鍋に触らないように念押ししてきたのも気になるし」
「だよね~お揚げさんに何か秘密があるんだと思うよ」

 ──だから、お稲荷さんをお客さんから貰ってきたんだぁ。
 そう事も無げに呟く蓮華の顔を、何か信じられないものでも見たかのように見上げるマオ。
「……は?いま、あなた何て言ったの??」
「うん、だからあのお店で出してるお稲荷さんをね。お客さんがお土産に買っていたのを見てそれを貰ってきたんだよ~」
 マオの問いかけに、ニコニコと微笑んで邪気無く言葉を返す蓮華。

「──あなた、見かけの割に抜け目ないのね」
 毒気を抜かれたようにマオはため息をひとつ吐く。何にしても、この稲荷寿しがあれば聞き込みも楽になるのではないか……そんなことを思いながら彼女らもまた市へと向かっていた。


「お前さんたち、猟兵……だね?」
 市を行く理彦と恵助に、横合いから呼びかける声がひとつ。銀糸のような髪と尾を揺らして話しかけたのは、向坂・要(黄昏刻・f08973)である。
「──確かにそうだけど、キミは、誰?」
 よもやサムライエンパイアの市で誰かに呼び止められると予想していなかったのか、戸惑いながら恵助は問いかける。
「ああ、こいつぁ失敬。俺は……向坂ってぇもんだ。ちょっと遅くなっちまったが、お前さんたちを手伝いに来たんで」
 美味いもんには罪がねぇが、それがオブリビオンの仕業とあっちゃぁ放っとく訳にもいくめぇよ──伝法な調子でそう嘯く要を見て、「お仲間さんかな。助かるよー」と理彦も軽い調子で応援に来た彼を歓迎する。
(……ま、細かく言うとどうもこっちの御仁はお狐さんのようだが。それをいちいち直すこともあるめぇ)
 新しい連れ立ちを得て、男三人は改めて楽市楽座にて聞き込みを始める。


「お客さん、この辺りの人?逢佐香の国には初めて来たけど──この辺りでは何が流行っているの?」
 市の中央を走る大路から一本入った小道の木戸表に、有り合わせのゴザを敷いてマオは行商の真似事をしていた。彼女が店先に並べているのは異世界から持ち込んだコインや宝石細工。市中では見慣れぬ意匠が施された舶来の品があるとのうわさは瞬く間に人々の間を巡り、マオの外見も相まって中々の人だかりとなった。
 客をあしらいながら彼女が物好きな客から話しを聞き出すと、『狐狸庵』については随分と多くの事が分かった。

「──なるほど、狸子さんは街の外から来た人なのね?」
 それにしては随分と馴染んでいるようだったけど──それは、やっぱり彼女の人気なのかしら。そんな相槌を打ちながら、マオは順調に情報を集めていく。
 狸子が現れた時点を境に、閑古鳥が年がら年中鳴いていた蕎麦屋は一転して人気店となったこと。『たぬきそば』を品書きへ加えることや、『狐狸庵』の屋号もまた彼女の発案らしいことなど店では聞きこめなかった情報が彼女の耳に入ってくる。

 ──結局、『たぬきそば』に欠かせない油揚げはどこで仕入れているのかしら。

 多くの疑問は解消されたが、最後にそれだけがマオの頭の中に気がかりとなって残った。


「それにしても、狸子さんの人気は随分なものだねぇ」
 恵助と別れ、理彦と要は二人で市に並ぶ店を冷やかしながら聞き込みを続けていた。
「確かにそれは俺も気に掛からぁね」
 江戸から離れた宿場町とはいえ、逢佐香・川内は小さくない宿場町である。そこの住人……そのほとんどが、どうやら彼女の事を知っているようであった。
 狸子の人となりや風聞をそれとなしに聞きつつ、『狐狸庵』のたぬきそば、その味の秘訣をなんとか聞き出せないかと二人は人々から噂を集めて回る。

「時に、理彦さん。少しばかり小腹が空きやしないかね」
「──そうだね。確かにずっと歩き詰めで疲れても来たよ。ちょうどあそこに茶屋がある……煎餅か団子でも食べて休むとしようか」
 八ツの鐘を聞いては道行く人通りもまばらになり、理彦と要もまた足を休めるために目についた茶屋へと足を向ける。

「──あれ、理彦さんと……そっちの人は?」
「蓮華ちゃん?こんな所にいたんだ」
「こちらのお嬢ちゃんも猟兵のお仲間で?」
 茶屋の軒先でお茶を啜る蓮華の姿を見つけ、彼らは三者三様に顏を見合わせる。

「ずいぶんと色んな人に聞いてみたけど、お揚げさんの味の秘訣が分からないんだよ~」
 そういって溢す蓮華の横には、包みにくるまれた『狐狸庵』謹製の油揚げで作った稲荷寿しが。
「……それ、一つ貰ってもいいかな?」
 思わぬところで油揚げを目にした理彦は、思わず任務とは関係なしに好奇心に負けてしまう。
「──うん、まだいくつか残ってるし一つだけならいいよ!」
 蓮華から差し出された稲荷寿しを手のひらで受け、半分に割って中を確認すると油揚げの内側には具沢山の五目御飯が詰められているようだった。きつね色に出汁が滲みた米の間からは、細長く切ったニンジンやかんぴょう、シイタケにレンコンなどが覗いている。
「では──ありがたく、いただきます」
 ひとしきり目で愉しんでから、理彦は稲荷寿しを口の中へ放り込む。

「うん──うん」
 人気の蕎麦にも使われている油揚げを使いまわしているだけあって、稲荷寿しもまた、ありふれた物とは比べ物にならないほどの美味しさであった。喜色満面に稲荷寿しの甘さや風味を楽しんでいた理彦であったが、口の中に何か違和感を感じて顔をしかめる。
「──?」
 ぺっと違和感の正体を吐き出してみれば、そこには獣のものと思しき毛の塊が。
「うへぇ、なんですかい。コレ」
「毛玉……かなぁ」
「気持ち悪いなぁ──ん、これ……狐の毛じゃないかな?」

 自身も見慣れた毛並みに似た毛の光沢を見て、理彦には何か閃くものがあったらしい。

「──もしかして、狸子さんの正体って……」
「「「キツネ?」」」
 三人の声が揃った。


「逢佐香はどこで何を食べても美味しいなぁ」
 恵助は一人、市に出ている屋台や食いもん屋を巡っていた。飲食店である『狐狸庵』の情報を手に入れるためには、やはり同業の店を虱潰しに当たるのがいいのではないか。そんな考えの下に、彼は食べ歩きをしていたのだ。
「いやぁ、この肉まんじゅうも肉汁たっぷりで美味しいねぇ。なになにこのお店は『天竺・一五五』っていうのか」
 饒舌に食べるもの全てを誉めそやしながら、笑みと共に食事をパクつく恵助。その姿に、自然と店の店員や周囲の客もこの珍しい大食漢の客へ注目する。

「そうそう、そう言えば……この間『狐狸庵』で人気の『たぬきそば』を食べて来たんだけどね。噂に違わぬいいお味だったねぇ。それに、看板娘の狸子ちゃん、美人だし気立てもいいし……なんとかお近づきになる方法はないかなぁ?」
 誰に向けてともなく、ふとそんな事を呟いた恵助に、助平な笑みを浮かべながら耳打ちする男が一人。

「兄さんも結構好きなタチなんですかぃ?ここだけの話、なんですがね……」
 そう言って男が声を潜めて言うには、『狐狸庵』は夜中に常連や事情を知るごく一部の客に向けてひっそりと営業をしているらしい。そこでは、通常の店主ではなく狸子自身が蕎麦を打ち、全てを一から作る──そんなサービスをしているとの噂があるようだ。
「あくまで噂、ですがね」
 興味があるなら行ってみたらいいんじゃないですかねぇ──ヒヒ、と空気を漏らすように笑うと、男はそのまま何処ともなく去っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『妖狐』明日香』

POW   :    妖狐の炎
レベル×1個の【妖狐の力 】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
SPD   :    野生の開放
【真の妖狐の力 】に覚醒して【九尾の狐】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    スコールシザーズ
自身が装備する【鋏 】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠暁・碧です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 夜も更けてさやさやと木々が伸ばした葉を揺らしている。街道をゆく影はなく、時たま警邏の役人が差し出す行灯がゆらゆらと建屋の陰を照らしだす。そんな夜更けに、暖簾を下げた『狐狸庵』からうっすらと明かりが漏れている。寄って耳をそばだててみれば、扉の向こうからはかすかに人の声らしきものが聞こえてくる。

 ──ガラリ。

 意を決して扉を開けた猟兵らの姿を見て、奥の座敷で町民らと差し向かいに座っていた影──狸子が身体をひねってあなた達を見返す。

「ん……新しいお客さん──じゃ、なさそう。かな?」

「もうバレちゃった?せっかくイイところまで言ったのに。私の邪魔をしないで欲しいなぁ──」
 そう言って真の姿──『『妖狐』明日香』としての妖力を解き放った彼女は、手にした篭から赤い雫に濡れたハサミを手に立ち上がる。

「私のこと好きになってくれるなら、それでいいんだけどなぁ──?」
向坂・要
美味いもの食べりゃ確かに幸せではありますし、妖狐さんにとってみりゃその幸せがあちらさんにとっても若さ漲るエネルギーになる、て寸法ですかねぇこりゃ

美味いもん広めよう、てな関心ですがやり口がちっと不粋かと


鬼さんこちら、とばかりに第六感も活用して相手の攻撃を回避。
お返しとばかりにルーン起動
「ハガル」を刻み不可避の変化する雹の属性攻撃

仲間との連携を意識し常に全体の様子を俯瞰で見るよう心がけ何かあればすぐに声掛け

終わったらあったかいたぬきうどんでも食べたいもんですね

お揚げさんに期待して

もう毛玉は入れないでくだせぇよ?
なんて楽しげに


逢坂・理彦
お店の名前からもしかしたらお仲間かな〜とか思ってたけど案の定かぁ…あんまり妖狐の評判を落とさないで欲しいんだけどねぇ。せっかくの美味しいお揚げさんに毛なんて入れたら台無しだよ…何が目的かはとりあえず置いておいてお仕置き、だね。

鋏を沢山作るのならそれより沢山の花弁で埋め尽くそうか。【墨染桜・桜吹雪】だ…あぁ綺麗だねぇ。
隙があれば狐の扇で【武器落とし】を狙うよ。

反省、してくれた?


マオ・ライコウ
やっぱり狸子……もとい、妖狐の明日香っていうのがオブリビオンだったってワケね。
鍋には触れさせなかったのも、食材になんかの仕掛けがあったから、ってことか。

……にしても、なんで狐なのに狸子って名乗って「たぬき」そば作ってたのかしら。

とにかく、オブリビオンなら手加減はいらないわよね。

戦闘はなるべくなら夜の、人目を避けた場所にしたいけど、ま、そこは皆に合わせるわ。

あのいっぱい出してくる鋏を私のウィザード・ミサイルで撃ち落とす。
出してくる鋏より私の魔法の矢の方が多いなら明日香も狙っていくけど、基本的には味方の被害を抑えるために鋏優先かしら。
私の魔法とアンタの念力、どっちが上手か勝負してやろうじゃないの。


摩訶鉢特摩・蓮華
まさか狸子さんの正体がキツネ―妖狐だったなんてね。てっきりタヌキかと…でもたしかに妖狐は聞くけど、妖狸とか聞いたことないもんね。
それにしても夜中に営業なんて怪しい以外のなにものでもないよ。
一体何をやって…はっ!まさか…でもそんな…!ダメ、ダメだよ狸子さん!もっと自分を大事にして!(錯乱)

仲間と連携して他方向から攻撃を仕掛けるよ!
敵の攻撃の出鼻を挫いたり、攻撃後の隙をつけたらベストだね。
相手の妖狐の炎に対しては、こちらも炎で対抗するよ。
「炎勝負なら負けないよ!必殺、ブレイズフレイム!!」

狸子さんがオブリビオンじゃなかったら、とっても良い行きつけのお店になったのになぁ…ホントに残念(涙


城石・恵助
蕎麦打ちサービスと聞いてちょっと期待してたんだけど
これは戦闘の雰囲気だよね?
残念だなぁ

何故狐が狸を名乗り、たぬきそばを流行らせようとしたのか
色々疑問はあるけど、僕から訊きたい事は一つ
あの美味しい油揚げどうやって作るの?

敵の攻撃は回避したいけど、無理なら
〈オーラ防御〉を纏った『守蝙蝠』で〈盾受け〉して払いのける

そういえば稲荷寿しに狐の毛が入ってたとか
あれが隠し味なのかな。お前自身がおいしいの?
ちょっと味見させておくれよ

傷を負うのは〈覚悟〉の上で接敵〈+激痛耐性〉
敵を掴んで【喰らいつく】〈怪力・大食い・生命力吸収〉

オブリビオンに容赦する気はないけれど
キミのお蕎麦はとっても美味しかったよ
ごちそうさま



「──狸子……さん?」
 ゆらりと腰を上げたオブリビオンの姿を見て、思わず蓮華は敵と思いつつも──つい、呼びかける。人気も少なくなった街道はずれの個室の蕎麦屋。そこにお客さんを連れ込んで──!?などと想像を逞しくして顔を赤らめたりもしていた彼女だが、やはり見知った相手が敵となれば内心穏やかではない。短い時間の潜入目的ではあったが、先輩店員として世話になった相手が事件の黒幕だったと知り、その心境はいかばかりであったか。

 その横で、「やっぱりね──」とマオは頷いていた。彼女はもともと狸子がオブリビオンである可能性について怪しんでいた。自分自身の推量が的を射ていたと確信し、マオは少し満足げに……だが、一つの新たな疑問が頭に浮かんでしまう。
「オブリビオンなのはわかってたけど、なんで『たぬき』そばなんて作ってたのかしら」
 ──偽名にしても「狸子」なんてわざわざ名乗っちゃってさ……。
 フン、と鼻を鳴らすマオ。キマイラであることに誇りと自信をもっている彼女にとって、わざわざ素性を偽る行為は理解が出来ないものだった。

「そうだよねぇ。せっかく化けるにしても狸の振りすること無いのに」
 特別な蕎麦打ちサービスがあると聞いて楽しみにしてきた恵助は不満顔で口を尖らせる。素性の如何に関わらず、『たぬきそば』は間違いなく逸品と呼んで差し支えないほどの美味しさであった。猟兵であると同時にフードファイターでもある彼は、その味の秘訣を見逃す事も出来なかった。
「あの油揚げは美味しかったなぁ。アレ、どうやって作ってるの?」

 小腹が減ったし、何か食べたいなぁ──と思案顔の恵助をみて、要もまた明日香へ問いかける。
「美味いものを食べりゃ、確かに幸せな気分になりますしねぇ」
 それだけなら誰も不幸になりゃせんし、俺としても万々歳なんですが……と言葉を濁す。
「でも、美味いもん広めるにしてもちぃっとばかりやり方が無粋やしませんかね」
 やっぱりオブリビオンとは分かりあえないもんですかねぇ──と、侭ならなさを嘆いて要は両手を広げて大げさに天を仰ぐ。

「うるさいわねっ。私が私のやりたい事をやったって、アンタたちには何の迷惑も掛かってないでしょ?みんなは美味しいもの食べられて、カワイイ私と仲良くできて満足。私は私でみんなに大切にされて、言う事なしじゃないのっ!」
 などと、心の中の浅ましい欲望のままに明日香は猟兵たちへ目を剥いて声を上げる。
「──記憶の海に溺れているのはもう飽きたの。私はもっと……みんなにチヤホヤされたいのよ~~っ!」
 四方八方から責められて堪忍袋の緒が切れたのか、狐のオブリビオンはおしゃまな町娘の皮を脱ぎ捨てる。オブリビオンとしての本性を露にした彼女の手元から、しゃりん……と鋏が金属質な冷たい音を立てた。

「いやぁ、お店の名前を見た時からなんとなくお仲間かな~って気はしてたんだけどね」
 案の定かぁ。おじさん、悲しいよ。そんなことを言いながら理彦は諭すように明日香へ近寄っていく。
「あんまり、妖狐の評判を落とさないで欲しいんだけどな」
 お揚げさん、せっかく美味しかったのに毛なんて入れたら台無しだよ──。
「悪い子には大人がお仕置き、しないとね」
 そう言ってにっこりと笑う理彦。

「お仕置き!?そんなの、嫌よ!キツネの仲間なら分かってくれるかと思ったのに!」
 キィッと八重歯をむき出して怒りをあらわにすると、オブリビオンは右手の鋏をぽんと放り投げて二言、三言の真言を唱える。すると、彼女を守り猟兵たちから隔てるように無数のハサミがその切っ先を敵へと向けて宙に浮く。
「万が一失敗したって、悪い噂は全部タヌキのアホに行くように仕向けたんだし……」
 だから、私はなにも悪くない。そんな独善的な理屈をこねて明日香は理彦へハサミを襲い掛からせる。

「そいつはいけねぇ。鬼さん、こちら──」
 手の鳴る方へ……と要が叩く手に明日香が意識を向けると、キキンッと降り注いだ雹が氷の暴風雨となって座敷の畳に大きな穴を空ける。
「あんたもっ!狐の妖じゃないの!?なんでこんな人間どもの味方なんてするのよ!」
 すんでのところで直撃こそ避けたものの、炉端の灰をひっくり返したのか──せっかくの艶やかな衣装を白い粉塗れにして明日香は吠える。
「いやぁ、それが……俺は狐じゃぁ無いんでさ」
 そう言って容赦なく抜き打ちした熱線銃から焼き付く熱線を撃ち出すと、こりゃたまらんとばかりに這う這うの体でオブリビオンは勝手裏から逃げ出して森の方へ。

「人目が無い方に行ってくれるの?それなら苦労はないわね」
 ──でも、森の中に逃げ込まれると厄介だから、それは邪魔をしないとね。そんな呟きと共に放たれたマオのウィザード・ミサイルは白煙を上げながら唸りを上げて前方を走りゆく明日香の行く手を遮る。地面に、鋏に、そしてオブリビオンに。容赦のない魔力の塊を具現化した光の矢が尾を引いて突き刺さる。
(それに……彼女の仕込んだ油揚げには私も興味があるし、ね)
 あのまま店内で戦っていたら、きっと建屋も無事では済まないだろう。それは困っている人を見過ごせないマオの性分としても避けたいところであった。

「もぅ──アンタたち、みんなまとめて丸焼きにしてやるんだから!」
 焦げて炭がちになった籐の籠から、これは真っ赤に色づいた林檎を取り出して妖狐は敵意をむき出しにする。命の危険を感じてか、いつの間にか真の姿へと転じた明日香。それは先ほどまでの可愛らしい狐娘の姿からは一転し、爛々と赤く輝く瞳に九尾のふさふさとした見事な尾。そして……敵を噛み千切る鋭い牙と爪をもった恐ろしい九尾狐であった。
「これで、燃え尽きてしまえ──!」
 コロコロと朱いリンゴが、篭から転がり出て。
 コロコロ。
 コロコロ──。
 数えきれないほどの林檎が、底なしかに思える篭から転がってくる。それはいつしか、転がるうちに輪郭がぼんやりとなって橙色した鬼火となって猟兵たちに襲い掛かる。

「炎勝負なら蓮華も負けないよ!」
 咄嗟に叫んで蓮華は真の姿を解放する。瞳の奥に宿る焔が全身を灼いたかと思うと、瞬く間に彼女の全身は青白く燃える炎に包まれる。
「必殺……ブレイズフレイム!」
 蓮華が腕を大きく振ると、炎の鞭と化した双腕から火の粉が飛び散り、火球が鬼火とぶつかり合って爆音とまばゆいばかりの閃光が夜の闇を白く昼日中のように映し出す。

 ──ドゴオオォォォン!

 大爆発の余波が収まった後には、炎も、鋏も失って丸腰となったオブリビオンの姿が。
 なおもガルルと歯を剥いて猟兵たちに立ち向かう『妖狐』明日香に、「もうそこまでにしときなよ」と理彦が再度、優しく諭す。
「桜だって喪に服すんだよ」
 そう、花々だって風流を解するんだ。だからこそ、明日香ちゃん、これ以上駄々を捏ねてはいけないよ……。
「あぁ、綺麗だねぇ」としみじみ呟いた理彦の吐いた紫煙が、手にした薙刀──『墨染桜』に纏わりついた刹那。その刃先がパリン、とくだけてその欠片の一つ一つが桜の花びらとなる。
 ハラハラと舞い散る花弁は、一方で触れるもの全てを切り裂く怜悧な刃。

「きゃああぁぁぁ──!」

 その身を千路に切り裂かれ、鮮血を噴き出しながら自らの身体を掻き抱いてうずくまるオブリビオン。その背後に、恵助がいつの間にか立っていた。
「そう言えば……理彦さんが食べた稲荷寿し」
 あれに狐の毛が入っていたんだっけ。隠し味は──お前自身、なのかな?
 ぐぁば、と開いた喉の奥には来るべき食事を前にてらてらと唾液で濡れた恵助の舌が見えた。
「いただきまーす!」
 そういって明日香の肩を両手で押さえると……彼はそのまま白磁のように艶やかで脂がうっすらと乗った少女の柔肌に歯を立てる。

「い……たああぁぁい!」
 一際大きな悲鳴を上げ、ぐすぐすと鼻を啜って明日香は戦意を失って泣きじゃくる。
「もう、バカ!女の子の肌に噛みつくだなんて信じられない……」
 言う間に恵助に噛みつかれた肩口はばっくりと傷口を晒しており、その断面からはとめどなく妖力が漏れ出ていく。霧が晴れるように、あるいは風船から空気が抜けるように見る間に眼前のオブリビオンから殺気が、脅威が抜け落ちていく。
 すんすんとべそを掻きながら、仕舞いには彼女は小さな白狐となり──ポン!と煙となって消え去った。

「ごちそうさまぁ」
 そういって舌なめずりする恵助。口の中に広がる明日香の妖力は、じんわりと後口に旨味を残しつつも瑞々しい肉の風味と、ほのかに香る野趣溢れる脂が相まって極上のデザートであった。

「……終わり、ですかねぇ」
 オブリビオンの気配が無くなった周囲を見回して、要は頬を掻く。
「──どうだろうね。反省、してくれたならいいんだけど」
 その呟きに応えるのは理彦。
 オブリビオンは討つべき敵であることに変わりはない。だが──彼らもまた、何とかして改心させることが出来れば良い……。そんなことを、少女の貌をしたオブリビオンを打ち倒して彼らは思っていた。

「──うひゃぁ!これは一体全体、何の騒ぎでぇ!?」
 猟兵たちとオブリビオンの戦闘が終わり、辺りが静寂に包まれたのを確認して……『狐狸庵』の母屋から男の驚いたような声が聞こえた。

「そうか、そんなことが──」
 事のあらましを猟兵らから聞いた店の主人は、最初こそ取り乱した様子だったが、次第に落ち着きを取り戻して今はやや荒れた気配の店の椅子に座っていた。よもや狸子が妖しの類だとは、露ほどにも思いませんでさ──そう呟いた店主は、すこし寂しげな顔をして笑いながら猟兵たちに感謝を告げた。

「ところで──先ほどから気になっていたんですが、この匂いは?」
 誰かがひくひくと鼻を動かして、台所から漂ってくる出汁の香りに気が付く。一同が顔を突き合わせて覗いてみると、火の点いた竈には鍋が掛けられ、中には油揚げがきつね色に色づきながら踊っていた。
 その横には、明日香が書いたのだろうか。
 漉き紙に墨で書かれたレシピと思しき帖面が一葉、そ──と残されていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月04日


挿絵イラスト