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迷宮災厄戦②〜醜悪の狸

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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●迷宮図書館にて
 無数のオウガの群れが蔓延る、図書で埋め尽くされた閉塞空間。その中で、オウガたちが咆哮し、歓喜の声を上げ続ける。
「オリジン様のために!オリジン様のために!」
「アリスを!あのお方にアリスを献上するのだ!」
 オウガたちの醜悪な言葉が、図書の合間を縫って響き渡った。
「はいはーい、じゃあアリスが来た時に備えて、迷宮内に罠でも仕掛けちゃおっかなー!いや、それとも泥でドロドロにさせて、何も出来なくさせてからオリジンにあげるのも良いかもじゃん?」
 にたり、とダガーを持って表情を歪ませる司令官のオウガ。それを聞いたオウガの群れが、笑い声を上げた。
「よぉーし!それじゃあ儀式継続と行きますかー!後でかまどとか鍋とかも用意しとかないとじゃん?」

●オウガの軍勢を越えろ
「無数の予兆が発生したアリスラビリンス、とうとうグリモアが予知を告げた。皆も予兆を見たと思う。オブリビオン・フォーミュラであるオウガ・オリジン。そしてその力を簒奪した謎の存在、猟書家たち。今回の戦争、一筋縄じゃいかなそうだ」
 ふぅ、と息を吐いてアイン・セラフィナイト(全智の蒐集者・f15171)は集った猟兵たちに告げた。
「戦争の始まり、オウガたちは多くのアリスを呼び寄せようとしている。『迷宮のような図書館の国』で、アリスを呼び寄せる儀式をしているみたいなんだ。それを、皆には防いで欲しい」
 魔法の投影によって現れたのは、狸の耳と尻尾の生えた少女……いや、オウガだ。にやり、と厭らしい笑みを湛えた表情は、誰が見ても敵と分かるほどだった。
「『かちかち山のお染』と呼ばれているオウガらしい。かのUDCアースで有名な物語をなぞらえたかのような、卑怯の根源とも言えるようなユーベルコードを数多く使う。オウガたちの儀式を止めるためにも……大軍勢のオウガの中にいるこの少女を撃破して欲しい」
 それと、とアインが言葉を切った。
「今回、【Q】が成功したことで、奇襲を仕掛ける場所を予め見つけることができた。状況はこちら側が有利だ。乱戦をくぐり抜けて、お染を暗殺してくれ」
 ばっ、とアインが杖を掲げた。
「戦争は始まったばかり、猟書家、オウガ、猟兵の三つ巴の戦いだ……こんなところで足止めを食うわけにはいかない!頼んだぞ、皆!」
 転移先は、儀式をしている場所から数十m離れた場所。図書館の本棚が無数に並んだその上だ。オウガたちが気付かない死角、オウガの群れをくぐり抜け、対象オウガを撃破せよ。


夕陽
 アリスラビリンス、戦争開始!
 【Q】によって、猟兵にとって有利に事が運んでいます。大将のオウガを暗殺し、儀式を妨害して下さい。
 司令官は、『かちかち山のお染』。かの有名な卑劣な狸をモチーフにしたオウガです。どうやら、召喚したアリスを料理したり、泥まみれにしたりとかなり性格は歪んでいるようです。
 このシナリオには、以下のプレイングボーナスが存在します。

 プレイングボーナス……オウガの群れを潜り抜け、司令官に素早く接近する。

 それでは、皆様のプレイングお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『かちかち山のお染』

POW   :    つーかまえたー。もう逃さない…一緒に泥に沈も?
肉体の一部もしくは全部を【大量の泥 】に変異させ、大量の泥 の持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
SPD   :    食材が逃げたじゃん!あたしの邪魔をしないで!
【予め仕掛けておいた多種多様な罠 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【は罠の爆発でメチャクチャな泥地と化し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    何料理がいい?丸焼き?鍋物?揚げ物もイイかな!
【アイツをおいしく調理してしまいたい 】という願いを【周囲に詰めかけたおびただしい数のオウガ達】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は月・影勝です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

一駒・丈一
では、仕事を始めよう。
転移先が図書館なのは幸いだな。身を隠す場所が多い故に。

さて、書架の影に身を潜めながら敵に近く。
オウガの群の対処は、基本的に背後からの接近を基本とし、【咄嗟の一撃】及び【早業】を以って、手持ちの杭をナイフのように扱い、相手の喉を穿つ。
スニーキングキルと言うやつだ。
うっかり正面から遭遇した場合も、相手が声を出す前に同じく【咄嗟の一撃】で喉を穿とう。
…図書館は、静かに過ごすべき場所であるが故にな。

そして、お染の姿を捉える範囲まで接近後は、書架に身を隠しつつUC【静寂なる雷】にて杭を投擲し敵を射抜く。

その後は、敵の罠が発動する前に即時退散だ。


亞東・霧亥
一筋縄では行かない相手の様だが、やれるだけやってみよう。

・戦場を駆ける
目立たない、ダッシュ、忍び足、足場習熟
敵の目を欺く外套と隠密服を纏い、緩急自在の歩法と次に踏み出す足場を見極める事で、干渉を回避し無音の疾走を可能にする。

・無数のオウガと罠を無効化
【UC】+地形破壊
オウガと罠の真下にある大地を抜き、全てを窪地に落とす。
罠の爆発にオウガを巻き込み、窪地の地形が変化した後に抜いた大地を叩き付ければ、泥の地形は破壊される。

・泥化した司令を焼く
限界突破、属性攻撃、毒使い、早業
可燃性の毒を撒き、雷迅の雷撃で泥を発火。
泥が乾いて崩れるまで雷撃を続ける。


ミア・ミュラー
これ以上わたしみたいなアリスを増やすわけには、いかない。敵がいっぱいで大変だけど頑張る、よ。

転移先が高いところなら、わたしの「視力」であらかじめ司令官を見つけられる、かも?敵が固まってるところとかに、いそう。
目星がついたら「ダッシュ」でオウガの群れをくぐり抜ける、よ。先にグリッターハートとソリッドダイヤとアーデントクラブをばらばらに飛ばして囮にすれば進みやすい、かな。オウガに隠れるようにして気づかれずに指揮官に近づきたい、な。
司令官を見つけたら【水鎚】で、攻撃。頭を攻撃して水で口を塞いで他のオウガ達に呼びかけできないように、するよ。そのまま窒息させて倒すか、動きを止めて他のみんなを助ける、ね。


カミーユ・ヒューズマン
絡み&アドリブ歓迎
「本棚とな?」
ならば本棚の上を伝って接近したいと思うものじゃろうが、その辺りはオブリビオン達とて承知しておろうしの。
故にUCの飛翔能力と速度を活かし、さらに上を飛んでオウガの群れを超え、上空からの急降下&強襲でお姫さん力(WIZなのに物理)をもってメリケンサックみたいな指輪とロッド形態の宝冠を用い召喚儀式の首謀者を狙う
「ぬはははは、待たせたのう皆の衆、お姫さんじゃあ!」
この時他の猟兵が仕掛けているようであれば高笑いを上げ囮に、単独の場合は攻撃命中の瞬間に高笑い
「お姫さんとは皆の心の支えとなり、その拳で絶望を物理的に排除する者ッ!」
だから首謀者を仕留めるまでひたすら攻撃し続ける


黒髪・名捨
●心境
狸なら狸らしく狸汁にしてやるさ。
婆汁って発想自体あのおとぎ話い嫌いなんだよな。
お年寄りは大切にッ

●行動
オウガを一々相手している暇はない。
『闇に紛れる』と闇に『迷彩』し『目立たない』ように『存在感』を消して『忍び足』で突き進む。
寧々の『野生の勘』とオレの『第六感』に導かれ、目標へ向かう。
オレは今…無…闇そのものだッ

●戦闘
見つけたッ
大量の泥に変異するっていうなら、その泥ごとぶち抜くだけだ。
『怪力』『破魔』でぶん殴る。
ユーベルコード:神無
『地形破壊』で大量の泥と泥が入り込める隙間ごとすべて破壊するだけだ。
消えて…砕けろッ!!

●その他
アドリブや他猟兵との連携はOKです。


ラブリー・ラビットクロー
アドリブ連携◎

きれーなセカイを壊そーとするヤツら
らぶは大っ嫌いだ
セカイのピンチ
らぶも協力しなくちゃ

でっかいお部屋に沢山の本
これだけの本集めるのきっと大変だったんなん
【多数の熱源を感知しました。危険。危険。直ちに避難を開始してください】
だめなんマザー
らぶ達も戦うのん
よーし
じゃーはじめるのん

偽神兵器の巨大な翼を広げて書架を見境無く出鱈目に攻撃なん
ばら撒かれた本でオウガ達の視界を埋めるのん
ついでに張り巡らされた罠も壊しちゃえ!
足下が泥地になってもその上から本を降らせるんだ
強化なんてさせないもん!
そーしたらお空から滑空して敵の司令官に急接近するなん!

マザー
アイツがボスだ!
【ただちに避難を開始して――】



●書架に蔓延る者たち
大書架に響き渡る下卑た歓声。ノイズに似た響きを聞きながら、転移が完了した猟兵たちが書架の本棚の上で沈黙を保っている。
「やかましい奴らだ。随分と乗りに乗ってるみたいだな」
 口元を黒布で覆い、長い髪から真紅の瞳を煌々と輝かせているのは、黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)だ。真下から聞こえるオウガたちの声に、ただ無表情でそう言った。
「失敗すれば、オリジンにアリスたちが、食べられちゃう。……これ以上わたしみたいなアリスを増やすわけには、いかない」
 小さく呟いた声には、相応の覚悟が満ちている。
 ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)は、アリスラビリンスに召喚された「アリス」、現在はとある猟兵に助けられ猟兵として活動しているが、オウガたちの凶暴さは誰よりも理解していた。
「一筋縄では行かない相手の様だが、やれるだけやってみよう。胸糞悪い結末だけは勘弁だ」
 亞東・霧亥(峻刻・f05789)が、『雷迅』の銘を持つ刀の柄に手を置いて、静かに言い切る。それに呼応したのは、瘴気から身を守るためのガスマスクを着用した、ピンク色の服装に身を包んだ猟兵、ラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)である。
「きれーなセカイを壊そーとするヤツら、らぶは大っ嫌いだ。セカイのピンチ、らぶも協力しなくちゃ」
【無数の熱源反応を確認】
 ラブリーの言葉とは裏腹に、相棒のマザーは乗り気ではないようだ。
「しかし、本棚とな?ならば本棚の上を伝って接近したいんじゃが……」
「確かに、更に近づくためにはここからオウガを見下ろす形で行動したいが……途切れているな」
 この場に似つかわしくない、ピンクのドレス衣装。それが少女ならばまだいいかもしれないが、それを着ているのは身長180cm弱の巨漢だ。カミーユ・ヒューズマン(セイレーンのプリンセス・f26887)はにっ、と笑うと、一駒・丈一(金眼の・f01005)の言葉に頷く。
「オブリビオン達とて承知しておろうしの。ならば……」
 ぼう、とカミーユのドレスが、更に絢爛なものに変化する。飛行能力と花弁が宙を舞い、そしてそのままオウガへと飛翔する。
「先制攻撃は貰いじゃ!後は頼んだ!」
「おいおい、特攻か?」
 びゅん、とオウガの頭上へ飛んでいくカミーユを見ながら、名捨がやれやれと裾の長い服をだらり、とさせながら肩を竦めた。まさに、特攻というに相応しい行動だ。
 はぁ、と続けてため息をつく。
「婆汁って発想自体あのおとぎ話い嫌いなんだよな」
【婆汁、おとぎ話で検索します。検索結果1,410 件です。表示しますか?】
「いや、大丈夫だ。まあ言えることはお年寄りは大切にッ、ってことだけだな……」
【もしかして:バリアフリー。表示しますか?】
「マザー、らぶ達も戦うのん」
「カミーユさんのおかげで、確認しやすくなった。わたしが、司令官を見つける」
「おう、頼むわ。じゃあ俺も行かせてもらうぜ!」
「ああ、では、仕事を始めよう。転移先が図書館なのは幸いだな。身を隠す場所が多い」
本棚の上から、霧亥と丈一、そして名捨が飛び降りる。

 戦闘開始だ。


「ぬはははは、待たせたのう皆の衆、お姫さんじゃあ!」
 オウガの軍勢のその中心に降り立つと、プリンセスハートが脈動する。周囲に拡散する力の波動によって、複数のオウガたちが酩酊状態のようにゆらゆらと揺れていた。すっ、と高笑いを抑えると、にかっ、と闘争に満ちたような笑顔へと変化した。
「お姫さんとは皆の心の支えとなり、その拳で絶望を物理的に排除する者ッ!」
 豪腕が唸る。衝撃波と共に周辺に拡散した力の余波によって、オウガの一部の肉体が不可視の刃によって切り刻まれた。拳を撃つ毎に拡散する力場に、オウガたちが悲鳴を上げる。
「やれ!!猟兵だ!!倒せ!!オリジン様のために!」
「「「オリジン様のために!」」」
 そのオウガたちの闘争と混乱の声を聞きながら、猟兵たちが司令官のいるだろう場所へと接近していく。
「猟兵!!猟兵が来たぞ!肉を食え!四肢を断て!あいつらの悲鳴を―――」

 ぐさり、とそのオウガの首筋に突き立てられたのは、丈一の杭だ。ごぶりと口から鮮血を吐き出したオウガに、丈一は口元に人差し指を持っていく。
「少し静かにしてもらおうか。……図書館は、静かに過ごすべき場所であるが故にな」
「ぐ、ぎ……り、りょうへ……」
 ひらり、と身を躱す動作で迸った鮮血を回避する。こちらの気配に気付いて接近してきたオウガの首に杭を打ち込み、更に前へ。肉体の動きを最小限に、”通りかかる”オウガの首に、必殺の一撃を行使する。
「はぁ!?猟兵!?あたしのアリス料理を邪魔するとかありえねー!」
 部下のオウガから猟兵が出現したことを聞いたお染がちっ、と舌打ちする。しかし、すぐににたり、と微笑んだ。
「よぉーし!じゃあきこーかーオウガたち!何料理がいい?丸焼き?鍋物?揚げ物もイイかな!」
「「「鍋!鍋にしよう!」」」
「よーしそれじゃあ鍋―――」
 続けようとした言葉、中空に視線を向けたお染が、それを視認する。本棚の上に、ピンク色の服を着た人間が仁王立ちしている。
「でっかいお部屋に沢山の本。これだけの本集めるのきっと大変だったんなん」
【多数の熱源を感知しました。危険。危険。直ちに避難を開始してください】
「だめなんマザー、らぶ達も戦うのん。よーし、じゃあはじめるのん」
 ラブリーの背にある疑神兵器が、途端に巨大化した。悲鳴のような声か、稼働音か。それと同時に、無数の光の束がオウガたちのみならず、大書架内に降り注ぐ!
 中空を浮遊する紙の嵐。木片と残骸が煙となって周囲を覆う。
 「んなぁっ!?」
「……ん、見えた」
 その後方に控えていたミアがオウガひしめく場へと降り立つ。紙の嵐と爆砕の粉塵によって、オウガたちは猟兵を視認できない。細い路地裏、そのルートを確保したかのように的確な動作でミアがまっさきにお染に肉薄した!

「其は水……叩き潰し、覆い尽くせ」

 お染の近くの空間から、魔道鎚が生成される。降ってきた一撃は、視認不可能な粉塵の中からだ。ばこん!と大きな音を立ててお染の頭から鮮血が迸った!
「ちぃ!こんな攻撃であたし、を……ッ!!が、ぼ……!!」
 オウガに呼びかけた超常は、ミアのユーベルコードによって封じられた。

「小さい体というのは、逆に憧れるな。……その隙は逃さない」

 静穏の中、飛来したのは無数の杭だ。煙の中から丈一の杭がお染の四肢を的確に射抜く。頭のみならず四肢からも血を撒き散らしたお染が、現れた猟兵を憎々しそうに視認する。
「きゃははははは!だったらあたしも本気でいかせてもらうよ!」
 どろりと大量の泥へと溶解したお染が、猟兵たちを捕らえようと行動を開始する。
「泥に呑まれろ!!」
 変幻自在に四肢を動かすお染だが、未だに猟兵は潜んでいる。
「―――見つけたッ!」
 蔓延する砂埃の中から、名捨が姿を現した。唸る拳は、人の膂力を超え。ユーベルコードを強化するユーベルコード。まさにそれは必殺の一撃だった。

 「消えて…砕けろッ!!」
 
 バチャッ!!と、泥の体が飛散する。オウガにも飛び散った泥は、お染のユーベルコードによって変質した肉体の一部だ。
 もぞもぞと再び成型しだした泥から、苦悶の声が漏れ出ている。
「り、ょうへ、い……ッッッ!!」

「服を泥で汚したくないんでね……消えてもらうか」

 オウガの悲鳴が響き渡った。書架内の地面が、塊となって持ち上げられる。危機を感じた猟兵たちもまた、その場からすぐさま退避していった。
「冥土の土産だ。遠慮するな」
「……ッ!!」

 そのまま、振り下ろす。泥にまみれた地形そのものも飲み込み、お染が瓦礫の下敷きに。それでも、ボス級オウガはしぶとかった。隙間から溢れ出た泥が、再びお染の姿へと編成していく。
「次から次へと邪魔な奴らだなぁ!?あたしはアリスを呼び寄せて料理すんだよ!邪魔する―――」
ぼわり、と霧亥の雷迅から迸った炎熱。それが泥を焼き切っていく。再び舌打ちをしたお染が泥化を解いて、体勢を整えようとしているがもう遅い。

 二対の、飛翔する影。そして、接敵する無数の人影。
 
 はっ、とお染がそれを視認する。二対のピンク色の服が、書架内の紙片を掻き分けながらこちらへと飛んでくる―――!
「マザー、アイツがボスだ!」
【ただちに避難を開始して――】
「ぬはははははは!お姫さんは止まらんぞい!」
「しぶといな。だが終わりだ」
「さっき言ったぞ。狸らしく狸汁にしてやるってな」
「泥が乾くまで雷撃で焼いてやろうかと思ったけど、ただのオウガの姿になったのなら話は別だ」
「アリスたちは、わたしが守る……!」
 ユーベルコードの煌めきと、猟兵たち各々の得物による、蹂躙。
 響き渡る断末魔。その叫び声と共に、司令官の狸は、書架牢獄から霞となって消え失せたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月04日


挿絵イラスト