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黄塵領域

#スペースシップワールド

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#スペースシップワールド


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「……大丈夫、こちらの存在は気付かれてない」
 バーチャル製の砂山に身を隠した、十代ばかりの少年少女が4人、身を寄せ合って周囲を警戒している。
 ここは、訓練用のバーチャルシステムルームだ。
 果てなく続く砂漠も、ぎらついた太陽も、全てはコンピュータの管理下にある。彼らはまだ、配属されたばかりの新兵だった。なのに、なぜ――戦場でもないはずの場所で、命の危機にさらされているのか?

「宇宙船に搭載されたバーチャル訓練用システムがオブリビオンに乗っ取られたようだ」
 サク・スミノエ(人間の電脳魔術士・f02236)は肩を竦め、立体映像による補足を交えて説明を始めた。
「これがそのバーチャルルームだ。実際の広さは500m四方程度だが、システム起動中は体感的にもっと広く感じるだろう。本来はランダムでフィールドが決定されるが、現在は一面の砂漠と化している」
 その上、四名の新兵が中に閉じ込められたままだという。本来は新兵用に調整されているはずの難易度は急上昇し、彼らではこのフィールドをクリアすることは不可能。
「頼めるか?」
 サクは集まった猟兵たちに尋ね、その返答を欲した。

 設定されている敵は、装甲戦車が12台と戦闘用アンドロイドが30体。2人のアンドロイドが搭乗した装甲戦車が3台で1組を作り、残りのアンドロイドは歩兵としてこれを護衛しているようだ。
 それに、昆虫型の極致戦闘型ロボット数体が索敵を担ってフィールド内を徘徊している。
「バーチャルとはいえ、敵にやられたら確実に脳へのダメージが残る。彼らが敵に見つかる前に確保できるといいんだが……」
 遅れるなよ、と呟くサクの手のひらでグリモアが輝いた。

 向かう先はスペースシップワールド。
 数多の宇宙船が行き交いし星の海へ。


ツヅキ
 このシナリオでは、乗っ取られたバーチャル訓練用システム内に囚われている新兵の救出とそれを企てたオブリビオンの討伐を行います。
 まずは、第1章となる訓練用システム内が舞台となります。作戦が成功した場合、第2章以降に続いていきます。
 事件の状況や一般人の情報などは以下をご参照ください。

●バーチャル訓練用システム
 本来は新兵用に調整された低難易度の訓練システム。乗っ取られたことにより難易度が激化しており、一般人ではクリア不可能。本来はランダムでフィールドが決定されるが、現在のところ、あてどもなく広がる砂漠地帯に固定されている。武器はブラスターやフォースセイバーなどが支給されますが、自由に持ち込みも可能です。

●新兵『第11班』
 スペースノイドを中心とする四名の年若い班員たち。実戦経験はなく、現在は砂の中に身を隠して脱出の機会をうかがっている。

●乗っ取りを仕掛けた『敵』について
 現在のところは手がかりがない。
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第1章 冒険 『スペースサバイバー』

POW   :    高火力で制圧するパワープレイ

SPD   :    ステルスを活かしたスニーキングプレイ

WIZ   :    地図や情報を駆使した頭脳プレイ

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ミスター・ツキオカ
【WIZ】

カワイそう。かわイソウ。
子供達には笑顔が一番ナのに、怖くてブルブル震えテマス。
待ってテネ。楽しい嬉しイ奇術デ助けてあげマスネ。ウフフ。

砂漠でスカ。ワタシ砂漠は初めてデスね。ウフフ。
先んジテデータはフィールドに入る前ニ頭に入れテおきまスネ。
目に付きニクイ場所、見当が付くカモ。
奇術師は見えないトコロ、探すの得意デスカラ。ウフフ。

当て所ナク探しても時間の無駄。
指を鳴らシテ、ワタシにソックリのパペット達を喚び出しマス。
ウフフ。笑顔のタメデスネ。皆、皆。カワイソウな子供達、捜しマショウ。
11班の良い子タチ、ワタシの奇術で笑顔にナッタラ、嬉しいデスネ。


終夜・嵐吾
キトリ(f02354)、参るか。
そう、全部倒せばよいんじゃ(支給フォースセイバーぶんぶん)

わしこういうの初めて、超楽しみなんじゃ(そわそわ)いや、ちゃんと真面目に戦いに行くんじゃが!
砂漠……あっ、これ砂が目に入ったらわし両方つかえんのでは?
おう……ゴーグルつけよ。眼帯の上にゴーグルは……なんかかっこつかんの。
キトリ似合っとるよ。

まず敵の姿を見つけねば。音や痕跡を辿りつつ。
戦闘ではまずふぉーすせいばーをぶんぶんと立ち回り。

うむ、慣れん武器はやはりというところ。やはり虚の主の力を借りようぞ。
今日は枯れた地に咲く名も知らぬ白き花か。虚の主はほんに空気をよく読むの。
ではこの花弁で敵を裂いてくれようか。


キトリ・フローエ
嵐吾(f05366)と、一緒にいる仲間達とも協力して
要は全部倒しちゃえばいいのよね!(ゴーグル着けてブラスター構えてきりっと)
どう嵐吾、似合ってる?嵐吾も様になってるわよ!

まずはマップ上のどの辺りに敵がいるか情報を確認
皆とも共有して、ひとまず向かえそうな所を目指すわ
昆虫型ロボットは発見次第速やかに撃ち落としてあたし達の存在を知らせつつ、装甲戦車と遭遇したら先制攻撃を仕掛けるわ
高速詠唱で全力魔法、範囲攻撃のエレメンタル・ファンタジア(雷の嵐)で、纏めて黒焦げにしてあげる!
ブラスターは使わないのかって?何事にも雰囲気って大事でしょ!
新兵さんが近くにいたら怪我を確認、フェアリーランドに保護するわね


マハティ・キースリング
シミュレーション内で死ぬのはゾッとしないな

ノルマは戦車3歩兵ちょいに索敵機?
遮蔽もないし単身ゲリラ戦は骨が折れそうだ
可能なら友軍と連携して援護砲撃

単独なら
サイバーアイとセンサーで敵情報収集
武器改造で、砂が盛り上がった高所にアームドフォートを固定砲台としてセット
砲身を戦車に向けてロックオン、予備熱源を残して報いの火チャージ開始
襲撃タイミングで小刻みに迫撃砲を撃たせる、壊されてもいい

外套を被って逆側に回り込み挟み撃ち
優先は索敵機>歩兵>戦車
ヴァリアブル・ウェポンの命中特化で一つずつ堅実に落とす
戦車は固定砲台任せ
残っていたら戦車に近寄って災禍の女で星屑を落として攻撃

防御は武器受けや敵利用する方向で


ルノーン・プライジエ
[アドリブ・連携は大歓迎]
探索をした所で私に見つけられるのは敵でしょう。
隠れている第11班より私は敵を倒し他の方が救助する為の時間を稼ぎます。

【POW行動】

移動は全て【空中戦】で飛行【視力】を使い索敵を行います。

接敵した場合排除前提で行動。アウスグスと連携し私は【範囲攻撃】【一斉発射】を行い必要であれば【怪力】【グラップル】【カウンター】で格闘戦も挑みます。アウスグスは【迷彩】【援護射撃】【スナイパー】でサポートを。敵を逃しません。
敵の集団がいたら味方の安全確保し『主砲』を。
バーチャルでなければ周囲被害が大変ですから。
どんなデータが出るでしょう。

もし第11班がいたら保護し周囲の安全を確保します


黒木・摩那
★地雷で相手を攻撃する

【WIZ】
バーチャル空間に閉じ込められてしまった新兵たちにとっては
大変な訓練になってしまいました。
自分も新兵みたいなものですが、ともかく救出に全力を尽くしたいです。


とはいえ、相手の戦力は圧倒的。
何とか少しづつでも減らしていかないと。

地雷を使います。
砂漠といっても、車輛が動くためには砂地ではなく固い道はあるはず。
電脳ゴーグルや双眼鏡(情報収集)で、通りそうな場所を見極めて、
地雷を複数仕掛けます。

こちらが攻撃していることが分かれば、
隠れている新兵たちもこちらに合流するなりの、
行動を起こせるでしょう。

合流出来たら脱出になりますから、
入って来た場所には目印をつけときます。


メンカル・プルモーサ
んん……敵はVRを……操作した?
取り合えず新兵さん達をどうにか助けないと……

まず、VRのシステムに巡回精霊AIを放っておく……何か干渉があったらその邪魔をせずそれを知らせるのと、干渉元を探る命令を出しておく…
(情報収集・ハッキング)

救出は……まず、索敵担当の昆虫型を潰す必要がある…
見つけたら【鳴り止まぬ万雷の拍手】で動きを止めて……確実に仕留める……

後は……敵を1小隊ずつ倒しながら……新兵を探す、かな…?
後のことを考えると設定されてる敵は早めに倒した方が良さそう…

…装甲戦車辺りは重いから、【支え能わぬ絆の手】を砂にかけて摩擦無くせば…砂の中に沈む…

さて……『クリア』したら次はどう出てくるか……


神舵・イカリ
「さーて。この空間のどこに新兵が…」

自分の電子ゴーグル《クアントロム・クレイス》を使って、技能【鍵開け】により、バーチャル空間の状態を把握する

周囲を徘徊するロボットに対しては、呼び出したドローンで牽制

「おまえらはお呼びじゃないぜ!」

敵部隊には、《戦艦鎧装マキナフリート》を使って砲撃を浴びせかける。

「道を切り開く! ーー目標捕捉、拡散砲バレルセット! 焼き払え、クアントロム・カノン・クラスターッ!!」

一通り攻撃した後は、サーチして見つけておいた新兵を巻き込みすぎないように遠ざける


レイ・ハウンド
目立たん迷彩服とか借りれたら借りる
ニヒト(f07171)と誘導作戦
似た事考えてる猟兵がいれば連携
ニヒトが割出した迎撃点へ砂山に隠れながら移動し
俺は待ち伏せする

おい、これ敵が来なかったら埋まり損だぞ…!
文句言いつつ弟子に埋められとく
まぁスナイパーに一番求められるのは
敵に見つからん様待つ忍耐力だしな…
戦場育ち舐めんな…!

射程範囲内に敵が来たら【狙撃】で撃ち落としていく
2回攻撃で確実に
隠れ場所を特定されん様時折移動
見つかったら身を潜めてる場合じゃねぇ
蜂の巣は御免だ

撃ち漏らした場合
昆虫ロボを影の追跡者の召喚で追跡してみるか
何か情報が得られるかも知れんし
どこに向かったか仲間に伝えりゃ討ち取ってくれるだろ


ニヒト・ステュクス
師匠(f12038)と一緒に
砂漠で目立たぬ迷彩服とか
借りれる装備は拝借

訓練生達に危険が及ばない様に敵を離れた所に誘導したいな…
特に索敵の昆虫ロボが厄介だね

情報収拾で地形把握
他の猟兵達とも情報交換や連携をする
訓練生達から離れた場所且つ
小高く、敵を狙い易い場所を見繕い迎撃ポイントにしよう

とりあえず師匠を見つかんない様に砂に埋めとくね…
大丈夫、空気穴くらいは開けておくって

準備が整ったらボクは敵にわざと見つかり誘導する
特に昆虫ロボを惹き付ける様
少しずつ怪しい動きを見せるよ

先制攻撃受けてもそれは囮のオルタナティブ・ダブル
ボクは目立たない様後方からだまし討ち
絡繰意図や咎人封じで敵を牽制誘導
師匠の狙撃を援護


土斬・戎兵衛
せっかく支給があるってーならフォースセイバー、使ってみっかな
ポン刀と光剣の二刀流
慣れない獲物だけど、刃物の要訣は"刃を入れる角度"。剣の性質は二の次だし、なんとかなるっしょー

同業が戦いを初めて混戦になってきたら【残像】で惑わしつつ【見切り】で回避を行いながら装甲戦車に肉薄。UCで砲身を斬り落とすでござる
「この"東方異界の侍"土斬・戎兵衛、敵軍の爪牙を落としたり! 今こそ攻勢の機よ!」
ファン獲得のために名乗り上げも忘れずに

砲のない戦車などただの鉄箱と同然。そして拙者にとって鉄箱など豆腐と同様。中の敵ごと斬り刻もう
逃げる敵は拷問具で捕縛して、両断でござる

(絡みアドリブ歓迎です)



●第1章 『狂想現実』
「さーて。この空間のどこに新兵が……」
 仮想の熱砂に吹かれたぼさぼさの頭をかき上げて、神舵・イカリ(転生したらVtuberになってた件・f03294)は《クアントロム・クレイス》――愛用の電脳ゴーグルを、二十代半ばという年齢にそぐわない少年らしさを残した〝やんちゃ〟な眼元まで引き下ろした。
 即座に敵影を確認。
 二時の方角に二隊、十二時に一隊、そして――最も近いのは九時の方角か。
(「まずい、そっちには――」)
 イカリはざっと砂を蹴って駆け出すと、さっそく寄って来た索敵用の昆虫ロボットを展開したドローンで迎え撃った。
「おまえらはお呼びじゃないぜ!」
 次々と撃ち落とされるそれらに一瞥を与え、快活に言い放つ。その身に纏う鎧装が瞬く間に四つの艦砲を剥き出した。
「敵の近くに新兵が隠れている砂山がある。それ以上近づかせるな!」
「まったく、新兵たちにとっては大変な訓練になってしまいましたね」
 黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は軽く眼鏡の位置を直すと、表情一つ変えずに頷く。照準を定めながら、イカリが囁くように尋ねた。
「数が多いな。一撃で仕留めきれるか?」
「相手の戦力は圧倒的ですからね。何とか少しづつでも減らしていかないと」
「その様子だと、何か策がある?」
「ええ、既に手は打ってあります」
 摩那が微かに微笑んだ直後、まさに九時の方向から鼓膜が破れるかと思われるほどに激しい爆発音と砂柱が迸る。先駆けて摩那が仕掛けておいた地雷に敵が引っかかったのだ。
「そんじゃ、いくぜ!」
 ――高らかに叫び、砂塵のただ中へと突っ込んだイカリは敵影めがけて艦砲を解き放つ。
「道を切り開く! ――目標捕捉、拡散砲バレルセット! 焼き払え、クアントロム・カノン・クラスターッ!!」
 刹那、辺り一帯に閃光が奔った。
 一拍遅れて、オレンジと白銀の二層に分かたれた爆発が幾つも巻き起こる。
「まずは一隊、ですね。隠れている新兵たちがこちらの存在に気づいたならよいのですが……」
 電脳ゴーグルのサーモグラフィを使用して居場所を探っていた摩那は、先ほどの爆発に乗じて彼らが移動開始するのを確認したのだった。

(「カワイそう。かわイソウ」)
 ミスター・ツキオカ(嬉しい楽しい怪しい奇術師・f12632)が独り言のように繰り替える呟きはまるで調子の狂った詩曲を思い起こさせる。
「待ってテネ。マッてテね」
 パチンと指を鳴らして、呼び出すのはミスター・ツキオカそっくりの玩具のようなパペットたち。彼はそれを奇術のような仕草で放ち、既に解析済みのデータと照らし合わせながら新兵たちの居場所を探り当てた。
「あっ――」
 先ほどの爆発から逃れた第11班の面々が驚いたように声を上げるのを、ミスター・ツキオカは洗練されたお辞儀で受け止める。
「助けに来マシタ。ウフフ。カワイソウな子供達、皆、皆、無事デスネ?」
「は、はい。あなたたちが助けに来てくれたんですか? わっ!」
 目の前でパペットが破裂して中から鳩が飛び出した。驚く彼らに、ミスター・ツキオカが嬉しげに頷いてみせる。
「その通りデス。さ、猟兵たちが時間を稼イデいる間に、脱出しマショウ」
「猟兵が……――助けに来てくれた?」
 信じられない、と新兵の少年が呟いた時、頭上を滑空してゆく一機のウォーマシンがあった。名をルノーン・プライジエ(魔改造好きの骨董マシン・f03967)――鋼色の外装は武骨。瞳は獰猛な赤光に輝くも、その性格は至って紳士的。ただし、改造や部品等に対する興奮の琴線に触れない限り――だ。
 砂を巻き上げながら飛来したルノーンの強化された【視力】が捉えるのは、騒ぎに気づいて急行する他部隊の敵影だった。
「ここは通しません。接敵次第排除をおこないます」
 彼に従っていたもうひとつの機体――アウスグスが瞬く間に多脚重戦車へと変形して地上へ降り立つ。砂地用の迷彩を纏い、ルノーンとは距離をとって後方へと位置取った。
 やれやれ、と肩を竦めて並び立つのは腰に手を当てた格好のマハティ・キースリング(はぐれ砲兵・f00682)だ。
「ノルマは戦車3歩兵ちょいに索敵機? 遮蔽もないし単身ゲリラ戦は骨が折れそうだ。ここは手を組むとしようか?」
「異論ありません。私は敵を倒し他の方が彼らを救助する為の時間を稼ぎます」
 ちら、とルノーンは後方に注意を払った。そちらでは、ミスター・ツキオカに護衛された新兵たちが摩那の残した出口を示す目印を頼りに後退を始めている。
「OK。援護射撃はこちらに任せてくれ」
 請け負ったマハティは機械製の瞳で敵を捉えた。サイバーアイの演算力によって、敵の戦力情報がリアルタイムで分析されてゆく。
「では、いくか」
 敵部隊は己の優位を確信しているかのように、砂を巻き上げて戦車を奔らせる。だが、あらかじめマハティが設置していたアームドフォートの砲台がこの時火を噴いた。横合いから撃たれた護衛用のアンドロイドが見上げる砂山の頂上から、立て続けに激しい業火が降り注ぐ。
 ――ゴッ、ォン――!!
 空を裂き、破滅的な轟音と共にルノーンの『主砲』が敵部隊を飲み込んだのは彼らがマハティの仕掛けておいた〝囮〟に気を取られていたまさにその矢先だった。
 【範囲攻撃】及び【一斉発射】による力ずくでねじ伏せるような、傍若無人たる主砲の一撃。バーチャルルームの耐久度を超えた攻撃によって、全体が地震のように揺れた。ルノーンは構わず、砂塵の中を突っ切って戦車に接近。中から動作不良を起こしかけているアンドロイドを掴み出して、太い腕で首を締め上げる。
 アームドフォートの砲撃と同時に逆側へと回り込んでいたマハティは、被っていた外套を翻して中に隠していたヴァリアブル・ウェポンを展開。半ば砂に埋もれるように徘徊していた昆虫型ロボットを射抜いてから、残る戦車の砲撃を倒れていたアンドロイドを盾にして防いだ。その頭上から降り注ぐ隕石群こそ、災禍の女――マハティの背負いし業とも言える一撃。巨大な岩石が見る間に戦車を押し潰して、次々に誘爆させていく。

「わー、わー! すっごい本物みたい!」
 次々と爆発する戦車の群れを砂塵避けのゴーグル越しに見たキトリ・フローエ(星導・f02354)は、興奮した声を上げて小さな拳を握った。
「嵐吾、あたしたちもいくわよ!」
「あっ、待って……これ砂が目に入ったらわし両方つかえんのでは? やっぱりゴーグルもつけよ」
 終夜・嵐吾(灰青・f05366)は支給のゴーグルを眼帯の上から装着するため、もたもたと手を動かした。
「早く早く!」
「これでよし、と。眼帯の上にゴーグルは……なんかかっこつかんの」
 いまいち収まりが悪いのを気にする嵐吾をキトリは「様になってるわよ!」と励ましながら肩の辺りの服を引っ張った。
「いいからほら、もう始まっちゃってるじゃない! どうやらあっちに新兵たちがいるみたいだから、敵部隊が合流しないように食い止めるのよ!」
 ヒュンッと空中を疾走したキトリがまず狙いをつけたのは、自分と同じように飛翔する昆虫型のロボットだった。空中戦なら任せないとばかりに素早くブラスターを構えると、瞬きのうちに撃ち落とす。
「げっ、あっちでなんか始まっちまったぞ!?」
 一方、支給の迷彩服姿で砂中に隠れた――弟子に埋められたともいう――レイ・ハウンド(ドグマの狗・f12038)は、自分がいるのとは逆方向へ敵部隊が転走し始めたのに気づいて焦りの声を上げた。
(「これで敵が来なかったら埋まり損じゃねえか!」)
 ニヒト・ステュクス(誰が殺した・f07171)が開けておいた空気穴からは、熱で薄くなった空気が入り込んでくる。
(「戦場育ち舐めんな……!」)
 喉を焼く酸素に咳き込みたくなるのを我慢して、それでもレイはニヒトを信じて待った。
「残る敵は二時方向に二部隊。訓練生達は既に他の猟兵が保護、出口へ向かっている途中か」
 【情報収集】によって素早く状況を把握したニヒトは、敵を引き付けて飛ぶキトリに向かって手を挙げた。
「戦車の数は残り6台だ。半分はこちらで受け持つよ」
「よろしくお願いね!」
 小刻みに羽ばたいて戦車の砲撃を躱したキトリが振り向きざまに口ずさむ呪文詠唱は、幻想の歌声めいた美しさと神速さを併せ持つ。
 手加減は一切なしの、雷の嵐たるエレメンタル・ファンタジア――!!
 仮想の天空に満ちた轟雷が、ドドドッと戦車の群れへと立て続けに落ちていった。真っ黒に焦げた装甲で回頭し、迎撃態勢に入りかけた戦車へと不審な情報が入る。
「ほら、こっちこっち……」
 羽音を立てて追跡する昆虫型ロボットの気を引くニヒトの存在を知った戦車が、直ちに照準を合わせて苛烈な砲撃を放った。
「――残念。目に見えるものが全て本物だとは限らないんだ」
 華奢な少女の身体が爆風に呑まれ、吹き飛んだかと思われた瞬間。
 分身に囮を任せ、既に後方へと回り込んでいたニヒトの手元で絡繰り糸が閃いた。細い鋼糸が手枷や猿轡と一体になって戦車の武骨な装甲に巻き付き、その動きを阻む。
「待たせたね師匠、出番だよ」
「待ってました……!」
 覗き込んだスコープ上へと自動詠唱による照準が結ばれ、その中心が重なった瞬間、レイは引き金を二度引いた。
 一発目で分厚い装甲を穿ち、二発目が動力部を撃ち抜く。
「! 昆虫型ロボット。まだいたのか」
 敵にこちらの位置を特定されないために場所を変えるレイの足元からひっそりと影が伸びた。それは飛翔する昆虫型ロボットを追跡するため、砂の上を滑るように移動する。
「そこじゃ!」
 耳の柔毛を震わせる殺気を頼りに、嵐吾は両手に構えたフォースセイバーを続けざまに振り回した。護衛用のアンドロイドは腕を吹き飛ばされつつ後退しながら、眉間に仕込んでいた小銃で抵抗を試みる。
「ととと……っ」
 嵐吾は跳ねるように下がって、これを回避。
「うむ、慣れん武器はやはりというところ。やはり虚の主の力を借りようぞ」
 薄っすらと微笑んだ直後、アンドロイドの足元から白い花を持つ根と茎が躍りかかって鋼の体にきつく蔓のように巻き付いた。
 ――鋭刃と化した真白の花弁が、旋回してその腕を、脚を断つ。
「今日は枯れた地に咲く名も知らぬ白き花か。虚の主はほんに空気をよく読むの」
 満足そうに頷く嵐吾の右肩へと、ブラスターをホルダーに戻したキトリがふわりと寄ってくる。
「何事にも雰囲気って大事よねー。あ、新平さんたちは無事脱出できたみたい!」
「おお、よかったの!」
 キトリの報告を聞いた嵐吾は、思わず相好を崩して喜んだ。
「よし、後はこいつらを倒すだけってわけだな?」
 浮薄に口元を綻ばせ、土斬・戎兵衛(営業広報活動都合上侍・f12308)は愛用している小太刀の代わりに支給のフォースセイバーの握り心地を確かめる。
「気を付けて……『クリア』と同時に、干渉元が何か仕掛けてくるかもしれない……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は眼鏡を押し上げる仕草と共に先行して放っておいた巡回精霊AIからの報告を受け取っていた。
「……VRを操作した敵は、まだシステム内に存在する……後のことを考えると、設定されてる敵は早めに倒した方が良さそう……」
「なるほど、確かに後のことも考えといたほうがよさそうだな。――合点承知でござる!」
 おどけた返事と共に敵陣へと突っ込んだ戎兵衛の操る刃が一閃、二閃と戦車の装甲に斬撃を刻み付けていく。
 刃物の要訣は"刃を入れる角度"。
 なれば、この"侍"に扱えぬ剣は無い――!
 フォースセイバーの軽やかな切れ味を楽しむように、戎兵衛はまず戦車の砲塔を落とし、続いてキャタピラの脚部を削いだ。
 耳元に近づいていた羽音がふと止んだのは、メンカルの発動した【鳴り止まぬ万雷の拍手】による激烈な喝采と閃光によって機体ごと跡形もなく消滅したからである。役目を負えて帰還するレイの影を見送ったメンカルの周囲に描かれているのは、電脳的な象形の魔法陣。
「……繋ぎ止める絆よ、弱れ、停まれ。汝は摺動、汝は潤滑。魔女が望むは寄る辺剥ぎ取る悪魔の手……」
 低く囁くような詠唱が完成した途端に、さっきまで砲塔を構えていたはずの戦車が砂の中へと沈み込んだ。まるで底なし沼に嵌るかの如く、飲まれていく。焦ってキャタピラを空転させる敵の背後に回り込んだ戎兵衛の拷問具が、血臭を放ちながら牙を剥いた。
「逃げられるとでも思ったか? では、これにてさらば!」
 激しく噛み合った拷問具の歯が戦車を噛み砕き、中に登場していたアンドロイドごと無慈悲に押し潰していった。
「……これで、『クリア』……さあ、どうでる……?」
 砂混じりの颶風に髪を流して、メンカルは待っている。
 ――干渉はすぐに行われた。
「……来る……」
 警戒を、と他の猟兵たちに告げる。
 微かに空間が歪む気配があって、アンドロイドの残骸が散らばる戦場のただ中に歪曲した形状の生命体が次々と現れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『醜き嫉妬の生命体』

POW   :    妬心の暴虐
【対象の優れた部位を狙う触手】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    精巧贋物
合計でレベル㎥までの、実物を模した偽物を作る。造りは荒いが【喉から手が出るほど欲しい他者の所持品】を作った場合のみ極めて精巧になる。
WIZ   :    縋る腕
【醜い羨望】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【粘着性の高いぶよぶよした黒い塊】から、高命中力の【対象の所持品を奪おうとする触手】を飛ばす。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●第2章 『その感情は深淵と似た色をしている』
 バーチャル空間の中央部に現れた生命体の群れはどれも暗い波動を放ち、己よりも強く、あるいは美しく、もしくは明るく生気に満ちたものへの〝嫉妬〟に苛まれていた。
 あれが欲しい。
 己にないものを持っている存在そのものを取り込んで我が物としたい。
 裕に五十体を越えるそれらは醜い体をくねらせて、次々と生み出したタール状の触手を猟兵たち目がけて躍りかからせた。
マハティ・キースリング
不定形がまるで渦の様…、消耗した熱を確保したかった所だ
焼こう

援護中心
UCを回数…弾薬数特化に変更
遮蔽がないなら手数で

偵察機を上空に飛ばし情報集積、伝達
改造で内蔵兵器を連装ロケットランチャーに
爆撃とクラスターマインで広域に焼夷攻撃を仕掛ける
暇があれば戦場と敵の熱・死骸を薪として侵食砲に吸収

防御しない
半機人に優れた部位などない
総てツギハギ、間に合せ、使い捨ての歪な駒だ
出力と質量でマシーンに劣り
自然治癒力と神秘性でヒトに劣る
維持コストが膨大な、自由ならざるこの身体

だからその大筒が最も高品質だ。是非とも持って行って欲しい
でもどうせ、知らぬ間に私の元に還ってしまうのだろう

奪わせ殴らせ玉砕覚悟で爆破します


黒木・摩那
★バーチャル空間のシステムダウンを図る
【WIZ】

UDCアースにもいそうなのが出てきたわね。
呪詛耐性とか効くのかな……

バーチャル空間だから、敵戦力に切りが無いというのが問題ね。
今はこちらが優勢だけど、途切れなく来られるとさすがに厳しくなるだろうし。

ここは黒幕が出てこざるを得ないように、
バーチャル空間のシステムに大きな負荷をかけることで
システムダウンを狙います。

これだけの触手怪物を出すことでシステム負荷が高くなっているところに
猟兵の攻撃力を集めて一気に畳み込めば、
システムにも何らかのダメージがあるのでは、と考えます。

摩那はUC「風舞雷花」を使って、触手怪物の数減らしします。


メンカル・プルモーサ
………なんか思ってたのと違う……いや、違わないけど…本命はまだ後か………AIが上手く干渉元を辿ってくれてれば良いのだけど……

……あの手の生物には属性での攻撃が有効かな……【空より降りたる静謐の魔剣】で仲間の攻撃が通りやすいように凍らせていく……
なるべく標的を散らして……凍結による動きの制限を重視……

……杖が狙われたら……【煌めき踊る銀の月】で杖を花びらに変えて反撃…
…杖に取りついた触手を切り離して、逆に切り刻む……この杖に…触るな…

…数が少なくなったら最後は【尽きる事なき暴食の大火】で焼き尽くす…
延焼は醜き嫉妬の生命体に限定する…

……さて、次はどうでるか…もしくはこっちの追跡が間に合うか……


ニヒト・ステュクス
師匠(f12038)と

ふぅん?
…もしかして精神生命体って奴?
成る程、こいつらがバーチャルに介入してたのか

…物理攻撃って効くのかな?
むしろバーチャルで実態化してる今がチャンス?

何かあれもこれもっていろんな色手当たり次第に混ぜたら
黒く濁っちゃった絵の具みたいだね

てか数多い
第六感を駆使して敵の攻撃を見切りつつ
オルタナティブ・ダブルをデコイに
おびき寄せでひと塊に纏められないかやってみる
「キミ達実態ないの?かわいそー
ねぇ体欲しくない?
ほらほらおいで。早い者勝ちだよ

上手くいけば師匠や他のパワータイプの猟兵さんに
こいつら殲滅して貰うね

あ、ボクの偽物ごとやっちゃって

本体のボクは咎力封じや絡繰意図で援護


レイ・ハウンド
ニヒト(f07171)と

さぁて、首もねぇアメーバ(?)をぶった斬れるか知らんが
ものは試し
どっせい!っと叩き斬る
…つってもわらわらわらわらキリがねぇな!

奴らが接近してきたら黒鋼の掃射で範囲攻撃
2回攻撃で手数も増やす
ただし基本は遠方にいる内に狙撃
弟子が上手く敵を誘導してくれたら一斉発射で一網打尽を試みる

敵の精巧贋物が実用的な武器だったら早々に狙撃で壊してくぞ
妬心の暴虐は極力武器で盾受けして防御

縋る腕が飛んできたら
うーわ、俺なんか取り込んでも真っ黒になるだけだっつの!
来るな来るな…!
スナイパーの意地で
狙撃で撃ち落とし試み

俺が喉から手が出るほど欲しいのは平和なんだよなぁ…
宇宙の平和の為に、お前ら逝ねや


神舵・イカリ
目の前に現れた異形の者を見て、思う
「仮に自分にない物を欲しいと思うなら、こんなバーチャル空間じゃなくて現実にするべきだったな!」

そう。結局、どれだけあがいても人は他人にはならないのだから。バーチャルな世界ではなおさらだ

啖呵を切り、ユーベルコードにより手にしたカードから17体の白い歩兵を呼び出す。

「ひとまず数を減らすとするぜ!」

自分の受け持った敵を減らしつつ、他の猟兵の援護

「マキナフリート、貫通バレルセット! まとめて貫け、クアントロム・カノン・ペネトレイト!」

貫通弾を使って、【なぎ払い】を実行する



「不定形がまるで渦の様……、消耗した熱を確保したかった所だ」
 マハティ・キースリング(はぐれ砲兵・f00682)が油断なく呟いた途端、その身に内臓された兵装が仕様を変更して、連射性に秀でるロケットランチャーと化した。
「援護モード。索敵・砲撃面での支援を行う。クラスターマイン、射出準備」
 上空へと飛ばした偵察機が敵の数と位置、陣形を解析して他の猟兵たちへと伝達していく。
「数は五十。バーチャルルームの中央部に密集している。機動力と防御力は低く、あの触手を使用した遠距離攻撃を主体とする」
 そして、とマハティは低い声色で囁くように続けた。
「あれはバーチャル体ではなく、れっきとしたオブリビオンだ。訓練システムの乗っ取りが失敗したことで、私たちを排除しにきたらしい」
「なるほど、UDCアースにもいそうなのが出て来たかと思ったらそういうことなのですね」
 頷く黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)の両腕から眩い七色の光が零れた。それは、風に舞う七雷の花弁――両手首に嵌めた腕輪が花びらと化して帯電し、羽ばたくように敵を穿つ――!!
(「呪詛耐性とか効くのかな……」)
 心中にて呟き、摩那は立て続けにそれを放った。
 激しい爆発とともに周囲の景色が一瞬、ぶれるように掠れる。
「これまでの戦闘によってバーチャルシステムに過剰な負荷がかかっているのは間違いない……攻撃力を集めて一気に畳み込み、システムダウンを狙います」
「なら、私は手数で押そうか」
 防御など知らぬとばかりに、マハティは己自身を兵器として戦いに差し出した。どうせ総てツギハギ、間に合せ、使い捨ての歪な駒。出力と質量ではマシーンに劣り、自然治癒力と神秘性ではヒトに劣る……だからこそ、〝このように〟しか戦えない。
「――そう。私の体で、その大筒が最も高品質だ」
 黒い深淵から伸びた触手が己の武器を強奪してゆくのを、マハティは悟ったかのような瞳で見届ける。機械の身体から解き放つ弾幕と共に、醜い羨望の感情ごと――煉獄の炎で飲み込んだ。
「どこで見ているのか知りませんが、出て来てもらいますよ黒幕さん」
 マハティによる絶え間なき爆撃によって辺り一面焼夷と化した戦場を薙ぎ払うのは、摩那の両腕で咲き誇る雷光による一撃だ。一気に三体ほどが弾け飛ぶ。前後して、まるで世界に亀裂が入ったかのように砂漠の一部が文字通り切り取られた。黄塵に覆われた仮想のプログラムが異常を起こして、元の青みがかった鋼鉄製のフロアが剥き出しになるのを摩那は見る。

「……なんか思ってたのと違う……いや、違わないけど……本命はまだ後か……」
 ならば、とメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は茫洋とした視線を眼鏡型ゴーグルの解析結果に走らせながら口早に詠唱を紡いだ。
 ――分子の分離結合によって生み出された凍刃が結晶を象るように敵陣の広範囲へと突き刺さり、底冷えする冷気を放出。なるべく標的を散らし、凍結による動きの制限を重要視したメンカルの目論見は十分な効果をもたらした。
「……思った通り、陣形が乱れた……」
「さしずめ、凍らされて身動きの取れなくなっちゃった黒い絵の具ってところかな? てか数多い」
 まるで、己自身を武器と化したようにニヒト・ステュクス(誰が殺した・f07171)は軽やかな身のこなしで敵群のただ中へとその身を投じる。
 否、と彼を知る者は否定する。
 〝それ〟は――正しく、武器なのだ。
「あ、ボクの偽物ごとやっちゃって。師匠」
「ったく、何度見ても悪趣味なUCだよなぁ!」
 弟子の姿を模したオルタナティブ・ダブルごと敵を叩き切ったレイ・ハウンド(ドグマの狗・f12038)は、肩を竦めて再び黒鋼を構え直した。
「……わらわらわらわらキリがねぇな!」
 一方、敵も二つに断たれた状態で軟体生物よろしく蠢くものだから、レイは射撃に切り替えてもう一度、ニヒトのデコイに群がったところへ照準を定める。
「一網打尽にしてやるよ」
「ああ、ひとまず数を減らすとするぜ!」
 乗った、とばかりに破顔一笑した神舵・イカリ(転生したらVtuberになってた件・f03294)が指先で翻すカードから、真白き歩兵たちが具現化して一斉に突撃を開始した。
 黒き深淵の群れは突っ込んできた純白の兵列を押し返そうとあがくも、やがては弾かれたように中央から突破される。
 そこへ撃ち込まれるのは、レイの正確無比なる狙撃だ。
 撃ち抜かれ、液体が波紋を広げるように崩れていくそれらの残骸を、ニヒトの皮肉な声色が雁字搦めに痛めつける。
「キミ達実態ないの? かわいそー。ねぇ、体欲しくない?」
 ほら、と無責任に誘う声。
「おいで、早い者勝ちだよ」
 学習能力を欠いたそれらは強烈なマインドコントローンに翻弄されつつ、またしてもデコイへと殺到する。途中、イカリの纏う四門の艦砲を模した触手が砲門を開くも、発射より前にレイの狙撃によって撃ち砕かれた。
「うーわ、俺なんか取り込んでも真っ黒になるだけだっつの! 来るな来るな……!」
 意地でも触れられてなるものかと、レイは迫ってくる触手を端から迎撃していく。ドッ、ドドッと鉛玉がめり込んだ体が形を無くして崩れ落ちた。
「俺が喉から手が出るほど欲しいのは平和なんだよなぁ……」
 薄汚い羨望と一緒にするな、という言外の主張を込めて、レイは己の右腕を狙って伸びる触手を断頭の腹で受け流した。
「……同感……」
 体温の低そうな呟きと共に、メンカルの構えた杖が分解されるように無数の花びらへと転換。それを奪おうとしていた触手を飛刃となって切り裂いた。
 その光景はまるで、月下に舞う花嵐――数多の弾丸と花弁に蹂躙され、形を保持できなくなった群れをイカリの命によって進軍する白き兵隊が怒涛の如く粉砕していった。
「仮に自分にない物を欲しいと思うなら、こんなバーチャル空間じゃなくて現実にするべきだったな!」
 右手を拡げ、熱い啖呵を切るイカリの背後に幾何学の電子パネルが展開。予めプログラムされていた形状の砲門を導き出して、非物質によるエネルギーの充填を始める。
(「そう。結局、どれだけあがいても人は他人にはならないのだから。バーチャルな世界ではなおさらだ」)
 ――だから、その嫉妬も羨望もこの仮想なる世界へ置いていけ。
 メンカルの周囲に超高熱を発する白炎が揺らめいた。
「延焼は醜き嫉妬の生命体に限定……貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ」
「マキナフリート、貫通バレルセット!  まとめて貫け、クアントロム・カノン・ペネトレイト!」
 砂漠を舐め尽くさんと燃え滾る炎獄と左右二門、仮想バレルから放たれるビーム砲の【なぎ払い】によって残る敵が一掃されていく。
 ほぼ同時に、遂に過負荷に耐えきれなくなったバーチャルシステムが崩壊。逆探知に成功したメンカルのAIが〝黒幕〟の存在を報せる警報を告げる中、周囲の光景は仮想砂漠から宇宙船のバーチャルルームへと戻っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『ファントム・ガンマン』

POW   :    ボムファイア
【ブラスター銃の最大出力放射】が命中した対象を燃やす。放たれた【ブラスター銃の熱線の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    クイックドロウ
レベル分の1秒で【熱線銃(ブラスター)】を発射できる。
WIZ   :    ブラストキャンセラー
対象のユーベルコードに対し【ブラスター銃の一斉射撃】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は麻生・大地です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●第3章 『fight a duel』
「まさか、あいつらに乗っ取らせたバーチャルシステムが破られるとは……」
 潜入した船内の壁からハッキング用の機器を抜き取って、男――オブリビオンとして再生されたガンマン『サワノ』は退却を試みる。
(「だが、こちらの位置は逆探知によってほぼ特定されている。逃げきれるか……?」)
 これは勝負だ。
 猟兵たちに追いつかれるのが早いか、この船から逃亡するのが早いか。
「ままよ……!」
 サワノは手に銃を持ったまま、後ろを振り返ることなく駆け出した。
マハティ・キースリング
動作点検後に行動

戻れた、が主謀者は何処だ
宙を行かれたら打つ手が無いぞ
意識があれば学生達に脱出路の心当たりを訊ねる

追撃戦、ハッキリ言って不得意だ
視界が通らないと動き辛い
偵察機も見られた、間違いなく墜とされる
壁…障壁を爆破して近道を造れないだろうか

接敵次第
牽制に下手なブラスター銃で足止め

ボムファイアは忌々しき砲で防御
拘束具の瓦礫を砕き、熱源充填開始
【報いの火】で圧縮プラズマ砲を放って後に託す
狙いは奴ではなく逃走経路、もしくは脱出艇を破壊する

反動を抑える為
アンカーの固定が必要だがそんな事をしている場合ではない

確かに熱線銃は容易く鉄板を貫く
しかしこの兵装には僅かな耐炎強度がある
その武技、利用させて貰う


都槻・綾
※絡みアドリブ歓迎

星詠みとして宙を見上げる日々ではありましたが
此の身で星海へ航れるとは
幻想譚か寝物語のようですね

穏やかな口調乍ら
第六感の報せへは意識を研ぎ澄まし
敵の熱の名残や痕跡を見逃さずにおく
不意打ち等に警戒、見切りを確かに

おや
銀河の旅へ向かわれるのですか?

逃亡敵へ
柔和な笑みのまま放つ符は流星の軌跡
捕縛にて皆を援護
オーラ防御や見切りで敵攻撃をいなす
皆の護りにも活用叶うなら、オーラ防御で支援

私はね
どんなに過酷な物語でも
めでたしで閉じられるものが好きですよ
悪夢に魘されるのは寝覚めが悪いでしょう
だから貴方も――美しき星海に抱かれて、安らかにお休みなさい

終了後は
新兵さん達の元気な姿も拝見出来たら幸い


パウル・ブラフマン
【SPD】

【騎乗】と【操縦】、【追跡】技能を駆使し
『ゴッドスピードライド』で現場へ急行すっぜ。
※可能なら位置情報を受信
※不可なら【コミュ力】で情報収集し、【野生の勘】も頼る

標的発見後は
進路を塞ぐべく、やや前方へ回り込んで停車。
【先制攻撃】とばかりにKrakeで四口【一斉発射】をお見舞いしてぇ。

お客様ぁ、無賃乗車はご遠慮くださーい!
…御代はテメェのタマで貰うぞ、運転手舐めんなオラァ!!(ドス声)
上等だ【2回攻撃】でもう一発くれてやるよ。

敵の砲撃は
可能な限り【見切り】で避けておきたいけれど
難しそうであれば、その場を動かず壁役になることを選択。
後続の仲間の到着まで持ち堪えてみせる!

アドリブ共闘歓迎!


ニヒト・ステュクス
さて船が広すぎなきゃいいけど
オルタナティブダブル(分身)を僕達と別ルートで追っ手に出す
挟み込めたら御の字
無理なら解除
今回は敵の目に1回しか触れさせない

会敵したら
最初は敵から見えぬ様
師匠(f12038)の背にぶらーんと隠れ攻撃防御

ボムファイア発射後に飛び出し
第六感で攻撃見切りつつ接敵
咎力封じを試む
「おっとそっちは別の猟兵が向かってるけど?
分身利用し
「さぁどっちが本物だ?
絡繰意図でフェイント交え隙を作る
チャンスは1回!

苦戦しそうなら仕様がない
カルマ…頼んだよ(真の姿:本来の人格。無邪気な少女
「あの人わるい人?殺していいんだねっ!
わたしは小細工なしだよ
見切りながら肉薄
十徳ナイフできりきざんであげる!


レイ・ハウンド
ニヒトと(f07171)
さぁて本気(真の姿)出すか…(つっても何か変化がある訳ではない

敵を補足したら兎に角足を狙撃し逃走を阻むぞ!

おい!人を肉盾にするな!
と文句たれつつかばいながら武器受けで防御
遠距離パワータイプ、攻撃こそ最大の防御ってか?
近づかせねぇつもりだろうが、接近戦に持ち込めば…!
ジリジリでもいいから近づいていく

ブラストキャンセラーは厄介だが
だったらいっそ狙撃で撃ちまくり
そっちに手数を使わせるか
2回攻撃で休む暇も与えねぇ

叩き斬るのは最後の切り札
弟子の封じ込めの成果は問わん
攻撃飛んでこようが捨て身の一撃で接近し
鎧をも砕く1撃を叩き込む!!
おい、小娘(カルマ)どいてろ!テメェじゃ火力不足だ


土斬・戎兵衛
本命発見でござるな
雑兵を同業に任せきりにしていたのは、真打ちの登場に備えていたが故。その首、拙者が貰い受ける。

逆探知した敵の居場所を発見者に聞き、速攻をかけるでござる
敵も逃げながら撃ってくるやもしれんが、銃口の向きにしか攻撃できぬ武器など『"軌道の先見"』を使うまでもなく【見切り】きってみせよう

剣の間合いまで近づくのが困難なら、『使ってナンボのお金ちゃん☆』で投げ銭の【早業】乱射で攻撃でござる
撃ち落とされても、地に落ちた硬貨を回収せんとする意思が拙者の脚を強化する。容易には逃げられんぞ

過去の者に拙者の業前を見せても仕様がない。
……ちゃっちゃっと終いにして、新兵の人達に侍アピールしに行こーかな


メンカル・プルモーサ
……ん、見つけた……みんな、あっち……
…何処まで監視してるかだけど、手の内結構見られた……

逆探知した箇所に【不思議な追跡者】を仕掛ける……成功すれば追えるし
成功しなくても位置は判ってるからみんなを案内する……
(足が遅いので誰かに抱えられての移動になるかも)
……サワノを見つけたら、進行方向を塞ぐ様に【愚者の黄金】で壁を作る…
これで諦めてくれれば良いけど……【愚者の黄金】を相殺して逃げようとするなら今度は【面影映す虚構の宴】で『黄金の壁の幻影』を作って塞ぐ……
【愚者の黄金】だと思って無駄うちしてくれればめっけもの…

諦めて戦う様なら【崩壊せし邪悪なる符号】でブラストキャンセラーを邪魔して援護する…


黒木・摩那
★ガンマンの先回りをする

システムが破られたのを悟って、すぐに逃げを打つとは
敵ながらいい判断してます。
これは追跡にも苦労しそう。

位置は探知できてるので、行先を推定して先回りを試みます。

船外に逃げるならば、ここに来るときに使った船に戻るはず。
逃げてる先に船外ハッチや宇宙港があれば、
そこに船があると思われます。
電脳ゴーグルで(情報収集)します。

推測通りに逃げるガンマンを見つけたら、
UCサイキッククブラストを打ち込んで、足を止めます。

これでハッキングの犯人を捕まえることができると良いのですが。



「動作点検完了。任務継続に問題なし」
 戻れた、と呟いたマハティ・キースリング(はぐれ砲兵・f00682)は現実感覚に身を慣らすように腕を曲げ伸ばした。
「ところで学生達、首謀者の脱出路について心当たりはないか? 宙を行かれたら打つ手が無い」
「ということは、逆に言えばこの宇宙船の外に出ようとしているということですよね? 艦長に報告して、ドックやハッチの警備を強化してもらったらどうでしょうか」
 新兵の少年が答えると、黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)がすぐさまその情報を電脳ゴーグル内臓の端末に入力。
「船外に逃げるならば、ここに来るときに使った船がどこかにあるはずです。それを探してみましょう。システムが破られたのを悟ってすぐに逃げを打つとは敵ながらいい判断してます。メンカルさん、逆探知で判明した座標を転送して頂けますか?」
「……ん、見つけた……皆、こっち……」
 即座に、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は発見した時点での敵座標の情報を他の猟兵たちと共有し、案内役を買って出た。
「……ひとまず、【不思議な追跡者】に追わせてる……問題は何処まで監視してるかだけど……手の内結構見られた……」
「こちらの偵察機も見られた、間違いなく墜とされるだろうな。ハッキリ言って追撃戦は不得意だが、やるしかあるまい」
 メンカルとマハティの危惧する通り、こちらの戦闘情報を握られた上での逃亡はその成功率がかなり高まると予想できる。
 だが、土斬・戎兵衛(営業広報活動都合上侍・f12308)は任せろと言わんばかりの微笑をその横顔に浮かべると、分渡の柄に手を添えて見得を切る。
「雑兵を同業に任せきりにしていたのは、真打ちの登場に備えていたが故。その首、拙者が貰い受ける!」
 メンカルのAIが告げる座標を手がかりに、戎兵衛は先陣を切って駆け出した。
「背に腹は代えられない。スクラップになるが、勘弁してくれよ」
 自律型の流体金属がマハティの意志を汲み取って、摩那の示す方向の障壁をひと思いに撃ち抜いた。そうして近道でも作らないことには、既に逃亡を開始している敵に追いつけはしない――!
「敵の所有と思われる宇宙船を発見。光学迷彩によって鑑底に隠してありました。向かっているのは、そこに最も近い非常用ハッチとみて間違いないかと」
 摩那の電脳ゴーグルに二つの点が結ばれる。
 ひとつは、メンカルの放つ追跡者を示す点。そしてもうひとつは、先ほど発見したばかりの宇宙船だ。
「二手に分かれましょう。追跡する者と、先回りする者と。私は後者を担います」
「了解、っと。さて船が広すぎなきゃいいけど……」
 くい、と帽子のつばを深く被り直したニヒト・ステュクス(誰が殺した・f07171)の背後から〝もうひとり〟が現れる。
「ぎりぎりいけるかな? 君はそっちの子についていって。師匠、行くよ」
「さぁて本気出すか……」
 師匠であるレイ・ハウンド(ドグマの狗・f12038)と並走しながら、ニヒトはぽつりと呟く。
「見た目は何も変わってないけどね」
「男は中身だ、中身!」
 
(「星詠みとして宙を見上げる日々ではありましたが、よもや此の身で星海へ航れるとは……」)
 骨董を起源とする宿神らしく、どこか陶然とした雰囲気を纏う都槻・綾(夜宵の森・f01786)は第六感と僅かな痕跡の発する違和感を頼りにその男と邂逅した。
「おや。銀河の旅へ向かわれるのですか?」
「新手か!?」
 とっさにブラスターを抜いたサワノだが、瞬時に割って入った宇宙バイクが激しくエンジンを噴かせたままその進路を阻むように停止。蒼き流星を思わせる軌跡を描いて登場したパウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)は、にかっと八重歯を覗かせた。
「お客様ぁ、無賃乗車はご遠慮くださーい!」
「くっ――」
 間髪入れず、問答無用の【先制攻撃】――パウルの触手が四方から放つ砲撃がサワノの肩口を撃ち抜いていく。
「こちらの位置情報を共有されたか……!」
「そうゆうこと」
 トン、とパウルはヘッドフォンの耳元を指で叩いた。
「……つーわけで、御代はテメェのタマで貰うぞ、運転手舐めんなオラァ!!」
 立て続けに放たれる一斉砲撃から逃れようと後ろへ跳躍しかけたサワノは、はっとして目を見張った。柄杓を象る七つの星が座を紡ぎ、その中央へサワノを縛り付ける軛と化している。
「なんだ、これはっ……!?」
「符術と申します。私はこれを用いるのを得意としておりますがゆえに」
 鷹揚な微笑みとは裏腹に、綾はサワノの緊縛を更に強めた。無論、その状態で彼にパウルの斉射を逃れる術はない。
「私はね、どんなに過酷な物語でもめでたしで閉じられるものが好きですよ」
「――舐めるなッ」
 美しい言葉で綴られた最後通牒を振り払うように、サワノは瞬きの間に熱線銃の引き金を引く。それはちょうど、他の猟兵たちが駆けつけるのと同時の発砲でもあった。
「ふっ、銃口の向きにしか攻撃できぬ武器など『"軌道の先見"』を使うまでもないわ!」
「!?」
 乱入した戎兵衛が【早業】によって親指で銭を弾き飛ばすのを、サワノは反射的に迎撃。だが、撃ち落とせば撃ち落とす程に戎兵衛の勘は冴え渡り、銭の掠めた傷口が抉られたような痛みを訴える。
「くそ――」
 多勢に無勢、と逃げ道を探すサワノの眼前に黄金の紗幕が輝いた。
「汝は財貨、汝は宝物、魔女が望むは王が呪いし愚かなる黄金」
 はっとして後ろを振り返ると、膨大な魔力を纏ったメンカルの指先が緻密な魔法陣を紡いで黄金の壁を作り出していた。
「……逃げ場はもう、ない……さっさと諦めたら……?」
「ちっ――」
 ブラストキャンセラーの連射は、しかしメンカルの多彩な技の前にその真価を封じられる。
「我が記憶よ、戯れ、演じよ。汝は役者、汝は舞台。魔女が望むは想いより出でし虚ろ影」
 偽物の壁に向かって無駄弾を消費するサワノの足元目がけ、摩那は開いた両手を突き出した。静電気が髪を浮かせ、周囲に火花を散らす。
「なに!?」
 突然、足に高圧電流――サイキックブラストの麻痺を受けたサワノは身じろぎすらままならない。仕方なく、彼はその場でブラスター銃の出力を最大にまで引き上げた。
「燃えろッ……!!」
 ――だが、その爆発よりもマハティが使い物にならない牽制用のブラスターを投げ捨て、砲を盾とする方が早い。拘束具と化した瓦礫が剥がれ、急速に熱源の温度が上がっていく。
(「確かに熱線銃は容易く鉄板を貫く。しかしこの兵装には僅かな耐炎強度がある。もってくれ……!」)
 その脇でちゃっかりと自分の背に隠れる弟子に、レイが叫んだ。
「おい! 人を肉盾にするな!」
 後半の台詞は激しい炎の塊にかき消され、轟音の中に呑まれていく。
(「遠距離パワータイプ、攻撃こそ最大の防御ってか? 近づかせねぇつもりだろうが、接近戦に持ち込めば……!」)
 眼前に掲げた黒鋼で炎をいなしながら、レイは一歩ずつ、しかし確実に距離を詰めていく。その眼前へと、己の気で満たした薄紗を両手で頭上へと掲げた綾が歩み出た。
「どうぞ、後ろへ」
「悪ぃな!」
 綾が舞うように歩を進める度、僅かに生まれる炎幕の間隙を縫うようにしてレイの指が愛銃のトリガーを引いた。
「効くものか!」
 襲い来る弾丸をブラストキャンセラーで撃ち崩すサワノはそれが囮であるとは知らない。ボムファイアの炎をかき分けるように飛び出したニヒトが嘲笑と共に告げた。
「おっとそっちは別の猟兵が向かってるけど?」
 はっとして、注意を逸らされたサワノの手首に枷が嵌る。視線の先には――先行させた分身の姿。一瞬、サワノの意識が混乱する。
「さぁどっちが本物だ?」
 そして、駄目押しの絡繰意図――ニヒトの言動に惑わされたサワノの視線が眩暈のように揺れた。
「く……このぉおおおッ!!」
 追い詰められたサワノの銃口からブラストキャンセラーの斉射が迸る。
「ちっ! 抜かすわけねェだろ、諦めが悪すぎんだよテメェはよォ!!」
 雄叫ぶように吐き捨て、パウルはエンジンを噴かしてサワノの退路を断ちにかかった。武骨なバイクの外装が盾となって弾丸を受け止める。
「よっし今だ、やっちまいな!!」
 その時、エネルギー充填を終えたマハティの圧縮プラズマ砲が閃光を迸らせた。
「な――」
 標的はサワノ――ではない。
 彼の肩口を掠めた【報いの火】は艦体の一部ごとサワノが乗って来た宇宙艇を破壊し尽くしたのだった。アンカー無しに発動した反動で、マハティの体は激しく壁へと叩きつけられた。
「く……ッ、これで奴は逃げられない。後は任せた」
 宇宙船の自動修復装置が艦体の亀裂を塞ぎにかかる中、サワノは一人でも道連れにしてやろうと再びブラスターの出力を上げる。
「……もう、読めてる……」
 だが、既にその技を目にしているメンカルの【情報を分解する魔術】によって爆発は相殺され、ニヒト――否、〝カルマ〟までは届かない。
「あの人わるい人? 殺していいんだねっ!」
 弾幕をかいくぐり、少女はまるで己の一部のような器用さで十徳ナイフの全てをサワノに味わわせた。
「ぐ、ああッ!!」
 全身を裂かれ、血を噴き出しながらも彼は銃口を差し向ける。
 その執念に綾はやれやれと肩を竦め、夜鳴鳥が囀るように呟いた。
「悪夢に魘されるのは寝覚めが悪いでしょう」
 だから貴方も――美しき星海に抱かれて、安らかにお休みなさい。子守唄のような囁きと星座の瞬きがサワノを包み込む。
「体が――……」
 動かない、という喘ぎに床を踏む靴音が被さった。
「過去の者に拙者の業前を見せても仕様がない。……ちゃっちゃっと終いにするとしようか。後がつかえているのでな」
「おい、小娘どいてろ! テメェじゃ火力不足だ」
 サワノの懐に入り込んだ戎兵衛の銭が至近距離で炸裂し、その間隙を突いたレイのあまりにも原始的に過ぎる一撃がその頭上から叩き込まれた。
「がッ……」
 断末魔の叫びと共に、サワノの姿が粒子となって消滅。人型を失ったそれは微かに発光しながら塵のように舞い散った。

「ありがとうございます! おかげで全員無事です」
 猟兵たちに救出された第11班の面々は口々に礼を言うと、整列して一斉に敬礼した。既にオブリビオンの脅威は去り、周囲で艦体修理用のロボットが慎ましく働いている中での出来事である。
「珍しい剣ですね、どういう風に使うんですか?」
「これは和刀といって、侍の命にござる」
 と、格好つけてサービスする戎兵衛はここでも営業広報活動に余念がない。
「侍というんですね!」
 無邪気に目を輝かせる新兵たちを、綾は微笑ましそうに見守っている。
「これにて一件落着。平和は無事に取り戻されたといったところでしょうか……」
 此度の物語は幻想譚か、或いは寝物語か。
 いずれにしても、猟兵たちの華々しい活躍が銀河を駆けて語り継がれるだろうことは紛れもない事実であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月03日


挿絵イラスト