迷宮災厄戦⑨〜例え美しかろうとも~(作者 みども
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●時よ止まれ
 ―――女王は、そう願ったのだ。
 だって女王が恋した少年は、老いるのだから。老いるのならばいつか死ぬ。死んだのならば別れが訪れる。
 そんなの許せるはずがない。
 それは、歪み、ねじれた御伽噺。
 少年に恋した女王様は、少年を永遠に凍らせ、少年wの探しに来た少女も、彼の元居た世界も、総てを凍らせました。
 そうして時すら凍った城の中で、女王様は少年と永遠に共にありましたとさ。
 めでたしめでたし――。

●例え美しかろうとも
「何がめでたしなんやろうね?」
 コココと狐のように笑って、アイリ・ガング―ルはバット・エンドで締めくくられる御伽噺を語り終えた。
「さて、お主ら。此度も戦争じゃ。そしてまずは動きやすくなるためにものぅ。近場から攻略していくで。そのために時間凍結城を制圧してもらいたい。お主らが戦うのは、『雪の女王』じゃ」
 どういったオブリビオンかというと、今語った通り。人間の少年に懸想して、時すら止めた女王だ。
「まぁ実際の所は『そういうオブリビオン』という所じゃろうが」
 女王は時を止められる訳ではなく、彼女が懸想した少年はもう存在しない。あくまで彼女は、時間凍結城に存在するオブリビオンの一人、という存在でしかない。
「お主らにはこやつを撃退してほしい訳じゃが、接敵した段階で、もはや存在しない『少年』を奪われると思って相手から攻撃を加えてくる」
 女王は戦場を自分に有利なフィールドに変えて攻撃してくるのが特徴だという。そのうえで、特筆すべき条件として、
「10倍じゃ。『敵とお主らの思考を除くすべての時間の流れが10倍遅くなる』。ユーベルコードも物理現象もじゃ。じゃから戦闘中にお互い声を掛け合っての連携は取れないと思っていいぞ。声など発しても10倍に間延びした音が流れるだけやからのぅ」
 そのうえで、思考だけは通常通りらしい。だからこそそこに隙がある。思考以外の全てが遅い状況で、いかに思考を巡らせるかが大事との事だ。
「ともかくまずは此処を抜けて行かねばならんからね。頑張ってくれな?」
 そう言ってアイリは君達を送り出した。


みども
 どうもです。今回のキモは、『思考を除いたすべての肉体の動き、放たれたユーベルコードなど、敵味方の全ての行動速度が10分の1』という状況。一手一手の合間にある思考時間を有効活用した人が勝つでしょう。
 頂いたプレイングから書けるやつ採用して8人位で完結させる予定です。予定が変わったら自己紹介欄にも記載するので、随時そちらもご覧ください。
 そういう訳でよろしくお願いします。
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第1章 ボス戦 『雪の女王』

POW ●【戦場変更(雪原)】ホワイトワールド
【戦場を雪原(敵対者に状態異常付与:攻撃力】【、防御力の大幅低下、持続ダメージ効果)】【変更する。又、対象の生命力を徐々に奪う事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD ●【戦場変更(雪原)】クライオニクスブリザード
【戦場を雪原に変更する。又、指先】を向けた対象に、【UCを無力化し、生命力を急速に奪う吹雪】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ ●【戦場変更(雪原)】春の訪れない世界
【戦場を雪原に変更する、又、目を閉じる事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【除き、視認外の全対象を完全凍結させる冷気】で攻撃する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


星群・ヒカル
永遠じゃないって絶望を乗り越えてこその愛だろ……、と、啖呵を切っても無駄なんだな、つまんねぇの
仕方ないが、無言の喧嘩といくか!

指先向けられる前に勝負決めないとな
宇宙バイク『銀翼号』に『騎乗』し、可能な限り接敵
おれのUCは一瞬で発動できるが、少しのまばたきの隙も命取りだ
『パフォーマンス・存在感』でニヤリと笑い
手元の動きで銀翼号のヘッドライトを点灯させる
眼球の動きがずれ、気が逸れる一瞬……その一瞬が、何より大事だ

こんな変な機械の乗り物見たことないだろ?
挙動が予想できないモノに、対応する時間は遅れる
そして光はどんなに遅くとも、地上の何よりも速い……!
その隙で【超宇宙・真眼光波動】で敵を焼き尽くす!


黒川・闇慈
「別に貴女が誰と共に永遠を過ごそうが構いませんが……進軍路たる戦場の真ん中で時間凍結までやられるとたまったものではありませんねえ。クックック」

【行動】
wizで対抗です。
まずは防御。ホワイトカーテンの防御魔術を球状に全方位展開。氷結耐性の技能で冷気を防ぎましょう。
さて、この間にも思考はできるわけですが、相手のUCはどうも雪原を条件に発動している様子。これを妨害してみましょう。
防御で時間を稼ぎつつ高速詠唱、呪詛、呪詛耐性、全力魔法の技能を用いてUCを使用。後手で戦場を書き換えてしまえば凍結攻撃もできないでしょう。呪詛の海に沈めて差し上げましょうか。


【アドリブ歓迎 詠唱フリー】


アリシア・マクリントック
すべてが遅くなるというのならこれでいきましょう。……変身!マリシテンアーマー!
敵の動きを自分で把握しようとするのは無駄が多くなりそうです。カミカクシ・クロスで姿を隠し、センリガン・ゴーグルのセンサーを頼って敵を捕捉しましょう。
感覚的には引き延ばされるとはいえ勝負は一瞬。一撃にすべてを賭けます。
息をひそめて暁を構え、精神を集中……
カミカクシ・クロスの迷彩効果を信じてこちらからは動かずに向こうから間合いに入ってくるのを待ちます。これぞゼンの心です。
そして好機が来たら全力の一太刀を!


(つまんねぇの)
 普段であれば、『永遠じゃないって絶望を乗り越えてこその愛だろ!』とでも啖呵を切るべき所であるが、凍結した時間の中では、啖呵など間延びした音の流れにしかならないという事実に内心不満を抱きながら、星群・ヒカルは、いつもより重く感じるアクセルを踏み込んだ。
 宇宙バイク〈銀翼号〉が唸りをあげる。その音すらどこか鈍い。
(仕方がないが、無言の喧嘩だ!)
 
(やっぱり重い!)
 まるで水の中を走ってるかのよう。何もかもが10倍遅くなっている中で、それでも。
(突っ切る!)
 いくら遅くなろうとも、正面から来たならば女王も気付く。無言で、けれど敵意に溢れた視線がこちらを射抜き……ゆっくりとその手が持ち上がってゆく。《クライオニクスブリザード》だ。
 雪の女王の力が、戦場を雪原へと変えてゆく。手が上がりきり、指先がこちらに向いたら、ヒカルは終わりだ。
 己の持つUCは無効化され、吹雪の中凍てつき終わるだろう。

(寒いな)
 その事実に、ゆっくりと流れる時の中、冷気だけでない寒気が背筋を走った。それと同時に思い起こすのはかつての時。もう1年以上前の事。ヒカルは、『皇帝』と呼ばれる者に立ち向かった。仲間達と共に。それに比べて今この場での状況はどうだ?
 今、雪の女王へと向かってゆくヒカルは独りだ。確かにあの時はオブリビオンフォーミュラーであり、今回相対するのはただのオブリビオンだ。相対する相手
 それでも、凍れる時という慣れない状況で戦うにはあまりに強大に相手。それに愚直に突っ込んでゆくにも関わらず、

(少しのまばたきの隙も命取りだ……!)
 ニヤリと宇宙番長は不敵に笑った。
 〈銀翼号〉の、ヘッドライトが点滅する。
『……!』
 雪の女王の声なき叫びが上がり、思わず彼女は目を閉じた。なるほど、確かに。これでは〈クライオニクスブリザード〉の力も使えまい。なぜなら、眼を閉じては指などさせる筈もない。
(気が逸れただろ……!)
 声なき世界の中、ヒカルは星映す魔眼で眼を閉じた女王を、その星映す魔眼で見据えようとする。
 
 なるほど、ヘッドライトの光でその眼を灼き、一瞬でも目が逸れるか、閉じた瞬間を狙ってUCを叩き込む。方法は間違っていない。



―――――シン、とその瞬間、音すら凍った。



 そう、《春の訪れない世界》さえなければ。

 女王が眼を閉じたその瞬間、思考自体は平常に回転するオブリビオンは、《クライオニクスブリザード》から《春の訪れない世界》を使用するUCを変える事にした。『眼を閉じたうえで、視界外の全てを凍結させる冷気』が、辺り一面に放出される。
 たしかに時の流れがいつもの10倍になっていようと、UCによる冷気の浸食がそもそも尋常ならざる程早い。そのうえで相手の策を利用したカウンターの形で発動したのだ。
 攻撃は、コチラのほうが早い。
 
 その結果が、『音の無い』世界だ。女王は、相手からの攻撃がない事に内心で一息ついた。時が止まったままの愛する少年と、女王を狙う不届き者はいなくなった。後は眼を開けて氷の彫像になった不届き者を見据えて、その彫像を割り砕けばいいだけ。そう思っていた。

 だから、

「!?!?!?!?!?」
 女王は、己の体に衝撃が走ったことが信じられなかった。
 熱いアツい。魔力の熱が体を灼く。眼を開ければそこには、
(俺は、いつも独りじゃないぜ!)
 『氷結耐性』の白いカードを周囲に浮かせて、冷気を防ぎ、《超宇宙・真眼光波動/チョウウチュウ・メンチバースト》を放ったヒカリが今もなお、女王へと向かってバイクを走らせていた。


(クックックッ……命中したようですね)
(えっ!?いきなり笑いだしてますこのお方!?)
 〈カミカクシ・クロス〉に無理やり二人して包まれる事でどうにか雪の女王から隠れおおせていたアリシア・マクリントックは、いきなり笑いだす同じく隠れていた相手、黒川・闇慈がいきなり笑いだした事に内心でぎょっとした。
 超スローモーで絞り出される男の笑い声は、正直ちょっと面白かったがそれを態度に表す事はない。何せ、そんな些細な動きまで10倍に延長されるのだ。一々反応していたら折角ヒカルの不意打ちで得た時間をフイにする。
(ゼンの心です……!ともかく、〈カミカクシ・クロス〉、解除……!)
 どうやら雪の女王は、未だヒカルが生き残っていたことに動揺している。そのため、ヒカル同様、闇慈の〈ホワイトカーデン〉によって冷気を防いだこちらをまだ認識できていない。

 そう、つまるところヒカルは今回も仲間達と戦っていたのだ。一人で戦うと思わせて、ヘッドライトで隙を作ったと思わせる。女王の視界が光で埋め尽くされ見えなくなった瞬間に、闇慈は己達とヒカルを守る障壁を展開したのだ。
 そして強い光に灼かれた衝撃に眼を閉じて、雪の女王は予想通りに《春の訪れない世界》を使い、それは防がれカウンターの《超宇宙・真眼光波動/チョウウチュウ・メンチバースト》が炸裂する。

(どうだ!?光は眩しいだろ!!)
 そしてヒカルにとって、『仲間/ダチ』は光であった。

 その灼熱に貫かれ、悶える雪の女王を見据え、アリシアは飛ぶ。今。必要なのは速さだ。いくら精神が、女王の認識がこちらを捕えようと、彼女は今『痛がっている』。
 ならばその動作が完結するまでこちらに対する対応は取れず、だからこそ今が
(好奇……!)
 そのために敢えて姿を隠していたのだ。背後から間延びした闇慈の笑い声が響く。どうやら魔術師の彼は、この状況でも前に出る訳ではないようだ。
(大丈夫でしょうか?)
 そもそも、笑ってる。それはつまり雪の女王と同様、次の動作で後れを取る筈で、けれどそれに疑問を呈する時間は無い。
 精神と時間の乖離したこの空間では、心が迷って今行っている事と別の行動をとろうとすると、体の動きがあべこべになってしまうからだ。

(フェンリルアーマー……!)
 いつもは一瞬で終わる筈の換装も、今日ばかりは遅く感じる。高機動形態に変化したアリシアは、心を鎮めて、ただ一つ。『遅い時間の中で出来るだけ速く女王の元へとたどり着けるように』駆けだした。


(クックックッ)
 カミカクシ・クロスを解除して、飛び出していくアリシアを見送って、黒川は闇慈は内心で笑う。
「ク~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ」
 いや、実際に笑っていた。10倍遅くなる空間だからこそ無駄な事は出来ない筈の空間でそれは致命的だ。事前に打ち合わせした通りに雪の女王に向かってゆくアリシアも驚いた気配を発している。
(問題ありませんよ、アリシアさん)
 そう。闇慈は、何ら無意味な事はしていない。
(世界は広い。アックス&ウィザーズのように魔術が公にされている世界もありますが、UDCアースのように完全に秘匿されている世界もある。)
 そしてそういった秘匿された世界では、魔術を隠れて研究していくための、『小手先の技術』もあるものだ。

『ク~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ/日は沈み雨が来る。生は消え死が現れる』
 それは単なる間延びした笑い声の筈。けれども魔術師であるからこそ可能な芸当。即ち【高速詠唱】の応用だった。


『ク~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ/暗く、黒く、どこまでも我らを包め亡者の嘆き』
  一般的な会話の裏に魔術的な意味を隠す、という技術。とはいえ、本来であれば、笑い声に多くの意味を隠すことは難しい。
 けれど今は、『時が10倍遅く流れる空間』なのだ。発声も、空気の震えも、総てが間延びして遅い。だからこそそこに多くの意味を隠す余地がある。
 
《ク~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ/亡域形成・怨呪大殺界》
(クックックッ……いつもより笑ってしまいました)
 そして詠唱が結ばれる。瞬間、戦域に黒い雨が降り出した。

(これは……暖かいですね)
 急速に広がった黒い雨に打たれながら、アリシアはそう感じた。
 降りしきる黒い雨はどうやら本質的に雨粒という訳ではなく、体に沁み込まず、ただ表層を伝って流れ落ちてゆく。そしてそのうえで、体にそれが当たると、不思議と暖かさと力が増してゆくのだ。
 前を見据える。眼前では、今の今までヒカルが《超宇宙・真眼光波動》を連発して、魔力光波動で女王をその場に縫いとどめてくれていた。

 そしてアリシアが近づいたことに気付いて、それを一旦止める。すれ違い様、僅かにアイコンタクト。そしてそのまま一気に肉薄。
(精神を研ぎ澄ませて……いざ!)
 手に持つ〈鳳刀『暁』〉が奔る。《淑女の見切り/ブシドーヴィジョナリー》が刃に、正しい軌跡を描かせる。
 なによりも大切なのは意識する事。いつもの精神で、いつものように意志がダイレクトに体に伝わらないことをわきまえる。
 そうすれば確かに、

 ヒュ、と。鈴のなるような音ではない。しかし、空を切る音がして、確かに刃は、女王の体を切り裂いた。
成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

神元・眞白
【SPD/自由に】
綺麗な人。時間の流れは誰しもあるけれど、その速さはまちまち。
……そう、恋する人が自分と違うなら誰しも抱える問題。
けれど、そのいつかが来るならちゃんと構えておかないと。
大事なのは心構え。捻じれて歪まないよう。――反面教師。

場所が変わるのなら寒くなりそう。符雨、上着を。
私達は人形だけれど生命力が在る様に演技はしないと。おぉ、さむいさむい。
こういう時、人の仕組みと違うことが私達の利点ね。

符雨、私は受けに回るから攻め手はお願いね。マカブルの排出は時間差で。
考えるだけの時間はあるから目立たない様に回り込んで。合図は、後程。
少しばかり話はしたいのだけれど、それだけの時間があるかどうか。


シール・スカッドウィル
10分の1……相手も動きが遅くなるなら、
「ごり押しが通せるかも、か」
アクセラレートに【斉奏】を乗せる。
加えて、ヨトゥンの冷気吸収で環境自体による影響も低減、と。
さて、通常武装であれば攻撃回数だが、一つは加速術式。
で、あれば、

「加速の、更に9倍だ――!」
指を指される前に動いて、無理矢理その場所まで到達。
今回、自分の安全は度外視だ、後続のために確実に穴をあける。

「寿命くらい幾らでもくれてやる、じっくり味わえ」
敵をガッチリ捕縛。
後は【斉奏】で二種の武装特性を接続。
ヨトゥンの冷気吸収を加速させ、自分ごと敵を灼熱地獄へご招待だ。

まぁ、氷の鎧で守れはするんだが……【斉奏】の反動無視してるから。
グッバイ。


ヴィクティム・ウィンターミュート
…停滞の冬、か
まったく、俺を見ているようで嫌になるぜ
だが俺とお前で決定的に違うのは…俺にはどうもお人好しの知り合いが多いってことだ
──だからこそ、俺はより凍えていたくなるんだけどな
まぁいい、ランといこう

思考はそのままに、それ以外は10倍遅いか
つーことはこりゃ…先に自分の手札を通した方が勝つ
『Dirty Edit』を用意、予知によりサイバーデッキを準備
奴は雪原を変えるのと、眼を閉じるというアクションが必要だ
対して俺は腕を向けるだけ…この差で間に合う
ユーベルコードを書き換え、「自身の生命活動"のみ"を停止させる冷気」に変更
ただ凍るだけじゃ、物足りないだろ?

俺の方が凍えてる、故に…上手だったのさ


 先にダメ―ジを与え離脱したのを確認して、新たに猟兵達が加勢する。
(おお、さむいさむい……)
 己の所有する自動人形たる符雨に上着を着せてもらいながら、神元・眞白は寒そうな演技をした。
(こういう時、人の仕組みと違うことが私達の利点ね。)
 もとより眞白も自動人形。本来は寒さに震える事が無いが、雪の女王によって氷の雪原へと変わったこの場にて、影響を受けているフリをする事自体は効果があるだろう。
 一歩、踏み出す。金糸短髪のメイド少女を前に配して、一歩踏み出してゆく。女王へと相対するために。

 そして、少女と符雨を追い抜くように、黒い影が二つ、奔っていった。
 

(〈アクセラレート〉……!)
 シール・スカッドウィルの持つ加速術式が起動する。
(10倍遅くなるのなら……!)
 雪原を、その足が踏みしめる。体が重い。当然だ。いかに加速術式を使おうが、時間自体が遅くなっているのなら、その歩みはそれでも遅い。
(加速術式の、更に9倍だ――!)
 『10倍遅くなるのなら、10倍速くなればいい』。まるで小学生のような乱暴な理論を、その身に宿す超常の力がシールの身を顧みない事で発動する。

 《斉奏/レゾナンス》が発動し、精霊の力が加速術式と混ぜ合わされる。本来であればうちに己の攻撃の速さを9倍にもするそれを、加速術式に重ね合わせて発動。
 そうすれば当然、物理法則と時の流れが体を苛み、【寿命が縮まる】
 そしてそんなことは織り込み済みである。
 並走する黒い影さえ追い抜き、シールが一気に雪の女王へと距離を詰めた。

 それでもなお、10倍の時間の中で、シールが雪の女王へとたどり着く前に、雪の女王がシールへと指先を向ける方が早い。
 だから、
(飛威―――)
 眞白の思念が送られる。シールの懐にあった鎧に身を包んだ騎士が描かれた金色の符が光を発して、シールの前に黒髪のメイドが完全に無防備な状態で顕れ、
(……!)
 《クライオニクスブリザード》の吹雪を、その身に受け止めた。

(綺麗な人……)
 最後尾にいる眞白が、吹雪の影響を受ける事は無い。けれど体の端々が凍り付くのを感じる。飛威とつながる事で、そのダメ―ジを肩代わりしているのだ。
 常人であれば体が凍り付く異常な状況と寒さと痛みに思考が続かないであろうが、自動人形には関係がない。己の特殊な体に感謝しつつ、ふわりと、眞白は思った。

(時間の流れは誰しもあるけれど、その速さはまちまち。……そう、恋する人が自分と違うなら誰しも抱える問題)
 苦しみを感じずとも、無防備な状態で受けた冷気は確実に眞白の『機能』を奪ってゆく。霞んでゆく視界の中、氷のような少女は、女王に己との相似を見出した。
 これから生きていくのならば、寿命の違いはいつかはぶつかる問題だ。最近海に誘ってくれた彼とも、何時か分かれは来よう。

(けれど、そのいつかが来るならちゃんと構えておかないと)
 悔いのないように生きねばならない。けれど悔いの無いようになんか、どう生きればいいのだろうか。分からない。けれど今少なくともこの場にてやる事は分かっている。
 無防備にUCを受けた事で、その身に宿るUCが発動する。


 《オペラツィオン・マカブル》が発動し、飛威を襲っていた吹雪は掻き消え、代わりに女王を吹雪が襲う。
(大事なのは心構え。捻じれて歪まないように―――反面教師)


 女王との距離がある。だからこそ加速してもなお、シールより先に女王の方が早かった。しかし眞白のお陰で相手の攻撃を掻い潜り、どうにか距離を詰める事が出来た。
 けれどまだ、シールが女王に肉薄するに至ってはいない。
 そして敵の攻防は一体であった。
 吹雪にまかれ、そのダメージで思わず女王は眼をつぶる。
 瞬間、世界が『凍る』。《春の訪れない世界》だ。
 それは先ほどの仲間たちの焼き直し。凍えた時の中ですらほぼノータイムで発動できるそのUCは発動条件の割に切り札として、申し分ない威力と範囲を備えている。

(…停滞の冬、か)
 だからこそ、必ず使ってくると予測も容易いのだが。
 雪の女王が《春の訪れない世界》を使用する前、反射された吹雪にまかれたタイミングで、ヴィクティム・ウィンターミュートは〈右腕改造型攻撃用サイバーデッキ『ヴォイド・チャリオット』〉を起動する。
 そのうえで、右腕を向けんとするも、あまりにも動きが遅い。十倍に加速された時の中、〈ヴォイド・リフレックスエンハンサー〉によって加速した思考の中、シナプスが瞬く。
 もはや現実との相対時間は数百倍と言っても過言ではない。

 
(まったく、俺を見ているようで嫌になるぜ)
 冬寂はそう言って思考の中だけで皮肉気に笑う。眼前では、吹雪のダメージで眼を閉じようとしている女王が居る。その微細な動きまでも認識できる。腕を向けるだけのこちらと、眼を閉じるだけのあちら。
 どちらが早いか。
 無論、ヴィクティムの方が先だ。その二つの速さを比べるまでもない。なぜなら、
(俺にはどうもお人好しの知り合いが多いってことだ)
 己を見ているようで嫌になる女と己が決定的に違うのは、そこであった。
 この流れは、織り込み済みだ。これが仲間と共に戦うという事であり、だからこそ女王の行動を予測できたこちらの方が必ず早い。

(BET)
 いかさま勝負は此処に成る。《春の訪れない世界》が発動する一瞬前、《Rewrite Code『Dirty Edit』/ジジツハタヤスクユガメラレル》が差し込まれる。
(温いな……!)
 『視/』える。UCの構成が。『認識/み』える。その条件が。即ち
(『【戦場を雪原に変更する、又、目を閉じる事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【除き、視認外の全対象を完全凍結させる冷気】で攻撃する』ねぇ……)
 常なら、一瞬の攻防の攻防の隙に行わなければならないクラッキング。常ならば、コンバット・ドラックや神経ブースターによってその一瞬を引き延ばした『僅かな時間』の間にそれを成さなければならなかった。
 ならば今は、思考が現実と相対的に十倍速くなった今ならば、一瞬はヴィクティムの中で相対的に『十分余裕な時間』まで引き延ばされる。

(……『【戦場を雪原に変更する、又、目を閉じる事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【除く、自身の生命活動"のみ"停止させる冷気】で攻撃する、か。ただ凍るだけじゃ、物足りないだろ?)
 そして《春の訪れない世界》が発動する。
 その瞬間、閉じた筈の女王の目が見開き、どうやらそこに存在の核でもあるのだろうか、心臓のある辺りを抑え込んで、蹲る。
(俺の方が凍えてる、故に…上手だったのさ)
 
 そしてシール・スカッドウィルはたどり着いた。爆音と衝撃が、凍えた時の中だからこそ、長く、重く響く。
(『汝、我が身を包み守る者よ。其が名は【霜の巨人/ヨトゥン】』)
 背骨に沿う形で装備された装甲、《ヨトゥン》が女王を襲った吹雪の冷気を喰らいつくす。
(さぁ、灼熱地獄へご招待だ)
 いつの間にかその手握られていた蛇腹剣、《ヨルムンガンド》が蹲る女王を拘束し、逃げられないようにその場に留める。
 【斉奏/レゾナンス】は、その姿を変える。
 《極寒》と《灼熱》その二つの武器特性が融合する。即ち、《ヨトゥン》が冷気を吸い取り、それを《ヨルムンガンド》が灼熱として出力する。
 炎が、女王を包み込んだ。
 そうなれば当然シールも無事では済まないが、
(寿命くらい幾らでもくれてやる、じっくり味わえ)

 斬り裂かれ、吹雪を反射され、心臓すら凍りついた女王が、灼熱に勝てる筈もなかった。
 たしかにその熱はシールをも炙り、焦がしてゆく。けれど、雪が解ける方が、早いのは自明の理で、
(グッバイ)
 吹雪が止む。体の各部を焦げ付かせながら立つシールの前には、もはや何も拘束していない蛇腹剣のみがあった。
 女王は、時の止まった氷の城で、溶け消えたのだ。
成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

御影・雪乃
ふむり
ユーベルコードもこちらに効果が届く前にじっくり観察できるってことですかね
であれば、その思考時間を活用して【情報収集】して【学習力】も活用したらミレナリオ・リフレクションで相殺いけそうですね?

防御は、UCの相殺と【氷結耐性】で
あと『雪結晶アーマー』での【盾受け】
あとは私の『冷気』での【属性攻撃】相手に通用するかどうかですが…速度の問題は互いに同じ条件ですから、殴り合いはいつもと同じ感じで良さそうですね
考える時間はたっぷりなので『氷華円』投げたりもして相手の回避パターンを学習していきましょうか
接近されそうなら『護身用ナイフ』でズブリ


フェルト・フィルファーデン
そんなものが永遠だなんて、可哀想な人ね。そもそも永遠なんてどこにもないというのに。……さあ、その永遠、終わらせましょうか。

さあ、時間はあるわ。考えましょう。敵のUCには隙が無い。ならば、隙を作る!
お願い、わたしの騎士よ。その精霊達よ。力を貸して!
更に身体機能の【リミッター解除。そして【限界突破!!
アナタが瞼を閉じる前に、その目を切り裂き開かせる!

ええ、まさにただの力押しね。でも、だからこそ無視出来ない。アナタは目を閉じるしかない。わたしの真後ろから、騎士人形が事前に放った鈍足の矢があることも知らずに!

ええ、わたしは囮。全対象と言ってもタイムラグはあるわ。認識外の矢に対応出来るかしらね……!


(いくわよ、御影様)
(わかりました。フェルトさん)
 先に倒した者とはまた別の雪の女王の個体。それにまず対峙したのは、御影・雪乃とフェルト・フィルファーデンだった。
 どういう訳だろう。声も容易く通じないこの雪の世界の中で、二人は、十全に意思疎通が図れていた。

 互いに、凍った時の中を駆ける。歩みは、あまりにも遅い。
(可哀そうな人ね。そもそも永遠なんてどこにもないというのに)
 空に浮かび、進みながら、フェルトはそれでも歯噛みした。遅いのだ。あまりにも。 
 つまり雪の女王にたどりつくまでには、フェルトと御影の射程に彼女をおさめる前に、
(目が)
 閉じようとしている。《春の訪れない世界》の発動だ。

(させないわ!お願い!御影さん!!)
 フェルトの指が、『9つ』翻る。〈Knights of Filfaden〉を備えた指が走り、フェルトの騎士人形が『8体』、データから『解凍』され、戦場に現れる。
 電脳魔術師の操るそれと騎士人形が繋がる電子的なリンクを利用して、言葉が奔る。

(お願い、わたしの騎士よ。その精霊達よ。力を貸して!/<マスターアカウント権限にてサブアカウントの保有する各種モジュールのリソースを仮装演算領域として使用します。アイハブ>)

『強くなりたいと望むなら、思い切り!<ユーハブ。各種騎士モジュールの保有する霊的電子的演算精神機構、『精霊』をモジュールから一時的にパージ。電子胡蝶として再構成します>』

 言葉と機能が交差して、

『だから、頑張ったあとは任せてね、お姫様/<電子胡蝶による演算リソースの確保に成功。警告。演算領域の拡張による高速演算は、使用者の脳に重篤な危険を及ぼす可能性があります。そのため仕様から85秒後にはマスターアカウントのアカウント権限を強制的に一時停止。意識をシャットダウンさせ、非常時には各サブアカウントの自動演算にて各モジュールの自動防衛機能にて安全を確保します>』

 <よろしいでしょうか?・・・→YES/NO>
 ためらう理由など在りはしない。そうして≪胡蝶達の激励/バタフライエフェクト≫が発動し、
 <使って!御影様!>
 そのリソースの全てを一時的に雪乃に貸し与えた。電脳魔術士と、ミレナリィドールだからこそできる離れ業。フェルトの9本目の疑似的な糸は彼女に結ばれていた。

 雪の女王の瞳が閉じられる。すぐさま、≪春の訪れない世界≫が発動する。己以外の全てを完全凍結させる冷気は、10倍にも遅くなった時の中ですらなお速い。
 飛ぶフェルトと走る雪乃。その冷気に対して、体はあまりにも無防備で、それでも
(ふむり)
 思考は常の如く。それどころかフェルトに貸し与えられたリソースを駆使すれば、まさに雪乃精神は止まった時の中に居るとすら言えた。

(ああ、これは観察できますね)
 いつになく、じっくりと、迫り来る冷気の波を、観察する。
(なるほど、これは冷気というより、概念というか、それそのもの御伽噺というか)
 勿論、その波に出力される結果は、『完全凍結されるほどの冷気にぶち当たり、その通りに凍結する』のだ。
 いわば、通常の物理現象的な『極低温の冷気だから晒されれば凍る』とするならば、雪の女王の放つ冷気は、『それに晒されれば凍るからこそ極低温の冷気と言える』といった代物であった。
 だが、その前世が故にだろう。常であれば気にならないような冷気の質を、しかし雪乃はしっかり見据えていた。

(これはしっかり見ておいて良かったですね)
 『放たれたUCと寸分たがわぬUCを返す事により相殺する』というUCを放つには、事前の子細な観測が必要だ。そしてそれは、この時の流れの遅い空間で、さらにフェルトに借り受けた演算リソースがあってこそ。
(ここまで見れば、失敗する事は無い)
 だからこそ、そのようにした。
 《ミレナリオ・リフレクション》が発動する。発動したUCは、雪の女王のUCとまったくたがわぬ冷気を放って、襲い来る波を相殺する。

(永遠、ですか)
 はて、どこにもないのだろうか、と思う。確かに自分には前世がある。ならば、一度は死んだという事で、終わりがあると言えるだろう。
 けれども、なら。その前世の記憶があるという事はむしろ、永遠が存在するという証明になりはしないだろうか?
(詮無い事です)
 UCは確かに無効化した。それを伝える為に、こちらからフェルトとのリンクを切った。そうすれば、リソースはすべてフェルトへと戻り、
(……!!)
 戻って来たリソースを駆使して、少女は、矢のように放たれていった。

(今!)
 飛翔する。自分が昏睡するまで時間はもうあまりない。《春の訪れない世界》が防がれて、動揺しているこのタイミングでしか攻撃の隙は無い。だから己の体のリミッターすら解除して、妖精は高速で飛翔する。
(そこ!)
 そして、その眼を潰さんと、小さなナイフが雪の女王へと振るわれる。ただの力押し。だからこそ、相手は怖がり、大きく後ずさって眼を閉じざるを得ず、
(『……!』)
 声なき叫びで、《春の訪れない世界》が発動した。
 冷気を一番に浴びるのは、当然の事としてフェルトだった。墜落してゆく。ああ、少女の振る舞いは無駄死にだったのだろうか?

(ええ、わたしは囮)
 そんなはずはなかった。眼を完全に閉じたその瞬間、フェルトの羽が凍り墜落したその瞬間、
(全対象と言ってもタイムラグはあるわ)
 だからこそそれは最期の、フェルトの十。フェルトの後ろに隠れるように控えていた騎士人形から放たれた矢が、雪の女王の眉間を狙い……
(あ……)
 それは、眉間には刺さらなかった。触れるものを凍らす冷気は、確かに矢にも作用した。そのため重心が狂い、重くなり、眉間を狙った矢は、
(胸に……)
 たしかなダメージを与えはした。それでも敵は超常存在。決してそれだけで致命傷になりはしない。
(どうにか、しなきゃ……!)
 
 眼は閉じられ、矢が刺さった事で、相手は動揺している。だからまだ少しは無事だろう。けれど、その間にフェルトは完全に凍結して、それを踏みつぶせば相手はフェルトを簡単に殺せる。
 けれど、
(はい、ズブり)
 それは、御影・雪乃が許さない。かつて雪に属する者であったからであろうか。 そもそも『凍らない』という形での耐性を持つ雪乃は、特に問題なく冷気の中を行動出来ていた。
 眼を両手で覆い、胴体ががら空きの今がチャンスとばかりに容赦なく護身用のナイフで腹を刺し抉りぬいて、フェルトを凍った時の中であるがゆえに緩慢な動作で抱きかかえ、
(離脱しますよ、フェルトさん)
 再び二人の間に繋がる。
(ええ、はい。ありがとうございます、御影様)
 フェルトのUCのタイムリミットはすぐそこだ。いくら怪我を負っているとはいえ、昏睡状態に陥った仲間を庇いながら、倒せる程甘い相手ではない。
 矢が刺さり、腹を刺された衝撃に動揺している今の間に、雪乃はフェルトと共に、戦線を離脱した。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

アリス・セカンドカラー
お任せプレイング。お好きなように。
汝が為したいように為すがよい。
詠唱フリー。脳内で完結。

なるほど、思考速度は変わらない。つまり、読心術で第六感を転写してのテレパシー腐語りは思考速度のまま送信できる、と。まずは神懸かり(降霊/ドーピング)で思考速度を加速(早業/先制攻撃)。
何言ってんだこいつ? 頭大丈夫か? と思われる妄想を加速した思考速度で雪の女王に垂れ流しじっと時を待つ。
未来からのフォロワー、恒星型愉快な仲間“太陽さん”が到着するのを。彼女の熱は雪原を融かし、冷気を蒸発させ、凍結した時すら解凍するでしょう。


故無・屍
…ただでさえ面倒な戦場を雪で上乗せたぁ厄介な女だ。
声を出しても間延びするだけだってんなら向ける言葉もねェ。
相手のフィールドに持ち込まれるってんなら、
それを断ち切ってやるだけだ。

環境耐性、継戦能力にて戦場の冷気に耐え、
相手の攻撃に対しては観察を常に継続
第六感、野生の勘を駆使し
長引く時間と変わらない思考速度を活かして
最適なタイミングでのカウンター、武器受けにて
ダメージを抑える。

間合いに入り次第UCを発動。
「ホワイトワールド」そのものを断ち切る。
その後は怪力、2回攻撃、限界突破、捨て身の一撃などを駆使し
真正面からの戦いに持ち込む


…過去のモンが今に戻って来ることなんざ無ェ。
捉われた所で無意味なだけだ。


 氷結が、あった。その腹より血を流し、胸元を矢で射抜かれながら、それでもなお雪の女王はそこに在る。どこにもいない愛した少年を守らんとして、時間の凍った城の中で、雪の世界を顕していた。
(…過去のモンが今に戻って来ることなんざ無ェ)
 静かな世界。それをサクり、サクリと雪を踏みしめながら、征服してゆく影が一つ。
 故無・屍である。

(声を出しても間延びするだけだってんなら向ける言葉もねェ)
 灰の瞳が睨みつける。黒き姿が、純白の世界を蹂躙してゆく。その歩みは止まらない。
(…ただでさえ面倒な戦場を雪で上乗せたぁ厄介な女だ)
 感慨と言えばその程度だ。なるほど。降りしきる雪は確かに屍の体力を削ってゆく。
 そしてそれが何だというのだろう。かつて守る為に負った数々の比べて如何程の苦痛があるものか。
 寒さが、心すらも凍らせてゆく。そしてそれが、なんだというのだろう。父も母も妹も、総てを失った虚無に比べれば。


 己の力によって体力を奪われて行っている筈の屍が一切合切構わずに歩んでくるその姿に、傷を負った女王は、確かな恐怖を感じた。
 一歩、一歩。地面に杭打つかのように歩んでくる屍を見据えて、眼を閉じようとする。いかなる防御があったとて、《春の訪れない世界》にて氷像となってしまえば意味もないのだ。
 
(あら☆所であなたは四角と三角、どちらが攻めでどちらが受けだと思う?)
 瞳を閉じようとした女王に、そんな少女の声が響いた。
(あらあら。やっぱり?)
 どうやらUCの発動を妨げたらしい。屍の後方、動かぬままに女王を見据えて、己の考えが上手くいったと心の中でほくそ笑むのは、アリス・セカンドカラーだ。

(そうよね?思考だけはいつもと変わらない。それは相手もそう。だったら……)
 【読心術】に【第六感】。さらには【念動力】を重ね合わせた思念の転写は可能、という事だ。
(うるせぇぞ)
 突然脳内で繰り広げられる、少女の可愛らしい声をした腐語りに、屍が抱いたのはただその一言だけだった。
 戦いの前、屍が進みゆく前に、少女がクスクスと笑いながら『あなたの邪魔はさせないわ』と言っていたのはこういう事だったか。
 なるほど。いきなり攻めだの受けだの、意味の分からない耽美な世界の専門用語など脳内で羅列されては、如何に雪の女王とて動揺もするだろう。
 そしてそんな言葉の羅列に、なんらかの感慨を抱ける程の何かが、屍にありはしないのだ。

(『うるせぇぞ』……ね)
 だからこそ、そんな巌のような在り方が、アリスには哀れでおかしく愛おしくてならない。
(何をそんなに余裕をなくしているのかしら?なんでかしらね?)
 今日、初めて会ったばかりの猟兵だ。詳しい事情など知る由もない。けれども、その進んでゆく背に、雪の女王と似通ったモノを見る。
 即ち、

(二人とも頑なね。氷みたい)
 ならば、今この時に、アリス・セカンドカラーの腐語りの毒電波に冒されて、たじろいだ雪の女王とただ進む屍の間にある差はなんだろう。
 単純だ。見据えていないか見据えているかの差。雪の女王は、少年を凍らせた。そして彼に連なる全てを凍らせた、その事実から目を逸らしている。
 そして屍はただ、倒すべき敵を見据え、氷のような殺意を、冷たくたぎらせているのだ。

(けれどあれでは着く前に)
 屍はもしかすると凍り付いてしまうかもしれない。そしてそれは、アリスにとってもたのしいものではなかった。
 だからこそ、
(流石に女王様。箱入り娘といったところかしら?腐語りはお気に召さないと)
 動揺する雪の女王の脳内は、初めて知る腐った世界に、どうやら拒絶反応を起こしているらしい。
 『この思念を垂れ流す相手の頭はおかしいのではないか?』そんな風に思っているのが見て取れる。
 そしてそれこそがアリスの狙いでもあった。

(あら。来たねの。未来のフォロワー、恒星型愉快な仲間“太陽さん”)
 アリスの思念と共に、疑似太陽が顕現した。《不可思議四次元殺法/ディメイションアタック》が発動する条件は満たされている。
 太陽が雪を、冷気を、凍った時すらも溶かしてゆく。
 だからこそ、屍の歩みは止まる事は無い。

 
(届かなかった)
 雪が解け、足を取られる事もなく、ただ一歩一歩確かに地を踏みしめ得て、雪の嬢を前にする。
 思うは、しばし前の戦い。王子との戦い。その時もそう、カウンターを叩き込もうとして、
(人を捨ててなお、届かなかった)
 だからこそ、届かせる。太陽は、雪を溶かした。雪の女王の体もまた。けれど、それでもなお相手は健在なのだ。
 《ホワイトワールド》が発動する。この窮地にあって、女王は倒す力を所望した。雪原が再び顕現する。それが顕現するすぐそばから太陽の光に溶けたとしてもなお、雪原の加護は女王に味方した。
 
 〈アビス・チェルナム〉と〈レグルス〉を手に握り、奥歯を食いしばる。ドクン、と心臓が脈動する感覚と、己の中から何か大切なものが抜け落ちてゆく冷感。
(届かねぇのなら……)
 見据える。そこにいるオブリビオンを。足りないのなら、足せばいい。足せないのなら、どこかしらから無理やりに絞り出せばいい。そうして屍の体から絞り取られる大事なものが、命の輝きを両の刀身に宿らせた。
(届かせるしかねぇだろうが……!)
 斯くして《暗黒剣・罪喰い》は振るわれる。

 一瞬の交差。その後に、立っているのは男だけであった。倒されたのだ、女王は。太陽に照らされ、雪の残滓すら消えてゆく。じりじりとした生の象徴をその背に受けて、男はただ、立ち尽くした。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2020年08月09日
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