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迷宮災厄戦②〜赤い果実と薔薇園の主(作者 真魚
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●アリス召喚儀式を阻止するために
「皆様、心の準備はよろしいですか?」
 集う猟兵達へ、真剣な表情で問いかけて。アリア・アクア(白花の鳥使い・f05129)はアリスラビリンスで始まった『迷宮災厄戦』について言葉を紡ぐ。
「アリスラビリンスのオブリビオン・フォーミュラである『オウガ・オリジン』と、彼女から力を奪った『猟書家』……。彼らの戦いにより、現在アリスラビリンスはオウガで溢れています。皆様には、その中の国のひとつ――『砕かれた書架牢獄』へ、向かっていただきたいのです」
 多くの猟兵が『視た』であろう、オウガ・オリジンのその姿。少女のような『影』が閉じ込められていた世界こそが、此度の戦場になるのだと白花のグリモア猟兵は語る。
「現在この国では、オウガの大軍団が他の世界からアリスを大量に召喚する儀式を行っています。新たに集められるアリス……その目的は不明ですけれど、待っているのが幸福ではないことは確かです」
 『砕かれた書架牢獄』は、戦争サバイバルの舞台ともなる。数多のオウガ、数多の猟兵。それらが戦う乱戦の中を潜り抜け、アリス召喚儀式の首謀者を暗殺することが、猟兵達の目的だ。
「それでですね、その首謀者なんですけれど。名は『薔薇園の番兎』ローゼス。アリスを自分の薔薇園へ招待する、時計ウサギの姿をしたオウガです」
 招かれたアリスは薔薇園の薔薇にその生き血を吸われ、彼女の庭の糧となる。薔薇園に実る真っ赤なリンゴはアリスの生き血を養分に育つのだと言うから、どんなに美味しそうでも口にはしない方がいいだろう。
「彼女は自分の薔薇園に実ったリンゴを食べて戦闘力を増加したり、茨の迷宮に閉じ込めたり、武器であるハートのワンドで攻撃してきたりします。特にリンゴは戦闘中に皆様の生き血を得ればさらに強力なものになるでしょうから、お気を付けください」
 皆様、とアリアは語るが、その中にはサバイバルで戦闘中の猟兵だって含むだろう。自然、敵のリンゴは脅威となるだろうから、十分に注意するべきだ。
 猟兵達をぐるりと見渡す、アリアのプリズムの瞳は不安げに揺れている。けれどはあと小さくため息つけば、少女は決意固めた面持ちでグリモアを手にした。
「乱戦の中、狙った敵を見つけ倒すのは大変ですけど……皆様なら、大丈夫です!」
 それは激励であり、願いであり。
 どうか、アリスラビリンスも、他の世界も掬えますように。手の組み祈り呟くグリモア猟兵は、最後にとびきりの笑顔浮かべて猟兵達を送り出した。


真魚
 こんにちは、真魚(まな)です。

●お願い
 プレイングの受付につきましては、マスターページの「お知らせ」ならびにTwitterにて都度ご案内します。
 期間外に届いたプレイングは不採用とさせていただきますので、お知らせをご確認の上ご参加ください。

●シナリオの流れ
 第1章:ボス戦(『薔薇園の番兎』ローゼス)
 当シナリオは第1章のみです。

●戦闘について
 戦場となるのは、オウガ・オリジンが捕まっていた「迷宮のような図書館」の国です。現在ここでは「オウガの大軍団」が他の世界からアリスを大量に召喚する儀式を行っています。このオウガの群れを潜り抜けて、ボスを暗殺する必要があります。オウガの群れとは戦闘する必要はありませんので、ぜひプレイングで工夫してみてください。
 うまく接近できれば、ボスとの戦闘です。敵とは会話可能ですが、説得や情報収集はできません。

●プレイングボーナス
 このシナリオフレームには、下記の特別な「プレイングボーナス」があります。これに基づく行動をすると有利になります。
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 プレイングボーナス……オウガの群れを潜り抜け、司令官に素早く接近する。
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●その他
 ・ペアやグループでのご参加の場合は、プレイングの冒頭に【お相手のお名前とID】か【グループ名】をお書き下さい。記載なき場合は迷子になる恐れがあります。プレイング送信日を同日で揃えていただけると助かります。
 ・許容量を超えた場合は早めに締め切る、または不採用とさせていただく場合があります。

 それでは、皆様のご参加、お待ちしております。
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第1章 ボス戦 『『薔薇園の番兎』ローゼス』

POW ●アリスの生き血で実る禁断の果実
戦闘中に食べた【アリス(猟兵含む)の血を吸い実ったリンゴ】の量と質に応じて【アリスのユーベルコードを習得し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD ●迷い込んだ者の生き血を啜る迷宮
戦場全体に、【触れた者の出血を促す棘を生やした茨の壁】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
WIZ ●薔薇園を拒む者に施される拷問
【ハートのワンド】が命中した対象の【体に絡みつく蔦】から棘を生やし、対象がこれまで話した【薔薇園を否定する言葉】に応じた追加ダメージを与える。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は幻武・極です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●薔薇園の主は書架で微笑む
 猟兵達が辿り着いた世界は、見渡す限り本だらけだった。
 あちらには背の高い書架に辞書のような分厚い本が並んでいるし、こちらには背の低い書架に絵本が詰め込まれている。
 そんな本の迷宮は今――夥しい数のオウガに侵略されていた。
『アリス……アリス達よ、集え……』
 響く声は、蠱惑的に『異界の人』を誘っている。その中でも一際目を引いたのは、桃色の衣服纏った少女姿のオウガだった。
『そうです、アリスをもっともっと――私の薔薇園に、お招きしましょう』
 愛らしい声で言葉紡いだ少女は、手の中のリンゴを遊ぶように放り投げて微笑む。
 あれこそが、此度の儀式の首謀者だと猟兵達は直感するが――そのうちに、薔薇園の主の姿は数多のオウガの後ろに隠れてしまう。
 まずはオウガを潜り抜け、あの少女へ近付かなければ。戦いは、そこからだ。
トリテレイア・ゼロナイン
大量のアリスが危険なこの地に召喚され、あまつさえオウガ・オリジンに饗される等、騎士として到底許容出来ません
一人でも多く、召喚者を撃破しなければ…

大乱戦が可能な程の書架
私の機械馬でも通行可能でしょう
●騎乗し馬の●踏みつけと●怪力で振るうランスでオウガ達を蹴散らし司令官の元へ急行
センサーでの●情報収集で群れの包囲が薄い場所●見切り突入します

薔薇園への不躾な訪問をお許しを
貴女が司令官ですね、討ち取らせていただきます

機械馬から飛び降り格納銃器での●だまし討ちスナイパー射撃で口に運ぶリンゴを●武器落とし
更にUCを射出し腕を●ロープワークで拘束
ワイヤ巻き取り●怪力で振るう盾で地に叩き伏せ剣で追撃


ロリーナ・シャティ
「…だめ」
この戦争が始まってから、ずっと胸の奥がざわざわ、…ううん、ぞわぞわするの
「だめだよ」
言葉でも意思でも抑え付けておけない何か
イーナの胸の中のこれは、アリスラビリンスに来てからずっと治らないけど
これまでの戦争ではこんな感覚じゃなかった
出てこようとしてるんじゃない、引きずり出されそう

ああ、やめて、怖いのいっぱい…だめっ
「こっち、来ないで…嫌……いやああああああああ!!!」(UC発動、技能:範囲攻撃により辺りのオウガに一挙に襲い掛かる)
頭がパニックになって体が崩れ落ちる
もう何もわからない(涙がぼろぼろ落ちる)
「ぁ…ぁあ……」
これは、誰の所為…?
「アノウサギノセイ…?」(ボスにも怪物を嗾ける)



 とん、と地に足着けたロリーナ・シャティ(偽りのエルシー・f21339)を待ち受けたのは、書架に囲まれた不思議の国と、夥しい数のオウガ達。それらをトルマリンの如き瞳に映して、彼は腕の中のうさぎのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。
「……だめ」
 声が、震える。この戦争が始まってから、ロリーナの胸の奥はずっと不快な感覚に囚われていた。ざわざわ――否、『ぞわぞわ』と、心を撫でる何か。言葉でも意思でも抑えつけてはおけないモノが、彼の中にあるのだ。
 アリスラビリンスに来てからというもの、ずっと胸の中に巣食う存在。しかしこれまでの戦争とは、明らかに違う感覚が彼を襲っている。
 出てこようとしている、ではない――引きずり出されそうな、そんな感覚。
「だめだよ」
 きつくきつく腕に力入れば、導うさぎのオッドアイがロリーナを見上げて。なんとか感情を抑えようとする彼だが、周囲のオウガは見過ごさない。
『儀式の……邪魔だ……!』
 明確な敵意向けて、オウガの一体が声を発する。すると他のオウガ達も一斉にロリーナを見るから、彼の足は竦んでしまった。
(「ああ、やめて、怖いのいっぱい……だめっ」)
 体が震える、心が恐怖に支配される。つま先から頭の天辺まで、一つの感情に埋め尽くされて――。
「こっち、来ないで……嫌…………いやああああああああ!!!」
 叫びと共に溢れた恐怖は、ユーベルコードを発動して――ロリーナの外で異形の怪物達の姿をとる。それらは彼に迫るオウガ達へと襲い掛かり、次々骸へ還していった。
「ぁ……ぁあ…………」
 崩れ落ちる体、瞳からは知らずにぼろぼろと涙が零れ落ちる。
 ――これは、誰の所為……?
 浮かぶ疑問に虚ろな顔を上げると、目に留まるは遠くに見えるうさぎ耳。
「アノウサギノセイ……?」
 呟けば異形の怪物が荒れ狂い、『薔薇園の番兎』ローゼスを目指す。ロリーナに恐怖心を与えた対象を、追跡し攻撃するユーベルコード。それは妨害するオウガの脇を潜り抜けて、ローゼスへと至り咆哮した。
『――!』
 不意打ちの攻撃に、うさぎのオウガが慌ててハートのワンドを揮っている。それをロリーナは感情失くした瞳に映して、そのまま意識手放そうとするが――その時。
「大丈夫ですか?」
 かかる言葉、細い腕を引く力強い手。倒れそうなクリスタリアンに手を差し伸べたのは、白き機械騎士――トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)だった。
 彼はそのままロリーナを自身の愛馬『ロシナンテⅡ』に乗せると、群れに隠れ消えゆく薔薇園の主を追いかけた。
 機械でできた白き馬は、トリテレイアの足のように自由に駆け、周囲のオウガを踏みつけ進む。上空より襲う敵は機械騎士のランスが蹴散らして、真っ直ぐ、真っ直ぐ。
 男が胸に抱くはただ一つ、騎士としての誇り。
(「大量のアリスが危険なこの地に召喚され、あまつさえオウガ・オリジンに饗される等、騎士として到底許容出来ません。一人でも多く、召喚者を撃破しなければ……」)
 思いながら周囲を見渡せば、オウガの手薄な道が見つかる。彼はすぐさま機械白馬の向きを変え、槍構えたまま突入した。
『ふふふ……来ましたね、猟兵』
 桃色のスカートを翻して、ローゼスが振り返る。トリテレイアは愛馬にロリーナを任せると、ひらりと飛び下りうさぎのオウガと対峙した。
「薔薇園への不躾な訪問をお許しを。貴女が司令官ですね、討ち取らせていただきます」
 紡ぐ言葉は堂々と、しかし攻撃は間を置かず。彼は肩と両の椀に格納された銃器を素早く展開すると、そのまま薔薇園の主へ射ち出した。
 響く銃声、狙うは手元――彼女が手にする、赤い果実。
『っ――!』
 不意打ちの一撃に、オウガはリンゴを取り落とす。彼女を強化する、アリスの生き血吸った忌まわしき果実。それを拾い、口に運ぶ時間は与えない。
「騎士の戦法ではありませんが……不意を討たせて頂きます」
 言葉と共に発動するは、トリテレイアのユーベルコード。それは彼の隠し腕を即座に射出し、ローゼスがリンゴに伸ばす手を掴み取った。
『なんと、小賢しい!』
 自由を奪われた薔薇園の主が、その瞳で機械騎士を睨み付ける。しかし男は構わずに、腕に繋がるワイヤーを巻き取った。意識をそこに集中すれば、ギリギリと金属音を立てながらワイヤーがローゼスの手を引っ張る。その力には抗えず、うさぎのオウガの体は地を離れて。
 ぐんぐんと近付いてくるオウガ、展開するは『重質量大型シールド』。大きさも強度も特別なその盾構えればローゼスの体はそこに打ち付けられ、息を詰める音がトリテレイアの耳にもはっきり聞こえた。
「御伽噺の騎士のように振舞うのは難しいですね」
 呟きながら、手に握るのは『儀礼用長剣・警護用』。地に叩き伏せられたオウガの身にそれ突き立てれば、薔薇園の主は堪らず悲鳴を上げるのだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

禍神塚・鏡吾
技能:だまし討ち、迷彩、目立たない、言いくるめ、時間稼ぎ

アドリブ連携歓迎

電脳魔術を利用してオウガの立体映像を作り出し、自分に被せてオウガに偽装します
オウガに紛れてこっそりボスに接近し、逃がさない事を目的に戦います

「とても美しい薔薇園でした。咲き誇る赤色に目を奪われて、戦いも忘れてしまいましたよ」
UCの対策に、薔薇園を褒め称えます
元々薔薇園を否定した事は無いので、追加ダメージは最小に抑えられるはずです

「お庭の美しさは持ち虫の美しさだと言われます
これ程の薔薇園を生み出せる方に是非お目にかかりたかった
そして、貴方は期待通りの方でした
さあ、御覧なさい」
UCを使って、他の人が攻撃する時間を稼ぎます


フリル・インレアン
ふえぇ、あのアヒルさん、少しは変装して来た方が良かったのではないでしょうか?
よく私も忘れがちになりますが、私もアリスですからオウガさんが集まってしまいますよ。
ふえ?変装しても意味がないのですか?
そうですね、猟兵さんにも可愛い衣装の方がいたり男性のアリスさんもいましたけど、オウガさんはすぐに見抜いていましたね。

ところで、なんでここで使用するユーベルコードが恋?物語なのですか?
も、もしかして、どんなに工夫してもアリスだとバレてしまうから、小細工は無しで全力でローゼスさんの元にたどり着けってことですか。
ふええ、これって囮じゃないですか。



 書架に囲まれた世界に着けば、赤く円らな瞳は不安げに周囲を見回す。
 あちらにもオウガ、こちらにもオウガ。それらの敵を書架の影に隠れてやり過ごし、フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は小さく声を零した。
「ふえぇ、あのアヒルさん、少しは変装して来た方が良かったのではないでしょうか?」
 問いかける先は、腕の中のアヒルちゃん型ガジェット。かつてアリスラビリンスで目覚めた時から共にあるそれに、フリルは助けを求めるような視線を向けている。
 ――そう、彼女だってアリス適合者なのだ。のこのこ現れては周囲のオウガ達を刺激するばかりで、目的の薔薇園の主を探すのも困難になりそうだが――。
 しかしアヒルさんは、その白い羽をパタパタと動かしてフリルの問いに答える。
「ふえ? 変装しても意味がないのですか?」
 ぱちぱち瞬く銀髪のアリス、こくこく頷くアヒルさん。今まで見てきたオウガ達は、見た目でアリスを判別しているわけではなかった。少女の如く愛らしい服を着た別種族の猟兵には惑わされず、逆に男性のアリスにはしっかり反応して。それを思い出して納得したフリルに、アヒルさんは羽をずびしと前へ向け、その先見ることを促した。
 そちらにも、やはり夥しい数のオウガの群れ。けれど重なる影のその隙間に、今回撃破すべき目標対象がちらりと見える。
「あ、あれがローゼスさんですね! ところで、なんでここで使用するユーベルコードが恋?物語なのですか?」
 フリルの持つユーベルコードは、いくつもある。その中で何を使うか、選んだのはアヒルさんなのだけれど――その真意が汲み取れぬ少女に、アヒルさんはバタバタ羽広げていいから使えとアピールする。
「ふえぇ、わかりましたよぉ!」
 こうなったら、従うしかない。アヒルさんのことだからきっと考えがあるのだろうと、フリルは小さく見えるローゼスを目標に、己の力を解き放つ。
 ――ユーベルコード、『衝撃?的な出会いから始まる恋?物語(ガール・ミーツ・オブリビオン)』。
 纏う力は少女の心を逸らせて、足を動かせと急き立てる。水色の靴で駆け出して、フリルは群れるオウガの脇をすり抜けて――。
「も、もしかして、どんなに工夫してもアリスだとバレてしまうから、小細工は無しで全力でローゼスさんの元にたどり着けってことですか」
 奔り出したら気付いてしまった、アヒルさんの意図。ぽろり呟けば肩の上で、アヒルさんが得意げに胸を張る。
「ふええ、これって囮じゃないですか――」
 情けない声を上げる銀髪の少女は、しかしオブリビオンに出会うまで止まれない。『ふええええ』と叫びながら全力疾走するそのアリスの姿は、オウガ達の目を大層引いて。
 その隙に、こっそりオウガ達の中を進む猟兵が一人――禍神塚・鏡吾(魔法の鏡・f04789)だ。電脳魔術操る彼は、作り出したオウガの立体映像を自身に被せ、オウガの仲間を装っている。まじまじ見られれば気付かれたかもしれないが、彼の横駆け抜けた銀髪の少女のおかげで、周囲のオウガ達の意識はそちらに向いているようだ。
 果たして、鏡吾は狙い通り素早く目的のオウガまで辿り着くことができた。桃色の衣装纏った、うさぎ耳のオウガ――。接近できればもはや不要と立体映像を消し去れば、振り向いた『薔薇園の番兎』ローゼスは楽しそうに微笑んだ。
『あらあら、こんなところに猟兵が一人。私の薔薇園へご案内しましょうか?』
 赤いリンゴを放り投げて、手に握るはハートのワンド。その先で蔦が躍るのを見ながら、鏡吾は変わらぬ笑顔で返答する。
「いえ、もう結構です。とても美しい薔薇園でした。咲き誇る赤色に目を奪われて、戦いも忘れてしまいましたよ」
 この図書館のような国とは別のところにある、ローゼスの薔薇園。鏡吾はそれをすでに見てきたような語り口で、彼女の世界を褒め称える。
『あら。貴方は、私の薔薇園を見たことが?』
 狙い通り、うさぎのオウガの手が止まる。誘い込んだアリスは全て果実の糧にしたはずだけれど――そう呟く薔薇園の主だが、褒められた心地よさの方が勝ったのだろうか。
 彼女の意識がこちらに向いていることを感じながら、にこりと笑って鏡吾は言葉を続ける。
「お庭の美しさは持ち主の美しさだと言われます。これ程の薔薇園を生み出せる方に是非お目にかかりたかった」
『まあ、お上手だこと』
 微笑むローゼスが、ワンドを撫でる。敵意は変わらず、けれど今はこちらの出方を見ようというのだろう。――ならば、気付かれぬうちに罠に嵌めるが得策だ。
 ヤドリガミの男は、表情を崩さず鏡を取り出す。ユーベルコードで編み上げた水鏡は、美しく鏡面を輝かせて。
「そして、貴方は期待通りの方でした。さあ、御覧なさい」
 誘い鏡を差し出せば、特に警戒する様子もなく薔薇園の主がそれを覗き込む。鏡が映すは、ローゼスの姿。これは世界で一番美しい人を映す鏡なのだと、説明すればオウガの頬は果実に負けぬ赤色に染まり、食い入るように鏡を見つめて。
 それは、西洋鏡のヤドリガミたる彼が作り出した、オウガの隙。彼はこのタイミングをずっと計っていて――狙い通り、そこに小さなオウガ突き飛ばして猟兵が一人現れる。
「ふええええ、止まれませーん。そこの人、どいてくださーい」
 情けない声は、フリルのもの。道中のオウガを全て掻い潜り、突き飛ばし、ローゼス目指していた少女は今ここに到達した。
『なっ、何!?』
 慌てる薔薇園の主が、リンゴに手を伸ばす暇もなく。オウガを振り切る勢いすら加速の力にして、銀髪のアリスはローゼスに突進する。
『――!!』
 大きな衝撃、後方へ吹き飛ばされるうさぎのオウガ。鏡吾の手伝いもあってその一撃はかなりのダメージをローゼスに与えていたが、フリルもまた、衝突の影響でその場に一時倒れこんでしまうのだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵