5

迷宮災厄戦⑤～遠き日の憧憬の花園

作者：ゆうきつかさ

●アリスラビリンス
　その場所はセピア色に褪せた不思議な花園であった。
　普通であれば、幻想的な光景に心を奪われるかも知れない。
　だが、そこには場違いな者達がいた。
「クカーカッカッカッ！　俺達に逆らう奴には、死を！　死を！　死をぉぉぉ！！」
　トランプの巨人達にとって、逆らう者すべてが敵だった。
　その背中には『魔導蒸気機関』が埋め込まれており、周囲を『瘴気の蒸気』で汚染しながら、自らをパワーアップさせていた。
　そのため、トランプの巨人達にとって、怖いモノは何もない。
　自分達が最強であると思い込んでいるため、逆らう者はすべて死罪！
　それが、この国の法であり、トランプの巨人達が作り出した規則であった。
　故に、トランプの巨人達は、獲物を探す。
　自分達が最強である事を示すため。
　自分達こそが、この花園を支配するのに、相応しい存在である事を示すため……。

●ガジルからの依頼
「みんなに頼みたい事があるんだよ」
　ガジル・コリアンダー（キマイラのスカイダンサー・f00907）が真剣な表情を浮かべ、今回の依頼を説明した。
　今回の目的は、トランプの巨人達の撃破。
　ただし、トランプの巨人達は、魔導蒸気機関によって強化されており、瘴気の蒸気で汚染された場所では、肉体がパワーアップされるらしい。
　蒸気機関はトランプの巨人達の背中に埋め込まれているため、背後に回る事さえ出来れば、破壊する事は可能のようだ。
　また、何らかの対策を施す事で、瘴気の蒸気を防ぐ事も出来るようである。
　そう言った事も踏まえた上で、トランプの巨人達を撃破する事が、今回の目的だった。

第1章 集団戦 『トランプの巨人』

POW   :    巨人の剣 単純で重い【剣】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。 SPD   :    トランプ兵団 レベル×1体の、【胴体になっているトランプのカード】に1と刻印された戦闘用【トランプ兵】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。 WIZ   :    バインドカード 【召喚した巨大なトランプのカード】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。 イラスト：はるまき 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

●花園にて
「……これは酷い」
　杉崎・まなみ（貴方を癒やす・f00136）は、仲間達と共に瘴気の蒸気に満ちた花園にやってきた。
　辺りに漂う瘴気の蒸気は広範囲に広がっており、花々を枯らせて死の園に変えていた。
「しかも、凄いニオイ……」
　祝聖嬢・ティファーナ（フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580）がドン引きした様子で、嫌悪感をあらわにした。
　瘴気の蒸気は猟兵達を飲み込む勢いで、ネットリと纏わりつき、空気が重く、息苦しかった。
「……せっかくの花園が台無しじゃな」
　春夏秋冬・ちよ（旅する老猫・f19400）が悲しそうな表情を浮かべ、瘴気の蒸気で穢れた花園を見下ろした。
　花園はトランプの巨人が来るまで誰かが手入れしていたのか、瘴気の蒸気で穢された場所以外は、綺麗な花が咲き乱れていた。
「なるべく中和しておこう。これじゃ、せっかくの花園が台無しだから……」
　その間に、栗花落・澪（泡沫の花・f03165）が高速詠唱で風の属性を宿したオーラ防御を展開しつつ、破魔の力で瘴気の蒸気を浄化していった。
　それに合わせて、ティファーナが【グレムリン・ブラウニー・ルーナ】で樹木の罠や、落とし穴を作っていった。
「おい、こら！　そこで何をしてやがる！」
　そんな中、トランプの巨人達が、イラついた様子で猟兵達の前に現れた。
　おそらく、辺りの瘴気が浄化されている事に気づき、その原因を確かめに来たのだろう。
　そのため、みんな殺気立っており、猛牛の如く鼻息を荒くさせていた。
「……あなた達こそ……ここで何を……していたの……？」
　コーデリア・リンネル（月光の騎士・f22496）が、嫌悪感をあらわにした。
「見りゃあ分かるだろ！　ここを浄化してやったんだ！　それとも何か文句があるのか？　だったら、遠慮なく掛かって来いよ！」
　トランプの巨人が、ゲスな笑みを浮かべた。
「ポルカはあんまり戦う力がつよくないので……」
　その視線に気づいたポルカ・モトロ（碧海のプリンセス・レイ・f19700）が、身の危険を感じて後ろに下がった。
　ある意味、それが最善の選択。
　ここで無理をして戦ったとしても、返り討ちに遭うのがオチである。
　その事を本能的に理解したため、後方から仲間達を支援する事にしたようだ。
「……何だか面白い事になっているようだな！　私も、混ーぜて！　別にいいだろ、賑やかな方が！　嫌だって言っても、帰る気はないけどな！」
　多々羅・赤銅（ヒヒイロカネ・f01007）が含みのある笑みを浮かべ、トランプの巨人の前に陣取った。
「おお、これは勇ましいねぇ。だったら、相手をしてやるよ！　死にたいんだろ、お前達！」
　トランプの巨人が、不気味な笑みを浮かべた。
「こういうのは、対応の仕方に困るな」
　ガドゥッフ・ルゲイエ（キマイラのスクラップビルダー・f01628）が、警戒心をあらわにした。
　それとは対照的に、トランプの巨人達は、ヤル気満々。
　隙あらば一斉に突っ込んできそうな勢いであった。
　その上、ここはトランプの巨人達にとって、有利な戦場。
　そのため、真っ向勝負は命取り。
「力自慢タイプに真正面から挑む馬鹿はいねぇよ」
　ディー・ジェイ（Mr.Silence・f01341）が、トランプの巨人達を挑発しながら、警戒した様子で間合いを取った。
　ガスマスクと防護服を身に着けているおかげで、瘴気の影響をほとんど受けていないが、それでも濃度はケタ外れ。
　何の装備もしていなければ、卒倒しているレベルであった。
「なんだと、ゴルァ！　ふざけやがって！」
　その事に腹を立てたトランプの巨人が、唸り声を上げてディーに突っ込んでいった。
「だったら、相手をしてやろう。嫌いじゃないぜ、そういうの……！」
　それを迎え撃つようにして、サジー・パルザン（ヴァイキングの生き様・f12550）が、真正面からトランプの巨人にぶつかった。
　その隙をつくようにして、ディーが【フルバースト・マキシマム】で全武装を一斉発射し、瘴気の蒸気を吹き飛ばした。
「グギギギギィ！　ふざけるな！」
　その途端、トランプの巨人が殺気立った様子で、背中に埋め込まれた魔導蒸気機関から瘴気の蒸気を撒き散らし、巨大な剣を振り回した。
「怪鳥の音を聞け！」
　その攻撃から逃れるようにして、ガドゥッフが空中攻撃形態になって飛び上がり、【ソニッククラッシャー】で口から出した超音波を発した。
「そんな玩具を振り回して、王様気取りか？　悪いが斬れねえモンは無ぇからよ」
　それに合わせて、赤銅が【うらうらとあめはふる（イチモクレン）】を仕掛け、龍の神格を籠めた刀による一撃で、トランプの巨人の肉体を傷つけず、視覚を奪った。
「んあ、目が！」
　そのため、トランプの巨人は猟兵達の居場所が分からなくなり、見当違いの方向を攻撃し始めた。
「コイツで砕け散れ！！」
　それに合わせて、ガドゥッフが再びソニッククラッシャーを仕掛け、超音波を放ってトランプの巨人が身に纏っていた鎧を破壊し、息の根を止めた。
「よくも、俺の仲間を！」
　その途端、別のトランプの巨人がイラついた様子で、トランプ兵団を次々と召喚した。
　召喚されたトランプ兵団は一斉に剣を構え、猟兵達に斬り掛かってきた。
「まさか、それで勝ったつもりか？」
　ディーがトランプの巨人達を挑発しながら、【ツーマンセル】で意思疎通が容易な完全武装の自分を出現させた。
　完全武装したディーは、トランプの巨人達を煽りつつ、わざと目立つようにして逃げ出した。
　その事に腹を立てたトランプの巨人達が、完全武装したディーの後を追いかけ回した。
　だが、そこはティファーナによって、沢山のトラップが仕掛けられた場所。
　故に、トランプの巨人達が流れ作業の如く、罠に引っ掛かり、落とし穴に落ちていった。
「……全員出ろ！」
　それに合わせて、サジーが【ヴァイキングの行進（ヴァイキングノコウシン）】を発動させ、ヴァイキングヘルム】に1と刻印された戦闘用のバーサーカーを召喚し、トランプの兵団と戦わせた。
（……今だ！）
　ディーが茂みの中から顔を出し、トランプの巨人の背中に埋め込まれた魔導蒸気機関を次々と撃ち抜いた。
「ぐわああああああああああああああああ！　お、俺達を守れ！　トランプ兵達よ！」
　その一撃を喰らったトランプの巨人が悲鳴を響かせ、トランプの兵団に指示を出した。
　しかし、トランプの兵団は、バーサーカーたちによって倒され、物言わぬ骸と化していた。
「うぐぐ……。こうなったら、最後の手段だ！」
　その事に気づいたトランプの巨人がオーバーヒートを覚悟の上で、背中に埋め込まれた魔導蒸気機関をフル稼働させた。
　それは自らの命を削る事に等しい行為であったが、トランプの巨人に迷いはなかった。
　その気持ちに応えるようにして、瘴気の蒸気が魔導蒸気機関から噴き出し、辺りを真っ黒に染めていった。
「ぺんぎんさん、御願いしますー！」
　すぐさま、ポルカが【魔法極彩緊急発進！（マジカル・カラフル・スクランブル）】を発動させ、氷属性の空飛ぶぺんぎんさんを沢山描いた。
　次の瞬間、空飛ぶぺんぎんさん達が、トランプの巨人のまわりを飛び回り、氷の息を吐きかけて、魔導蒸気機関を凍らせた。
「ば、馬鹿なっ！　これでは、蒸気が……」
　トランプの巨人が、悔しそうに歯を鳴らした。
　だが、魔導蒸気機関は完全に凍りついており、ピクリとも動かなくなった。
「これでパワーアップする事が出来なくなったね♪」
　その隙をつくようにして、ティファーナが【フェアリーランド】で壺の中から精霊・聖霊・月霊を呼び出し、【クリスタライズ】で姿を隠しながら、【エレメンタル・ピクシィーズ】で、トランプの巨人達に風と光の属性攻撃を仕掛けた。
「ま、まだだ！　まだ……いける！」
　トランプの巨人がイラついた様子で、巨大な剣を振り回した。
「そんな攻撃、当たらないよ」
　澪が巨大な剣から逃げ回るようにして空中を飛び回り、氷の属性魔法を高速詠唱すると、トランプの巨人の腕や足の関節を凍りつかせていった。
　そこに追い打ちをかけるようにして、【神罰の聖矢（シンバツ・ノ・セイヤ）】でトランプの巨人に指先を向け、天からの光でダメージを与えた。
「それじゃ、私も少し頑張るとするかねぇ」
　続いて、ちよが【竜疑似再現術式『抜剣』（サイゲンスルハリュウノキバ）】で自らの杖に竜の力を疑似再現すると、魔法の刃に変えて、トランプの巨人を貫いた。
「ンガガ……」
　それは受け身を取る事さえ困難なほど、素早く強烈な一撃。
　その攻撃を喰らったトランプの巨人が、成す術もなく血溜まりの中に沈んでいった。
「……地の神よ。彼の者の痛みを和らげてください……」
　その間に、まなみが【聖癒（セイユ）】を発動させ、聖なる光で傷ついた仲間を治療した。
「こ、こんなはずでは……！　俺達は最強のはず！　俺達こそ、この花園を支配するのに、相応しい存在なんだ！」
　その途端、トランプの巨人が半ばヤケになりながら、巨大なトランプのカードを召喚した。
　それに合わせて、他の巨人達も巨大なトランプのカードを召喚し、猟兵達めがけて一斉に飛ばしてきた。
「ぺ、ぺんぎんさん！」
　反射的にポルカが身を強張らせ、祈るような表情を浮かべて、空飛ぶぺんぎんさん達に声を掛けた。
　その声に気づいた空飛ぶぺんぎんさん達が、氷の息を吐いて巨大なトランプのカードを凍らせた。
「それじゃ、今度はこっちの番だよ」
　その間に、ティファーナが“金平糖”を精霊・聖霊・月霊に配り、【月世界の英霊（ラビュリストン・ルーラー）】で光り輝く英霊と共に飛び上がり、【月霊覚醒（ゲツレイカクセイ）】で満月、半月、三日月、新月を放って、トランプの巨人のユーベルコードを封印した。
「それでは、しばらく大人しくしてもらいましょうか」
　次の瞬間、コーデリアが【ショウ・マスト・ゴー・オン】で歌を披露し、トランプの巨人達に歌を聴き続けていたいという感情を与えた。
「香り高く……舞い遊べ！」
　それと同時に、澪が【Orage de fleurs（オラージュ・ドゥ・フレア）】を発動させ、トランプの巨人に指先を向け、無数の花嵐で魔導蒸気機関を攻撃した。
「せ、背中が焼けるように熱い。ぐっ……、ぐわああああああああああ！」
　その一撃を喰らったトランプの巨人が、苦しそうに悲鳴を上げた。
　だが、背中の魔導蒸気機関の暴走を止める事が出来ず、まわりにいたトランプの巨人達を巻き込む勢いで大爆発を起こした。
　その途端、蒸気の瘴気が広がり、辺り一面を漆黒の闇に染めたが、破魔の力を宿した花園の自浄作用によって、霧が晴れるようにして消え去った。
　そして、猟兵達はトランプの巨人が一掃された事を確認した後、次の戦場に向かうのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

最終結果：成功 完成日:2020年08月05日