迷宮災厄戦⑧〜睨む先は星にあらず
●天文台~睨む先は地
アリスが憎い。
いくら刻んでも砕いても、美味しくても、憎くてたまらない。
猟兵が憎い。
私たちの邪魔をする存在だから。憎くてたまらない。
見るだけで怒りが収まらないような者達を、長々と相手するのもイラつくでしょう?
だから私たちは、望遠鏡を覗き込み、レンズ越しの姿に狙いをつける。
そうして、さくっと剣を振ればいい。……すぐに細切れの出来上がりよ。
まあ、いくら細かく切ってもまだまだ怒りは収まらないんだけど!
●グリモアベースにて
満点の星空が見下ろす中、星ではなく地面を向いた望遠鏡のレンズがぎらりと光る。
直後、衝撃波にも似た斬撃が降り注いだかと思えば、天文台の周りを囲む木々が、岩が、主の居ないお茶会のテーブルが、ばらばらと解体されていく。
おそらく、天文台を陣取ったオウガの少女達にとっては、軽い素振りのつもりなのだろう。グリモアの映像内で、大木がぐらりと傾ぎ、木材の山に変わった。
「びっくり、ですね……。距離なんて関係ないということっすか」
唖然としつつその映像を目で追って、伊能・龍己(鳳雛・f21577)は猟兵達に向き直る。
「先輩方、アリスラビリンスで迷宮災厄戦の案内です。向かっていただくのは、この映像の場所っすね」
美しい星空が広がる、『覗いた星空を奪う望遠鏡のある国』、その一角。
森の中の開けた場所に建つ天文台が、オウガの集団に占拠されたという。
「先輩方には、そのオウガ達……『ぷんすかさま』っていうみたいっすね。それらを倒して貰いたいんすけど……厄介なのは、あの望遠鏡っす」
元は、星のきらめきを手に取るように間近で見られるような望遠鏡だったのだが、今はその距離を弄る機能が悪用されている、という。
つまり、オウガが望遠鏡を覗いている間、「まるで敵が目の前にいるかのように」攻撃が行えるようになってしまっている。
……レンズに映ってしまったが最後、向こうが見失うようなことにならない限り、距離の開いた状態から一方的な斬撃が降り注ぐ。正面突破は至難の業だろう。
「なので、望遠鏡で見つけられないように……お願いします。」
たとえば、夜の暗さを利用する。森の中を移動して、見えないくらいの遠距離からの攻撃。姿を隠しながら天文台の階段まで辿りついて、背後から狙う……などなど。様々な対策ができるだろう。それに。
「先輩方が転移する予定の場所は、身を隠すための壁には困らないっす。『ぷんすかさま』の素振りで、色々なものが切れてそのままになっているので。……でも、天文台に近づくにつれて視界も開けてくるので。そこは注意してください。」
先程の映像内で、切り倒された大木を思い起こした猟兵もいたかもしれない。敵の作ったものを逆利用もできるようだ。
「『ぷんすかさま』は、主に[怒りの感情を他人に向ける事で鋭い水晶に覆われた怪物に変身]して、速さを上げてきたり。[沢山の光り輝く剣から斬撃を放って]範囲攻撃、[アリスへの、生きていること等々の理不尽な怒り]での自己強化……の三つですね。あと、アリスと猟兵に対して、すごく怒っているみたいっす。なんで怒っているかは、わかんないっすけど」
幸いにして、『ぷんすかさま』個々の能力はそれほど高くはない。ただ集団で陣取ってはいるので、気をつけたほうがいいだろう。
説明を終えた龍己が、転移の為にゲートを開く。
「気をつけて行ってきてください、先輩方。」
佃煮
お世話になっております。佃煮です。
げきおこなオウガさんの望遠鏡を潜り抜けてスニーキングミッション、らしいですよ。
●本シナリオについて
このシナリオは「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結する、特殊なシナリオとなります。
倒すオウガは天文台の上。剣を片手に望遠鏡をじーっと見ています。
彼女らの攻撃手段は、剣や刃物に似た水晶などの近距離系。
……ですが、望遠鏡を覗いている間は「まるで敵が目の前にいるかのように」すぱすぱ斬撃を繰り出します。
プレイングボーナスがあります。ご参考ください。
●プレイングボーナス
望遠鏡に発見されない工夫をする。
第1章 集団戦
『ぷんすかさま』
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POW : 燻り狂う
【怒りの感情を他人に向ける】事で【刃物の様に鋭い水晶に覆われた怪物】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD : 刻み刈りヴォーパル
【無数の光り輝く剣から斬撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : 怒めきずる
【アリスが生きている事への怒り】【アリスが守られている事への怒り】【アリスがまだ自分の餌になってない怒り】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
イラスト:そらみみ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
木々水・サライ
[絡み・アドリブ歓迎]
なるほど、望遠鏡に見つからない工夫か。それならコイツの出番だな。
アイテム【黒鉄刀】。
コイツから溢れる闇を広範囲に広げ、[闇に紛れる]ことにしよう。
だが流石に広範囲とは言え、1点に集中させるとモロバレだ。
UC【二人の白黒人形(モノクローム・ツインズ)】を起動させて、もう1つの闇を広げておく。
ああ、アイテム【シースルーコート】を着込むのは忘れねぇよ。黒いし。
それと、この闇に紛れたい奴がいるなら、大歓迎だ。
あとは俺でも複製義体でも、近づいたほうが敵を切り裂くってだけだな。
「望遠鏡ってのは本来、闇の中から星を見るもの。さて、お前は俺という星を見つけられるか?」
●
白か黒か、どちらでもない者はどちらかに完全に溶け込むことは無いのだが。
それでも、工夫次第で紛れることはじゅうぶん出来る。
夜闇とほぼ同化するような、真っ黒いシースルーコート。その輪郭をさらに曖昧にする闇が刀から溢れ落ちている。
コップの縁から流れるがままに任せる水のようにその闇は辺りに広がると、元となった刀身の影すら無くしていく。
その中で、黒白の長髪をゆるりと揺らして木々水・サライ(《白黒人形》[モノクローム・ドール]・f28416)は天文台を見据えた。
闇の中で自分の在処を確かめるよう、手を握って、開く。しっかりとその様が視界に映るぐらいで闇の濃度は問題なさそうだ。だが、
(……俺の周辺一点に集中させるとモロバレだ)
そのまま少し進めば、開けた土地に出るだろう。闇があって望遠鏡で視認できない以上、攻撃はある程度避けられるかもしれない。
だが、単独であれば狙いが集中してしまうことを考えると、避けるにも限度というものがある。
「それなら、こいつの出番かね」
サライは白黒どちらにも属さないが故に、どちらも扱えて、どちらも自分だと言える。ユーベルコードによって現れたのは、もう一人のサライ。彼自身の、複製義体だ。
義体はサライの意図を汲んだように、だいぶ離れたところに行くと。複製された刀を使い、もうひとつの闇をあふれさせる。と同時、サライは近くに転移してきた猟兵達の気配を感じ取った。
「隠れながら攻撃に出る予定のがいれば、自由に使ってくれ。暫くは闇を残しておける」
そう、闇越しのジェスチャーも込で伝えれば、向こうの影はちいさく頷いたようだった。
「……さて、行きますか!」
サライか義体、どちらからともなくそう零し。いつでも鞘から抜けるよう刀を携えて、天文台の入口へ。
「あら、なにかが動いたわ。猟兵ね?」
「まっくらだわ。煙幕かしら。居るのは、二人……?」
「ああ、見えないのって苛々する!望遠鏡でも真っ暗よ!」
天文台から、光り輝く剣が闇を狙って降り注ぐ。空気が巻かれて一瞬だけ闇が晴れるが、既にサライは走り抜けている。
「望遠鏡ってのは本来、闇の中から星を見るものだ」
――さて、お前達は俺という星を見つけられるか?
続きは口に出すことはなかったが、挑戦的に笑ってみせる。
きっと向こうは、敵が見えない苛立ちのままに望遠鏡をのぞいているのだろう。見えないのならばと徐々に狙いがおおざっぱになってきているのが、囮をかって出た義体の方でも気がつくことができた。
サライは階段を上がるついでに刀を抜き、身長以上の長さになったそれを。
「残念、見つけられなかったようだな!」
入り口に着くや否や、ぷんすかさま達に向けて振り下ろした。
成功
🔵🔵🔴
オスカー・ローレスト
ぴっ、ぴゅっ……(ぷんすかさまの怒り様に身体が縮こまり震えてる小雀
で、でも、ここで倒さない、と……あんなに怖い、敵、それこそアリスが遭遇したら、た、大変なことに、なる……!
ま、まず、俺は敵の攻撃範囲外の、遠距離から攻撃することに、するよ。
隠れる場所が沢山あるなら、それを利用、して……隠れて【目立たない】ようにして、夜の【闇に紛れ】ながら、眉間や頭をよく狙って……【切実なる願いの矢】で、【暗殺】を試みる、よ(【スナイパー】併用
一撃当てる事、に……い、居場所がわかりにくくなる様、隠れて移動しながら、攻撃する、よ。
●
「……ぴぃ!?」
目の前の道を薄く覆った闇には驚いてしまったが、どうやらそれは敵のものではなく、先を行く猟兵からの助けであるらしい。分かればまずは一安心だと、小さく影にお辞儀をした。
オウガ討伐への行動を起こした仲間の影を見送って、オスカー・ローレスト(小さくとも奮う者・f19434)は片腕に据え付けられた洋弓銃を確かめた。
その直後、森からでも耳に届くぐらいの怒号と、剣戟が響く。その音たちで『ぷんすかさま』と名がつくほどの怒り狂う様が姿見えずともありありと想像できてしまい、思わず震え出しそうになる。目線を天文台へと上げれば、人影が落ちて行くのが見えた。
……ぷんすかさまの一体が、怒りに血走る目を見開いたまま、落ちながらにして骸の海へ。
人型に近いオウガではあるものの、その様にふっと目を伏せかける。
「で、でも、ここで倒さない、と……」
オスカーは目を逸らしたくなる衝動を、寸前で堪えた。
あんなに、あんなにも。死にざまにも刻まれるぐらい、怒り狂う敵。猟兵だけでなくアリスにも理不尽に怒りを向けている、オウガ。そんな苛烈なるオウガに遭遇してしまったアリスの惨状はきっと想像に難くない。……だから。倒さねば。
すう、と自らを落ち着けるよう一呼吸おいて、行動へ。
オスカーは、残された闇を利用しながら、物陰に隠れて魔力の矢を装填する。望遠鏡から隠れやすく、雀の目からは見えやすい位置取りを探し、ぷんすかさまの頭をよく狙う。
「……さ、先に行った人は、もう転移した、かな……。ど、どうか、味方には、当たらないでくれ、よ……!」
そう切実に願い放った魔力の矢は、狙い違わずぷんすかさまの眉間を貫いた。
ぐらりと仰向けに倒れながら、輪郭がぼやけていくのを見送って、オスカーは別の物陰へと走る。
新手の襲撃を察知した別個体によって、複数の望遠鏡がぐるりと向けられるも。既に姿は無く、虚しくも木がばらばらと崩れ落ちる音だけが夜空を揺らした。
「ぴっ、ぴゅっ……」
後ろで響いた轟音に驚いて、オスカーは三たび物陰で身体をちぢこませる。少しでも留まっていたら自分も細切れであっただろうと嫌な想像が頭を過りつつも、既に次の一射が出来る場所へ辿りついていた。
望遠鏡を覗いたきりのぷんすかさまの蟀谷へ、狙いをつけてまた一射。
剣が落ちて、きらりと光ったまま地面へ突き刺さる様と、ぐらりと傾いだ影を見送って、次へ走る。
オスカーが静かに森へ潜み、着実に攻撃を加えて行くことで、ぷんすかさまは確かに数を減らしつつあるようだ。
成功
🔵🔵🔴
アストラ・テレスコープ
良いなー、天文台の望遠鏡かー!
元・個人所有の望遠鏡にとっては一度働いてみたい憧れの職場No.1かも!
でもちょっと今は星空を観れなくてつまんなそうだから敵から解放してあげないとね!
ちょうど良い木材がその辺にたくさん転がってるみたいだから、私のミニロケットの噴射で「焼却」して燃やしちゃおう!
もくもくと煙が上がったところで行動開始!
望遠鏡にとって視界の悪さは致命的だからね!
まあ私も遠くから攻撃できなくなったけど、
敵が煙に気をとられてる隙に煙に紛れてそーっと近づいて、射程圏内に入ったら、ズバンと射抜くよ!
●
この辺りでの素振りの対象は、枯れ木だったのだろう。
乾いて、それでも尚重たく大きな木の転がる辺りに少女が身を隠す。星の映る夜空に似た瞳は、はっきりと敵……ではなく、天文台の、望遠鏡が並ぶ辺りを見据えていた。
「天文台の望遠鏡かぁ。一度働いてみたい憧れの職場No.1かも!」
なんだかいいな、ああいう星が見られる場所って。
「ああ、でも……ちょっと今は、星空を観られなくて皆つまんなそうだね」
きらきらとした眼差しを向けた少女、アストラ・テレスコープ(夢望む天体望遠鏡・f27241)は小声で呟く。地に向いた望遠鏡が彼女の視界に入れば、快活そうな表情に複雑な心境を浮かべた。
アストラは、元・個人所有の天体望遠鏡のヤドリガミだ。主人と共に星を眺めていた思い出も、おかげで芽生えた探求心も。皆、その時に見た星と同じくらいきらめいている。
だからこそ、今眼前にそびえる天文台の彼らが、星を見られずに利用されたっきりなのが同じ望遠鏡として心苦しい。
「早く、敵から解放してあげないとね!」
天文台の彼らが、本来のお仕事に戻れるように。
そう改めて心に誓うと、アストラはベルトをかちかちと操作する。ミニロケットを少し離れた枯れ木に放てば、程なくして、火の手が上がった。
乾いた枯れ木はよく燃えて、それでいて森に類焼することもなく。確実に煙幕となって、辺りを包み込む。幸いにして、他の猟兵が使ったであろう霧にも似た闇も薄く辺りに漂っていて、隠れて進むには容易だった。
「あらら、何かしらアレは」
「燃えている……?新手が来たのね?」
「ああ、イライラしてきた、切り刻むわ」
怒りに任せた斬撃が燃える枯れ木に降り注ぐが、視界が悪すぎたせいか、火元から逸れたところに着弾して中々煙が消えない。その為、いらだった様子のぷんすかさまの大半が、煙の火元へ望遠鏡を向けている。
(望遠鏡にとって、視界の悪さは致命的だからね)
アストラ自身が望遠鏡のヤドリガミであるが故の、着眼点といえる。
(……まあ私も遠くから攻撃できなくなったけど、射程圏内に入れば……!)
敵が見えづらくとも、先程の煙幕に集中してくれているのなら。気づかれて迎撃を受ける可能性も薄くなるだろう。一射浴びせて気がつかれたら、すぐに煙に隠れてしまおう。そう考えつつ、アストラは射程圏内にたどり着く。
「よっし、ここなら見えそう!……何処までも、飛んでけっ!」
煙を裂いて現れる、華々しく光る流星の矢。
それらが空を乱れ飛び、不意打ちで敵を貫いた。
大成功
🔵🔵🔵
塩崎・曲人
あの天文台まで見つからずに進め、ね
「――うん、面倒くせぇな!ちょいとズルして楽させてもらうかね」
というわけでオレ様、無防備に森の中を歩いていく事にした
ほらオレってば髪型目立つし、隠密行動とかあんまし得意じゃねぇんだよねぇ
なんで『調子外れの歌を歌いながら歩く』って非戦闘行動に没頭するぜ
「ある日ぃ、森の中~、チンピラさんにぃ、出会ぁった~♪」
(ポケットに手を突っ込んで上機嫌そうに)
【手妻使い】のお陰でいくら攻撃されても無傷って寸法よ
何?コケにされた相手さんの血管がヤバい?それはオレの管轄外だ
で、天文台にたどり着いたら鉄パイプ片手にヒャッハー!するぜ
頭カッカして大変だろう
かち割って強制空冷してやるよ
●
(――あの天文台まで見つからずに進め、ね)
喧噪、怒号、戦闘音。天文台を陣取るモノ達の何割かが、交戦で個体数を減らし、注意が削がれている。
だが、尚も視界が晴れたところでは望遠鏡が地を睨んでおり、陣取っているぷんすかさまもまだ全滅したわけではないことはよくわかる。……だから、というわけではないのだが。やっぱり、面倒に感じるのだ。
夜でも目立ってしまうらしい、橙色でつんつんとしたヘアスタイルの髪をわしゃわしゃと掻いて。塩崎・曲人(正義の在り処・f00257)は口を開いた。
「――うん、面倒くせぇな!ちょいとズルして楽させてもらうかね」
あっけらかんとした様子でそう言い放つと、歩く先は森から天文台のある開けた土地。鉄パイプを軽く片手に持つと、まるで散歩でもするかのようにポケットに手を突っ込んで、気軽な様子で進み始めた。
「ほら、オレってば髪型目立つし。隠密行動とか、あんまし得意じゃねぇんだよねぇ」
ただ、これは全くの無策でもない。手妻使いと名のついたユーベルコードを仕掛けに使うことで、非戦闘行為に没頭しているのならば、ほぼ無傷で進めるようにしていたが故の行動だ。
「ある日ぃ、森の中~、チンピラさんにぃ、出会ぁった~♪」
くるくる、くるくる。手持ち無沙汰に遊ぶように鉄パイプを回し、景気よく振って拍子を取りながら。調子っぱずれのゆるーい歌と共に、曲人は天文台へ進む。
「え、なんですかアレ」
「真正面からなんて、良い度胸だわ」
「……ええ、どうして!?私達の剣が当たらない!?」
狙っているのに、どうして、どうして。あとあの歌ほんとうに何。
ぷんすかさま達の様子が困惑から怒りへ変わるのは、そう時間もかからなかった。
怒りのままに降り注ぐ輝く剣が、狙いをつけていて、はっきりと見えるはずなのに何故か逸れていく。そのことも更に苛立ちを加速させていくようで、地面を抉る斬撃も苛烈で、見境のないものになっていく。
(おーおー、コケにされて奴さん血管ヤバいレベルのお怒りで。まあ、知らんけど)
「花咲っ……いや、いう程咲いてねえか此処。森の~み~ち~……っと」
降り注ぐ斬撃も逸らしながら、曲人は入り口にたどり着いた。数度屈伸して鉄パイプを持ち直し、階段を一気に駆け上がる。
着くや否やその得物をぶおん、と振りかぶって。
「お嬢さんがた、頭カッカして大変だろう?かち割って強制空冷してやる……よっ!」
思い切り、頭を狙って振り下ろす。
いやいや、誰のせいだと!……というぷんすかさまの言葉は、骸の海の泡と消えていくのだった。
成功
🔵🔵🔴
テリブル・カトラリー
…怒りか、猟兵はまぁ分かるが、アリスに何故それほどまでに怒るのか………理由なぞ、考えるだけ無駄か。
『爆破工作』見えない小型ロボ達を散開、破壊工作。
一部を自身から離れた場所を爆破したり、遮蔽物を動かし存在感を出して視線をおびき寄せ、その間に大部分を天文台へと送り込む。
私は展望台が見える目立たないよう、隠れたままロボ達の操縦に専念。
強い感情は力になる。だが、同時に目を曇らせる要因にもなりうる。怒りは、特に。
展望台にいる敵を爆破。吹き飛ばし、撹乱。そろそろ動こう。
スナイパーライフル、早業で展望台にいる敵に遠距離狙撃を行う。
爆破と、狙撃。せいぜい掻き回してやろう。
●
「……怒り、か」
人間的な棘や特徴を抜き取ったような、淡々とした合成音声がそう思案気に呟いた。
猟兵へ怒りを向けるのは、まぁ理解できる。オブリビオンを倒す者であるから。だが、アリスに何故それほどまでに怒るのか。
先行した猟兵らが幾度か接敵したのだろう、にわかに怒号で騒がしくなった天文台に視線をやる。周囲に降り立った小型ロボ爆弾を連れ、声の主、テリブル・カトラリー(女人型ウォーマシン・f04808)は静かに眉を顰めた。
「……、理由なぞ、考えるだけ無駄か。」
考えたからといって、先に控える戦いは変わらない。さながら物語の登場人物のように、件のオウガ達に与えられた役割がそれだったからと思うしかない。テリブルはそう結論づけて、側にスナイパーライフルを立て掛ける。
切り倒されるままに障害物が乱雑に並ぶ、森と開けた土地の境の状況。オウガとの距離。概ね、把握は完了した。
(せいぜい、掻きまわしてやろう)
指先の、最小限の動作をキーにしてロボ達を散開させる。視認できない状態のそれらは、きっと望遠鏡のレンズにも映らないだろう。
そのまま距離を取らせると、大き目な鉄くずになったお茶会のテーブルを動かし、また別のところで大きく音を立てて倒木を爆ぜさせる。
「あら、また新手?」
「今度こそは、来させてたまるものですか」
「当たらない、当たらない!ああ、苛々する……!!」
ぷんすかさま達が怒りに任せて望遠鏡を向け、斬撃が流星のように降り注ぐ、が。小型の的であることや、爆ぜてすぐに消えてしまうこと。煙幕などが災いして、煙の中の正体が掴めず、攻撃が当たる感触も無い。
更に彼女らは、天文台を上がりくる本命であるロボ達に気付かなかった。
(強い感情は力になる。だが、同時に目を曇らせる要因にもなりうる)
――怒りは、特にそうだ。
ぷんすかさま達は、その名のように怒り狂っており。確かに目が曇っていた。
壁から、そして階段から。いっせいに上がってきたロボ達が背後を取ると、小規模な爆発を起こす。
望遠鏡自体は大きく揺れる程度にとどめた威力ではあるが、ぷんすかさま達への不意打ちには……いいや、不意打ちだけではなく。
テリブルは側に置いていたスナイパーライフルを持ち上げ、早々と狙いを定めると……まずは、一射。続けざまに、正確に射撃を加え、ぷんすかさま達を骸の海へ還していく。
不意打ちのような爆破と、正確精緻な射撃。攪乱には、十分すぎるぐらいであった。
大成功
🔵🔵🔵
宇宙空間対応型・普通乗用車
星空を奪うって、あの望遠鏡どうなってんだろうなぁ。
亜空間か空間歪曲かそれともワームホールか。
…ま、スペシの物理法則に当てはめて考えるのが土台間違ってるか。
さて、レンズに映ったらアウトってことは、
煙幕張りながら進めば問題ねぇってことだな!
【ガジェットショータイム】で煙幕発生装置でも呼びだすとするかぁ!
オレも周りが見えなくなるが、
煙幕張る前に地形情報をメモリに記録しときゃなんとかなるだろ!
そのまま塔の中も煙でもくもくに燻しつつ、
声のする方に向けて走り回れば轢き放題の跳ね放題って寸法よぉ!
ぷんすかだかなんだかしらねぇが、
煙に巻かれてよくわからんまま骸の海に帰りやがれこの美人剣使いが!
●
(星空を奪うって、あの望遠鏡どうなってんだろうなぁ。)
砂利を踏んで、タイヤが止まる。一時停止だがエンジン音で勘づかれても困ったので、エンジンも切っておくことにした。
白い車の運転席に人影は無い。それもそのはず、この白い乗用車は、車自体が猟兵だからだ。
他の猟兵が起こしたらしき煙に紛れ、車体を隠してくれるぐらいの倒木の影に位置取った宇宙空間対応型・普通乗用車(スペースセダン・f27614)……セダンは、改めて天文台を見上げる。目はどこかなんて些細な問題。
ログを遡って思い返すのは、転移前に見た映像だ。その時は既に望遠鏡は星空に向いていなかったのだが、距離なんて関係ないというように、視認できるなら攻撃が届いていた。
はたして理屈はなんだろう。亜空間。空間歪曲。それともワームホールの類だろうか。故郷である星の海の技術と照らし合わせて考えてみるも、どれも違うような気がする。
「……ま、スペシの物理法則に当てはめて考えるのが土台間違ってるか。」
考えていても仕方ない、とセダンは意識を切り替えた。改めて地形情報を記憶し終えると、エンジンキーをかちりと回す。
そのまま無策のままレンズに映れば、車体に斬撃が降り注いでしまうだろう。
「映ったらアウトなら……煙幕張りながら進めば問題ねぇってことだな!」
自信ありげな声と共に、セダンが呼びだしたガジェットは、煙幕の発生装置。
そうして、薄い煙に混ぜるように煙幕を張る。此方も、きっと先に煙に紛れて向かった猟兵も隠れやすくはなるだろう。セダン自身の視界も悪くはなるが、覚えておいた地形や位置情報が役に立つ。
転がる障害物自体は動かないし、オウガ達は視界不良の望遠鏡と戦闘に苦戦しているから、短時間で向かえば新しい斬撃で物が増えることもない。
塔の入り口でも煙幕発生装置を連れ、もくもくと燻しながらモーター音を響かせて、階段を上っていく。
車が階段を?……階段だろうが関係ない、だって彼は宇宙空間にすらも対応している車(?)(ウォーマシン)なのだから。
「あら、煙」
「イラつくわ、イラつくわ。これじゃあ周りが見えない」
「というか、何この音。足音なんかじゃない、もっと……」
「いや何だお前!?!?」
到着したセダンのタイヤがぎゃるるると音を立てれば、驚愕の表情を浮かべたぷんすかさまが見えた。
「何だってお前車に決まってんだろ!ぷんすかだかなんだかしらねぇが、煙に巻かれてよくわからんまま骸の海に帰りやがれ、この美人剣使いが!」
多少狭いが問題なし。走り放題轢き放題。セダンはぷんすかさまの斬撃を避けながら走り回り、跳ね飛ばして骸の海へ還していく。
ききぃ、というブレーキ音が、戦いの終わった合図となった。
大成功
🔵🔵🔵