迷宮災厄戦⑥〜海月揺籠
●悪夢にはご用心
「皆様お集まり頂きありがとうございます」
召集に応えてくれた猟兵たちにまず一礼するのは、グリモア猟兵の薄荷・千夜子(夏陽花・f17474)だ。
感謝の言葉に続けて、今回の戦場について語り出す。
「今回、皆様に向かって頂きたい場所は『原城』になります」
――原城。
アリスラビリンスの虚空に現れた洋風めいたサムライエンパイアの城だ。
アリスラビリンスに現れた猟書家たち。
アリスラビリンスだけでなく、平和になった各世界への侵攻を目論む者たちであり、その一人『クルセイダー』が予兆で告げていた『ぱらいそ預言書』。
「原城にいるオウガたちはその『ぱらいそ預言書』を信奉する狂信者のような状態になっています」
どうやらクルセイダーの扱う秘術『魔軍転生』によりオウガたちは何やら蠢く亡霊のようなものを纏っているとのこと。
とはいえ、以前エンパイアウォーの際に織田信長が使っていたものと比べると不完全なようで特定の誰かが『憑装』されているわけではないようだ。
「そのため、知性を持って色々仕掛けてくるというよりは自己を顧みず捨身で襲いかかってくるので皆様にはうまくその対処をお願いできればと思います」
とはいえ、今回の相手は少しばかり特殊なのですが――と、千夜子が言葉を続ける。
「今回の相手は、夢喰いクラゲ――人の見る夢を主食とする空飛ぶクラゲのオウガです――なので、皆様を全力で眠らせてきます」
全力で、眠らせる。
脅威を感じるような、感じないような絶妙のライン。
「ですので、皆様の立ち回りでうまくこのクラゲを攻略して頂ければと思います」
そのまま眠りについたままでは、永遠の眠りに誘われてしまったり、他のオウガに襲われたりと命の危険に晒されるだろうが、眠ったフリや一時的に眠りにつくのであればオウガも隙を見せるだろう。
「アリスラビリンスだけでなく、他の世界も守るため――どうか、お力を貸してください」
優しく道を照らすは鬼灯の明かり――温かな光に包まれ、猟兵たちは戦場へと向かうのであった。
天藤
戦争始まりましたね!天藤です。
こちらのシナリオでは、空に浮かぶ原城に攻め込んでいただく形になりますが、城内に転送されますので移動手段については気にせずで大丈夫です。
リプレイの展開につきましても、シリアスになるのかギャグになるのかはプレイング次第になりますので皆様の思うがままプレイングをお送りくださればと思います。
何か見たい夢などありましたらそちらをプレイングにご記載頂くのも大丈夫です。
ふよふよクラゲとのバトルお楽しみいただければと思います。
●プレイングボーナスについて
全力で眠らせてくるオウガに対して『オウガの捨て身を逆に利用する』の行動を取っていただくことでプレイングボーナスが付与されます。
●プレイング受付期間について
OP承認後からいつでも送付して頂いて大丈夫です。
プレイング受付期間については、MSページにて告知しますのでご確認頂ければと思います。
第1章 集団戦
『夢喰いクラゲ』
|
POW : おやすみなさい
いま戦っている対象に有効な【暗闇と、心地よい明かり】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
SPD : 良い夢を
【頭部から眠りを誘う香り】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 気持ちよく眠って
【両手】から【気持ちいい振動】を放ち、【マッサージ】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
荒谷・ひかる
なるほど、全力で眠らせてくる敵ですか……
それなら、わたしとは相性が良さそうですね。
ということで精霊さん達、お願いしますね。
転送次第速やかに【風の精霊さん】発動
総勢415体の不可視の風の精霊さん達を召喚し、付近に潜んでいてもらう
当初は冷凍弾を装填した二丁の精霊銃で以て応戦
クラゲと言うからには水分多めのはず……まあ違っててもとりあえず問題は無いです
眠らされてしまったら、後は風の精霊さん達の出番です
鎌鼬や竜巻、懐に潜り込んでの自爆等でクラゲの群れを駆逐してもらいます
精霊さん達はわたしの「命令」ではなく「お願い」を聞いて動いてくれるお友達
ですから、わたしの意識が無くても彼らは問題無く戦えます!
シズホ・トヒソズマ
ふふふ、確かに眠らせる香りは脅威ですね。ですが私たちは違います!
香りが振り撒かれたら偶然外れたかのようにマスク、つまり私本体を落として着用者の方に眠って貰います。私自身はマスク状態ならば、匂いを感じないようにもできます!念のため、転移前にマスクに◆武器改造の要領でコーティングしておきますが。
香りの散布が終わったようなら再び顔に装着し動けるようにし、UCでからくり人形を強化します。
◆早業の◆操縦でリザの◆氷属性の風で◆範囲攻撃し、射程や威力を強化した吹雪でクラゲを凍結。固まったところをクロスリベルの◆怪力やイズンの◆毒使い仕込んだ刀で破砕したり切り裂きます
これぞヒーローマスク戦術です!
●眠り姫と氷雪の協奏曲
「なるほど、全力で眠らせてくる敵ですか……それなら、わたしとは相性が良さそうですね」
「ふふふ、確かに眠らせる香りは脅威ですね。 ですが私たちは違います!」
「「あら?」」
原城への転移前、一人の少女と一人の女性は声が揃ったことで互いに顔を見合わせた。
少女は精霊に愛されし者、荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)。
女性は紫の全身スーツを纏ったヒーローマスク、シズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)。
「おや? もしかして、あなたも本体が別の方ですか?」
「本体? いえ、私の場合は私が眠ってしまっても問題ないと言いますか……」
シズホの問いかけにひかるが微笑み返す。
彼女の周りに何やら優しい気配が満ちていることに、なるほどと頷く。
「私の方は、『こちら』さえ動ければなんとでもなりますからね」
そう言いながら、シズホは己のヒーローマスクを外して指を指してみせる。
「相手は眠りに誘う風を扱ってくるようですからね……マスクさえ動ける状態ならば問題ないのです」
そう言葉を続けながら、念のためとヒーローマスクに香りを防ぐためのコーティングを施して行く。
シズホの仕込みを眺めながら、なるほどと頷くのはひかるの番であった。
「それでしたら、私もお手伝いできるかもしれません」
にこりと微笑み、任せてください!とグッと拳を握るひかるに、シズホも一瞬驚いた顔を見せた後彼女の提案に頷くのであった。
――そして二人は、揃って戦場へ。
「さぁ、どこからでもかかってきなさい!」
「風の精霊さんたち、よろしくお願いしますね」
周囲を警戒するシズホの隣で、ひかるはそっと辺りの精霊さんへ『お願い』を。
彼女の願いに応えるべく姿を見せたのは総勢415体の精霊さんたち。
サイズ感は小さい子たちのようだが、それにしても――。
「見えないけど、すごく何かがいる『圧』を感じます……!」
「なんだか、皆張り切っちゃったみたいで」
3桁の精霊さんがいればそれは圧も感じますわ。
そんな張り切っちゃった精霊さんたちにはもうしばらくだけは潜んでもらいひかるは二丁の精霊銃を構える。
「もしかしたら、潜んでいなくとも相手は気付かないかもしれませんけど」
「全力で眠らせにくるってどんな感じで襲ってくるんでしょうね……って大群ですねっ!?」
侵入者の気配を察知したのか、通路からわらわらとやってくるのは弾力性のありそうなボディを安眠誘う夜空の色をした夢喰いクラゲ。
「クラゲというからには水分多めのはず。 それなら冷凍弾で凍らせれば……って、待って!! 私の精霊さんも多かったですがクラゲさんも多くないですか!?」
「これが、全力!! というか数の暴力!!」
少しぐらいは力になれるはずと、構えた精霊銃をクラゲに放ち、一体ずつ仕留めていくがその亡骸を乗り越えて新たなクラゲが押し寄せる。
「あ……これは、本当に良い枕……シズホさん、精霊さん……あとは、よろし……すぅ……」
ぽすんと、クラゲに包まれひかるダウン。
しかし、それは何の問題もない。
元々ひかる自体の戦闘能力はそこまで高くないのだ――彼女の真骨頂は、彼女のお願いに応えてくれる友人の存在。
ひかるが眠りについたのを合図に、風の精霊たちが一斉に動いた。
ある者はクラゲを枕にすよすよ寝息を立て始めたひかるを優しく包み、ある者は鎌鼬を放ち容赦なくクラゲたちを斬り刻み、ある者たちは数体集まり竜巻を巻き起こして彼らを吹き飛ばす。
「あっ!?」
そして、その風の流れがシズホを巻き込んだかのように一陣の風が彼女のマスクをその身から剥がす。
クラゲから放たれる眠りの香りがシズホを包んでいく中、ヒーローマスクの『シズホ』はその香りが届かぬよう風の精霊さんたちに守られる。
「(確かに、この相手はひかるさんにとって相性の良い敵です……そして、私の戦法ともとても相性が良い)」
こてんと眠りについた装着者である『シズホ』を見て、どことなく満足気なオーラを見せているクラゲを前にヒーローマスクの『シズホ』が動いた。
「さぁ、ひかるさんの精霊さんたちに遅れを取ってはいけません! 我々の力も見せて差し上げましょう!!これぞヒーローマスク戦術です!!」
眠れるシズホに、マスクが再装着。
――リザ!!
彼女の掛け声と共に力を振るうは竜人型をした、からくり人形リザ。
巧みにリザの糸を操りながら(ちょっと自身にも絡んでる気がするけれど残念ながらこの場に突っ込める人はいなかった)近寄るクラゲたちをリザの放つ吹雪で凍らせて行く。
「ふふ、この戦法もどうやら相性が良かったようです」
リザの巻き起こす吹雪を、風の精霊さんがさらに勢いをつけて強化していく。
例えどれほどの数がいようとも、固まって動けなくしてしまえばこちらのもの――。
「さぁ! クロスリベル、イズン行きますよ!」
からくり人形をリザから対物理戦向けのクロスリベルと毒の扱いを得意とするイズンへと持ち換え、カチコチクラゲとなったものたちをその豪腕で叩き潰し、毒の仕込まれた刀で切り裂いていく。
負けてはいられぬと、風の精霊さんたちも鎌鼬や竜巻で凍らされたクラゲたちを蹂躙していく。
気付けばあれだけいたはずの夢喰いクラゲの姿は跡形もなく、原城には氷の山が積み上げられていくのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
木常野・都月
くらげ…UDCアースの海にいる生き物図鑑に載っていたけど、この世界では城にいるんだな。
ここは元狐らしく、オウガを騙そうかな。
眠ったフリをしたい。チィ、ちょっと手伝ってくれ。
月の精霊様チィの[属性攻撃、催眠術]で、俺が眠ってしまったかのような幻を、オウガに見せてほしい。
チィは、狂気や幻を司る月の精霊様の子。上手くすればオウガが油断してくれるかもしれない。
上手くいけば、クラゲは俺が大好物のモツ煮込みを山ほど食べてる夢を見てると思うはずだ。
失敗したり、油断したオウガが近づいてきたら、UC【精霊の矢】を風の精霊様の助力で、かまいたちの矢で[範囲攻撃]したい。
……でも本当に、山盛りのモツ、食べたいなぁ。
●クラゲとは城に棲むものである
「くらげ……UDCアースの海にいる生き物図鑑に載っていたけど、この世界では城にいるんだな」
うん、一つ賢くなったぞ。
真面目に頷く木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)に残念ながらこの場で間違い、もといレアケースであることを説明できる人はいなかったのである。
いつか誰かが普通は城にいるわけではないことを教えてくれることを願うしかない。
「全力で眠らせてくるクラゲか……それなら、ここは元狐らしく、オウガを騙そうかな」
ふふ、と少しばかり楽しそうな表情を見せ相棒の精霊チィを呼ぶ。
チィ、と呼ばれた月の精霊はその名の通り可愛らしい鳴声を上げてくるりと都月の周りを飛び跳ねる。
「チィの力を貸してほしい。 俺が眠っているような幻をオウガに見せて欲しいんだ」
――できるだろうか?
――チィ!
都月の問いかけに元気なお返事。
ふわりと優しい月の光を放ちながらくるり、くるりと都月の周りを飛び回る。
その光は幻惑の輝き。
輝きに包まれ、そっと息を潜める都月の耳に遠くから風が揺れる音が聴こえた。
「(こちらに気付いたな)」
侵入者である都月の存在に気付いたのか、いくつかの気配が空中を漂いこちらに向かってくるのを気配と共に聴覚で感知し、チィに視線で合図を送る。
チィの力で自身は身を潜め、その隙にチィがクラゲたちに見せるのはもう一人の幻の都月。
何も気付かぬ素振りを見せている幻の都月を見かけるなり、夢喰いクラゲは素早い動きで空中滑走し――その魅惑のふよふよボディで幻都月を担ぎ上げわっしょいわっしょい。
「(確かに、あれを枕にしたら安眠できそうだなぁ……)」
そんなことを思っているうちに、幻都月はクラゲの頭に載せられうつらうつら――モツが……いっぱい……こんなに、食べていいのか?――もにゃもにゃと寝言まで呟けば、クラゲたちはしてやったりと満足オーラ。
「よし、今がチャンスだ!!」
本当の俺はこっちだ――チィの幻惑を解除し、続け様に願うは風の精霊様への助力。
「彼らを一掃する風の力を!」
都月の願いに応えるように、辺りの空気が変わる。
風が集まり、夢喰いクラゲたちを取り囲むように数多の風の矢が形成され――。
「放て!!」
――都月の号令に合わせ、一斉に放たれるかまいたちの矢。
絶対に逃さぬ強い意志とともに放たれた矢は、油断し切ったクラゲたちを撃ち漏らす事はない。
あっという間に討ち取られたクラゲたちを前に――。
ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。
景気良く都月のお腹が勝利の祝砲を上げた。
「幻の俺はお腹いっぱいモツ煮込みを食べていたようだけど……俺も山盛りのモツ、食べたいなぁ……」
敵は倒せど、この空腹は満たされぬ。
帰ったらお腹いっぱい食べよう、とそっと心に誓う都月であった。
大成功
🔵🔵🔵
ヘスティア・イクテュス
【宙花】
わたしには今回倒さなければならない敵が二人いる…
一人はSSWを狙うプリンセス・エメラルド…
もう一人は……この人の胸のことを言ってしまったナマモノ(声に出しながら)
ということで澪が突っ込んで眠らされて、わたしが眠ってるのをビームで起こしながら敵を倒す案でどうかしら?
気にしてると…にはお黙り!っと返しつつ戦闘開始!
確かにこの暗闇、宇宙の海の様でわたしには有効ね…
でもわたしには毎朝起こしてくれるアベルの存在が!
寝てる澪にはアベル(を投影する腕輪型端末)を投擲ね…
トドメは、(澪ごと)対艦ミサイルで【爆撃】
ちっ…上手く避けたわね…
あっ、澪の攻撃はきっちりタロスで防ぐわ【盾受け・オーラ防御】
栗花落・澪
【宙花】
えー、ちょっと待って僕全然記憶に無いんですけど
いやある意味逆に心当たりあり過ぎるくらいだけど
色々と意味を曲解し過ぎなのでは?
そして案が雑過ぎるのでお断りします!!
あんまり気にしてると自ら認めてるようなものだぞ
クラゲさんの攻撃は敢えて受けましょうか
はわぁーマッサージ気持ちいい…
これは人間をダメにする触手…あ、ダメ素直に眠い…すやぁ
わーん痛ーい!
いい夢見てた気がするのにー!
ミサイルは【空中戦】でひょいっと回避
僕まで巻き込まないでよ!
というか痛いのは可哀想だし
もっと優しくしてあげないと、ね?
【破魔】の【指定UC】でクラゲさんを優しく迎撃しつつ
言葉と裏腹にこっちもヘスティアさん巻き込むね!!
●戦争が戦争を呼んでしまった
ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)は激怒していた――ヘスティアには今回倒さねばならぬ相手が二人いた。
一人は、彼女の故郷であるスペースシップワールドへの侵攻を予兆で匂わせた猟書家『プリンセス・エメラルド』。
そして、もう一人は――。
「……この人の胸のことを言ってしまったナマモノ」
ヘスティアの怨嗟の籠もった声と視線を受けるのは傍に立つ少年。
「えー、ちょっと待って僕全然記憶に無いんですけど!?」
いやある意味逆に心当たりあり過ぎるくらいだけど、と反論する(これは反論になるのか)のは栗花落・澪(泡沫の花・f03165)。
「色々と意味を曲解しすぎなだけでしょ!」
ちょっとした場外乱闘時のやりとり――ただ、触れてはならない乙女のタブーに触れてしまったのだ……すん、とスレンダーボディに満ちた乙女の怒りを甘く見てはいけない。
「そういうわけだから、ここでの戦法は単純明快に分かりやすく……」
澪が囮になってクラゲに突撃、眠る。
それを私がビームで起こしつつクラゲと共に屠る。
「完璧ね、これで行きましょう」
「どういうわけだよ! 案が雑過ぎるし、起こすじゃなくて屠るになってるよ!! お断りします!!」
真っ当な澪の反対意見に、チッと舌打ち。
「……あんまり気にしていると自ら認めているようなものだぞ」
その舌打ちに澪だって負けていない、ボソッと追撃の一言。
「お黙り!!」
後に澪は語る、その時のヘスティアの顔は般若であったと――。
そして、その一声が開戦の合図となった。
二人が龍虎相対す――もとい、蛇とマングースもしくはどこぞの猫と鼠を彷彿とさせるやりとりをしているうちに夢喰いクラゲたちはそっと、そこまで迫っていたのだ。
「やっぱり、作戦通りに行きましょう! ゴー、澪!」
「わっ!? ヘスティア、押さな……はわぁー、このマッサージ気持ちいい……」
栗花落・澪、秒落ちである。
お客さん、お疲れですねと言わんばかりにふるふると与える振動は心地良さを感じるもの。
さぁさぁ、どうぞごゆっくり――触手はそのまま澪を担いで自身の頭部へとぽすん。
「これは、人間をダメにする触手……と思っていたら、このふよふよ感も完全に人をダメにするやつだ……やわい……暖かい……あ、ダメ素直に眠い……」
スヤァ。
栗花落・澪、本日二度目の秒落ちである。
「計画通り……」
何かどこかの漫画で見たことのありそうな顔をしてミスリルティンからビームを放とうとするヘスティアにも迫るクラゲの影。
眠りに誘う優しい暗闇、それは故郷の宙を思わせるものだ。
「確かにこの暗闇、宇宙の海の様でわたしには有効ね……」
うつら、うつら。
宇宙の海を思わせる闇の中、船を漕ぎそうになるヘスティアだが。
『朝です。 起きてください。 いつまで寝ているおつもりですか』
ジリリリリリリリリ、そんな目覚ましアラームと一緒に言葉をかけるのは毎朝彼女を起こす存在――サポートAI端末ティンク・アベル。
戦闘だけに拘らず、ヘスティアの日常生活のサポートまで行う優秀な相棒だ。
「ハッ!! 流石、アベル!ナイスタイミングよ!」
AIは眠らない、ヘスティアが寝そうになったならいつも朝起こすように起こしてもらうよう事前に設定をしておけばなんという事はないのである。
「あらあら、あちらはだらしない顔でおねむだこと」
「うへへ……そんなに褒めてもおかわりはでないよぅ……」
未だぐっすりと夢の中な澪を見てぼやけば、あちらはなんだか幸せな夢をクラゲの上でゆらゆら揺られながら楽しんでいる様子。
「せいっ!!」
「いたぁ!?」
全力投擲されたアベルを投影するための腕輪型端末は一直線に澪の後頭部目掛けて放たれ、ゴツという鈍い音が響いた。
こいつ、本当に容赦しねぇぞ!!
「わーん、いたーい!! いい夢見てた気がするのにー!」
「そのまま永遠の眠りについてくれてもいいのよ?」
――紅蓮に染め上げなさい!レッドキャップ!
ミサイル発射前に起こしてあげた優しさを思い知りなさい。
ヘスティアの号令に従い、対艦攻撃弾道弾運搬機レッドキャップより放たれるは対艦ミサイルを発射する犬の頭型ドローン。
見た目は可愛らしいが威力がえげつない。
「うわ、危ないな!? 僕まで巻き込まないでよ!」
「ちっ……うまく避けたわね……」
ヘスティアからの一撃を交わし、上空に逃げる澪。
クラゲと共に、城の床も抉るミサイルの一撃を放ちながらヘスティアは苦々しい顔を見せる。
「というか、痛いのは可哀想でしょ。 もっと優しくしてあげないと、ね?」
そう言って、澪が展開するのは雪のように美しく輝く鈴蘭の花弁。
破魔の力をその花弁に纏わせ優しくクラゲたちを包み、浄化していくが――。
「澪! こっちにも向けてきたわね!?」
「なーんのことだかー!?」
盾型ドローンを展開し、破魔の花弁を防ぎながらヘスティアの怒号が飛ぶ。
それを素知らぬ顔で交わし、澪は空を舞う。
「やってやるわ……徹底的に……」
「そっちがその気ならこっちだって!!」
――どうやら、戦争はまだ始まったばかりのようである。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
八津崎・くくり
悪いのだが、私は空腹だと眠れない性質でね
ちゃんとお腹を空かせてきたから覚悟してもらおう
ナイフとフォーク、何より後ろ髪に寄生したUDCを駆使して近接戦闘
捨て身で来るというなら迎撃を重視
食器で動きを止めて、凶悪な『後ろの口』で片っ端から齧り取ってやろうではないか
野生の勘で食べ物の匂いを感知し、不意打ちを逃れつつ継戦
ははは、ご馳走がどんどん来るな!
いくらか食事が出来たら、そろそろこちらも攻めに回らせてもらおうか
UCを発動、血の巡りをよくして眠気に抗いながら、ガンガン仕留めていくよ
君達に私は止められな……んん
空腹が満たされた上に適度な運動…心地良い薄暗がり…もしやこれは、ああ……
ね、ねむい……?
鵜飼・章
◎
寝ていいの?戦争中なのに寝ていいの?
魔導書からもこもこひつじさんベッドを召喚するよ
いい香り…全力でおやすみなさい
薄荷さんの話を聞いていなかった訳じゃないんだ
僕にはハイカラパワアが…
UC【パブロフの犬】があるから…
寝るという非戦闘行為に没頭することで完全無敵状態に入ることができ💤
お昼寝しに来たとばれたらまずいので
便宜上【挑発】という事にして味方を守りつつ隙を作るよ
どんどん僕を攻撃するといいよ…効かないから…
僕は一度寝たらなかなか起きない事で有名なんだ
僕が寝ている間に鴉たちやカブトムシががんばってたたかってくれるとおもうんだ
がんばれー…かぶとむしー…
ちなみに寝起きも悪い
起こされたら魔導書で殴る
●食を愛する者、眠を愛する者
「え、寝てもいいの? 戦争中なのに寝ていいの?」
まさか、寝ても許される戦場があるなんて。
最高かな?
魔導書から、もこもこのひつじさんベッドを召喚し、夢喰いクラゲがやってくる前から完璧な環境を整え万全の睡眠体勢を整えているのは鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)だ。
いそいそとひつじさんベッドに入り込む章の姿を、八津崎・くくり(虫食む心音・f13839)はそのくりっと大きな瞳をさらに大きくして見つめていた。
「え……君、寝ちゃうの……?」
「うん、薄荷さんの話を聞いていなかった訳じゃないんだけど。 僕は寝てる方が役に立つはずだから」
僕の事は気にせず、安心して戦ってもらって構わないよ。
安心させるかのように言うけれども、それで安心できるのだろうか。
「そうか、わかった! 私はここに食事に来たんだが」
もしかしたらうるさくしてしまうかもしれないけれど、大丈夫だろうか?
逆に眠りにつこうとする章を気遣うくくり。
「心配してくれるなんて君はとても優しい人だね。 安心して欲しい、僕は一度寝たらなかなか起きないことで有名なんだ」
ふふん、と微笑む章にくくりも微笑み返す。
「よかった……私は空腹だと眠れない性質でね」
ベッドに潜り込み、完全に睡眠態勢に入った章を背に先ほどまでの微笑みとは一転、捕食者の笑みを浮かべる。
「ちゃんとお腹を空かせてきたから……覚悟してもらおう」
ジャキッと『お食事用』の巨大なテーブルナイフとフォークを構え、こちらに向かってくる食材を前に心を躍らせる。
「うんうん、『食欲』は人間として当然の欲求だからね。 いっぱい食べるといいよ……僕もお昼寝だけしにきたとバレるとまずいから君の邪魔にならない程度に援護をしよう」
食材もとい、夢喰いクラゲに向かって駆け出したくくりを見送り、ふわぁと欠伸一つ――そして、発動するはパブロフの犬。
「君たちが何かせずとも僕は寝るし、眠る事で完全な無敵状態になることができ……」
最後まで言い切る事なく、章は夢の世界へ。
え、せっかく寝かせる気満々できたのに?
どことなく動揺した雰囲気を醸し出すクラゲの脳天にフォークが勢いよく振り下ろされた。
「いただきまぁす!」
料理をフォークで抑え、ナイフで切る――当たり前の食事の風景。
ただし、料理と言ってしまうには、どう見てもナマの食材でオウガという存在であるのだけれども――それを器用に捉え、切り裂き――『後ろの口』が大きな口を開けて齧り取っていく。
くん、と鼻を鳴らし食材の匂いを感知すれば目を輝かせてどんどんとクラゲたちの居場所を探知し、狩っていく。
「ははは、ご馳走がどんどん来るな!」
何もせずともあちらからオイシイものが来てくれる、最高のお食事タイムじゃないか!
嬉しそうにナイフとフォークを振るい、くくりはどんどんとクラゲたちを食べていく。
ザシュ! グチャ! ジュルルルルル……。
何かを切り刻む音、何かを潰す音、多分食べてる?啜ってる?音。
クラゲに骨があったなら、噛み砕いている音も響いていたのかもしれないお食事処と化した戦場の真っ只中――宣言通り、章はぐっすり睡眠を貪っていた。
くくりの発生させる音など意にも介さず、もこもこひつじに包まれ優雅なスリーピングタイム。
動かない章に変わり、鴉やカブトムシが空を舞い――その嘴や爪、角を駆使してクラゲと相対する――不思議な光景が繰り広げられていた。
「あれは流石に食べたら怒られるよなぁ……」
ちょっとだけ気になると言えばなるけれども、くくりだって食べていいものと悪いものの区別はできるのである。
「がんばれー……かぶとむしー……」
「これは起きてるのか? 寝言なのか?」
むにゃむにゃと呟く言葉に、首を傾げ一度振り返るがどう見てもぐっすり睡眠中の様子。
「まぁ、いいか。 いい感じに食事にもありつけたし……そろそろ攻めに回らせてもらおうか」
食べた分だけ、くくりの全身の細胞は活性化する。
ユーベルコードの力で戦闘力を上げ、今度は食事のためではなく相手を屠るための動きへと変化する。
もう食べる分は必要ないのだから、と遠慮なくクラゲたちを斬り伏せていく。
食べる場所を残す必要がないのだからと容赦なくナイフとフォークを振るっていたが……。
「君たちに私は止められな……んん?」
いっぱいご飯を食べた。
いっぱい運動もした。
食べてる時や運動している時には気にならなかったこの心地よい薄暗がり。
「もしや……これは、ああ……」
ぱちり、ぱちり……閉じそうになる瞼をなんとか開けようと試みるものの、抗えない睡魔の波。
うつら、うつらとどことなく千鳥足に。
そして目の前に見える誘惑のふわもこのベッド。
「ね、ねむい……?」
ぼすん、とふわもこひつじさんベッドの横に倒れ込み、まさかのくくりも戦線離脱。
二人の寝息が響く中、たまに眠りの邪魔をしてしまったことによる章の魔導書(物理)のアシストも入りながら、鴉さんとカブトムシさんが残ったクラゲたちを相手に獅子奮迅の活躍を見せるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アネット・レインフォール
▼静
(ドキュメンタリー風)
――猟兵の朝は早い。
世界情勢が絡むため複雑そうに感じるが
一種の人材派遣であり、その現場は過酷を極める。
ある猟兵は語る
『皆、集中してますから。現場で寝るなんて出来ませんよ』と。
困難な局面を潜り抜けてきた処世術だ。
さり気なく語るが彼らの後ろ姿から確たる信念が窺える――
▼動
眠り対策として予めスマホのアラームを複数セットしとく。
適当に着信音か音楽にしておけばBGMにもなりそうだしな
敵の攻撃?
回避は難しそうだし、諦めて数分だけ休憩だな。
…まあ、今のうちに眠気を飛ばせば次の戦いの備えにもなる。
起きたら霽刀を手に【流水戟】で一掃しよう。
必要なら他の猟兵を起こす事も
連携、アドリブ歓迎
月見里・華夜
アドリブ共闘ok
「まったく猟兵に休みはありませんね」
眠らせるオウガ、厄介だが前もって情報を持っていれば耐性がなくとも対処は可能だ
「休暇用に用意した物が役に立ちそうですね」
水鉄砲を構え不敵に笑い
「まずは敵の足を止める!」
《先制攻撃》戦闘用に調整された水圧弾をマシンガンの用に放ち《制圧射撃》
「続けて前方に弾幕を集中!」
予め《情報収集》で得た敵の攻撃範囲の外から高威力の水圧弾を撃ち敵の体勢を崩し
「締めの弾丸は私自身!」
敵の動きが鈍くなった所を狙い
UC《虚空刃震電》距離を詰め切り伏せます
「呆れる程有効な戦法ですね…今日は随分大人しいですね?フォリア?」
「Zzz止めろ…そんな名前つけるな!」
「寝るな!」
●プロジェクト・イェーガー
――猟兵たちの朝は早い。
朝だけでなく、いついかなる時に呼び出しがかかるか分からない。
特に、今回の迷宮災厄戦はいつも以上に慌ただしい。
ただでさえ世界情勢に関わってくる案件……それが、さらに穏やかとなったはずの世界にも魔の手が伸びるというのだからやむを得まい。
その世界で起こる出来事を予知したグリモア猟兵の招集に応じ、各戦場へと赴く――一種の人材派遣であり、その現場は過酷を極める。
ある猟兵は語る。
『皆、集中してますから。 現場で寝るなんて出来ませんよ』
またある猟兵は語る。
『夏もゆっくりと過ごせないとは……いえ、それでも完璧な仕事をこなすというものが猟兵としての務めというものです』
そう、例えどんな戦場でも手は抜かない。
万全の支度を整え戦場へ向かう。
己のスキルと、事前の情報を有効に使い最善の手を尽くし、最良の結果を得る。
そして、一つの戦場を片付ければ、すぐに新たな戦場へ。
誰もがこなせるものではない……それでも、世界を守るため彼らは戦場を駆ける。
さりげなく語る彼らの後ろ姿から、確たる信念が窺える――。
――プロジェクト・イェーガー。
そんなナレーションを背に、原城へ転送された猟兵は二人。
「眠らされると分かっているなら、いつでも起きられるように仕掛けておけばいいだけさ」
スマートフォンのアラーム機能を複数セット、数分おきに音楽が鳴るようにと設定するのは、アネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)。
「香りで眠らせてくるのが分かっているのであれば、その射程範囲内に入らなければいいだけのこと」
――休暇用に用意した物が役に立ちそうですね。
ジャキッと、水鉄砲をマシンガンのように構えて不適に笑うのは月見里・華夜(現代に生きる忍び・f19119)。
「アラーム対策はいいですね、私も念のため設定しておきましょう」
「俺はちょっとした休憩も兼ねて、食らうときは大人しく食らって起きたら頑張る方向で行こうと思ってな」
現場で寝るなんてできない、と語っていたのどの口か。
しかし――。
「(……まぁ、今のうちに眠気を飛ばせば次の戦いの備えにもなる)」
それは、わざわざ口に出していうものではないというだけ。
先を見据えた考えは言葉に出さずアネットは欠伸一つ。
その横で同じくスマートフォンにアラームを設定していた華夜が視線を先に向けた。
「来ましたね」
「そのようだな」
挟み撃ちを狙っているのか、気配は前方と後方それぞれから。
互いに背を向け、華夜は水鉄砲を、アネットは霽刀【月祈滄溟】を構える。
「では、お先に行かせてもらいます」
「おう、何かあれば起こしに行ってやるよ」
――その言葉、そのままお返ししますよ!
言うなり、華夜が先陣を切る。
彼らを己の射程に取られ、近付かれる前に。
「まずは敵の足を止める!」
本来であれば、ただの水鉄砲であるがここは戦場。
もちろん戦闘用に調整された特別製の水鉄砲だ。
「ただの水鉄砲だと思っていたら痛い目を見ますよ! 前方に弾幕集中!!」
マシンガンのように水圧弾を連射し、足止めからの制圧射撃。
空中を漂うクラゲでも、その足や頭部に集中的に高威力の水圧を常時放たれてはまともに身動きも取れない。
そして一方、アネットの方は――。
「Zzzzzz……」
夢喰いクラゲの放つ穏やかな暗闇に包まれしばしの休息。
特に抵抗することもなくあっさりとクラゲの攻撃を受け眠りにつく。
そして、10分ほど経った頃に鳴り響くスマートフォンからの軽快なメロディ。
「時間か……うん、いい感じにスッキリしたな」
昼寝に最適な時間は10分〜20分。
相手が快適な睡眠の環境を作ってくれるのだ、それを利用して後は最適な時間に起きるだけ。
「さぁ、それじゃ……一気に片付けてしまおうか」
霽刀を片手に、水流の如く流れる剣戟は――弐式・流水戟。
目にも止まらぬ鮮やかなスピードでクラゲの群れの中を駆け抜け一閃、また一閃と刀を振り下ろすたびにクラゲたちを仕留めていく。
「あちらも動いていますね……こちらも負けてはいられません! 締めの弾丸は私自身!!」
身に纏っていた衣服を脱ぎ去り、真夏の様相――つまり、水着となりその脚力を活かし眠りの香りを放つ前に小太刀片手にクラゲを仕留めていく。
「ふふふ……呆れる程有効な戦法でした」
流石、私。小太刀をしまい、華夜が振り返るればアネットも一仕事終えたようで。
「お疲れさん……って、そっちはもしかして……」
バカンス中だった?
水着姿と、水鉄砲――どう見てもエンジョイ・サマーバケーション。
「……遊びも、仕事もどっちもこなすのが一流の猟兵ってやつですよ……」
少しだけ、遠い目をして語る華夜の肩にポンとアネットが手を置く。
そう、猟兵は多くは語らなくとも通じるものはあるのだ。
「戻ったら一杯やるか……」
「……ジュースでしたらお付き合いしましょう」
また、次の戦場へと向かうまでのわずかな休息を。
二人の猟兵は並んで帰路へと着くのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
カイム・クローバー
クラゲ――ねぇ。眠ったフリなんざした事ねぇからな。そのまま寝ちまいそうだが…ま、何とかなるだろ。
眠ったフリのつもりが完全に熟睡。暗闇と灯りが付いてて、『寝てるフリ』だぜ?起きてろってのが無理だろ。
――夢を見てる。故郷、ダークセイヴァーでの惨劇。人の姿をした吸血鬼。そいつの腕がギザギザの歯の付いた口みてぇになって、俺のダチを食い千切る所。一人、二人――何人も喰われて。俺はあの時、死にたくなくて。只、生きていたくて。俺は、親友に向けてダガーを突き刺――夢から覚めて、いつの間にやら、魔剣がUCでクラゲを突き刺して【串刺し】にしてた。
悪夢に助けられた?あんな悪夢、今更見るなんてよ…俺は忘れられないのか
●悪夢、再び
「クラゲ――ねぇ。 眠ったフリなんざした事ねぇからな」
そのまま寝ちまいそうだが……ま、何とかなるだろ。
敵は主に眠らせることに全力、であれば対応はどうとでもなるだろうとカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は気楽な様子を見せていた。
実際に現れたクラゲは、あれやこれやと眠りに誘おうとするぐらいでそこまで命の危険を感じることもなく――確かに、ずっと眠らされ続けたら危ないのかもしれないが。
「相手としては、問題ない……が」
気付けばふよふよと自身を取り囲むクラゲたち。
何も見えない真っ暗な空間でなく、どことなく優しさを感じるほのかな星明かりが見える暗闇でカイムを取り囲んでいく。
「(やり過ごすには眠った『フリ』が一番だが……これは、起きてろって、の、が……無理……だろ)」
安らぎを感じる闇の中、カイムは意識を手放していった――。
安らぎを感じていたはずの闇。
気付けばそこは太陽の見えない常闇の世界で――見覚えのある街並みを前に立ち尽くす。
辺りを見渡せば血の海と、倒れ伏している人の山。
近所のおばさんは、首を掻っ切られて死んでいた。
よく行く店の親父さんは、手足が千切れて死んでいた。
その他にも、見知った顔の屍があちらこちらに倒れている。
「あ……あぁ……」
――これは、いつか見た……故郷の惨劇。
自分が歩いているような、自分が誰かの視点から見ているような不思議な感覚でカイムは血の海を駆ける。
――だめだ、この先に行っちゃいけねぇ!!
思い出したくない記憶が、蘇る。
止めようと思っても身体は止まらず、目にした光景は。
「や、やめ……!!」
人の姿を『何か』がカイムの友人に迫る瞬間。
怯えた表情をした友人と、カイムの視線がかち合ったその時――バケモノ――吸血鬼の腕が捕食のための口となり、友人を喰い千切った。
カイムが動けぬ間に、一人、また一人と喰われていく。
そして、友人だった――親友だったはずのモノが今度はカイムを喰らうべく、定まらぬ視線をギョロリと向けた。
――いやだ、死にたくない。 俺は……ただ……。
このまま何もしなければ、ここで死ぬ。
それだけは直感で分かった。
『生きたい』
ただただ、シンプルな感情が、生存本能が――恐怖を抑えて身体を動かした。
その手に握られていたダガーを無我夢中で振り下ろし――肉を貫く嫌な感触が、その手に伝わった。
「っ!!」
目が覚めたカイムの前には魔剣によって貫かれたクラゲの姿。
頬を嫌な汗が伝い、ハッと自嘲気味の笑みを溢す。
「悪夢に助けられた? あんな悪夢、今更見るなんてよ……」
いっそ忘れられてしまったなら楽なのか。
忘れることは許されないのか、自身が許さぬから――。
「俺は、忘れられないのか……」
その小さな呟きは消えゆく暗闇と共に飲まれていった。
大成功
🔵🔵🔵