迷宮災厄戦⑨〜セメントのように(作者 天味
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 グリモアベースに集まった猟兵たちを一瞥し、九重・玄音(アルターエリミネーター・f19572)は深呼吸した後に依頼を切り出した。

「アリスラビリンスで戦争が始まったわ。あなたたちには、オウガの城を攻略してもらいます」

 アリスラビリンスにある世界の一つに、時間が歪んでいる城が建てられた。恐らくオウガ側が戦争に利用するであろう拠点であり、その城には『堕ちた彫刻家『アリスアーティスト』』なるオウガが住み着いている。これを討伐するのが、今回の依頼内容だ。
 時間が歪んでいる、正確には"まるで凍り付いたように時間の進みが遅くなる"城に目標はいるらしく、これに対処する必要がある。

「予知から見るに、中での時間は十分の一にまで低下しているの。敵味方問わずに効果を受けるのが幸い、なのかしらね。喋ったり、指を動かしたり、弾の速度が目に見えるくらい落ちたり……とにかく、城の中では"あらゆる行動が低速化する"わ」

 当然、ユーベルコードもその対象内だ。しかし一つだけ、この"あらゆる行動が低速化する"対象に当てはまらないものがある。

「唯一、思考能力だけは低速化の影響をうけないみたい。お互い攻撃速度は遅いから、一手毎に作戦や戦術を考えることはできるわ。これを有効に使って、オウガを倒すのよ」

 さながらチェス、将棋のようなターン制ゲームを思わせる戦略的な攻防になるだろう。
 なお、相手である『アリスアーティスト』だが、彼女は愉快な仲間たちや迷い込んだ『アリス』たちを芸術品に変える趣味を持つ。彫刻家を自称しているだけあって、石化や石膏による拘束技を使ってくる。
 ただでさえあらゆる行動が低速化する中で、行動不能になる絡め手を利用してくるのだ。これほどに敵と相性のいいフィールドはないだろう。思考時間という余裕がある分、慎重な選択が求められる。

「くれぐれも気を付けて。そして、オウガを滅ぼすのよ」

 ──凍てつく城への入り口が、開かれる。


天味
 天味です。
 アリスラビリンスで迷宮災厄戦が開始されました。戦争のお時間です。

 今シナリオは⑨番、「時間凍結城」の内容となります。
 "肉体の動き、放たれたユーベルコードなど、敵味方の全ての行動速度が10分の1になる"空間の中での戦闘となります。なので相手との会話や、声を出す速度も10分の1。よって、敵相手と長話やキメセリフはできないと思ってください。セリフは敵味方共に独白(心の声)や「動きの応酬で表現する」などといったやり方がいいでしょう。

 よって、今シナリオでは以下のボーナスが適応されます。

『思考時間を活かし、戦略的に戦う』

 スローモーションの中で、敵に有効な一手を与えるための戦略を立てることが試されるシナリオとなっております。

 ついでですが、相手のオウガが"状態異常系"の技で占められているため、希望があればこちらを適応します。希望者はプレイング内容のどこでも良いので「〇」か「◎」をお願いします。「〇」で軽度、「◎」でプレイング内容通りか、それ以上の内容になります。もし一切NGであれば「×」か、マークを入れずにプレイングをお願いします。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『堕ちた彫刻家『アリスアーティスト』』

POW ●素敵な彫刻にしてあげる♪
【手に持つ彫刻刀】が命中した対象に対し、高威力高命中の【彫刻化の呪い】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD ●大理石へと変わり果てなさい♪
【腕輪】から【呪いの瘴気】を放ち、【大理石化】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ ●石膏まみれになっちゃえ♪
【粘液状化したドロドロの石膏】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【が深い石膏の沼に変わり】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠テフラ・カルデラです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


リアン・ブリズヴェール
【◎】【ソロ希望】【アドリブ歓迎】

まずは【コールレギオン】で巨大ラミアと大量の魔物娘の幽霊を召喚します、
召喚したラミアと魔物娘幽霊でアリスアーティストの逃げ道や動きを制限して戦いますが……逆に【石膏まみれになっちゃえ♪】で地面を石膏に変えられリアンの一部と魔物娘が石膏塗れにされて……その隙に【大理石へと変わり果てなさい♪】で魔物娘もラミアも大理石になりそうです

そして逆に接近されてしまい、リアンも【素敵な彫刻にしてあげる♪】で彫刻にされてしまい、たっぷりと愛でられてしまいそうです


 城の中は恐ろしく静かだった。
 それもそのはず、時間が低速化したこの空間では、音の速度も低速化する。よって耳に入る音の情報も遅れてやってくるのだ。

「さあ、あなたも芸術品にしてあげる!」

 スローで耳に入るおかげか、野太い男性の声にも聞こえるこのセリフ。堕ちた彫刻家『アリスアーティスト』から放たれたものだ。なお、これが聞こえた時には彼女はユーベルコードを発動した後であり、ゆっくりとアメーバの如く宙を泳ぐセメントの濁流がこちらに迫ってきている。

(皆さん……助けてください。今まさに、リアンは)

 多重人格者の少女、リアン・ブリズヴェール(微風の双姫・f24485)は何も喋らず、そして彼女も行動を完了させた後だった。

(彼女に襲われそうになっています……!!)

 アーティストに対してとった行動は、リアンによく似た姿の巨大ラミアと、その他大量の魔物娘の幽霊の召喚。
 相手は一人。こちらは百を超える数。リアンの勝利は目に見えていた。

「……!?」

 彼女が数で負けたことに気づいたのか、驚愕のセリフを放とうとしている。しかし口の動きが遅いためか、ゆっくりと変化する表情しか読み取れない。
 ラミアが咆える。じわじわと耳に響くラミアの声をBGMに、魔物娘の幽霊たちがアーティストに迫り、ラミアは咆哮中に片目を大きく見開いて光を凝縮、レーザーを放った。
 光は音より速い。たとえ十分の一以下の速度まで遅延させられる空間の中でも、超高速でアーティストを穿つ。

(……しめた!)

 レーザーが直撃したのを見届け、リアンは心の中でガッツポーズをした。
 が、勝利の余韻はすぐに消える。ねっちょぉぉ、と重たく舐められるような感触が足から伝わる。象牙色の粘液、ラミアを召喚した時と同時に、アーティストが放った攻撃の一部だ。それはリアンの両足をべっとりと包み、さらに地面に着弾した衝撃で辺りに広がり、ラミアや魔物娘の幽霊にも付着する。

「……ぁ、ぇ」

 ねっとりとした感触の次に伝わるのは、冷たく、熱が失われる感覚。じんわりと足から脛へ、太ももへと。肉体を石膏にと変えられ、蝕まれてゆく。
 次の指示を、できない。思考では命令を出していても、体が追いつかない。その間に、粘液から石膏と化す呪いは広がってゆく。恐怖のあまりに出た声も、ラミアや魔物娘への命令も出せぬまま──ついに下腹部まで到達する。

「……ゃ……ぁ……!」

 このまま何もできず、全身が石化するまで体が冷えて消えてゆく恐怖を味わう。その現実に、リアンは首を振って拒絶した。仲間も皆、心までもやがて、固まって無機質になる。

 ──数分後、そこに残ったのは悲嘆の表情に染まった、石膏と化したリアンと同じく象牙色に染まって固まったラミアや魔物娘たちだった。
大成功 🔵🔵🔵

佐伯・晶

あえて水着姿で戦うよ
相手を芸術品に変える趣味があるなら
彫像に変えてみたいと思うかもしれないし
業腹だけど邪神の見た目は悪くないからね

ガトリングガンの射撃で
逃げ場を塞ぐように戦いつつ
頭脳戦に負けて瘴気に追い詰められたふりをして
ガトリングガンを投げ捨てて逃げようとしたまま
彫像に変えられよう

作品の出来を確認するために近寄ってくるだろうから
見られても触られても我慢して
相手の気が済んで背を向けるまで待とう

背を向けたら神気で相手を固定しつつ邪神の涙で攻撃
こっちは大理石だから凍ってもなんともないよ
そのまま氷の彫像になって貰おうか

邪神の施しで彫像のまま動けるから
適度なところで離脱するなり
とどめをさすなりするよ


 神の女性、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はあえて水着姿でここへやってきた。フリル多めの黒ビキニ姿の女神、となればアーティストにとってそそられる素材となるのではないか、と思ったからだ。
 そして、その予想は見事的中する。晶を見た時、明らかにアーティストの表情が恍惚に変わったからだ。

(さて、まずは準備)

 フリルの付け袖から取り出すは"携行型ガトリングガン"。会敵した際にすぐに構えるよう体を動かし、引き金を気持ち早めに引く。十分の一の空間であれど、当たれば致命傷になることは変わりない。一発でも当たれば致命傷になりうる。
 それを理解していたのか、アーティストが動く。スローモーションだが、射線上から逃れるように斜め後ろへ、扉へと向かって動くのが見えた。

(……そこ!)

 アーティストが逃げた先をなぞるように、銃口の向きを変える。回転機構がようやく回り始め、エンジンが唸った途端に弾丸が放たれた。
 晶は見逃さない。弾丸が放たれるのと同時に、アーティストの右腕にある腕輪から、乳白色の霧が吹き始めたのを。

「とっても、いい石像になりそうだわ!」

 これを、あえて見逃す。メトロノームのように輝くマズルフラッシュ越しに、アーティストの顔だけをじっと見てガトリングを撃ち続ける。霧──大理石になる瘴気が辺りに立ちこめ、晶はこれをバレない程度に吸い込んだ。
 スゥ……、と体から熱が奪われてゆくのを感じる。全身の動きが鈍くなり、意識も薄れてゆくのを感じる。"懐かしい"感覚だ。

「……あら?」

 ──そうして数分後、晶はガトリングを片手にしたまま、全身を大理石にされてしまった。固まってもなおトリガーは引かれていたため、弾丸が全部出し切られるまで隠れていたアーティストは、ようやく安心して彼女に近づいた。
 大理石特有の、絵具を一滴だけ水バケツの中に入れた時のような、波打つ線が入り乱れる表面。頭の先からつま先まで、乳白色と黄色に変色したなめらかな肢体を曝け出す晶に、アーティストはたまらずぴったりと抱き着いた。手先で露出した肌を撫で、頬を合わせてひんやりとした感触を楽しむ。
 石を削る工程も、仕上げもいらず、美しいヒトを美しいままに石像に変える。美しいままの時間を固定させ、永遠に愉しむことができる。これだから、石化はたまらない。

「う、へ……へぇ♡」

 素晴らしい、その一言に尽きる。一時も離れたくないが、猟兵がまた来るとも限らない。逃げ出した際に落とした道具を取りに行こうと、アーティストはしぶしぶ彼女から離れ、背を向けた。
 ──それさえも、晶にとって計算済み。

「動かないで」

 ピシリ、と。アーティストが突如動かなくなる。当てられたのは神気。上位者固有の威圧感が、彼女の体を石のように麻痺させる。
 強引に、時間も低速する中だからゆっくりと、アーティストは首を後ろに向けた。そこには、

(数年ぶりですわ。しかし大理石とは、面白い趣味ですこと)

 大理石になったはずの彼女が、まるで変化する前のように平然と動いていた。肌や衣服は大理石のままだが、腕に付けていたガトリングをパージし、にやりと目元を緩ませてアーティストに近づいてきている。
 かつて石像として生きていた邪神に意識を切り替えたことで、こうして大理石になろうとも行動を可能としているのだが、それはアーティストの知らない話。

「次は、あなたですわ♪」

 伸ばした手の指先から、一粒の液体がこぼれる。極低温の水滴、『邪神の涙(ゼロ・ケルビン)』が地面に落ちたその瞬間、ただでさえ遅くなった世界は、ついに"停止"にまで至った。
大成功 🔵🔵🔵

二尾・結
(普段はスピードに振り回されちゃうけど、ここなら上手く使えそうね!)
というわけで『クロックアップ・スピード』発動!敵の攻撃をよく見て避けながら、死角に回り込んで一撃離脱を繰り返すわ!
石膏沼になった地形もちゃんと見ておけば落ちる心配も無いし……って、自分の周囲を全部沼に変えるのは反則!私近接攻撃しか無いんだからー!

※負けた後は全身にゆっくり石膏を塗られ、彫刻刀で整形されるという繰り返しで、心も芸術品に変わる喜びに屈服してしまいます。
最期は結とは似ても似つかない淑やかな少女の彫刻にされてしまいます。
(あぁ、作品として『完成』出来たのね。嬉しいわ……)


NG無し
アドリブ、絡み、無様描写歓迎


「いいじゃないこれ、普通に喋れるわ!」
「……!?」

 今まで『クロックアップ・スピード』の扱いに悩んでいた強化人間の少女、二尾・結(通りすがりのツインテール・f21193)は時間が低速化する空間の中で、普段のように動けることに喜んだ。
 寿命を糧に加速化する基本ユーベルコードだが、これを発動するとスピードに翻弄されてしまう。のだが、今回は別。十分の一に低速化する空間は、このユーベルコードにピッタリなエリアだった。

「じゃあ、覚悟しなさい!」
「……ぅ……く!」

 スローモーションでしか動けないアーティストに対して、結は"正義と蒼月の破刃剣"を手に接近する。象牙色の粘液塊を投げようと刷毛を振るうが、あまりにも遅い。その間に鋸歯の剣がアーティストの肩部を削り、確実にダメージを与えたところで離脱。
 一方的なヒットアンドウェイ。これが結が編み出した戦術だ。

「ほらほら!そんなに遅かったらあたんないわよ!」

 アーティストに隙を与えぬ連撃。ようやく粘液塊が発射されたところだが、結は既に十回も攻撃を加えている。勝負は目に見えていた。
 だが、

「もういっ、ぎゃぶっ!?」

 着弾して広がった粘液に足がつっかかり、アーティストの目の前でびたん!と床に激突した。と同時に、体の前面にねっとりとした感触。倒れている間にも広がった粘液が、床を舐めていた結の顔を覆った。

「んぐっ!?むぐぅっ!」

 粘着力が高いのか、粘液が顔から剥がれない。ついでに腕も足も粘液に捕まったために、じたばた動けば動くほど粘液が纏わりついてゆく。蜘蛛の巣に捕まった蝶のように、逃げようとしているのに自ら粘液を纏う様に、ボロボロになったアーティストは思わず噴き出した。

「むぐー!むぅぅ……!」

 ──そうして数分後、城の中には一枚の石膏が残った。
 一枚の石膏には繭のようなものが浮き出ており、これをアーティストは丁寧に削る。この中には"素敵な素材"が埋まっており、素材を傷つけないように荒く、時に細かく凹凸を取り除いてゆく。

「……ふふ、できた♡」

 削り、磨き、彫刻刀で整形され、そうして出来上がったものは、裸体の少女の石像だった。顔は、石膏と同化し象牙色になってしまった結本人だが、助けを求めて叫んでいたはずの表情は、柔和でお淑やかな表情に変えられており、ポーズもそれらしく優美な形に。結でありながらも全く別人の姿となっていた。
 『おてんば少女の反省』とタイトル付けし、満足したアーティストは城の一室から去ってゆく。後に残ったのは、石膏像に変えられ、あらぬ姿にされながらもそれに至高の喜びを感じた少女の姿だった。
成功 🔵🔵🔴

数宮・多喜


動きを鈍くされるって?
アタシにとっちゃ致命的だねぇ。
そもそも逃げ回ったり攪乱したりが本領なんだけど……
ま、やり様はあるか。
戦場に着いたら、カブに座標を入力しといて降りる。
そして電撃を放ちながら横っ飛びして、アリスアーティストと対峙するよ。
兎にも角にも、注意はアタシに『おびき寄せ』ておきたいのさ。
思考の速度がそのままなら、それこそサイキッカーのアタシにゃ
おあつらえ向きだからねぇ!

だから、呪いの瘴気も甘んじて受けて、
石化しながらも物凄い表情で睨み返してやる。
そうしてアタシに向かって歩み寄り……
特定地点を踏み抜いたならそこで思念波の『念動力』を活用!
仕掛けておいた【宙穿つ穴】をぶっ放す!


凍雪・つらら
状態異常【限度、NGなし ◎】

(時間すらも凍結した城...ううっ、時間の進みが遅い分、寒さを感じる時間も増えて...うわわっ、さむいですううっ!)

そうですっ、ここは凍える体感時間も伸びる...これを逆手に取ります!
よーく狙いつつ、【全力魔法】【属性攻撃】で、思いっきりユーベルコード【無限の極寒地獄】っ!
凍える寒さと極寒の吹雪、ゆ~っくりと味わって下さいっ!

(あれっ?攻撃したは良いものの、気がついたら足が取られて...ひゃあっ、いつの間にか足元に石膏がっ!?)

自分の冷気で石膏がドロドロに固まり、身動きが...

(重い...さむいぃ...うごけ...な...)

わたし、どうなっちゃうんでしょうか...


四王天・燦
変異の恐怖に長時間晒される
おっかねーな…

稲荷符と黒曜石の杖を持って参戦
符から炎属性攻撃な火球をぶっ放すぜ
避けられて問題ない
炸裂させて範囲攻撃で城内に熱をブチ撒き空気の流れを生むんだ

瘴気に触れて肌が大理石化したら恐怖に怯える…が、進行速度が落ちているし、冷静になれと自身を鼓舞するぜ
予定通り気流を見切って風上に立って瘴気から離れるよ

アタシの番…風上も風下も戦場全域に真威解放で黒曜石化を起こす呪詛の煙を充満させるぜ

この身に宿る杖の持ち主たるメデューサの魂が表面化して妖しく笑う
煙が晴れたら―どうなるかな?

一応可哀想だから呪詛の符で命脈は断って躯の海に送るよ
黒曜石像は城の彩りだね

〇(※作戦失敗時は◎)


 カブから降りた人間の女性、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)はさっそくアーティストと相対する。
 スターライダーたる彼女にとって、この空間は非常に相性が悪い。城内だと愛車で走り回れないのは当然のこと。逃げ回ったりかく乱したりと、素早さを重視する戦術を主に使うため、かなり致命的だ。

(けど、こういうのは先手必勝!)

 しかし一つだけ、死んでいないメインウェポンがある。それは思念を具象化して扱う力。サイキックだ。
 アーティストへ手を前に向けると、多喜はさっそく思念から紫電を生み出す。紫電はそのまま手の中でつぶての形になり、それをアーティストへ放つ。
 思考能力だけ影響を受けていない分、いつものように生み出せるのは僥倖だった。

「ぐぁ……!!」

 光と似て、雷も低速化の影響をほとんど受け付けない。一度に大量の電流を浴びたアーティストを一瞥し、手を突き出したまま多喜は横へと走りだした。

「さあ、来い!」

 アーティストの体力は残り少ない。ここで仕留めるのが吉だ。
 そのために、多喜は城の奥へと誘導する。全力で走っているが足の進みが想像以上に遅く、一歩踏み出す度にたった数十センチ程度しか進まないことに苛立ちを隠せない。だがその程度で思念を揺らがせるほど、戦闘において慢心することはなかった。

「こ、の!」

 走る中、後ろを見ればアーティストが腕輪を稼働させたのが見えた。乳白色の瘴気が城内に立ちこめ、"作戦通り"に進んだことに多喜は心の中で拳を握りつつ、小部屋の中へと逃げ込む。
 その間数分。扉を開いた先には、

「まっ、て、た……!」
「たの、む!」

 幼げな妖狐の女性、凍雪・つらら(凍える雪狐・f14066)が待ち構えていた。扉越しに猟兵がいたことに驚愕するアーティストだが、既につららはユーベルコードを発動させていた。
 ここは時間が低速する世界。彼女的に考えれば、"凍える体感時間"も伸びる世界だ。よって、この世界を『無限の極寒地獄』に変化させる。

「まっ……!」

 アーティストの阻止する声も止む無く、小部屋の中に溜め込まれた冷気が津波のように襲い掛かる。
 一瞬にして白色に染まる城内。瘴気も、時間さえも凍結し、固めてゆく。冷たいを通り越して"何もない"。何も感じない。石化とはまた違う、思考さえも凍り付く感覚に三人は襲われた。

「──」
「──」
「──」

 城から白色の霧が晴れると、そこには三人の女性の氷像があった。
 小部屋にはユーベルコードを発動してそのまま凍り付いたつららが。扉の前には手を伸ばして走っている姿のまま雪色に固まった多喜が。そして数メートル離れた場所に、驚愕したまま固まったアーティストがいた。
 三人とも、動く気配がない。生命の気配さえも凍り付いてしまった。

 ──しかしこれも作戦通り。

「そお、ら……かい、とう、しちま……え、っ!!」

 あらぬ場所から契られた呪符。それはアーティストの頭上に悍ましい黒色の火球を生み出し、風船の如く膨張する。
 瞬間、それは爆発し、熱波が充満した。
 白色だったのが瞬く間にオレンジ色へ。轟音と共に響く叫び声。それに起こされるように、多喜とつららを固めた氷が溶かされてゆく。
 タイミングばっちりに火球を放ったのは、つららと同じく妖狐の女性、四王天・燦(月夜の翼・f04448)だった。

(計画通りってな。アーティストは……落ちたか)

 三人の猟兵は、ある作戦を組んでいた。時間が歪んだこの中で、アーティストに確実にトドメを刺す作戦である。
 まずは多喜がアーティストを誘導。次に別地点で待ち構えていたつららがあらかじめユーベルコードを発動し、全体を凍結。あとは燦が炎属性攻撃でアーティストだけを燃やし、二人を解凍して救出する。リスキーではあったが、これによりアーティストは斃れ、二人は救出された。大成功と言えるだろう。
 黒曜石の杖を手にゆっくりと歩く。火の元にいたアーティストは黒焦げになっており、低速の影響で火が消えるまで、彼女はこのままグリルになるだろう。見届けながら、燦は残る二人に目を向けた。

「げほ、ぉ……っ!ぅ……まく、いっ……」
「ぁ~…………」

 小部屋にいた二人は、熱波で解凍されて救出されていた。つららはなぜか物足りなさげな表情だったが無事。多喜はというと若干焦げて苦しげだった。
 すぐに駆け寄り回復をさせねばと思った燦だが、ここに来て時間の低速化が邪魔をする。せっかく敵を倒したというのに、この空間は解除されないらしい。煩わしいなと思いつつも、びちゃっとねばつく感触の床を歩いた。

「……ぁん?」

 ここは城の中のはず。と、燦は下に目を向けると象牙色の液体だまりがあった。それはスライムのようにゆっくりと広がってゆく。
 これは、アーティストのユーベルコードのはず。

「……!!?」

 すぐにアーティストに目を向け直す。黒焦げで、動く気配が全く見れない。
 否、動いていないのだ。アーティストは黒焦げになったのではない。"石になった"ことで焼かれて黒色に染まっていただけだった。

「ま、だ……生き……っ!」

 咄嗟に叫ぶが、ここでも時間の低速化が邪魔をする。声が伸びて二人にすぐ伝わない。その間にも足からは熱が奪われ、固まって意識が薄れてゆく。

「く、そ……」
「あ、わわ……」

 一方、多喜とつららの二人は、乳白色の瘴気で体に異変が起き始めていた。肌に乳白色の斑点ができ始め、それは侵蝕するように広がってゆく。服も体も、全て大理石に変わりつつあるのだ。
 作戦は上手くいったのではないのか。二人の訴えは届かず、極寒とは違う冷たさが包んでゆく。

「……っ」
「ぷは、ぁ……!」

 下腹部が、腹から下が石膏となって動かなくなる燦は、炎を象牙色の粘液で上塗りしたアーティストを睨む。黒焦げになった体から脱皮し、裸の姿で石膏の床に倒れる。
 あと少し。そのあと少しが届かない。一手足りないむずがゆさに、燦はただ見つめることしかできなかった。
 ──否、それしかできないのか。

(……そういえば、瘴気がこっちに来てねぇ!)

 そもそも、作戦に加担する前に炎は別利用する予定だったのだ。と、燦は思い出す。火球で城内に大穴を開き、気流を生成する。そうすることで瘴気を上へと逃がす。そのために炎の呪符を用意していたのではないか。
 小部屋にいた二人に瘴気は届いてしまっているが、広い場所に出ている燦には来ていない。アーティストの真上を見れば、爆発で大穴が空いていた。炎は消えたとしても熱は残っており、それが城内の空気を動かしている。

(──来い!)

 腕は、まだ動く。侵蝕が胸元まで追いついて来ているが、行動不能に至る前にこれだけはと黒曜石の杖を構えた。思考だけが動くのが幸いで、脳内で素早く蛇姫を降ろす呪文を唱える。
 あちらが石にしてくるのだ。ならば、こちらも。

「アタ、シ、の、番……っ!」

 真威解放。黒曜石の杖より放たれた黒煙、『静寂の誘い(オブシディアン・クレイドル)』は瞬く間に城内に立ちこめた。逃げ惑うアーティストも、大理石になった二人も、首だけを残した石膏化した燦も、全て。黒煙の中に消えてゆく。
 杖に込められた魂、メデューサは黒煙の中でニヒルに笑う。煙が晴れた時、そこに残るのは黒曜石だけだ。このユーベルコードは、"万物を黒曜石に変えてしまう"呪いなのだから。

 ──そして、世界が晴れた時、城内は漆色の輝きに満ちていた。
 全てがつるりとガラスのような光沢をもつ黒曜石に変化しており、その中に三人は各々のポーズで固められていた。慌てた姿のまま固まったつららと、息を切らして前かがみになっていた多喜はいわずもがな。燦も杖を構えた状態で仲間入りしてしまったことで、もう動ける者はいない。

 何ももの言わぬ三人の猟兵。そこから、アーティストはというと半身を黒曜石に変えられたまま、足を引きずっていた。どうやってあの中から逃げたのか、アーティスト本人もよくわかっていない。だが城から出れば、今ならあの猟兵たちを芸術にできる。そう確信していた。
 もう少し、あと少しでたどり着く。事実目の前には多喜が乗ってきたカブが置かれており、その先に城外へ出る大門がある。あと一歩踏み出せば、終わり。

 そう、アーティストはここで終わる。
 カブの目の前。そこにはある罠が仕掛けられていた。特定地点を踏み抜いた時、思念波を検知して発動するユーベルコード。"本命"として置いた、多喜の罠だ。

「……!!?」

 ゆっくりと、目の前の空間が捻じれる。時間ではなく、時空が。亜空間が生成と崩壊をその場で繰り返し、位相のズレた空間が小さな空間の穴や裂け目を開く。そこから生じるのは、傷ついた空間が別の空間で埋め直ししようとする、"地獄の引っ張り合いっこ"だ。
 黒曜石化した体が、石を彫刻するための四肢が、美しい顔立ちが、上下左右前後過去未来X軸Y軸Z軸とバラバラに吸収されてゆく。『宙穿つ穴(ディメンジョン・コラプス)』はさながら無尽蔵に湧いた小ブラックホールの如く、彼女を貪るように吸い込んだ。

 ──空間に捕食される中で、アーティストは酷く後悔した。半分だけだが黒曜石となったこの体、まだ彫刻していない。と。
成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

最終結果:成功

完成日2020年08月05日
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴