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迷宮災厄戦⑦〜正義の執行人

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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「ぐわっはっはっはっは!!!」
 黒い巨体から踏み込まれた足が、図書館の中でずしんと床を響かせた。
「凄まじい魔力だ! さすが魔女の力よ! この力さえあれば、この国の破壊など容易いことよ!」
 黒い巨体がぐぎぎと拳を握る。その腹には、拘束された女が半身以上巨体の身体に取り込まれていた。女に意識はない。だが、苦しそうに顔を歪ませている。
「さぁ、来い猟兵共よ……この力で、貴様らなど蹂躙しつくしてくれるわ!」

●正義の執行人
「皆様、アリスラビリンスで大事件が発生しましたわ!」
 エリル・メアリアル(孤城の女王・f03064)が集まった猟兵達に慌てた様子で叫んだ。
 アリスラビリンスのオブリビオン・フォーミュラ『オウガ・オリジン』の力を奪った猟書家と呼ばれる存在が、オブリビオン・フォーミュラのいない各世界へと侵攻を開始したのだ。
「オウガ・オリジンも力を奪い返そうと出現……つまり、カタストロフへのカウントダウンが開始されたのですわ!」
 エリルが告げた。その名を『迷宮災厄戦』。そして今回はこれまでのようにオブリビオン・フォーミュラを目指すだけの戦いではない。
「皆様には猟書家を止め、そして、オウガ・オリジンを倒すという二つの目標を達成する必要があるのですわ!」
 オブリビオン・フォーミュラ、猟書家、そして猟兵。三つ巴の戦いとなる今回は、混迷を極めそうであった。

「猟書家であっても、オブリビオン・フォーミュラであっても……そこに到達しなくてはお話になりませんわ。まず皆様には、その足掛かりとなる世界を攻略していただきますわ」
 エリルがそう告げると、猟兵に戦場の説明を始めた。
「今回皆様の行く場所は『世界征服大図書館』。ここでは世界征服に関わるあらゆる本が所蔵されていると言われていますの」
 世界征服に関連する本……非常に定義がざっくりとしているが、重要なのはその能力だ。
 この世界では、所蔵されている本に書かれているような行動……つまり『世界征服を企む悪役』のように演じることで、その力を数倍にも引き上げることが出来るのだという。
 そして現在、オブリビオンはその力を利用して、強大な力を得ているというのだ。
「それでは苦戦は免れない……かと思いきや、ですわよ!」
 エリルがピシッと指を立てた。
「なんと、この図書館には……どこかに『正義の書』も眠っていて、正義の行動を取ることで同じような強化を受けることが出来るそうなんですの!」
 正義の行動……正々堂々とした振る舞いだけに限らず、格好良いポーズをとる、爆発を背景にして登場する……なども含まれる。
「これならば、皆様の力も数倍に強化されて互角……いいえ、それ以上の力を得ることが出来るはずですの。だって……」
 一拍置いて、エリルがにやっと笑った。
「正義は必ず勝つ! でしょう?」
 その言葉に後押しされるように、エリルのグリモアが輝きだした。
「さぁ、その正義の力……見せつけてくださいまし!」


G.Y.
 こんにちは。G.Y.です。
 今回は「迷宮災厄戦」をお手伝いさせて頂きます。

 このシナリオで訪れる世界は『世界征服大図書館』です。巨大な本棚が壁のように連なった巨大な施設で、並べられた本はどれも世界征服に関わる書物ばかり。
 この世界は、本に書かれたような行動を取ることで超強化が図れるという能力があるため、オブリビオンは世界征服を企む悪役のような行動を取って、自身の力を数倍にパワーアップさせています。
 このままぶつかるのは非常に危険……ですが、この世界、実はなんと『正義の書』もどこかに隠されているのです。
 正義の書に書かれていそうな行動を予想し、正義の味方のような振る舞いをすることで、皆さんもパワーアップするのです!
 つまり、「正義の味方」っぽい行動をする……ということがプレイングボーナスとなりますので、是非皆様盛り込んで頂ければと思います。

 なお、敵のオブリビオンの腹部には愉快な仲間の『魔女』が囚われています。彼女はオブリビオンでは無く、オブリビオンに力を供給する存在で、救出も可能です。
 正義の味方的行動に役立てることも出来るかもしれません。

 それでは、皆様のアツいプレイングをお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『オウガ兵器『ウィッチハートエンジン』』

POW   :    ウィッチハートフルスロットル
全身を【魔女の心臓から絞り出した魔力】で覆い、自身の【体に取り付けられた魔女への負荷】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    疾く重い一撃
【魔女の魔力を燃料とし繰り出される拳】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
WIZ   :    剛力触手打ち据え乱舞
自身の【邪悪なる赤い瞳】が輝く間、【背中から生えている強力な触手】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はスニッカ・カードルタンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アリス・フォーサイス
正義の味方っぽく戦えばいいんだね。面白そう。
ワンダーランドで正義の味方が活躍する妄想思念を降らせるよ。

「そこまでだ!」
爆発した背景とともに登場。

まずい飯屋と悪の栄えた試しなし。
やられる準備はOK?

誰だ?と聞かれたらこれだね。
「お前たちに名乗る名前はない!」

触手には1回、捕まった方が正義の味方っぽいのかな?
それで絶体絶命のピンチになるんだね。
「負けないよ。負けたら、この世界は誰が守るのさ。」
ご都合パワーアップで触手を引きちぎって、脱出だね。

「さあ、覚悟はいい?この一撃で終わらせるよ。」


ベルンハルト・マッケンゼン
連携アドリブ大歓迎

(ライフルにバヨネットを装着しながら、昔の戦史がフラッシュバックする)
正義、か。
聖都アル・クドゥスの戦いを思い出す。
主の正義の下、膝まで異教徒の血に染まりながら叫んだものだ。
我が主よ、これでもまだ足りないと言うのか! と。

あの時、私は正義の執行者だったのか?
それとも、大量虐殺者だったのか……
今となっては、知る由も無い。
ただ……私は私を貫くだけ、だ!

(UCを発動、燃え上がる黄金の炎と共に哄笑する)
黄金の炎は不滅の焔、
未来への希望が、私を前へと歩ませる!
我が名はベルンハルト、黄金の戦士。
悪鬼よ、我が業を照覧せよ。そして……絶望せよ!
(バトルライフルを連射後、
捨て身の銃剣突撃へ)


ベイメリア・ミハイロフ
なんという非道
これは正義の味方でなくとも許す訳には参りません
勿論、正義の書の恩恵にはあやかりたく存じますが
邪悪なる者よ、その方をお放しなさい!

敵の攻撃は第六感・野生の勘にて見切り回避
回避不可であれば激痛耐性を活用しオーラ防御を展開しつつ
武器受けからのカウンターを狙います
地形耐性・地形の利用で体勢を崩さぬよう注意
むしろ本棚等を利用し敵の死角へと動きながら行動を

囚われの魔女さんには攻撃を当てぬように気をつけて
こちらからの攻撃は、早業・高速詠唱からの2回攻撃も狙い
全力魔法を打ち込みます
触手で魔女さんを攻撃しようものならその触手から狙って
魔女さんの負担を減らすため、早めに決着をつけられるよう心がけます


シホ・イオア
半裸の女性を捕まえてるって……
どこの世界でもだいたい悪だよね。

シホが焼くのは貴方の体じゃない!
その身に宿る邪悪な悪心だ!

「輝石解放、ルビー! 愛の炎よ、邪悪な心を焼き尽くせ!」
破魔と浄化と精神攻撃を組み合わせて
魔女を傷つけず敵の邪心のみを焼き尽くす。
周囲を炎で取り囲み逃げ道をふさいでから
中央に収束させてこうげき。
敵の攻撃には空中戦と残像で対処。
魔女の救出を最優先とする。


オリガ・ホーリエル
あたし自身には正義の味方と呼べるだけの心意気はありませんが、正義と呼べるだけの信念はあります。それは歌を聞いてくれた人々に喜びと希望を届ける事!だからこそ、あたしの信念…歌を今こそ響かせる時ですわ!

まずは【全自動式バーチャル楽器セット】と【シンフォニックデバイス】を起動、私の全力の【歌唱】で【共鳴する行進歌】を歌い、周囲にいる猟兵の皆様を【鼓舞】するだけではなく囚われている魔女にも歌を届かせ、力の供給を阻止してもらえるよう働きかけてみますわよ。

正面切っての戦いは苦手だけど、こうして歌を途切れさせない事で、誰かの力にはなれる。皆に力と希望を与える為に…あたしに力を貸しなさい!

アドリブ、絡み歓迎



 世界征服大図書館。巨大な本棚にはびっしりと世界征服について書かれた本が並び、その本の通りに演じることで力を得ることが出来るのだという。
 オウガ兵器『ウィッチハートエンジン』はその書物を読み漁り、そして魔女を取り込んだ。その力は通常相対する時の数倍には至ろうかとしていた。

「ぐわーっはっはっはっはっは!! よくぞ来た猟兵どもよ!」
 ウィッチハートエンジンが猟兵達を前にして笑う。その貫録はまさに悪の大首領とでもよぶべきものだ。
「だがもう遅い、我が力は魔女の贄と、この世界征服の書物によって絶対のものとなったのだ!」
 ウィッチハートエンジンが触手で覆われた腹を開くと、黒く澱んだ肉体に取り込まれた女性の姿が晒される。彼女が、ウィッチハートエンジンの言う魔女であろう。
「なんという非道……」
 ベイメリア・ミハイロフ(紅い羊・f01781)は痛ましい表情で魔女を見る。
「半裸の女性を捕まえるって……どこの世界でもだいたい悪だよね」
 ベイメリアの言葉に頷きながら、シホ・イオア(フェアリーの聖者・f04634)が語る。
「ふははは、その通り!! 我は悪! 世界征服を果たさんとする者なり!」
 ウィッチハートエンジンが腹の魔女を締め付け、力を吸い上げる。魔女は苦悶の表情を浮かべながら、ウィッチハートエンジンの身体へ沈み込んでゆく。その醜悪な姿に、ベイメリアの瞳に怒りの色が宿る。
「これは正義の味方でなくとも……許すわけには参りません。邪悪なる者よ、その方をお放しなさい!」
 その言葉とともに、ベイメリアの身体光り輝き、身体がふわりと軽くなったように感じた。
「これは……!」
「それが正義の書の力みたいだね」
 シホが言う。この図書館に所蔵されている、ほんのわずかな正義の書。その正義の書が、猟兵達の正義の心に力を与えたのだ。
「有難く、あやからせていただきましょう!」
「うん、いくよ!」
 ベイメリアの言葉に続いて、シホもポーズをとる。
「シホが焼くのは貴方の体じゃない! その身に宿る邪悪な悪心だ!」
 その言葉にシホの身体も雄々しく輝く。その力を生み出した炎に乗せて、再び叫ぶ。
「輝石解放、ルビー! 愛の炎よ、邪悪な心を焼き尽くせ!」
 その言葉に呼応し、戦場に破魔の炎が激しく舞い始めた。戦場を囲むように炎が巡り、敵の逃げ場を塞ぐ。
「ぐわっはっはっは! 面白い! 行くぞ、猟兵どもよ!」
 ウィッチハートエンジンが激しい咆哮を上げる。そして、戦いの火蓋が切って落とされた。

「喰らえぃ!!」
 ウィッチハートエンジンの瞳が赤く輝いだ。どす黒いオーラと共に、背中の無数の触手が猟兵達を襲う。
「くっ!」
 凄まじい攻撃であった。死角を利用しながら接近したベイメリアであったが、姿を現したその瞬間を狙って触手が放たれる。咄嗟にオーラの障壁で攻撃を逸らそうと試みるが、鋭い一撃はその障壁すらをも砕き、ベイメリアを打ち据える。
「まだだ……おぉっとぉ」
 追撃をせんとする触手が、突如方向を変えた。それはウィッチハートエンジン本人へと向かい、腹の魔女を狙う!
「いけない!」
「炎よっ!」
 シホが炎を操り、壁を作る。すんでのところで触手は炎に逸らされ、壁面の本棚へと打ち付けられる。
「どういうつもり!?」
「我の寿命が減っては困るんでなァ!!」
 触手による超速の攻撃の代償だ。だが、ウィッチハートエンジンは代償など代償とも思っていない。贄として選んだ魔女が死ななければ、どんな扱いをしようと構わないと考えているのだ。
「なんてことを!」
 ベイメリアが叫び、触手を斬り裂いた。だが、別の触手が魔女へと迫り、攻撃が止まる事は無い。それどころか、魔女を守るべく操られている分、猟兵達への攻撃は一層激しさを増したといえる。
「どうした猟兵、その程度かぁ!?」
 ウィッチハートエンジンが笑い、触手が放たれる。
「そこまでだ!」
 その言葉と共に、触手が弾け飛んだ。
「何ィ!?」
 ウィッチハートエンジンが驚愕の声を上げた。直後、本棚の世界に正義の味方が活躍する映像が降り注ぎだす。その映像が放たれるのは……本棚の上!
「だ、誰だ!!」
「お前達に名乗る名前は無い!」
 ドォオオンっ! と背後が爆発する。その爆発の前に腕を組んで立つのは……アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)だ。
 アリスの登場に合わせて、歌が響き始める。それは同じく戦場にかけつけたオリガ・ホーリエル(黒き天使を支える者・f12132)の歌声であった。
 歌声に合わせてオリガの想いが猟兵達へと伝わってゆく。
「あたし自身には正義の味方と呼べるだけの心意気はありませんが、正義と呼べるだけの信念はあります」
 全自動式バーチャル楽器セットがオリガの周囲に展開され、演奏される。それはオリガの歌声をさらに強く、高らかに猟兵達の心へと響かせる。
「それは歌を聞いてくれた人々に喜びと希望を届ける事!」
 大きく息を吸って、身体の奥から音を紡ぐ。オリガの身体に、淡い光が宿る。
「だからこそ、あたしの信念…歌を今こそ響かせる時ですわ!」
 光が、歌と共に戦場を駆け巡った。その歌声は、その場の猟兵達を奮い立たせ、力を湧き上がらせてゆく。
「な、なんだ、この力は……!!」
「これが正義の力だよ」
 本棚から飛び降りたアリスが言う。
「まずい飯屋と悪の栄えた試しなし。やられる準備はOK?」
 そして、びしっと指をつきつけるのであった。

「……正義、か」
 響き渡る正義の歌声、正義の言葉に、ベルンハルト・マッケンゼン(黄金炎の傭兵・f01418)が想いを馳せる。
(聖都アル・クドゥスの戦いを思い出す。主の正義の下、膝まで異教徒の血に染まりながら叫んだものだ……我が主よ、これでもまだ足りないと言うのか! と)
 ライフルにバヨネットを装着しながら、過去の戦いの記憶がフラッシュバックする。
「あの時、私は正義の執行者だったのか?」
 刃を番えたライフルを構えて、ベルンハルトはシホの生み出した燃え盛る戦場へと足を踏み入れた。
「それとも、大量虐殺者だったのか……今となっては、知る由も無い」
 ウィッチハートエンジンに向け、銃口を向ける。
「ただ……私は私を貫くだけ、だ!」
 その言葉と共に、ベルンハルトの銃が黄金色に輝き始めた。
「黄金の炎は不滅の焔、未来への希望が、私を前へと歩ませる!」
 その叫びと共に、ベルンハルトの身体に黄金の炎のようなオーラが吹き荒れる。
「我が名はベルンハルト、黄金の戦士」
 照準をウィッチハートエンジンに向け、トリガーを引いた。
「悪鬼よ、我が業を照覧せよ。そして……絶望せよ!」
 ライフルから弾丸が乱射される。その激しい炸裂音と共に、猟兵達が駆けた。
「ふぅぅん!! 何人増えようと変わらん! 我が力はぁぁっ!」
 ウィッチハートエンジンの瞳が赤く輝き、触手が激しくうねり始めた。それは猟兵達を打ち付け、ベルンハルトの弾丸を弾き、シホの炎を払い、アリスを捕える。
「わっ!」
「はははっ! 他愛もない!」
 ギリギリとアリスを締め上げ、周囲の触手が猟兵達を寄せ付けまいとする。
「まずは一人。言い残す事は無いか?」
 にやりと笑いながら、ウィッチハートエンジンが力を籠める。だが、アリスは笑っていた。
「負けないよ。負けたら……この世界は誰が守るのさ」
「生意気な!!」
 容赦はするまい、とアリスを締め上げる力がさらに強くなる。だが、それが他の触手の動きを鈍らせていたことを、猟兵達はいち早く察していた。
「うぉおおっ!!」
「ぐぅっ!?」
 ベルンハルトの銃剣が、ウィッチハートエンジンの脇腹へと突き立てられていた。
 触手の波をかいくぐり、捨て身の突撃が炸裂したのだ。
「正義の味方はね、絶体絶命のピンチを乗り越えるものなんだよ」
 アリスの身体が激しく輝き、触手を軽々と引きちぎった。
「な、何ィ!?」
「正義の力と歌声が、シホ達に力を与えてくれるんだよ!」
 シホが炎を放ちながら叫ぶ。その言葉、その力に、オリガの歌声が乗せられる。
「正面切っての戦いは苦手だけど……こうして歌を途切れさせないことで、誰かの力にはなれる……」
 オリガの想いが歌に乗って、戦場にいるもの全てを鼓舞する。
「皆に力と希望を与えるために……あたしに力を貸しなさい!」
「ぐぅぅっ!!」
 オリガの歌声に、ウィッチハートエンジンが苦しみ始める。
「まだ、まだだ!」
 ウィッチハートエンジンの全身に魔力が滾る。それと共に、魔女が激しく苦しみ始めた。
「いけません!」
 ベイメリアが指を向け、魔法の光を放つ。だが魔女を外した攻撃はウィッチハートエンジンを止めるだけのダメージにはならない。
「止まれっ!」
 ベルンハルトが銃剣での接近戦を仕掛ける。それでもまだウィッチハートエンジンの力が増してゆく。
「フルスロットルぅぅぅ!」
 ウィッチハートエンジンの力が増すとともに、魔女の苦しみ悶える様子も激しくなってゆく。その姿に、オリガの歌声が魔女へ向けられた。
「おねがい……! 頑張って! ……力に抗って!」
 その想いが……届いた。
「な、何故、ここまで来て!」
 魔女がウィッチハートエンジンに抗い始めたのだ。十分な力が供給されなくなったウィッチハートエンジンの魔力が元に戻ってゆく。
「うぐ……、力が、力が出ない! 魔女、魔女めぇぇ!!」
 ウィッチハートエンジンが叫ぶ。今ここに、最大のチャンスが生まれた。
「さぁ、覚悟はいい? この一撃で終わらせるよ」
 アリスの号令とともに、猟兵達が最大限の力を籠める。
 一撃目はアリスだ。妄想によって生まれた正義のヒーローの如く天高く跳びあがり、その巨体へ向けて蹴りを放つ。
「黄昏の時、此処に来たれり……!」
 ベルンハルトの銃撃が、ウィッチハートエンジンの無数の触手を吹き飛ばす。
「皆様! まだまだいけるはずですわよ!」
 オリガの歌が、猟兵達にさらなる力を与えてゆく。
「愛の炎よ、優雅に舞い踊れ!」
 シホの炎が、ウィッチハートエンジンから魔女を切り離した。
「今だ!!」
 魔女をベルンハルトが抱き上げ、戦場から離れてゆく。
 その様子を確認したベイメリアがまっすぐ指を向けた。
「その非道なる行いもこれでお終いにいたします!」
「はっ……!!?」
 それと共に、ベイメリアの祈りを込めた天からの光が、無数に降り注ぐ。
「ぬ、ぬおおおおおおお!!!」
 断末魔の叫び声をあげ、ウィッチハートエンジンは光に飲まれてゆく。
「ワンダーランドで正義の味方が活躍するお話、こんな感じでよかったかな?」
 アリスが問う。それに答えないまま、ウィッチハートエンジンは塵と化すのであった。

 世界征服大図書館。そんな図書館に何故正義の書があったのか……それはきっと明かされる事は無いだろう。
 だが、世界征服をせんとするものに、正義の使者は必ず現れ、そして、悪は必ず打ち滅ぼされる。その結末を描くことこそが、世界征服というものの真の姿なのかもしれない。
 助け出された魔女と共に、猟兵達はこの世界を後にする。
 そしてまた、彼らは世界を救うべく新たな正義の戦いに身を投じるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月04日


挿絵イラスト