迷宮災厄戦②〜おいしいはんばーぐをつくろう!
●屠殺者
「さあ~みんな~いっぱいアリスをよんで~いっぱいオウガ・オリジンにたべてもらおうね~」
ああ、忙しい。忙しい。
そんなふうに幼い声が響く。けれど、その声の主の姿は異様なる姿であった。筋骨隆々たる巨体に牛頭を備えた異形たる姿。
その姿を見たものは、ある神話を想起させたであろうし、またある者は別の物語を思い浮かべたかも知れない。『牛頭の屠殺者』 と呼ばれるオウガは、その巨躯には似合わぬ幼い精神性を持った怪物であった。
彼の役目は召喚されたアリスを屠殺、解体する事。
その手にした肉断ち包丁や、血抜きをするための螺旋剣は、これまで屠殺してきた犠牲者であるアリスの血肉に濡れていた。
「ああ、でもでも~せっかくたべてもらうんなら、おいしいのがいいよね~みんなはどうおもう~?」
『牛頭の屠殺者』 は、他世界からアリスを大量に召喚するための儀式を行っているオウガたちに呼びかける。
勿論、自分たちがアリスを捕食することは叶わない。
これより召喚される全てのアリスは、オウガ・オリジンへの供物である。その血の一滴、肉のひとかけらも余さずオウガ・オリジンの胃袋に満たされなければならない。
しかし、その精神性の幼さは時として吐き気を催す邪悪な行動に成り代わる。
「あ~そうだ~! はんばーぐなんてどうかな? いいよね、いいあいであだよね~! うんうん、きっとそうだ。おいしいはんばーぐをつくろう!」
膨大な数のオウガひしめく中で、『牛頭の屠殺者』 は素晴らしいアイデアを思いついたとばかりに牛頭の表情を歪ませる。
今は下級オウガとして扱われているかも知れないが、きっと自分の作ったアリスの肉によるハンバーグを食べたのなら、オウガ・オリジンも自分を上級オウガへと取り立ててくれるに違いない。
そんな歪で邪悪なる思惑のままに召喚されるアリスたちを心待ちにして、歪んだ笑顔を浮かべるのだった―――。
●迷宮災厄戦
グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)の姿であった。
「お集まり頂きありがとうございます。もうご存知かと思われますが、緊急事態です。オブリビオン・フォーミュラ……『オウガ・オリジン』と現れた『蝋書家』たちによって、密度目の戦いが起こってしまいました」
突如として始まった迷宮災厄戦、アリスラビリンスのオブリビオン・フォーミュラである『オウガ・オリジン』は、その力の大半を『蝋書家』によって奪われてしまっていた。
だが、その奪われた力を補填しようとするように、砕かれた書架牢獄―――『オウガ・オリジン』が捕らえられていた『迷宮のような図書館』では今、大量のアリスを召喚しようとする儀式が執り行われている。
「はい、アサイラムより召喚されるアリスの皆さんは、総じてオウガに生命を狙われる存在です。そして、捕食されれば、オウガの血肉となって力を増していくことでしょう」
大量にアリスを召喚しようとする以上、オウガたちの狙いは、大半の力を奪われた『オウガ・オリジン』の力の復活であろう。
それ故に、この儀式はなんとしても阻止しなければならない。
「幸いに、【Q】の成功によって、敵の陣容が把握しやすい位置を事前に確保することができています。それ故に状況は私達の有利……この儀式の場に集まっているオウガ達を殲滅するには時間が足りません」
ナイアルテは、頭を振る。
多くのオウガを捨て置くことはできない事実では在るが、今回は類を見ない大戦争である。何を優先するのかを考えなければ、勝利すら危ういだろう。
「この儀式の場を取り仕切るオウガの存在を確認しています。仮に司令官オウガとしましょう。私が予知した司令官オウガの名は、『牛頭の屠殺者』」
牛頭を備えた異形なる獣人の姿をしているオウガである。
その見た目に反して幼い精神を持つ個体であるがゆえに、無邪気さは時として純粋なる暴力にも勝る力となるだろう。
「この『牛頭の屠殺者』と素早く接近し、これを撃破してください。そうすれば、この場の儀式は止めることができるでしょう」
今回の戦いはスピードが要である。強敵ではあるが、この司令官たるオウガ『牛頭の屠殺者』だけを狙ってオウガの群れをくぐり抜けることこそが、戦いの趨勢を決めることだろう。
「オウガの群れをくぐり抜けることさえ、大変なことでありますが……それでもアリス召喚の儀式だけはなんとしても阻止しなければなりません。私達の戦いの趨勢以上に、犠牲になるアリスの皆さんの生命のためでもあります」
だから、どうか、とナイアルテは頭を下げて、猟兵たちを見送る。
今はそれだけしかできない。
けれど、それで救われる生命がある。そう信じて、ナイアルテは頭を下げ続けた―――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『迷宮災厄戦』の戦争シナリオとなります。
砕かれた書架牢獄にて執り行われているアリス召喚の儀式を阻止するために、司令官オウガ、『牛頭の屠殺者』を打倒しましょう。
※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……オウガの群れを潜り抜け、司令官に素早く接近する。
それでは、迷宮災厄戦を戦い抜く皆さんのキャラクターの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『牛頭の屠殺者』
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POW : 心を喰らう
【アリスが抱えた恐怖や苦痛】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD : 喰い意地の張った剣
【高速回転する異形の刃】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【身体をぐちゃぐちゃの挽肉にする事に愉悦】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : 屠殺迷宮
戦場全体に、【暗く死角が多い内部構造と悪意に満ちた罠】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
イラスト:あなQ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「メアリー・ベスレム」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
須藤・莉亜
「お祭り騒ぎって感じだねぇ。」
で、目標はあの牛っぽい敵さんか。んー、めんどいし空走って行こっと。
先ずは原初の血統のUCを発動し、吸血鬼化。んでもって、宙に浮かぶArgentaを足場にオウガの群れの上空を進んで行く。
敵さんの頭上に来たら、上空から強襲。二振りの大鎌で手足をバラしにかかろうか。
敵さんがデッカくなったら、殺気を感じ取りつつ、動きをよく見て的確に切り刻める様に立ち回る。
悪魔の見えざる手にはLadyで援護しといてもらっとく。
もちろん、吸血も狙っていくよ。牛の敵さんの血って吸った事ないしね。
アリスラビリンス、砕かれた書架牢獄と呼ばれる、嘗ての『迷宮のような図書館』は無残にも砕かれ、その以前のような迷宮は姿を消していた。
その代わりに姿を表したのは下級オウガ達。彼等が執り行うのは儀式である。それは『オウガ・オリジン』の贄たるアリスをアサイラムより大量に召喚するための儀式。
溢れかえるオウガの群れ。
その数は尋常ではないが、迷宮災厄戦に先んじて行なわれていた【Q】によって、敵の陣容を事前に察知することができた。
それ故に有利なる位置へと猟兵たちを送り込むことが可能となったのだ。
「お祭り騒ぎって感じだねぇ」
須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は、アリス大量召喚の儀式を執り行う戦場を見下ろして呟く。
まさに謝肉祭そのものである。
ありとあらゆる場所において、召喚されるアリスの人肉を疾く解体し、『オウガ・オリジン』の胃袋へと納めるためにオウガの群れたちは、それぞれに解体する肉断ち包丁を持ち、儀式の完遂を今か今かと待ち望んでいた。
その中心に一際大きなオウガの姿がある。
牛頭の異形たる獣人、『牛頭の屠殺者』。それこそが、この儀式を執り行う司令官オウガであり、猟兵達が率先して狙わなければならない存在である。
「まあ、お祭り騒ぎにお似合いなように、全力で殺してあげるね」
ユーベルコード、原初の血統(オリジン・ブラッド)が発動する。
紫の瞳は、金の瞳に変わる。
それこそが、彼の抑えたる吸血衝動を開放した姿。―――そう、吸血鬼へと覚醒するユーベルコードである。
宙に浮かび、一気に空を駆け抜ける。戦場に浮かぶ自由自在に動かせる銀の槍を足場とし、華麗に空を舞う姿はまさに闇夜に飛ぶ蝶のようであった。
オウガの群れを眼下に捕らえながら、その金色の瞳が捉えるのは、たった一体のオウガ『牛頭の屠殺者』である。
「―――!」
その強烈なる気配を感じ取った『牛頭の屠殺者』が空を見上げた瞬間、遅い来るのは、白と黒の二振り、大鎌の一撃であった。
莉亜は一撃でその手足を両断するつもりであったが、相手も司令官オウガである存在。両断には足りない。
「いたい! なになに、なにをするの~!」
腕を切り裂かれ、憤怒に震える『牛頭の屠殺者』。その体が見る見る間に膨れ上がっていく。
その体の膨張は、かつて『牛頭の屠殺者』が殺害した犠牲者アリスたちの抱えた恐怖の感情に比例する。
その膨張の仕方を見れば分かる。
どれだけのアリスが犠牲となったのか。
「デッカくなったって、動きが鈍いことは変わりないよねぇ」
莉亜は振り回される肉断ち包丁を躱しながら、次々と攻撃を加えていく。
振るう大鎌から吸い取られる血液の味を堪能しながら、戦う姿は、正しく吸血鬼。吸い上げた血が彼の口に豊潤な味わいを広げる。
敵が牛であるからかもしれないが、筋肉質な牛肉のレアステーキを味わうような、そんな味に多少満足がいく。
「牛の敵さんの血って吸ったことがなかったけれど……案外イケるね、敵さん」
悪魔の見えざる手によって放たれる対物ライフルから放たれる砲弾と、振るわれる大鎌の斬撃が次々とその体に癒えぬ傷跡を刻み込んでいく。
放つ斬撃の一つ一つが、『牛頭の屠殺者』に殺されたアリスたちの無念を晴らすように、次々と刻まれていくのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロット・クリスティア
群竜大陸の古戦場を思い出しますね……。
確かに、これは全部相手にしている余裕はありません。
早々に頭を潰し、瓦解させなければ……。
発見されずに肉薄するのが一番です。隠れ身の外套を使いましょう。
体力を持っていかれるので急ぎたいところですが、スピードを重視するあまり音や気配を殺すのが疎かにならないように、慎重に。
急がば回れ、こういう方が、結果的に早く片付けられるものです。
仮に迷宮が展開されても、罠の配置のセオリーというのは決まっているものです。こちらも知識はありますからね、予測は十分に可能。
罠を抜け、敵陣を抜け、至近距離で散弾銃から高威力の単発弾を。
一撃入れたら再度外套を纏い、早々に離脱しましょう。
嘗ての『迷宮のような図書館』は『オウガ・オリジン』の脱獄に寄って、見事に打ち砕かれていた。
迷宮災厄戦が突如として始まり、砕かれた書架牢獄は、大量のアリス召喚の儀式を執り行う場として多数のオウガのひしめく戦場と化していた。
その目的は『蝋書家』たちによって力の大半を奪われた『オウガ・オリジン』の力の復活である。そのためには大量のアリスの血肉が必要なのだ。
これを阻止しなければ、アリスの生命が脅かされるだけでは済まない事態となる。
「群竜大陸の古戦場を思い出しますね……」
シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)は、その小さな体を包み込む隠れ身の外套(ハイディングクローク)……特殊な外套に身を包み、その中から青い瞳をアリス大量召喚の儀式の場へと向ける。
ざっと見通すだけでも大量のオウガが蠢き、召喚されるアリスたちを今か今かと待ち受けている。
捨て置いてはおけないが、かといって、これら大量のオウガを相手していては、戦いの趨勢がどちらに傾くのかは明白だった。
「確かに、これは全部相手にしている余裕はありません。早々に頭を潰し、瓦解させなければ……」
彼女の身に纏った外套は特殊な外套である。
身に纏っている間は透明になるのだが、解除するまで体力を消耗する。発見されずに、司令官オウガへと肉薄するには、この集団が彼女に取れる最大の策だった。
「急がば回れ、こういう方が、結果的に早く片付けられるものです」
いくら透明になったとしても、物音や体温までは消せない。
しかし、彼女が戦場をかける間、先行していた猟兵がすでに司令官オウガである『牛頭の屠殺者』との戦闘を開始していた。
それは戦場となった儀式の場の混乱を意味する。
先行した猟兵が注意をひきつけている間にシャルロットは、儀式の場に存在するオウガたちの合間を縫うように駆け抜ける。
音や気配を殺すのがおろそかにならぬようにと注意を払っていたのが功を奏した。もしも、敵の注意を先行した猟兵が引いているからといって、気配や物音を大雑把に処理していたのならば、彼女はたちまちにオウガに補足されていただろう。
急がば回れ。
彼女の言葉だ。慎重に、けれど時に大胆に。
「も~! なんでじゃまばっかりするの~! せっかくおいしいはんばーぐをつくろうとしているだけなのに~!」
猟兵の攻撃を受けて苛立つように『牛頭の屠殺者』のユーベルコードに寄って、薄暗く死角の多い迷宮が展開される。
けれど、シャルロットにとっては、障害にもならない。
「仮に迷宮が展開されたとしても―――」
駆け抜ける。
迷いも淀みもなくシャルロットは迷宮の中を駆け抜け、標的である司令官オウガである『牛頭の屠殺者』へと一直線に矢のように駆ける。
悪辣なる罠があろうと関係ない。彼女には経験と知識がある。もしも罠が配置されていたとしても、死角が多い以上、セオリーを踏襲するはずだ。
「ならば、予測は十分に可能。意味を成してはいませんね」
罠を難なく踏破し、シャルロットは『牛頭の屠殺者』へと肉薄する。
それは一瞬の邂逅だった。
手にした魔術処理を施された散弾銃―――マギテック・ショットガンから放たれる高威力の単発弾の一撃が、その巨躯へと打ち込まれる。
迷宮の中に怪物の絶叫が響き渡る。
効果の程は絶大だ。それを確認するまでもなく、シャルロットは再び外套を羽織り直し、一撃離脱を決める。
例え一撃で仕留めることが叶わくとも、痛手を負わせることはできる。迷宮が解除され、再び元の儀式場たる景色が戻る頃、シャルロットの姿はもう、儀式場にはなく、次なる戦場へと駆け抜けていた。
「も~! いったいなんだっていうんだよ~! いたいよ~!!」
『牛頭の屠殺者』の痛みに苛立つ咆哮だけが、シャロットの背中を追いかけるようであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
オウガ・オリジンに猟書家
どっちも厄介な相手だね
漁夫の利とか考えてる余裕はないだろうし
まずは目の前の敵から倒していこう
しばらくハンバーグが食べられなくなる光景は見たくないしね
邪神の領域を使用し周囲の時間を停滞させて
一気に司令官まで近づこう
強化の度合いは減るけれども
自分の体の石化速度は抑えて戦おう
まだ全てを出し切るような戦いじゃないからね
敵の近くにいるアリス
邪神の繰り糸で人形に変えて保護
人形になれば感情が消えるから
心を喰らう事はできないはずだよ
突然アリスが人形になったら困惑するだろうから
その隙に使い魔の麻痺で動きを鈍らせ
ガトリングガンでダメージを与えるよ
人形にしたアリスの操作は邪神の分身に任せるよ
放たれた銃撃の音が、戦場である『砕かれた書架牢獄』に響き渡る。
それは先行した猟兵の不意なる一撃。痛みに苛立つ『牛頭の屠殺者』の声が響き渡る。それはアリス大量召喚の儀式を遅延させるものであり、司令官オウガである『牛頭の屠殺者』へと痛手を負わせた証だった。
「オウガ・オリジンに蝋書家……どっちも厄介な相手だね。漁夫の利とか考えてる余裕はないみたいだ。まずは目の前の敵から倒していこう」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)の全身を覆う神気。それは周囲の存在を停滞・固定させる力であった。
彼女はそれを、邪神の領域(スタグナント・フィールド)と呼ぶ。彼女が嘗て『彼』であったように、彼女へと変えた邪神の権能である。
司るは停滞・固定。
即ち、今や彼女の周囲に存在しているだけで、周囲のオウガたちはたちまちに時が止まったように動くことも出来ず、何も感知することもできぬまま、晶が戦場を駆け抜け、司令官オウガである『牛頭の屠殺者』へと迫ることを見送るしかないのだ。
「しばらくハンバーグが食べられなくなる光景は見たくないしね」
一気に『牛頭の屠殺者』へと肉薄する晶。
彼女の身体が封印により石化する速度を調節する。石化する速度が早ければ早いほどに比例した戦闘力が増強されるのだが、今はまだ迷宮災厄戦の序盤である。
全てを出し切る戦いをするには、未だリスキーな戦法であった。
だが、彼女がこのような確実性を重んじる戦いをするのには理由がある。
この召喚の儀式は、大量のアリスをアサイラムより呼び出し、『オウガ・オリジン』が『蝋書家』に奪われた力の大半を取り戻すために殺害するためのものである。
オウガ事態を捨て置くことなどできない。
それに、召喚されたアリスを一人たりとて、無邪気さの奥に潜む邪悪の犠牲にさせるわけにはいかないのだ。
「アリスは―――まだ召喚されてない。間に合う!」
晶は先行した猟兵に寄って与えられた傷に呻く『牛頭の屠殺者』の姿を捉えた。
すでにアリスが召喚されてしまっているのではないかという心配はあったが、それは杞憂であった。
「なら、このまま! 頼んだよ!」
邪神の力によって創造された妖精型の使い魔たちが宙を舞い、麻痺の魔法で『牛頭の屠殺者』の動きを鈍らせる。
「な~に~、これ~! からだがしびしびする~!」
ユーベルコードに寄って身体を膨張させる暇すら与えない。
その力の源となる感情は、かつて犠牲となったアリスたちが抱えた恐怖。もしも、この場に大量に召喚されたアリスたちがいたとしたら、きっと『牛頭の屠殺者』は手のつけられない怪物へと変貌していただろう。
「言っただろう! しばらくハンバーグを見たくない、そんな光景は見たくないし、させないのさ!」
晶の構えたガトリングガンが火を噴く。
周囲の下級オウガたちを巻き込んで、『牛頭の屠殺者』の体に散々に打ち込まれる銃弾が、次々と膨張した体を削ぎ落としていく。
晶が願った通り、ハンバーグを見れなくなる、そんな未来は絶対に訪れることはないのであった―――!
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
大量のアリスが危険なこの地に召喚され、あまつさえオウガ・オリジンに饗される等、騎士として到底許容出来ません
一人でも多く、召喚者を撃破しなければ…
大乱戦を潜り抜ける経験はA&Wで数多く経験しました
センサーでの●情報収集で包囲が薄い場所を●見切り、脚部スラスターでの●スライディング移動
立ち塞がるオウガは格納銃器での●スナイパー●目潰しで足止めし突破
この戦場での召喚術師は貴方のようですね
討ち取らせていただきます
御覚悟を
●怪力での盾受けで攻撃を防御しスライディングでのだまし討ちで足払い
対峙するまでに充填していたUCを解放
巨大化し被弾面積が増えた敵へ向け振り下ろし焼き切ります
猟兵たちの戦い方はそれぞれであった。
多種多様な世界があるように、猟兵の姿もまた同一ではない。それゆえに戦い方も千差万別である。
すでに先行した猟兵たちの攻撃に寄って、『砕かれた書架牢獄』のアリス大量召喚の儀式の場は大混乱に陷っていた。
ある者は司令官オウガである『牛頭の屠殺者』を直接狙い、ある者は展開された迷宮を瞬く間に踏破し痛手を負わせる。
ある者は、周囲に存在する下級オウガたちを巻き添えにしながら儀式場の主である『牛頭の屠殺者』を狙う。
「大量のアリスが危険なこの地に召喚され、あまつさえ『オウガ・オリジン』に饗されれる等、騎士として到底許容出来ません」
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、そのアイセンサーで捉える儀式上のオウガたちの頒布図を電脳で解析する。
すでにえアックス&ウィザーズ世界ので戦いで大混戦となる戦場を駆け抜ける経験は蓄えられている。
全ての戦いに意味があった。
何一つ無意味なことなど無かった。全ての戦場が今、トリテレイアの電脳から演算をはじき出す。
「一人でも多く、召喚者を撃破しなければ……やはり、包囲が薄い場所が存在しますね。そこを突かせて頂きましょう!」
脚部スラスターが火を吹き、トリテレイアの巨体が大地を疾駆する。
高速で迫るトリテレイアに気がつくオウガは数多くあれど、彼を捉えることのできたオウガは皆無である。
例え気がつくことが出来たとしても、彼の障害にはなりえない。
格納銃器から放たれる銃弾が雨あられのように放たれ、下級オウガたちを撃破しながら突き進むトリテレイアの姿は矢の如き素早さで持って、痛みに喘ぐ司令官オウガ、『牛頭の屠殺者』へと迫る。
「うぅ~いたいよ~! ただおいしいはんばーぐをつくろうとしているだけなのに~! なんでじゃまするの~!」
見た目とは裏腹な幼い精神性。
子供のような無邪気さを持ちながらも、その性根は醜悪そのもの。あるのは残酷なまでの屠殺に対する無自覚さ。命を奪うという行為に楽しみを、快楽を見出す純粋な悪意。
「この戦場での召喚術士は貴方のようですね。討ち取らせていただきます」
巨大な体へと変貌した『牛頭の屠殺者』が振りかぶる肉断ち包丁の一撃をトリテレイアは大盾で受け止める。
機体のフレームが軋む。
それほどまでの膂力を発揮するということは、これまでアリスが与えられてきた恐怖の大きさを意味する。
これほどまでの恐怖を獲得するほど、『牛頭の屠殺者』はアリスを、弄び、殺害してきたのだろう。
「―――御覚悟を」
それは許されることではない。
これ以上があってはならないことだ。受けた大盾でもって肉断ち包丁の一撃を受け流し、体制を崩したオウガの足を払う。巨体がバランスを崩し、周囲にいた下級オウガたちを巻き添えにしながら、圧し潰す。
悲鳴と絶叫が聞こえてくる。
だが、トリテレイアは無視した。
オウガの悲鳴もまた生命の絶叫であろう。だが、その叫びはアリスの叫びを一度たりとて受け入れたことのない証である。自分の番であるとは露とも思わぬ傲慢さ。
捕食者の傲慢と言えど、トリテレイアは容赦をすることはない。
「……充填中断―――コアユニット直結式極大出力擬似フォースセイバー(ダイレクトコネクトセイバー・イミテイト)……刀身解放!」
自身の格納スペースから柄だけの剣を開放し、ケーブル接続する。白い粒子が漏れ出るのは、その圧倒的なる力の奔流故。
充填されたエネルギーは巨大剣の刀身として開放され、一撃のもとにそれが振り下ろされる。
トリテレイアの足払いを受けて態勢を崩していた『牛頭の屠殺者』にその攻撃を躱す術などない。
放たれた光刃は、その巨体を削ぎ落とすように威力を発揮し、焼き切っていく。周囲のオウガたちも、その熱波の影響を受けて霧散していく。
「今まで捕食されたアリスの恐怖……その身に受けていただきます」
トリテレイアは過剰に発生した熱を排気しながら、次なる召喚の儀式へと飛ぶ。
少しでも多く、少しでも早く、アリス大量召喚の儀式を阻止しなければならない。その一念でトリテレイアは戦場を駆け抜けるのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
セレシェイラ・フロレセール
こんな酷い儀式は必ずや止めてみせよう
よくこんなことが思い付くね……
アリスはキミたちの食糧でも供物でもないんだ!
空飛ぶ魔法の箒に乗ったら風の魔法を箒に纏わせよう
風の力で速度を上げて、高速で司令官のもとへと飛ぼう
途中オウガの群れに見つかっても彩の魔法を綴って空中から爆撃することにしよう
司令官の場所へとたどり着いたらそのまま空中から彩の魔法を綴って攻撃
わたしの桜、清らかに舞え
絶望の血の色を桜の彩で浄めよ
必中の桜の弾幕をご覧あれ
万が一司令官の攻撃が飛んできたなら空中で回避しよう
絶望の物語はわたしが未来に続く物語へと上書きしてみる
どこの世界でも、わたしは自分が出来ることをするまでよ
「んも~! なんでなんで! じゃまばっかり~! これじゃ、おいしいひきにくをつくれない! ハンバーグもつくれない! おいしいたべものをたべたらみんなみんなしあわせはっぴーになるのに!」
極大の光を放つ剣から放たれた一撃に寄って、『砕かれた書架牢獄』のアリス大量召喚の儀式の司令官オウガたる『牛頭の屠殺者』の膨れ上がった巨大な体は萎むように元のサイズへと戻っていた。
アリスの恐怖を力の源にする体の膨張は、先行した猟兵たちの攻撃に寄って、着実に痛手を負わされていた。
それでも、『牛頭の屠殺者』は動きを止めない。
己の役目を正しく認識しているがゆえに、その純粋さは、幼い精神性は『オウガ・オリジン』の供物となるアリスの人肉を欲し続けていた。
そうすることだけが、このオウガの役目であり存在意義であるというように、傷だらけの体を奮い立たせ、猟兵達によってぐちゃぐちゃにかき回された儀式上の中で咆哮する。
「こんな酷い儀式は必ずや止めてみせよう」
セレシェイラ・フロレセール(桜綴・f25838)は戦場となった『砕かれた書架牢獄』を見下ろす。
空飛ぶ箒に乗って、風の魔法を纏わせたセレシェイラは、眼下に広がる儀式を見て、酷い、と評した。
それは真っ当な感覚を持っていれば、当然の感想であった。アサイラムより召喚されるアリスたちの人肉を持って料理となし『オウガ・オリジン』の腹へと収めようとする行為。
あまりにも醜悪。けれど、司令官オウガである『牛頭の屠殺者』にとっては、それが当然のことなのだ。
風の魔法によって速度を上げ、高速で飛翔し司令官オウガ野本へ飛ぶセレシェイラ。戦場はすでに猟兵たちの攻撃に寄って混乱の極みに達している。
そんな上空を警戒する下級オウガの姿など、どこにもなくセレシェイラの思惑以上の速度で持って、司令官オウガである『牛頭の屠殺者』の姿を捉えることができた。
「わたしの桜、清らかに舞え」
彩りの魔法が綴られる。手にした桜の硝子ペンが中に描くのは桜色の魔法弾。
「絶望の血の色を桜の彩りで浄めよ」
次々と生み出されていく桜色の魔法の弾は、空を埋め尽くさんばかりの桜色となって、アリスラビリンスの空を覆っていく。
あまりにも膨大な桜の光。
ひとつひとつが彼女の持つ硝子ペンによって描かれたもの。
「必中の桜の弾幕をご覧あれ―――」
つい、と硝子ペンの切っ先が、『牛頭の屠殺者』へと向けられる。
それは指揮棒を振るうような仕草でもって、描かれた桜色の魔法弾が上空より地上へと降り注ぐ。
「あ~! ずるいずるい! そらからなんて~! これじゃあ、やわらかそうなおにくも、いろどりそえるさくらいろも、てがとどかない~!」
『牛頭の屠殺者』が見上げ、セレシェイラを捉える。
だが、もう遅い。
「よくそんなこと、思いつくね……アリスはキミたちの食糧でも供物でもないんだ!」
放たれた弾幕の全てがオウガたちの体を貫く。
オウガ達が絶望の物語を紡ぐというのであれば、セレシェイラは未来に続く物語へと、彩の魔法で上書きしてみせよう。
どれほどの血に濡れた道があろうとも、桜色に塗り替えよう。
どんな世界であっても、どんな恐ろしい未来であっても、セレシェイラは変わらない。紡ぐ魔法の彩は変わらない。
「何処の世界でも、わたしは自分が出来ることをするまでよ」
桜色の魔法弾が降り注ぐ地上を見下ろしながら、セレシェイラは、この世界、アリスラビリンスの行く末を案ずる。
人が傷つかない未来が良い。
無辜のアリスが犠牲にならない明日が良い。
それを願いながら、彼女は箒に乗って、新たなる戦場を目指すのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
姫川・芙美子
アリスさん達の命が危ないのですね。
でしたら、それを助けるのはきっと正義なのですね。助けましょう。
オウガの群れと対峙。この大群を突っ切って、一刻も速くあの牛の怪物に一太刀与えなければなりません。
器用にすり抜けるのは時間がかかりそうです。ならばここは力業ですね。
UC【鬼事】を使用します。【化術】で、自身を四つ足の獣に似た、獰猛で狂暴そうな怪異へと変化させます。
その外見と、魂を揺さぶり凍えさせる咆哮で【恐怖を与え】ながら真っ直ぐ牛頭へと突進します。
邪魔するオウガ達は恐怖で怯ませ逃げさせ、逃げなければ吹き飛ばします。
「髪の毛武器」を、全身を覆う鋭い刃の様な毛皮に化え、【怪力】で牛に体当たりです。
桜色の魔法弾が紡ぐ弾幕の光景に響くは、オウガたちの断末魔。
アリス大量召喚の儀式の場である『砕かれた書架牢獄』は、先行した猟兵たちの攻撃に寄って、さらなる混乱へといたろうとしていた。
司令官オウガたる『牛頭の屠殺者』の力は未だ健在であるが、痛手を負わされていることは間違いない。
この戦場だけではなく、また、アリス大量召喚の儀式の場も此処だけではない。猟兵たちにとって何を倒し、何を護るのか。その選択の幅は広い。けれど、それでも護り通さなければならないものがなんであるのかを、姫川・芙美子(鬼子・f28908)は正しく理解していた。
「アリスさん達の生命が危ないのですね。でしたら、それを助けるのはきっと正義なのですね。助けましょう」
彼女の心の中に在る『そうあるべき』という強い強迫観念が、体を突き動かす。
人はそれを強迫観念と呼ぶかも知れないが、彼女にとってそれは己の心に従うべき信念であったのかもしれない。
妖怪『産怪』。正体不明の妖物であるが、安寧の感情から生じる感情を糧とする。だからこそ、生命の危機に瀕しようとしているアリスを捨て置くことなど、彼女にはできようはずもなかった。
目の前には下級といえど、オウガの群れ。司令官オウガを狙う猟兵の攻撃に寄って数が減らされたとは言え、未だ大群と言ってもいいだろう。
「だから、なんだというのです。助けなければなりません。アリスさんたちを―――」
彼女の瞳に力がこもる。
この大群を突っ切って、一刻も速くあの牛の怪物に一太刀を加えなければならない。彼女の意志は固まっていた。
成すべきことと、なさなければならないことが重なり合って、彼女の力はましていく。
器用に大群の隙間をすり抜けることは、時間が掛かる。混乱の極みに達しているのであればなおさらだ。だからこそ、こんなときにこそ、力業が活きる。
「来たりて来やれ 手の鳴る方へ」
彼女の瞳の輝きは、ユーベルコードの輝き。
鬼事(オニゴッコ)、それは彼女の力を増大させるユーベルコード。化術のちからが高まり、彼女の姿を四足の獣に似た獰猛で凶暴なる姿へと変える。
その悍ましき怪異を前にして、オウガたちはたじろぐ。
あんな姿の獣など見たことがないと、その見た目に恐れを抱いた瞬間、その恐れすらも生ぬるいというように獣は咆哮する。
それは恐怖を与えた以上の効果を持って、オウガたちの魂を凍りつかせる。
「活路は見えました、そこ!」
凍りつき、身動きの取れなくなった下級オウガたちの群れが開けた瞬間、捉えたのは『牛頭の屠殺者』の姿。
猟兵達の度重なる攻撃に寄って、体中は傷ついている。手にした螺旋剣を握り直す様子までつぶさにわかる。
まだ戦意を失っていない。ならば、と一直線に駆け抜ける芙美子は次々と邪魔なオウガたちを吹き飛ばし、まっすぐに戦場を疾駆する。
放たれた槍のように、その全身を覆う髪の毛武器に霊力を流し込む。硬質化し、針のような形になった彼女の獣の体。
巨大な槍のようになって戦場を駆け抜ける彼女は、標的に一直線に突き進む。
「なになに~! おおきなやりが、やりが、つっこんでくる~!?」
幼い精神性から来る拙い言葉。『牛頭の屠殺者』は、その体に見合わぬ幼い精神性でありながら、おこなう所業は醜悪そのもの。邪悪だった。
だからこそ、許せない。
「生まれてきた生命も、これから生きていこうとする生命も、それを害することを許された存在なんてどこにもいないのです!」
放たれた槍の如き一撃で持って、『牛頭の屠殺者』の脇腹を抉る芙美子の一撃。
それは確かな一撃であった。
そのまま次なる戦場へと駆け抜ける。大量召喚の儀式は此処だけではない。
例え、この一撃でもって『牛頭の屠殺者』を仕留められなくても、きっと続く猟兵達が事をなしてくれる。
彼女の一撃は、確かにオウガの邪悪なる心を打ち貫いたのだ―――!
大成功
🔵🔵🔵
ヤニ・デミトリ
いやはや、過去が未来を食うのも
そんなところに創意工夫を発揮するのも遠慮願いたいっスね
数も多いし1体ずつ相手してる暇はなさそうっス
バウンドボディで弾丸に等しい弾力性を得て、
オウガの群れを縦横に素早く跳ね抜ける
この大群ならば、猟兵1匹追うにも仲間同士で逆に邪魔になるでしょう
宙に跳ねた間に全体を見渡し司令官の位置を突き止めたなら、
壁や天井の反動を利用し素早く接近
うわーその刃も痛そう
これ以上ミンチにするとこないから当てないで欲しいっス
攻撃は鈍色の眼で動作を補足して【見切り】、跳ね避け、
あるいは容を崩し回避
弾性を利用して隠鱗を高速で【投擲】し体力を削りながら、
動きが鈍った隙に魚骨で刺し貫くっス
槍の如き一撃が、司令官王がたる『牛頭の屠殺者』の脇腹を抉る。
アリスラビリンス、迷宮災厄戦の緒戦における『砕かれた書架牢獄』で執り行われていたアリス大量召喚の儀式は、今は混乱の極みへと達しようとしていた。
猟兵達の攻撃は、司令官オウガを狙ったものであった。
けれど、下級オウガといえど捨て置けぬと猟兵達は、最大限の力を使ってオウガの群れを薙ぎ払っていく。
『牛頭の屠殺者』の痛みに喘ぐ咆哮が響き渡る。
「いたい、いたいよ~! みんなして、なんでじゃまばっかりするの~! おいしいはんばーぐをつくりたいっていうきもちは、みんなもっているでしょ! おいしいごはんをたべたらしあわせはっぴーになるのに! なんで! なんで! じゃま、ばっかり!」
その言葉は捕食者の傲慢そのものであった。
己が被食者になることなど在りえぬと理解しているからこその言葉。弱者は常に強者に捕食される運命であるというのならば、その邪悪なる純粋さは知らなければならない。
強きものだけが勝手気ままに振る舞うことが許されるというのであれば、己よりも強きものに捕食される運命であると。
「いやはや、過去が未来を食うのも、そんなところに創意工夫を発揮するのも遠慮願いたいっスね」
ヤニ・デミトリ(笑う泥・f13124)は嘆息する。笑うにも対しない創意工夫。
アリスの人肉を食らうのがオウガであるというのならば、それは確かに工夫であったのかも知れない。
中途半端に人型であるからこそ、なおさら笑うことのできない醜悪さであるヤニは思った。ブラックタールたる彼にとっても、それは安らぎを見出すことの出来ない世界である。
目の前には下級といえどもオウガの大群。
「数も多いし、一体ずつ相手にしてる暇はなさそうっス」
戦場は此処だけではない。アリス大量召喚の儀式を行っているのは、他にも大量にあるのだ。それを阻止しなければ、『オウガ・オリジン』が失った力を取り戻すきっかけになってしまう。
オブリビオン・フォーミュラである『オウガ・オリジン』の力の復活だけは、なんとしても阻止しなければならないのだ。
ヤニの身体がユーベルコード、バウンドボディによって変化する。
元より形状の変化に豊かなブラックタールたる彼の体は、弾丸に等しい弾力性を得るバウンドモードへと変化する。
強い伸縮性、任意の速度で戻る弾力性を獲得したヤニの身体が、オウガの大群の中を縦横に素早く跳ねて抜けていく。
「この大群ならば、猟兵一匹追うにも仲間同士で逆に邪魔になるっスよね! お先っすよ」
次々と下級オウガを躱し、時には彼等の身体を壁に、天井に見立てて、縦横無尽に戦場の中を駆け抜けていくヤニ。
空高く舞い上がった瞬間、槍の如き体当たりの一撃を受けて喘ぐ司令官オウガ『牛頭の屠殺者』の姿を捉える。
「見つけたっスよ! って、あー……うわー……その刃も痛そう」
ヤニが『牛頭の屠殺者』を見つけたのと同じように、ヤニもまたその姿を捉えられる。その手にした螺旋の如き異形の剣を見て、嫌な気分になる。
あの刃で、どれだけのアリスが犠牲になったのかわからない。
「おにく! おにく! まっくろい、おにくでも、やいちゃえば、わからない、よね!」
痛みに喘ぐけれど、それ以上に優先されるのはなんであるのか。『牛頭の屠殺者』は幼い精神性を持ちながらも、目的のために手段を選ばない。
手にした螺旋剣が回転し、衝角の如き動きでもヤニを狙う。
「これ以上ミンチにするとこないから当てないで欲しいっス」
バウンドモードになったヤニの眼球に当たる部位に装着された演算デバイスによって、『牛頭の屠殺者』の動きを解析する。
一瞬だった。
動きが単調であるがゆえに見切ることは簡単である。放たれる螺旋剣の一撃を、高い弾力性で持って躱し、跳ね続ける。跳ねて避け、跳ねては当てる。
それを繰り返すだけで、あっという間に『牛頭の屠殺者』の態勢は崩れる。
体内に飲み込んでいる小型の黒いスローイングナイフを投擲し、その足場を崩す。脚部に突き刺さったナイフは深々と突き刺さり、さらに『牛頭の屠殺者』の動きを鈍らせる。
「さあ、時には自分が串刺しにされる気分を味わうといいっス!」
態勢を崩した『牛頭の屠殺者』にとって、その一撃は回避不能なる一撃であった。
体内に飲み込んでいた魚骨と呼ばれる可変伸縮性を持つ、かつての機械であったらしき廃金属の尻尾が槍のように、するどい一撃を放つ。
穿たれた脇腹、そして、その鳩尾へと放たれた一撃は、さらなる苦痛を『牛頭の屠殺者』へと与える。
苦悶の声が上がる。
けれど、それはかつて『牛頭の屠殺者』がアリスたちに与えた仕打ちによる痛みの比ではないだろう。
彼が骸の海へと還るその時まで、その激痛はきっと続くだろう―――。
大成功
🔵🔵🔵
マグダレナ・クールー
オウガの群れを潜り抜ける。……ええ、よそ見はしません
わたくしの狙いはあの牛頭だけ。そうです。あれをやらねば、アリスが、ひどい目に、合うのです
なりません。あってはならない。絶対に
……食材に、手を噛まれた経験はありますか?
直ぐに答えなくて良いです。これから経験してもらうので、口応えできる口が残っているならば、感想をお願いします
ダッシュとスライディングで接近し、リィー・アルとともに、あのオウガに蹂躙を与えます
巨大化ですか。的が大きくなって良いですね
……返してください。アリスを。アリスの感情を。それはあなたのものじゃない。アリスのものだったそれを、わたくしに返してください!!
「ああっ! いたい、いたい、いたいよ~! なんでこんなにひどいめにぼくがあわないといけないの! これじゃあ、おいしはんばーぐがつくれないよ~!」
司令官オウガたる『牛頭の屠殺者』の痛みに喘ぐ声が響く。
その声色は、子供のようであり、癇癪のようなものであった。穿たれた一撃、切り払われた一撃、砲撃に晒された一撃。
先行した猟兵たちによって与えられた攻撃は、どれもが重い一撃であった。どれもこれもが、下級オウガであれば耐えることの出来ない一撃であったこことだろう。
だが、この『砕かれた書架牢獄』においてアリス大量召喚の儀式を執り行う司令官オウガである『牛頭の屠殺者』は未だ健在であった。
猟兵達の一撃が軽かったわけではない。
ただ、生き汚く、常に犠牲者の血肉を求める執念が『牛頭の屠殺者』を生きながらえさせていた。
再び膨張し、傷を隠すように巨大化する『牛頭の屠殺者』。その姿は、その精神性と相まって醜悪そのものである。
「オウガの群れをくぐり抜ける……ええ、よそ見はしません。わたくしの狙いは、あの牛頭だけ。そうです。あれをやらねば、アリスが、ひどい目に、合うのです」
揺らぐ視界。色彩が極彩色に彩られ、明滅するような感覚を覚えながらマグダレナ・クールー(マジカルメンタルルサンチマン・f21320)は打ち震える。
その身に宿るのは怒りか。
如何に視界が明滅しようとも、その瞳が捉えるのは『牛頭の屠殺者』のみ。
あれを排除しなければ、アリス大量召喚の儀式は止まらない。止められない。止まらなければどうなるのか、マグダレナはわかっている。
アリスの人肉を欲する『オウガ・オリジン』、かのオブリビオン・フォーミュラの力が取り戻されてしまう。
それ以上に、彼女の心を支配していたのは―――。
「なりません。あってはならない。絶対に」
その視線が定まる。
もう彼女の瞳には、『牛頭の屠殺者』以外映っていなかった。
「リィー、糧を喰いますよ!!よく狙いなさい!!《オナカガスイタ!イタダキマス!》」
ユーベルコード、Karnawał!(ニクヲトリノゾク)。その瞳の輝きはユーベルコードの輝き。
己の視覚を代償に、自身の視界を支配するオウガ、リィー・アルが顕現する。
実に80%もの視覚情報を代償にしたオウガ、リィー・アルの戦闘力は凄まじかった。伸縮する巨大な鉤爪がオウガの大群を薙ぎ払っていく。
まるで草刈り機のように、雑草を振り払うように。
「巨大化ですか。的が大きくなって良いですね。《タベゴロサイズデタベヤスクッテタベホウダイニ》」
巨大化し、その姿を晒す『牛頭の屠殺者』の威容。
それは真っ当な感覚があれば畏怖したかもしれない。けれど、マグダレナにとって、それは意味をなさない。
「……食材に、手を噛まれた経験はありますか? 直ぐに答えなくて良いです。これから経験してもらうのえ、口答えできる口が残っているならば、感想をお願いします」
そう、意味はない。
どれだけ強大なる者が目の前にいようとも、この身を焼き尽くさんばかりの怒りは、それすらも焼き尽くすだろう。
恐怖が、その巨体の礎であることは明白だった。犠牲になったアリスの恐怖、痛み、それがその巨体を維持しているものである。
どれだけの血が流れたことだろう。涙が流れたことだろう。
何もかもが手遅れであるがゆえに、マグダレナは吠える。
「……返してください。アリスを。アリスの感情を。それはあなたのものじゃない。アリスのものだったそれを―――」
オウガ、リィー・アルが静かに声ならぬ咆哮を上げる。
吐き出される酸欠へと誘う泡が『牛頭の屠殺者』の身体を包み込む。圧倒的なる力は、もがき苦しむ巨体をさらに巨大な鉤爪で切り裂く。
膨れ上がった巨体の礎になった感情を取り戻すように、鉤爪は振るわれ続ける。
失われてしまったものは戻らない。
わかっている。
けれど、それでもと思わずにはいられないのが人間であるというのならば、マグダレナは正しいのかもしれない。
「―――わたくしに返してください!!」
放たれた鉤爪の一撃は、その巨体を構成する感情の多くを切り裂き霧散させた。
取り戻すことは叶わなかったかも知れない。
けれど、その鉤爪は無辜なる生命を傷つけた代償として、霧散し消えていくまで、『牛頭の屠殺者』の肉体に刻まれることだろう―――!
大成功
🔵🔵🔵
テリブル・カトラリー
呼び出されるアリス達にとっては理不尽としか言いようがないな。
なら私は、オウガに破壊をもたらす者となろう。
『戦争機械・蒼い戦機』飛翔し、オウガの上空から
アームドフォートで牛頭の屠殺者に遠距離砲撃。
粒子シールドを展開、盾受けで他のオウガの妨害を防ぎ、
ミサイルで爆撃、範囲攻撃で撹乱。
高速移動、牛頭の屠殺者の近くに降り立ち、
クイックドロウ、スタンロッドの投擲、麻痺属性攻撃
吹き飛ばし、一気に加速状態に入り、部位破壊、屠殺者の頭部目掛けて加速の勢いのまま怪力で蹴りつける。
アリス大量召喚の儀式が執り行われている『砕かれた書架牢獄』は、猟兵達の攻撃に寄って下級オウガたちの群れを散り散りに切り裂いた。
ある者は魔法弾によって、ある者は弾丸によって。猟兵達の攻撃は今後の戦いの趨勢を決める一撃であった。
「ああっ! いたい! からだがおおきくなったのに、なんで、こいつら、こんなにこうげきばっかりしてくるの! はんばーぐがつくれない! つくれないよ~!!」
司令官オウガである『牛頭の屠殺者』の悲痛なる叫びが、戦場に響き渡る。
声色は子供のような幼いもの。精神性の幼さが、その異形なる体躯と似合わない。乖離した精神と肉体は不気味で醜悪なる姿を露呈させる。
巨大化した肉体は、さらなる巨大な鉤爪に寄って引き裂かれていた。
その身体を構成するのは犠牲となったアリスたちの恐怖。
それを引き裂かれ、己のものとしていた『牛頭の屠殺者』は、今まさに己が被食者にならんとしていることに恐怖したのだ。
「呼び出されるアリスたちにとっては理不尽としか言いようがないな。なら私は―――」
テリブル・カトラリー(女人型ウォーマシン・f04808)は、そのウォーマシンたる身体を蒼い装甲でもって覆っていく。
戦争機械・蒼い戦機(ウォースケルトン・ブルーブリンガー)……そう呼ばれる機体となった彼女にオウガの大群は障害物として意味をなさない。
飛翔する機体。司令官オウガである『牛頭の屠殺者』がどれだけ巨体になろうと関係ない。
「私は、オウガに破壊を齎す者となろう」
上空から放たれるのは、ビーム刃内蔵ライフルと実弾砲とミサイルボッドから放たれた火力の数々。
手の届かない上空から容赦なく放たれる砲撃の数々は『牛頭の屠殺者』だけではなく、周囲の下級オウガたちをも巻き添えにして破壊の限りを尽くす。
「……無駄だ。そんな攻撃で私の粒子シールドを抜けるものか」
地上のオウガたちがテリブルの機体へと対空攻撃を放つが、攻防一体の粒子シールドの前には虚しく霧散するしかない。
その返礼として、さらなる爆撃がオウガたちを襲い、次々と骸の海へと還していく。
オウガの脅威が減れば、一直線に飛翔し、高速移動で『牛頭の屠殺者』との距離を詰める。
互いの視線が交錯し、早業の如きスタンロッドが肉断ち包丁を振り上げた『牛頭の屠殺者』の腕に絡みつく。
「無駄だと言った」
スタンロッドから放たれた電撃が、その体を内側から焼く。どれだけ巨大化しようとも、その体を構成する肉や神経はまでは覆えない。
麻痺するようにしびれた『牛頭の屠殺者』を吹き飛ばし、巨体が地面に倒れ伏す。起き上がろうともがき、膝をついた『牛頭の屠殺者』の視界にテリブルの蒼い機体はどこにもなかった。
「どこにいった~! まだ、まだ、ぼくはやれるんだぞ~!」
喚くように傷ついた身体で虚勢を張る。
それが幼い精神性の成すことであることはわかりきっている。猟兵達の攻撃が軽いわけがない。
そして、これからテリブルが放つ一撃もまた同様である。
どれだけ巨体であろうとも、どれだけ強大なる存在であろうとも、猟兵達は何度も対峙してきた。
今更、と感じたかも知れない。だが、その純粋たる悪意には、さらなる力で持って応えなければならない。
「これが、その答えだ」
『牛頭の屠殺者』の死角外、その脳天をかち割らんばかりに勢いで、上空より放たれるのは、テリブルの脚部に寄る打撃。
唐竹を割るように一閃された踵落としが、『牛頭の屠殺者』の脳天に打ち込まれる。機体の自重を持って放たれた一撃は、その頭を地面へとクレーターができるほどに強かに打ち据える。
衝撃波がオウガの群れを吹き飛ばし、この儀式場の司令官オウガたる『牛頭の屠殺者』の意志をへし折るのだった―――!
大成功
🔵🔵🔵
ウィーリィ・チゥシャン
料理人として、奴らの所業を見過ごす訳にはいかないな!
向かってくるオウガの群れの間隙を【見切り】、【フェイント】を駆使しながら【ダッシュ】ですり抜けて突破。
もし完全に密集して隙間を作らなければ、逆にこっちのもの。
先頭の敵に脱いだ上着をかぶせて【物を隠す】で視界を塞いだら【ジャンプ】で敵に飛び乗り【地形の利用】で敵の群を足場にしてその頭上(文字通り)を【ダッシュ】で駆け抜けてボスの元を目指す。
ボスに辿り着いたら異形の刃を鉄鍋を盾代わりに【盾受け】で防ぎ、同時に【カウンター】で【シーブズ・ギャンビット】の早業で炎の【属性攻撃】を付与した大包丁の【二回攻撃】を繰り出しボスを細切れにしてやる!
脳天をかち割る勢いで放たれた踵落としの一撃は、司令官オウガたる『牛頭の屠殺者』の巨大化した頭を大地へと埋め込むほどの激烈なる一撃であった。
周囲はクレーターのように衝撃波の余波で下級オウガたちが吹き飛び、惨憺たる状況へと変わっていた。
だが、それでも『牛頭の屠殺者』はしぼんだ身体で持って立ち上がる。
「あたまがくらくらするよ~……でも、はんばーぐ、はんばーぐをつくらなきゃ。おうが・おりじんのために、おいしいじんにくはんばーぐをつくらなきゃ」
アリス大量召喚の儀式を執り行う司令官オウガとしての意地があるのだろう。幼い言葉とは裏腹な、凶悪性を併せ持つ姿は、まさに醜悪そのものであった。
だからこそ、この儀式は成功させてはならない。
召喚されたアリスたちが、如何なる目にあってしまうのかは、火を見るよりも明らかであるからだ。
屠殺、と称した解体と遊び。
それこそが、この『牛頭の屠殺者』の欲するところの快楽である。
「料理人として、奴らの所業を見過ごすわけにはいかないな!」
ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)は、己の志が吠えるのを感じた。
かつて戦いに疲れ切った人々が一杯のスープで笑顔になるのを見た。それが料理であると、料理の力であるのだと彼は知った。
故に料理人を志したのだ。けれど、理不尽さは料理だけでは救えない。救えるものがあったとしても、取り零してしまうこともある。
ならば、その取り零してしまったものすらも救おうと猟兵となったのだ。
そんな彼にとって『牛頭の屠殺者』の所業は許し難い悪鬼の如きものである。
「オウガの群れは大分減ったようだけどな!」
先行した猟兵達の攻撃のおかげだろう。大群と言っていい数がまだ残って入るが、ひしめくように存在していたオウガたちも、あちらこちらに綻びが生まれ始めている。ならば、その隙を突く。
ウィーリィを視認した下級オウガたちが、司令官オウガを守らんと壁を作る。
だが、ウィーリィにとって、それは壁ではない。
彼の瞳に映るのは、その間隙。フェイントを駆使し、戦場を駆け抜ける彼は赤い衣装と相まって流星のようであった。
駆け抜ける彼の前に立ちはだかるオウガたちも何のそのである。
抜いだ上着を頭にかぶせ、視界を奪ったのち、その頭上へと飛び乗る。
「無駄無駄! 俺をそれくらいで止められるわけないだろ!」
そのまま、オウガの群れ、その体を足場にして次々と蹴り飛ばし、駆け抜けていく。地上にあっては間隙を縫う。けれど、それは蛇行運転と同じだ。安全策であっても、最速ではない。
ならば、どうするか。
敵の頭上を取ればいい。ウィーリィに空を飛ぶ術はない。けれど、空を駆ける術はある。次々と敵を足場に駆け抜けていく姿は、『牛頭の屠殺者』の瞳に捉えられる。
「たべごたえのなさそうな、すじばったにく~! だけど、ぜいたくいってられないの、しっかりたべてあげるからね~!」
構えた螺旋の如き衝角の剣を構える。
異形の剣がウィーリィへと突き込まれ、その回転する刃でもって、ウィーリィの身体をねじ切らんとする。
だが、ウィーリィの持つ鉄鍋は、その剣の剣戟を見事に防いだ。
「甘い! 筋張った肉ならば、叩いて伸ばす! 筋を煮込む! いろんな調理方法があると知れ!」
攻撃を防いだ鉄鍋を天高く放り投げ、さらなる身軽さを得たウィーリィが放つは大包丁の連撃。
鉄鍋と接触した際に炎が巻き上がり、その大包丁は火炎の演舞を見せつける。
ユーベルコード、シーブズ・ギャンビット。
それはウィーリィが身軽に成れば成るほどに、スピードを上げる絶技。
放たれた炎の大包丁の連撃は、その螺旋剣を持つ『牛頭の屠殺者』の指を切り飛ばし、腕を切り裂く。
切り裂いた傷口は炎に焼かれ、再生することも難しいだろう。さらに速度の上がる連撃は、螺旋剣を持っていた腕を細切れにしても止まらない。
放たれた連撃が止まるのは、肩口に至って漸くであった。
「調理、料理とは言えないけどな! 料理人の風上にも置けないやつに、遅れをとるわけなんて一つもないんだぜ!」
人々を笑顔にする力が料理なのだとすれば、アリスを恐怖に叩き落とす『牛頭の屠殺者』が料理人であるはずがない。
ウィーリィは、己の志と共にこれからも邁進していく。
それが彼なりの戦い方であるからだ―――!
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
……ふむ…迷宮の様な図書館、だけど…敵は更に剣呑な物に作り上げてるか…
…突破するのも時間が掛かるね……ましてや罠や死角がある以上…まともに付き合っていたら身が持たない…
…幸い、敵の位置はある程度把握できている…
…【尽きる事なき暴食の大火】を発動…白い炎に壁を喰わせて一直線に司令官のオウガの元に向かうとしようか…
…一応、罠を調べて問題無い部分を燃やしていくとしよう…
…ちなみに、床に仕掛けられた罠は箒に乗って飛ぶことで無効化するよ…
…そして司令官の元まで辿り着いたら今まで壁や罠を喰わせて大きくした白い炎を周囲のオウガを巻き込みつつ叩き込むよ…
…悪因悪果…お前達が暴食の大火に喰われろ…
凄まじい速度の連撃が、司令官オウガである『牛頭の屠殺者』の左腕を細切れにした瞬間、痛みに喘ぐ咆哮と共に『牛頭の屠殺者』を中心に迷宮が顕現し、広がる。
それは『牛頭の屠殺者』のユーベルコードであった。
出口は一つしか無く、暗い内部は死角だらけ。あちらこちらに凄惨なる罠が仕掛けられ、行く手を阻む。
猟兵達による攻撃を受けて、相当な痛手を負った『牛頭の屠殺者』が取ったのは、迷宮へと逃げ込むことであった。
時間を稼げばいいのだ。
今までは肉に固執していたから、猟兵に遅れを取ったのだ。そう、『牛頭の屠殺者』は怯えるように迷宮によって己を囲う。
「うう、なんで、こんなめに……いたい、いたい……うでがいたいよぉ」
それは、かつて己が殺めたアリスと同じ言葉であった。
その時『牛頭の屠殺者』はアリスを哀れに思っただろうか。否。思うわけがない。彼にとってアリスとは玩具であり食糧である。
痛いと叫ぶ声は、玩具のおしゃべり機能。だから、関係ない。だって、自分は捕食者、強者なのだから―――。
「……ふむ。迷宮のような図書館、だけど……敵は更に剣呑な物を作り上げてるか……」
最後の一手。
猟兵達が追い詰めたアリス大量召喚の儀式の司令官オウガたる『牛頭の屠殺者』が逃げ込んだ迷宮を前にして、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は嘆息する。
「突破するのも時間が掛かるね……ましてや罠や死角がある以上、まともに付き合っていたら実が持たない」
事実、時間稼ぎこそが、最大の目的の迷宮たるユーベルコードである。
さらに凶悪な罠まで張り巡らされているというのであれば、こちらの消耗を狙いつつ、あちらは回復に専念できる。
しかし、それを許すほど猟兵は生ぬるいものではない。
「貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ。汝は焦熱、汝は劫火。魔女が望むは灼熱をも焼く終なる焔」
ユーベルコード、尽きる事なき暴食の大火(グラトニー・フレイム)が生み出す如何なる存在をも燃料にする白色の炎が放たれる。
白い炎は迷宮の壁であったとしても燃焼させ、燃料へと変える。その生み出されたメンカルのユーベルコードの炎が壁を食い破るようにして燃え盛っていく。
「幸い、敵の位置はある程度把握できている……無意味に燃やす時間も要らない」
敵の存在はすでにわかっている。
迷宮の中心、そこで怯えるように姿を眩ませている。だが、メンカルの瞳に見通せぬものはない。
どれだけ奥に隠れていようとも、必ずやこの白色の炎が『牛頭の屠殺者』を捉える。
走る炎が一直線に燃え盛る。
罠が仕掛けられていたとしても、発動する前に燃やし尽くしてしまえば意味などない。床に仕掛けられていたとしても、彼女の飛行式箒リントブルムにまたがって飛んでしまえば意味はない。
「この迷宮に意味はない。何もかもが暴食の大火の食糧に過ぎない」
冷ややかな瞳でメンカルが見下ろすのは、傷つき怯えるように体を丸める『牛頭の屠殺者』。その姿は憐憫さを誘うものであったかもしれない。
メンカル以外の誰かであれば、もしかしたら、であるが。
ありとあらゆるものを燃料として燃え盛る白色の炎は、凄まじい巨大なる炎となってメンカルの制御下にある。
次々と迷宮のあちこちを燃やし尽くした炎達が、巨大な炎へとくべられ、その輝きを増していく。
『牛頭の屠殺者』が眩い白色の炎に何事か怯えるように声を発した。
けれど、それはメンカルの耳にはついぞ入ることはなかった。
「……悪因悪果……お前たちが暴食の大火に喰われろ……」
放たれた巨大なる炎は、一瞬にして『牛頭の屠殺者』のみならず、儀式上に存在していた下級オウガたちをも巻き込んで蒸発させる。
それが、これまで犠牲になってきたアリスたちの嘆きや苦しみを昇華させる一撃となる。
この儀式場には、オウガのひとかけらとして残らなかった。
全ては、因果応報である。悪をなせば、悪い結果が生ずる。それは当然の断りである。メンカルの白き炎は、その尽くを燃やし尽くし、儀式を跡形もなく吹き飛ばした。
断末魔の悲鳴すらも消し去る一撃。
それをアリスたちへの手向けとするのであった―――!
大成功
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