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迷宮災厄戦⑦~きらきらアリス絶賛迷子☆

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #ぽちょむきん #どうしてこうなった

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●肩にでっかい大陸のっけてんのかい
 世界征服大図書館。名に戴くだけの事はあり、その図書館の蔵書は全てが世界の覇権をとるための知識で占められていた。
 古今東西の戦で用いられた戦術の歴史。細かな特色までを記した武器の図鑑。
 如何にすれば世界を手中に収められるかのハウツー本。
 そして世界征服に向け弛まぬ気概を養うための自己啓発「「フンッッ!!!」」――。

 突如。
 裂帛の気合と共に『筋肉が書架を断ち割った』。

 いや、何を言ってるかわからないと思うが大丈夫、私もわからない。
 ただ額の汗をぬぐっているコイツがなーんとなく悪いんだろうなという事ははっきりしてるよコンチクセウ。

「ふふ、ふ……なぁんて、気持ちの良いコト! ここの書物には沢山の力が秘められているようですけれど、私にはちょっと不向きでございませんこと?」

 そのオウガ、名を純粋食人鬼筋のブレイキアという。
 かつて貧弱だった少女の面影はどこへやら、いまの彼女はムキムキポチョムキンの筋肉少女体。屈強なボディビルダーも怯えて逃げ出す、ゴリゴリマッチョの五里霧中である。
 一体、どこに迷い込んでそうなった。
「知略、戦略、謀略……そう、筋肉はあらゆるものを凌駕するのです!」
 とうっ! 持っていた突撃槍を放り捨て――あ、それ使わないんですね――少女は勇ましくポージングを決める。頼れるはこの肉体、そして拳ひとつと言わんばかりに。
「さあ猟兵の皆さん、私の軍門に下りなさい! そして筋肉と鍛錬の楽土を築くのです!」
 ちゅどーん。謎の爆発に、勢いよく書棚がはじけ飛ぶ。背表紙すら見てもらえなかった悪の大百科事典(全4巻)が空しく宙を舞った。

 ――これたぶん図書館関係ないヤツですね??

●よせばいいのに正々堂々と戦っちゃう彼女を止めてあげて
 アリスラビリンスを巡る戦いの火蓋が落とされたその日。
 リグ・アシュリーズ(f10093)は遠くを見つめ、その目は雄弁に悲哀を物語っていた。私、なんでこれ引いちゃったかな――と。
「はじまりのオウガと猟書家。彼女たちに呼応していっぱいオウガが出てきたのは、皆さんご存知よね?」
 溌溂とした声とは裏腹に、彼女の描く作戦図はとてつもなくあやふやで。手書きの地図の一箇所、アバウトに「ここ!!」と書かれたところに図書館っぽい建物の絵が描かれているのみだった。
「皆にはまず、この図書館にいるオウガ、いえアリス、ううん筋肉のモリッとした女の子……子……??」
 ぐるぐる混乱した目のリグは、隣におにぎりの絵を描きだす始末であり。たぶんお腹がすいてるのだろう。
「とりあえず倒してきてほしいの! どーんって!!」
 とうとうスケッチブックを放り投げる。どうやら細かい説明をあきらめ、端折って伝える事にしたらしい。

「えーっとね、この世界征服大図書館にいるオウガはね、悪役っぽいことを言ったりしたりすると、パワーアップできるみたいなの」
 それは図書館の持てる魔力。世界を手中に収めようと我欲に染まって行動するほど、悪意持つオウガに力を与えるようであり。
「でもね、今回皆が相手するオウガはパワーアップ、使ってこないみたい」
 ――いま、なんて?? と猟兵の一人が聞き返す。
「自前の筋肉があるから大丈夫、って」
 ――??? 数名の猟兵が思わず背景に宇宙を背負って固まった。

「皆が相手するオウガは筋肉自慢のブレイキア。彼女の能力は大きく分けて三つよ」
 相手や物をバーベルに変え、持ち上げて叩きつける力技。
 大量のプロテインを消費して洗脳されたアリス召喚し、人海戦術を挑む技。
 そしてポージングをして「戦いを禁じ鍛錬のみを許す」誓いを筋肉に立てれば、隆起した筋肉が無敵の鎧となりあらゆる攻撃を阻むだろう。
 召喚されたアリスたちは、倒せば元の姿に戻って帰っていく。
 ただし一時的にムッキムキの姿になるので、目にも心にも優しくはない。

 なんともデタラメな力だが、法外な強さを秘めているのは間違いない。
 何より猟兵たちはアリスラビリンスの命運を背負っている、負けられない一戦となるだろう。

「あ、そうだ。言い忘れてたけど、図書館の力は私たちにも使えるみたいなの」
 リグによれば、図書館のどこかには「正義の書」が眠っている。
 正義の味方にふさわしい行動をとれば、正義の書は目を覚まし、悪を凌駕する力を授けてくれるとの事だった。
「変わったオウガが相手だけど、正義の力が生きるタイミングはいろいろあると思うの。どんな風に使うかは皆に任せるわ!」

 一通り説明を終えたリグの手元に、グリモアの転送光が零れる。
 向こうに広がる景色は静謐さを湛えており、これから戦場になるとは到底思えない。
「えーっと。しょっぱなから変わった敵が相手だけど、ペース乱されず幸先よく行きたいものよね!」
 気を取り直して、リグは戦いに向かう猟兵たちに笑顔を向ける。
「皆の勝利の知らせ、待ってるわ! いってらっしゃい、気を付けてね!」
 見送るグリモア猟兵の声が響いた数秒の後。
 猟兵たちの視界いっぱいに古風で趣きのある図書館の風景が広がり、そして――。

 モリッ。
 すぐにその視界は筋肉で塞がれた。うーん、マッソウ。


晴海悠
 お世話になっております、晴海悠です(腹筋)。
 いよいよ戦いに突入ですね(背筋)。
 今回の相手は個性豊かなオウガさん(スクワット)。
 のっけから飛ばしていきましょう!!(プランクでぷるぷる)

『シナリオについて』
 1章のみで完結する戦争シナリオです。
 また、下記のプレイングボーナスに沿って行動すると、戦いが有利になります。

 プレイングボーナス……「正義の味方」っぽい行動をする。

『1章:ボス戦』
 純粋食人鬼筋のブレイキア。
 攻撃方法はOPおよびフラグメントをご参照下さい。

『プレイング受付について』
 断章は挟まず、シナリオ公開時より受付致します。
 今回は執筆スケジュールの都合により、問題のないプレイングから5~6名前後を採用させて頂くことになりそうです。予めご了承ください。

『その他お願いごと』
 コメディ的な雰囲気で楽しく書きたいと思っていますが、版権にふれるネタやお色気系に対してはかなり厳しめにマスタリングします。採用を見送る事もあり得ます。
 なので皆さん、明るく健全なオリジネルネタで勝負しましょう!!
 ちなみに晴海の場合、はっちゃけた後の落とし前までつけてあると採用しやすいです。

 それでは、節度あるカオスを!(筋肉痛)
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第1章 ボス戦 『純粋食人鬼筋のブレイキア』

POW   :    ふふ、貴方でトレーニングしましょう♪
レベル×1tまでの対象の【姿を1本のバーベルに変換し、そのバーベル】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD   :    さあ素敵なプロテインお茶会を始めましょう?
自身の【貯蔵していた大量の元適合者プロテイン】を代償に、【同世界から召喚したアリス適合者Lv×1人】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【プロテインで異常発達した筋肉と洗脳状態】で戦う。
WIZ   :    戦闘などやめてその素晴らしい筋肉で共に鍛錬を♪
無敵の【戦闘を禁じ鍛錬のみ許す対象の超隆起筋肉】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は九十九・静香です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シャーロット・キャロル
まずは高台から登場、これヒーローの鉄則です。

「待ちなさいそこの素晴らしい筋肉の持ち主!このマイティガールが相手になりますよ、とぉ!」

ヒーローらしい着地でカッコよく決めたら相手をビシッと指差し
「私もパワーには自信があるんですよ。同じ怪力自慢同士ここは一つ真っ向勝負で行きませんか?」
と力比べに誘い、そのまま組み合いパワー勝負です!

どことなく親近感も湧く相手、筋肉は素直に褒めちゃいます

「なんと素晴らしい筋肉。こうして出会わなければもっと分かり合えたかもしれません……」

ですが勝負は勝負、【マイティバスター】で組んだ相手に投げ技です!
【怪力】で負けるわけにはいかないんです!!

【アドリブ、連携大歓迎です】


上野・イオナ
多少の不利になっても自分の信念をつらぬく。これはこれでかっこい怪人らしいじゃん。イイネ!グレイト!
僕もキマイラフューチャー出身のヒーローとして全力で答えるよ!
とはいえ1体1の勝負じゃなくて、僕らしいいつもの戦い方だけどね。
UC【バトルキャラクターズ】使用
人海戦術には人海戦術を!
マッチョなゲームキャラクターを大量召喚。
筋肉はないけれど、もちろん僕も戦うよ!それが僕のヒーローだから!
さぁ正々堂々勝負だ!
※アドリブ・連携歓迎です



 オウガの破壊活動によって崩れかけた書架。その最上部に、ばさり――突如、赤のマントがはためいた。
「待ちなさい、そこの素晴らしい筋肉の持ち主! このマイティガールが相手になりますよ!」
 シャーロット・キャロル(マイティガール・f16392)。その本名を彼女がここで名乗ることはない。今の彼女は正義の味方、マイティガール。悪の組織によってもたらされた力を正義の為に振るう、スーパーヒロインである。
「とおっ!!」
 かけ声とともに手すりから飛び立った彼女は、ブレイキアの前に勇ましく着地を決める。時を同じくして駆けつけた青年、上野・イオナ(レインボードリーム・f03734)が、未来型のスマートフォンから操作パネルを呼び出した。
「多少の不利になっても自分の信念をつらぬく。これはこれでかっこいいじゃん」
 パネルをタップして『イイネ!』『グレイト!』――そんな威勢のいい音声と共にハートマークの賛辞を贈る。あくまで自力で戦うオウガ。自分の流儀とスタイルを貫くその姿には、どこかキマイラフューチャーの怪人に通じる美学が感じられた。
「僕もキマイラフューチャー出身のヒーローとして全力でこたえるよ!」
 イオナがゲーム盤を展開して準備を整えたのを見て、マイティガール・シャーロットがビシッと相手を指さす。
「私もパワーには自信があるんですよ。同じ怪力自慢同士、ここはひとつ真っ向勝負で行きませんか?」
 期待を込めて向けられた眼差し。マイティガールの挑戦を快く受けるように、ブレイキアは両手を広げてみせる。
「真っ向勝負、よろこんで。ですがその間そちらの殿方をもてなしもしないのは、私の流儀に反しますわ」
 そういってプロテインのボトルを掲げれば、現れるのは無数のマッチョアリスたち。一時的とはいえ、ゴリマッチョに変身した少年少女の姿はなかなかに圧迫感を与えるビジュアルである。
「それで構わないよ! 僕も僕らしくいつもの戦い方ができるからね」
 負けじとイオナが呼び出すのはマッチョなゲームキャラクターの軍勢。剣士、ファイター、熊の皮を被った猟師の男。頼もしい援軍にマイティガールが微笑んだ。
 敵味方の数はそろった。これで心置きなく力を振るえるというもの。
「さぁ、正々堂々勝負だ!」
 イオナのかけ声と共に、双方入り乱れる戦いの火蓋が切って落とされた。

 マッチョのアリス達を押さえるべく、ゲーム世界の英雄たちが図書館を駆ける。
 双方の軍勢は、筋骨隆々な体躯も相まって大理石の床を埋め尽くすほどに膨れ上がり。図書館の内部は一気にその暑さを増していた。
「筋肉はないけれど、もちろん僕も戦うよ! それが僕のヒーローだから!」
 一騎打ちを望んだマイティガールの意思を尊重し、戦いに専念できるようイオナは敵の軍勢を一手に引き受ける。彼が手にするのは剣の形をしたペイント武器。振るうたびに図書館の床は彩られ、虹をちりばめていく。
 極彩色の絵の具に塗り潰されていく床の上で、マイティガールがブレイキアと組み合い、力比べをする。
 一進一退の攻防はまさに意地の張り合い。双方押されては負けじと押し返し、互いの培ったものを余す事なくぶつけ合う。
「なんと素晴らしい筋肉。その域に至るまで、どれほど鍛錬を重ねたか伝わってきますよ」
 どことなく通じるものを感じ取っていたマイティガールは、ブレイキアの鍛え抜かれた肉体に称賛を送る。たとえ正義と悪に分かたれようとも、筋力を維持するには日々の鍛錬が欠かせない。それは、筋肉と弛まぬ努力を信奉するブレイキアからしても同じだった。
「ふふ、あなたこそ……! 猟兵にしておくにはあまりに惜しい逸材ですわ」
 いっそこちら側に来るようブレイキアは呼びかけるが、マイティガールは首を振って誘いを拒む。
「こうして出会わなければ、もっと分かり合えたかもしれません……」
 残念そうに告げる、決別の言葉。そこには体躯に恵まれない中で努力をした、境遇の似た者としての共感も入り混じっていた。
 わずかに押される、マイティガールの身体。しかし、それが次の攻撃へと転じる動きであることをイオナは見抜いていた。
「あちらもじき決着がつきそうだね」
 となれば、手をこまねいてはいられない。一気に勝負を決めるべく、イオナはゲームキャラクター達と共に突撃を仕掛ける。
「英雄イオナ、希望を描きにただいま参上!」
 イオナの剣が、鮮やかに虹を描く。まばゆきアーチにアリス達が力を失うのを見て、マイティガールもまた腕に力をこめる。
「たとえ分かち合えるものがあろうとも、勝負は勝負です!」
 一度相手を突き放し、腕よりも更に低いところを抱きかかえるように掴み直す。
「な……!」
 視界が反転し、ブレイキアは思わず驚きの声を上げた。筋肉で重量を増した彼女の肉体は易々と持ち上がるものではない。それを溢れんばかりの力で、マイティガールは高々と持ち上げ跳躍する。
「正義の強さは成し遂げる強さ。怪力で負けるわけには、いかないんです!」
 大地を揺らがす、渾身のパワーボム。本棚を次々となぎ倒し、ブレイキアの姿が埃の中に掻き消えた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

クラウン・メリー
【クラエル】

ポチョムキンポチョムキン!
なんだか、ポチョムキンって言ったら強くなりそうだな!

ね、カッコいい!

うんうん、俺達も言わないようにしよっか!
正々堂々勝負だ!

ふふん、俺もムキムキマッチョ目指して頑張ってるんだ!
だから負けられないよ!マッチョポーズ!
……服の上からじゃわからないね?

わあ、そうだね!エルルには自慢がいっぱい!
俺だって翼も芸だって出来ちゃうよ!

ほらほら、重たいジャグリングだってしちゃう!
君もそのバーベルを高く高く上に上げてキャッチ出来る?と誘い
叩きつけられそうになったら飛んで躱す

今の俺は動きも力も漲っているんだ!
エルルのことも持ち上げちゃうよ!
そのまま敵向ってどーんと投げちゃう!


エール・ホーン
【クラエル】

わあ、すごい!筋肉だっ!
みてみて、クラウン
ぽちょむきんだって!

すごいね、いっぱいいっぱい鍛えたんだっ
悪役っぽこと言うと強くなれるのに、言わないの?
自前の筋肉――そっか、じゃあボクも…!

ね、クラウン!
ブレイキアちゃんもパワーアップを使わないんだもの
ボクらも正義味方っぽい行動をするのはやめよう?
その方が、正々堂々って感じがするから

それにほら、ブレイキアちゃんにぽちょむきんがあるなら
ボクにはこの立派な角と蹄、それに自慢の翼があるもの

使うのは無敵城塞
これでぶんぶん振り回されたってへっちゃら!
叩きつけられたって投げられたって無敵なんだから!

クラウンもぽちょむきんだ!
無敵のまま敵へ突撃!



 舞い上がった埃の中から立ち上がるブレイキア。易々とは挫けぬその雄姿を見て、エール・ホーン(ドリームキャスト・f01626)は歓声をあげる。
「わあ、すごい! 筋肉だっ!」
 無邪気にはしゃぐ彼女の明るさは、戦いの場にあっても曇ることなく。筋骨隆々とした敵の体躯を見て、エールはますます声を明るくする。
「みてみて、クラウン。ぽちょむきんだって!」
 呼びかけられたクラウン・メリー(愉快なピエロ・f03642)は、同意を示して頷きを返す。
「ね、カッコいい! ポチョムキン、ポチョムキン……なんだかポチョムキンって、言ったら強くなりそうだな!」
 説明を受ける際に小耳にはさんだ言葉の響きが気に入り、二人でそのまま繰り返す事しばし。なんとなく気を良くしたブレイキアも『私のこと? ねえ、それって私を褒めてるのかしら?』としきりにポージングを披露している。
「すごいね、いっぱいいっぱい鍛えたんだっ」
 そのままはしゃぐような声で、素直な賞賛をよせる。だが、エールが関心を寄せたのはブレイキアの筋力だけではなかった。
「悪役っぽいこと言うと強くなれるのに、言わないの?」
「ええ。私にはこのぽちょむ……んっんー! 筋肉がありますもの」
 何か口走りかけたのを強引にもみ消し、力を誇示するように上腕二頭筋を見せつけるブレイキア。
「そっか、じゃあボクも……ね、クラウン!」
 彼女との会話にふとある事をひらめいたエールは、そばにいたクラウンに思いついた事を笑顔で伝える。
「ボクらも正義の味方っぽいこと、するのはやめよう?」
 その方が正々堂々って感じがするから――あえて正義の書の力を借りない提案をしたエールに、クラウンも迷いなく頷く。
「うんうん、俺達も正義の味方っぽいこと、言わないようにしよっか! 正々堂々、真っ向勝負だ!」
 二人の決断に、ブレイキアの目が見開かれる。だが、次の瞬間には元の優雅な笑みを取り戻して彼女は微笑んでいた。あえてハードルを課して挑む、その心意気。それはオウガたる彼女にとっても、心地のいいものだった。
「ふふん、俺もムキムキマッチョ目指して頑張ってるんだ! だから負けられないよ!」
 じゃーん☆ と効果音付きでポーズを決めて固まることしばし。クラウンはふと自分の胴体を見下ろして気づく。
「……あれれっ? 服の上からじゃわからないね?」
 サーカスで鍛え上げたボディは、残念ながら黒白の道化師服の下。お披露目が失敗に終わりつつも、クラウンの笑顔は曇る事はない――なぜならば。
「ボクはブレイキアちゃんほどぽちょむきんはないけど、大丈夫! ボクにはこの立派な角とひづめ、そして自慢の翼があるもの!」
 傍らで笑顔ふりまくエール。いつも一緒の彼女が、片時もその明るさを失わなずに居てくれるからだ。
 一角獣の角は空を目指してすらりと伸び、地を蹴る足と大きな翼はたくましく。それらを誇らしげにエールが胸を張れば、クラウンもまた流れに従う。
「わあ、そうだね! エルルには自慢できる事がいっぱいだもん! それに俺だって翼もあるし、芸だって出来ちゃうよ!」
 そういってクラウンが取り出したのは、光を飲み込む黒の鉄球。見た目だけでも重量感のあるそれをお手玉のように宙へと放り、軽々とジャグリングしてみせる。
「君もそのバーベルを高く高く上にあげてキャッチ出来る?」
「できる? なんて言われたら。やらないわけには参りませんわ!」
 バーベルを負けじと宙へ放り上げ、回転越しにキャッチしてみせたブレイキアは、そのままバーベルを振り回して攻撃へと転じる。
「さあ、次は筋硬化トレーニングですわよ! 見事耐えきった暁には、私と共に鍛錬に励む栄誉を差し上げますわ!」
 重々しいバーベルが二人へと迫り、したたかに打ち据える――と見えたが。
 ガキン、と硬質な音が響き、バーベルが止まった。
 無敵城塞――皆を守る、鉄壁のパラディン。その心を如実に表すエールのユーベルコードが、ブレイキアの攻撃を食い止めていた。
(「これでぶんぶん振り回されたってへっちゃら! 叩きつけられたって、無敵なんだから!」)
 自身はまったく動けない代わりに、鉄壁の防御を誇るその力。満面の笑顔で力を発動させたエールの顔は、バーベルの一撃にすら微塵も動じない。
(「ボクなら平気だよ! だから、クラウン、いまのうち!」)
「さっすがエルル! よーし、このまま二人でショータイムだ!」
 道化師の本領、それは人を楽しませる事にこそあり。戦いの最中にあっても志を貫いたクラウンに、ピエロのハートが力を授ける。
「今の俺は動きも力も漲っているんだ! さあ、行くよ!!」
 無敵のガードを誇るエールを持ち上げ、投げつける。それは信頼あってこそ成せる、二人だけの合体技。
「見事、ですわ……!」
 決して砕けぬ、向かうところ敵なしの笑顔のまま。エールの突進にブレイキアの胴体が大きく傾ぎ、そのまま回廊の奥へと突き飛ばしていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

新山・陽
SPD 健康な肉体に悪しか宿ってない、つまりそれは健康な肉体にあらず。
 アリス達に酷い行いをしてますね貴女。アリスを洗脳し、トゥマッチな肉体改造までするとは許すまじ。食べるに至っては言語道断です。
 私みたく、筋肉つかない体質でもいい事ありますよ……思いつきませんけど、しゅっとしててもいい事ありますよ。

 では、こんな搦め手はいかが?
 【視力】で敵全てを視認し、UC『敗する駒に告ぐ』で【暗号作成】を用い自身を痩身で非力だと認識させ混乱を狙います。
 アリスは【逃げ足】や【野生の勘】で極力戦闘を避け、ブレイキアには【ダッシュ】で距離を詰め『悪意ある助力』を用い【咄嗟の一撃】を加えようと試みます。



 誂えの良いスーツに身を包み、新山・陽(悪と波瀾のお気に入り・f17541)がヒールの靴音を響かせる。
「健康な肉体に悪しか宿ってない……つまりそれは、健康な肉体にあらず」
 流れるような所作でデバイスを操作していた陽は、やがて出た分析結果に険しく眉根を寄せた。
「成程……アリス達に酷い行いをしてますね、貴女」
 鋭い視線が、ブレイキアの宿す悪の心を暴く。たとえこの場は正々堂々と戦おうと、胸に宿すは残虐なオウガの心に他ならない。
「あら。どうして鍛錬の手を止めてしまった者に思いを馳せるのかしら?」
 まるで理解できないといった風のブレイキア。彼女の口ぶりに、陽はいっそう強く嫌悪感を表す。
「アリスを洗脳し、トゥマッチな肉体改造までするとは許すまじ。ましてや」
 ブレイキアが手にしたプロテインの原料に思い至り、あまり考えない方がいいだろうと首を振る。どうあっても非道に落ちたオウガは、倒さねばならないのだから。
「この者たちはきっと幸せですわ! 何せ、至高の肉体を手に入れたのですもの……!」
 次々と呼び出される、無数のアリスの軍勢。魔法じみた力で肉体改造されたその集団を一瞥した後に、陽は電脳魔術を展開する。
「確かに、力では及ばないでしょうね……では、こんな搦め手はいかが?」
 独自に編み出した暗号化の式。電子の糸がまたたく間に敵の周囲へと張り巡らされ、動きを封じるように絡みついていく。
「敗する駒に告ぐ――酔うほどに疾く、醒めよ」
 暗号じみた呪文を唱えた瞬間、ほうぼうから上がる呻き声。脳に直接作用するその魔術は、次々と敵の認識を歪めていく。
「……! 俺の筋肉が!」
「わ、わたしのからだが貧相に……!」
 洗脳下のアリスたちにもたらされたのは、『自身が痩身で非力だ』と現実を誤認させる呪い。強く植え付けられた筋肉への信仰、その価値観に染まれば染まるほど、陽の魔術は強い効力を発揮していく。
 弱体化したアリスのそばを縫うように駆け、衝突を避けながら陽はブレイキアのもとへと迫る。
「たとえ他の者は騙せても、私の目は欺けませんわ……!」
 轟音を立ててブレイキアの強烈なフックが迫る、が。陽はそれをぎりぎりまで引き付けて躱し、手元にバールのようなものを召喚する。
 使え、という非道な悪からの誘い。都合よく手頃な武器が手元にあるという事は、あらゆる犯罪を可能にする。陽はしかし、その力のみを利用し、心の内に秘めた正義の執行へと用いていた。
「しゅっとしてても……私みたく筋肉つかない体質でも、いい事はありますよ」
 具体的には思いつきませんけど――そう告げた言葉は、元は貧弱だったアリスへ宛てたものか。鋭く振るわれたバール状の物体がブレイキアのがら空きになったボディへと命中し、深々と鉄の爪を食い込ませた。

成功 🔵​🔵​🔴​

オズ・ケストナー
そこまでだっ
ザッ
立ちふさがる足を後ろから映して
「誰!?」みたいな相手のカットを挟み

再度映ったところでポーズをとって決めセリフ
前にヒーローになったときの名前があるものっ

空をつかさどるヒーローっ、ブルームブルーっ
こっちはお花をつかさどるブルームシュネー
きみの好きにはさせないよ

あれ、せいぎのみかたってこういう感じだよね?
UDCアースのテレビでも見たよっ

どれだけつよいこうげきでも、あたらなければへいきだよっ
シャボン玉で体を包み
バーベルの間を縫って宙を駆ける
シュネー、いくよ

魔鍵に添えたシュネーの手
ふたりなら、ぜったいまけないっ
きみの悪のこころをうばうよっ
生命力吸収

ね、ね。せいぎのみかたっぽかったかなっ?



 たったったっ、きゅきゅっ、ざっ――。体勢を立て直したブレイキアの背後に、慌ただしく靴音が響いた。
「そこまでだっ」
 後ろから引き気味の構図で見ていれば、背を向けたその者の素性は見えなかった事だろう。振り向いたブレイキアが「どなた!?」と鋭く、誰何の声を飛ばす。
 2カメ――もとい、改めてそちらを見れば、そこには勇ましく手を掲げポーズを決める、大小ふたりの人物。
「空をつかさどるヒーローっ、ブルームブルーっ」
 きゅぴーん。謎の光が空中に散り、たんぽぽの花が光のフレームを象る。
「こっちはお花をつかさどる、ブルームシュネーっ」
 しゃららーん、きゅわわわーん。花開く効果音(口頭)と共に、小さなドールの少女が肩から舞い降りカーテシーを決める。
「わたしたちがきたからには、きみの好きにはさせないよっ」
 大写しでポーズを決めると同時、謎の技術により後ろの本棚が爆発した。ついでに「ゴースンさまぁぁ~」とか細い断末魔が聞こえたが、気にしてはならない。
「くっ……お出ましになったわね、ブルームブルー!」
 さりげなくノってくるブレイキア、伊達にニチアサは見てませんことよっ。なお、本日ブルームイエローは休暇中との事である。
 格好よく登場シーンを決めたブルームブルーことオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)は、予定外の爆発に後ろを振り返って首をかしげた。
「あれ、せいぎのみかたってこういう感じだよね? ばくはつもあった?」
 UDCアースのテレビを真似てみたというが、意図せぬ演出まで起きており真相は闇の中。きっと妖精さんの仕業である。
「どんなに戦意を煽ろうと、その体に筋肉がないのでは意味がありませんわ! きっと私の一撃を耐えきる事もできないのでしょう!?」
 ここまでの戦いで、さしものブレイキアにも疲労の色が濃く。決着を急ぐようにバーベルを振り回す彼女に、オズはふわりと微笑んでみせる。
「どれだけつよいこうげきでも、あたらなければへいきだよっ」
 重量を乗せて振りかざしたバーベルは空を切り、床の大理石がむなしく砕け散った。どこへ行ったのかと辺りを見回せば、そこには宙に浮かぶシャボン玉に包まれたオズとシュネーの姿。
「おのれ、なんて小癪な……!」
 いくら振り回しても、いや、強く振り回すほど。生まれた風圧を利用して、シャボン玉はすいすいとバーベルの嵐を掻い潜っていく。
「ブルームシュネー、いくよ」
 ふたりなら、ぜったいまけない、と。魔鍵に重ねて添えた手から、麗らかな春の光が漏れ出した。
「きみの悪のこころをうばうよっ」
 道を踏み外した元アリスのオウガの、残虐な心に錠を施すが如く。胸に差し込んで回した鍵は、見守る二人の前で光を増していく。
「私は……わたくしは、こんなところでっ……!」
 最後の力を振り絞り、ブレイキアはなおも抵抗を試みるが。自慢の筋力で力を注ぎ込むほど、鍵の吸いとる力の量も増えていく。
「オウガに永久の繁栄あれっ! この迷宮世界に、災いあれっ……!」
 最後だけは、悪役らしく。黒き力を蓄え続けたブレイキアの肉体が、爆炎と共にはじけ飛ぶ。
 二度目の爆発にびっくりして、オズはしばらく目をぱちくりと瞬かせていたが。
「ね、ね、シュネー。わたしたち、せいぎのみかたっぽかったかなっ?」
 振り返って微笑む少年の声に、シュネーはウインクを寄越して問いへの答えとするのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年08月02日


挿絵イラスト