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迷宮災厄戦⑦〜お染の人肉クッキング

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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●かちかち山をもっと残酷にしたやつ
 その空間には大量の泥が横たわっていた。
 その泥の中心には泥の船が浮かんでいて。
 中には狸を擬人化したようなオブリビオンが本を抱いて座っている。
 その本のタイトルは『世界の残酷童話・残酷描写三倍増し』であり、読んでいた章のタイトルは『かちかち山をもっと残酷にしたやつ』だった。
 その周りには鍋、まな板、包丁、焚火といった調理器具が並んでいた。
 調理器具としては真っ当なのだがサイズが大きく、見るだけである特定の食材のためのものであると思わされる残酷なものだ。
 更にわかり易いことに、周囲にはその食材にくっついていたであろう骨が散らばっており、まな板には赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い汚れがこびり付いている。

 それらの中心で彼女は叫ぶ――。
「ヒャーッハッハッハッハー! 人肉大好きぃーッ!
 おっと、思わず叫んでしまっていたぜ! クックックック」

 楽しい。楽しい。
 これから訪れる『食材』たちで、どんな料理を作ろうか。
 考えるだけで楽しい!
 それを猟兵に食べさせることができたなら最高なんだが!

「ああ……楽しみだ……楽しみだなぁ……!」

●泥と残骸まみれの図書館
「到底信じられないと思うがこの場所は図書館だ!」
 アノルルイ・ブラエニオンはグリモアが告げた状況を告げてから言った。
「……説明しよう。世界征服大図書館!
 世界征服に関するあらゆる歴史書・図鑑・ノウハウ本・自己啓発本が収められた、巨大な図書館の国なのだ!」
 そう、『迷宮災厄戦』……。
 アリスラビリンスにおける大きな戦の戦場の一つに、アノルルイはこれから猟兵達を誘おうとしている。
「この図書館において君たちが戦うことになるのは、人喰いタヌキのオブリビオン――通称『かちかち山のお染』!
 コイツは図書館内の書物によってパワーアップしている! 極めて強力だ!
 読むだけでパワーアップする書物なんてあるのか? あるのだ! この図書館には!
 元々『悪』の素質を持ったお染には、世界征服を目論む自己啓発がよく馴染むぞッ!
 だが心配いらない。君達も書物でパワーアップできる。
 どうすればいいのか? この図書館のどこかには『正義の書』も眠っている。これを読み、『正義の味方っぽい行動・言動』をすればいい!
 例えば……」
 アノルルイは息を整えた。

 そして天を指さし、叫んだ。
「悪逆非道の所業の数々!
 天が許しても、このアノルルイが許しはせん!
 正義の刃! 受けてみよ!

 ……こんな感じだ!」
 微塵も照れずに言った。
 見ている方が恥ずかしくなるやつだ。

「さあ猟兵達よ! 正義を示す時だ!」
 アノルルイはやはり恥じらいもなく言った。


デイヴィッド
 帝竜戦役以来となります。デイヴ デス!

 このシナリオフレームには、下記の特別な「プレイングボーナス」があります。

 プレイングボーナス……「正義の味方」っぽい行動をする。

 描写としては『正義の書を探してそれに書かれていることを実行する』となります。
 戦闘前に見つける事は可能です。
 何が書かれているのかがプレイングの考えどころですね!
 敵も全力で反応します。頑張ります。
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第1章 ボス戦 『かちかち山のお染』

POW   :    つーかまえたー。もう逃さない…一緒に泥に沈も?
肉体の一部もしくは全部を【大量の泥 】に変異させ、大量の泥 の持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
SPD   :    食材が逃げたじゃん!あたしの邪魔をしないで!
【予め仕掛けておいた多種多様な罠 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【は罠の爆発でメチャクチャな泥地と化し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    何料理がいい?丸焼き?鍋物?揚げ物もイイかな!
【アイツをおいしく調理してしまいたい 】という願いを【周囲に詰めかけたおびただしい数のオウガ達】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は月・影勝です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

新山・陽
wiz 色々と見過ごせずやって参りました。
 本はええと……気合いをこめたら背後が爆発しま……す……とりあえず信じるしか……信じます……はい。
 そう、それがヒーロー。
 【威厳】の漂う『蔑みの眼差し』を悪に向け【覇気】を纏います。

「貴様が人肉しか食べれない単なる腹ペコさんなら、はち切れるまで出しましょう! しかし、食べたいからではなく殺したいだけの人肉好きなら、正義の気分で許しません! っていうか正義じゃなくてもそれダメ絶対!」
と【パフォーマンス】で指を突きつけ、【気合い】で背後を爆発させます。

 その後、ヒーローの【演技】を心がけ、パワーを上げたUC『凍えた液鋼』を展開し敵にぶつけ戦います。



「――止まれ」
 かちかち山のお染は出しぬけに言った。
 己の『調理場』(狩場でもある)に何者かが足を踏み入れたことに気づいたのだ。
 頭の上の耳は伊達ではない。
「何者だてめぇ?」
 聞いた。視線の先に立っている、颯爽とした黒いスーツに身を包んだ美女に向けて。
 その威厳ある視線は悪を蔑み……全身から覇気が立ち昇っていた。
 間違いようもない。
 正義の書を読み、悪を討ち滅ぼさんとする勇士である事に。 
「新山・陽(悪と波瀾のお気に入り・f17541)……! 貴様を倒しに来ました!」
 隠す事など微塵もない。
 陽は腕を振り上げ、そして振り下ろしつつお染に指を向ける。そして言った。
「その前に言っておくことがあります……!
 貴様が人肉しか食べれない単なる腹ペコさんなら、はち切れるまで出しましょう!
 しかし、食べたいからではなく殺したいだけの人肉好きなら、正義の気分で許しません! っていうか正義じゃなくてもそれダメ絶対!」
 ドゴォォォォン!
 語り終えると同時に、背後で爆発が起こった! 気合を込めて語ることで背後で爆発が起こる……それは正義の書に記された、正義の言葉。
 信じれば、それは起こる。
「へえ……いいねえ、言うじゃねぇか」
 お染はその迫力に思わず目を奪われた。そして暴力的な笑みを浮かべる。
 好敵手を見つけた――同時に、獲物も。
 そして言った。
「あたしは……この『かちかち山のお染』は!
 殺したいから殺す! 困らせたいから人に人肉を食わせる!
 誰に許されなかろうと……蔑まれようと……あたしがしたい事をする。
 なぜならあたしは、悪だからだ!」
 ぐちゃり――背後で爆発が起こった。だがこちらは泥が沸騰した水蒸気によって内側から破裂するような爆発だった。
 陽と同じように――ベクトルは真逆だが――こちらも書物に影響を受けている。
 正義の書VS世界残酷童話・残酷度三倍増し。
 今、戦いの幕が上がる!

 陽は突如として周囲に気配を感じた。かかって来たのはお染ではなく、周囲に詰めかけたおびただしい数の狸――の姿をしたオウガ達だった。獣だけに、気配を殺して周囲に潜んでいることができたのだ。
「ヒャーッハハハハ! あたしが一人だなんて一言も言ってないぜーッ!
 さあ、やつを引き裂いて汁物の具にしてやりな!」
 賛同! 賛同! 賛同!
 賛同者多数!
『アイツをおいしく調理してしまいたい 』というお染の願いを叶えるべく狸たちが迫る!
 だが、陽は動かない。
 狸の群れが殺到し……。

 ――それらは、吹っ飛ばされた。
 内側から。
 そして、一匹残らず凍りついており、穴が空いていた。

「なっ……何をした?!」
 お染は身構え、陽の様子を伺う。
 見れば陽の周囲にはいくつもの鋼球が浮かんでいた。それらは一つ残らず冷気を纏っており、周囲の水分を白い水蒸気に変えて漂わせていた。
「『凍えた液鋼(フローズン・リキメタル)』……各個体は速やかに、これを解決せよ」
 陽はそれの名を呼ぶ。
「正義の名の下に!」
 号令を下すと鋼球は、冷気を纏った弾丸となってお染に襲いかかる。
 お染は横に跳んでこれを避けようとするが、それらの動きは単に直線的なものに留まらない。
 陽の指示によってその範囲を広げ、弾道を曲げ、地形に跳ね返り……それらはお染の肉体に撃ち込まれ、その身を凍りつかせていく……!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベルンハルト・マッケンゼン
連携アドリブ大歓迎

(ライフルにバヨネットを装着しながら、
ワイン・アドヴォケート誌みたいな正義の書をめくると、
昔の戦史がフラッシュバックする)
正義、か。
サヴォイで飲んだルーミエのミュジニー・グラン・クリュを思い出す。

あの時、私は正義の執行者だったのか?
それとも、ただの酔いどれだったのか……
今となっては、知る由も無い。
ただ私は、もう一杯飲むだけだ! うぃーっ。

(UCを発動、燃え上がる黄金の炎と共に哄笑する)
黄金の炎は不滅の焔。
もう一杯への欲望が、私を千鳥足で進ませる。
我が名はベルンハルト、ただの酔いどれ。
雌狸よ、我が業を照覧せよ。
そして……絶望せよ!
(ライフルを連射後、酔いどれながら銃剣突撃へ)



 ――ライフルにバヨネットを装着しながら、ワイン・アドヴォケート誌みたいな正義の書をめくると、昔の戦史がフラッシュバックする。
(サヴォイで飲んだルーミエのミュジニー・グラン・クリュを思い出す)
 芳醇なワインの香りが蘇った。
 サヴォイ――その地で戦争があったのは何百年も前のことだが。
 ベルンハルト・マッケンゼン(黄金炎の傭兵・f01418)には、昔の戦史が記憶となって蘇るのを感じられた。
(あの時……。
 私は、正義の執行者だったのか?
 それとも、ただの酔いどれだったのか……)
 暗い書架で自問自答する。
 だが、答えは出ない。
 仮に出たとしても――見る者によって変わるだろう。自分の感じ方すら、その時によって変わってくる。
 正義自体は、確固として存在しているとしても……。
 あるものを正義であるか決めるのは難しい。

 ベルンハルトは酒をあおるだけだ。
 ミュジニー・グラン・クリュほどの上物でなかったとしても。

 ……苦い味がした。

「うぃーっ」
 酩酊に揺れながら敵の前に現れる。
 敵からしてみれば。
 それは大胆不敵な戦士にも、ただの酔いどれにも見えた。
「何だァ? 酔っ払いかァ! つまみをくれてやろうか!」
 かちかち山のお染は――先程の猟兵の攻撃から逃れ、離脱して――遭遇したベルンハルトに言った。
 ベルンハルトは黙って首を横に振る。人肉料理なのがわかりきっていたからだ。
「だったら……正義を示すのかぁ!」
 お染は挑戦的に言葉を投げかける。
 ベルンハルトは応えた。
「黄金の炎は不滅の焔。
 もう一杯への欲望が、私を千鳥足で進ませる」
 哄笑とともに――。
 ベルンハルトのライフルが、黄金の炎に包まれる。
「我が名はベルンハルト、ただの酔いどれ。
 雌狸よ、我が業を照覧せよ」
 すっ、と銃を構える。
 その動作に酩酊など微塵も感じられない。
「そして……絶望せよ!」
 引き金が引かれ、銃声がけたたましく響いた。
「あたしに銃なんざ効かねえ!」
 着弾するよりも早く、お染の姿が溶けた。
 ユーベルコードで自分の体を泥に変化させた。ライフルの銃弾は大量の泥となったお染の体を傷つけることはない。
 ――そうなるはずだった。
 だが、ユーベルードで殺傷力を増されたベルンハルトの銃弾は、着弾の衝撃で泥を吹き飛ばすほどに強烈だった。
 それがライフルから連発されたのだから、お染はバラバラに吹き飛ばされて近づく術がなかった。
「くっ……まるで巨大な放水銃で洗い流されている気分だ?!」
 お染は細かい泥の欠片となった。
 ベルンハルトは射撃を止め、銃剣を構えて突撃。細かくなった泥をさらに細かく刻もうとする。
 泥となっても感覚が無くなったわけではない。気を失う前にお染は撤退を選んだ。
(悪は逃げ隠れするものだぜ!)
 
「ただの酔いどれであっても、悪に立ち向かうことは出来る……か」
 深追いは止めにしたベルンハルトは己のみに向けて言った。
 目の前の敵は『悪を自覚する悪』。
 少なくとも、客観的に見てそれを倒すことには貢献していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウィーリィ・チゥシャン
(探し出した『正義の書』に目を通し、そして閉じると共に敵に対峙する)
料理ってのはな、誰かを幸せにするためのものなんだぞ!
料理人としてお前の非道な振る舞いを見過ごす訳にはいかない!
『ヒーローたる者、自分の信念は熱く語るべし!』(『正義の書』より)

敵の攻撃を盾代わりの鉄鍋の【盾受け】で凌ぎながら大包丁で切りかかる。
もし敵が自らの身体を泥に変化させて攻撃を仕掛けてきたら劣勢を演じながらその隙を【見切り】、【神火の竈】の炎で焼き固めてカチカチにしてから大包丁の背で【鎧砕き】を【二回攻撃】で繰り出して粉々に砕く!
『ヒーローたる者、ピンチをチャンスに変えるべし!』(『正義の書』より)



(……よし、わかったぜ!)
 ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)は『正義の書』を閉じ、うなづいた。
 敵に出会ったら、書から学んだことをすぐさま実行するつもりだ。
 ウィーリィが敵を発見したのは、それから少ししてからだった。
 ばらばらになった泥の体を繋ぎ合わせ、隠れて少し休んでいたお染が再び姿を現した、丁度その時だった。
「また現れやがったな? てめぇの正義を聞こうじゃねぇか!
 そしたらあたしが、泥まみれにしてやるからさぁ!」
「ああ、言ってやるぜ! よく聞きやがれっ!」
 売り言葉に買い言葉。
「いいか、よく聞けよ!
 料理ってのはな、誰かを幸せにするためのものなんだぞ!
 料理人としてお前の非道な振る舞いを見過ごす訳にはいかない!」
 ウィーリィは熱く語る。
 これこそが彼の読んだ『正義の書』に記された教えだった。すなわち、『ヒーローたる者、自分の信念は熱く語るべし!』。
 語られた言葉はほかでもない、ウィーリィ自身の信念だ。
「ケッ、正義の料理人ってわけか!
『誰かを幸せにするためのもの』? そんな事、誰が決めた!
 あたしはそんなことにはまったく魅力を感じねえ!」
 お染は一気に近づき、サバイバルナイフでの攻撃を仕掛けてくる。
「そんな事を言うヤツに負けられるか!」
 対するウィーリィは鉄鍋を盾としてこれを防ぎつつ、包丁での反撃を試みる構えだ。
 金属が打ち合う派手な音が図書館にこだまする。
 この打ち合いでは、お染が手数の多さで優位に立った。
 ウィーリィが体勢を崩した一瞬の隙を狙い、お染はその体を大量の泥に変えた。
「その鍋も! その矜持も! 二度と料理できないほどに汚しつくしてやるぜ!」
 大量の泥の塊がウィーリィを押し潰さんとする。
 ――だがウィーリィはそれを読んでいた。一瞬で飛び退く。
 ただの泥ならば、避けて終わりだ。
 しかしこの泥は生きていて自由に動く。
 床に覆いかぶさった泥は跳ね返るようにウィーリィに迫る。
 ウィーリィはそこで、包丁を振りかぶった。
 そして大声で言った。
「我こそは料理人なりィィイイイーーーッッ!!!」
 人類で最初に火を手にした人間はこう叫んだとされている。それが意味する所は。
 己の包丁から炎を生み出すユーベルコード『神火の竈(プロメテウス・レンジ)』の発動だ。
「炎か! くっ、忌々しい!」
「ヒーローたる者、ピンチをチャンスに変えるべし(『正義の書』より)!
 一方的に攻撃できると思ったてめぇの落ち度だぜ!」
 ヒーローの心得をわきまえ実行するウィーリィは正義の書の恩恵を大いに受けていた。彼の炎は水分をよく蒸発させ、泥の体は焼き菓子みたいにカチカチになった。
「かちかち山だけにってか、てめぇふざけんじゃねぇぞ!」
 お染がそんな事を言っている間にウィーリィは大包丁の背で鎧砕きの技を二度、続けざまに繰り出す。
 お染はたまらずに元の姿に戻った。
「くっ体が小さくなっちまった!」
 固まった泥は伸縮性がないため動かせず、切り離したまま撃ち捨てるほかなかった。その分お染は体が縮んだという。
「仕切り直しだ!」
 そして脱兎の如く、いや脱狸の如くその場から離脱した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナイ・デス
まず、探してみましょう……これは!

正義の書「名前の無い勇者の物語」
少女から名を貰った勇者がその名を胸に、ヴァルギリオスと戦い、最後にはその身全てを光へと変えた速さで貫いたという
アノルルイさんが語ったとかな物語!

私ではないですか!(ちょっと恥ずかしく思いながら読む)
主役化で、脚色も入っていますね……(アドリブ歓迎の意)
……よし

【覚悟、激痛耐性、継戦能力】罠にかかり傷つきながらも、真っ直ぐ
勇気で攻め、気合で守り、根性で進む
泥には【念動力で自身吹き飛ばし】沈まないよう
最短、最速で
そして泥船についたら、私の名前は、ナイですと名乗り
あなたの名前はと、聞いて
確り、覚えて……

光になって、貫く!



『名前のない勇者の物語』

 帝竜ヴァルギリオスに挑みし勇者の物語。
 
 その少年には、名前が無かった。
 ある少女が少年に名前を与えた。
 そして少年と少女はいくつもの世界を巡って冒険した。
 
 同胞を得、ともに帝竜ヴァルギリオスに挑みし時、
 少年は少女から授かった名と、
 勇気と、気合と、根性とを胸に抱き、
 竜の猛攻にさらされながらも進み、剣を突き立てる。
 されど受けた傷は深く、与えた傷では竜の命は奪えず。
 ヴァルギリオスを倒すには、通常の武器では足りぬ。

 名前のない少年。
 彼の中には、光があった。
 
 その身全てを光に託し、彼は光の矢となった。
 究極の光、ヴァリギリオスを貫きて、天を割る。
 天を覆う暗雲が裂け、光が差した。
 光は大地を遍く照らした、この世の闇を払うように。

 ……ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)の見つけた『正義の書』には、そう書かれていた。

「これは……私ではないですか!」
 ナイには身に覚えがあった。
 ここまで自分と一致すればはっきり言われなくともわかる。
 極めつきには詩の終わりに『吟遊詩人 アノルルイ・ブラエニオンの語りより』と書かれていた。確かにヴァルギリオスと戦った時に居合わせていた。
 流石は世界征服大図書館、異世界の勇者に関する物語を載せた本まで置いていた。
「……よし」
 少し恥ずかしかったが、戦いの準備は整った。

 おびただしい泥が横たわる空間……。
 敵は、ナイの前に姿を現していた。
「どうやらまた現れたようだね、正義の味方……!」
 かちかち山のお染は、これまで散々痛めつけられたにも関わらず、正面からナイを迎えた。
「一言、口上でもぶちあげとくかい?
 あたしが思いっきり嘲笑ってやるからさあ! ほら! なんか! 言えよ!」
 そして口を開くのを待った。……そうするのが悪の矜持だとでも言う風に。
「私の名前はナイ、です」
 ナイは応えた。そして、続けてこう言った。
「あなたの、名前を教えてください」

「……は?」
 何を言われたのかと思った。
「言いたい事はそれだけか?! 名前聞いてどうしようってんだ!
 イヤだね! 頼まれて応えるなんてぇのは! あたしが一番嫌いな事さあ!」
 こいつには解らない。
 かつて、帝竜ヴァルギリオスにも同じように問うたという事を。
 ナイにとって名前が特別な意味を持つという事を。だからそれを覚えたいという事を。
 決して解らない。
「――イライラすんぜッッ!!! 丁重にお願い申し上げてんじゃねーッ!!!」
 お染は苛立ちながらも手に握った何かを親指で押した。
 
 その瞬間、ナイの足元が爆ぜた。
 何も無かったはずの床が吹き飛び、泥が噴き出す。
「泥の『爆破スイッチ』だ……このあたしが策もなしに姿を見せると思ったか?!」
 かちかち山のお染は逃げも隠れもするが、しないときは何かを企んでいるときだ。
「その『泥』はてめぇを覆い尽くして体を動かす力を奪う! 永遠にそのまま固まって――やがて考えるのをやめるのさ!」
 吹き出した泥はナイの頭上から降り注ぎ、全身を覆っていく。
「勇気で攻め……気合で守り……根性で進む……」
 だが慌てずに、その言葉を口にする。
 その三つが自分に備わっていることを思えば、恐れるものなど何もない。
 かの少女から、名前と共に授けられた、それらがあれば。

 念動力で泥を吹き飛ばす――否、泥から自分を吹き飛ばす。
「な……?!」
 自分の方に吹っ飛んできたナイにお染は驚く。
 そしてナイの身体は眩い光に包まれた。
 否、『ナイが光だった』。
 詩と同じように、ヴァルギリオスを貫いた時のように――光の矢となったナイがお染を貫く!
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」
 タヌキの断末魔が、図書館に響き渡る……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メフィス・フェイスレス
私のイメージに合いそうな本なんて、あん?なにこれ『正義のグルメ』?
法で裁けない悪人を自慢の調理器具と料理の腕で捌いていく正義の美食家の物語……UDCなら発禁になるんじゃない?

……。あ、気がついたら最後まで読み切っちゃってたわ。
意外と面白いもんだから

それにしても
熱中して読んでいたせいか
腹が、減ったわね(ポン)

そういえば読んだ本に火炎放射器で料理するシーンがあったの
『お前は自分が何料理にされるのがいい?そうか丸焼きか!!』
そして料理の最後に言うのはお決まりのこのセリフ

『悪党が私を見上げてこう叫ぶ。
「助けてくれ(タベナイデクダサイ)!!」
それに対して私はいつもこう返す。
「嫌だね(イタダキマス)」』



(危な……かった……!)

(直撃の瞬間に『貫かれた所を泥に変え切り離した』から、衝撃を和らげることができた。直撃を受けた所は消し飛んだから体がだいぶ小さくなっちまってるはずだけどな……)
 お染は自分の状況を振り返る。
『世界征服大図書館』の書物で強化されていなければ、先の攻撃で消し飛んでいただろう。
 盛大にタヌキ寝入りをかましてやりつつ、あらかじめ周囲にばら撒いておいた泥の中に紛れることで、なんとかやり過ごした。

(こちとら逃げ隠れは得意でね……!)

 ……そのままやり過ごそうと思った。

 だが、それは甘い考えだった……。

 炎が見えた。
 それは片っ端から泥を焼いて、消し炭にするまで熱している。
 それは近づいてきた。
 その姿は……ヒトの姿ではあった。
 金色の瞳と長い黒髪、ここまではいい。
 重要なのは背骨だった。
 背骨が隆起していて頭の上まで伸びている。
 しかも、その先端から火を噴いている。
(なんだ……あの人間火炎放射器は……?
 あたしより世界征服に向いていそうじゃないか……?)
 泥のまま消し炭になったら死ぬ。
 お染は元の姿に戻るほか無かった。
「見つけたわ」
 そいつは言った。……そして走ってきた。

 そいつ……メフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)から見れば、突如視界の中に、敵が現れたのを見つけた形になる。
 泥の中から生えた様だった。
(タヌキとみせかけて、キノコだったのかしら……?
 キノコも美味しいから構わないのだけど)
 メフィスはそう考えながら目標へと駆け寄る。
 敵は意外にも逃げなかったので、ある程度近づいてそこで止まった。
「なんだ……てめぇ?!」
 敵は、明らかに困惑した顔でそう言った。
(正義の味方っぽいことをするのだったわね。よし、あの本に書かれていたみたいに)
「世の中には法で裁けない悪人がいる……そんな奴らを己の調理器具と料理の腕で裁いていく……正義の美食家。
 ……とでも名乗っておこうかしら」
 メフィスは『正義の書』に書かれていたヒーロー像をそのまま再現した。
 そのタイトルは『正義のグルメ』……グルメものの絵物語ではない。
 ホラー要素のある異能バトルだ!
「なんだとぉ~?! 調理器具とか料理とか……何の話をしてるんだ?! もしかして、その人間火炎放射器だけか! それだけでどんな料理ができるってんだ!」
「……? 何が不思議なのかわからないわね……?
 あるでしょう、丸焼きとか直火焼きとか残酷焼きとか蒲焼とか」
「てめぇ~蒲焼なら調味料はどこだあ!」
 一応この狸は色々な調理の知識があった。
「あるでしょう、お前の血よ」
「あっ、あたしも相当なもんだと自覚していたがッ!
 ここまで残酷な調理をする奴は見たことがねぇーッ!」
「同じ穴のタヌキってわけ?」
「上手いこと言うんじゃねーッ!」
 お染はそう言ってから、だしぬけに口笛を鳴らした。
 すると隠れ潜んでいた狸の姿をしたオウガたちが現れ、メフィスに四方八方から襲い掛かった。
「喋ってるとペース握られそうだからこっちから仕掛けさせてもらったぜ!
 てめぇのソレはデカいが一丁! 大群でかかられちゃ対応できまい!
 さあ何にしてやろうか! 丸焼き? 鍋物? 揚げ物もイイかな!」
 賛同! 賛同! 賛同!
 メフィス料理を食いたいという狸の群れが、お染の願いを実現するべく襲い掛かる。

 ――熱線が薙ぎ払う。
 メフィスの背骨から、ノーモーションで発射されるそれは隙を生じさせない。
 照射時間も長いため、大量の敵を薙ぎ払うにはうってつけだ。
 そもそも近づける固体は少なく、取り付いたとしても砲身自身が熱を帯びているので、とても触れていられない。
 そしてメフィスの両手はフリーなのである。骨刃で突き刺す、牙で食い千切るなど、熱線を別にしても群れなければ戦えないオウガなど相手にはならない。
「……昔から言うでしょう。『空腹は最大のスパイス』って。
 私はとても腹が減っているの。
 これだけでは……足りない……」
 メフィスはお染ににじり寄る。
「お前は自分が何料理にされるのがいい? そうか丸焼きか!!」
 これは物語の主人公のセリフをそのまま再現したものだ。どのみち、今のメフィスにできる調理方法はそれだけだったが。
 ……それだけで充分だ。なぜなら空腹は最大のスパイスなのだから。
 お染にはもう策がない。逃げるしかなかったが……。
 タールのようなものがお染の足に絡みつき、歩くことができなくなっていた。『飢渇に喘ぐ』という名の、メフィスの飢餓の衝動が形になったもの。
 飢えが満たされるまで、離す事はない。
 メフィスは正義を実行した――『正義のグルメ』が悪党を裁くシーンを再現したのだ。
「お前は私を見上げてこう叫ぶ。『助けてくれ(タベナイデクダサイ)』」
「助けてくれ(タベナイデクダサイ)! ……はッ?!」
「それに対して私はこう返す。……『嫌だね(イタダキマス)』」

「こ……こんな残酷な終わり方でいいのかよぉ~~~~~?!」

 ――因果応報は世の理。
 食人と悪を愉しんだ悪い狸は、食べられてしまったのでした。

『かちかち山をもっと残酷にしたやつをさらに残酷にした現実』……完。

 めでたし、めでたし。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月03日


挿絵イラスト