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迷宮災厄戦④〜すいーと・すいーと・あいすくりーむ

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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●身に纏いしもの
 アリスラビリンスにある『大きな愉快な仲間のいるところ』、その一角には、オウガの一体、『雪の女王』が待ち構えていた。
 雪と氷を操る力を持つ彼女は、この場所の特色を生かし、さらなる力を手に入れている。身に纏うのは愉快な仲間。雪の化身、黒き外套の死神達。
「アッ、やめてクダサイ、ジッパー開けないで! イヤーッ!!」
「やかましい! 大人しくしておれ!!」
 くすぐったーい、と悲鳴を上げる愉快な仲間を大きなきぐるみに変えて、黒い防寒具を着た雪だるまが、冷たい風を纏い始めた。

●雪だるまのきぐるみ
「というわけで、今回攻め込んで欲しい場所には、強化されたオウガが立ち塞がっているのだよ」
 集まった猟兵達に、八津崎・くくり(虫食む心音・f13839)が敵の情報を提示する。強化の方法は、その国の特色を生かしたもの。『大きな愉快な仲間のいるところ』、という名前がついているのは、もちろんそれだけの理由がある。
 この国を訪れた愉快な仲間は、なんと、『体が大きくなり、背中にチャックのついたきぐるみ化する』という不思議な変化に見舞われる。さらにこのチャックを開いて誰かが入り込むと、乗り込んだ人の戦闘力が数倍にパワーアップするというおまけ付きだ。
「今回の相手、雪の女王は、この方法で雪だるま型の愉快な仲間を着込んでいる。元々氷雪を扱う手合いだ、その出力が強化されていると見て間違いないだろう」
 単純に戦えば、苦戦は免れないだろう。しかし、と彼女は言葉を続ける。
「戦場があの国である以上、こちらも同じ手が使えるはずだと思わないかね?」
 あの場に居る愉快な仲間達――通称『ピーノくん』や、他の愉快な仲間である猟兵の手を借りれば、互角に渡り合う事もできるはず。
「『きぐるみ』状態で戦闘を行った場合、ダメージは全て中の人が受ける事になるようだ。あの場の者達は頼めば快く応えてくれるようだし、愉快な仲間たちのことは気にせず、思う存分戦ってくれたまえ」
 あとは諸君等次第だが、きっとうまくやってくれるだろう?
 そう言い添えて、くくりは一同を送り出した。


つじ
 戦争ですね! まずは愉快な仲間達と協力し、ここを突破してください!

●大きな愉快な仲間のいるところ
 この不思議の国にやってきた『愉快な仲間』は、身体が大きくなり、しかも『背中にチャックのついたきぐるみ化』してしまいます(愉快な仲間なら猟兵でもなります)。このチャックを開いて誰かが入り込むと、乗り込んだ人の戦闘力が数倍にパワーアップします。
 なお、全てのダメージは『着ている人』に通り、きぐるみはダメージを受けません。

●愉快な仲間達『ピーノ・オブコート』
 通称『ピーノくん』。黒い防寒着に身を包んだ雪だるまのような見た目をしています。
 普段は気の良い怠け者で、アイスクリームで出来た国で暮らしています。攻撃手段は凍える吐息と、氷切のノコギリ。きぐるみとして着込むとそれらも使えるほか、寒さに結構強くなります。ついでにちょっと怠けたい衝動に襲われるかも知れません。

 ※つじの運営しているアリスラビリンスのシナリオで何度か出て来ていますが、特に読まなくても問題はありません

●『雪の女王』
 彼女もきぐるみを着ています。ユーベルコードの出力が強化されていますので、ピーノくんや猟兵の愉快な仲間の協力を得て、きぐるみ状態で挑むのが有効です。

 以上です。それでは、よろしくお願いいたします。
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第1章 ボス戦 『雪の女王』

POW   :    【戦場変更(雪原)】ホワイトワールド
【戦場を雪原(敵対者に状態異常付与:攻撃力】【、防御力の大幅低下、持続ダメージ効果)】【変更する。又、対象の生命力を徐々に奪う事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    【戦場変更(雪原)】クライオニクスブリザード
【戦場を雪原に変更する。又、指先】を向けた対象に、【UCを無力化し、生命力を急速に奪う吹雪】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    【戦場変更(雪原)】春の訪れない世界
【戦場を雪原に変更する、又、目を閉じる事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【除き、視認外の全対象を完全凍結させる冷気】で攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

スリジエ・シエルリュンヌ
アリスラビリンス…!初めて訪れるのが、まさか戦争になるなんて。
でも、負けられません。文豪探偵、推して参ります!

まずは『ピーノくん』に協力を要請。
「あのオウガを倒し、あの『ピーノくん』を助けるために。力を貸してください。お願いします」

乗り込んだのならば、全力で。
【桜火絢爛】の火は、大きく二つにまとめます。
一つは雪の女王へ。こちらには【マヒ攻撃】も付与します。痺れてください!
もう一つは私への護衛です。凍らされても溶かせるように。
敵からの攻撃は、『ピーノくん』の能力と【氷結耐性】で耐えます…!
怠けたくなるのは、我慢です我慢…!
延焼分は、敵に延焼した場合は放っておき、他はすぐに消します!



●桜吹雪
 初めて訪れるのが、まさか戦争になるなんて。皮肉な運命を思いながら、スリジエ・シエルリュンヌ(桜色の文豪探偵・f27365)はアリスラビリンスに降り立った。初めて踏むこの世界の大地は、雪で覆われていて。
「さ、寒い……」
 雪の女王が戦っているせいだろう、距離のあるここでも、そこそこの勢いで吹雪いている。
「でも、負けられません。文豪探偵、推して参ります!」
 ひとつ気合を入れ直して、彼女は早速雪の中へと踏み込んでいった。白に覆われる視界の中で、黒い影――防寒着の姿を見つけて、早速そちらに駆けよる。そこに居るのは勿論、きぐるみ化で大きくなった愉快な仲間だ。
「あなたがピーノくん?」
「そうデスヨー。こんにちは猟兵サン」
 呑気な言葉を返してくるピーノくんに、スリジエは言葉を重ねて。
「あのオウガを倒し、あの『ピーノくん』を助けるために。力を貸してください。お願いします」
 そう、雪の女王が着込んでいるきぐるみだって、彼等の仲間なのだ。捨て置いて良いはずもない。
「ウーン、そう言われると弱いデスネー」
 本音としては怠けたいらしく、渋々と言った調子だが、そのピーノくんはスリジエに背中のジッパーを向けた。
「それでは、失礼しますね」
「優しくしてクダサーイ」
「え……善処します……?」
 とにかく、スリジエはそこに乗り込んで、雪だるま風のボディを身に纏った。

「来たか、猟兵よ。そのような丸々とした姿でこの私の前に立つとは――」
「状況はあなたも同じだと思いますけど……」
 吹雪のさなか、スリジエ雪だるまと雪の女王雪だるまが睨み合う。先に仕掛けたのは、もちろん範囲攻撃を得意とする雪の女王だ。瞳を閉じれば、彼女の周囲は全て、透明な氷に閉ざされる。
 しかし、ピーノくんを纏い、氷結耐性をさらに強化したスリジエは、永遠の眠りに落ちるところをどうにか踏み止まって。
「桜よ、吹雪から炎となれ!」
 『桜火爛漫』、ユーベルコードによる鮮やかな桜の花弁を踊らせる。
「ワー、綺麗デスネー」
 呑気な声を上げるピーノくんを操って、舞い踊る桜色の炎を大きく二つに。片方は自らの傍に置き、敵の放つ冷気を打ち消すのに使い、もう片方は敵へと向ける。
「痺れてください!」
 麻痺の力も込めたそれで拘束を図り、自らも、吹雪を乗り越えて敵へと迫る――!
「良い感じにあったかいデスヨー。おやすみシマセン?」
「しません! もうちょっと我慢ですよ……!」
 速攻で怠けたがるきぐるみと、自らにそう言い聞かせて、スリジエは吹雪の向こうの雪の女王に、確実に一撃叩き込んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

凍雪・つらら
アドリブ◎

雪の女王...名前からして氷使いだとは思いましたが...さ、さぶいいっ!なんですかこれ...しんじゃう...

急いでピーノくんにお願いして、潜り込むように乗り込みますっ!
はあ、多少はあったかいです...
む?これって、キグルミを着た上で更にキグルミを着たら、もっと暖かくなるのでは!?

失敗したら酷い攻撃を食らいそうですが...物は試しです、【全力魔法】の【凍雪纏い】っ!今ならフルパワーでも寒くありません!
周りのピーノくんにチャックを開けてもらったら、小さいピーノくんから順に高速飛翔でどんどん重ねキグルミして行きますっ

そして皆の凍える吐息を纏いながら、雪の女王に思いっきり突進して行きますっ!



●雪だるまin雪だるま
「さ、さぶいいっ! なんですかこれ……しんじゃう……」
 転送直後に悲鳴を上げて、凍雪・つらら(凍える雪狐・f14066)は防寒着の合わせ目を抑える。雪の女王という敵名から予想は出来ていたが、戦場は彼女の冷気で完全に雪原と化していた。
「ぴ、ピーノくん……! 中に入れてもらってもいいですか……?」
「猟兵サン、すっごい寒そうデスネー。早く入ると良いデスヨー」
 速やかに緊急避難。快く申し出を受けてくれたピーノくんの背中を開けて、つららはその中に潜り込んだ。
「はあ、多少はあったかいです……」
 全身を包む感触と、肌に当たる冷気が和らいだのを感じて、彼女は安堵の息を吐く。
「お役に立てて何よりデスヨー」
 冷気に強い、つまり彼等は防寒着としても優秀なのだと考えたところで、ふとつららはそれを思い付いた。防寒着だって重ね着したらより寒さが凌げるのだから……。
「これって、キグルミを着た上で更にキグルミを着たら、もっと暖かくなるのでは!?」
「エッ、何言ってンデスカ?」
「そちらのちょっと大きめのピーノくん!」
「エッ!?」
「物は試しですやってみましょう!」
「イヤーッ、無理しないでーッ」
 背中のジッパーを開けて、彼女は一回り大きくなった体を無理矢理ねじ込んでいった。

「……で、何なのかしらお前は」
 当惑の声を上げる、雪の女王の入った着ぐるみの前に、ぱっつんぱっつんに張ったピーノくんの姿が立ち塞がる。
「ウワー、何かスゴイことになりマシタネ」
「みちみちデスヨ」
 背中のチャックを閉めるのにかなり苦労したが、どうにかこうにか完成した二重雪だるま。その中に入ったつららが、敵に向かって高らかに宣言した。
「覚悟してください雪の女王! 今ならあなたの攻撃にも負けませんよ! それに――」
 私の全力を出しても、何とか耐えられる! 自らの放つ冷気にも凍えてしまう寒がりの彼女だが、この状態ならば。
 『凍雪纏い』、フルパワーで放たれたつららの力が、吹雪と霜のモコモコドレスとなって大きなピーノくんを飾りつける。
「ワー、キレーイ!」
「ふん、その程度で――」
 一方の雪の女王もその瞳を閉じて、周囲を瞬時に凍らせる冷気で辺りを包む、が。
「さあピーノくん達も力を貸してください、いきますよーッ!」
「ワーイ!」
 同質の冷気を纏ったつららは、凍り付くことなく吹雪の中を凄まじい勢いで突進していく。
「何だと!?」
「アーーーーッ!?」
 両者共に、凍ることなくまともにぶつかり合って、きぐるみの短い手足が衝撃に負け、双方反対方向にごろんごろんと転がっていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴァーリャ・スネシュコヴァ
おぉおお…つまり君たちと協力すれば俺の氷も一層冴えるというわけだな!
まかせろ、君たちのことも着ぐるみから治してやる!
って、敵も氷を使ってくるのか!?

どっちがうまく氷を扱えるか勝負ということだな!
相手がここを雪原に変えてくるならば
遠慮なく地面を凍らせて滑りやすくする

敵が俺を凍らせてこようとしても
俺には着ぐるみと【凍結耐性】がある
もし多少凍ったとしても、動く足があれば十分
勢いよく相手の元に滑っていき、懐に潜り込んで【先制攻撃】
氷のスケートブレードで相手を蹴りつけ
『悪魔の鏡』で氷の欠片を相手に
そのまま発動範囲から離れないよう近距離で攻撃し続ける

目には目を 歯には歯を
氷には氷、というわけなのだ!


ネーヴェ・ノアイユ
ふむ……。此度のオウガである雪の女王様は私と同じ属性を操られる方なのですね……。と、なれば……。生身で戦えば力負けしてしまうでしょうから……。ピーノ様、申し訳ありませんが……。少々お身体をお借りいたしますね。

私も氷雪を操る身……。ピーノ様のお身体はじつに馴染みますね。いつもより氷結耐性も機能しているようにも感じますので……。雪の女王様の攻撃には氷結耐性で強引に耐えつつ……。暫くの間は他の猟兵様に戦闘をお任せして私はとっておきの一撃のために詠唱をしていますね。
……別に怠けたくなっているわけではありませんよ?
詠唱……。完了いたしました。雪の女王様。どうかお覚悟を……。



●氷には氷を
「ふむ……。此度のオウガである雪の女王様は私と同じ属性を操られる方なのですね……」
 転送されたそこで、ネーヴェ・ノアイユ(冷たい魔法使い・f28873)が白く息を吐く。戦場の気温が物語っているように、敵が操るのは――。
「えっ、じゃあ敵も氷を使ってくるのか!?」
「そういうことです」
 居合わせたヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)の言葉に頷いて、ネーヴェは早速近くに転がる大きな雪だるまへと歩み寄っていった。
「話によれば、彼等も氷を扱えるはずですが……」
 二人よりも大きな体の、きぐるみと化した愉快な仲間を見上げて、そんな風に言葉を交わす。
「おぉおお……つまり彼等と協力すれば、俺の氷も一層冴えるというわけだな!」
 瞳を輝かせたヴァーリャの声に、うとうとしていたらしいピーノくんが目を開ける。
「猟兵サン達じゃないデスカー。おはようゴザイマース」
「ピーノ様、起き抜けのところ申し訳ありませんが……。少々お身体をお借しいただけますか?」
「雪の女王に捕まってるのも居るんだろ? 俺達で解放してやるから!」
 まかせろ、と胸を張るヴァーリャの言い添えもあって、愉快な仲間は二つ返事で二人に身体を明け渡した。

「私も氷雪を操る身……ピーノ様のお身体はじつに馴染みますね」
「んー、言われてみるとそんな気もするのだ」
 それぞれ別のピーノくんを着込んだ二人は、感触を確かめるように体を動かす。ヴァーリャの方は少しばかり、足の長さが気になるようだが。
「まあ、多分すぐに慣れるだろう!」
 早速駆け出したヴァーリャの後を、ネーヴェもしばらく追いかけて。
「……アレ、行かなくて良いんデスカー?」
 程々のところで立ち止まったため、きぐるみのピーノくんが中身の彼女に尋ねる。
「良いんです。戦闘はお任せして、私はここぞという時にとっておきを放てるようにしますから……」
 そう言って、彼女は詠唱を開始した。雪だるま状の丸い身体を転がして、どういう体勢が一番楽か確かめながら。
 ……別にサボっているわけではない。決して。

「雪の女王! どっちがうまく氷を扱えるか勝負するのだ!」
「生意気な。その鼻っ柱をへし折ってやろう」
 接近し、睨み合う二つの雪だるま。その片方から、周囲を一気に凍らせる程の凄まじい冷気が溢れ出す。
 しかし、氷を扱う術に長け、卓越した氷結耐性を持つヴァーリャは、それに怯むことはない。きぐるみによって能力が強化されていることもあり、足を止めぬままに反撃に移った。敵を中心にして迸る冷気を、逆に利用し、雪原に平たく氷を張る。労せずしてその一手で、彼女のための足場は完成した。
 踏み出したヴァーリャの入った雪だるまは、その短い手足からは想像もつかない滑らかさで氷上を滑り始める。
「氷の上なら、こっちのものなのだ!」
 勢い良く敵の懐に滑り込み、足先に生み出した氷のスケートブレードを一閃、中身の雪の女王に手傷を負わせる。同時に、砕けた氷の欠片が彼女に張り付き、その体温を奪い始めた。
「おのれ、少しは動けるようだが――」
 先制攻撃は決まった、しかし雪の女王もまた、氷の上を歩むことに慣れているものらしい。すぐに感覚を取り戻したように、きぐるみを介しても滑らかな動きで、ヴァーリャに応戦しはじめた。氷の上で舞う二つの雪だるまは、互角の戦いを繰り広げているように見える。だが膠着状態を打ち破るもう一手が、猟兵達にはあった。ようやく起き上がったネーヴェが、その丸くて短い手を敵へと向けて。
「詠唱……完了いたしました。雪の女王様。どうかお覚悟を……」
 放たれるは『総て凍てつく猛吹雪』。ヴァーリャの稼いだ時間を存分に詠唱に当てた、とっておきの一撃が雪の女王を包み込む。
「ハ、よりにもよって、私を氷付かせようなどと……!」
 とはいえ、きぐるみでさらなる氷結耐性を得ているのは雪の女王も同じこと。凄まじい威力の吹雪の中にあっても、それに呑み込まれぬよう彼女はその場に踏み止まる。ダメージは甚大だが、耐えきれる、そう雪の女王が確信したところに。
「今だー!」
「ワーーーイ!」
 雪の女王にとっての逆風は、彼女にとって力強い追い風になる。きぐるみで丸くなった体を活かして風を受け、ヴァーリャは敵の元へと飛び込んで行った。
「は――?」
 艶やかに輝く凍った地面は、勢いそのまま彼女を運んで、シンプルかつ強力な体当たりが雪の女王に命中。踏みとどまっていた彼女に最後の一押しを加え――。

 猛吹雪が一段落したそこには、雪の女王の入ったピーノくんが、ひっくり返った状態で雪と氷に埋もれていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

華折・黒羽
【咲日花】

オズさんの巨大ろぼの次は
大きなぴーのさんに乗り込めるなんて…
凄いですね
贅沢、です
男のろまんいっぱいです

お邪魔しますと一度頭を下げてから乗り込んで
腕をぱたりぱたりと上下に振ってみて

え、あ、えっと…
お揃いで百人力で、デス、ヨー?

倣って真似てみるも
気恥ずかしさが抜けずにしどろもどろ

自身も氷を使う為か寒さには耐性がある
行きましょう、ピーノさん
属性攻撃で雪の女王の氷すら巻き込んで
氷の花で織り成していく檻
足元を狙って絡めようと

ピーノさん達に乗り込んだ事で
女王も少しのんびりとした気持ちにとか…無いですかね?
そうすれば一緒にだらだら出来るのに

はい、倒しましょうオズさん
心置きなくごろごろ出来るように


オズ・ケストナー
【咲日花】

ピーノくんを着るのっ?
うんうん、ろまんっ

ぺたぺた
くすぐったい?
それじゃあいっきに(ジャッ)
おじゃましまーすっ

クロバ、クロバっ
ピーノくんの姿で跳ねる
おそろいだ、ふふ
がんばりマスヨっ
クロバもまねっこしてくれたからうれしくて
腕ぶんぶん

雪の女王さまもピーノくんだっ
前にもその攻撃は見たことあるよ
ミレナリオ・リフレクション

前に見たときはとってもさびしそうでかなしそうだったけど
ピーノくんになったら
ちょっとおサボりしてごろだらもいいなあってきもちにならない?

いっしょにだらだらしたらすごくたのしそうっ

でもクロバ、ごろだらしたくなるまえに
決着をつけちゃおうね

凍える吐息は効かなくても
生命力吸収効果を乗せて



●浪漫
「わぁ、ピーノくんが着られるようになってるっ」
「凄いですね……」
 大きくなって、背中にジッパーまでついたピーノくんを前に、オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)と華折・黒羽(掬折・f10471)が感嘆の声を上げる。先日の戦いではオズの出した巨大ロボに乗る事になったのだが、今度はこちらだ。
「男のろまんいっぱいです」
「うんうん、ろまんっ」
 黒羽の言葉にうんうんと嬉しそうに頷いて、オズは完全にだらけきっているピーノくんを、ひとまずそこに座らせた。
「ピーノくん、中に入ってみてもいい?」
「良いデスケドー、ちょっとくすぐったいんデスヨネー」
「そう? それじゃあいっきに……」
 目の前に来たジッパーをジャッと開けて、ふかふかのそこに飛び込んでいく。
「おじゃましまーすっ」
「それでは、俺も……」
 お邪魔します、と頭を下げて黒羽ももう一人のピーノくんの背に入っていった。ひんやりとしたきぐるみの中から外を窺って、二人は互いに見慣れた雪だるまの姿になったことを実感する。
「クロバ、クロバっ、おそろいだねっ」
「ええ、おそろいです」
 ぴょんぴょんと跳ねているピーノくんがオズで、ぎこちなく手を振っているのが黒羽だろう。
「よーし、がんばりマスヨっ」
 楽しそうに、腕をぶんぶん振っているオズに合わせて、クロバも拳を握ってみせた。
「え、えーと……お揃いで百人力で、デス、ヨー?」
 あっ、この口調結構恥ずかしい。

「じゃあ行こうか、ピーノくんっ」
「ハーイ」
「僕は寝ててもイイデスカー?」
「どうなんでしょう……できれば起きててほしいですけど……」
 きぐるみ側が寝てしまっても中からなら動かせるのだろうか? 何にせよそんな実験をするよりは起きていてもらった方が良いだろうと、ピーノくんを宥めすかしながら黒羽は進む。周囲の光景はあっという間に雪と氷で覆われ、下がっていく気温がピーノくん越しにも伝わってきていた。そんな冷気の中心に居るのが、今回の敵である氷の女王、なのだが。
「あ、雪の女王さまもピーノくんだっ」
 オズの指摘通り、敵もまた愉快な仲間をきぐるみとして着込んだ、愉快な格好をしていた。
「ふん、お前たちもこの下僕を使ってくるとは、小賢しい……」
 若干悪そうな目つきになった雪の女王ピーノくんが、二人の方を睥睨する。
「僕達いつから下僕になったンデスカー?」
「シラナーイ」
「……お前たちはしばらく黙っているように」
 飽くまでマイペースなきぐるみ達に釘を刺す女王の様子を見て、代わりに二人がひそひそと言葉を交わす。
「ピーノさん達に乗り込んだ事で、女王も少しのんびりとした気持ちにとか……無いですかね?」
「どうかなあ……でも、いっしょにだらだらしたらすごくたのしそうっ」
「聞こえているぞ、そこ」
 突き刺すように言葉を投げて、女王はその身から冷気の嵐を迸らせる。
「見くびられたものだな、私がそのような惰弱な精神で挑んでいるとでも?」
 周囲の物を片っ端から凍らせるような猛吹雪。だがピーノくんをその身に纏った状態の二人ならば、それを凌ぐことも十分に可能だ。
「よーし、今度はこっちからっ」
 『ミレナリオ・リフレクション』、襲い来る吹雪と、全く同じ冷気の波を生み出して、オズがそれに対抗する。
 拮抗する風は互いに互いを押し出し合って、二人を中心とした円周上に、氷のドームのような傷痕を刻んでいく。
「行きましょう、ピーノさん」
「ワーイ、行きマスヨー!」
 そうして生まれた間隙を突いて、黒羽の入ったピーノくんが地を蹴り、跳びこむ。極寒の風をきぐるみで振り切って、ピーノくんの手に移した黒剣を振り下ろした。それを受けるべく雪の女王はノコギリを構えるが、両者の刃が交わる直前に、黒羽の屠がさらなる冷気を解き放った。
 『氷花織』、刃の当たった箇所から氷の花が咲き、女王のノコギリをピーノくんの身体と氷で繋ぐ。さらなる一太刀で足元に花を咲かせ、オズ入りピーノくんの氷の吐息も合わせて敵の足をその場に縫い留めた。
「ごろだらしたくなるまえに、決着をつけちゃおうね」
「はい、倒しましょうオズさん」
 これを終えて、心置きなくごろごろ出来るように。そう頷いた黒羽とオズの連撃は、女王に浅くない手傷を負わせた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

月舘・夜彦
【花簪】
オオカミ殿、またピーノ殿が巻き込まれております
今回も彼等の力を借りつつ、戦いましょう
……オオカミ殿?

隣に居たはずの狼耳を生やした青年は何処へ
そういえば彼も愉快な仲間の一人でしたね
となれば、オオカミ殿の着ぐるみに入ればぱわーあっぷ
彼の怪力と私の剣術を併せれば雪の女王にも対抗できるはず
それでは、失礼致します!

着ぐるみ狼殿の背を開けて入り込み、そして左手には私の愛刀
オオカミ侍として挑みましょう
操縦、任されました

オオカミ殿の持つ『言語:物理』
普段では出来ない戦法に少しばかり気持ちも昂っております
そしてその力を私の抜刀術『神風』に込めて放つ
未知の力、試させて頂きます!


ジョン・フラワー
【花簪】
あれっ僕またなんだか大きくない?
っていうかふわふわしてない?
大変だ! 簪のアリスが小さくなってる!
どういうこと? そういうアレ? はええすごいなあ

つまり今回は無敵のオオカミ侍だ!
合体! そして巨大化!!!
巨大化はしない? そしたらアリスのサイズに合わなくなっちゃうからね
それにしてもちょっと恥ずかしいね。えへへ

よーし操縦は任せたよアリス!
僕のパワーを存分に楽しんでおくれ!
コツは楽しくだよ! 楽しくなればなるほど僕らはつよい!

いくぞ! なんかこの 必殺技なんて叫んだらいい?
おおかみにもわかりやすいように短めで……ふんふんなるほど!

よーしくらえ! ばっとーじゅつ! かみかぜー!!!



●合体攻撃!
 戦場へと転移したジョン・フラワー(まごころ・f19496)は、何だか覚えのあるような無いような、不思議な既視感を覚えて、周りを見回す。
「……オオカミ殿?」
 すると、訝し気に自分を呼ぶ月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)の位置が、低い。
「大変だ! 簪のアリスが小さくなってる!」
「いえ、逆ではないかと」
「えっどういうこと? そういうアレ? また?」
「また、ですね」
 そういえば彼も愉快な仲間の一人だったな、と夜彦が頷く。前回は正義の怒り(仮)から巨大化したジョンだが、今回は不思議の国の不思議効果を受けたものらしい。
「はええ、いつもより大きくなった上に、何だかふわふわになったね」
 大概いつもふわふわしているような気もするけれど、それはともかく。
「となれば、オオカミ殿の着ぐるみに入ればぱわーあっぷできるというわけですね」
「本当かい!? すると今回は無敵のオオカミ侍になれちゃうんだね!」
「そういうことです。我々の力を合わせれば、雪の女王にも対抗できるはず……」
「よーし、それなら早速合体だ!」
 共闘の算段を付けて、きぐるみ化したジョンは背中を向けてジッパーを指差して見せた。
「あっ、でもこれちょっと恥ずかしいね。えへへ」
「それでは、失礼致します!」
 今更ながら照れが出たジョンに対し、有無を言わさず夜彦はそれに手をかけて。何かピンク色でふわふわしたきぐるみの中に飛び込んで行った。

 のっしのっしと雪原と化した地を歩いて、ジョンと夜彦は今回の敵、雪の女王と向かい合う。
「現れたか、猟兵。見たところお前達もこの国の力を活かしているようだが――」
「アーッ、猟兵さん、またお会いしマシタネー」
 女王のセリフを遮って、きぐるみ側が喋り出す。二人にしてみても、その雪だるまには見覚えがあったので。
「あ、やっぱりアイスのアリスだ」
「ピーノ殿、また巻き込まれておりますね……」
 しょうがないなと頷いて、しかし臨戦態勢は崩さぬままそれに応対する。外身がいかに友好的であっても、それを動かしているのはオウガなのだから。
「ええい、クソやかましいが、この下僕は私の力との相性が良い――ゆえに、後悔し、平伏せ!」
 指先を上げて、雪だるまがふと冷たい息を吐き出す。微風はすぐさま吹雪となって、嘆きの声のような唸りを乗せてジョンと夜彦に襲い掛かった。
「わーッ、スゴイね冬眠しちゃいそう!」
「一応、まだ起きていてくださいね」
 実際のダメージは夜彦に行っているのでこの辺りは気分の問題だ。通常、まともに受ければ瞬く間に戦闘不能まで持っていかれそうな攻撃だが……。
「なるほど、耐えられないこともない」
 喰らい続ければまずいだろうが、それを大人しく待つつもりは当然ない。ジョンの左手に持たせた刀に手を遣り、低く、構えて。
「それじゃ操縦は任せたよアリス!」
「任されました。行きましょうオオカミ殿!」
「よーし、それじゃあオオカミ侍、発進だよ!!」
 きぐるみの足がそうとは思えぬほどの勢いで地を揺らし、鋭く踏み込む。雪の嵐の中を突破したピンク色のオオカミ侍は、抜き放った太刀を雪だるまに向けて振るった。
「小癪な……!」
 滑らかな剣閃に、雪だるまの取り出したノコギリが差し込まれ、極寒の冷気の中に火花が散る。
「ねえアリス、僕の力を使うんだったら、コツは楽しくやることだよ!」
「楽しく、ですか」
「そうそう、楽しくなればなるほどつよくなるからね! そんな感じで!」
 そうは言われても、と少し考えながら、夜彦は刀を持つ手に力を込める。相手のノコギリを押して、彼我の間合いを開けようとして――。
「――なるほど」
 いつもとは違う、漲る膂力を感じる。この力を、自分の剣術に乗せてみたらどうなるだろう。
「あ、何かテンション上がってきた?」
「ええ、少し……未知の力、試させて頂きます!」
 振るう刀にも力が乗り、一度、二度と打ち込むたびに雪だるまがよろける。
「お、おのれ、調子に乗りおって……!」
 力負けを恐れた雪の女王が、ノコギリを強く振るったところで、それをいなすようにオオカミ侍は一歩引いた。たたらを踏んで、雪だるまの体勢が崩れる。
 剛力で揺さぶれば、技での一撃もより鋭さを増すというもの、刀を素早く鞘へと納め――。
「では、オオカミ殿」
「よーしいくぞ! なんかこのえーと、必殺技なんて叫んだらいい?」
 楽し気なジョンの声に合わせて、口元を緩めて。
「合わせてください。『抜刀術』――」
「かみかぜー!!!」
 神速の一刀は、不可視の斬撃となり、雪だるまの中の雪の女王を、深く斬り裂いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城島・侑士
アドリブ◎

まさかこの歳で着ぐるみを着ることになるなんて
てか別に無理して彼等を着なくても…(女王の放った攻撃を目視し)……力を貸して貰えるか?

意を決してチャックを開けて入り込む
し、失礼しまーす
なるほど
これは子供達が見ていたロボットアニメに近い感じがするな
御伽噺の国で巨大な雪だるまと雪だるまが激突する
うんうん、メルヘンだね
…いかん現実逃避してる場合じゃなかった
戦闘だ!

UCで敵の動きを鈍らせ
銃で乱れ撃ち
接近されたら氷切りのノコギリと
着ぐるみの技を織り交ぜて応戦する
UCを封じられたら吹雪での被ダメは回避したいのでヤンスマンでのオーラ防御を使用
…雪だるまに蝙蝠とか絵面がB級映画じみてきたが気にしない


エドガー・ブライトマン
やあ、聞き覚えのある賑やかさだね。
ごきげんよう、雪だるまみたいなキミたち。
ピーノ君というのかい?ウーン、見覚えもある気がしてきた。

ピーノ君たち、大変そうなコトになっているね。
ねえ、よかったら私にキミの手を貸してくれないかい?
いや手というよりか、体を貸してくれる?
大丈夫だよ、優しくしてあげるからさ……

じゃあ失礼するよ(オープン)
へえ~、確かになんだか強くなったような気がする。
いくよピーノ君。私たちで平和を取り戻すんだ!

“Hの叡智” 状態異常力を重視。雪原にも対抗できるハズさ。
吹雪だろうが《激痛耐性》があるし気にしない。
《早業》で駆け抜け、《捨て身の一撃》

扱いが優しくないって?
フフ、気づいたかい?


城野・いばら
こらー!ムリやりはダメなのよ
って、あら
いばらも大きくなっちゃった
*姿そのままの人形きぐるみに変身

皆、もう大丈夫
猟兵のアリスが来てくれたよ
だから怖がらないで
お願い、力を貸してほしいの

うぅ、ふわふわになっても冷たいわ
とっても寒いのは苦手なの
でも困ってる皆を放っておけないもの
…愉快な仲間パワーみせちゃうよ
オーラ防御で防ぎつつ、協力してもらえたらお礼を

お邪魔な氷は怪力籠めたパンチでえーい
吹雪は風の属性攻撃で吹き飛ばし、
アナタへお返しするわ
雪だるまさん、一緒にフーってしたらきっとキラキラして綺麗よ

これは目眩まし
その隙に距離を詰めて茨で掴まえちゃう
そのまま生命力吸収を

ごめんね雪だるまさん
もう少し我慢してね



●輝く風を越えて
 猟兵達と激しい戦闘を繰り返していた雪の女王は、交戦の合間にその場の愉快な仲間達をどやしつけていた。
「ええい、いい加減働かんか下僕ども! 奴らを迎え撃つ砦なり壁なり生み出してみせよ!」
「エェー何でデスカー?」
 しかし、どうにもその辺りは上手くいっていないようで。
「いつから下僕になりマシタッケ?」
「お給料モラエマス?」
 怠け者を働かせるのはかくも難しい。こうなったら人質でも、という動きを取ろうとした女王だったが、その前に立ち塞がる影が一つ。
「こらー! ムリやりはダメなのよ!」
 雪だるま達を庇うように立った城野・いばら(茨姫・f20406)は、同時に自分に起きた変化を悟る。
「あ、あら? いばらも大きくなっちゃってる」
 きぐるみ化したピーノくん達と同じサイズになったいばらは、「まあそれはそれで丁度いいか」と拳を握った。
「皆、もう大丈夫だからね!」
「ハ、生意気な。お前一人で何が出来る?」
 ピーノくん達に呼び掛ける大きないばら人形へ、雪の女王の入ったちょっと悪い顔の雪だるまが哄笑を向ける。氷をも砕けと言わんばかりに拳を振るったいばらが飛び掛かり、両者は激突の時を迎えた。
「愉快な仲間パワー、見せてあげる!」
「ワーイ、頑張ってクダサイ、愉快な仲間の猟兵サーン!」
「ワーワーガンバレー!」

「やあ、聞き覚えのある賑やかさだね」
 そんなゆるい声援の響く中、遅れて転送されてきたエドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)が合流する。ごきげんよう、と愉快な仲間達に挨拶して、その大きな体を見上げる。
「……ピーノ君というのかい? ウーン、見覚えもある気がしてきた」
「会った事あるのか?」
 同時に合流した城島・侑士(怪談文士・f18993)の問いに、どうだったかな、と彼は曖昧に答えを返した。
「それにしても、大変な事になっているね」
 マイペースに話題を変えたエドガーに合わせて、侑士も戦場に視点を移す。
「ああ……そうだな、大変な事になってる」
 そこでは自分より大きなサイズをした少女のきぐるみが、雪だるまのきぐるみと戦っている。その上、これからそこに参加しようというのだから頭が痛い。娘だって最近16になったと言うのに、まさかこの年できぐるみ、などと。
「とはいえ、別に無理して彼等を着なくても――」
 そう言いかけた侑士の前で、いばらと交戦中の雪の女王が、その力を解き放った。
 世界が、一瞬で凍て付く。雪の女王を中心として広がったすさまじい寒波は、辺り一帯に氷の層を塗り付けていった。対面したいばらがオーラ防御で軽減を試みていなければ、そして丁度寝転がったピーノくんの影に立っていなければ、どうなっていただろうと侑士は頬を引き攣らせた。
「うぅ、とっても寒い……!」
 冷気の波を凌ぎ切れず、押し負けるようにして倒れ込んで来たいばらが言う。この国のきぐるみは『着た者の戦闘力を数倍にする』力を持つ。敵と同じ大きさになれたとはいえ、中に誰も入っていない状態のいばらでは少々分が悪いようだ。
「……あー、力を貸して貰えるか?」
 それも踏まえて、速やかに方針転換した侑士がピーノくんに問いかける。
「エー、何すれば良いんデス?」
「それはもちろん……」
「手を貸してほしい、というか身体を貸してほしいんだよね」
「エッ」
 途中から引き継いだエドガーの単調直入な物言いに、戸惑いの声が上がる。若干語弊がありそうだが、内容としては言葉通りだ、問題はない。
「大丈夫だよ、優しくしてあげるからさ……」
「ほ、本当デスカー?」
 何か余計に怪しくなってしまったが……。
「こ、怖がらなくて良いのよ」
 だからお願い、力を貸してほしいの、といばらからの言い添えもあって、ピーノくん達は彼等にその身を預けることにした。
「仕方ないデスネー」
「じゃあ、失礼するよ」
「し、失礼しまーす」
 それぞれピーノくんの一体の背を開けて、エドガーと侑士がふかふかの内部に飛び込む。
「へえ~、確かになんだか強くなったような気がする」
「なるほど、子供達の見ていたロボットアニメに近い感じかな」
 意のままに動く感触を確かめて、二体のきぐるみは立ち上がり、雪の女王へと視線を向けた。
「ろぼっとあにめってナンデス?」
「ああ……大きな機体を操って、敵を倒していくお話だね」
「だったら丁度良いね、いくよピーノ君。私たちで平和を取り戻すんだ!」
 というわけで、再度戦線に復帰したいばらと共に、二体のピーノくんが発進した。

「新手か? だが、何人来ようが同じことだ」
「いや、そうでもないさ」
 指揮者のように振られるはずの女王の腕を、侑士入りピーノくんの投げたロープが絡め取る。強くそれを引くことで体勢を崩させたところで、もう一体、エドガー入りの雪だるまが氷原を駆け抜け、レイピアを敵へと向けた。
「さあ、覚悟してもらおうか!」
「生意気な……!」
 鋭い刃を、雪の女王は自由な方の手で取り出したノコギリで受け流す。王子様の入った雪だるまと、心なしか悪い顔の雪だるまがぶつかりあって。
「やっぱりメルヘンだね――って言ってる場合じゃないか」
 押し込み切れず、エドガーが離脱したそこに、侑士が散弾銃を撃ち込んでいく。次々と薬莢を排出しながら乱れ撃ちされるそれを嫌って、女王が氷の壁を生み出せば、今度は行動範囲の狭まった敵へとエドガーが追い打ちをかけていった。
 波状攻撃の最後を担ったのは、一旦距離を取っていたいばらだ。怠けていたピーノくんの何体かを引き連れて――。
「雪だるまさん、一緒にフーってしたらきっとキラキラして綺麗よ」
「フムー、愉快な仲間の猟兵サンが言うなら……」
「ハーイ、それじゃせーのでいきマスヨー」
「いや、まさかこの年になって吐息で攻撃する日が来ようとはね……」
 侑士の雪だるまも加わって、ピーノくん達が一斉に冷たい吐息を放つ。同時に吹いた冷気を、いばらが風を操る事で、氷の嵐へと編み上げる。雪の女王を包み込む、輝く風。だが美しい見た目とは裏腹に、氷塊の飛礫は確実に彼女の身体を削る。
「ええい、調子に乗るな!」
 だが、吹雪ならばこちらもお手の物。反撃にと放たれた女王の冷気が、凄まじい寒波が、輝く風を吹き散らし――。
「……何?」
 猟兵達をも吹き飛ばすはずのそれが、ヤンスマン――侑士の使い魔である無数の蝙蝠によって局所的に軽減されている。
「巨大雪だるまに蝙蝠か。絵面が本格的にB級映画じみてきたな……」
 そんな蝙蝠の群れと合わせて、オーラ防御で寒波を凌ぎ切ったいばらは、既に女王との距離を十分に詰めていた。
 先程の輝く風が、このための目眩ましに過ぎなかったと、雪の女王がそう気付いた時には既に遅い。
「今度こそ、ぎゅってしてあげる!」
 『茨の揺り籠』、いばらの伸ばした茨の蔓が、雪の女王の入った雪だるまに絡みつき、身体の自由を奪う。
「ワーイ、縛られちゃいマスヨー」
「雪だるまさん、もう少し我慢してね」
 そうしてきぐるみへと声をかけたいばらに続いて、蝙蝠の群れを掻き分ける形で、エドガーが接敵する。こちらは凍てつく風の中を、ただ真っ直ぐに突っ切ってきていた。
「扱いちっとも優しくなくナイデスカ?」
「フフ、気づいたかい?」
 だがそれゆえに、雪の女王は彼に反応しきれない。レイピアの刃が冷たい輝きを以って、女王の身を貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アイネ・ミリオーン
【エレルA】

背中にジッパー……?
……わぁ
トリス、トリス大変です、トリス
君にも、乗れま、す
愉快な仲間たち、って、面白いです、ね
すごい

えぇと、ロカジが、トリスに乗るなら、僕はピーノくん、に、乗りましょう
あ、君、この間の子、ですね
乗せてくれます、か?
ありがとう、ございます

……そこはかとなく、怠けたくなります、ね
嗚呼でも、敵も同じ状態、ですよ、ね
うん、こうしましょ、う
酩酊する感覚、を、与えてみたら、怠けたい気持ちも、増えるかも、しれません
ほら、心地好い
ゆっくりしたいですよ、ね
カスカが安全地帯をくれた、ので……あとは、怠けても良いです、かね……?

わぁ、頑張れ、ロカトリスー
カスカ、カスカこれ楽しいです、ね


ロカジ・ミナイ
【エレルA】

背中のジッパーが似合ってるよピーノくんたち
しかも着れるだなんて可愛さ6割増
いやぁ、愉快な仲間は愉快だねぇ!
開けて見ていい?中身どうなってんの

…トリス
トリスもジッパーある…ククク
中身見ていい?やっぱり空っぽなの?ヘケケ

ゆるい空気なんてアイネにぴったりよ
うんうん、さすが我が弟子はサボるのも上手いなぁ…ん?

着れる愉快な仲間がトリスだけならトリスを着るしかない
背丈も合うし仕方ないね
戦汚れを気にしなくていいのがいい
…痛いのは僕みたいだけど

さぁトリス!変身よ!(キラキラ光る演出)
超絶融合ロカトリス!いくわよ!

ええい、言う事聞けよ僕の服なんだからさぁ!
痛くしたら洗濯乾燥機にぶち込んでやるからな!


朽守・カスカ
【エレルA】
なんとも賑やかで大変な状況だね
ピーノくんらしいと言えば、らしいけれど
手近なピーノくんを呼び、迷うことなく着込むとしよう
ふふ、実は思いっきり抱きしめてみたかったから
これはこれで、丁度良いと言えるかな

それにしても、愉快な仲間たちというのも、本当に個性的で素敵だ、ね
(視線の先には、トリス君を着ようとする師匠の姿)
…本当に、個性的だ

アイネ君のいうとおり
ピーノくんの影響か
怠けたくてやる気が出ない…
こうなったら【星灯りの残滓】
さぁ、これで此処は安全だよ
師匠の背を見て弟子は育つものだから
今回は此処で怠け…弟子の務めを果たすとしよう

がんばれ、ロカトリス
アイネ君と声合わせ
声援を送り楽しく観戦、さ


トリス・ビッグロマン
【エレルA】

え?(背中のジッパーを確認する)
はあああっ!?

待て待て、冗談じゃねぇ!
いくらオレがビッグな男だからって、
誰かに着られるなんてありえねえ!

あ、コラ!?ジッパーに触るな……んぅっ!?
ち、力が、抜けて……み、見るなぁっ……!

ぐあッ……クッ、入って……くる……!
い、イヤアアアァァッ!!


なにがロカトリスだ!
ちょっとカッコよく言ってんじゃねぇよ、脱げ!

うう、オエッ……
このオレの中に、むさ苦しい男を入れることになるなんて……
しかもよりにもよって足の臭いオモシロ眉毛男に!
せめてカスカがよかった!

クソッ!
ロカジてめぇ、オレを着るからには使いこなしてみせろよ!?

帰ったら生皮剥いでコートにしてやる!



●君を着る話
「やあ、また妙な事になっているねピーノくん」
「ソウデスネー」
「デモ大きい事は良い事デスヨー」
 こんにちは、と挨拶を交わして、朽守・カスカ(灯台守・f00170)の言葉にピーノくん達が答える。きぐるみと化した彼等は大きくなって、いつもよりふかふか。けれどやっぱり性根は変わらず、戦場近くのこの辺りでもごろごろと怠けていたようだ。
「ピーノくんらしいと言えば、らしいけれど」
「ああ、背中のジッパーも似合ってるよピーノくんたち」
 納得した様子のカスカに続いて、ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)がぽんぽんと彼等の背を叩く。そこには、黒い防寒着の上からきぐるみ用のジッパーがくっついていた。
「いやぁ、愉快な仲間は愉快だねぇ! 早速だけど開けて見ていい? 中身どうなってんの?」
「エー、恥ずかしいデスヨー」
「良いじゃないの、僕と君達の仲でしょ」
「師匠、あまりピーノくんを困らせてはダメだよ」
「そんなこと言って、弟子も興味あるんだろう?」
 緊張感とは無縁に思えるやり取りに、トリス・ビッグロマン(ストレイグリム・f19782)はやれやれと溜息を一つ。
「おいおいこれから戦場に出向くんだぜ? そんな間抜けな見た目になっちまって大丈夫かよ」
「トリス……」
 それに対してあたたかい視線を送ったアイネ・ミリオーン(人造エヴァンゲリウム・f24391)は、彼の背中を指差して見せた。
「君にも、付いてます、よ」
 背中に、ジッパーが。
「は?」
「愉快な仲間たち、って、面白いです、ね」
「はあああっ!? 待て待て、オレがいくらビッグな男だからって――!?」
 そういうことじゃないだろう、と悲鳴を上げても現実は変わらない。
「うん……個性的で素敵だと思うよ」
 微妙な微笑みを浮かべるカスカに続いて、意地の悪い笑みのロカジがその背に回った。
「中身見ていい? やっぱり空っぽなの?」
「おいやめろ触るな! ジッパーを開けるな! み、見ないでくれぇぇぇッ!!」
 やっぱり中身を晒すのは恥ずかしいものらしい。悲し気なトリスの悲鳴が、しばしその場に響いていた。

 転送直後にそんな一幕があったが、さすがにいつまでも遊んではいられない。愉快な仲間の協力を取り付けなくては、とアイネは改めてピーノくんに向き直る。
「アッ、この間はどうもデシタヨ猟兵さん」
「あ、君、この前の子、ですか」
 アイスの国の事件で出会った子だと気付いて、アイネが頷く。彼の予想した通り、「乗せて欲しい」という頼みは、二つ返事で受け入れられた。
「ありがとう、ございます」
 それでは早速、お邪魔しますね。背中のチャックを開けて、そこに身を預ける。ふわふわしたその中身は、どこかひんやりしていて――。
「……そこはかとなく、怠けたくなります、ね」
 何だか眠気を誘うな、とそんな感想を口にした。
「でもそのゆるい空気、アイネにぴったりよ」
「確かに、そうかもしれないね。それじゃあ私も……」
 ロカジと共にそれを見上げてから、カスカももう一人のピーノくんを着込むことにした。きぐるみの中にすっぽりと収まれば、両手を広げたまま体重を前へと預けるようにして。
「モギュー」
「ふふ、照れなくてもいいじゃないか」
 妙な悲鳴を上げるピーノくんの様子にそう笑う。
「実は前から思いきり抱きしめてみたかったんだよね、丁度良い機会だろう?」
 しかし、遠慮なくそうして、身体を預けていると……。
「……何だろう、アイネ君の言う通り、脱力感があるね……」
「大丈夫かい弟子。これから戦闘だよ?」
 苦笑交じりに言いながらも、ロカジは自分が乗り込む先を探す。あれ、ピーノ君はこの辺にはもういないのかな?
「じゃあ、あとはトリスを着るしかないか」
「あァ?」
 無体な目に遭い羞恥心で死んでいたトリスが、そこでようやく復活する。
「冗談じゃねえ、オレが誰かに着られるとかありえねえだろ!」
「仕方ないでしょトリスしかいないんだから。背丈も合うし観念しなよ」
「ふざけ……アッ、やめッ、入ってくるな!」
「さぁトリス! 変身よ!」
 キラキラとしたイメージ上の光を纏いながら、ロカジはトリスの背中を広げた。
「超絶融合ロカトリス! いくわよ!」
「ちょっとカッコよく言ってんじゃねぇよ! ウワッ!? い、イヤアアアァァッ!!」
 いいですけど、もうちょっと静かに着れませんかねぇ。

●仲良くして
「うう、オエッ……このオレの中に、むさ苦しい男を入れることになるなんて……」
「いつまでグズグズ言ってるのさ……」
 やめてよ盛り下がるじゃない、というロカジの声が内側から聞こえるという、その状態だけでもトリスには耐えがたいものらしい。
「足の臭いオモシロ眉毛男は黙っててくれ! ああ、畜生よりにもよって! せめてカスカがよかった!」
「せめてとは何だい、せめてとは」
 未だ騒ぎ続ける二人の後方、ヒートアップしている彼等のやり取りに反して、冷気が徐々に迫ってきていた。
「ここに居たか、猟兵ども」
 現れたのは、ちょっと悪い感じの顔になったピーノくんのきぐるみだ。
「カスカ、カスカ。雪の女王が来ました、よ」
「ああ……あんまり遅いから痺れを切らしたのかな」
 アイネの言葉に頷いて、カスカはピーノくんを操り、立ち上がろうとして即座に諦める。
「大変だよアイネ君。まったくやる気が出ない」
「か、カスカ?」
 そうこうしている内に、雪の女王は完全に攻撃態勢に入っている。すぐに極寒の冷気が襲い来るだろうと悟って、カスカはランタンに灯を入れた。
「こうなったら……仕方ないね」
 『星灯りの残滓』、サボりに全勢力を捧げたカスカの周囲に、淡い明かりが広がって、外部の攻撃を遮断する安全地帯が出来上がる。直後に解き放たれた猛吹雪も、カスカとアイネの周囲に影響を及ぼすことはできなかった。
「助かりまし、た」
「師匠の背を見て弟子は育つ、ってね。怠けることなら任せてほしい」
「……その、ロカジ、は?」
 あれ、と改めて周囲を見回せば、吹雪の通りすぎた場所の一角で、トリスを着たロカジがガタガタと震えていた。
「だから! 早く弟子のとこに逃げ込むべきだって!」
「うるせえ! 攻撃される前に潰せば解決だったろうがよ!」
「ええい、言う事聞けよ僕の服なんだからさぁ!」
 あ、ものすごくダメそう。
 そう察したアイネは、足止めのための一手を打つ。カスカ程極端ではないにしろ、彼も「怠けたいなぁ」という思いは抱えている。ならば、実は雪の女王だって、一押しすれば似たようなものなのでは?
 『Code-003』、アイネの唇から紡がれる催眠音声が、きぐるみピーノくんによって増幅されて広がる。それは、聞く者に心地良い酩酊感を与えるもの。本当は怠けたい気持ちがあるのなら、きっと効き目も大きいだろう。
 だが精神に働きかけてくるその音色に、雪の女王は意図を感じ取ったようで。
「フン、この私が、その程度の攻撃で手を緩めるとでも?」
「とか言いながら寝そべり始めているね……」
「まあ、ゆっくりしたいですよ、ね」
 意外と効いているじゃないか、というカスカの言葉にアイネが頷く。時間稼ぎにしかならないだろうが、今はそれが重要だ。
 このままやられるわけにはいかないと、ロカジもトリスも、十分に理解はしているはず。
「クソッ! ロカジてめぇ、オレを着るからには使いこなしてみせろよ!?」
「もちろんだよトリス。こうなったら一蓮托生さ」
 それゆえに、少々時間はかかったが、話はまとまったようだ。
 二人が共に戦うのは初めてではない、肩を並べるのとはまた違うが、その気になれば二人とも、協力する事でより力を発揮できるはずなのだ。
 内側と外側で手を結び、二人の反撃が今始まる。
「じゃあまずは強化用のクソ苦い丸薬とクソ苦い粉薬をクソ苦いドリンク剤で飲むからね!」
「オイそれ外側のオレだけ苦いヤツじゃねぇか!!」

「活躍始まったら起こしてもらってイイデスカー?」
「どうかな……私も寝てしまいそうなんだよね」
「でした、ら、僕が、いい感じのとこで、起こします、ね」
 そんな様子をのんびりと眺めながら、アイネとカスカは一応、揃って声援を上げた。
「わぁ、頑張れ、ロカトリスー」
「がんばれ、ロカトリスー」

 だいぶぐだついたが、この後なんやかんやあってちゃんと一太刀浴びせたので安心してほしい。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エンジ・カラカ
【エレルB】

ピピピピピーーーーーーーーノ!!!!
ピーノ、入ってもイイ?イイ?
入るねェ。
おぉ……ピーノの中はスゴイなァ!!!
ジッパーがある。ジッパー引っ張る?オッケー!

ピーノ、ピーノ
賢い君を使う?使う?
うんうん、使ってくれくれ。賢い君も喜ぶ喜ぶ。
アレはダレピーノ?
メトロピーノ?ヨシュカピーノ?

シンジュは泣く、泣いた。
あーあー、泣いたー。泣かせたー。
弱い者イジメはいけないいけない。
賢い君も言ってるうんうん。

ピーノ、ピーノ
賢い君、使える?使える?
アカイイトで足止めだ。
ミンナのピーノもピーノだなァ。

うんうん。いけー!
ピーノ!


ヨシュカ・グナイゼナウ
【エレルB】

ええ、ピーノさまの中に入って……!?
わ、背中にジッパーが。なんだか見てはいけないものを見てしまった様な?
あはは、みんなピーノさまになりました!ふふふ(ツボる)泡泡ピーノ!
はあい、ヨシュカピーノです(クスクス)

あ、敵さんも。うわあ。


2ピーノさま程足りませんが、その分この不思議な針でこう皆さま(ピーノ)をチクッと……
これでやる気も元気も倍増です!(当社比)ついでに怪我も治ります。神秘!

雅楽代さまの御涙に心囚われている隙に
雅楽代さまはメトロさまの!?(びっくり)
まあいいか!はい!お任せください!(ドーピング)(針)

雪を蹴り上げ紛れる様に
そちらは【残像】です、と【早業】で持って【串刺し】に


雅楽代・真珠
【エレルB】
ぴぃのになるのか…
ぴぃのか…
…お前たちは賑やかだね
ぴぃのになったくらいで燥ぐなんて
まだまだ幼い証拠だよ

…6体揃っていないぴぃのは駄目ぴぃの
何というか、いつにも増して僕のやる気が削がれる
物凄く面倒だけれど
水泡のオーラ防御を皆に掛けておいてあげようね
…もう横になってもいいかな

ごろん

目を閉じさせなければ良いのでしょう?
僕という可愛くも高貴な存在が宿れば
ぴぃのであろうとも傾国のぴぃのになる
誘惑され、瞬く事なく見ていたいと思うはずだ

そうしてぽろり、涙を零す
ぴぃのの涙だけど
お前の心を捕らえて逃さない

メトロは僕の下僕だけど
僕はメトロのものじゃないよ
か弱さは認めるけど
…聞いていないね

やっておしまい


メトロ・トリー
【エレルB】

ピーノくん!
またまたきみたちを助けにきたよ!

きゅぴーーーん!
ポーズを決めちゃうぼくは〜?!
そう正義のエレルレンぎゃは!ジッパー!?ジッパーついてるよ!ぎゃはサムい入れて入れて!

メトロinピーノ

わあいわあいみんなでお揃いピーノだあ
でもなんだか動きで誰だかわかっちゃうね?
みんなかわい〜かわいあわぶくぶくぶ…ぎゃ!チクチク?わーい元気モリモリだエ!エ!?

なんでぼくの真珠くんを泣かしてるの…?
こんなにかわいいのに……国傾けよ‥‥

ゆるさねェぞ!オラ!

やい!トランプども!整列だよ!
メトロピーノはむむむ!
すると殺戮トランプくんたちが登場?
首をとれ!首をとれ!
さあさ、世紀のショーをはじめよう!



●ピーノくんと一緒
「ピピピピピーーーーーーーーノ!!!!」
「ピーノくん! またまたきみたちを助けにきたよ!」
「あー、猟兵サン達じゃないデスカー」」
 転移してきたエンジ・カラカ(六月・f06959)とメトロ・トリー(時間ノイローゼ・f19399)を、ごろごろしながらピーノくん達が歓迎する。
「きゅぴーーーん! ポーズを決めちゃうぼくは~?! そう正義のエレルレン――」
 びゅお、と名乗りの途中で冷たい風が吹いて、一旦その口を閉じさせた。雪の女王の戦う此処は、既に極寒の地の様相を呈している。その間に、ヨシュカ・グナイゼナウ(明星・f10678)も彼等と挨拶を交わして。
「ピーノさま、ちょっと見ない内に大きくなられましたねえ」
「ええもう、オカゲサマデー」
「わ、背中にジッパーまでついて……」
「え、ジッパー!?」
 寒い、と閉口していたメトロが早速それに食いついた。もちろんエンジの方も同様に。
「ピーノ、入ってもイイ? イイ?」
「ぎゃはサムい入れて入れて!」
「ええ、ピーノさまの中に……!?」
 良いのかな、という躊躇よりも興味の方が勝ったようで、ヨシュカも含めた三人は、もそもそときぐるみの中に入っていく。
「ぴぃのになるのか……ぴぃのか……」
 嬉々として潜り込んで行った彼等を見ながら、雅楽代・真珠(水中花・f12752)はどうしたものかな、と額を押さえた。

「おぉ……ピーノの中はスゴイなァ!!!」
 きぐるみの中のふんわりとした感触に抱かれて、エンジが歓声を上げる。ひんやりとしているが、外の冷気はかなり緩和されているのか、不思議と寒くは感じない。
「あはは、みんなピーノさまになりました!」
「わあいわあいみんなでお揃いピーノだあ」
 きょろきょろと辺りを見回す雪だるまに、控えめに片手を上げる雪だるま、それからもう一つの雪だるまはその場で勢いよく飛び跳ねている。
「でもなんだか動きで誰だかわかっちゃうね?」
「ウンウン、そっちがメトロピーノで……」
「はあい、こちらはヨシュカピーノです」
「アア、それじゃこのシンデルピーノは?」
「え、誰か死んでおられます……?」
 そうして向けられた、エンジとヨシュカの視線の先には、倒れたままぴくりとも動かない雪だるまがあった。
「……お前たちは賑やかだね。ぴぃのになったくらいで燥ぐなんて、まだまだ幼い証拠だよ」
「う、雅楽代さま」
「シンジュピーノだったカ……」
 顔を上げて、口を開いてはみたものの、そこから立ち上がる気はないらしい。
「はあ……何もかもがいつにも増して面倒くさい……駄目な時のぴぃの達は、いつもこうなの……?」
「そこまでではナイと思いマスヨー」
 やる気が限りなくゼロに近い状態の真珠を見下ろして、ヨシュカが顎に手をやり、対策を考える。今回はきぐるみで戦うという都合上、いつもの人形達の手は借りられないだろう。
「いっそ雅楽代さまにはおやすみいただくとか」
「真珠くんを置いてくなんてとんでもない!」
 メトロの訴えに、ですよね、と頷いて。
「では、やはり数を揃えるべきでしょうか。あと2ピーノさま程足りませんが……」
「アア……もう一人居た、居タ。アレはダレピーノ?」
「ええと、あれは……」
 ちょっと悪い雰囲気の雪だるまが、こちらに向かってのしのしと歩いてくる。見た目の差はあまり分からないが、迸る冷気を纏わせたその姿は、多分。
「……敵さんですね」
 うわあ、という表情を浮かべて、ヨシュカは慌てて武器を手に取った。

「雅楽代さま、雅楽代さま。敵が来ています」
「そう……がんばっておいで」
「わ~い、あわぶくぶくぶく……」
 ひらひらと真珠が手を振るのに合わせて、防御用の水泡状の膜が一同を包む。以上、完全に仕事は果たした、とかそんな雰囲気を出しはじめた彼に、ヨシュカは手にした針を向けて。
「失礼します、少しチクッとしますが……」
 『天泣』、その針で経絡を突かれれば、やる気も元気も当社比倍増するはず。ピーノくんを着た事で感じるちょっと怠けたい気分も、これで解消できるだろう。
「ぎゃ! チクチク? わーい元気モリモリだエ! エ!?」
「なるほど……ヨシュカはいい子だね」
 するとメトロはさらなるやる気に満ち溢れて、真珠はその場で寝返りを打った。
「あれ……?」
 効果の程にはどうやら個人差があるらしい。一向に立ち上がる気配のないまま、真珠はそっと目元を押さえる。
「はあ……雪の女王だったかな、僕はこんなにも怠けたいというのに、何故おまえはこうも邪魔をするのか……」
「攻め込んで来てるのはお前達だろうに……」
 遭遇直後から飛び出た訴えに、雪の女王入りのピーノくんが半眼になる。しかしその眼は、そのまま真珠に釘付けになった。
 どう見ても外見は雪だるまなのだが、その眼から零れるのは正に『人魚の涙』。白皙の頬というか雪だるまの表面を伝う宝石の珠に、瞬きすらも忘れて、見入る――。
「あーあー、泣いたー。泣かせたー」
「ハア? なんでぼくの真珠くんを泣かしてるの……?」
 エンジが糾弾する横で、メトロは何やら怒りに火が点いたようで。
「えっ雅楽代さまはメトロさまの!?」
「メトロは僕の下僕だけど、僕はメトロのものじゃないよ」
 ヨシュカと真珠のやりとりなど耳に入っていないらしく、メトロはむむむとトランプを取り出す。
「やい! トランプども! 整列だよ!」
 バラバラと散った殺戮トランプくん達は、それぞれ武器を手に立ち上がり、メトロの命で動き出した。
「首をとれ! 首をとれ! さあさ、世紀のショーをはじめよう!」
「弱い者イジメはいけないいけない。賢い君も言ってる、うんうん」
 進軍を始めたトランプ達に続いて、赤い糸を取り出したエンジも雪の女王へと向かう。
 そうして彼等を一歩後ろで見送りながら、目元を拭った雪だるまが口を開いた。
「何だか当たり屋みたいにナッテマスネー」
 そういうの聞いた事アリマスヨー、というきぐるみの言葉に、真珠は素知らぬ顔で目を瞑った。
「僕は知らない、エンジとメトロが勝手にやっているだけだよ」
「ワッ、そのセリフ黒幕みたいデスヨ」
 そんなやりとりを聞いて、にこにことヨシュカが笑っているのに気付いて、真珠はため息を一つ。そして。
「やっておしまい」
「はい! お任せください!」
 自分にも針を打ったヨシュカピーノが、元気よく返事をして飛び出していった。

「さあ、ショータイムだよ! 全軍、突撃ー!」
 真珠に目を奪われていたことで、女王の反応が遅れている。その間に接近を果たしたメトロの殺戮トランプ達が、雪の女王ピーノくんへと殺到するが。
「まさか、束になれば勝てるとでも?」
 緩く振った指に応じて吹雪が巻き起こされ、攻撃を加えたトランプ達が次々と吹き散らされる。
「アァー、鬱陶しい風! 集合だ集合!!」
 密集体型で彼等がそれを凌ぎにかかる間に、風を避けて回り込んだエンジが、雪の女王へと迫り行く。
「ピーノ、ピーノ。賢い君、使える? 使える?」
「僕あやとり苦手なんデスヨネー」
「あやとりじゃない……ンー、仕方ないなァ」
 飽くまできぐるみの中の人に丸投げする構えのピーノくんに嘆息しつつ、エンジは自らの手できぐるみの腕を操る。浮かび上がった赤い糸、『賢い君』は風を切り裂くようにして、雪の女王入りの雪だるまを絡め取った。
 相手の腕を拘束することで、冷気を発生させる前動作を潰して。雪を蹴り上げ走る、もう一人のピーノくんに後を委ねた。
 赤い糸を振り切った雪の女王が迎撃のためにノコギリを振るう、が。
「そちらは残像です」
 雪に紛れて裏を取ったヨシュカが、女王の身を貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

九之矢・透
ピーノ君が大きく……ってなると何か思い出して一瞬身構えちゃうけど、着ぐるみなのか
早速入ってみよう
ええと、ちょっと失礼しますよー、っと

気のせいかな
何処となく甘いアイスの匂いがする様な

アンタが雪の女王……だよな?
ピーノ君のお蔭で寒さは大分マシだけど
長期戦は不利になりそうだ
速攻で仕掛けよう

ようし、いくぜ!『大鷲』!
着ぐるみピーノ君と飛ぼう

それでもって、ピーノ君は凍える吐息を女王の顔辺りに頼む
これは目眩まし、視界が白んだり目を閉じてくれれば、それで
その間に死角に回り込んでフルスピードで突進、ノコギリ攻撃

……うう、外側はピーノ君だからつい心配になっちゃうな

それにアタシ、疲れマシター
……はっ、今のは一体


泉宮・瑠碧
戦場の筈、なのですが…
皆、きぐるみ…
可愛い世界、です

ピーノくん達は、初めまして
…君達を着る事を、お願いしたいのですが…
良いでしょうか
…女王が纏うピーノくんも、おかえりが出来る様に

受けてくれた子へありがとうと、一緒に頑張りましょうね
擽ったくない様に、訊きながら
背中をマッサージする様にしてチャックを開け、きぐるみへ
…中に入っている事も、擽ったいのでしょうか…
大丈夫なら、一回転
…ちょっと楽しい、です

女王の凍結は氷の精霊へ、私の周囲から冷気が退く様に願い
ピーノくん効果と共に耐えます

私は子守唄を唄い、デバイスで風の精霊を纏って永遠揺篭
女王にも、少し怠けたい気持ちがあれば、休憩しましょう?
…おやすみなさい


行商人・アブゥ

大きなリュックをおぶった不思議な生物はいつの間にかそこにいた

「あぶぅ?」
なんだか色々なものが小さく見えることに気づいたようだ

「ぶぅ〜!」
なんということだ!
リュックに大きなチャックが出現しているではないか!ついでに、ぬいぐるみのようにリュックと体がくっついてしまっている!不便だ!

なんて、びっくりすることもあったかもしれないが、
おっきくなってもアブゥはアブゥだ

緊張感のない生物は
ピーノくんと一緒にごきげんに踊ってみたり
戦ってるみんなのもとに、いい感じに使えそうなアイテム(武器)を降らせてみたり
そんなことをしている

◆鳴き声一覧
あぶぅ
ふーるー
ゆぁ
(※鳴き声以外の言葉は喋りません)

◆他の方との連携希望



●おやすみなさい
 転送された見知らぬ場所で、行商人・アブゥ(ものしらず・f22090)は周囲をきょろきょろと見回す。アリスラビリンスらしいメルヘンな光景が広がっているが、世界は白く、雪と氷が辺りを包んでいる。そんな中、黒い防寒着を着た雪だるまみたいな造形の愉快な仲間が数体、こちらに歩いて来ていた。
「アレ、猟兵さんデスカ?」
「イラッシャーイ、お元気デスカー?」
「……あぶぅ?」
 短い手をゆるゆる振っている彼等の様子に、アブゥは首を傾げる。随分大きな愉快な仲間だ、周りの木々が小さく見える。……あれ、でも、何だか自分も、いつもより大きくなっているような。とりあえずリュックを下ろそうとしたアブゥは、そこでさらなる異変に気付く。リュックと体の境目が無くなっており、外せない!
 ここは不思議の国、『大きな愉快な仲間のいるところ』。同じく愉快な仲間であるアブゥの身体も、その影響は避けられない。しかも彼の場合は、リュックと一体化する形できぐるみになってしまったようだ。
「ぶぅ~!」
「ははあ、大変そうデスネー」
 このままだとすごい不便なので、どうにかしようとわたわたしているアブゥの姿に、雪だるま……ピーノくん達が顔を見合わせる。
「ナニ言ってるか分かる?」
「いやー。全然ワカンナイデスネー」
「とりあえずアイス食べマス?」
 はい、と差し出されたカラフルなアイスクリームをしばし見つめてから、アブゥはそれをフードの奥に吸い込んだ。
 しゅごっ。

「ここが戦場の筈、なのですが……」
 こちらも辺りを見回して、泉宮・瑠碧(月白・f04280)が呟く。目に入るのは、戦場という言葉に似つかわしくない、きぐるみと化した愉快な仲間達の姿。
「可愛い世界、です」
 零れた言葉を耳にしたか定かでないが、九之矢・透(赤鼠・f02203)も概ね似た感想を抱いていた。
「まあ、ピーノ君が巨大化してると、ちょっと身構えちゃうけどな……」
 以前巨大化したピーノくんと戦った経験が思い出されてしまうが、あの時とはまた様子が違う。
「猟兵さん達、コンニチハー」
「はい、ピーノくん達は、初めまして」
「ふーるー」
「えっ、ふーるー、です……」
 早速あいさつを交わしていたところで、瑠碧が驚きの声を上げる。よく見るまでもないのだが、ごろごろしているピーノくん達の中に、大きくなったアブゥが混ざっていた。「なんで?」という表情を浮かべた瑠碧に、透が「知り合い?」という目を向けるが。
「ゆぁ!」
 その辺りの流れとは別のところで生きている彼は、背中のリュックを器用に探って、取り出したアイスを二人に手渡した。
「ありがとう……」
「ございます?」
「あぶ」
「あ、これ知ってる。おんなじようなのをUDCアースで見たな」
 もらったそれ――小豆の入ったバーアイスを手に、透が言う。でも、この寒いのにアイスなの?
 色々と疑問は浮かぶが、その辺はひとまず置いて、瑠碧は話を進める事にする。
「……君達を着る事を、お願いしたいのですが……良いでしょうか?」
「そうそう、手を貸してくれよ、ピーノくん」
「えぇー」
 ここで寝ていたいなぁ、という反応が返ってくるが、瑠碧はさらに言葉を重ねて。
「……女王が纏うピーノくんも、解放してあげたいんです……」
「ンー、猟兵サン達がそう言うならガンバリマスヨー」
 ゆるい調子ながら了解は得られた。二人は早速、その背を開けて。
「ええと、ちょっと失礼しますよー、っと」
「くすぐったくないですか? 大丈夫?」
 それぞれに、ピーノくんを身に着けていった。ひんやりしてふかふかする独特の感覚。けれど、中に居ると力がみなぎるのも確かに感じられる。
「何処となく甘いアイスの匂いがする様な……」
「アイス食べ過ぎマシタかネー」
 そういうもの? と首を傾げる透の後ろで、瑠碧は動きを確かめるようにその場で一回転。氷に写った自分の姿――今は手足の短い雪だるまになったそれに、少し微笑んだ。
「受け入れてくれてありがとう、一緒に頑張りましょうね」
「ハーイ!」

 長期戦は不利だと見越した透は、ユーベルコードで翼を広げて空へと飛び立つ。もちろん、彼女の着たきぐるみピーノくんも一緒だ。
「ワースゴーイ! ハヤーイ!!」
「一気に仕掛けるからな!」
 ふ、と彼女の吐息に合わせてピーノくんが冷たい風を一吹き。弾丸のようになった冷気を、こちらを睨む雪の女王入りピーノくんへと放つ。同時に敵の足元を狙った瑠碧が相手の移動を制限し、先の吐息を目くらましにして、透は勢い良く急降下していった。抜き放ったノコギリによる一太刀は、しかし雪の女王の持つそれに防がれる。
 ぎざぎざの刃が噛み合い、軋みを上げる中、一撃離脱の構えで透は再度空へ。そんな攻防がいくつか続いたところで。
「皆さんガンバッテクダサーイ!」
「あぶぅー!」
「ええい、やかましい!」
 雪の女王が広範囲を包み込む極寒の風を解き放った。
「アーーーーーーッ」
「ぶぅ~!?」
「ああ、あちらにも被害が……!?」
 瑠碧は氷の精霊に呼び掛けて、自らや共闘する透は勿論、風に押し負けて転がるギャラリー達を襲う冷気も和らぐよう努める。きぐるみによる防御とピーノくん自体の持つ冷気耐性で、凍結を阻止する猟兵達。寒波を乗り切ったところで、好機とばかりに透が女王へと反撃に掛かる。
 しかし、それを察知していた雪の女王の一振りによって、敵のUCで強度の落ちていたノコギリが、半ばで砕かれた。
「そんな――!」
 得物を失った彼女は、戦闘機動を止めないまでも、どうすべきかと頭を悩ませる。すると、空いた手に持ったままだった、小豆のアイスが目に入り――。

 一方の地上、極寒の風を凌ぎ切った瑠碧は、反撃のために口を開いた。彼女が選んだのは、ノコギリでも冷気でもなく、自身の歌声だ。
 『永遠揺篭』、彼女の祈りを込めた子守唄が、きぐるみピーノくんによって増幅され、響き始める。
「さあ、休憩しましょう?」
 歌声と共に広がる眠りの粉は、安眠を望む気持ちを抱いた相手を、すぐさま眠りに落すだろう。実際に、怠け者のピーノくん達と、素直なアブゥは子守唄のはじまりと共に瞬殺されていた。
「まさか、そんなものでこの私の動きを止められると――んん?」
 言いながら、雪の女王入りピーノくんが頭をふらつかせる。ほんの少しとは言え、雪の女王も怠け者のピーノくんに影響されていたものらしい。
「お疲れでしょう、どうぞ、おやすみなさい」
「これは……!」
 チャンスだ、と空中でそれを察し、透が手持ちのバーアイスへと吐息を吹きかける。――先程、戦いの中で冷気の影響を受け、アブゥから受け取った『プレゼント』は少しだけ大きくなっていた。ならば、と直接吹き付けた氷を纏って、小豆入りのバーアイスは瞬く間に巨大な板と化す。
 このアイス異様に固いんだよな、と初めて食べた日のことを思い出しながら、透はそれを思い切り振り回す。巨大な小豆アイスでぶん殴られた、雪の女王入りのピーノくんは、吹き飛ばされてごろごろと転がっていった。
「やった!? けど……」
 翼を畳んで舞い降りた透も、気が抜けた途端に眠気に襲われたようで。
「あ、あら?」
「つかれマシター……?」
 戸惑う瑠碧の前でふらふらと倒れた彼女の頭を――。
「ぶ」
 眠そうにしながら差し出された、アブゥの枕が受け止めた。
 それでは、おやすみなさい。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​


●決着
 雪の中の一角に、ばったりと雪だるまが倒れている。この国の特性上、外身のきぐるみとなった愉快な仲間に負傷はないが、その姿は何だかぼろぼろになっているように見えた。
 しばらく静かにしていた雪だるまは、「うう、私だって動きたくなかったのに」と恨めしそうな呻き声が最後に呟く。猟兵達の攻勢により、力尽きた雪の女王は、こうして骸の海へと戻っていった。

「……ワー、身体が自由に動きマスヨー」
 中身が空になったためだろう、解放されたピーノくんは身体の調子を確かめながら、立ち上がる。そうして、猟兵達の方に大きく手を振った。
「猟兵サン達、アリガトーゴザイマシター」
 戦場の一角にて、雪の女王を退けた猟兵達は、次なる領域、そして次なる戦いへと向かっていく。

最終結果:成功

完成日:2020年08月11日


挿絵イラスト