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迷宮災厄戦⑧〜哀哭のエトワール

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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●哀哭のエトワール
「アリスラビリンスでの大きな戦いが始まったわ。みんな、お願い、力を貸して!」
 キトリ・フローエ(星導・f02354)はそう、猟兵たちへと呼びかける。
 アリスラビリンスのオブリビオン・フォーミュラである『オウガ・オリジン』と、その力の殆どを奪った『猟書家』と名乗る者たち。猟書家たちはオウガ・オリジンから奪った現実改変ユーベルコードによって『他世界の侵略』を目論んでいるのだという。
「そこにあたしたちも加わって、状況は結構複雑だけれど……世界を救うために戦うことに変わりはないわ。それも、アリスラビリンスだけじゃなく、他のいろんな世界も。だから、少しずつ道を切り拓いていきましょう」
 まず猟兵たちに向かってほしいのは、覗いた星空を奪う望遠鏡のある国――美しい星空が広がる不思議の国だとキトリは言った。
「その国には満天の星なんて言葉じゃ言い表せないくらい、きらきらしたお星さまが輝く空がずうっと広がっているわ。地上には平原の真ん中に大きな天文台があって、その天文台に、オウガの群れがいるのよ」
 天文台の最上階に陣取ったオウガたちは望遠鏡で辺り一帯を見張っており、見つかれば一方的に遠距離攻撃を受けてしまう。だが、望遠鏡に見つからないよう接敵することが出来れば自ずと有利に戦えるだろうとキトリは続ける。
 例えば、何らかの方法で姿を隠したり、別の何かに変身したり。あるいは望遠鏡の眼が追いつかないような速さで移動するといった手なども採れるだろう。やり方はいくらでもあるはずだ。
 どのように天文台へ辿り着くかはあなたたち次第よと信頼を籠めた声で告げてから、キトリはほんの少しだけ目を伏せるようにして続けた。
「そこにいるオウガは、星になれなかった少女たち。本物の星をあげることは出来ないけれど、どうかあなたたちの手で在るべき場所へ還してあげて」
 キトリはそう、願うように結ぶと、グリモアの光を灯らせるのだった。


小鳥遊彩羽
 ご覧くださいましてありがとうございます、小鳥遊彩羽です。
 今回は『アリスラビリンス』における『迷宮災厄戦』のシナリオをお届け致します。

●プレイングボーナス
『望遠鏡に発見されない工夫をする』
 舞台は美しい星空が広がる不思議の国です。
 オウガは高い塔のような天文台の最上階に陣取り、猟兵達を望遠鏡で発見し、一方的に遠距離攻撃を浴びせてきます(接近技も、望遠鏡を覗いている間はまるで敵が目の前にいるかのように使うことができます)。
 望遠鏡に見つからないよう接敵できれば、有利に戦えるでしょう。

●その他の補足など
 ご一緒される方がいらっしゃる場合は【お相手の名前(ニックネーム可)とID】もしくは【グループ名】をご記載下さい。
 プレイング受付は公開時より。受付期間のご案内はマスターページにてさせて頂きますので、ご確認下さい。
 状況により、採用人数が少数となる場合があります。採用は先着順ではありませんが、内容に問題がなくともお返しする可能性がありますので、予めご了承の上でのご参加をお願い致します。

 以上となります。どうぞ宜しくお願い致します。
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第1章 集団戦 『星屑のわたし達』

POW   :    パ・ド・ドゥをもう一度
【ソロダンスを披露する】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
SPD   :    我らがためのブーケ
いま戦っている対象に有効な【毒を潜ませた美しい花束】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    そして、わたし達は星になる
【星のような煌めきを纏う姿】に変身し、武器「【白銀のナイフ】」の威力増強と、【魔法のトウ・シューズ】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

須藤・莉亜
「綺麗なとこだねぇ…。星見酒にちょうど良さそう。」
さて、敵さんはあそこか。

先ずはぐびっと腐蝕竜さんの血を飲んで、竜血摂取のUCを発動。竜人モードのスピードを活かして接近してみようかな。
眷属のMorteに周囲に溶け込める色合いの外套になって貰い、それを着て一気に走り抜ける。更に周囲にArgentaを展開して、敵さんらを撹乱するのも忘れずに。
見つかっちゃったら、飛んでるArgentaを足場にして、空を駆けることで最短距離で近づく事にしよう。多少の傷はすぐ治るしね。

上手いこと接近できたら二振りの大鎌で攻撃。もちろん、血の味見もしていくよ。



 見上げれば果てのない空に、散りばめられた無限の星たち。
「綺麗なとこだねぇ……星見酒にちょうど良さそう」
 のんびりと零しつつ、須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は、彼方に聳える天文台へと視線を移す。
「……さて、敵さんはあそこか」
 敵は今まさに、覗いた星空を奪うという望遠鏡のレンズを通してこちらの姿を探しているはずだ。
 己の血を分け与えた特別な眷属――ヴァンパイアバットのMorteに頼み、周囲の景色に上手く溶け込める色合いの外套を纏ってこそいるが、これだけでは心許ないだろう。
 望遠鏡の目を掻い潜り、戦場へ至る方法。
 莉亜が考えたそれは、至ってシンプルなものだった。
「要は、見つかる前に近づいちゃえばいいんだよね」
 ひとつ頷くと、莉亜は眷属である腐蝕竜の血をぐいっと飲み干した。
 何度飲んでも慣れない不味さに僅かに眉を顰めている間に、莉亜の身体は超速再生と毒無効の能力を持つ竜人のそれへと変貌を遂げる。
 そうして、莉亜はとん、と軽く地を蹴った。
 竜の血を得た莉亜はさながら疾風の如く、凄まじいスピードで地を駆けていく。
 同時に無数の銀槍を展開させれば、遥かなる高みから見下ろす少女たちはすぐにレンズで槍を捉えたらしい。
 地上へと投げ込まれる幾つものブーケが、槍とぶつかって勢いよく爆ぜる。
 綻ぶ花弁の隙間を縫うように踊る銀槍は、天上の星の光を受けてきらきらと輝いて。
 銀槍による撹乱は上手く行ったようで、少女たちのブーケが自身に及ぶよりも早く、莉亜は天文台の麓へと辿り着いていた。
 銀槍の群れに翻弄されているらしい少女たちは、まだ莉亜の存在を認識していない。
「どうせなら、このまま行っちゃおうかなぁ」
 正面から突入するよりはこっちのほうが早いだろうと、莉亜はそのまま、周囲を飛び交う銀槍を足掛かりにして飛び上がった。
 とん、とんと軽やかに、自在に飛び回る槍を足場に空を駆け上がっていく莉亜。
 その存在に星屑の少女たちが気づいた時には、既に遅く。
「お邪魔しまーす」
 敵陣に乗り込んだとは思えないほどに暢気な響きを帯びた声で告げるや否や、莉亜は白と黒、二振りの大鎌を振り抜いていた。
 敢え無く斬られた少女のひとりがその場に崩れ落ちる。血飲み子の白き鎌刃を通して得た血は、どこか甘酸っぱくもほのかな苦味を含む、そんな複雑な味をしているように感じられた。
 少女たちがどのような想いを抱いてオウガとなったのかは莉亜にはわからない。
 知ったところで、莉亜が取る行動は一つしかないことに変わりはないけれど。
 白銀のナイフを手に踊りかかってくる少女たちを次々に斬り伏せながら、莉亜は心ゆくまでその血を堪能するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラフィ・シザー
走るのに自信はあるから【ダッシュ】で天文台まで向かおう!
それに星空があるって事は暗いはずだから黒い服の俺は見つかりにくいと思うんだ。
ふふ、俺を見つけられるかな?

天文台に着いたら踊り子達と勝負だ。
星屑のわたし達…あぁ、なるほどエトワールにはなれなかったわけだ!【挑発】
ハハッ、ダンスなら俺も得意だぜ。
お前達の攻撃くらいなら踊る【ダンス】ように避けられる。
さぁ、俺の鋏たちと一緒に踊るといい。
UC【Dancing Scissors】

花束なんて本当は上げるよりたくさんもらいたかったろうにな。
星になろうとして砕け散った星屑達。



 戦いの舞台である天文台のシルエットを遠目に捉えた瞬間、ラフィ・シザー(【鋏ウサギ】・f19461)は軽やかに駆け出していた。
 風に揺れる黒い兎耳。時計ウサギのラフィは、走ることにはそれなりに自信がある。
 それに、無数の星が瞬く空は吸い込まれてしまいそうなほどにまばゆいが、その光のすべてが地上に届いているわけではない。
 辺りを覆う暗闇は、ラフィの纏う黒い執事服によく馴染んでいた。
「ふふ、俺を見つけられるかな?」
 地上の闇に紛れ、ラフィは天文台を目指し駆けていく。
 あと半分くらいの距離まで近づいたその時、頂上から何かが投げ込まれる気配を感じ、ラフィは踏み込む足に力を込めた。
 たんっ、と大きくジャンプをした直後、ラフィの背後に音もなく何かが落ちる。
 それは、濃密な毒の気配を孕む花束。言うまでもなく、それを投げ入れたのは天文台にいる少女たちだろう。
 見つかったのだとわかったが、ラフィは構わず突っ切り――天文台の扉を開け、頂上まで続く螺旋階段を一気に駆け上がる。
「やあ、御機嫌よう。早速勝負といこうじゃないか」
 悠然と笑みを湛えて告げるラフィを出迎えるのは、ずらりと並んだバレリーナの少女たち。
 星屑のわたし達――そう名付けられた少女らを前に、ラフィはにっと口の端を釣り上げた。
「……あぁ、なるほどエトワールにはなれなかったわけだ!」
「アナタに、何がわかるっていうの……!?」
 挑発めいたラフィの言葉に、少女たちの間に漣のように広がっていく感情――どこまでも暗く澱んだそれを少女たちは毒を潜ませた美しい花束に変えて、ラフィ目掛けて次々に投げつけてくる。
「ハハッ、ダンスなら俺も得意だぜ。さぁ、俺の鋏たちと一緒に踊るといい」
 飛び交う花束を、そして閃く白銀のナイフを踊るように避けながら、一瞬の機を見出したラフィはすかさず己が得物である幾つもの鋏を宙に踊らせた。
 ――踊れ! 踊れ! 踊れ!
 ラフィの思うままに踊る鋏が、少女たちを次々に刺し貫き、あるいは断ち切って、その身を骸の海へと還していく。
「お前たちのダンス、思ったほど悪くはないぜ」
 誰に拾われることもなく床に落ちたままの花束に、鋏の刃が突き立てられる。
 毒を撒き散らすことなく消えたそれを見下ろしながら、ラフィはぽつりと呟いた。
「花束なんて、本当はあげるよりたくさんもらいたかったろうにな」
 星になろうとして砕け散った星屑たち。
 その散り様がどんな星よりも美しく煌めいたように見えたのは、何という皮肉だろうか。
 ラフィはすぐに泳がせた思考を引き戻すと、まだ残る少女たちへと鋏を踊らせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リリスフィア・スターライト
星の狙撃手か・・・
天文台は星空を見る為以外に使わせたくはないかな
他の猟兵達とも積極的に連携して行動するね
望遠鏡に見つからないよう無色変換で
自分と装備を透明化して気付かれないよう慎重に接近するよ
望遠鏡が向けられていない隙をついて移動するようにかな
無事に接近出来たら剣でオウガを直接攻撃して撃破するよ
仲間を攻撃しているオウガを優先して狙うね
もし見つかって私自身が狙われてしまうようなら
防御に専念して注意を引きつけ仲間が
行動しやすくなるように立ち回るよ

「星に代わってあるべき場所に還してあげるよ!」
「目に見えないものは星の数ほど存在するんだよ」



「星の狙撃手か……」
 星を見るための場所であるはずの天文台から、星を落とそうとしているかのようなオウガの少女たち。
 その姿を思い、リリスフィア・スターライト(プリズムジョーカー・f02074)は静かに首を横に振った。
「天文台は星空を見る為以外に使わせたくはないかな。だから、お引き取り願うよ」
 リリスフィアは望遠鏡の『眼』から逃れるべく自身と装備を透明化させると、気づかれぬよう慎重に天文台へと接近していく。
 幸いにして、望遠鏡のレンズがリリスフィアへ向けられることはなく。無事に内部への侵入を果たしたリリスフィアは、足音をなるべく立てないようにしながら頂上へと続く階段を一気に駆け上がった。
 姿を消し続けたことによる疲労は少なからずあるが、戦えぬほどではない。
「星に代わってあるべき場所に還してあげるよ!」
 最上階へ辿り着いた直後、透明化を解除し全ての色彩を取り戻したリリスフィアは、剣を抜き放ちながら高らかにそう宣言した。
「――どうして……!? 誰も、いなかったのに!」
「目に見えないものは星の数ほど存在するんだよ!」
 望遠鏡には映らなかった敵がいきなり目の前に現れたことに、明らかに狼狽える星屑の少女たち。
 その隙を逃さず、リリスフィアは果敢に斬り掛かっていく。
 一人、二人と倒したところで、少女たちがそれぞれに星のような煌めきを纏う姿に変じてリリスフィアへと踊りかかってきた。
「ほら、こっちだよ!」
 リリスフィアは敢えて少女たちを引きつけるように、共に戦う同胞たちと距離を置きながら立ち回る。
 魔法のトウ・シューズで軽やかに空を舞いながら、輝きを増した白銀のナイフを振るう少女たち。
 その姿はまさしく星のようで。けれど、彼女たちは星になることが出来なかったのだとリリスフィアは理解した。
 ――本当の意味で、彼女たちを救うことは出来ないけれど。
 それでも、悲しみの連鎖を断ち切るために、リリスフィアは少女たちを在るべき場所へと還していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アストラ・テレスコープ
望遠鏡は、星空を奪うためじゃなくて星空を観るためにあるんだよ?

星のような煌めきを纏うなら、こっちも
「星間尋矢(スターダストストライク)」でキラキラと「弾幕」を張っちゃおう。
本体まで届かなくても、キラキラが邪魔して望遠鏡を覗いてもまともに目標を捉えられないよね?

その間にロケットを噴射して私の射程距離まで近づいて、撃ち抜く!!



「望遠鏡は、星空を奪うためじゃなくて星空を観るためにあるんだよ」
 アストラ・テレスコープ(夢望む天体望遠鏡・f27241)は天体望遠鏡のヤドリガミだ。
 ゆえに、アストラは誰よりもその在り方を理解していた。
 覗いた星空を奪うという、望遠鏡のある国。
 誰かが手に入れたいと願ってもおかしくないほどの美しい無数の煌めきが、天上の空に広がっている。
 けれど、こぼれる星のひとかけらだって奪わせたりなどしないという確かな決意を胸に、アストラは高らかに声を上げた。
「星のような煌めきを纏うなら、こっちもたくさんの星を見せてあげる。――降り注げっ!」
 アストラの力強い声が響くと同時、小さな星屑のような矢弾が一斉に飛び出した。
 星間尋矢(スターダストストライク)――アストラの力により放たれたきらきらと輝く無数の光が、天文台を囲むように複雑な幾何学模様を描き出す。
 張り巡らされた星矢の弾幕に、星屑の少女たちが早速星のような煌めきを纏い、白銀のナイフを閃かせる様子が窺えた。
 流れ星のように注がれる星矢と白銀のナイフがぶつかり合う光景は、まるで、新しい星が幾つも瞬いているかのよう。
 弾幕が少女たちを引き付けてくれているのを確かめたアストラは、腰に巻いたベルトにくっついている四つのロケットを噴射させ、勢いよく空へ舞い上がった。
「このキラキラがあれば、望遠鏡を覗いてもまともに私を捉えられないよね?」
 眩く煌めく星の弾幕に紛れながら一気に天文台の頂上まで高度を上げれば、望遠鏡でアストラの姿を探していた少女と目が合った。
 少女はすぐに白銀のナイフを掲げ星を纏ったが、――そこは、既にアストラの射程圏内。
「残念! 私のほうが速かったみたいだねっ!」
 アストラはにっこりと笑みを深めると、左腕のバングルに装着されたミニロケットで少女を撃ち抜いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユヌ・パ
気付かれるなと言われると
禁を破りたくなるのがヒトの性よね

相棒(取り憑いたオウガ)を一時的に切り離し
狼の姿になるよう命じて、塔から離れた位置で派手に暴れさせるわ
攻撃はせず、回避のみ行うよう厳命
うまくできたら、2ポンドの肉をくれてやるわ

成功すれば、ダンスどころじゃなくなって
敵UCの発動も妨害できるかしら


相棒が暴れている隙に
あたしは身を隠しながら単独で塔へ接近
髪の毛を長い手の形にして外壁を登る
複数本の手を作って、空いた手は防御や回避に使用

死角に迫れたなら
髪の手で目隠しするよう、少女達にさよならしましょう

こんなところで瞬いても、だれにも見えやしない
あなたたちは、今度こそ舞台の下で輝くの
海にお還りなさい



「気付かれるなと言われると、禁を破りたくなるのがヒトの性よね」
 彼方の展望台を見つめ、ユヌ・パ(残映・f28086)は何とはなしにぽつりと零すと、己の身を駆け巡る炎へ呼びかけた。
「あなたは狼になって、思う存分暴れなさい。ただし、攻撃はせずに回避のみを行うこと。上手く出来たら、2ポンドの肉をくれてやるわ」
 ユヌの命じる声に、彼女に取り憑いた相棒のオウガが、青白い炎を激しく燃え上がらせながら狼の姿を取って飛び出した。
 オウガはそのまま、天文台から離れた位置へと駆けて――そうして、自らの存在を見せつけるかのように高らかに声を上げた。
 すると、天文台の頂上で幾つもの光が瞬くのが見えた。
 おそらくは、早速オウガの存在に気づいた星屑の少女たちが、得物である白銀のナイフを閃かせたのだろう。
 オウガは素早く地を駆け回りながら時折威嚇するように空へと吠えて、ダンスを披露する間すら与えまいとするかのように少女たちを翻弄する。
「やればできるじゃない」
 届かぬ声は素っ気なく。相棒が時間を稼いでいる隙に、ユヌは夜闇に身を隠しながら単独で天文台へと向かった。
 オウガが少女たちを引き付けてくれているおかげで、こちらへの警戒は手薄なよう。
 膝まで伸びた髪を何本もの長い手の形に変えて、ユヌは外壁を登ってゆく。
 頂上に近づくにつれ、より激しさを増して聞こえてくる剣戟の音は、先に侵入を果たした同胞たちが奏でているものだ。
 だが、不思議と攻撃の手が及ばないのは、その余裕すらないのか、あるいは、――少女たちには見えていないのか。
 程なくして、開いた窓から天文台の頂上へ降り立ったユヌは、完全に少女たちの死角を取ることになった。
「っ、誰か……!」
「遅いわ」
 ユヌが目の前に現れて初めてその存在に気づいたらしい少女が声を荒らげる。
 だが、それよりも早くユヌは髪の手を踊らせていた。
 やはり、望遠鏡のレンズは遠くを見渡すことは出来ても、天文台そのものを見張ることは出来ていなかったのだろう。
 抱き締めるように少女のしなやかな身体を絡め取り、目隠しをするように顔を覆うと、ユヌはそのままひといきに霊力を注ぎ、『さよなら』を告げる。
 声を上げる間もなく崩れ落ちた少女は、星屑のような煌めきを残して消え去った。
「こんなところで瞬いても、だれにも見えやしない」
 少女たちの物語は、とうの昔に終わりを迎えている。
 誰にも知られることもなく、星になれなかった少女たち。
 それでも星になることを願い続けてオウガと成り果てた少女たちへ、ユヌは長く美しい髪を再び編み上げながら静かに告げた。
「あなたたちは、今度こそ舞台の下で輝くの。……海にお還りなさい」

大成功 🔵​🔵​🔵​

泉宮・瑠碧
星に、なれなかった…
スターとか、そういう意味も
あったりするのでしょうか…

天文台に向かう途中では
土や氷の柱を点在させて作り
人を模した囮や、柱の影に隠れたりして
見ようとしている視線の気配を第六感で察し
望遠鏡の視界外を意識しながら素早く進みます

天文台へ着けば
足音を立てない様に最上階へ

被弾へは第六感に加えて
視界内による見切りも併用します

私は静穏帰向で祈ります
彼女達が星になれますよう…
煌めきを纏う姿は、更に輝く様に
トウ・シューズは進んだ後に光の軌跡を描き
白銀のナイフも光を弾いて
頭上からはスポットライトで
一人一人が本物の星の様に、主役の様に

核を浄化して、彼女達が望んだ幸せな夢の中へ
安らかに…おやすみなさい



「星に、なれなかった……」
 泉宮・瑠碧(月白・f04280)が見上げる先には満天の星。
 そのどれもが美しく煌めいているように見える中、ひときわ大きく輝く星に、瑠碧は深い青の瞳を瞬かせた。
(「スターとか、そういう意味もあったりするのでしょうか……」)
 輝く一番星になれなかった少女たち。
 オウガに成り果てるまでに至ったその心を思えば、瑠碧の瞳には悲しみの色が満ちる。
 それでも、猟兵としての責務を果たすために、瑠碧は目指すべき場所――星になれなかった少女たちが待つ天文台を、静かに見つめるのだった。
 瑠碧は精霊たちの力を借りながら、いくつもの土や氷の柱を作り出した。
 そして、点在させたそれらの影に隠れつつ、望遠鏡の眼の届かぬ位置を直感で探りながら、慎重に、かつ素早く進んでいく。
 およそ残り半分くらいの距離まで近づいたところで、瑠碧から少し離れた位置、どこからともなく飛来した白銀のナイフが、人を模した土の柱に突き刺さった。
 一歩間違えば、あのナイフは自分を貫いていたかもしれない。それを避けることが出来たのは、瑠碧が持つ研ぎ澄まされた第六感の力があってこそ。
 やがて天文台へ辿り着いた瑠碧は、足音を立てないように螺旋階段を登ってゆく。
 頂上では、既に同胞たちが戦いを繰り広げていた。
 しかし、まだ残る少女たちは多く、瑠碧もすぐさま加勢する。
 瑠碧の姿に気づいた星屑の少女たちが、それぞれ星のような煌めきを纏い、瑠碧へと白銀のナイフを閃かせた。
 その軌道を的確に見切って躱しながら、瑠碧は静かに祈りを捧げる。
(「帰ろう、還ろう……どうか、在るべき場所へ」)
 瑠碧の願いに応えたのは、数多の名もなき小さな精霊たち。
「……!?」
 星屑の少女たちが纏う煌めきが、更なる輝きを放ち。
 魔法のトウ・シューズは、軽やかに光の軌跡を描く。
 振り翳された白銀のナイフは光を弾いて。
 そして頭上から差す光が、まるでスポットライトのように少女たちを一人ずつ照らし出した。
 一人一人を本物の星に、主役にすること。
 そして、彼女たちが望む幸せな夢に還すこと。
 それが、優しき精霊たちへと託した瑠碧の願い。
「安らかに……おやすみなさい」
 溢れる星の煌めきに包まれ、眠るように倒れてゆく少女たち。
 その顔がどこか穏やかなように見えたのは、きっと、気のせいではないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロリーナ・シャティ
UC発動
望遠鏡から見てるだけなら、音や匂いや温度まではきっと分からない
でも、下草が踏みつけられて形が変わったり、走った時に起こる風で思いっきり草木が揺れたらばれちゃうかも
「…えっと、道は…」
なるべく、もう踏み倒された後の場所とか道が整備された場所を歩く
長い草を掻き分けたりしないように、遠回りでも、
「見つかっちゃだめ…死なされちゃう…」
抱きかかえたままのラパンスだけが心の支え
何故かはわからないけど今までの戦争より胸の中が騒ぐの
やることは、おんなじの筈…焦っちゃだめ…
「見つけ、たっ」
早業でラパンスを振りかぶって、そのまま怪力任せに叩きつける
負けない
鎧もない貴女たちなら
どんな部位でも、破壊できる…!



 ロリーナ・シャティ(偽りのエルシー・f21339)は兎耳状の二本爪を持つ金色のアリスランス――ラパンスをぎゅうっと抱き締めてクリスタライズを発動し、自らを透明化させた。
 望遠鏡から見ているだけなら、音や匂いや温度まではきっと分からない――はずだ。
 だが、下草が踏みつけられて形が変わったり、走った時に起こる風で大きく草木が揺れたらばれてしまうかもしれない。
 そうしたら、まるで空から星が降ってくるかのように、煌めく白銀のナイフが襲いかかってくることだろう。
「……えっと、道は……」
 ロリーナはトルマリンに似た緑の瞳を窺うように巡らせ、そして、おそらくは既に天文台へと向かった同胞の誰かが残したであろう足跡を辿ることにした。
「見つかっちゃだめ……死なされちゃう……」
 たとえ遠回りになっても見つからぬことだけを意識しながら、ロリーナは握りしめたラパンスを心の支えとして、一歩一歩確かめるように進んでゆく。
 ――何故かはわからない。
 けれど、これまでに乗り越えてきたどの戦いよりも、迷宮災厄戦と名付けられた今回の戦争――アリスラビリンスにおける戦いは、ロリーナの胸の内をざわつかせていた。
 想いを馳せる度に、心臓が早鐘を打つようで。
 こみ上げてくる不安と恐怖に、どこへともなく駆け出してしまいそうになる。
 それでも――。
(「やることは、おんなじの筈……焦っちゃだめ……」)
 ラパンスを抱き締める腕に知らず力を込めながら、やがて目指していた天文台へと辿り着いたロリーナは、殊更に逸る気持ちを抑えながら螺旋階段を駆け上がる。
「――見つけ、たっ」
 声を上げると同時、ロリーナに気づいた星屑の少女たちが一斉に星の煌めきを纏うのが見えた。
 だが、少女たちが動くよりも先にロリーナは素早くラパンスを振りかぶり、渾身の力を籠めて目の前に居た少女に叩きつける。
「……っ!?」
 骨が砕ける音がして、ラパンスの痛烈な一撃を刻み込まれた少女は敢え無くその場に崩れ落ちた。
「……負けない」
 星屑のような煌めきを残して消えた少女を一瞥すると、ロリーナは微かに震える声を絞り出し、くるりと身を翻す。
 そうして、星を纏って飛びかかってくる少女たちをラパンスの爪で引っ掻き、あるいは切り裂いて、一人ずつ確実に倒していく。
「鎧もない貴女たちなら、どんな部位でも、破壊できる……!」
 震える声で己を叱咤しながら、ロリーナはラパンスを振り抜いた。
 ――怖い。
 けれど、恐れることはない。
 少なくとも、今はまだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

渦雷・ユキテル
じゃん。星空に似合いの夜色外套
これだけ暗ければ平原にも馴染みそう
フードを深くかぶって、いざ

身を隠せる茂みや岩があれば一旦ステルス解除
様子を窺うのも兼ねて少しだけ休憩
慣れない場所を無理に進んで大事な時にヘマしちゃ困るんで
逆に、遮蔽物がなければさっさと進むに限りますね
それでも真っ直ぐは怖いな。多少ロスが出ても不規則に近付きます

望遠鏡、あたしも覗いてみたーい
ま、星になれなかった彼女たちを送ってからですね
塔の最上階までたどり着いたら夜色外套を纏ったまま銃撃
気付かれてからはステルス解いたり
再び発動させたりしながら動き回って撹乱狙い
身体から溢れる電撃【属性攻撃】で星みたいな煌めきをあなたに
おやすみなさい



「――じゃん」
 渦雷・ユキテル(さいわい・f16385)が纏うのは、星空に似合いの夜色外套。
 フードを深く被った瞬間、ユキテルの姿は文字通り、平原の風景に溶け込んだ。
 見渡す限りの大平原、その真ん中にぽつんと佇む天文台。
 身を隠せる岩や茂みがあればステルスを解除し、様子見も兼ねて休憩が出来ればと考えていたけれど、どうやらそういったものはなさそうで。
 ならばと、ユキテルはさくさく進んでいくことにした。
 それでも真っ直ぐに進むのは、慣れぬ場所だということもあってやはり怖いから。多少のロスには目を瞑って、不規則に遠回りをしながら近づいていく。
 時折、天文台の頂上からきらきらと煌めく光が零れ落ちる。
 遙かな高みに据えられた望遠鏡の眼は、今まさにこちらを探していることだろう。
 幸いにして、夜色外套を纏ったユキテルの元へ攻撃の手が及ぶことはなかった。
 入り口の扉を少しだけ開き、するりと滑り込む。
 最後の最後でヘマをしないように、最上階へと続く螺旋階段もゆっくりと踏みしめて。
 やがて天文台の頂上に辿り着いたユキテルは、夜色外套を纏ったまま愛用の拳銃――Cry&92を構えた。
 美しく彩られた指先を引き金に添えて、ぱぁんと一発。
 頭を貫かれた少女は、何が起きたかすらきっと理解できぬまま、力なくその場に崩れ落ちた。
「まあ、さすがに見つかっちゃいますよねー」
 周囲に居た少女たちの目が向けられる中、ユキテルは夜色外套のフードを脱いでステルスを解く。
 星のような煌めきを纏い、輝きを増した白銀のナイフを閃かせる少女たちへ挨拶代わりにもう一発、それからすぐに再びフードを被り、ユキテルは地を蹴った。
 少女たちの間を縫うように動き回りながら姿を隠したり現したりを繰り返し、少女たちを撹乱するユキテル。
 振り抜かれたナイフの刃を咄嗟に低く屈み込んで躱し、ユキテルは立ち上がると同時に真っ直ぐに手を掲げた。
「星みたいな煌めきをあなたにあげますね。おやすみなさい」
 鈍色の鉛玉の代わりに、身体から溢れる稲妻のひかりを手向けの花として。
 少女たちが纏う星よりも眩い輝きが、星になれなかった少女たちを在るべき場所へと還していく。

 ――彼女たちをすべて送ることが出来たなら、覗いた星空を奪うという望遠鏡を覗いてみることくらいは許されるだろうか。
 不思議の国の星空を映し出す、不思議な望遠鏡。
 きっと、そこには。
 ともすれば本当に奪ってしまいたくなるほどに美しい、数多の宝石を散りばめたような、否、言葉ではとても言い表せないような星空が広がっているのだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シノア・プサルトゥイーリ
なんて、美しい星空
こんなにも空は違って見えるのね
ゆっくり見ていられないのは残念ね

眼帯を外し、赧き葬列を。速さを得ましょう。
両眼で戦場を見据え、霧は目眩まし程度ね
役立てば良いけれど、過信はしないわ

遠距離攻撃であれば音はあるかしら
兆しがあれば、行く道を変え、木々があれば枝を蹴り行きましょう

こんばんわ。お嬢さん方。
私では貴方たちに星も、夢も見せられないけれど
あるべき場所へ還しましょう

その速さに追いつかせてちょうだい。
攻撃に合わせ、近接での勝負を挑みましょうか。
ナイフが来れば、其処が貴方の居る場所ね

星々の煌めきは見失え無いわ。お嬢さん方
せめて、痛みなく送れるように。刃に我が血の全てをかけましょう



「……なんて、美しい星空」
 今にも星がこぼれ落ちてきそうな空を見上げ、シノア・プサルトゥイーリ(ミルワの詩篇・f10214)は感嘆の息をつく。
 夜空色のカンバスの一面に散りばめられた無数の星々は、ひとつずつ繋いで星座を見出すことが出来ないくらいに眩い輝きにあふれていた。
「こんなにも空は違って見えるのね。ゆっくり見ていられないのは、少し残念だけれど」
 空から地上へ、シノアは遥か彼方に聳え立つ天文台へ視線を移すと、片方の瞳を封じている眼帯を外す。
 古き血の狩人の姿へと変じたシノアは、呪われた血が齎す青白き霧をその身に纏い、両の瞳でひたと戦場を見据え――空へと翔けた。
 元より霧は目眩まし程度に捉え過信はせずに、風を切る音に混ざる鋭利な刃の閃くそれを逃さぬよう目も耳も澄まして。
 その時、視界の隅に煌めいた光と不意に感じた兆しに、シノアは進路を急旋回させながら大きく跳躍した。
 ――敵の眼は、既にこちらを捉えている。ならば余計な小細工は不要だろう。
 シノアはそのまま一気に高度を上げて、天文台の最上階――開かれた窓から飛び込むと、
「今晩は、お嬢さん方」
 待ち受けていた少女たちへ、柔く微笑んでみせる。
「……さて、始めましょうか。私では貴方たちに星も、夢も見せられないけれど、在るべき場所へ還しましょう」
 星のような煌めきを纏い、各々が携える白銀のナイフを輝かせる星屑の少女たち。
 対するシノアもまた、古き血の封印を解いたことでより強力な呪力を帯びた太刀を手に、視線を交わしたのはほんの一瞬。
 一呼吸の後には刃が触れ合う甲高い音が響き、幾つもの火花が散っていた。
 激しくぶつかり合う刃と刃。即興で奏でられる剣戟の音。
「其処が貴方の居る場所ね」
 ナイフの切っ先を躱しながら振り向き様に斬り捨てて、翻した刃でもうひとり。
 倒れた少女はみな一様に、星屑のような煌めきを残し消えていく。
「星々の煌めきは見失え無いわ。お嬢さん方」
 疾風の如き速さで戦場を駆け巡るシノアは、淡く色づいた桜色の髪を軽く払いながら静かに告げる。
 ――せめて、痛みなく送れるように。
 シノアは刃に己が血の全てをかけて、星になれなかった哀れな少女たちに終焉を刻んでゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

一文字・八太郎
見惚れるほどに美しい空ではあるが
眺めている暇はこれっぽちも無さそうでござるな

準備運動に猫の毛づくろいで駆ける準備は万端
刀をきちんと背負いて落とさぬように固定したのならば
いざ、参らん

望遠鏡に捕らえられぬよう進路を右へ左へ
陽動入れながらひた走る
小さき身にこの速度ならばそうそう捕らえられまいが
それでも攻撃食らうならば激痛耐性で耐えようか
天文台に着けば抜刀して最上階まで一気に駆け上がり
接敵するまでは足を決して止めはせぬ

差し出される花束は美しいが
毒あるなら受け取る訳にはいくまい
貴殿らの手向と、花束ごと斬り散らす

花も彼女らも美しくあれど
天上の星に至ることはないのだろう
ならばせめて、骸の海へと還るがいい



 見上げれば、その先に広がるのは見惚れるほどに美しい空。
 ――ではあるが。
「……眺めている暇はこれっぽちも無さそうでござるな」
 一文字・八太郎(ハチ・f09059)はやれ、と小さく肩竦め、金の瞳を満天の星から彼方に聳える天文台へと移す。
 そこでは星になれずオウガと成り果てた少女たちが、覗いた星空を奪うとされる望遠鏡に映り込む獲物を今か今かと待ち受けているという。
 何はともあれ、あの場所に辿り着かないことには何も始まらない。
 ゆらゆらと黒い尾を揺らしながら、準備運動に欠かせない猫の毛づくろいで心と身支度を存分に整えて。
「――いざ、参らん」
 背負う愛刀を落とさぬよう固定し、改めて天文台を見据えると、八太郎は音もなく地を蹴った。
 惜しむらくは、この毛並みを整えたばかりのつやつやの姿を見せる相手がオウガだということか。
 望遠鏡の眼に捕らえられぬよう、右へ左へとジグザグな軌道を描きつつ、陽動を入れながら止まることなくひた走る。
 毛づくろいで摩擦抵抗を極限まで減らしたことでより軽やかになった八太郎の身は、望遠鏡の眼に捕らえられこそしても、空から注ぐ攻撃の全てが及ぶことはなかった。
 たん、と力強く地を踏み締め、くるりと宙返り。
 飛来するナイフの切っ先を躱した八太郎はそのまま雪崩れるように天文台へと駆け込むと、身の丈超える太刀を抜き放ち最上階まで一気に駆け上がる。
 そして倒すべき少女たちの姿を捉えた時、八太郎はようやく足を止めた。
 舞台に上がった八太郎を歓迎するかのように、星のような煌めきを纏う少女たちはたおやかに微笑みながら、次々に花束を差し出してくる。
 色も種類も様々な花束はどれも美しく華やかに彩られて。
 だが、その影には甘やかな毒が滲んでいる。
 ゆえに八太郎は手を伸ばして受け取る代わりに刀を振るい、花束ごと少女たちを斬り散らした。
 せめて彼女らへの手向けとなるよう、密やかに想いを込めながら。
 空に瞬く星に似た煌めきを残し、少女たちは消えてゆく。
 花も、彼女らも美しくあれど、天上の星に至ることは決してない。
 どれほど願っても、届くことはない。
「――ならばせめて、骸の海へと還るがいい」
 八太郎は静かにそう告げると、再び刀を構えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夕時雨・沙羅羅
きらきらの国、きれい
だけどきれいなだけじゃない、薔薇のような国
棘があるのは、オウガがいるから
ならば棘を除けば、安心してきれいを楽しめる

狙われないように……か
【天候操作】で濃霧を発生させ、辺り一面を真っ白にしてしまおうか
霧も天気のうち
そうすれば、進むのに支障はない
ある程度近付いたら、《雫》で望遠鏡ごと攻撃しよう
万が一、濃霧に隠れられなくても、この攻撃なら遠くから当たるかもしれないが…確実に葬っていきたい

アリスが安心して楽しめるように、愉快な仲間が不安なく過ごせるように
僕はこの世界からオウガを取り除く
危険の無い、良い世界に
花も星も、きれいなものだけで良い
だから、消えてくれ



 遍く星々の歌声が聴こえてきそうなきらきらの国は、とてもきれいだった。
 だけど、今はきれいなだけじゃない、薔薇のような棘だらけの国になってしまっている。
 ――棘があるのは、オウガがいるから。
 ならばその棘をすべて取り除けば、安心してみんなできれいを楽しめるようになるだろう。
 空よりも少し近い場所できらきらと輝いている光は、きれいだけれど痛いもの。
 その光こそ、この国に棘を撒き散らしているオウガのものだ。

(「狙われないように……か」)
 陽の光を溶かしたような蜜色の瞳に思案の色を乗せ、夕時雨・沙羅羅(あめだまり・f21090)は一息つくと、そっと掌を空へ差し伸べた。
 すると、ふわり、溢れ出した白い霧が、忽ちの内に辺り一面を満たしていく。
 霧も天気の内。天候を操る術を持つ沙羅羅にとって、これくらいはお手の物だ。
 沙羅羅はたくさんのきらきらした宝物が浮かぶ透き通った水の尾びれを翻しながら、濃霧の海へとゆるり、游ぎ出した。
 一面ましろの世界では、沙羅羅の姿が望遠鏡に映ることもなく。
 望遠鏡の眼を掻い潜りながら、沙羅羅は敵に見つかることなく天文台の頂へと近づいて。
 そうして倒すべきオウガの気配を感じたその時、真っ直ぐに指先を伸ばし、『雫』を降らせた。
 ――gouttes de pluie.
 指が示す先には、おそらくは曇ったレンズを通して必死に沙羅羅の姿を探していたであろうオウガの少女たち。
 そんな少女たちへ、展望台の海へ飛び込んでいく見えない水の珠や水の魚の群れが一斉に襲いかかる。
 何が起きたかわからぬまま、少女たちは望遠鏡ごと透明な魚に呑まれて消えていく。
 辛うじて逃れた少女の眼差しが沙羅羅を捉えた時には、新たに生み出された魚が大きく口を開けていた。
 ――オウガである少女たちを見つめる沙羅羅の眸は、純然たる敵意と決意に満ちていた。
 アリスが安心して楽しめるように。
 愉快な仲間たちが不安なく過ごせるように。
 危険のない、より良い世界にするために。
「僕は、この世界からオウガを取り除く」
 花も星も、この世界に満ちるのはきれいなものだけで良い。
 きれいなものたちを壊そうとするオウガは、この世界にはあってはならないものだ。
「……だから、消えてくれ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

波瀬・深尋
星になれなかったオウガか
ーー俺は、やれることをやる
あいつらの為にも、な

平原の真ん中なんて
狙いにくい所を根城にしたな
少しでも岩があれば
身を隠しながら移動しようか
こう、明るいと無理かもしれない、がーー

そうだ、なあ、ミカゲ
お前の炎を遠くに放って
敵の注意を逸らしてみようか
それでも見つかりそうなら
最終的に俺が走り抜けるから

そうして、オウガを倒そうか

星のネックレスを握り締め、一呼吸
見上げれば同じような星の煌めき

オウガ、在るべき場所へ還れ
此処はお前たちの居場所じゃないから

星に手は届かない
だけど、お前たちが救われるのなら
ーーミカゲ、全部、燃やし尽くせ、

青白い炎に包まれ舞った灰は、煙は、
必ず天にまで届くと信じて



「星になれなかったオウガ、か」
 ぽつりと独りごちる波瀬・深尋(Lost・f27306)の内から、青白い炎が疼くように溢れ出す。
「……わかってる。――俺は、やれることをやる。……あいつらの為にも、な」
 炎へと語りかける言の葉は、己自身に言い聞かせるようでもあって。
 何気なく見上げていた満天の星から地上へと視線を戻せば、一面の広野の果てにぽつんと佇む天文台。
 目指すべき場所は一目瞭然で。けれど、それは敵にとっても同じことだった。
 天文台の頂上に据えられた、覗いた星空を奪う望遠鏡。
 その眼はこの広野をはるかに見渡し、虎視眈々と獲物が映るのを待ち侘びている。
 天上の空を埋め尽くさんばかりの星々の光は、地上を柔らかく照らしていて。
 身を隠せそうな岩や木々も、辺りには見当たらない。
 どうしたものかと思考を巡らせる深尋の夜色の瞳に、青白い炎がちらついた。
「そうだ、なあ、ミカゲ。お前の炎を遠くに放って、敵の注意を逸らしてみようか」
 それでも見つかりそうなら、ひたすらに駆け抜ければいい。
 待っていたとばかりに深尋の内に息づくオウガ――ミカゲが、鮮やかに燃え上がる。
 胸元に煌めくネックレスの星を握り締めながら呼吸をひとつ。
 見上げれば同じような星の煌めきがいくつもあって、どこの世界でも変わらぬ輝きに深尋は知らず安堵する。
 ――大丈夫だ。
 駆け出すと同時、深尋はミカゲの炎を高く、遠くへ放り投げた。
 弧を描いて落ちていく炎はまるで流星のようにも見えて。そこにどこからともなく飛来した白銀の閃きが合わさって、ひときわ眩く輝くのが見える。
 ミカゲの炎が敵の注意を引きつけている間に、深尋は一気に天文台へと転がり込む。
 螺旋階段を駆け上がった先では、星屑の少女たちが待ち構えていた。
 骸の海から現れた、星になれなかったオウガの少女たち。
 その姿に僅かに眉を顰めつつ、深尋は静かに告げる。
「オウガ、在るべき場所へ還れ。此処は、お前たちの居場所じゃないから」
 どんなに手を伸ばしても、星に手は届かない。
「――ミカゲ、」
 だけど、こうすることで少女たちが救われるのなら。
「全部、燃やし尽くせ、」
 葬送の青白い炎が少女たちを包み込み、在るべき場所へと還していく。
 風に乗って舞い上がった少女たちの灰は仄かな煌めきを帯びて。
 ――それはまるで、星が天へと還ってゆくかのようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャック・スペード
煌めく空は、とても綺麗だな
眩いばかりの星々の下で
彼女たちは何を想うのだろうか

Odileに乗り込めばアクセル全開
最高速度で天文台へ向かう
塔の入口で下車したのち
黒衣で身を包み、闇に紛れながら最上階へ

こんな煌びやかな夜に
ソロダンスなんて侘しいだろう
接近が叶えば、星屑の手を取って
パ・ド・ドゥに誘おう
お手をどうぞ、プリマドンナ
出鱈目なステップで振り回す

互いに脚を踏みつけようと
掴んだ此の手は離さない
何方かが斃れる迄、此のステージは終われない

こんな鉄屑が相手なんて
お前は厭だろうが
詫びに花くらいは呉れてやる

星屑の手を取ったまま、片手で零距離射撃
毒を塗った銀の弾丸を撃ち込もう
紅の薔薇に包まれながら、安らかに眠れ



 ――眩いばかりの星々の下で、彼女たちは何を想うのだろうか。
 美しく煌めく夜空を見上げながら、想いを馳せたのはほんの束の間。
 ジャック・スペード(J♠️・f16475)は颯爽と剣の紋章煌めく漆黒のヒーローカーに乗り込むと、エンジン全開、力強くアクセルを踏み込んだ。
 ぐん、と大きくスピードを上げて、オディールの名を冠するスワンスイング・ロードスターは星々が謳う広野を疾駆する。
 望遠鏡の眼も追いつかないくらいの最高速度で駆け抜けたなら、彼方に佇んでいたはずの天文台は目と鼻の先で。
 入り口で車から降りたジャックは纏う黒衣で闇に紛れながら最上階へとひた走る。

「――こんな煌びやかな夜に、ソロダンスなんて侘しいだろう。……お手をどうぞ、プリマドンナ」
 掛けられた声に、星になれなかった少女ははっと瞬いた。
 僅かに身を強張らせた少女の手を鋼鉄の無骨なそれで掬うように拾い上げ、ジャックは踊りへ――パ・ド・ドゥへ少女を誘う。
 ――とは言え。
 今でこそ『こころ』を持つヒーローだけれど、長く機械兵器として生きてきたジャック自身にダンスの心得があるわけではなく。
 剣戟の音をBGM代わりに、出鱈目なステップで振り回すばかり。
 ターンだって上手く行かなくて、何度つっかえたかもわからない。
 それでも、ひとりきりではないパ・ド・ドゥに、最初は戸惑いを隠せなかった少女の顔に、次第に笑みが綻んでいくのがわかった。
 互いに足を踏みつけようとも、掴んだ手は決して離さずふたりは踊り続ける。
 どちらかが斃れるまで、このステージは終われない。
 観客のいない舞台では、拍手も喝采も、アンコールだってないけれど。
「こんな鉄屑が相手なんてお前は厭だろうが、詫びに花くらいは呉れてやる」
 星屑の手を取ったまま、ジャックはもう片方の手で銃口を突きつけ、零距離射撃で毒を塗り込めた銀の弾丸を撃ち込んだ。
「せめて、安らかに眠れ」
 爆ぜた刹那に咲き誇る紅の蔓薔薇が、甘く華やかな芳香で少女をとらえ、永遠に醒めぬ眠りへと導いてゆく。
 最後には星のような微かな煌めきを残し、斃れた少女の姿は跡形もなく掻き消えて。
 ――そうして、星になれなかった少女たちの舞台に、ひとときの幕が降ろされた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月05日


挿絵イラスト