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迷宮災厄戦⑨〜フラッシュ・リミテッド

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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●歪に刻め、刻すら凍りし絶限の城
 ――時間の流れは一定ではない。
 ――私とあなたの間に流れる時間は、常に同じだけれども。
 ――過去を生きる私と、未来に歩むあなた達では。
「時は凍てつき……私達に、永遠にも似た刹那の煌めきを与える……。さぁ、おいでなさい、猟兵たち。共に、一瞬を刻みましょう」
 繋ぎ合わせて、ときの糸。穴に落ちても大丈夫、意図せぬ結果は紡がれない。
 あら? でもおかしいわね。私もなんだか身体が重い。うーん、じゃあ仕方がない、あなた達猟兵の時間に合わせましょうか。さぁ、思考に肉体が追い付かない重力の城へ、ようこそ!!
 ちゃきりと構えた鋏の刃が一対。黄金の髪がふわりと揺れる。カチリコチリと刻まれる装飾時計の針は、屹度胸の鼓動とリンクして――。

●グリモアベースにて
「戦争よ! 今回はアリスラビリンス。みんな、準備はいい?」
 斬断・彩萌(殺界パラディーゾ・f03307)は携帯端末型のグリモアを展開し、急ぎ声を荒げて解説を始める。集まった猟兵も慌てた様子の彩萌を見て、状況を把握した。
「戦場は時間が凍結された氷の城。透き通った仄蒼を宿す、美しき幻想の舞台。此処では時の流れが歪んでいるの。肉体の動きは1/10程度にまで落ちるでしょうね。幸いにして思考時間までは緩やかにならない、1の動きに対して10考える余裕があるということ」
 敵も己も、全ての時間がゆっくりと進む。しかしそれはガワの話、内面には影響しない。会話や反応に重点を置いた動きは難しいだろうが、対処法を考える時間は十分にある。仲間が居るなら綿密な計画が事前に必要だが、普段ではできない繊細で複雑な動きも再現できるかもしれない。どちらにせよ、勝負は一手一瞬で決まる。
「戦略的に動いて。大丈夫よ、みんなは強い。考える余裕があるのなら、絶対に負けない。私はそう信じてる」
 説明は以上よ、と告げて、グリモアの光を猟兵に照射する。時間の流れに屈しない者だけが、この先に進めるのだ――!


まなづる牡丹
 オープニングを読んでいただきありがとうございます、まなづる牡丹です。こちらは戦争シナリオにつき、1章で完結致します。

 解説の通り、動きが十分の一になります。思考時間はそのままなので、存分に考えて敵の動きを読んだり対処法を考えて下さい。

●プレイングボーナス
 ……思考時間を活かし、戦略的に戦う。

●プレイング送信タイミングについて
 公開されたタイミングで送って頂いて構いません。
 執筆は先着順でなく、大成功に近いものから8/2より予定しています。
 万が一執筆許容量を超えました場合、期間いっぱいまでお時間を頂くor不採用の場合がございますのでご容赦下さい。
 (基本は全採用を目指す所存です。)

 以上。皆様のプレイングを心よりお待ちしています!
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第1章 ボス戦 『『時繋穴の番兎』クロノス』

POW   :    時絶ち鋏~タイムストップ・シザー~
【切断した物の時間を停止させる『時絶ち鋏』】が命中した対象を切断する。
SPD   :    時繋穴~タイムリープ・ホール~
【時間の流れが異なる『時繋穴』の出口 】を向けた対象に、【先制攻撃】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    時経ち鋏~タイムパス・シザー~
命中した【時間経過を操作する『時経ち鋏』 】の【取っ手に絡みついたリボン】が【対象に複雑に絡みつく形状】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠幻武・極です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

灰神楽・綾
【梓(f25851)と】
軽く素振りをすると一振りがやたら遅い
これはすごい違和感
これじゃあ梓との会話もままならないな
まぁ、いつものように頑張ろうか
と、目線だけ梓に送る

まずは、庇ってくれる焔の後ろで
自身の手を斬りつけUC発動
これで遅くなった動きも少しはマシになるはず
敵の先制攻撃を焔に引き受けてもらっている間に
強化したスピードで一気に接敵

その巨大鋏、なかなかセンス良いよね
俺のEmperorとどっちがよく斬れる?
なんて考えながらEmperorを大きく振りかぶる
きっと敵は俺の攻撃への対処の為に
避けるか防御行動を取ろうとするだろう
俺の為に思考時間を使ってしまったのが命取り
その直後、焔の炎が迫ってくるだろう


乱獅子・梓
【綾(f02235)と】
全てがスローモーションで気持ち悪い空間だな…!
綾のアイコンタクトに頷いて返す
それは何も考えていないようで
「俺達なら言葉など無くても何とかなるさ」という
信頼が込められているのは伝わったから

時繋穴の出口とやらを向けられてしまうと
被弾は避けられないわけか
ならば、向けられてから動くのでは間に合わないから
向けられることを前提に動く
第一手は、焔を成竜に変身させ
俺と綾を庇うように前に立たせる
攻撃を受けたら激痛耐性で耐えてもらう
ここさえ凌げば綾が反撃のチャンスを作ってくれる

さぁ焔、お返しの時間だ
倍返しにしてやれ!
綾が敵に攻撃を仕掛けた直後、UC発動
威力を増した焔のブレス攻撃をお見舞い




 美しきは見た目だけ、その内情は時すら凍てつく氷の城。灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は軽く素振りをすると、何時もは腕の延長のように自然に動く一振りが、やたら遅く重く感じた。ものすごい違和感に、これでは背中を預ける乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)との会話もままならないだろうと目配せだけを送る。
 綾からの視線を受け取り緩慢な動きで頷き返す梓。なんてことはない唯のアイコンタクト。その中に「俺達なら言葉など無くても何とかなるさ」という信頼が込められているのが伝わる。いつものように頑張ろうか、という綾の決意に梓も同意して、オブリビオンが待つ城の最上階へと全速力にゆっくり駆けていった。
 ――相対したのは黒と赤に身を包んだ金髪の鋏使い・クロノス。うるうるの瞳がニィっと歪んだのが遠目でもわかる。まったりとした動きで鋏の刃をクロスさせ、地を蹴り二人の下へ走り寄った。動きは遅い、目視して次の行動が読めるほどに。でも、対処するこちらも動きの鈍さは同じ、後出しで勝てる程状況は甘くない。
「(全てがスローモーションで気持ち悪い空間だな……!)」
 梓は舌打ちでもしたくなったがそれすら時間が惜しい。クロノスの【時繋穴の出口】は相手よりも確実に先制する、この場においては最強格の技。まともに受けては被弾は避けられない。であれば、動いてからの対処は愚策。『向けられる』事を前提に動く!
 第一手は炎竜・焔を成竜に変身させるところから始まる。クロノスの脚と竜の変身では焔の方が早い。1/10で変身する焔が纏う炎を、梓は改めてまじまじと見つめた。この竜はこんなに美しかったのかと、ぱちぱちと弾ける火花に渦を巻いて脚から口先まで、幼い姿から逞しく成長した竜に見惚れる。常日頃の戦場といえば忙しく動き回り、こんなにじっくりと見る暇などなかったから、酷く新鮮に感じた。
 命を下す間も無く、焔は綾と梓の前に立ち塞がり、二人を守る。流石は竜騎士に仕えるに相応しい。
「(思考と反応が一致しないって変な感じだねぇ。まぁ、その分戦略的にいかせて貰うよ)」
 焔が変身しはじめた段階で、綾は焔の行動を読んでいた。屹度梓が俺達をかばってくれるように召したのだろう。だったら綾は、前から一歩また一歩と近づいてくるクロノスの事は気にしなくていい。自身の手をの甲を刃でビシャっと斬りつけ、Emperorに血を啜らせる。同時にせり上がるどくりとした衝動。腕が軽い、ガリガリと削れる寿命は果たして肉体基準なのか思考時間基準なのかは疑問だが。兎角、綾は漸く『いつも程度』の速さを手に入れた。
 接近したクロノスの刃が立ち塞がる焔に向けられる。口元はゆっくりと「じ・ゃ・ま」と呟いているように見えた。途端、痛みに震えだす焔。時の腐食による激痛が体内からじわじわと臓腑を冒してゆく。ほんの一瞬の痛みであろうとも、此処では10倍の時間それに耐えなければならない。激痛には少々の耐性があるのだが、それでもこれだ。のたうち回りたい激情を後ろに控える二人のことを考えることで落ち着かせる焔。それは立派に騎士道であると言えるだろう。
「(ここさえ凌げば綾が反撃のチャンスを作ってくれる……)」
 サングラスの下、梓は視線だけを隣の綾に向ければ、彼はもうEmperorを手に臨戦態勢。常人並みの動きではあるが、この場においてそれは高速を意味する! クロノスの先制攻撃を焔が受け止めている間、綾は強化したスピードで一気に接敵。Emperorを大きく振りかぶる!
「(その巨大鋏、なかなかセンス良いよね。俺のEmperorとどっちがよく斬れる?)」
 なぁんてお道化ているが、この場において速さを制した綾は尤も厄介だ。血濡れたそれが振りおろされる前にクロノスが考えるであろうことは、対処の為に避けるか防御行動をとるかの二択。Emperorに気を取られ、目を見開くクロノスは、隣で大きく息を吸い込む音すら認識できない――。ほぅら、それが命取り。
「(俺に見惚れちゃった? なぁんてね。今度はお前が痛みに耐える番)」
「(さぁ焔、お返しの時間だ。倍返しにしてやれ!)」
 綾の攻撃に対しクロノスが取った行動は……回避! しゃがんで勢いをつけ後退しようとするが……遅い!既に吐くだけだった焔が放った灼熱の炎が、クロノスの身体を包み込む。メラメラと燃え上がる火柱の中で、クロノスは不格好に踊る。いたい、あつい、くるしい――! 炎を消そうとしても満足に動かない体。感じる熱は永遠かと思うほどに長く。嗚呼、可哀そうに――綾は炎に巻かれる番兎を哀れに想い、軽やかな足取りで近づくと、一言。
「さ・よ・な・ら」
 綾の血に濡れたEmperorは、炎ごと全てを薙ぎ払った。女の子が痛みに悶える姿を眺めるのはシュミじゃない。色眼鏡の奥で感じた事を口には出さずとも、ばしっと背中を叩かれる慣れた感覚が気持ちを後押しした――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セツナ・クラルス
…ふむ
(『時間はある』とのことなので手を動かしたりして様子を確認して)
なるほど、これは思った以上に動きが遅くなるようだね
亀の気持ちが分かるようになるかもねえ
どこかピントのずれたことを言いながら微笑み

敵が焦れて攻撃を開始し始めたときからが勝負だね
時間はあるからと油断しているように見せかけて、その実敵の動きや癖を観察している
ここまでゆっくりなら予備動作も把握しやすいだろうしね

敵の攻撃が向けられる瞬間にUC発動
敵のUCそのものを食い尽くしてあげよう

反撃はたっぷりあった時間を有効活用して生成した毒を、手持ちの武器(鎌とナイフ)に仕込みてきに繰り出す
ほんの少し掠っただけでも昏倒することだろうね




 拳をつくったり、掌を広げてみたり。肩をぐるぐると回してみたり。体の動きを正確に確認し、把握する。自分の身体ではあるけれど、今は思った通りに動かない。否、動くのに、極端に時間がかかるのがもどかしい。
「(……ふむ)」
 なるほど、と納得して頷くセツナ・クラルス(つみとるもの・f07060)。想像以上に動きが鈍い……亀の気持ちが分かるようになるかもねぇ、なんて。どこかピントのズレたことを想い乍らゆるやかに微笑む。なかなかどうして、厄介な力場だ。動作開始から実行まで十倍の時間がかかるという事は、思考時間は10倍あるということ。相手も同じ条件であるのが救いだが、生憎と亀の歩みで止められるほど弱くないだろう。なにせ敵は兎なのだし。
 相対したクロノスとセツナ。しばしの沈黙と睨み合い。先制が有利と見せかけて、長考できる分防御側の方が有利に働く場面もある。回避・防御・カウンター……それをギリギリまで見極められる。セツナは酷く冷静だった。時も凍てつくこの場において、いっそ不自然な程に。
「(始めよう。キミはまだ眠っていて――私一人でも、大丈夫だよ)」
 ゆるぅりと、視線はそのままに油断しているよう見せかける。進まぬ展開に焦れて走り出したのはクロノスの方だった。巨大な鋏刃を両手に、真正面で交差させるような動き。捉えるはセツナただ一人! 油断はフェイクだ、その実敵の動きや癖をつぶさに観察する。心臓の鼓動が止まっているんじゃないかと思うくらいゆっくりなのだ。クロノスの大仰な動きは、攻撃の予備動作として把握しやすい。
 セツナはすぅっと体から力を抜いた。鋏刃の先が丁度重なった瞬間、時裁ち鋏の衝撃が襲い来る!! しかしそれは痛みにはならない。完全な脱力状態で受けた攻撃は、赦しの言葉として体外に霧散していく。
 ――あなたの罪は私が引き受けよう。この歪んだ城に囚われたあなたを、私が救い給う。
「な……ん……で……!」
 クロノスは驚愕した。渾身の一撃が吸い込まれるように消えたのだから無理はない。一歩身を引くがその動きさえ今は緩慢。兎特有の跳躍力は活かせない。深く食い込んだ鋏を手放すかどうか悩む一瞬さえ、反撃の隙を与えるには十分な時間だった。
 たっぷりある時間を有効活用し、生成した毒を鎌とナイフに仕込み入れる。さらりと毒は刃を伝い滴り獲物を待っていた。クロノスの引いた半身が逃げ切る前に、全速力で鎌を振りかざす!! セツナの動きと鎌、両方を見ていたはずのクロノス。視線は真っ直ぐ前方。故に、気付かなかった。……セツナが先にナイフを上へ向け放り投げていたことに。
 寸でで鎌を躱した。生まれる安堵と油断。其処を突き、真上からナイフがクロノスの項を掠める。
「……え?」
 からぁん、とナイフが床に落ちる音が響く。と、同時にクロノスは全身の痺れを感じ、何が起こったかも分らぬまま昏倒した。痛みを認識する時間もなかった。それはある意味救いだったのかもしれない。
「(一瞬で気をなくして、良かったですね。だって――)」
 苦痛は短い方がいいでしょう? そう微笑んだセツナは、戦闘前とまるで変わらなく『いつも通り』だった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スミンテウス・マウスドール
アンネ(f18025)と遊びに来た。


ティーセットたちを召喚。
カトラリーやティーセットを一斉に突撃させよ。ゆっくりだけどね。
アンネの骸骨人形に隠してもらいながら、目立たないように2人でティーポットに入る。ゆっくりね。

アンネがなんか笑ってるけど、ゆっくりだからわかんないや。お茶飲む?ゆっくり。

そのままティーセットたちに紛れて突撃。
ギリギリまで近づいたら、アンネに続いて飛び出して空中浮遊。

アンネが動きを封じてくれている隙に、上からフェイントを込めて、針で串刺し攻撃。ゆっくり。ずぶずぶ。

カトラリーたちに追撃してもらうよ。
今日の茶菓子はゆっくりオウガ。
この後、ゆっくりとお茶会でもしようか。


安寧・肆号
スミン/f25171

まあ、まあ!
ゆっくりだなんて、大変じゃない?
あたし、せっかちだから耐えきれないわ。
いつも眠たげなアナタは、大丈夫そうだけど!

[誘導弾]の[弾幕]をワルツカードから放つわ!
その隙に、骸骨人形を操作して、彼の影に隠れるの!
スミンが召喚したティーポットにこっそり、入りこむわ。
なんだか可笑しいの!
こんなのんびり動いて、戦争だなんて信じられない!

そうも言ってはいられない?
隙をついて[先制攻撃]
近づいたら、あたしが先にUCを放ちながらティーポットから飛び出すの。
封じ込められるよう、さらに敵に[怪力]を込めて抱きつくわ。
まるで[捨て身の一撃]!
スミンったら、あたしを狙っちゃダメよ。




 まぁ、まぁ! ゆっくりだなんて大変じゃない? あたし、せっかちなの! だからとっても耐えられない! いつも眠たげなアナタは、大丈夫そうだけど! なぁんて楽しそうに笑う安寧・肆号(4番目の人形・f18025)は、隣でぼぅっとしているスミンテウス・マウスドール(だれかが視てる夢・f25171)に目を向けた。相変わらず何を考えているかは分からないけれど、遊びに来たのだから楽しまなきゃね。
「(今日の茶菓子はゆっくりオウガ。この後、ゆっくりとお茶会でもしようか)」
 お茶会にまず必要なのはティーセットだろう。スミンテウスはティースプーンにフォークといったカトラリーも用意し、カチャカチャと音を立てて、番兎に一斉攻撃! 肆号は誘導弾の美しい弾幕をワルツカードから放ち、場を照らすとともに目眩ましを展開する。ゆらぁっとゆっくり進んでくる大量の銀食器に相手が気を取られている間、二人は肆号操る骸骨人形の陰に隠れながら、のそのそと浮遊する巨大ティーポットに入り込む。目立たないように、を心掛けてはいるものの、これだけのんびりでは流石の番兎も気付くころ。でも大丈夫、鈍い視線がこっちにくるころには、二人の隠れんぼも完了!
「(ふふっ、なんだか可笑しいの! こんなのんびり動いて、戦争だなんて信じられない!)」
「(アンネがなんか笑ってる。けど、ゆっくりだからわかんないや。お茶飲む? ゆっくり)」
 ティーポットのなかでにこにこと上機嫌に笑う肆号を、スミンテウスは静かに受け止めて。現実なのに全然現実味のない、ゆったりとした時間に不思議な気持ちになりつつも、巨大ティーポットはカトラリーたちに紛れようやく番兎のところまでやってきた。ギリギリの位置まで接近し、蓋をあけて肆号がティーポットから飛び出し先制攻撃! 広げた両の手から溢れ出す、赤いバラ・青いスミレ・甘い角砂糖がぽろりぽろりと雨のように番兎に降り注ぐ。普通にしていても避けられない程の量が、緩やかな動きで前後左右に襲い来るものだからもう大変! 逃げようにもカトラリー達が邪魔をし、素早く動きたくても肉体が追い付かない! 頭に胸に背中に腕に、どこもかしこも【やさしいあなた】が触れたところから急激に力が抜けていくのが分かる。ユーベルコードを封じられ、それならば鋏刃で直接切断しようと振りかぶれば、そこに落ちてくる肆号。ぎゅぎゅぎゅっと怪力を込めて抱きしめれば、華奢な身体はミシミシと音を立てる。
「(うさぎさん、おいたはダメよ!)」
「ぐ……は・な・し・て……!」
 身動きが取れなくなったところを見計らい、漸く出てきたスミンテウス。ふぁーとひとつ欠伸をして、ぴょんと空中浮遊で下へと降りる。肆号が動きを封じている隙に、上からフェイントを込めて針で番兎の胸を串刺しにした。ゆっくり、ずぶずぶ。血が流れるのも1/10の速度、どろりとした液体はまるで毒みたい。黄金の髪が、白交じりの装束が、じんわりと紅く染まってゆく。ずぶずぶ、ずぶずぶ。何度か抜き差ししていると渾身の力で鋏刃を振るい番兎は肆号を突き飛ばす。ぼすっとスミンテウスに当たり、二人して仲良く倒れた。倒れる瞬間までゆっくりで、「あ、倒れる」と思いながら実際倒れ込むのはなんだか面白くて。戦場だけれど、戦争だけれど。
「(嗚呼、可笑し。おかしついでにお菓子が欲しいわ。スミンの今日の一杯は何かしら。楽しみね、早くお茶会を開きましょう!)」
 上に乗っかる肆号が重い。スミンテウスはそう思いながらも、彼女が楽しそうだからいいか、なんてぼんやりゆっくり考えていた。のそのそと起き上がった肆号は笑顔のまま手近に浮遊するナイフを手に、ゆぅっくり番兎に振りかぶっていく。その顔は至極楽しそうで。
「(アンネ、上機嫌。変なの。それは此処だっけ。まぁいいや、そろそろ動きにくいのも飽きてきた。折角目の前に美味しそうなお茶菓子があるんだから――)」
 まずはカトラリーのみんな、準備をよろしくね。スミンテウスの無言の命令に従ったカトラリーたちが、肆号と番兎を中心として360度方位する。
「(スミンったら、あたしを狙っちゃダメよ)」
 なんて、心配いらないだろうけど一応ね。スミンテウスが掲げた左手がのらりくらりと下へ振り下ろされると、カトラリー達はずぶずぶと番兎の肉体に食い込んでいった。はい、今日のお茶菓子の出来上がり! 始めましょう、素敵なお茶会を。でも此処を出てからの方がいいかしら。美味しいものは、早く食べたいもの、ね――?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

玉ノ井・狐狛
※アドリブ/連携などお任せ

小洒落たナリの嬢ちゃんだ
そういう外連味は好きだぜ、アタシぁ

考える時間をたっぷりくれるそうだが……
べつに普段、持ち時間に苦労している身でもねぇんだよな
というか相手も同条件なら、けっきょく猶予がそうあるワケでもない、時間いっぱいでどれだけ思考を重ねるかの勝負――

――なァんて向こうが考えてくれたなら楽だけどな?
レベルK思考、とかいうヤツだ
重要なのは「相手がどこまで読むかを読む」コト
必要以上の余計な考えは、むしろ動きを鈍らせらァ

……と、このくらいは敵さんも考えてるか?
そいつァ結構

そもそも読み合いなんざ関係なく、「隙間なく回避不能な攻撃を叩き込む」ってのが、この場合の正解だろ




 レベルK思考、というものをご存知だろうか? 『相手はこう考えるはず、故に私はこう考える……というのを相手も読んでいるから……』というゲーム的思考の無限ループである。この場合大事なのは相手の考えの裏を突くことでもなければ、思考を放棄することでもない。最も的確で有効な方法は「相手がどこまで読むかを読む」コト。必要以上の余計な考えは、むしろ動きを鈍らせる。
 時すら凍てついた時間城。相対した敵の動きを読む時間は十分すぎるほどある。――と言ってもこの玉ノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)、べつに普段から持ち時間に苦労している身でもない。
 相手も条件が同じであれば、結局猶予がそうあるわけでもない。時間いっぱいでどれだけ思考を重ねるかの勝負――なァんて、向こうが考えてくれたなら楽だけど。
「(……と、このくらいは敵さんも考えてるか? そいつァ結構)」
 小洒落たナリの嬢ちゃんだ。屹度そのふわふわの髪を揺らして、ひらひらと舞い遊んで、時を経ち、刻を断ってきたんだろう? そういう外連味は好きだぜ、アタシぁ。でもなァ、道中ならともかく、今はお互いボス格だ。思考を重ね、相手の手の内を漁り、行動を先読みする……ことそういう事に関しちゃ、こちらが何枚も上手ってモンさ。
 番兎クロノスの鋏刃がぎらりと閃き、その軌道がゆっくりと狐狛目掛けて弾ける! 獲物を狙う鋏は貪欲に狐狛を追尾するが、狐狛は宙を翔け掠るようにギリギリで内角と外角の境界を攻め躱していく。動きこそ鈍いが、故に描かれる回避の軌跡は幾何学模様にも似て美しい。これぞ勝負師、勝つだけが花じゃない。観客を魅せてこその業!
「(いやしかし、こうも鈍いと点が稼ぎ放題だな。っと、油断はいけねぇ。この動き……こっちの動きが読まれてる。このまま突っ込んだら首と胴がお別れしちまう。んーー……)」
 一瞬の長考。煌めく刃は一対と一丁。追ってくるのが一対の、金魚のフンみてぇに追尾してくる刃が一本ずつ。まだ遠いが、射線上にはあんぐりと大きく口を広げて待っている鋏。
 なるほど悪くない手だ、だが斯様に真っ直ぐな軌道では狐狛は掴めない! 読まれたなら読み返す、そしてその先を往く!
 狐狛が導き出した答えとはつまり。指先に力をこめて、全速力で以て振り上げた!
「(「隙間なく回避不能な攻撃を叩き込む」ってのが、この場合の正解だろ。なぁ嬢ちゃん、本気の弾幕勝負に安置はないんだぜ)」
 にやりと口角が上がり、代わりに振り下ろされた腕。指先に集まる妖力。ぱきっ……きらきら、ばちばちっ! 幾何学模様を描いていた回避の軌跡が城内に浮かび上がり、そのまま魔法陣として機能する!
 集まった光線は火花の如く輝き、雷が炸裂ッ!! それは人の動きよりも何倍も速い!! 眼前の鋏も、地上のクロノスも。全てを巻き込んで、閃光が迸った。
 ゆっくりと床に足を着いた狐狛は、ふとスカートに綻びを見つけた。危ないあぶない、もう少し私の当たり判定が大きかったら死んでたかもな……なぁんてありもしないことを考えて、ゆっくりとしかし全力で、歪な時を刻む城を駆け抜けていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アネット・レインフォール
▼静
シザーとはまた変わった武器を使うものだ。
状況から察するに…その能力も破格だろう。

それはさて置き。
折角、城という名の舞台に来たのだ、
彼女のワルツに付き合うのも一興ではあるが…。

――残念な事に、この先に少し用があってな?

すまないが道を通して貰うぞ

▼動
予め刀剣を念動力で周囲に展開。
これは攻撃と牽制用に。
ダメ元だがもし影響を受けないなら儲けものだ。

基本は霽刀・式刀の二刀流で攻めつつ、
他の刀剣を一斉投射する事で手数で攻めよう。

必要なら葬剣を盾に変化させ身代わりにしたり
暗糸を絡ませて隙を作る事も視野に入れる。

戦闘中は最小限の動きを心掛け、
霽刀に貫通攻撃の闘気を込め【零斬】を叩き込む。

連携、アドリブ歓迎




 じゃきり、大振りの鋏が血肉を求めて刃を滾らせている。操るは番犬ならぬ番兎クロノス。この時間城の守り手にして主。ゆっくりと長い睫毛に隠された瞳が、アネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)の黒漆の影から実体へとうつる。一挙手一投足が鈍るこの城内において、その瞳の耀きだけは瞬時にアネットの眼差しとぶつかった。
 シザーとは、また変わった武器を使うものだというのが第一印象。状況から察するに、その能力も破格であろうことが伺える。決して油断ならぬ相手であると、肌から殺気が伝わってくる。しかし、それはさて置き。刀の柄に手を預けすぅっと目を細めた。
「(折角、城という名の舞台に来たのだ。彼女のワルツに付き合うのも一興ではあるが……――残念な事に、この先に少し用があってな?)」
 此処で踵を返すわけにはいかない。すまないが道を通して貰うぞとゆるりと一歩踏み込む。内に隠した刀剣を念動力で後光のように上下左右に展開、磨かれた刀身がきらりと光る。攻撃にも牽制にも使える心強い仲間――味方――否、手足の延長。ダメ元ではあるが、もしこの時間の流れの歪みに影響を受けないのであれば儲けもの!
「し…………」
「(し?)」
 言いかけた番兎の唇の動きを読むアネット。……し、ん、で。死んでか。全く、悪い冗談だ、聞き流すにはちと重い。この鉛のように鈍い動きしか出来ぬ今では、軽やかに翻す事も出来まいに。
 操るは霽刀と式刀。更に浮遊させておいた刀剣を操り、一斉射撃と共に姿勢を深く沈めた。禍ツ刃の焦点が番兎に向かい、鋏刃と対峙する。ゆっくりと鍔迫り合う刃と刃。ギリギリと食い込んでいく音が耳に痛い。
「(中々どうして、手練れではないか。しかし――)」
 俺には及ばない――! 革靴が鈍重な歩みを踏みしめると、呼応するように刃の群れは番兎へ向かい射出され、のらりくらりと兎の胸へと突き刺さる。それを否定するように彼女は皎剣も誓斧も振り払うが、張り巡らされた蜘蛛の糸。翠霞喝采、香は菫。戦場にくまなく蔓延った暗糸が番兎を捉える!! 絡まった糸に呆気なく脚をとられたなら、こちらの動きは一刀、唯滅するのみ。
 糸の紡いだ意図の間を潜り抜け、目掛けて通る刃の路。弐刃を裡に秘め、いつの間にか拳に宿すは霽刀【月祈滄溟】。
「(やれやれ……此れもまた、運命の内か)」
 青の漣が二者の間に揺れる視界を断つ! ガッ、と相手の懐に入り込み刀の口を開く。そのまま柄から刃を引き抜き、番兎の身体を滄溟晶が引き裂いた! 
「がっ……!」
「(その命――貰い受ける! 貫け!!)」
 神速の刃がクロノスの柔肌を射抜いて、手に汗を握る。一瞬の攻防。相手は鋏刃を携えたまま、じっとこちらを睨んでいる。……何秒か、何分か、わからない、刹那であることは確かだけれど。番兎は力なく崩れ落ちて。零距離の凶刃は敵を追いやったと認識した。零斬、ありがとう。あとは任せて――。
 消えゆく敵影すらゆるやかなこの時を1秒か、あるいは10秒……1分? 分からないが、少々愉しんで――アネットは時間城を後にした。其処に残ったのは血固のみ……――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雪・兼光
まぁ、かぁいいお嬢さんがお相手とは嬉しいねぇ。
…。動きが十分の一にならなきゃもっと最高なんだけど。

時絶ち鋏は必ず回避しないといけない切断なんてごめんだよ。
第六感、見切りで回避だ。
時繋穴は向けられた対象だから、向けられる前に誘導弾付きのユーベルコードで力づくで向きを掛ける
取っ手に絡みついたリボンは来る前に範囲攻撃、2回攻撃、乱れ撃ちのユーベルコードで撃ちかえして、オマケで的にもダメージを狙う

時繋穴が厄介なのでスピード重視、傷口があるなら、傷口をえぐる、誘導弾、2回攻撃、乱れ撃ちのユーベルコードを叩きこんで綺麗な顔を台無しにしてやるよ。




「(まぁ、かぁいいお嬢さんがお相手とは嬉しいねぇ)」
 思考は冴えわたっている。明鏡止水の境地にも似た、透明でゆったりと流れる時間に、少しばかり心が跳ねた。動きが十分の一にならなきゃもっと最高なんだけど、とは、口に出さないお約束。雪・兼光(ブラスターガンナー・f14765)はゆっくりと宙を刻むクロノスを前にしても、極めて冷静で穏やかだった。心に一滴の雫が滴っても、湖面は僅かに響くだけ。例え時の流れが歪んでいようとも、その澄んだ力に大した影響は与えない。さて、時は巡った、勝負は一撃で決まる。
「(切断なんてごめんだよ)」
 時裁ち鋏が向けられ、キッとひらめく刃光一陣。ゆっくりと――それでも速いッ!! 現実では恐らく神速の業。今だから思考時間という猶予が与えられ、避けるだけの隙が産まれている。面白い、俺に迫るか。であれば全身全霊を以てお相手しよう。鋏の切っ先が向けられるより先に、誘導弾を当て力尽くで方向転換。こちらに対象を絞らせない。
 回避が出来たなら次にすべきは攻撃。クロノスのふわりと広がる金髪を射抜いて、兼光の手にしたブラスターから光線が放たれる!! カッと光ったと思えば刹那、光は1/10になったとて人の目で捉えられぬほどに速い!! 的確に……あるいは乱れ打ち。射程範囲内全てを網羅する範囲攻撃で攻め入った。銃爪を弾く速度は鈍くとも、発する光は瞬きよりも素早い。クロノスの服が、髪が、じわじわと焼け焦げ、追い詰めていく。この間2秒とない、あと一歩踏み込めば、お互い必殺の一撃が急所に入るだろう。それを見越して兼光もクロノスも歩みを進めた。
「(恐れないか。お嬢さん、あんたは強いね)」
 乱れ打った弾幕に紛れながら、銃口を構える。狙いは胸に飾られた銀時計、兎の象徴であるそれ。対するクロノスの凶刃が狙うは兼光の首ただひとつ……挟みこんできゅっと捩じり切れば一息。嗚呼恐ろしい、愉しい、嬉しい……こんな強敵と相見えられるなど!!
「消……え・ろ……!」
 クロノスの間延びした叫びに時空間がグッと歪み、上下左右が広がるようで狭まる。時間など関係ない、兼光の卓越した技能から繰り出される二回攻撃からの多段攻撃を、クロノスは艶めかしい動きで避けては鋏刃で弾く。一進一退の攻防で、一秒の半分が経過。拾ったブラスターを握りしめ、見据えた先に時計の中央。秒針も短針も長針も、全て集約されたそこへ、渾身の一撃……精神力を集約した光の弾丸を撃ち込む!!
「(お綺麗な顔を台無しにするのは勿体ねぇ。せめて凶弾に斃れてくれよ、なぁ――時の神の名を冠した『過去』よ)」
 撃ち込まれて、クロノスが回避行動に入る。しかし弾速は想像の遥か異次元に速くそれを許さない。気付いた時には番兎は核たる胸の時計のド真ん中を打ち抜かれ、はっと気付いてから発砲音が耳と鼓動に響いた。そんな、どうして。血を流すでもなくひび割れた時計を抱きクロノスは兼光を見つめる。ほんの少しだけ口角をあげて、兼光は微笑んだ。
「(お嬢ちゃんが強いから)」
 ――本気を出すに値する相手だったからと。伝える間もなく、番兎は臥した。途端、ピシっとナニかに亀裂が入る音がする。時間城のこの区画は、主を失えばもう持たないらしい。崩れ落ちるのも『時間の問題』だろう。でも心配することはない、此処では考える時間は十分にある。次の戦場の算段をつけてから走り出したって、全く遅くはないのだ。
 兼光はゆっくりと走り出し、一度だけ誰もいなくなった時間城を振り返る。其処は時が止まったかのように美しいままで――人々の記憶の中で、永遠に残るのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月05日


挿絵イラスト