6
迷宮災厄戦⑧〜first look, and kill

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #戦争モノ

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アリスラビリンス
🔒
#戦争
🔒
#迷宮災厄戦
#戦争モノ


0




●USA!
「戦場における優位点。火力、射程、物量、情報。そのどれもが重要だ。だが、強いていま我々に必要とされている要素を上げるとすれば……それは先制力に他ならない」
 残酷童話迷宮アリスラビリンス、その中に存在するとある世界。何処までも広がる眩い星空を貫くように、一本の塔が高々と天上目掛けて聳え立っている。
 それは天文台だ。本来は星を見る平和的な施設のはずだったが、いまは戦争中である。故に、塔内部に詰めているのは学者などではなく、物々しく武装した兵士たち。うさ耳が生えているが、それで可愛らしさを醸し出すのは些か難しいだろう。彼らは皆一様に望遠鏡を覗き込み、周囲へと監視の目を光らせていた。
「先に見つけ、先に撃ち、そして先に殺す! 一方的な蹂躙こそ、近代戦における至上の勝利!」
「我々はその手段を手に入れたのである! 勝利は最早確定的だ!」
 まるでレンズを通した光景が手に取れそうな、否、彼らは実際に遠くの景色へ攻撃を仕掛けることが出来るのだ。望遠鏡で覗ける範囲と距離で在れば、真実兵士たちは一方的な先制攻撃を行うことが可能なのである。
「来るなら来い、猟兵たちよ! 兎も時として狩猟者の喉笛を食い破るのだ!」
「「「U・S・A! U・S・A! U・S・A!」」」
 周囲を威圧するかの如く、一糸乱れぬ雄叫びが塔の頂より響き渡ってゆくのであった。


「ま、見つからずに接近してしまえばこっちのもんだけどねぇ? さてさて、という訳でお仕事の時間だよぉ」
 グリモアベース内。迷宮災厄戦の会議スペースの一角で、ルゥナ・ユシュトリーチナは集まった猟兵たちを前にしてそう気だるげに口火を切った。
「アリス・オリジンと猟書家たちによって引き起こされた今回の迷宮災厄戦……またぞろ厄介な内容だけれど、とりあえずは目の前の戦場から順に潰すしかないからねぇ。説明はしっかり聞いて貰えるとありがたいよ」
 此度、猟兵たちが向かう戦場は、美しい星空の広がる不思議な国である。中心には天文台の機能を持った塔が聳え立っており、其処に目標であるオブリビオン部隊が駐屯しているようだ。この塔の高さと備え付けられた望遠鏡が、此度の戦いのカギを握っている。
「この望遠鏡がまた曲者でねぇ? 覗き見た光景に対して、観測者が一方的に干渉できる……つまり姿を一目見られた瞬間、相手さんからの先制攻撃が飛んでくるって訳さね」
 彼我の距離にもよるが、逆にこちらの攻撃を届かせるのは至難の業だろう。故に、如何にして敵に発見されぬまま距離を詰め、塔内部へと乗り込めるかが戦いの大部分を占めるはずだ。
「幸い、塔の周囲には林や草原、高低差のある丘陵地帯がある。それを利用すれば、うまく立ち回れるだろうねぇ。距離以外は所詮数が頼みの有象無象。顔を合わせてしまえばこっちのものって寸法よ」
 その状況へと如何にして持ってゆくか。猟兵たちの知恵と技能の見せ所となるだろう。
「ともあれ、今はまだ最序盤。こんなところで足踏みなんてしちゃいられないし、とっと蹴散らしてやりましょうかねぇ」
 そう話を締めくくると、ルゥナは仲間たちを送り出すのであった。


月見月
 どうも皆さま、月見月でございます。
 諸事情により肉体面がボロボロですが、戦争シナリオ第一弾となります。
 ……当たり前ですが、筋トレってやっぱりキツイですねぇ。
 閑話休題、それでは以下補足です。

●勝利条件
 敵オウガ集団の撃滅。

=============================
●プレイングボーナス……望遠鏡に発見されない工夫をする。
=============================

●戦場
 高い天文台を中心とした、星空が広がる不思議の国。周囲には林や草原、丘陵地帯などが広がっております。上部に詰めている敵オウガが猟兵を見つけ出さんと目を光らせているので、発見されないよう工夫が必要です。
 塔自体に防衛能力は無い為、接近さえしてしまえば上部の敵までそのまま辿り着けます。

●採用について
 出来る限り採用する予定ですが、人数やスケジュールによっては流してしまう場合がございます。大変恐縮ですが、ご了承頂けますと幸いです。

 どうぞよろしくお願い致します。
148




第1章 集団戦 『うさうさトランプ兵』

POW   :    落雷II
無敵の【空飛ぶイボイノシシ型の対地攻撃機】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD   :    そう、我々はやればできる!
自身の【ゴーグル】が輝く間、【軽量自動小銃】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    バーガータイム
【ハンバーガーとフライドチキン】を給仕している間、戦場にいるハンバーガーとフライドチキンを楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

虻須・志郎
祭の場所はここか……?
しっかし星を見る道具で何してるんだか
いいぜ、好きなだけ悪夢を見せてやる

眷属を放ち先行させ、望遠鏡のレンズに糸を吐き付けさせる
視界が悪くなりゃ外して丁寧にお掃除しなきゃな?
きっとお前の命より高いレンズだぜ、それ

俺は内蔵無限紡績兵装でギリースーツを作成
周辺の地形に合わせ変装する
そのまま前進し、万が一視界に入りそうなら
寸前で眷属に望遠鏡を揺らしてもらう

辿り着いたらおしおきタイムだ
奴等を吊るす罠をそこら中に仕掛け
準備が整ったらP.A.R.T.Y.だコノヤロウ
眷属を暴れさせゴーグル目掛けて糸を放ち
吊るした奴等を一匹ずつブン殴って生命を喰らう
世界をシャッフルなんてさせるかよバカヤロウ



●糸吐き、絡め、吊るし上げ
「祭の場所はここか……? しっかし、星を見る道具で何してるんだか。風情を介さぬ連中だな、全く」
 がさりと、下草に身を紛れさせつつ戦場へ姿を見せたのは虻須・志郎(第四の蜘蛛・f00103)であった。じっと睨む先では、天文台最上部で動き回る敵の姿が朧気に見て取れる。彼は相手の無粋さに眉を顰めながら、ぱちりと指を鳴らした。
「いいぜ……そんなに見たけりゃ、好きなだけ悪夢を見せてやる」
 すると、関節をうぞうぞと戦慄かせながら現れたのは無数の毒蜘蛛である。蟲たちは召喚者の周囲へ散らばりつつも、四方八方から塔へとにじり寄ってゆく。
「眷属が到着するまで時間も掛かるだろうし、こっちも準備を整えておくとするか。今は夏場だし、色合いは濃い若草色……濃淡もつけておくに越したことは無いな」
 毒蜘蛛の姿が見えなくなると、志郎もまた行動を開始する。彼は現在位置から天文台までの間にある植生を手早く把握すると、体内に内蔵された紡績装置から濃緑色の糸を紡ぎ、身体に纏い始めた。正しく蜘蛛の如き手管、それによって瞬く間に完成させられたのはギリースーツ……狙撃手や猟師が使用する、迷彩用のカモフラージュ装備である。
 彼はべったりと地面に這いつくばりながら、下草を掴んでじりじりと前進し始める。見た目の偽装に加え、遅々とした動きはそよ風による揺れと区別がつきにくい。これを目視で見破るのは至難の業だが、万が一の危険は常に付き纏う。
「その時はくれぐれも頼むぜ?」
 だが、そんな時のために毒蜘蛛を先行させたのである。志郎は蟲たちが塔へ張り付いたことを確認すると、移動速度を上げてゆくのであった。

「そこを見張れ、あそこを見張れ! 我らの敵を根絶やしにせよ!」
「現在、敵影確認できず。だが、油断はするなよ……って、なんだ!?」
 一方、天文台の最上部より監視の目を光らせていた兵士たち。舐める様に周囲を走査していた彼等だったが、突然視界をガクガクと揺らされてしまう。何事かと覗き口から顔を離すと、望遠鏡の上に拳大の蜘蛛が陣取っていた。それらは兵士の顔やら望遠鏡のレンズやらへ糸を吐きかけ、視界を奪い取ってゆく。
「てっ、敵襲ぅっ! 蜘蛛の群れが襲ってきました!?」
「下手に発砲すれば望遠鏡を破損しかねん! 発煙筒の煙で燻せないか試せ!」
 手で払いのける者、発煙筒を取り出す者、慌ててレンズを拭う者。俄かに混乱し始める敵陣を見やりながら、志郎はニヤリと笑みを浮かべる。
「視界が悪くなりゃ、外して丁寧にお掃除しなきゃな? きっとお前の命より高いレンズだぜ、それ。こっちはその間に取り付かせて貰うがな」
 彼はその隙を突いて一気に距離を詰めるや、天文台内部へと踏み込んでゆく。蜘蛛型の戦闘ツールを取り出すとそれを投擲、括りつけて置いた糸を利用し瞬く間に内部を罠で埋め尽くしていった。
「こっからはおしおきタイムだ。P.A.R.T.Y.だぜ、コノヤロウ! 世界をシャッフルなんてさせるかよバカヤロウッ!」
「なッ、混乱に乗じたこちらが本命か!? くそ、身動きが!」
 相手もそこでようやく志郎の姿を見つけるも時既に遅し。足を絡め取られて吊り下げられると、当たるを幸いに血を抜き取られてゆく。さながら、蜘蛛の巣が如き惨状だ。
「ええい、多少の損害はコラテラルダメージだ! 撃て、撃て!」
「おっと、立て直してきたか。そうなると分が悪い。ここらが潮時かね」
 応射で放たれた弾丸を躱しつつ、宙空へと身を投げ出す志郎。彼は蜘蛛糸を命綱代わりに手繰りながら、塔の外へと一時撤退してゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

セルマ・エンフィールド
概ね言っていることには同意しますが……一つ異論があるとすれば。
獲物に迂闊を晒さないからこそ、狩猟者は狩猟者と呼ばれるんです。

【シェイプ・オブ・フリーズ】を使用し、戦場全体に氷雨を降らせます。
望遠鏡のレンズが曇り、また氷雨で視界が悪くなれば私を見つけることはできないでしょうが、念のため林や高低差のある地形を利用して隠れながら天文台に近づきます。

私が天文台の中に入れば天文台の中も戦場……屋内だろうとシェイプ・オブ・フリーズの雨は降り注ぎます。
のんびり食事など出させる暇は与えません。氷雨で凍てついた敵たちをフィンブルヴェトの氷の弾丸で制圧します。



●雨垂れに紛れ、氷弾は届く
「先に見つけ、先に撃ち、先に殺す。概ね言っていることには同意しますが……一つ異論があるとすれば。獲物に迂闊を晒さないからこそ、狩猟者は狩猟者と呼ばれるんです」
 林の幹に身を預けつつ、敵陣を見やっていたセルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)はそう小さく呟きを漏らした。狩る者は時として、狩られる者よりも臆病である。姿は勿論、音や臭いさえ気取らせまいと腐心しているのだ。その中には当然、周囲の環境を利用する事も含まれている。
「遮蔽物に加え、時間は夜。身を隠すにはうってつけですが、星空と言うのは頂けません。観光なら兎も角、戦うのであればやはり曇り……もっと言えば、雨が望ましい」
 とは言え、望んで雨が降るならば苦労はない。そう、普通であれば。しかして少女は猟兵、超常の異能を操る者。なれば天候を変える程度、造作も無かった。始めはポツポツと水滴が落ちる程度であったが、それは次第に雨脚を強め、瞬く間に土砂降りの氷雨と化す。
「USA!? 報告します、天候が急変! 雨により視界が悪化しました!」
「索敵を密に! こんな時にこそ敵は付けこんでくる。サーチライトをつけろ!」
 だが、相手も右往左往するだけではないのだろう。先の襲撃によって意識が警戒から戦闘へと切り替わったのか。塔上部から地面へと光が投げかけられ、円形の輝きが不規則に動き始める。
「考えましたね。ですが、雨粒によって見通しは悪くなり、冷気でレンズは曇ります。耐寒性能が在るとも思えませんし、適宜拭う事も出来るでしょうがそれも場当たり的な処置。これで状況は整いました」
 敵の利点は潰した。しかし、それで大丈夫だとセルマが慢心する事は絶対にない。身を低くしながら移動し、最短距離ではなく林や丘陵地帯の高低差を利用して僅かずつ、だが着実に距離を縮めてゆく。身を隠している敵を炙り出そうしているのか、時たま雨音に混じって発砲音が耳朶を打つ。しかしそれにすら眉一つ動かさず、狙撃手はペースを崩すことなく前進を続け……程なくして、天文台の根元へと辿り着く。
「塔の外なら兎も角、屋内で在ればまだ自分たちの領域だ……きっとそう考え、無意識に安心しているのでしょうね。残念ですが、戦場に安全な場所などそもそもありません」
 そうして音も無く最上部まで階段を駆け上がると、扉の隙間から内部を見やる。相手の配置を手早く把握するや、セルマは扉を蹴破りながら銃を構え、引き金を引いた。
「先手必勝……その意味、ご自身でも味わって頂きましょうか」
「なっ、またしても!? 見張りはいったい何をしてい、がぁッ!」
 悪態を吐くくらいなら、身を隠す努力の一つもしていれば被害の程度もまた違っただろう。尤も、末路自体は揺るがなかっただろうが。脳天を吹き飛ばされた兵士が崩れ落ちると同時に、室内にも氷雨が降り始める。セルマの立つ場所こそが戦場、であればこれは当然の現象である。
「室内で雨……!? だが、耐寒装備ならある程度の備えが」
「な、なんだこれは! 雨粒が触れた個所から、凍り付いて!?」
 咄嗟に銃を構えて反応出来た点は称賛に値するが、引き金もそれを押す指も凍り付いてしまっては意味がない。絶えず身体を動かして固着を防ぎつつ、ナイフや格闘戦で挑もうとするも、動作の鈍化は逃れようがなかった。
「この状況下でハンバーガーを出して来たら、それはそれで脅威ですが……のんびり食事など出させる暇は与えません」
 猟銃より放たれる氷弾は相手の命ごと存在を凍てつかせ、衝撃で粉々に砕け散らせてゆく。そうして氷雨の効果時間ぎりぎりまで粘ると、セルマは元来た道を戻って撤収するのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ダビング・レコーズ
隠密作戦ですか
直接戦闘を前提に設計された当機にとって適正の低い任務です
仮に忍者型ウォーマシンだったとするならば真逆の任務となりましたが
よって忍者になります

【POW・アドリブ連携歓迎】

隠密モードを起動し機体全てを忍者化
忍者特有の静粛性と周辺環境に溶け込む隠蔽能力を駆使し塔へ接近
最も視認性が高いであろう道中の草原地帯では地を這う蛇の如く姿勢を低くしなおかつ迅速に突破
丘陵地帯では射線の影から影へと移動
森林地帯では狭い隙間に入り込む機能で木々を掻い潜ります
対地攻撃機を召喚されたとしても対象の正確な位置が掴めなければ想定通りの効力を発揮する事は困難でしょう
塔への侵入に成功後は目標を確認次第挨殺します



●忍び、這い寄り、拳撃す
「……隠密作戦、ですか」
 作成内容は事前に説明を受けている。だがその上で、転送されてきたダビング・レコーズ(RS01・f12341)はふむと思案気にアイカメラを明滅させた。
 此度の肝は敵に見つからない事なのだが、この戦機がそれに適しているとは言い難い。二メートルを超える身の丈はそれだけで目立ち、白銀を基調とした機体色も薄闇の中でシルエットを浮かび上がらせてしまうだろう。無論、そう言った不利要素は彼とて百も承知で在る。
「直接戦闘を前提に設計された当機にとって適正の低い任務です。姿然り、音然り、些か以上に耳目を惹きましょう。仮に忍者型ウォーマシンだったとするならば、真逆の任務となりましたが……」
 ならばどうするのか。ダビングの答えは極めてシンプルであった。
「よって、当機は忍者になります」
 もし周囲に誰かが居れば『お前は何を言っているんだ』と突っ込むところではあるが、生憎と戦機は大まじめである。彼は己のシステムを隠密モードへと切り替えてゆく。それに伴い機体表層がうっすらと透け、周囲の景色へと溶け込み始めた。また、各関節部にはゴム製のカバーが伸び、駆動音と排熱を封じ込める。完全な透明化とまではいかぬものの、忍者の名に恥じぬ隠形をダビングは獲得していた。
「さて、これにて準備は完了ですが……敵方も襲撃を受け続ければ、哨戒の一つも出すのも当然でしょうね」
 そうして、林や丘陵地帯の影を経由しながら塔へ接近し始める。サーチライトや時折発砲される牽制射に当たらぬよう、狭い木々の間を柔軟に潜り抜け、身を晒す時間と面積を最小にすべく丘の影から影へと走り抜けてゆく。
 だがそんな時、頭上を通り過ぎる影が在った。さっとそれをカメラで捉えれば、飛び込んでくるのは一機の機影。その姿は然る超大国で正式採用されているという、雷鳴の名を冠する攻撃機と酷似していた。もし能力まで同じなら、対地攻撃能力は実際脅威である。
「専門の哨戒機ではありませんので、監視能力はそこまで高くはないでしょうが……環境がよろしくはありませんね」
 塔まで残り百メートルほど。だが其処に広がるのは背の低い下草ばかりの平原。出来る限り身を低くしながら、草を掻き分け突き進む……が。
『こちら疣猪1よりCP。草原内に不審な形跡を発見。ただし、姿は確認できず詳細は不明。猟兵と想定し、対地攻撃を行う』
 ウカツ! 姿は隠せても重量までは如何ともしがたく、通過後の轍を不審に思われてしまったのだ。明確な位置は把握されていないとは言え、このままで周囲の地形ごと攻撃されかねない。
「残りは約八十メートル……こうなれば仕方が在りません。後はもう、一気に駆け抜けるのみ!」
 ダビングが判断を下すのと、敵機首に備え付けられたガトリング砲が火を噴くのは同時であった。背後ではまるで爆発したかの如く下草が土ごと吹き飛ばされ、もうもうと土煙が上がってゆく。もし直撃を受けてしまえば、如何な鋼鉄の身体とてネギトロめいたスクラップになりかねない。
 迫る猛銃撃、威圧的なサーチライト、天文台の入口。それらがダビングの電子ニューロンをソーマト・リコールめいて駆け抜けてゆき、そして……。
「間一髪……と言った所ですか」
 巻き上げられた土砂によって押し込まれるように、戦機の巨体は天文台内部へと滑り込んでいた。だが、攻撃機の報告で相手もこちらの存在の気付いているはず。もたもたはしていられない。彼はバーニアを吹かせて一気に最上階まで飛び上がると、扉をぶち破り豪快なエントリーを果たす。待ち構えていたのはクローンじみて同じ容姿を持つ、兎の兵隊たちである。
「どうもオブリビオンさん……イェーガーです」
「ふざけんなコラーッ!」
 自動小銃が一斉に火を噴き、ダビングの装甲に当たって火花を散らす。しかし、その程度の豆鉄砲ではかすり傷しかつけられない。彼は一瞬にして彼我の距離を詰めると、正拳突きを繰り出した。
「ぐわぁぁああああっ!?」
 南無三、吹き飛ばされた敵兵士はそのまま望遠鏡を飛び越え、天文台の外へと落下してゆく。戻ってきた攻撃機が援護に加わり、それに伴って戦機が撤退するまでの間、同じ光景が都合七度は繰り返されるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

灯璃・ファルシュピーゲル
厄介な戦争になりましたね。
まずは事前にギリ―スーツを用意し着用

現着と同時にUC:ウロボロスアーセナルで
発煙弾発射機と無人擲弾銃架で武装した
UGV(無人地上車両)を多数作成召喚。

塔と周囲にむけ煙幕を大量投射しつつ
制圧射撃を掛けながら塔へ進軍させ
煙を使っての物量侵攻を演出し
兵士の視線を煙とUGVへ誘導。

その間に自身は別方面から
草木にギリースーツで隠れつつ
丘陵の窪みを活用して匍匐前進等で
手早く塔へ接近(迷彩・忍び足)

到着と同時に中へ指定UCで狼達を放って強襲
混乱した処を確実に射撃で倒し制圧する
(スナイパー・先制攻撃・2回攻撃)

「道具はあくまで道具…
頼り過ぎれば足元を掬われますよ?」

アドリブ・絡み歓迎



●我ら群れ成し狩り立てるモノ
「厄介な戦争になりましたね。ともあれ、まずは目の前の任務からこなすしかありませんか。幸い、敵の手の内はおおよそ割れています」
 転送されて早々、灯璃・ファルシュピーゲル(Jagd hund der bund・f02585)は周囲へと視線を走らせて状況把握に務めていた。先行した仲間のお陰で敵の警戒は強まっているが、それならそれでやりようがある。彼女は持参したギリースーツを着込みつつ、ぱちりと指を鳴らした。
「Was nicht ist, kann noch werden……なにも、姿を見せぬだけが隠密ではありませんので」
 すると、何処からともなく無数のエンジン音が響き始める。姿を見せたのはUGV……いわばドローンの陸戦版とも言える無人地上車両群だ。それらは車体上部に発煙弾発射機と擲弾銃架を備えており、人の手を介さずに面制圧砲撃を行えるよう手が加えられていた。
「大軍こそ囮に使うべし……それでは頼みましたよ」
 そうして塔へ向けて出発するUGV群を見送ると、灯璃は大きく迂回する様に別方向から接近を開始する。その上空では、ジェットエンジンの甲高い唸りが遠くから聞こえてくるのであった。

「各疣猪より緊急報告! 大規模な敵部隊が接近中とのこと!」
「至急迎撃に向かわせろ! 戦争というものは頭を押さえた方が勝つと教育してやれ!」
 塔へ向かわせたUGVの姿は、当然ながら敵部隊にも確認されていた。彼らは望遠鏡を通して車両を捉えると、次々に攻撃機を発進させてゆく。対する無人機たちも接近を察知するや、発煙弾を次々と発射しその中へと身を紛れ込ませていった。
「この塔はもともと天文台、戦闘用に作られてはいない。重砲は愚か、擲弾筒レベルの攻撃を受けても大きな損害は免れん。射程圏内まで近づかれる前に破壊しろ!」
 しかし、頭上を飛び交う機体は対地攻撃用に開発された機種である。機首のガトリング砲が猛烈な勢いで弾丸を吐き出し、翼下に牽引されたロケット弾ポットからは無誘導弾が幾条もの煙を曳いて飛翔してゆく。その度に星空を紅蓮の炎が照らしだし、破壊された鉄片が撒き散らされていった。UGV側も銃撃や擲弾による反撃を行うものの、元々の設計性能に加えて敵のメンタル面も大きく作用してくる。一方的に蹴散らされている状況では、大した痛打を与えることは出来なかった。
「はっ! 先ほどは散々煮え湯を飲まされたが、本来の能力を発揮出来ればこんなものだ」
「だな。どうだ、前祝いという訳じゃないがここらで一息でも」
「お、そいつは良いな。貰おうか」
 己が戦果を眺めて満足げな表情を浮かべる仲間へ、別の兵士がハンバーガーとフライドチキンを差し出す。それを受け取り、思い切りかぶりつこうとした……。
「なるほど、ジャンクだけれど美味しそうではありますね。なら、『我々』にも分けて貰うとしましょうか……Sammeln! Praesentiert das Gewehr! 仕事の時間だ、狼達≪Kamerad≫!」
 瞬間、食べ物ごと何者かによって両腕を食い千切られた。それを為したのは、黒々とした毛並みの狼である。獣はゴリゴリと音を立てながら肉を咀嚼する。一拍の間をおいて噴き上がる鮮血と怒号。それを黙らせるかのように、続けて室内に踏み込んだ灯璃は鉛玉を叩き込んでゆく。
 UGV群の役目は攻撃ではなく、相手の注意を惹く事である。その隙に塔内部へと侵入した灯璃は、狼の群れを召喚。一気に敵中枢へと雪崩れ込ませたのだ。
「あ、あれだけの戦力をみすみす使い潰した、だと……!」
「道具はあくまで道具……最期に信じられるのは己自身のみ。便利だと頼り過ぎれば、足元を掬われますよ?」
 こんな風にね。そうして少女は、気を緩めていた敵兵士たちを次々と討ち取ってゆく。狼群も忠実な猟犬の如くそれを支援し、獲物を着実に仕留める。中枢の危機に気付いた攻撃機が戻ってくるまでの間、一人と無数の群れは敵陣を散々に搔き乱すのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

フィロメーラ・アステール
「星を隠すなら星の中!」
星の妖精だからな!
星空に紛れるなんて朝飯前だぞ!

というわけで【空中浮遊】していくぜ!
頭上になるほど注意が向きにくいと思うし、備え付けタイプだと余計に上には向けにくいと思うので、できるだけ高く飛んでいこうかな?
星空の【迷彩】効果も活かしやすくなる!

もし見つかっても一回くらいなら「【残像】だ」って感じ高速移動して狙いを逸らせるかもしれない!
小さなものを望遠鏡で追いかけるのって大変だろ?

攻撃機が来ちゃったら【空中戦】だ!
対地装備に後れは取らない!
【踏みつけ】キック!

近づけたら【薄暮に踊る払暁の恒星】発動!
魔力を高めて光【属性攻撃】の光線!

ん?
……普通に【目潰し】できたのでは?



●其れは地を睨むでなく、星を望む為の
「なるほど、なるほど。地上から攻める場合にはああすればいいのか!」
 其処此処で破壊された車両がちらちらと残火を揺らめかせる、天文台周辺。転送されてきたフィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)は、戦闘痕跡から仲間が何を成したのかを読み取っていた。
「あたし的に地面を這ってどうのこうのって言うのは、ちょっと性に合わないけど……それでも参考にはなるな。つまり、星を隠すなら星の中!」
 数度の戦闘を通して、敵の注意は主に地上へと向けられている。攻撃機で制空権を確保出来ているというのも大きいだろう。ならば、そこに付け入る隙が在った。フィロメーラはふわりと飛び上がるや、天文台を見下ろせる高さまで上昇する。
「星の妖精だからな! 星空に紛れるなんて朝飯前だぞ!」
 人間であれオウガであれ、一つの物ごとへ意識を集中させるとそれに対しては目敏くなる分、他の物事に関しては意外なほど注意が疎かになるものだ。その証拠にフィロメーラが悠々と空中散歩に興じていても、サーチライトや望遠鏡のレンズが頭上へ向く気配はない。常人よりも格段に小さい体躯である事も、より有利に働いているのだろう。これならば特段の妨害も無く最上部へと乗り込めるかと思い始めた、その時。
「ぐおっ!? 望遠鏡を支える支柱が折れて……うん? あれは!?」
「おっと、これはちょっと不味いかな。『残像だ』って誤魔化せれば御の字だけど……ほら、小さなものを望遠鏡で追いかけるのって大変だろ?」
 戦闘の余波で脆くなっていたのだろう。望遠鏡の支柱がぽっきりと折れ、ガクンと角度が上を向く。兵士は覗き込んだままそれを直そうとするが、運悪くその視線が妖精を捉えてしまっていた。広い星空の中、この小さな体躯を見つけるなどどんな偶然だと言いたいが、見られてしまったものは仕方がない。
 猛然と急行してくる攻撃機を前に、しかして慌てることなくフィロメーラは肩を竦めた。
「いやはや、そう上手くはいかないか。でも、戦闘機なら兎も角、対地装備に後れは取らない!」
 轟音を立てて銃弾がばら撒かれ、幾条ものロケット弾が夜空に爆ぜる。弾丸一発で妖精の身長と同程度。当たれば血霧と化す威力だが、小さな翼をはためかせて巧みにそれを避けてゆく。そうして視界一杯に迫り来る敵機とのサイズ比は、果たして何倍と成ろうか。フィロメーラはくるりと身を翻すと、脚部に力を籠め……。
「タイミングを合わせて……せーのっ!」
 渾身のキックを攻撃機のコックピット目掛けて叩き込んだ。瞬間、ぐらりと体勢を崩し敵機は高度を下げてゆく。その在り得ない光景を前に、兵士はレンズ越しに目を剥いた。
「え、は、なぁ……はぁああああっ!?」
 物理法則を思い切り無視した光景に、相手は絶叫を上げる。己が想像に疑問が生じた今、攻撃機もすぐには反撃できぬはず。生憎とそんな分かりやすい隙を見逃すほど、彼女は甘くない。
「ここまで近づけば、既にこっちの射程距離だぜ! さぁ、覚悟して貰うよ!」
 フィロメーラは肉体の駆動へ回していた魔力を、全て放出用へと振り分け始める。収束してゆく輝きは星や月のそれを越え、まるで陽光が如き眩さを湛えていた。
「おい、誰でも良い! あれを止めろ!」
「いや、間に合わん! 退避、退避ぃぃぃっ!?」
 他の兵士たちも妖精の存在に気付いたのか、慌てて銃撃や他の攻撃機を差し向けて来るが、もう既に手遅れである。
「よーし、準備完了! これが、鮮烈なる夜明けの光……!」
 そうして、妖精は溜め込んだ魔力を解き放つ。それは一直線に伸びる光の柱。攻撃機や敵兵士を纏めて穿ち貫き、天文台の一部を削り取ったそれにより、相手の警戒態勢はごっそりと寸断されていった。御覧の通り強力な一撃ではあるが、消耗する魔力も大きい。
 小さく息を吐きながら、一仕事を終えたと踵を返すフィロメーラ。だがそこでふと、彼女の何かに思い至った。
「ん? もしかして蹴らなくても……普通に目潰しできたのでは?」
 それもそうだが、魔力を全て攻撃に投入出来たと考えれば悪くはないはずだ。そう自分を納得させながら、妖精は天文台より距離を取るのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ファン・ティンタン
【SPD】たかいたかい
アドリブ可

本来、私はキレイな戦い方ばかりじゃなくてね
たまには、兎狩りに興じたくもなるんだよ

【千呪万華鏡】で似て異なる自身を複製
強度は、ちょっとした攻撃で崩壊するくらい脆弱で構わない
弾けて、眩く消える花火のようなソレを、無数に、野へ放つ

狩りは数、狩りは包囲
一所に固まり留まる時点で、それは獲物の姿勢だよ

先んじて放ち、一身に興味を引く閃光特攻隊で望遠隊の視覚を焼きつつ、自身は悠々と裏口を蹴破り殴り込もうか
なに、“私”が見つからなければいい
奴らに、どれが私か、分かるとも思えないけれど

新兵諸君、今晩は
塔なんて狭所でそんな鉄砲振り回しちゃ、危ないでしょう?


兎は兎でも、こうも違うものか



●兎狩りの今昔を
 度重なる戦闘によって、天文台を中心とした一帯には物々しい惨状が広がっていた。あちらこちらには鉄骸や蹂躙された地面が見え、また塔の上部も一部が抉り取られている。だがサーチライトは未だ蠢き、無数の視線が敵影を求めて走り回り、まだまだ敵戦力が健在であることが感じられた。
「あちらは護りをがっちりと固めているようだ。ただ……本来、私はキレイな戦い方ばかりじゃなくてね? たまには、兎狩りに興じたくもなるんだよ」
 だが、それが臆する理由に成ろうか。答えは否だ。戦場へと降り立ったファン・ティンタン(天津華・f07547)にとって、敵は飽くまでも狩り仕留める『獲物』に過ぎなかった。
「ともあれ、そうするためにもまずは下準備だ。童話迷宮らしく『鏡よ鏡、鏡さん』、なんてね」
 白き少女が取り出したのは、昏い呪詛を湛えた手鏡だ。ファンはそれで己を映し出すと、俄かに鏡面が細波立つ。万華鏡の如く移り変わる鏡写しの世界。それらは手鏡より溢れ出すや、無数の鏡像となって顕現する。そのどれもが限りなく少女と似ていながらも、しかして見る者が見ればはっきり異なると直感できる現身。しかし、そもそも本物を知らぬ敵兵士であればこれで十分だ。
「強度は、ちょっとした攻撃で崩壊するくらい脆弱で構わない。弾けて、眩く消える花火のような……それくらいが、寧ろ丁度良いからね」
 号令も無く、身振りも無く、されど全く同じタイミングで鏡像たちは動き出した。その挙動に隠蔽や隠形と言った意図は見受けられない。ただ只管に、天文台を目指して歩き続けるだけだ。
「狩りは数、狩りは包囲。狩る者は常に動き続け、立ち止まった者から仕留められる……一所に固まり留まる時点で、それは獲物の姿勢だよ」
 果たして――狩猟者の群れに対し、獲物の抵抗が始まった。

「敵の第六波、視認! あれは歩兵、か? やけに無防備だが……」
「あちらから的へなりに来ているのであれば、それに越したことは無い。腹に何を抱え込んでいるやも分からん。近づけさせるな、撃てぇっ!」
 望遠鏡のレンズ越しにゴーグルがチカチカと瞬く。瞬間、猛烈な統制射撃が鏡像たちへと降り注いでいった。それらは成す術も無く弾丸の雨に貫かれ、そして。
「っ、閃光!? おい、望遠鏡から目をはな……が、あああっ!?」
「ファック! あのビッチ、見られていることを逆手にとって、こっちの目を潰しに来やがった!」
 眩い閃光が立て続けに炸裂した。鏡像は全て魔力によって構築されたものだ。故に攻撃をトリガーとして、自爆し閃光を放つよう術式を仕込んでいたのである。その目論見は功を奏し、兵士たちの瞳を真白く焼き潰していった。少なくとも、数分間はまともにモノを見られまい。
「ちぃっ! 足を狙って無力化するんだ、殺せばまた目を焼かれるぞ!」
 たちまち天文台最上部は目元を抑えた負傷兵と、閃光自爆を引き起こさぬよう慎重に銃撃する兵士たちによって、混乱の坩堝と化す。だがその最中、仲間たちへ指示を出していた兵士がふと疑問を漏らした。
「あれらは十中八九デコイに違いない。なら……本体はどこだ? あの中に紛れている? いや、それではソイツも巻き添えを喰らって視界を焼かれるはず。となれば、よもやっ!?」
「……そこにまで考えが至ったのは、敵ながら称賛するけれど。でも、ちょっと遅かったかな?」
 ハッと何かに気付いた瞬間、兵士の頭部は宙を舞っていた。くるくると跳ね飛ばされた頸が最後に見たのは、刀を構えた白き少女の姿。
「なに、“私たち”が見つかろうとも“私”が見つからなければいい。どれが私か、分かるはずもないのだしね?」
 大軍を囮に本命が乗り込んでくる。つい先ほど同じ手を喰らったばかりだというのに。そう歯噛みするも、全ては後の祭りだ。悔恨と共に兵士の意識は途切れ、肉塊が床へゴロリと転がる。それを蹴って退けながら、ファンは悠然と笑みを浮かべた。
「新兵諸君、今晩は。塔なんて狭所でそんな鉄砲振り回しちゃ、危ないでしょう?」
「撃て、撃てェッッッ!」
 俄かに放たれる弾丸の雨。それを掻い潜り相手の眼前まで踏み込むと、少女は次々と敵を切って捨ててゆく。その余りにも呆気ない手応えに、思わずスッと目を細めてしまう。
(兎は兎でも、こうも違うものか。まぁ、楽であることに越したことは無いし、それに……)
 視界を焼かれた兵士が復帰してくるまで、残り数十秒。それまでにどれだけ討ち取れるかを計算しながら、ファンは小さく呟きを漏らす。
「ビッチとは心外だ。これでも、一途な性分だと自負しているんだけどね」
 斯くして侮辱の代償を支払わせるべく、少女は刃を振り続けるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エメラ・アーヴェスピア
なるほど、確かにあなた達が言うように先制力という物は大事よね
でも、いくら強力な武装と言えど事前に情報があれば対策されてしまう物よ
そう…こんな風に、ね

塔の一番上、と言うのが非常に楽な位置ね
『ここに始まるは我が戦場』
このドローンの使い方は二つ…ステルスのまま接近させるのは共通よ
一つ目は天文台及びその周辺に展開し【偵察】【情報収集】し、同僚さん達を情報的に支援する使い方
そして二つ目は塔の上から敵に落とし、攻撃するや錯乱をする使い方よ
私自身は塔から見えない位置に隠れ、見つからないようにするわ
これが私の戦い方よ?さぁ、猟兵の仕事を始めましょう
…ハンバーガー、用意しておくべきかしら?

※アドリブ・絡み歓迎



●全ては我が耳目の裡に収まりて
「……なるほど、確かにあなた達が言うように先制力という物は大事よね。でも、それが一番かと問われれば、さてどうなのかしらね」
 戦闘開始前、意気揚々と敵兵士たちが叫んでいた先制力の優位。だが現在の戦況を翻って見るに、その内容にはどうしても疑問符をつけざるを得ない。その理由を、エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)は冷静に分析していた。
「いくら強力な武装と言えど、事前に情報があれば対策されてしまうものよ。それこそ、来ると分かっている先制攻撃ほど対処しやすいものは無いもの。例えば、そう……こんな風に、ね」
 半機人はいま、天文台から離れた位置にある林の中へと身を隠している。木陰から敵の様子を窺う彼女の周囲には、缶状の物体が無数に転がっていた。その数、実に四百以上。エメラが試しに手近な缶の表面をコツコツと指で叩くや、カシャリと音を立てて変形する。ふわりと浮き上がったソレは、魔導蒸気駆動のステルスドローンだ。その一つを皮切りに他の缶も次々とドローン形態へと移行し、空へと飛び立ってゆく。
「さて、と……塔の一番上、と言うのが非常に楽な位置ね。流石に三桁を越えてくると、操作だけでも全力を出す必要があるもの。分かりやすい場所に越したことは無いわ」
 彼女は自らが塔へと乗り込むのではなく、飽くまでこの場に留まることを選んでいた。言葉通りドローンの操作に専念したいというのも勿論あるが、ひとえに情報収集に依る仲間たちへの支援を狙ってのことである。
「ドローンはどれもがステルス性、見つけられる心配は早々ないはずよ。仮に発見されたとしても、これだけの数ですもの……例え三割を落とされたとしても、全滅判定には程遠いわね」
 お誂え向きに、塔の一部は崩れ落ちて穴が開いている。そこから潜り込めれば、より詳細な情報を得られるはずだ。半機人は慎重にドローンを操作しながら、送られてくる情報へと意識を集中させてゆく。
『猟兵側の攻勢が止まったな……これまでの被害合計はどうだ?』
『一割強が戦闘不能、残りも大なり小なり怪我を負っている。望遠鏡があるから、目と腕さえ無事なら戦えるのが不幸中の幸いだな』
 一割強が戦闘不能という字面だけならば、少ないと思うかもしれない。だがそれは飽くまでも死亡した者のみの話だ。怪我人は大抵それの二倍から三倍は存在する。つまり、実際は半壊に近いはずだ。望遠鏡による射程延長と言う優位は未だあるものの、そう考えると相手も中々に追い詰められていると言えた。
『小康状態の内に食事をとっておけ。今を逃せば、最後の晩餐すら食いそびれる羽目になるぞ』
『縁起でもないことを……オーケー、お言葉に甘えようか。ハンバーガーとフライドチキン、まさしくご馳走だな』
 食事、という単語にエメラはピクリと眉を動かした。事前情報から察するに、それが給仕されている間、食事を楽しめていない対象の動きは五分の一にまで低下させられてしまう。そうなれば揚力を得られなくなったドローンはたちどころに落下し、こちらの存在を気取られてしまう。それは余り好ましくない展開だ。
(とは言え、そう都合よくハンバーガーを持ち合わせている訳ではないし……そうね。なら、少しばかり失敬するとしましょうか)
 手持ちに無ければ、相手から奪えばよい。戦場におけるシンプルな解決手段である。半機人はドローンを音も無く配給担当の兵士へと接近させるや、タイミングを見計らって背後から衝突させる。
「おわっ!? 何だよ、こんな時に……って、誰も居ない。なんだ、気のせいか?」
 体勢を崩した兵士が振り向くも、既にドローンはその場から離脱済み。首を傾げながら仲間へ食事を運ぶ兵士は、ついぞトレーからハンバーガーの包みが一つ消えたことに気付くことは無かった。
「……味自体はそれなりだけれど、私には少しばかり量が多いかしら?」
 一方、エメラはドローンが運んできた食事を食むことによって、行動鈍化の影響から逃れることに成功していた。但し、量は某超大国での標準サイズ。彼女の小柄な体躯には少々キャパオーバーな大きさであった。
 半機人はくしゃりと包み紙を丸め、口元のケチャップを拭いつつ小さく息を吐く。
「ふぅ……ともあれ、そちらもこちらも腹ごなしは済んだようね。此処からは後半戦、偵察と支援こそが私の戦い方よ?」
 ――さぁ、猟兵の仕事を始めましょう。
 そうして、エメラは四百余りもの目耳へと己が意識を張り巡らせてゆくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

勘解由小路・津雲
ふうむ、この地形ならどうにかなりそうだな。あの望遠鏡はかなりやっかい、それゆえ守りに隙ができたか。兎は大人しく狩られてもらおう。

【行動】
【白帝招来】を使用。虎になって【迷彩】をほどこし、林や草原などの【地形の利用】をしながら塔に近づく。
一方で道具【式神】を適度な場所に配置しておき、ときどき動かすことで敵の注意を引きつけよう。まあ囮だな。

さて、敵の元にたどり着いたら戦闘だ。自動小銃は塔のような狭い場所では使いにくそうだがどうだろうな? 狙い通りなら近づいた時点でこちらが有利だ。同士討ちもかまわず撃ってくるなら、むしろ攻撃を回避しているだけで数を減らせそうだ。利用させて貰おう。


シキ・ジルモント
◆SPD
なるほど…ではこちらは狼の姿に変身する
見つかりにくい低い姿勢を保ち、『地形を利用』し高低差や林や草原の背の高い植物を遮蔽物として、身を隠しつつ接近したい
予めユーベルコードを発動、増大したスピードで遮蔽物間の移動は出来る限り速く行う
どちらも塔からの発見を防ぐ為だ

塔内部に乗り込んだら間を置かず敵の居場所へ走る
匂いや音を辿るなり、外から見た望遠鏡の位置から探れるだろう
特に銃を持つなら、火薬や煙の嗅ぎなれた匂いを追う事もできるかもしれない

発見したら即攻撃する
一方的に攻撃してくる程だ、今さら言葉は不要だろう?
ここまで近付けば後れは取らない
増大した反応速度で先制して、敵のゴーグルごと頭部を撃ち抜く



●虎狼相駆し、群兎を狩らん
「ふうむ、この地形なら足の方はどうにかなりそうだな。あの望遠鏡もかなり厄介だが、それゆえ相手の守りに隙ができたか。ならば、兎は大人しく狩られてもらおう」
 戦場へと転送されてきた勘解由小路・津雲(明鏡止水の陰陽師・f07917)は、ふむと顎を撫ぜながら手早く戦況を把握してゆく。幸い、情報の取り纏めに徹してくれている猟兵が居る為、戦闘経過や敵の状態を知るのに苦労は無かった。
「人よりも早く駆け、なおかつより視認性を低くする。更に相手が草食動物とくれば……こちらの取る手など、これ以外にあるまい」
 そうして状況の整理を終えると、陰陽師は金色に輝く金属で出来た人形を取り出す。遥かな外宇宙、其処に住まう星獣の外殻で組み上げた逸品だ。彼はそれを掲げ、祈りと共に剣指を斬る。
「西方司る天の四神が一柱、今星界の欠片の力を借りて、ここに顕現せん……白帝招来!」
 すると津雲の姿は掻き消え、人形の中へと吸い込まれてゆく。と同時に金色が純白へ変じてゆく、瞬きを数瞬する頃には立派な体躯の白虎がその場に佇んでいた。これならば、自然物を利用しながら、素早く走り抜ける事も可能だろう。
「なるほど……似た様な考えの仲間が他にも居たか。では、こちらは狼の姿に変身するとしよう」
 と、そんな白虎へと歩み寄る者がいる。下草を踏み締めながら姿を見せたはシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)であった。彼は興味深そうに白虎を一瞥しながら、大きく身体を仰け反らせる。頭上には満天の星空が輝くが、不思議なことに月は見当たらなかった。だが、その方が寧ろ好ましい。満月など見てしまったら、獣性を抑えきれる保証など無いのだから。
「文字通り、前門の虎に後門の狼だな……兎を狩るのに、これ以上うってつけの相手はそう居ないだろう」
 身体を前傾姿勢へと戻した瞬間、シキの身体は一瞬にして四つ足の獣へと変じていた。雄々しさを感じさせる、逞しい灰色狼。本能が剥き出しとなるこの姿には、彼自身思うところが多々ある。だが、これが敵に有効だと言うのであれば是非もない。共に征く仲間も同じ獣の姿なのだ、そういう意味では幾分か気も楽と言える。
 そうして二頭は視線を交わして頷き合うと、一目散に塔目掛けて疾走し始めた。
(狼と虎、速度面ではやや此方が上か。ならば、先導役を務めさせて貰おう。目耳は兎も角、鼻に関しては俺の方が効くだろうしな)
 移動距離と速度に勝る狼と、柔軟性と隠密性に長ける虎。となると、必然的に移動の際は前者が先行する形となる。灰色狼は背の高い草や丘陵地帯の影を選び取り、それらを最短距離で繋ぎ合わせながら走り抜けてゆく。
 一方、後方の白虎もただ追従していたわけではない。彼も彼で、万が一の場合を想定しての布石を打っていた。
(式神たちは各所に配置完了、と。出来れば使わないに越したことは無いが、窮鼠猫を噛むともいう。況や、兎が虎狼に噛みつかんとは言い切れまい)
 霊符を小鳥の形へと折り上げた、陰陽師謹製の式神たち。それらは今、彼の手を離れて方々へと散っていた。鉱山のカナリアという訳ではないが、危機の際には盛大に鳴いてくれることを祈りながら、更に前へ前へと突き進んでゆく。
 そうして二頭は着実に距離を詰めてゆき、残るは天文台周辺の草原のみ……と言った所で、俄かに彼らの周囲へサーチライトが集まり始めた。
『チラチラと影が見えていると思ったんだが……やはり、確実に何かが居るぞ!』
『またぞろ、陽動の可能性もある。他の場所も警戒しつつ仕留めろ!』
 目敏い者が居たのだろう、どうやら接近を察知されたらしい。索敵も兼ねた牽制射があちらこちらへと撃ち込まれ始めた。足を止めたままでは、居場所を割られるのも時間の問題である。内部へ乗り込んでしまえばこっちのもの、灰狼と白虎は塔の入口目指してさらに加速してゆく。
(これまでの交戦経験から、陽動や裏取りに対して過敏になっているのか。然らば、それも利用させて貰おう)
 白虎が指示を出した瞬間、各所に潜んでいた式神たちが飛び出し梢や茂みを揺らし始めた。すわ別動隊かと泡を食った相手が火線をそちらへ向けることにより、二頭への圧力が弱まる。
(小銃の発砲炎に望遠鏡レンズの反射。風に乗って流れてくる硝煙の匂いに、飛び交う怒号。雉も鳴かずば撃たれまいとは、よく言ったものだ。これでは襲ってくれと言っているに等しい)
 そのまま連れ立って扉を破り塔内部へと雪崩れ込むや、シキは速度を緩めることなく津雲と共に階段を駆け上がる。敵の配置について、直接見えたわけではない。だが道中で拾い集めた細々とした情報が、相手の陣容を雄弁に語っていた。
「来たぞ……いまだ、撃ぇっ!」
 そうして最上階へ飛び込んだ二人を待ち構えていたのは、銃を構え隊伍を組んだ兎の兵士たち。獣の姿を見るや否や、瞬時に一斉射撃を加えてくる。だが、この程度の迎撃など想定の範囲内だ。
「さて。こうなれば普通に喋れるとは言え、一方的に攻撃してくる程だ。今さら言葉は不要だろう?」
「なっ!? コイツ、人間の姿に……!」
 自身を狙ってくる銃弾に対し、シキは獣から人型へと戻る事により意表を突いた。シルエットや表面積、重心の変化を利用して銃弾を回避するや、お返しとばかりに拳銃を引き抜き発砲。不安定な体勢にも関わらず、狙い違わず手近な兵士の額を撃ち抜き沈黙させた。
「多勢に無勢だが、ここまで近付けば後れは取らない。それに二人なら、取れる戦法の幅も広がるしな」
 一拍遅れて敵中へと身を躍らせたのは津雲である。こちらは見た目こそ虎だが、依り代たる人形の基礎を構成しているのは星獣を覆っていた千変万化の外殻だ。故に、外見以上に毛並みは硬く、銃弾は表層を傷つけるのみ。
(自動小銃は室内、それも塔のような狭い場所では使いにくそうだがどうだろうな? 望遠鏡への損害を厭うならば付け入る隙があり、同士討ちも構わずに撃ってきた場合でも、それはそれで利用できる)
 例えどちらに転んでも津雲に損はない。爪牙を振るって防弾ジャケットを引き裂き、四肢で相手を打ち倒しながら、白虎は敵の様子を窺う。果たして、兵士たちが選んだのは後者であった。
「このまま暴れさせてはどのみち全滅は免れん! 多少の損害はコラテラルダメージだ、構わず撃ちまくれ!」
 同士討ち、物的損壊も止む無し。途端に室内は統制された銃撃戦から、弾丸が四方八方を飛び交う混沌へと移り変わってゆく。この先を見据えるのではなく、今を凌ぐ事だけに全力を賭した攻勢は粗雑ではあるが極めて厄介であった。
(あわよくば攻撃を回避しているだけで数が減らせるかとも思ったが、そう甘くはないらしい。気を抜けば、先に此方が削り取られかねないが……)
「……そちらはその方針のままでいい。注意を惹いてくれれば、あとは俺が仕留めていく」
 そんな時、助け船を出したのはシキであった。人間と虎、どちらがより視線を集め、本能的に脅威と見做されるか。いまさら論ずるまでもない。津雲は持ち前の耐久性を頼みに注意を惹き、その隙にシキが銃撃で一体ずつ確実に撃ち抜く。単純な策ではあるが、統率を欠いた兎に対してこれ以上ないほど効果を発揮していた。
 そうして二頭は引き際を冷静に測りながらも、連携を活かして獲物を狩り仕留めてゆくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

吉備・狐珀
姿を見られないようにする必要があるようですね
姿を隠せる場所はありますけど…それを利用しながら素早く移動するのは…うーん…

あちらの視界を遮ることにしましょうか
UC【協心戮力】使用
望遠鏡に映らないように茂みに隠れて、まずは絡繰り人形の兄の炎(属性攻撃)で外気を暖める。熱気を帯びたところで私の氷(属性攻撃)で急激に冷やして作るは濃霧。
ついでに霧の水分を利用して望遠鏡のレンズを凍らせてしまいましょうか。
これで塔に登る時間稼ぎができるはず。

接近に成功したら月代とウカの(衝撃波)を(一斉発射)して(範囲攻撃)の奇襲をしかけ一気に(なぎ払い)。
ウケ、その巻物で月代とウカのサポートお願いしますね。



●霧の星夜に狐は舞いて
 戦闘開始より既に短くない時間が経過している。猟兵たちの度重なる波状攻撃によって、敵部隊の行動可能戦力は既に定数の三割を満たすかどうかといったところだろう。このままいけば、残り少ない敵を磨り潰して順当に勝利することが出来るはずだ。
「とは言え、窮鼠猫を噛むとも言います。況や、兎と狐であればその差はなお縮まりましょう……優に驕らず、気を緩めず、全力で挑むと致しましょうか」
 だが、戦場へと降り立った吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)の表情に、油断の色は微塵も浮かんではいなかった。たかが三割、されど三割。単身で挑むにはまだまだ数の差は大きいと言える。
「何はともあれ、まずは姿を見られないようにする必要があるようですね。身を隠せる場所はありますけど……それを利用しながら素早く移動するのは、うーん……」
 望遠鏡による警戒網を掻い潜る策を思案し始める狐拍であったが、彼女は元来機敏に動き回ることを得手とする性質ではない。とは言え、ここから届かせ得る攻撃手段も無し。さてどうしたものかと首を捻る少女は、暫しの間をおいてポンと手を打った。
「であれば、あちらの視界を遮ることにしましょうか」
 そう言って、彼女は茂みに身を潜めたまま繰り糸を手繰り寄せる。ゆらりと姿を見せたのは、己が兄たる絡繰り人形だ。黒衣の術士が手を振るうや、その先端よりぼわりと焔が吹き上がる。目的は燃焼ではなく暖気、つまりは空気を温めることだ。ゆらゆらと陽炎が揺らめき始めた頃合いを見計らい、狐珀は大きく息を吸い込む。
「熱気を帯びた空気を急速に冷やしてあげれば、水分は結露し宙空に漂う。つまりは……」
 濃霧の出来上がりです。ふぅ、と。少女が吐息を吹きかけると、それは凍える冷気となって暖気と混ざり合う。刹那、まるで珈琲にミルクを溶かしたか如く、周囲が滑らかな白に包まれていった。
「……霧か。この期に及んで、これが単なる自然現象と思う者などおるまい」
「サーチライトの照度を上げろ。姿は見えずとも、影くらいなら浮かび上がらせられるだろう」
 瞬く間に戦場を覆い尽くす濃霧を前に、兵士たちは冷静に対処を進めていた。追い詰められて逆に肝が据わったというべきか、散々に打ち負かされた経験が身に着いてきたか。水蒸気のヴェールを貫くように、幾条もの光が最上部より伸びる。
「あちらも接近を想定しているとは言え、この濃度であれば早々に見つかりません。それに大気の冷気と湿度によって、レンズの結露や凍結は免れないはず……それだけの時間が在れば十分です」
 準備は整った。狐珀は茂みの中から飛び出すと、円形の光に捉えられぬよう足早に歩を進めてゆく。そんな少女の元へ、三つの影が姿を見せた。一匹は黒々とした毛並みを持ち、もう一匹は霧に溶けるような真白き、二頭の子狐。そして頭上には月の名を冠する仔龍が身を翻している。霧の中を征く主へ付き従う様に、或いは先導するかのように、三頭の獣はひた駆ける。
「相手ももう、乗り込まれることが前提でいるはず。敵の言葉を借りる訳ではありませんが、先手が重要となってきましょう。月代、ウカ、頼みましたよ。ウケも支援をお願いしますね?」
 三頭は各々、小さく一声鳴いて了承の意を示す。そうして塔へと取り付いた狐珀はそのまま足音を忍ばせながら階段を駆け上がってゆく。辿り着いた最上部、扉の向こう側では無数の気配が蠢くのを感じられた。待ち構えられていたとしても、不思議ではないだろう。
 だが、足踏みしていてはますます危険が増大してゆくのは目に見えている。故に狐珀は意を決して、扉を押し開け……。
「目立った動きが見当たらんな。既に侵入されている可能性がある。一部人員は観測を止め、出入り口の警戒を……」
「っ、そうはいきません。みんな、いまですっ!」
 間一髪、相手が戸口へ警備の人員を回そうとしたまさにその瞬間、狐珀は奇襲を仕掛ける事に成功した。飛び出した仔龍と白狐が魔力を衝撃波へと変換して解き放ち、黒狐がその威力を増幅させて室内を蹂躙してゆく。もしあと数秒躊躇していれば、こうも鮮やかに決まらなかっただろう。
「一手遅かったか……!? 討ち取ろうなどと無茶はするな、撃退するだけで十分だ! 望遠鏡だけは死守せよ!」
 たちまち、応射の弾丸が少女へと襲い掛かってくるも、咄嗟に展開した魔力障壁で第一射を凌いだ。今ので少なくない数の敵を仕留められた。ただでさえ残り僅かな敵戦力を考えれば、上々の戦果だろう。
「この戦場そのものが、まだまだ緒戦。無茶は禁物ですね……!」
 役目は果たせた。そう判断した狐珀は躊躇なく撤退を選び、仲間たちと共にその場から離脱してゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ペイン・フィン
さて、かくれんぼ勝負と行こうか

視力、暗視、第六感、聞き耳の感覚強化を行って
情報収集、世界知識で周囲の情報を確認
そして、目立たない、迷彩、偵察、忍び足、闇に紛れるで隠密
林や草原、丘陵地帯
隠れる物が多いなら、ほぼ、独壇場
……ついでに言えば、天文台まで行く必要も薄いし、ね

射程ギリギリ、82m位置でコードを使用
敵がどのあたりに居るかさえ分かれば、視認の必要も無い

扱うのは猫鞭"キャット・バロニス"

なぎ払い、武器落とし、範囲攻撃、蹂躙で、範囲の敵の武器を狙って攻撃
武器を落とせば、他の人もやりやすい
そうでなくとも、範囲攻撃を継続して、ヘイトを溜めようか
……さて、兎狩りの時間、だよ



●踏み入るだけが戦でなく
「……もうほとんど、戦力は残っていないみたい、だね。とは言え、だからこそ血眼になって、こっちを先に見つけ出そうとしているんだろうけど……それもどうやら、厳しいらしい、ね」
 戦場に残った魔力の残滓は良く知る仲間のもの。ペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)は仮面越しに敵陣の様子を窺いながら、相手の余裕の無さを肌で感じ取っていた。
「そもそもの目が、もう残り少ない……だからもう半ば、踏み込まれることを前提に、動いている節があるね」
 通常の目視とは違い、望遠鏡はより遠くを見れる分どうしても視野が狭くなる傾向にある。数が居ればそれを補う事も可能なのだが、兎兵たちの残存数ではそれはもう望めない。既に監視網は穴だらけ、だからこそ彼らは無意識に『敵が乗り込んでくる』という前提で思考し始めているようであった。
「……なら、その思い込みを利用させて貰おうかな。ともあれ、まずは先にかくれんぼ勝負と行こうか」
 先手を取るのは確かに重要だ。だが、其処に至るまでにも相応の下準備が必要となる。ペインは手早くその算段を脳内で組み立てると、音も無く駆け出した。周囲に身を隠す遮蔽物は事欠かず、彼自身そういった隠密行動が不得手ではない。
 視覚、聴覚、嗅覚。触覚や味覚も含めた五感を強化し、不可視の視線を感じ取ろうと精神を研ぎ澄ませてゆく。微かに漏れ漂う感情の残り香も、敵の動きを察知する貴重な手掛かりとなってくれた。
(やっぱり……どうにも、塔の周囲へ視線を向けつつも、背後に気を配っているみたいだね。気もそぞろ、といったところかな)
 もしかしたら、もう見落としているのでは。もしかしたら、既に侵入されているのでは。そんな疑念が常に纏わりつき、集中を乱しているのだろう。先程、紙一重の差で警戒が間に合わなかったことも影響しているのかもしれない。
(疑心暗鬼に憑りつかれている、みたいだ……なら、少しばかり揺さぶりをかけてみようか。自分の場合、天文台まで行く必要も薄いし、ね?)
 そうしてペインは塔まで辿り着くも、内部へ踏み込むことは無かった。外周をそろそろと廻りつつ遥か頭上の敵を見上げ、己が兄姉である猫鞭を取り出す。おおよそ、彼我の距離は八十メートルといったところだろう。
(射程はぎりぎりだけど、これなら届くね。差し詰め灯台下暗し、だよ)
 そうして、ペインは己の意識を遥か上の気配へと集中させてゆき――。
「定期報告。敵影は未だ見えず。先の襲撃から間が開いているのに、まだ異常が見当たらない」
「そろそろ来てもおかしくない……と言うよりも、また侵入された後やもしれん。やはり念の為、出入り口にも哨戒の人員を」
 幸か不幸か、タイミングよく望遠鏡から目を離し振り返った兵士。その眼前へと、青年は瞬間移動していた。呆気にとられる相手と、仮面越しに視線が交錯する。
「……さて、怖いのが、やってきたよ」
「うっ、うわぁあああああっ!?」
「侵入者だっ!? 畜生、何時の間に入ってきやがった!」
 これには相手方も予想外だったのだろう。咄嗟に警告を発するも、反応は致命的なまでに遅かった。ペインは決して、その隙を見逃さない。青年は手首のスナップを効かせて猫鞭を振るうや、相手が手にしている銃器を数挺纏めて絡め取り、そのまま外へと放り投げてしまった。呆気に取られた兵士たちの間へ、一瞬の静寂が降りる。
「自分が狩る側で、そちらが狩られる側……ここからは兎狩りの時間、だよ」
「な、舐めるなっ! 掛かれ、掛かれぇええっ!」
 一拍の間をおいて響き渡った銃器の落下音。それを契機として、兎兵たちがペイン目掛けて殺到してきた。だが、青年の得物も一度に九つの対象へ攻撃できる手数を持つ。手近な相手へ鞭先の鉤爪を引っ掛けるや、ぐいと引いて他の兵士を巻き添えに転倒させてゆく。
「抵抗手段を奪われたら、てっきり逃げ出すかと思っていたけれど。それこそ、脱兎の如く、ね」
「兵士に敵前逃亡の文字はない! 例え、兎であってもだ!」
「そう……なら自分も、加減無しでやるだけだよ」
 絡め、引き、倒し、踏み砕き。散々に敵陣を搔き乱すと、頃合いを見計らってペインは最上部より飛び降りた。猫鞭を壁面に引っ掛ければ、危なげなく降りる事も容易い。
「さて、残りはもう僅か……次で多分、終わりかな」
 地面まで降りた青年は先程までいた戦場を見やりながら、そう戦いの終わりを予期するのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
さて、どう攻略した物か
御伽の騎士の様に挑んでは手痛い反撃を受けるは必至
戦争も緒戦の内に修理費用が嵩むのは避けたいものです

…自分でも嫌になるような思考回路ですね、切り替えましょう

UCで持ち込むはSSWウォーマシン特殊部隊用の弓矢
森の中からセンサーの●情報収集で曲射に必要な情報●見切り
●怪力で引き絞り矢継ぎ早に放つは塔の壁面
鏃の後端部分に取り付けたスモークグレネードでの●目潰しで望遠鏡無力化

●騎乗した機械馬で一気に接近
ワイヤーアンカーの●ロープワークで素早く塔に乗り込み近接攻撃で制圧を狙います

最初から榴弾砲で塔に砲撃した方が良かったやもしれませんね…
あの矢は需要の関係で下手なブラスターより高いので



●風車へ挑めや痩せたる騎士よ
「敵は既に壊滅状態なれど、防衛拠点は未だ陥落せず……さて、どう攻略した物か」
 都合十を超える襲撃により、迎撃側の戦力は既に払底寸前であった。しかし、一番の脅威である望遠鏡と天文台は依然として健在。死に体と侮って掛かれば、刺し違えられる危険もないとは言えないだろう。ううむと、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は悩まし気に腕を組んでいた。
「御伽の騎士の様に真正面から挑んでは、手痛い反撃を受けるは必至でしょう。戦争も緒戦の内に修理費用が嵩むのは避けたいものです」
 極論、食べて寝てれば傷の治る生身と違い、鋼鉄の身体は何かと金子が掛かるもの。この戦場を軽んじる訳ではないが、懐事情は体躯と裏腹に痩せている。どうにか損傷なく済ませられないかと考えるも、ふと我に返り頭を振った。
「戦場に立ってもなお金銭の心配とは……自分でも嫌になるような思考回路ですね、切り替えましょう」
 戦闘後は兎も角、戦闘中くらいは騎士らしく振舞いたいとトリテレイアは気を引き締め直す。幸か不幸か、コソコソと隠れ潜む能力を彼は持ち合わせていない。なれば、己が流儀を以て挑むまで。そうして彼が取り出したのは、身の丈ほどもある金属製の強弓であった。
「我ながら節操が無いとは思いますが、刀槍騎射は騎士の嗜み。銃器に持ちえぬ強みをとくと味わって頂きましょう!」
 そうして、鋼騎士は木立に身を隠しながらセンサーで情報を収集。弾道予測を弾き出すや、ひょうと立て続けに矢を放つ。弓は銃と違い発砲音が無く、静穏性に優れる。故にこのような局面には打ってつけである。
 曲線を描く矢は次々と天文台の壁面へと突き立つと、鏃後部に備え付けられたスモークグレネードより濛々と煙を吐き出し、相手の視界を遮り始めた。
「またしてもこちらの視界を……!」
「この人数で射撃を行っても埒は明かないだろう。疣猪を出せ!」
 猟兵の襲撃を察知した兎兵は、なけなしの戦意を振り絞って攻撃機を召喚する。姿は見つかっていないとは言え、ここからは時間との勝負だ。トリテレイアは待機させていた機馬に跨るや、スラスターを吹かせながら吶喊を敢行する。
「風車ならぬ星見の塔。吹き飛ばされるくらいであれば、自らの意志で飛び上がるまでです!」
 噴射炎に気付いた攻撃機が機首を差し向け、猛烈な射撃を浴びせてくる。加えて、眼前には急速に迫り来る塔の壁面。意図せず前後を挟まれる格好となったが、鋼騎士に焦りはなかった。彼はワイヤーアンカーを最上部目掛けて射出するや、鉄鈎でがっちりと固定。そのまま加速を利用し、ほぼ垂直の壁面を駆け上がり始めたのである。
「騎兵が……敵の騎兵が壁を駆け上がって来るぞ!?」
「駄目だ、小銃弾程度じゃ装甲を抜けん! 早く、疣猪を呼び戻せ!」
 潜入、瞬間移動、飛行突破などは経験すれど、こうも豪快な突入は初めてだったのだろう。慌てて応射を試みるもその程度の火力では耐久性特化型の戦機へ痛打を与えることは叶わず、騎士の突入を許してしまった。
「損害は表面装甲版の傷程度。これならまだ許容範囲ですね……事此処に至れば最早是非もありません。この戦場における闘争、いまここで決させて頂きます!」
「例え敗北は必定であろうと、我らに投降や降参の文字はない! 掛かれぇっ!」
 長剣と大盾を手に踏み込む騎士と、小銃の三点バーストにて迎え撃つ兵士たち。暫しの間、剣撃と銃声が響き渡った後……荒れ果てた天文台に立っていたのはトリテレイアであった。
「これにて制圧完了、ですね。危なげなく終われて何よりです……が、最初から榴弾砲で塔に砲撃した方が良かったやもしれませんね。あの矢は需要の関係で、下手なブラスターより高いので」
 鋼騎士はほっと一息つくものの、消耗品の概算を弾き出して憂鬱そうにそう独り言ちる。矢は金が掛かる、安い兵士を出せ。かつて中世ではどこぞの王がそんな発言をしたという与太話もあるが、実際矢というものは意外と高価なのである。
「ですが、身銭を切って勝利が買えるなら安いものです……幾ら財貨を積もうとも、得られぬ物は多いのですから」
 ともあれ、この戦場は猟兵側の勝利で幕を閉じた。この先もまだまだ長いが、一つずつ戦果を重ねてゆくのが肝要だろう。トリテレイアは踵を返すと、天文台を後にするのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月05日


挿絵イラスト