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迷宮災厄戦⑤〜狂気・蒸気・瘴気を抜けて

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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 褪せた色の、どこか懐かし気な空気すら漂う花園の国に、文字通りの異彩が入り込んだ。
 生やした機械から毒々しい蒸気を垂れ流し、ぬいぐるみに似た影が花を踏み荒らす。
 ふらふら、ゆらゆら。どこに向かっているかも分からない足。
 ぐるぐる、ぐるぐる。血走って焦点の合わない目。
 嘗ては愉快な仲間だったものは、今は狂気の徒となっていた。

●グリモアベースにて
「ごきげんようですわ、猟兵の皆様。お目にかかれて嬉しうございます」

 琥珀色の髪に浮かぶ泡を揺らし、セイレーンの女性が頭を下げた。イメルダ・スキュアリエル(好きな言葉は濡れ手で粟・f26513)と名乗ったその女性は、時間も惜しいというように、グリモアを操作しながら口を開く。

「クッッソややこし……失礼。先月末から立て続けに予知が起こったような『迷宮災厄戦』の案内ですの。オウガ・オリジンに猟書家の方々。思惑入り乱れる三つ巴というヤツですわ。……ともあれ、カチコむには足場を作らなければなりませんわ」
 ということで。イメルダはゴーストに持たせたグリモアを操作して、像を再生した。
 映し出されたのは、色褪せた花々を包むように広がる、毒々しい色合いの蒸気。
 それを振りまくのは、背中に蒸気機関のようなものを生やす、生々しい血走った瞳のぬいぐるみ。もう助からないだろうと直感的に思えるくらい、彼らは狂気に侵されて、花園を練り歩いている。

「このオウガ達……アンメリー・フレンズに生えているものは、『魔導蒸気機関』というものですわ。そのおかげで強化されつつ、周囲に汚染をドバドバ流してしまっていますの。無策で蒸気を吸い込めば、皆様の体力も削られてしまいます。そりゃもう、容赦なく、ごりっごりに」

 その上で強化されたオウガ達が、数の暴力を行使してくる。そんな劣勢に追い込まれない為にも、瘴気の蒸気を防ぐなり払うなり、何かしらの対策は必須だろう。
「『アンメリー・フレンズ』自体も、巨大化や周囲の個体との合体、状態異常を引き起こす血をぶちまけてくるなど、厄介な敵ですの。……元が何であれ、敵は敵ですわ」
 痛ましい狂気に目を伏せたが、それも一瞬だけ。改めて猟兵を見回して、イメルダは転移を発動させた。

「集団で襲い来る敵と、瘴気の蒸気への対策。それをお忘れなきよう」


佃煮
 お久しぶりです。佃煮です。
 アリスラビリンスで戦争ですね。ややこしいですが頑張っていきまっしょおい。

●本シナリオについて
 このシナリオは「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結する、特殊なシナリオとなります。
 瘴気の蒸気をモクモク振りまく敵達と、花園の国での戦いとなります。
 吸い込んだものを蝕む蒸気は、発生源である敵達に近づくと濃くなっていきます。

 プレイングボーナスがあります。ご参考ください。

●プレイングボーナス
「瘴気の蒸気」への対抗手段を考える。
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第1章 集団戦 『アンメリー・フレンズ』

POW   :    アフィッシュ・ストラクチャー
対象の攻撃を軽減する【醜くいびつに膨れ上がった異様に巨大な姿】に変身しつつ、【異形化した手足や所持している道具等】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    ポートマント・ビーイング
【周囲の仲間と合体する、又は合体させられる】事で【禍々しく歪んだ恐ろしい姿】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    スライシー・フルード
自身に【影響を及ぼしたオウガに由来する悪しき力】をまとい、高速移動と【状態異常を引きこす毒液や汚染された血等】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

緋月・透乃
今度フォーミュラーをやれそうなのはこの世界かぁ。猟書家とか何か色々いるみたいだけれど、全部倒せばいいんじゃないかな!?どいつもこいつもなかなか強そうだし、今から戦うのが楽しみだね!
そのためにも、まずはこの場を切り抜けないとね!

瘴気を振りまくとは厄介だね。でも、厄介なほうが乗り越え甲斐があるってものだね!
対策は火迅滅墜焼でそこらじゅうに炎を撒き散らして色々燃やす!炎や煙等で蒸気を払う狙いだね。
敵に攻撃するときも、火迅滅墜焼で炎を纏った重戦斧【緋月】を前に突き出したまま突っ込んで怪力を活かして叩き割りにいくよ!でかくなっていても力で押し切るよ!




 瘴気を含んだ毒々しい蒸気が、桃色の炎に乾かされ、急速に薄くなっていく。その乾いた空気と火の粉舞い飛ぶ中、緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)は得物である重戦斧の柄をしっかりと握り、気合を入れ直す。
「オウガ・オリジンに、猟書家に……何か色々入り組んだ感じみたいだけど」
――全部倒せばいいんじゃないかな!?
 生粋の戦闘好きである彼女にとって、度重なる予知で映った敵達は先に待つ楽しみのようなもの。戦いへの期待はさながらお菓子のように甘く、キラキラと輝いているようにも感じられる。そこへ行くためには、まずはこの場を切り抜けねばならない。

「厄介な瘴気だけど……その方が乗り越え甲斐があるってものだね!」
 先程の炎で瘴気は薄れ、再び濃度の高いものが漂ってくるまでは体力が削れることも無いだろう。透乃はこぼれる笑顔を隠すこともなく、濃い瘴気の漂う辺りへ相対した。
 【緋月】という銘の重戦斧を一振りすれば、桃色の炎をまとった風が瘴気を吹き飛ばす。一瞬だけ見えたボロボロのぬいぐるみは、発生源のアンメリー・フレンズだろう。幽鬼のようなそれが濁った白目を向けたのと、透乃が斧の刃を向けたのはほぼ同時。
「……燃え上がれっ!私の、魂!」
 ぶくぶくと泡立つように膨れ上がる敵に、炎が、斧が突き刺さる。かさぶたのような、防壁のような硬い巨躯と斧の力がぶつかり合い、そして。
「でかくなっても押し切るんだから!……桃火の一撃、火迅滅墜焼!!」
 ばきばきと音を立て、アンメリー・フレンズの背から蒸気を吐いていた機関がはじけ飛ぶ。そのまま、異形のぬいぐるみは重戦斧によって両断され、地に伏した。

「ふう、これで瘴気も薄くなったかな?立ち止まってちゃいられないね、次も倒しに行かなくちゃ!」
 砕け散った蒸気機関の破片を斧で軽く払うと、透乃は次の瘴気へ向かっていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

楊・宵雪
同行
神崎・柊一(f27721)
「なんだか可哀想な子たちね。せめて楽にしてあげなくちゃ

瘴気の蒸気対策
可能なら風上取り呪詛耐性とオーラ防御で耐え
UCの炎の熱で気流を起こし蒸気の流れを誘導
拡散防ぎ味方守りつつ技能破魔で無害化を試みる

さらに、部位破壊で蒸気機関部を狙い
衝撃波の風圧で蒸気、飛散する液体から身を守る

高速移動には弾幕で面で押すことで対応
多重詠唱も使い弾数を増やす
追い付けそうなら誘導弾使用
相方と挟撃し逃げ道をふさぐ

合体されないよう足止めを意識し、足元への攻撃や気絶攻撃を使用
とくに硬い巨大化状態のときは気絶攻撃を多用
複数個体が近くにいれば相方と攻撃を集中させる


神崎・柊一
同行
楊・宵雪(f05725)

「ここまでくるともはやホラーの域だな…
解放してやらないとね、この悪夢から

瘴気の蒸気対応
先制+弾幕+貫通+部位破壊で敵の蒸気機関を狙い
UCの爆発の熱、爆風で蒸気の霧散と瘴気の破壊を狙う
結界術で自分と仲間への蒸気の影響を抑える

巨大化する敵は、自身を支えるものや足などを貫通で破壊
自重での転倒と周囲の巻き込みを狙う
本体の位置への直接攻撃での破壊を狙う

高速移動と汚染された毒液に対しては一斉射撃等の弾幕を面で展開して捕まえる
一人で無理な場合は進路を塞ぎ、宵雪に任せる
合体を狙う個体がいる場合は足止めをしている間にこちらで攻撃し撃破を狙う
必要に応じて空中からの掃討にも切り替える




 毒々しい色のついた蒸気に覆われて、セピア色の花々がけぶる。
 褪せた花の色や輪郭もぼやけるようなその中をふらふらと、何処へ行くでもなく彷徨うぬいぐるみの影たち。
 聞こえないはずの嘆き呻きすらも漂ってくるようで、その痛ましい様子に二人の人影は、どちらからともなく目を伏せた。
「ここまでくると、もはやホラーの域だな……」
 ぽつり。人影の片方である、神崎・柊一(自分探し中・f27721)はそう零す。
 やや蒸気の薄い風上で、貼った結界により呼吸はひとまず確保された状況で彼が戦場と敵の観察をしていると、ふわりと、柊一の横を狐火が通った。
 複数の狐火を動かし、熱で更に蒸気を誘導しているのは、柊一と共に転移してきた楊・宵雪(狐狸精(フーリーチン)・f05725)だ。
「……なんだか、可哀想な子たちね」
 常日頃ゆるやかな笑みを浮かべる彼女も、悲し気に呟いた。
 きっと、蒸気の向こうにいる発生源、アンメリー・フレンズは自らが何をしているかも分からないのだろう。背中から生やされたものがどのような禍々しいものかも知らず、自分が何なのかすら分からない。
 正気でないまま、自覚ないままに害を流す存在と化した者達を、せめて早めに解放しなければ。
 きっと彼らの本意のままに沈んだのではないその狂気から、出来るだけ早く、楽に。
 柊一と宵雪は頷き合い、蒸気の濃い辺りに狙いをつける。
 ぎちぎちぎち。耳を塞ぎたくなるような歪な音を立てて、向こうので蠢く幾つかの影もこちらを向いた。

 侵入者を察知したのだろう、アンメリー・フレンズの一体がぼこぼこと身体を大きくしながら緩慢に歩みを進める。いびつに膨れ上がった片腕を支えに、ボロボロの布塊にも似たもう片方の巨腕を振り上げた……と、同時。
「……吹き飛べ、フルバースト!」
 全兵器解放の後、支えの腕を狙った全力の一斉発射。
 その風圧で蒸気は吹き飛ばされ、支えを失ったアンメリー・フレンズが痙攣しながら後ろへ倒れ込む。無くなった筈の支えを探すように緩慢に巨腕が横に振られ、その挙動で更に蒸気が巻かれていく様で他の個体も気がついたのだろう。
 ある個体は倒れた巨腕に巻き込まれた際の怪我を自ら抉り抜き、またある個体は歯を剥いてツギハギの手に噛みつくと同時。瘴気の蒸気に混ざって血の放射が始まった。
「させないわ。……防ぎながら面で押しましょう、柊一さん」
「ああ、隙が出来たら蒸気機関部を狙ってくれ」
 こちらに届かせてたまるか、と。宵雪が狐火を集め、柊一が銃器を構え直した。痛みから逃げるように移動の速くなった敵達に、大量の狐火と銃弾の雨が降り注ぐ。回避する場所を潰し、一気に広範囲を巻き込めば動きの速い個体も倒れていく。
 しゅうう、と音を立てる蒸気機関に狐火が飛び、爆破の衝撃で蒸気を吹き飛ばしながら機関自体も壊していって。
 雲が晴れるように毒々しい蒸気が薄れれば、周辺のアンメリー・フレンズらは皆倒れていた。
「せめて、安らかに」
「……そうだな」
 決意新たに、二人は次の蒸気が濃い場所へ向かっていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鈴木・志乃
安らかに眠れますように。
……どうにもこういうオウガを見る度、胸が痛むね。全然慣れないよ。

高速詠唱オーラ防御展開。一先ず呼吸域を確保。
全力魔法UC発動。私はそこそこ浄化が得意なのでね。こういう件にうってつけ……かどうかは分からないけど。
そのままUCの衝撃波で範囲攻撃のなぎ払いをして行くよ。相手は集団、蹴散らして行かないとこっちが蹂躙されてしまう。

最後ぐらい、穏やかな夢を見たっていいんじゃないかな。
アリスや他の仲間たちと、幸福に過ごしていた頃の幻想を見せるよ。そうして此方が、私が見えないように、味方に被害が行かないように誘導する。
……難儀だね。フォーミュラが倒れて少しでも平和になればいいのに。




「……全然、慣れないよ」

 戦場を幾度廻れども、慣れないものは慣れないもので。どうにも、こういった理性無きもの、元は善良な何かだったことが伺えるオウガを見る度しくしくと胸が痛む。
 濃い蒸気を防ぐ為に張ったオーラの中で、鈴木・志乃(ブラック・f12101)は静かに浅い溜息を零した。
 一応呼吸できる場所は確保したとはいえども……気持ちの問題だろうか、深く息を吸い込む事すら躊躇われる。
(折角、浄化が得意なんだから。こういう時にがんばらないとね。……そこそこ、だけど)
 改めてオーラ越しに前を見れば、いたましいまでにボロボロのぬいぐるみ達の姿。悲しみに痛む心も変わらない。……だけれど。やるしかないのだ。
 志乃が浅めに息を吸い込んで、吐く詠唱にユーベルコードを乗せれば、一陣の風が吹き込んで、短い髪をさわさわと揺らした。
 その風に呼ばれるように、アンメリー・フレンズが踏んだ土塊が、ころころと蒸気に吹かれる小石が、花園と道を隔てる柵が形を失い、清浄な気をまとった風にかわってゆく。
(最後ぐらい、穏やかな夢を見たっていいんじゃないかな。)
 清浄な風は、流星群の光る空にも似た澄んだ輝きをまとって蒸気の雲を吹き祓う。暈す雲が無くなって、鮮明な姿をさらすアンメリー・フレンズは辺りを見回し、そうして。……狂気に血走った目が、穏やかなそれに変わってゆく。
(これはね、アリスや他の仲間たちと、幸福に過ごしていた頃の夢。狂気に沈むことなんてなくて、只々、平和だった頃の)
 もうその日に戻ることは無いけれど……せめて最期、思い出に浸るぐらいは。
「おやすみなさい。良い夢を」
 ぼろぼろと、崩れるように倒れて行くアンメリー・フレンズ……ぬいぐるみ達。
 彼らをオーラの中から見送って、志乃は次へ向かっていく。

「……難儀だね。フォーミュラが倒れて少しでも平和になればいいのに。」

成功 🔵​🔵​🔴​

ファルシェ・ユヴェール
ぬいぐるみに生える蒸気機関……
強化、と申しますか、
『魔改造』……等という言葉が浮かばなくもありませんが

瘴気の害は勿論として、匂いが付きそうで嫌ですね
ひとまず大判のストールで口元を覆い、
外套の襟を寄せる等の物理的な防護も致しますが
愛用の白手袋を引き、オーラの障壁を纏う
呪われた宝石の類に触れる際に使う物ですが
こういう場合も効果が見込めますかどうか

では、浄化のエメラルドの欠片を掌に握り、触媒とし
力を纏い、浮かび上がれば
高速で襲撃、一体に当てたら即離脱
再度別の角度から奇襲、そして離脱
所謂ヒット&アウェイ、と申しましょうか
これでしたら濃い蒸気の中に長居もしませんし
囲まれるリスクも少なく済むのではないかと




 背中に蒸気機関を生やしたアンメリー・フレンズ達は、着実にその数を減らしつつある。発生源である機関が減るのに従って、蒸気の濃度も減っているのだが。未だに毒々しい色合いの蒸気は漂って、褪せた花の色を更に見えなくさせていた。太陽の光すらも薄ら暈すようなその蒸気の中、きらり、きらりと何かが瞬いた。

(ぬいぐるみに、蒸気機関。『魔改造』……等という言葉が浮かばなくもありませんが)
 黒い外套の襟を引き寄せて、ファルシェ・ユヴェール(宝石商・f21045)はそう思案する。
 視線の先には一段と色濃い蒸気と、その中をうごめくアンメリー・フレンズ。背中を突き破る煙突のような蒸気機関と、そのせいか大きく俯き、ただ歩くだけとなったぬいぐるみ。とても不釣り合いだ、と思う。機械がぬいぐるみに寄生しているようでありながら、一方的な搾取ではなく強化と周囲の汚染が為されているその様は、まさしく魔改造だろう。
(……さて、)
 ファルシェが白手袋を軽く引くと、それがスイッチになったようにオーラの障壁が現れた。呪物となった宝石に触る時のものであるが、こういう場合も応用が利いたらしい。
 ちゃり、と小さな音と共に、手の中にはエメラルドの欠片が緑色のきらめきを零す。薄い蒸気によってわずかにけぶる視界でも、宝石の光はさえざえと目に映った。そのまま欠片を手に握れば、貴石の魔術が発動する。

 機関から零れ地を這うような蒸気は、この国の空気に比べて重い部類だったのだろう。
 文字通り、宝石のような光と共にファルシェが宙に浮いてみれば、靄のような蒸気が薄く、歩く敵の見えやすい位置を見つけることができた。
「長居をするつもりはありませんからね、上から行かせて貰います」
 宙を軽くひと蹴りして、高速で敵の頭上へ。濁った眼で見上げた一体が、ぶくぶくと泡立つ……その前に。エメラルドの閃光が降り注いで穴を開けていく。
 仲間がやられた(……という意識も無くて、きっと物音に反応したのだろう)他の個体が空を見上げるも、ファルシェの姿は既に無く。
 それらの背中を狙ったように、別の角度から閃光が突き刺さった。
(所謂、ヒット&アウェイと申しましょうか)
 瘴気の蒸気が渦巻くところに長居せず、囲まれる前に離脱して一撃、また一撃。
晴れ空がはっきり見えるようになった辺りで、ファルシェは一息ついて、地上へ降りていった。

 こうして、ぬいぐるみ達は骸の海へ還ってゆく。歩くままに踏み荒らされた小路も、蒸気で萎れた花々も、やがて元の姿を取り戻すことだろう。迷宮災厄戦は、まだはじまったばかり。確実に、足がかりが一つ増えたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月03日


挿絵イラスト