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機構迷宮へようこそ~破壊機関へと至る左路

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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 轟音が響き渡る。
 地響きを立て、スチームドレイクとトレジャリーガードが戦っている様は、さながら怪獣決戦だ。
 自動追尾する弾丸から逃れるべく、跳躍したスチームドレイクが壁へと尾を打ちつけることで動線を変えた。
 バシュッと鋭い蒸気音を立て、開いた口々から錬金術の炎を降らす。
 降り注ぐ轟炎を迎え撃つは、絶え間ない弾幕であった。
 炎を爆破によって相殺し、残る自動追尾の弾丸は着地したスチームドレイクの胴長を次々と穿っていく。
『ギャリィィィィィィッ!!』
 耳を劈く蛇型の機械音は、人の身であれば脳髄を貫くようなもの。

 機構迷宮にはかつて、二体の災魔が封じられていた。
 凶暴なスチームドレイク、魔導技術と蒸気機械の粋を集めて作られた魔導ゴーレム。
 この二体が邂逅すれば被害は甚大となるであろう。


「……ということを予知したのよ。
 皆さんには、二体の凶悪な災魔――オブリビオンが出会ってしまう前に、対処をお願いしたいの」
 ポノ・エトランゼ(エルフのアーチャー・f00385)が集まった猟兵たちへと告げた。
 怪獣決戦かなと思う予知ではあるが、いざ邂逅が果たされたとなれば、迷宮へ潜る学生たちにも被害がいく。
「どちらも引かないみたいだから、こちらで各個撃破するしかないわよね」
 二体が出現する機構迷宮は、左右それぞれのルートを辿ることになる。
 左へ進めばスチームドレイク。右にはトレジャリーガード。
「皆さんには左ルートを担当してもらうわね」
 と、ポノ。スチームドレイクだ。
 左はスチームロードと呼ばれる区域がある。
 下層のスチームドレイクが暴れた結果だろう――通路の蒸気機械に穴が空き、熱い蒸気が大量に漏れ出しているようだ。
 猟兵たちはまずはそこを突破しなければならない。
「不味いことに、この場所、いずれ上層とリンクしちゃう部分があるのよね。
 だから皆さんには補修もお願いしたいのだけれど、大丈夫かしら」
 補修し、ある程度安全性を確保しつつ進んでほしいとポノが言う。
 そこを抜け進めば、次の回廊へと出る。
 迷宮を見回るオブリビオンが出現するようで、倒しつつ進まねばならないようだ。
「見回る災魔も、機構迷宮の左奥にいる巨大な災魔も、手強いから――どうぞ皆さん、気を付けて」
 そう言って、ポノは猟兵たちを送り出すのであった。


ねこあじ
 こんにちは、ねこあじです。
 今回はカンナミユMSとの、ゆるふわ合わせシナリオとなっております。
 よろしくお願いします。

・第一章、蒸気熱の対処・補修をしつつ進む
 アッツイので、入る時はお気を付けください。
・第二章、集団戦
・第三章、ボス戦

 となっています。
 第二章・三章は移ると同時に、冒頭リプレイをちょこっと書きまする。
 それでは、プレイングお待ちしております。
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第1章 冒険 『スチームロード』

POW   :    材料を運搬したり、大雑把に補修する

SPD   :    細かな箇所などを補修する

WIZ   :    知識を活用して補修する

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ミク・シィナ
こう見えて、力仕事には自信がありますの。
重い材料の運搬はお任せ下さいな。
それと、補修も大雑把にではありますが、お手伝いさせて頂きます。
その際は、ユーベルコード「漆黒の瞳」を使用し、手の届かない箇所の補修も、この力を使って行うこととしましょう。

参加時の衣装は漆黒のゴシックドレスに漆黒のマントを羽織っております。
後は装備欄をご参照の上で。

【使用技能】
礼儀作法1、怪力13、地形の利用1、第六感10、歌唱1、暗視1、クライミング1、誘惑5


ハバムル・アルコーン
【SPD】
地味な作業だけども頑張るしか無いねーよーしさっそk…あづっ!あっつっ!?
こ この服のままじゃ熱さで死ぬぅ!
し、仕方ない…ここでだけ依頼で貰ったこの水着を着て作業を…(無駄に露出度高め)う、うぅ…【恥ずかしさ耐性】はあるといえ…!でも【覚悟】を持って臨むしかなぁい!
特に熱い場所には【バトルキャラクターズ】で召喚した小人に補修して貰おう、手数も多くなって細かい場所も迅速に補修していける筈だよ。
迷宮内は灯りも少なそうだし【暗視】を活用しつつ指示を出していくね。


弦切・リョーコ
WIZ
ほうほう、これが蒸気機械!SSWの科学とは方向性は違うし単独ではまだ粗が目立つが魔法と相補することで超常的な現象を起こすのか、これは興味深いな。
修理しなければならんのが口惜しいね、一回分解して中身を見たいところなんだが…分解はオブリビオンまでとっておこう。
さぁ、修理しながら色々学ばせてもらおうかね。

興奮気味に【世界知識】をアルダワに適合させ、【学習力】で機構を理解しながら、SSWの科学知識を組み合わせたり『集束電磁放射』をレーザートーチのように用いて他の人の運んだ資材を溶接したりして修理する。
資材運搬の担当がいれば必要な資材を依頼したり、手先の技術がいる部分は味方を頼ったりと連携する。


キギ・レインメーカー
やたら暑いねー、蒸気の発生源とかどうなってんだろうね?
【行動】 WIZ-知識を活用して補修 ナミルちゃんが大雑把に塞いでいったところを補修してこうかな 「世界知識」「毒使い」を元に熱に反応して硬化する熱耐性の高い薬液か何か作れないかな 暑さ対策はある程度我慢するけど、

よっぽど暑いようなら 「零れる雨」に「属性攻撃」で”熱属性を攻撃”する雨を降らしてみようか ケイスさんが周り警戒してくれてるみたいだしある程度そっちのけで薬液調合とか雨の調整に集中
【その他】 チーム【カタラ】にて行動。アドリブ歓迎


死之宮・謡
スチームドレイクかぁ強いんだろうねぇ?心躍るねぇ?

まぁまずは補修か…うん、無理だね。抑強者と戦いたいだけの戦闘狂にそんな細かい作業できるわけ無いね…。材料運搬位頑張るかね…指示さえ貰えればある程度は動けるからそれは言っておくかね?

はぁ補修は面倒だけどスチームドレイクとやらと戦うのは楽しみだし我慢するかねぇ…


ケイス・アマクサ
「おお、これぞスチームパンク……っつーやつかな? ま、気合入れてやってこうぜ」
【行動】【SPD】
チーム【カタラ】にて行動。
中は大層熱いらしいが、極力スーツは脱がないぜ。
これは一応戦闘服も兼ねてるからな。
行軍中はナミルの大雑把な修理に、追加で補修を入れていきつつ、あたりの警戒と万が一の迎撃を担当するぜ。
警戒は敵性存在だけじゃねぇ、所々噴き出る蒸気その他施設の不備が原因での危険なところなんかも、な。
「いやーしかしすげぇな、なんだこりゃ……一体どういう仕組みで動いてるんだ? これ全部蒸気で動いてんのか……?」
どういう構造の物かはわからねぇけど、少しでもデータなりを集めておくぜ!


ナミル・タグイール
【カタラ】の皆と
迷宮探索は好きだけど暑いのは嫌いデスにゃー!
あっつ!あっついにゃ!毛皮が燃えちゃうマスにゃ!
金ピカも熱いにゃー!!こういう作業は苦手デスにゃー!
さっさと直してボス倒しに行くにゃ!

耐えれなくなったらキギに冷たいものねだるにゃ…。
なにか欲しいにゃ…溶けるにゃあ…。

・行動【POW】
【怪力】で修理に必要な鉄板とか道具を持ってくにゃ
毛皮パワーである程度なら熱くなってもきっと持てるにゃ。
力仕事は全部任せろデスにゃー!カンカンして穴ふさぎますにゃ!
暑すぎて近づけないとかはもう無理にゃ!諦めるにゃ!
(暑すぎてやる気がでない猫)なんでも歓迎


城島・冬青
【アヤネさん(f00432)と一緒】
うわー、中はあっついですね
なんかサウナみたいですね、アヤネさん
まぁぶっちゃけサウナに入ったことないんですけどね、私!

知識を活かして補修しようかな
【情報収集】で事前に修理の情報を得て修繕に使えそうな道具を持参していきます
それと【地形の利用】でその場で使えそうな物を利用したりします
アヤネさんに手伝ってもらいながら補修を行います

アヤネさんすごい汗ですよ、大丈夫ですか?💦
水分をしっかり摂って下さいね(スポーツドリンクが入った水筒を手渡し)
熱い蒸気をモロに浴びて火傷なんてシャレにならないので蒸気口周辺では特に気をつけて移動や補修作業をしましょう


アヤネ・ラグランジェ
【ソヨゴ(f00669)と一緒】
(トラブルとかアドリブとか歓迎します!)
暑いよソヨゴ
僕はサウナっていうのは天国みたいな場所だって聞いた
ここは灼熱地獄だネ

補修作業は得意ではないけどがんばってソヨゴの作業を手伝うよ
電脳ゴーグルを展開して周囲の状況に気を配る

汗?
ああ、こんな暑いならもう少しマシな格好で来ればよかったネ
耐火スーツとか
冗談はさておき、飲み物はありがたくいただくよ
ソヨゴも飲んで、ってスポーツドリンクを返すネ

この蒸気は思ったより危険かもしれない
罠みたいに吹き出されたら嫌だネ
注意深く周囲を観察して進もうか




 究極の地下迷宮、アルダワ。
 刻一刻と姿を変えるようになった迷宮に出来た、機構迷宮。
 左右にわかれた猟兵たち――左路。
「こう見えて、力仕事には自信がありますの。重い材料の運搬はお任せ下さいな」
 人数が減った分、修理のための資材を新たに抱えるのはミク・シィナ(漆黒の令嬢・f03233)だ。
 漆黒に染まったゴシックドレス、銀薔薇のヘアバンドを着用した姿は令嬢そのものであったが、見かけによらずの力持ちらしい。
「私モ、材料ノ運搬ヲ手伝イマス。他ニモ、何カアレバ指示ヲ下サイ」
 死之宮・謡(情緒不安定の狂戦士・f13193)もまた材料を抱えている。
 警戒しつつ進む猟兵たち。
 新たな階層へと突入した時、猟兵たちを迎え入れたのは湿度ある熱気だった。
「うわー、中はあっついですね。なんかサウナみたいですね、アヤネさん。
 ……まぁぶっちゃけサウナに入ったことないんですけどね、私!」
 周囲を見回す城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)の声に応じるのは、アヤネ・ラグランジェ(颱風・f00432)だ。
「僕はサウナっていうのは天国みたいな場所だって聞いた。ここは灼熱地獄だネ」
 アヤネの言葉通り、まさに灼熱地獄だ。
 息を吸いこめば、じわりと肺を焼かれているような感覚にも陥る。
 アヤネが、電脳ゴーグルで電脳世界となった周囲を見回す。
「あっつ! あっついにゃ! 毛皮が燃えちゃうマスにゃ!」
 ナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)が声を上げた。
 まだこの階層に入ったばかりでこれなのだから、補修が必要な場所へ近付いた時は、どんな暑さだろう。
「おお、これぞスチームパンク……っつーやつかな? ま、気合入れてやってこうぜ」
 ケイス・アマクサ(己が罪業の最果て・f01273)が言うのだが、
「気合……でないにゃ……なにか欲しいにゃ……溶けるにゃあ……。
 冷たいものが……欲しいにゃあ……」
 ナミルがキギ・レインメーカー(オラトリオの探索者・f02371)に言う。
 キギは同じチーム【カタラ】――ケイスは大丈夫そうだが、ナミルは猫の毛がぺんしゃんこになりつつあり、ややくったりとした様子をみて、頷く。
「冷たいものかー。そうだね、どうにかしてみようか」
 と、一歩分前に出るキギと共に、周囲を警戒するケイスがやや姿勢を変えた。
「みんな、巻き込まれないでね」
 そう言って杯――零れる雨を手にしたキギが熱属性を攻撃する雨を辺りに降らせていく。
 配分を見つつ調整を行なえば、氷るような冷たい雨が降り始めて熱を相殺し、ひやりとした空気が流れた。
「これで、しばらくは大丈夫だと思うけど。
 入り口付近でこれだと、蒸気の発生源とかどうなってんだろうね?」
 と、キギ。
 熱気が戻ってくれば恐らく湿度は異様に跳ね上がるだろうから、と適宜零れる雨を使用していくこととなった。
 幾分か過ごしやすくなり、猟兵たちは喜びの声をあげた。

 大きな、とても大きな蒸気機械のある、ホールほどの広さ、吹き抜けの場所に辿り着いた猟兵たち。
「何か所か亀裂が入った場所と、瓦解した場所があるみたいだネ」
 展開した電脳世界で、視認できた部分を伝えるアヤネ。
 床は組まれた金網へと変化し、熱が伝わってくる――まだ立てる分、マシか。
 道程の小さな亀裂から蒸気の漏れが確認できたが、まずは大元をどうにかした方が良いだろうと猟兵たちは歩を進めていた。
 大元が強い熱気を送り出せば、修理した箇所がまたダメになってしまうかもしれない。
 蒸気機械を見た弦切・リョーコ(世界演算機・f03781)が子供のような軽い足取りで近付いていく。
「ほうほう、これが蒸気機械!」
 蒸気機械は機械を動かすための動力伝達だ。アルダワに至っては魔導蒸気機械を動かすのになくてはならないもの。
 上を見て下を見て、左右の確認をし、ぐるっと蒸気機械の周りを歩む。
「スペースシップワールドの科学とは方向性は違うし単独ではまだ粗が目立つが魔法と相補することで超常的な現象を起こすのか、これは興味深いな」
 歯車の回転速度、回転力は問題なく動いている――のが、今、問題となっているのだろう。
 下方でバシュッと熱気が強く噴出し、リョーコが「おっと」と呟いて二歩ほど後退した。
「修理しなければならんのが口惜しいね、一回分解して中身を見たいところなんだが……分解はオブリビオンまでとっておこう」
「分解ヲスルノデスカ?」
 スチームドレイクと戦いに内心心躍らせている謡が赤の目を一度瞬かせ、リョーコに言った。
「どんな構造で出来ているのか、気になるだろう?」
 謡はやや首を傾げたのち、頷いた。
「留意シテオキマス」
 そんな会話をしながら、猟兵たちは修理を開始する。
 細かな箇所の修理に挑むのは、ハバムル・アルコーン(堕落(しきった)竜・f04301)だ。
 金属菅の並ぶ場所へと赴き、中へ確認しようとする。
「地味な作業だけども頑張るしか無いねーよーしさっそk……あづっ! あっつっ!?」
 金属菅の中は蒸気が通っているのか熱く蒸していた。その間に顔を突っ込んだだけのハバムルは飛び退いた。
「こ、この服のままじゃ熱さで死ぬぅ!」
 ぱたぱたと熱を持ち張りついた白Tシャツを肌から離すハバムル。
「し、仕方ない……ここでだけ依頼で貰ったこの水着を着て作業を……」
 と、謎に露出度高めの水着姿になり、覚悟を持って再度トライ。
 その時キギの冷たい雨が降ってきて、ちょっとしたひんやりタイムだ。

 怪力を駆使し、鉄板を軽々と持ち上げたナミルが蒸気機械へとあててみる。
 鉄板は熱くなっていたが、毛皮パワーで頑張って持つナミル。
 情報収集で事前に、修理の情報を得た冬青が手袋や修繕箇所に必要と思われる道具や資材を振り分けた。
 大量のネジを必要とする場所、鉄板で塞ぐ必要のある場所は、やや板の形を整えなければならない、とそのための道具。
 これらを届けていくのは、謡だ。作業する猟兵に一声かけて、置いていったり、不要となったものを回収したり。
 カンカンガンガンとナミルが板を叩き、歪ませていく。
 大きな音は、やがてトントンカンカンと、蒸気機械へと打ちつけるやや慎重な音へと変わった。
「いやーしかしすげぇな、なんだこりゃ……一体どういう仕組みで動いてるんだ? これ全部蒸気で動いてんのか……?」
 ケイスが警戒ついでに見て回り、呟いた。大きな蒸気機械の他にむき出しになった金属管。
 軸を中心に回る歯車をよくよく見ていれば、歯車と歯車を噛み合わせながらぐるりと室内を周回する歯車もあった。押し込むような進みは、恐らくは全体の回転力の調整を行うものなのだろう――とリョーコが推測する。世界知識をアルダワに適合させた彼女の学習は速い。
 それにしても、とアヤネ。
「この蒸気は思ったより危険かもしれない。罠みたいに吹き出されたら嫌だネ」
「熱い蒸気をモロに浴びて火傷なんて、シャレにならないですよ」
 アヤネの言葉に、冬青が応じたその時、地面が揺れた。床に散る金属片がカタカタと動き、時間差で蒸気機械に伝わってくる異様な音。
「――!」
 ケイスが、座って修理していたナミルの首根っこを掴み後退した瞬間、ブレスを吐くかのようなが蒸気が一気に噴出する。
「ふぎゃ! あっついにゃ!」
 あっという間に場の熱気は後戻りだ。否、発生源の近くのせいか、増すばかり。
 零れる雨を使用したキギが、空気の流れに気付く。
 自分たちが通ってきた路――とは別の、恐らくは次へ進む階層にも蒸気熱が流れていくのだ。
「アチラハ次ノ階層トナルヨウデス」
「どちらにしろ、この熱気をどうにかしないと、次の階層の攻略もひと手間なんだろうね」
 謡とキギ。
「換気が機能してねぇ気もするな」
 と、ケイスが上部を見上げた。光源は主に壁に設置されており、天井は仄暗い。
 敵は、スチームドレイクだ――呼吸出来ないほどの熱と予想されるので、温度と湿度は下げておきたいところ。
 電脳世界を展開するアヤネが天井を見上げる。
「換気機能は――ああ、十基のうち、まともに動いているのは二基だネ」
 動力の統括があるはず、と探す猟兵たち。
「アリマシタ」
 その指示に、謡が壁を探っていくと、該当箇所らしきレバーを見つけた。上下に何度か動かすも、有効なのはやはり二基だけ。
「硬クテ、動カスノハ困難デス」
 かつ軋んだ音が上部から響き、何か問題があるのだろうと猟兵たちは推測する。
「現状で手が打てそうなのは、四基かな」
 だが、あの場までどうやって行けばいいのだろう。
 縦に連なる大きな歯車を伝えば手は届くだろうが、恐らくは熱を持っていて渡り歩くのは危険だ。
「手の届かない箇所の補修はお任せ下さいな。――この力を使って行うこととしましょう」
 そう言ったミクのユーベルコード『漆黒の瞳』は眼力で遠隔地の物を動かしたり、精密に操作するものでもある。
 暗視すれば、暗がりのものも対処できるだろう。
「あ、じゃあ小人にも補修してもらうね」
 と、ハバムルがバトルキャラクターズで召喚した小人たちを手伝いに向かわせた。
 反時計回りに動く歯車を掴んだ小人たちが、のぼっていく。
「凄イデスネ」
 ほお、と緩やかに上昇する小人たちを見る謡。
 噴出する蒸気の振動で外れた歯車をはめ、油をさし、と対処するミクと小人たち。
 上の換気機能は任せ、ケイスはナミルの大雑把な修理の補修をしていく。
「あ、良い感じにできたよ」
 メディスンを持ち、世界知識を駆使しつつ薬液を作っていたキギが、熱に反応して硬化する熱耐性の高い薬液を作ることに成功したようだ。
 薬液は、作業の捗りをもたらす。
「ルーティン01。波長選定、光波収束、完了」
 都度、現象演算『集束電磁放射』の微調整を行うリョーコは、資材の溶接を行っていた。
 作業は速やかに進み、想定していた時間よりも早く済みそうだ。
「涼しくなってきたにゃー」
 ナミルがそよそよと流れる空気を感じとり、気持ちよさそうに瞬きをした。
 補修をしていた冬青は、ねじ回しを渡そうとするアヤネの状態に気付く。
「アヤネさんすごい汗ですよ、大丈夫ですか?」
 二人とも熱気でやや顔が赤くなっている。アヤネの頬を伝う汗が首へと流れていった。
「汗?」
「水分をしっかり摂って下さいね」
 受け取ったねじ回しを手にした冬青が代わりにとばかりに、スポーツドリンクの入った水筒をアヤネへと手渡す。
「ああ、こんな暑いならもう少しマシな格好で来ればよかったネ。耐火スーツとか。
 ――冗談はさておき、飲み物はありがたくいただくよ」
 スポーツドリンクはまだ微かに冷たかったが、口に含めばあっという間にぬるくなった。
「ありがとう。ソヨゴも飲んで」
 そう言って返すアヤネに、こくこくと冬青は頷く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『兵士の呪鎧』

POW   :    突撃陣形
【密集陣形を組ん】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    防御陣形
【後衛】から【遠距離攻撃】を放ち、【前衛が盾で押し込むこと】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    機動陣形
【鋒矢陣形を組むこと】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【衝撃力の高い突撃】で攻撃する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 段取りや細やかな修繕方法と、想定よりも早く修理作業を終えた猟兵たち。
 換気機能の故障も見つけ、はより良い流れを生み出した空気が熱気を排出させて、過ごしやすい温度になる迷宮内。
 ほっと一息ついた猟兵たちは、次の階層へと向かった。
 内部は石畳、石壁となった路が続いている。全体的に湿っており、足を滑らせないように注意しながら進む。
 路の幅はやや広く、両手を広げた人間が五名並べるほどだ。
 その時、がしゃりがしゃりと甲冑の音が耳に届く。
 正体を見定めようと、一旦隠れた猟兵たちは、全身甲冑の兵士の姿を見た。
 三体の班を組んでいるようで、周囲を見回しながらの偵察。
 今は路ではあるが、ホールのような場所があれば、兵士も多くいることだろう――。
 雰囲気ががらりと変化した迷宮ではあるが、猟兵が石壁に手をついてみれば――ほんのりと熱い。
 長く触っていると心地良ささえ感じる温度だ。

 ――その時。

 石壁が動き、猟兵たちが行こうとした路を塞ぐ。
 からくり仕掛けの動く路だということに気付き、息を呑んだ。
 機構迷宮。
 猟兵たちは踏破すべく、前へと進む。
ミク・シィナ
こちらはPOWの攻撃となりますので、敵は突撃陣形にて突っ込んでくると予測できます。
なので、ここはグラウンドクラッシャーを使い、纏めて殲滅するように動きましょう。

突撃には突撃を。
多少の傷など気にもせず、突貫致しましょう。
こう見えても私、力には自信がありますのよ?

服装は漆黒のゴシックドレス姿に漆黒のマントを羽織っております。
武器は薄闇の大斧と斬馬刀の二刀流。
その他装備品や使用技能に関してはステータスシートを参照の上でお願い致します。


弦切・リョーコ
探索
道が変化するのかね。だがおそらく、精密なコンピュータ制御というわけでなく蒸気仕掛けのパターン化された動きだろう。まずは観測することだよ。
【学習力】で迷宮の動作や機械仕掛けの兵士の行動ルーチンを学びながら進み、蓄積したデータで敵に出会わないように迷宮の奥側へ進む道を探る。

戦闘
見つかったかい。ロボット…とは違うようだがどれ、あれは分解してもよかろう。
敵と遭遇した場合、UCで球電の群体を生成して密集した相手の動きを制限するように動かし味方を援護したり、バリケードのように固めて突撃から守ったりする。
【援護射撃】を中心に、数が多ければ【一斉発射】で後方からの攻撃により味方と連携して敵戦力を削る。



 ふむ、とリョーコが観測を始めた。
「道が変化するのかね。だがおそらく、精密なコンピュータ制御というわけでなく蒸気仕掛けのパターン化された動きだろう」
 落ち着いている様子のリョーコへ猟兵たちが目を向けた。
「平面式の木のパズルがあるだろう? あれをスライドさせていくようなものだよ。
 いずれは次の階層へ行く路に繋がるだろう」
「……と、いうことは、なるべく路の動きに着いていくのが理想的ですのね」
 と、ミク。
 仕掛けを理解すれば、路が塞がってしまった時など慌てずに待機できるというものだ。
「まあ、まだ観測途中だがね」
 そう言いながらリョーコたちは歩を進めた。
 ゴ、と動いた路に促されるように進撃していけば、三体の敵とかち合う。
 猟兵たちに気付いた呪鎧の兵士たちが即座に陣を組むと、長剣を槍のように突き出し、盾を掲げて突撃してきた。
 同時に前へ出たのはミクだ。
 巨大な斬馬刀と薄闇の大斧を軽々と持ち、駆ける。
「突撃には突撃を。
 ――こう見えても私、力には自信がありますのよ?」
 重量級の薄闇の大斧を斬り上げるようにして敵の長剣を阻み、次ぐ遠心に任せた斬馬刀が同じ軌跡を辿った。
 そのまま旋回したミクが二刀を合わせ、重い斬撃を放つ。
 突貫を掛けた敵先頭が砕かれ、後続の敵へとぶつかった。
 衝撃が風圧となり迷宮内を駆け巡った。
「!!」
 認識を改めたのだろう、兵士二体がやや身を屈め臨戦態勢をとる。
 その時、遠くから更なる鎧の音がこちらへ向かってくるのを聞き取り、猟兵たちが迎え撃つ。
「ロボット……とは違うようだがどれ、あれは分解してもよかろう。
 ――ルーティン02。電磁場形成。励起。コントロール、セミオートマチック」
 球電の群体を生成したリョーコは、彼我の距離をぐんとつめてくる敵の機動陣形を阻むように球電を放つ。
 バリケードのように固められた球電は敵足を止めるやいなや、散開し仲間の攻撃を援護するべくそれぞれが様々な軌道を描いた。
 重く風切る音が響く。
 真上から綺麗な垂直の斬線を描いたミクの薄闇の大斧は、兵の兜と胴上部をかち割り、敵が掲げた盾に斬り込まれた。
 この時点で敵は死んだも同然だ。ぐらりと揺れたのち、瓦解する鎧音。
 一度斧を引いたミクは、刃に挟まった盾を地面に打ちつけた――軽く。
 盾に亀裂が入り、真っ二つに割れる。
 最初の敵陣からの増援六体。
 猟兵たちにとっては準備運動にしかならないようで、九体の呪鎧の兵士はあっという間に殲滅された。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

城島・冬青
【アヤネさん(f00432)と一緒】
さて、ついに敵が出てきましたね
さっきまでいた蒸気エリアでの戦闘じゃなくてよかったです


敵は複数、単独突出してピンチにならないよう
兵士と適度な距離を保ち戦っていきます
UCは死神の矢を使用し
一体一体確実に減らします!
接近されたら武器で応戦

兵士の攻撃はどれも厄介ですが防御陣形で動きを封じられるのはちょっと困るなぁ
突撃攻撃は[第六感]で警戒して出来る限り避ける感じで!
回避の際は技能[ダッシュ]を使用
それ以外の攻撃は花髑髏での[武器受け]で凌ぎ
アヤネさんや同行した仲間が危険な時は[かばう]
まだ奥には大物がいるんですからここで倒れるわけにはいきませんよね、アヤネさん!


アヤネ・ラグランジェ
【ソヨゴ(f00669)と一緒】
視界は良好
でも足元には気をつけて

路が動く?方角を見失わないように注意しないとネ
その上見回りをやり過ごして進むのは難しそう
見つかりそうと判断したら先手を取って攻撃することにしよう、とソヨゴと相談
合図を決めておくよ
電脳ゴーグルを使用
僕が先行して隠れながら状況を確認
不意打ちをかけられそうなら合図を送って攻撃する

武器は記憶消去銃
ソヨゴと声をかけ合って目標が被らないようにするネ

敵の数が多い場合はUC発動
数に対してはそれを上回る数で対抗するよ

もしソヨゴに庇われたら
動揺する
こういう場合は笑顔で感謝?
無理、顔がこわばる
「ソヨゴ、大丈夫?怪我はない?」
僕なんかよりソヨゴが心配だ



 方角を見失わないように注意しながら、進むアヤネは、電脳ゴーグルを使い電脳世界を見ている。
 常の視界ならば雑多な中で見落としそうなものも、電脳化された視界ならば、すぐに気付けるのだろう。
 冬青へ合図を送るアヤネ。
 猟兵たちが次なる敵へ、先制攻撃をしかける。

 アヤネの召喚した小型の戦闘用機械兵器が敵の攻撃にさらされ、数を減らしていく。
 だが比例して、猟兵たちも手数を稼ぎ敵へのダメージを蓄積させていった。
「切り裂け、疾風!!」
 冬青が花髑髏を振るうと同時に、その軌跡は鋭い風の刃となり敵への斬撃となる。
 切っ先から放たれるカマイタチ。死神の矢は敵を穿つ――だがそれを掻い潜り彼我の距離をつめる敵もいた。
 身を屈め、鏑矢の如く跳んだ敵が冬青へと盾を叩きつける。
 それを刀でいなすも弾き飛ばされる衝撃には抗えず――否、寧ろ身を任せ冬青は飛び退いた。直感であった。
 作った間合いに、視界は広がり――投擲されたナイフを的確にはじく冬青。
 彼女の背へ、自身の背を合わせるように動くのはアヤネだ。
 記憶消去銃の威力を調節し、敵を撃っていく。
 鋼鉄を撃つ音が迷宮内で高らかに鳴った。
 威力は最大で幅は出来る限りに絞った一撃は時折敵装甲を撃ち貫く。
 敵にとっては衝撃が大きいのだろう。剣を持つ肩を撃ち貫けば、敵の動きがぶれ、仲間が追撃をしかけていった。
 ――その時。
「アヤネさん!」
 ドン! と背中にぶつかった背。同時に剣戟。
 衝撃は大きく、アヤネが転ぶように前へと跳んだ。
 刹那の鍔迫り合いの音が起こったのち、強く鋼の音が鳴り響いた。
 振り向き見れば、息を切らせた冬青が立っている。
「……ソヨゴ」
 笑顔で感謝――そういう対応を、常ならばとっていただろう。だが実際はどうだ。直面した今、アヤネは無理なのだと、強張った表情の裏で悟る。
「大丈夫? 怪我はない?」
「はい。……一応は」
 そう言った冬青の言葉に、動揺が増したアヤネの瞳が揺らぐ。
 敵の渾身の斬撃は、花髑髏でいなそうとするも敵の剣先が冬青の腕を伝った。
 ビリビリと、使い物にならなくなっていく感覚に、仲間の癒しが放たれ――そののちに拳を作って確かめた冬青は安堵の息を吐くのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

キギ・レインメーカー
甲冑集団か…熱籠りそうだしもちろん無人なんだろうけどどういう仕組みで動いてんだろう…? 【行動方針】 ナミルちゃんは好きなように暴れそうだしケイスさんは警戒&後詰めしてくれそうだから俺は二人がやり易いように先手で足止めをしようかな 「零れる雨」を「世界知識」「毒使い」で甲冑が即座に錆びたり軋んだりするようなものに成分調整。 足止め目的だしダメージは少なくても「時間稼ぎ」ができれば十分かな…こんな使い方もできるんだよってね 【その他】 チーム【カタラ】と同行 連携、アドリブ歓迎です


ナミル・タグイール
【カタラ】
なんだか呪いのお宝オーラがあるにゃ?
でも全然金ピカじゃないにゃ。いらないにゃー。
ザクっと倒してボスの所に行くデスにゃ!
もう熱いのは嫌にゃー!
・行動
突撃にゃー!!前衛は任せろデスにゃ!
なんだか相手は陣形を組んで動くみたいだし、ど真ん中に飛び込んで暴れて陣形崩しを狙うにゃ!
【堕獣の腕輪】(ケモ度が上がる)をつかってパワーあげて大暴れしますにゃー!
理性失っちゃうけど…みんなならきっと大丈夫にゃ(楽観猫)
暴れまくるからあとはキギとケイスに任せるマスにゃー!


ケイス・アマクサ
「蒸気機械、からくり迷路と来て次は甲冑の集団?よくわっかんねぇけど、障害になるなら排除するだけだな」
【行動】
・チーム【カタラ】
俺は他の二人の間、ナミル寄りの立ち位置でフォローと万が一バックアタックを受けた場合の備えに入る……んでもって、ナミルの援護と撃ち漏らし&ギギさんに近づいた敵の排除だ。
狙う順番は
1、こちら側(特にギギさん)へ近づいて来た敵
2、ナミルが気づいていない敵、ナミルの背後を取った敵
3、撃ち漏らしや孤立した敵
っつー感じだな。
手段はUCの使用を含めた銃撃だけでなく、近接武器を用いた肉弾戦も考慮しておくぜ。

「お前らは最終目的じゃねぇ。ところでナミル……俺たちまで巻き込むんじゃねぇぞ?」



「なんだか、また呪いのお宝オーラがあるにゃ?」
 迷宮内を進んでいくと、ナミルが言った。
 やや広いホールのような場所に出た時、彼女の言葉通り――ともいえる敵陣が一斉に猟兵たちの方を向く。
 ざっと敵を見るナミル。
「でも全然金ピカじゃないにゃ。いらないにゃー」
 一応、ある意味で『金目の物』に類する甲冑であるが、やっぱりナミルはいらないようで、首を振った。黄金の鎖がじゃらりと鳴る。
「蒸気機械、からくり迷路と来て甲冑の集団か。
 ――よくわっかんねぇけど、障害になるなら排除するだけだな」
 ケイスが呟く。
「……熱籠りそうだしもちろん無人なんだろうけど、どういう仕組みで動いてんだろう……?」
 と、キギ。この戦いでは少し注視してみよう、と考える。
 ガシャガシャガシャッと甲冑の音が大きく鳴り響き、盾を掲げた兵士たちが突撃してくる。
 猟兵たちが散開すれば、敵もそれに呼応し、大きな陣形が割れた。
「突撃にゃー!」
 そう言ってしなやかに駆けるナミル。
「今から暴れるデスにゃ!」
 堕獣の腕輪で魔獣化したナミルが、やや身を丸め、盾に向かってタックルした。
 その衝撃たるや。
 駒に塊がぶつかっていったようなもので、なぎ倒されるように再び敵陣が割れた。
 ナミルの理性はないようで、即座に転身したナミルが今度は腕を振り上げ突っ込む。
 キギが杯に満たすは酸成分の多い液。
「降らせるよ――巻き込まれないでね」
 突撃したナミルが敵陣を抜けたのを狙って、キギが零れる雨を発動させた。
 呪鎧の兵士を濡らしていく雨――敵陣は気にする様子もなく、陣形を組むのだが、即座に薬液の効能があらわれる。
 ガシャリと鳴っていた甲冑が、ギシッと軋みの音を立て、兵士の動きが鈍くなる。
「『時間稼ぎ』ができれば十分かな……こんな使い方もできるんだよ、ってね」
 キギの行動に乗じ、組まれる陣を阻害するようにUDC標準装備型記憶処理兼用拳銃で撃つケイス。
「基本こそ奥義……これが基礎の積み重ねってやつだよ!」
 広く戦場を見渡せる視野を維持しつつ、ナミルのフォローを行う遊撃として、次々と敵を撃つ。
 遠心をきかせ旋回するナミルの蹴撃を回避しようとした兵士が、軋みに動きを阻害され、蹴り砕かれた。
 甲冑の隙間へと流れていく薬滴。
 錆びと軋みの侵食は進み、板金の要ともいえる部位をケイスが撃てば、風穴が開いた。
 暴れ回るナミルの黄金の爪が錆まみれの敵を斬り裂き、瓦解させる。
 影のようなものが消えるのを目にし、キギはますます謎を持つ。
「中身は呪いそのものなのかな。……不思議だね」
 別の陣へ零れる雨を降らせながらキギが言う。
 くるくると回り、翻弄するナミルの動きは敵を払い飛ばすものでもあった。
 砕けた板金が周囲に散るなか、新たな敵がやってきて、こちらへ向かってくる兵士を撃つケイス。
「お前らは最終目的じゃねぇ。ところでナミル……」
 鋼鉄を撃つ音が高らかに鳴り響き反応するナミルへ、ケイスは視線を向ける。
「俺たちまで巻き込むんじゃねぇぞ?」
 そうは言ってもナミルはこちらへ向かってくる。
 キギと共に距離をとるケイスが道を開くべく、敵懐へと入り-苦無-で胴を穿った。
 そのまま横へと飛び退けば、キギの零れる雨が敵を横打ちし、最後にはナミルの突撃でバラバラに弾き飛ばされるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

死之宮・謡
アハハ、まぁた此奴らかぁ、本当に何処にでも現れるな此奴ら。まぁ結構楽しめるから良いんだけどね?此奴らも良いんだけど今回はこの後のお楽しみがなかなかヤバそうだからねぇ。偶には私も温存って奴をしてみるかねぇ?
アハハ、残念だなぁ自分で暴れられないなんてさぁ。きついお預けだよ全く。だから代わりに蹂躙してきてよ、
ハバキ、リーデ、【王の左右】召喚!その剣と槍で奴らを滅ぼせ!


ハバムル・アルコーン
【POW】アドリブ歓迎
ふぅ、暑さもかなりマシになったね…。
これなら安心して戦える…よし、まずは前座だね。
ボスもろともさっさと片付けて帰りたいなぁ…。

相手が【突撃陣形】で密集したら、むしろ好都合とばかりに【ドラゴニアン・チェイン】発動!
固まった兵士を纏めて鎖で縛り上げて動きを封じる。
そのままドラゴンランスで【二回攻撃】を繰り返して【串刺し】にしちゃえ
あたしはドラゴニアンなりに【怪力】があるんだ、纏めて串刺しぐらい朝飯前なんだよーっ!…後で筋肉痛酷いけど(小声で)



「アハハ、まぁた此奴らかぁ、本当に何処にでも現れるな此奴ら」
 戦いの最中、がらりと雰囲気を変える謡が嗤う。
 兵士が薙ぎ払おうとする剣を懐へ踏み込むことで間合いを狂わし、腕をいなす動作に乗り敵背後へと抜けた。
「まぁ結構楽しめるから良いんだけどね?」
 軽やかに踵を返し、ニッと笑む。その表情と声色は狂気的で上機嫌。
 その時、迷宮を揺るがす衝撃が起こる――ますます狂気的なソレを深める謡。
「今回はこの後のお楽しみがなかなかヤバそうだからねぇ。偶には私も温存って奴をしてみるかねぇ?」
 呪言の黒外套・殺詩を翻し、目を据えた謡が呪を告げる。
「遥カ遠クヨリ我ト共ニ歩ミシ左右ヨ、我ガ眼前ニ立チ塞ガリシ脆弱ナル愚者共ヲ薙ギ払エ――。
 ――ハバキ、リーデ、『王の左右』召喚!」
 謡が高らかに言い放てば、迷宮内の明かりが揺らぎ、不気味な闇をつくりだす。
「その剣と槍で奴らを滅ぼせ!」
 王の左・冥血騎士ハバキ、王の右・煉鏡騎士リーデが召喚され、鋒矢陣形を組む兵士たちへ向かっていった。

 蒸気の熱気がなくなり、戦いがしやすくなったと――ハバムルはそれをあらわすような戦いを見せていた。
「ボスもろともさっさと片付けて帰りたいなぁ……」
 依頼を終わらせて、ごろごろしたいなぁとハバムル。
 その前に前座を倒さないとなぁ……と、内心で呟く。
 王の左右から挟撃される敵陣が、防御のそれから抜けるべく突撃陣形を組み始めた。
 その密集地帯へ、ハバムルがドラゴンオーラを放つ。
 ドン! とオーラ爆破がされ陣形を崩す呪鎧の兵士たちを、さらなるオーラがぐるりと取り囲んだ。
 手を掲げたハバムルが拳を作り引く動作をすれば、一気に引き絞るようにして、オーラの鎖が敵たちを縛り上げる。
 鎖を腕に巻くように、跳躍し辿った彼女はドラゴンランスを螺旋の如き捻りを加えて甲冑を穿つ。
「あたしはドラゴニアンなりに力があるんだ、纏めて串刺しぐらい朝飯前なんだよーっ!」
 長柄の掴みを安定させ、ハバムルが強く踏みこめば更に貫き続く手応え。
 そして朝飯前と言ったのち、ぽそりと呟く。
「……後で筋肉痛酷いけど……」
 串刺しにした状態から、踏ん張る様に腰を落としたハバムルは槍を振るった。
 敵体を纏い薙ぎ払うそれは、周囲の敵陣形を次々と瓦解させていく――そこへ追撃をかけるのは、冥血騎士ハバキと煉鏡騎士リーデだ。
 謡の命に従い、猟兵たちとともに敵を撃破していく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『スチームドレイク』

POW   :    スチームフレイム
【口内から射出される「錬金術の炎」 】が命中した対象を燃やす。放たれた【紅蓮の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    頭部連装機関砲
【頭部連装機関砲 】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    スチームファイア
レベル×1個の【錬金術 】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアイシア・オブリオンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 広い場の甲冑を殲滅し、カラクリの路を進む猟兵たちの前に、次の階層へ向かうと思われる場が現われた。
 ガラス張りの箱――縁と床が金属でできており、複雑な機械が備えられている。
 顔を見合わせたのちに猟兵たちは調べていく。
 下へ続くのだと分かり、その箱のようなものに、入る猟兵たち。
 ギギギと音を立てて降下していく――。
 管の中を降下する箱から見えるのは、数多の歯車が噛み合っていく光景であった。
 だがそれも徐々に壊れたものが多くなっていく。

 ドン! という大きな音が聞こえ、周囲の管が震えた。
 箱が辿り着こうとしているのはとても広大な場――機械の廃棄場だろうか――。
 ――ギャリィィィ――……。
 耳を劈く機械の鳴き声。
 巨大なガジェットのような蛇が動き回っている。
 その衝撃は、猟兵たちが場へと降り立った時に直に感じることが出来た。
 足場は細かな機械の屑。突出した鉄筋があちこちに。
 ジャリリリリリと廃棄機械が波打ち、大きな蛇が跡を残していく。
 何かを……出口を探しているのだろうか。疲れを知らない蛇は時折炎を噴出し、苛立だしげに動き回っていた。
城島・冬青
【アヤネさん(f00432)と一緒】
アヤネさん
さっき私が庇った時
見たことない表情だった
心配させちゃったな…

誰かを助ける時
自分もちゃんと助からないと
相手も救われないって何処かで聞いたことある
…もっと強くならなきゃ

花髑髏を構え廃園の鬼を使用
間合いを詰めて攻撃します
相手のフレイムをまともに喰らわないよう
口元を注意深く観察
炎が来そうな時は
ダッシュで素早く間合いを取り
アヤネさんにも回避するよう伝えます

アヤネさん炎が来ます
避けて!

心配しないで
今度は無茶して貴方の表情を曇らせたりしないから

戦闘後はアヤネさんの話を静かに聞きます
私も驚かせてしまって
ごめんなさい
次はもっと
いえ…
2人でもっと強くならなきゃ…ですね


アヤネ・ラグランジェ
【ソヨゴ(f00669)と一緒】
僕が曖昧な態度だったせいでソヨゴに気を遣わせてしまった
戦闘が終わったらきちんと話そう

「機械仕掛けの竜とはまた派手だネ」
記憶消去銃で距離を保ちつつ
ソヨゴの注意には素早く反応して回避行動を取るネ
敵のスチームファイアに対して、エレクトロレギオンを使用
巨象を倒すは蟻の群れ

戦闘後は改まってソヨゴに
かばってくれてありがとう
あのときは動揺してしまって、うまく言葉にできない僕が悪かった
ソヨゴのせいではないのであまり気にしないで
でも今後、ソヨゴは僕をかばわないで欲しい
僕は大丈夫だから
ソヨゴが傷ついてしまうと僕が悲しい
わたしを守るためにあなたが犠牲になるのは耐えられない


弦切・リョーコ
これがスチームドレイクか。なかなかの威容だね、構造が緻密で複雑ではないようだがその分衝撃に強そうだ。この世界の技術の粋が感じられる。できればずっと眺めていたいところだけど、そうはいかないかね。
そしたら分解してパーツの一つでも土産に持っていこうかい

戦闘となったら【迷彩】などで【目立たない】間合いをとって【援護射撃】で味方を支援しながら相手を観察する。
十分にデータが集まったら『結合分解』で相手のUCを打ち消して致命的な隙を作り味方の攻撃につなげる。
「私には分が悪い相手だが、味方にいる力自慢に任せようか。狙うなら今、ここだ。」
【視力】でもって装甲の綻びなどを見つけたら【スナイパー】で狙う。


死之宮・謡
アハハ、アハハ、アハハハハ。やっとだ、やっとメインディッシュだ!嗚呼、良い。とても良い。凄く強そうだ。さぁ殺し合おう壊し合おう、今すぐに!化け物じみた相手との地獄めいた潰し合い…心躍るねぇ?それでこそ此処まで来た意味があるってものだよ。
貴様が斃れ伏すのが先か、私が焼き尽くされるのが先か…
止まるなよ?躊躇うなよ?
余所見もするな、私を見ろ、私を殺せ!ぐちゃぐちゃに叩き潰せ!
私も殺すよ、お前をバラバラに破壊してやる!
どれだけ傷ついても前に進め!立ち止まるな!

コノ私ヲ愉シマセテクレ!ソノ命ヲ懸ケテ!

始メヨウカ…此処カラハ、言葉等不要!【天燐血統装具】展開!


ミク・シィナ
まずは様子見してみましょう。
ユーベルコード「漆黒の瞳」を使用し攻撃を仕掛けます。
遠い場所から攻撃をして、どう反撃してくるか、どう動くか、などを調べつつ次に繋げていきたいと思います。

服装は漆黒のドレス姿に漆黒のマントを羽織っております。
武器は薄闇の大斧と斬馬刀の二刀流。
その他、装備品や使用技能に関してはステシを参照の上で。

さて…、待ちに待った大物との対決です。
ふふ、楽しみですわね♪


ナミル・タグイール
【カタラ】
ガラクタでできた蛇デスにゃ?キギが気に入りそうにゃ。パーツが金ピカならよかったのににゃ。
でも見るからに熱そうなやつデスにゃー…。もう熱いのは嫌にゃ…
・真の姿を開放してケモ度が上がる

・行動
熱いの嫌だけど突撃にゃー!ナミルにはパワーしかないデスにゃー!
上に乗っちゃえば安全だったりしないかにゃ?ジャンプしてチャレンジにゃ!
熱かったら即降りるにゃ!あっついにゃー!
炎出してる口部分を【グラウンドクラッシャー】で破壊を狙うマスにゃ
【呪詛】纏った斧でドッカーンにゃ!呪詛パワーでバグったりしてほしいにゃー。


キギ・レインメーカー
こいつがスチームドレイクか…興味深いね、持ち帰っちゃダメかな?
【行動方針】 芸がないけど引き続き雨を降らして「挑発」と「時間稼ぎ」をしようか
蒸気が出てるってことは廃熱が必要ってことだよね、それならさっき(1章)作った耐熱凝固剤(今名前つけた)の「零れる雨」で攻撃 廃熱できなかったらエネルギーの吐き出し口がなくなって衝撃を加えた所から爆発とか狙えないかな
ナミルちゃんやケイスさんの攻撃で爆発するだろうから、爆発で発生する「衝撃波」に備えて「衝撃波」を相殺する「零れる雨」を「2回攻撃」「高速詠唱」で使って援護するよ
【その他】
チーム【カタラ】と同行 連携、アドリブ歓迎です


ケイス・アマクサ
「うおぉぉ……これはまた、凄いド迫力だな……! どうやってぶっ潰したものか……」
【行動】
チーム【カタラ】
立ち位置は変わらず。ナミルとギギさんの中間ややナミルより。
初手でUCを使用し、前衛を張るナミルと、後衛のギギさんの攻撃やサポートの合間を埋めるように行動する。
攻撃手段は銃やクナイ。狙う場所は目や装甲の隙間等、何となくでも良いから防御力の薄そうな場所を第一にしていくぜ。
また、敵さんのどの攻撃も一見して危なそうだし、回避優先で他の二人へ何かしらフォローを行えるようにしとこう……まぁかばったりぐらいはできねぇかな?

「ま、こんなもんに好き勝手暴れられちゃぁかなわねぇからな……潰すぜ」
※他絡み等歓迎



 ジャリリリリ、と広く波打つ廃棄機械を猟兵たちが避ける。
「機械仕掛けの竜とはまた派手だネ」
 踏めば、細かに隆起する硬い感触。ジャリ、と脚に力を入れて一歩退くアヤネに続き、やや遅れて冬青。
「うおぉぉ……これはまた、凄いド迫力だな……!」
 バシュウッと上がる大きな蒸気音は、ケイスの声もかき消しそうなほど。
「どうやってぶっ潰したものか……」
「ガラクタでできた蛇デスにゃ?」
 ナミルが首を傾けた。
「キギが気に入りそうにゃ。パーツが金ピカならよかったのににゃ」
 思案するケイス、ちょっとしょんぼりするナミル。彼女の言葉通りキギは、
「こいつがスチームドレイクか……興味深いね、持ち帰っちゃダメかな? 」
 そんな彼に同意を示すのは、リョーコだ。
「構造が緻密で複雑ではないようだがその分衝撃に強そうだ。この世界の技術の粋が感じられる」
 柔軟な導管を鎧うパーツ。硬質なガラスでできた部分には炎色の液体と核――錬金術によるものだろうか――興味深く観察するキギとリョーコ。
 できればずっと眺めていたいところだが、とリョーコの呟きを耳にしつつ、猟兵たちは駆けた。
「ま、こんなもんに好き勝手暴れられちゃぁかなわねぇからな……潰すぜ」
 垣間見える導管をケイスが牽制に撃ってみるが、硬質な銃音。装甲が邪魔をした。
 やはりか、と呟き、ケイスは機を見る。
 緩やかに歩めば埋没する足場。捕らわれない速度というものを各自が見出す。
「さて……、待ちに待った大物との対決です。ふふ、楽しみですわね♪」
 そう言ったミクが漆黒の瞳を放つ。
 予想以上に細緻な部分まで働く攻撃が、スチームドレイクの火炎放射口に不具合を起こさせたようで、やや炎が弾け散った。
『…………?』
 赤ガラスの瞳を点滅させ、大きく旋回するスチームドレイク。
 跳躍し、その尾へと降り立つや否や頭部へ向かって駆ける謡。
「凄ク強ソウダ――サァ――殺シ合オウ壊シ合オウ、今スグニ!」
 狂気たる笑みを浮かべ、歓喜する。言葉は発するとともに、弾み高ぶっていった。
「コノ私ヲ愉シマセテクレ! ソノ命ヲ懸ケテ!」
 敵の柔軟な導管が動き、頭部が謡の方へと向く。
「貴様ガ斃レ伏スノガ先カ、私ガ焼キ尽クサレルノガ先カ……止マルナヨ? 躊躇ウナヨ?」
『ジャアアアアア!!!!』
 猟兵を視認したスチームドレイクは威嚇するよう吠え、舞い起こる熱気に謡の漆黒の髪は靡き、赤の瞳は爛と輝く。
(「余所見もするな、私を見ろ、私を殺せ! ぐちゃぐちゃに叩き潰せ!
 私も殺すよ、お前をバラバラに破壊してやる!」)
 肌を灼く敵熱と、自身の狂気――赤い敵のガラス目に、輝く自身の赤。ニッと笑む。双方在るからこその、戦い。
「始メヨウカ……此処カラハ、言葉等不要!」
 死ハ何時モ隣ニ在リテ我ハ其レヲ示ス者――天穹血戦体へと転じ、血の大剣を手にした謡が熱気を逆流するように斬り込んだ。
 下段から首部めがけた斬撃は血の刃を飛ばし、赤々と彩る。
 同時に、作り出された敵の錬金術の炎が暴雨の如く叩きこまれていった。
 小型の戦闘用機械兵器を召喚したアヤネが的を散らせていく。
「あ、熱いにゃ!」
 炎の雨を懸命に避けるナミル。
 真の姿を解放してより猫化の増したナミルの動きはしなやかで素早い。直撃を寸前で回避し、熱気に毛が立つも安全な場所めがけて駆けた。
 ――安全な場所――それはスチームドレイクの上。
 錬金術の炎とスチームドレイク内部は直結しているのだろう、やや熱はおさまっているようにも思えた。
 敵の突出した部位へ手を掛け、更なる跳躍を見せたナミルが黄金の斧を振りかざした。赤炎に照らされ煌々と輝くκαταστροφή。
 耳を劈く金属音。斧の軌道に従い敵の装甲が歪な方へと向かい、『中身』が刹那的に露わになる。
 そこへ、魔を降伏し、その身に宿して超強化したケイスが銃口を向けた。
 柔らかいと思われる導管部分を撃ち貫けば、蒸気が発生する。
 ぐねりと動き、一瞬で装甲が覆う。
 キギの零れる雨が降るなか、頭部連装機関砲が火を吹く。
 攻撃回数が上げられたそれを撃ちながらスチームドレイクは暴れ回り、猟兵たちの動きを阻害する。
 機関砲音ともに、足場の廃棄機械が高らかな音を立て弾き飛ばされていった。
 ガガガガガッ! ――足場から壁へと火花が走る。
「っと、危ねぇ!」
 そう言ったケイスがキギに向かって落下する大きな歯車を撃ち弾き、軌道を変えた。
 漆黒の瞳を使うミクが斬馬刀を振り抜けば、尖った器物が落下から意あるように動き敵を攻撃する。
 遠心に振り抜く敵尾を薄闇の大斧で払いのけ、ミクは敵の次なる動きを見定めるため動く。
『ギャギャギャ』
 スチームドレイクが軋んだ鳴き声を放ち態勢を整えるのを見て、再び猟兵たちが彼我の距離をつめていった。
 より熱い蒸気を噴出させながら跳躍するように派手に動きはじめたスチームドレイクを、接敵しようとする仲間が捉えるのは容易ではなく、動線の基点を見定めようとしながら撃つケイス。
 廃棄機械の景色に馴染むように動くリョーコが、仲間の肉迫を助力すべく援護射撃を放ちながら気付く。
「……む? 何やら『雨』を警戒している気がするね」
「えーと、うん、そんな感じだね」
 と、キギ。
 先程作って今キギが名付けた『耐熱凝固剤』の零れる雨――最初に降らせた雨で『エラー』を察知したのか、うねり動くスチームドレイクは蒸気を上手く当てることで付着を免れようとしている。敵が確りと挑発にのった証拠でもあった。
 排出された熱気が、虚空で熱に反応して硬化する薬液を凝固させる。
「まあ、手はあるだろ。
 動きを潰すための重要な稼働部はここと――」
 カン! と鎧う金属に邪魔をされるが、ケイスは構わず撃っていく。
「ここ」
 カン!
「胴の上部と下部か。動線を描く時に一番力が要る部分だね――よし、狙うならばまずはここだ」
 リョーコが放てば、カン! と音。それで作戦が成り立つ。下部を攻撃し、敵の跳躍力ないし駆動力を潰すのだ。
 ミクが眼力で敵頭部を抑えるように攻撃し、敵の瞬発力を殺しにかかる。
「巨象を倒すは蟻の群れとも言うよネ」
 そう言ったアヤネが、エレクトロレギオンで機械兵器を増やし、仲間の援護へと向かわせた。

 庇った時の彼女の表情が、冬青の脳裏を過る。
(「誰かを助ける時、自分もちゃんと助からないと相手も救われない、って何処かで聞いたことある」)
「……もっと強くならなきゃ」
 呟いて、切り替える冬青。
 隆起する廃棄機械。その足場を利用し、敵接合部へ飛び乗った冬青が漆黒の吸血武器となった花髑髏を振るった。
 殺傷力の増したそれは瓦解間近な装甲の一つを斬り崩す。
 ゴゴゴゴ、と敵の駆動音が地鳴りの様に冬青の脚を伝い、熱くなる。
 ハッとして冬青は空を見上げた。
 敵の放射口が滲むような赤。
「アヤネさん、炎が来ます――避けて!」
 自身も飛び退きながら言えば、アヤネもまた回避に動くのが視認できた。
(「心配しないで。
 ……今度は無茶して貴方の表情を曇らせたりしないから」)

 逆に飛びこむ者――謡だ。
 余所見は許さぬとばかりに、跳躍し敵顎を砕かん勢いで大剣で斬り上げた。
 バシュッと炎が散り熱となった残滓が謡に降り注ぐのを、滞空の間に振るう大剣で払い飛ばし、遠心に身を任せた更なる一刀。
 やや勢いが死んだそれは、足場を確保する間みたいなものだ。
 謡が首部の装甲に足を引っ掛けた刹那。
 猟兵の援護射撃が放たれ、怯むスチームドレイクを蹴り倒す勢いの謡が前進ののち、血の刃が横一文字を描いた。
『ジャアアアアアァ……ッ』
 大きく仰け反るスチームドレイクに応じ、再びたくさんの錬金術の炎が虚空に出現しはじめる。
「私には分が悪い相手だが、力自慢の仲間に任せようか。狙うなら今、ここだ」
 虚空の熱、敵の熱、相互する『繋ぎ』を見出したリョーコがミクへと言った。
「観測完了。解析完了。力場形成から原子核崩壊まで2ミリセコンド、十分だね」
 密集し煌々としている炎弾が、刹那、落ちる灯りの如く唐突に掻き消えていく。
『!?』
 結合分解を起こす力場が放たれれば、ユーベルコードの相殺となる――錬金術の炎力が戻ってくるわけでもない――世界演算『結合分解』にスチームドレイクは処理落ちしたらしく、一瞬止まった。
「あら、足元がお留守ですわよ♪」
 闇から放たれる声。否、漆黒のドレスとマント姿のミクだ。
 薄闇の大斧と斬馬刀が大きなクロスを描き、バキンッと敵胴の下部装甲が斬り割られた。
 後ろへと振り抜いた大斧の長柄を即座に掴み直したミクが上段から振り落とせば、導管が破裂し、赤い硬質なガラスが高らかな音をたて砕ける。
 そのまま穿った斧刃を軸にふわりと跳躍するミクが間合いを抜ければ、零れる雨がサアアアァと降り始めた。
 伝う雫。
 スチームドレイクが濡れれば濡れるほど、比例するように熱が内包していくのが分かった。
 白かった蒸気は灰となり、敵は炎熱を上手く排出できていないようだ。それはキギの零れる雨――耐熱凝固剤のものによるもので、恐らくは蝋が固まっていく様なのだろう――スチームドレイクがのたうち回る。
 同じ暴れ回っているのでも、先程とは勢いが違う。
「突撃にゃー!」
 ナミルが跳躍ののち着地した場所は、スチームドレイクの肩といってもいい部位だ。
 ぶん! と巨大な斧を薙ぐのと同時に自身も一旋回し、遠心ののった斬撃を放つ。
 敵の装甲が割れ砕け、やや接敵したケイスが苦無を投擲した。斧によって斬り開かれた奥のガラスを苦無が貫き、赤炎が噴出する。
 避けるように、高所にのぼる猫の如く駆けあがったナミルが火炎放射口めがけて重い一撃を放つ。呪詛ののせられたそれにスチームドレイクは大きく波打ち、衝撃に周辺の廃棄機械がクレーターを作る。
『ギャリィィィィ!!!』
 バチバチバチッとショートする音が全身を駆け抜け、僅かな静寂――瞬間スチームドレイクは爆発した。
 轟音と爆風。
 廃棄機械が吹き飛ばされ、猟兵たちが自らの身を守る姿勢をとった。
 世界が衝撃と唸りを猟兵たちに叩きつけてくる――しかし、それでも緩和されたうちであった、と知るのは、ほんの数秒後。
 衝撃に閉じていた目を開けば、キギの零れる雨が衝撃波と熱を相殺する暴風雨を二重に起こり皆を守っている光景が、猟兵の瞳に映りこむのだった。

 名を呼ばれ、冬青は振り返るもほんの少し目が逸れてしまう自身に気付く。
 さっきは、かばってくれてありがとう――と。アヤネの声に、逡巡ののち頷いた。
「あのときは動揺してしまって、うまく言葉にできない僕が悪かった……ソヨゴのせいではないのだから、あまり気にしないで」
「私も……驚かせてしまって、ごめんなさい。次はもっと――」
 そう言いかける冬青に、アヤネが声を重ねた。
「でも今後、ソヨゴは僕をかばわないで欲しい。
 僕は大丈夫だから」
 ゆるりと視線を上げれば、当たり前だが目が合う。当たり前なことに、冬青はふと安堵した。
「ソヨゴが傷ついてしまうと、僕が悲しい――わたしを守るために、あなたが犠牲になるのは耐えられない」
 アヤネの言葉は、心の声そのままに。
 感情を映し出す緑の瞳に魅入られるようで。冬青は頷いた。
「二人でもっと強くならなきゃ……ですね」
 決意をのせた微笑み。
 もっと、もっと、強く――それは誓い。冬青は手にする花髑髏を胸に抱いた。

「オ疲レ様デシタ」
 スッと狂気を潜めた謡が猟兵たちに言う――あとは帰るだけのはずだ、と、思い周囲を見るのだが。
「まだまだ、やりたいことがあるみたいですわ」
 くすくすと笑むミク。
「この割れたガラスの中に動力部があったのだろうねぇ」
「炎力の核は錬金術で生み出されたのかな」
 爆発したはずのスチームドレイクの部品を、この廃棄機械の中から見つけていくのはリョーコとキギだ。
 自立式。トライアルアンドエラーで確立していったのだろうか、と、思考の枝葉はまだまだ広がる。
「すずしくなってきたにゃー」
 そう言って金ピカパーツを探すナミルと、それに付き合うケイス。
 魔導と蒸気の粋がつまった場で、猟兵たちは時間の許す限り、思い思いに色々と集めていくのだった。
 その最中、恐らくは右路の迷宮へ続くのだろうと思われる深部の路も見つかる。

 こうして猟兵達の奮闘によって災魔は倒され、トレジャリーガードとスチームドレイクの邂逅は阻止された。
 アルダワ魔法学園の地下――数多の迷宮、数多の災魔――オブリビオン。
 世界にひとときの別れを告げ、猟兵たちは帰路へと着くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月15日
宿敵 『スチームドレイク』 を撃破!


挿絵イラスト