迷宮災厄戦⑧〜星刈る夜に
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雲ひとつない満天の夜空。視界は良好。
天文台の最上階にいる『ハーベスター』は望遠鏡を覗いていた。
ここは覗いた星空を奪う望遠鏡のある国。
今日、彼女達が奪うのは猟兵という憎いほどに輝く星だ。
――きた。
発見すればこちらのもの。星が流れるように刃が落ちる。
この望遠鏡を使えば、こんなに遠い距離からでも星に手が届くのだ。
夜空よりも深い闇の刃で猟兵の首を落とす。
――ああ、なんて、きれい。
次はどの星を刈ろうか。もっともっとあなたがほしい。
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「始まっちまったね、『迷宮災厄戦』……。考える事も多いだろうけれど、まずは見つけた予知をひとつひとつ片付けていこうじゃないか」
グリモア猟兵、メリー・アールイー(リメイクドール・f00481)はアリスラビリンスで繰り広げられる大戦争の予知を早速告げる。
「今回向かってもらうのは『覗いた星空を奪う望遠鏡のある国』だよ。美しい星空が広がる不思議の国の中で、オウガは高い塔のような天文台の最上階に陣取っとるみたいだ。そこにある望遠鏡が特別製で、『望遠鏡で発見したものに一方的に遠距離攻撃を仕掛けること』が可能らしい。そこにいるのは『ハーベスター』、大鎌を操るオウガだよ。普段は近距離攻撃がメインだけど、望遠鏡で見つけられたら関係なく切り刻まれちゃうから、気を付けるよーに!」
と、言う事は。
そう、厄介な能力ではあるが対策はすぐに思いつくよね、とメリーはにこりと笑う。
「ちゅーわけだから、猟兵のみんなには、『望遠鏡に発見されない工夫』をして向かってもらいたいのさ。見つからないように接近したら、あとは好きに捻じ伏せちまいな!」
戦闘前から戦いは始まっている。皆の戦術に期待しとるよ、と小さな手が振られた。
「それじゃあ、作戦を思いついた人から早速送ってくよ。よろしゅうにー!」
葉桜
OPをご覧いただきありがとうございます。葉桜です。
アリスラビリンスの『迷宮災厄戦』の依頼です。
『プレイングボーナス……望遠鏡に発見されない工夫をする。』
ユーベルコードは指定した一種類のみの使用となります。
プレイングはOP公開から募集開始です。
申し訳ございませんが、全採用のお約束は出来ません。
可能な限り書いて、なるべく早めの完結を目指したいと思っています。
アリラビ大好きなので頑張ります。頑張りましょう!
ご参加お待ちしております!
第1章 集団戦
『ハーベスター』
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POW : 収穫の時
【大鎌】が命中した対象を切断する。
SPD : 瞬時の首狩り
【大鎌】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ : 収穫の舞
【大鎌を振り回し、衝撃波】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リズ・ルシーズ
アドリブ・連携歓迎だよ!
【SPD】
望遠鏡で空を見上げる、ロマンチックなオブリビオンだね?でも、望遠鏡って結局は拡大鏡だから
光学【迷彩】を展開し、【指定UC】を用いて長距離狙撃銃を召喚し構える。
元になるボクの姿が見えなければ、望遠鏡でも見えないよね
大鎌の射程は短く、望遠鏡にも確認されない。ならば、遠くから一方的に攻撃できるという【地形の利用】を行い、【スナイパー】として狙い撃つだけ
ロナンチックとかボクはわからないし、確実に仕留めさせてもらうよ
長距離狙撃銃のトリガーが無造作に引かれた
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不思議の国の星空は、不気味なまでに美しい。
無数の星に自分が観測されているのではないかという錯覚に陥りそうになる。けれど、情報によれば、ここで星と猟兵を観測しているのは、望遠鏡を覗くオウガのはずだ。
「望遠鏡で空を見上げる、ロマンチックなオブリビオンだね?」
サイボーグ実験体のEロットのZ番目、管理番号Re-Z。リズ・ルシーズ(Re-Z・f11009)は、転移された場所から遥か遠くの天文台を見つめる。
「でも、望遠鏡って結局は拡大鏡だから」
リズは光学迷彩を展開させながら、【Re-Gnant】を召喚した。
「『アーカイブ接続、解析、最適化』ボクはルシーズを統べるモノ」
サイボーグのリズの首から下が機械の外部兵装に覆われ、長距離狙撃銃が彼女の周囲に浮遊する。元になるリズが迷彩で隠されている為、派手に展開された狙撃銃も望遠鏡には捉えられない。
「長距離から獲物を狙えるのは、君だけじゃないんだよ」
遠距離攻撃には、それを越える超遠距離攻撃で対応すれば良いだけのこと。
ここはハーベスターが思うように、猟兵という名の星を刈る狩場だろうか?
否、今この瞬間にその立場は逆転する。
「ロマンチックとかボクはわからないし、確実に仕留めさせてもらうよ」
リズはスナイパーとして、天文台の望遠鏡を覗く赤い瞳に狙いを定める。
長距離狙撃銃のトリガーが無造作に引かれた。
まずはひとつ。オウガの命が落ちる。
ハーベスターは自分が刈られたと理解する暇も与えられなかっただろう。
大成功
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亞東・霧亥
【UC】
覆面を被った分身をありったけ出現させて、四方八方に散開。
・目立たない、ダッシュ
自身は光の屈折を利用して敵を欺く外套や隠密服を纏い、攻撃を受けて霧散する分身から敵の位置情報を割り出して、一気に駆け抜ける。
接近したら、手にした雷迅でトドメ。
塩崎・曲人
なるほど、隠密行動
オレ様みたいな目立つ髪型してると辛いねぇ
まぁ、どうにでも出来るわけだが
現着したらとりあえず遮蔽取って隠れよう
焦る必要はかけらもねぇ
んで、ついでに乗り物も探しておく
天文台からの気配で、同じ作戦に参加した猟兵がたどり着いて戦端が開いたのを感じたら
【切り込み隊長】を発動
パクった乗り物と共に天文台にテレポートって寸法よ
「ショートカットでいきなり参上!遠慮なく途中参加させてもらうぜオラァ!」
で、相手は鎌使い
威力は洒落にならねぇ、か
なら微妙に間合いを取りつつチェーンを武器にからめてやろう
好き放題振り回せなくなったら怖くねぇんだよ!
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「なんか都合の良い遮蔽物や乗り物がありますよーにっ――っとぉ!」
星に願いながら転送されてきた塩崎・曲人(正義の在り処・f00257)は、何やら芸術的な塔のように積み上げられている廃棄物の山を早々に見つけられたので、天文台から身を隠しながらお目当てのものを探していく。
「隠密行動は、オレ様みたいな目立つ髪型してると辛いねぇ」
ツンツンキラキラの星頭をくしゃりと掻いて、まあどうにでも出来ると気楽に山をごそごそ。戦場到着後、即行動に移る猟兵が多い中、曲人はあくまでマイペースだ。
「焦る必要はかけらもねぇ」
まずは求めるものを得る。そして時を待つ。
そんな曲人の視界の端で、戦場を駆け抜ける仲間の影が散開した。
「見つからないように殺す。目立たないように行動するのも暗殺するのも得意な方だ」
顔は覆面、身体は隠密服と外套で覆ったこの男は、オウガを始末しに来た猟兵のひとり、覆亞東・霧亥(峻刻・f05789)だ。完璧な隠密行動用の衣装で転送された霧亥は、速やかに【分身の術】で自分の分身をありったけ出現させる。
数多の星が輝く空の下で、霧亥達は散らばった。光の屈折を利用する外套はそれを視認しようと注意すればするほど目が眩んで、観測者を惑わせる。
――シュバッ。見えない大鎌の刃によって、霧亥の首が飛んだ。しかし、それはただの分身。首は地面に転がる前に霧散する。
――シュバッ。同じように落ちて来た刃は、今度は何も切らずに地面を抉る。先程までそこにいたはずの影は跡形もなく消えていた。
「それは残像だ。……天文台は向こうか」
自分の影の群れの中、本物の霧亥は目指すべき観測者の元へと駆けていく。
がこんがこんがっこん! ブオォン!!
「っしゃあ! やあっと動きやがったな!」
廃車のバイクを発掘した曲人は、何とか力尽くでエンジンを復活させたらしい。
幾つか大鎌が落ちてくる気配はしたが、自分がいる場所とは離れた所を抉るものばかりだった。戦場に散らばっていた仲間の偽物の数も大分減っている。そろそろ頃合いだろう。バイクに跨って【切り込み隊長】MAGATO様が行く!!
「……おかしいわね。どれを斬っても手ごたえが全然ないわ」
望遠鏡を覗くハーベスターは苦戦を強いられていた。偽物を量産する技を持つ猟兵だとしても、全てを刈ればいつかは本物に行きつくはずなのに――まさか。
――もしかしたら、もうすでにこの天文台に上がってきているかもしれない?
そんな予感がハーベスターの頭を過ぎった時。予想外の男の乱入してきた。
「ショートカットでいきなり参上! 遠慮なく途中参加させてもらうぜオラァ!」
バイクに乗ってド派手なテレポートをしてきた曲人にハーベスターは意表を突かれたが、反射的に瞬時の首狩り――手に持った大鎌を超高速で振りかぶる!
「鎌の威力は洒落にならねぇだろうけどな。好き放題振り回せなくなったら怖くねぇんだよ!」
それは一瞬の攻防だった。鎌が振り下ろされる前に曲人のチェーンが絡みつき、バイクの勢いのまま別方向へ力任せに引っ張って超威力を相殺する。
「これでトドメだ」
静かに密やかに。この天文台の部屋で息を潜めてタイミングを見計らっていた霧亥は、ハーベスターの背後で終わりを告げた。
雷迅――。
瞬きよりも速く命を奪う殺戮刃物は、既にハーベスターの首を刈り終えていたのだ。
大成功
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ニオ・リュードベリ
すごい望遠鏡があるんだねぇ……
一方的に攻撃されるなんて嫌だもの、ささっといっちゃうよ
着ていくのはいつものドレスじゃなくてUDCアースの制服にして
武器もランスじゃなくて影鍵の剣にしよう
今回はバロック達に悪いけど囮作戦
オウガは勿論怖いもの
この感情でバロックを生み出す事は出来るはず
さあ皆、好きな風に散っていって
バロック達には思い思いに動いてもらいつつオウガの元を目指してもらう
夜闇の中だからある程度は隠れられるだろうけど、きっと一体ずつ狩られちゃうだろうね
皆の仇はあたしが取るよ
バロックに紛れるよう【目立たない】ように移動しよう
そして上手くオウガに接近できたのなら剣で奇襲
【貫通攻撃】でその身体を貫くよ!
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「すごい望遠鏡があるんだねぇ」
覗いた星空を奪う望遠鏡、だって。
そんなすごい望遠鏡を、人の命を刈る道具として使ってしまうなんて。
「……一方的に攻撃されるなんて嫌だもの、ささっといっちゃうよ」
今宵のニオ・リュードベリ(空明の嬉遊曲・f19590)はいつもの可愛らしいアリスクロスのドレスではなく、UDCアースのよくあるセーラー服を着用している。黒っぽい服装の方が、『あの子たち』の中に紛れやすいだろう。
――すぅ――はぁ。深呼吸。
……オウガは……怖い……。
普段の明るく元気なニオが心の内に抱えている、ネガティブな感情を呼び起こす。
「……あなたなんて、大嫌い」
【創造召喚・影の捕食者】。
薄い桃色の唇が紡ぐ否定の言葉は、彼女の影からバロックレギオンを生み出した。
「さあ皆、好きな風に散っていって」
宵闇の中、バロックレギオンの群れに紛れてニオは天文台へ向かう。バロック達は指示通り、固まらないように様々なルートに分かれながらオウガを捕まえようとする。ニオはそんな彼等の影になるべく隠れて、目立たないように歩を進めた。バロック達には申し訳ないが、今回は囮作戦を決行する他無かったのだ。
ザシュ――ザシュ――。バロック達が一体、また一体と大鎌で刈られる音が聞こえる。
(皆の仇はあたしが取るよ)
今はただ、大嫌いなオウガを目指して地を蹴った。
「来たわね、そこにいるんでしょう!?」
天文台で望遠鏡を覗いていたオウガは、急に振り向いて大鎌を振り回し、収穫の舞――激しい衝撃波を背後に放った。入口から忍び込もうとしていた黒い影が刈られる。ハーベスターは、大鎌の斬撃を潜り抜けた影が天文台の中へ入っていくのを観測していたのだ。
「残念、その子もバロックだよ」
しかし、奇襲はまだ終わってはいなかった。最後のバロックの影に隠れていたニオが飛び出して、影鍵の剣でハーベスターの胸を貫く!
命を刈り取られたオウガは、ドロリと影に飲み込まれていった。
大成功
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セシリア・サヴェージ
星空を奪う望遠鏡とは、ロマンチックでもあり無粋でもあり……。
しかし星を奪うことはできても私の首は奪わせません。
UC【漆黒の帳幕】を発動。戦場全体を暗闇で包みます。
照明や星明りも無くなった今、最早望遠鏡を覗いても何も見ることはできないでしょう。
私は【闇に紛れる】と【ダッシュ】で素早く静かに移動。【暗視】により目的地を見誤ることはありません。
「まるで闇の中を彷徨うかのようですね……私をお探しですか?」
接近に成功した後は背後から【騙し討ち】を仕掛けます。望遠鏡を覗くのに夢中であれば難しくはないでしょう。
敵の戦闘態勢が整わぬうちに暗黒剣による【重量攻撃】を叩き込みます。
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「星空を奪う望遠鏡とは、ロマンチックでもあり無粋でもあり……」
星は手の届かない夜空にあるからこそ、こんなに綺麗に見えるのではないだろうか。
……なんて、少し感傷的過ぎたか。ここの星空があまりに美し過ぎるものだから。
セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)は星空から天文台へ視線を移した。
「しかし星を奪うことはできても私の首は奪わせません」
闇が深ければ深いほど、光は輝きを増す。セシリアが好む世界の理のひとつだ。
けれど、今宵ばかりは、星の光さえも飲み込む闇を彼女は願った。
「舞い降りろ闇よ。そして全てを包み込め」
セシリアは【漆黒の帳幕】でこの国全体を暗闇で包み込む。
「照明や星明りも無くなった今、最早望遠鏡を覗いても何も見ることはできないでしょう」
暗視が可能なセシリアは、闇に紛れて天文台まで一気に駆け抜けていった。
「どうなってるの!? こんなに真っ暗闇になるなんて聞いてないわ!」
星光を失ったハーベスターは、手探りで望遠鏡に縋りながらヒステリックな声をあげていた。便利な手段に頼りきりだと、それを封じられた時にパニックになりがちだ。そういう時こそ焦らずに、自分には他に何が出来るのか考え、自らの手で道を切り開かなければならないのに。
「まるで闇の中を彷徨うかのようですね……私をお探しですか?」
闇に潜む闇はすぐそこに。ハーベスターの背後にセシリアはいた。
セシリアはいとも簡単に闇を自在に操っているように見える。
しかし、それは彼女が暗黒を背負う使命の元、多くの代償を払いながら数々の敵を討った経験から、更に自分を磨いて手に入れた努力の結晶だ。
自分に何が出来るのか。何が必要か。彼女は闇の中でも決して光を見失わない。
ハーベスターがそんな事実を知る機会などあるわけもなく。セシリアが星の数ほど討ったオブリビオン達と同様に、暗黒剣の重量級の斬撃により命を刈られたのだった。
大成功
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ルパート・ブラックスミス
【錬成カミヤドリ】、80の複製鎧を【挑発】的、かつ纏めて斬られないよう僅かに散開して展開し突撃。
もぐら叩きの時間だ。外見は同じ甲冑の軍勢、貴様の元に辿り着く前に本体を両断してみせるがいい。如何せんハズレは中身が空のリビングアーマー、半端に刻む程度では動き続けるぞ?
勿論、律儀に当たりを混ぜておく必要もない。何体か倒されたらその残骸の山に紛れて自分、つまり本【物を隠す】。
後は事前に【誘導弾】として【投擲】したニクス(爆槍フェニックス)が、もぐら叩きに躍起になっている敵を【串刺し】にするまで潜むだけだ。
刈るのはいつだって我らの方だ、オブリビオン。
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星空へ昇っていく流れ星を観測。
異変に気付いたハーベスターはすぐに発射地点を確認しようとして驚愕する。
――ザッザッザッ。
足踏みを揃えた甲冑鎧の軍勢の進行、その数八十。
ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は【錬成カミヤドリ】で複製した彼の本体である鎧を隠れ蓑として、操る鎧と同じように機械的に動いていた。軍隊のような鎧達は範囲攻撃を受けないよう散開し、様々な進路で天文台を目指す。
「もぐら叩きの時間だ。外見は同じ甲冑の軍勢、貴様の元に辿り着く前に本体を両断してみせるがいい」
鎧のひとつが呟いたが、ハーベスターがそれを判別する事は不可能だった。
「こちらへ向かっているのなら、到達する前に全て落としてあげるわ」
鎧を操る猟兵を見つけられなくても、一体たりとも此処まで到達されなければいい。
ハーベスターは望遠鏡を覗き、鎧に大鎌の刃を落として首を断つ。
ガラン、鉄兜が落とされた中身は空っぽだ。
しかし、これではまだ一カウントにもならない。何故なら首無しの鎧は自らの足で首の元まで歩き、自らの手で首を拾って、鉄兜を装着するのだ。そしてまた淡々と目的地を目指す。
「如何せんハズレは中身が空のリビングアーマー、半端に刻む程度では動き続けるぞ?」
「なんって、しつこいのこの鎧!」
リビングアーマーは何度も何度も鎌を落とされて、身体の鎧が接続不可能なほどバラバラにされて漸くその動きを止める。非常に手間はかかる。が、止められない事もない。
ハーベスターは迫り来る鎧を一体一体集中して大鎌を落とし、確実に数を減らしていく。自分へ辿り着く前に殲滅しなければならないというプレッシャーと戦いながら。
だから、気付けなかったのだ。ルパートの本命の企みに。
進軍を続ける鎧の群れの中に――本物は、いない。
(律儀に当たりを混ぜておく必要もない)
ルパートは何体か倒された鎧の残骸の山に紛れて隠れていたのだ。
では、彼はどうやってオブリビオンを討つのか。
その心配はいらない。ルパートは既に攻撃の一手を終えているのだから。
星空へ昇っていた流れ星――投擲された爆槍フェニックスが天文台に届く。
望遠鏡を食い入るように覗き込み、遠距離の鎌を振り下ろし続ける、モグラ叩きに夢中になっているハーベスターは落ちてくる星に気付かない。
無防備なその背を、ニクスの刃が串刺しにした。
「刈るのはいつだって我らの方だ、オブリビオン」
大成功
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エリザベート・ブラウ
まあ美しい世界ね
闇に覆われた空でも輝く満点の星
塔の上でお待ちなの?
まあ、それじゃあ、
そこでお待ちになっていて
【蝶のはばたき】で氷の蝶の竜巻を
わたしはその内に潜んで蝶と共に舞い上がる
あなたに会いに行くわ
あら
制御が難しいのよね、これ
塔が少し壊れたらごめんなさいね
ふわり降り立ったならば親近感
あなたの武器とわたしの愛しいプシュケ
少し似てるわね?
まあ、わたしのプシュケの方が、美しいけれど!
ぶんと振り回す鉄槌であなたのいる天文台の天辺を地形破壊
遠くの憧ればかりを見ていちゃ見えないものもあるでしょう
さあ地に降りましょう
★アドリブ・連携歓迎
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「まあ美しい世界ね」
エリザベート・ブラウ(青の蝶・f20305)が見上げた夜空は、闇に覆われながらも満天の星が瞬いていた。世界が破滅の危機に瀕していても、星はその輝きを見失わない。
エリザベートはアリスラビリンスの森に佇む、蝶と客人達が集う庭園を愛している。
世界を救うだなんて、大層な力は持たないけれど。
大切なものを守れるだけの、小さな光のひとつになれるなら。
「塔の上でお待ちなの? まあ、それじゃあ、そこでお待ちになっていて」
青の瞳に光を宿して、エリザベートは戦場に舞う。
「たくさんの魂が魅せる夢を見ていて」
今宵、エリザベートが【蝶のはばたき】で喚ぶのは、氷の蝶の竜巻。薄い羽根に星光が乱反射して、美しい幻想は蝶と共に舞い上がるエリザベートの姿を隠した。
「あなたに会いに行くわ」
目立つ竜巻に、大鎌の衝撃波は何度も落とされる。けれど、刃は激しい氷の渦に阻まれて、内に潜むエリザベートには辿り着けない。それどころか、天文台まで彼女を送り届けても竜巻の勢いは収まらず、塔の端を抉り取っていく。
揺れる天文台で、ハーベスターは望遠鏡にしがみ付いていた。
「くっ……猟兵って輩は無茶苦茶なことをしてくれるわねっ」
「制御が難しいのよね、これ。壊してしまってごめんなさいね」
ふわ、――。
いつの間にか最上階に降り立っていたエリザベートは、取り乱しているハーベスターの前で優雅に微笑んでいた。焦る表情、大鎌を握りしめる手に力が入るのが分かる。
「あなたの武器とわたしの愛しいプシュケ、少し似てるわね?」
対するエリザベートの手には、紫の荊に絡めとられた大きな鉄槌。赤い宝玉を埋め込まれた彼女の相棒もなかなかだけれど。
……やっぱり、そうね。わたしのプシュケの方が、美しい。
ハーベスターの収穫の舞を遮るようにエリザベートの鉄槌は大鎌を弾き飛ばし、その勢いのまま天文台の天辺を穿ち――崩壊させる。
「遠くの憧ればかりを見ていちゃ見えないものもあるでしょう。さあ地に降りましょう」
今度こそ望遠鏡ごと崩れ落ちる天文台に埋もれて、ハーベスターは息絶える。
青い蝶はひらりとその場から去り、夜空に消えていった。
星を刈るものはもういない。
満天の星はひとつも奪われることなく、これからも世界を照らし続けていく。
大成功
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