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迷宮災厄戦⑧〜天文台のジョーカー

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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「緊急事態発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、リミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々と――しかし表情には微かな緊張を浮かべながら語りはじめた。
「かねてからアリスラビリンスで確認されていた謎の集団『猟書家』が、本格的に活動を開始しました。彼らは同世界のオブリビオン・フォーミュラ『オウガ・オリジン』から奪った現実改変ユーベルコードによって、他世界の侵略を目論んでいます」
 猟書家に力の殆どを奪われたオウガ・オリジンは怒り、カタストロフによってアリスラビリンスを消滅させようとしている。この危機を阻止するのが今回の戦争の勝利条件ではあるが――オウガ・オリジンが倒されれば、猟書家たちは他世界に逃走してしまう。
「すなわち今回の戦争はオブリビオン・フォーミュラと猟書家、二つの勢力を同時に相手取る戦いとなります。どちらを先に倒すかは判断の難しいところですが……何れにせよ、まずは彼女らの居所までの道を繋げなければ話になりません」
 戦場となるのはアリスラビリンスを構成する幾多の『不思議の国』。オウガの軍勢が立ちはだかる独特な国々を攻略するために、リミティアはグリモアからの情報を開示する。

「皆様に攻略をお願いしたいのは『覗いた星空を奪う望遠鏡のある国』です。美しい星空が広がる不思議の国ですが、既にオウガの集団によって占拠されています」
 この国のオウガは高い塔のような天文台の最上階に陣取り、やって来る猟兵を望遠鏡で探している。もしこの望遠鏡に見つかれば、遠距離から一方的な攻撃に晒されるだろう。
「たとえ近距離攻撃型のユーベルコードでも、この望遠鏡を覗いている間は『まるで敵が目の前にいるかのように』それらの技を使うことができるようです。望遠鏡の視界がそのまま敵の攻撃射程になるとお考えください」
 逆に言えば、敵の索敵能力や攻撃射程は全て望遠鏡に依存している。どうにかそれに見つからないよう隠れながら接敵することができれば、有利に戦うことができるだろう。

「天文台に配備されているオウガたちの名は『ジョーカー』。美少女が大好物の気分屋なオウガで、分身や大鎌、炎による攻撃を得意とします」
 先述の通り、望遠鏡に見られている間は鎌などの近接攻撃の射程も遠距離化する。一方的に斬られたり焼かれたりするのを好まないなら、やはり索敵をかい潜る方法を考えたほうが無難だろう。
「幸い、天文台の周りには他の建物や街路樹が並んでいるので遮蔽物が無いわけではありません。索敵を欺いて接敵さえできれば、個々の戦闘力では皆様のほうが勝る筈です」
 不思議の国の環境を味方につけた敵をどう攻略するか、その手段は各自に任される。
 厄介ではあるが、猟兵なら必ず成し遂げられる筈だとリミティアは確信していた。

「まずはこの緒戦に勝って勢いをつけ、本命の敵を討つための足掛かりとしましょう」
 そう言ってリミティアは手のひらにグリモアを浮かべ、アリスラビリンスへの道を開く。オウガ・オリジンと猟書家、二つの勢力を相手に世界を守るための戦いの幕が開く。
「迷宮災厄戦、開戦です」



 こんにちは、戌です。
 ついに始まりました迷宮災厄戦。アリスラビリンスの命運のみならず、他世界の今後にも関わる重大な決戦の始まりです。

 今回の依頼は『覗いた星空を奪う望遠鏡のある国』を舞台に、天文台の最上階に陣取る『ジョーカー』の集団との戦いです。このシナリオでは下記のプレイングボーナスに基づいた行動を取ると判定が有利になります。

 プレイングボーナス……望遠鏡に発見されない工夫をする。

 ジョーカーたちが覗く望遠鏡に発見されると、一方的に遠距離攻撃を仕掛けられます(鎌などの近接攻撃も遠距離化します)。どうやって索敵を誤魔化しつつ接敵するかが勝利の鍵です。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『ジョーカー』

POW   :    ブラックレディ
【死神の大鎌】が命中した対象を切断する。
SPD   :    ドッペルコップ
自身が【食欲や怒り】を感じると、レベル×1体の【自身の魂を分割した分身体】が召喚される。自身の魂を分割した分身体は食欲や怒りを与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ   :    レッドドッグ
【バラまかれたトランプから噴き出す灼熱の炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【灼熱の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ジュリア・ホワイト
隠密行動?ふふふ、大の得意だとも
……その疑わしげな目はなんだい、運転士精霊さん?

【其は科学の象徴、機関と産業の友】を発動
黒煙を周囲一体に広げながら天文台に向かって進んでいくよ
黒煙で向こうに何者かが迫っているのは気づかれてしまうけども
望遠鏡では煙の中を見通せない、中にいるボクそのものを攻撃されることはないというわけさ!
完璧な迷彩だよ
(呆れ果てたような精霊さんに見送られつつ)

首尾よく天文台に到達できたら、後は正面から制圧するだけだよ
多少の炎なんてボクには効かない
火力で圧倒させてもらうよ!
「重火力ヒーロー、オーヴァードライブ参上!覚悟してもらうよ!」



「隠密行動? ふふふ、大の得意だとも」
 オウガの索敵に察知されず、密かに接近し、敵を排除する。そんな今回の依頼にたいへん自信ありげな様子で挑むのはジュリア・ホワイト(白い蒸気と黒い鋼・f17335)。蒸気機関車のヤドリガミである彼女の傍らには、運転を司る精霊さんが付き添う。
「……その疑わしげな目はなんだい、運転士精霊さん?」
 故郷では爆走系ヒーロー・オーヴァードライブとして名を馳せ、好戦的で自重しない戦闘スタイルから「オーバーキル」とも呼ばれる彼女がいったいどんな「隠密」を見せるのか。精霊さんは甚だ不安であった。

「……むむっ。何か来た!」
 一方、オウガが立てこもる不思議の国の天文台にカメラを移せば、大鎌を担いだ道化師姿のオウガ『ジョーカー』が、望遠鏡を覗き込んで天文台の周辺を監視している。
 そのうちの1人が、こちらに近付いてくる怪しい影を見つけた。いや、正確に言うとそれは影ではなく煙――何かが濛々と黒い煙を巻き上げながら突き進んでくる。
「機関車と言ったら煙を吐くものだろう? 空を覆う程ではないけどね」
 周囲を埋め尽くす程ではあるその黒煙の発生源はジュリア。【其は科学の象徴、機関と産業の友】を発動した彼女は喋るたびに口から煙を吐き、その範囲を広げていく。
 そんなことをすればオウガも何者かが迫っているのにはすぐ気付くだろう。ただし、この濃密な煙幕の中のどこにジュリアがいるか分かるかと言えば話は別だ。

「何あの黒いの?!」
「とにかく迎撃! 近付いてきてるわよあいつ!」
「しかも凄く速いし!」
 機関車相応のスピードで猛進してくる煙の塊を見て、ジョーカーたちは慌ててトランプのカードをバラ撒き【レッドドッグ】を発動する。しかし放たれた灼熱の炎は黒煙の一部を吹き飛ばすが、その本体であるジュリアには当たっていない。
「望遠鏡では煙の中を見通せない、中にいるボクそのものを攻撃されることはないというわけさ!」
 敵の遠距離攻撃の射程が望遠鏡の視界に依存しているのなら"発見"はされても"見えない"状態にしてしまえばいい。なるほど視界を奪い尽くすユーベルコードの煙幕は、望遠鏡の魔力でも見通すことはできないようだ。
「完璧な迷彩だよ」
 本人は得意げな顔で、確かに有効な作戦であることは間違いないのだが、隠密とはこういうものだっただろうか――天文台に向かって直進するジュリアを、運転士精霊さんは呆れ果てたような様子で見送るのだった。

「来てる来てる! 止まらな―――っ!!」
 ジョーカーたちが煙幕を払い散らそうと無駄な努力を続けるうちに、もう望遠鏡でなくともはっきり見える距離までそれは近付いていた。首尾よく天文台に到達したジュリアは高らかに名乗りを上げ、挨拶ついでに「ML106」をぶっ放す。
「重火力ヒーロー、オーヴァードライブ参上! 覚悟してもらうよ!」
 発射された四連装の携行式詠唱ロケットランチャーは、それぞれが天文台の入り口の扉を破壊し、頂上にいるジョーカーたちを吹っ飛ばした。「ぎにゃーっ?!」と悲鳴が上がる中、黒煙の尾を引きながら猛然と塔内部を駆け上がるヒーロー。

「よよっ、よくもやってくれたわね! よく見たらちょっとカワイイからって!」
 爆死を免れたジョーカーは怒り心頭といった様子でトランプから炎を浴びせるが、そんなもので蒸気機関車は止められない。そもそもこの距離まで接近を許した時点で、もう勝負は付いたようなものだった。
「多少の炎なんてボクには効かない。火力で圧倒させてもらうよ!」
 ここまで来れば後は正面から制圧するだけだと「残虐動輪剣」のチェーンソウが唸りを上げる。彼我の火力差、そして耐久力の差は歴然で、哀れな道化は一矢報いることもできぬまま、ばったばったと薙ぎ倒されていく。
「お、覚えてなさ――ぎゃーっ!!!」
 まずは1箇所。この天文台をジュリアが制圧するまでに大した時間はかからなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

宇宙空間対応型・普通乗用車
戦争なぁ。
普通乗用車としては、正直ちょいと荷が重い感があるが…
ま、猟兵としては見過ごすわけにもいかねぇか!

で、なんだっけ?望遠鏡から隠れて行くんだっけか?
んじゃ、【地中走行モード】でドリドリ掘り進んで、
そのまま足元から奇襲としゃれ込みますかぁ!
灯台下暗しとはよく言ったもんだぜ!
灯台じゃなくて天文台だが、まぁそんな細かいこたどうでもいい!
星を掴めるからって、足元をおろそかにしてんじゃねぇぞオラァ!

そんなこんなで建物に乗り込んだらその勢いのまま攻撃開始だぜ!
穿孔機マシマシの攻撃重視モードで敵を轢き肉にしてやんよぉ!
本来の用途とは違うからよい子の皆さんは真似すんなよ!

※アドリブなどお好きにどうぞ



「戦争なぁ。普通乗用車としては、正直ちょいと荷が重い感があるが……」
 アスファルト舗装が進んでいない戦場に転移され、さてどうしたものかと思案する宇宙空間対応型・普通乗用車(スペースセダン・f27614)。陸海空宙あらゆる環境を走破し自律思考までする彼を「普通」乗用車と呼んでいいのかはさておき。
「ま、猟兵としては見過ごすわけにもいかねぇか!」
 たとえ乗用車にも世界を守る使命がある。見せてやろうスペースセダンの力を――これから先、彼を侮った者はことごとく、タイヤの轍を刻んで死に絶えることになる。

「で、なんだっけ? 望遠鏡から隠れて行くんだっけか? んじゃ……」
 目的地である天文台を確認した普通乗用車は、防圧防塵防熱装甲を纏った【地中走行モード】に変形。車体前面に展開された穿孔機がギュインギュインと唸りを上げる。
「ドリドリ掘り進んで、そのまま足元から奇襲としゃれ込みますかぁ!」
 スペースセダンは進む道を選ばない。なんなら道がなくても作って進む。高速回転する穿孔機が大地を抉り、白銀の車体はあっという間に地面の下に潜り込んでいった。

(回転力よし! 熱力変換効率よし! 防圧防塵防熱性能まぁ多分よし!)
 ドリドリ地中を掘り進み、地上の障害を無視して目的地への直線ルートをひた走る普通乗用車。どんなに倍率の高い望遠鏡でも、地面の下にいる相手までは見通せまい。
(灯台下暗しとはよく言ったもんだぜ! 灯台じゃなくて天文台だが、まぁそんな細かいこたどうでもいい!)
 あっという間に敵拠点の足元まで辿り着いた彼は、そのまま車体と穿孔機を地面と垂直に向け。熱力変換型推進装置の出力を最大まで上げて、一気に地上へと飛び出す。

「ん? なんか足元揺れてない?」
「そういえば、ドリドリって変な音も……うわぁっ?!??」
 敵の接近にまったく気付かず、油断しきっていたジョーカーたちは、地中から出てきた普通乗用車による予想外の奇襲を受けた。なんせ地中から普通乗用車である。不思議の国広しといえど、こんなの予想できるオウガはそうそう居まい。
「星を掴めるからって、足元をおろそかにしてんじゃねぇぞオラァ!」
 天文台に乗り込んだ普通乗用車は、敵が面食らっているのを良いことに、その勢いのまま攻撃を開始。車体のあちこちから追加の穿孔機を展開し、攻撃重視モードで屋内を爆走する。

「ななな何コイツ?! クルマ?!」
「ウチの国にこんな愉快な仲間いなかったわよ?!」
 無人のまま暴れまわる普通乗用車に大混乱のジョーカーたち。ちなみに彼はアリスラビリンスの不思議の国出身ではなく、スペースシップワールド生まれのセダンである。
「轢き肉にしてやんよぉ!」
 大地を掘削しながら走行する穿孔機と推進力は、戦闘に転用すれば強力な武器となる。
 ブチ拔かれる者、轢き潰される者、無惨な道化師の屍が天文台に積み上がっていく。

「本来の用途とは違うからよい子の皆さんは真似すんなよ!」
「誰に向かって言ってん……ギャーッ!!!!」
 幸いなことに、オウガに占拠されたこの不思議の国に「よい子」はいなかった。
 人食いの「悪い子」共を普通乗用車が悉く轢き倒していくその光景は、お茶の間に流れれば何かの事故現場のようにしか見えないだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・レヴェリー
確かに望遠鏡は星との距離を縮めてくれるけれど……まさか物理的になんてね。建物に紛れて迫るのもいいけれど、それは向こうも気にしているでしょうし……ちょっと、思い切っちゃいましょうか
【友なる星鷲、優美の調べ】で、星空を映す羽根を持つ大鷲に似た幻獣、アルテアを召喚して背に乗るわ
此処は星空が広がる世界。雲に阻まれず月と星だけが空を照らす世界で翔ぶアルテアは、まるで空と一つになったみたいなんだから
万が一のためにわたしは【刻命の懐中時計】を準備しつつ、天文台の上空までたどり着いたらアルテアの星魔法で星空の星々の光を束ねて、彗星のように撃ち込むわ
星々の輝きだって、集まったら凄いんだから。望遠鏡は危ないわよ?



「確かに望遠鏡は星との距離を縮めてくれるけれど……まさか物理的になんてね」
 この不思議の国のどこからでも見える、高くそびえ立つ天文台。その頂上で望遠鏡のレンズがキラリと光を反射するのを見て、アリス・レヴェリー(真鍮の詩・f02153)はさっと物陰に身を隠す。
「建物に紛れて迫るのもいいけれど、それは向こうも気にしているでしょうし……ちょっと、思い切っちゃいましょうか」
 万全の状態で監視網を敷く相手には、意表をつける大胆な戦法を。この『覗いた星空を奪う望遠鏡のある国』と最も相性の良い友を選び、彼女はユーベルコードを詠唱する。

「煌めく大鷲、美しき女王、気取りて唄う、わたしの友よ!」
 詩うは【友なる星鷲、優美の調べ】。現れるのは星空を映す羽根を持つ、大鷲の幻獣――星鷲アルテア。優美に大翼を広げる彼女の背に乗って、アリスは空へ舞い上がる。
 此処は星空が広がる世界。雲に阻まれず月と星だけが空を照らす世界で翔ぶアルテアは、まるで空と一つになったようで。天文台から望遠鏡を覗くオウガたちも、それが星空の一部だとばかり考え、敵の接近だとは気付かない。
「綺麗よ、アルテア」
 美しき友の背にぎゅっとしがみつけば、夜色の羽毛の感触がふわりと心地よい。万が一のために結界を張る「刻命の懐中時計」も準備しているが、その必要もなかったろう――星空と共にある星鷲の飛翔を妨げるものなど、この国に在りはしなかった。

「うん……? 今、星空が動いたような……」
「流れ星じゃないの?」
「いや、星じゃなくて、空自体が切り取られたみたいに……って、えぇ?!」
 天文台のジョーカーたちがようやく気付いた時には、アリスとアルテアは彼女らの上空に辿り着いていた。羽音を立てずゆっくりと降下してくる様子は、星空そのものが落ちてくるよう。
「観せてあげましょ。あのひとたちに、奪えない星空の煌めきを」
 少女の呼びかけに応えて、アルテアは星の魔法を紡ぐ。この国に広がる満天の星々の光を束ねて、敵を討つための力に――直上で高まっていく魔力を感じ取った敵は、慌てて望遠鏡を空に向ける、が。

「星々の輝きだって、集まったら凄いんだから。望遠鏡は危ないわよ?」
「ギャ……ッ!!!」
 真昼の太陽を、肉眼で直視するようなもの。集束された星光に目を灼かれたジョーカーたちは甲高い悲鳴を上げてのたうち回る。その直後、星鷲が宙まで届くような声で高らかに鳴くと、星光は彗星となって天文台へと降り注ぐ。

「こんな……こんな……っ?!」
 無数の彗星に撃ち抜かれ、倒れ伏していくオウガの道化師。その最期に浮かんだ表情は、苦痛や怒り、絶望といった負の感情ではなく――美しきものへの憧憬と感動。
「こんなキレイなの……初めて見た……それに、カワイイし……ッ!!」
 見惚れるあまりに回避も忘れ、求めるように届かぬ星空へと手を伸ばしながら、骸の海へと還っていく――そんな彼女らの最期を見届けたアリスは、アルテアの上でそっとスカートをつまみ、演目の終わりを告げるようにお辞儀をするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夢咲・向日葵
●心情
・アリスラビリンスの危機に魔法王女参戦なのよ。光の魔法王女、シャイニーソレイユブロンシュの力、魅せてあげるの!
●工夫
・ま、対策は簡単なのよ。何故ならば白の魔法王女は光の魔法王女。そして望遠鏡を扱う上で絶対にやっちゃダメなこと。強い光源を直接観測しちゃダメだよね
・キラキラと強く輝くソレイユシールドを大量設置。自分は特に光らずに飛んで行く。そうすると目くらましに紛れて飛べる。補足されたら追加の盾を想像して創造するの
●戦闘
・トランプの炎はソレイユシールドで盾受け。シールドが燃えたら一旦消して、再度創造して展開。光属性の魔法を盾から発射しつつ距離を詰めて、最後は盾に飛び蹴りしてシールドスマッシュ



「アリスラビリンスの危機に魔法王女参戦なのよ」
 オウガに占拠された不思議の国に、颯爽と降り立ったのは夢咲・向日葵(魔法王女・シャイニーソレイユ・f20016)。向日葵の意匠を施した白い魔法王女のドレス【マギカクロス・ブロン】を身に纏い、ぎゅっと拳を固めている。
「光の魔法王女、シャイニーソレイユブロンシュの力、魅せてあげるの!」
 こそこそと物陰に身を隠すような真似はせず、プリンセスらしく堂々と。
 その名の通り太陽の如き輝きを発しながら、敵のいる天文台へと向かう。

「ま、対策は簡単なのよ」
 無論、無策というわけではない。【魔法王女・シャイニーソレイユブロンシュ】は人々の夢みる心と光属性を司る魔法王女。基本形態の「シャイニーソレイユ」よりも、光属性の力の扱いに長けたフォームである。
「そして望遠鏡を扱う上で絶対にやっちゃダメなこと。強い光源を直接観測しちゃダメだよね」
 彼女から発せられた白光はキラキラと強く輝く向日葵型の「ソレイユシールド」となり、不思議の国のあちこちに大量展開される。それから自らは発光量を抑えれば――目くらましに紛れながら移動できる、というわけだ。

「ん? 今向こうで何か光らなかった?」
「どれどれ……って、うわ、まぶしっ!」
 向日葵の盾の光は天文台にいるジョーカーからも確認できた。しかし望遠鏡を向けようとすれば、それは太陽を直接視認するようなもので、とても目を開けていられない。
 その間にシャイニーソレイユは流れ星のような速さで空を翔け、天文台との距離を詰める。高所恐怖症ゆえに滅多なことでは飛びたがらない彼女だが、アリスラビリンスの危機とあらば躊躇いなどしない。
「何故ならわたしは、夢見る心を守る一輪の大花なのよ!」
「くっ……やっぱりあそこに、何かが……っ?」
 大量の光源をなるべく見ないようにして、オウガ側は懸命に敵の姿を補足しようとするが、白光の魔法少女はなおも追加の盾を想像から創造する。もし彼女を発見できたとしても、陽光に目を灼かれる――この時点でオウガの望遠鏡索敵は封殺されていた。

「さあ、覚悟するのよ!」
「くっ、舐めるなぁ……っ!」
 ついに天文台から数メートルの距離まで近付いて来たシャイニーソレイユに対し、ジョーカーたちは【レッドドッグ】の炎で撃ち落とさんとする。だがこれまで目くらましとして機能してきたソレイユシールドが、今度は盾として本来の役割を果たす。
 白光の魔力を集めた盾は灼熱の炎にも耐え、たとえ燃え上がったとしても一旦消して再展開が可能。魔法王女はドレスに焦げ目ひとつ無いまま、光の魔法にて応戦する。
「ぎゃうッ?!」
 盾から放たれた光線が敵を射抜き、天文台側の陣容が乱れる。その間にシャイニーソレイユはさらに距離を詰め――いや、シールドを展開したまま高速で突っ込んでいく。

「これで最後なの!」
 飛翔の勢いを乗せた飛び蹴りを盾にかまし、敵陣へと打ち込むシールドスマッシュ。
 日輪が舞い降りるが如きその一撃は、凄まじい光熱を伴って敵集団を吹き飛ばした。
「ギャ―――ッ?!」
 甲高い断末魔の悲鳴を上げながら、白光に灼かれ塵に還っていくジョーカーたち。
 かくしてこの天文台の戦いは、シャイニーソレイユの完全勝利にて幕を閉じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソナタ・アーティライエ
遠くからそんな風に見られているって意識してしまうと、恥ずかしいというか落ち着かないですね……

望遠鏡で見る事がすべての起点
なら、見る事を逆手にとって反撃してしまいましょう

竪琴へと姿を変えたアマデウスを爪弾き奏で
歌うは命溢れる楽園の物語【神理絃奏『幻創庭園』】
周囲の建物などを幻惑の属性を付与した光り輝く蝶の大群へと変え
自分の姿を隠すとともに、その無数の羽ばたきによって
こちらを見ているジョーカーの心を乱します
攻撃を受けて減らされた分は、近づきながら都度補充

正直、このような方法はとても心苦しいです
仮初の命といえど使い捨てるようなやり方も
いくら敵でも、強制的に心を蹂躙するような真似も……



「遠くからそんな風に見られているって意識してしまうと、恥ずかしいというか落ち着かないですね……」
 そびえ立つ天文台からのオウガたちの視線を気にして、ついきょときょとしてしまうソナタ・アーティライエ(未完成オルゴール・f00340)。発見されれば即攻撃が来るはずだから、実際にはまだ見られていないのだろうが――これ以上近付けば危険だろう。
「望遠鏡で見る事がすべての起点。なら、見る事を逆手にとって反撃してしまいましょう」
 竪琴に変身した音の精霊「アマデウス」を抱え、意を決してその危険域へ踏み込む。
 敵が警戒しているのであれば、むしろ注目を浴びてしまおう。その上で敵の"目"を利用する作戦が、彼女にはあった。

「いつかは醒める幻と知りながら、それでも誰もが夢をみる」
 満天の星空が広がる不思議の国で、ソナタが歌うは命溢れる楽園の物語――【神理絃奏『幻創庭園』】。爪弾き奏でられるアマデウスの音色に乗せて、伸びやかに澄んだ歌声が響き渡れば、周囲にある建物などの無機物が光り輝く蝶の大群へと姿を変える。
「あそこに居るのはなに……?」
 歌に気付いたジョーカーが天文台から望遠鏡を向けても、蝶の群れに遮られて歌い手の姿を見ることはできない。それどころか、発光しながらひらひらと羽ばたく蝶を見ているうちに、なんだか頭がクラクラしてきた。

「うぅっ……気分悪い……」
「なにこれ……目が回る……」
 神理絃奏にてソナタが作り上げた仮初の命には、幻惑の属性が付与されていた。
 特定の発光パターンと翅に描かれた模様の羽ばたきが、視認した者の心を乱す。
 混乱に陥ったオウガの中には、これが敵の精神攻撃だと気付く者もいるだろう。
「あの蝶を見ているのは不味いわ……!」
「でも、見なきゃ攻撃できないわよ?!」
 望遠鏡で視界を確保すれば、この距離からでも蝶の群れを攻撃することはできる。しかしそれは幻惑の羽ばたきを直視することでもあり、本来ならば一方的に攻撃できる布陣を取ったはずの彼女らは、ここにきて苦しい選択を迫られることになった。

「ええい、仕方ない……っ!」
 ひとりのジョーカーが意を決して望遠鏡を覗き込みながら【レッドドッグ】を発動する。放たれた灼熱の炎は物理的な距離を無視して彼方にある蝶の大群を焼き払うが――その中心にいるソナタには、火の粉の一片も降りかかりはしない。
(正直、このような方法はとても心苦しいです)
 浮かない顔をしつつ、彼女は歌い続けながら天文台に向かって前進する。それに伴ってユーベルコードの範囲も変化し、また新たな無機物が蝶となって群れに補充される。
 一時的に減らすことはできても、ソナタを倒さない限りこの群れが尽きることは無いのだ。幻惑をもたらす無数の羽ばたきが、攻撃してきたオウガの心を逆に侵していく。

(仮初の命といえど使い捨てるようなやり方も、いくら敵でも、強制的に心を蹂躙するような真似も……)
 作戦だからと、この世界を救うためだからと自分に言い聞かせても、やはり割り切れない想いは残る。皮肉なことに、そうした感情を乗せたソナタの歌声は哀しみを帯びてより深みを増し、心ある者ならば聴き入らずにはいられない美しき調べとなる。
「うぅ……頭がヘンになる……でも、とっても綺麗……」
 いつしか天文台は蝶の大群に囲まれ、羽ばたきと共に響き渡る歌声はオウガたちを幻惑し、魅了し。戦意を完全に喪失した彼女らは、どこか安らかな表情で骸の海へ還っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゼイル・パックルード
ババを出し抜くことはできるかな?
まずは闇に紛れて遮蔽物を転々としていく

気分屋ってことは、事が起こるまでは結構退屈してそうだな。
そこまで統率のとれた動きもせず、動きを見せたら結構な数がそっちに向かうんじゃねぇかな。

遮蔽物が心許なくなったあたりで、天文台とは反対気味の位置に向かって、UCを込めたナイフを大きく投げ、その一帯を延焼させる。

そして、炎を自在に消去できるのを利用して、ナイフを中心に大きく魔法陣のような紋様を描く。

別に魔法使いでも術士でもないからそんなもの描いたところでなにも起きないがね。監視全員が無視できるものでもない
望遠鏡じゃ近くは逆に見えないだろう、その隙に一気に近づいてく攻撃する



「ババを出し抜くことはできるかな?」
 と、挑戦的な笑みを口元に浮かべながら、夜闇に紛れて遮蔽物を転々とするゼイル・パックルード(囚焔・f02162)。彼の飽くなき闘争心は今、天文台にいるジョーカーに向けられていた。
「まずは近付かねぇことには勝負にならないからな」
 今のところ移動は順調。しかし天文台に近付くにつれて開けた空間が多くなり、遮蔽物が心許なくなってくる。白兵戦を得手とする彼としては、敵に発見されて一方的な遠距離攻撃に晒されるのは避けたいところだ。

「気分屋ってことは、事が起こるまでは結構退屈してそうだな」
 と、敵の心理を分析したゼイルは一計を案じ、取り出した一本のナイフを天文台とは反対の位置に向かって大きく投げる。誰もいない地面に刃が突き刺さった瞬間、その一帯はまるで油でも撒かれていたように勢いよく燃え上がった。
「ふわぁー……っ、なになにっ?!」
 それまで呑気にあくびなどしていたジョーカーたちは、赤々と燃える火の手を見ると慌ててそちらに望遠鏡を向ける。彼女らは指揮官のいる軍隊というわけではなく、そこまで統率のとれた動きもせず、何か動きがあれば我先にそちらへ殺到しがちである――全てはゼイルが予測していた通りになった。

「ついでに、こんなのはどうかな」
 【紅葉狩り】で地形を炎上させたゼイルは、延焼分も含めてその炎を自在に消去できる特性を活かし、投げたナイフを中心に大きく魔法陣のような紋様を描く。真夜中の国に浮かび上がるそれは、天文台からは星と同じくらいはっきりと見えただろう。
(別に魔法使いでも術士でもないからそんなもの描いたところでなにも起きないがね)
 言ってしまえば虚仮威しだが、彼のことを知らない監視側からすれば全員が無視できるものでもない。何が起こるのかと身構えながらジョーカーたちは望遠鏡を覗き込むが、それは自らの視野を狭めてしまっていた。

「望遠鏡じゃ近くは逆に見えないだろう」
 ゼイルはその隙に一気に天文台に近付くと、大太刀「魔裂」を構えて頂上への階段を駆け上がる。そして扉を蹴破らんばかりの勢いで飛び込むなり、まだ望遠鏡を覗いている無防備な連中の背中に、豪快なひと振りをお見舞いした。
「ぎゃうッ?!」
「い、いつの間にっ!?」
 七尺の刀身を誇る鉄塊は、華奢な道化師の胴体を真っ二つにするには十分に過ぎた。
 断末魔を上げる者、驚愕する者、慄く者。敵の反応はバラバラで統率が取れていない。

「――果てな」
 ゼイルがその機を逃すわけもなく、大太刀が地獄の炎を纏って魔を引き裂いてゆく。
 その場にいたオウガが1人残らず灰となったのは、それから間もなくのことだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ウィルトス・ユビキタス
今回の戦争は苦しい戦いになりそうだからな。一年ぶりの出陣だ。

望遠鏡で見られると攻撃をされる訳か。なら望遠鏡を無効化させて貰おう。
【エレメンタルコード】で陽炎を生み出し、自身の場所をずらそう。攻撃をされたところでそこにいなければ何の問題もないのだろう?
後は近づいて近接戦闘だ。
同じ鎌を扱う身としておいそれと負ける訳には行かないな。
薙ぎ払いの範囲攻撃で一掃するとしようか。



「今回の戦争は苦しい戦いになりそうだからな。一年ぶりの出陣だ」
 舞台となる世界が異なれども、戦争には共通したある種の空気感がある。ぴりりと張り詰めたそれを久方ぶりに肌で感じながら、ウィルトス・ユビキタス(戦場の荒らし屋・f01772)は戦場に赴いた。
 敵の首魁はオウガ・オリジン。だがそれとは別の思惑を持った猟書家たちもまた見過ごすことはできず、熾烈な戦いが予想されるだろう。『覗いた星空を奪う望遠鏡のある国』を占拠したオウガは、戦争のカンを取り戻す肩慣らしとしては丁度いい相手だ。

「望遠鏡で見られると攻撃をされる訳か。なら望遠鏡を無効化させて貰おう」
 そびえ立つ天文台を遠方より見やると、ウィルトスは携帯ロッドを片手に呪文を紡ぐ。
 【エレメンタルコード】。属性と自然の力を合成し任意の現象を引き起こす魔法だ。
「不条理を以て不条理を覆せ」
 発動した瞬間、熱気によって大気が揺らぎ、彼を含めた周辺の景色がブレる。
 それは陽炎。あるいは蜃気楼とも呼ばれる、空気密度の差による光の屈折現象だ。

「みーつけたっ!」
 物陰に隠れもせず近付いてくるウィルトスの姿を発見したジョーカーは、望遠鏡を覗き込んだままトランプのカードをばら撒く。それから噴き出した灼熱の炎――【レッドドッグ】は本来の射程を無視して過たず標的に命中した、かのように見えた。
「火ダルマになっちゃえっ……あれっ?」
 燃やされたのはただの陽炎。実体とはズレた位置に出現する虚像にまんまと騙された道化師はきょとんと目を丸くし、今度こそはと目を凝らすが――どんなに望遠鏡を覗いても、そこに映るのはぼやけて揺らぐ偽りの風景だけだ。

「攻撃をされたところでそこにいなければ何の問題もないのだろう?」
 望遠鏡はその構造上、大気の汚染度や揺らぎの影響を強く受ける。それを利用して索敵を無力化したウィルトスは、悠々と敵集団の立てこもる天文台に足を踏み入れた。
 まんまと欺かれたジョーカーたちは、怒りの形相を浮かべながら大鎌を振り上げる。対するウィルトスが構えた武器も、黒の大鎌「イクリプス・フリティラリア」だった。

「同じ鎌を扱う身としておいそれと負ける訳には行かないな」
「こっちのセリフよ! バラバラに切り刻んでやるわ!」
 ギラリと光る刃をかざし、一斉に襲い掛かってくるジョーカーたち。しかし彼女らが鎌を振り下ろすよりも速く、ウィルトスは大鎌に組み込まれた射撃機構を起動。発砲による反動が斬撃を加速させ、のこのこと近付いてきた敵を一挙に薙ぎ払う。
「ぎゃぅッ!?」
「な―――ッ!!」
 刃の軌跡が弧を描いた直後、断末魔の悲鳴が戦場に響き渡る。たった一撃でその場にいた敵の半数は一掃され、生き残った者も愕然としている。手応えを感じたウィルトスは静かな笑みを浮かべながら、大鎌をくるりと回転させ、構え直し。
「まだ戦争は始まったばかりだからな。通してもらうぞ」
 一閃。発砲音と共に繰り出される瞬速の斬撃が、彼の前に道を斬り開いていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
(先端に鏡を付けた棒を遮蔽物の陰から突き出して●情報収集)
…………切断されましたか
ですが、切断面の角度から敵の大まかな位置は●見切れました

別の場所に移動
物資収納スペース内の煙幕手榴弾を●投擲し●目潰し用煙幕を展開

私が出る予定の位置とは別の場所に

煙の動きを見るにあの場所から攻めると踏んで攻撃を加えているようですね
望遠鏡の視界の関係で他の場所への注意が疎かな筈
その隙に別の場所でUC起動
●怪力で制御し天文台の敵の元へ一気に接近
壁ごと●串刺しにしたり●なぎ払うことで排除してゆきましょう

少し強行突破が過ぎましたが未だ戦争は緒戦
速度を重視し手早く制圧してゆきましょう

(収納スペースから大量の棒と鏡取り出し)



「あの天文台に敵が潜んでいるのですね」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)はその身を潜めながら、先端に鏡を取り付けた棒を遮蔽物の陰からにゅっと突き出して、敵の様子を窺う。塔のように高い建造物の頂上では何人ものオウガの人影が索敵に当たっており――彼女らが覗く望遠鏡のレンズがキラリと光ったかと思うと、鏡と棒がバラバラになる。
「…………切断されましたか。ですが、切断面の角度から敵の大まかな位置は見切れました」
 まだ距離があるにも関わらず、鋭利かつ巨大な刃物で刻まれたような切断面。そこから逆算して敵の情報を得た機械仕掛けの騎士は、すぐさま別の場所へと移動した。

「あの辺りが良いでしょう」
 敵のいる位置からあえてよく見えるような場所を見繕うと、トリテレイアは機体内部の物資収納スペースから煙幕手榴弾を取り出し、そこに目掛けて力いっぱい投擲する。
 放物線を描いて地面に落下した手榴弾は、煙幕を濛々と展開する。その様子は天文台のジョーカーたちからもはっきりと確認できた。
「敵襲よ!」
 備え付けられた望遠鏡を覗き込みながら死神の大鎌をぶぉんと振るうと、まるで実体が"目の前"にいるように煙幕が切り裂かれていく。あの中に敵がいる、煙に紛れて近付いてくるつもりだと考えたか、彼女らの警戒心はそこに集中していた。

「……煙の動きを見るにあの場所から攻めると踏んで攻撃を加えているようですね」
 しかし実際には、トリテレイアの居所は煙の発生場所からは離れており、出る予定の位置も煙幕を張ったのとは別の所だった。煙幕という手段を用いたのは身を隠すためではなく、あくまで敵の注意を引きつけるためである。
「望遠鏡の視界の関係で他の場所への注意が疎かな筈」
 彼はその隙を突いて【艦船強襲用超大型突撃機械槍】を起動。ウォーマシンの体躯と比してもなお巨大な突撃槍が、推進機より炎を噴き上げてロケットのように飛翔する。
 暴れ馬の如きその推力に振り落とされないよう、騎士はしっかりと柄を握り締め、怪力で機動を制御し――敵のいる天文台の頂上へと、一直線に突撃を仕掛けた。

「ん、なにか近付いて来―――ッ!!!?」
 大気を貫くジェットの音に気付いた時にはもう遅く。一瞬で間合いを詰めてきたトリテレイアの機械槍は、その勢いのまま進路上にいたジョーカーを壁に串刺しにする。
 警戒していた場所とはまるで違う方角からの奇襲を受け、敵集団はパニックに陥った。
「え、そ、そっちから?!」
「み、みんな落ち着いて、は、反撃よっ!」
 慌てて大鎌を構える者もいるが、接近を許してしまった動揺から抜けきれていない。
 一方的に斬られるならいざ知らず、互いに武器が届く間合いであれば、この程度のオウガの集団に歴戦の騎士たるトリテレイアが遅れをとる理由はない。

「ここは通して頂きます」
「ひぇ……ッ?!」
 宇宙船の外壁をも貫通し破壊する剛槍が、速度と質量の暴力となって敵陣をなぎ払う。
 吹き飛ばされる者、串刺しにされる者。その天文台にいたオウガの中で、無事に生き延びられた者は1人もいなかった。

「少し強行突破が過ぎましたが未だ戦争は緒戦。速度を重視し手早く制圧してゆきましょう」
 付近の敵反応の消失を確認したトリテレイアは槍を背中に担ぐと、収納スペースから新しい棒と鏡を大量に取り出す。この不思議の国に潜む敵の所在を全て見切るには、今と同じことをもう何度か繰り返すことになるが――見ての通り準備は万全である。
 この世界を消滅させんとするオウガの女王、他世界の侵略を企む猟書家たち。その悪しき野望を阻むために、機械仕掛けの騎士は弛まず前進する。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
オウガ・オリジンに猟書家…。この世界だけじゃなく、わたしの故郷や他の世界も狙うなんて…絶対にさせない…!

【九尾化・天照】封印解放…!

光操作で光の屈折を利用し、自身の姿を光学迷彩の要領で透明化…。
逆に自身とは別のところに光の屈折を利用した幻を生み出し、敵の目をそちらに向ける事で気を逸らし、光速化を使って一気に敵へ接近するよ…。

射程距離に入り次第、遠距離から光を集束させたレーザーで狙撃…。
敵の射程は望遠鏡異存って事だし、敵本体か望遠鏡を狙撃で破壊できると良いかな…。
後は一気に接近し、光速剣で一気に斬り捨てて仕留めるよ…。

悪いけど、出し惜しみ無しで行かせて貰うよ…。邪魔するなら、斬る…。



「オウガ・オリジンに猟書家……。この世界だけじゃなく、わたしの故郷や他の世界も狙うなんて……絶対にさせない……!」
 世界を消滅させんとするとオウガの女王と、その裏で暗躍する猟書家に、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は静かな怒りを滾らせる。猟書家が狙う「フォーミュラなき世界」には彼女の故郷・サムライエンパイアも含まれているとなれば当然だろう。
「我らに仇成す全ての敵に太陽の裁きを……封印解放……!」
 こんな場所で足止めを食らっている暇はないとばかりに【九尾化・天照】を発動。銀の髪や毛並みは金色となり、九尾の妖狐へと変身した彼女は、その力をフルに活かして天文台に向かう。

「敵、発見! まっすぐこっちに来てる!」
「あら、カワイイ女の子! 美味しそうね!」
 望遠鏡で監視に当たっていたジョーカーの1人が、天文台に接近する敵影を捉える。
 美少女に目がない彼女らは、舌なめずりをしながら【ドッペルコップ】を発動。その血肉の一片まで喰らいつくそうと、召喚した分身を差し向けるが――それは璃奈が作り出した幻だった。
(引っかかってる……今のうちに……)
 天照の力を解放した璃奈は光を自在に操ることができる。光の屈折を利用することで自らの幻を別のところに作り、自身の姿は光学迷彩の要領で透明化。敵の目が幻に向いている隙を突いて、一気に天文台まで接近する作戦だ。

「いっただっきま~す……あれっ?」
 少女の幻像に斬り掛かったジョーカーたちは、空を切るような手応えのなさで、ようやくそれが幻であることに気付く。その時にはもう、璃奈は【九尾化・天照】のもうひとつの力――光速のスピードを活かして、天文台を射程距離に収めていた。
(敵の射程は望遠鏡異存って事だし、敵本体か望遠鏡を狙撃で破壊できると良いかな……)
 抜き放った妖刀の切っ先に光を集束させレーザーのように照射。夜闇を貫く太陽の光線は、望遠鏡を覗き込んでいるジョーカーを過たず射抜いた。レンズごと頭に風穴を開けられた道化は悲鳴を上げて消滅し、それに伴って召喚された分身たちも消える。

「ギャァァァッ?!」
「攻撃!? 嘘、どこから?!」
 見えない敵からの奇襲に面くらい、慌てふためくジョーカーたち。その間にも璃奈はレーザーを矢継ぎ早に撃ち出して、目につく限りにある望遠鏡を次々に破壊していく。
 索敵の要であるそれさえ破壊できれば、一方的な遠距離攻撃を恐れる必要もない。敵の"目"を潰した彼女は一気に天文台の頂上まで上り詰めると、光学迷彩を解除した。

「悪いけど、出し惜しみ無しで行かせて貰うよ……。邪魔するなら、斬る……」
「な、何よ……! カワイイからって調子に乗らないでよね……!」
 接近を許したとてまだ打つ手がなくなった訳ではない。ジョーカーたちは自身の魂を分割した分身体を次々と召喚し、数の暴力で敵を袋叩きにしようとするが――緒戦から九尾化の封印を解いた、本気の璃奈を相手取るには役者不足だった。
「警告はしたよ……」
 抜く手も見せぬ光速の剣技。鎌を振るう暇もなく、真っ二つに斬り捨てられる分身体。
 道化師たちの表情が驚愕に凍りつくなか、金毛九尾の妖狐は閃光と共に駆け――ほんの瞬きするほどの時間で、その天文台にいた敵集団を1人残らず斬り伏せたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
一方的な遠距離攻撃なんて面倒なコトしてくれるわね

【ブラッディ・フォール】で「時計の国の少年アリス」の「狂える時計ウサギ」のうさ耳とドレス姿へ変化。

射程距離に入るまでは【フェイタル・ショータイム】で時間停止して物陰から物陰へと身を隠しながら近づいて行き、射程距離に入ったら【フェイタル・ショータイム】から【サディスティック・メルヘン】で時を停止している間に拷問器具に嵌めて動きを拘束するわ。

美少女が大好物なんて気が合うじゃない♪
ジョーカーは一人、眷属にいるのだけど…降伏して眷属に加わるなら助けてあげても良いわ♪(【魅了の魔眼・快】【誘惑】を掛けつつ)
最も、断るなら…残念だけど始末するだけなのだけどね



「一方的な遠距離攻撃なんて面倒なコトしてくれるわね」
 天文台からの監視体制を敷くオウガたちに対して、煩わしげに眉をひそめるのはフレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)。望遠鏡による索敵だけでなく、その視界と攻撃射程が連動しているという点が、ここの敵の厄介なところだ。
「でも、やりようが無いわけではないわ。骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!」
 相手がオウガならば同じオウガの力を。【ブラッディ・フォール】を唱えた彼女は「狂える時計ウサギ」の力を宿し、うさ耳を生やし、純白のドレスをその身に纏った。

「ようは姿を現した瞬間を見られなければいいのよね?」
 時計ウサギの力を得たフレミアは物陰に隠れながら【フェイタル・ショータイム】を発動。凍り付いたように世界は静寂に包まれ、天文台にいるオウガの動きも停まる。
 時間が停止したこの隙に動けるのは彼女のみ。ドレスを翻してさっと飛び出し、天文台から死角となる別の物陰へと移る。再び時間が動きだしても、敵は何も気付けない。
「異常なーし!」
 望遠鏡を覗くジョーカーたちの視界には、時間停止前と変わらぬ光景が映っている。
 一度成功さえすれば、あとはその繰り返しだ。幾度かの潜伏とユーベルコードの使用を経て、フレミアは天文台にいる敵が射程距離に入るところまで近付く。

「さあ、一気に制圧するわよ」
 何度目かになる【フェイタル・ショータイム】の発動と同時に、敵が立てこもる天文台の最上階へと全速力で接近。時間が停まっている間に今度は【サディスティック・メルヘン】を発動し、ファンシーな装飾が施された拘束用の拷問器具を召喚する。
 凍った世界が再び動き出した時――フレミア以外の者にとっては一瞬のうちに、天文台にいたジョーカーは1人残らず拷問具に拘束され、身動きを封じられていた。
「は――?!」
 相手からすれば何が起こったのかまるで理解できないだろう。どんなに藻掻いても、拷問具の設計はジョーカー専用に最適化されており、指先ひとつ動かせなかった。

「美少女が大好物なんて気が合うじゃない♪」
 自らも可愛い子には目のないフレミアは艶然と微笑み、紅い瞳を妖しく輝かせる。
 その視線にて捉えた者を虜にする【魅了の魔眼・快】。完全拘束されたジョーカーたちに、その魔力から逃れるすべは無かった。
「ジョーカーは一人、眷属にいるのだけど……降伏して眷属に加わるなら助けてあげても良いわ♪」
 強烈な快楽を伴う魅了の魔力をじっくりと浴びせて、拷問具の中で悶える道化たちの様子を楽しそうに観察しながら降伏を促し。かと思えば一転、冷ややかな口調となって、余計な希望を持たぬように釘を刺す。

「最も、断るなら……残念だけど始末するだけなのだけどね」
「し、します、降伏します、お仕えします……! だから、これ、解いてぇ……!」
 拷問と快楽と死の恐怖の中で、残された選択肢など実質ひとつしかない。フレミアの容姿が実年齢より若く、ジョーカーたちの好みの美少女だったのも理由のひとつか。
 こうしてフレミアは天文台の敵を制圧し、新たな眷属を自らの城に迎えたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

春乃・結希
黒柳カビパンさんと一緒!(f24111)

望遠鏡という事は視界は狭いはず
カビパンさんの超絶トークに釘付けになっているうちに
私が近付いて、ぼこー!ってするという
カビパンさんの立てた完璧な作戦ですっ

じゃあちょっと行ってくるね……!

カビパンさんが絶対に引き付けてくれると信じて隠れる事は考えません
ハリセンのすぱーんって音を背中で感じつつ
一秒でも早く塔の下まで全力で走ります【ダッシュ】
塔に取り付けたらUC発動
一気に最上階まで飛び上がり、『with』を叩き付けます【空中戦】【重量攻撃】

トークショーなんやからちゃんと椅子に座らないとっ
ゲストが恥ずかしがってる場合やないですよ!


カビパン・カピパン
結希・f24164と一緒

本日の【黒柳カビパンの部屋】望遠鏡のある国から流行りのリモートトークでお送りします。

何だこれ、何だコイツはと全員がそう思った。

ゲストは美少女が大好物で気分屋なジョーカーさん達です!
まぁあたくしもこのトーク番組を始めて長いんですけどもこんな回は初なんですね。それで原因はやはりジロジロジロリングするだけのゲストの方に問題があるんじゃないでしょうかとこんなトーク形式ではもう二度とあらゆる番組やわたくしの部屋には来れないでしょうねつまらないですから。

超目立つ、しかも眼の前でトークしているかのよう。
敵を引きつけ攻撃をハリセンで無効化しつつ望遠鏡越しに謎のプレッシャーを与えていた。



 ルールル、ルルル、ルールルー――。

 どこからともなく聞こえてくる、お茶の間で聞いたことがあるような気がしないでもないBGM。戦争中とは思えないほど和やかな雰囲気で、カビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)は天文台からもよく見える位置に姿を現し、こう語りだす。
「本日の黒柳カビパンの部屋は望遠鏡のある国から流行りのリモートトークでお送りします」
 何だこれ、何だコイツはと全員がそう思った。今は戦闘の真っ只中だというのに、まったく空気を読まずに始まるトークショウ。【黒柳カビパンの部屋】の開演である。

「何だこれ」
「何だコイツ」
 天文台にいるジョーカーたちもまったく同じことを思った。望遠鏡で観察する限り、カビパンの立ち居振る舞いはまったく無防備で、武器らしきものと言えば手にハリセンを持っているだけ。まさかアレでオウガをしばき倒すつもりなのだろうか。
「まぁあたくしもこのトーク番組を始めて長いんですけどもこんな回は初なんですね」
 敵の困惑をよそにカビパンはぺらぺらと語る。降霊術でその身に宿した霊の力を借りた伝説級のトーク力は留まることを知らず、相手に語らせる気ないだろという勢いでまくし立てる。
「それで原因はやはりジロジロジロリングするだけのゲストの方に問題があるんじゃないでしょうかとこんなトーク形式ではもう二度とあらゆる番組やわたくしの部屋には来れないでしょうねつまらないですから」
「あんですってぇ!?」
 望遠鏡越しに見られていることも承知の上でガッツリと煽る。これにはジョーカーたちもイラッときた。べつにトーク番組に出たいわけではないが、バカにされて黙っているほどオウガの忍耐力は強くはない。

「初対面だってのにゲスト様に失礼なヤツね! 燃やす!」
 ジョーカーたちがおもむろにトランプをばら撒くと、噴き出した灼熱の炎がカビパン目掛けて襲い掛かる。しかし彼女はひょいと手に持った「女神のハリセン」を振るって【レッドドッグ】を払い散らしてしまう。
「ほー、これがあーたの攻撃ですか。で、これに何の意味があるんでしょう?」
「はぁ?!」
 まさか防がれるとは思っていなかったジョーカーたちは、二度三度と続けて炎を放つが、全て弾かれる。女神の力が宿ったハリセンは、あらゆる奇跡を霧散霧消させるのだ。
 その間もカビパンはひたすらトークを続ける。超目立つうえに望遠鏡のせいで眼の前でトークしているかのような、圧倒的ウザさを発揮する彼女から、敵は謎のプレッシャーを感じ始めていた。

「はい、今のうちに行っちゃってください」
「じゃあちょっと行ってくるね……!」
 敵が完全にこちらのペースに呑まれているうちに、カビパンは物陰に隠れている春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)にそっと声をかける。愛剣『with』を背中に担いだ彼女はこくりと頷くと、カビパンのトーク現場を迂回するコースで天文台に向かう。
(望遠鏡という事は視界は狭いはず。カビパンさんの超絶トークに釘付けになっているうちに私が近付いて、ぼこー! ってするという、カビパンさんの立てた完璧な作戦ですっ)
 そう、今回の【黒柳カビパンの部屋】は敵の目を引きつけるための囮。さすがに遠くからハリセンスパーンするだけでは天文台に引きこもる敵は倒せない。なのでカチコミ役として結希が直接叩きに行くという、実際理にかなった作戦である。

(カビパンさんなら絶対に引き付けてくれるはず)
 彼女のトーク力は日頃からよく知っている。オウガだって目が離せないはずだと揺るぎない信頼を抱く結希は、隠れる事なく一秒でも早く天文台まで辿り着くことだけを考えて全力で走る。スパーン! と炎を散らすハリセンの快音を背中で感じながら。
 その信頼に違わずカビパンは敵の注目を完全に掴んでおり、結希の接近に気付く者は誰一人としていない。一度も攻撃を受けることなく塔の下に取り付いた彼女は『with』を構えてユーベルコードを発動し、全身から凄まじいエネルギーの風を放つ。
「よーし飛ぶぞー!」
 自分は強い、という自己暗示がもたらす力が、彼女の身体を空へ舞い上げる。
 塔の外壁にピタリと沿って、オウガの集団がいる最上階を目指して一直線に。

「いつまで続くのよあの女の話!」
「このっ、このっ、燃えろーっ!」
 ジョーカーたちは望遠鏡を覗き込んだまま、遠方にいるカビパンに躍起になって攻撃を続けていた。半ば意地になっているのだろう、灯台下暗しという言葉の通り、真下から近付いてくる結希の存在に、彼女らは気付いてもいなかった。
「トークショーなんやからちゃんと椅子に座らないとっ」
「なっ……!?」
 突き抜けるような突風と共に、最上階まで飛び上がってきた結希は大上段に『with』を振り上げる。思わぬ伏兵に目を丸くするジョーカーたち、慌てて鎌を取ろうにも迎撃はもう間に合わない。

「ゲストが恥ずかしがってる場合やないですよ!」
 経験者の貴重なお言葉と共に振り下ろされる強打は、椅子に座るどころか床にめり込む勢いで敵を叩き伏せる。並外れた超重量を誇る結希の愛剣、それを空中から降下する勢いも込みで叩き付けられては、敵も堪らないだろう。
「ふぎゃ……っ?!」
 ぐしゃり、と嫌な音を立てて倒れ伏したジョーカーは、それきりピクリとも動かない。
 すたっと天文台に降りた結希は、それを見ると「あれ?」と言うように首を傾げた。

「なんで寝てるんですか? 番組はまだ終わってませんよ!」
「り、理不尽……ッ!!!」
 それから始まる阿鼻叫喚。敵側の強みは望遠鏡による索敵と遠距離攻撃にあり、一度白兵戦に持ち込まれてしまっては、道化師が結希と『with』に敵う道理はなかった。
 あっという間にその場の敵を平らげると、彼女は地上のカビパンに向かって手を振る。
「終わりましたー!」
「あら、もう終わった? では本日の黒柳カビパンの部屋はここまで」
 ルールルー――とフェードアウトするBGMと共に去っていくハリセン女教皇。
 不思議の国よりある意味不思議なトーク番組、次回の放送予定は未定である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月代・十六夜
【韋駄天足】の【ジャンプ】で一切隠れる気がない接近。
勿論袋叩きに合うはずだが、望遠鏡で視認する必要がある以上、視界の狭さはどうにもならないはず。
【スカイステッパー】も合わせた不規則軌道で視界外に移動しながら五感で攻撃を【見切っ】て【時間稼ぎ】。
攻撃の密度が上がってきたら持ち込んだ煙玉で視界を切って仕切り直し、更に火と光の属性結晶で即席蜃気楼ってな。
至近距離なら一瞬で吹き飛ばされる煙や誤差でしかない光のズレでもこの状況では一手使わせられるってね。
まぁさすがに全員は引き付けられんだろうけど、今のうちに誰かが行ってると信じてるぜ!


キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

オウガ・オリジンにその力を奪った猟書家共か…
互いに食い合うなら幾多の世界に混乱を起こすとはな
フン、本当に迷惑な奴らだ

だがまずはこの国を開放せねばな
星空を奪う望遠鏡か…精度も高そうだし、慎重に行こう
パーソナルディフレクターを起動
体表を覆うエネルギーフィールドで可視光を歪め、光学迷彩を施し行動
高い場所に陣取っているのならば、望遠鏡の向きは丸見えだ
望遠鏡が別の場所を向いた時を見計らい、忍び足で素早く近づこう

覗き見とはなかなか趣味が悪いな
では、お前達も見られる苦痛を味わうと言い

接敵したらUCを発動
視界内にいる敵全てを攻撃し食欲や怒りを感じる間もなく倒していく
覗き魔には相応しい最期だろう



「オウガ・オリジンにその力を奪った猟書家共か……互いに食い合うなら幾多の世界に混乱を起こすとはな。フン、本当に迷惑な奴らだ」
 不快げな表情を見せながらぼやくキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)。今回の戦争はアリスラビリンスだけではない、幾多の世界の行く末がかかった戦いだ。
「だがまずはこの国を開放せねばな」
 『覗いた星空を奪う望遠鏡のある国』の攻略は順調に進んでいるが、それでも各所のには今だオウガが陣取っている。連中を撃破して次の国への道を作るために、彼女はじっと天文台のほうを見やる。

「星空を奪う望遠鏡か……精度も高そうだし、慎重に行こう――」
「失礼、お先に行かせてもらうぜ」
 隠密行動の準備をするキリカを置いて先に出ていったのは月代・十六夜(韋駄天足・f10620)。彼は隠れるような素振りを一切見せず、持ち前の【韋駄天足】によるダッシュで一目散に天文台に向かう。
「みーつけたっ!」
 当然、そんな接近を試みれば敵に発見されるのは避けられない。天文台にいるジョーカーたちはニヤリと笑って、望遠鏡を覗き込みながら死神の大鎌で斬り掛かった。

「遅い……ッ!!」
 遥か遠方から距離の概念を無視して襲ってくる近接攻撃。しかし十六夜は並外れた五感で攻撃がくるタイミングを見切り、【スカイステッパー】で空中を蹴って方向転換。紙一重で斬撃を躱してみせると、天文台に向かってにやっと笑う。
「避けられた! 生意気!」
 その挑発に怒りを覚えたジョーカーは【ドッペルコップ】を発動し、自身の分身体を何十体と召喚して一斉攻撃を仕掛ける。だがそれさえも彼はギリギリで回避しながら、不規則な軌道で敵の視界外に移動する。
(望遠鏡で視認する必要がある以上、視界の狭さはどうにもならないはずだ)
 十六夜が平然としていられるのは、その敵の視界=攻撃範囲を見切っているから。掴みどころのない動きでひょいひょいと駆け回る彼に、敵集団は見事に翻弄されていた。

「自ら囮役に徹するとはな……」
 道化師の袋叩きにあいながらも飄々としている十六夜の行動の意図をキリカは理解する。敵の注目が引きつけられているうちに、先に行って敵を倒してくれということだ。
 その期待に応え、キリカはエネルギーシールド「パーソナルディフレクター」を起動。体表を覆うエネルギーフィールドで可視光を歪め、光学迷彩で自身を透明化する。
(高い場所に陣取っているのならば、望遠鏡の向きは丸見えだ)
 天文台の最上階に備え付けられた望遠鏡のほとんどは今、十六夜の動きを追っている。
 敵がこちらを見ていない、そう判断できる時を見計らって、足音を立てずに素早く近付いていく。

「逃がすなー!」
「囲んじゃえ!」
 一方の十六夜側は、激しさを増していく敵の攻勢に徐々にだが追い込まれていた。
 ジョーカーが怒りを感じるたびに分身体が増えれば、攻撃の密度も上がっていく。
 何台もの望遠鏡から同時に監視されては、その全ての視界から逃れるのも困難だ。
「そろそろ仕切り直すか」
 十六夜はポケットから煙玉と、小石ほどの大きさの「属性結晶」を取り出し、おもむろに足元に向かって叩きつける。途端に濛々と真っ白い煙が立ち上り、さらに砕けた結晶が火と光を放って、大気を揺らがせ即席の蜃気楼を発生させる。

「ちょっ! あと少しだったのに!」
「なにこれ、全然見えないんですけど!」
 煙幕と蜃気楼に視界を奪われたジョーカーたちは、鬱陶しいとばかりに鎌を振り回す。
 長射程化した斬撃によって妨害はすぐに晴れるが、その頃にはもう十六夜は別の場所に移動している。
(至近距離なら一瞬で吹き飛ばされる煙や誤差でしかない光のズレでもこの状況では一手使わせられるってね)
 "見える"ものしか攻撃できない望遠鏡の特性上、視界を遮ることは攻撃を遮ることと同義。敵はすぐにまた十六夜を発見して包囲攻撃を仕掛けてくるが、煙玉と属性結晶のストックはまだ十分ある。
「まぁさすがに全員は引き付けられんだろうけど、今のうちに誰かが行ってると信じてるぜ!」
 自分の仕事はあくまで時間稼ぎ。一分一秒でも長くこうして攻撃を凌いでいれば、仲間の誰かが"決めて"くれる筈だ――そう確信していればこそ、彼は迷いなく囮に徹する。

「ああもう、ちょこまかと……っ!」
 ぐぬぬと歯ぎしりをしながら、逃げる十六夜を追いかけまわすジョーカーたち。
 今、この天文台にいるオウガの目のほとんどは、彼ただ1人に向けられていた。
 ――だから。透明化して天文台に迫る別の猟兵の気配になど、気付く由もない。
「覗き見とはなかなか趣味が悪いな。では、お前達も見られる苦痛を味わうと言い」
「―――ッ?! 誰っ!!」
 キリカの言葉に慌てて振り返ったジョーカーたちの視界に飛び込んできたのは、不気味に笑う呪いの人形「デゼス・ポア」。その全身を飾る刃が鈍く煌めいたかと思うと、空間を切り裂いて無数の刃が飛び出してきた。

「悍ましき哄笑で伝えろ、デゼス・ポア。私の瞳と貴様の刃に捕えられた者共に、安寧が訪れる事は永遠に無いと」
 視認している全ての対象に呪い人形の刃で攻撃する【ラム・クレアボヤンス】。
 一度発動したが最期、空間を飛び越える刃から逃れる方法は皆無と言っていい。
「きゃあぁあぁぁぁぁっ!!!?」
 新たな乱入者に怒りや食欲を感じる間もなく、無慈悲な刃に切り刻まれる道化たち。
 人形の哄笑と断末魔の悲鳴が天文台から響き――やがて、ぱたりと静かになった時、そこに立っているのはキリカの他に誰もいなかった。

「覗き魔には相応しい最期だろう」
 道化たちの屍と血溜まりで埋まった最上階で、キリカは光学迷彩を解除する。
 敵の攻撃が止んだ事で、天文台の制圧は外にいる十六夜のほうにも伝わった。
「ふー、終わったか」
 終始足を止めずに逃げ続けるのは流石に少し疲れたようだが、それでも身体には傷一つない。戦装束についた土埃をぱっぱと払い、彼はすぐに次の戦場に駆けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラブリー・ラビットクロー
アドリブ共闘歓迎

アリスのセカイ
らぶのセカイとも違う空気
キラキラでふわふわできれーでかわいーなセカイ
でも今セカイが狙われてる
らぶも助けに行かなきゃ

沢山の星が見える所ならきっとお月も出なくちゃなんな
【月の観測アプリを起動しますか?】
きっとお月はまん丸でおっきーなん
【ネットワークに接続できませんでした】
お月にはウサギさんも住んでるって聞いたん
【GPS信号を確認中です】
なららぶだって住んでいーなんな
【確認できませんでした】

69㎥の月の偽物の影に隠れて天文台に近づくなん
えへへ
月って近くで見たことないのん
でもヘーキ
だってこんなにおっきくしといたん

天文台についたら火炎放射器でしょーぶ!
炎を食べさせてやるのん



(アリスのセカイ、らぶのセカイとも違う空気)
 頑丈そうなタブレット端末を片手に、ラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)はガスマスク越しにこの世界の空気を味わう。瘴気に汚染された彼女の故郷と比べれば、不思議の国はどこでも甘いお菓子のような空気が漂っている。
(キラキラでふわふわできれーでかわいーなセカイ。でも今セカイが狙われてる)
 世界を喰らい尽くすオウガの女王、世界を侵略する猟書家たち。かつてないほどの脅威によってアリスラビリンスは存亡の危機に立たされ、空気には鉄錆の匂いが混ざる。

「らぶも助けに行かなきゃ」
【お気をつけて行ってらっしゃいませ】
 端末から聞こえる『マザー』の無機的な声。ちょっとポンコツだが時たま役に立つお友達を片手に、ラブリーは『覗いた星空を奪う望遠鏡のある国』に足を踏み入れる。
 目的地は前方にそびえ立つ天文台。しかし彼女の目線はそれよりもっと高く、頭上に広がる満天の星空へと向けられていた。
「沢山の星が見える所ならきっとお月も出なくちゃなんな」
【月の観測アプリを起動しますか?】
 マザーの提言はしれっと無視して、代わりに立ち上げるのはお絵かき用のアプリ。
 【頭の中のセカイの全て】を元にして、彼女は夜空に浮かぶ月を描きはじめた。

「きっとお月はまん丸でおっきーなん」
【ネットワークに接続できませんでした】
 案の定マザーからは何の情報も得られなかったので、自らの知識と記憶を頼りにしてぐるーっとおっきなまんまるを描き、ちょんちょんっと模様のように影をつける。ラブリーのユーベルコードは一度見た事のあるモノを精巧に模写することが可能だ。
「お月にはウサギさんも住んでるって聞いたん。なららぶだって住んでいーなんな」
【GPS信号を確認中です……確認できませんでした】
 無表情にロマンチックなラブリーと、機械的なマザーのやり取りは、噛み合っているのだかいないのだか。少なくともこの世界には通信衛星もサーバーも無さそうである。
 ともあれ、月の偽物を描き上げたラブリーはそれを空に浮かべ、自らはその影に隠れながら、ゆっくり天文台に近付いていく。

「えへへ、月って近くで見たことないのん」
 月の影にぴたりとくっつきながら、どこか楽しそうにラブリーは語る。見覚えのあるモノの模写という性質上、彼女のユーベルコードの精巧さは観察の精確さにも影響されそうなものだが、しかし本人は自信満々である。
「でもヘーキ、だってこんなにおっきくしといたん」
 描き上げた偽物の月のサイズは、彼女が作れる限界である69立方メートル。――本物の月はそれより遥かに大きいのだが、オフラインのマザーは何も教えてくれなかった。
 しかし"地上から見たまんまの月"を精巧に描いたラブリーの偽物は、地上から眺める限りは大きさも外観も本物の月と寸分違わぬように見える。それは天文台にいるオウガたちにとっても同じである。

「敵を見逃しちゃダメよ!」
「分かってるってば!」
 現在は戦闘中ということもあって、オウガの注目は星空よりも地上に向けられていたことも幸いした。もし望遠鏡を使ってじっくりと観察されればボロが出たかもしれないが、そもそも敵にはただの星や月を眺めているほどの心の余裕が無かったのである。

「ついたん。しょーぶ!」
 監視に引っかかることなく天文台までやって来たラブリーは、火炎放射器「ラビットブレス」を担いで月の影から飛び出した。驚く道化たちが迎撃体制を整える前に、ぐっとトリガーを引き絞る。
「炎を食べさせてやるのん」
「んなっ!! あなた、一体どこから……熱ッ、あつつっ?!」
 砲口から放たれた火炎はまるで飢えた獣の舌のように敵を舐め回し、焼き焦がす。
 めらめらと天文台が火の手に包まれるなか、パーカーのポケットに突っ込んだマザーからは【火災発生。避難してください】とアドバイスが飛んでくる。
「言われなくてもちゃんと気をつけるのん」
 自分まで火ダルマになるようなヘマなんてしない。勢いよく放射される火炎は渦を巻いてオウガを呑み込み――この天文台にいた敵は、かくして残らず消し炭となった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

玉ノ井・狐狛
※アドリブ/連携などお任せ

なかなか便利そうなブツ(望遠鏡)だなァ。

が、アタシも目のよさにはちょいと自信がある。
千里眼(透視)で相手を知覚して、UCで幻術をしかける。
そのご大層な望遠鏡も、あくまで「見える」ようになるだけ――見えるものが真実かどうかは、べつの話だ。
アタシや周囲の猟兵の幻像を見せて、攻撃をそっちに誘導。そのあいだに近寄らせてもらおう。

とくに、荒事が得意な猟兵が近くにいるんなら、ソイツを手伝って終わらせられると手っ取り早いな。


夜霞・刃櫻
【アドリブ・連係歓迎】
戦争なんてやってられねーっすなー
ま、見つからないで行動は余裕っすよ(慢心

UC【夜霞の警笛】で霞状態になって接敵します。
霞状態になれば人型よりは「目立たない」し、誰かの「影に紛れる」事だって出来るハズ
何より見つかった所で霞だから大丈夫と思われる=実質見つかってないになる!
「忍び足」で近付いた隙に敵を『キリング・エッジ』で「鎧を無視した」「暗殺」を狙う
その後、『ヘイズ・グレネード』でスモークを焚いて「目潰し」して再び「目立たなくなり」、「暗殺」を続けます
バレたら「敵を盾にして」影と影を移動した「逃げ足」で逃走します

三下だから仁義もクソもない、なんとなくムカつくから殺す!



「なかなか便利そうなブツだなァ。が、アタシも目のよさにはちょいと自信がある」
 オウガが立てこもる天文台を彼方から見やり、玉ノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)はきっぷの良い笑みを浮かべる。瞳術に長けた彼女の千里眼は、この距離からでも望遠鏡を覗いている道化師の姿がはっきりと知覚できていた。
「戦争なんてやってられねーっすなー。ま、見つからないで行動は余裕っすよ」
 一方の夜霞・刃櫻(虚ろい易い兇刃・f28223)はめんどくさそーに、しかしこちらも自信ありげな態度で口元を歪める。それが果たして慢心かそうでないかは、これから直ぐに分かることだ。

「そんじゃ、お先に行かせてもらうでやんす」
「ああ、援護は任せときな」
 黒鞘の長ドス「パンク・ロック・キリング・エッジ」を片手に移動を開始する刃櫻。
 それを見送った狐狛は狗瞳"白"の使用により白銀に染まった瞳で、敵連中を凝視する。
「自分探しの旅、片道切符で行ってきな」
 仕掛けるのは幻術【千夜一夜の夢騙り】。巫狐の千里眼に捉えられたジョーカーたちはたちまちの内に術中に嵌まり、自らの心理下に作られた凶夢の迷路に取り込まれた。

「あっ……あそこに敵が!」
「あっちにもいるわ! 向こうにも!」
 望遠鏡を覗くジョーカーたちの視界に映るのは、天文台に向かってくる猟兵の姿。ざっと見渡しても十数人はいるだろうか――だがその中に1人として「本物」はいない。
「そのご大層な望遠鏡も、あくまで『見える』ようになるだけ――見えるものが真実かどうかは、べつの話だ」
 狐狛の術が敵に見せたのは、自身や周囲にいる猟兵の幻像。正しい指標を見失った者は、彼女が与えるいつわりの指針に騙され、それに導かれるままに行動してしまう。

「迎撃を! 早く!」
「やった! 1人倒したわ!」
 幻術に踊らされるままに死神の大鎌を振るい、灼熱の炎を放つジョーカーたち。
 押し寄せる幻の敵と戦い一喜一憂する様は、まさしく道化としか言いようがない。
「なーんか騒がしいっすねー」
 天文台の連中が動揺している気配は【夜霞の警笛】を発動中の刃櫻にも伝わってきた。
 彼女は霞に変異させた肉体の特性を活かしてひっそりと天文台に近付いていた。この状態なら人型よりも目立たないし、狐狛が作った幻像の影に紛れることもできる。
(何より見つかった所で霞だから大丈夫と思われる=実質見つかってないになる!)
 満天の星空の下、その姓の通りの"夜霞"と化した刃櫻は、誰にも見咎められることなく忍び寄る。足音もなく階段を昇り、天文台の最上階までやって来ると、まだ望遠鏡を凝視している敵の背後から襲い掛かった。

「まずは1人っす」
「あぐ―――ッ!!?」
 背中側から骨の隙間を通るように突き込まれる「パンク・ロック・キリング・エッジ」。滑り込んだ刃は狙い過たず標的の心臓を貫き、振り返る間もなく死に至らしめた。
「い、一体どこから……ちゃんと見てたはずなのに!」
 まだ幻術に掛かっていることに気付いていないジョーカーたちは、どうしてここまで近付かれる前に分からなかったのか理解できない。敵の困惑を見てとった刃櫻はにまりと笑みを浮かべると、「パンク・ロック・ヘイズ・グレネード」を投げつける。
「只今霞が発生してるっす。十分に御注意下さいっす」
 BOMB! と爆音を上げて真っ白なスモークが焚かれ、天文台にいた連中の視界を奪う。
 その隙に少女はまたもや霞へと変わり、煙と闇に溶け込んで再度の暗殺の機会を狙う。

「ああ、もうっ! 一体どこに……!」
 幻術の次は不意討ちと目くらまし。さんざんに幻惑され半ばパニック状態の敵は、ぎゅっと鎌を握りしめながらきょろきょろと辺りを見回す。すると煙幕の中から微かに、何かが動く影が見えた。
「そこよぉっ!!」
「きゃぁッ!!?」
 振り下ろされる大鎌、そして絹を裂くような悲鳴。だがそれは刃櫻のものではない。
 晴れゆく煙幕の中から現れたのは、胴体を真っ二つに薙がれたジョーカーの骸だった。
「おいおい、同士討ちとは穏やかじゃねぇなァ?」
 いつの間にか天文台までやって来ていた狐狛が皮肉げな笑みを見せる。その狗瞳は闇も煙も見透かし、幻術は今だ発動中――味方の幻を作るだけでなく、敵に幻を被せて攻撃を誘導することだって、お手の物だ。

「ま、今回のアタシの仕事はこのくらいだ。荒事が得意な猟兵が近くにいるんなら、ソイツを手伝って終わらせるほうが手っ取り早いからな」
 はすっぱな物言いをする妖狐が見せる幻惑の凶夢、その影でゆらりと霞が揺らめく。
 さっと風のように戦場を駆けたそれは人の型を成して、無慈悲な刃で敵を斬り捨てた。
「三下だから仁義もクソもない、なんとなくムカつくから殺す!」
「あぎ……ッ!!」
 またひとり道化が倒れ伏し、その悲鳴で我に返ったジョーカーたちは鎌を振り上げるが――そこにいるのは本当に敵なのか? また味方を斬ってしまうのでは、あるいはそこには誰も居ないのではないのかと、疑心暗鬼が彼女らの行動を縛る。

「こうなりゃバレても余裕なくらいっすね」
 刃櫻はその状況につけ込んで、影から影へ、敵から敵へと同士討ちを誘うように動く。そのまま暗殺できればよし、反撃されようとも敵を盾にして逃げればいいだけだ。
「ど、どうすれば……どうすればいいの……ッ!!!」
「言ったろ、こいつは片道切符だって。ま、自分探しも死出の旅も似たようなものさ」
 恐慌する道化に狐狛が冷ややかに告げる。その直後、キリング・エッジが道化の首をすっぱりと刎ね飛ばし――それを最後に、この天文台にいたオウガは全滅したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シェーラ・ミレディ
オウガ・オリジンと猟書家が同時に動き出したか。それも、随分と面倒なことになっているようだ。
彼奴等の動きをできるだけ妨害するためにも、勝ち続けねばならんな。

星空が広がるということは、現地は夜だろう。闇に紛れて接近できそうだ。
影の精霊による迷彩を展開し、望遠鏡の視界に入らないよう、遮蔽物に隠れながら移動する。
望遠鏡で周囲を探っているような敵を発見出来たら、死角になるような位置から狙いを定めよう。確かに遠くはよく見えるだろうが、ほら、手元がお留守だぞ?
『純情一途』で喉を狙い、声を上げさせないよう暗殺する。見付からないうちにできるだけ仕留めておきたいからな。敵が集まっては面倒だ。

※アドリブ&絡み歓迎



「オウガ・オリジンと猟書家が同時に動き出したか。それも、随分と面倒なことになっているようだ」
 戦争の状況を把握し、端正な顔立ちを引き締めるシェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)。カタストロフの元凶たるオブリビオン・フォーミュラに、他世界の侵略を企てる猟書家たち。それぞれの思惑が絡み合い、戦いは三つ巴の様相を呈している。
「彼奴等の動きをできるだけ妨害するためにも、勝ち続けねばならんな」
 そのためにも先ずはこの戦線を突破する。ホルスターに収めた精霊銃に手を添えて、人形の少年は『覗いた星空を奪う望遠鏡のある国』を疾走する。

(星空が広がるということは、現地は夜だろう。闇に紛れて接近できそうだ)
 というシェーラの予想通り、戦場には明ける気配のない夜の帳が降りている。精霊使いでもある彼はそれを利用して、影の精霊による迷彩を展開しながら天文台に近付く。
 高い所からこちらを見張っていると分かっていれば隠れようもある。望遠鏡の視界に入らないよう、遮蔽物に身を潜めながら移動する様は、影法師と同化したかのようだ。
「異常なーし」
「こっちもー」
 天文台に立てこもるジョーカーたちは、彼の接近に気付くことなく呑気にしている。
 なまじ有利な地形と索敵手段を得たことで調子に乗っているのだろう。気分屋な性格が仇となって、オウガの監視体制にはところどころ綻びがあった。

(ここまで来れば、僕の射程範囲だ)
 見咎められることなく天文台の近くまで辿り着いたシェーラは、望遠鏡で周囲を探っているジョーカーを見つける。だが建物の高さと望遠鏡の角度からして、彼のいる位置は向こうにとって完全に死角だ。
「確かに遠くはよく見えるだろうが、ほら、手元がお留守だぞ?」
 【彩色銃技・純情一途】。音もなく抜き放たれた4丁の精霊銃から、矢継ぎ早に弾丸が放たれる。それは闇夜に流星の如き軌跡を描いて、標的の喉笛を的確に射抜いた。
「――――!!?」
 悲鳴を上げることすらできず、首に風穴を開けてとさりと斃れる道化師。
 標的に悟らせず、そして響く物音も最小限に抑えた、完璧な暗殺だった。

「見付からないうちにできるだけ仕留めておきたいからな」
 敵が集まっては面倒だと、シェーラは監視に張り付いている敵を順繰りに倒していく。
 夜闇に紛れて影に潜みながらの、急所一点に狙いを絞った集中攻撃――実に効率よく、気取られることなく、邪魔なオウガの数を減らしていく。

「こっちからは誰も来てないわね……そっちはどう?」
「…………」
「ちょっと、返事してよ?」
「…………」
「ねぇったら……?!」

 望遠鏡にばかり集中していたジョーカーが振り返ったときにはもう、周りにいたのは同族の屍だけ。視野狭窄に油断もあったろうが、一体いつの間に、誰が、こんなに。
「お前で最後だ」
 混乱する標的の喉笛を、精霊の銃弾が撃ち抜く。恐怖と驚愕を顔に張り付かせたまま、その道化はばたりと倒れ伏し――天文台付近で動いている者は誰もいなくなった。
 結局、誰にも発見されぬままひと仕事を終えたシェーラは、4丁の精霊銃を収めると再び闇の中に姿を消す。ここはまだ戦争の序盤、倒すべき敵は大勢残っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア


えー…視界が射程になるとか、何それずっこい…
あいつら片づけたら手に入ったりしないかなぁ…しないわよねぇ…

…逆に考えれば。見つかっても攻撃されなければ問題ない、のよねぇ。なら、手はありそうかしら。
閃光手榴弾をバラ撒きつつ、ミッドナイトレースに○騎乗してテイクオフ。ラド(車輪)のルーンと●轢殺で速度上げてVTOLで一気に上昇するわぁ。この子こんな見た目でもUFOだし、こういう芸当もできるのよぉ?
見られてなきゃ問題ないし…見られてたとしても、望遠鏡でフラッシュバンの閃光まともに見たりなんかしたらタダじゃ済まないでしょぉ?
そのまま突っ込んで〇爆撃と流鏑馬で〇蹂躙してやりましょ。



「えー……視界が射程になるとか、何それずっこい……」
 不満そうに、あるいはちょっと羨ましそうに呟きながら、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は唇を尖らせる。観測したもの全てが射程距離内になるスコープなんて、確かに射撃手からすれば垂涎のアイテムだろう。
「あいつら片づけたら手に入ったりしないかなぁ……しないわよねぇ……」
 物欲しそうに敵が立てこもる天文台のほうを見やるが、件の望遠鏡は元からこの不思議の国にあった物のようだし、入手できるかは微妙なところだろう。未練はあるが一先ずは敵の殲滅を優先することにして、意識を切り替える。

「……逆に考えれば。見つかっても攻撃されなければ問題ない、のよねぇ。なら、手はありそうかしら」
 そう判断したティオレンシアは手持ちの装備から閃光手榴弾を取り出して、辺りにばら撒く。瞬間、放たれた夜を白ませるほどの激しい光は、天文台からも観測できた。
「何、今のは?!」
 敵は慌てて望遠鏡を向けるが――その光を目くらましにして、ティオレンシアはバイク型UFO「ミッドナイトレース」に騎乗し【轢殺】を発動、さらに車体にラド(車輪)のルーンを刻んでテイクオフ。VTOL機さながらの垂直上昇で一気に高度を上げる。
「この子こんな見た目でもUFOだし、こういう芸当もできるのよぉ?」
 飛び立つ瞬間さえ捉えられなければ、敵に発見されるリスクは大きく低下する。
 満天の星空の中を駆けて、宇宙産バイクは全速力で天文台に向かって飛んでいく。

「見られてなきゃ問題ないし……見られてたとしても」
 ティオレンシアはバイクのアクセルを全開にしたまま、さらに何個もの閃光手榴弾を放る。爆撃機のように投下されたそれは空中で炸裂し、星々もかくやという光を放つ。
「望遠鏡でフラッシュバンの閃光をまともに見たりなんかしたらタダじゃ済まないでしょぉ?」
 その目論見の通り、「今何かが動いたような?」とたまたま望遠鏡を空に向けていたカンのいい輩は、その閃光を直視してしまい「きゃうッ!?」と悲鳴を上げた。眼球を刺すような痛みにとても目を開けていられず、あるいは失明しているかもしれない。

「どうしたの?!」
「上に何か……眩しッ!?」
 仲間の異変に気付いたジョーカーたちは彼女が見ていた方角を注視するが、それは単に二次被害を増やすだけだった。たとえ接近してくる敵影を捉えられても、閃光に目を焼かれてとても攻撃するどころではない。
「さて、蹂躙してやりましょ」
 その隙を突いてティオレンシアは天文台まで突っ込むと、片手に手榴弾、片手に愛銃「オブシディアン」を構えて攻撃を開始。上空から雨あられと降り注ぐ爆撃に、高速飛行中でも照準のブレない正確な射撃――望遠鏡を使えないジョーカー側に、対抗できるような対空能力は無かった。

「きゃぁぁぁぁっ?!!!!」
 夜空の下に轟く爆音と銃声、そしてジョーカーたちの断末魔の悲鳴。VTOL高速爆撃機と化したミッドナイトレースからの対地攻撃に、敵は成すすべもなく戦場に屍を晒す。
 ティオレンシアの手によりこの天文台が完全制圧されたのは、それから間もなくのことだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月07日


挿絵イラスト