迷宮災厄戦⑦〜偽りの正義を叩き割れ〜(作者 マウス富士山
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●???
「……うん、これにしましょう!」
 満足げに頷きながら、少女は手にした本を開く。ここは巨大な図書館の国。歴史書、図鑑、ノウハウ本、自己啓発本、様々な書物が収められているが、それらの本は全て一つの目的を達成するためだけに存在する。
 それを知っている少女は意気揚々と本の内容に目を通し、書かれている内容を記憶していく。普段の自分とは違う言動をするというのは少々面倒だが、演技は彼女の得意分野だ。
「……さあ皆、悪い人がやってくるわよ」
 乾いた音と共に本を閉じ、少女──の姿をしたオウガ──は図書館に連れてきたアリス達の方に振り替える。
「私達の手でこの素敵な場所を守りましょう!」
 この図書館に収められた蔵書は、全て世界征服の手段が書かれたもの。その内容を記憶したオウガはアリス──人質達──と共に猟兵達を迎える準備をするのであった。

●グリモアベース
「迷宮災厄戦、色々と考える必要はありそうだが……足踏みしていては何も始まらない。早速だが、開幕の狼煙を上げていくぞ!」
 アリスティアー・ツーハンドソード(王子気取りの両手剣・f19551)そう真剣な声で猟兵達の姿を自らの刀身に映すと、今回の任務を説明し始める。
「今回の戦場は世界征服大図書館。その名の通り世界征服のためのあらゆる書物が収められている本の国だ。その影響でオウガ達は悪役的な言動をしてくるが、それは伊達ではなく本に従うことで本当にパワーアップしてくるのが厄介な点だね」
 討伐目標であるミミック・アリスは自らの正体を偽り、取り入ったアリス達を積極的戦いに出すことで悪役的言動を満たしてくる。表向きは共に戦う仲間を装いながら、実際は猟兵の攻撃から自分を守る盾程度にしか思っていないのだろう。
「善を偽る先導者って奴だね……おまけに正体がバレても過剰なまでにアリスを傷付ける言動をしてパワーアップしてくる。厄介な相手だが、こっちにも反撃の手立てはある」
 パンドラの箱に収められた希望のように、この図書館にも正義の書というものが存在する。その力によって猟兵達が正義味方のような行動をすればオウガと同じようにパワーアップすることができるのだ。
 この戦場であればオウガが盾として使い捨てようとするアリスを積極的に助ける、少女達の精神を案じてあまり残酷な攻撃を行わないようにする、などの行動をすれば正義の書の力を受けることができるだろう。
「猟兵が正義を、オウガが悪役を演じる……まるで演劇のようだが、それがこの戦場のルールだ。せっかくの機会、思いっきりの正義というやつをぶつけてやろう」


マウス富士山
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プレイングボーナス……「正義の味方」っぽい行動をする。
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●マスターコメント
 戦争開幕!
 というわけでオープニングをご覧いただきありがとうございます、今回シナリオを執筆させていただくマウス富士山と申します。
 今回のシナリオは正義を偽る先導者のオウガを正義の味方っぽい言動をしながら撃破するシナリオとなります。
 正義は人によって違いますが、基本的にはオープニングで書かれた言動を基準に判断にします。
 オープニングの公開と同時にプレイングの受付を開始、皆様の参加を心からお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『ミミック・アリス』

POW ●邪魔だよー!どっか行っちゃえ!
【手にした大剣 】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
SPD ●私がオウガだって、本当に言えるかしら?
【腰に下げた日記 】を披露した指定の全対象に【この人物はオウガではないという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
WIZ ●悪い人は皆で捕まえちゃおう!
【味方として取り入ったアリス達 】【茨のロープ】【自身の怪力】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アリスティアー・ツーハンドソードです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


虎鶫・夕映
正義の味方…それは自分が自発的にやるものではなくて行動の結果がそうなったと他人から定義されるものではないか。いや、っぽい行動だからイメージでいいのかな

ならとりあえず『手の届く範囲のものだけは絶対に守り切る』辺りができる範囲内かなぁ
無差別に攻撃をするというなら武器そのものを力づくで受け止めてあわよくばへし折れればなおさらいい

…でももっと適任者いたよねこれ


ヒルデガルト・アオスライセン
無知の罪…?いいえ違うわね。悪意がある
扇動か、戦乱において偽報は確かに有効でしょう
此方にグリモア猟兵様がいなければ、の話ですが

これは戦争。どちらかが潰えるまで続く、血で血を洗う戦火
正義がぶつかり合うのは当然よね

我が正義とは…もう戦うのは私一人だけでいい、誰に期待することもない
私の傍に立つものが犠牲にならなければどうでもいいわ

天変地異でも起きぬ限り、三回攻撃が来るでしょう
トンネル掘り&怪力で地形を歪ませ、巨大化大剣を振れる範囲を制限します
ルートを狭めれば、止めるのも容易い筈
巻き込まれそうなアリス達に迫る剣をUCで止め、折って返却します

明快に勝った方が正義と宣いたいけれど
判断は星の神に託しましょう


●綺麗な正義であらずとも
「無知の罪…?いいえ、違うわね」
 図書館に集まった数十人のアリス達を見て、ヒルデガルト・アオスライセン(リベリアス・f15994)は僅かに表情を歪める。悪意を持った扇動、およそ戦う能力のない少女達を最前線まで連れてこられる口車も世界征服図書館のなせる技か。
 身を寄せ合い、縮こまるように集まるアリス達。その中心に立つアリスの姿を模したオウガをヒルデガルトが睨み付けると、アリス達がビクリと身体を振るわせて益々身体を縮めてしまう。
「……怖がらせちゃダメじゃない?」
「いいのよ、下手に手を出されるくらいならこうして足踏みしてくれた方が」
 同行する虎鶫・夕映(サルトラヘビ・f28528)の耳打ちも意に介さず、ヒルデガルトは一歩前に踏み出すとこの場に居る全員に言い聞かせるように、毅然とした態度で宣言する。
「これは戦争。どちらかが潰えるまで続く、血で血を洗う戦火……その途中で、正義がぶつかり合うのは当然よね」
「……怖ーいお姉ちゃんだね、怖い人は皆で倒さなきゃ」
 そう言ってオウガは彼女の傍に立つアリスを慰めるように――そして、いざという盾にしやすいように――自分の近くに引き寄せる。どちらが悪役かわからない光景に夕映が内心であわあわと冷や汗を流していると、オウガが自らの武器である大剣を掴んだ。
 開戦の合図、大剣が振り上げられるのを見た夕映が攻撃を止めようとオウガに向かって駆け出すが、寄り集まったアリス達が壁となって彼女の行く手を阻む。真っ直ぐ突っ切れば彼女達を跳ねることになる、かといって跳び上がれば足場のない空中で攻撃を受け止めることができるかわからない。
 夕映の思考に迷いが生れた隙を付くように、オウガの持つ剣が建物の如きサイズに膨れ上がった。
「皆、避けて!」
 口ではそう言ってるが、おおよそ回避が間に合わないような速度でオウガは大剣を振り下ろす。その光景を見た夕映が覚悟を決めたように両手を上空に向け、その刃を受け止めた。
 足元が地面に減り込む程の衝撃。蜘蛛の子を散らすようにアリス達が離れるのを見た夕映はほっと胸を撫で下ろすが、直後に彼女に伸し掛かっていた重量がふっと消えてなくなる。
 攻撃を受け止められたオウガは剣を縮小させると、今度は突きの構えを取って猟兵達を見据える。味方を巻き込む連続攻撃、それを夕映の背中越しに見たヒルデガルトは短く息を吐きながら地面を踏み抜いた。
 立っていられないような地震と轟音。それと共にヒルデガルトと夕映、そしてオウガを繋ぐ直線状の大地が陥没し、バランスを崩したオウガは地面に剣を突き刺してしまう。渓谷の深さは一メートル程と浅いが、両側の壁はオウガの大剣の動きを阻害するには十分なものだ。
「ちょっと、アリス達が巻き込まれたどうするつもりよ!?」
「私の傍に立つものが犠牲にならなければ、どうでもいいわ」
 オウガの言葉を流したヒルデガルトは渓谷の中にアリスが取り残されていないことを確認すると、硬く拳を握りながらオウガへ向かって駆け出す。
 近くには壁であり、盾となるアリスがいない。小さく舌を鳴らしたオウガは地面に突き刺したままの剣を巨大化させると、強化された脚力でその柄を勢いよく踏みつける。
 陥没した大地ごとめくり上げるような切り上げ、この質量であれば巻き上げられた土も凶器となる。重しを乗せた天秤のように急激に傾く剣の柄は、しかしいつの間にかその下に潜り込んでいた夕映に受け止められた。地面から繰り出されようとした刃もヒルデガルトに抑えられ、剣は半端に地面から姿を現した状態で静止する。
「正義の味方って、行動の結果他人から定義される思うのよね……どうなのかなこれ?」
「言ったでしょう、どうでもいいわ。それに戦うのは私一人だけでいいのよ、そうすれば全部こっちの責任なんだから」
「……私もだけど、もっと適任者いたよね」
 不器用な人が集まったなと思いながら、二人は両端から捻るように大剣に力をくわえる。その圧力に耐え切れなくなった刀身に皹が入り、呆然とするオウガの前で半ばから砕けるのであった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

ヴィヴィアン・ランナーウェイ
正義の味方、ですか。正直柄ではないのですが……。
まあ、いいでしょう。それが規則ならば守った上であのオウガを倒しましょう。

おーっほっほっほ!私はヴィヴィアン・ランナーウェイ!悪を挫く正義令嬢!!さあ、オブリビオン、観念なさい!!!!(ノリノリ)
UCを用いて、囚われのアリスたちの元へ転移しながら盾として使うオウガ共をバッタバッタとなぎ倒します!
それで、ええと?敵はおうがでは無い??
うっさいですわね!悪党なんだからオウガだろうがなかろうがぶっ飛ばすに決まってるでしょう!(男女平等パンチ)他のアリス達も勘違いしては行けませんわよ!相手は!オウガじゃないけど!悪!!いいですわね!!!
これが、正義の味方!


片桐・公明
【SPD】分身が表立って戦い、本体は人質となっているアリスの救助に努める

分「あたし、参上!!」
ニチアサ風のポーズを取り大声で注目を集める
分「ずいぶん楽しそうじゃないか。あたしも混ぜてくれよ。」
分「どうせ時間もないんだ。最初からクライマックスでいかせてもらうぜ」
戦闘となったら妖刀を振るい戦う
相手UCを受けても特に気にしない
分「お前がオウガか否かなんて関係ないね。敵として立ちはだかるなら殺すだけだ。」
分「今更気づいたのか。あたしはもともと正義の味方って柄じゃないんだ。」

本「全く、要請とはいえ何やってんだか。」
羞恥心で少し顔を赤くしながら、戦いの様子を眺めつつ救助を行う本体

(絡み、アドリブ歓迎です)


●人であることが正義であらず
 半ばから折れた大剣を背負い、オウガは猟兵の作り出した峡谷から這い上がる。心配して近づいてきたアリス達には笑顔を見せながらも、その内心で忌々し気に顔を歪めたオウガは蔵書の内容を必死で思い出していた。
 集めて、利用し、切り捨てる。善は善であるゆえにこちら捨てる者を守りながら戦わなければならないため、こちらの有利は崩れない。そう本には書かれていなはずなのに実際はその通りに事が進まない。苛立ちがオウガの顔にもにじみ出そうになった瞬間、堂々とした高笑いが図書館に響き渡った。
「おーっほっほっほ!ご機嫌麗しゅう皆様方!」
「ずいぶん楽しそうじゃないか、あたし達も混ぜてくれよ」
「誰ッ!?」
 声がした方へ振り返ったオウガの視線の先にあったのは見上げるほどに高い本棚、そしてその天辺に立つ赤と青のシルエット。
「聞かれたならば答えましょう……わたくしは悪を挫く正義令嬢、ヴィヴィアン・ランナーウェイ!!」
「同じく、悪を滅する正義の味方、片桐・公明!」
「さあ、オブリビオン、観念なさい」「最初からクライマックスでいかせてもらうぜ!」
 背景に爆発が起きそうな勢いで名乗り上げたヴィヴィアン・ランナーウェイ(悪役令嬢?・f19488)と片桐・公明(Mathemの名を継ぐ者・f03969)は呆然とするオウガとアリス達を気にせずとうっという掛け声と共に跳び上がる。高笑いを上げながら落下する猟兵を見ながらオウガは着地点を狩るように剣に手を伸ばしたが、ヴィヴィアンの両足が地面に触れようとした瞬間、彼女の姿が霧のように消滅した。
「ッ!?」
「おっと、その危ないものは使わせなくてよ」
 大剣の柄に触れたオウガの手が、いつの間にか背後に回っていたヴィヴィアンに掴まれる。任意の味方の元に転移するユーベルコード、オウガがアリス達に周囲を囲ませていたことが、逆に猟兵の接近を許すこととなった。
「さあオブリビオン、甘んじてわたくしの攻撃を受けて……」
「……それはどうかしら!」
 剣を抑えられたオウガは腰に下げた本をベルトから外すと、敵の顔に叩き付けるように投擲する。咄嗟に空いた手で本を受け止めるヴィヴィアンだったが、衝撃で開いたページが彼女の目に入ってしまう。
「……あら、ええと?敵はおうがでは無い??」
 その本に書かれていたのは、他愛のない日常の出来事。しかしそれを見たヴィヴィアンは自分が拘束している少女がオウガだと思えなくなってしまった。
「そう、私は皆と同じアリスよ。だからその手を放して――」
「関係ありませんわ!」
 振り下ろされたヴィヴィアンの拳骨が少女の脳天に直撃し、頭蓋からミシミシと軋む泳が鳴り響く。圧倒的暴力の前にアリス達が小さく悲鳴を上げる中、白目を向きながら倒れたオウガの首に公明が容赦なく切っ先を落とす。
「危なッ!?」
「と、起きてたか」
 転がるように刃を避けたオウガに追撃は行わず、ちらと地面に転がった日記帳を見た公明は興味なさげにその本を爪先で蹴り飛ばす。
「お前がオウガか否かなんて関係ないね。敵として立ちはだかるなら殺すだけだ」
「わ、私はアリスよ……!人間よ!!頭おかしいんじゃないの貴女!?」
「今更気づいたのか。あたしはもともと正義の味方って柄じゃないんだ」
 そういうと公明は地面に突き刺さった妖刀を引き抜き、くるりと順手に持ち帰る。
「それに、勘違いしては行けませんわよ!オウガばかりが悪ではありません、戦う力のない貴女達をこんな戦場に連れてくるなど、オウガじゃないけど……悪!!」
 力強く断言するヴィヴィアンの言葉に、一部のアリス達がハッとした表情を浮かべる。確かにあの少女は連れてきた自分達に何か要求することはなかった。そこに居るだけで役割が果たせる、囮だとでも言うように。
「……はい、それじゃあ移動しようか」
 そんなアリス達はひょいと背後から何者かに抱きかかえられると、周囲に悟られる前に戦場から引き剥がされていく。咄嗟にアリスはその顔を確認しようとするが、フードを深く被っているため全容を知ることができない。
「全く、要請とはいえ何やってんだか……どちらかというとダーク路線だし」
 そう小さく呟く彼女の声は、刀を使って少女と大立ち回りする公明と同じものだった。 戦いは任せ、一人でも多くのアリスを安全な場所へ。アリスの数が減っている、そうオウガが気づくのはしばらく猟兵達と打ち合った後だろう。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

新山・陽
SPD 聞けばアリスに無体を働き、戦争に利用としようと先導していらっしゃるとか。
 あ、私は善行に勤しむ通りすがりの者です。
 弱き者を謀って前に押し出そうと目論む悪意、見過ごしませんね。報いをうける覚悟はよろしいでしょうか?

 敵のUCには『鍵をかける力』で対応し、感情を制御し、敵味方の区別が揺るがないよう見定めます。先導されたアリス達は極力【逃げ足】や【ダッシュ】で避けて、攻撃があれば【見切り】【咄嗟の一撃】で素早く【気絶攻撃】を試みます。
 辿りつけたら、ボスにUC『ラッシュ』を発動して戦います。

 「ワンアクション」
 
 アリス達に心無い言葉をかけようものなら、容赦なく踏みつけます。


烏羽・シノノメ
悪いヤツではない、だが地獄の使者だ。
世界征服など考えてる悪い奴は地獄へ叩き落しに来た。

振り回される大剣を見て、空中浮遊で回避しようとする。
……が、アリスたちが犠牲になりそうなのを見て唐傘による武器受けに変更、怪力でなんとか踏ん張ってみよう。罪のない人間が見殺すのは私のポリシーに反する。

同時にUC【焔の誓い】を発動。
それに仲間を犠牲にするような外道は許さん、地獄の業火で焼き尽くす……絶対にだ!
眼前の外道の懐に踏み込む自身の姿が「炎を纏った鴉の化け物」に変化。
煉獄唐傘『烈火』で突いて引き金を引き、焼却と爆撃をはらんだ一撃をぶち込む。

正義か悪など関係ない。私は私の信念を執行するだけだ。


●正しき条理を貫くために
 戦いの隙に猟兵達がアリスの救助を行った結果、オウガの人質であった彼女達の数は始めの半分ほどにまで減っていた。本の加護を受けているにも関わらず、猟兵達は常に自分達よりも上にいる。その事実がオウガには腹ただしく、握り締める手に力がこもる。
「失礼、聞けばアリスに無体を働き、戦争に利用としようと先導していらっしゃるとか」
「……悪いヤツ、全部わかってて言ってるんでしょう」
「悪いヤツではない、だが地獄の使者だ」
 新山・陽(悪と波瀾のお気に入り・f17541)の言葉に対するオウガの返答に、烏羽・シノノメ(濡羽色の死神・f27990)が重ねる。自分を隠さない奴らだと、オウガは内心で歯噛みする。どのような状況でも自分を捨てることが無いその態度が、更に彼女を苛立たせた。
「それじゃあ、地獄に帰りなさいな!」
 叫ぶようにそう声を上げたオウガは腰に下げた日記のページを千切り取ると、周囲に散らばるように投げ捨てる。紙に書かれた文章を少しでも目にした者に強制的に発動する認識素材、これで相手の動揺を少しでも誘えればとオウガは猟兵達を睨むが、陽は一切の迷いのない足取りで急激にオウガとの距離を詰める。
 【鍵をかける力】。そう称する暗号化能力によって陽は自らの感情を制御し、敵の情報と彼女がオウガか否かという情報が結び付かないように切り捨てる。どこまでも冷静な思考を保てる陽は軽々とアリス達の間を擦り抜け、攻撃の届く範囲まで接近した瞬間、一人のアリスが横合いから飛び出した。
 その手に光る何かを持っているのが目に入った陽は咄嗟に足を止め、自分に接近してくるアリスの首元に手刀を入れる。
 アリスの手に持っていたのは鋭い金属の欠片。それを短剣のように握り込んでいたため、裂傷したアリスの手から流れた血によって赤く染まっていた。
「みんなを、いじめる、な……」
 そう言い残して、アリスは意識を失う。その皆の中には猟兵達が討伐しようとするオウガも含まれるのだろう。その感情はオウガの虚偽によって生まれた者なのだろうが、自分よりも強大な存在に立ち向かった勇気は彼女自身が絞り出したものだ。
 一人のアリスが作り出した一瞬の隙。それによって猟兵の脚が止まった瞬間、この場の全てを押し潰すように、オウガの手にする剣が巨大化した。
「助けてくれてありがとう……それじゃあまとめて死んじゃえ!!」
 声を上げる暇もない。天を突く巨大な塔の如き外見となった剣をオウガは軽々と振り下ろし、アリス達ごと猟兵を押し潰そうとする。大気を引き裂く圧倒的な質量を前に、シノノメが大地を蹴った。
「お前を仲間と思っていた、アリス達の想いを踏み躙るか!」
 閉じた唐傘を横に構え、シノノメはオウガの剣を正面から受け止める。一目で無茶だとわかる状況、逃げるのが得策という者もいるかもしれない。だが罪のない人間を見殺しにするのは、彼女のポリシーが許さない。
「仲間を犠牲にするような外道は許さん、地獄の業火で焼き尽くす……絶対にだ!」
 強大な相手へと立ち向かったアリスへの敬意、それを食い物にしたオウガへの怒り。様々な感情が炎と変わり、シノノメの全身を包み込む。自爆覚悟で剣を破壊するつもりか。そうオウガが考えた瞬間、炎の内側から一対の翼が広げられた。
 炎を切り裂きながら、不死鳥の如く現れたそれはシノノメの真の姿。漆黒の身体に炎を纏った烏の化け物となった彼女は嘴に咥えた唐傘を剣に押し付けながら両翼を羽ばたかせ、振り下ろされたオウガの剣を押し上げていく。
 シノノメの真の姿の力を強化しているのは彼女のユーベルコードである【焔の誓い】、立てた誓いが正義であるほどその力を強化するものだが……。
「正義か悪など関係ない、私は私の信念を執行するだけだ!」
 それはすなわち罪なき者を守ること、罪なき者を仇なす外道は必ず滅すること。強い思いと共に翼を広げたシノノメは、天を覆う巨大な剣を連れ空へと飛翔する。
 アリス達を潰そうとした脅威はなくなった。もはや躊躇する理由はないと言わんばかりに陽は武器を失ったオウガに一瞬で肉薄すると、その身体を軽々と地面に引き倒した。
「弱き者を謀って、前に押し出そうと目論む悪意。報いをうける覚悟はよろしいでしょうか?」
 そう言って断頭台の刃のように降り降ろされた陽の脚はオウガの背を踏みつけ、骨の砕ける音と共にその身体の自由を奪う。その直後、上空から落下してきたシノノメがオウガの身体に唐傘の先端を突き立てた。
「堕ちていくんだな、地獄へ」
 傘に付けられた引き金が引かれ、爆炎と共にオウガは消滅する。正義を偽った人食いの怪物は、その知識の元となった本と共に小さな火の粉となって図書館に舞い散るのであった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2020年08月02日
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴