迷宮災厄戦⑧〜その拳を見切れ(作者 骨ヶ原千寿
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「やあ、急に呼び立ててしまってすまないね。どうにも星の巡りが悪いらしくて…端的に言えば、大規模な戦いが発生したようなんだ」

 アストリッド・サンドバック(不思議の国の星占い師・f27581)は、掌で天球儀を操作しながら言葉を紡いだ。この間の『予兆』は知っているかな、と猟兵たちに確認をとる。
「戦いの場所は『アリスラビリンス』、複数の小世界で構成される『不思議の国』だね。そして、ここからが本題なんだけれど…」

 現在、アリスラビリンスにおいては『迷宮災厄戦』と呼称される戦いが発生している。オブリビオン・フォーミュラである『オウガ・オリジン』、謎めいた『猟書家』たち、そして『猟兵』 各勢力が三つ巴となって戦う混沌とした様相が展開されている所である。

「まだ戦端は開かれたばかりだ。先々の戦略的な話は一旦置いておくとして、キミたちにはアリスラビリンスにある『星空の国』に行ってもらいたいんだ」

 星空の国。
 正確には『覗いた星空を奪う望遠鏡のある国』
 その国にあるのは満天の星空、そして高い塔の天文台。星々は実に綺麗に輝いていて、その煌めきを観測するには誂えたような世界で…と、アストリッドは語る。星占い師として親近感の湧く国であったようだ。

「けれどーーー今、その天文台の塔はオウガによって占拠されているんだ。キミたちにお願いしたいのは、そのオウガの排除と、塔の奪還だよ」

 塔には、不思議な望遠鏡が設置されている。
 本来ならば、それは遥かなる星空に手を伸ばすための不思議な道具だ。しかし、それはオウガによって強力な武器へと転用されてしまっている。

「望遠鏡の能力は、『覗き込んでいる物に手が届く』 ……つまり、塔の天辺からは、敵オウガによる超長距離攻撃が一方的に届くと思ってくれ」

 敵オウガは、至近攻撃しかできない『ボクサーバニー』と呼ばれるオウガだが、望遠鏡越しに覗き込まれてしまうと、どんなに距離があろうとも痛烈なパンチが飛んでくることになる。
 オウガたちが居るのは塔の最上階だ。先に発見されてしまえば、一方的に殴られてしまうだろう。望遠鏡に見つからないように、どのように接近するか…思案が必要かもしれない。逆に言えば、望遠鏡による遠距離攻撃を無力化できれば、塔をスムーズに制圧することができるだろう。

「どの様に塔へ接近するか。どうやって望遠鏡の捕捉から逃れるか…。それは、キミたちに任せるよ」

 それでは、健闘を祈るよ、と。アストリッドが呟くと、彼女のグリモアが万色に輝いた。そして、猟兵たちは戦場へと転移する…!


骨ヶ原千寿
 3作目です。コツガハラと申します。
 補足説明です。

 この依頼の【プレイングボーナス】は、【望遠鏡に発見されない工夫をする】です。見つかってしまえば、不思議な望遠鏡の能力によって『まるで敵が目の前にいるかのように』オウガのパンチが飛んできます。

 執筆は書ける範囲の人数を、月曜日くらいまでを目標に執筆させていただきます。あまり筆も速く無く、キャパシティ低めだと思いますので、何卒ご寛恕を。
 初戦争シナリオ執筆ですが、頑張って書かせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『ボクサーバニー』

POW ●サンドバッグコンボ
攻撃が命中した対象に【ウサギ型の痣】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【次々と現れる仲間達のパンチ】による追加攻撃を与え続ける。
SPD ●ダーティサプライズブロー
レベルm半径内の、自分に気づいていない敵を【異空間からの奇襲によるパンチ】で攻撃する際、ほぼ必ず狙った部位に命中する。
WIZ ●ハニートラップカウンター
【挑発】を披露した指定の全対象に【無防備にこちらへ近づきたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


闇之雲・夜太狼
俺としてはこそこそ隠れながら行動するなんて性に合わないけど、
かくれんぼだと思えば少しは楽しめるかな?
っていうか、望遠鏡面白そうだね!ちょっと欲しいかも?

見つかる前にUCを使って、地面に潜っちゃうよ~
壁にも潜れるから、隠れながら塔の最上階まで泳いでいこう

最上階に着いたら……後ろから「わっ!!」ってからかってあげるね
オオカミが来たぞ~♪

テキトーにからかった所で、いざ勝負!
……と見せかけて即、背中を床に付けてゴロンと寝っ転がるね
ああ、塔を登るのに少し疲れちゃっただけだから
気にしないでかかってきたら?寝たまんまで十分だし、って挑発

怒って襲いかかってきたら、クイックドロウしたMr.ハンドくんで迎撃だよ!


 ―――空には、満天の星空が広がっていた。
 月は無い。人工の灯りが存在しない漆黒の大地とは裏腹に、上を見上げれば瞬く光が無数に輝いている。『手の届きそうなほど』とは在り来たりな形容だが、この世界……『覗いた星空を奪う望遠鏡のある国』では、文字通りに星にだって手が届く。不思議な望遠鏡を覗き込めば、どれだけ距離があっても彼我の距離はゼロとなり、星の輝きを掌で包む事ができる。
 それは、アリスラビリンスでは一般的な、ありふれた不思議にすぎない。本来ならば、愉快な仲間たちと共に星空を眺めて、のんびりと天体観測をすることもできたであろう。ささやかな神秘と星空に彩られた、静かな夜の国―――その国が、戦場となっていた。
 遠い空を見上げる天文台の塔は、大地を見下ろす監視塔へと変貌している。そこから眺められる光景は、この星空の下、暗い大地の全てだ。塔からの監視に見つかれば最後、距離を無視した一方的な打撃が襲ってくるであろう。加えて、塔の天辺を占拠するオウガたち…ボクサーバニーの性質は極めて嗜虐的だ。甚振るように何度も殴り、見つけた獲物を酷く痛めつける。彼女たちが好むのは一方的な暴力だ。望遠鏡の力によって好き勝手に殴り放題ということもあって、ボクサーバニーたちは嬉々として塔から大地を見渡していた。

(俺としてはこそこそ隠れながら行動するなんて性に合わないけど)
 遠く遠く、地平線に小さく見える塔を眺めながら、闇之雲・夜太狼(クライウルフ・f07230)は心の中で考える。これも、かくれんぼだと思えば少しは楽しめるかな? 追いかけっこならば逃げる相手を追いかける楽しさがあるけれど、こっそりと近づいて相手を驚かせるというのも面白そうだ。彼にとって、オブビリオンやオウガといった存在は遊び相手…というよりは都合のいい玩具のような存在だ。力加減を遠慮する必要は無いし、雑に扱って壊しても怒られない、そんな玩具。
 故に、夜太狼の頭の中にあるのは『どうしたら驚かせられるだろう?』という一事のみだ。闇の中に黒髪と外套を潜めながら、無邪気にも悪戯の算段をつけている。
(……っていうか、望遠鏡も面白そうだね! ちょっと欲しいかも?)
 不思議な望遠鏡への好奇心も掻き立てられつつ、夜太狼の姿は闇へと沈んだ。

 ぴょん、ぴょん、と。
 塔の天辺を兎が跳ねる。兎が見詰めているのは月では無くて夜闇、探しているのは哀れな獲物だ。豊満な肢体をバニーコートで包みながら、熱っぽい目線で望遠鏡を覗き込んでいる。
 ―――オウガバニーが求めているのは、彼女たちの心を満たしてくれるようなステキな相手だ。腹を殴りつけて一発で内臓破裂させてしまっては面白くない。どうせなら両腕を折ってしまいたい。鼻や耳の軟骨を潰してしまうのもいい。肋骨を数えながら肺に刺してあげようか…。殴れば肉体は簡単に壊せるけれど、柔らかな心は丁寧に扱わなくてはいけない……ああ、最初に片目だけを潰したら、歯を折り砕いたら、この望遠鏡から命乞いする泣き顔を間近に見られるかしら。兎たちはその光景を夢見て、胸を高鳴らせる。全身殴打で絶命するまで、どれくらい綺麗な涙を、必死な声を聴けるだろうか? 左の胸に優しく触れて、心臓震盪で悶える姿を愛してあげたい。潰れた喉から鳴る音を、折れ曲がった指を、這い蹲って冷たくなる体を……最後まで殴り尽くして、削るように全身くまなく私の証を刻み込んでしまいたい。あたしが、アタシが、私たちが最期まで愛してあげる―――!
 オウガバニーは笑う。赤い瞳に映るのは、狂気であり愛であった。

「・・・わっ!!」
「ふぇっ!?」

 不意に背後から声をかけられて、オウガバニーは気の抜けた悲鳴をあげた。振り向けば、悪戯を成功させた狼少年……夜太狼がニコニコと笑みを浮かべていた。
 彼の持つユーベルコード『MODE:DBW(モード・ダイブバッドウルフ)』は壁や地中へと潜り込む能力を持つ。望遠鏡による監視の眼は『地上』を見張っていたが、『地下』は見通すことはできなかった。故に、夜太狼は暗い夜の大地を潜って進み、そのまま塔の壁中に潜んで最上階まで登ってきたのであった。途中、障害は殆ど無かったと言っていい、直通直行による最短経路での侵入であった。彼が仕事熱心な暗殺者であったのならば、オウガバニーは声すら出せずに臓腑を抉られていたであろう。如何なる場所にも侵入できる、恐るべき隠密能力である。
 尤も、夜太狼は「オオカミが来たぞ~♪」と屈託なく笑いかけている。戦いの目的よりも己自身の楽しみをこそ優先させるのが、夜太狼の癖であるようだった。それは、彼が年齢よりも幾分か幼い感受性を持つが故か、無邪気さにも似た心の表れか…。

 兎に角、驚かされたオウガバニーは落ち着きを取り戻すと、仲間たちと共に夜太狼を囲む。冷静に状況を把握すれば、塔への侵入を許したとはいえ敵は一人だけだ。目の前の少年の顔立ちは中々に可愛らしく、しかし青年へと身体が変貌している最中といった容姿。こちらと戦う心算があるかと思えば、石造りの床にゴロンと寝転んで「ああ、塔を登るのに少し疲れちゃった」などと宣う始末だ。まるで遊んで欲しいとでもいうのか、挑発でもしているのか…。
 オウガバニーたちは突然現れた闖入者に好意的に接しようとしていた。ある者は笑顔を浮かべて、ある者は頬を染めて。ずっと退屈してた所に飛び込んできたのが悪いんだから、さあ、お姉さんたちに全身を委ねて? 大丈夫、痛いのは最初だけ。すぐに何も判らなくなるから…! ボクシンググローブが握りしめられ、熱っぽい視線が殺意を帯びる。
 寝たまま見上げるような夜太狼の挑発的な視線に、オウガバニーは堪らなくなった。もう押さえられない、とばかりに全身の筋肉を引き絞る。ほどよく筋肉と脂肪が詰まった四肢が、極めて純粋な嗜虐心で駆動する。網タイツを履いた足で石畳を踏みしめて、岩を砕く勢いの拳が振りかぶられる。

 拳が交錯した。
 吹き飛んだのはオウガバニーの一人で、夜太狼はクスクスと笑みを浮かべたまま手中の得物を引き戻す。どこかカートゥーンめいたその武器は、伸縮自在なワイヤーの先にコミカルな手がくっついている。夜太狼が『Mr.ハンドくん』と呼ぶその銃は、近づこうとしてきたオウガバニーを刹那の間に抜き撃つと、その身体を吹き飛ばしていた。
 元気な獲物にオウガバニーたちが色めき立つ中、夜太狼は体を起こして立ち上がった。かくれんぼの時間は終わり。ここからは鬼ごっこの時間だ。鬼は狼で、狩られる兎たちは嬉々としているけれど。

 塔で戦いが始まると同時に、外の大地でも動きがあった。猟兵たちの戦争が開始される―――!
大成功 🔵🔵🔵

ノエル・フィッシャー
星を覗こうとするものは、星からもまた覗かれることになる。そして愚かにもボクという太陽を覗けば、その眼を焼かれることになるだろうね。

あえて見つかるような機動を取りつつ接近、望遠鏡で覗かれる直前辺りで放ちしUCは【燦々輝く太陽の王子様】。
不意にボクを覗いてしまった相手目掛けて太陽の光を浴びせて攻撃、望遠鏡のレンズ諸共その目を焼き尽くすよ。
さらには続く超高速連続照射で目だけでなく肉体も焦がす追撃を仕掛け、撃破を試みるよ。
例え撃破は出来なくとも、浴びせた敵は十分死に体だろうし、またこの戦法を見せつければ残る敵も迂闊に望遠鏡を使えなくなるだろうね。

アドリブ・共闘歓迎だよ。


緋神・美麗
絡み・アドリブ歓迎

なるほど、望遠鏡で見られたら手が届く、ねぇ。それなら望遠鏡に映らなければ問題ないわけよね。
シールドビットを念動力で飛翔させて先行させ、シールドビットで全身を隠しながら雷天使降臨で塔まで一直線に飛翔する
敵に発見されてシールドビットに攻撃が飛んできてもオーラ防御を展開し念動力でがっちりホールドして盾受けして直進させる
「私の盾はちょっとやそっとじゃ砕けないわよ」
望遠鏡が超巨大電磁砲の射程に入ったらシールドビットを超巨大電磁砲で撃ち出しバニーの撃破、もしくは望遠鏡を破壊する
「ここまで詰めれば私の勝ちよ!」


 地平線に、突如として輝きが生まれた。
 それは夜の大地を明るく照らし出す、煌々とした光。夜の星々が霞むほどに眩く、満月ですら足元にも及ばない。遍く全てを照らす光は、まるで太陽が地上に落ちてきたかのよう。この星空の国には極めて珍しいことに、天の星が見えなくなるほどに白い光が満ち溢れる。
 異常を察知したオウガバニーの一人が不用意にも望遠鏡を覗き込み、次の瞬間には悶絶して倒れ込んだ。あまりの眩さに眼が焼かれたのだ。

「―――星を覗こうとするものは、星からもまた覗かれることになる」
 光の奔流の先で、一つの人影が呟く。その台詞は朗々と、涼やかな声が響く。
「そして愚かにもボクという太陽を覗けば、その眼を焼かれることになるだろうね」
 ノエル・フィッシャー(呪いの名は『王子様』・f19578)は、その白皙を正面の塔へと向けながら、歩き始めた。

 古来、太陽とは神秘の代表であった。
 それは熱と光を生みだし、暖かな昼は生命を育む。夜が冷たく恐ろしいからこそ、人々は陽の光に安心する。農耕で日々の糧を得る者たちは、その光によって穀物が成長することを知っていたし、時として苛烈な陽射しが大地を乾かすことも知っていた。太陽の力が弱まる季節は寒々しい冬の季節であり、その力が戻る春は全ての生命が歓喜する。太陽とは命の源であり、時の巡りであり、広い大地と人々の頭上で君臨する存在である。
 ・・・故に。王権はしばしば太陽と結び付けられた。
 尊き血筋には、何らかの理由があるのだという思考。自分たちとは異なる神秘が宿っているのだという理屈。それは大地の上で輝く太陽と、人々を統治し君臨する王とを類似するモノとして捉えた。平和な治世、温かく民を守り、時として苛烈に敵を焼き滅ぼす……その姿は、現世における太陽の現身。遍く威光を届ける者として、王は太陽に擬せられる。
 ノエルの歩みは、堂々としたものだ。光の中を歩むのでも、影に潜んで隠れるのでも無い。ノエル自身が光なのである。暗い大地があれば照らし出し、深い闇があればそれを払う。その歩みは只人のものならず、先導し切り開くものとして王道がある。王の歩みを妨げる者があれば不遜、その玉体を不躾に望遠鏡などで見下ろす者は不敬の極みである。その姿を直視すれば目が潰れ、敵対者は王威に打たれて平れ伏すのみ。

 ノエルの光が、塔の天辺に降り注ぐ。
 ユーベルコード【燦々輝く太陽の王子様(サン・オブ・サン)】 太陽の血族たる輝きが、身を晒していたオウガバニーたちを焼き尽くす。慌てて遮蔽物へと退避するが、オウガバニーたちはそこから反撃することができない。陽光の前に出れば身を焼かれ、もし直視すれば眩さに眼が焼ける。手元にある望遠鏡は星々の頂にも手が届くが、あの燦々たる太陽には近づけない。神話に曰く、輝きに近づいた者は焼き尽くされ、あるいは翼の蝋が溶けて墜落する。その炎熱を奪おうとすれば大罪となり、万が一にも日が隠れれば森羅万象が鳴動する。―――それは、正しく地上の星。人の姿をした神秘の形だ。
 やがて、その光が弱まって薄れていっても。オウガバニーたちは直ぐに立ち上がることができなかった。あの光の前に出てもいいのだろうか? あの姿を、望遠鏡で覗くことができるのか? オウガバニーたちの戦意は、悉くが削り取られていた。ただ一度の陽光に晒されただけだというのに、その光の前に立ち塞がる自分たちを想像することができない。

 そのタイミングで、オウガバニーの一人が空を指さした。
 それは、一条の流星に見えた。輝かしい光が減衰していき、少しずつ夜空が戻っていく星々の間を駆け抜けていく流れ星。
 流星が、そのまま何処かへと墜ちて尽きるのではなく、この塔へと向かってきていることに気付くには、数瞬の時間が必要だった。

(なるほど、望遠鏡で見られたら手が届く、ねぇ)
 流星は、美しい星空を飛翔しながら考えた。それならば、望遠鏡に映らなければ問題ないのだと。
 その飛翔する影……緋神・美麗(白翼極光砲・f01866)は、上空から一直線に飛翔する。
 【雷天使降臨(モード・バラキエル)】 雷を身に纏って飛翔する姿は、絵物語に登場する天使か、あるいは戦乙女のようだった。物質化された翼を羽ばたかせると、そこで生じた斥力が美麗の身体を前方へと加速させる。

 塔でそれを発見したオウガバニーたちは、しかし、望遠鏡を覗くことが僅かに遅れていた。先程、反射的に望遠鏡を覗いたばかりに眼を焼かれた同胞を目の前で見ているのだ。勿論、躊躇と逡巡は少しの時間であったが、それが直後の明暗を分ける事になる。
 オウガバニーたちがレンズを向ければ、見えるのは美麗が展開したシールドビットによる盾だ。美麗はその盾を正面に展開し、全身を隠したまま飛翔している。
 不思議な望遠鏡の弱点は、能力の発動条件が視覚に依存していることだ。
 『見えるものが殴れる』という利点は、裏返せば『見えないものは殴れない』という弱点となる。この状況で言うならば、見えている防盾を殴りつけることは可能でも、その後ろに存在する美麗を直接に殴ることは不可能。
 無論、防盾を打撃し、その遮蔽としての性能を失わせることができるならば……美麗を迎撃することができるようになる。しかし、その難易度を極めて困難にしている一つの要素があった。
 それは雷天使状態での巡航速度。時速400km。
 オウガバニーの対応が遅れている間にも、彼我の距離は瞬く間に縮まっている。慌てて数名が迎撃の拳を望遠鏡越しに繰り出すが、その拳はシールドビットに阻まれる。サイキックエナジーによる防御を破ることはできず、逆に拳を念動力によってがっちりと押さえつけられたまま、前進する速度に引っ張られてしまう。
「私の盾はちょっとやそっとじゃ砕けないわよ」
 オウガバニーたちの抵抗を受け止めながら、美麗は速度を落とすことなく前進する。
 形容するならば、それは長距離ミサイルの迎撃に似ていた。―――即ち、初動の対応が遅れれば致命的。阻止ラインを突破されれば、あとは吹き飛ばされるのみだ。……ここまで距離を詰めれば私の勝ち、と美麗は眼下に捉えた塔を眺めて独り言ちた。
 塔を射程に収めた美麗は、その天辺へと照準を向ける。それは、無慈悲に敵拠点を失陥させる一撃。時速400kmの慣性速度のまま塔へと突入するシールドビットに、美麗は超巨大電磁砲を向けた。その身体から溢れるプラズマエネルギーが、強大な電磁力となってシールドビットに磁性を帯びさせる。エネルギーとは速度と質量の乗算だ。シールドビットを弾丸として、渦巻く磁力が前方へ指向する加速度をもたらす。
 電磁砲の射出と炸裂はほぼ同時。音すら置き去りにする一撃が、塔の一角を吹き飛ばした。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

リコリス・ミトライユ
絡み・アドリブ歓迎

見られないように、って考えると結構たいへんなのですよね。
見るのを邪魔するように、っていうのはできないでしょうか。

ようし、やってみましょう。
踵を鳴らしてふわりと浮いて、【エアリアルレイド】です。
思いっきり、跳ぶのと一緒に、キラキラをバラまいて。
これだけ邪魔なものがあったら、見にくいですからねっ!
空中でくるくる、いろんな方向にばらまいて、塔までゴーです。

ウサギさんに、十分に近づいたら、奇襲だってできないでしょう?
あたしだって、パンチは得意なんですから、負けませんよ!
向こうのパンチに合わせて、パンチでカウンターです。
グローブなんかであたしのパンチに勝てるなんて思わないでくださいっ!


トリテレイア・ゼロナイン
御伽噺のような素敵な星空ですが、こうした戦闘には適さないのが何とも悩ましいですね
どんな状況であろうと、騎士としてアリスラビリンスの為に戦うまでですが

物資収納スペース内に取り付けてある投光器を●防具改造で取り外し
遠隔操作で囮として点灯

強烈な光です、直ぐに望遠鏡で覗いて攻撃しようとするでしょう
そのレンズの反射光で望遠鏡の位置も此方のセンサーの●情報収集で●見切れるのですが

木陰などに隠れて観測しつつ展開していた妖精ロボを●操縦
機を逃さず妖精ロボのレーザーでレンズを●スナイパー射撃し望遠鏡無力化
後は機械馬に●騎乗し塔に接近
接近戦を挑む兎をランスの●怪力なぎ払いと馬の踏みつけで蹴散らし排除します


 塔の監視能力は、数名の猟兵による攻撃で漸減していた。
 オウガバニーたちの全てが排除された訳では無いが、塔の一部は吹き飛ばされてしまった上、内部に入り込んだ猟兵の始末に戦力の半数を割かざるを得ない。自然、不思議な望遠鏡を用いた監視・迎撃態勢には綻びが生まれている。
 その隙を見逃すほど、百戦錬磨の猟兵は甘くない。事前に打ち合わせていた訳では無くても、その場で最適の連携を生みだすのが猟兵たちの強さだ。塔から見える漆黒の地平に、いくつもの灯りが輝きだす。

「見られないように、って考えると結構たいへんなのですよね」
 キラキラとした光の粒子を散らしていくのは、リコリス・ミトライユ(曙光に舞う薔薇・f02296)だ。白金色の髪を揺らして、紅榴色の瞳には戦意を宿す。健康的な肉体を弾ませて、動きやすい服装で大地を跳ねるように進んでいく。否、『跳ねるように』では無く、実際に跳躍している。【エアリアルレイド】を発動させると、リコリスは重力の軛から解き放たれて俊敏に動き回る。とんとん、と踵で大地を踏みしめれば、次の瞬間にはその身体はふわりと浮き上がる。踊るように軽やかに、あどけない姿は風の精霊のように。

(見るのを邪魔するように、っていうのはできないでしょうか)
 ようし、やってみましょう、と。彼女が試したのはオウガバニーの捕捉を逃れるための擾乱だ。リコリスが飛び跳ねるのと同時に、魔力の煌めきが周囲に散っていく。ステップを踏めば星屑のような輝きが、振った腕からは宝石のような瞬きが。アクロバティックにリコリスがその身を宙に躍らせれば、周囲には無数の輝きが生まれていく。空中でくるくると舞えば星屑は渦を巻いて銀河のように、黒々とした大地に魔力が点々と落ちれば、それは一際目立つ星座のように……彼女が歩んだ道筋は、光で美しく飾り付けられていく。

 望遠鏡を覗きこんだオウガバニーたちは、接近してくる敵を見つけようと躍起になるが、リコリスの姿を捉えられずに困惑する。あちこちで輝く光の粒子は索敵の邪魔でしかないし、これだけ広範囲に散った光のどれを見詰めればいいのか確信する事ができないからだ。実際には、リコリスの跳んだ軌跡に光の粒子が撒き散らされているため、索敵をするのであれば輝く光ではなく、その先にある暗闇を……リコリスの進路方向を予測して、先回りして望遠鏡を覗きこまねばならない。しかし、望遠鏡とは元々、光っている星々を見るための道具だ。何も無い暗闇よりも、目を惹く輝きへとレンズは右往左往してしまい、中々リコリスの姿を捉えることができない。

 夜の闇を、イルミネーションのような輝きが道筋をつけていく。
 上を見上げれば、それに負けないくらいの星々が輝いている。
 その空を、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は『御伽噺のような素敵な星空』だと思った。同時に、この光景は戦闘には相応しくない、とも。
 元々は長閑な、心落ち着く国である。神経を悩ませるような騒音も無く、空気は綺麗に澄んでいる。星々は瞬いて観測者に語り掛けてくるかのよう。見渡す限りに人工の灯りは殆ど無いため、天蓋に存在する星の全てを数える事だって出来そうなほどだ。
 だが、トリテレイアは騎士である。そうであるよう己自身に任じ、騎士として振る舞う彼にとって、この国を守る為に戦うことは……アリスラビリンスを守る為に戦いに身を投じることは、当然の事であった。

 複数の光源が、新たに出現した。それを捕捉しようとしたオウガバニーの一人は、強烈な光に視覚を奪われる。まさか先ほどの強烈に過ぎる太陽光が再び生じたのかと数名が身を強張らせるが、実際はそうでは無い。その正体は、トリテレイアが遠隔で起動させた複数の投光器だ。リコリスが通過地点に置いた星のような輝きとは違い、投光器の光には明確な指向性がある。リコリスの擾乱が『どれを見たらいいのか判らない』という目的で拡散された光源だとすれば、トリテレイアのそれは『これを見ようとした相手の視界を幻惑する』という目的で設置されている。
 だが、いかに強力な投光器であるといえど、その光には物理的な攻撃能力は無い。
 苛立ったオウガバニーが、憤懣をぶつけるように望遠鏡を覗きこむ。眩さに視界が白く染められるが、オウガバニーは怒りの感情のままに拳を叩きつける。距離を無視した打撃が、各所に設置した投光器を破砕した。

 その様子を、トリテレイアは冷静に観測していた。
 ―――この戦場は、ある意味において攻城戦のようなものだ。敵が立てこもる防御陣地を如何にして攻略するかという戦術上の問題を、猟兵たちは各々の方法論で実行している。ある者は隠れて潜入し、ある者は長距離から防御不能の攻撃を行った。別の者は上空からの強襲を、そして今、別の猟兵が敵を撹乱しながら敵へ接近を続けている。
 では、トリテレイアの目論見は何処に存在するのか。彼にとって投光器が破壊されるのは織り込み済み。真の目的は別にある。

 不思議な望遠鏡の能力は、極論すれば『誰でも狙撃兵になれる』能力だ。
 ならば、それを排除する手法も同様である。トリテレイアの探知能力は、塔から身を乗り出すようにして拳撃を繰り出したオウガバニーの姿を捉えている。望遠鏡のレンズの反射も、星灯りで薄い影のように映るオウガバニーの姿も。そして、位置を晒した狙撃兵の末路は決まっている。
 塔を囲むように展開された妖精ロボが、トリテレイアの操作によって内蔵レーザーによる射撃を開始する。その照準は無慈悲なほどに正確だ。迎撃しようとレンズを覗き込んでも、先に妖精ロボのレーザーが撃ち込まれる。オウガバニーは広い大地から点のような標的を見つけ出さねばならず、対するトリテレイアは自身のセンサーと複数箇所に展開した妖精ロボの観測情報を統合、瞬時に射撃を行うことができる。オウガバニーが反撃をしようにも、あちこちに隠れ潜んだ妖精ロボを一体ずつ潰していくには困難に過ぎた。やがて、バニーたちは遮蔽に身を隠し、全周囲から撃ち込まれるレーザーを警戒して伏せざるを得なくなる。

 そして、終には戦いの趨勢が決する。
 接近を続けていたリコリスが塔へと到着。瓦解しかけるオウガバニーたちへと、拳での戦いを挑む。
「あたしだって、パンチは得意なんですから、負けませんよ!」
 可憐な見た目からは想像もつかないほどに、リコリスのパンチがオウガバニーへと炸裂する。同じ土俵ならば、とオウガバニーも拳を振りかざすが、その呼吸を見切られて綺麗なカウンターが鳩尾に突き刺さる。絶息したところに、リコリスのパンチが顎先へとクリーンヒット。オウガバニーは一瞬で昏倒して床に転がった。囲んで殴ってしまえとバニーたちが数に任せて集まるが、一対多のハンデをものともせずにリコリスは立ち回る。得意なダンスを活かしたフットワークは、くるくると回転するようにバニーたちの拳を回避し、隙を突いてカウンターパンチを決めていく。
 塔の外への監視が緩んだのを察したトリテレイアが機械馬で乗り込めば、もはやオウガバニーたちは組織的な抵抗を行う力は残されていなかった。
 あとは、もはやオウガバニーが各個撃破されていくのみ。リコリスのパンチが、トリテレイアの機械馬による蹂躙が、彼女たちを吹き飛ばし、排除していく。

 やがて、『覗いた星空を奪う望遠鏡のある国』に静寂が訪れた。残されたのは、変わらずに輝き続ける星々のみ。一つの塔を巡って繰り広げられた戦いは、此処で終結したのであった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2020年08月03日
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵