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迷宮災厄戦⑦〜ククク。狩人たちよ、共に円舞曲を踊ろうか

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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「あはははっ! 限りない力が湧いてくるわ!」
 書架と書架が交叉し、書物と紙片が無限に積み重なる白の迷宮の中で、月の紋章が刻まれた書籍を手に、純白の少女が高らかに笑い声を上げていた。
「この“封印されし月の瞳《シークレット・ルナ・アイズ》”の力があれば最早怖いものはないわね。ふふ……むしろ、力が暴走しないように気をつけないといけないかしら」
 喉を鳴らすように上機嫌に笑った女が、書籍を持っていない方の、獣の爪の如く変化させた手を振るえば、周囲に積み上がった書籍が切り刻まれ、紙吹雪が吹き荒れる。
「ふふ、来れるものなら来なさい、猟兵《イェーガー》たち。この私……残酷なる月夜の狩猟者たる“白のアリス《アリーチェ・ビアンカ》”が、真に狩る者がどちらなのかを教えてあげるわ?」


「くくく……よく来たね、闇夜を照らす光――猟兵《イェーガー》って呼んだ方がいいのかな」
 前髪によって隠れた己の左目を手で覆うようなポーズを取った、ウェンディ・ロックビルが猟兵たちを出迎える。
「僕のこの左目が新たな予知を得たよ。残酷なる童話の大迷宮《アリスラビリンス》にて勃発した戦争……君達にはその戦場に赴いてもらうことになるね」
 戦いの地は“世界征服大図書館”。世界征服に関する古今東西あらゆる知識が集められた巨大な図書館の国だ。
「彼の地にて君たちが相見えるのは、アリーチェ・ビアンカ――白のアリスという意味の名前を持ったオウガだね。名前の通り、元々はあの世界に拉致された無垢なる乙女《アリス》の1人だったようだけれど、月の魔力に侵されて、痛ましき闇の徒《オウガ》へと変じてしまったみたいだ」
 そして、大図書館に現れた彼女は、図書館の蔵書――世界征服に関するノウハウが詰め込まれた本の力を得たことによって、強大なパワーアップを経ている。
「中でも彼女に特に影響を与えているのが、彼女が大事そうに片手で抱える“無慈悲なる女帝の宴《ルナテイック・ファンタズム》”という書物のようだ」
 その書物は、月に秘められた魔力を世界征服に活用する方法が書かれている他、読んだ者に月の加護を与えるらしい。
「その月の加護というのは、精神に作用する力のようで、自分の力に過剰なまでの自信がつく他、どこか酩酊したような、仰々しい口調に――つまりはねっ、思春期のコみたいな喋り方になっちゃうみたい!」
 それまでずっと左目に添えていた手を下ろすと、からっと笑って見せるウェンディ。
「はたから見るとちょっとお芝居みたいに見えるかもしれないけど、その力はホンモノだぜっ! なので、みんなも対抗するために、“正義の書”の力を借りるのがよさそうだねぇ」
 敵を知り己を知れば――というやつなのだろうか、世界征服大図書館には、正義の味方の在り方について書かれた書籍も存在しているようだ。
 正義の書に書かれている正義の味方の在り方は様々だ。【女性を殴らない】【罪を憎んで人を憎まず】といった心情から、【高いところから爆発付きで現れる】といった登場の仕方まで、様々なものが書かれており、どれを行ったとしても一定の能力向上が見込めるだろう。
「だが――やはり、毒を以て毒を制す《ファイト・ファイア・ウィズ・ファイア》だ。こう言った口調や行動を意識するのも――きっと有効だと思うぜっ」
 とはいえ、戦い方は人それぞれだ。己が一番力を発揮できそうな戦い方で臨んで欲しいとウェンディはいう。
「それじゃ、みんな。気をつけていってらっしゃい!」


月光盗夜
 ククク……我は月明かりを頼りに狩人たちを導く夜の書き手……嘘ですごめんなさいいつもお世話になっております!月光盗夜です!
 アリスラビリンスにて戦争が始まりましたね。私の方でも戦争依頼を用意させていただきました。一章構成のシンプルなボス戦依頼となりますが、戦場の影響で下記のオプションルールが存在しています。ご覧ください。

●戦場ルール
 本戦場では、【「正義の味方」っぽい行動をする】ことで、プレイングボーナスを得ることができます。
 また、本シナリオにおける追加ルールとして、その中でも特に「いわゆる“厨二病”っぽい言動・行動をする」ことで強いボーナスを得ることができると裁定させていただきます。
 ただし、厨二病っぽい言動を取らなければペナルティがかかるというようなことは一切ございませんのでご安心ください。
 なお、厨二病ルールを使用する場合でも、オープニングに頻出しているようなルビは皆さんのプレイングでは書いても書かなくても構いません。特にない場合はこちらで勝手に振ります。

●プレイングについて
◇募集期間
 募集期間に区切りはございません。オープニング公開から🔵達成まで、いつでもプレイングをお送りいただいて大丈夫です。
 ただし、戦争依頼は極力再送を出さないことを優先して執筆するため、無理なく執筆できる範囲での採用となるかと思いますので、その点ご了承ください。
◇略式記号
 アドリブ、連携描写などを多用する傾向にあります。
 アドリブは大丈夫だけど知らない人との連携描写は苦手だよ、という場合は「▲」を、アドリブも連携描写もなるべく少なめで、という場合は「×」を、【プレイング冒頭に】お書き添えください。
 なお、アドリブ連携大歓迎、という場合は「◎」を書いて頂いても構いませんが、そもそも記載のない場合は原則アドリブや連携多めになりますので、記載しなくても問題ありません。
◇合わせプレイングについて
 合わせプレイングをお送りいただく場合は、プレイング冒頭にお相手様の呼び方とIDを記載いただくか、もしくはグループ名を【】で囲っての記述をお願いいたします。
 なおなるべくタイミングを揃えて送信いただけると、迷子の危険性が減るかと思います。

 長々と失礼いたしました。それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『アリーチェ・ビアンカ』

POW   :    狂月招来(フルムーン・コネクト)
予め【獣の本能と己の狂気に身を任せる】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    狂気感染(パンデミック・ルナライト)
【あらゆる者を狂わせる月の光】を降らせる事で、戦場全体が【狂気に満ちた満月の下】と同じ環境に変化する。[狂気に満ちた満月の下]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ   :    狂光軍行進曲(ルナティック・マーチ)
【人狼化し、それぞれの武器】で武装した【自身が喰い殺した者達】の幽霊をレベル×5体乗せた【狼の幽霊の群れ】を召喚する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠リカルド・マスケラスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【執筆に関するご連絡】
現在MSの本業に急な環境の変化があったため、執筆時間が確保できず一旦皆様のプレイングをお返しさせていただきます。
折角の戦争シナリオで申し訳ございません。
今週末頃に改めて執筆できる範囲でお書きしてのお返しを予定しておりますので、もし改めて参加していただけるという方は、
【8/5(水)08:30〜8/6(木)23:59】までの間にプレイングを送信いただけますと幸いです。
セシリア・サヴェージ
暗黒騎士《ダークナイト》セシリア、罷り越しました。くっ……私の中の暗黒《ダークネス》が暴れるッ!
こ、こんな感じでしょうか?ちょっと恥ずかしいですね……。

正義の味方のスタイルも様々ですし、これもまた一つのヒーロー像なのでしょう。
私も民を護る者として正義の味方らしい振舞いと心意気を以って戦いましょう。

人狼の幽霊たちの攻撃を【武器受け】で防ぎながらオウガの元へ突き進みます。
攻撃を防ぎ切れずダメージを負ってもUC【血の代償】を利用して増強と回復を繰り返します。
やられても諦めず前に進み続ける。それこそが正義の味方ではないでしょうか。
必ずやオウガに暗黒剣を叩き込んでみせましょう。


井手・アルマ

……へえ、アタシ以外にもいたんだ。饗宴に招かれた役者達が
この漆黒の夜《シュヴァルツ・ナハト》に導かれたのね、いいじゃない

ならアタシの狂酩共鳴《サウンド・オブ・パワー》で宴を彩ってあげるわ
……っふふ、ついてこられるかしら、アタシの音に


※心情
っはーーーー厨二拗らせて戦うとかマジすか
いやアタシまだ卒業したとは言い切れないしそういうの好きだから余裕ですけどね!
まあいつものようにBGM盛り上げ担当行っときますか
てか正義の味方には処刑用BGM必須っしょ
んなのレパートリー余裕で揃ってるわイケるイケる
最後尾で†暗黒微笑†かましつつ守ってもらいながら歌いましょうかね!

P.S.やっぱ倒置法とドイツ語最強っすわ



「ふふ、この暗闇の時間の中で、私に敵う相手なんていないようね。……強者の悩み、というところかしら」
「いいえ、あなたの暴虐もここまでです!」
 全てを見下すかのように嘲笑うオブリビオン。だが、そんな彼女を見逃してはおかぬと、図書館に声を響かせて一人の女が現れる。
「暗黒騎士《ダークナイト》セシリア、罷り越しました。くっ……私の中の暗黒《ダークネス》が暴れるッ!」
 禍々しき黒き鎧に身を包んだ彼女の名はセシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)。闇の力に侵されながらも、世界に光をもたらす為に戦う漆黒の騎士である。
(ちょっと恥ずかしいですが……これもまた、正義の在り方のひとつなのでしょう)
 己の呪いをあえて誇張するように戦いに臨むことにどこか気恥ずかしさを覚えるも、小さな咳払いとともに気合を入れなおすと、両手剣を振りかざしアリーチェにむかって突進する。
「私に立ち向かうその勇気――蛮勇でなければいいけれど。さあ、哀れなる子兎《アリス》の残滓たち。彼女が私の前に立ちはだかるに相応しい者か、審判《ジャッジメント》を与えてあげなさい!」
 だが、その猛進をみすみす見逃す敵ではない。仰々しい身振りとともにオウガが書物を掲げれば、その表紙に刻まれた月の紋章が輝きを放ち、激昂に照らされて、狼に乗った人狼の戦士たちが召喚される。
 彼女たちは、アリーチェによって食い殺された被害者たちの亡霊。アリーチェによってその力の支配下に置かれ、人狼と化した彼女たちは、その数と亡霊がゆえの命知らずな攻勢によって、セシリアの進軍を妨げる。
「くっ……! 反撃に映る隙が……!」
「……へえ、アタシ以外にもいたんだ。饗宴《フェスト》に招かれた役者達が」
 攻撃を退けながら反撃の機を伺うセシリアに呼びかける声が一つ。声の方に視線をやれば、周囲での戦いなど気にも留めていないかのように、書架に背をもたれさせて本を――“正義の書”を読んでいた娘が一人。ぱたん、と書を閉じると、静かに笑みを浮かべる。
「この漆黒の夜《シュヴァルツ・ナハト》に導かれたのね、いいじゃない」
「あなたも猟兵……えー、っと……闇夜の狩人ですか」
 どこか照れを隠せない様子ながらも、それらしい問い方で尋ねるセシリアとは対照的に、妙に堂に入った大仰な仕草で答える娘。
「ええ、必要なようね、助力が。アタシの狂酩共鳴《ライデンシャフト・レゾナンツ》で宴を彩ってあげるわ」
 それもそのはず、彼女、井手・アルマ(Edi・f24587)はまだミドルティーン。そういった嗜好を比較的最近まで楽しんでいたし、ネットシンガーとして活動している都合もあり、サブカルチャーと接する機会は多い。
(っはぁ――、厨二拗らせて戦うとかマジすか)
 とはいえ、流石に少し恥ずかしく思う気持ちもないではないが、そこはそれ。お気に入りのマイクを手に取ると、スピーカー上のサウンドウエポンが彼女の周囲を浮遊し、熱く激しいビートを刻む。
「……っふふ、ついてこられるかしら、アタシの音《ムジク》に!」
(やるなら全力で。――てか正義の味方には処刑用BGM必須っしょ!)
 そして、挑発的なメッセージと共に、燃え上がるような旋律に乗せて、アルマのコーラスが響き始めた。
「これは確かに……力が湧いてきますね!」
 情熱的なその歌声は、亡霊の群れの中で剣を振るう騎士に勇気を与え、正義の所から引き出される魔力とともにセシリアを強化する。
「このような歌を奏でられては、負けてはいられません。この血の代償は、高くつきますよ!」
 勇気づけられた正義の心で、暗黒騎士もまた己のユーベルコードを発動する。暗黒のオーラによって、己の受けた負傷に応じて戦闘能力を強化する力。忌むべき呪いの力をもって、彼女は敵へと立ち向かっていく。その姿は、まさしく英雄めいていた。
(さあ、ここが盛り上げどころってもんっしょ!)
 佳境を迎える伴奏に乗せて響くアルマの流麗な歌声を背中に感じながら、傷を受ける度その力を増すセシリアは強引に亡霊たちを退け、アリーチェ・ビアンカに肉薄する。
「くっ――そんなに傷だらけになりながら! とんだ狂戦士《ベルセルク》ね……!」
「この呪われた力をもって……お前を、倒す!」
 煌々と紅き瞳を輝かせるセシリアの振るった、長大なる剣、暗黒剣ダークスレイヤーの一閃が、アリーチェを大きく切り裂いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フェルト・フィルファーデン
◎シア様(f04820)と

(来る前にシア様から中二病とは何かを教わってきて)
あ、ああいう感じで戦えばいいのよね……?それじゃあ……こほん。


さあ!わたしに続きなさい、神速の言の葉紡ぐ魔導極めし絆の騎士《アブソリュートチェイン・フェアリア》よ!!
フィルファーデンの姫が命じる。この月に魅せられた悪しき餓狼を正義の名の下に成敗なさい!
……ちょ、ちょっと芝居がかりすぎてないかしら……!?(割と恥ずかしい)


ともかく!え、ええと、絶対不変の炎の城砦(炎の壁出すUC中二版)の力を見るがいい!!
シア様を最前線で守りぬくわ。わたしの騎士に指一本たりとも触れさせはしない!通りたくばこの鉄壁の守護、打ち砕いてみせよ!


浅葱・シアラ
◎フェルト(f01031)と共に
(戦闘前にたっぷり中二病について語りました
今のフェルトはどこに出しても恥ずかしくない中二病姫!)

勿論ですよ、我が姫
黄金放つ鉄壁の人形姫(シャイニング・ガーディアン・ドール・プリンセス)!

その命に従い、この言の葉にて悪しき餓狼は打ち果たす!
この月は、正義の黄金の輝きに染まる!

いいのです、これくらい大仰で!

自然に集う精霊達よ、私の言の葉に集え!
雷の精霊は雨粒に恋をした
2つの属性と事情は1つとなって逃げ惑う狼を捉え、打ち砕く!
(UCエレメンタル・ファンタジアにより、【雷属性】と【豪雨】を合わせて雷の雨を発動
高速詠唱ですぐに魔法は完成してるけどわざわざ詠唱を長めにする)



「くっ……。暗黒剣、恐るべき力ね。私の哀れな子兎《アリス》たちが随分と消耗させられてしまったわ、体勢を立て直さなければ……」
 暗黒騎士によって与えられた傷を庇うようにしながら図書館の中を駆けるアリーチェ・ビアンカ。そんな彼女の姿を観察しながら、書架の本と本の隙間に隠れてひそひそと言葉を交わす妖精が二人。
「ねえ、シア様。あれを本当にやらなければいけないのかしら……」
「ええ、なにせそれによって私たちの力が増すのですから! 大丈夫、フェルトならできますよ!」
 正義の書による戦力増強を大義名分として友人をせっつく浅葱・シアラ(幸せの蝶々・f04820)と、それに対してもじもじと煮え切らない態度のフェルト・フィルファーデン(糸遣いの煌燿戦姫・f01031)だ。★
「作戦会議を思い出せば大丈夫です! 頑張ってください、フェルト!」
「あ、ああいう感じで戦えばいいのよね……? それじゃあ……こほん」
 出撃の前の短い時間を縫って、二人はグリモアベースの片隅で作戦会議を行っていた。会議という名のシアラによるレクチャーをたっぷり詰め込まれたフェルトは、どこに出しても恥ずかしくない中二病姫……だったはずなのだが、恥ずかしがり屋な本人の気質ばかりはどうしようもなかったようである。
 だが、親友の声援を受けて意を決したように、黄金の妖精姫は書架を飛び出し、オウガの前に立ちふさがる。
「さあ! わたしに続きなさい、神速の言の葉紡ぐ魔導極めし絆の騎士《アブソリュートチェイン・フェアリア》よ!!」
「勿論ですよ、我が姫! 黄金放つ鉄壁の人形姫《シャイニング・ガーディアン・ドール・プリンセス》!」
 色白の頬を僅かに紅潮させながら、しかし勇ましく告げる姫君の背中を守るように、自身に満ち溢れた笑みを浮かべて蒼の妖精騎士が追随する。ちなみにこの二つ名はグリモアベースでじっくり相談して決めた自信作であった。
「勇ましい妖精さんたちね! ……なんだかとっても、おいしそう! 私の子兎《アリス》たちとも仲良くなれそう!」
「……っ! フィルファーデンの姫が命じる。この月に魅せられた悪しき餓狼を正義の名の下に成敗なさい!」
「その命に従い、この言の葉にて悪しき餓狼は打ち果たす! この月は、正義の黄金の輝きに染まる!」
 幼さの残る顔に、舌なめずりせんばかりの狂的な笑みを浮かべるアリーチェに僅かに息を呑むも、意を決したように指さして友たる騎士に命じる姫君。引き抜いた剣に魔力を纏わせながら、凛々しい顔で騎士は頷く。二人のキメ台詞が図書館に響いた。
「……ちょ、ちょっと芝居がかりすぎてないかしら……!?」
「いいのです、これくらい大仰で!」
 どうにも恥ずかしさが漏れ出てしまうフェルトに対し、随分堂に入った様子のシアラ。本人の茶目っ気などの気質もあるが、経験が活かされているのかもしれない。なぜなら彼女は、常日頃から、理想の女騎士になりきっているようなものだから。
「あははっ、元気な妖精さんたち、私の子兎たちと遊んであげてくださいな!」
 名乗りをあげた二人を敵手と認識したか、オブリビオンは再び召喚した狼騎士たちを妖精たちに向かって殺到させる。小柄な妖精たちにとっては、一人一人が恐るべき強敵。だが、その邪悪な刃が彼女たちに届くことはない。
「え、ええと……絶対不変の炎の城砦の力を見るがいい!!」
 フェルトの操る炎の壁が、亡霊たちの前に立ちふさがったのである。恥じらいながらも大仰な演技をした甲斐あってか、正義の書の齎す力によって増強された炎の壁は、一人たりとも亡霊の突破を許さない。それどころか、攻勢防壁となって徐々に敵を退けていた。
「わたしの騎士に指一本たりとも触れさせはしない! 通りたくばこの鉄壁の守護、打ち砕いてみせよ!」
 大仰な台詞にも慣れてきたか、あるいはそれが本心だからか、流暢にキメ台詞を告げるフェルト。そして、その陰では、彼女によって守られていた魔法騎士の大魔術がいよいよ完成しようとしていた。
「自然に集う精霊達よ、私の言の葉に集え! 雷の精霊は雨粒に恋をした。2つの属性と事象は1つとなって逃げ惑う狼を捉え、打ち砕く!」
 雷属性の魔力を豪雨の魔術に乗せて解き放つ魔術。本来、高度な詠唱術を身に着けたシアラであれば、無詠唱同然の高速発動も可能ではあるが、今日に限っては長く詩的な詠唱を行っている。
 なぜならば――カッコいいからだ!
 詠唱のカッコよさは、正義の書から大量の加護を引き出すことを可能とした。シアラ自身も扱ったことがないほどの強大な魔力が彼女の元に流れ込んでいく。
「――エレメンタル・ファンタジア!」
 最大まで練り上げられた魔力が、暴風となって狼たちを蹂躙した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

田中・助六
っふ、この私が今宵この場に参戦したのならば、勝利は必定である!(何か高い棒の上に立っている)

敵は動きが直線的のようだ、であれば我が渾身の一撃たる『虚神王大撃(グラウンドクラッシャー、漢字はこの場で思いついた)』
によって粉砕せしめるだろう。
マントを翻し、颯爽と敵の攻撃を回避し、返す刃で渾身の一撃を決め、颯爽と振り返らずに去るのだ

そう、奴こそは、奴こそは我が親の仇に違いあるまい(人違いです)
アレはそう、覚えてないけど多分雨か晴れの日、多分目があって口があって鼻があったと思うオブリビオンによって両親が殺されたはずの日、忘れはしない!!
(尚この人は特別ルールを意識せずこれが普段のノリです)




「はあ、はあ……なんという魔力なの……。私も封印されし月の瞳《シークレット・ルナ・アイズ》からもっと力を引き出さなければ……もっと、もっと!」
「我が同胞たちによって、随分と傷を負ったようだが……流石は我が仇敵、この程度で倒れはしないか!」
 召喚した亡霊たちを纏めて吹き飛ばされながらも、なんとか自身のダメージは最小限に抑えたアリーチェは、書架と書架の陰に隠れながら必死に力を練っていた。だが、そんな彼女に上空から響く声がかけられる。
「っふ。だが、この私が今宵この場に参戦したのならば、勝利は必定である!」
 黒いベスト、黒いズボン、黒い手袋、極めつけの――黒いマント!
 全身を黒で染め上げたこの男は、田中・助六(雰囲気で復讐者をやっている・f18323)。オブリビオンへの復讐を誓う孤高の戦士である。雰囲気で復讐者をやっている。
「何をいきなり現れて訳の分からないことを……!」
「ふっ、言葉は不要……! 我が剣……いや斧で引導を渡してくれる!」
 傷と、そして突然現れて身に覚えのないことを言う助六の雰囲気にのまれたか、魔導書の力を引き出すための仰々しい口調が僅かに崩れるアリーチェ。だが、相手が調子を崩そうとも、常時この様子の助六は揺らぐことはない。書架の上から勢いよく飛び降り、斧が得物を持つ右手を掲げながら、残る片手と両足で三点着地。これぞヒーローにのみ許された着地法。
「狂月招来《フルムーン・コネクト》ォォォォォォォォォ!」
 大事に抱えていた魔導書を放り投げるオウガ。だが、もう十分に力は蓄積していたのだろう。満月の狂気に身を任せることで、彼女は恐るべき力を身に着ける。
「甘い……! 虚神王大撃《グラウンドクラッシャー》!!」
 だが、一事が万事このテンションの助六は、正義の書による加護を最大限に引き受けている。狂気のせいで直線的な動きを強いられる敵の攻撃を見切り、マントを翻しながらダイナミックにかわすと、返す刃で渾身の一撃を叩きつけた。

「ぐっ……!」
「さらばだ……。我が仇敵よ」
 悲し気な顔で、砕けた地に伏すアリーチェに別れを告げると、助六は振り返らずにその場を去っていく。
(復讐も、果たしてしまえば虚しいものだ……)
 そう、彼女こそは助六の仇敵。おそらく雨か晴れか曇りか雪の日に、彼の親の命を奪ったはずの仇敵なのだ。だが、復讐を遂げたことで過去に別れを告げ、助六はその場を去っていく。それは正に、英雄の背中であった。

 ――完全に人違いだということと。
「……まだ。まだよ…………!」
 アリーチェ・ビアンカがまだ健在だということを除けば。

成功 🔵​🔵​🔴​

夢幻・天魔
【厨二であれば何でも良いのでご自由にどうぞ】
※天魔の設定は全部妄言です

“無慈悲なる女帝の宴《ルナテイック・ファンタズム》”は焚書されたはずだが……
この図書館の力で虚無より蘇ったか
そして“封印されし月の瞳《シークレット・ルナ・アイズ》”の使い手となれば、この俺も聖騎士の力の封印を解く必要がありそうだな
(『異世界での最強にして無敵なる伝説的な俺』を発動し、異世界にて魔王を討伐した白銀の聖騎士の姿となる)

ククク……闇の徒よ
聖天使より授けられたこの聖剣『シャイニングスターセイバー』の前に消えろ!
必殺! 『※なんか格好いい技名をお願いします』!!

フッ、この世界に俺がいる限り、闇の存在は許されない……



「ぐるる……負けて逃げるのは癪だけれど、とにかく今は……!?」
「フッ……。見どころのある男だが、詰めが甘いな」
 命からがら生き延びたアリーチェが、始めの余裕は何処へやら、這う這うの体で猟兵たちに見つからないように逃げ出そうとする。だが、その背中に呼びかける男がいた。
「だが、我が魔眼の前では逃げ切ることはできない。今日が貴様の命日となる!」
 ぐるぐると包帯を巻いた腕で片目を覆った夢幻・天魔(千の設定を持つ男・f00720)である。なお、特に彼の目が特殊な力を持っているということはない。
「しかしこれだけ追い詰められてなお、強大な力を残しているとは……。流石は焚書されたはずの無慈悲なる女帝の宴《ルナテイック・ファンタズム》の力を身に着けているだけのことはある」
 彼にとって、この“正義の書”との相性は完璧であった。常に己の考えた最強の自分の設定を生み出し続ける天魔は、息を吸うようにパワーアップしていくのである。
「お前を倒せば私は無限の円環へと至る……!」
「貴様を相手にする以上、この俺も聖騎士の力の封印を解こう!」
 なけなしの意地を振り絞り、最後の力で自己強化を行うアリーチェに対して、天魔もまた、ユーベルコードを解放する。瞬時に彼の全身を覆う白銀の鎧。これこそは、かつて異世界で“赤髪の自由騎士”として名を馳せた彼の最強装備――という妄想より生み出された武具である。
 だが、齢20を迎えて今なお厨二病真っ盛りの彼の壮大なる妄想力は、非常に堅固な妄想強度を持つ。彼が自分の設定に揺らぎを感じない限り、彼は本当に聖騎士なのだ。
「ククク……闇の徒よ。聖天使より授けられたこの聖剣『シャイニングスターセイバー』の前に消えろ!」
 以前は究極神剣『リヒト・ドゥンケルハイト』と呼んでいた過去もある愛剣を抜き放つと、大上段に剣を構える。
「必殺! 『永光無限斬《シャイニング・グロリアス・ストラッシュ》』!!」
 迸る光の帯を纏った聖剣が、その剣圧故に刀身が伸びたかとすら錯覚させる鮮烈さで振り下ろされる。正義の書の力をたっぷりと蓄えた一撃は、オブリビオンにトドメを刺すには十分であった。
「そんな……月の力を得た私が……一人も食べられないまま負ける、なんて……」
「フッ、この世界に俺がいる限り、闇の存在は許されない……」
 恐るべき力を持った強敵が、ついに消滅したのを確認すると、天魔はゆっくりとその場を後にするのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月09日


挿絵イラスト