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迷宮災厄戦②〜A:Preflop

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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●アリスラビリンス・砕かれた書架牢獄
「やれやれ。相変わらず『オリジン』はよく食べるよなぁ……ほらそこ、休まない。働かざるもの食うべからず。僕もお腹空いてるんだから、頑張っておくれよ」
 無数の本が転がる上を、無数のオウガが動き回る。それらを指揮するのは、シルクハットを被った年端もゆかぬ少年。
『アルフレッド様ァ! アンダーザガン、猟兵共の猛攻を凌げません!』
『アル君、カットオフもヤバいわよぉ』
「ビッグブラインドはザガンの援護に行って。カットオフはおびき寄せながらミドルと合流して何とかしてみて。ボタンだけで儀式を進めよう。……猟兵に加え、猟書家も暴れるものだから、『アリス』を喚ぶのも大変になったなぁ」
 混迷を極める図書館の中、シルクハットの少年は二冊の本を投げ捨て、大きなため息をついた。

●グリモアベース
「こんだけ集まりゃ充分だな。俺の視た予知を言うぜ。あんたらも視た、バシバシ予兆飛ばして来やがったアリスラビリンスのヤマだ」
 真っ赤なエプロンドレスのグリモア猟兵、カグラ・ルーラー(バスバリス・f21754)は、腕組みをしたまま語り始めた。
「俺にグリモアの力が付いて以来、最も面倒なドンパチが始まった。ただ、フォーミュラをボコる以上、こないだのチェスじゃねェが『序盤は本のように』フォーミュラへの道を開けとくべきと睨み、『迷宮のような図書館』の国のオウガ共で予知したぜ」
 カグラのグリモアの映像では、言葉通りの図書館で、多数のオウガと猟兵が衝突していた。
「そこじゃ、『アリス』を大量に召喚する儀式をやってる。道は開く、『アリス』の召喚は防げる、定石みてェな喧嘩さ。ただ、そこは見ての通り大乱戦状態だ。だから、どうにかして乱戦を回避して奴らのワンマン大将を潰してくれ。シルクハットのガキがそれだ」
 カグラはグリモアにシルクハットの少年を映し出す。彼――アルフレッドは儀式の進行に戦陣の指揮と、外見年齢不相応な働きを見せていた。
「奴さえボコりゃ儀式も戦陣も崩れるはずさ。よそから人間持ってきて餌にするアレな世界だが、俺の始まりの世界なんだ。こっから先、どういう盤面になるか判らねェけど、今はこの世界のメーデーに賭けてくれ。頼んだぜ」
 カグラのグリモアが空間にテレポートのゲートをこじ開けると、猟兵達は身体をその中にベットしていく。


鷹橋高希
 2020年8月の戦争イベント「迷宮災厄戦(ラビリンス・オウガ・ウォー)」の戦争シナリオで、全一章となります。
 オープニングが承認され次第、プレイングを受け付けます。
 最序盤戦、まずはオウガ・オリジンへの最短ルートへ、オウガブラッドのカグラがご案内します。

 このシナリオには、下記の特別な「プレイングボーナス」があります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……オウガの群れを潜り抜け、司令官に素早く接近する。

 それでは、よろしくお願い致します。
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第1章 ボス戦 『11番街の帽子屋・アルフレッド』

POW   :    ハット・トリック:イレヴン・フィールド・ノヴァ
【シルクハットから撃ち出した蒼色の火球】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を11時を指した食人花の花時計に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    ハット・トリック:セヴン・シルヴァー・ウルヴズ
【シルクハット】から【7体の銀色に光る狼のエネルギー体】を放ち、【噛み付いて組み伏せること】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    ハット・トリック:グリーン・インフェルノ・ネード
【シルクハットから翠色の業火の竜巻】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠カグラ・ルーラーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

小鳥遊・木蔭
禍災・火継(f28074)と出る

鎖を地形や構造物、障害物に突き刺して自分を振り回して飛ぶぜ。
同行してる火継も鎖で捕まえて引っ張って連れていく。
んで、大将をみつけたら火継をブン投げる!

そのあとはオレは同じように飛び回りながら鎖で邪魔なのの動きを止めるぜ
魔法少女らしく、空中戦とシャレ込もうじゃねぇか!


禍災・火継
小鳥遊・木蔭(f28585)についていくわ

最初のうちは木蔭に任せましょう。アレのことはそれなりに信頼しているし、うまくやってくれるでしょ。
というわけで最初は木蔭にひかれて飛ぶことになるわね。よく周囲を見渡して、あぁ、神器を展開して準備だけはしておきましょう。

投げられたら、その勢いを利用して突っ込んで大暴れと行きましょうか。
細かいことは木蔭がやってくれるだろうから、好きにやらせてもらうわね



●One pair, girls
 本や本棚が砕けて散らばる不思議の国に、二人の少女が降り立った。一人は髑髏とチェーンをあしらった意匠の服に身を包む銀髪の魔法少女――小鳥遊・木蔭(楔の魔法少女・f28585)。その傍らには、セーラー服にパーカーを纏い身の丈ほどの神剣を携える黒髪の少女――禍災・火継(残響音・f28074)。
「じゃあ行くぜ。しっかり掴まってろよ、火継!」
木蔭はユーベルコード「Gatling chain」で、手から金属の鎖を放つと、鎖の先のアンカーを図書館の天井に撃ち込む。鎖に身体を引き寄せさせ、ブーツが地面を蹴ると木蔭は宙へ。もう片方の手からも鎖を十数本放つと、それは火継の身体に巻き付いた。火継は表情一つ変えず鎖に引かれ、ガラスの靴――彼女が携える神剣型の神器と共に宙を舞う。
「任せたよ」
木蔭は地形やオウガの群れを見極めながら、天井、壁、本棚と次々に鎖を放ち、自身を振り回して飛んでいく。火継も周囲を見渡して、神器を展開し、自身が振り回される分での障害物を対処しつつ、二人は「アリス」の召喚儀式場を目指す。

「――見つけた。さっきの男の子、あそこ」
火継の視線の先には、本棚を倒して創り出したような開けた空間と、そこに集うオウガ、そしてシルクハットの少年――アルフレッドの姿。
「だな。確かにあいつが大将だ。じゃあ――」
木蔭は一際大きく火継を振り、
「――行ってこい!」
火継を儀式場に投げ放った。木蔭の怪力によるその速度は凄まじく、人間の少女が無事に着地できる領域を遥かに超えている。だが、これは彼女達の信頼関係が為せる業だ。
「私は、怪物」
火継は一言呟くと――「これが私の本性である」から――獣の爪の様にガラスの靴を腕に融合させ、さらに速度を上げてアルフレッドに爪を立てにいった。
「うわっ! 何だ!?」
燕尾服のボタンをちぎられつつも、アルフレッドは飛び退く。周囲のオウガは気付く間もなく火継の爪で薙ぎ払われ、本を、本棚を汚していく。怪物と化した火継の目――左目、右目、ガラスの靴の目が再びアルフレッドを捉えると、ガラスの靴の爪先は彼に伸びていく。
「猟兵め……大人しくしてろよっ!」
語気を荒げたアルフレッドは、シルクハットから銀色に光る狼のエネルギー体を放つが、振るわれて剥離したガラスの靴は、火継に至る前に全ての狼を切り裂き、高速で迫る火継のガラスの靴は、アルフレッドの燕尾服を彼の腹部の肉ごと薙ぎ飛ばした。

「ぐっ……調子に乗るなっ!」
腹部を切り裂かれ、口の端から血を流すアルフレッドは、シルクハットから翠色の業火の竜巻を放とうとする。翠色の業火が溢れ出そうとしたその時、シルクハットに鎖が巻き付き、絞り潰した。続け様に彼の手と首にも鎖が巻き付き、シルクハットを取り落としたアルフレッドは身体を宙に引き上げられていく。
「頭上がお留守だぜ大将。大切な帽子が台無しじゃねぇか」
アルフレッドが視線を向けた先には、もう一人の猟兵、木蔭の姿。木蔭から伸びる鎖は、宙で彼女の身体を支え、アルフレッドを捕らえ、さらには地上のオウガを――火継に手出しさせないために――撃ち倒していた。
「そう、大切な帽子だよ。だから置いてきたんだ。君を火炙りにするためにね」
アルフレッドがニヤリと笑うと、鎖に絞り潰されているのも構わず、翠色の業火が溢れ出した。業火は竜巻状に燃え上がり、地上の本や本棚を呑み込み燃え広がる。木蔭が視線を落とすと、火継でさえ竜巻から逃げるしかないようだった。
「いいや、君だけじゃない。さっきの彼女も、何もかもを焼き尽くす!」
「つまり地上の火事を消し止めろってことだな。だったら魔法少女らしく、空中戦とシャレ込もうじゃねぇか!」
木蔭は鎖を放っては乗り換えて、巧みに業火を避けつつシルクハットへと近付いていく。ある程度まで距離を詰めたところで、木蔭は使えうるありったけ――百数十本の鎖を束ね、シルクハットに撃ち込んだ。業火が溢れる隙間すらなく埋め尽くされたシルクハットは沈黙し、翠色の業火は鎮火した。
「もう一発やってやれ、火継!」
木蔭はアルフレッドを捕縛したまま地上に降ろし、火継にもう一度斬り付けさせてから投げ飛ばす。アルフレッドは本棚に衝突して、倒れてきた本と本棚の中に消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

烏丸・都留
SPD アドリブ共闘OK

UCで全装備は機動力76倍、攻撃回数9倍、自身と味方攻撃時に治癒効果有

「物量なら負けないわよ……」

偵察型部隊(クラスタードデコイ/リレイ、ガードユニット:175機で8人の猟兵に擬態)を500個部隊4000人で全周囲から擬態して陽動

隠密型部隊(ステルスアサルトユニットγ、クラスタードデコイ/リレイ:166機)を6mmサイズで500個部隊を1/5000縮小召喚、凡ゆるモノに擬態し内8000機が暗殺行動

予備部隊として各700個待機


何もデコイは陽動、リレイは全装備効果範囲延長
自身は隠蔽状態CIC内で超遠隔から全装備管理運用、予備部隊を即時配置転換可

アリスは待機中隠密部隊で救出。



●Power play
 迷宮のような図書館の国では、オウガの大軍団が、オウガ・オリジンの空腹を満たすため、他の世界から大量の「アリス」を召喚する儀式を行なっており、早ければ今月の半ばにも儀式は成功してしまう。儀式の阻止、あるいは遅延のために多数の猟兵が押し寄せるこの国が乱戦になるのは必然だった。
「確かに大乱戦ね……」
隠蔽状態のCIC――戦闘指揮所でモニターや計器類を眺めながら呟いたのは烏丸・都留(ヤドリガミの傭兵メディック・f12904)。
「でも、物量なら負けないわよ……。偵察型部隊は陽動を、隠密型部隊は敵司令官の暗殺を。総員戦闘配備……『上天の威。黒天の武。我らが敵にその威武を示したまえ』」
都留の進軍発令――ユーベルコード「雷冥威武」を受け、乱戦状態の戦場に、さらに――都留の戦略生体型武装の擬態による――4000人もの猟兵が全周囲から陽動攻撃を開始した。彼らは通常時の76倍の機動力と9倍の攻撃回数、さらには味方と認識する対象へは回復効果となる雷光攻撃を湛えており、陽動と呼ぶには暴力的なまでの物量作戦は、乱戦のパワーバランスを一気に押し込んだ。その隙に乗じて、極小サイズであらゆるものに擬態が可能な隠密型兵器が進軍し、8000機もの戦略生体型武装が乱戦状態のオウガを次々と暗殺し、そのオウガに擬態しアルフレッドに殺到する。
「いいところに来た。ちょうどさっき、迷い込んだ『アリス』が居てね。今の休憩班は、おやつの時間にしていいよ」
彼を囲むのは、全て都留の指揮下にある、オウガに擬態した戦略生体型武装。「アリス」は救出対象であるため丁重に案内し、残された擬態オウガはアルフレッドに総攻撃を仕掛ける。
「ぐはっ!? お前達、何の真似だ!?」
アルフレッドは反撃するが、彼自身と彼の召喚儀式は圧倒的物量により疲弊させられることとなった。

成功 🔵​🔵​🔴​

珠沙・焦香
・えげつない乱戦だなー。おれのできる対応策ッつったら……脚で突破するしかねえか!【ダッシュ】してオウガの群れの間を抜けて、でかいのが通り道を塞いでくるなら【クライミング】で乗り越え、ダッシュで逃げてやり過ごすぜ。

・首領の所に切り込んだらUC【苦怨煙捨】発動。UC効果の高速移動と【ダッシュ】を組み合わせてとにかく速度で翻弄し、隙見て呪いやら斬撃をブチ込む。ペースを掴んだら、速さを活かした連撃をどんどこ重ねまくって一気に畳み掛けてえトコだな。



●Runner-runner
「やっぱ遠目に見ても、えげつない乱戦だなー……」
珠沙・焦香(焦がれ熾・f27564)は、猟兵達とオウガの儀式成就を賭けた戦いを眺めていた。この戦いに混じるのは簡単だ。彼女の旅団はこういう戦いに長けている。しかし、今やるべきは、この戦いの敵首領への切り込みである。この乱戦を越えるには、どうするか。
「……脚で突破するしかねえか!」
出した答えは小細工無し。自分の脚の実績と信頼に勝る突破口は無い。トントン、とブーツの爪先で床を蹴る。走りやすく疲れにくく踏みやすく蹴りやすい、彼女の脚力を引き出す相棒もいつも通りだ。なら、やれる。
「よし、行くぜっ!」
焦香のダッシュ力は、乱戦を掻い潜り、時折オウガ――もしかすると猟兵――に足払いを掛ける形になりつつも、戦闘区域を突き進んでいく。このまま突っ切れるかも、と思った矢先、大型のオウガが立ち塞がる。乱戦に巻き込まれかねないため、足を止めるわけにはいかない。横道もあるかどうかわからない、そもそも急制動を掛ければ乱戦行きだ。どうする――いや、あれは「登れる」。
「とりゃあぁー!」
焦香は走る勢いのまま飛び跳ね、大型のオウガの体表にしがみ付いた。岩肌のようにゴツゴツとしたその手触りは、彼女の思惑通り、クライミングに適していた。ひょいひょいと登っていくと、オウガは握り込んだ本を降らせて焦香を払い落とそうとする。
「本をそんな使い方するんじゃねえ!」
本を読むのが好きな焦香はオウガの顔面を蹴り付けて沈め、再び駆け出した。
 乱戦地帯を抜けると、目の前に広がるのは開けた儀式場に変わる。シルクハットの少年の姿は見えた。他のオウガは見当たらない。チャンスだ。
「いつまでも、煙が重てえ」
焦香は走りながら――ユーベルコード「苦怨煙捨」で――紫煙のような瘴気を纏い、さらに速度を上げてシルクハットの少年――アルフレッドに迫る。
「また猟兵かっ……!」
気付いたアルフレッドは焦香の飛び蹴りを避け、焦香は空中で向きを変えて地面を蹴ると、紫煙はアルフレッドに向けて加速する。
「同じ手は通じないよ」
アルフレッドはシルクハットから銀色の狼を放つ。狼は7体いるが、焦香は捕まることなく逃げ回る。アルフレッドの斜め前方に現れた焦香に7方向から狼が殺到すると、ここ一番で仕掛けると決めていた焦香は、アルフレッドの目の前の狼の陰から現れた。
「何っ……!?」
 質量を持った呪いの奔流はアルフレッドを捕らえ、あとは焦香の連撃が浴びせられる。一撃目で銀色の狼は消え失せ、連撃は儀式場――本に被害が行かないように――への蹴り落としで幕を閉じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

箒星・仄々
本を足蹴とはいただけません
オウガさんを遠慮なくお仕置きしましょう

空飛ぶランさんにオウガさんの目が向いている隙に
魔法の迷彩纏い風景に溶け忍び足
オウガのアルフレッドへの呼び声に応える声の方向へ

帽子屋さんを発見したら風の魔力発動
迷彩解除し疾風で一気に加速
残像を残しながら接敵
早業で抜刀
魔力で輝く刃を刺突
柄頭の鈴がちりん
敵内部へ刃から破魔込めた魔力放出!

火球は幾重もの激流の円盾で弾きます

食人花の花時計は
烈風で切裂き
炎で焼き
超水圧で穴だらけに

出来るだけ本や図書館にダメージが及ばないよう
魔法を操作します

事後に鎮魂の調べ
海で穏やかな眠りを



●Showdown AA Vs. Trips
 迷宮のような図書館の国で繰り広げられるオウガの「アリス」召喚儀式、そして儀式阻止のため猟兵が仕掛ける乱戦は、必然的に本棚を倒し、本が床に散らばっていく。
「本を足蹴とはいただけません。遠慮なくお仕置きしましょう」
箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)は、一冊の本を拾い上げ、埃をはたいてから近くの本棚に収める。これから片付けなければならないのは、散らかる本ではなく、本を散らかすにとどまらない、悪戯が過ぎるシルクハットの少年だ。彼の元に向かうには、乱戦もそうだが、オウガに見つかることも避けなければ、消耗するだけだ。
(ランさん、しばらくオウガを引き付けてください)
仄々はランさんことカッツェンランツェ――全長5メートルのアーモンドアイの目旗魚を放つと、ランさんは近くのオウガ目掛けて飛んでいく。
「おわッ! 何だァ!?」
「こんな生き物見たことないぞ!?」
「痛ぇッ! こいつ、刺してきやがる!」
オウガが混乱しているうちに、仄々は魔法の迷彩を纏い、風景に溶け込むと、忍び足でオウガの傍を進んでいく。音を立てないように、本を踏まないように。
 オウガの軍団も疲弊を隠せないのか、乱戦状態の区域はそれほど続かず、仄々は召喚儀式場――本棚を倒した、開けた空間に辿り着く。
「アルフレッドの旦那ァ! アーリー2、全滅ッス!」
「だろうね……。この流れじゃ、儀式の進行に全力の方がいいかも」
(いました。それも、こちらに背を向けて。なら――)
仄々は魔法の迷彩を解除し、ユーベルコード「トリニティ・エンハンス」の風の魔力で疾風を纏い、シルクハットの少年――アルフレッドに向けて加速する。
「旦那、後ろッ!」
「なっ……!」
彼と向き合っていたオウガが上げた声に振り返ったアルフレッドは、細身の剣で突き掛かるケットシーの姿に横跳びする。しかし、その姿はゆらりと消えて、ドサリと言う音と共に倒れ伏したオウガの傍らに立っていた。
「さぁ、お仕置きの時間です」
「いいや、僕の時間さ」
 カッツェンナーゲル――細身の魔法剣の切っ先を向ける仄々、不敵な笑みで歯を剥くアルフレッド。両者の踏み込みはほぼ同時で、アルフレッドが撃ち出した蒼色の火球を、水の魔力で幾重もの激流の円盾を創り出した仄々が受け止める。充分避けられるものだったが、避けた後の火球は図書館を傷めるだろう。だから仄々は防御行動を取ったのだ。
「さぁ、『11時』を告げようか!」
アルフレッドのシルクハットは踊るように舞い、彼の足元に火球を撃ち込んだ。すると、横たわる本をも燃やしながら波紋状に蒼色の炎が広がり、焼け跡からは獰猛な牙を生やした花が育つ。やがて、彼の足元には時計の針が二本、11時を指して伸びていた。
「これ以上は、させません!」
仄々は風の魔力で浮遊し、食人花を避けながらも、烈風、炎、超水圧で花時計を破壊していく。アルフレッドがさらに放つ火球も、水に呑まれて消えていく。
「へぇ、強いね。これは一旦退いた方がいいかな?」
 花時計が攻撃能力を失い、拍手すらしてみせるアルフレッド。仄々から距離を取ろうと飛び退くと、その身体は押し戻された。
「図書館に花時計が広がらないよう、風の結界を張りました。逃げられませんよ!」
仄々は既に疾風で距離を詰めつつあった。アルフレッドはシルクハットで火球を放とうとしたが、細身の魔法剣がシルクハットごと彼の身体を貫いていた。
「11時を過ぎたのであれば、良い子は寝る時間です。骸の海で穏やかな眠りをどうぞ」
魔法剣の柄頭の鈴――カッツェングロッケが、ちりん、と軽やかに鳴ると、刃は純白の破魔の魔力が満ち、アルフレッドの身体をひび割れさせ、そこからも光が溢れ出す。
「くそっ……!」
 破魔の魔力が一本の柱となって立ち上り、その光の柱と風の結界が消えると、そこにはカッツェンリートで鎮魂の調べを奏でる仄々の姿だけがあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月04日


挿絵イラスト