迷宮災厄戦⑤〜Monotony(作者 ゆうそう
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 あかあおきいろ。
 いいえ、いいえ、いりません。
 ここにあっていいのはただ一つ。
 四葉のもつ彩。それだけよ。

「みなさぁ~ん、遂に始まりましたよぅ!」
 騒がしく、パタパタと猟兵達の前に駆け込んだはハーバニー・キーテセラ(時渡りの兎・f00548)。されど、その言葉は動作のバタつきと裏腹に間延びして。
「予想していた方も多いかとは思いますがぁ、アリスラビリンスでの戦争……迷宮災厄戦が始まったのですよぅ」
 踵を使ってキキッと止まり、一息ついて改めてと。
 迷宮災厄戦。
 それはハーバニーが口にした通り、アリスラビリンスで戦端開かれた戦争だ。
 世界の存亡をかけた戦争は、猟兵達も幾度と越えてきている。それに対する心構えなど、今更と問うものではないだろう。
 だが、今回の戦争は、少しばかり今迄の戦争とはその毛色が異なるのも確か。
「オウガ・オリジンやら猟書家やら、なんだか今回の戦争はいつもより混沌としていますねぇ」
 今迄であれば、多少の差はあれども、猟兵対オブリビオンという形であった。
 しかし、今回はそこに猟書家なる者達が勢力として加わっているのだ。
 彼らが何者であるのか。それはまだ定かではないが、少なくとも、放置しておくことの出来るものではないことは確か。
「とはいえですねぇ、やることはいつもとそう変わりませんよぅ」
 そう。立ち塞がる障害を乗り越え、その先にあるオブリビオン・フォーミュラを、猟書家を討つ。如何に盤面が複雑化しようとも、突き詰めればそういうことだ。
 だからこそ――。
「今回の依頼は、そのための足掛かりのようなものですねぇ」
 そのための依頼を、ハーバニーは猟兵達に提示するのだ。
「場所はセピア色に褪せた、不思議な花園。そこで、瘴気の蒸気を撒き散らし、道を塞いでいるオブリビオンがいるようなのですぅ」
 猟兵達に提示される資料へと映し出される緑色。
 それこそが今回の目標、四つ葉の使者と呼ばれるオブリビオンだ。
 もしかすれば、今迄にその姿を見たことがある者もいるかもしれないが、その姿は常のそれと少しばかりの違いがある。
「彼女が背負った四葉型の蒸気機関。そこから瘴気の蒸気が噴出されているのですよぅ」
 もくもくと焚かれた蒸気は花園を枯らし、彼女の望むモノのみを残すことだろう。
 そして、その望むモノに猟兵達が入らないことは明白。
「無策で突入すればぁ、皆さんと言えどもぉ、有利に事を運ぶのは難しいと思われますよぅ」
 瘴気の蔓延する花園は、既に四つ葉の使者にとってのホームも同然。
 そのままでは如何な猟兵と言えども、力を増した彼女に押し切られてしまう可能性も否定は出来ない。
 それを回避するには、既に瘴気の蒸気を如何に無効化するか。もしくは、その影響を少なくするかも大切となってくる。
「それさえ出来ればぁ、皆さんならばきっと彼女を超えることなど容易い筈ですぅ」
 クローバーから放たれる魔力の矢も、召喚されるであろう犬型の怪物も、花の嵐も、猟兵達ならばきっと乗り越えられる、と。
「世界を如何に単一のもので塗り潰そうとも、皆さんの多様性まで失わせることは出来ないと、彼女に示してあげましょう」
 気を付けて、いってらっしゃいませ。
 にこりとハーバニーは信頼の笑みを猟兵達へと向け、銀の鍵を宙へと翳す。
 かちり。
 鍵が回れば、世界を跨ぐ扉が開く。
 踏み出す一歩は、猟兵達自身の意思をもって。


ゆうそう
 オープニングへ目を通して頂き、ありがとうございます。
 ゆうそうと申します。

 戦争がはじまりましたね。
 今回もいつもと同様、一つずつと積み重ねて先へと進んでいきましょう。
 さて、今回の依頼の戦場ですが、オープニングにも触れた通り、既に「瘴気の蒸気」なるものが蔓延しています。
 その発生源はオブリビオンが背負う蒸気機関であり、蔓延する瘴気はオブリビオンを強化します。そして、強化されたオブリビオンとそれは、ともすれば皆さんの妨げともなり得ることでしょう。
 ですので、敵を打倒する行動のみではなく、それへの対抗手段も是非、考えてみて頂ければと思います。

 プレイングボーナス……「瘴気の蒸気」への対抗手段を考える。

 それでは、皆さんの活躍、プレイングを心よりお待ちしております。
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第1章 集団戦 『四つ葉の使者』

POW ●ぐちゃぐちゃにすれば食べやすいものね?
【クローバーの魔法陣から放つ魔力の矢】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD ●あなたも素敵な四つ葉になりたいでしょう?
対象への質問と共に、【クローバーの魔法陣】から【白詰草で出来た犬型の怪物】を召喚する。満足な答えを得るまで、白詰草で出来た犬型の怪物は対象を【牙による噛み付きや体当たり】で攻撃する。
WIZ ●綺麗でしょ、あなたもこの一部になるのよ!
自身からレベルm半径内の無機物を【四つ葉のクローバーと白詰草の嵐】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


ライカ・ネーベルラーベ
くうきが、わるい
なら……なら……
「一発スカッとキレイにすれば良いんじゃないですかねぇェぇええ!」

【Heavenly Blue】を発動
咆哮とともに空が砕け、戦場が高空に変更
――当然、あっちもこっちも下に落っこちていく
蒸気を置き去りにして
追加で生成しようが、すぐに上へ上へと流れていく

わたしは【左腕射出機構】で敵をキャッチ
アンド引き寄せて斬る
それで死なないならしょうがない
わたしごと地面に叩きつけてあげるよ!
「あはははははは!さあ、死んどけぇ!」

無機物の存在しないソラ
オマエの技も役には立ちはしない


 淀んだ空気の中で緑が躍る。
 地に、地に、数多の色の残骸を侍らせて。
 ――こほり。 
 淀む瘴気が僅かと肺に入り込み、それへと反応した身体が無意識に小さく乾いた咳を一つ零した。
「くうきが、わるい」
 自分の機械の身体でも分かるぐらいに。
 ライカ・ネーベルラーベ(りゅうせいのねがい・f27508)は口元を手で覆い、それ以上、その空気が自身に入りこむを防ぐ。
 半人半機を超えた身体を持つライカとてそうであるのに、何の影響もなくこの花園に満ちる緑はなんであろうか。
 少なくとも――。
「眺めて、それで和める類のものではなさそうだね」
「酷い言い草。こんなにも素敵な四つ葉なのに」
「素敵かは分からないけれど、これだけあると幸運も箱売りされそう」
「幸運は幾らあってもいい。そうでしょう?」
 突然の闖入者。いや、正確に言うのならば、『彼女』は最初からそこに居たのだけれど。
 背負った四葉型の蒸気機械から零れる瘴気。
 さくりさくりと四葉の絨毯を踏めば、それ以外の色が褪せて枯れる。
 はらり、と、また一つの色が緑に侍る残骸となった。
「確か……四つ葉の使者、だったね?」
「あら、私を知っているの? なら、目的の説明も必要なさそうね」
 『彼女』――四つ葉の使者が、薄っすらと笑みを浮かべる。
 そして、その笑みが何よりも物語っているのだ。

 ――貴女もこの世界の一部にしてあげる、と。

 さくりと音は鳴らず、ざわりと風が鳴るのみ。
 それこそは嵐の前兆。世界を覆い、塗りつぶす嵐の。
 四つ葉の使者を中心として風が巻き、砂埃を巻き上げながら――砂埃を四つ葉と変えながら――渦を描き出す。
 ――こほり。
 巻き上げ、攪拌される空気は、口元覆うライカの手の隙間を抜け、再びとその肺の内へと。
 使者の生み出した渦に巻き込まれてもただでは済まないだろうけれど、このまま何もせぬでもこの空気に身を蝕まれるだけだろう。
 ならば、ならば――。

「一発スカッとキレイにすれば良いんじゃないですかねぇェぇええ!」

 まるで、スイッチが切り替わったかのような咆哮。
 まるで、満ちる瘴気を吹き飛ばすかのような咆哮。
 そして、空が咆哮に身を震わせ、慄き、砕けた。
「なんで!? どうして、花園が空に!?」
 降り注ぐは空の欠片。
 瘴気の色が届かぬ場所にあった冷たい青。緑を、瘴気を呑み込んで、立つべき大地をすら大空へと変えていく。
 ライカの身を包む浮遊感。同時、重力の鎖がその身を絡めとり、あるべき場所へと引き寄せ始める感覚――落下だ。
 だが、その感覚はきっとライカだけのものではない。きっと、それは使者も同じ。違いがあるとすれば、ただ一つ。

「無機物も、大地も存在しないソラ。オマエの技も役には立ちはしないよ」
 ――わたしの戦場で抗えるなら、抗ってみせるといい。

 寄る辺なき世界への変容に対して心構えがあったか、なかったか。ただ、それだけ。
 突然の浮遊感と落下に混乱する使者を二色の瞳が見据え、ライカの左腕が掲げられる。
 そして、絡みつくは鋼鉄線。
 ぐるりぐるりと絡みつき、纏わりつき、使者の身体を戒めていく。
 そうなれば、あとは簡単だ。
 引き寄せ、斬って、斬って、叩き斬るのみ。
 使者を近づければ、必然、瘴気の蒸気も密度を増すが、今は互いに落下中。瘴気は二人の落下速度に追いつけず、虚しく上空に棚引くのみ。
 ライカの想定が、見事と言う程に嵌っていた。
「……あ、がぁ」
「しぶといね。なら、しょうがないか」
 斬らて、斬らて、ライカに斬られ続けた使者は最早虫の息。それでも、まだ僅かと息があるのも確か。
 だから、これは最後の駄目押しだ。
 眼下には、元々彼女らのあったであろう大地の姿が近付いていた。
「な゛に゛、を……まざが!」
「墜ちても無事だという幸運を、大好きな四つ葉に祈るといいよ。あはははははは! さあ、死んどけぇ!」
 減速無しの墜落。その衝撃に土煙が舞い上がり、四つ葉の残骸もまた舞い上がる。
 もくりもくりと立ち昇る煙の中、立ち上がるはただ一人の影のみ。

「――残念。幸運はわたしの方にあったみたいだね」

 むくりと立ち上がった影――ライカは身体から緑の付着物を払い落す。その身体に大きな傷――細かな傷はあるが――はなく、五体満足を維持するもの。
 使者の身体が、四つ葉の絨毯が、ライカへと向かう墜落の衝撃を吸収したのは、使者にとっての皮肉とも言えるものであった。
 土煙が落ち着いた頃には、もう戦闘の気配は遠き彼方。そして、一息ついたライカの口から咳が零れることは、もうなかったのである。
大成功 🔵🔵🔵

ルク・フッシー
ま、魔導の蒸気?それって、まるでアルダワの技術じゃないですか!?
とにかく、勝たないと…

風の魔力をコントロール、オーラ防御を張り…それをドリルのように形成…
大丈夫、これで防げるはず…ヴァルギリオスのブレスに比べれば…!

オーラごと突っ込んで、オブリビオンに接触!敵の周囲から蒸気を弾き飛ばし、強化を解きます
そして特大絵筆による一閃!描いた傷の通りに、オブリビオンを両断します!


 緑のみを残して揺蕩う瘴気は蒸気でもある。
 それは蒸気機関によって生み出され、より一層と花園に広がらんとするのだ。
 蒸気機関。そう、それは猟兵であるならば、いや、とある世界に育ったのであれば、慣れ親しんだ筈の。
「ま、魔導の蒸気? それって、まるで――」
 アルダワの技術じゃないですか。
 そう続く筈だったルク・フッシー(つるぷに竜のサマーペインター・f14346)の言葉。
 だけれど、それは転がるようにしてその場を動いた彼自身の動き――彼が居た場所に着弾した魔力の矢―により、そうは繋がらなかったのである。
「けほけほっ……うぅ」
「ぐちゃぐちゃにはならなかったのね。ざぁんねん」
 爆撃のような衝撃と降り注ぐ土の名残に、頭を抱えながらルクが声の方を向けば、そこには四つ葉の使者が姿。
 何が面白いのか。くつりくつりと嗤いながら、その手にはクローバーの魔法陣。
 二射目、三射目がくるかとルクが身構えれば、それはまだすぐには来ない。
 使者からすれば、不意打ち気味に撃った筈の一射目をルクに躱されたのだ。姿も既に捉えられている以上、警戒と共に機を窺うを選ばざるを得ない。浮かべる笑みは、ルクに対する威嚇でもあったのだ。
 互いに見つめ合う沈黙の時。

 ――四つ葉の使者の背中でぐるぐると廻り続ける蒸気機関の音だけが響く。

 こほり。
 零れた咳はルクのもの。
 土煙の名残に咽たのか。いや、違う、これは――。
「瘴気の蒸気って、こういう!」
「あはは。アナタも素敵な四つ葉の栄養になったらいいのよ」
 揺蕩う瘴気は四つ葉以外の花々を枯らすだけが効果ではない。
 この花園を使者のための舞台へすると共に、彼女の望まぬ登場人物を舞台から降ろすためのものでもあるのだ。
 それが沈黙の時も稼働し続けていたのであれば、瘴気の濃度が濃くなるも当然。
 そして、それを吸い込んで咳き込み、空気を吐き出せば、再びと空気を吸い込まねばならず、それがまた乾いた咳へと繋がっていく。
 普段は意識せずとも出来る呼吸に不自由が生じる。それはそれだけでヒトの集中を乱すに十分。
「こほっ、こほっ……とにかく、なんとか、しないと」
 息苦しさに、ルクの目の端へと涙がじんわりと溜まっていく。使者の姿が、涙にぼやける。
「わざわざと手を下さなくても大丈夫そうだけれど、この子達の栄養にするにはもっと柔らかくしないとね」
 使者の手にある魔法陣がひときわと強く輝き、ルクの身を砕かんと脅威は放たれた。
 そして、二度目の着弾を示す土煙が舞い上がる。
 今度は、転がって逃げる暇もなかった。

「――なんなの、それ」
「ま、間に合いました!」

 ルクの眼前にて渦巻く傘。
 それはぐるりぐるりと廻り続け、まるで幼子が雨の中で傘廻し、水を弾き飛ばすかのようにして魔力の矢の衝撃を外へと逃がしたのだ。
 故に、ルクの身は未だ健在。
 かつての戦争で対峙した帝竜ヴァルギリオス。そのブレスを受け止めた時に比べれば、使者の魔力の矢を受け止められぬ筈もなし。
 だが、それでも彼の足は震えていた。戦いへの恐怖を知るがために。
 だが、それでも彼は震える足で立ち続けていた。恐怖へと立ち向かう強さを持つがために。
「そんな傘程度で、私の力が!」
「ぼ、ボク……がんばり、ますっ……!」
 降り注ぐ矢は雨霰。
 それでも、傘を掲げて踏み出す一歩は勇気の証。
 恐怖を塗りつぶす勇気が一歩、また一歩とルクと使者との距離を埋めていく。
 始まりはじりじりと。次第にそれは速度をあげて、最後はまるで突進のように。
 ルクの視線はしっかりと前を見据え、その瞳に涙はもうなかった。

「近付かないでッ!」
「勝たないと……いけないんですっ!」

 螺旋が拓いた道を越え、使者の懐入ったルクが振り抜く絵筆の一閃。
 それはまるで虹のように様々な色を放ち、緑の中に一筋の軌跡を描き出す。
 描いた軌跡はそのままに使者の身体を断つ刃ともなり、その身を骸の海へと叩き返した。
 だが、それはそれだけに留まらず、筆先より飛び散った色彩は蔓延する瘴気をも塗り潰したのだ。
 戦いの終わりにホッと息を吐き出すルクの視線の先、花園の一部には確かに緑以外の色彩が取り戻されていた。
成功 🔵🔵🔴

ティラル・サグライド
なるほどこれがソレなのかい?
個人的には是非味わいたいけど、今はそれどころじゃなくてね。

懐より煙管を取り出して一服。
肺に毒煙を大量に仕込んで対戦させてもらおうかな。

発生する瘴気に対して貯めこんだ煙を大きく吐き出して中和、ないしは機械を背負っている子を思いっきり咽させようか。
私自身この毒煙は慣れちゃってね、つまんないからお裾分けさ。
混ざってもっと毒々しく?それはそれで味わい深い物さ。

さて、それだけじゃ足りないかな?
飛んでくる矢もそのままにもう一回毒煙をプレゼントし蒸気も吸い込んで負傷を深め出血させ、掌や腹部の刻印を強烈な大口として殺戮捕食態に強化。
それじゃ、その魔法の矢も含めて頂きます。


 煙管から肺に吸い込む紫煙の味。
 それはひどく苦く、甘く、辛く、味覚の様々を刺激して、ティラル・サグライド(覆水盆に逆集め・f26989)の肺へと落ちていく。
 さて、これは果たしてうまいのか。それとも、不味いのか。
 だが、どちらにしたところで身体に良いモノであるとは決して言えないだろう。まして、それがニコチンなどではなく、正真正銘の毒煙であればこそ。
「ふぅ……」
 ティラルの吐き出した紫煙が四つ葉の花園にふわりと広がる。そして、燻る緑――瘴気と紫煙とが混じり合い、融け合い、喰らい合い。
「ちょっと、わたし達の花園を汚さないでくれる?」
「――なるほど、これがソレなのかい?」
 紫煙と瘴気とが互いを殺し、僅かに晴れたティラルの視界の先にあるは蒸気機関を背負う少女――四つ葉の使者と呼ばれるソレ。
 また、ティラルの口元から紫煙が零れた。
「私の話を聞いてたの? 花園を汚さないでって言ったのよ?」
「ああ、失敬失敬。蒸気ばかりでなく、煙の味を知っておくのもいいだろうと思ってね」
「あ、また!」
 話すは煙に巻くように。実際に、口元からも紫煙を撒いて。
 そして、紫煙が撒かれれば撒かれるほどに、薄まり散りゆくは瘴気の蒸気。
 逆に濃度を増すは、四つ葉の使者が怒りか。
 顔を赤に染め、ティラルへと向ける眼差しは鋭さを増す一方。
「そんな眼で見ないでくれないか。食べたくなってしまうじゃないか」
「私を食べる? いいえ、違うわ。栄養になるのはアナタの方。それで、この子達を汚した罪を償うといいわ!」
 昂る使者の怒りはそのまま力へと変じる。
 まだ燻る蒸気の先で掲げられた掌。その先に輝くはクローバーの魔法陣。

 ――嗚呼、随分と味わい深そうだ。

 脅威を前にして感じるは、恐怖に非ず。
 ティラルにとって、ひいては、その身体に棲まうオウガにとって、明確な敵意を向けてくる対象は空腹を満たすための。
 知らず、こくりと咽喉が鳴り、その音にティラルは我に返る。己の足が獣の如くと踏み出さんとしていたことに気付く。
「いけない、いけない。個人的には是非味わいたいけど、今はそれどころじゃなくてね」
 食欲という名の本能のままにではなく、理性でもって改めて踏んだ淑女のステップ。
 優雅にはらりと黒衣がはためき、踊りを見せる。
 遅れて彼女のあった場所を通り過ぎるは魔力の矢。使者からの敵意は虚しく地に突き立つのみ。
 そして、ティラル自身の動きに、矢の過る風に、ヴェールがふわり。左眼/オウガがぎょろり。
 互いの視線が絡み合った。
「なんなの……それ……!」
「なぁに。ただの同居人さ」
 奇妙な共生関係を目の当たりにした使者の顔が驚愕へと染まる。
 だが、ティラルにとって、それは最早当たり前のことで、今更と驚くことでもない。
 驚愕と平静。その差こそが、そこから先の明暗を分けた。
「そうだ。四つ葉にだけでなく、折角だから君にもお裾分けをしてあげよう」
「――え?」
 たんと味わうといいよ。
 そう聞こえた時には、もう使者の眼前は紫煙に染められて。
「ぐっ、ごほっ、げほっ!?」
 目に沁みる。鼻に突き刺さる。呼吸が殺される。
 驚愕に乱されていた心が、更に煽られ、掻き乱され、使者の心から余裕を奪う。
 そうなれば、あとはもう散歩するような足取りで近付くも容易い。
「君と私との特性ブレンドだ。どんな味だい?」
 ポンと気安く使者の肩に置かれたティラルの手。
 滲む視界でなんとかと使者がティラルの顔を捉えれば、そこに浮かぶは三日月の。
「それじゃ」
 気負いのないティラルの言葉。されど、使者に奔るは怖気。
 彼女が何を言わんとするか。何を為さんとするか。本能で理解しての。
「ま、――」
「――頂きます」
 言葉は言葉となる前に、がぶりと咀嚼の音に掻き消される。

「ああ、すまない。結局と食べてしまうことには変わらなかったね」

 味わいたいけど、今はそれどころじゃない。
 そう語ったのは何時の話であったか。ほんの先程か。だが、結局のところ、使者は既に腹の中。
「でも、そうだね。獣のようにガツガツとではなく、しっかりと咀嚼して、味わわせてもらったから」
 御馳走様でした。それじゃあ、支払いは血液で。
 ブラドのバックをちゃぷりと揺らし、気取ったような言葉だけが緑の花園に響く。
 それに応える相手はおらず、静けさだけが応えていた。
成功 🔵🔵🔴

荻原・志桜
この世界は色褪せてちょっと寂しいね
せっかくの花園なのに、色彩豊かな彩を楽しむことができないなんて…
もちろん緑だって好きなんだけど、
でも世界にはたくさんの色が溢れてるんだよ?
ひとつの色を愛でるのは良いことだけど押し付けちゃダメ

わたしは、まだまだやらないといけないことが沢山あるの
アナタの纏う緑はキレイだとおもうけど、
甘んじてその一部になることなんてできない!

杖に魔力を集めて素早く呪文を紡ぐ
そよぐ風は暴風となり、雷のルーンを一緒に刻めば嵐となる
属性攻撃で雷の威力を高め
掠めても感電しその動きを制限できるように
蒸気機関に少しでも影響を与えられないかな

その瘴気もアナタの四つ葉も全てを払い去ってみせる!


 花園とは名ばかりに、広がる色は緑ばかり。
 まして、その緑とて今は他の色を無くすための蒸気に包まれ、どこかくすんで見える。
 くすんで見えないのは、荻原・志桜(桜の魔女見習い・f01141)の周囲だけ。さやりと、柔らかな空気の流れる彼女の周囲だけ。
「この世界は色褪せてて、ちょっと寂しいね」
 折角の花園ならば、四季折々、様々な彩を楽しめた方が良い。
 だからこそ、目の前の光景が残念で志桜は悲し気に眉根を寄せるのだ。
「そんなことはないわよ。見渡す限りの四つ葉だなんて、素敵じゃない」
 そんな哀しみの感情を破るかのように響いた声は、志桜と同じく少女の声。
 だけれど、そこにあるのは哀しみなどではなく、自身の成果――花園を緑に染めたを誇るかのよう。
 志桜が四つ葉の絨毯から視線を外し、声の響いた方向へと目を向けたなら、そこにも緑――四つ葉の使者が姿。
「もちろん緑だって好きだよ。でも、世界にはもっとたくさんの色が溢れてるんだよ?」
「いらないわ。私にとっては、この色だけがあればいいの」
「……ひとつの色を愛でるのは良いことだけど、押し付けちゃダメ」
 いくら話をしようとも、きっとそれは平行線。
 自分とは違う誰かを愛し、己の存在以外を受け入れられる志桜。
 四つ葉のみを愛し、他の誰かを受け入れることの出来ない四つ葉の使者。
 根本からして、既に違うのだ。

 ――空気が、張り詰めていく。

 最早、言葉を尽くせども意味はなしと互いが互いに理解する。
 ならば、そこから先は自分達の存在を掛けて、ぶつかり合う道があるのみ。
 さわりさわりと風が吹き抜ける。
 それは志桜の背より吹き抜ける風でもあり、使者の背負う蒸気機関から吹き出る瘴気でもあり。
 ぶつかり、鬩ぎ合い、攪拌される空気に、ピンク色のリボンがひらりと揺れた。
 それが、始まりの合図。

「あなたも四つ葉の一部になれば、その素晴らしさがきっと分かるわ」
「わたしは、まだまだやらないといけないことが沢山あるの。甘んじてその一部になることなんてできない!」

 風が舞い上がる。四つ葉の色をのせて。
 風が舞い上がる。桜色の香りをのせて。
 初めはさやり。次第に轟々と。逆巻く風は嵐となりて、互いが互いを呑み込まんと激しくその身を絡め合うのだ。
「――っ!」
「ほら、やっぱり他の色なんていらないのよ」
 じりと四つ葉の嵐が桜の香りを押し込み、高まる負荷に志桜の額より汗の一滴。
 風吹き荒ぶことで志桜の周囲にこそ瘴気の蒸気は及ばぬが、それでも使者の周囲には未だそれは健在。故に、それは使者の力を高めていたのだ。
 ――また、じりと四つ葉の嵐が近付いてくる。
 押し負けるのか。飲み込まれ、花園にあったであろう花達の如くと吹き散らされてしまうのか。
 思わずと心に弱気の影が滲んだ時であった。
「……あ」
 ――吹き荒ぶ風の中で、星彩の重みを感じた。
 それは嵐にはためく髪を留めてくれている、大切な誰かからの贈り物。
 杖支える手の一つを放し、そっと触れた髪飾り。温かさを感じたのは、ただの気のせいか。それとも。

 ――志桜の心に、炎が灯った。

 そうだ。志桜は、まだこんなところで足を止める訳にも、儚く吹き散らされる訳にもいかないのだ。
 だから――。
「――Th!」
 髪留め触れていた手を素早く動かし、引き抜くは魔術印刻んでいたカード。
 それは予めと魔力を込めていたものであり、志桜の意思一つもあれば即座にその効果を発揮する。
 その効果とは――雷。
 バチリと奔った雷は嵐のただ中に跳び込み、風の流れなど意にも介せずと駆け抜けるのだ。四つ葉の使者へと向けて。
「ぎゃん!?」
 そして、嵐の展開へと力を込めていた使者に、雷速へと反応できるだけのものがある筈もなし。
 雷の牙はその身へと喰らい付き、蹂躙し、彼女の意識全てを一瞬白に染める。

 ――四つ葉の嵐が、瘴気生み出す蒸気機関が、確かに止まった。

 ならば、その隙を捉えぬ筈もなし。
 さぁ、今こそ高らかと詠いましょう。幻想を、美しき魔女の術を魅せましょう。

「瘴気も、アナタの四つ葉も、全てを払い去ってみせる!」
「あ――」

 嵐が花園を吹き抜けて、四つ葉の使者を、蔓延る瘴気すらをも呑み込んで過ぎ去っていく。
 その中で使者の見た光景は、風に舞い踊る桜の花弁と彩る稲妻の美しき共演。
 抵抗は、無意味であった。
 そして、風が止めば、はらりはらりと名残りの桜花が空より緑の上に新たな彩りとして舞い落ちるのみ。
 くすんだ世界も、緑のみに支配された花園も、もうどこにもなかった。
成功 🔵🔵🔴

シャルロット・クリスティア
毒素を持った蒸気……位置取りで何とかなる密度ではないようですね。
確かに、無策ではこの中で戦うのは難しそうですが……。

ですが、結局は蒸気です。
やろうと思えば何とかなる。
ガンブレードに風属性弾を装填、戦場突入と同時に起爆。
刀身を中心に渦巻く風、こいつで自身の近くの蒸気を吹き飛ばします。
効果を維持するためにも、リロードは適宜やっておかねばなりませんがね。

それに、こいつなら真空波で遠距離攻撃もできる。
近付くとより濃密な蒸気と魔法矢に晒される。
距離を取っての打ち合いならば弾道を見切って回避することもできましょう。

忙しい戦いになりそうです。手間取らずに行きたいですね。


 満ちる蒸気は毒のそれ。
 密閉された空間ではなく、花園という開けている筈の空間ですらそれが満ちていると理解出来るほどに。
「毒素を持った蒸気……位置取りで何とかなる密度ではないですね」
 その発生源である敵――四つ葉の使者との距離を取っているからこそ、まだシャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)の呼吸も可能ではある。
 だが、花園全体を覆うそれは、翼持たぬ身が叶えられる程度の位置取り一つでどうかなるものでもないことも明白。
「四つ葉の上で追いかけっこ? それも素敵よね」
 遠く、さくりさくりと四つ葉の絨毯を踏みしめる音が聞こえる。
 音が近付けば近付くほどに、蒸気のカーテンは揺らめき、その色濃さを増す。
 それに無為無策で近づくなど、自殺志願者のそれであろう。
 だからこそ、揺らめく蒸気のその向こう、近付き来る緑の人影との距離を維持しながら、シャルロットはその聡明な頭脳を廻す。
 ――満ちる蒸気。逃げ場はなし。しかし、場所場所によってその濃度に差はある様子。何故?
「……ああ、幾ら毒素を持とうとも、結局のところは蒸気なのですね」
 自身の、四つ葉の使者の動きに合わせて揺らめく蒸気。それは即ち、気流の影響を受けているということ。
 特性の一つも分かれば、打てる手など幾らでも、だ。
「――何とかなりそうですね」
 距離を取り続けていた足を止める。
 それは諦めのためでもなければ、絶望のためでもない。これからも歩き続けるべく、自分の道を見定めるための。
「あら、追いかけっこはお終いなの?」
 蒸気の向こうで影がシャルロットへと問いかける。
 ならば、答えようではないか。

「ええ、お終いです。いつまでもこのようなところで、足踏みなんてしていられませんから」

 煌く青の双眸に宿るは勝利への意思。
 その輝きが、色が、四つ葉の使者の癇に触れたのだろう。敵意が風となって吹き付ける。
「このようなだなんて酷い言い草。アナタも他の花のように四つ葉の栄養にでもなって、反省するといいわ」
 蒸気にぼやける先に輝き一つ。
 恐らくは魔法陣を展開したのだろう、とシャルロットは当たりをつける。
 その威力は常のそれとは異なり、瘴気によって強化されていることだろう。
「――まずは、ぐちゃぐちゃにしてあげる」
 輝きが蒸気を裂いて、シャルロットへと迫る。
 
 ――だが、問題ない。問題などないのだ。

 ガチンと響いた撃鉄の落ちる音。
 同時、荒れ狂う風が吹き抜け、輝きを、蒸気を、四つ葉をすら吹き散らす。
「ああ、ようやく貴女がはっきりと見えました」
 シャルロットと使者とを隔てていた蒸気は彼方。ならば、互いをハッキリと認識するは容易き事。
 シャルロットは使者の背に追われた蒸気機関を、使者はシャルロットが手に持つ風纏う刀身を。

「それが元凶ですか」
「今のはそれでやったのね!」

 互いが互いに、事象の原因を目に留める。
 ならば、やるべきことは一つ。
「近付けさせなければ、いいんでしょ!」
 使者は背中の蒸気機関の回転数をあげると共に、魔力の矢を雨霰と打ち放つ。
 シャルロットが手にするは刃であるからこその判断。刃の届く距離にいなければ、必然、その脅威は届かぬとしての。そして、距離を開けている間に、再びと瘴気の蒸気を満たさんとしての。
 だが、だ。

「申し訳ないですが、これをただの剣だと思わないことです……!」

 それはシャルロットの持つ刃――ガンブレードがただの剣であればこその。
 そう。使者は一つの勘違いをしていた。
 シャルロットが最初に巻き起こした風は、あくまでも魔力の矢と共に瘴気を払うために起こしたものに過ぎないのだ。
 その真価とは、刃に風の属性を纏わせることにある。吹き散らす風は、その能力の一端でしかない。
 その真価を見せるべくとシャルロットがガンブレードを掲げ持つ。その姿はまるで、愛銃を構えるかのようで。
 呼応して、渦巻く風は刀身から剣先へと螺旋を描きながら流れ行く。
 刀身を銃身に。剣先を銃口に。

「一撃で、仕留めます」

 視界は良好。射線を隔てるものはなし。
 ――ガチン!
 再びの撃鉄が落ちれば、螺旋の通り道を駆け抜けて力が迸る。
 そして、迸る力は剣先/銃口より真空の弾丸となって放たれるのだ。
「……あ?」
 何が起こったかも理解できないという使者の顔。その額には鮮血迸る弾痕が一つ。
 シャルロットへと迫っていた矢が、その眼前で霧と消える。同時、どさりと倒れる音。
 弾道を見切るまでもない。戦いを引き延ばすまでもない。まさしく、必殺の一撃がそこにはあった。
 そう。シャルロットに対して撃ち合いを仕掛けた段階で、使者の勝ち目など最初からなかったのだ。勿論、それを理解するまでもなく、理解したとしてもその時には既に、彼女は骸の海へと送り還されていたのだけれど。
「さて、これからまた忙しくなりそうです」
 己の為した業に感慨はない。
 シャルロットはただ当たり前のように、当然としてそれを射抜いただけなのだから。
 だから、さくりと四つ葉を踏んで先へと歩を進める足に澱みはない。
 さくり、さくり。
 シャルロットが先へと進む音だけが、かつての花園に響いていた。
成功 🔵🔵🔴

草野・千秋
アリスの世界も狂気と戦乱に巻き込まれていくのですね
この世界にいらない色なんてないのですよ
春の緑もいつしか枯れて、秋の紅になって、冬が来て、また春も夏も来るのですから
互いの多様性を尊重しあうのが人間なんです!

勇気で敵に立ち向かいます

瘴気の蒸気は炎で打ち消すことは可能ですかね?
やってみせます
武器改造で銃弾に炎の属性攻撃を込めて範囲攻撃、UC【冷たい雨に撃て、約束の銃弾を】で炎の銃弾をばらまく
これでオブリビオンが強化されることもなくなるでしょうか

魔力の矢は怪力でたたき落とし
四つ葉の使者はスナイパー、2回攻撃、範囲攻撃、UCで倒していく
敵の手数が少なくなってきたら怪力で各個撃破
敵攻撃は激痛耐性で耐える


 戦争は狂気を助長する。
 もしかすれば、草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)の目の前の光景もその一つなのかもしれない。
「この世界にいらない色なんてないのですよ」
 様々な花々が咲き誇っていただろう園は、いまや広がる緑にのみ支配されている。
 花園の名残と言えば、その緑の下で枯れ果てて、土に還るを待つ数多の骸の姿だけ。
 千秋の拾い上げたそれが、掌の上でぼろりと崩れた。
「いいえ、いいえ。他の色なんていらないわ」
 その緑の上で上機嫌に踊るは一人の少女。
 この花園を四つ葉の緑で埋めた張本人であり、四つ葉の使者を名乗るオブリビオン。
 くるりと回れば、花園を歪めた蒸気がふわりと踊る。
「……春の緑もいつしか枯れて、秋の紅になって、冬が来て、また春も夏も来るのです」
「なら、巡る季節の代わりに四つ葉を一年中楽しめばいいのよ」
「そこに、多様性はあると言えるでしょうか?」
「言葉の意味通りなら、ないかもしれないわね」
「その多様性を尊重しあうことが、人間なんです!」
 響かぬ、響かぬ、千秋の言葉。
 使者はピタリと踊りを止めて、何を怒っているのと小首を傾げるばかり。
 その様子に根本からして価値観が、存在が違うのだと、千秋は理解する。
 ヒトの心に寄り添う歌を。
 歌い手として持つ彼のその優しき心が言葉を紡がせていたけれど、最早、それは通じ得ぬ。
 ならば、これより先は優しきよりも勇気を力と変え、断罪戦士ダムナーティオーとして世界の敵と対峙するのみ。
 ゆるりと構えた拳は戦いの宣誓。
「あら、戦おうというのね。丁度良かったわ」
「何がでしょう」
「もう粗方と花は朽ちさせて、四つ葉に行き渡らせる新しい栄養が欲しかったの」
 にこりと笑う邪悪。
 嗚呼、ならば、この言葉を贈ろうではないか。

「――悪を駆逐する」

 拳を握る力を強く、戦いのゴングは高らかと鳴り響く。

「あはっ、ぐちゃぐちゃにしてあげるわね」
「――っ!」
 使者の掌より放たれる輝き。
 それは空気を裂き、前へと進む千秋の身体を射抜かんと空間を奔る。
 しかし、それをただ見守るのみの千秋ではない。
 その怪力でもって眼前より来る矢に拳を合わせ、叩き落とす。
 だが、花園に燻る瘴気の蒸気は四つ葉の使者の力を高め、同時、千秋の身体の十全を妨げるのだ。
 普段の力を発揮できればなんの苦も無く落とせたであろう魔力の矢。だが、今は叩き落とした手に残る痺れが十全を発揮できていないことを千秋に伝えている。
 それが、食いしばる歯の隙間より漏れ出た呼気として現れていた。
「あらあら、どうしたの? 悪を駆逐するのではなかったの。これではアナタが駆逐されてしまうわよ?」
 笑う邪悪が揶揄うように。しかし、放ち続ける矢は遠慮もなくと降り注ぐ。
 じりじりと消耗をするだけと理解はしていても、千秋もそれを討ち落とさないわけにはいかない。それを諦めた時、矢が己の身体を撃ち抜くであろうから。
 何か。何か打つべき手は。
 諦めぬ勇気が思考を廻し、そして、それは――。

「その蒸気を、燃やし尽くす」

 ―― 一つの解へと至るのだ。
 矢の雨を弾き、今迄に埋めた彼我の距離をリセットするかのように大きく後方へ。
 それで稼いだ時間は僅か。されど、千秋へと矢の到達する時間が僅かでも伸びたのならば十二分。
 稼いだ時間で掲げ持つは銃器。吐き出すは炎の弾丸。
「どこを狙って――きゃあ!?」
 それは次々と使者――ならぬ、その周囲に着弾し、空気を焦がす。
 燃え盛る炎は生じる端から蒸気を吹き飛ばし、消し飛ばし、使者から瘴気の加護を剥がしていくのだ。
 この花園に敷かれた秩序――四つ葉の支配が打ち崩されていく。
「よくも、よくも四つ葉を焼いてくれたわね!」
「余裕が剥がれているぞ」
 それでもと応戦するかのように矢を放ち続ける使者であるが、目に見えて矢の力は衰えている。
 ならば、最早、そこに彼の脚を止める脅威足りえなどしない。
「――畳み掛けるッ!」
 矢の雨をものともせず、駆け抜ける一筋の道。
 彼我の距離は瞬く間と埋まり――。

「骸の海へ還るがいい!」

 千秋の拳が、使者の身体を打ち抜いたのだ。
 そして、静寂が満ちる。
 そこに残されたのは拳突き出す千秋の姿と、その掌の上に残された四つ葉の残骸。
 しかし、それもまたいつかの花の残骸の如く、彼の掌でぼろりと崩れ去るのであった。
大成功 🔵🔵🔵

エドガー・ブライトマン
花園と聞いたけれど、なんだか色褪せているね……。
これが瘴気っていうヤツなんだ。
確かに、あまり良くないカンジがするよ。

オスカー、私の服の中に隠れていたまえ。
レディは……まあ、平気でしょ、たぶん。

“Hの叡智” 状態異常力を重視。
この力はきっと、この蒸気の力だって抑えられるハズさ。
とはいえ、長居するほどは効かないかもしれない。手早くケリをつけよう。

魔力の矢は厄介だね、なるべく当たりたくないよ。
花園に隠れながら、《早業》で四つ葉君と間合いを詰める。
盾になりそうなものがあれば、自身を《かばう》ように。

好機は逃さず《捨て身の一撃》
こういうのは背中から狙いたいよね。
王子様もたまには背後から奇襲するんだよ。


 響いた足音はさくり。はたまた、ざくり。
 片や緑の絨毯が踏みしめられた音で、もう片方はその下に眠る花の残骸が砕けた音。
 エドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)がその足音を止めれば、見渡す限りの緑色。
「花園と聞いたけれど、なんだか色褪せているね」
 考え込むように口元へと手を動かせば、釣られて動いた空気がふわり。その軌跡を示すかのように、緑の上に揺蕩うセピアがゆらゆらと。
 幸い、彼方に見える場所よりも、まだエドガーがある場所はセピアの色――瘴気の蒸気は薄い。
「これが瘴気っていうヤツなんだ。確かに、あまり良くないカンジがするよ」
 揺蕩う蒸気は、そこにある全てを蝕み、ただ一つを除いてその色を奪うための。
 そして、それはエドガーとて例外ではなく、まだ僅か、されど確かに、身体にじくりと感じる甘き痺れ。
 痛みではない。そも、それを感じるは虫食いだらけの足跡のどこかで落としてしまった。
 だから、これは痛みというよりも、眠らせ、朽ちさせる類の。
「あら、まだ四つ葉以外の花があったのね」
「……オスカー、私の服の中に隠れていたまえ」
 さくり。緑の絨毯を軽やかに踏んで。
 ふわり。燻る蒸気を付き従えて。
 新たなる緑の姿の登場に、周囲のセピアがその色を濃く。そして、痺れがじわりと強くなる。
 だから、エドガーはその相棒にして友たる燕の彼をその懐に招き入れたのだ。彼が地に伏せる前にと。
「――おや、これは緑のお嬢さん。この花園のお世話はキミが?」
 対峙する前に深呼吸を一つ。
 考え込む仕草の秀麗なる横顔は消え、浮かぶは輝きの笑み。敵意など感じさせないかのように、にこりと。
 その笑みに、緑の姿――四つ葉の使者と呼ばれるオブリビオンも、にこりと笑みを返して答える。
「ええ、そうなの。どう? とっても、綺麗な四つ葉の園よ」
「確かに、見渡す限りに四つ葉ばかり。これだけ広げるのも大変だっただろう」
「そうね。でも、それもこの光景を眺められるのなら、苦にもならないわ」
「そんなに大切なことなんだね。きみにとっては」
「ええ、勿論。でも、まだ足りないわ。まだまだもっと、どこまでもと広げないと」
 使者の笑顔に、狂気が滲む。
 その変容にエドガーが目を二つと瞬かせる間に、彼の左腕をとる淑女が蠢いた。
 私以外を見つめるなと言いたかったのか。燕の彼だけでなく、自分も気にしろと言いたかったのか。それとも、危ないと言いたかったのか。
 だが、エドガーの左腕に奔った『痛み』が彼の身体を突き動かし、その身が躱すは魔力の矢。
「やあ、随分と物騒なことだ!」
「栄養が必要なの。四つ葉をもっともっと広げるために。ねえ、あなた達がなってくれる?」
「……質問の態ではあるけれど、それは私達からの答えを求めてはいないね!?」
「ええ、勿論!」
 使者の中でエドガーの扱いは既に決まっていて、その手の内で輝く魔法陣がそれを雄弁に語る。
 これはなんたる暴君か。
 反面教師の存在に、エドガーが嘆くようにと己が祖国の名を心の内で呟けば――身体が清明を取り戻す。
 身体に響き渡っていた甘き痺れは欠片もなく、身体宿るは十全の。
 跳んで、躱して、ステップ踏んで、踊るようにと矢の雨霰をやり過ごす。
「どうして、蒸気の毒に染まらないの?」
「ハハ、毒に眠るのはお姫様の役割だからね。そこは大切なところさ」
 だって、私は王子様。毒に抗い、救い出すこそがその役割。
 ならば、蒸気の毒如きにいつまでもと囚われている訳にもいくまい。
 だが、自身への影響は最小限としたとしても、使者に対する瘴気の加護まではどうにもできない。
 だからこそ、雨霰の中で彼は踊り続けるのみ。
「なるべく当たらずにいたいけれど、隠れる場所もないし……」
 遮蔽物でもあれば別だが、開けた花園にそのようなものはなし。
 さて、ではどうするか。
 思案の中で、矢が捲らせた土煙の中、花の残骸がひらりと宙に浮くを見る。
「……そうだね。そうしようか」
 叡智が輝き、見出すは路。
 運命の刃を地に向けて、くるりくるりと空気かき混ぜて早業の旋風。
 それ、と天へと放つように向きを変えれば、ぶわりと広がる花びらの舞。
 ひらりはらりと舞い踊り、それは即席のカーテン――エドガーの姿を覆う幕へと早変わり。
「なんてことを!」
 緑を覆うように降り注ぐ花の名残り。四つ葉のみを至上とする彼女に、その光景は許しておけぬ。
 だからこそ、それを否定するように、使者が幾度目かの矢を放つ。花びらの幕へと向けて。
 だが、それに気を取られた時点で、エドガーの姿を幕の向こうに見失った時点で、もう遅いのだ。

「女性に後ろから声を掛けるなんて、マナーがなっていないかもしれないけれど、まあ、許して欲しいかな」

 言葉は後ろから。そして。
「――あ」
 ぞぷりと使者の胸から生えた刃の切っ先。花の幕を隠れ蓑として近づいた、エドガーの刃が切っ先。
 信じられぬものを見るように使者の目が見開かれ、否定するように手が己の胸に生えたそれへと伸び、触れるは叶わずだらりと垂れる。
 するりと切っ先が埋没し、エドガーの手元に戻れば、どさりと倒れ伏す使者の身体。
「すまないね。王子様だって、たまには背後から奇襲するんだよ」
 はらりはらりと舞いおちる花の雨。その中で、エドガーは刃を収めて黙礼を。
 黙礼が終わる頃には、使者の緑は花の色に埋め尽くされていた。
成功 🔵🔵🔴

ニオ・リュードベリ
うう、嫌な空気
あの蒸気をどうにかしないといけないんだね

UCで鎧を作り出そう
顔を覆って蒸気を吸わないような形にしたいな
呼吸に支障がないレベルで防御しておこう

けれど長期戦は不利だね
鎧を作り終えたらガンガン攻めるよ!
光の翼で飛んで敵へと接近
この時風圧とかで上手く蒸気も吹き飛ばせないか試してみるよ

【視力】も確保しつつ嵐の中を突き進む
多少の攻撃は【激痛耐性】と鎧で誤魔化せる
優先するのは致命傷を負わないように接近する事
そして敵を見逃さない!

上手く接近しきったらアリスランスを構えて【ランスチャージ】!
敵本体を狙うけど、それでも難しいならせめて蒸気機関にダメージを
そしてそのまま体勢を変えて敵を【串刺し】だよ!


「うう、嫌な空気」
 分厚い壁越しに聞いたかのような、くぐもった声。
 その音源を見れば、広がる緑の絨毯にあるは影の形作る鎧姿。
 どうやら、そこから漏れ聞こえたものらしい。
 恐る恐ると緑の絨毯を踏みしめ、きょろりきょろりと辺りを見回すその姿は、全身鎧の姿とは裏腹に小動物のような印象を与える。
 その鎧姿こそはニオ・リュードベリ(空明の嬉遊曲・f19590)。
 この緑の園に漂うくすんだ空気――瘴気の蒸気と呼ばれるそれから身を守る為の姿であった。
「この蒸気をどうにかしないとけないんだよね」
 再びのくぐもった声。
 鎧の手が空気をかき混ぜれば、緑に揺蕩うセピアも踊る。
 だが、周囲を幾ら見回したところで、あるのは緑と蒸気だけ。
 その元凶たるオブリビオンの姿はどこにも見当たらない。

 ――さやり。

「……風?」
 始まりは小さく、弱く、蒸気を揺らし、四葉を揺らすのみ。
 しかし、次第に強まるそれはまるで嵐の如くと吹き荒び、空気をかき混ぜる。
「わわ!? なんなの、この風!」
 アリスランスを地に突き立て、足を踏ん張りニオは吹き飛ばされまいと耐えるのみ。
 四葉を巻き上げるのみではなく、瘴気すらをも纏うそれは、ニオが兜を展開していなければ、きっと彼女の身を蝕んでいたことだろう。
 念のためにと展開していた影の鎧。それがニオの命を確かに繋いでいた。
 そして。
「――あら、耐えたのね」
 風が突然にピタリと止まり、巻き上げられていた四つ葉が雪のようにひらりひらりと舞い落ちる。
 その光景の中、ニオの視界には新たなる影。四葉を模した蒸気機関背負う、オブリビオンが姿。
「四つ葉の……使者……」
「私の事、知ってるの?」
 ニオの口より無意識にとまろび出た、オブリビオンの名前。
 それはかつてこの世界の違う時と場所で遭遇したからでもあるし、それ以前から彼女を知っているような気もしたからこその。
 だが、探していた相手――花園を緑に蝕んだ元凶を前にして、悠長に話をしている余裕はない。
 如何な鎧の護りがあるとはいえ、呼吸を出来るようにはしているのだ。ならば、いつかその護りを瘴気が抜けてくる可能性は否めない。
 故に、返答の代わりとニオが響かせたは、アリスランスの構える音。
「せっかちね」
 だが、早くニオを片付けたいのは、使者も同じ。
 何故なら、この緑の園に四葉以外が僅かな時でもあるを認められないのだから。

 ――風が、嵐が、吹き荒れる。

 轟と響いて風が巻き、ニオを再びと呑み込まんとする。
 だが、今回は来ると分かっていること。先ほどのように突然と吹き荒んだわけではない。
「大丈夫、大丈夫!」
 ニオの力は心の力。
 己を強くと保持すればするほどに、それに呼応して影の鎧もその強固さを増す。
 風が鎧を叩く、強く強く叩く。諦めろ、と。膝を折れ、と。
 だがら、敢えてそれにこう言おう。
「あたしの心は、無敵だよ!」
「――! なにを!」
 吹き荒ぶ風を押しのけて、翼が開く。影の鎧より生じ、遍くを照らし出す光の翼が。
 ばさり、と、それが強く羽ばたいた。
 生み出すは加速。吹き荒ぶ風の中をすら飛び、進むための力。
 瘴気も、嵐も、四葉すらも吹き飛ばし、ニオの身体は弾丸の如く。
 その反攻に、使者が慌てて躱そうとするのが『視』えた。

「――逃がさない。見逃さない!」

 鎧兜の影の奥。ニオの金色が強く煌く。
 そして、身体ごと、アリスランスごととぶつかるように、その身は使者を逃さず捉えたのだ。
「あ、が、あぁああ!?」
 使者を貫いた感触がニオの手に返る。悲鳴が聞こえる。
 だが、それだけでは足りぬと馬乗りに身体を抑えつけ、駄目押しとばかりにもうひと押し。
 己の内――獣の如き闘争本能を剥き出しにしたニオ。
 ずぶりずぶりと穂先を進め、使者の魂をも蹂躙するかのように。
 断末魔の響きはいつしか小さく、ある時を境にふつりと消えた。
 それが、この戦いの終わりを報せるもの。
 ニオが我に返った時には、もう吹き荒ぶ風も、下敷きにしていた筈の使者の姿もどこにもなかった。
 ただ、緑の絨毯の柔らかな感触が、ニオに戦闘の終息という現実を伝えるのみ。
成功 🔵🔵🔴

メアリー・ベスレム
メアリも猟兵(ハンター)
彼らも猟書家(ハンター)
獲物(オウガ・オリジン)は早いもの勝ち、って事かしら
とりあえずいつも通り、殺せばいいんでしょう?

瘴気へ突入する前に
【私を食べて】で大きくなって
これだけ頭の位置が高ければ
瘴気を吸わずに済むでしょう?
それでも必要ならば【息止め】て
もくもく視界が悪い中
【聞き耳】立てて敵探す
当たりを付けたら包丁で
辺りを無造作になぎ払い

元がきれいなセピアの花園でも
一度枯らされてしまったならば
遠慮は必要ないかしら?
高く【ジャンプ】で瘴気から逃れ
落下とともに【踏みつけ】【重量攻撃】!

あら?
何か言っていたみたいだけれど
遠くてちっとも聞こえなかったわ


 辺り一面、緑の海。
 されど、その緑がなんであるのか、メアリー・ベスレム(Rabid Rabbit・f24749)には分からない。分かる必要もない。
「メアリも猟兵。彼らも猟書家。獲物は早いもの勝ち、って事かしら」
 だって、彼女の心はもうその先にあるのだから。
 どしん。と、小さな歩幅の大きな一歩が地を揺らす。
 それだけで、彼女の『足元』に漂う蒸気が怯えたように揺らめいた。
 ふわり、ふわり。
 蒸気が足を擽り、脛を擽り、膝を擽る。
 そう、それは可笑しな、不思議な光景。
 本来であれば瘴気の蒸気に包まれる程の背丈しかない筈のメアリー。でも、今は悠々とそれを越える位置に愛らしき顔。
 小さな巨人がそこにはあったのだ。
 また、どしんと一歩が緑の海に刻まれた。
 意図せず、ぐりと踏みしめれば、それだけでそこは緑を失い、大地の地肌――茶色を覗かせる。
「――! ――――!」
「あら、何か聞こえたかしら?」
 きょろり、きょろり。
 どしん、どしん。
 緑は荒れ果て、蒸気は揺れる。
 そして、彼女ははたと思い出すのだ。
「そういえば、ここにも何かだったかが居るのだったわね」
 瘴気の蒸気のことは覚えていたから、こうやって大きくなって対応したが、まだそれ以外にも何かあったのだった。
 それは、確か――。
「――ああ、この花園を枯らしたナニカだったわ」
 そうそう。それがこの蒸気を生み出していたのだった。
「とりあえずいつも通り、殺せばいいのよね」
 それを思い出し、なら、行きがけの駄賃とばかりの気軽さで。
 だけれど、困った。どうしよう。
「探すにも、相手が小さすぎて良く分からないわ」
 膝下の蒸気はゆらりゆらり。
 僅かに色付くそれが、メアリーにその中を見通すを妨げる。
 先程のように、何か聞こえないかと耳を澄ませてみても、なんだか今一つ。
「まあ、いいわ」
 なら、適当に包丁でも振ってみようか。
 そして、ぶん。と気の無い横薙ぎが振るわれた。

 さて、ここで本来の大きさの視点に戻してみよう。
 見上げるような巨躯が、ゆるりと刃を振るった。メアリーの普段からすれば欠伸が出る程にゆっくり、ゆっくりと。
 されど、本来の大きさ――蒸気の向こうに居るであろうオブリビオン――四つ葉の使者からすれば、堪ったものではない。
 メアリーにとっては気のない一振りでも、地上で巻き起こるは竜巻もかくやという暴風なのだから。
 使者からすれば、もうやめて。と言いたいに違いない。
 ただ歩くだけで四葉の絨毯を踏みにじり、軽くと振れば四葉が吹き千切れる。
 最早、戦いなどではない。蹂躙ですらもない。天災との戦いのようなものであった。
 嗚呼、だからと言って、使者も諦める訳にはいかない。
 彼女には夢がある。願いがある。四葉で世界の全てを満たすという。
 ならば、ここで諦めてはそれが叶うはずもないだろう。
 だから、精一杯の力を込めて、その力を行使するのだ。
 生み出すは白詰草で編んだ怪物。犬の姿を持つそれは、鋭い牙に優れた体躯を誇るもの。
 いきなさい、と彼女は言った。
 応えて、白詰草の怪物は吼えた。
「なんだか擽ったいけれど、そこに居るのね?」と、メアリーは言った。
 ――そして、天が降ってきた。
 ずしんと響いたそれに、緑はめくれ上がり、地はひび割れ、蒸気は吹き飛ぶ。
 当然、それに巻き込まれた使者と怪物がどうなったかと言えば――。

「あら、擽ったいのが消えたわね」
 メアリーはぴょんと小さく跳ねただけ。
 それだけで、ちくちく、こしょこしょな感覚はもう現れることはなかった。
 逃げたのだろうか。それとも、骸の海に還ったのだろうか。それとも、件の存在は他の猟兵に討たれて、最初からもういなかったのだろうか。
 くるりくるりと思考が回る。回り、回って、まあ、いいか。と空の彼方。
 擽ったい感覚が消えたのなら、先に進めるのなら、どうでもいいではないか。
 だから、どしんどしんと彼女は我関せずと歩を進めるのだ。早い者勝ちのために、と。
 さて、とある菫は少女に踏みつぶされても嬉しがっていたけれど、四葉がメアリーに踏みつぶされてどうであったかは、もう誰も知ることは無い。
大成功 🔵🔵🔵

テリブル・カトラリー
四葉…中々みつからないからこそ、ありがたみがあるというものだろう。
他を取り除いてまで欲しがるものではないな。

超重金属製の大盾を展開、盾受けで魔力の矢を防ぎつつ

破壊工作『爆破工作』発動。多段発破による吹き飛ばしで
使者もろとも瘴気をなぎ払い、ブーストダッシュ。
爆炎に紛れて接近。

生憎、この鋼の身体では四葉の養分にはなれそうにならんだろう。
早業で機械刀を振るい、超高熱の属性攻撃を行い1人を焼き斬り、
クイックドロウ、自動拳銃で複数人に制圧射撃。
今、なるつもりもないがな。


 四葉のクローバー。
 その花言葉と言えば、『幸運』というのは有名であろう。
 それは、本来であれば三つ葉である筈のものが、四つ葉となっていることの希少性であるが故に。
 だからこそ――。
「四葉……中々みつからないからこそ、ありがたみがあるというものだろう」
 それがこうも視界に一杯に広がっているともなれば、そこに物珍しさなどありはしない。
 この光景が当たり前であれば、間違っても『幸運』などという花言葉は貰わなかったであろう。
 テリブル・カトラリー(女人型ウォーマシン・f04808)は、嘆息と共に四葉の絨毯の上を歩む。
 ずしりと踏みしめた足。その下で、四葉が押し花の如くとなっていることは想像に難くない。
 だが、遠慮も何もなくテリブルはその足を動かし続ける。
「だからって、思いやりもなく踏みしめなくてもいいんじゃない?」
 ――探しビトたる、四つ葉の使者が現れるまで。
 ずしり、と次の足を踏みしめることなく、テリブルの足が止まる。
「思いやりもないのは、どちらだ」
「どうしてそんなことを言うのかしら」
「分からないのか」
「分からないわ。幸運の四葉を、こんなにも増やしているのに」
「その幸運の下に積み上げた骸はどれだけだ」
「他の花なんて最初からいらないのよ。四葉だけあればいいの。むしろ、この子達の栄養になれたんだから、感謝して欲しいぐらい」
「そうか。ならば、相互理解には遠いな。私からすれば、四葉は他を取り除いてまで欲しがるものではない」
 抜き打ち。
 パンと弾けた火薬の香りと、弾き出された薬莢が地に落ちる。
「乱暴ね」
「お前のやり方ほどではない」
 だが、虚を突くようにして放たれたテリブルの弾丸も、緑の園に満ちる瘴気の加護を受けた使者には届かない。
 その掌に浮かべられた魔法陣の上で弾丸は止まり、魔力の奔流に砕ける。
「――アナタも、この子達の養分にしてあげる!」
 そして、それはその勢いのままにテリブルの身を貫かんとするのだ。
「……すぐすぐ、どうこうはならんか」
 ガンガンと煩く奏でる大盾が魔力の矢を受け止める音。
 眼前にて展開したそれを持ち、じわりじわりと動きながら、脅威をいなすながら、テリブルは戦況を分析する。
 初手の抜き打ちは普通であれば、それで決着がつく程の一射。だと言うのに受け止められた。
 使者より放たれる矢は受け止められてはいるものの、盾越しに伝わる音は僅かずつだが盾の護りが削られている証拠。
 その身体能力を支えるものは、盾を削る程の威力を放ち続ける力の源は。
「――やはり、この瘴気だな」
 この、周囲漂う瘴気の蒸気に他ならない。
 ガリガリと響く音の種類を変えた大盾に、受け止め切れる時間はそう長くはないとテリブルの経験が告げている。
 ならば、早急に打開を。
 ――いや、そのための方策は、既に打っているというべきか。

「――起爆」
「え、いったいなにが!?」

 そして、爆炎が緑の海のあちらこちらからと立ち昇る。
 なんのために四葉の海を歩き続けていたのか。
 それは勿論、使者の姿を見つけるためだ。だが、もう一つ、そこには意味があったのだ。
 それこそが、この爆炎の正体。姿なき小型の爆弾――爆破工作のためにこそ。
 突然のそれに、熱に、蒸気が晴れる。
 テリブルの視界の中、焔に照らされる使者は爆炎に気を取られ、浮足立っているは明らか。本質として戦う者ではないが故に、その咄嗟に対応しきれていない様子であった。
 これがテリブルであれば、恐らくはそのような醜態を晒すことはなかっただろう。
 その明確な差が、明暗を分ける。

 ――轟と響く、焔の声。

 テリブルが爆炎の中を突っ切り、その推進力の限りをもって彼我の差を埋める。
 それに使者が気付いたところで、もう遅い。
 瘴気の加護もなく、爆炎に動揺する彼女に、百戦錬磨の刃を止める術など、あろう筈もなかった。
「生憎、この鋼の身体では四葉の養分にはなれんだろう」
「――あ」
 斬。
 爆炎の名残に負けず劣らずと、空気焦がす高熱の刃が慈悲もなく使者の身を断つ。
 断ち抜け、ぶん。と、血振りの如くと刃を振れば、遅れてどさりと泣き別れの身体が地に伏した。

「――勿論、なるつもりもないがな」

 テリブルが振り返れば、ちりちりと燃えて消えゆく使者の身体。
 四葉の海が焔の海に染められていく中、歴戦の眼はそれを静かに見送っていた。
大成功 🔵🔵🔵

トリテレイア・ゼロナイン
瘴気の蒸気対策として●防具改造
関節部や可動部に防塵処理やカバーを施し気密性高め●環境耐性向上
さらに装着したUCの飛翔能力生み出すスラスターを吹かせば一時的に蒸気を吹き飛ばすことも可能でしょう

地上を滑走するように●スライディング移動で接近

そのような魔力の矢など、この盾と追加装甲の護りを抜けると思わぬことです

十分接近すればタックルという名の●シールドバッシュで弾き飛ばし
すかさず装甲を展開
柄尻にワイヤーアンカーを接続した剣を●投擲
●怪力と●ロープワークで●なぎ払い敵を一掃

戦争とはいえ、花が散ってしまいましたね…
いえ
この世界を護る為、御伽の騎士のようにはいかずとも
為せることを為すのみです
次の目標は…


 眼下に広がる緑の海。
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)に搭載されたスラスターが火を噴けば、緑は波打ち、飛沫をあげる。
 ぶわりと舞って、ひらりはらりと舞い落ちる飛沫――吹き千切れた四葉の葉。
 それを尻目に、トリテレイアは揺蕩う蒸気にも一筋の線を描きながら、その中を翔け抜ける。
 そして、トリテレイアの機動に遅れること数瞬、その身があった場所を魔力の矢が貫いていくのだ。
 その下手人こそ、背中に四つ葉のような蒸気機械を背負いしオブリビオン――名を四つ葉の使者。
 本来は様々な花の咲き誇る園であったそこを緑の海に変えた張本人は、今度はその矛先をトリテレイアへと向けていたのだ。
 この地にあっていいのは四つ葉だけ。
 彼女からすれば正当なる。他の存在からすれば、傍迷惑な思想の下に。

 ――くん、と。トリテレイアの機動が鋭角を描く。

 直角を越える機動は、その身体に凄まじき圧力を掛けることだろう。ともすれば、その圧で意識がとぶことすらも。
 だが、彼の身体は機械のそれ。
 鋭角の機動に鋼鉄の身体がぎしりと鳴ることはあっても、それで意識がとぶようなことはない。
 まして、今のこの身体――頼もしきメカニック達が生み出した追加機動装甲であれば、その身に掛かる負荷は如何ほどもない。
 故に、彼はこの瘴気の世界を己が力と変える使者の魔手から、未だと逃げおおせていたのだ。
「ちょこまかと!」
「そう容易くは堕ちませんよ」
 バレルロール。
 ぐるりと螺旋描いた視界に、飛来した矢がするりと当たることもなく通り過ぎていく。
 時に高く、時に地上すれすれを、自由自在と飛翔する。その立体的機動を捉えることなど、出来るものではない。
 だが、逃げ続けているだけでは意味がないのでないか。
 相手はこの土地そのものを味方につけているようなもので、その力は底なしとも思える程のものなのだから。

「――そろそろ、頃合いですかね」

 いいや、それすらもがトリテレイアにとっての戦略なのだ。
 この飛翔を続ける間も、彼は常にそのアンテナを張り巡らせていた。
 使者の力の変動を、周囲漂う瘴気の蒸気の濃度との関係性を。
 加速の勢いでもって蒸気を吹き散らし、螺旋の機動でもって吹き散らし、考え得る手段の全てを講じ、気取られぬようにと。
 そして、それは遂に結実の時を迎えるのだ。
 挑発するかのように相手スレスレへと接近し、その勢いでもってまずは蒸気の一部を引き剥がす。
「この、馬鹿にして!」
「いいえ、馬鹿になどしてはいません。性能を引き出すのに、必死ですから」
 刹那の会話。同時、アフターバーナーの置き土産。
 轟と焔を一層に激しく吐き出して、引き剥がしきれなかった瘴気を蒸発させていく。
「――きゃあ!?」
 後ろで、その衝撃波と熱に態勢を崩す使者の気配。
 ギシリと掛かる圧を振り切るように、即座と転進し、再び蒸気が満ちるより早くトリテレイアは翔ける。
 そこに込められた意思を汲み取った訳でもないだろう。だけれど、回避に重きを置いていた今迄と明らかに違う機動に、使者もまた態勢を崩しながらも迎撃を行うのだ。
 掌に宿るは魔法陣。放たれるは、交戦を開始してから幾度もと目にした魔力の矢。
 だが――。

「そのような魔力の矢で、この盾と追加装甲の護りを抜けると思わぬことです」

 翳す盾が、その身を包む叡智の装甲が、瘴気の加護なき矢に打ち負ける筈などないのだ。
 見せつけるように、相手の心を砕くかのように、正面から矢を受け止め、弾き飛ばし、勢いのままに身体ごと使者へとぶつかって行く。
 ――跳ね飛ばされるのはどちらかなど、言うまでもないだろう。
 緑の姿が宙を舞い、白銀の姿は堂々たると地を踏みしめる。

 ――装甲、展開。

 追加装甲を外し、その手に持つは柄を縄で結んだ重厚なる刃。それをまるでカウボーイの如くと振り回せば、即席の鎖鎌の誕生だ。
 トリテレイアの怪力に、遠心力すらもが加われば、まともにそれを受け止め切れぬ使者の身体を断つなど、容易き事であった。

「……戦争とは言え、花が散ってしまいましたね」
 衝撃散らして駆け抜けたが故に、剛腕の旋風を巻き起こしたが故に、緑の海は荒れ果てて、所々に地の彩を晒す。
 だが、それは致し方のない事だろう。
 戦いの最中、それを気にすることの出来る余裕などあろう筈もないのだから。
「いえ、この世界を守る為、御伽の騎士のようにはいかずとも、為せることを為すのみです」
 如何にその発生が不自然であろうとも、そこに確かにあった自然の名残。
 ならば、それに小さく黙祷を捧げる事とて許されよう。緑の光を僅かと消して、彼はその顔を俯かせる。
 そして、再びと顔を上げた時には、もうその顔には緑の光が戻っていた。
 過去を、失くしたものを想う時間はもう終わり。
「次の目標は……」
 今を生きる者達の、この世界の為に、トリテレイアは前を向いて、また新たな一歩を踏み出すのだ。
大成功 🔵🔵🔵

楊・宵雪
同行
神崎・柊一(f27721)
「いたいけな子供と戦うのはやりづらいけれど、放置するわけにもいかないのよね

瘴気の蒸気対策
可能なら風上取り呪詛耐性とオーラ防御で耐え
UCの炎の熱で気流を起こし蒸気の流れを誘導
拡散防ぎ味方守りつつ技能破魔で無害化を試みる

さらに、部位破壊で蒸気機関部を狙い
衝撃波の風圧で蒸気から身を守る

相方と敵を挟撃し、背中を狙えるほうが蒸気機関を破壊する
自分がする場合技能部位破壊使用

蒸気が薄くなるよう敵から離れて遠距離攻撃を主体に
オーラ防御と残像で防御しつつ
わざと外した攻撃を誘導弾で軌道曲げて、犬は無視し使者の背中を狙う


神崎・柊一
同行
楊・宵雪(f05725)

「クローバー…草かぁ
これはさぞよく燃えるんだろうなぁ…

瘴気の蒸気対応
先制+弾幕+貫通+部位破壊で敵の蒸気機関を狙い
UCの爆発の熱、爆風で蒸気の霧散と瘴気の破壊を狙う
結界術で自分と仲間への蒸気の影響を抑える

術の発動に必要な魔法陣を部分破壊で壊し、発動阻止を狙う
また重火器や爆発で空気もクローバーも燃やし尽くし敵の地の利を無くす
生まれる炎で上昇気流を作り蒸気も上に逃がす

無機物を変えてくるならこちらの武器も変える可能性がある
その時は刀に切り替え属性攻撃を炎にして刺した内側から焼き殺す


 四葉の上に落ちる影。
 さくりさくりと踏み歩き、連れ立つ二人は楊・宵雪(狐狸精(フーリーチン)・f05725)と神崎・柊一(自分探し中・f27721)。
「これは放置するわけにもいかないわよね」
「壮観と言えば壮観なんだろうけど、この空気は頂けない」
 四葉の海に揺蕩うは、くすみくすませる瘴気の蒸気。四葉には影響与えず、しかし、それ以外を蝕むもの。
「幸いと言うべきなのかしらね。今のところは、私の力だけでも抑え込めてるみたい」
「普通に呼吸が出来るってのは、ありがたいもんだね」
「でも、戦いながらだとどうなるかまでは分からないわ。だから、過信は禁物よ」
「了解。その時は、精一杯抵抗をさせてもらうさ」
 揺らり揺らめく蒸気が割れる。まるで二人の周囲だけを避けるかのように。
 それこそは、宵雪の敷いた守りの策。
 柊一をすら包むように広げた己のオーラ。破魔の力宿させたそれを壁とし、蒸気が二人を蝕まんと触れようとする端から浄化しているのだ。彼女が培った力と知識。それの為せる業であった。
 そんな力の一端に、俺では到底、と柊一は苦笑浮かべて肩竦め。
 だが、だからといって卑屈になっている訳ではない。彼女の展開するオーラを更なる確固たるものとしているのは、彼の補助もあるからこそ。
 それは宵雪もまた理解していること。
 浄化と隔離。力の方向性が違うのは勿論、例え、力が足らずとも、それでも柊一はいつだって自分に出来ることを考え模索し続けているのだから。
「考えてあるのよね?」
 もしもの時の手段を。
「さてね。でも、クローバーはさぞよく燃えるんだろうなぁ……」
 その返答だけで互いに十分。
 ならば、これから先の戦闘で、もしもが起こったとしても、問題などないことだろう。

 ――遠きより、輝きの矢が飛来する。

 それは地へと着弾すると同時に弾け、オーラの壁を叩いて揺する。着弾した先の四葉は傷つけず、ただ二人だけを狙って。
「いたいけな子供の悪戯と言うには、やり過ぎね」
「随分と乱暴な登場の仕方なもんだ」
「それはこちらの台詞。随分と、四葉を踏み荒らしてくれたものよね!」
 宵雪と柊一とが歩いてきた道筋。
 それを示すかのように、緑の上に点々と踏み潰された痕。
 だけれど、それは致し方のない事。
 歩くための道がなければ、道なき道をいくしかないのだから。
 だが、二人の前に姿を現したオブリビオン――四つ葉の使者からすれば、それは正当な怒りなのだろう。
 折角と広げた自分の世界に、四葉以外が土足で踏みこむなど、言語道断である、と。
「話を聞きそうにないなぁ」
「最初から期待なんてしていないわよ」
 零れるボヤキ。だが、それぞれの手は既に得物を引き抜いて臨戦態勢はとうの昔に。
 四葉の上で対峙する互い。
 合間に揺れるは瘴気と破魔の鬩ぎ合い。
 先に動いたのは――使者。
「ぐちゃぐちゃになって、素敵な四葉の一部になりなさい!」
 掲げる掌、魔法陣。先の輝きの矢はやはり彼女のものであったのだろう。そこより放たれる矢は雨霰。
 周囲漂う瘴気に強化されたそれは、速射を重視していながらも、当たれば痛いでは済まないであろう威力を秘めたもの。
 大きく跳び別れた二人を追うそれは、直撃でなくともその二人が纏うオーラをじわりじわりと削り取るのだ。
「随分なものね、と!」
 だが、二人とていつまでもと指をくわえて逃げるだけではない。
 二手に分かれたを利用して、使者を挟み込むような立ち回り。片方が正面に相対すれば、もう片方が背面を取れるようにと。
「鬱陶しい!」
「そりゃそうだろう。地の利がないんだから、数の利を活かさない手はないってもんだ」
 符が飛び交い、銃弾が飛び交い、矢が吹き荒れる。
 四葉が散って、蒸気が揺れて、守りの結界が千切れ飛ぶ。
 瘴気に強化された使者に対し、二人は確かに渡り合っていた。
 だが。
「そんなに、四葉を荒らしたいの?」
 問いかけるような使者の声。応えたのは二人でなく、代わりに四葉の海がざわりと揺れる。
 そして、現われ出でるのは――。
「緑の怪物ってわけね。犬を模すにしても、ちょっと造形が物足りないわね」
「だからこそ、怪物っぽさが増してるのかもだ」
 寄せあい、捻じれ合い、形作るは四葉の怪物。犬の如き、四足獣を模したものが5つ。
「これで、数の差もこちらが上ね?」
 二対一だからこそ、二人は挟撃が出来ていた。だが、それが二対六ともなれば、そうもいかぬであろう。
 使者の嘲りと怪物の唸りが響く。
 そして、使者が再びと放つ矢と共にそれらもまた――。

「頼むわね」
「ま、当てずっぽうも、当たれば確かな先読みってね!」

 怪物達の駆ける足音を掻き消すかのような、銃火の咆哮。
 それは数多の矢弾が吐き出された証明であり、怪物達がその役割を果たすより早くとそれに呑み込まれたを示すもの。
 為したは、柊一の手によって。
「え、なんで……!」
「なんでって、何かしでかそうってのに、こっちも何もしない訳がないだろう」
 着弾、着弾、着弾。
 しかし、それは使者の放つ矢のように四葉を傷つけぬものではない。
 怪物を呑み込むだけでは飽き足らず、地を削り、緑を散らし、蒸気を掻き消す怒涛の咆哮。
 使者の形成した世界が、彼女の地の利が、瞬く間に引き剥がされていく。

「茫然としてるところ悪いけれど、僕は一人じゃなくてね?」
「あなたは、少しオイタが過ぎたのよ」

 背面より襲い掛かるは焔。宵雪操る狐火の。
 本来であれば、数にして72にもなるそれであったが、今は寄せ合い、混ざり合い、九つの焔として。
 だが、それだけではない。
「造形というのは、こう整えるものよ」
 焔が形作るは狐の姿。端正に整えられたその躍動は、まるで生きた炎のよう。
「――がっ!? あ、あああ!?」
 そして、それは使者の身に喰らい付き、延焼し、その身を燃やす。背に負う蒸気機関ごとと。
 力を強化していた瘴気は柊一によって剥ぎ取られ、今、その発生源すらをも破壊された。
 ならば、もうそこにあるはただのオブリビオンに他ならず、それに抵抗の手段など有り得る筈もない。

「――燃え尽きるといいわ」
「――吹き飛べ、フルバースト!」

 九つのの狐火が更にと融け合い、一つの劫火と姿を変える。
 銃火の咆哮が更にと声を轟かせ、熱と銃弾の嵐が蹂躙する。
 使者の断末魔は掻き消され、骸の海の彼方へのみと響き渡るだけ。
 劫火が、咆哮が、落ち着きを見せた頃には、もうそこにはなにもない。
 ただ、パチリパチリと名残の火の粉が弾けるのみだ。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

ニール・ブランシャード
瘴気の花園かぁ…
ここ、すごく、すっっごく…
おいしそうなにおいがする!!
君たちもこういう空気が好きなの?
ぼくもね、好きなんだ。食べ物としてっていう意味でだけど。

UC「毒物食性」

鎧の隙間から呼吸するように瘴気を吸い込み、清浄な空気にして排出する。
うまくいけば周りから瘴気が減ってきれいな空気が増えるから、敵は弱くなるね。

ぼくは魔法使えないし、飛んでくる矢は避けるか、斧で切り飛ばす!
ちょっとくらい食らっても平気平気!久しぶりにおいしいごはん食べて元気だからね!

おいしいけど、空気だけじゃあんまり食べた感じしないなぁ。
瘴気の混ざった泥とか…どこかにない?


 花園に揺蕩う瘴気は毒。生ける者を蝕み、四葉以外を朽ち果てさせる毒。
 だが、時に、そのような過酷とも言える環境でも適応を可能とする者とてあるのだ。
「ここ、すごく、すっっごく……いいにおいがする!!」
 ニール・ブランシャード(うごくよろい・f27668)。の言葉に宿るは興奮。
「あら、猟兵なのに、分かっているじゃない」
「ここ、いい香りに満ちているよね。すごく、好きだなぁ」
「そうよ。香りだって、すごく素敵なんだから」
 興奮した様子のニールの眼前、ふわりと舞い降りたは四つ葉の使者。
 彼女はニールの様子を好意的に受け止め、この花園を四葉で埋めた自身の成果を誇るように胸を張る。
「君もこういうのが好きなの?」
「勿論よ。そうでなければ、ここまで広げたりなんてしないわ」
「そっか、そっかぁ!」
 まるで、同類を見つけたかのような親近感。
 それはニールの胸中に芽生えたものでもあり、使者の胸中に芽生えたものでもある。
 ニールは大きく胸いっぱいに緑の園の空気を吸い込み、堪能するかのようにこくり。
 その様子に、使者の胸に芽生えていた親近感が、少しだけ、翳りを帯びる。
 この蝕む瘴気の中、例え猟兵であろうとも、これを大きく吸えばただでは済まない筈なのに、彼は何故無事なのか、と。
「ぼくもね、好きなんだ」
「……そうなのね」
 ニールの顔は、フルフェイスの兜の奥へとあるために、使者からは見えない。
 だけれど、感じたの違和感は段々と膨れ上がる。どこか、決定的なナニカを掛け間違えている気がしてならない。
 そして、その違和感に決定打を齎す言葉が、ニールより零れだす。

「――食べ物としてっていう意味でだけど」

 蔓延る瘴気の、この空気が。
 それはつまり、四葉の齎すものが好きだと思っていた使者と最初からこの空気のことのみを語っていたニールとの違い。
 それを理解した瞬間、使者の胸の内にあった親近感は敵意へと変わる。
 四葉を評さぬのであれば、この空間を維持するものを喰らおうとするのであれば、それは即ち敵であるからこそ。
「やっぱり、猟兵は敵だわ!」
「――?」
 抜き打ちの如き、魔力の矢の射出。
 瘴気に強化されたそれは、突然の使者の行動に疑問符を浮かべるニールへと突き刺さる。
 それでも足らない。もっと、もっと、もっと。
「ぐちゃぐちゃにしてあげるわ!」
 残骸すらも残さぬと言わんばかりに叩きつけ続ける、矢の雨。
 衝撃にもくりと土煙があがって、ようやくそれは止まった。
「これだけやれば、十分よね」
 もくりもくり。
 その奥にあるであろう鎧姿の無残を想像し、使者はようやくと満足げに。
 だが。

「うーん。急にだなんて酷いじゃないか」

 土煙の向こうから響いたは、痛痒の欠片も感じていない声。
「な、あれだけ撃ったのに、なんで……」
「あなたのお蔭で、久しぶりにおいしいご飯を食べられたからね!」
 ――毒物食性。
 毒を喰らい、飲み込み、己の力へと変える。
 それがニールの持つ力の一端。
 そして、この土地に揺蕩う毒――瘴気の蒸気は見渡す程に。それは使者を強化するものであったけれど、ニールをも強化するものともなっていたのだ。
 それになにより、使者は一つの思い違いをしていたのだ。
 ニールの纏う鎧姿はあくまでも彼の住処でしかない。
 その本体は鎧の隙間からぽたりと垣間見える――。
「……ブラックスライム!」
 そう。もとより、その身体は不定形。
 ぐちゃぐちゃにしてあげると彼女は言ったが、それ以前よりニールの形はぐちゃぐちゃなのだ。
 ならば、彼女が如何に矢を叩きつけようとも、その意味などないは自明。

「じゃあ、今度はこっちの番だね!」

 鎧姿が近付いてくる。
 矢をものともせず、瘴気をものともせず。
 ずしり、ずしり、ずしり。
 そして、振り上げられるは、鈍く輝く斧の一振り。
 いつの間にか周囲の瘴気は全てニールの腹の中。生じた端から腹の中。
 清浄なる空気は使者に加護を与えることなく、斧の軌跡から逃げ出す力を与えない。
 ぶん、と断頭の刃が振り下ろされ、ごろりと転がる骸の身体。
 もう、その口が開くことはない。
 代わりに響いたのは、グゥと鳴ったお腹の音。
「……おいしいけど、空気じゃあんまり食べた感じしないなぁ」
 どこかに瘴気の混ざった泥とかでもあればいいのに。
 そんな彼の呟きだけが、瘴気の消え去った空間に響いて溶けた。
大成功 🔵🔵🔵

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

瘴気か、奴らを強化する毒ガスのようなものだろうが…
それならそれでやりようはあるさ

UCを発動
全身を強力な腐蝕ガスに変えて一帯の瘴気を浸食
破壊して中和させることで無害な水と酸素に変える
そしてそのまま蒸気機関にも侵入
駆動部を腐蝕して破壊し、動きを止める

毒を以て毒を制す…至言だな
さて、次は除草作業と行こうか

哄笑するデゼス・ポアを集団に突っ込ませて敵を斬り付けつつ
高速で移動させて魔力の矢の狙いを撹乱させる
その隙を付き、今度は敵集団を猛毒のガスで包んで倒していく
根どころか、葉に付くだけでも呼吸を止めて枯死させる毒だ、ひとたまりもないだろう

この四葉は幸運を運んでくれそうにはないな
駆除が正解か


ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

別の世界からアリスを引っ張ってくるだけあって、いろんな技術とかごちゃ混ぜにしてるのかしらぁ…?
まあ、あたしたちが言えることじゃないけれど。

まずはゴールドシーンにお願いしてラグ(浄化)・エオロー(結界)・ソーン(退魔)で〇毒耐性のオーラ防御を展開。瘴気相手なら〇破魔や〇浄化属性が通じるからまだ対処は楽ねぇ。
向こうが満足する答えなんて返せるわけないし、召喚されたのをどうにかするほうがまだ現実的ねぇ。召喚された端から〇射殺で撃ち抜いてくわぁ。植物でできてるんだし、火には弱いわよねぇ?
弾丸に刻むのは不動明王印。破邪顕正の炎で出てくる先から〇焼却しちゃいましょ。


「瘴気か。奴らを強化する毒ガスのようなものだろうか。この世界にも、そんな技術があったとはな」
「別の世界からアリスを引っ張ってくるだけあって、いろんな世界の技術をごちゃ混ぜにしてるのかしらぁ?」
「ふむ。節操のない話だな」
「まあ、あたしたちが言えることじゃないかもしれないけれど」
「それもそうだな」
 様々な世界を渡り歩くは猟兵ならばこそ。そこで得た技術に、知識にとを身の内に取り込むもまた。
 そんな、数多居る猟兵の一人でもあるキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)とティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は、くゆる瘴気のただ中にあっても、冗談軽やかにと軽口を交え合う。
「しかし、それならそれでやりようはあるさ」
「速攻性の致死毒という訳でもないみたいだし、生温いことよねぇ」
「それだと、四葉までもが死んでしまうじゃない」
 降り注ぐ第三者の声と脅威。
 ふわりと降り立つ四つ葉の使者。遅れて、文字通りの矢の雨が。
 だが、それにただ貫かれるを待つ二人であろう筈もない。
 躱し、撃ち落とし、雨にも己の血にも濡れずと、その五体満足にて姿見せた使者と相対するのだ。

 ――ふわりとかき混ざる瘴気の蒸気は彩を増し。

「ふん。発生源が向こうからお出ましとはな」
「探す手間が省けたわねぇ」
 瘴気の濃さが増せば、如何な猟兵とていつまでも無事とはいられない。まして、それは使者の力をも濃さに比例して強化するものでもある。
 しかし、二人は動じることもなくと、その眼差しを使者へと向けていた。
 そんな二人の様子だからこそ、使者もまたその警戒レベルを跳ね上げる。
 そのまま一人で二人同時に相対するは、如何な強化の上でも不利である、と。
「ねえ、ぐちゃぐちゃになるのと、この子達に噛砕かれるの、どっちがいい?」
 問い掛け、ざわめく四葉の園。
 ぞわりと動いた緑は使者の傍で形を為し、犬の姿模した怪物達へと成り代わる。
「その問い掛けに意味はあるのかしらぁ? 結局は、どっちも一緒の結末にしか思えないけれど」
「どちらもお断りだ」
 すげなく断ち切る言葉の刃。
 そして、それがそのままに戦いへの火蓋を落とす銅鑼の音。
「どっちもがいいなんて、贅沢ね。でも、叶えてあげるわ!」
「そんなことは一言も言っていないのだがな」
「ああいう手合いに、会話を期待するだけ無駄よぉ」
 そも、最初からそれは質問などではないのだ。
 使者の満足する言葉――死を受け入れる言葉など、二人の口から紡がれることは決してないのだから。
 瘴気に強化された矢が放たれ、同じくと瘴気に強化された化け物がその四肢で矢の如くと迫りくる。

「迎撃は――」
「任せて頂戴。その代わりに」
「――瘴気は任されよう」

 それが届くより早く、役割の分担は的確に。
 ティオレンシアの引き抜くは六連装のリボルバー。黒曜の輝きを瘴気の中でも鈍くと輝かせ、その存在感を魅せる。
「そんな目の前からだなんて、馬鹿正直よねぇ」
 数の利があるなら、囲み、磨り潰すように攻め来ればよかったのに。
 そう言わんばかりの言葉を代弁するは、黒曜の咆哮。
 迫りくる矢を射抜き、怪物を射抜く、ティオレンシアの弾丸だ。
 だが、矢は砕かれども、怪物は身体の一部を射抜かれた程度では止まらない。
「無駄よ。その子達は四葉の集合体だもの。一部を失ったところで――」
「ご高説どうもねぇ。でも、そんなこと――」
 言われるまでもない。
「――え?」
 火を噴くは銃口に非ず。それは怪物の身体から。
「不動明王印。破邪顕正の炎のお味は如何かしらぁ?」
 轟と空気を焦がし、怪物の身体を食い破り、炎が上がる。
 植物が怪物の形をなした時点で、ティオレンシアの脳裏には一つの可能性が浮かびあがっていたのだ。
 それは個でありながら群体である可能性。
 だから、怪物が見せたしぶとさの一端を予見し、彼女はそのための手を打っていた。
 それこそが、その炎。群体を焼き尽くすための。
 撃ち込んだ銃弾に刻み込んだでいた印を鍵として、この世界に異界の炎を顕現させたのだ。
 炎に巻かれ、ぐずぐずと崩れ落ちる怪物の群れ。
「で、でも、まだ四葉は沢山あるんだから!」
「無駄よ。無駄無駄ぁ」
 依り代となる四葉が沢山あろうとなかろうと、既に使者はティオレンシアの視界に入っているのだ。
 ならば、そこで如何に力を行使しようとも、その端から射殺のみ。
 彼女の手から、抜け出せる筈などないのだ。
 それに、もうそろそろ頃合いであろう。

「……待たせたな」
「そんなに待ってもいないわよぉ」
「そうか。それならよかった」

 ふわりと香るは甘く蕩ける蜜の。
 それは決して瘴気によって生み出されたものではなく、違うナニカによって生み出されたと分かるもの。
 良い香りである筈なのに、ぞわりと、嫌な予感に使者の肌が泡立つ。
 そして、それは悪い意味で的中してしまうのだ。
「あ、ぐぅ、おえぇっ!?」
 突然の吐き気。喉を焼かれるような痛み。
 胃の腑が揺さぶられ、天地がひっくり返されたかのようにぐるりぐるりと廻り出す。
「どうだ? お前がしてきたことを自分で味わうのは?」
 声は遠く、しかし、近くで響く。
 まるで園そのものが語り掛けてきているかのように。
 だが、使者に言葉を返す余裕などない。いや、言葉を返そうとすればする程に、甘い香りは体内にと入り込み、牙を剥くのだから。
 誰の仕業かなど、考えるまでもない。
 それこそはキリカの業。己の身体を毒霧へと変えて、世界へと浸透する超常の力。
 キリカは己が身体を霧と変えて瘴気に溶け込むと共に、その性質を書き換えたのだ。
 四葉を、使者をのみ活かす瘴気ではなく、それらにこそ牙を剥くものへと。
「毒を持って毒を制す……至言だな」
 瘴気が当たりに満ちていればいる程に、その毒は使者を追い詰める。それになにより、その瘴気の根本は彼女自身が背負っている蒸気機関そのもの。
 逃げ場など、どこにもない。
 ぐずりぐずりと、使者の身体が崩れていく。まるで、火に巻かれた怪物たちの身体と同じように。

「次は除草作業……とも思ったが、その必要性もなさそうか」
「そうねぇ。でも、これ、私も近付いて大丈夫なのぉ?」
「無効化しておいて、よく言う」
「ふふふ。でも、心配は心配じゃない」
「なら、言おう。問題はない」
「それなら一安心ねぇ」

 キリカが範囲を選択しているのもあるが、ティオレンシアもまた、既に己が身体を浄化の護りで包み込んでいた。
 だから、その毒が灼くのは使者達だけ。
 零す断末魔もなく、零せる断末魔もなく、ぐしゃりと使者の身体が遂に溶け崩れた。
「……ここの四葉は、幸運を運んでくれそうにはないな」
「私達自身でケチをつけたものねぇ」
 もしも四葉が幸運を運んでくれるのなら、使者はまだここにあったことだろう。
 むしろ、その四葉の異常があったからこそ、猟兵をこの地に呼び込み、彼女が骸の海へと還る原因にもなったと言える。
 ならば、これはきっと幸運を運ぶ四葉ではないのだろう。
 一面に咲き誇る四葉を前にして、特にそれを摘むでもなく、二人は戦いの終わった地を静かに歩み去るのみであった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

アルトリウス・セレスタイト
環境破壊は深刻なようだな

受ける攻撃は『絶理』『刻真』で自身を異なる時間へ置き影響を回避
此方の全行動は『刻真』で無限加速し目標が存在する時間へ向け実行
戦況は『天光』で常に把握
必要魔力は『超克』で“世界の外”から汲み上げる

天楼で捕獲
対象は瘴気を含む戦域のオブリビオン及びその全行動
原理を編み「迷宮に囚われた」概念で縛る論理の牢獄に閉じ込める

高速詠唱を無限加速、多重詠唱と重ね『再帰』で無限循環
無数の迷宮を重複させ展開、強度を増しつつ自壊速度を最大化

内から外へは干渉不能、逆は自由で対象外へは影響皆無
真っ直ぐには進めず破壊の手段も自壊対象だ

出口は自身に設定
辿り着くなら『討滅』の破壊の原理を乗せ打撃で始末


 見渡す限りの緑、緑、緑。
 本来であれば、そこにはもっと沢山の色があったであろうに、今は最早それもなし。
 四葉にのみ溢れる世界は酷く単調で。
「環境破壊は深刻なようだな」
 その上をさくりと踏み進めて、アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は憂うでもなく、憤るでもなく、ただ現実のみを語る。
 さくり、さくり、さくり。
 踏み進めても、踏み進めても、どこに辿り着くでもなく緑はやはり続いていく。
「まるで迷宮、か」
 どこまでも同じ景色。どこまでも変わらぬ景色は、自分が今、どこを歩いているのかを失わせる。
 それはアルトリウスがかく語るが如く、壁のない迷宮そのもののよう。
 そして、緑の上を揺蕩う蒸気が、それに拍車をかけているかのようでもあった。

 ――さくり、ふわり、さくり、ふわり。

 また幾時かを歩む。時折、燐光を零しながら。
「意外に、しぶといのね」
「そちらは、存外に我慢強いのだな」
 アルトリウスがこの緑の園に踏み入って、初めての声。初めての自分以外の誰か。
 己が来た道を振り返れば、そこにはいつの間にかの少女の姿。だが、それがただの少女でないことを彼は知っている。
「それは、こうして出てきた私に対する皮肉?」
「さて、そう受け取るのであれば、お前にとってはそうなのだろうな」
 少女――四つ葉の使者と呼ばれるオブリビオン。この花園を緑に埋めた張本人。
 だが、それでもアルトリウスは特段の警戒を見せるでもなく、その静かな視線で彼女を捉えるのみ。激するでもなく、糾弾するでもなくと。
 その様子に、僅かばかりと使者がたじろいだようにも見えた。
「――言ってくれるわね」
「大したことは言っていない」
「――! ……ふぅ、いいわ。我慢比べはあなたの勝ち」
「勝負をしていたのか?」
「だってあなた、この瘴気の蒸気の中でいつまで経っても倒れないんだもの」
 柳に風。糠に釘。
 如何に使者がアルトリウスに敵意を向けようとも、それに彼が影響を与えず、するりと抜けていく。
 だから、己を落ち着かせるように大きく息を吐いて、自身が姿を現した意味をなそうとするのだ。
 本来であれば、四葉の上に揺蕩う蒸気――瘴気と呼ばれるそれがアルトリウスを、この園にある四葉以外を蝕む筈であったのに、その想定を覆されたからと。
 そう、幾時もアルトリウスはこの園を歩いていたと言うのに、彼にはその影響が出ているようには全く見えない。
 泰然自若を体現したかのような姿は、浮世離れしたかのような姿は、変わらずそこに。

 ――ふわりと蒸気を揺らして、風が舞い踊る。

 それは次第に強まっていき、まるで嵐の中を思わせる程に強く、強く。
「――だから、直接とこの園に呑み込んであげる」
 轟と風巻き、アルトリウスを四葉の嵐が呑み込んでいく。使者の語る通り、アルトリウスをこの園の一部へと変えんとして。

 そして、轟々と巻く風が抵抗も見せない彼の身体を呑み込み、それを砕くに十分な時間が過ぎる。
「もう、いいかしら」
 風が弱まり、止み、晴れたそこには――。
「――え?」
 使者にとって見知った園の筈なのに、それはどこか知らない景色。
「なんなの、ここ……!」
「何と問われれば答えよう。ただの迷宮だ」
 嵐に砕かれた筈の、アルトリウスの声。
 きょろりきょろりと使者が姿を探すも、その姿はどこにもなし。
「何処に居るの!」
「俺は何処にでもいる」
 空間全体から響くように、使者へと声が届く。
 それはまるで、アルトリウスが本当にこの世界の一部そのものになったかのよう。

「――存分に惑うといい」

 それを最後に、アルトリウスの言葉が途切れる。
 代わって響き始めたのは、がらりがらりと崩れ去る音。
 使者がその音の方向へと振り返れば、緑の地が崩れ、虚空が顔を覗かせている。
 あれがなんなのか、使者には分からない。ただ、呑み込まれてはいけないという根源的な恐怖だけが彼女の胸中に浮かび上がっていた。
 だから、此処から先は時間との勝負。
 迷宮だとアルトリウスが語ったのであればその出口もきっとある筈で、自身がそこに辿り着くか、それとも呑み込まれるかの。
「なんだって、こんなことに!」
 思わずと漏れる罵詈雑言に応える者はどこにもいない。ただ、出口を求めて、使者は壁なき迷宮を駆けるしかないのだ。

 そして――。

「……残念。時間制限だ」
 暫しの時を置いて、ガラリと世界が崩壊する。使者を、その悲鳴を呑み込んで。
 全てが虚空に染められて、また、逆再生のように緑の園が戻ってくる。その戻った世界で、何事もなかったかのようにアルトリウスもまたそこに。ただ、使者の姿だけがない。
 何が起こっていたのか。
 それは、壁なき迷宮のような園。その概念を、アルトリウスは書き換え、使者ごと自壊させた。
 言葉にすればそれだけのこと。実際に起こすには、途方もない力を要すること。
 再びの静寂が戻った世界で、アルトリウスはその静寂に溶け込むように佇む。
 使者のことを考えているのか。それとも、別の事を考えているのか。
 だが、それも暫しの事。再び、さくりと音を奏でて、この単調な世界を抜け出すべく、足を動かし始めるのだ。
 彼が振り返ることは、もうなかった。
成功 🔵🔵🔴

ジュジュ・ブランロジエ
『』はメボンゴの台詞を裏声で

まずはこの瘴気をなんとかしなきゃね
多少は毒に耐性あるけどそれでもキツそう
行くよ、メボンゴ!

風属性付与した衝撃波(メボンゴから出る)で瘴気を吹き飛ばす
『メボンゴ波ーッ!』
これで動きやすくなったかな

風属性付与したオーラ防御を展開し追加の瘴気を防ぎつつ接近

白薔薇舞刃二回攻撃
クローバーや白詰草も綺麗だけど白薔薇も素敵でしょ?

クローバーと白詰草の嵐には敵の攻撃の予備動作や雰囲気を見切ってタイミングをはかり、炎属性付与したUC(二回攻撃)をぶつけて燃やす
ほら、炎の色の薔薇もあげる
とっても綺麗でしょ?
全部受け取って
『全部燃えて綺麗になぁれ』

白薔薇と炎のショー、お気に召して頂けた?


 緑の上にくすんで揺蕩う毒の霧。じわりと感じる痺れは甘く。
 だが、その痺れに囚われてはいけない。囚われれば最後、その身体は哀れ四葉の餌食となり果てるが故に。
「まずはこの瘴気をなんとかしなきゃね」
 くすんだ空気を明るく吹き飛ばすような声は、ジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)。
 その身に宿すは耐毒の加護。故に、この園に漂う毒霧――瘴気の蒸気は、まだ彼女の身を染め上げるには至らない。
 だが、それとていつまでもと持つものではないだろう。
 それを誰よりもジュジュ自身が理解するからこそ、彼女はこの瘴気を如何にせんと思考を廻すのだ。
『風で吹き飛ばしちゃえ~!』
 そして、そんな彼女の思考を手伝うように、友にして相棒たる兎淑女なメボンゴのキンキンと甲高い声。
 まるでジュジュの声を甲高くしたようなそれではあったけれど、彼女は素知らぬとして友と語る。
「それも良さそうだね! じゃあ、行くよ、メボンゴ!」
『ゴーゴー!』
 身振り手振りの意外なお茶目。
 だけれど、そこから巻き起こる風はお茶目ではすまない規模。

『せぇ~の、メボンゴ波ーッ!』

 ぶわりと、彼女らを中心に空気が流れる。
 それは周囲の蒸気を外へ外へと洗い流す浄化の風。
 はたりばたりと四葉も一斉に揺れて、その風の強さを物語る。
「これで動きやすくなったかな」
『イェーイ、大成功!』
 パンと器用にハイタッチ。
 世界を覆うくすみを拭い、四葉の緑が一層と色鮮やか。

「誰かしら? この四葉の園を荒らすのは」

 だけれど、折角と掃ったくすみがまたじわりと忍び寄る。降り注ぐ新たなる声と共に。
「荒らしてなんかいないよ」
『そうよ。綺麗にしてあげてるのよ?』
 じわり忍び寄るくすみの影をオーラで妨げ、ジュジュは声の主に向き直る。
 そこにあったは緑色。蔓延る四葉と同じ色。
「それが荒らしているというのよ」
「それは見解の違いというやつだね」
 荒らしているというのであれば、新たなる登場人物――四つ葉の使者とて同じであろう。
 そのエゴによって、この花園を枯らし、塗り替えているのだから。
 だから、ジュジュは使者の言にとて負けずに対峙するのだ。
「それに、折角の花園だよ。くすんだ色ばかりでは勿体ないし、クローバーや白詰草も綺麗だけど、他の花もやっぱりあるべきよ」
『白薔薇なんていいんじゃなぁい?』
「それこそ見解の違いよ」
 必要ないと言外に。余計なことをするなと言外に。
 そして、使者からの敵意が風と押し寄せる。
 話し合いの余地は、なさそうだ。
 はたりはたりとした風は、いつしかばたばたとジュジュの衣服をはためかせるほどに。

 ――失くした筈の甘い痺れが、また。

「余計なものは要らないの。あなたも、四葉の一部になりなさい!」
 使者の猛りに、瘴気と四葉を孕んだ嵐も猛る。
「それはお断りだね!」
『そうよそうよ!』
 だが、ジュジュとてそれにただ呑み込まれる訳にはいかない。
 頑迷な分からず屋が花をぶつけてくるのなら、こちらも負けじと花束を返そうではないか。

「ご覧あれ、白薔薇の華麗なるイリュージョンを!」

 とびっきりの白薔薇を。両の手に抱えらぬ程の花びらを。
 嵐吹き荒ぶ中でもジョジュは優雅を忘れず一礼交え、ショータイム! と言わんばかりに天高くと腕を掲げる。
 呼応するように白の花弁が風に混じり、吹き荒ぶ四葉の嵐とぶつかり合う。
 どちらがどちらを塗りつぶすのか。鬩ぎ合う白と緑の押し返し。
 周囲の瘴気が散ろうとも、使者は己を強化する瘴気の発生源を背中に背負っている。だからこそ、ジュジュの白薔薇にも拮抗することが出来ていた。
 だが。

「ほら、まだまだだよ。炎の薔薇もおまけにあげる。ね、とっても綺麗でしょ?」
『全部燃えて綺麗になぁれ』

 それがジュジュの全力と理解して貰っては困る。
 ぶわりと白の花弁を燃え上がらせて、更に更にと多彩に白薔薇の風を染め上げて。
 そして、燃ゆる花弁は緑を食み、呑み込み、使者の身体をも染め上げていくのだ。
「あ、ああ!? 私が、四葉が!」
 燃えていく、燃えていく、燃え尽きていく。
 白の花炎は瞬く間にと使者をその色に染めて、ショーの閉幕へと導いていくのだ。

「さて、白薔薇と炎のショー、お気に召して頂けた?」
『驚きすぎて、もう声もあげられないみたい!』

 ぱちりぱちり。
 拍手の代わりに、燃えた名残の火の粉が送るスタンディングオベーション。
 ジュジュはそれへとまた優雅に一礼し、自身のショーの幕引きを行うのであった。
 ぱちりぱちりぱちり。
 音は彼女が姿を消すまで、いつまでも響いていた。
成功 🔵🔵🔴

フィオレッタ・アネリ
綺麗なはずの花園に、瘴気が蔓延してるなんて…
すぐ元に戻してあげるからね

風精の生み出す【浄化】の風で瘴気を【吹き飛ばし】、清浄な空気に
風はそのまま吹かせ続けて、吐き出される瘴気をすべて浄化
花園を豊穣の神性で再び鮮やかな姿に戻して――

白詰草の花も四葉のクローバーも可愛らしいけど、あなたのそれは幸運を運んでくるわけじゃないみたい
その不思議な機械ごと、あなたを止めさせてもらうね

《花々の護り》
騎士の半数を敵と装置への攻撃に、もう半数を嵐を退ける事に回し、UC無効化の結界を【結界術】で強固にしつつ【魔力溜め】に専念

嵐が止んだらUCを解除して【限界突破】した魔力で樹精の槍を撃ち、装置ごと【貫通攻撃】するよ!


 そこはきっと、もっと、様々な花々で栄えていたのだろう。
 さくり。と、フィオレッタ・アネリ(または夏のフローラ・f18638)が踏みしめた四葉の絨毯。
 その隙間から垣間見える、色褪せた花びらの亡骸達。
 今は風にそよぐこともなく、ただただ命の終わりをそこに晒すのみ。
「綺麗なはずの花園に、瘴気が蔓延してるなんて……」
 その原因たるははっきりしている。
 四葉の下にあるのが亡骸なのであれば、その上にあるはその原因――景色くすませる瘴気の蒸気が存在。
 そして――。
「蔓延してる、だなんて酷いわね」
 その発生源たるを背負う、四つ葉の使者を名乗るオブリビオンが姿。
 今も、その背にある蒸気機関からもくりもくりと瘴気が生まれては、この園に広がっている。

「――すぐ、元に戻してあげるからね」

 使者がかくなる物を背負うのであれば、フィオレッタもまた背負おう。
 ――その背より吹き抜けるは、清浄なる風。華やかる香りの風。
 ふわりと流れるそれは、くゆる瘴気を押し返し、少なくとも、彼女の周囲からその存在を掃う。
 緑の中に、僅かと彩の息吹が蘇っていた。
「ふぅん……私、あなたのことは認められないわ」
 四つ葉の使者はその名の通りであればこそ、それに固執する。そして、固執した結果こそが現在の緑の園そのもの。
 ならば、それを否定する形となるフィオレッタの存在を、様々なものに豊穣を齎す存在を捨て置ける筈などない。
 押し返された瘴気が、使者の敵意へと反応するかのようにその勢いを増していく。
「白詰草の花も、四葉のクローバーも可愛らしいけれど、それだけを満ちさせるのは違うわ」
 その敵意に怯むことなく、フィオレッタは空色の眼差しはどこまでも真っ直ぐに覚悟を映す。

 ――花園の彩りを取り戻す。
 ――四葉で世界を埋め尽くす。

 清浄なる風と瘴気の風が鬩ぎ合い、それはいつしか互いの髪を、服をはためかせる程に。
 だが、どちらも引くつもりなどありはしない。
 だから、そこから先は必然。
「あなたのその彩も、この子達の糧にしてあげる! 骸となって、地に枯れるといいわ!」
 瘴気の風は嵐に。
 轟々と唸りをあげて、四葉を、白詰草を巻き上げながら、フィオレッタのなす聖域を脅かす。
 その光景を見つめる空色に、僅かな翳り。
 嵐に抗う術がないのか。いいや、違う。

「あなたのそれは、幸運を運ぶためのものではないみたいね」

 四つ葉のクローバー。その花言葉で有名なものと言えば、『幸運』であろう。
 ならば、その嵐とて、本来はそういうものであったのかもしれない。
 だが、今は悲しくも自身以外の全てを呑み込み、塗りつぶすためのそれでしかない。
 フィオレッタは花の女神である。
 ならば、その司る中に四葉の、白詰草の存在があったとしても、なにもおかしくなどはない。
 四つ葉の使者のようにそれだけを祝福することは出来ないけれど、それでも、彼女がそれを嫌う筈もないのだ。
 だからこそ、目の前の光景が悲しくもあったのかもしれない。
「その不思議な機械ごと、あなたを止めさせてもらうね」
 ヴィオラ、ローズマリー、マーガレット、カンパニュラ――語り掛けるは十二輪。
 小さな小さな花達に、慈愛と恵みの祈りを込めて。

 ――迫りくる嵐の中に花の結界が咲き乱れた。
 
 それは花々の護り。
 女神の寵愛に応えし花々が、その身を騎士へと変じ、嵐の前にと立ち塞がるのだ。
「なによそれ……ここはもう私の園で、今更、他の花々の出番なんてないのよ!」
「――御願いね」
 敵意の嵐は一層と激しさを増す。
 だが、それは僅かとてフィオレッタの下へと届かせることなく、騎士の護りの前に散っていく。
 逆に、じわりじわりと花の騎士達が前へと前進すれば、それに合わせて清浄なる空気はその勢力を広げていくのだ。
 嵐を切り拓く騎士の行軍。
 十二の半数をフィオレッタの守りと当てて、残る半数を使者を討つ為に。

 ――そして、嵐を切り拓き、刃が届いた。

「う、嘘よ!?」 
 使者を取り囲む騎士達の刃。その一つが蒸気機関に突き刺さり、瘴気の蒸気が生み出されるを止めたのだ。
 そうなれば、あとはもう終わりの時へと向けて加速していくのみ。
 瘴気の力の強化なければ、四つ葉の使者はフィオレッタを始めとした猟兵と渡り合うには、あまりにも力不足であるが故に。
 急速に、嵐がその力を弱めていく。
 もう、護りの結界は必要もない。

「――今度は、ちゃんと一緒に、ね?」

 フィオレッタの練り上げた魔力。
 それは樹精の槍となりて、瞬きの間もなく使者の身体を貫いた。その蒸気機関ごと。

 さやりさやりと風が流れる。
 そこにはもうくすんだ景色はない。戦いの音もない。
 ただ、瑞々しき多彩が輝くのみ。
 あかあおきいろ、様々と。
 その中で、他の花々と同じくさやりと揺れたみどりが一つ。
 彩を取り戻した花園の中で、他の色と同じように四葉もまた。
 それは、花の女神からの小さな餞。
大成功 🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2020年08月05日
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴