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獣達に眠れる夜を

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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●荒野に啼く
 ――アオォーン……。
 ――ォオーン……。
 草木も寝静まる夜更けに、獣の遠吠えが響き渡る。ひとつ啼けば、ふたつみっつと呼応するその声は、何かを求めるように、誰かを呼ぶように啼き続ける。
 幾度も繰り返されるその咆哮に耳を済ませれば、遠吠えに混ざって唸り声や威嚇の声、獣の悲鳴さえも聞き取ることができた。
 空が白んでも、その呼び声は途絶えることがない。少し間があいたと思っても、ひとつ声が聞こえると、たちまち他の声も聴こえ始める。中には、声がかれ始めているのか、苦しげに吠える声も聴こえてくる。
 そうまでして、彼らは何故吠えているのか。誰になにを伝えたいのか。
 翌日も、そのまた翌日も、荒野には獣の鳴き声が響き渡っていた。

●グリモアスペース
「端的に言うと、オオカミ達を救ってきて欲しいんだ」
 猟兵達を見渡しながら、少年とも少女ともつかない中性的な、けれども凛とした声でゾーヤ・マハノフ(キマイラのビーストマスター・f12664)は語り出した。特徴的な模様のある太く長い尻尾が、覇気なくだらりと垂れ下がっている。
 端的すぎる。そう言いたげな猟兵達の視線を受けて、ゾーヤは狼狽えたように目と耳を伏せた。そして、言葉を探すように視線を彷徨わせた後、決意したように言葉を紡ぎ出した。
「最近荒野に移住してきた、毛足の長い草食のオオカミがいるんだ」
 見るからにあまりお喋りの上手くなさそうなゾーヤが、ポツリポツリと言葉を繋ぐ。その姿に足を遠ざける猟兵もいれば、見守るように聞き入ってくれる猟兵もいた。人影が去るたびに、ゾーヤの尻尾は不安げに揺れる。
「そのオオカミ達が、最近ずっと吠え続けてる。オオカミ同士でケンカを始める者もいるし、とにかく様子がおかしい」
 そして、連日に渡り夜通し行われているその遠吠えに、近隣の村々に住む住人達はすっかり睡眠不足。回復しない疲労や、眠いのに眠れない苛立ちで、村の中までおかしくなってしまっているらしい。些細なことでの夫婦喧嘩、泣き喚く子ども、逃げ出す飼い犬。
「遠吠えは以前も仲間との連絡手段として使ってたみたいだけど、本来は温厚で、ケンカなんて滅多にしないオオカミらしい」
 ――だから、きっと何か原因がある。その原因も探して欲しい。

 ゾーヤは伏せていた目を再び正面に戻し、不安げだった表情をキッと整えてから再び君達《猟兵》に向き直った。
 オオカミ達のせいで村は大惨事。だけど、オオカミ達がそうなっているのには絶対原因があるから。
「頼む、《猟兵》。お前たちの力を貸して欲しいんだ。オオカミ達を救えれば、村の住民だって夜眠る事ができるはずなんだ」
 ゾーヤは祈るように、胸の前で拳を握りしめた。


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 始めまして、56(ごろー)と申します。この度はオープニングの閲覧を有難うございます。
 ご覧のとおり、毛足の長い草食のオオカミを救う、というところから第一章が始まります。
 彼らが眠れない原因の追求し、安眠を与えるために。そして、近隣住民の平和の為に、どうか皆様のお力をお貸し下さいませ。
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第1章 冒険 『眠れない獣たち』

POW   :    苛立ってケンカを始める獣たちの仲裁。

SPD   :    寝床を工夫して整えてやる。

WIZ   :    心の落ち着く歌や音楽で眠りに誘う。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アルト・カントリック
よし、僕達に出来る事があるなら頑張らないとね。

僕はアイテム【仔竜の角笛(獣奏器)】を使って一生懸命、オオカミを宥めてみようじゃないか。

慣れない事だけど上手くできるかな?もし、オオカミ達の機嫌を損ねてしまったら、一旦、距離を取って草食オオカミ達の食料でも探してくるついでに、周辺を見て回るかな……

適材適所というのがあるからね、失敗しても別に逃げるわけじゃないさ……うん。



 荒野に送り出されたのは丁度、日が高く登り始めた頃合いだった。
「慣れない事だけど上手くできるかな?」
 グリモア猟兵に聞いたとおり、オオカミの声が響く荒野を進みながら、アルト・カントリック(どこまでも竜オタク・f01356)は仔竜の角笛を握りしめた。趣味で入手したまま愛用しているこの角笛は、どんなに機嫌の悪い獣の心をも懐柔してしまう程の音色を持つという。この音色ならば、オオカミを宥めることができるかもしれない。その考えを胸に、アルトはオオカミの声が聞こえる先へと歩を進める。

 アルトがその目に捉えたオオカミは、咆哮こそ長く均一ながらも、その体は傷だらけでかなりの疲労が伺えた。
 ――ォオ……ン。
 オオカミがアルトの気配に気付いて顔を向ける。やはり元気があるようには見えず、オオカミは小さくクゥンと鼻を鳴らした。しかしすぐに、まるでそれが義務であるかのように再び遠吠えを始める。
「一体なんだっていうんだ?」
 その動向に疑問を持ちながらも、アルトは当初の目的通り、角笛を吹き鳴らす。
 独特の高音が周囲に響く。目の前のオオカミが耳をピクリと揺らし、アルトを振り返ると同時に遠吠えをやめた。
 ふらつく足取りでアルトの側に寄ると、尚も角笛を奏でるアルトの足元に座り込み、そのまま倒れる様に地に伏せたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナミル・タグイール
遠吠えうるさいにゃー!何が言いたいのかわからないデスにゃー!
なにか呼んでるとかなのかにゃ?猫でもわかる言葉でいってにゃ。
脳筋猫

・行動 村から草をたくさん貰っておく
全く理由わからないから、少しの間一緒に過ごして様子を見るにゃ
お肉…じゃないにゃ。草あげるにゃ!元気だしてにゃ!と餌付けで警戒を解こうとする
喧嘩が始まったら優しく仲裁
止まらなかったら近くに【グラウンドクラッシャー】を空打ちして力を見せて従わせる。
なんで喧嘩するにゃー!
強いって示せば頼ってきてくれたりしないかにゃー。
一緒にいれば【野生の勘】で本能的に感じ取れるものがないかにゃー。狼になりきるワンニャ

行動書きすぎてたらごめんなさい
何でも歓迎


バラバ・バルディ
ぬぁっはっはっは!良いのう、ゾーヤ嬢!強き意志の宿った、実に良き目じゃ。よし、その任、このバラバも引き受けた!安心せい、ちゃーんと狼も住民も笑わせてくるからの!

【POW】
ふーむ、これは確かにちと騒々しいかもしれんな!わしは狼の言語を解さんが、吠えるあやつらの方もあまり楽しそうには見えんしのぉ。
さて。狼同士の喧嘩といえど、みすみす怪我をさせてはゾーヤ嬢に面目ない。お主らには悪いが、喧嘩はここでおしまいじゃ!まだ続けるならばわしが相手をしようぞー!

(『早業』で争う狼の間に入り、からくり人形で狼を『かばう』。そのままゆっくりお互いを引き離しつつ、宥めて落ち着かせます。)
※アドリブ、絡みなど歓迎。


七篠・コガネ
草食のオオカミ、というのがいるんですね
でも様子がおかしいなんて…
是非とも原因を究明したいところ
こんなに自然溢れる世界なんですから
皆が穏やかに暮らしているのが一番似合ってます!

寝床…ハンモック、というのはどうでしょう?
僕、ちょっと「眠る」って感覚が分からないので
上手くやれるか自信ないですが…
(自分のコートを脱いで)木に僕のコートをマフラーで繋いで
片方を僕が持ってなんちゃってハンモック完成!
オオカミが何匹乗っても【怪力】で揺らします
木が無ければ村まで探しに行きますね
丸々1本ズボっと持って行きます

大丈夫。怖くなんかないよ
伝えたい事があるんだよね?必ず助けてあげるから
だから安心して下さい

△アドリブ歓迎



●それは、とても騒々しくて
 先の猟兵の行動もあって、吠えるオオカミの声は僅かに減った。だが、未だその声は谺する。苦しいのか、悲しいのかすら伝わることのないその声が、ただひたすらに、耳につく。
「遠吠えうるさいにゃー!何が言いたいのかわからないデスにゃー!」
 新たに発見したオオカミの群れを目の前に、もふもふの黒い毛並みからひょっこり生えた二つの耳を両手で押さえながら、ナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)は思いの丈を叫んだ。
 キマイラでもないイヌ科の言葉なんてわからないにゃ。伝えたい事があるなら猫でもわかる言葉でいって欲しいにゃ。
 それが叶えば苦労はないのだが、叶わないからこそ余計に歯がゆい。
 オオカミたちは叫んだナミルを気にするような素振りはするものの、どこかから別の声が聞こえると、それに呼応して吠え出してしまう。
「これは確かにちと騒々しいかもしれんな。吠えるあやつらも楽しそうには見えんがのぉ」
 すぐ近くで行動していたバラバ・バルディ(奇妙で愉快な曲者爺さん・f12139)も、その特徴的な造形をした顔の、おそらく顎と思われる部分に手をあて、ふーむと唸った。
 だが、グリモア猟兵の娘にオオカミも村の住民も笑わせて帰ると言ったからには何とかせねばなるまい。バラバは自分達をこの荒野に転送した娘の意思の宿った瞳を思い出しながら、何かしらの手立てを考えるのだった。

●拡散する争い
「なんだか分からにゃいけど草が好きにゃ?食べて元気出すワンにゃ」
 言うなり、ナミルは村の住民から貰ってきた草をオオカミの前に差し出した。オマケに語尾もいつもと少し変わっている。
 ナミルに差し出された草に、オオカミたちは寄って来た。
「ほぅ。本当に草食なんじゃのう」
 それを見たバラバが興味深げに事の成り行きを眺める。すると。
 ――グルルル、ガウッ!
 ――ガァ!ガルルルル…!
 突然、餌である草を巡ってか、オオカミ同士でケンカが始まった。
 争いの輪は一瞬にして周囲へと広がり、出現した草に気がついていなかったであろうオオカミにまで拡散した。
「いかん!」
 バラバがとっさの早業で、噛みつかんとするオオカミ達の間に割って入る。からくり人形を盾にオオカミをかばう。だが、拡散したオオカミの怒りを鎮めるには、手が足りない。直ぐ様、別のオオカミ達の闘いが始まった。
「なんで喧嘩するにゃー!」
 ドゴォオンという音と共に、足元の地形が変化した。心做しか、地面が揺れた気もする。
 その衝撃に、オオカミ達は一斉に動きを止め、ナミルを見た。
 そこには、美しい装飾がふんだんに施された巨大な斧を携えるナミルの姿。そして、可哀想な程に抉れた地面があった。
「なんと、やるのう、ナミル嬢…」
 誰も怪我をする事なく、その場がシン、と静まり返った。

●安らぎの寝床
「あの、これは一体……」
 満足そうにペロペロと自分の毛並みを整えるネコ科の獣人と、その前ですっかり尻尾を丸めて震えているオオカミの群れ、そんなオオカミ達を宥める長身のシャーマンズゴーストを見比べて、七篠・コガネ(優しい向日葵はどこ行くの?・f01385)はその腕に木を丸々一本抱えながら困惑した。事前に聞いていた情報とは、なんだか少し違う気がする。
 確かに遠くの方からはまだ僅かに獣の遠吠えは聞こえるのでそちらに行くべきなのかもしれないが、この怯えきった獣達をそのままにして行くのも気が引けた。自然溢れるアックス&ウィザーズの世界では、みんな穏やかに過ごすのが似合っていると思うから。
 ずん、と根っこごと引き抜いてきた木を、丁度良く抉れていた地面へと下ろす。何故ここだけ抉れているのだろうかと考えるが、この様子を見るに、きっとこの見知ったキマイラが何かしたのだろう。ナミルをちらりと見やる。
「本能に訴えただけデスにゃ。オオカミには階級順位があるにゃ」
 吠えてる時は機能してにゃかったけど、やっぱり概念はあるみたいデスにゃ。一瞥しただけなのに、ナミルが答えた。もしかして、表情に出ていたのだろうか?
 『その木は何デスにゃ?』とナミルが疑問を投げかける前に、コガネは既に木に括り付けたマフラーとコートを広げた。
「簡易ハンモックです。僕、ちょっと『眠る』って感覚が分からないので、これでオオカミ達が眠れるか分からないんですが」
 それは少しでもオオカミを安心させ、助けてあげたいという気持ちから、コガネが一生懸命考えた寝床だった。
 すっかり大人しくなったオオカミ達を全てコートに乗せ、コガネは怪力で、それでも優しくゆっくりとコート製のハンモックを揺らした。自然も、その自然に生きる生命体も愛おしい。
 大丈夫、怖くなんかないよ。必ず助けてあげるからね。そんなコガネの気持ちが通じたのか、いつの間にかオオカミ達は、静かに寝息を立て始めていた。

 あとは、少し遠くから聞こえる何頭かのオオカミだけ、か。
 寝息を立てる獣を見つめながら、三人の猟兵は、数を減らしたその遠吠えを聞いていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

コンラート・シェパード
(※アドリブ歓迎)

どうした。
何か、不安なことでもあるのか。

【WIZ】
とりあえず残った狼を【誘惑】して集め、警戒されないようなら顎や喉を優しく撫でてやる。
(※人狼ゆえ狼変身はお手のもの。そちら(狼型)の方が都合がいいなら変身することも厭わない)

ほら、お前たちももうお休み。疲れてしまっただろう。

優しく撫でながら子守唄を口ずさむ。
(大丈夫。あとは私たちに任せて。
…おやすみ。)


ジロー・フォルスター
吸血鬼ってのは意外と動物と縁があるからな
そういう才能が昔からあったみたいだ
『動物と話す』で直接話を聞いてみるとするか

『生まれながらの光』と聖者の気配、『優しさ・コミュ力』で安心させる
様子を見て、受け入れてくれそうなら屈んで話を聞こう

「よう、お前ら最近移住してきたんだって?何か問題がありそうだな。話してみろよ」

『医術』もかじっているが、遠吠えってのはストレスが原因になるらしいな
特にリーダー格の狼がいなくなると激しくなるとか
群れからはぐれた仲間がいないか聞いてみるか

「俺らに何かできるなら協力するぜ。近くに村があるだろ?あそこの奴らも心配してたんだ」

『情報収集』で出来る限り話を聞いて猟兵仲間に伝える



●二頭の狼
 吸血鬼ってのは意外と動物と縁があるんだよな。オオカミの喉元を優しく撫でる男を見ながら、ジロー・フォルスター(現実主義者の聖者・f02140)は胸中で思った。
 仲間たちによってオオカミの遠吠えが収まり行く中、最後のグループの声を目印に探索していたジローが偶然出会ったのが、この人狼の男、コンラート・シェパード(シリウスの鉾・f10201)だった。
 どうせだからと二人でオオカミを探し、声を頼りに見つけたのが二頭のオオカミ。
 一頭は動けないのか、横たわったままで首を持ち上げ吠えていた。もう一頭は、そんなオオカミを見守るように、隣に座り込んでいた。
 そして、現在。
「どうした。何か、不安なことでもあるのか?」
 人狼であるコンラートが、倒れ込みボロボロなオオカミに駆け寄ってその喉元を優しく撫でる。座り込んでいたオオカミが一瞬警戒を示す動きをし、牙を剥きかけたが、すぐに警戒を解いた。オオカミもまた、その人物が仲間の種族であると理解したのかもしれない。
「そんなんじゃ話もできないな」
 ジローが発動したユーベルコードによって、倒れていたオオカミが暖かな光に包まれる。噛み跡なのか、毛が抜け血が付着していた体や足元が、みるみるうちに治療される。オオカミは、あっという間に自ら立ち上がれるまでに回復した。
 その代り、ジローにどっと疲労が訪れる。だが、想定内の範囲だった。
 座っていた方のオオカミが、先程まで垂らしていた尻尾をぴょこぴょこ振りながらもう一方のオオカミに擦り寄っていく。
「つがいか。おそらく怪我をしていた方がオスだろう」
 コンラートは直ぐ様二頭の関係を言い当てた。
 オオカミは一度夫婦関係を結ぶと、一生その相手と連れ添う。草食であっても、その習性は変わらないようだ。
 それを聞いたジローが、治療を施したオスのオオカミに屈んで話しかける。精度はそう高くはないが、動物の話を理解する心得が「いくらかはあった。
「よう、お前ら最近移住してきたんだって?何か問題がありそうだな。話してみろよ」
 グルル、とオスのオオカミが静かに喉を鳴らし、メスのオオカミが、クゥンと鼻を鳴らした。
 厳密には種族が違う為、全てというわけにはいかなかったが、コンラートにもなんとなく理解できる言葉はあった。

●昂奮
「何者かが放つフェロモンのせいで群れがヤバイって?」
 想像していたものとは90度程違うその返答に、ジローは耳を疑った。もしかしたら聞き違いだろうかと思い、コンラートの反応を伺う。
「……なるほど。半ば強制的に繁殖期状態にさせられ、順位争いの為のケンカが発生しているのか。しかし、誘われるフェロモンは異種族のものの為、中途半端に煽られたその劣情を遠吠えにぶつけるしかない、と?」
 雌雄問わずに興奮させられるものの、つがいになれるのは群れの上位二頭だけ。これはオオカミである以上覆させる事のない鉄の掟。故に、苦しんでいるのだ。
 つがいのオスも、フェロモンを感じる度に勝手に吠えてしまう様だった。その度に、つがいのメスが"自分はココにいる"と呼応する。つがいであっても反応してしまうのであれば、そうでないオオカミ達にはどれほどの苦しみを与えているのか。

「話はわかった。協力するぜ。近くの村の奴らも心配してたんだ」
 心身共に疲労しているオオカミを撫でながら、ジローがそっと話しかける。その言葉が、コンラートの子守唄と共に、つがいのオオカミを数日ぶりのやすらぎの世界へと導いた。
 あとは私たちに任せて、今はおやすみ……。
 直接の原因が消えたわけではない。一時的に眠ったオオカミたちが目を覚ませば、再びこの荒野はその遠吠えが満たすだろう。
 でも、少なくとも今は静かだ。
 少し前まで騒がしかった荒野が、静寂に包まれた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『ゴブリン』

POW   :    ゴブリンアタック
【粗雑な武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    粗雑な武器
【ダッシュ】による素早い一撃を放つ。また、【盾を捨てる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    足払い
【低い位置】から【不意打ちの蹴り】を放ち、【体勢を崩すこと】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●白日のもとに
 オオカミの群れが眠りにつくと、荒野には静寂が訪れた。
 静寂が訪れると、オオカミ達の遠吠えでかき消されていた音がハッキリと聞こえる用になる。オオカミを鎮めるために活動していた猟兵達は、荒野と村のちょうど中頃にある小さな牧場の方角から、女性の悲鳴が上がるのを聞いた。

 牧場へと急いで駆けつけた猟兵達は、今なお人の叫び声がする家屋へと踏み込んだ。そこで目にしたのは、複数のゴブリンと、擦り傷や切り傷、打撲痕などでボロボロになった数人の男女だった。
 ゴブリンは、この世界では割とメジャーな、どこにでもいる緑の小鬼。交配による高い繁殖力があり、度々村や街を襲ってはその世界の兵士や猟兵に倒されている。
 知能は低いものが多く、その討伐は難しくはない。のだが……。
 その牧場には、連れ去られてきたであろうボロボロで傷だらけの男女数人以外には、人の気配はなかった。それだけでなく、小屋を見回すと、お誂え向きに手枷や足枷、食い散らかした食材の類が散乱している。たった今まで人間が住んでいた、というわけではなさそうだ。
 このゴブリン達は、きっといくらか前からこの牧場を住処とし、潜んでいたに違いない。そして、近隣の村から少しずつ、人間を攫って来ていたのだ。
 オオカミの遠吠えで睡眠不足となった住民ならば、隙をつくのも難しくはないだろう。そもそもの判断力の低下や、場合によっては好都合に気絶していることもあったかもしれない。
 そして、例え叫ばれたとしても、オオカミの遠吠えにかき消され、その悲鳴は誰にも届かない……。
 偶然が重なったのか、それともこのゴブリン達の後ろには、知能を持った何か別のものがついているのか。
 考察するところはあれど、今はとにかく、目の前の男女を救う事が先決だ。
 ゴブリン達は数こそ多いが、何故オオカミの遠吠えが止んだのか、何故猟兵がここにいるのか理解が追いつかないようにポカンと口を開けている。
 今ならば、先手を打って攻撃することができるに違いない。
ナミル・タグイール
ただ戦うだけなら任せろにゃ!ナミルが来たからもう安心デスにゃー!
…やっと静かになってハンモックで眠れそうだったのににゃ。
怒りはゴブリンにぶつけマスにゃ。

・行動
住民の安全第一
こっちにくるデスにゃ!
UC【黄金の鎖】をぶつけてゴブリンの動きを封じる。
住民から引き離す様に意識。余裕があれば鎖引っ張って斧でザクーにゃ。
あとは正面から突撃にゃ!「かかってこいデスにゃー!」とか煽りながら戦ってゴブリンの注意を引きたいにゃ。
今のうちに安全な場所まで逃げてにゃ。巻き込まれても知らないデスにゃー。

斧も鎖も【呪詛】を纏った呪いの武器
何でも歓迎


七篠・コガネ
ゴブリン?うわぁー、あれがゴブリン…じゃなくて!
一体何をしてるんですか!?人々にこれ以上触れさせはしません!

まずは人間達を安全な場所へ。彼らとゴブリンの間に立ち回ります
ゴブリンが妨害するなら【踏みつけ】がてら脚で蹴りますよ!邪魔ッ!
枷で捕まってる人がいたら『Heartless Left』で枷の鎖を壊します
もう大丈夫。絶対助けますから!なので僕らにその身を委ねる事をお願いします

部屋の一角に人々を寄せ集めたら、巨体を活かして僕が壁にでもなりましょう
来るなら来てみて下さい!近付いたらぶっ放しますからね!
何をって…『code-Nobody』から【フルバースト・マキシマム】発射です


△アドリブ歓迎



●群がる小鬼
 恐らくは家畜小屋であると思われる家屋の内部は、雑然としていた。
 牛か馬が入っていたと思われるその小屋は、それぞれを一頭ずつ隔離する為の柵が付いていた。その柵それぞれに繋がれた人間が、三人。
 鎖に繋がれ力なく項垂れる少女と、同じ様に鎖に繋がれ、傷だらけの男性。そして、ロープで縛られもがく、活発そうな女性が猟兵達の視界に飛び込む。聴こえた叫び声は、この女性の声か。
「これがゴブリン……じゃなくて、一体何をしてるんですか!?」
 七篠・コガネ(優しい向日葵はどこ行くの?・f01385)が、小屋の惨状を目にして驚きの声を上げる。ここが天井の高い家畜小屋でなければ収まらなかったであろうその巨体に、ゴブリンもあっけに取られた様に動きを止めた。
 ナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)は、その好機を逃さなかった。
「ゴブリン討伐にゃ!戦うだけなら任せろにゃ!」
 呪詛を纏った金色の斧を軽々振り回し、ゴブリンに突撃する。回避行動を取る暇もなく、一体のゴブリンが甲高い声を発することとなった。
 仲間の負傷の声に、ゴブリン達はハッとしたように武器を持ち出した。牧場で使われていたであろう農具や、村から盗んできたのであろう鍋の蓋を構えるゴブリンの姿は、まさに小鬼。その大半が、猟兵達を倒そうと突撃してくる。


「邪魔ッ!」
 わらわらと向かって来るゴブリンを、その巨大な足で蹴散らし踏みつけながら、コガネは一つの柵へとたどり着く。背中まで伸びる長髪を土埃で汚し、ぐったりと項垂れる少女が、手足を鎖で繋がれていた。目は閉じられ、先程から反応が見られない。
 自身の半分程度しかないその少女におそるおそる触れる。……呼吸、脈拍確認。生命反応は、ある。
「もう大丈夫。絶対助けますから!」
 機械でできたその左腕に瞬時にパイルバンカーを装着し、少女を拘束している鎖を破壊した。
 その背後を一体のゴブリンが狙っていた。小さな体を活かし、踊るように飛びかかってくる。
 瞬時に、コガネの背中に内蔵された機械兵器が翼のように広がり、間髪入れずに砲が発射される。砲は見事に敵影を捉え、着弾。その小さな体は、フルバースト・マキシマムの威力に耐えきれずに吹っ飛んだ。
「近付いたらぶっ放しますからね!」
 倒れる少女の壁になるように、コガネはそびえ立っていた。


「逃さないにゃー!」
 猟兵に向かって突撃してくる波に逆らい、捕らえた人間へと向かおうとするゴブリンが二体。そちらへ向かって、ナミルは黄金の錠前を放った。
 錠前がゴブリンへと命中すると、その瞬間、ゴブリンの体がボンっと爆発した。ギャ、と短い悲鳴が上がる。
 いつの間にか、ゴブリン二体はそれぞれが黄金の鎖で絡め取られ、その鎖の先端はナミルの手に握られていた。
「こっちにくるデスにゃ!」
 ナミルが黄金の鎖を引くと、じゃらりと音を立ててあっという間にゴブリンが連れ戻される。己の運命を悟ったゴブリン二体の目には、眼の前に突きつけられた黄金の武器と黒い獣が、とても恐ろしいものの様に感じられた。それは武器が纏った呪いによるものだったのか、本能的に感じた恐怖だったのか、知る術はない。
「やっと静かになってハンモックで眠れそうだったのににゃ」
 ばいばいデスにゃ。
 ナミルの静かな怒りが、ゴブリン二体にぶつけられた。
「さて、もうひと暴れにゃ!かかってこいデスにゃー!」
 ゴブリンの注意を引きながら、他の仲間達が住民を安全な場所まで避難させてくれる事を願う。巻き込まない様に戦うのも、なかなか難しいものである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

バラバ・バルディ
【WIZ】
気づくのが遅れてすまなんだのう!安心せい、ここにおるのは皆強き猟兵よ。直に家に帰れるからの。
(『コミュ力』で村人を安心させ、自身とからくり人形で攻撃を『かばう』または『敵を盾にする』)
……しかし、知能の低いこやつらが疲労困憊した相手を狙って、他の村人に気取られることなく少しずつ連れ去るなど、できるものかのう?更に用意周到に枷なぞ持ってきとるというのも……どうにもきなくさい。ひとまず地縛鎖で『情報収集』し、後で村人にも話を聞く必要があろうな。

これは村人らもゾーヤ嬢も哀しむじゃろうなあ。……うむ、そうじゃな、このようなことは早く終わらせるに限る。そして狼たちと村人らで祝いの宴を開こうぞ!


アルト・カントリック
僕がゴブリンの目をくらませて、男女を救出することを事前に説明しておきたいな。行動が違った人、被った人は僕のユーベルコードをなんとか有効活用してもらおう。

ユーベルコード【戦場の霧】で霧状のドラゴンを召喚して、局地的な濃霧でゴブリンを覆うよ。

その間にアイテム【レガリアスシューズ】で駆けて、速やかに静かに救出対象を安全な所へ移動させたいな。

(“救出対象を移動させる”という行動の必要性が無かった場合、ゴブリンから救出対象を守る事に徹します)


コンラート・シェパード
(アドリブ歓迎)
ほら、お前たちも、

―――おやすみ。

◆戦闘
仲間との連携を意識。

HPの低い者(村人含む)を優先的に【かばう】。
出来る限り得物で【武器受け】して攻撃を受け流すか、【カウンター】を。
【スナイパー】【だまし討ち】で命中率を補強しつつ、
ユーベルコード「氷竜飛翔」を発動。
その際【暗殺】【串刺し】で威力を出来うる限り高めつつ、【2回攻撃】で発動回数確保に努める。


ジロー・フォルスター
さて、聖者としての務めを果たすかね
『生まれながらの光』で拘束された人間を回復
手枷足枷があれば咎人殺しの素質で解く
【優しさ・コミュ力】で安心させ【医術】で傷の具合を観よう

「大丈夫だ。何とかするからな、俺か他の奴らの後ろにいろよ」

暗い中でも【暗視】があれば戦える
人間たちを【地形を利用】し【かばう】
ゴブリンを【おびき寄せ】て【見切り・武器受け・カウンター】
ジャマダハルで【鎧砕き・傷口をえぐる・串刺し】
武器に溜めた血を【吸血・生命力吸収】

「傷を癒すのは疲れんだ。分けて貰うぜ」

ゴブリンの血を吸血して疲労を回復させ、人間や仲間の傷を癒してサポートする力に変える
自分の身は【防具改造・オーラ防御】で守るぜ



●冷気は踊る
 周囲を取り囲む空気が変化した。ひんやりと湿った冷気が室内に広がると同時に、視界が白く変化していく。
「見えざる者よ、姿を映せ」
 音もなく、白く変化した空気がアルト・カントリック(どこまでも竜オタク・f01356)の声に従い密度を増し、この世界の王者であるドラゴンの姿を形作る。霧であるにも関わらず質量を感じるその存在は、まるで本当にその生き物であるかのように低く唸る。そして唸り声に連動し、ゴブリン達からは次々と驚愕と焦りの声が生まれ落ち、消える。
 霧によってその視界が絶たれ、あちらこちらから聞こえる仲間の悲鳴や、反対にどんどん聞こえなくなる仲間の声に、小鬼達は一気にパニック状態に陥る。
 戦場の霧は、自身の存在を主張する様に、声高らかに吼えた。

 小屋の中にビリビリと響き渡る咆哮に紛れ、ゴブリンを串刺しにしていく影がひとつ。
 コンラート・シェパード(シリウスの鉾・f10201)は暗殺の技能を活かし、濃霧の中から敵を狩っていた。無駄のない動きに、軍属であった経験が垣間見える。
 どこからともなく発生した霧と突如轟く王者の鳴動に錯乱したゴブリン達は、コンラートの気配に気付くこともなく沈黙していく。
「――――、」
 霧のドラゴンに包まれたまま、ドラゴンランスの力を開放する。放たれた一撃は氷のように冷たく、鋭い。霧で冷えた空気を切り裂くように放たれた【氷竜飛翔】がゴブリン達を飲み込んでいく。
 霧のドラゴンとドラゴンランスからの大技の親和性は高く、ゴブリン達には本当にそこに氷のドラゴンが出現したという錯覚を覚えただろう。
 ほら、お前たちも、――おやすみ。
 ゴブリンの喚き声が聞こえなくなるまで、そう時間はかからなかった。


 仲間が霧で目くらましをすると聞いていたジロー・フォルスター(現実主義者の聖者・f02140)は、慌てふためくゴブリン達を倒しながら、霧に乗じて柵内へと入り込む。自分に混ざる吸血鬼の血のおかげか、はたまた自分に宿った暗視技能の恩恵か、思いの外その視界は開けていた。
 たどり着いた柵の中、そこには全身に傷を受けた男性が、鎖のついた首輪と足枷、猿轡でもって拘束されていた。
 霧の中から現れたジローの姿に、男性はビクリと身を震わせた。フー、フー、と短く荒い呼吸をしながら、逃げるように後ずさる。が、足枷のせいか上手く行かず、鎖がじゃらりと無機質な音を立てるだけで終わった。
「大丈夫だ。俺達はお前達を助けに来たんだ」
 過剰なまでに怯える男を諭しながら、深呼吸を繰り返させる。確かに怪我はしているし、混乱しているが、落ち着けば話が聞けそうな状態だ。
 声をかけながら、聖なる光で男の傷を治療する。暖かな光に包まれ、体中の傷が消えていく度に男の呼吸も落ち着いてくる。
「今俺の仲間たちが霧の中でゴブリンと戦ってる。拘束を解くが、戦いが終わるまでこの柵の中から出ないでくれ」
 言い終わらないうちに、男はコクコクと顔を揺らす。思考できる程度には落ち着きが戻っている様子だった。本当に理解したか疑問ではあるが、まずは猿轡を解いてやる。次に首輪、足枷――。
 と、大人しくしていた男が、足枷の拘束を解くと同時に立ち上がりかけ……そのまま、崩れるように倒れた。
「落ち着けよ。今この柵から出ると、巻き添えだぜ?」
 傷の治療こそできたが、男は腰を抜かしていたらしい。無様に倒れ込んだ男を抱え起こし座らせながら、改めて大人しくするよう告げると、男は今度こそ観念したように、その場で膝を抱えた。
 さて、とジローは短剣を取り出し、改めて霧の中へと歩みを進める。
「傷を癒すのは疲れんだ。分けて貰うぜ」
 ゴブリンはもう残り少ないだろうが、"患者"はまだいるようだ。自分の疲労も補わなければ。


「気付くのが遅れてすまなんだのう」
 霧の中からヌッと現れたクチバシに、悲鳴の主は改めてヒッと怯えの声を漏らした。バラバ・バルディ(奇妙で愉快な曲者爺さん・f12139)が慌てたようにあわあわと手を彷徨わせ、クチバシの前で『シー!』とやる。と、女性の悲鳴はそれ以上継続する事はなかった。はて、と、静かになった女性に今度はバルバが小首をかしげる。
 ロープに繋がれた女性は、己の状況など関係ないかのように、まじまじとバラバを眺めていた。
「あなた、助けに来てくれた人?そうよね、見た目がゴブリンと違うもの」
 楽しい格好ね、と続ける女性は、成人前後だろうか。一つに結われた髪の毛が解けかかっていて、土汚れは付着しているものの、外傷はほとんど無さそうだ。
 その叫び声と外見から活発そうな印象は受けていたが、まさかこれほど元気とは。バラバは内心驚きながらも、女性の問いかけに笑みで応えた。
「そうじゃよ。ここに来たのは皆強き猟兵よ。直に家に帰れるからの」
 縛られていたロープを解きながら告げるバラバの言葉に、女性はパッと笑顔を作った。
「良かった。私、オオカミさん達にご飯をあげに行く途中だったの。殺鼠剤ってきっとオオカミにも効くわよね?」、
 女性はハツラツとした笑顔を浮かべているが、その口から飛び出したのは穏やかでない言葉。よくよく見ると、女性の目の下にはクマが浮かんでいて、彼女もまた睡眠不足によって思考がぶっ飛んでしまっている事に気がついた。
 どう答えたものかとバラバがたじろいでいると、ザ、と地面を蹴る音が聞こえ、その場にアルトが駆けつける。
「こっちは随分元気そうだね。じきに霧は消えるけど、きっと惨状だから、今のうちに外へ出よう」
 さあ、と手を伸ばすアルトに、女性は女の子もいるのね!と嬉しそうに応じた。そういえば、先程と比べると随分霧が薄れていた。戦闘の音もほとんど聞こえていないし、いつの間にかゴブリン討伐は終わっていた様だった。

 ……しかし、知能の低いこやつらが他の村人に気取られることなく人攫いなど、できるものかのう?どうもきな臭い。
 霧のドラゴンが去った名残を残す飼育小屋の中に、バラバは地縛鎖を垂らした。ぐるぐると螺旋を描き這わせた鎖が、大地の魔力と共に情報を提供してくれる。
「これは……」
 映像として脳裏に浮かんだものの中に、バラバは見知らぬ姿を見た。
 褐色の人の形をし、頭部には獣のような耳を生やし、腰からは同じく獣のような尻尾を生やしていた。まるで他の世界のキマイラのような外見を持ったそのモンスターは、ゴブリンさながらに人間を襲っていた。さながら、女版ゴブリンといったところなのだろうか。
 映像を見る限り、元々空き家となっていた牧場に、その女版ゴブリン率いるゴブリン軍団が移住。そして、今回の犯行に及んでいた様だ。
 被害はまだこの三名しか出ていない、というのは不幸中の幸いと言って良いものだろうか。
 これは村人らもゾーヤ嬢も哀しむじゃろうなあ、とバラバは思う。このような事件は早く解決し、祝盃をあげたいものだ。
 バラバは今見た情報を共有するべく、足早に仲間の猟兵が待つ小屋の外へと歩みを進めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『チョコ色の肌をした半裸の巨乳』

POW   :    あら、私のここが気になるの?
【指先が触れたところ】から【特殊なフェロモン】を放ち、【誘惑や快感】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    だーめ、逃がさないわよ?
【組打ち】による素早い一撃を放つ。また、【服を脱ぐ】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    へぇ、たくさん来たのね。みんな、歓迎してあげて!
レベル×1体の、【胸】に1と刻印された戦闘用【チョコ色の肌をした半裸の巨乳】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ウルフシャ・オーゲツです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●全ての元凶
 怪我の治療によって少女は目を覚ました。口数は少ないものの、しっかり応対ができる状態だった為、猟兵達は安堵する。三人の身元を確認し、猟兵同士でも情報交換している真っ只中、その機会は訪れた。
「あら?もしかしてゴブリンちゃん達、やられちゃったの?」
 褐色肌の、半人半獣の女性が、その豊満な胸を揺らしながら少数のゴブリンを伴って牧場へと帰還した。
 ヒッと、被害者の男性が短く悲鳴を上げてその場にひっくり返る。顔面は一瞬にして蒼白になり、ガチガチと歯を鳴らした。
 少女も見を固くして、被害者女性に縋りつく。被害者女性は、誰?とでも言い出しそうなほどあっけらかんとしたままに、縋り付いてくる少女を反射的に抱きしめた。
 事前に聞いていた情報を元に、それが今回の事件の主犯であると確信する猟兵達が、手に手に武器を構える。
「ふーん?」
 そんな猟兵達を好奇な目で舐めるように見渡した後、褐色の敵はペロリと舌舐めずりをした。
「いいわ、みんなまとめて遊んであげる」
 そして、再び戦闘が開始された。
バラバ・バルディ
【WIZ】
(女性に向かい)おぉっ、ちょうど良いところに来たのう。ほれ、あやつが狼を惑わして村に混乱をもたらし、お主たちを拐かした真犯人じゃ!
(少女に向かい)……おぉっすまんすまん!怖がらせてしまったのう。うーむむ……おぉっそうじゃ!わしの帽子を貸してやろうな。お嬢さんにはちと大きいかもしれんが、これを被れば怖いものを見たり聞いたりすることもない。大丈夫じゃ、すーぐ終わるからの!
(男性に向かい)お主も怖いじゃろうが、もう暫し気をしっかりと持つんじゃぞ!わしも全力でお主らを守るが、もしものときは自力で凌がねばならん。お主も、やられっぱなしは癪じゃろう?

(村人を『鼓舞』しつつ、人形で『かばい』ます)


七篠・コガネ
●ナミルさん(f00003)と連携
貴女が…事の黒幕ですね!良い度胸です。ゲロクソのような悪を、僕は許しません!

あの指先は厄介だ。リーチが届かない距離まで離れた方が良さそうです
ロボットの僕にだって効いちゃうかもしれませんからね…
だから『Endless Right』で遠距離射撃!敵の手を集中して狙いたいところ
ところで僕ばかり手一杯でいいんですか?貴女の後ろには…

もう一人猟兵がいるのですよ!!

敵に隙が生じたら背中のプラズマジェットで上空高く飛翔
からの全体重をかけた【猛禽脚】で敵目掛けて【踏みつけ】攻撃といきましょう
ナミルさんとタイミングを合わせて
「うるァ”ア”ア”ア”ーッ!」


△アドリブ歓迎


ナミル・タグイール
コガネ(f01385)と連携
なんだかあんまり強そうじゃないにゃ?ザクっと倒しちゃいマスにゃ!
フェロモンって何デスにゃ?きっと大丈夫にゃ!(楽観猫)
・行動
コガネと一緒にボスを囲むにゃ!ナミルは後ろから狙いマスにゃ
射撃に気を取られてるうちに斧で手をざっくり狙うにゃ!
防がれても斧が纏う【呪詛】で動きを鈍らせたいにゃ。お宝パワー(呪)にゃ!
でっかい隙ができたら思いっきり振りかぶって【グラウンドクラッシャー】にゃ!
コガネと一緒に「うに゛ゃ゛ぁ゛あ゛ん゛!」ってドッカーンですにゃ!
なんでも歓迎


アルト・カントリック
なんだかハレンチな敵だな……。下手に近付きたくないし、服を脱がないで欲しいな……。

という訳で、狩猟用狙撃銃に持ち構えて、遠くからユーベルコード【UC弾・圧の構え】で攻撃するよ。味方の邪魔をしないように気をつけなくてはね。

絶対、僕はこの敵に近づかないからね!


コンラート・シェパード
◆行動指針
完全に冷徹に、一切の容赦なく。

◆戦闘
仲間との連携を意識。
敵が複数の場合は、有効なら【誘惑】の後【範囲攻撃】でユーベルコードを。

HPの低い者(村人含む)を優先的に【かばう】。
出来る限り得物で【武器受け】して攻撃を受け流すか、【カウンター】を。
【スナイパー】【だまし討ち】で命中率を補強しつつ、
ユーベルコード「氷竜飛翔」を発動。
その際【暗殺】【串刺し】で威力を出来うる限り高めつつ、【2回攻撃】で発動回数確保に努める。



●チョコ色の肌をした半裸の巨乳
「あまり強そうじゃないにゃ?」
 ナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)が率直な感想を漏らす。
 コイツが放つフェロモンが、オオカミ達の行動をおかしくさせたのか。
 これまでの情報を握っていた猟兵達は瞬時に察した。
 そして、ゴブリン達はこの半人半獣の魔物を司令塔としていたからこそ、知能を感じるような行動が取れていたのだ。
「なんだかハレンチな敵だな……」
 僕は絶対近付きたくない、とアルト・カントリック(どこまでも竜オタク・f01356)が嫌悪感をにじませ呟くが、世界とは残酷なものである。求めていないものに限って向こうからやって来てしまうのだ。
「あなた、とても良い表情をしてるわね」
 素早く武器を構えた猟兵達を見渡した"チョコ色の肌をした半裸の巨乳"が、そのさまよわせた視線をアルトで視線を止めた。ニヤリ、と厭らしい笑みをこぼす。
「懐かない子ほど屈服させたくなるものよね」
 言うなり、魔物はアルトに狙いを定め、素早く接近してくる。先程まで立っていた場所に、羽織っていたジャケットが脱ぎ捨てられていた。
「ッ、性別無視なの……!?」
 遠くから狙撃しようと構えていた狩猟用狙撃銃に素早く弾を送り、発砲。
 咄嗟のことにユーベルコードを上手く乗せる事は叶わなかったが、発射された弾丸は確かに敵の肩口を捕らえた。
「きゃ!」
 小さく悲鳴を上げ、弾丸が貫通した肩を抑える。
 しかしその瞬間、今度はその手に向かってパシュンパシュンと光線銃が放たれた。
 褐色肌を持つ半人半獣の敵が、その光線が放たれた方をキッと睨みつける。
 その視線の先では、化学兵器の真骨頂と言っても過言ではない巨大な人間兵器、七篠・コガネ(その醜い醜い姿は、半壊した心臓を掲げた僕だ・f01385)がその手であるブラスターを構えていた。
「あなたも繁殖できるのかしら?」
 コートをなびかせ光線を放った狙撃手に、好戦的な視線が向けられる。その目に光るのは、単純な好奇心か。
 魔物は傷口から溢れる鮮血を、官能的なほどに艶やかな動きでその唇に塗りつけた。
「私の指先、気になるのね?」
 瞬間、コガネにはその唇を起点として生理活性物質が放出されたのを感じた。

●その一方で
「ほれ、あやつがオオカミ達を惑わし、お主達を誘拐した真犯人じゃ!」
 訳の分から無さそうな顔をする女性に、バラバ・バルディ(奇妙で愉快な曲者爺さん・f12139)が説明した。オオカミ達は遠吠えしたくてしていた訳じゃないんじゃ、だからオオカミたちに殺鼠剤は不要なんじゃ、と解説すれば、女性は「じゃああの茶色いのがいなくなれば、また静かな夜が返ってくるのね」と納得した。
 その女性の腰元にガッチリとしがみつく少女は、カラフルでふわふわな大きい帽子で頭をすっぽりと覆っていた。
 バラバが少女を安心させる為に貸した帽子の羽が、その呼吸に合わせてふわふわと揺れる。派手で陽気なこの帽子を被っていれば、怖いものを見ることなく、すぐに平和が訪れると信じていた。
「お主も怖いじゃろうが、もう暫し気をしっかりと持つんじゃぞ!」
 尻餅をついて震えたままに戦場を見ている男性にも、バラバは声をかける。わしらも全力でお主らを守るが……と、言い終わらないうちに、バラバの言葉は途切れた。

 ギャア!と、少し前にも小屋の中で聞いた声が再度耳に届く。
 半人半獣の魔物に伴っていたゴブリンが、コンラート・シェパード(シリウスの鉾・f10201)によって蹴散らされていた。
 一度の攻撃で二度振られた槍は、手慣れた様子でゴブリン達を処理していく。
「―――、」
 ドラゴンランスから氷竜の力が開放される。その切っ先は冷徹に、一切の容赦なく。
 竜が鉤爪で獲物を仕留めるように、そのブレスで敵を凍らせ尽くすように、鋭い攻撃がその場を支配していた。

「……と、こういう事もあるからの」
 からくり人形で村人をかばいながら、バラバは途切れた言葉を補完した。
 最も、コンラートの的確な行動によって、ゴブリン達の強襲は完封。その牙がからくり人形まで達する事はなかった。

●ラストバトル
 半人半獣の魔物が口に紅を差したのを切っ掛けに、コガネは更に間合いをとった。
 オオカミの異常行動がフェロモンという名の生理活性物質の所為だというのならば、どれほど強力なものなのだろう。もしかすると、ロボットにも有効だったりするのだろうか。
 コガネがそう疑問を感じるのと同じく、魔物もその確認をしてみたい様だった。
 標的をコガネへとスライドし、コガネが下がれば下がっただけ、ただでさえ少ない衣類を脱ぎ捨てながら接近する。その加速は凄まじく、すぐにコガネの移動速度を上回りそうだった。
「服を、脱ぐなよ……!」
 自分が標的から外れた事に少なからず安堵しながら、アルトは今度はしっかりと狩猟用狙撃銃で標的に狙いを定める。
「目標よし、周囲よし、命中率……よし」
 見通しの良い牧場が戦場でよかった。遮蔽物がない為、純粋に目標を追えば良い。
「……発射!」
 ユーベルコードを纏った弾丸が、ほぼ同時に三発放たれた。その発砲音が響くのは、全ての弾が脚部、腹部に着弾し、頭部をかすめた後だった。
「ッッ! さっきから小雨がちらちらと……!」
 反射的に撃ち抜かれた部位の筋肉が収縮し、脚がもつれる。
 すぐ目の前にコガネを捕らえながらも、魔物の脚は制御しきれずにたたらを踏んだ。
「ところで僕ばかり手一杯でいいんですか?」
 沈黙を守っていたコガネが、眼の前の敵に向かってふいに話しかけた。
 貴女の後ろには、と続けられる言葉に、半人半獣の魔物はハッと振り返る。
「遅いデスにゃ」
 そこでは、黒い猫の獣人がニヤリと怪しげな微笑みを携えながら、黄金に輝く巨大な斧を振り下ろす真っ最中だった。
 ――ギャアアア!
 先程言葉を紡いでいた生き物とは思えないような絶叫が、牧場内に響いた。
 風貌は人間によく似ていたが、その中身はやはり魔物であるという事がよく分かる。そんな絶叫であった。
「お前達など、私のフェロモンで――」
 なお抵抗する半人半獣の魔物が、その指先で自身に触れる。が、そのフェロモンは、先程アルトが放った三発の弾丸【UC弾・圧の構え】によって完全に封じられていた。
 魔物の表情がみるみるうちに蒼白へと変わる。
 そんな変化すら気にも止めず、ナミルは呪詛を纏った金色に輝く巨大な斧を再び、思い切り振りかぶった。
「お宝パワー(呪)、全力で行くデスにゃー!」
 敵を挟んでナミルと反対側にいたコガネが、ナミルのその声に合わせてプラズマジェットで飛翔。からの急降下。
「ゲロクソのような悪を、僕は許しません! 昔の人はこう言いました。”悪の報いは針の先”!」
 全体重と落下スピードが、全てその猛禽脚に乗せられる。
 呼応するかのように、ナミルの振りかぶった斧がギラギラと瞬いた。触れただけで毒されそうな程の呪詛が、オーラの様にまとわりついている。そこから放たれる、終焉にほど近い一撃。
「うるァ゛ア゛ア゛ア゛ーッ!」
「うに゛ゃ゛ぁ゛あ゛ん゛!」
 コガネとナミル、二人の攻撃は物凄い音を立てて地面をえぐり、地形そのものを破壊した。
 爽快に、豪快に。見ていた村人達が思わず「わぁ」と声を上げてしまうほどに。

 砕け散った土の粒がパラパラと降り注ぐ。大きくへこみ地面をむき出しにした牧場の真ん中で、"チョコ色の肌をした半裸の巨乳"は目を回して伸びていた。
 既に戦う事はできなさそうな程傷ついたその身を、コンラートが終焉へと導く。氷竜を操る者にふさわしい程、その視線は普段とは異なり冷徹だった。
「――おやすみ」
 かくして、荒野に平和が訪れた。

●静かな荒野で
 ゴブリン達の犠牲者となった三人を村に送り届け、住民に話をして、オオカミ達の様子を確認して……と忙しく後処理へと駆け回っていた猟兵が帰路につく頃、その女性はわざわざ出向いてくれていた。
「女の子は外傷はあれど、想像してたような酷い目にはあってないみたいよ。男の人の方は知らないけど」
 一度村まで送り届けたはずの件の女性が、目の下にクマを携え眠そうにあくびをしながら教えてくれた。おかげさまで、オオカミに殺鼠剤入りのご飯をあげるのはやめたわ、と、自分の報告もしてくれた。
 それにしても、と女性は猟兵達を改めて見渡し、小首をかしげる。
「あなた達って、何者なの?なんだか、この世界の人じゃないみたい」
 その視線は、主に巨大な人型兵器や、不思議なクチバシと鳥のような手足を持った人物や、全身が毛で覆われた猫のような人物に注がれていた。
 視線を受けた主達には"自分がこの世界の人かどうか"ははっきりと分かるのだが、その世界の住民はその事に関して全く違和感を感じない。
 自分たちが世界の加護を受けていることを再確認しながら、猟兵達は平和の訪れた荒野を後にするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月01日


挿絵イラスト