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迷宮災厄戦⑧〜うさうさBANG☆

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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「この望遠鏡、すっごく面白いですねー!」
 星空に近い天文台に鳴り響く、スパーリング音。美しい夜空の広がる不思議の国で、ボクサーバニーたちは猟兵がやってくるのをいまかと待ち受けていた。
 そこにある望遠鏡は、覗いた者の攻撃をまるですぐ近くにいるかのようにレンズの向こうの敵まで届けてくれる。
 すごい望遠鏡だ、すごい効果だ。
 なにしろ、ボクサーバニーたちは暴力が大好きだ。これがあれば一方的に敵をぼっこぼこにできるという代物だ。
 うずうず。
 はやく使いたい……!
 グローブの紐を結わえ直し、いまかいまかと待ちわびる。戦いのゴングが鳴り響くまで、あともう少しだけ――。

「この非常事態に集まってくれて感謝する」
 サク・スミノエ(花屑・f02236)は短く前置き、現場の様子を詳細に語り始めた。
「そこは美しい星空の広がる不思議の国。オウガが待ち受ける天文台には不思議な望遠鏡が設えられている」
 なんでも、それを覗いている間は『まるで敵が目の前にいるかのように』攻撃できるのだとか。
「つまり、オウガは望遠鏡でこちらを発見次第、一方的に遠距離攻撃を浴びせることが可能というわけだ。今回相手取ってもらうボクサーバニーたちはその名の通り近接での殴り合いを得意とするが、それが遠距離からであっても容赦なく繰り出される。これをかいくぐるにはとにかく望遠鏡に補足されないように気を付けつつ、天文台にいる敵の元へ向かうしかない」

 相手に見つからないように、相手がいる場所までたどり着く。まるでそういう遊びみたいだな、とサクは肩をすくめた。
「もし望遠鏡に見つかれば、相手は暴力性の非常に高い集団だ。寄ってたかって襲いかかってくる。袋叩きはごめんだろうからな。戦いの際には慎重に、確実にな」


ツヅキ
 受付期間:8/2 朝5:00頃迄に届いたプレイングをまとめて判定・執筆します。

 共同プレイングをかけられる場合は同行者の呼び名とID、もしくは団体名を冒頭にご記載お願いします。

 望遠鏡に発見されない工夫があるとプレイングボーナスです。
 この望遠鏡には近接攻撃を遠距離攻撃に変換する効果があり、まるで敵がすぐ近くにいるかのような攻撃が繰り出されます。
 敵が望遠鏡を覗いている間は一方的な遠距離攻撃を受けるため、できるだけ見つからないように敵のいる塔までたどり着いてください。
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第1章 集団戦 『ボクサーバニー』

POW   :    サンドバッグコンボ
攻撃が命中した対象に【ウサギ型の痣】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【次々と現れる仲間達のパンチ】による追加攻撃を与え続ける。
SPD   :    ダーティサプライズブロー
レベルm半径内の、自分に気づいていない敵を【異空間からの奇襲によるパンチ】で攻撃する際、ほぼ必ず狙った部位に命中する。
WIZ   :    ハニートラップカウンター
【挑発】を披露した指定の全対象に【無防備にこちらへ近づきたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

火土金水・明
「美しい夜空を静かに堪能できないのが残念ですね。。」
【地形の利用】をしつつ【忍び足】と【目立たない】の技能を使用して戦場内を移動します。
【WIZ】で攻撃です。
攻撃は、【高速詠唱】で【破魔】と【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【全力魔法】の【新・ウィザード・ミサイル】を【範囲攻撃】にして、『ボクサーバニー』達を纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【見切り】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでもダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします


マスクド・サンドリヨン
ピジョン「ボクサーバニーですか。厄介な所に厄介な相手が現れましたね」
姫華「あいつらの事は、よく知ってる。なんとかしなきゃ!」

コスチュームを派手なものにドレスアップして、花びらを舞い散らせながら飛ぶわ。
超高速の飛行に、急な加減速や不規則な方向転換を組み合わせれば、望遠鏡のレンズで捕らえるのは難しい筈。
加えていつも以上に花びらを舞い散らす事で、私の姿をその中に覆い隠して撹乱。
天文台に乗り込んだら反応される前に急接近、パンチでKOしていくわ!

最終的には仲間を倒した事で怒った相手に、サンドバッグにされて逆にKOされてしまいそうだけど……。
でも、それまでになるべく数を減らして、後は味方に任せましょう。


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

なーるほど、「見られたらアウト」なのな。
流石にいきなりサンドバッグは御免だよ。
けどねぇ……遠いのならやり様はあるさ。

ガソリンも満タンにして、星空の『闇に紛れる』ことが出来るよう
暗い『迷彩』柄に『変装』して。
そして仕上げはコイツさ、なかなか出番のない【陽炎迷彩】!
音はすれども姿は見えず、なら殴れやしないだろ。

途中でバテるかもしれないけど、
その時はちょくちょくカブのサイドバッグから
宇宙モンゴリアンデスワームでも取り出して放り投げ、
電光でハジケさせてそっちに注意を『おびき寄せ』る。
その間にさっきの迷彩を発揮させつつ闇に紛れる休憩を済ませ、再起動ってね。

最後は轢き逃げだァ!


城島・侑士
アドリブ◎

暗色の外套を羽織り目立たないように行動
闇に紛れて移動しているとはいえ
望遠鏡で見られている時に動いたら一発でバレるだろうから
第六感で身の危険を感じた時は無理して進もうとはせず先ずは身を隠す
ふぅ…こりゃ命がけの隠れんぼだな
万が一捕捉されそうになったら
懐に忍ばせた発煙筒を放り投げ
バニーがそっちに注意を向けてる間に望遠機の観測範囲から離れるか遮蔽物へと隠れる

無事敵のもとに辿り着いたら隠れんぼは終わりだ
おっとバニー近付かれるのはごめんだぜ
妻や娘に誤解されかねないし
拳で殴ってくる凶暴な女は好みじゃなくてな
遠慮しておくよ
咎力封じを発動し
動きの鈍ったところを乱れ撃ち
敵の攻撃はオーラ防御でガードする


司・千尋
連携、アドリブ可

安全圏から攻撃出来るとか卑怯とは思わないが
反撃されても文句は言うなよ?


常に周囲に気を配り敵の攻撃に備え
少しでも戦闘を有利に進められるように意識

移動時は『蛟竜毒蛇』を発動し天文台へ向かう
霧で覆って見えなくなれば望遠鏡に補足されにくくなるはず…
過信せず警戒しながら移動する

天文台に辿り着いたら
目眩ましとして霧を使い近接武器や投擲で攻撃
死角や敵の攻撃の隙をついたりフェイント等を駆使
確実に当てられるように工夫


常に冷静でいられるように感情を排し周囲を観察
挑発されたら平常心を保つよう深呼吸でもしてみるか

敵の攻撃は細かく分割した鳥威を複数展開し防ぐ
割れてもすぐ次を展開
回避や防御する時間を稼ぐ


菱川・彌三八
奇遇じゃねェか
俺も喧嘩ァ大好きなンだよ
だが、一方的にやんのもやられんのも御免だね

念の為闇に紛れる様な着物にするが、妙な目が離れた刹那、音の速さで駆ける
此奴ァ一遍でも見られちまったら駄目なのかい?
ちらと見られて一撃入ろうが、ついて来れぬ程に速けりゃ好いってんなら話が早ェんだがよ
なあに、踏鞴踏む程ヤワじゃねェさ

辿り着いたら勢いの侭肉薄し、左、左、外から抉る如く右
右手は顎横、左手は顎の高さに前方
肩幅に開いた左足はちいと前に
軽く地の感覚を確かめたら、追撃行くゼ

軽く隙作って相手の一撃を誘い、軽くいなして左…と見せかけて右足で脇腹を抉る
後ァ相手の手次第で左脇、顎、右の一撃
場数なら負けやしめェよ


メンカル・プルモーサ
…見るだけではなく、近接攻撃でも攻撃出来るとは中々に厄介な…
……樹や岩の影などの地形を利用しながら移動を開始…
…心理隠密術式【シュレディンガー】を併用することで更に見つかりにくく、偶然視線が通った程度では気にされないようにしておくよ…
…さらに隠れながら移動する先々で遅発連動術式【クロノス】による術式印を設置…
…天文台から数百mまで近寄れたらトリガーにより術式を発動…
…「誰かが苦し紛れに攻撃する」かのように印から攻撃術式を発射させて囮にしよう…
…囮で時間を稼いでる内に高速・多重詠唱…天文台に向けて【超過詠唱:空染める白黒の光】を発射して天文台ごと兎たちに攻撃するよ…



「ここが、覗いた星空を奪う望遠鏡のある国ですか。せっかくの美しい夜空を静かに堪能できないのが残念ですね……」
 ひらりと漆黒のローブを翻し、火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は音も立てずに天文台を目指して駆ける。
 例え夜の支配する時間であっても、明の地形を読む目は冴えわたる。敵は塔の最上部に据えられた望遠鏡のそば。ならば、上からは見つからないような場所を選んで進めばいい――!
「なるほどね」
 数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)が頷いた。跨る宇宙カブは夜空に馴染む迷彩柄に換装した上、ガソリンは満タン。
「最初から飛ばしてくぜ。流石にいきなりサンドバッグは御免だからねぇ……!」
 エンジンを全開にしたカブは陽炎迷彩の効果によって見た目はまるっきりの透明になった。そのまま、一気に天文台までの距離を詰める。
「どこ!?」
 音はすれども姿は見えず――望遠鏡をのぞいたバニーたちは焦ったようにてんで見当違いの方向ばかりを探している。
「どうやら、うまくいっているようだな……」
 闇に溶け込む外套の襟を立て、城島・侑士(怪談文士・f18993)は息を潜めつつ、しかし確実に天文台へと近づいていた。
 隣をゆく司・千尋(ヤドリガミの人形遣い・f01891)は手近にあった街灯に手を触れ、それを毒の霧へと変えてしまう。
「なにしろ、安全圏から攻撃出来るとかいう販促技を使ってくる相手だからな。慎重にいこう」
「異論なし、だな。望遠鏡で見られている時に動けば一発でバレるだろうから――」
 侑士ははっと息を止め、近くの物陰に滑り込む。直後、空振ったグローブがすぐ脇を掠めていった。
「ふぅ……こりゃ命がけの隠れんぼだな」
 ならば、と懐から取り出した発煙筒をそっと道の向こう側まで転がした。端まで届いた瞬間、激しく煙を吐き出して視界を遮る。
「いまのうちに望遠鏡の観測範囲外まで到達しよう」
「心得た」
 千尋が糸を繰るように指先を動かせば、さらに霧が深まった。過信はしない。演劇の本番舞台に立っているが如くの緊張感を保ったまま、千尋は霧を連れて歩みを進めた。
「あれれ、見えなくなっちゃいました!」
 天文台ではバニーたちが困ったように首を傾げている。
 さっきから、もう少しで敵を見つけられそうなのにはぐらかされてばかりだ。猟兵たちの目くらましがうまく効いている。
「ま、便利だけど体力使うのが玉に瑕さ。疲れ切っちまう前に、こいつで敵の目を欺いてやるとしようかね」
 多喜がカブのサイドバッグから掴み出して投げたのは、危険を感じると電光を発する宇宙モンゴリアンデスワーム。
「この夜空ならさぞかし綺麗に見えるだろうね。そら、派手にハジケなよ!」
 空中に投げ出されたワームが花火のように弾け、望遠鏡に夢中になっていたバニーたちの目を引き付けた。
「あっちです、あっち……あれ?」
 だが、あれほど派手に光っていたにも関わらず、見つかったのは変てこりんなワームだけ。多喜はとっくに物陰に身を潜ませ、ヘルメットを脱いで一息をついていたのである。

「あれ?」
「どうしました?」
「ううん、一瞬何かが見えたと思ったんですけど……」
 どれだけ目を凝らそうと、心理隠密術式【シュレディンガー】を併用して移動するメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)がそう簡単に見つかるわけはない。
「……見るだけではなく、近接攻撃でも攻撃出来るとは中々に厄介な……けど、物理的な形を持った道具である以上、必ず死角は存在する……」
 塔から地上までの地形を瞬時に入力、分析、出力。敵の目をかいくぐり、メンカルは最適なルートを瞬時に選択する。
「……ん、これでよし……」
 身を隠した場所に次々と術式印を残し、準備完了。
「……あとは、天文台から数百mまで近寄るだけ……」
 闇が迸る。
 否、人だ。闇に同化する着物を纏った菱川・彌三八(彌栄・f12195)の疾駆は風よりも早い。ほんの刹那、瞬きの一瞬で消えるように――駆ける。
「え?」
 さっきのはなに?
 バニーは目を擦り、もう一度望遠鏡を覗き込む。
「あっ、あっ」
 また別のバニーがほとんど反射でパンチを乱れ撃つも、それが遠距離攻撃となって彌三八の元へ届くまでの間に彼の姿は消え失せている。
 ――なあに、捉えきれる訳があるめぇよ。
 にやりと笑み、彌三八はあっという間に天文台を擁する塔の元までたどり着いてしまった。
「――ゴールですね」
 ほぼ同時に塔の入り口に佇んだ明が微笑みかける。
「嗚呼、こっからは階段か?」
 あとは、登るだけ。
 その時、塔から数百mほど離れた場所で複数の爆発が起こった。夜空に生み落とされた印を起点として、連鎖するように次々と攻撃術式が発射される。
「まるで苦し紛れの攻撃みたいですね。へへーんだ、そんなの当たらないのです!」
 得意げに胸を張るバニーだが、すぐに愕然と目を見開いた。ものすごいエネルギー値の術式が幾重にも紡がれていくではないか。
「な、なんですかあれは……!? こ、こっちこないでくださーい!?」
 夜空を無限とも思える白と黒が浸食する。やがてそれは、ボクサーバニーごと天文台を呑み込んで。ありとあらゆるものを無彩色に染め上げる。
「……油断、大敵……」
 一連の動作を仕組んだ本人であるメンカルが、星空を背にぽつりと呟いた。ご愁傷様とでも言いたげに。

「ボクサーバニーですか。厄介な所に厄介な相手が現れましたね」
 マスクド・サンドリヨン(仮面武闘会のシンデレラ・f19368)の片割れことピジョンが語りかければ、姫華が「うん」と唇を引き結んで頷いた。
「あいつらの事は、よく知ってる。なんとかしなきゃ!」
 ――飛ぶ。
 言葉通り、マスクドはきらめく夜空をその身ひとつで飛行する。スピードを上げる度、コスチュームの飾りが増してより派手に、より華やかになっていく。
「なにあれ? 綺麗ですねー!」
 天文台では、ボクサーバニーたちが歓声を上げていた。
 大量の花を舞い散らせながら飛ぶマスクドは、まるで手品のように見えたり消えたりを繰り返す。色とりどりの花弁が夜空に弾け、星空を彩った。
 だが、それは攪乱のための手段。ようやくそれに気づいたバニーたちの間から、今度は残念そうな悲鳴が上がった。
「あーん、速すぎて追いつけない!」
「当たり前です。このマスクド・サンドリヨン、そう簡単に遅れはとりません」
 ピジョンは勝ち誇ったように微笑み、塔の周囲を急旋回。あっという間に近づいて天文台へと乗り込んだ。
「あ――!!」
 とっさに反応できないでいるバニーを目がけ、繰り出す正義の拳。
「当たった……!?」
 姫華は空中で態勢を変え、次の相手に狙いを定める。ひとりでも多く倒す。そう決めたのだ。この拳で――ヒーローの拳で。
「魔法の矢よ、万物の属性を孕みし八色の矢よ――!」
 追撃は、明による階段を駆け上がりながらの高速詠唱。輝ける魔法の矢は魔を祓い、敵の身を護る鎧すら突き抜けてその身へと突き刺さる。
「えっ!?」
 驚いて振り返るボクサーバニー目がけ、一斉に降り注ぐさまはまるで色鮮やかなる流星群。ものの見事に敵を貫き、癒えない傷を刻みつけた。
「このおッ!!」
 渾身の反撃はしかし、手応えがない。
「残念、それは残像です」
 明は「ふふ」と唇の前に人差し指を立て、華麗に挑発を受け流しつつ仲間のために道を開ける。
「さあ、次の方どうぞ。集団戦ならこちらだって負けてはいないというところを見せつけてさしあげましょう」
 開いた場所からあふれ出たのは、瘴気のような霧――慌てて口元を手で覆い、逃げ出そうとしたバニーを無骨な鈍器が横薙いだ。
「きゃあっ」
「どこに逃げる気だ? その望遠鏡、卑怯とは思わないが反撃されても文句は言うなよ」
 霧をフェイントに用いた千尋は、その一瞬で敵の死角をついていた。逃げ場を失ったバニーは瞬く間に追い詰められる。
「かっ、かよわいうさぎさんをいじめるなんてひどいですっ!」
「『かよわいうさぎさん』、ね……」
 無表情のままバニーたちを眺め渡した千尋は、深呼吸して曰く。
「いや、『ヤるきまんまんのうさぎさん』ってところかな。殺気を消せてないぜ、君たち?」
「――ッ!!」
 挑発に失敗したバニー自ら殴りかかってくるのを、幾つもに分割した鳥威の盾で受け止める。
「この、このッ!!」
「児戯だな」
 千尋の鳥威は壊される度に無限に現れ、決して敵の拳を己までは届かせなかった。焦れたバニーの攻撃は次第に大振りになって、
「このおッ――!!」
「おっとバニー、あんまり近付かれるのはごめんだぜ」
 先手を取った侑士はバニーが異空間を使うよりも先に、その体を拷問具で絡め取ってしまう。
 呻く相手を宥めるように片目を閉じて、曰く。
「正体見せたな。下手すると妻や娘に誤解されかねないし、そもそも論として拳で殴ってくる凶暴な女は好みじゃなくてな」
 だから、1対1のスパーリングは遠慮しておくよ――一瞬で撃鉄を起こした銃口を突き付け、十分な距離を置いた状態で一方的に乱れ撃つ。
「あーん、こっちだってもうお嫁にいけないー!!」
「おいおい、最初の気迫は何処いった? 俺も喧嘩ァ大好きなンだよ。ただし、一方的にやんのもやられんのも御免だね。こういうのは御互い忌憚なく遣り合うってェのがお約束ってモンさ」
「ぴゃ――」
 顔と顔がつくほどの至近距離から、轟、と彌三八の左が迫る。更に左、そちらに気を取られ、上体が泳いだバニーを今度は外から鋭く抉る右。
「わ、わっ」
 彌三八は右手と左手をそれぞれ顎の横と前方に構え、隙が無い。肩幅に開いた左足をやや前に出し、爪先で地面を掴むように感触を確かめて。――いける。
「せ、せこんど! たっ……たいむ――!!」
 ぴくりと、彌三八の猛攻が止まった。
 ――チャンス!
 それがわざと作られた隙だとも気付かずに繰り出されたアッパーを軽くいなし、左……と見せかけ、がら空きの脇腹を右足で急襲。
「かはっ……!」
「場数なら負けやしめェよ」
 止めは、握り締めた右拳による一撃。
 動き自体はバニーの方が早かった。だが、彌三八の読みがそれを凌駕した。交差したふたりの拳。前者は届かず、後者が捻じ伏せる。
「よ、よくも……仲間を痛めつけてくれましたね! 許せません!」
「そうです!」
 バニーたちは口々にわめき、皆の力を合わせて反転攻勢に出た。
「あい、たたた……」
 傷だらけで倒れ込んだ姫華は、歯を食いしばって体を起こす。
「さあ、覚悟するのです!」
 だが、ピジョンは笑っている。あまりにも余裕を見せるので、次第にバニーの方が不安になった。
「なにがおかしいのです?」
「だって、取り囲まれているのはそちらですから」
「え――?」
 振り返った頭上で、ブォン、とうなるエンジン音。大きく目を見開くバニーの上に落ちかかるバイクの黒い影。
「最後は轢き逃げだァ!」
 十分な休憩を取り、再び迷彩を纏った多喜は一際大きくアクセルを踏み込んだ。逃げ切れない。思うさま蹂躙した後で、ようやく停止。親指を高々と突き立て、吼える。
「お疲れさん! この天文台はあたしたちが占領したよ。こいつは幸先のいい勝利だね!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月02日


挿絵イラスト