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【旅団】おさななじみ一行、バカンスに行くの巻

#キマイラフューチャー #【Q】 #旅団 #幼馴染組珍道中

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【これは旅団シナリオです。旅団「姉妹の時間」の団員だけが採用される、EXPとWPが貰えない超ショートシナリオです】

「夏だ! 海だ!! バカンスだーーー!!!」
 拳を突き上げてウェンディが叫べば、彼女のおさななじみたちもいぇーい、と声を合わせる。
 そう、彼女たちは今、ビーチにやってきていた!
 時は夏休み、先日の水着コンテストに際して水着を新調した者も多い!
 となれば友人同士、そのお披露目も兼ねてビーチに出かけるのは当然のことである!!

「んふふ、僕らでビーチの覇権を取っちゃうぜぇ……なんてねっ!」
 冗談めかして笑ったあと、ウェンディは一人一人にこのビーチのパンフレットを配っていく。
「ざっくりおさらいだけどー、まず、このビーチは安心安全! オブリビオンが来たり、みたいな予知とかもなさそうなので、戦いのことは忘れて思いっきり楽しんじゃおー!」

「プライベートビーチみたいなところ借りるって案もあったんだけど、折角みんなオシャレな水着着てるんだし、人の目がないのもそれはそれで寂しいよねーって思ったのでここにしました!」
 なので、一般客もそこそこいるのである。とはいえ、そこまで混雑しているほどではないので、リラックスして楽しめるだろう。
「あとねあとね、ここ、屋台とか海の家のフードが充実してるので! 食べ歩きにもバッチリです!!」
 なにせよく食べるメンバーが多いのだ。どうやら中々に珍しいメニューを扱っている屋台などもあるらしく、食べ比べるのも楽しいだろう。
「レジャーグッズの貸し出しとかも勿論やってるみたいだから、体を動かすのもいいかも!」
 浮き輪やスポーツチャンバラ、フロートマットなどなど、デザインも幅広いので好きなものを借りるといいだろう。
「カフェテラスタイプの海の家もあるみたいだからー、疲れたらそっちで休憩しよっか!」
 このように、選択は幅広い。ともあれ。

「面倒なお話はここまで! 夏をエンジョイしちゃおうぜ!」


月光盗夜
 というわけで夏の旅団シナリオです!海ですよ、海!
 オープニング冒頭でも触れた通り、本シナリオは「姉妹の時間」の旅団シナリオとなっております。
 当該旅団の団員でない方は参加することができません。また、本シナリオへの参加のための新規入団というのも受け付けておりませんのでご容赦ください。

 ざっくりいくつかの方針は示しましたが、勿論選択肢にない行動をとってもらっても大丈夫です!楽しく夏をエンジョイしましょう!
 なお、例によって本シナリオは普段のシナリオに増してアドリブ盛り盛りになるかと思います、ご了承ください。あとウェンディもガンガン顔出しします。よろしくね!
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第1章 冒険 『ライブ!ライブ!ライブ!』

POW   :    肉体美、パワフルさを駆使したパフォーマンス!

SPD   :    器用さ、テクニカルさを駆使したパフォーマンス!

WIZ   :    知的さ、インテリジェンスを駆使したパフォーマンス!

👑1
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

寒島・乙月
へースポーツチャンバラがあるんだ。じゃあ巌流島だね!
私はこの物干し竿みたいなブレードを選ぶよ。乙月小次郎ってところかな!
えっ、佐々木ッテン小次郎!? ふたりいるね!
しかし遅れてくるとは不躾なりハルちゃん!
水着が可愛くて差し入れもある? ゆるす!
うにゃあああ! 助けてウェンディちゃーん!(よーくんビッグウェーブに巻き込まれて死ぬ)

わー花火きれー! ここで一句!
「キッテンちゃん よーくんハルちゃん ウェンディちゃん」
季語どれ!?
めでたいから私もクダギツネ打ち上げて花火盛り上げるね!
火とか大丈夫でしょたぶん。ファイアフォックスって聞いたことあるし
あ、最後みんなでインスタ映えしよ!
花火バックにちーず!


キッテン・ニコラウス
夏だー!海だーー!!血祭りだーーー!!!(スポーツチャンバラのこと)
ふふふ、この佐々木ッテン・ウェンディ郎の物干し竿・スペシャル(2人で持つの前提なクソデカ水鉄砲)に勝てるかしら!?
あーーはっはっはっはっ、皆圧倒的な火力の前にひれ伏しなさい!!

ほら、ヨウも人のことばっか言ってないで自分もちゃんと水摂りなさいよ!
ハルちゃんの差し入れ……差し入れってレベル?まあとりあえず味わうなら体調万全にしなきゃ!

ふぅ、今日はすごくはしゃいだわね……
最後にこうして線香花火を眺めてると、なんだかしんみりしちゃうわ……(線香花火の束をガッと掴んで一斉に火を付けて眺める)


美墨・ヨウ
(一般客がいる)(則ち他の野郎がいる)(うちの連中に手ぇ出そうとするウェイがいないか警戒中)(チンピラの眼光)

いやハルそんなポジションねぇから
あとお前ら日焼け止めちゃんとしとけよ特にイツキ!水分と塩分もこまめに取れよ!(兄貴面と言うより最早おかん)

そもそもチャンバラって三人でやるモンか??いやいいよ俺ぁパs(ブシャー)(キッテンに打たれたり他にもなんかされたりする)

……お前
や っ て や ら ぁ
(夏の魔髪は渚色)
(魔髪でビッグウェーブ起こしてバッシャーンする)

……だいぶはしゃいで疲れた
〆の花火ぁゆっくりす……ゆっくり……ゆっくりできる気がしねぇ!!
ああもう派手にぶちかましてこい銀閣!!


ハル・ウロハラ
遅れてすまないポジションはサムライ!!(話は聞かせてもらったバイト上がりクラッシュ)
おとーさん現役時代くらい大昔の禁断のワザなんだって…うふふかっこいいよね!

そう!これは制服に見えて実は水着!水陸両用高性能褒めて
あ、差し入れありますよ褒めて褒めて

運動系はよーちゃんに遅れを取らないハルですってえええよーちゃん大人げない!!
助太刀いたしますハルですよやったれキッテンおねーさま!
動けばゼロカロリー理論!おやつもたんまり食べます!
たっぷり遊んだら〆は花火、夏満喫って感じですね
これ?これはね ドラゴニアンチェイン
さー何を打ち上げますか!!大丈夫ゴミを散らかしたりしませんよ!!(オーラの鎖で繋がるため)




 さてはて、到着後はまずは解散し、思い思いに自由行動を楽しんだ幼馴染一行は、ビーチの一角にあるレクリエーション用のコーナーにやってきていた。というのも――。
「乙月小次郎ここにあーり! 宮本武蔵はまだかな!」
 随分と長いスポーツチャンバラ用のブレードを試しぶりとばかりにぶんぶん振り回す乙月。少女らしい可愛らしさと大人っぽい艶やかさが絶妙なバランスで同居するフリルビキニ姿の彼女であったが、その行動は少女100%であった。ポニーテール姿でブレードを掲げるのは様になっている気がしないでもない。
「……集合した後でまたなんかやろうって話ではあったが、スポーツチャンバラって何人もでやるモンだったか?」
「え、だって折角スポーツチャンバラがあるんだよ? じゃあ巌流島でしょ?」
 そう、レクリエーションエリアに集合しているのは、乙月から「巌流島に集合ね!」なるメッセージが来たからであった。ヨウは何がじゃあなのかと頭を抱えているが。
「というかだいたい、なんであのメッセージで全員ここに集合できてるのかがわからん」
「ヨウってば、これどういうことだ、なんて私に確認してきたものね? あーあ。長い付き合いなのにわからないなんて、それでも幼馴染の兄貴分なのかしら」
 豪奢なパレオを腰に巻き、浜辺の女王然とした水着姿のキッテンが、ある意味その衣装によく似合ったどこか嗜虐的な笑みを浮かべる。
「おうおう。頼りなくて悪かったな。で? 果たし状が読解できたお前は宮本武蔵なのかよ」
「甘いわねヨウ! 今の私たちは……佐々木ッテン・ウェンディ郎よ!」
「なのです! いえい!」
 豪奢なパレオをキッテンが脱ぎ捨てると同時に、ウェンディがえっちらおっちらと運んできた巨大な水鉄砲を二人で持つ。
「これぞ私たちの物干し竿・スペシャルよ!」
「えっ、佐々木ッテンウェンディ郎!? ふたり……さんにんいるね!」
 自分が佐々木小次郎役を取ったかと思ったら新たなる佐々木小次郎が二人セットで現れたことにさしもの乙月も戸惑いを隠しきれない。
「ここであったが2時間ぶり! どっちが本物の佐々木小次郎か、いざ尋常に勝負!」
 だが、すぐ気を取り直したようにブレードを掲げてキッテンの方に向ける。なにせ、我が強かったりマイペースだったりする幼馴染たちのこと、幼少期からこの手のことは何度も繰り返してきたのである。一度など、3人組の魔法少女のはずが同じ役が5人発生したことがある。その時は、残り二人の役は少年たちが請け負う羽目になったのは言うまでもない。
「そうこなくっちゃね! さあ、いくわよウェン――」
「遅れてすまないポジションはサムライ!!」
 好戦的な笑みを浮かべたキッテンの持ち上げた銃口が、開戦の音を告げ――ようとしたところで、突如飛び込んでくる小柄な人影。何かが振り下ろされて地面に叩きつけられ、ビーチの砂が軽く舞い上がる。
「ハルちゃん! 待ってましたっ!」
「いえいいえい! ハルの登場ですよ、ウェンディちゃん!」
 大の仲良しの登場に、物干し竿・スペシャルを支える手をパッと放して飛び込んでいくウェンディ。ハルも飛びつき返す様にして受け止め、その場で軽くくるくると周る。
「ちょっとウェンディー? いきなり離すなんてお姉ちゃんびっくりしちゃうでしょ? まあそういう所も可愛いんだけど!!」
「はっ、そうだ! しんけんしょーぶの途中なんだった! ハルちゃんハルちゃん、今ねー?」
「みなまで言うないウェンディちゃん! 話は聞かせてもらいました!」
 重たい水鉄砲を急に一人で支える羽目になったキッテンの嗜める声に、我に返ったウェンディが事情を説明しようとする。だが、ハルは芝居ががった口調で首を振ると、両手に持っていた武器を掲げる。持ち手には三つ巴、鈍く銀色に光るそれは――。
「いやハルそんなポジションは……っていうか銀閣、お前……」
 スポーツチャンバラ(二刀流仕様)に姿を変えた、美墨兄妹のお目付け役、老龍銀閣であった。
「おくすまぽじくらはおとーさんの現役時代くらい大昔の禁断の技なんだって! うふふかっこいいよね! おとーさんも銀じーと一緒におくすまぽじくらしてたんでしょうか」
「ふふふ、それでこそ我が宿敵にふさわしいというものね!」
「か、かっこいい……はっ! しかし遅れてくるとは不躾なりハルちゃん!」
 宿敵の登場に不敵な笑みを浮かべる佐々木ッテンと、禁断の技という言葉に一瞬気を取られつつも、眉を上げて見せる乙月。
「あれ? その格好、海の家の制服かと思ってたけどハルちゃんのだったの?」
「そう! これ制服に見えて実は水着! 水陸両用高性能褒めて」
 海の家でウェイトレスをしていた時と同じ、エプロン風の水着姿であることに気づいたウェンディが問うと、ハルはくるくるとその場で回って胸を張る。ビキニとそれを支えるエプロンによっていつも以上に目立つお胸がさらに強調されました。
「あっ、差し入れありますよ褒めて褒めて」
「えっ、水着が可愛くて差し入れもある? ゆるす!」
 レクリエーションエリアの片隅に置かれたラムネや焼きそば、それ以外にも山盛りの差し入れを見て、乙月の慣れない怒り顔は一瞬で霧散し、瞳に星が浮かぶかのようにキラキラさせてみせる。
「さーて、それじゃあ遊んだ後の楽しみもできたことだしぃ、いざ尋常に……しょーぶ!」
「ファイアーッ! あ――っはっはっはっは、圧倒的な火力の前にひれ伏しなさい!」
 改めてウェンディが号令をかければ、姉妹ゆえの息ぴったりさで、号令と同時に巨大な水鉄砲から弾幕のごとく水流が放たれる。
「えっちょっとキッテンちゃんそれずる――わぷっ」
「ひゃん! やりましたねキッテンおねーさま! お覚悟!」
 きゃいきゃいと、悲鳴や歓声の入り混じった楽し気な声がレクリエーションエリアに響く。

 さて、少女たちの楽しげな声が響く中で、彼が何をしていたかといえば。
「なあ、あそこで遊んでる子たち、超カワイくね?」
「ウワ、マジじゃん。ちょっと声かけてみる、か――って、なんだよ、アンタ」
「…………ァ゛?」
 幼馴染一行に声をかけようという一般客どもを追い払うのに忙しいようである。黒い角、黒い翼、黒い尻尾。おまけに黒いトランクスタイプの水着に黒いパーカータオル。漆黒という印象すら与える引き締まった体付きの男が、あえて身体を屈めて睨め上げるように鋭い眼光を向ければ、ちょっとナンパ心を働かせた程度のある意味健全な青年たちは、蜘蛛の子を散らす様に逃げて行ってしまうのであった。
「ったく、油断も隙もありゃしねぇ」
 実際、ヨウの兄貴分としての贔屓目を抜きにしても、彼の幼馴染たちはかなりの美少女ぞろい。比較的人が少ないビーチとはいえ、ナンパを思い立つ青年たちは少なく無く、だが、彼女たちのチャンバラは未だ一度も中断されていない。一重に彼のディフェンスのたまものであった。こわ。
「……っと、アイツらは未だ夢中みたいでよかったな。この前みたいにウェンディに見られたら危ない所だった」
 少女たちが熱中する様子を見て、小さく安心したようなため息を吐くヨウ。以前、同じような態度で悪質な相手を追っ払ったとき、その仕草を見て、まるで彼女の父のようだ、と言われてしまったのである。姉はともかく、本人は父へたいした隔意のない彼女のこと、悪気はなく、というよりむしろ褒めるために言ったということはわかっているが、それでもあの男に例えられるのはまっぴらごめんであった。
 とはいえ、そんな例の男に例えられるほど威圧感溢れるヨウの様子に恐れをなしたのか、ナンパ男たちも段々と寄り付かなくなってきて、ヨウも一息つく余裕が出てくる。
 となると、今度は彼のもう一つの側面。お節介な兄貴分としての顔がうずきだすのである。
「お前ら日焼け止めちゃんとしてるか特にイツキ! 水分と塩分もこまめに取れよ!」
 というより、はしゃぐ妹分たちを少し離れたところから見守りながら飲み物や塩飴を用意していく様はもはや母親、おかんという方が相応しい感すらある。
「そういうヨウも人のことばっか言ってないで自分もちゃんと水摂りなさいよ! ハルちゃんの差し入れ味わうなら体調万全にしとかなきゃ!」
「そですよよーちゃん! ハル的にはおいしく食べるためにはちょっと運動するのとかもオススメですよ!」
 だが、テンションの上がって来た少女たちが、そんな風に離れた場所にいるのを許しておくはずもない。チャンバラの手を止めて、口々に手招きして見せる。
「いやいいよ俺ぁパス―」
ぶしゃあ。
「あっはっは! 隙だらけよ、ヨウ!」
 断ろうとしたヨウの顔面を、キッテンの抱える水鉄砲から発射された水流が痛烈に打ち付けたのである。こういう時に動くのはやはりこの女であった。
「隙ありです、よーちゃん!」
「戦場では怖気づいたものから死んでいくんだって、ヨウくん! 怖いね!」
 そして、唐突な水流に呆然としている隙に、ハルや乙月もヨウの周りに集まってきてぽこぽことブレードで叩いていく。
「……お前ら」
 硬直が解けたヨウの静かな声は、きゃいきゃいと群がる少女たちの耳には届かず。
「や っ て や ら あ!」
 気づいたときには、もう遅い。たてがみめいたヨウの長髪が波のようにうねり、渚に染まる。ごごごごご、と響くのは彼女たちのすぐ側、海からで。
「えええよーちゃん大人げない!!」
「うにゃあああ! 助けてウェンディちゃーん!」
 ヨウの髪に宿る魔性の力によって引き起こされた大波が、勢いよく少女たちに襲い掛かったのである。


 あの後、ハルの差し入れを食べたり、それで飽き足らずに屋台をみんなで巡ったりしている内に、気付けばすっかり日も落ち、もう夜になろうかという頃。一行はビーチに屈み、線香花火を楽しんでいた。
「俺も嫌いじゃないけどよ、どっちかっていうと浴衣でやるもんじゃねぇのか、こういうの」
「だってこれだけみんな揃って遊ぶのっていつもできることじゃないもの。夏にやりたい事、全部やっておきたいじゃない?」
 ヨウの線香花火をキッテンがつんとつつけば、ぽとり、とヨウの火がバケツに落ちる。あ、てめぇ、などとヨウが小さく唸ったりして。
「そーそー、たっぷり遊んで、たっぷり食べて! やりたいことやったもん勝ちです!」
「なのでハルも食べたいもの食べましたよ! 屋台コンプです! いぇい!」
 キッテンの言葉を追うように、妹組もハイタッチ――を花火の上でやるのは少し危ないので、目配せに済ませる。
「風流って感じだよねー。よーし、ここで一句!」
文筆家の娘らしいことを言って乙月がぴん、と指を立てれば、みんなの視線も集まって。
「『キッテンちゃん よーくんハルちゃん ウェンディちゃん』――あれっ、季語どこ!?」
 詠み終えてから気付いたかのように愕然とする乙月に、くすくすとみんなの笑いが漏れる。
「そりゃあもう、僕の季語は冬ってもんです! トナカイですので!」
「ハルは――ハルは春ですよきっと! よくわかりませんが!」
「そっかそっか、じゃあ……春? 冬? どっち!?」
 はいはい、と手を上げて思い思いのことを二人が言えば、乙月が目を白黒とさせる。そんな姿を見るキッテンは、いつも勝気な彼女には珍しい、穏やかな微笑を口元に浮かべていた。
「どうしたよ、ガラにもなく」
「んー? 今日はすごくはしゃいだなーって。最後にこうして線香花火見てると、なんだかしんみりしちゃわない?」
 妹たちを横目に見ながら、ヨウが声をかければ、何でもなさそうに首を振って、小さく笑って答えるキッテン。
「ま、わからなくもないけどな。なん――は?」
 ヨウがぎょっとするのも無理はあるまい。夏の終わりという雰囲気でしんみりした話をしていたかと思えば、隣の女が突然残っていた線香花火を纏めて拳の中に握りこみ、ちろちろと己から舞い散る火の粉で一斉に点火するなど、予想できるはずもあるまい。
「あっははははは! ヤバいわこれ!」
 一斉に火をつけられた線香花火は、期待通り、大きな火の玉を作る――だけではなく、大きすぎる火は持ち手の部分まで延焼し燃え盛る。うかうかしていれば腕丸ごと大火傷もあり得る話である。幸い、キッテンは炎の扱いに長けているため笑っていられるが、よいこは決して真似しないようにしよう。
「キッテンおねーさまには負けてられません! やったりましょう、ウェンディちゃん!」
「おっけーハルちゃん! とびきり凄いの作っちゃおう!」
 むむん、とハルがドラゴニアン特有の闘気を練り上げて生み出した鎖で、ウェンディが周囲を駆けまわって集めてきたビーチのごみを絡めとっていく。鎖でぐるぐるに絡めつけられたゴミの塊は、さながら花火玉の如き大きな球体と化していた。
「射出準備おっけーだぜ、ハルちゃん!」
「いきます発射! たーまやー!」
 ゴミ玉をウェンディが蹴り上げると、程よい高さに打ちあがった所で、ハルが闘気を爆発させる。オーラの爆風に燃え散るゴミが混ざって、不思議な輝きを持つ花火が空に咲いた。
「いい感じいい感じ! 次々いくよ、ハルちゃん!」
「やっちゃいましょう、ウェンディちゃん!」
「わー、花火きれー! よーし、行っちゃえクダギツネ!」
 ぱちぱち、と拍手していた乙月も、己の拳銃を空に向けて引き金を引く。空砲というわけではない。彼女のリボルバー拳銃は、式神を使役する媒介でもあるのだ。
 銃口からぽこんと飛び出た狐が、夜空に咲く花火の間を縫うようにして舞い踊り空を彩る。なんとんく熱そうにしている気もするが――まあ、大丈夫だろうと乙月は思った。ほら、ファイアフォックスとかいうし。多分大丈夫。
「……ったく、ゆっくりできると思ったらこれか、わかってたけどよ!」
 やれやれ、と髪を掻いていたヨウの口元に、ふと吹っ切れたような好戦的な笑みが浮かぶ。
「派手にぶちかましてこい、銀閣!!」
 今度はヨウによって呼び出された銀閣が夜空に舞い上がると、花火に負けずに輝く黒銀の吐息を放つ。
「そうそう、やっぱりこうでなくちゃね!」
「あ、ねえねえ! 最後みんなでインスタ映えしよ! ほらほらみんな集まって!」
 先ほどまでのしんみりした雰囲気は何処へやら。騒々しい雰囲気にキッテンが満足げに頷いていると、乙月が楽しげに手を上げてみんなを呼び寄せる。

 ――花火をバックに、はい、チーズ。
 幼馴染一行は勿論、管狐に銀龍。画面一杯に楽しげな様子が詰まったその写真は、すぐに全員に共有されたのは、言うまでもない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月18日


挿絵イラスト