13
宝饒の海に咲く

#グリードオーシャン #コンゴウさま #女賞金稼ぎ #座標:S00E26

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#グリードオーシャン
#コンゴウさま
#女賞金稼ぎ
#座標:S00E26


0




●掟のもとに
 絶叫が響き、風が吹き荒れる。
 肉を裂かれ骨を断たれ、命をちぎられ再構築されていく者の叫びは、洞窟という環境が加わり、嫌というほどに響きながらぽかりと空いた頭上へ抜けていく。
「カルラ船長、ジェナが!」
「解ってるわ。お前たち、手心を加えては駄目よ」
 花刺繍の改造ドレスに身を包んだ女は帽子を押さえ、静かに暴風の中心部を見つめる。瞳には驚きも絶望も何もなく、ただただ目の前の現実をありのままに捉えているようだった。
 やがて風は少しずつ収まって――変わり果てたシルエットが浮かび上がる。
『手心? そんなもん、今朝食った飯と一緒に流しちまいなよ。大事にしたところで、くその役にも立ちゃしないんだからさ』
 手についた水を払うように、軽く振られただけの斧が凄まじい音を立てて地面を割る。
 生前の名残がある面立ち。多重になった声。禍々しい斧を握る手は異形のそれ。
 メガリスの試練に生き残る事が出来ずコンキスタドールとなった女の姿に、カルラはそうっと目を細め――まあお下品、と、眉を下げ溜息をついた。
「どれだけ正しい事を口にしようとも、言い方ひとつで相手の心は岩のように動かなくなるとあたくし何度も教えたのに……あの子ったら、死んだショックで忘れてしまったのかしら」
『へーぇ? お優しくお上品なカルラ様は、コンキスタドールになったあたしでも、まぁだ可愛い島民扱いしてくれるっての?』
「そうよ」
 間を置かず放たれた肯定にジェナが一瞬黙る。カルラはやわらかに目を細め、カトラスを抜きながら微笑んだ。それは母のようで、姉のような、見守り慈しむ者の微笑だった。
「ジェナ。あたくしの可愛い島民、愛するフロル海賊団の船員。これ以上お前の誇りが、魂が穢される前に。あたくしたちが、お前を海に還すわ」

●宝饒の海に咲く
 ネライダ・サマーズ(アイギス・f17011)が告げた島の名は『マール・フロル』。アックス&ウィザーズから落ちてきたと思われるそこは、年間を通じて様々な花が咲き、周囲を青く輝く海に囲まれた自然豊かな美しい島だ。
 グリードオーシャンに点在する数多の海賊団と同様に、その島を根城とするフロル海賊団もメガリスによる試練を行った。結果、ジェナという女が試練に打ち勝てず、コンキスタドールとなった。
「フロル海賊団は『海賊の掟』に従い、責任を持ってジェナを葬ろうとするんだが……まあ、こうして声をかけたのはつまり“そういうワケ”だ。手を貸してくれ」
 近年コンキスタドールは強大化しており、ジェナもその例に漏れず――所属していたフロル海賊団を全滅させた後は、マール・フロル島の全てを支配下におくだろう。
 白く輝く砂浜、青々とした緑、色彩豊かな花や青い海。マール・フロルの全てが誰かの流した赤で濡れ、生命溢れる美しい島はたちまち死体だらけの殺戮島になる。
「今からならジェナが配下をけしかける前に飛び降りて割り込める筈だ」
 飛び降りて、とは。
 猟兵たちの問いにネライダは「地上に空いているでかい穴から降りた先が試練の場だ」と言い、叡智の杖から現した水を操って地形を描く。大昔に崩落して出来た大穴らしい。
 飛び降りた先では奥へと追い詰められたフロル海賊団と、ジェナの配下となった『コンゴウさま』というコンゴウインコ型コンキスタドールが睨み合っている。コンゴウさまを倒せば、フロル海賊団が全滅する様を楽しもうと奥に控えていたジェナが痺れを切らして出てくるだろう。コンキスタドールとなった事でその力は強大だ。
「フロル海賊団が無事なら力を借りるのも手だな。チャンスを作ってくれる筈だ」
 海賊の掟を重んじているようだが、手を出すなと言えば現実を理解して受け止め、大人しくする冷静さも持っている。決して猟兵たちの邪魔はしないだろう。
 そして、ジェナを倒したら――花舞うマール・フロルの海へ。

 マール・フロルの美しい海と豊かな自然。それらが育んだ命を求め、島の東、大きなカーブを描く入り江を棲家にした『花ペンギン』という生き物がいる。
 深い青色の体毛。真っ白なお腹。黒い嘴。つぶらな瞳。見た目と鳴き声の愛らしさから島民に可愛がられている花ペンギンは、自分の番や子供、または友人など。“好き”を覚えた存在に花を贈る習性があるのだという。
 てちてちと島を歩き、見つけた花を嘴でぷちりと取って。または、誰かに取ってもらって。そうして海へ持ち帰り、贈った花々が海中を彩る光景は、海中に庭園が生まれたような美しさ。

「随分前に沈んだらしい難破船では、ちょっとした海中冒険が出来るだろうな。それと、飛び込むのに良さそうな石造りの堤防や高台もあったぞ」
 度胸試しにもなるな! とネライダは笑い、水躍るグリモアを輝かせ始めた。そして世界はグリードオーシャンに移り変わり――夏の彩と空気が、猟兵を出迎える。


東間
 コンキスタドールを倒してエンジョイサマー!
 グリードオーシャンでの冒険をお届けに来ました、東間(あずま)です。

●受付期間
 個人ページ冒頭及びツイッター(https://twitter.com/azu_ma_tw)で期間をお知らせしておりますので、お手数ですが送信前に一度ご確認をお願い致します。

 今回、一章・二章は進行優先で必要成功度+αでの採用予定です。
 多くて10人くらい。
 その為、全員採用のお約束が出来ません。ご了承ください。
 エンジョイサマーする三章は受付期間を長めにして、出来る限り採用の予定です。

●一章 集団戦『コンゴウさま』
 沢山います。
 とてももっふり。オウム扱いすると大変お怒りになる。
 戦闘中にフロル海賊団を狙う事はありません。

●二章 ボス戦『女賞金稼ぎ』
 人間だった女・ジェナ。試練によって死ぬまでは、口が悪いのをカバーするくらいの快活な人柄の持ち主。今はとっても残虐。邪魔な奴は全部斬って殺す精神。
 コンゴウさまと同じく猟兵の皆様を優先して攻撃する為、フロル海賊団の安全は気にしないで大丈夫です。

●三章 日常『夏花揺蕩う海の庭』
 美しい海中で遊んだりのんびりしたり、花ペンギンとの触れ合いが楽しめます。泳げない人や泳ぎが苦手な人用に、水中呼吸出来る魔法アイテムも売っているので安心。
 詳細は三章導入場面にて。
 プレイングでお声掛けいただいた場合のみ、ネライダ・サマーズもお邪魔します。

●お願い
 同行者がいる方はプレイングに【お相手の名前とID、もしくはグループ名】の明記をお願い致します。複数人参加はキャパシティの関係で【二人】まで。

 プレイング送信のタイミング=失効日がバラバラだと、納品に間に合わず一度流さざるをえない可能性がある為、プレイング送信日の統一をお願い致します。
 日付を跨ぎそうな場合は、翌8:31以降の送信だと〆切が少し延びてお得。

 以上です。
 皆様のご参加、お待ちしております。
190




第1章 集団戦 『コンゴウさま』

POW   :    オウムじゃねぇ。インコだ
【嘴】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    回転尾羽斬り
【ふさっと伸びた尾羽】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    鮮烈なる絶叫
【耳を劈く叫び】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。

イラスト:橡こりす

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●光さす、その場所で
 そこは、巨人か神がナイフを差し込んでぐるっと円を描いてくり抜いたような形をしていた。
 木々の根や蔦、生命力逞しい草花が茂るカーブ描く壁は縦に長く、長く――5メートルほど下った先、太陽の日差しが丸いスポットライトを落とす外側。青い影が岩肌を染める壁際にフロル海賊団は追い詰められていた。
 カトラス、ダガー、ラッパ銃。それぞれの武器を手に構える船員たちの奥で、数回背伸びをしたカルラが頬に手を添え、嫌ねえとこぼす。
「ちょっとお前たち、あたくしを大切にしてくれるのは嬉しいけれど、あたくしはお飾りの船長ではないのよ。少しは前を開けてくれてもいいんじゃないかしら」
「あなたがこれまで何人ぶち殺してきたかよく知ってますよ。ですがね船長、うちの柱であるあなただけは生き延びて欲しいって部下の心をちょっとは気にしてくれません?」
「あら、ごめんあそばせ。でもねえ、やっぱり船長であるあたくしも前に出て、あの赤い小鳥を血祭りにあげるべきでしょう?」

 ピピピピ!

 小さな翼をはばたかせて。または、手頃な石や岩の上に陣取って扇状の壁を作っていたコンゴウさまたちが一斉に囀った。洞窟内に反響した囀りはとにかくやかましく可愛らしさがない。船員の中には露骨に顔を顰めた者もいる。
『フッ、この期に及んでお喋りたぁイイ度胸だ。しかもオレたちを血祭りにするだと? おい聞いたか、みんな!』
『それはオレらの台詞だぜ、レディ・カルラ。キャプテン・ジェナの最初の命令が“あいつらをぶっ殺せ”だったんだ』
『あんたら個人に怨みはないがキャプテンの命令は絶対……大人しくしてたら、優しく殺してやるよ』
 じり。じり。
 じわ。じわ。
 距離を詰めていくコンゴウさま。
 カルラを始めとした船員はじっと見つめ――。
「なんて渋い声をしたオウムだ」
『今オウムつったヤツァ前へ出ろ全身の毛と肉を啄んで骨にしてやるからよぉ!!』

 コンゴウさまの怒声が響き――そこへ、新たな影が飛び込んだ。
 
フリル・インレアン
ふ、ふええええええぇ。
と、飛び降りるって、もっと慎重な方法はなかったのですか?
アヒルさんは颯爽と登場できていいですけど、私はこのまま地面に激突ですよ。
あ、でもこういう時は素敵な王子様・・・、
いえここはグリードオーシャンですから海賊さんが私を受け止めてくれて恋に落ちるんですね。
これから、
衝撃?的な出会いから始まる恋?物語が始まるんですね。
あれ?確か海賊さんは女性でしたし、なんだかオウムさんの方に流されて行っているような気がします。
ふええ、そういえばこのユーベルコードはガール・ミーツ・オブリビオンと読むんでした。
それに結局いつもと同じ突かれる日常が繰り返されるだけでした。



 地下から地上へと抜けていく風が全身を撫でて――そのまま、落ちて行く。
 落ちる直前に聞こえた大変物騒な発言『全身の毛と肉を啄んで骨にしてやる』に、“一人”の方、フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は大きな目を一度ぱちっと瞬かせて。
「ふ、ふええええええぇ」
 全身を包む“落下している”という現実に悲鳴を上げた。
 飛び降りるってもっと慎重な方法はなかったのですか? アヒルさんは颯爽と登場できていいですけど、私はこのまま地面に激突ですよ? 言葉にならない訴えが一気に脳内を駆け巡り――閃きが生まれた瞬間、世界がスローモーションになる。

 こういう時は素敵な王子様が現れるのがお約束!

 けれどここはグリードオーシャン。だから颯爽と現れるのは海賊で、自分を『怪我はないか?』と受け止めてくれて。そして恋に落ちて。
(「そんな衝撃?的出会いから恋物語が始ま――あれ?」)
 グリモアベースで聞いた海賊は女性だったし落下しながら丸々とした赤色、つまりオウムのようなコンキスタドールの方へ流されていっているような気がする。物凄くする。小さな赤い点だったのがあっという間に膨らんで大きくなってそれでそれで――!
「ふええええ、止まれませーん……! そこのオウムさん、どいてくださーい……!」
『っざっけんなよだからオウムじゃ――えっ』
『ぎゃああああっ!?』
 素敵な海賊との衝撃的な出会いは、ユーベルコードの『ガール・ミーツ・オブリビオン』という名の通りフリルとコンゴウさまを出“遭”わせた。あまりの速度に、衝突したコンゴウさまたちが次々にべちべちばっちーんと洞窟の壁に叩きつけられ倒れていく。が、当然全てのコンゴウさまと衝撃的な出会いを果たしたワケではなくて。
『ぐっ、まさか乱入者とは……お嬢ちゃんにも俺たちがインコだって事を叩き込んでやる!』
 まん丸ボディを怒りで膨らませたコンゴウさまたちが、崩れ落ちる林檎山のように一斉に向かってきた。フリルは帽子のつばをぎゅっと掴んでふええと走り出す。何とかピンチを脱せたと思ったのに。
「結局いつもの日常と同じで突かれてます……!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・コーエン
眞白さん(f00949)と

もふもふして愛嬌はあるが、口が悪すぎだ。
しかしインコとオウムの違いって何だ?

(コンゴウさまに)戦わないといけないのか?
オブリビオンとはいえ珍獣虐待みたいになるので、無闇な殺生はしたくないが…

戦闘になれば、右手に灼星剣、左手に村正を持ち、【2回攻撃・風の属性攻撃・衝撃波】による二刀流の剣風でコンゴウさまを斬っていく。

相手の攻撃はUCで読んで躱すか、【武器受け】しつつ【カウンター】で斬る。
絶叫は身体に纏った【オーラ防御】を激しく振動させて音波(音も振動)を阻害して防ぐ。

尚、眞白さんを襲う相手は、【かばい】つつ「お前、覚悟は出来てるのだろうな?」と凄みのある表情と共に斬る!


神元・眞白
【SPD/割と自由に】シンさん(f13886)と一緒に。
綺麗な場所ですからきっと帰って来たのでしょうか。
とはいえ以前のようには関われみたいですね。なんだか残念です。
落ちる時には着地に気を付けないと。下がどうなっているか分かりませんし。
あ、でもふわふわなクッションがあるんですよね。それなら大丈夫でしょう。

姿も気になりますし、恰好も気になる鳥さんです。ふわふわ?
あの眼帯はどうやって留めているのでしょう。じっくり観察を。
怒られない様にくるくる回してみましょうか。飛威、手伝って。

鳥さんの攻撃はシンプルですから、こちらもシンプルに対応しましょう。
かばう演技をすれば見た目そのままに受けられそうです。



 綺麗な場所だと聞いた。
 事実、訪れたその島は空も、海も、緑も、美しかった。
(「だから帰って来たのでしょうか」)
 神元・眞白(真白のキャンパス・f00949)はコンキスタドールとなった女・ジェナを思い――眉尻を下げる。何であれ、コンキスタドールになった以上は人間だった頃と同じ様な関わりは持てないのだろう。
(「なんだか残念です」)
 ひゅ、と落ちていく先は地面と植物が仲良く入り乱れる地面。きっと柔らかくはない。一瞬の間にそう考え――あ、でも、と視線を向けた先、丸々ボディを持つ真っ赤な小鳥たちはきっとふわふわクッションになるから大丈夫だろう。何より。
「眞白さん」
「ええ」
 共に飛び降りたシン・コーエン(灼閃・f13886)がいる。戦術器『飛威』もだ。
 ほぼ同時に着地した二人と一体にコンゴウさまたちの視線がざっと向く様は、沢山の林檎が振り向くようなワンシーンで――すこぶる丸かった。
 海賊帽を被ったふわふわビジュアルが眞白の興味を刺激する。
 あの眼帯はどうやって留めているのだろう。じっくり観察したくても向こうは戦る気満々。可愛らしい体を左右に揺らし、嘴をカチカチ鳴らして威嚇している。
『テメェらも俺たちをアレ扱いするのか? え? オイ?』
『オで始まってムで終わる単語を言ってみろ、まずはお前たちのお綺麗な両目を抉り取ってやるぜ』
 今度は体をぐいんぐいんと激しく動かし始めた。愛嬌あるもふもふ容姿とは真逆な口の悪さに、シンが顔を顰めながら二振りの得物を構えつつ、インコとオウムの違いに疑問符を浮かべた時。
「飛威、手伝って」
 眞白の頼みを受けた飛威が一瞬でコンゴウさまを一羽捕まえ、即帰還。鮮やかな手際と突然の事に固まっていたコンゴウさまは上下左右から観察され漸く我を取り戻す。
 ちなみに、インコとオウムの違いは『冠羽の有無』『種類数の差』らしい。
『こ、このアマッ、何しやがる!?』
『人質ならぬ鳥質を取りやがったな!?』
「眞白さんに失礼な口を利くな。……戦わないといけないのか? オブリビオンとはいえ珍獣虐待みたいになるので、無闇な殺生はしたくないが……」
『珍獣発言には目をつむってやるぜ坊っちゃん。だがな! この世界ではその甘さが命取りだ!!』
 眞白に観察されていたコンゴウさまが力強く両翼を広げる。飛威の手から空中へと逃れたのを合図に他のコンゴウさまも羽ばたき、空中でぐるんと回りながら閉じていた尾羽をパンッと開いた。
『やっちまえ!!』
『おおーーっ!!』
 愛らしいビジュアルから轟いた雄叫びと殺意。
 上空から降り注ぐ赤い壁が如き群れの勢いに、シンは迷わず手にした二振りを揮った。力強く目の前を薙いだ一閃が風を迸らせ、空中でぐるんとバランスを崩したコンゴウさまたちへと、もう一閃。
 一瞬のうちに繰り出した二度の剣風が、コンゴウさまたちの悲鳴と赤い羽根を派手に躍らせる。地に落ちて転がる姿は、剣風を浴びずに済んだ他のコンゴウさまも見ただろう。だが愛らしくとも海賊かつコンキスタドールであるコンゴウさまたちは、悲しむ様子を一切見せず第二波となって襲いかかろうとする。
 始めは壁のように。次はホースの口から溢れた水流のように集まって。
 シンは再び二振りを構えた。無数の尾羽から成る濁流を受け流し――突如駆け抜けた嫌な予感の元へ、弾かれるように顔を向ける。
『そっちのお嬢ちゃんも持て成してやるよ!!』
 シンが見たのは、ぼんやりとした眼差しで一瞬だけ微笑んだ恋人の姿。微笑はすぐに消え、顔を庇うような仕草をした眞白に赤い濁流がけたたましく降り注いだ。
 赤色が派手に散る。
 陽光に照らされて花びらのようなそれが、地面に落ちる。
 日を浴びて乾いているそこを彩った赤色は――ふわふわとした鳥の羽根。一拍遅れて、ぼとぼと、ころころ。まあるく赤い小鳥たちが落ちていく。
『ぎっ、ぎゃあああッ!?』
『い、痛ぇ、痛ぇ! 一体何がッ……!』
「皆さんの攻撃がシンプルでしたから、こちらもシンプルに対応させてもらいました」
 適切な状態で受けたユーベルコードを無効化し反射する『オペラツィオン・マカブル』。無傷で佇む眞白と、眞白の隣、メイド服の裾をふんわり躍らせた飛威の姿にシンは安堵の息を吐いた。――が、だからといって恋人を狙った事は決して許せるものではなく。
「お前達、覚悟は出来てるのだろうな?」
 凄みのある表情と共に、二振りの刃が閃いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニュイ・ミヴ
(にゅ……)

まったぁー! です!
みなさんよりニュイの方がずっとずーっとおいしいですよ!

ばばん! と飛び出して
一定のリズムで体内の銀河をちかちかさせ催眠光線を放射『催眠術』
あなたは段々ニュイがあの、鳥さん用のなんだかつぶつぶしたごはんの集合体みたいに見えてくる……
ほっぺがとろとろに落ちてしまうかも?
啄みたくなりました? でしょうでしょう!
でろりと体積を広げ、可能な限り沢山のコンゴウさまを寄せ集めたところで。 ささ、召し上がれ【ンヌネノ・ミヴ】
倒すことが出来れば、そのまま取り込み返して『生命力吸収』しておきましょう
みなさんの島に血汚れひとつ残しませんとも
でも、オウムもかっこいいと思うんですけどねぇ


コノハ・ライゼ
あら、スポットライト付きの舞台があるなら派手に演出しなくちゃね?

派手な羽根色目掛け飛び降りながら「柘榴」で肌裂き、攻撃回数重視で【黒涌】呼ぶわ
さあくーちゃん、食事の時間ヨ
*空中戦の要領で飛ぶ敵や或いはくーちゃん足場に敵群ど真ん中へ着地しましょ
そのまま*2回攻撃でくーちゃんの取り零した敵を狙っていこうか

さあてオウムちゃんはどんな調理が美味しいかしらネ?
挑発しながら個と群れの動き*見切り、第六感も併せ一撃を躱すわ
多少当たっても*オーラ防御で威力削ぎ*カウンター攻撃
受けた傷口からまた新たに影狐を生みましょう
どんどん*生命力吸収していかなくちゃね

こんだけ居るンだもの、前菜くらいにはなってくれるデショ?



 大自然が創り出した場所は今、猟兵とコンキスタドール――鮮やかな赤色纏うコンゴウさまとの戦いが繰り広げられる舞台。
 追いかけ、追いかけられ、斬られ、受け流され。大賑わいのそこへ飛び込んでいった新たな影は落ちながら白い光を一瞬閃かせ、自身に走らせた傷から鮮血をさあっと躍らせた。
 刃に注がれたのとは別の、空中へ帯の如く躍った赤に黒色が現れる。
「さあくーちゃん、食事の時間ヨ」
 現れた黒色は赤い表面を駆けながら狐の形を取り、血の上を蹴って跳んだ。
 一滴も血を散らさずに跳んだ影狐は、己を生み出した術者と共に宙を飛びまわるコンゴウさまをぎゅむっと踏んで足場にして――そして最後にほんのひとつ、軽やかな着地音だけを戦場舞台である地面に刻みつける。
 周りに溢れるほどある丸い赤は紛れもなくコンキスタドールの群れ。
 しかし真っ赤な羽毛、小鳥の姿――あの下には、美味しいものが詰まってる。
 コノハ・ライゼ(空々・f03130)が薄氷色を静かに細めたのと同時、影狐が宙を舞う。地を蹴って一羽に喰らいつき、勢いに乗ったまま体を捻って別の一羽を足場に跳ぶと、その先に偶々いたコンゴウさまに咥えていた一羽を叩き付けた。
 あっという間に三羽を“のした”が、梅干しか林檎かというビジュアルのコンゴウさまはまだまだわんさといる。これは調理し甲斐があるわとコノハは挑発的な笑みを深めて『柘榴』をくるり。
「さあてオウムちゃんはどんな調理が美味しいかしらネ?」
 炭火焼きで香ばしく? ワインでフランベ? 衣とスパイスでフライドチキン?
 レシピがじゃんじゃん浮かぶ数秒の間に、コノハのオウムちゃん発言プラスわかりやすい挑発発言で、コンゴウさまたちの体がぶわあっと膨らんだ。翼が空気を思いきり叩き、赤い波が起きて――にゅ。もっさり生えていた草の陰から顔を出した煌めく宇宙色が、地面の上でにゅわわんとたわんで飛び出していく。
「まったぁー! です! みなさんよりニュイの方がずっとずーっとおいしいですよ!」
 ばばん! 飛び出した宇宙色もそこから響いた声もよく知るコノハはにっこり笑った。驚いて空中停止したコンゴウさまたちを置いてけぼりに、あらニュイちゃん今のはどっちに言ったのカシラと、楽しそうに柘榴をひゅんひゅんひゅん。
 料理人ならではの見事な刃捌きに、ニュイ・ミヴ(新約・f02077)は触手をぺちぺち合わせて称えながら「こちらの鳥の皆さんに」と、空中停止していたコンゴウさまの方を向いた。
『……おっ、お前の方が美味しい、だと……?』
『しかも、ずっとずーっと……?』
「はい!」
 ぺこっと頷いたニュイをコンゴウさまたちがじいいっと見る。

 ――味がわかんねえ。

 それはコンゴウさまたちの心がひとつになった瞬間だった。
 そして、ぱちぱちと瞬きを繰り返す左目に銀河のサインが映った瞬間でもある。
 ちかちか。ちかちか。一定のリズムを刻む体内の銀河が、つぶらな瞳に映ってはその心に染み込んでいく。
「あなたは段々ニュイがあの、鳥さん用のなんだかつぶつぶしたごはんの集合体みたいに見えてくる……」
『つぶつぶしたごはん』
「そうです……初めて見るつぶつしたごはんです。ほっぺがとろとろに落ちてしまうかもしれませんね?」
 お野菜味でしょうか。それとも、まろやかなお味でしょうか。
 瞬く銀河の光と一緒に心に響く真っ直ぐな声が、コンゴウさまたちの思考も心も深く深く導いていって――ごくり。唾を飲む音がどこかから。かちかち。嘴を鳴らす音もした。まん丸林檎色のボディもそわそわし始めて、むぎゅむぎゅとつぶつぶごはんの元へ集まっていく。
 催眠術? はい!
 楽しげに見るコノハへニュイはちかちか光線を放ちながら、きゅむ、と拳を作って。
「啄みたくなりました?」
『ああ、食べてみてえな……もりもりに食べてみてえ……』
「でしょうでしょう!」
 ではどうぞ。
 でろりと広がりゆく宇宙色。それは、よくよく見つめてみたらやっとというレベルで向こう側の景色を透かすニュイの体。わあん、と広く開いたそこへ“頂きます”と飛び込んだ赤い小鳥たちを、宇宙色が“ささ、召し上がれ”と包み込んで――ぽわ、わん。数回、ゆったりとたわんだ後、にゅにゅにゅと元へ戻っていく。
「綺麗な食べっぷりねえ、花丸あげちゃう」
「わわ、光栄です」
 マーレ・フロルの地に血汚れひとつ残すまいという心意気は、見事な“ごちそうさまでした”へ。
(「でも、オウムもかっこいいと思うんですけどねぇ」)
 フサッと立つ冠や立派な嘴、鋭い爪!
 作るのも食べるのも大好きなコノハは見晴らしのよくなった状況にくすりと笑い、こっちもおかわりと行きましょと身を翻す。
『こっちにいた奴らがごっそり減ってるじゃねえか! テメェら何を……!』
 纏う防護で突っ込んできた一羽をやわらかに減速させ、小さな傷から滲んだ血より新たな影狐を生み出した。一緒に楽しみましょ、くーちゃん。躍る影狐と共に真っ赤な小鳥を一羽、また一羽と“頂きます”。
「こんだけ居るンだもの、前菜くらいにはなってくれるデショ?」
「前菜でお腹いっぱいになれそうですねぇ」
「でもメインはこの後に控えてるから、腹八分目におさめないとネ?」
「ガッテンです!」

 赤くて丸い前菜の次に待つメイン料理はきっと、こってり濃厚な強欲味。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『女賞金稼ぎ』

POW   :    ハンタータイム
全身を【右目の義眼(メガリス)から放たれた青い光】で覆い、自身の【これまで殺した賞金首の賞金合計額】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    殺戮斧旋風
自身の【右目の義眼(メガリス)】が輝く間、【呪われた戦斧】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    カースバウンティ
【自分が過去に殺した賞金首】の霊を召喚する。これは【手にした武器】や【怨嗟の呻き声】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:藤乃原あきひら

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●コンキスタドール
 ――チッ。
 聞こえた音は小鳥の囀りでも小動物の鳴き声でもない。石の上にどかっと腰を下ろしていたコンキスタドールの女、ジェナの舌打ちだった。
『あー、あー、あー……くそッ!』
 がしがしと頭を掻いて苛立ちを吐いて、癇癪を起こした子供のように斧で地面を叩く。ガァンと鋼を打ち付けた音に、パァンと銃声めいた破裂音が重なった。
『せっかく用意したってのに! くそっ!』
 同じ事を、同じ音を、もう一度。
 叩き付けた斧の音に地面の割れる音が重なる。小さく鋭い破片が幾つも飛んでは僅かに光を反射して、カンカラと音を立てた。その音にジェナが再び舌打ちをし、ゆっくりと立ち上がる。
『あたしが見たかったのはインコ狩りじゃなくて海賊狩りだ。冷めてぬるくなったまずいスープみたいなあいつらが、穴ぼこだらけになって潰れたトマトみたく死ぬのが見たかったんだ。……なのに、なのに、何さこれは』
 ジェナの左目が、目の前の状況を順々に見つめていく。
 大量にいた赤色は全て消えた。大地の白に茶色、影が作る青い黒。植物の放つ鮮やかな緑に花々の持つピンクに黄色がよく見える。フロル海賊団は無傷だ。船長であるカルラは何を考えているのか読めない表情で自分を見ている。船員は皆、警戒心を露わに得物を構えており、不快だ。
 そして、明らかに自分の邪魔をしに来た見知らぬ者たち。
 自分とフロル海賊団の間にいる存在に、くっ、とジェナは笑った。顔の右側を隠している前髪がふわふわと揺れ始める。しかし風が吹いたにしてはその揺れは大きく、そして他はこれっぽっちも揺れていなかった。
『あんたらはあたしの晴れの日を台無しにした。インコ共を全部無しにしやがった』
 前髪が大波のようにうねった。
 隠れていた右目が隙間から覗く。その、色は。
『その報いはあんたらの命で弁償してもらうよ。今朝食ったもんも臓物も、何もかもを全部ぶちまけて死にな!』
 派手に躍った髪の下、露わになった右目は青い輝きを宿し始めていた。
 その輝きが誇らしげに歌うのは、侵略、蹂躙、殺戮。
 女は瞳と共に欲望も露わにして嗤い――地を蹴った。
 
サジー・パルザン(サポート)
『いつか、命果てるまで。』
 人間のバーバリアン×海賊、27歳の男です。
 普段の口調は「男性的(俺、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)」、戦闘中は「粗暴(俺、てめぇ、だ、だぜ、だな、だよな?)」です。

勇猛なヴァイキングであり、死を恐れず自身の信念の為に戦います。
敵が攻撃するタイミングで相打ちを狙うことすらある程で、防御より攻撃を。やられるならやり返すといった直情的な人物です。煽りに弱く、自身の筋肉と武器を信じて正面から戦うことを好みます。

敵の数が多ければユーベルコードのヴァイキングの行進を。
強敵であれば巡り合わせに感謝しつつヴァルハラ・アウェイツを行います。


シェーラ・ミレディ(サポート)
※OK:シリアス
※NG:エロ、ネタ、コメディ、心情系
※傭兵的なスポット参戦

称号通り、僕の身体を維持するための金儲けと、弱者をいたぶる醜い行いが許せぬ義侠心が行動指針だ。
美しいものは愛でるべきだが、恋愛には結びつかないなぁ。
性格ブスは醜い。見るに堪えん。

複数の精霊銃をジャグリングのように駆使する、彩色銃技という技(UC)を使って、敵を攻撃しようか。
敵からの攻撃は基本的に回避する。が、護衛対象がいるならかばうのも検討しよう。
……嗚呼、僕を傷付けたなら、代償は高くつくぞ!


エウトティア・ナトゥア(サポート)
※アドリブ・連携歓迎

負け描写、引き立て役OK

キャラを一言で言えば、なんちゃって部族じゃよ。
精霊と祖霊を信仰する部族の巫女をしておる。
自然が好きなお転婆娘じゃ。
あとお肉が大好きじゃよ

活発で単純な性格で事の善悪にはあまり興味はないのう。
自分とその周囲の安寧の為、オブリビオンが害になるから戦っておる。

専ら【巨狼マニトゥ】に騎乗していて、移動や回避・近接戦闘等は狼任せじゃよ。

ボス戦時は、動物や精霊を召喚しての行動(実は未熟ゆえ精霊や動物たちにフォローされている)で数で対抗しつつ、自身は後方で弓矢や術で援護するスタイルじゃ。



「“全てをぶち撒けて死ね”か……威勢のいい女だ! だがな!!」
 ジェナの嗤い声を掻き消すほどの豪快な声が轟いた。飛び込んだ色は夕日を浴びたような赤。鬣めいた赤毛の髪を僅かに躍らせ、男は命を奪い合う“戦い”に声を上げる。
「俺の筋肉を傷つけるのは苦労するぞ!!」
 サジー・パルザン(ヴァイキングの生き様・f12550)は思いきり地面を踏み、蹴る。その勢いで小石が跳んだ刹那、常人であれば持ち上げるのも困難だろうデーンアックスを下から上へと振り上げ、ジェナの斧を真っ向から弾いた。
 弾いた斧が目の前の空気をざんっと切り裂くようにして跳ね上がる。だが勇猛なヴァイキングたるサジーは一切の死を恐れない。
『とんだ死にたがり野郎だね! だったらお望み通りぶっ殺してやるよ!!』
「来い!!」
 目の前の死に、戦いに、敵に、サジーは全身から高揚感を溢れさせた。
 斧と斧がぶつかり合うたびに周囲の岩や地面に裂傷が走り、凄まじい音が洞窟獣に響き渡って――ふうん、と。二人の間で繰り広げられる猛攻とは真逆の、静かで淡々とした声を落としたのはシェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)だった。
「僕には見るに堪えない性根しか感じられないよ」
 コンキスタドールとなったジェナがこの場から解き放たれれば間違いなく、そして迷いなく弱者をいたぶって回るだろう。眼差しの奥に義侠心を宿したシェーラの言葉に、エウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)は頷いた。
「確かにのう。あの者は随分と欲望に正直な女になったと見える。しかしなんと勇ましい戦士じゃ! これはわしらも負けてられないのう、マニトゥ!」
 コンキスタドールへ愚直なまでに正面から挑む仲間の姿に、エウトティアは目を見張りながらも楽しげに笑って巨狼の鬣を撫でる。
 眼前で笑いながら斧を揮う戦士の男。
 離れた位置で精霊銃を手に立つ美しき少年。
 少女と、少女を乗せた巨狼。
 ひとつふたつ、みっつ――彼らを見たジェナの右前髪が大きく揺れた。
『ハッ! どれだけ来ようが狩り尽くしてやろうじゃないさ!!』
 露わになった義眼がひときわ強い青い光を放ち、どろりと溢れる。光で全身を覆われたジェナは見様によっては青い海に抱かれているような――しかし全てを蹂躙しようという心を露わにした女が青を纏って空中へ飛翔する様は、海から現れた魔物と表する方が相応しい。ならば、ぎらりと嗤う口は湾曲した刃か。
『全員真っ二つになってくたばりな!!』
「精霊よ!」
 飛翔したジェナが斧を手にぐんっと降下した瞬間、エウトティアは駆ける巨狼マニトゥの背の上でぴんと背筋を伸ばして精霊へ言の葉を告げた。
 その力を今、ここに――幻想のおもむくままに、歌え!
『風なんかであたしを止められると――なッ!?』
 その他多数のオブリビオンと同様に、ジェナもいつか自分とその周囲の安寧を脅かすかもしれなくて。ここへ来るまでに見た自然は眩しく、豊かで。エウトティアは事の善悪にそれほど興味はないが、その二点を“見た”以上、ジェナを止めないという理由はどこにもなかった。
 やわらかに吹き込んだ風が激しさを増してジェナに降り注いだ。それは暴雨となって何度も何度もジェナの体を叩く。飛翔領域を大きく狭め、空中で体勢を立て直したそこからバランスを崩させ地に落とそうとする風の雨に、くそ! と怒声が響いた。
『あの小娘を狼ごと八つ裂きにしな! それくらいくたばったお前でも出来るだろ!!』
『オオオォォォ!!』
 顔面をざっくり斜めに走る切り傷。ぱくりと無くなっている脇腹の肉。ガンッと斧が地面を突いた途端、最初からそこに潜んでいたような速さで亡霊が飛び出した。それと同時にジェナが後ろへ跳んでサジーの一撃を躱し――亡霊の額が矢で射抜かれ、どさりと地面に転がる。
『な、』
「マニトゥを八つ裂きにじゃと……? そのような真似は許さんのじゃ」
 念押しにもう一矢。エウトティアが亡霊の脳天をどすりと射抜いて確実に屠れば、弓矢の狙いは大将首であるジェナに向き――宙を華麗に舞った精霊銃の銃口が正確無比な手付きで向けられれば、ジェナの意志と欲望までも貫く弾丸がジェナの足をその場に縫い留める。
「ああ、本当に。見るに堪えん醜さだ」
 ジェナを狙った銃撃は一途に一点。響く銃声までもひとつになって聞こえるような妙技を披露したシェーラは、整った顔に静かで涼し気な彩だけを纏っていた。それが、ジェナの癪に障ったらしい。
『面倒なガキだね! 売れば大量のゴールドに化けそうだってのに!』
「僕を売るだと? 君程度に僕が捕まるものか」
 そこから一歩も動けないコンキスタドールの、何が驚異というのか。
 くるり躍らせていた精霊銃をぱしりと掴むと同時、引き金を引いて。新たな亡霊の顔面ど真ん中にひとつとなった銃声が大きな穴を開けた。
 一秒になるかならないか、まさに刹那というその瞬間をサジーが捉え、跳ぶ。
「俺の戦いを見るがいい! ヴァルハラの神々よ!!」
 神々への信仰心と闘争心を爆発させた男の体が増大する。体の内に収まらない心が、力持つ敵との巡り合わせへの感謝が、力となって全身に漲っていく。
 サイズ差は鯨と小舟。だが宿すパワーはどうか。サジーを見上げる形になったジェナが、ホームランを狙うバッターのように地を踏み、禍々しい斧を構える。
『神とやらに会いたいなら今すぐ死にな。バラバラにして案内してやるよ』
「やれるもんならやってみなぁ!」
 女が死ねと叫ぶ。斧が空気を薙ぐ。迸った圧を避けるなどヴァイキングの男は毛頭考えておらず――そして双方がぶつかった衝撃が洞窟中を駆け抜け、震わせた後。サジーは死んでおらず、ジェナもまた、血を流しながらもそこに立っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

神元・眞白
【WIZ/割と自由に】シンさん(f13886)と一緒に

シンさんが先に動いてもらえるので後続に。
飛医、二段構え、もとい三段構え。
相手からの返しを私が受けるからあとはお願いね。
時間がすこしもらえたなら、そこがきっとチャンスになるから。

猟兵はよく見られると、ばれるけれもの。けれど乱戦の中での一瞬なら惑わせそうね。
今回は最初から船員さんに変装しておきましょう。早着替え。

相手からの攻撃をいなして、そのまま相手の攻撃の再現を。
紛れる為に血糊や小物は用意しておきましょう。
こういう時にものをいうのは度量と演技力。海賊の勉強はちゃんとしておいて正解でした。


シン・コーエン
眞白さん(f00949)と

右目の義眼が力の源か。
ならばその力封じて見せよう。
眞白さんに攻撃が及ばぬ様、シンから攻撃。

【足裏から放つ衝撃波・ダッシュ】で一気に加速、【残像】で数多くの分身を生みつつ右手の灼星剣で【2回攻撃】。
敵攻撃の多くは【第六感・見切り】で躱すか、分身に受けさせ、避けきれ無い場合のみ【武器受け・オーラ防御】で凌ぐ。

UC:漆黒の門で左手をブラックホールに変換。
吸い込み対象を『右目の義眼』と『呪われた戦斧』にして行動阻害しつつ、【闇の属性攻撃・高速詠唱】で義眼の輝きや青い光を無効化。
弱体化した相手から義眼と戦斧を奪い取って虚空に吸い込み、【2回攻撃・炎の属性攻撃・衝撃波】で斬り裂く



 ジェナの吐き捨てた血が白と灰だけの地面に赤を重ねた時、突如、ジェナが斧を後ろに回した。背後で斧と激突したのは深紅に輝く光の剣。ヴヴ、と目に見えない雷電が空気を震わすような低音と共に、剣と斧を挟んで亜麻色の髪と金髪がふわりと舞う。
『何だい色男、あんたから死んでくれんの?』
「その期待に応える気はない」
 つれないねと嗤うジェナにシンは何も返さない。後続にいる眞白へ攻撃が及ばないよう、グリップを握る手に力を籠めたままジェナの腕力と拮抗し続ける。前髪の隙間から見えた義眼には、うすらと宿る青色が見えた。
「それが力の源か。ならばその力封じて見せよう」
 後ろへの跳躍はとん、と軽く。だがシンは着地と同時、足裏から地を抉るほどの衝撃波を放って一気に加速した。見たものが緩急の差を認識するよりも遥かに速くシンはジェナへと迫り、それを捉え、蹂躙しようとジェナが駆ける。
『“封じる”だぁ? その前にあんたの目を素手で引き抜いてやるよ!!』
 異形の右手が斧を振り下ろす。地面を割り、石を砕き、空気を裂いて自分以外の全てを破壊し尽くそうとする。その一つ一つを浴びたシン――の形をした残像がかき消えては新たに現れ、追いつかれては頭から斧の一撃を浴びて消えていく。
 そこに眞白の飛威が加勢に入った。凛と戦うからくり人形と、シン。順に見つめた眞白は、二人からジェナへと映すものを変える。まだ。まだだ。自分が仕掛けるのは今ではない。
(「時間がすこしもらえたなら、そこがきっとチャンスになるから」)
 無数のシンとからくり人形の飛威。入れ替わり立ち替わり翻弄する二人に、ジェナが獰猛さ増した笑みを浮かべ斧を揮った。砕かれた大地の音が反響する。
『くそつまらない真似すんじゃないよ!』
「ならばこれはどうだ」
 多数存在する残像から冷静な声がひとつ。
 どこから。ジェナの目がぎょろりと動く――が、判らない。捉えようと感覚を研ぎ澄ませようとした一瞬のうちに、シンは衝撃波による超加速でジェナのすぐ横まで“跳”んでいた。
 ジェナの体の向きはそのまま。しかし、体よりも先に目が動いてシンを見て――シンの左の掌にぽかりと生まれた黒い虚空がジェナの左目に映り込む。
 あれはマズイ。訴える本能によって全身の反応が追いつき、逃れようとする動きをシンは捉えていた。虚空の口を開けて義眼に手を伸ばした瞬間ジェナが目を見開く。
『あたしのこれは奪らせないよ!!』
 叫びと共に義眼が光を放った。眩い青が溢れ――虚空に吸われていく。青い輝きは現れた傍から黒に染まり、虚空の中へ。
 輝きを奪った次は義眼そのものを。その次は斧を。シンは更に手を伸ばすが、指先が眼球に触れる直前ジェナが振り回した斧に阻まれる。しかし義眼――メガリスが齎す力を吸われたという確かな事実はジェナの心に強く刻まれた筈。その、証に。
『駄目だ、駄目だ駄目だ駄目だ! こいつはあたしが手に入れた! こいつはあたしのもんだ!! あんたらにくれてやるのは無様な死だけだ!! ぐちゃぐちゃのごみになってくたばるがいいさ!!』
 シンが繰り出す炎の衝撃波。一撃目を斧で受け止め二撃目をまともに浴びたジェナが、唾を飛ばしながら殺意と欲望を轟かせた。まずはあんたらからだと猟兵たちを睨みつけて。その次はあそこで突っ立ってるしか能のないくそ共だと、フロル海賊団を指して嗤う。
 しかし一人だけ、ジェナに向かう『海賊』がいた。
 ジェナの脳と目はフロル海賊団の『誰』かを把握する前に“殺す”と決めた。ぎらりと視線を向けて唇を三日月のように鋭くさせ、向かってくる存在に対し心の底から嘲る笑みを浮かべ、叫ぶ。
『ぶっ殺せ!!!』
 大人しく引っ込んでれば後で殺してやる。
 向かってくるならお望み通り、今ここで。
 空気をびりびり震わすほどの乱暴な命令が賞金首亡霊を喚んだ。貧しい肉の隙間から骨を覗かせた腕がカトラスを揮い、命令を遂行しようと飛びかかる。揮われるカトラスは錆びつき、斬られればヤスリで出来た刃物にやられたのかというくらい酷い傷になるだろう。――斬られれば、の話だが。
『あんた誰だ』
 ジェナが感情の無い声を漏らした。
 銀色を符から障壁を展開して亡霊の攻撃をいなしたのは確かに海賊だ。だからこそ、試練で死ぬまでフロル海賊団の一員だったジェナに違和感を覚えさせた。
 しかしずっと騙す必要はない。
 『海賊』にとって、戦いのさなか一瞬でもジェナを惑わせられれば十分。
「ああ。海賊の勉強はちゃんとしておいて正解でした」
 聞こえた声は若い女の――眞白のもの。
 障壁が一瞬で輝きを増し、いなしたばかりの攻撃を反射する。砲弾の如き勢いで放たれた賞金首亡霊がジェナの全身を呑み、ばんっ! と水風船のように爆ぜた。ジェナを中心に空気の圧が周囲を撫ぜて――コンキスタドールの女が、増やされた傷に怒りを露わにする。
『よくも……よくもやってくれたね……ッ!!』
 殺してやる。
 繰り返される怒声に、船員に守られているカルラから溜息の音がした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フリル・インレアン
ふえぇ、どうにかオウムさん達から逃げてきましたが、あのコンキスタドールさんが斧を振り回して危険です。
ここは美白の魔法で摩擦をなくして、斧がどこかに飛んでいってしまえばよさそうですね。

ふえぇ、飛んでいった斧が私を追いかけてきます。
これが呪いの力ってあんまりですよ。
ふえぇ、今日は追いかけられてばっかりの1日です。



 殺してやる。
 はっきりと聞こえた言葉にびくっと跳ねた肩はフロル海賊団の誰よりも華奢だった。
 それもその筈。ふえぇと声をこぼしたのは船員ではなく、大きな帽子を被った少女猟兵・フリルだったのだから。
『……へーぇ?』
 ジェナが嫌な笑みを浮かべ、頭を揺らす。
 亜麻色の髪も一緒に躍って、ふぁさ、と音を立てたその隙間から義眼が覗いた。
『ねぇお嬢ちゃん。あんたは大人しく殺されてくれるんだろう?』
「ふぇ、何でそうなるんですか」
『そういうツラをしてるからだよ!!』
「り、理不尽ですそうは思いませんか、アヒルさ……えっアヒルさん?」
 いない。――と思ったら既に安全圏まで逃げて岩の陰からクワッと顔を覗かせていた。
 ずるい、ずるいですよアヒルさん。フリルは心の声をぐっと飲み込んで走った。後ろからぶおんぶおんと凄まじい音がしているこの状況で、アヒルさんの方を見ながらクレームを出す時間的余裕は無いと脳内警報が告げるのだ。
「ふえぇ、どうにかオウムさん達から逃げ続けたのに……!」
『口には気をつけな、オウム扱いしたらあいつらが化けて出るよ!!』
 あたしはそれでもいいけどね、怒り狂ったあいつらがお嬢ちゃんを啄んで真っ赤にするんだ、きっといい宴になる――義眼を輝かせ嗤うジェナの“期待”に、フリルは必死になって逃げながら首を振る。
(「あの斧を何とかすれば……」)
 例えば。振り回されている斧がどこかに飛んでいってしまう――とか。
 閃いた瞬間、フリルの全身がしゅしゅーッ! と溢れた蒸気で包まれた。ユーベルコードで作り出した蒸気はフリルの全身をすっぽりと包み、フリル以外の全てに対し圧倒的な――すべすべ感を発揮する。
 そう。とてつもないすべすべ感だ。フリルを捉えたと嗤ったジェナの目の前で、斧の刃はつるんっと滑ってすぽーんと飛んでいく。やりました、と安堵したフリルだが、その目に今度は恐ろしい形相のジェナが映って飛び上がる。
『これであたしの攻撃を封じたつもりなら、能天気にもほどがあるよガキ!!』
「!? ふえぇ、何で斧が追いかけて――あっ、まさかこれが呪いの力……」
『正解さ! ご褒美に九回かけて殺してやるよ!』
「結構です~。ふえぇ、今日は追いかけられてばっかりの一日です……!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
あらぁ、オレなら冷めたスープも美味しくしてみせるのに

*範囲攻撃で*オーラ防御展開し海賊団の盾にしましょ
アレはオウムちゃん達の比じゃないの、分かるデショ

敵が召喚する霊は【翔影】でくーちゃん喚び喰らわせ*生命力吸収ネ
狩りの時間よ、しっかり食べて頂戴
その隙にジェナの元へ踏み込み「Cerulean」から成した剣で斬りつけるわ
反撃は動き*見切り*第六感も併せ躱し丁寧に*傷口を抉っていこう

ぶちまけるだけナンて食事に失礼なコトする気はねぇケド
――今日の所は仕上げを任せるわ
海賊団へ被害出ないライン見極め船長に声掛ける
誇りってヤツはどんな調理より大事ナンでしょう
後悔で食事を不味くしちゃ、料理人としては失格だもの


ニュイ・ミヴ
ジェナさん……
カルラさん
でしたらニュイも、海賊の、フロル海賊団の流儀に則ります

びょんっと前に出ます
あちらのUC発動からの突撃にあわせ【無敵城砦】モノリス状になりぐにんと引き受けたいです
他の方に攻め手をお任せすることにひとつの不安もありません
「どんな荒波も仲間とともに乗り越える」
物語の中の海賊はね、そんな風にとってもステキでしたよ
(きっと……彼女たちも)

ジェナさんや他の方の攻撃直後等、猛攻の緩む一瞬があればUC解除し
斬り飛ばされたニュイそれぞれを薄い刃状に変化させ『捕食』攻撃
「やられたらやり返せ」も海賊の教えのうちでしょう?
ふふふ!
と、ニュイはずっと晴れ晴れお相手しますとも



 宙をぎゅんぎゅん舞っていた斧は結局、少女の猟兵を傷付けるには至らずジェナの手に戻った。
 チッと何度目かの舌打ちの後、ジェナとカルラの視線が交差する。
 カルラは何も考えていないように見える表情でジェナを見つめ、ジェナは怒りや殺意を露わにカルラを睨みつける。それだけで、二人は何も言わない。
 だからニュイには、先程カルラがついた溜息にどんな言葉が宿っているかわからない。
 しかし二人を見ていると、“どうするべきか”が自然と湧き上がってくる。
『あたしはここで終わらない、終わるもんか!』
 ここにいる全員を皆殺しにする。この洞窟を出てマール・フロルを支配する。
 そして他の海を、他の島を――人を、命を、財宝を!
『手始めにあんたらからだ!!』
「そうは行きませんよ!」
 義眼を青く輝かせながらぐんっと飛翔したジェナへとニュイはハッキリ言い返した。
 ジェナ。カルラ。
 彼らが今立つ場所を否定せず選び続けるのならば、自分も海賊の――フロル海賊団の流儀に則り、戦おう。そう決めた今、全身をびょんっと伸ばして前へ出る事にこれっぽっちの恐れも迷いも無い。
 たとえコンキスタドールとなる前のジェナが賞金首を何人殺し、賞金をいくら得ていたとしても――10人、20人――もしかしたら100人近いかもしれないし、少ない人数で物凄い金額を稼いだのかもしれなくとも。
 “どんな荒波も仲間とともに乗り越える”。物語の中で見た海賊はきらきら輝く海のようにとってもステキだった。
(「きっと……彼女たちも」)
 他の海賊。嵐の海。海や陸で出遭った魔物。フロル海賊団も、ニュイの知らない物語をいくつも作ってきたのだろう。
 多くを守れるよう飛び出した先、ぺちょんと着地してすぐ全身をぐるるんっと躍らせて変じた形はモノリス状。あらゆる攻撃を受け止める、それはそれは無敵に近い守護の姿。
 フォルムの変化は速く、ぎゅんっと突っ込んできたジェナは“手始めに”と定めた標的を轢き飛ばせないまま。ぐにん、からの、ばいんっと弾かれ洞窟の壁に激突しかけた直前でカーブし、もう一撃とターンしてみせた。
 雲のない夜の星空に似た守りを砕こうとする勢いに、コノハは「あらぁ、」と緩やかな。それでいて冷えた声を向けながら、纏っていた防護をふんわり開いていく。
「オレなら冷めたスープも美味しくしてみせるのに」
「コノハさんなら、それはもうとっておきの冷製スープに大変身ですね!」
「まぁ嬉しー♪」
 動けない分、言葉をにゅんにゅん躍らせたニュイにはニッコリ笑顔。ただし、冷めたからぬるくて不味いという決めつけには、ジェナの浅はかさには、身に宿す牙を向けるのみだ。現れた黒影の管狐が、指先から腕、肩へと翔けていく。
「さあくーちゃん。狩りの時間よ、しっかり食べて頂戴」
 うすらと笑みを浮かべて放てば、四肢に黒い羽根が紡がれて管狐たちはより疾くなり、宙をいくジェナの喚んだ亡霊に襲いかかった。爪で斬り裂き、牙を突き立てる。管狐たちが亡霊を喰らうたび、コノハは腹が満ちていくのを覚えたが。
(「悪かないケド、ちょっと薄味ね」)
 では、メインディッシュの方は。
 亡霊が喰われていく隙に踏み込むその後方、船員は相変わらずジェナへ警戒と殺気を放っていた。カルラの方は――静か過ぎてわからない。
「アレはオウムちゃん達の比じゃないの、分かるデショ」
「ええ」
 お前たち。カルラの一言で途端にそれらが薄れていく。戦うのではなく自分たちを守る方へ精神をシフトさせた空気をジェナがハッと嗤った。くだらない。続いた声を両断するように、コノハは骨董鍵の貌を剣へと変えて斬りつける。
「くだらない? どーしてカシラ」
『てめえ以外を守って何になる? 邪魔なやつは奪って殺してこそじゃないさ!』
 ガッ、ギィンと、ぶつかり合う斧と剣の音色が響き渡る。それぞれに宿るのは激しい欲望と、静かな――。
「ふぅん。そう」
 斧が振り下ろされた瞬間、剣を僅かに傾けて刃の上を斧を滑らせる。真っ直ぐだった筈の地面が斜めになったような突然の変化に、追いつけなかったジェナが体勢を崩した。肌に走る傷口を剣でなぞるように抉れば、鋭い悲鳴が上がる。
『てめえッ……!』
「あらあら、余所見なンてしていいの?」
 くすりと笑った目に映るのは、は? と訝しげな顔をしたジェナだけではない。ざぶんと波打った、いつでもとってもポジティブな星屑夜空も映っている。
「“やられたらやり返せ”も海賊の教えのうちでしょう? ふふふ!」
 ぴぴ、ぴっ、と飛ばした“ニュイそれぞれ”がしゅいんッと薄い刃状に変じ、まるで命と意思を持った花弁のように躍って――すぱぱぱっ! あらゆる角度からジェナを喰らった瞬間、コンキスタドールの女は膝をつきそうになって。それを、斧を突き立てる事で堪らえようとするが、斧の刃はガリッと地面を削ってガランと転がった。
『ッ、ぐ……まだ、まだだよ……あたしは、こんな……!』
 こつ。こつ。ゆっくり近付いてきた足音、つま先から上へと視線を移したそこには、冷めたスープも美味しくしてみせると豪語した青年が一人。その周りを管狐がしゅるしゅると駆け回り、手には剣が握られている。
「ぶちまけるだけナンて食事に失礼なコトする気はねぇケド――」
 剣が骨董鍵に戻る。様々な茜色がさす紫雲の髪が、振り返った動きにあわせてかすかに揺れた。得物を構えてはいるが、纏う空気は静かなものに留めたままの船員たち。その奥で、ただ、事を見つめていた女を見る。
「今日の所は仕上げを任せるわ」
 戦いが始まってから、カルラの顔に初めて表情が現れた。は、と瞳が丸くなったのはほんのいっとき、僅かなものだったが。“仕上げ”の意味に、カルラが優雅に笑む。
「ありがとう。聞いたわね、お前たち」
 海が割れるように船員たちが道を開け、そこを、カトラスを抜いたカルラがゆっくりと歩く。船員たちが黙って見つめている。ニュイはちょっぴり背筋を伸ばしながらそれに倣い、コノハは地面に這いつくばりながらも起き上がろうと足掻くジェナを見て――目の前を過ぎたカルラを見送った。
 誇りというものは、大層な名前でありながらその時々で味が変わる。
 だから、どんな調理より大事なのだろう。
(「後悔で食事を不味くしちゃ、料理人としては失格だもの」)

 カルラの足が止まった。
 湾曲している刃の先端がジェナの眉間を指す。
 そこから、つう、と下へ向かってぴたりと止まった。
「ジェナ。海が、お前を待っているわ」
『――船長、あたしは、』
「……だめよ。さあ、いってらっしゃい。あたくしの可愛い子」

 月が躍るように、刃が心臓へと滑り込む。

 そして青を宿していた目は、左目と共にゆっくりと閉じられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『夏花揺蕩う海の庭』

POW   :    海の生き物たちと戯れる

SPD   :    海中探索、泳いで回ろう

WIZ   :    海に浮かぶ花を楽しむ

イラスト:青谷

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●青き宝饒
「フロル海賊団の長として皆様に心から感謝するわ。お礼になるかわからないけれど……良ければ、マール・フロルの花咲く海をご覧になって行って」
 カルラがカーテシーをして改造ドレスのスカートをふんわりさせ、感謝の念と共に深い緑の向こうを示す。
 森を成す色濃い木々と向かい合うように、仲良く大きなカーブを描く白い砂浜。陽光を浴びて輝く陸と海の境界線。そこを深い青色のシルエットが『キュッキュ、キュッキュ』と、『いっちに、さーんし』と掛け声をやるようなリズムで可愛らしく鳴きながら、列を成して歩いている。
 一歩進むたびに左右に揺れるボディと海を翔ける為の翼。夏の花を咥えた嘴。
 あれこそが海に花を齎すマール・フロルの住民『花ペンギン』たち。その可愛らしさたるや、戦場では厳しい目つきをしていた強面海賊を笑顔にするほどだ。
『キュ、キュキュ』
『キュー! キュッキュキュ!』
 波打ち際に辿り着いた花ペンギンたちは体をぷるっと震わせたり、翼を勢いよくパタパタさせたり、ぴょんぴょん跳ねて駆けたりと大はしゃぎ。

 早く花を、“好き”を、届けなくっちゃ!

 そんな雰囲気で次々に飛び込んでいった深い青色が、海に飛び込んだ瞬間から自由に翔ける様は、陸からもよく見えていた。
「今日の海はあの子たちのお喋りで少し賑やかかもしれないけれど、マール・フロルの海は本当に美しいの。ここから見るよりもずっと素晴らしい世界が広がっていてよ」
 高台、堤防、浜辺。どこから訪れても、マール・フロルの海は全てを分け隔てなく迎え入れる。澄み切った青い世界は、太陽が創り出す光のヴェールや揺らめいて躍る波紋、色鮮やかな珊瑚に花ペンギンたちが持ってきた花々で満ちていて――。
「そうだわ、カナヅチの方はいるのかしら。この指輪や腕輪は、時間限定だけれど海中での呼吸を可能にしたり、空気の繭で全身を包んでくれる優れもの。皆様はあたくしたちの恩人、お代は結構。必要な方はどうぞ受け取って」
 さらさらとした海底に足をつけて歩いたり、のんびり泳いでいたら、花ペンギンに遊ぼう遊ぼうと誘われるかもしれない。もしかしたら、親愛の花を贈られてしまうかも。
 逆にこちらから贈ったらどうなるか?
 それはもう大喜びで周りをぎゅんぎゅん泳がれるそうな。
 花ペンギン以外にも群れで泳ぐ魚や、穏やかな気性で人を襲わない鮫、マンタもいる。

 輝くような海に抱かれて、どんな夏を過ごそうか。
 
グレイ・アイビー
フルール(f00467)
水着を着て花ペンギンと遊ぶ

フルールは大人の女性らしい上品で華やかな水着ですね
楽しい雰囲気に誘われて、妖精まで遊びに来たのかと吃驚しました
彼女の可愛い悪戯も妖精と勘違いした理由の1つです

フルールの森にも花ペンギンのような動物はいやがりました?
おや、彼らに花を取ってあげるんですか?
ニチニチソウにかすみ草…意味は清らかな心、無邪気、楽しい思い出ですか
花言葉を聞けば、彼らにぴったりの花だと思います

次は彼女の花を受け取った花ペンギンが誰にそれを贈るのか、着いて行こうと提案
後ろからこっそりと、ちょっとドキドキワクワクな気分です
その子が相手に受け取ってもらえるところまで見届けましょう


フルール・ラファラン
グレイ・アイビー(f24892)と一緒
水着を着て花ペンギンと遊ぶのよ

待ち合わせをしていたグレイさんに
”ニチニチソウ”と”カスミソウ”でお花のシャワーをする悪戯
びっくりしたのかしら?ふふ

ルーは去年の水着を着て
くるりとグレイさんに見せて
妖精さんも一緒にくるりポーズ
妖精さんも一緒だから、強ち間違いじゃないのよ
沢山遊ぼうね

ルーの森にも沢山の生き物と隣人がいるけど
花ペンギンは初めましてだわ
しゃがんで視線を合わせて、綺麗な瞳をじっとみて
こんにちは!

この2つのお花はグレイさんにもぴったりの花言葉だと
ルーは思って持ってきたの

お誘いには喜んで
おいかけましょ
わくわくしてとっても楽しいのよ
あの子はどんな思いなのかな



 果まで広がる空はただただ青く、風に運ばれる雲はちぎられた白い綿のよう。砂浜と海が描く白からブルーへのグラデーションはやわらかに始まり、沖へ向かうほど色濃く鮮やかになっている。
 木陰で一人。座って人を待つグレイ・アイビー(寂しがりやの怪物・f24892)の宝石めいた琥珀の瞳に映り込むマール・フロルの海は、何もかもがきらきらと鮮やかで――、
「グレイさん!」
 ふいに後ろから届いた声。甘く色濃いピンクと繊細で可憐な白。ぱあっと降り注いだ花のシャワーに振り返ったグレイに、フルール・ラファラン(妖精の愛し仔・f00467)は「びっくりしたかしら」と笑いかける。
「楽しい雰囲気に誘われて、妖精まで遊びに来たのかと吃驚しました」
 フルールが仕掛けてきた可愛い悪戯――ニチニソウとカスミソウのシャワーも妖精と勘違いした理由のひとつ。
 グレイは自分の体とその周りを彩る花をいくつか拾い上げてフルールを見た。
 イヤリングと髪留めは浜辺の浅瀬を染める碧のようで、金髪を彩る髪飾りは真珠のよう。フルールが淡い薔薇色の肌に纏っている白い水着は、去年仕立てたものだという。
 大人の女性らしい、それでいて上品で華やかな水着だというグレイの感想にフルールは微笑み、妖精と一緒にくるりとポーズをとってみせた。腰に巻いているパレオがふんわりと舞い、マール・フロルの浜辺と似た透明感ある色彩を美しく見せる。
「妖精さんも一緒だから、強ち間違いじゃないのよ。グレイさんは今年の水着なのね」
「せっかくの海ですしね」
 両サイドに淡いグリーンのラインがシャープに走る黒の競泳水着は、そのシンプルさがグレイの鍛えられた長身とよく似合っていた。
「じゃあ行きますか」
「ええ。沢山遊ぼうね」
 立ち上がったグレイの隣を行くフルールの視線は、海へ向かう花ペンギンに向いていた。心地良い音を響かせる波に飛び込んでいった青いシルエットが、淡色に煌めく波の向こうへと翔けていくのがよく見える。
「フルールの森にも花ペンギンのような動物はいやがりました?」
「ルーの森にも沢山の生き物と隣人がいるけど」
 花ペンギンは初めましてだわ、と話すその横をぴょっぴょこと元気に行く花ペンギンが一羽。真っ直ぐ前を、海だけを見ていたようで、しゃがんだフルールに全身をぷるるっと震わせ跳び上がった。
『キュ、キュ……』
「こんにちは!」
 しゃがんで、視線を合わせて。陽だまりのような笑顔と挨拶に花ペンギンがキュキュウ! と鳴いて翼を広げた。こんにちは、こんにちは! 嬉しさ弾む鳴き声を響かせる花ペンギンにフルールも嬉しそうに笑い――。
「おや、彼らに花をあげるんですか?」
「ええ。ニチニソウは『清らかな心、無邪気』、カスミソウは『楽しい思い出』という花言葉を持っているの」
「彼らにぴったりの花ですね」
 どうぞと差し出した花々を見る花ペンギンの目は、陽光を浴びた波間のようにきらきらと眩しい。くれるの? いいの? 喜びと戸惑いを喉からキュルルと奏でる花ペンギンにフルールは勿論と笑いかけ、花を咥えている嘴にそっと挿し込んだ。
『キュキュウ!』
 花ペンギンが胸を張って、それから二人にぺこっとお辞儀をして海へ向かっていく。その後姿はグレイが言った通り、ニチニソウとカスミソウの花言葉がぴったり来る様だったけれど。
(「この2つのお花はグレイさんにもぴったりの花言葉だと、ルーは思って持ってきたの」)
 ふふと笑みをこぼして、内緒よと妖精と視線を交わす。
 どんなお喋りしてんですかねと視線だけ向けたグレイは、波に飛び込むタイミングを計る花ペンギンの背中を見た。
「花ペンギンが誰に花を贈るのか、着いて行きませんか」
「喜んで。おいかけましょ」
 お邪魔にならないように。
 後ろから、こっそりと。
 花ペンギンは気付いていない。じいいっと海を見つめ続けている。
「ちょっとドキドキワクワクな気分です」
「ええ。わくわくしてとっても楽しいのよ」
 あの花ペンギンはどんな思いなのだろう。
 ――と、花ペンギンがぱしゃぱしゃと海に入り、ぴょんっと跳んで波に乗る。ほんの少し浜辺へ戻された体は、すぐに水中へと翔けだした。
「じゃ、その子が相手に受け取ってもらえるところまで見届けましょうか」
 追いかけて飛び込めば、マール・フロルの海が碧く、青く、輝いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふわぁ、海の中でも息ができるのはすごいですね。
この空気の繭のおかげなんですね。
ところでアヒルさん、どんなにつついても割れないそうですけど、絶対に試しちゃダメですからね。
絶対にダメですよ。

あ、アヒルさん、花ペンギンさんの群れですよ。
私たちと遊びに来てくれたのでしょうか。
花ペンギンさん、可愛いですよね。
・・・あれ?なんだか多すぎるような。
ふええ、やっぱり今日は追いかけられてばっかりの一日です。
でも、コンキスタドールのオウムさんや斧に追いかけられるよりはずっといいですね。



 海に入る前はうっすらとしかわからなかった空気の繭が、太陽の光をきらきらと踊らせる海中に入った瞬間、はっきりとその形を見せる。
「ふわぁ、海の中でも息ができるのはすごいですね。この空気の繭のおかげなんですね」
 綺麗な丸を形作る一人用の空間で始めのうちはびくびくしていたフリルは、海中世界に目を輝かせていた。波紋。珊瑚。魚。夏の花々。ゆっくり過ごす海中でのひとときは夢のよう。――今のところは。
「アヒルさん」
 嘴の先っぽを繭にくっつけていたアヒルさんが首を傾げる。嘴の離れた部分が、ぽよ、よん、と元に戻っていった。
「どんなにつついても割れないそうですけど、絶対に試しちゃダメですからね」
『クァ』
「絶対にダメですよ」
『クワ、クワワ』
 わかってくれたんでしょうか、という不安をやわらげるように、フリルの腕や服、広がる砂の海底に波紋が揺れる。ふわぁ、と口を開けて眺めていたフリルは、ふいに聞こえた音に顔を上げた。
 もしかして、と周りを見る視界に飛び込んだ華麗な泳ぎ。煌めく海中をさあっと翔けていく花ペンギンたちが、キュウ、キュキューと鳴きながら繭の周りをぐるぐる泳ぎだす。遊びに来てくれたように思えて、フリルはそうっと手を振ってみた。
『キュウ!』
「わ……! 花ペンギンさん、可愛いですよねアヒルさん」
『クワァ~、グワッ、クワクァ』
「え? ……あれ?」
 あっちからこっちから。キュ、キュウ、キューキュキュー。
 増えていくシルエット。広がる鳴き声。

 ――なんだか多過ぎるような。

 あれれ。まさか。フリルは前へと繭を動かした。可愛らしい鳴き声がついてくる。
 今度は右。キュン! と真横に並んだ花ペンギンがくるりっと一回転した。
 後ろを見る。

 いっぱいいる。

「ふええ、やっぱり今日は追いかけられてばっかりの一日です」
『クワワワ!』
「笑わないでください~。……でも」
 コンキスタドールの小鳥や斧に追いかけられるより、海を花々と“好き”でいっぱいにする花ペンギンの方がずっといい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
【月風】

泳げるけど
空気の繭で包まれんの面白そうだ
海底歩けんだろ?
借りてもいい?

海底から見上げ
うわぁ…めっちゃ綺麗だわ
って
瑠碧姉さんペンギン好きだなぁ
表情緩め
輪潜りいいな
水族館の人みてぇ
ペンギン手招きしてから
そっと手を繋ごうと
早!
やべぇ面白ぇ

やっぱ瑠碧姉さんの魔法すげぇなぁ
え?
…俺までいいの?
ペンギンの分と自分の分交互に見て
えーと…
悪ぃ…交換してくんねぇ?
出して貰った分ペンギンに差出し交換願い
瑠碧姉さんに差出して
自前じゃなくて悪ぃけど
頭に飾ろうと
ああ勿論
瑠碧姉さんの周り泳ぐの見て
…めっちゃ可愛い

(つーかむしろ姉さんが可愛すぎるわ…)
お、おう
誤魔化す様にペンギン撫で

やった!
鮫とマンタとも一緒に泳ご


泉宮・瑠碧
【月風】

腕輪に呼吸だけ助けて貰い
他は精霊達にお願いして
私はサマードレスを

澄んだ海中に入れば花ペンギンにきらきら
理玖、見てください…可愛い

ね、一緒に遊びましょう
理玖、手を繋いで、輪を作りません?
輪潜りして遊んで貰います
おいでと招き…流石の速さですね

花は…
植物の精霊へ願って咲かせて貰い、小さな花束に
残る根は種へ戻します

理玖にもペンギンへの分と
好きを届けるなら、私からも一輪
お返しを髪に貰えば、照れ笑い
…似合います?

遊んでくれた子達へ花を贈り
周りを泳ぐ子に、おいでと両腕広げて
ぽすんと抱っこ
御礼と共に頬を寄せ、一緒にキューと鳴き真似
理玖もどうぞ、とペンギンと共に傍へ

そうだ
鮫やマンタにも会いに行きましょう



 泳ぎ方を知っていても、空気に守られて悠々と海底を歩くというシチュエーションは実に面白そうで――そしてそれを実行した陽向・理玖(夏疾風・f22773)の眼前には、海という命の宝庫が広がっていた。
 海底から海の外を見上げれば海面では青空と雲が輪郭をやわやわと踊らせていて、揺れ動くたびに光が煌めいては、白いカーテンがうっすらと海底に降り注ぎ海面の光と共に砂の底を彩っている。
「うわぁ……めっちゃ綺麗だわ」
 そんな青き世界を花ペンギンたちが泳ぎ回る光景は、珊瑚や夏の花の彩りも加わって御伽噺の一節を見ているかのよう。
 キュウ、キュキュー、とやわらかに届く鳴き声に、泉宮・瑠碧(月白・f04280)の瞳が緩やかに和らいでいった。
「理玖、見てください……可愛い。ね、一緒に遊びましょう」
 こちらを見てお願いする瑠碧の瞳は、彼方の海と似た透き通った深い青。花ペンギンたちを見てきらきらしている様に理玖の表情も緩んでいく。
(「瑠碧姉さんほんとペンギン好きだなぁ……ん?」)
 自分へと差し出された両手。その片方にはカルラから貰った腕輪がひとつ。穏やかな波で、海の青を真珠で縁取ったような白のサマードレスがふわりと揺れた。そこに、瑠碧に降る光が波紋を纏わせていく。
「手を繋いで、輪を作りません?」
「輪潜りいいな。水族館の人みてぇ」
 こっち、と二人で花ペンギンたちを手招くと、彼らは早速気付いてキュキューンと鳴きながら翔けてきた。そっと手を繋ぐつもりだった理玖は慌てて瑠碧の手を取る。瑠碧も理玖と手を繋いで、大きく開いた。
『キューウ!』
『キュッ、キュッキュキュー!』
 一羽、二羽、三羽四羽。もっと、もっと。次々に翔けてきた花ペンギンたちが繋いだ手の間をさああっと通っていく。そのたびに傍を漂っていた花びらや泡が勢いよく躍り、二人の視界や髪の間をひらひらくるくる。それが、ふんわりと収まっていって。
「早! やべぇ面白ぇ」
「……流石の速さですね」
 二人顔を見合わせて彼らの速さに驚いた後、マール・フロルの海に小さな花束が生まれた。瑠碧の願いを受けた精霊が咲かせた花々から作られた花束は、瑠碧の手の中で穏やかに花弁を揺らしている。花が咲く様と残る根が種へ戻っていく光景が不思議なのは、ここが海中だからというだけではない。
「やっぱ瑠碧姉さんの魔法すげぇなぁ」
「ありがとうございます、理玖。……これは、理玖に。花ペンギンへの分です」
 そっと笑顔を浮かべた瑠碧は、花束にあるものとは別の花も取る。
 “好き”を届けるなら。
「私からも一輪」
「え? ……俺までいいの?」
 ぱちぱち。数回瞬きをして、受け取った花束と花一輪、そしてこくり頷いて微笑む瑠碧を何度も見比べる。ぴゅーん、と翔けてきた花ペンギンが海底の砂に着地し、ふわん、と砂を舞わせた。理玖の足の間をとことこ歩いて、ぴよん、と理玖の目線まで舞う。
 どしたの? そう問うように首を傾げた花ペンギンに、理玖は出してもらった分を差し出した。
「えーと……悪ぃ……交換してくんねぇ?」
『キュウン!』
「ありがとな」
「……理玖?」
「あのさ瑠碧ねえさん。自前じゃなくて悪ぃけど」
 お返し。差し出した花を頭に飾ろうと手を添える。傾けられた頭に了承を見て、理玖はそうっと髪に挿した。オッケーだ、瑠碧ねえさん。その声に瑠碧の目線は静かに上がって――理玖を見て、照れくさそうに笑む。
「……似合います?」
 普段雪のように淡く煌めく瑠碧の髪は、海の青をうっすらと纏ったかのよう。そこに贈った花の形と色が今日の装いとあわさり、いつもと違う瑠碧の色彩を見せていて。
「ああ勿論」
 瑠碧の表情が、ほわ、と綻ぶ。
 次は遊んでくれた花ペンギンたちにもと花を贈ると、花を抱えくるくるるんっと回転しながら周りを泳いでいた一羽と目が合った。おいでと広げた両腕に真っ直ぐぽすん、と飛び込んだ小さな体を抱っこし、礼と一緒に頬を寄せると、しっとり滑らかな肌触りが幸せと仲良く並んで広がっていく。
『キュー♪』
「キュー」
 めっちゃ可愛い。理玖がこぼした一言は周りを泳いだ花ペンギンの事なのだけれど。
(「つーかむしろ姉さんが可愛すぎるわ……」)
 花ペンギンとの触れ合いで無垢に、無邪気に喜ぶ姿が。笑顔が。
「理玖もどうぞ」
「お、おう」
 瑠碧に注いでいた視線を花ペンギンに移し、誤魔化すように撫でる事暫し。二人からの好意にすっかりご機嫌になった花ペンギンがばいばーいと離れた後、上を見れば様々な命が悠々と泳いでいて。
「そうだ、理玖。鮫やマンタにも会いに行きましょう?」
「やった! 鮫とマンタとも一緒に泳ごうぜ、瑠碧ねえさん」
 折角訪れたマール・フロルの海。
 命と色彩と、泡が煌めいては咲く夏海でのひとときを、彼らとも――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ディフ・クライン
友の明(f00192)と一緒に今年の水着で

花ペンギンだって、可愛いね
それに、海に花がいっぱいだ
勿論だよ、じゃあ手を繋いで潜ろうか

呼吸は、オレは人形だから大丈夫…
わかったわかった、一緒に入るよ
二人に手を引かれて花咲く海へ

海底の珊瑚を散歩して
揺らぐ光や泳ぐ魚に手を伸ばしてみたり

ペンギンと明たちから花を貰って、瞬いて
ふ、と柔く微笑み
知識の中にあった花言葉、その意味が何だか温かい
ありがとう、この花は大事にする
じゃあオレからもこれを

メイにはフリージアを
アキラにはライラックを
ペンギンたちにはキクを

賑やかな海は心地いい
メイ、アキラ、花ペンギンたちと泳いでみようか

光り輝く海に負けないくらい
眩しい友と一緒に


辰神・明
ディフ(f05200)と
UCを使用、姉妹水着姿で共に

妹メイは「」
姉アキラは【】

花のペンギン、浮かぶ花々を見ては
二人でわくわくそわそわ!
「ディフおにいちゃん。
お手て、ぎゅーって……いいです、か?

【んじゃ、反対はアタシな!
つか、ディフ!一緒の泡に入った方が楽しいじゃん!(腕輪うりうり

手を繋いで、海底を歩きつつ
眺める景色に感動し、時にはサメの姿に大興奮
戯れる間に、ディフへサプライズ!
メイからはピンクのガーベラ
アキラからはスイレンを、ペンギンと共に手渡し

「はい!ディフおにいちゃん……どうぞ、なのです!
【んじゃ、アタシからはコレな?

お返しの花を受け取って
ペンギン達と一緒に喜んだら、また一緒に泳ごうと



 真っ白な砂浜からほんの少しだけ海に入る。ざあ、と寄ってきた潮水が引いていくのを追えば、目に映るのはどんどん青く染まっていくマール・フロルの海。そこには海の中からここまで泳いできた花や花びらたちが、ゆらゆらふわふわ踊っていて――、
『キューウ!』
『キュ、キュキュッ』
 次の波にえいえいと飛び込んでいく花ペンギンたちも、あちこちに。
 嘴に花をしっかり咥えて、翼を広げて青い海をすいすいと翔けていく青いシルエット。
「花ペンギンだって、可愛いね。それに、海に花がいっぱいだ」
 静かに語る声と一緒に、夜空を薄く漉いたような衣が海面に揺れる。黒髪と似た色合いの水着姿で来たディフ・クライン(灰色の雪・f05200)の両サイドでは、桜舞うひらひらとしたワンピースタイプの水着を着たメイと、白のパーカーに青の迷彩柄パンツとボーイッシュな水着姿のアキラ――辰神・明(双星・f00192)姉妹が、花ペンギンたちの姿を目で追って、彼らが持ってきた花にも視線をとられてと、わくわくそわそわ大忙し。
 その様子にディフの纏う空気がほんのりと和らいだ時、あの、と控えめに口を開いたのは妹のメイだった。
「ディフおにいちゃん。お手て、ぎゅーって……いいです、か?」
「勿論だよ、じゃあ手を繋いで潜ろうか」
「んじゃ、反対はアタシな! つか、ディフ! 一緒の泡に入った方が楽しいじゃん!」
 アキラはカルラから貰った腕輪でディフの腰をうりうりぐいぐい。
「呼吸は、オレは人形だから大丈夫……」
「なんだよ! いいじゃんか一緒で!」
「えと、えっと……」
「わかったわかった、一緒に入るよ」
 ぶすーっと頬膨らませたアキラと手をきゅっと握ってきたメイには敵わない。
 三人手を繋いで更に海へと進んでいくと、ぽわん、と空気の繭が創り出された。泡のカーテンが三人を避けるようにカーブを描きながらきらきらと上って、視界いっぱいに広がる青が海の青だけになっていく。
 海底までの道中はふわふわゆっくり。海面を通った日差しが揺らぎに合わせていくつもの帯を生む光景も、それが夏の花々や花ペンギンを始めとした生き物たちにオーロラめいた揺らぎを映す様も、心ゆくまで眺められる。
「わぁ……きれい、です……」
「すげえ……あっ見ろよメイ、ディフ! サメ! サメだ!」
 きらきらと光が躍る青い海面と光のヴェールに感動するメイと、ゆったり泳いで過ぎていくサメにでっけーと無邪気にはしゃぐアキラ。それぞれのリアクションに挟まれているディフはというと、ゆっくりと過ぎていくサメと無言で見つめあって――ひら、ひら。そっと手を振って別れた後、近づきつつある海底に目を向ける。
 三人を抱えた繭を受け止めた海底から舞い上がった砂粒はきめ細かい。ふわわん、と上がって漂いながら落ちていくそこに、早速繭から飛び出したアキラの足で砂粒が元気よく舞い踊る。
「とうちゃーっく! 行こうぜ!」
「うん。海底散歩、だね」
「海のそこも、明るくって、きれいなのです……」
 海へ入る前と同じようにディフを真ん中にして三人手を繋ぎ、海の地面を歩く。
 海の底だけれど深海というほど深くない、まだまだ陸に近いそこにも太陽の光は届いていた。海の青、珊瑚の淡いピンクや鮮やかな黄色、カラフルな魚が見え隠れする緑の海藻――頭上から降り注ぐ光はマール・フロルの海にある全てを照らしながら、普段陸上では見えない光そのもの形をも見せる。
 海面では煌めく光の網。海中に射し込んだら、光のヴェールに。海中にいる存在に降り注げば、あんなに眩しかった光の網はぐっとやわらかな姿へと。
 揺らぐ光にディフはそっと手を伸ばす。水中だからか熱は感じず、光の網はただただ優しく揺れるばかり。
(「魚には、この光はどう見えているんだろう」)
 脅かさないよう海藻に手を伸ばすと、緑にくるまれていたオレンジ色の小さな魚はたちまち海藻の奥へ。けれど暫くしても静かにそこにある指先に警戒心を解したようで、つん、つんつんっとディフの指先で遊び始めた。――もしかしたら、ご飯と思われているのかもしれないけれど。
「あの、ディフおにいちゃん」
「なあディフ」
 後ろからかけられた声からは、二人が浮かべている笑顔が何となく見えた気がした。うん、なに――そう返して振り返る視界に睡蓮と優しいピンク色のガーベラが『キュウ!』という愛らしい声と一緒に差し出される。
「はい! ディフおにいちゃん……どうぞ、なのです!」
『キューン。キュキュッ』
「アタシからはコレな?」
 一輪に籠められた感謝と信頼、並ぶ三つの笑顔。瞬いた瞳は静謐である事がほとんどだけれど、手渡されたものに宿る言葉と意味を知る人形の瞳は柔く微笑んだ。伝えられたものそれ自体に温度は存在しないのに、何だか温かい。
「……ありがとう、この花は大事にする」
 サプライズの成功にメイとアキラ、花ペンギンは顔を見合わせぱあっと笑顔になった。それぞれの瞳は海中を照らす光以上に煌めいて――。
「じゃあオレからもこれを」
「あ、うわあ! 花だ!」
「ディフおにいちゃん、ありがとうなのです……!」
 思い出と友情、親愛と友情。髪の色と似たライラックの花にアキラは驚いてから照れくさそうに笑い、メイは頬をピンク色に染めてふんわり笑顔。元気を謳うキクを貰った花ペンギンは見て見て! と言うようにアキラとメイへ見せては飛び跳ねる。
 光と花と命が躍る海は、仲良く喜ぶ二人と一羽の声でより賑やかに。
 ――それが。この海が。心地いい。
 ディフはふわりふわりと花弁揺らすガーベラと睡蓮をそっと抱いてしゃがみ、二人と一羽と目線を同じにした。
「メイ、アキラ、花ペンギンたちと泳いでみようか」
「! 泳ぐ泳ぐ!」
「花ペンギンさん、どうですか……?」
『キュキューン!』
「じゃあ、決まり」
 贈りあった“好き”は落とさないように指先で大事に大事に包んで、仲良く海の底を蹴ったら――輝きで彩られたマール・フロルの海に、思い出が咲いていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サン・ダイヤモンド
【森】
「すごい!魔法の指輪だって!」

つけてあげる、するりと黒の左薬指へ指輪を通す
「僕にもつけて?」
躊躇う彼の指先をお揃いの指へそっと誘い、綺麗に微笑んで

「行こ!」
手を繋ぎ無邪気に笑って駆け出した

泳ぐペンギン達へ別れを告げて海底に立つ彼の傍へ
海彩る花々に
「ペンギン達が選んだ花にも意味があるのかな」

「ねえ、あの時――お祝いの日に、どうして僕にあの花を?」

言い淀む彼に
「本当はね、僕、999本の黒薔薇をブラッドに贈りたかったの
意味は、」
ふわり背伸びをして口付ける
「好きだよ、ブラッド 永遠に
僕が欲しいのはあなただけ」
蜜の瞳で彼の花彩瞳捉え、綺麗に綺麗に微笑んで

彼の言葉に涙海へ溶かし
あなたの胸に身を寄せた


ブラッド・ブラック
【森】
意味を解っているのかいないのか、止める間も無く着けられた左薬指の指輪
躊躇、お返しは人差し指…誘導され白の左薬指へ

鎧の重さから忽ち沈んだ海底でペンギンと游ぐ白を見上げ幻想的な光景に暫し酔う

そうだな…少なくとも贈る相手の事を想って花を選ぶのではないか?


あの時、俺がサンに選んだ白い薔薇
想いを籠めたのは一輪の赤い薔薇

言い淀む俺に不意に触れた柔らかな花唇
驚きと共に過去の痛みが霞み遠ざかっていく
お前の愛に溺れ流されそうになる

いや、
いつもと違うお前の態度
お祝いの日と同じ、まるで俺を試すかの様な

―不安、なのか?

サン、俺が贈った花言葉は『愛している』『お前しかいない』だ
見詰め言い切る
俺は何処にも行かないと



「すごい! 魔法の指輪だって!」
 貰った指輪に嵌め込まれている石は、眼の前に広がる海の浅い部分とよく似たアクアマリンだった。空に翳してみるとチカッと陽光を弾いて、サン・ダイヤモンド(apostata・f01974)の視界に白い痕を残す。
「つけてあげる」
 くるっと振り返ったサンは迷わずブラッド・ブラック(LUKE・f01805)の左手を取った。嬉しそうに、楽しそうに。白い指が左手薬指にするりと指輪をつける。
 左手薬指に、指輪を。
 その意味を。この子は解っているのか、いないのか。
 木陰でも真っ白に輝くようなサンは、無垢な笑顔でブラッドを見ている。いつものサンだ。なのに、サン、と問う声がなぜだか出てこない。
「僕にもつけて?」
「……わかった」
 ブラッドは少しの躊躇いの後にやわらかな白い手を取り、指輪を摘んだ手を人差し指――サンのこれからを後押しするようなそこへ向ける。けれど躊躇いが伝わった指先は“こっち”と左手薬指へ誘導される。
 嵌められている石はブラッドと同じアクアマリン。ピンクの瞳が指輪から自分へと向けば、サンは綺麗な微笑みを浮かべてブラッドの手を取った。
「行こ!」
 木陰から日差しの下に飛び出した瞬間、微笑みは無邪気な笑顔に変わっていた。目の前で輝く陽色に鮮やかな瞳が細められた間に、二人の体はマール・フロルの海の上へ。一瞬の浮遊感の後、大きな水柱がふたつ、ばしゃんッ! と上がる。
 木陰から青空、太陽。そして、泡のカーテンが立ちのぼる海。鎧を纏うブラッドはたちまち沈んでいくものだから、視界の変化は目まぐるしい。
 泡のカーテンが晴れていき、鮮やかに広がる青い海。
 目の前を黄色やピンクの向日葵が揺蕩うその先には、深い青色と泳ぐ大切な白。
 キュー、キューウ、と花ペンギンたちの楽しげな声にサンの笑い声が重なる。花ペンギンは空舞う燕のようにサンの周りをくるくると泳ぎ、サンもそれを真似るようにくるり、くるりと回りながら泳いでいた。
 羽根のような豊かな髪と北極狐の尾が、地上にいる時とは違うやわらさでサンの泳ぎにあわせてゆったりと舞う。透き通った青に舞う白色はどこまでも幻想的で、海底に立つブラッドは暫し、白が揺蕩う青の幻想世界に酔う。
 サンがブラッドの傍に戻ったのは、それから少し経った後。白い砂粒をふわんと躍らせたサンは、ブラッドの隣で海中を彩る花々へ笑みを向け――少しだけ海の“向こう”を――海の“先”を見るような目をした。
「ねえブラッド。ペンギン達が選んだ花にも意味があるのかな」
「そうだな……少なくとも贈る相手の事を想って花を選ぶのではないか?」
 だったら。
「ねえ、あの時――お祝いの日に、どうして僕にあの花を?」
 サンの瞳は青に漂う花々を映し、ブラッドの瞳もまた、同じ光景を映していた。
 あの時。サンが口にした“お祝いの日”。
 ブラッドは白い薔薇を選び、一輪の赤い薔薇に想いを籠めた。
 あれはたった一人に向けた、ただひとつの感情だ。どうしてサンに選び、贈ったかなど――ブラッドは、当然覚えている。ただ。
「それは……」
「本当はね、僕、999本の黒薔薇をブラッドに贈りたかったの。意味は、」
 言い淀むブラッドに、サンはあの時の秘密を告げて。
 ふわり。
 背伸びしたサンを海が優しく持ち上げる。不意に触れたやらかな感触は、無邪気に笑ったかと思えば不思議な微笑を浮かべ、歌を紡ぎ、己の名を日々何度も口にする花唇。
「好きだよ、ブラッド。永遠に。僕が欲しいのはあなただけ」
 海の中でサンの瞳は蜜のように煌めいていた。
 ブラッドの花彩をした瞳を捉え、綺麗に、綺麗に微笑む。
 目の前の微笑が。白が。愛が。ブラッドの心を驚かせ、過去の痛みを優しく包んで遠ざける。あまりにも一途でひたむきな想いに、溺れて流されてしまいそうだ。
(「――いや、」)
 今日のサンの態度はいつもと違っていた。
 あの“お祝いの日”と同じ。まるで、己を試すかのような。
「サン」
 自然と名を口にした瞬間、蜜色の双眸がかすかに揺れた。
 嗚呼。まさか。
(「――不安、なのか?」)
 ブラッドはサンの手を取った。白い手は海中でもほのかにあたたかく、やわらかい。握り締めると、アクアマリン煌めく指輪が唯一の硬さを伝えてきた。
「サン、俺が贈った花言葉は『愛している』『お前しかいない』だ」
 いつだって己に向けられる瞳を見つめて言い切る。
 “俺は何処にも行かない”。
 言葉と共に、小さな泡が共に海中にとけていって。
「……ブラッド」
「ああ」
「ブラッド、ブラッド」
 泡の後に続いて煌めいたのは、蜜色からこぼれ落ちた雫たち。胸に身を寄せた白色を深い黒色が優しく包み込んで――空からの光が、やわらかに降り注ぐ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
そんなに素敵な海ならば存分に堪能しないと
ナンて言うまでもなく、色彩豊かな景色には目を奪われてしまうケド

腕輪を貰っていこうかしら
愛らしい花ペンギンや海底に花咲く光景を珍しげに、でも和やかに眺めながら
ネライダが居たら、良ければ一緒にどう?と声掛けて

ね、ハレ神サマ(コノハ的認識呼称)的にはどんな風に満喫してるのかしら
オレ、最近海の中の楽しみ方を覚えたトコロでさ
以外と賑やかで鮮やかナンだねぇ
アナタは他の海はよく知ってたりするの
なんて問いは相手のこれまでを知らぬ故の、単にそれっぽいからという興味からで
楽しい気持ちを壊したなら謝罪を

そうそ、難破船には行ってみた?
良ければココだけのお宝探し、付き合ってヨ


ニュイ・ミヴ
ネライダさん!
お宝さがし、しませんか?

大ジャンプ!
ふっふー、ニュイだって銀河を泳ぐのは得意だったのですよ
くらげかたこかの泳法に似て。花ペンギンさんや彼らのお花とすれ違いつつ海中をスイスイ。だったら向日葵は太陽?
漂うキラキラたちを取り込んで、吐き出して、うわさの難破船に着いたなら。船内へ続く重い扉もふたりなら開けられるかもしれません
漂う、錆びたり苔生した思い出の品々
おや
こんなところにもお花が……
と、船員の方の部屋らしき場所には作り物の方の向日葵の花飾りが
海にいて陸に焦がれる、陸にいて海に焦がれる
船乗りの方々の冒険に思い馳せられることがニュイにとって一番のお宝です!
ネライダさんは? どうでしょう?



 青い空。白い雲。どこまでも透き通るマール・フロルの海。眩い世界を前に堤防の上をネライダと行くニュイの心はうきうきワクワク、ボディはやる気でぽよよと弾んでいた。
「元気だな、ニュイ!」
「それはもう!」
 キュッと拳を作り思うのは堤防から見る海――花々舞う青い世界に眠る難破船の事。ちょっと体を伸ばして海を覗き込めば、ハイビスカスに似たピンクや白い花がふわふわ揺れていた。あの世界に飛び込んだらもっと沢山の花が踊っている筈。
「ということでネライダさん! お宝さがし、しませんか!」
 浪漫溢れるワードにネライダの目がぱっと輝いた。返事は勿論大きな声で「いいぞ!」――だったのだけれど。男は何かに気付いてニュイを見る。
「ニュイ、泳げるのか?」
「ふっふー」
 ニュイはぐぐ、と体を沈め――ぽぃーーんっ! と大ジャンプ。自分を見上げ驚いていた色違いの目がキラキラし始めたのを見ながら、ふわわっとボディを広げた。
「ニュイだって銀河を泳ぐのは得意だったのですよ」
 空中に浮いて、ヒュンッとイン・ザ・ブルー。全身を包む海の心地よさに少し伸びをして、広げていた端っこをほわん、ほわんと動かして泳ぐ。
「はは、ずっと前からこの海にいたみたいに見えるな」
「そうですか? では今のニュイはくらげかたこ……」
「クラゲ、タコ……クラゲだな……!」
「ニュイくらげ……!」
 真顔になってクラゲを推したネライダへ「噂になっちゃうでしょうか」なんて笑って、ふわふわ、スイスイ。好奇心旺盛な花ペンギン数羽もやって来て、傘に似たそこの下を泳がれると、生まれた流れで少し押されてくすぐったい。
 カラフルな花とすれ違って、花ペンギンとさよならをして。ふと向かう先から漂ってきた鮮やかな黄は太陽のよう。海に生きるくらげは空に輝く光には届かないけれど、ニュイくらげなら無問題。漂うキラキラも海に咲いた太陽もふわんと取り込んで――。
「どんな味だ?」
「ほんのり甘い香りの中に、ちょっぴり苦さのあるお味ですね」
 向日葵をぷるんと“外”へ出しての食レポに男がほほうと頷く頃。もう一人の大変な美食家猟兵・コノハも、のんびり優雅にマール・フロルの海を堪能していた。
 瞳に映る海の青、海藻の緑、珊瑚の赤や桃や黄に岩の灰、海の大地である白に花ペンギンたちが持ってきた“好き”の証――夏の花々。太陽の下に広がる青い世界が、光と命で以ってその豊かな色彩を魅せる。
 流れらしい流れのない穏やかなポイントで岩の上に腰を下ろし、あちこちからやわらかに届く花ペンギンの歌を聴きながら、目の前の景色を眺め続ける――訪れた時に目を奪った世界は今、コノハの好奇心をそっと刺激しながら和やかなひとときも提供していた。
「……ホント贅沢。腕輪様々ね」
 細く白い腕を彩る腕輪のお陰で、こうして普通に喋る事も出来る。
(「この腕輪があれば、海中バカンスだけじゃなくって、海の食材探しも捗りそ」)
 ふと浮かんだアイデアで目がキラッとした時。離れた所から、どぽん、どぽぽんっ、と水の音がして、キュウキュッキュキュー! と愛らしい大合唱。
 振り返って確認するより先に、コノハは笑っていた。
 沢山の向日葵と泡のカーテン、それに包まれ、泳ぎながら花を回収していく花ペンギンたちはきっと、向日葵をえーいっと海にやってから飛び込んだのだろう。聞こえる声は楽しそうで――その向こうに見えたものにコノハは「んん?」と目を細めてぱちぱち数回。
 宇宙なくらげに大男。さてはこの海特有の生命、なんてのは冗談で。
 岩を蹴ってすいすいっとニュイたちの元まで泳いで「ハァイ」とご挨拶。ほわわと広がっていた宇宙色の一部がぴらっと揺れる様は、大きなくらげとお近付きになった気分だ。
「ニュイちゃんナイスな泳ぎね?」
「ふふふ、宇宙で鍛えた泳法です」
 宇宙を泳ぐ。それもなかなか綺麗で楽しそうだ。『ハレ神サマ』はどうなのかしらと問えば、ひたすら泳いだり、噴水を作って花ペンギンたちと遊んだりとしっかり満喫している様子。
「花ペンギンの行列が出来てな」
「あらあら、ハレ神サマったら人気アトラクションね?」
 ふふんとドヤ顔の男と、それを妬けちゃうわと微笑んで褒める青年。
 ちなみに前者推定31歳、後者24歳である。
「コノハはどうなんだ?」
「はっ。気になりますね……!」
「オレ? オレは最近海の中の楽しみ方を覚えたトコロでさ。以外と賑やかで鮮やかナンだねぇ」
 耳を撫でる水流の音。水に触れた何か。それから、花ペンギンたち。音だけでなく色も賑やかで鮮やかで――。
「アナタは他の海はよく知ってたりするの」
「海はアースクライシスの時のハワイくらいだな。どちらかというと川の方が馴染み深い。家の近くを流れててな、あと、俺も流れた」
「なんて?」
 これまでを知らぬが故の質問から、けろっと語られる“かくかくしかじか”。ははぁそういう事がとニュイと揃って頷いて――そうそ、と楽しげに目を細めて周りを見る。
「難破船には行ってみた? 良ければココだけのお宝探し、付き合ってヨ」
「お、奇遇だな!」
「実はニュイたちも今から宝探しに行く予定です!」
「あらナイスタイミングだった? 日頃の行いがイイせいかしらネ」
 それはもう花丸ですよ、花丸って何だ、花丸っていうのはネと花丸談義に花を咲かせてスイスイ、ぴゅーん。噂の難破船は海藻や貝をびっしり纏って重厚感たっぷりかつ、逸品感を漂わせていた。
「ま、力合わせて“せーの”ってすれば楽勝デショ」
「だな!」
「では……!」

 せーの――ベキッ!

 閉じ込められていた全てがかすかな重みと共に溢れる。それとすれ違って中に入ると、あちこち苔生している船内に漂う様々な“思い出”が三人を歓迎した。外れたドアノブ、貝を模した何かのパーツ、それから。
「おや」
「どーしたの?」
「宝か?」
 とある部屋を探検していたニュイは、ドアのない入り口から顔を覗かせた二人に発見した物を見せた。恐らく船員の部屋だろうそこで見つけたのは、苔と貝に包まれて咲いていた花一輪。
「可愛い向日葵ね」
「はいっ。作り物ですけれど、でも……」
 船乗りとは海にいて陸に焦がれ、陸にいて海に焦がれるもの。この部屋の主も、海で過ごす日々の慰めにと陸に生まれて咲く花を手元に置いたのだろう。それを――彼ら船乗りの冒険に思い馳せられる事が自分にとって一番の“お宝”だとニュイはボディを弾ませた。
「ネライダさんは?」
「俺は今日の冒険全てだな。あと貝殻を見つけたぞ」
「キレーじゃない。ね、中身入ってる?」
「……ふむ、空っぽですね?」
 凄腕シェフの出番はお休みの予感。けれど宝探しエリアはまだまだたっぷり。
 隅々まで探検していくそのひとときが、新たな宝となって船に、海に。心に刻まれる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年09月09日


挿絵イラスト