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菓子甘味の書は銀器を呑んだ

#アリスラビリンス #猟書家

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#猟書家


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●カトラリーズの失踪
 アリスラビリンス、夢にして現の愉快な迷宮、とめどなき複合世界。
 幾多の世界にあって何より特異というべきはその住民たちであろう、歩かぬ筈のモノが浮かれ歩き、喋らぬ筈のモノが軽快に冗談を飛ばす、乱雑にして煩雑な世界。
 その片隅、とある『不思議の国』に騒動が巻き起こっていた。

「おっ、よぉ!」
「ん……なんだ、兄さんか。」
 子供の落書きのような黒線の手――更に付け加えるなら足も同様である――を振るのはこれといった装飾の無いテーブルフォーク、気怠げな様子で顔を、もとい刃をうつ向かせたまま振り向くのは似たような雰囲気のテーブルナイフ。
 そう、ここは銀食器の国、ティースプーンからサービスナイフまで様々なカトラリーが暮らす不思議の国。
「なんだとはなんだ冷たいなぁ……」
 つまるところ、これが彼らにとっての『日常』そのものであり。
「ついてこないでよ……ん?」
 コツコツと、上品な音を立てて、曲がり角の向こうから。
「……誰?」
 黒尽くめの『非日常』がやってくるとは。
「「はい、ワタシ達は。」」
「「はい、ワタクシ達は。」」
「「「猟書家(ビブリオマニア)で御座います。」」」
 到底、思いもしなかったのだ。

●輝きを見失う前に
「ナイフを一本、フォークを二本、あの類の物はなかなか高くつくそうだな……というわけでお集まり頂き感謝だ皆ッ!!」
 意味の有るような無いような言葉はともかく、集まった猟兵達に騒々しく謝辞を述べるのは四軒屋・綴(大騒動蒸煙活劇・f08164)、ヒーローマスクのグリモア猟兵である。
「今回の事件が起こっているのは『アリスラビリンス』ッ! なんだが……どうやら毛色の変わった事件らしい。」
 曰く、黒尽くめの紳士淑女が『猟書家(ビブリオマニア)』を名乗り、その手に持った本の中に、住人たちを引きずり込む。
「『猟書家(ビブリオマニア)』とはなんなのか、その『本』とはなんなのか……、色々と気になるわけだが、まずは差し迫った事態を解決する必要がある。」
 つまりだ、と若干の沈黙を挟み、そして叫ぶ。
「君たちに本の中で冒険してきてほしいッ!!!!」

●行間を疾走れ
「銀食器の住人たちを引きずり込んだ『本』だが、どうやらその中には『不思議の国』のように『本の中の世界』が存在しているらしい。」
 でたらめな、現実の無い、物語のような世界、その中に不思議の住人たちが囚われているのだという。
「つまり君たちには直接『本の中の世界』に突入してもらい、『囚われた住人たちを保護し』ながら『出口を探してほしい』、そしてその上で大事なことがいくつかある。」

 そう言いながらゴーグルから光を放ち、空中に画像を投影する。
「一つ、『太陽の矢印に従え』だ、この世界の頭上に上る太陽……というよりも太陽のような何かには『矢印』と『ページ数』が書かれている、まずこの『矢印』に従って進んでいってほしい。」
 太陽の『矢印』に従えば問題はない。
 しかし『矢印』に従わないものは……。
「……急速に生命力を奪われ、『本の世界の住人』になってしまう、こうなってしまえば猟兵と言えど助かるかどうかは分からない、あまり広範囲の探索は避けておいた方が良いだろうな。」
 もっとも逆に言えば、保護すべき住人たちは『範囲内にいる』ということであり、さほど捜索の必要もないだろうが、と補足しつつ説明を続ける。

「次に二つ目、『ページ数を増やせ』だが…矢印に従って進めば自然にページは進むが、その過程では何かしらの『障害』が発生することになる。」
 太陽の矢印に沿って進めば、ページが進み、ページが進めばやがていくつかの『場面に』差し掛かる、あたかも本を読み進めるかの如く。
「それほど不自由ではないにしろ進める方向は限られている、しかも囚われた住人たちを出口まで送り届けなければならない、つまり何か障害が発生すれば無視して進むことは出来ないということになる。」
 例えば、それは道を塞ぐ何かであったり。
 或いは、それは命を狙う誰かであったり。

「そして三つ目、厄介なのはこの『本の世界』でも『オウガ』達が存在し、しかも『本の世界の法則』を理解しているということだ。」
 オブリビオンとしての能力を遺憾なく発揮し、出口を塞ぐ為に立ちはだかり、『矢印ではない方向』に押し出そうとする。
「もちろん『範囲外』にまで押し出されてしまえば先に述べた通り猟兵であっても本に取り込まれてしまう、その上オウガ達自身はその制約を受けることはない……普段とは勝手の違う戦闘になる、充分に注意してくれ……と、こんなところだな。」
 幾分か普段より硬い口調で念を押し、さて、と一呼吸。

「いくつかの制限がかかるが……皆なら決して不可能ではないはずだッ! 囚われの住人達を連れて高らかに凱旋してきてくれッ!! 武運を祈るッ!!!」


湿気
 湿気です! 湿気がスゴい季節ですね!!!!
 まずはここまで目を通して頂きありがとうございます!
 今回の舞台はアリスラビリンス! の中の『本の中の世界』です! マトリョーシカ構造!

 全章に渡って特殊なルールが適用されるシナリオになりますので、長くはありますがまずはルールの把握を兼ねてオープニングを一通り読んで頂ければ幸いです。
 また、オープニング公開後に序章を投稿いたします、『本の中の世界』の雰囲気等を描写いたしますので参考程度にお読み頂ければ、と思っております。

 それでは! よろしくお願いいたします!!
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第1章 冒険 『お菓子の家が多すぎる』

POW   :    自分が代わりにお菓子の家を食べ尽くす。

SPD   :    お菓子を食べようとするアリス達を、素早く邪魔する。

WIZ   :    アリス達を説得して、お菓子を食べるのを止めさせる。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●『ビーター伯と砂糖菓子にまつわるいくつかの探求劇』序文
「……ねぇ、兄さん。」
「なんだ?」
 フォークとナイフの兄弟が立ち止まる。
 猟書家(ビブリオマニア)を名乗る黒尽くめ達の本の中に吸い込まれ、いつの間にか異質な景色に囲まれていた。
 見た目には特段違和感がない、葉擦れの音に満ちた森と、その中に伸びる踏み固められた道。
 しかしそれらは不思議なほどに「現実味」がない、一面の緑も踏みしめる茶色も、丁寧に描かれた絵画か何かに思えてしまう。
「ここ、どこなんだろうね。」
「……さぁな。」
 呟いたフォークが空を見上げ、精巧な贋作のような風景の中ではっきり偽物だと断言できる『太陽』を見上げる。
 位置は前方の空、見かけの大きさはボウリング球ほど。
 見つめても眩しくない程度に輝くそれには『↓ P. 5』と黒の文字が書かれている。
「……じゃあさ。」
 ナイフが片手をあげ、前方を指指す。
「あれは、なに?」
 木々が途切れ、急に広がった視界を埋め尽くすのはパステルカラーと少しの黒。
「ありゃあ……『お菓子の家』ってヤツだろ。」
 クッキーの柱、ケーキの壁、チョコレートの屋根。
 大きな広場だったと思われる空間は、甘い香りの建築物でひしめき合っている。
「いや、そっちじゃなくてさ。」
 そして、その合間を行き来する黒い影。
 縦にも横にも2メートルほど、丸く膨れながらもかろうじて人型と形容できる何かがお菓子の家の合間に座り込み、壁や柱をつかみ取っては口へと運ぶ。
「いや、アレは流石に分からねぇ……なんなんだありゃ?」
「襲ってきたりはしないようだけど……これじゃ先に進めない。」
 時折森の方から現れる影は、緩慢に歩を進め、お菓子の家を目指すこと以外の行動を起こす様子はない。
「……どうする?」
「いや、どうしようもねぇだろ……、せめて奴らが道を開けてくれりゃあいいんだが……」
 目の前の奇妙な風景を前に、兄弟は途方に暮れるのであった。
 空に浮かぶ太陽、そこに刻まれた『ページ数』が、『P. 6』へ変わったことにも気が付かないまま。
荒谷・つかさ
なるほど。大体わかったわ。
つまり、アレを蹴散らしてお菓子の家を食べつくせばいいのね?

おもむろにでかい丸いヤツらに近づき【螺旋鬼神拳】発動
「怪力」のフルに乗った拳を遠慮なく叩き込む
それでこちらをタゲるようなら近い奴から順番に迎撃
無視して喰い続けるようなら近い奴から順番に駆逐
……能動的か受動的かの違いだけでやる事は大して変わってないのは気にしないで

粗方片付いたら、今度はお菓子の家の解体(食)に入る
個人的にはお菓子の家より焼肉ハウスの方が好きなんだけど(どんな家だ)
食器兄弟も食べる必要があれば、その分は譲るわよ

でも……私一人で食べ尽くしてしまっても構わないのでしょう?(謎のフラグ)


寧宮・澪
アドリブ、連携歓迎

お菓子の家……美味しそうですが、食べてる暇ないですよね……

銀食器の方には、敵じゃないですよー……ここから出るお手伝いに来ました、と名乗っておきますね

あの食べ方は体に良くないですし……一度止まっていただきましょー……
まずは、説得を……逆方向に投げ飛ばされたりしないよう、距離を取って……
そのままじゃ、お腹も体も痛いですよー……
美味しいお菓子も、美味しくなくなっちゃいますよー……?
食べるのやめませんー……?

聞いてもらえなければ、眠れる香りの蜜を零し……揺り籠の謳、謳いましょー……
おやすみなさい、良い夢をー……

さて……運んでいけばいいんでしょか
銀食器の方、手伝ってくれますかね……?



●朱鬼の拳、夜天の謳
 進むに進めず、されど他に道はない。
 立ち止まることを余儀なくされていた兄弟の耳に、二人分の声が届く。

「お菓子の家……美味しそうですが、食べてる暇ないですよね……」
 一つは澄んだ声、例えば硝子の響くような、儚げな声。
「なるほど。大体わかったわ。」 
 一つは葉擦れの中でもよく通る声、何処か実直さを感じさせるまっすぐな声。
 思わず振り向いた兄弟の目に、声の主の姿が映る。
「え、あ、あんたたちは。」
「敵じゃないですよー……」
 戸惑うフォークにひらりひらりと手を振って見せるのは夜空のような翼を背負ったオラトリオ、寧宮・澪(澪標・f04690)。
「えぇ、助けに来たわ。」
 紅白の装束に身を包み、聳える大樹のように堂々とふるまうのは朱角の羅刹、荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)。
 未だ混乱の最中にあるフォークにナイフが耳打ちする。
「兄さん、この人たちってもしかして。」
「あぁ……いや、なんとなく分かる、この人たちならそりゃあ、何とかしてくれるんだろうけど。」
 驚きはしても本能的な部分で信頼を感じる、自分達とは違い、そしてオウガでもない存在、それは救いの手であり、戦う人々なのだと。
「いやでも、何とかするったってアレが何なのかも分から……って早ぇえな?!」
 故に協力を申し出よう、そう考え振り向いた時には既に二人の猟兵は左右に分かれ、手近な『影』へと歩みを進めていた。
「えぇ~~~っと! ナイフ! お前はあっちだ!」
「え、いや……しょうがないか。」
 むしろついていく方が邪魔に、と言う前につかさの後を追って駆け出してしまった兄に習い、ナイフは澪を追いかけた。

「ついてこなくても、良かったんですよー……?」
「……まぁ、何かあるかもしれないし。」
 追いついて来たナイフと合流した澪が軽く会話を交わしながら影の元へとたどり着く。
 ナイフを少し手前に残し、さらに歩み寄る、相手の手が届かないギリギリ、3メートルと少しの位置。
「そのままじゃ、お腹も体も痛いですよー……」
 声をかけるが、影の手は止まらない。
「美味しいお菓子も、美味しくなくなっちゃいますよー……?」
 お菓子の壁に手を伸ばす手が止まる、臆さず声をかけ続けた成果か、影がゆっくりと振り返る。
「食べるのやめませんー……?」
 逡巡だろうか、影はしばらくの間澪の方を向いていたが、問いかけに答えることなく食事を再開する。
 虚ろな存在故か、『物語の登場人物』故か、少なくとも『食べる』以外の選択肢を影は取ろうとしない。
「そうですかー……」
 聞いてもらえなければと、澪が取り出したのは丸硝子の瓶。
「眠れる香りの蜜を零し……」
 コルクの栓を抜き、傾ければ、瑠璃から紺へと表情を変える液体がとろりとその場へ雫を落とす。
「揺り籠の謳、謳いましょー……」
 地面に垂らした『夜糖蜜』から、群青の霞が立ち昇る。
「とろりきらきら、夜色の蜜 歌う鳥の、祈りをまぜて。」
 透き通った、ゆったりとした、澪の歌声に導かれるように、霞は影を取り囲む。
「ゆらゆら、眠れ。安らかに。」
 たとえるならば波の音。
 落ち着いたリズムと、時折混ざる『揺らぎ』。
 蜜の香りと子守歌に包まれた影は緩慢な動きを更に遅くし、いつしかだらりと腕が下がる。
「おやすみなさい、良い夢をー……」
 澪のユーベルコード、『揺り籠の謳』により安寧の眠りについた影が、その場に崩れ落ちる。
「さて……運んでいけばいいんでしょか。」
 手伝ってくれますかね……?とナイフに声をかけようと振り向く寸前、影の姿が薄れ、さらさらと消えていく。
「……消えた?」
「そのようですねー……」
 意識を、役割をなくせば存在が薄れる、『物語の脇役』、影のアリスならぬアリスの影とはそのようなものかと納得し、澪とナイフは合流の為、再び歩き出すのだった。

「ちょっとあんた、あー……」
「荒谷つかさよ、つかさでいいわ。」
 少し、時は遡り。
「つかささんはなんかこう……考えとかあるのか?」
「そうね。」
 追いついて来たフォークに名を問われ、返しながらもつかさは歩みを止めない。
「つまり、アレを蹴散らしてお菓子の家を食べつくせばいいのね?」
 それなりの声量で話しているにも関わらず、その手を休めることなくお菓子の家を食べ進める『影』の近くで立ち止まり、そのまま拳を構える。
「いやまぁ、それはそうだけど……」
 あまりに単純明快な理論、しかし逆に言えば確実に解決へいたる道ではある。
「アレの反応が能動的か受動的か、どちらにせよやることは大して変わらないわ……下がっていて。」
 危険だからと注意を促し、羅刹の怪力が籠った拳を放つ。
「うわっ!??」
 フォークが思わず身を竦める、鈍い音が響き、影は体勢を崩して倒れ伏す……が、起き上がった先でまたお菓子の家に手を伸ばす。
「や、やっぱり無理だったんじゃ……」
「そうね。」
 表情は変えず、しかしやや不満げにつかさが答える。
「本気で行くわ。」
 纏う雰囲気が、変わる。
 歩み寄り、両足の間隔を前後に広げ、腰を落とし、腰の高さで腕を引く。
 戦闘中ではない為か、本来必要ではないゆっくりとした動きを取ったつかさが纏う『気』に押され、フォークが思わず後ずさる。
「抉り込むように……」
 手の甲が下に向くように、握りは親指で抑えるように、回転を意識するように。
 師の教えと、積んだ鍛錬と、得た経験。
「……そこよ!」
 全てを込めて、裂帛の気合と共に放たれた正拳突き、『螺旋鬼神拳(スパイラル・オウガナックル)』が文字通りに影を『殴り』『飛ばす』。
「……とんでもねぇな……」
 規格外の一撃に呆けたままのフォークを気にも留めず、つかさがお菓子の家へと歩み寄る。
「さて、次は……」
「次は……?」
 一体何をどうするつもりなのか、固唾を飲むフォークへつかさが告げる。
「解体よ。」
「か、解体?」
「具体的に言えば食べるわ。」
「軒単位で!?」
 驚くフォークを意に介さずお菓子の家の壁に貫手を突き入れ抉り取り。
「個人的にはお菓子の家より焼肉ハウスの方が好きなんだけど。」
「どんな家だよ!?」
 斬り込み担当から焼肉担当へと完全に切り替わってしまったつかさは抉り取った分を早くも食べ終え、更に壁を抉り取る。
「そういえば、あなた達も食べておいた方が良いのかしら?」
「え、あー……まぁ、ナイフのヤツと合流したら食べるかな……」
 困惑しながらも、涼しい顔でおおよそ合流できそうな方向へと食べ進めるつかさの後をついていくフォークであった。
「でも……私一人で食べ尽くしてしまっても構わないのでしょう?」
「いや全部食べる気!?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城田・紗希
なるほど、お菓子の家を食べきれば良いんだね?
ナイフ…はないけど、サバイバルナイフで切り分ければいっか。
という訳で、いただきまーす。(手を合わせてからお菓子の家に襲撃)

食事の邪魔をするなら、本の登場人物でもオウガでもアレするよ、えっと…。
……粉微塵?木っ端微塵?(どっちにしろ、怒りに任せて粉砕する…とジェスチャーで威嚇)



・花の乙女は城を裂く
「いただきまーす。」
 両の掌を合わせる、いわゆる合掌と呼ばれる動作がある。
 仏門の所作に端を発しアジア圏では普遍的にみられる行為であり、祈りから転じて経緯や感謝を表すもの。
 食前にしばしば忘れられがちなこの行為をこの特異な環境においても行う様子が感じさせるのは、確りと受けた教育、また育ちの良さというべきもの。
「ナイフ……はないけど、サバイバルナイフで切り分ければいっか。」
 ――或いは、そこはかとない『ズレている』感。
 この状況下で飽くまでもテーブルマナーに殉じるのか、普段持ち歩かないとはいえそのマナーに供するのは武骨で頑丈なサバイバルナイフでいいのか。
 そもそもフォークがない以上破綻してはいないか。
「というわけで。」
 全てを置き去りに、少女は眼前、糖と油の城砦に文字通りの『襲撃』を仕掛ける。
 飾り紐をあしらった、深く青みの掛かった髪。
 形容の難しい、強いて言えば赤の瞳。
 彼女の名は城田・紗希(人間の探索者・f01927)。
『たぶん鎌倉生まれ』の『たぶん修行者』である。

「なるほどなるほど。」
 暫し後、具体的には疾風の速度で菓子の壁に接近し肉厚の刃を持つサバイバルナイフで器用にスポンジを崩さぬよう切り取り暫し味わった後。
 今までにも機会があればそのたびに最優先させてきた舌を以ってその味を確かめ、そして評価を下す。
「あんまり美味しくない。」
 お気に召さなかったようである。
「なんだろ、スポンジとクリームの味がするけどケーキの味じゃない……」
 それこそ現実味がないというか、等と漏らしつつ思考の片手間に振るうサバイバルナイフで壁を賽の目状に切り開き、口に運ぶ。
 その感想は正しい物であろう、此処は『本の中の世界』、『不思議』を超えて内包された、表現されるだけの世界。
 どの程度甘く、どの程度の酸味があり、どのような食感かは『設定』されていようと、そこに『実感』は生まれない。
「こんなにあるのに……」
 襲撃開始から五分と経たずに二軒と半分を食べ尽くし、尚も尽きぬお菓子の家。
 花の女子高生にとって夢のような光景のはずが、如何せん楽しめない。
「こんなにあるのに……おいしくないのは……」
 呟く横で奔るナイフの軌跡加速するのは溜まるフラストレーション故か。
「……きさまのせいかー!」
 身の丈ほどもある魔法の杖『ウィザードロッド』を唐突に取り出しズビシと突きつけるのは三軒目を食べ尽くした先に居た黒の巨体。
 叫びに反応した巨体が緩慢に振り向くその前に、杖の柄頭が叩き込まれる。
 理不尽としか言いようのない加撃、それを知ってか知らずか巨体は立ち上がる――その前にさらなる打撃が加えられる。
 ユーベルコード『食べ物の逆恨み(ワタシノオヤツヲカエセ)』、怒りと八つ当たりの感情をトリガーに引き起こされる戦闘能力の増大。
 この場において発動されたそれは一撃ごとに加速し、比例して重さを増す連撃として具現する。
「私のなー! おやつをなー!!」
 発言こそ八つ当たりそのものではあるが、攻撃動作を次の攻撃の『溜め』に変換する杖術の技法は猟兵としての戦闘経験を感じさせるに相応しい。
「ん? おっと。」
 打突の回数は十と幾つかを超えて、下から突き上げるように鳩尾と思わしき個所に攻撃を加えたと同時、手ごたえが消える。
 警戒し一歩飛びのいた紗希の前で、蓄積した負荷が限界を超えたのか、黒の巨体が粒子状にほどけて消える。
「……粉微塵?木っ端微塵?」
 粒子が完全に消滅した後、残心を解き杖を収めつつ呟く。
「まぁ、どっちにしろ……」
 そして振り向く先には未だ尽きぬお菓子の家。
 一度収めたサバイバルナイフを再び抜いて、両手を合わせる。
「いただきまーす。」
 再び『おやつの時間』に戻った紗希が『お菓子の家の場面』の『終わり』に辿り着くのは、もう少しだけ先の話である。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ぷんすかさま』

POW   :    燻り狂う
【怒りの感情を他人に向ける】事で【刃物の様に鋭い水晶に覆われた怪物】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    刻み刈りヴォーパル
【無数の光り輝く剣から斬撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    怒めきずる
【アリスが生きている事への怒り】【アリスが守られている事への怒り】【アリスがまだ自分の餌になってない怒り】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


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※トミーウォーカーからのお知らせ
 ここからはトミーウォーカーの「猫目みなも」が代筆します。完成までハイペースで執筆しますので、どうぞご参加をお願いします!
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 お菓子の家々を越えて更に進む猟兵の頭上に浮かぶ太陽に、やがて奇妙な文字がさらさらと増えた。
『戦闘番地』、とページ数の上にやや大きく書かれたそれが何を意味するのかは、たとえ知らずともなんとなく分かる。現に視線を地上に戻せば、真っ赤な瞳をぎらつかせた少女のオウガ軍団が浮遊する無数の剣をぶんぶん唸らせながらこちらを睨み付けている。
「殺す……殺す……殺す殺す殺す!」
 彼女たちの怒りの理由はわからない。或いは自分たちの体のいい楽園であった住処を食われたからか、捕らえておいた銀食器たちをうまいこと回収されてしまったからか、それとも。
 ともあれこのオウガたちにまともな言葉は通じないとみていいだろう。であるならば、倒して先へ進むまでだ。
シアン・ナアン(サポート)

『まずは自分を壊しちゃお!世界もどーせ壊れてるから!』
『自由こそ真の秩序……』
『シアン難しい話わかんなーい☆』

◆口調
コロコロ変わり、ぐちゃぐちゃである

◆行動
戦闘、遊び、調査等何をするにも分身を使って活動する
分身も意識があり区別がつかない
死に対して一家言ある
行動指針に一貫性がなく都度変わる

爆発物好き、派手好き

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、怪我や死ぬことも厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為は多分しません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動は恐らくしません。
 つまりはだいたいおまかせ。よろしくおねがいします!!



「殺す……殺す……アリス、殺す! 邪魔する猟兵も! 斬って刻んでひと口大のサイコロにして、ぜぇんぶ殺して食ってやる!!」
「え、殺しに来てる? そーなの? うわ、マジでぷんすかさまじゃーん☆」
 ピンクの瞳を見開いて、シアン・ナアン(自己壊乱・f02464)は大げさに口元を押さえてみせる。だがその瞳の奥に潜むのは、オウガたちのあまりにも雑な『殺す』宣言への冷徹な否定だ。
「確かに世界とか最初からぶっ壊れてるなーって私思うし? バラバラにしちゃえーって気持ちはオレわかんないでもなくなくなくなくなくないし? あとウチは今が楽しければそれでいいって本気で思ってるけど?」
 一貫性のない一人称が吐き出されるたびに、ぽこぽこと彼女の分身たちが或いは地面から生え、或いは空中から滲み出て、幾重にも特徴的な笑い声を重ねていく。うるさいうるさい、と叫んだオウガたちの声が、グラデーションのように咆哮へと変わった。少女を象る細い肉体が見る間に水晶の刃に覆われた怪物の巨体へと変じていくさまを、『シアンたち』はしばし面白そうに眺めて。
「すげーなアレ! なあ私!」
「アレをヤればいいのか! そうだね私!」
「じゃあまずは私から行くわ! 頼んだぜ私☆」
 最後のひとりの言葉に別の分身が頷くやいなや、その身体を三人がかりで持ち上げて力一杯ぶん投げる。水晶の怪物に全身で突っ込んだ分身は、そのまままるでハイタッチでもしたかのような軽い音と共に爆ぜ散った。結晶の破片が砕けて飛び散るいっそ幻想的な煌きの中で、怒れる怪物は更に大きくあぎとを開いて吼え猛り――その口の中に飛び込んだ別のシアンが、爆発のお代わりをしこたま見舞っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

紅月・因果(サポート)
 時計ウサギの闇医者×クロムキャバリア、21歳の女です。
口調 女性的(私、あなた、~さん、や、やろ、やろか?)
機嫌が悪いと 口が悪い(私、てめぇ、や、やろ、やろか?)
衛生兵です
 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



「バラバラにしてやると言うだけのことはありますね……!」
 少女のかたちを取ったオウガの放つ斬撃をひらりひらりとかわしながら、紅月・因果(高機動メディック・f30571)は思わず感嘆交じりの息をつく。医療者としての彼女の経験が告げている。オウガたちは、確かにこちらを解体するつもりで攻撃を仕掛けてきているのだ。
 幸い彼女はキャバリア乗りであり、敵の刃が直接骨肉まで届くことはまだない。だがいくら守りの厚い衛生兵用キャバリアとて、オウガの力で幾度も関節部を攻められれば、いつまでも安全とは言い難い。
(「……いかんせん、数が問題ですね」)
 あちらを避ければこちらから。ページを越えて体勢を立て直せば、また別のページからも軍勢が現れる。周囲に救援すべき誰かの気配はない。ならば、今因果がひとりですべきことは。
「何をする気だ!」
 不意にキャバリアを降り、生身で進み出てきた因果に対し、オウガの一体が怒声を上げる。まあまあ、と戦場に似つかわしくない笑みを浮かべて、彼女は手にしたティーカップにとぽとぽと紅茶を注いでみせた。
「いえ、ここは一度お茶でもいかがかと」
「ふざけ――るな――?」
 怒り爆発といった体で振り上げられた剣の軌跡が、急激に勢いを失っていく。オウガ軍団に動揺が走るのを確かめるように視線を巡らせ、因果は自分で入れた紅茶をひと口啜る。
「ですから、お茶ですよ。紅茶の時間です」
 それは、時計ウサギの十八番たるユーベルコード。紅茶を楽しむ心など微塵も持ち合わせていないであろうオウガたちに、その影響は絶大だ。平素の二割まで行動速度を落とされ、やたらに緩慢な地団太を踏む少女の群れに、そうして因果はすいと得物を向けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

桜井・乃愛(サポート)
 桜の精のパーラーメイド×咎人殺しの女です。
 普段の口調は「元気(私、~さん、だ、だね、だろう、だよね?)」、偉い人には「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

性格は明るく天真爛漫で、少し天然ボケな感じの少女。
一番好きな花は桜で、その他の植物も好き。
強敵にも怖気づく事は少なく、果敢に挑む。
人と話す事も好きなので、アドリブ歓迎。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



「うーん……何だかこのあたりの樹も草も、やっぱり変な感じ」
 風が吹けばさやさや鳴る葉も、たくましく伸びる梢も咲きそめた可憐な花も、どれも現実さながらのかたち。けれどそこにある奇妙な作り物感に、桜井・乃愛(桜花剣舞・f23024)はやはりここは本の中なのだと今一度実感する。
 が、次の瞬間彼女の口元が僅かにむっと歪められた。剣を振り回して突っ込んでくるオウガの踵が容赦なく花壇の花々を踏み潰す様に、乃愛はぐっと軽機関銃を持ち上げた。
「お前も邪魔だ! 殺す!!」
「邪魔とか殺すとか、簡単にひとに言っちゃダメなんだよ!」
 放たれた斬撃を桜織衣の魔力で受け流し、微塵も引かずに言い返して、乃愛も負けじとトリガーを引く。なるべく木々を傷つけないよう、オウガだけを狙って放たれた弾丸の雨は、かすめるようにオウガの腕に痕を刻んだ。
(「反射神経はそこそこ、動きは速い……でも、怒ってばっかりだからかな。避けたり守ったりよりは、むしろ多少ケガしてもちょっとでもたくさん暴れようとしてるみたい」)
 無差別に弾を撒けば恐らく容易に当てられるし、殲滅も狙いに行ける。けれどあのオウガたちのように、作り物とは言え罪のない植物を痛い目に遭わせるようなことはできればしたくない。うまく植え込みや木立を避け、かつ多くの敵を密集させられるよう立ち回って、そうして乃愛はようやく『その瞬間』を捕まえる。
「ふふふ、かかったね!」
 敢えて大音声と共に胸を張れば、一斉にオウガの火のような瞳がこちらを向く。何をと叫んで地を蹴るオウガたちに、乃愛は軽機関銃『ブルーミング・ファイア』を向けて。
「……さあ、逃がさないんだから!」
 そうして放たれた蹂躙の弾丸が、あやまたずオウガたちの生命を撃ち抜いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

氷川・権兵衛(サポート)
名は氷川権兵衛。見た目通り人狼だ。職業はUDC組織に属する生物学者だ。主にUDC生物の解剖と解析を担当している。医術の心得もある為、事件現場で被害者の治療を任されることもある。調教した狼達による野外での諜報活動や集団戦闘も行える。必要に応じて私を賢く使いたまえ。

戦闘面での実力を知りたいのか?基本的にタンクとして動く。自慢に聞こえるかもしれないが、私は素早い。攻撃される味方の前へ躍り出て、ショットガンで敵を吹き飛ばす。牽制に毒を含ませたメスを投擲したりもする。捕縛用の鎖を武器にすることもある。そして、ドーピング薬を腕に刺せば、狂戦士に早変わりだ。燃える左腕を振り回し、敵に恐怖を植え付けてやろう。



 既に残る少女型オウガの姿は少ない。さりとて放置していい相手でもない。恐らくは本の『クライマックス』に待ち受けているであろう最大の障害と相対するより前に、彼女の存在は余さず除いておくべきだ。
 冷静に、氷川・権兵衛(生物学者・f20923)はそう現状を分析する。残りのページ数はおそらくあって全体の二、三割。物理的な意味での後戻りが効かない以上、本の世界を自在に移動し、攻めてくるオウガのことは、可能な限り今倒し切っておきたい。構えたショットガンが即座に火を噴き、オウガの首をひとつ飛ばした。
「狼……! 殺す! 殺す!!」
「お前も殺して食う!!」
「……ふむ」
 輝く剣を閃かせ、一直線に自身の方へ駆けてくるオウガたちから間合いを取り直すでもなく、権兵衛はまるで解剖するような目つきで眺める。
「殺して食う、か。人食いのオウガらしい行動原理だ。銀食器たちを閉じ込めたのも『食事』の道具に使う為か?」
「やかましい狼! その口を閉じて縫って焼き潰して、それで殺す!!」
「……まあ、論理的な返答は期待していなかったが」
 予想通りの怒声が返ってきたことに肩をすくめ、権兵衛は再び敵に銃を向けた。そこに装填されているのは、対UDC戦を想定された麻酔弾。反動に耐えられるようしっかりと姿勢を定め、射抜くような目を少女に向けて、彼は低く言葉を放つ。
「だが、それでも敢えて問おう。お前は何者だ?」
 声に、射撃音が重なった。そしてそれをトリガーに、影の怪物がぬっとオウガの背後に立ち上がる。四肢を絡め取られ、身動きもままならないオウガたちにゆっくりと歩み寄り、権兵衛は懐から一本のメスを取り出して。
「お前達のことは排除する。だがその前に、もう少しお前達のことを知ってもいいだろう?」

成功 🔵​🔵​🔴​

ロイド・テスタメント
心情:
遠慮は無用の様ですね。
ならば、私の殺戮衝動を思う存分に解放させていただきます。

戦闘:
「良い狂い様だ。嫌いではない、寧ろ楽しめそうだ」
攻撃は【第六感】【残像】で回避もしくは、【武器受け】で受け流しましょう
「執着、アナタ達はアリスで俺は、暗殺者としての殺し……似たようなモノ、か」
UC発動、【罠使い】で【Blau Kreuz】の鋼糸で足止めして、確実に仕留める。
「覚悟は良いか? 全てを、無へ……」
【暗殺】技術を駆使して【目立たない】様に近付き、【Τισιφόνη】で弱った個体を確実に仕留める。
「さて、あとは……猟書家のみ、か。もっと楽しめそうだ。いや、そうでなくてはつまらないから、な」



 どうやら遠慮は無用の相手のようだ。目の前のオウガたちを見て、ロイド・テスタメント(全てを無に帰す暗殺者・f01586)はそう結論付ける。
「お前も! お前も! お前も殺す殺す殺す――!」
「良い狂い様だ。嫌いではない、寧ろ楽しめそうだ」
 向かってきたオウガの一撃を、ロイドは手にしたナイフで軽く受け流す。――成程、衝動に満ちた重い剣だ。
「アナタ達はアリスで俺は暗殺者としての殺し……似たようなモノ、か」
 共に執着を抱えたものとして、このオウガたちの在りように思う所がないわけではない。けれどむしろ諦観に似た感情を口元に滲ませて、ロイドは軽く指先を曲げた。
「!」
 がさり、と大きな音。茂みが割れ、増援が現れた――のではない。いつの間にかロイドが戦場に張り巡らせていた鋼糸の罠が、オウガの足元を刈り取ったのだ。思わぬ位置から足を掬われ、互いに体勢を崩してぶつかり合うオウガたちを、すかさずロイドは鋼糸でまとめて縛り上げる。
「覚悟は良いか?」
「死ね、猟兵! お前が、お前たちが『アリス』を、住人どもを、みんなみんなアタシたちから取り上げたんだな! 猟兵め!」
「……」
 喚くオウガの甲高い声がなくとも、きっと足音は響かなかった。それはロイドの肉体に刻み込まれた技術であり、生き様だった。拘束した敵に歩み寄り、とどめを刺すべく振り上げたナイフの腹に、醜く歪んだ少女の顔が映り込む。
「……全てを、無へ」
 ――そうして、森をしばしの静寂が覆った。
「さて、あとは……猟書家のみ、か。もっと楽しめそうだ。いや、そうでなくてはつまらないから、な」
 独りごちる声をさらうように、風が吹き抜ける。頭上の太陽は、既に二桁のページ数を印していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『悪魔王アマイモン』

POW   :    チョコラテ・ウォール
【万物をチョコ化するチョコレートの津波】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    チョコレート・ウォー
【チョコレートで出来た悪魔の軍勢】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    チョコラテ・イングレス
非戦闘行為に没頭している間、自身の【主催する鬼ごっこの不参加者と捕まった者】が【チョコレート化する魔王の権能を発動】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠シスカ・ブラックウィドーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

城田・紗希
貴様が犯人かー!
なんでお菓子の家を作ったのに、美味しくしないの!(1章を根に持ってる)
美味しくないケーキなんて、カレーのないライスだよ!お米のないオムレツだよ!!(オムライスと言いたい様子)

全ての怒り(ついでに2回攻撃とか鎧破壊とか)を込めて、斬撃をお見舞いするよ!
津波を産もうと、まとめて切り裂くよ!!
私の!ケーキを!返せー!!



「ふっふっふっふ……この甘美なる菓子甘味の書の世界へよく来たのう、猟兵ども!」
 空間が揺らぎ、甘い香りが立ち上ったかと思えば、猟兵の目の前にはチョコレート色の愛らしい少女が立っていた。
「わらわこそはチョコレートを統べる悪魔王アマイモン! ここまで辿り着いたその強さに敬意を表し、わらわ自ら美味しく料理してやるのじゃ!」
「……美味しく……料理……?」
 少女の声に、城田・紗希(人間の探索者・f01927)はわなわなと肩を震わせる。めき、と彼女の手の中でナイフの柄が悲鳴を上げるのが聞こえた。
「……貴様が犯人かー!」
 怒りと共にダッシュで迫り、刃を振り上げ、全力で振り下ろす。何度も。あまりにいきなりすぎる怒涛の攻撃に、悪魔少女はなんじゃなんじゃと跳び退る。
「いかにも! この書の中を支配する王とは即ちわらわ――」
「そうじゃ! ない! なんでお菓子の家を作ったのに、美味しくしないの!!」
「ふぇ!?」
 ざっぱざっぱと繰り出される攻撃の合間にそんなことを言われれば、これには悪魔も目を丸くした――が。
 一瞬の間を置き、アマイモンと名乗った少女は胸を反らして笑いだす。
「ふふふふ……はははははは、そんなこと! そうかそうか、お主らにはまだこの美味しさが分からぬよなあ!」
 簡単なことよ、と彼女は目を細め、そして続ける。
「それはのう、お主らがまだ『書の世界の者』でないからじゃ。ゆえにこの世界のものを食ろうても、心の底から美味いとは感じられぬのじゃ。わらわは優しいゆえ、お主もこの世界に取り込んで、永遠に美味しくお菓子を食えるようにしてやろう! こんな風にして――な!」
「うわー!」
 アマイモンが小さな片手を振り上げた瞬間、全てを飲み込むチョコレートの津波がどこからともなく立ち上り、前のページまで紗希を押し流し、本の中へ取り込んでやろうと襲い掛かって来る。咄嗟に服の下から取り出した刃物を振るえるだけ振るってその奔流を切り裂き、紗希は叫ぶ。
「そういうことじゃなーい! 大体美味しくないケーキなんて、カレーのないライスだよ! お米のないオムレツだよ!!」
「お主オムレツとオムライスのことごっちゃにしてない!?」
「問答無用ー!」
 そうして新たな怒りの斬撃が、悪魔王にえいやっと見舞われるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リク・ネヴァーランド(サポート)
「大丈夫、“僕たち”が来た!」
うさぎ人の住む不思議の国、ラパンドール王国の元王子様です。
魔法の本の中に王宮を封じ込めることにより、王国と国民を携帯している状態にあります。
本の中から国民や過去助けた愉快な仲間達を召喚したり、剣を用いたりして戦います。

利発そうな少年といった口調で話し(僕、~さん、だね、だよ、~かい?)、年上の人や偉い人には敬語を使います。戦闘中は凛々しく台詞を言い放つことも多いです。

ユーベルコードは設定したものを何でも使いますが、命よりも大切な魔法の本に危害が加えられる可能性がある場合は本を用いず、自分自身の力で何とかしようとします(他の猟兵と連携が取れそうなら取りに行きます)。



「住民をいきなり攫って、無理矢理本の中に取り込むなんて……」
 書籍卿のやり口とそれを当たり前のように振りかざす眼前のオウガに、リク・ネヴァーランド(悠久ノ物語・f19483)は苦々しげに顔をしかめる。その胸元に抱えた本の中に己の王国と国民を保護する王子様であるからこそ、リクにとって敵の所業は一層許し難いものに思えた。
「何をしけた顔をしておるのじゃ? お菓子だけでは不満と申すなら、鬼ごっこの時間もあるぞ!」
「遊びみたいに言わないでよ……!」
 目の前の少女は、いくら愛らしい姿をしていようとも人食いのオウガだ。そのオウガがこうも面白そうに言ってみせる鬼ごっこなど、ろくなものであるはずもない。鋭く敵を睨み付け、少年は己の血筋に伝わる聖剣を引き抜いた。
「覚悟してもらうからね! 行くよ!」
「なんじゃつまらぬのう。ならば、お主もわらわの美味しいチョコになるが良い!」
 頬を膨らせてそうぼやくと、アマイモンはぱちんと指を鳴らした。瞬間、甘く香る魔力が湧き上がり、邪魔な猟兵を『チョコレート』にしてしまおうと膨れ上がるが――。
 斬りつけるような突風が駆け抜ける。否、実態を持たぬ風などではない。いつからそこにいたのか――摩訶不思議な蝶翅の紳士が、手にした細剣で悪魔王の魔力をまさしく斬り払ったのだ。
「あっ、あなたは──ムッシュ・バタフライ様!」
 息を呑む王子に向け、紳士は優雅に一礼するなりどこへともなく掻き消える。ムッシュが作ってくれたこの好機を逃すまいと、即座にリクも地を蹴って。
「……『僕たち』は負けない!」
 兎の強靭な脚力が、少年の小さな身体をバネのように前方へ送り出す。振りかぶった剣が陽光を受けて煌く。透き通るような鬨の声が、ページいっぱいに響き渡る。
「ッ、おのれ……!」
 咄嗟にアマイモンがチョコレートで錬成した盾を、まるで紙のように聖剣が切り裂く。刃に纏いつく粘っこい甘味を振り払い、深く深く構えを取って、リクはもう一段声を低くした。
「君たちには負けられない。絶対にだ」

成功 🔵​🔵​🔴​

須野元・参三(サポート)
気品高き須野元・参三の輝かしいサポートプレイングコンセプト
『泥にまみれるような悲惨な目にあいつつも、気品的機転、幸運でなんかシナリオが成功させている』

「気品」ということを行動原理の中心とし
・気品と光る発想と異常な行動力を発揮
・輝く【存在感】
・過剰な【パフォーマンス】
・無駄に【挑発】罵声を飛ばす
・そのせいで敵や厄介を【おびき寄せ】るぞ
・気品は痛いの嫌いなので悲鳴と罵詈雑言騒ぎながら【第六感】や【見切り】で逃げ惑う
華麗に気品にエレガントに臨機応変的に頑張ってる描写期待してるぞ

性格・設定
気品高く高邁で地位の高い貴族で見栄を張っている
本当は気弱なため小物臭・ヘタレ・負け犬属性という言葉がよく似合う



「きゃーーーーーーー!?」
 森の中に絹を裂くような悲鳴が響き渡った。気品溢れる悲鳴の主は、須野元・参三(気品の聖者・f04540)。不思議の国の民を救うのもまた気品ある貴族の務めとして駆け付けた、優雅で高雅でエレガントな貴族様である。
 が、それがどうしてこうも(本のページを遡ることだけはないよう割と必死でその場をぐるぐる)逃げ回る羽目になっているのかと言うと――。
(「いくらチョコとは言えアレユーベルコード製の悪魔なんでしょやだやだ痛いの怖い嫌い!!! なんで!? どうして!? なんで私ばっかりこんなに追い回されてるの!? ……はっ、まさか奴ら、気品溢れる私こそが大将だと思って……!?」)
 ……まあ、大将と思われているかどうかはさておき、参三の想像は概ね正しい。本の世界に突入した彼女は、とにかくものすごく目立っていた。仕方ない。だって溢れる気品オーラを隠すこともなくずんずんここまで闊歩してきたのだから。新たな猟兵のわかりやすい襲来に対してオウガが放ったのは、チョコレートでできた悪魔の軍勢だった。どうやら軍勢が移動可能な範囲はアマイモンを中心としてある程度限られた円の中のみのようだが、かと言ってその円を無理に踏み越えて逃げようとすれば、元来たページに戻ってしまい、やはり本に取り込まれてしまう。
「てっ、敵ながら……中々、考えるではないか……!」
 内心の焦りを精一杯押し殺し、あくまで貴族らしく美しく敵の実力を称賛してみせる参三。繰り出されるチョコレートの槍をギリギリで見切ってかわし、直感でチョコ悪魔軍団の動きを読んで追い込まれないよう森の中を走り回りながら、参三は密かに額の汗を拭った。
 ほんとはすごいピンチっぽくて怖くて泣きたいけれど、それではアマイモンと戦う他の猟兵に示しがつかない。なるべく凛々しく美しく、でもちょっと震える声音で、参三はアマイモンの立つ方向へと叫んだ。
「……雑兵のチョコレートどもはこの気品に惹かれている! 悪魔王の方は任せたぞ――!」

成功 🔵​🔵​🔴​

ラムダ・ツァオ(サポート)
A&Wの遊牧民出の自由人。
見た目からダークエルフと揶揄されることもあるが、当人は特に気にしていない。普段は外套と丸サングラスですっぽりと身体を覆っているが、外套の下はかなり身軽。
なお、見た目は怪しいがわりと気さくな性格。
臨機応変に動くが、完全勝利よりは条件達成を目指す。

行動指針としては以下の3通りが主。
1.囮役としてボスの注意を引き付け、味方の攻撃を当てやすくする。
2.ボスの移動手段→攻撃手段の優先順で奪っていく。
3.仕留められそうな場合は積極的に仕留めに行く。
 (他に仕留めたい人がいればその手助け)

台詞回しや立ち位置などは無理のない範囲でご随意に。
ユーベルコードは状況に応じて使い分けます。


響納・リズ(サポート)
「ごきげんよう、皆様。どうぞ、よろしくお願いいたしますわ」
おしとやかな雰囲気で、敵であろうとも相手を想い、寄り添うような考えを持っています(ただし、相手が極悪人であれば、問答無用で倒します)。
基本、判定や戦いにおいてはWIZを使用し、その時の状況によって、スキルを使用します。
戦いでは、主に白薔薇の嵐を使い、救援がメインの時は回復系のUCを使用します。
自分よりも年下の子や可愛らしい動物には、保護したい意欲が高く、綺麗なモノやぬいぐるみを見ると、ついつい、そっちに向かってしまうことも。
どちらかというと、そっと陰で皆さんを支える立場を取ろうとします。
アドリブ、絡みは大歓迎で、エッチなのはNGです



「任されてしまったようですわね」
「なら、ご期待に応えてきっちり仕留めましょっか」
 飛んできた悲鳴混じりの声に頷き合い、響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)とラムダ・ツァオ(影・f00001)は一度だけ頷き合う。猟兵の攻撃を受け、アマイモン本体とて既にかなり弱ってきている――仕留めるチャンスは、充分にある。
 黒い外套を翻し、ラムダがまっすぐに走り出す。足音を響かせることなく迅速に駆けるその姿は、さながら意思持つひとつの影のようで。
 その背を見下ろすように翼を広げて舞い上がったリズが、胸の前で手を組んだ。その唇から溢れ出すのは、戦神の加護を導く誓いと祈り。溢れ出す言葉はやがて白く淡く輝く光のオーラを編み上げて、志を共にする者の力を引き上げる。
「ぐっ……まだ来るかの、猟兵! そんなにチョコになりたいか!」
「ダークエルフ呼ばわりされることはたまにあるけど、チョコ呼ばわりは新鮮かな」
 肩で息をするアマイモンとは裏腹に、ラムダの声は軽やかだ。当然、チョコとして食われてやるつもりはないし、その前段階としてそもそも負けるつもりもない。鞘から抜いた白鋼の脇差が、リズの光を帯びて一層白く輝いた。
「おのれ……ッ!」
 ボロボロの腕を振り上げ、アマイモンが吼える。だが、チョコレートの津波は彼女の背後で立ち上がったまま凍ったように動かない。不測の事態に、悪魔王の指先がぴくりと震えた。
 ――見れば、チョコレートの表面がまるで蜜をかけたように艶やかに輝いている。勿論、それは甘い蜜などではない。悪魔の視線が迫り来るラムダを越えてさらにその向こうを見た。
「……貴様!」
「チョコレートは確かに美味しくて、素敵なものですが……だからと言って、皆様をそうさせる訳には参りませんわ!」
 アマイモンの視線を受け、真正面へ杖先を向けた姿勢のままでリズが凛と言い放つ。その杖を伝うように輝く魔力は、チョコレートの波を押さえつける光と全く同じ色をしていた。
 彼女のオーラが盾となり、チョコレートを押しとどめてくれている今こそがチャンス。瞬間的にそう確信し、ラムダは刃を握る手に力を込めた。
「そういうこと。それじゃ……さよなら!」
 白き刃が、チョコレート色の悪魔の胸に吸い込まれていく。まるで、ケーキにナイフを通すかのように。血飛沫の代わりに甘く香る魔力の霧が零れ出し、刃を抜かれればたちまちそれは噴水のように周囲を染めた。そして悪魔の肉体もまた、脆い生地が崩れるように壊れて消えていく。刃の汚れを払い、鞘に納めて、ふ、とラムダは息をついた。
「これで、後は銀食器の皆を連れて帰れば一件落着?」
「そうですわね。幸い他にオウガも残っていないようですし、安心して外に帰っていただきましょう」
 そんな風に言葉を交わし、他に囚われた銀食器が残っていないかも見て回りながら、猟兵たちは歩を進めていく。
 そうして、やがてどこかで最後のページがゆっくりと閉じた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年01月15日
宿敵 『悪魔王アマイモン』 を撃破!


挿絵イラスト