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菓子甘味の書は銀器を呑んだ(作者 湿気
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●カトラリーズの失踪
 アリスラビリンス、夢にして現の愉快な迷宮、とめどなき複合世界。
 幾多の世界にあって何より特異というべきはその住民たちであろう、歩かぬ筈のモノが浮かれ歩き、喋らぬ筈のモノが軽快に冗談を飛ばす、乱雑にして煩雑な世界。
 その片隅、とある『不思議の国』に騒動が巻き起こっていた。

「おっ、よぉ!」
「ん……なんだ、兄さんか。」
 子供の落書きのような黒線の手――更に付け加えるなら足も同様である――を振るのはこれといった装飾の無いテーブルフォーク、気怠げな様子で顔を、もとい刃をうつ向かせたまま振り向くのは似たような雰囲気のテーブルナイフ。
 そう、ここは銀食器の国、ティースプーンからサービスナイフまで様々なカトラリーが暮らす不思議の国。
「なんだとはなんだ冷たいなぁ……」
 つまるところ、これが彼らにとっての『日常』そのものであり。
「ついてこないでよ……ん?」
 コツコツと、上品な音を立てて、曲がり角の向こうから。
「……誰?」
 黒尽くめの『非日常』がやってくるとは。
「「はい、ワタシ達は。」」
「「はい、ワタクシ達は。」」
「「「猟書家(ビブリオマニア)で御座います。」」」
 到底、思いもしなかったのだ。

●輝きを見失う前に
「ナイフを一本、フォークを二本、あの類の物はなかなか高くつくそうだな……というわけでお集まり頂き感謝だ皆ッ!!」
 意味の有るような無いような言葉はともかく、集まった猟兵達に騒々しく謝辞を述べるのは四軒屋・綴(大騒動蒸煙活劇・f08164)、ヒーローマスクのグリモア猟兵である。
「今回の事件が起こっているのは『アリスラビリンス』ッ! なんだが……どうやら毛色の変わった事件らしい。」
 曰く、黒尽くめの紳士淑女が『猟書家(ビブリオマニア)』を名乗り、その手に持った本の中に、住人たちを引きずり込む。
「『猟書家(ビブリオマニア)』とはなんなのか、その『本』とはなんなのか……、色々と気になるわけだが、まずは差し迫った事態を解決する必要がある。」
 つまりだ、と若干の沈黙を挟み、そして叫ぶ。
「君たちに本の中で冒険してきてほしいッ!!!!」

●行間を疾走れ
「銀食器の住人たちを引きずり込んだ『本』だが、どうやらその中には『不思議の国』のように『本の中の世界』が存在しているらしい。」
 でたらめな、現実の無い、物語のような世界、その中に不思議の住人たちが囚われているのだという。
「つまり君たちには直接『本の中の世界』に突入してもらい、『囚われた住人たちを保護し』ながら『出口を探してほしい』、そしてその上で大事なことがいくつかある。」

 そう言いながらゴーグルから光を放ち、空中に画像を投影する。
「一つ、『太陽の矢印に従え』だ、この世界の頭上に上る太陽……というよりも太陽のような何かには『矢印』と『ページ数』が書かれている、まずこの『矢印』に従って進んでいってほしい。」
 太陽の『矢印』に従えば問題はない。
 しかし『矢印』に従わないものは……。
「……急速に生命力を奪われ、『本の世界の住人』になってしまう、こうなってしまえば猟兵と言えど助かるかどうかは分からない、あまり広範囲の探索は避けておいた方が良いだろうな。」
 もっとも逆に言えば、保護すべき住人たちは『範囲内にいる』ということであり、さほど捜索の必要もないだろうが、と補足しつつ説明を続ける。

「次に二つ目、『ページ数を増やせ』だが…矢印に従って進めば自然にページは進むが、その過程では何かしらの『障害』が発生することになる。」
 太陽の矢印に沿って進めば、ページが進み、ページが進めばやがていくつかの『場面に』差し掛かる、あたかも本を読み進めるかの如く。
「それほど不自由ではないにしろ進める方向は限られている、しかも囚われた住人たちを出口まで送り届けなければならない、つまり何か障害が発生すれば無視して進むことは出来ないということになる。」
 例えば、それは道を塞ぐ何かであったり。
 或いは、それは命を狙う誰かであったり。

「そして三つ目、厄介なのはこの『本の世界』でも『オウガ』達が存在し、しかも『本の世界の法則』を理解しているということだ。」
 オブリビオンとしての能力を遺憾なく発揮し、出口を塞ぐ為に立ちはだかり、『矢印ではない方向』に押し出そうとする。
「もちろん『範囲外』にまで押し出されてしまえば先に述べた通り猟兵であっても本に取り込まれてしまう、その上オウガ達自身はその制約を受けることはない……普段とは勝手の違う戦闘になる、充分に注意してくれ……と、こんなところだな。」
 幾分か普段より硬い口調で念を押し、さて、と一呼吸。

「いくつかの制限がかかるが……皆なら決して不可能ではないはずだッ! 囚われの住人達を連れて高らかに凱旋してきてくれッ!! 武運を祈るッ!!!」


湿気
 湿気です! 湿気がスゴい季節ですね!!!!
 まずはここまで目を通して頂きありがとうございます!
 今回の舞台はアリスラビリンス! の中の『本の中の世界』です! マトリョーシカ構造!

 全章に渡って特殊なルールが適用されるシナリオになりますので、長くはありますがまずはルールの把握を兼ねてオープニングを一通り読んで頂ければ幸いです。
 また、オープニング公開後に序章を投稿いたします、『本の中の世界』の雰囲気等を描写いたしますので参考程度にお読み頂ければ、と思っております。

 それでは! よろしくお願いいたします!!
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第1章 冒険 『お菓子の家が多すぎる』

POW自分が代わりにお菓子の家を食べ尽くす。
SPDお菓子を食べようとするアリス達を、素早く邪魔する。
WIZアリス達を説得して、お菓子を食べるのを止めさせる。
👑7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●『ビーター伯と砂糖菓子にまつわるいくつかの探求劇』序文
「……ねぇ、兄さん。」
「なんだ?」
 フォークとナイフの兄弟が立ち止まる。
 猟書家(ビブリオマニア)を名乗る黒尽くめ達の本の中に吸い込まれ、いつの間にか異質な景色に囲まれていた。
 見た目には特段違和感がない、葉擦れの音に満ちた森と、その中に伸びる踏み固められた道。
 しかしそれらは不思議なほどに「現実味」がない、一面の緑も踏みしめる茶色も、丁寧に描かれた絵画か何かに思えてしまう。
「ここ、どこなんだろうね。」
「……さぁな。」
 呟いたフォークが空を見上げ、精巧な贋作のような風景の中ではっきり偽物だと断言できる『太陽』を見上げる。
 位置は前方の空、見かけの大きさはボウリング球ほど。
 見つめても眩しくない程度に輝くそれには『↓ P. 5』と黒の文字が書かれている。
「……じゃあさ。」
 ナイフが片手をあげ、前方を指指す。
「あれは、なに?」
 木々が途切れ、急に広がった視界を埋め尽くすのはパステルカラーと少しの黒。
「ありゃあ……『お菓子の家』ってヤツだろ。」
 クッキーの柱、ケーキの壁、チョコレートの屋根。
 大きな広場だったと思われる空間は、甘い香りの建築物でひしめき合っている。
「いや、そっちじゃなくてさ。」
 そして、その合間を行き来する黒い影。
 縦にも横にも2メートルほど、丸く膨れながらもかろうじて人型と形容できる何かがお菓子の家の合間に座り込み、壁や柱をつかみ取っては口へと運ぶ。
「いや、アレは流石に分からねぇ……なんなんだありゃ?」
「襲ってきたりはしないようだけど……これじゃ先に進めない。」
 時折森の方から現れる影は、緩慢に歩を進め、お菓子の家を目指すこと以外の行動を起こす様子はない。
「……どうする?」
「いや、どうしようもねぇだろ……、せめて奴らが道を開けてくれりゃあいいんだが……」
 目の前の奇妙な風景を前に、兄弟は途方に暮れるのであった。
 空に浮かぶ太陽、そこに刻まれた『ページ数』が、『P. 6』へ変わったことにも気が付かないまま。
荒谷・つかさ
なるほど。大体わかったわ。
つまり、アレを蹴散らしてお菓子の家を食べつくせばいいのね?

おもむろにでかい丸いヤツらに近づき【螺旋鬼神拳】発動
「怪力」のフルに乗った拳を遠慮なく叩き込む
それでこちらをタゲるようなら近い奴から順番に迎撃
無視して喰い続けるようなら近い奴から順番に駆逐
……能動的か受動的かの違いだけでやる事は大して変わってないのは気にしないで

粗方片付いたら、今度はお菓子の家の解体(食)に入る
個人的にはお菓子の家より焼肉ハウスの方が好きなんだけど(どんな家だ)
食器兄弟も食べる必要があれば、その分は譲るわよ

でも……私一人で食べ尽くしてしまっても構わないのでしょう?(謎のフラグ)


寧宮・澪
アドリブ、連携歓迎

お菓子の家……美味しそうですが、食べてる暇ないですよね……

銀食器の方には、敵じゃないですよー……ここから出るお手伝いに来ました、と名乗っておきますね

あの食べ方は体に良くないですし……一度止まっていただきましょー……
まずは、説得を……逆方向に投げ飛ばされたりしないよう、距離を取って……
そのままじゃ、お腹も体も痛いですよー……
美味しいお菓子も、美味しくなくなっちゃいますよー……?
食べるのやめませんー……?

聞いてもらえなければ、眠れる香りの蜜を零し……揺り籠の謳、謳いましょー……
おやすみなさい、良い夢をー……

さて……運んでいけばいいんでしょか
銀食器の方、手伝ってくれますかね……?


●朱鬼の拳、夜天の謳
 進むに進めず、されど他に道はない。
 立ち止まることを余儀なくされていた兄弟の耳に、二人分の声が届く。

「お菓子の家……美味しそうですが、食べてる暇ないですよね……」
 一つは澄んだ声、例えば硝子の響くような、儚げな声。
「なるほど。大体わかったわ。」 
 一つは葉擦れの中でもよく通る声、何処か実直さを感じさせるまっすぐな声。
 思わず振り向いた兄弟の目に、声の主の姿が映る。
「え、あ、あんたたちは。」
「敵じゃないですよー……」
 戸惑うフォークにひらりひらりと手を振って見せるのは夜空のような翼を背負ったオラトリオ、寧宮・澪(澪標・f04690)。
「えぇ、助けに来たわ。」
 紅白の装束に身を包み、聳える大樹のように堂々とふるまうのは朱角の羅刹、荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)。
 未だ混乱の最中にあるフォークにナイフが耳打ちする。
「兄さん、この人たちってもしかして。」
「あぁ……いや、なんとなく分かる、この人たちならそりゃあ、何とかしてくれるんだろうけど。」
 驚きはしても本能的な部分で信頼を感じる、自分達とは違い、そしてオウガでもない存在、それは救いの手であり、戦う人々なのだと。
「いやでも、何とかするったってアレが何なのかも分から……って早ぇえな?!」
 故に協力を申し出よう、そう考え振り向いた時には既に二人の猟兵は左右に分かれ、手近な『影』へと歩みを進めていた。
「えぇ~~~っと! ナイフ! お前はあっちだ!」
「え、いや……しょうがないか。」
 むしろついていく方が邪魔に、と言う前につかさの後を追って駆け出してしまった兄に習い、ナイフは澪を追いかけた。

「ついてこなくても、良かったんですよー……?」
「……まぁ、何かあるかもしれないし。」
 追いついて来たナイフと合流した澪が軽く会話を交わしながら影の元へとたどり着く。
 ナイフを少し手前に残し、さらに歩み寄る、相手の手が届かないギリギリ、3メートルと少しの位置。
「そのままじゃ、お腹も体も痛いですよー……」
 声をかけるが、影の手は止まらない。
「美味しいお菓子も、美味しくなくなっちゃいますよー……?」
 お菓子の壁に手を伸ばす手が止まる、臆さず声をかけ続けた成果か、影がゆっくりと振り返る。
「食べるのやめませんー……?」
 逡巡だろうか、影はしばらくの間澪の方を向いていたが、問いかけに答えることなく食事を再開する。
 虚ろな存在故か、『物語の登場人物』故か、少なくとも『食べる』以外の選択肢を影は取ろうとしない。
「そうですかー……」
 聞いてもらえなければと、澪が取り出したのは丸硝子の瓶。
「眠れる香りの蜜を零し……」
 コルクの栓を抜き、傾ければ、瑠璃から紺へと表情を変える液体がとろりとその場へ雫を落とす。
「揺り籠の謳、謳いましょー……」
 地面に垂らした『夜糖蜜』から、群青の霞が立ち昇る。
「とろりきらきら、夜色の蜜 歌う鳥の、祈りをまぜて。」
 透き通った、ゆったりとした、澪の歌声に導かれるように、霞は影を取り囲む。
「ゆらゆら、眠れ。安らかに。」
 たとえるならば波の音。
 落ち着いたリズムと、時折混ざる『揺らぎ』。
 蜜の香りと子守歌に包まれた影は緩慢な動きを更に遅くし、いつしかだらりと腕が下がる。
「おやすみなさい、良い夢をー……」
 澪のユーベルコード、『揺り籠の謳』により安寧の眠りについた影が、その場に崩れ落ちる。
「さて……運んでいけばいいんでしょか。」
 手伝ってくれますかね……?とナイフに声をかけようと振り向く寸前、影の姿が薄れ、さらさらと消えていく。
「……消えた?」
「そのようですねー……」
 意識を、役割をなくせば存在が薄れる、『物語の脇役』、影のアリスならぬアリスの影とはそのようなものかと納得し、澪とナイフは合流の為、再び歩き出すのだった。

「ちょっとあんた、あー……」
「荒谷つかさよ、つかさでいいわ。」
 少し、時は遡り。
「つかささんはなんかこう……考えとかあるのか?」
「そうね。」
 追いついて来たフォークに名を問われ、返しながらもつかさは歩みを止めない。
「つまり、アレを蹴散らしてお菓子の家を食べつくせばいいのね?」
 それなりの声量で話しているにも関わらず、その手を休めることなくお菓子の家を食べ進める『影』の近くで立ち止まり、そのまま拳を構える。
「いやまぁ、それはそうだけど……」
 あまりに単純明快な理論、しかし逆に言えば確実に解決へいたる道ではある。
「アレの反応が能動的か受動的か、どちらにせよやることは大して変わらないわ……下がっていて。」
 危険だからと注意を促し、羅刹の怪力が籠った拳を放つ。
「うわっ!??」
 フォークが思わず身を竦める、鈍い音が響き、影は体勢を崩して倒れ伏す……が、起き上がった先でまたお菓子の家に手を伸ばす。
「や、やっぱり無理だったんじゃ……」
「そうね。」
 表情は変えず、しかしやや不満げにつかさが答える。
「本気で行くわ。」
 纏う雰囲気が、変わる。
 歩み寄り、両足の間隔を前後に広げ、腰を落とし、腰の高さで腕を引く。
 戦闘中ではない為か、本来必要ではないゆっくりとした動きを取ったつかさが纏う『気』に押され、フォークが思わず後ずさる。
「抉り込むように……」
 手の甲が下に向くように、握りは親指で抑えるように、回転を意識するように。
 師の教えと、積んだ鍛錬と、得た経験。
「……そこよ!」
 全てを込めて、裂帛の気合と共に放たれた正拳突き、『螺旋鬼神拳(スパイラル・オウガナックル)』が文字通りに影を『殴り』『飛ばす』。
「……とんでもねぇな……」
 規格外の一撃に呆けたままのフォークを気にも留めず、つかさがお菓子の家へと歩み寄る。
「さて、次は……」
「次は……?」
 一体何をどうするつもりなのか、固唾を飲むフォークへつかさが告げる。
「解体よ。」
「か、解体?」
「具体的に言えば食べるわ。」
「軒単位で!?」
 驚くフォークを意に介さずお菓子の家の壁に貫手を突き入れ抉り取り。
「個人的にはお菓子の家より焼肉ハウスの方が好きなんだけど。」
「どんな家だよ!?」
 斬り込み担当から焼肉担当へと完全に切り替わってしまったつかさは抉り取った分を早くも食べ終え、更に壁を抉り取る。
「そういえば、あなた達も食べておいた方が良いのかしら?」
「え、あー……まぁ、ナイフのヤツと合流したら食べるかな……」
 困惑しながらも、涼しい顔でおおよそ合流できそうな方向へと食べ進めるつかさの後をついていくフォークであった。
「でも……私一人で食べ尽くしてしまっても構わないのでしょう?」
「いや全部食べる気!?」
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵