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いつか、あの渡り鳥のように

#サクラミラージュ

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#サクラミラージュ


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 蒼天に浮かぶ巨大な飛行船が、帝都の街並みに影を落としながら、ゆっくりと出航してゆく。
「……は~……」
 とある一等客室から窓の外を眺めていた一人の少女が大きな溜息を一つ。
 豪華なドレスに、カールを巻いた金髪の髪。
 いかにもお嬢様然としたその少女は、知る人ぞ知る新興財閥の一人娘だったりするのだが――。まぁ、それはともかく。
「憂鬱だわ……こんなの、ただの政略結婚じゃない……」
 顔を知りもしない相手との、突然の結婚。
 家のため、家族のため――。頭では分かっているものの、そう簡単に割り切れるほどに、少女は成熟していなかった。
「……たとえば、あの鳥のように」
 窓の外を見れば、白い渡り鳥が自由気ままに空を飛んでいた。
「あの鳥に比べたら、私はさしずめ籠の鳥と言ったところかしら」
 苦笑を漏らす少女。飛行船はみるみると高度を上げ、渡り鳥を眼下へと追いやってゆく。
「私にも、翼があれば――」
 少女がそう呟いた瞬間……突然『それ』は現れた。

「それは名案ですね」

 耳元で囁かれたその声にハッと振り向くと、白い服を纏った科学者風の女の姿が居た。
 息も掛からぬばかりの距離――。
 いつのまに、と問う間もなく、白い女は言葉を紡ぐ。
「そんな貴女に、翼を授けましょう。なあに、ごくごく簡単な人体改造手術で済みますよ。
 ……拒絶反応さえ出なければ、ですが」
 少女が叫ぼうとした瞬間。万力のような力で首を掴まれた。
「――ッ! ――ッ!」
 華奢な女のものとは思えぬその握力に、少女の意識が遠のいてゆく――。


 予知の内容を語り終えた嬉乃・抹茶子が猟兵達に向き直る。
「サクラミラージュのとある飛行船内で、オブリビオンによる誘拐・殺人事件が起こります。皆さんには、このオブリビオンの撃破をお願いします!」
 と、説明も手身近に、抹茶子は転送の準備に取り掛かってゆく。
「すいません、予知のタイミングがかなり遅れました……。
 ですが、今から急いで急行すれば――。飛行船の出航に、ギリギリの滑り込みセーフで間に合う……ハズ、です」
 額に汗を浮かべながら異界への門の展開を進めていく抹茶子の姿に、事の緊急性が伝わってくる。
「今回の依頼の成功条件はあくまでオブリビオンの撃破のみとなりますが……もし可能であれば、誘拐される少女のことも助けてあげてください」
 グリモアの光が線を描き、扉を描き出してゆく。
 人生に絶望しかけているご令嬢を救うかどうかは猟兵達の行動に掛かっているが――。
 まずは第一に、
「サクラミラージュへの扉が開かれたら、先ずは乗船を急いでください! それでは、宜しくお願いします!」
 扉が開かれると桜の花弁が一枚、風に乗って飛んでくる。
 常久の桜が咲く世界・サクラミラージュでの冒険救出活劇、始まり始まりである。


河流まお
 河流まおと申します。精一杯努めさせて頂きますので宜しくお願い致します。

 第一章は戦闘無しの「冒険」パートになります。
 まずは急いで乗船手続きをして飛行船に乗り込みましょう。
 出航まであまり時間がないのでご注意ください。
 もし無事に乗船出来たら、誘拐事件が起こる客室を探してゆく感じになるかなと思います。

 プレイングの受付に期間は設けておりませんのでいつでもお気軽にどうぞです。
 この第一章は開始前の断章もありません。

 それでは、皆様のプレイング、お待ちしております。
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第1章 冒険 『足元にご注意を』

POW   :    最終的に生きていれば問題ない。好きに行動していざとなれば身を守る。

SPD   :    見つけてしまえば問題ない。細かく観察して違和感を見つけ出す。

WIZ   :    アタリがつけば何とかなる。周辺状況から落とし穴の場所を予測する。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

マリウス・ストランツィーニ
随分と余裕がない任務だな……!
とにかく「気合い」で全力疾走して駆け込み乗船するしか無いようだ。
あ、ちょっと待って!ストップ!ストーップ!!!

はあ、はあ……よし、何とか乗船出来たな……
ごほっ、では御令嬢の様子を……
いや……こんな汗だくで疲弊した姿を人にあまり見られたくないな……

まずは空いている客室を借りて、華族として最低限の身嗜みを整え、上流階級の客として振る舞いながら情報収集して御令嬢の部屋を探すとしよう。


蔵方・ラック
ギリギリの滑り込みセーフって、どの程度ギリギリなのでありますか?!
とりあえず転移完了と同時にダッシュダッシュ!

自分が賊と思われたら元も子もないので
乗船手続きはちゃんと受けるつもりでありますが……
もう本当に間に合わない!ってなったら紳士淑女にはちょいと失礼して、ジャンプやスライディングで飛行船まで一気に接近、搭乗口が見えたらそこに飛び込むでありますよ!

それでも届かなければ、最終手段としてUCを発動!
スクラップ製の縄梯子でも作って船体に引っ掛けて乗り込むであります!

ちょっとお行儀が悪かったでありますかね?
まぁ中の船員さんに、サアビスチケットを見せれば
きっとたぶん許してくれるでありましょう!




 扉を潜り抜けると、そこは空港の屋上展望台だった。
 眼下に広がる飛行場へと視線を映すと、ひときわ巨大な飛行船の威容が目に映る。
「ふむ……どうやらあの船のようだな」
 軍服を纏った少女、マリウス・ストランツィーニ(没落華族・f26734)が涼風に髪をなびかせながら呟く。
 黒き貴婦人の異名を持つモダンな外見。サクラミラージュにおける最新鋭の技術を以て建設された双胴型豪華客船『ダイダラニック号』である。
「ギリギリの滑り込みセーフって、どの程度ギリギリなのでありますか?!」
 続いて扉から現れたのは、オレンジの髪を束ねた明るい雰囲気の少年、蔵方・ラック(欠落の半人半機・f03721)である。

 周囲を見やれば、船の出航を見守る一般人の方々の姿がある。まずは情報収集とマリウスが歩み寄る。
「すまない。つかぬことをお聞きするが、あの船の出航時間をご存知だろうか?」
「ん? ダイダラニック号かい? 13時発の紐育行きさ」
 船に手を振りながら、見送りのおっさんが親切に答えてくれる。
「かたじけない」
 ふむ、と顔を見合わせるマリウスとラック。そういえば、今は何時なのだろうか?
「えーと、お待ちくださいね」
 ラックが懐から軍用スマホを取り出し、現地時間を確認してゆく。
 いやー、こういうとき本当に便利でありますね、スマホって!
「……あと、3分でありますね」
 そっか、3分か~、あっはっは。としばし笑い合い。
 サーッと冷たいものが二人の背中を滑り落ちる。
 え? これ、搭乗手続き含めての時間なの?
「走るぞッ、ラック!」
 言うが早いか、ポニーテールを揺らしながら即ダッシュで駆けだすマリウス。良いスタートだ!
「随分と余裕がない任務だな……!」
 屋上展望台から、空港建物内に駆け入る二人。エレベーターなんぞ待っている余裕は当然ないので、選択すべきは階段だ。
「いくらなんでも無茶振りじゃありませんかね、この依頼!?」
 ラックの義足が全速前進の最大駆動で風を切る。
 階段はもはや、駆け降りる、というよりは、踊り場から踊り場へ飛び移る、といった表現が近い。
「どういう試算でギリギリセーフなんでありますか!」
 と、愚痴ったところで飛行船が待ってくれるというわけでもなく――。
「とにかく『気合い』で全力疾走の駆け込み乗船だ! 腹を括れ、ラック!」
 一迅の風となって空港施設を爆走してゆく二人。


「搭乗ロビー、ここだな……!」
 高速で通り過ぎてゆく案内板を横目で確認したマリウス。
 ロビーに辿り着くと、そこには旅行カバンを持った大勢の人々でごった返していた。
 彼らにその気は無くても、今この時ばかりは二人の行く手を阻む障害となる。
「まぁ、予想はしていたでありますよ!」
 屈むように身を縮め、バネ仕掛けのように大跳躍するラック。
「紳士淑女の皆さんは、ちょいと失礼!」
「おお~っ」
 頭上を飛び越えてゆくラックの姿に、見上げる人々が歓声を漏らす。
 ダラダラボロス号の発券所は、出発時間がギリギリのせいもあってか、並んでいる者はいない。これは素直にラッキーだったと言えるだろう。
 正直、無理やりゲートをおし通るという選択肢も考慮に入れていたラックだったが――。
「自分が賊と思われたら元も子もないですしね」
 いきなり目の前に着地したラックに、受付の女性は眼を丸めたものの、二人の急いだ様子を察して、いそいそと発券手続きをしてゆく。
「間に合うか……!?」
 ただいま発券中の表示。灼けつくような焦りの時間を過ごしながら、残り時間を確認するマリウス。
「あと30秒だ! 急ぐぞ、ラック!」
 乗船券を受け取って、再び全力疾走が始まる。
 走るその先、ついに見えた黒き双胴の飛行船『ダイダラニック号』。
「あ、ちょっと待って! ストップ! ストーップ!!!」
 大声で必死に叫ぶマリウス。
 見れば、飛行船に乗り込むための舷梯 (げんてい)を職員が今まさに外そうとしているところではないか。
「乗ります! 乗るであります!」
 汗だくになりながらも、なんとか駆け込み乗車を決め込んでゆく二人。

『駆け込み乗車は~、大変危険ですので~、あ、お止めください』

 余計なお世話だ、といいたくなるような艦内放送が流れてくる。
 凶悪なオブリビオンが船に紛れ込んでいるのだから、本当にこの船が危険になるのはこの後であるといえる。
「はあ、はあ……よし、何とか乗船出来たな……」
「そのようで、ありますね……」
 ようやく息を整え、マリウスとラックは互いに吹き出すように笑いあう。
「ちょっとお行儀が悪かったでありますかね?」
「まぁ、お互い様だ。
 私もストランツィーニ家にあるまじき無作法を働いてしまった」
 ギリギリの滑り込みはなんとか成功。
 あとはこの豪華客船に潜むオブリビオンを討伐するだけだが――。
「ごほっ、では御令嬢の様子を……。
 いや……こんな汗だくで疲弊した姿を人にあまり見られたくないな……」
 まずは空いている客室を借りて、華族として最低限の身嗜みを整えることにしよう、と心に決めるマリウスだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
急げ急げ、飛行船が出航しちまうぜッ!
よし、間に合った。
乗船チケット?
あ~、・・・乗船チケットッ!?
ヤバイぜ相棒、チケットなんて買ってないぜ!?
今から買いに行ってたら間に合わねえッ!
「・・・落ち着いて、帝都から支給された『サアビスチケット』があるでしょう。」
あ、それがあったか。

よし、無事に乗り込めたな。
「・・・早く誘拐される方を見つけないと。」
おうよ、相棒。

「・・・式、召喚【捜し鼠】」
相棒の式神を船内に放って誘拐現場になる場所を探すぜ。
現場を見つけたら急行して乗り込んでやるぜッ!


【技能・式神使い】
【アドリブ歓迎】


クロノ・ライム
(WIZ)飛行船…逃げ場のない場所で襲うとは卑怯です!
まずは飛行船に乗り込まないといけませんね。
僕は本を読むのが昔から好きでしてね…サクラミラージュの観光ガイドなどもいくつか読んだことがあるんです。なので飛行船乗場までの最短距離を頭に入れてとにかく走りたいと思います。
(途中で美味しそうなお菓子が売っていると気が取られそうになるが、任務が第一なのでなんとか耐えます)
もしなんらかのトラブルで仲間が乗り遅れそうだったら、かばうことで自分が身代わりになって、一人でも間に合うように助け合いたいです。
もちろん自分も乗り遅れないように急ぎますよ。




 涼やかな風と共に桜の花弁が舞い踊る。
 艶やかな黒髪を風になびかせて現れたのは退魔を使命とする巫女姿の少女、神代・桜だ。
「……到着」
 周囲を確認すると、そこは空港の屋上展望台だった。
 眼下に広がる飛行場へと視線を映せば、ひときわ巨大な飛行船が停泊しているのが見て取れる。
「あの船みてーだな、相棒」
 桜が手に持つ『鬼の仮面』が、歯を剥き出しながら喋る。
 意思を持つ仮面種族である神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)だ。
 続いて扉から現れたのが――。
「お~! あれがサクラミラージュの最新鋭の技術で建設されたという『ダイダラニック号』ですね!」
 法衣を纏った人の好さそうな少年、クロノ・ライム(お菓子に目がないクレリック・f15759)が感嘆の声を上げる。
「さすがは『黒き貴婦人』の異名を持つ豪華客船です! 本で見た写真よりも、実物はずっと美しいですね!
 世にも珍しき双胴の全金属型飛行船! まさに空飛ぶ芸術品ですッ!」
 屋上のフェンスに顔を食い込ませながら、キラキラと瞳を輝かせるライム。
「……たしかに、モダンな感じで、ちょっと綺麗……」
「あんた。随分と詳しいんだな」
 凶津と桜も、ライムの隣に歩み寄って、しばし飛行船を眺める。
「ええ、僕は本を読むのが昔から好きでしてね……。サクラミラージュの観光ガイドなどもいくつか読んだことがあるんです」
「へ~、観光か。たまには、そういうのもいいかもしんねぇな、相棒」
 年がら年中、退魔だ任務だ、じゃあ疲れも溜まるってものである。
「……そうだね。まずはこの依頼を終わらせてからだけど……」
 さて、周囲にはダイダラニック号の出航を見送ろうとする一般人の人々の姿も見て取れる。
 その中の、ドでかい写影機を持ったおっさんが、こちらに話しかけてくる。
「やあ、キミ達も出航の瞬間を見に来たのかい?
 あと3分で待ちに待った出航だよ! いやはや、楽しみだね~」
 と、写影機を構えながら興奮を隠しきれないご様子のおっさん。
 このサクラミラージュの世界にも『撮り鉄』というものは存在するらしい。
 いや、だが、そんなことより――
 なんか今、このおっさんが……とても大事なこと口走った気が……する。
 思わず、互いの顔を見合わせる三人。

「あっ……あと、3分だとォおおオオオオオッ!?」

 凶津が絶叫する。
 こんなところでチンタラやってる場合じゃねぇええええッ!
「急ぎましょう! 飛行船乗場までの最短距離なら、頭に入っています!」
 法衣の裾をはためかせながら、クロノが駆けだす。
「おお、最短距離!? じゃあ任せるぜッ!」
 凶津と桜も続いて走り出す。
 もはや出し惜しみ無し、全力疾走の始まりだ。


 空港内を猛ダッシュで駆け抜けてゆくクロノと桜。
「コラー! 君達、空港内を走るんじゃなーい!」
 と、警備員のおっさんが怒声をあげながら追いかけてくるが――。
「すいません! 急いでいますので! 後日謝りに伺います~!」
 お説教など聞いている時間は当然ないので、そのまま全速力で警備員のおっさんを置き去りにしてゆくクロノと凶津。
「待てコラ! ちょ、速っ、こらあああ、待ってぇええええ――!」
「あばよッ、警備員のとっつぁん! さぁ、急げ急げ、飛行船が出航しちまうぜッ!」
「うう……良心が痛みます……」
 眉尻を下げながらクロノ。
「……今は緊急事態ですし……やむなし」
 桜がクロノを励ます。
 空港内の構造に詳しいクロノのおかげで、かなりショートカット出来たようである。
「このペースなら、なんとか間に合いそうだぜ……!」
 と、凶津が思いかけたその時、クロノがハッと気が付いたように走るペースを乱した。
「あ、あれは――!?」
 驚愕の表情を浮かべるクロノ。
「なんだどうした!? 警備員か!?」
 周囲を見渡す凶津だが、敵が迫ってくる様子はない。
「ま、まさか――。
 あれは帝都の超有名老舗甘味処『しぐれ』……この空港内に出張店舗があったなんて――」
 ガクガクと震えるクロノ。ガイドブックに載っていない情報――。
 なんという数奇で運命的な出会いだろうか――。
「って、いってる場合かッ!!」
 コイツ、甘党か!? と思いながら思わずツッコむ凶津。
「く……わかっています! ああ、さらばです! 甘味処『しぐれ』!」
 と、過酷なる運命がクロノとしぐれを引き裂いてゆくのだった。やむなし。

 ●
 と、まぁ、そんなこんなのトラブルに見舞われながらも、なんとか出航前にダイダラニック号へと駆け込んでゆく三人。
「よし、間に合った。残り一分ジャストだぜ」
「はぁはぁ……思ったより、余裕がありましたね」
 弾む息を整えながら、間に合ったことを喜び合う三人。
 だが、そこに――、
「ご乗船ありがとうございます。搭乗券を確認させてください」
 乗組員が、チケットをモギリにあらわれた。
「乗船チケット? あ~……乗船チケットッ!?」
 凶津の反応に、乗組員の男が雰囲気を剣呑なものに変えてゆく。

(ヤバイぜ相棒、チケットなんて買ってないぜ!? 今から買いに行ってたら間に合わねえッ!)
(おおおおおちついてください! ここは僕が囮になってこの人を引き剥がしますから、凶津さんと桜さんはその隙に――!)

 混乱しかける凶津とクロノ。だが――。
「……落ち着いて、帝都から支給された『サアビスチケット』があるでしょう」
 あ、そっか、それがあったか。
 さて、こうして最後のトラブルも無事回避し、3人はダイダラニック号へと乗り込んだのだった。


 最新鋭の超豪華客船ということで、船内はホテルのような広さである。
「……早く誘拐される方を見つけないと」
「おうよ、相棒」
 ようやくオブリビオン退治だ、と気合を入れ直す三人。
「ですが、あてもなく探すには広すぎますね……」
 整然と並んだ客室を眺めながら、クロノが呟く。
 分っていることと言えば、誘拐事件が起こるのは豪華な一等客室、ということぐらいだろうか――。
「さっきはあんたに案内して貰ったんだ。次の案内は俺達に任せておきな」
 ニヤリと牙を剥きだして笑う凶津。
「……式、召喚【捜し鼠】」
 桜が印を結びながら式神を放つ。その名の通り「捜し事」に特化した小さな鼠の式神だ。その数、実に79匹――。
「捜索に必要なのはまず「数」だ。
 大勢で手分けするのが一番手っ取り早いぜ」
 鼠が桜の号令に従って散ってゆく。これなら、すぐに目的の場所を見つけられるはずだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リウティナ・スピネルレッド
【Star Wind】
呼称は、シモン(f27298),リコット(f27299)だよ。

わぁ~!ここがサクラミラージュ!話には聞いてたけど本当に綺麗!(手帳を取り出して)――ってそうだった!こんな事してる暇ないんだったよ!急がなくちゃ!

【限界突破】を使ってとにかく全力疾走!
よ、良かった……!ギリギリ間に合――わなかったーー!!
どどど、どうしよう!?
あ、そっか!シモン飛べたもんね!それなら最初にそう言ってよ~良かった~!

※アドリブ歓迎


シモン・ピェール
【Star Wind】
呼称は、普段は相棒(f27298)時々、リウ。
普段はリコット(f27299)時々、リコ防。

あ、二人共ここに来たの初めてだったんだ。わたしもいつ見ても綺麗だなとは思うよー。
(急ごうとする二人へ)いやいや、別にそんな慌てなくても大丈――って行っちゃったし……。まぁいっか。わたしも急ぐ二人をゆっくり追うとしましょうかね。

(慌てる二人に)だからそう慌てなさんなってー。二人共、わたしの手に掴まりなよ。【空中浮遊】【怪力】で連れてくから。
いやいや最初に言おうとしてたってば!勝手に早とちりしてたのはあんた等っしょ!

※アドリブ歓迎


リコット・アプリィー
【Star Wind】
呼称は、ご主人(f26107),シモンさん(f27298)です。

(リウに対して)そうですね。すごく綺麗です……!いえ、ご主人!時間がないのですよ!?早く行きましょう!

私も【リミッター解除】を使用し、ご主人に続いて全力疾走します。
ま、間に合わなかったですね……。あわわ……!ど、どうしましょう!
シモンさん……最初からわかってたんですね……。なんだか、意地悪です……。

※アドリブ歓迎




 涼やかな風が、桜の花弁を運んでくる。
 扉を潜り抜けると、そこは空港の屋上展望台だった。
「わぁ~! ここがサクラミラージュ! 話には聞いてたけど本当に綺麗!」
 瞳を輝かせながら、感嘆の言葉をあげるのはリウティナ・スピネルレッド(廻る冒険家・f26107)。
 屋上展望台から桜風の吹き抜ける先へと視線を移してゆくと、飛行場にひときわ巨大な飛行船が停泊しているのが見て取れる。
「あれが今回の冒険の目的地だね!」
 懐から手帳を取り出し、飛行船の外観の詳細を書き写してゆくリウティナ。
 いつか、この手記を纏めて、一つの冒険譚として出版することがこの少女の夢だったりするのだが――。それはともかく。
「そうですね。すごく綺麗です……!」
 リウティナの傍らに並び立つ自動人形の少女、リコット・アプリィー(清らかなる自律人形・f27299)も頷く。
 サクラミラージュの技術の粋を集めて建設されたという巨大な豪華客船。
 黒鉄を金細工で上品に装飾したその外観は、どこか貴婦人を連想させるものがある。
 今、この瞬間を切り取れば、そのまま絵ハガキにでも使えそうだ。
「あ、二人共ここに来たの初めてだったんだ。わたしもいつ見ても綺麗だなとは思うよー」
 と、ぴょこんと扉から飛び出したのはシモン・ピェール(一般兎(自称)・f27298)。
「この空港からの眺めも美しいけど、サクラミラージュではモダン雰囲気の街中もまた絵になるのだよ」
 色々な世界を巡り廻ってきた自称旅人のシモン。サクラミラージュもすでに何度か訪れているようだ。
「へ~、街中か。あ、でもあの飛行船に乗ったら、上空から見れるのかな!」
 と、まだ見ぬ風景に思いを馳せてゆくリウティナ。
「そうですね……あの飛行船に乗れば……」
 リコットもまた期待に胸を膨らませながら頷きかけて――。
 はっと思い出す。
 そういえば、あまり時間がないのでしたっけ――?
 ちょっと情報収集してきますね、雑談を離れるリコット。
 幸い、この屋上展望台には船の出航を見送る一般人の方々も多くいる。
「あの、すいません。あの船の出航時間をご存知でしょうか?」
「ん? ダイダラニック号かい? あと3分後だねぇ」
 ハンカチーフを振りながら船を見送るご婦人が親切に教えてくれる。
 サーッと血の気が引くような感覚がリコットを襲う。
 ……え、まさか、これ、搭乗手続きも含めての時間設定なのでございましょうか……?
「あ、ありがとうございますッ!」
 ダッと猛ダッシュで二人の元に戻ってゆくリコット。
「なによりさ~、サクラミラージュは料理が美味しいのだよ~」
「え~、いいないいな! 依頼が終わったら案内してよ、シモン!」
 相変わらずご歓談中のお二人。だが、それどころではない。
「ご主人! 大変です……! 出航まであと3分です! 時間がないのですよ!? 早く行きましょう!」
「――へ?」
 あと3分。その言葉を咀嚼して考えると――。つまりあと2分55秒である。
「――ってそうだった! こんな事してる暇ないんだったよ! 急がなくちゃ!」
 弾かれたように全力疾走を開始するリウティナとリコット。
「いやいや、別にそんな慌てなくても大丈――って行っちゃったし……」
 猛ダッシュで消えてゆく二人の背中を見送りながら、シモンは小さく吐息を一つ。
「まぁいっか。わたしも急ぐ二人をゆっくり追うとしましょうかね。」
 


 屋上展望台から、空港の建物内へと駆け込んでゆく。
 エレベーターを待っている余裕はないので、選ぶべきは階段となる。
「これ、前から一度やってみたかったんだよね!」
 手摺りの部分をすべり台がわりにして、シャーッ滑り降りてゆくリウティナ。
「……ご主人、ちょっとはしたないような――」
「こっちのほうが速いよ~! リコットも早く早く!」
 リウティナに促されて、リコットも覚悟を決める。スカートに手を添えて、恥じらいながらの手摺り滑り。
「わわわわ――!」
 ジェットコースターのようなスピード感。着地と同時に崩れかかったバランスを、リウティナが支えてくれる。
「おっけー! 大成功だね」
 ニカッと太陽な笑顔で微笑むリウティナに、はにかむような笑顔で返すリコット。
 
「このフロアのようですね」
 『2階・搭乗ロビー』と書かれた案内板を発見し、頷きあう二人。
「ここまで来れば、あと少しだね!」
 再び全力疾走を開始する二人。
 限界突破にリミッター解除――。とにかくもう、絞り尽くせるだけひたすら走る。
「ハア……ハア……! ありました……発券所です!」
 ロビーは旅行カバンを持った人々の群れで溢れていた。その隙間を縫うように駆け抜けてゆく二人。
 幸いなことに、ダイダラニック号の発券所に並ぶ人の姿はない。
 この差し迫った出航時間を考えれば、当然なのかもしれないが――。
「おねえさん! ダイダラニック号のチケット3枚で!」
 汗だくの二人の姿に面食らいながらも発券所の女性は頷く。だが――。
「あの、お客様お二人ですが、3枚で宜しいのですか?」
「え――」
 振り返ると、シモンの姿がない。まさか、はぐれたのだろうか――?
「ご主人、あと1分を切っています……!」
「うううう! どうしようッ!? とととにかく3枚で!」
 3人分のお金をカウンターにドン。その様子を察して受付の女性も発券手続きを急いでくれるが――。
「シモンさん……早く、早く――!」
 発券中、祈るようにリコット。この待ち時間中にシモンが追いついてくれればいいのだが。今だ彼女が現れる気配はない。
「お待たせいたしました。搭乗チケットをどうぞ」
 やがて発券が終わり、決断を迫られることになる二人。
「ご主人……!」
「……ッ」
 シモンを置いてゆくことに抵抗感はある。だが、この依頼は一般人の命が掛かっている案件だ。
 迷っている暇は無く、今はただ進むしかない。
「行こう! 走るよ! リコット!」
「は、はい!」
 チケットを握りしめて、ラストスパートを開始する二人。
「ご主人、あれを!」
 ついに見えた双胴の飛行船『ダイダラニック号』。
「よ、良かった……! ギリギリ間に合――わなかったーー!!」
 目の前で飛行船に乗り込むための舷梯 (げんてい)が取り外され、飛行船がゆっくりと飛び立ってゆく――。
「あ、ああ~……」
 崩れ落ちる膝。リウティナが手を伸ばしても、飛行船は無情に高度をあげるのみ。
「どどど、どうしよう!?」
「ま、間に合わなかったですね……。あわわ……! ど、どうしましょう!」
 あたふたとするしかない二人。
 そこに――。
「あ、いたいた。二人ともお疲れ~。
 わたしの分のチケットも買ってくれたんだ。ありがとね~、リウ」
 そこに、大きなお耳を揺らしながらゆっくりとした足取りで登場するシモン。
「シ、シモン……でも、間に合わなかったよぉ」
 大きな目に涙を湛えながら振り返るリウティナ。
 まあまあ、と言いながらポンポンとリウティナを撫でるシモン。
「だからそう慌てなさんなってー。二人共、わたしの手に掴まりなよ」
「「……手?」」
 思わずハモるリウティナとリコット。
 言われるがままにシモンの手を握りしめてみたものの、
「こんなところで握手してどうするのさ~……」
 とリウティナが言い終えた瞬間。

「だから、わたしが連れてってやるってば」
 その腕がぐいっと空に向かって引っ張られた。

 【空中浮遊】と【怪力】を併用したシモンが、二人を持ち上げたのだ。
「わわ……!」
 思わず両手でしがみ付くリコット。長い髪が風に揺れ、地面がグングンと遠ざかってゆく。
「あ、そっか! シモン飛べたもんね! それなら最初にそう言ってよ~。良かった~!」
 パッと顔を輝かせるリウティナと、目のくらむような高さにめまいを覚えるリコット。
「シモンさん……最初からわかってたんですね……。なんだか、意地悪です……」
 下を見ないようにしながら、口を尖らせるリコット。
「いやいや最初に言おうとしてたってば! 勝手に早とちりしてたのはあんた等っしょ!」
 やがて飛行船に追いつき、バルコニーに二人を降ろすシモン。
 走って汗だくになった身体を、高空の涼やかな風が優しく撫でる。
 乗り出すように下を見やれば、帝都の街並みが地平の先までどこまでも広がっていた。
「なんだか、ミニチュアの街みたいだね」
 クスっと微笑んだリウティナに、二人も微笑みを返す。
「ええ。間に合わなかったけど、間に合いました」
「二人共、わたしに感謝してもいいんだよ~?」
 なんだか安堵の気持ちが止まらなくって、思わず笑いあってしまう三人。
 依頼はまだまだこれから。
 でも今は、三人の力で掴んだこの一時を大切に分かち合ってみてもいいだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

篁・綾
POW分野で
アドリブ連携等は歓迎で。

…まぁ大雑把でいいわよね。
最悪は飛んででも追いつくとして。
服装だけは女学生風の袴とブーツにしておきましょう。

【空中戦】技能を生かして、足場に出来るものはなんでも足場にして急ぎましょうか。
ナニカの天井とか、ナニカの屋根とか。
人の隙間は指定UCで人型を捨ててすり抜けて、最悪そのまま飛び込みましょう。
割符を持っていれば、とりあえずはいいのよね。
UDCのでんしゃと同じようないめぇじでいいのかしら。
無事飛び込めたら、身なりを整えて船内を散策するとしましょう。
情報収集もかねてね。好奇心だけじゃないわよ。ええ。




舞い散る桜と、芝の広がる飛行場。
悠然とした佇まいで停泊するのは黒き双胴の巨大飛行船。
「成程。あの船のようね」
  扉を潜って現れたのは、大正ロマンを感じさせる女学生風の袴とブーツを着こんだ少女、篁・綾(幽世の門に咲く桜・f02755)。
 周囲を見渡せば、ここは空港の屋上展望台らしい。
 近くには飛行船を見送るために集まった一般人の人々の姿もある。
「急げ、とは言われたけど……まぁ大雑把でいいわよね」
最悪は飛んででも追いつくとして、と綾。
とはいえ、遅れないことに越した事は無いだろう。
もし、搭乗チケット無しで乗り込めば、乗船してから船員とトラブルになる可能性もある。
 焦り過ぎて事をしくじらないよう、あくまで冷静を心掛けながら走り出す綾。
 屋上展望台から空港の建物内へと入る。
さて、ここで選ぶべきはエレベーターよりは階段か。
「足場に出来るものは、なんでも足場にして急ぎましょうか」
 一迅の風が吹くように、踊り場から踊り場へと飛び移ってゆく綾。
方向転換も壁を蹴ったほうが速い。跳弾する弾丸の如く、階段を駆け降りてゆく。
 フロアごとの案内表示を注視すれば、目的の場所を見つけることは容易い。
「2階、搭乗ロビー……ここね」
 黒髪をなびかせながら、廊下を駆け抜けてゆくと、やがて一際広い開けた空間、搭乗ロビーへと辿り着く。
「割符を持っていれば、とりあえずはいいのよね。
 UDCのでんしゃと同じようないめぇじでいいのかしら。」
 ふむ、と考え込む綾。
 その認識は大体はあっているものの、こと飛行船だと同じ行先でも、航空会社によって発券所が異なるからわりと判り難かったりする。
 初めての手続きでは戸惑う人も多いとか。
「そういえば、あの黒い飛行船……なんという名前なのかしら?」
 口元に指を寄せて考えていると、横に居た親切なおばあさんが振り返り――。
「あら貴女。ダイダラニック号に乗るのかい? それなら急がないと! もう出発するところよ」
 どうやらダイダラニック号というらしい。
「ご親切にどうも。では急ぎますね」
 おばあさんに小さく笑いかけ、グッと深く身を屈める綾。
「貴女、急ぐと言っても……この人混みじゃぁ……」
 搭乗ロビーは旅行カバンを持った一般客で溢れかえっている。
「残念だけど、ちょっと間に合いそうもないわねぇ――」
 と、おばあさんが吐息をつこうとした瞬間。

「そうでもないわ」
 と、綾の身体が桜の花弁へと変化した。

 細やかな桜吹雪が人混みの隙間を縫って吹き抜ける。
「――あれまぁ」
 と、手品を見るように眼を丸めるおばあさん。
 一瞬にしてダイダラニック号の発券所へと辿り着いた綾。
 桜吹雪が再び集まり、人の姿へと戻ってゆく。
 ちょっと驚いている受付の女性を促しながら、チケットを購入してゆく。
「これが飛行船のチケット……随分と大きいのね」
 UDCアースで見た切符より、一回りも二回りも大きい。紙質もなんだか豪華である。
「と、そんな場合じゃなかったわ」
 あとは飛行船に飛び込むだけだ。最後の力を振り絞って、ラストスパートをかけてゆく綾。
 走るその先、ついに巨大な双胴の飛行船が見えた。
 今まさに空港職員によって飛行船に乗り込むための舷梯(げんてい)が外されようとしているところである。
「待って、まだ乗るわ」
 滑り込むように船内へと駆け込んでゆく。
「本当にギリギリだったわね……」
 噴き出す汗と、どこか心地よい疲労感。乱れた着衣を整えながらまずは一息。
「それにしても……まるで高級ホテルのようね」
 赤い絨毯と気品の感じられる調度品。モダンな雰囲気ながらも、いずれもピカピカの新品だ。
「さて、まずは船内を散策するとしましょう」
 サクラミラージュが誇る新造の超豪華客船。あとはここに潜むオブリビオンを討伐するだけだが――。
「情報収集もかねてね。好奇心だけじゃないわよ。ええ」
 どこかワクワクした様子で足取りを弾ませながら、綾は捜索を開始するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『『廃棄物』あるいは『人間モドキ』』

POW   :    タノシイナァ!アハはハハはハハハハハハハハハ!!
【のたうつような悍ましい動き 】から【変異した身体の一部を用いた攻撃】を放ち、【不気味に蠢き絡み付く四肢】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    ミてイルヨ、ズットズットズットズットズット……!
自身の【粘つくタールが如き何かが詰まった眼窩の奥】が輝く間、【歪んだ出来損ないの四肢】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    アソボうヨ!ネエ、ネエ、ネエ、ネエ、ネエ……!
【嫌悪や憐れみ 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【自身と同じ存在達】から、高命中力の【執拗な触腕による攻撃】を飛ばす。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 手分けしながら一等客室を重点的に探索してゆく猟兵達。
 だが、『敵』の出現を感知したのはオブリビオン側も同じだった。
「博士! 博士ェ! 敵を見ツけタヨゥ」
「猟兵、猟兵ダ! 敵が来るヨッ!」
 耳障りな甲高い声をあげながら、蛇と人間を掛け合わせたような異形が現れる。
 『人間モドキ』、白い女が研究の過程で作り出した出来損ない達である。
「あら偶然……にしては、少し出来すぎていますね。
 もしや、こちらの動きが察知されていた……?」
 思考を巡らしながら女は令嬢を抱きかかえてゆく。
「まあ、いいです」
 白い女としては、この新しい素体さえ手に入ればいいことだった。
 つまり、無理して猟兵どもの相手する気などサラサラない。

「あとはお前たちに任せます。『好きにやりなさい』」
 主の赦しに、人間モドキたちは喜びの歓声をあげる。
 彼らにとって必要なのは、『悲鳴という娯楽』と『完全な人型となるためのパーツ』だ。
 この大勢の乗客を乗せた豪華客船の中ならば、人間モドキたちの欲求は思う存分に満たすことが出来るだろう。

 その結果、飛行船が沈むことになっても……それは白い女にとってはどうでもいいことだった。
「さて……ここから退散するにしても、まずは甲板まで出る必要がありますね」
「――! ――ッ!」
 口を押えられながら必死に助けを呼ぼうとする令嬢。
「さあ行きなさい、出来損ないども。
 もしパーツを収集して戻ってきたら、あとで縫い合わせてあげますよ」
「ハぁーイッ!!」
 溢れ出すように客室から飛び出してゆく『人間モドキ』達。
 猟兵と人間モドキ。白い女が逃亡するまでの時間をタイムリミットとして――。戦いが始まる。
蔵方・ラック
ええと、このまま乗客がパニックになったら誘拐犯も逃げやすくなるでありますよね?
うん!そりゃいかんであります!
とりあえず〈大声〉と〈鼓舞〉で客室から出ないように、一等客室方面に来ないように呼びかける!自分たち猟兵に任せておけであります!!

オブリビオンたちは……ふむ、何だか自分と近いものを感じるでありますね(自らも実験体であった事、記憶にはなくとも記録では知っている。嫌悪は湧いてこない)
ん、じゃあ、遊ぶでありますかぁ!!

UCで周囲の無機物を変形させ、絡め取るように動きを封じる
人間のパーツより、こういうのがオススメでありますよ!
そのまま締め上げるか、止めは他の仲間に頼んでもいいでありますね!


マリウス・ストランツィーニ
まずはこいつらを倒さなければ御令嬢には会えないらしい。
いや、それ以前にこのままでは乗客が危険だ
……望むところだ!人々に危害を加えることは許さんぞバケモノども!

乗客達を避難させつつ、敵が襲うのを防ぎながら銃による「零距離射撃」と剣の「切り込み」で戦う!
触腕による攻撃は私のUCで弾き飛ばし、本体にとどめを刺す!




 赤い絨毯とモダンな内装。まるでクラシック映画のセットの中に迷い込んだかのようなダイダラニック号の内部。
「それにしても広いでありますね~。とても飛行船の内部とは思えないであります」
 飛行船内を散策しながら、蔵方・ラック(欠落の半人半機・f03721)が溜息に似た感想を漏らす。
「双胴型巨大客船、ダイダラニック号。
 二基の巨大バルーンで高級ホテルを丸ごと空に浮かべた代物で、キャッチコピーは『絶対不沈の安心感。快適な空の旅を貴方に……』だそうだ。
 現在位置は中層の、この辺りだな」
 手元の地図を指差しながらマリウス・ストランツィーニ(没落華族・f26734)が一言。
「え……いつの間に手に入れたのでありますか? そんな地図」
「地図というよりはパンフレットの裏面だな。そこかしこに置いてあるぞ」
 観光地か、と思いながらも便利なので利用させてもらうことにする。
「へ~、映画館、バー、カジノ。おっと理髪店まで……なんでもござれでありますね」
 内部地図に目を通しながら感心するラック。
「まったく、豪勢なことだ」
 マリウスは苦笑し地図を折りたたむ。
 没落華族であるマリウスにとって、このような贅を尽くした施設は色々と思うところがあるのかもしれない――。
 と、まぁ、それはともかく。
 誘拐事件が起こるという一等客室の位置を確認し、二人は進む。


「ここだな」
 チーンと小気味よいベル音を響かせながらエレベーターの扉が開く。
 飛行船内部とは思えない広いエレベーターホールと、貴賓を迎えるための煌びやかな内装。
 そして、ホールから続く通路と、整然と並んだ客室が確認できる。
「このフロアのどこかにオブリビオンが潜んでいるのでありますね!」
 と、ラックが気合を入れ直そうとした、まさにその時――。
「アハはハハはハハハハハハハハハ!! ミーツケエタ!」
 甲高い笑い声が響き渡り、通路の先から芋虫のような姿をした『人間モドキ』が次々と這い出してくる。
「まずはこいつらを倒さなければ御令嬢には会えないらしいな。
 いや、それ以前にこのままでは乗客が危険だ」
 溢れ出してくる人間モドキ達の侵攻を抑えるように、マリウスは立ち塞がる。
「……望むところだ! 人々に危害を加えることは許さんぞバケモノども!」
 ストランツィーニ家に代々伝わる名刀『八重霞ノ太刀』を抜き放つマリウス。
「う、うわあああ、バケモノだぁああああッ!」
 ホールに居た一般人が悲鳴を上げる。
 その混乱は瞬く間にフロア内、いや船全体へと伝播していくことになるだろう。
「ええと、このまま乗客がパニックになったら誘拐犯も逃げやすくなるでありますよね?
 うん! そりゃいかんであります!」
 機転を効かせて、ラックは大声で叫ぶ。
「落ち着いてください!
 皆さん、客室から出ないように、一等客室方面に来ないように!
 こいつらの相手は、自分たち猟兵に任せておけであります!!」
 ビリビリと響き渡るラックの声。恐慌状態に陥りかけた人々はなんとか我を取り戻し、たどたどしい足取りながらも避難を開始してゆく。
「アソボうヨ! ネエ、ネエ、ネエ、ネエ、ネエ……!」
 人間モドキが触腕を伸ばし、逃げる一般人を捕まえようとする。
「させるか!」
 上段から振り下された八重霞ノ太刀が敵の触腕を断ち切る。耳をつんざく絶叫と共に絨毯の上をのたうち回る人間モドキ。
「ストランツィーニ家の名に懸けて、ここは通さん!」
 そのマリウスの射抜くような瞳に、人間モドキは警戒するように間合いを取ってゆく。
「タノシイナァ! コロシアイ! アハはハハはハハハハハハハハハ!!」
 狂気を宿して高らかに笑う人間モドキ達。
 それは感情の欠落した、人間のなれの果てだ。
「ふむ、このオブリビオンたち……。何だか自分と近いものを感じるでありますね」
 エレベーターホールにいた人々を避難させ終えて、改めて敵と相対してゆくラック。
「そうか? 私にはあまり似てはいないように見えるが――」
 敵の群れに銃弾を撃ち込みながら、一瞬だけラックの横顔を見やるマリウス。
「うーん、気配というか、なんというか……うまく言い表せないでありますね」
 自らも実験体だった過去。
 ラックにとってそれは『記憶』ではなく、単なる『記録』として知るものではあるのだが――。
「ネェ、お兄チャン! アソボうヨ! アソボウヨォおおおヲ! ボク、眼球ガ足りないンダ! チョウダイ! ネェ! チョウダァイ!」
 ボコボコッと肉が泡立ち、不気味に蠢き絡み付く四肢がラックへと振るわれる。
 一般的な感性で見れば、きっと吐き気を催すような醜い姿なのだろう。
 だが、ラックは不思議と、この敵に対して嫌悪は湧いてこない。

 実験体。欠落の半人。人間の、成り損ない。
 やはり、『似ている』のだ。

「ん、じゃあ、遊ぶでありますかぁ!!」
 まるで遊び盛りの子供と相対するお兄のように、ラックは微笑む。
 ラックのユーベルコード【スクラップヤード】が発動。
 周囲の配管が蔦のようにメキメキと形を変えて、敵陣をまるごと絡めとり、その動きを封じてゆく。
「人間のパーツより、こういうのがオススメでありますよ!」
「グギギ、ギ……! コレナラ!」
 動きの制限された人間モドキ達は、反撃に触腕を伸ばすが――。
「二度目だ。その技を見るのはな」
 迫り来る敵の触腕に、マリウスは退くことなく前進する。
 一瞬にして詰まる彼我の間合い。刹那の見切りでマリウスは敵の触腕を弾き飛ばした。
「――ナッ!?」
 窪んだ眼窩を驚愕で見開く人間モドキ。
『霧散せよ!』
 霧のように夢幻、その刃は視認すること叶わず。振るわれる斬撃は【拒戟刃(リフレッティ・ラ・バーラ)】。
「――ッ」
 一拍遅れて血が飛沫き、両断されたことに気が付いた敵が沈んでゆく。
「これで第一陣は制圧でありますね」
「ああ。そして……ここから先は叩き切りながら進むしかないようだな」
 ヒュンと刃から血を払い、マリウスは通路の先にいるであろう敵の首魁を睨みつけるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
【捜し鼠】で見つけた客室に向かう途中にオブリビオンが現れやがった。どうやらビンゴのようだぜ。
「この船には一般の乗客もいます。見過ごす事はできません。」
おうよ、相棒。さっさと片付けて先に進むぞッ!

雷神霊装でいくぜ、相棒ッ!
「・・・転身ッ!」
引き上げたスピードと反応速度で一気に距離を詰めて破魔の雷撃を纏った妖刀でぶった斬ってやるぜ。
敵の攻撃は見切って避けながら逆にカウンターを叩き込んでやる。

敵を倒したら客室に向かう・・・いや、どうやら敵の親玉は甲板に向かっているようだな。
「・・・急いで追いかけましょう。」


【技能・先制攻撃、破魔、見切り、カウンター】
【アドリブ歓迎】


クロノ・ライム
人間モドキだなんて…博士とやらは酷い実験をしていたようですね。

許せませんが、まずはとりあえず乗客を落ち着かせましょう。
「お菓子の時間」で僕は機内販売員に扮して乗客や仲間にお菓子やお茶を給仕します。
お菓子を食べて落ち着いてもらい、同時にオブリビオンの動きを遅くすることで攻撃回数の増加を抑えるのです。

乗客が落ち着いたらオブリビオンのいる所からなるべく離れるように避難してもらい、
その後はオブリビオンから少し距離をとって氷属性の全力魔法で攻撃します。
火とかだと飛行船に燃え移ったら大変ですからね。
時間は限られていますが、落ち着いて行動しましょう。




 赤い絨毯とモダンな内装。まるでクラシック映画のセットの中に迷い込んだかのようなダイダラニック号の内部。
「……見つけました」
 式神【捜し鼠】を操っていた神代・桜が、静かにその瞳を開ける。
 いや、正確には、見つけたというよりは『途絶えた』と言うほうが正しいか。
 鼠の一匹が消息を絶った地点に目星をつけて、桜は歩き出す。
「それにしても、飛行船の中とは思えねぇ広さだな」
 周囲を見渡しながら神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)。
 きっと途方もない金と労力が注ぎ込まれて建造されたに違いない。
「一流のホテルをそのまま空に浮かべる、というのがこの船のコンセプトらしいですからね。なんでも映画館やカジノ、プールまで艦内にあるとか」
 サクラミラージュの観光ガイドブックの内容を思い出しながら、クロノ・ライム(お菓子に目がないクレリック・f15759)。
「そして! なんとこのダイダラニック号。本日が竣工記念の初航海なのですよ! いやー、乗ることができて感激です!」
 キラキラと瞳を輝かせるクロノ。
「なるほどな、通りで真新しいわけだぜ。
 だが、そんな記念すべき最初の飛行でオブリビオンの奴がご登場とは、ずいぶんとツイてねぇ船だな」
「ダイダラニック号……。船名もどこか不吉です」
 UDCアース出身の桜が某有名映画を思い出しながら一言。
 というわけで、沈没フラグがハンパないこの船が無事に目的地である『紐育』へと辿り着けるかは、猟兵達の活躍にかかっているのだった。


「あ、見て下さいコレ。帝都の一流レストランに在籍する三ツ星シェフが振る舞う、夕食パーティーだそうですよ!」
 機内のそこかしこに置いてある艦内案内用パンフレットを開きながらクロノ。
「おう、依頼が終わったらな~」
 名残惜しそうにするクロノをグイグイ押してゆく凶津と桜。
 中層から、一等客室のある上層へと急ぐ。やがて――。
「一等客室への階段……ここですね」
 ここを登れば、捜し鼠の一匹が消息を絶った場所のすぐ近くだ。
 意を決して階段を上ってゆく三人。
 と、その時である。

 アハはハハはハハハハハハハハハ――。

 階段の先から、奇妙な声が響いてきた。
「これは、子供の笑い声……でしょうか?」
 悪い予感がして、咄嗟に身構えるクロノ。
「どうやらビンゴのようだぜ」
 牙を剥いてニヤリと笑う凶津。

「ミーツケタァ! ネエ、アソボうヨ!」

 階段の先から現れたのは、芋虫と子供を混ぜ合わせたような、異形の生物『人間モドキ』。
「……博士とやらは酷い実験をしていたようですね」
 一目見て解る、人間だったモノの成れの果て――。
 悲痛な表情を浮かべながら、エレメンタルロッドを構えるクロノ。
「この船には一般の乗客もいます。見過ごす事はできません」
 桜もまた、妖刀を抜き放つ。
 恐らく、この階段が一つの防衛ラインとなるはずだ。ここを崩されれば、船内に大きな被害が出るに違いない。
 そして――。
「なんだなんだ? なんの騒ぎだ?」
 三人の背後、騒ぎを聞きつけた一般人たちが客室から顔を覗かせてくる。
「う、うわあああああッ! バ、バケモノだぁああ!」
 人間モドキの姿を見た瞬間、悲鳴があがる。
 連鎖するようパニックが拡大しようとした瞬間、クロノは動く。
「凶津さん、桜さん。少しの間、敵を押さえていてください。まずは乗客を落ち着かせてみます!」
「おう! 頼んだぜッ!」
 恐慌状態に陥りかけた人々の元に駆け寄るクロノ。発動するユーベルコードは【お菓子の時間(スイーツタイム)】。
「皆さん! こちらに集めたのはどれも有名なお店のスイーツばかりです。さあ召し上がれ!」
 良く通るクロノの声が響き渡る。
 機内販売員に扮したクロノが乗客や仲間にお菓子やお茶を次々と給仕してゆく。
「ほら、泣かないでください」
 小さな子供の前に屈みこみ、視線を同じ高さに合わせながら優しく笑いかけるクロノ。
「あ、ありがとう。おにいちゃん」
 6歳ぐらいの少女は、クロノから貰ったまんまるの飴玉をなめると、少しだけ落ち着いたようだ。
「ここは僕たち猟兵に任せて下さい。
 皆さんは、なるべくこの場所から離れて、乗務員さんの避難指示に従ってください」
「うん!」
 クロノの呼びかけに人々は何とか頷きを返し、この場からいそいそと離れてゆく。
「よっし、ナイスだぜッ! クロノ」
 これで戦闘に集中できる、と凶津。
「さーて、相棒。さっさと片付けて先に進むぞッ! 雷神霊装でいくぜ!」
「……転身ッ!」
 桜が凶津を装着した瞬間、妖刀に電光が迸った。
 身体能力の限界を超えて、引き上げられてゆくスピードと反応速度。

 振るわれる刃は、まさに紫電一閃。

 怒涛の如く押し寄せる敵を、まとめて切り伏せる凶津。
「オ、オギャァアアアアッ!」
 耳をつんざく人間モドキ達の耳障りな悲鳴。だが、それも長くは続かない。
「氷の精霊よ。力を貸してください」
 空気中の水分が凍結してダイヤモンドのような細やかな粒子を残す。クロノのエレメンタル・ファンタジアが追撃として放たれ、人間モドキ達を氷像に変えてゆく。
「火とかだと飛行船に燃え移ったら大変ですからね。
 時間は限られていますが、落ち着いて行動しましょう」
 飛行船内という特殊な戦場でも、柔軟に対応してゆくクロノ。
 階段から降りてくる敵を押し返しながら、三人は進んでゆく――。
「おッ、あいつが敵の親玉か!」
 人間モドキを討ち払う戦いの最中、一瞬だけ階段の先に令嬢を抱えた白い女の姿が見えた。
「どうやら甲板に向かっているようだな」
「……急いで追いかけましょう」
 逃がすものか、と一丸となって敵を打ち倒してゆく3人。
 飛行船内部での戦いは、いよいよ佳境へと差し掛かってゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リウティナ・スピネルレッド
【Star Wind】
呼称は、シモン(f27298),リコット(f27299)だよ。

さて!それじゃ本腰を入れてあらためてお仕事を始めよっか。――ってどう見ても、この船のお客さんじゃなさそうなのがいっぱいいるんだけど……
とにかく、他にもお客さんはいるし、被害が大きくなる前になんとかしなくちゃだね!

とりあえず普通の攻撃で牽制をしつつ、敵の攻撃を【見切って】ここぞってタイミングにUCで一掃するよ!
ある程度数が減ったらシモンの言う通り、誘導されながら、シモンのサポートに回って、露払いをするね!

※アドリブ歓迎


シモン・ピェール
【Star Wind】
呼称は、普段は相棒(f27298)時々、リウ。
普段はリコット(f27299)時々、リコ防。

おっ?来て早速歓迎してくれるの?流石豪華客船!サービスがなってるなぁ~。

それにしても、来て早々こんなのしてくれるって事は、もしかして敵さんは少し余裕がないのかね?って事で、こんな足止めの相手は程々にしてUCを使って行くべき場所に目処をつけつつ、【恐怖を与える】【吹き飛ばし】で敵を退かして、二人を先導するよー。

※アドリブ歓迎


リコット・アプリィー
【Star Wind】
呼称は、ご主人(f26107),シモンさん(f27298)です。

人間になりたい……?もしかして、あなた方も作られた存在なのですか……?私も作られた存在で人間になりたい気持ちは良くわかるので、同情してしまいそうです……。ですが、人であるというのは本当に見た目だけで決まるのでしょうか?私は人の体ではなく、皆様からもらった、この人の心を大切にしたいと思ってます。だからあなた方も人の体ではなく、心を……と話を続けながら、UCを使って【見切り】からの【カウンター】で向かってくる火の粉は振り払います。

※アドリブ歓迎




 高空の風が汗ばんだ身体を心地よく冷やしてゆく。
「あ、見て下さい。あそこ」
 リコット・アプリィー(清らかなる自律人形・f27299)の指さした方へと視線を移せば、そこには空港の屋上展望台があった。
「ついさっきまで、あの場所に居たのに……もうこんな遠くまで」
 展望台からは、飛行船を見送る人たちが手を振ってくれている。
「ふふっ」
 思わず、小さく微笑むリコット
 きっとそれは、この船に乗る誰かへの見送りなのだろうけど――。
 なんだか、自分自身に手を振ってくれているように思えて。
「いってきますね」
 遠ざかってゆく人々に、リコットも手を振って応える。
「おっ、どしたの? リコットの知り合いでもいたのかい?」
「いえ、そういうわけではないのですが……なんとなく、です」
 はにかむようなリコットの姿に、シモンは「変なの~」と苦笑しながらも、
「いえーい、お見送りありがとね! バイバーイ!」
 その場のノリで合わせてくれるシモン・ピェール(一般兎(自称)・f27298)。
 やがて、見送り客も、空港も米粒ほどの小ささになってゆき――。
「さて! それじゃ本腰を入れて、あらためてお仕事を始めよっか」
 気合を入れ直すリウティナ・スピネルレッド(廻る冒険家・f26107)に、シモンとリコットも「お~!」と応える。
 まずは甲板から船内に乗り込むための扉を探す。
「見つけた。あそこだね!」
 リウティナがスライド式の扉を力を込めて開くと、ゴウッと気圧差による風が吹き、三人の髪を揺らした。
「うっわ……すっごい豪華じゃん」
「ま、まるでホテルの中みたいですね」
 赤い絨毯とモダンな内装。まるでクラシック映画のセットの中に迷い込んだかのようなダイダラニック号の内部。
 誘拐事件が起こるという一等客室を探して、三人は豪華客船の内部へと足を踏み入れてゆく。


「ね~、リウ。このダイダラニック号にはカジノまであるんだってさ。ちょっとだけ遊んでいかない? わたしが活動資金を倍にしてあげるよ~」
「え~……。お仕事が終わったらね。
 ――て、そんな情報どこで仕入れたの?」
 小首を傾げるリウティナに、得意顔でウィンクを返すシモン。
「艦内案内のパンフレットがそこのラックに差さってたのだよ。
 はい、二人の分も貰ってあるよ~」
 受け取った四つ折りのパンフレットを開いてみれば、そこには艦内施設のご案内と各種クーポン券……そして裏面には船内の大まかな地図が描かれていた。
「一等客室のエリアは一階の船尾方向……この通路の先ですね」
 現在位置を確認しながらリコットが呟く。
「だいぶ探索の手間が省けたね。よーし、行こう!」
 順調な滑り出しに意気揚々と歩を進めようとする三人だったが――。
『異変』は目的地の方角からやってくるのだった。
「あれは――?」
 白熱灯で煌々と照らされている通路の先。無数の人影が此方へと向かってくる。
「おっ? 来て早速歓迎してくれるの? 流石豪華客船! サービスがなってるなぁ~」
 なんて、気楽におどけてみせるシモンだったが――。
 『そいつら』が明らかに普通の人間ではないことは、遠くからでも一目瞭然だった。
「――ってどう見ても、この船のお客さんじゃなさそうなのがいっぱいいるんだけど……」
 まるで芋虫のようにズルズルと這いまわりながら、通路を埋め尽くさんばかりの数で押し寄せてくる『人間モドキ』たち。

「猟兵、ミィイイツケタァアアアッ!」

 甲高い耳障りな声が通路内に響き渡る。
「うへ~……もはやホラー映画じゃん」
 兎耳を垂らしながらゲンナリとした様子でシモン。
「それにしても、来て早々こんなのしてくれるって事は、もしかして敵さんは少し余裕がないのかね?」
 バトルソルレットを構えて、シモンは迫り来る敵を迎え撃つ。
「ネェ、足をチョウダイ! ソの足がアレバ、ボクは人間ニ成れルンダ!」
 人間モドキの肉がボコボコと脈動してゆく。突然、敵のその腕がシモンを狙って伸びた。
 伸縮可能な触腕攻撃。相手の不意を突く人間モドキの得意技だ。
 だが――。
『視えた? 違うね。知ってた』
 ユーベルコード【Fortuna Laplace's(フォルトゥーナラプラス)】。
 まるでその攻撃を読んでいたかのように、シモンは軽快なステップを踏んでこれを回避する。
 触腕が虚空を掴む。伸びきったその腕に超硬度のバトルソルレットを叩き込むシモン。
「ウッギャぁアアッ!?」
 つんざくような敵の悲鳴。

 その騒ぎを聞きつけて、3人の背後の客室から一般客達が「なんだ、なんだ?」と顔を覗かせてくる。
「うッ、うわああああ! バケモノだぁああ!!!」
「ひ、ひいいい!!?」
 恐慌状態に陥りそうになる一般客達。
「大丈夫だよッ! この場はわたしたちに任せてー!」
 背負うものがある以上、一歩も引くわけには行かない。
 ロングソードを抜き放ち、雪崩のように押し寄せてくる敵の群れに、自ら飛び込んでゆくリウティナ。
「くらえ! リウちゃんアタック!」
 ドンッと地響きのような振動が飛行船を揺らす。大上段から振り下された重い一撃が、敵陣を二つに斬り裂いた。
「ちょ、リウ~。飛行船の中なんだから加減しなよ~?」
 船体に穴でも開いたら事件だぞ~、とシモン。
「あ、そうだったね――。
 うーん、でも他にもお客さんはいるし、被害が大きくなる前になんとかしなくちゃだし……!」
 まさに痛し痒しといったところか。
「じゃ、今回はわたしが二人を先導するからさ~。リウとリコットはわたしが討ち漏らしたヤツをお願いね~」
 と、言うが早いか、敵の触碗を撃ち落としながら先陣をきってゆくシモン。
「わかりました……。それでは参りましょう」
 リコットも頷いて、シモンに続く。
 一丸となって通路の敵を打ち倒してゆく3人。きっとこの先にこの事件の元凶である者がいるに違いない。


 数に物を言わせて押し切るつもりが、猟兵達の勢いに負けて徐々に押し込まれてゆく人間モドキたち。
「ク、クソォ……コンナトコロで……パーツを集メテ、戻れバ、人間ニ成レルのに……!」
 がむしゃらに触腕を振り回す人間モドキに対し、【流水の構え】をとるリコット。
「人間になりたい……? もしかして、あなた方も作られた存在なのですか……?」
 束ねた三つ編みが流れるように踊る。
 最小限にして紙一重。一切の無駄を省いた流れるような動きで、リコットは敵との間合いを縮めてゆく。
「アア、ボクタチハ、出来損ナイ……。デモ、人間にナレバ、博士ハ、キット認めメテクレル!」
 黒い眼窩からドロドロとした液体を零しながら、人間モドキは叫ぶ。
「そう、ですか……」
 相対するリコットは、一瞬だけ哀れむような目で人間モドキたちを見た。
 同じく、作られた存在であるリコット、彼らの人間になりたい気持ちは、痛いほど良くわかる。
 だが――。
 こうしてみている間にも、人間モドキたちの肉体はボコボコと脈動し、その末端部から徐々にグズグズになって崩れて始めているのだ。
 そう、彼らは結局、人間に似せて作られただけの肉のヒトガタに過ぎないのだ――。

 稼働限界が来ればそれで終わりの、使い捨ての、消耗品。

 人間になれば、というのも博士とやらが人間モドキたちに「やる気」をださせるために唱えた虚言にすぎないのだろう。
 敵に対して、思わず同情してしまいそうになるリコット。
「ですが、人であるというのは本当に見た目だけで決まるのでしょうか?
 私は人の体ではなく、皆様からもらった、この人の心を大切にしたいと思ってます」
 敵の変異した身体から四肢が生え出してくる。不気味に蠢く手がリコットを絡めとろうと迫るが――。
「だからあなた方も人の体ではなく、心を……」
 互いの息がかからんばかりの間合いまで詰めたリコット。敵の手が触れるよりも早く、神速の突きが放たれてゆく――。
「ゴフッ――!」
 胴体を撃ち抜かれ、人間モドキがくもった咳を漏らした。
 リコットの言葉が、最後に彼に届いたのかどうかは定かではないが――。
 力を失った敵の触碗がだらりと垂れ下がり、リコットの頬を撫でた。
「大丈夫? リコット」
 残っていた敵をオーラブレードで打ち払い、リウティナが心配して駆け寄ってくる。
  リコットは最後に倒した人間モドキをゆっくりと横たえさせて、
「大丈夫です、ご主人。行きましょう、きっとあと少しです」
 再び通路の先へと視線を戻してゆくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

篁・綾
アドリブ連携歓迎よ。

遊覧気分を楽しむ時間もなかったわね。
…さて、魍魎の類、と言えばいいのかしら。

ともあれ抜刀。
刀から舞い散る花を目潰しに使いつつ立ち回り。
…明らかに人体構造は無視してくるでしょうけれど、あちらの攻撃を上手く見切って、
オーラ防御に第六感、残像も駆使して回避していきましょう。
更にカウンターで桜の花吹雪を散らし、指定UCで範囲攻撃を。
味方は巻き込まないように注意するけれど。
命中させたらマヒ攻撃と幻覚による精神攻撃をかけつつ、破魔の力も乗せた
鎧無視攻撃で斬って捨てるわ。

…己が形を見失いしヒトガタ、疾く速やかに、散るがいいわ。
現世に、お前達の望みを叶えるものなどいないのだから……。


燈夜・偽葉(サポート)
★これはお任せプレイングです★
『ぶった斬ってあげます!』
妖狐の剣豪 × スカイダンサー
年齢 13歳 女
外見 黄昏色の瞳 白い髪
特徴 長髪 とんでもない甘党 柔和な表情 いつも笑顔 胸が大きい
口調 元気な少女妖狐(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、でしょうか?)

性格:
天真爛漫年下系ムードメーカー(あざとい)

武器:
刀9本
黄昏の太刀(サムライブレイド)を手に持ち
場合によっては念動力で残り8本を同時に操る

ユーベルコードはどれでもいい感じで使います

敵の動きは見切りや第六感を生かして回避
避けられなければ武器受けで対処します

多彩な技能を持っていて、問題に対していい感じで組み合わせて対処します




 飛行船を繋ぎ止めていたロープが取り外され、黒き巨大な双胴型豪華客船が空へと浮かび上がってゆく。
「たしか、誘拐事件が起こるのは一等客室だったわね」
 無事、飛行船の出港時間に間に合った篁・綾(幽世の門に咲く桜・f02755)は乱れた髪を整えて船内を探索するために歩を進めていこうとするが――。
 その時である。
「あ~、待って待ってぇ~! まだ乗りますから~っ!」
 と、息も絶え絶えに船着き場から走ってくるのは、9本もの刀を携えた白い髪の少女、燈夜・偽葉(黄昏は偽らない・f01006)。
「てぇーい!」
 と、桟橋からジャンプして飛行船に飛び乗ろうとする偽葉。
「……っと、無茶するわね。あなた」
 手摺りから身を乗り出して、綾が偽葉の手を掴む。
「あ、ありがとうございますぅ――!」
 瞳を潤ませながら偽葉。
 偽葉を飛行船に引っ張り上げて綾は安堵の吐息を吐き出す。
 そんな一連のドタバタで整えたばかりの着衣がまた乱れてしまうのだった。


 互いに簡単な自己紹介を済ませて、
「……ということは、綾さんもこの飛行船へオブリビオン退治に来た猟兵さんなのですね」
 耳をピコピコと揺らしながら偽葉は元気に微笑む。
「そういうあなたも猟兵なのね」
 対照的に落ち着いたクールな雰囲気で綾。
 まぁ、こうして出会ったのも何かの縁である。
 敵の戦力が解らない以上、バラバラに行動するよりは一緒に行動する方がなにかと都合もいいだろう。
 白と黒の妖狐。どこか対照的な二人は共に飛行船『ダイダラニック号』の探索を開始してゆく。
「さて……たしか、誘拐事件が起こるのは一等客室だったわね」
 なんだか二回目な気がする、この台詞。
「この地図によると一等客室のエリアは1階の船尾側です!」
「……いつのまに手に入れたの。そんな地図」
 地図を指差す偽葉に思わずツッコむ綾。
「搭乗口の近くに無料で置いてあったパンフレットです。
 裏面が地図でした。綾さんの分もありますよ~」
「……ありがとう」
 地図を頼りに船内を進む二人。
 赤い絨毯とモダンな内装。ダイダラニック号の内部は、まるでクラシック映画のセットの中に迷い込んだかのような雰囲気である。
 パンフレットに目を通しながら一階まで登って、一等客室がある船尾に向かって歩く。
「レストランに、映画館にカジノ……プールまであるのね。
 全く、飛行船の内部とは思えない広さね」
 贅を尽くした豪華客船の内部に溜息をつきながら、綾はパンフレットを折りたたんでゆく。
 せっかくだから色々と見物をしたいところだったのだが――。
 そう上手くいかないのが世の中ってものである。

「遊覧気分を楽しむ時間もなかったわね」

 通路の先に鋭い視線を送る綾。
 進む先から、甲高い耳障りな笑い声が響いてきたのだ。
「あれは――?」
 偽葉もまた身構える。。
「猟兵ミーツケタア。ネエ、ネエ、ネエ、ネエ、ネエ……! アソボうヨ!」
 通路の先から、芋虫のような異形が次々と現れる。博士と呼ばれるオブリビオンが放った『人間モドキ』たちだ。
「……さて、魍魎の類、と言えばいいのかしら」
 ともあれ抜刀してゆく綾。
「オブリビオンの配下ですね……!」
 偽葉もまた緋色の宝刀を抜き放って構える。
「……いくわよ」
「はい!」
 通路を埋め尽くさんばかりの魍魎の群れに、白と黒の妖狐の剣豪が飛び込んでゆく。
「ぶった斬ってあげます!」
 偽葉が念動力を操り、8本の黄昏の太刀を同時に抜き放つ。
 嵐のような剣線が幾筋も迸り、人間モドキ達を討ち払ってゆく。
「タノシイナァ! アハはハハはハハハハハハハハハ!!」
 黒い眼窩からドロリとした液体を垂らしながら、伸縮自在の触腕を伸ばしてくる人間モドキ達。相手の不意を突く、彼らの得意技だ。
「……明らかに人体構造を無視してくる気がしたわ」
 敵の触腕が綾を捉えようとした、その時――。
 綾の身体が舞い散る桜へとパッと変化した。
「――ッ!?」
 敵の触碗が虚空を掴む。
 吹き荒ぶ桜吹雪が眼に入り、敵が一瞬だけ瞳を閉じて怯んだ。
 それは刹那の一瞬。だが、その隙があれば綾にとっては十分だった。
「……己が形を見失いしヒトガタ」
 破魔の力を乗せた綾の斬撃が、袈裟懸けに振るわれる。
「疾く速やかに、散るがいいわ」
 鞘に収まった白銀の刃が澄んだ音を立てる。
「……? うウ、ガハァッ!」
 一拍遅れて、断ち切られた人間モドキの上半身が滑り落ちるようにして絨毯にゴトリと落ちる。
「現世に、お前達の望みを叶えるものなどいないのだから……」
 誰も気が付かないような一瞬だけ。
 どこか哀れむような視線を綾は人間モドキ達へと送るのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

イネス・オルティス(サポート)
『この鎧は一族伝統のもの、恥ずかしくなんて……』

アックス&ウィザーズ辺境のどこかにある隠れ里に住む一族の女戦士
〔一族伝統の鎧〕のビキニアーマーを愛用し主に〔巨獣槍〕という槍を使う
”ダッシュ”で近づき”なぎ払い”、”串刺し”等をよく行う

ボン・キュ・ボンのナイススタイルで、ビキニアーマーを普段使いしているため
無意識に周りを”誘惑”している事があるが本人は気づいていない
また”恥ずかしさ耐性”があるためか自分の格好より任務の達成を優先する傾向がある

アドリブ・絡み・可 ””内技能
描写はセクシーレベルまで




 オブリビオン退治の依頼を受け、サクラミラージュの飛行船『ダイダラニック号』に全力ダッシュで乗り込んだイネス・オルティス(隠れ里の女戦士・f06902)。
「ふう、なんとか間に合ったわね」
 イネスの白磁のような色白の肌に赤みがさす。
 大きな胸元の谷間に、滑り落ちてゆく一筋の汗。
「――ん?」
 一般の乗客たちの視線(主に男性客)を感じてイネスは額の汗を拭う。
「……駆け込み乗船はマナー違反だったかしら」
 集まった視線の意味をそう捉えたイネスさんであったが――。
 そのセクシーすぎるビキニアーマーのせいであることは明白だった。
「さて――」
 佇まいを直し、向かう先は事件が起こると予知された一等客室。
 超豪華客船、と謳われるだけあって飛行船の中は驚くほどに広い。まるで一流のホテルをそのまま空に浮かべたかのような印象だ。
 エレベーターに乗って、一等客船のあるフロアへ急ぐイネス。(なお、エレベーターの中でも視線を集めてしまった。駆け込んでいないはずなのに、何故……)
 チーンと軽快な音と共に扉が開くと、そこは大きなエレベーターホールになっていた。
 貴賓を迎えるための豪華な装飾と、整然と並んだ通路と客室。
「ここね……」
 と、イネスが呟いた瞬間。
 通路の先から、オブリビオンの配下である『人間モドキ』達が雪崩のように押し寄せてきた。
「猟兵ミイツケタァアア! アソボうヨ! ネエ、ネエ、ネエ、ネエ、ネエ……!」
 なるで肉の塊をスプーンで削いだかのような、窪んだ黒い眼窩と、口。
 耳障りな甲高い声を発しながら、イネスの元に殺到してくる芋虫人間達――。
「あなた達には悪いけど、ここで遊んでいるヒマはないのよ」
 巨獣の牙のような荒々しい穂先の槍を背中から抜き放つイネス。
 腰を屈め、槍は水平に――。通路の先を指し示すように、身構える。
「獣の一撃、くらいなさいっ!」
 一点突破の突撃、【巨獣撃(ビーストクラッシャー)】が放たれる!
 通路に群れた敵を一直線に穿ち抜くイネス。
「ガフ……ッ!?」
 串刺しとなった敵を、槍を振り回して拭うイネス。
「里の名誉のため、ここで止まるわけにはいかないわ」
 燃えるような赤茶の髪をかき分けて――。
さながら戦乙女のように凛として、イネスは再び槍を構えるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『『殺人者』狂気ノ科学者』

POW   :    トリニティの消えぬ太陽
【膨大な熱量を発生させる3個の石】を向けた対象に、【熱量を集束させた、大地すら焼き尽くす閃光】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD   :    ダイナマイトノーベル
【特大の超爆発を発生させる薬剤(複数個)】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    不死身の軍勢
【殭屍兵(不死身の肉体を持ち、噛み付き、】【毒爪で攻撃する)をレベル×100体を召喚】【し、数的戦力を確保する事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 令嬢を抱えながら、甲板を目指して歩く白い女。
 かつて帝都で稀代の若き天才と謳われながらも、科学の暗黒面に堕ちた『殺人者』狂気ノ科学者である。
「ふむ……人間モドキ達では猟兵どもを抑えきることが出来なさそうですね」
 周囲から響いてくる悲鳴や怒号、戦いの音を分析しながら狂気ノ科学者は呆れた様な吐息を一つ。
「所詮は失敗作ですね……時間稼ぎにもならないとは」
 猟兵達を避けるルートを選んでいるものの、もし甲板に辿り着いても、脱出用の飛球を用意するのに数分は掛かる。
 もしそうなれば――。
「私自ら猟兵どもと戦うことになるかもしれませんね」
 あまり非効率なことはしたくないのですが、と嘆息を浮かべる狂気ノ科学者。
「ぷは――ッ! や、離して……! 誰か、誰か助けて――!」
 抑えられていた口元が解放されて、令嬢が悲鳴を上げる。
 狂気ノ科学者としては、もはや騒がれようが大差はないと判断したのだろう。

「ご令嬢、貴女の事は事前に色々と調べさせて頂きました」
 狂気ノ科学者の口元が三日月のような微笑みを浮かべる。
「貴女ならきっと、翼の移植手術に適合するはずです。
 そうすれば、『籠の中の小鳥』だった貴女は、自ら意思で自由に空を飛べるようになる――」
 赤い瞳で令嬢を覗き込む狂気ノ科学者。
「家の意向に従うだけだった貴女の人生を……自らの運命を取り戻すのです。
 素晴らしいとは思いませんか?」
 実験の成功率を伏せながら、聞こえの良いことを並べてゆく狂気ノ科学者。
 無理やり連れて令嬢に抵抗されるよりも、こうして懐柔してしまったほうが時間の短縮になると踏んだのだろう。
「……自分の、運命を……?」
 白い女の言葉に、令嬢は戸惑う。
 家が選んだ見知らぬ男との愛のない結婚。
 自由な意思など無い、人形のような今後の人生……。
 それが、全て、一から変えられるかもしれない――。
 悪魔の囁きであると理解しながらも、それは令嬢にとって魅力のある提案だったのだ。
「そうです。文字通り、ご自分の翼で羽ばたくのです!」
 囁きに『乗った』ことを確認して、抱えていた令嬢を降ろす狂気ノ科学者。
「ささ、参りましょう。私のラボにお連れしますよ」
 グイグイと令嬢の手を曳いて、狂気ノ科学者は走り出す。
 すぐに猟兵達も追いついてくるはずだ。

 間に合うか、間に合わないか。瀬戸際の攻防が両者で繰り広げられようとしていた。
 ●補足説明
 場面は、「甲板に辿り着き、脱出用の気球を準備する狂気ノ科学者に追いついたところ」から始まります。
 基本的に戦闘プレイングでOKですが、令嬢になにか呼びかければ反応を示しますし、もしかしたら令嬢の今後の人生に何か影響が出るかもしれません。

 白い女、狂気ノ科学者は人間モドキよりはずっと強敵になります。ご注意ください。
神代・凶津
甲板にたどり着いたぜ。
敵は、彼処かッ!
「・・・人質にされた方も一緒です。」
風神霊装で飛ばすぜ、相棒ッ!
「・・・転身ッ!」

これなら、万が一気球で逃げられても追いかけられるぜ。
空を飛びながら敵の攻撃を見切って避けつつ、破魔の霊力を込めた薙刀で攻撃だ。
敵が殭屍兵とやらを召喚したら薙刀でなぎ払って浄化してやる。

拐われた嬢ちゃんに呼び掛けてみるか、相棒?
「・・・貴女の人生について、よく知らない私がどうこうは言えません。
ですが形だけの翼を手に入れた所で貴女が本当に欲しい物が手に入らないのは分かりますッ!」
結局の所、最後に決めるのは嬢ちゃんだがな。


【技能・空中戦、破魔、なぎ払い、浄化】
【アドリブ歓迎】




「オラオラァああッ! どきやがれ!」
  剣閃が瞬くたびに血風が舞う。
 押し寄せる人間モドキ共どもを斬り払い、甲板への階段を駆け上がってきたのは神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)と相棒の桜。
「敵は、彼処かッ!」
 扉を蹴破りながら甲板へと辿り着くと、病的なまでの白い肌を持つ科学者風の女が振り返る。
 こいつが今回の事件の首謀者である狂気ノ科学者に違いない。
「……人質にされた方も一緒です」
 桜の言葉どおり、その隣には金髪ロールの如何にもなご令嬢の姿。
「ですが、妙ですね……」
 令嬢はとくに拘束されているわけでもないのに、オブリビオンの元から逃げようとしない。
 つまり、自分の意思で狂気ノ科学者に連れ添っている、というこだ。。
「おいおい、どういうことだこりゃ?」
 令嬢は猟兵達の姿を認めると、逡巡するかのような複雑な表情を浮かべる。
 それを代弁するかのように進み出るのは狂気ノ科学者。
「ご令嬢は、私の実験に協力してくださるのです。
 つまり、これは本人の同意の元であり、誘拐事件などでは無い――。
 貴方がたもここで手を引いて頂けませんか?」
 淡々とした口調でそう告げる狂気ノ科学者。
「ハッ、上手く言い包めたってわけか。このペテン師が」
 ヒュンヒュンと薙刀を振り回し、構え直す凶津。
 凶津としては敵の詭弁なんぞに付き合う気はサラサラない。
 だが――。
「拐われた嬢ちゃんに呼び掛けてみるか、相棒?」
 凶津の言葉に桜はややあって頷く。
 仮面を少しずらして、桜は真っ直ぐに令嬢を見つめ、
「……貴女の人生について、よく知らない私がどうこうは言えません。ですが――」
 ギュッと薙刀の柄を握りしめる。
「形だけの翼を手に入れた所で、貴女が本当に欲しい物が手に入らないのは分かりますッ!」
 サクラミラージュの永年桜花が桜吹雪となって舞い踊る。
 ユーベルコード【風神霊装(ストームフォーム)】。荒々しい風を纏いながら桜は己の言葉を令嬢にぶつけてゆく。
 桜の真っ直ぐな視線から逃れるように、令嬢は視線を下に落とす。
「……わ、私が本当に欲しい物……それは――」
 周囲に流されるだけの人生、何も決められない無力な自分。
 私が憧れた本当の自由とは、一体何だったのだろう――? と令嬢は押し黙る。

 だが、彼女が迷っている間にも、状況は刻々と変化してゆく。
「……やれやれ、戦わずに済むのなら、それに越したことはなかったのですが――」
 狂気ノ科学者が紫色の試験管を甲板に叩きつけられると、ボコボコと殭屍兵が湧き出してくる。
 それが戦闘開始の合図となった。
「飛ばすぜ、相棒ッ!」
「……転身ッ!」
 桜が凶津を被り直すと同時――風が爆発した。
 荒れ狂う暴風を纏いながら、凶津と桜は蒼天の空を翔ける。
「まぁ、結局の所、最後に決めるのは嬢ちゃんだがなッ!」
 溢れ出した殭屍兵を閃く薙刀で両断しながら、凶津は立ち尽くす令嬢に問いかけるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アリス・フォーサイス(サポート)
『そのお話、おいしそうだね。ぼくにちょうだい。』

 お話を食べる情報妖精です。依頼に参加する目的はそのためであり、お話が美味しくなるよう行動します。

 また、好奇心旺盛であり、上記の目的に反しない範囲で興味本位の行動をとることがあります。

 魔法や機械操作などの行動をとることが多いですが、そのときの気分でそれ以外の行動をとることもあります。

1人称:ぼく
2人称:キミ
3人称:~くん、~ちゃん

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!




 サクラミラージュでの令嬢誘拐事件を追ううちに、巨大飛行船の甲板で始まった狂気ノ科学者と猟兵の戦い。
「これぞまさにクライマックスってかんじだね」
 甲板を覆い尽くさんばかりに生み出された殭屍兵の群れを見ながら、アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)はにこやかに微笑む。
 舞台は遥か帝都の上空。
 眼下に広がる街並はまるでミニチュアのようで、
「もし、この飛行船が沈められたら、街に墜落してどっかーんってなっちゃうね」
 さて、とんでもねぇバッドエンドと隣り合わせであるこの状況。
 正直、笑っている場合ではないのだが……。
 『物語』が好物の情報妖精であるアリスにとっては、まさに願ったり叶ったりなシチュエーションであるともいえるだろう。
「とはいえ、バッドエンドじゃ……あと味が悪いよねっ!」
 どうせ食べるなら大団円だよね、とアリスはユーベルコード【アリスの世界(アリスワールド)】を発動させてゆく。
「いでよ! ぼくの分身!」
 ポポンと煙が爆ぜて現れたのは『アリスをデフォルメして小さくした少女達』である。
「わ~、ひこうせんだ~!」
「たかーい! すごいすごーい!」
 甲板を無邪気に駆け回るちびアリスたち。
「こら~! 観光はおしごとがおわってからだよっ!」
 アリスが号令をかけると、ちびアリスたちは「はーいっ」と整列してゆく。
「ふむ、奇妙な魔術を使うようですね……。ですが、数は此方のほうが上です。行きなさい、殭屍兵」
 乱されかけたペースを引き戻すように、狂気ノ科学者が殭屍兵の群れをけしかけてくる。
「さぁ、ぼくたちの手でこの物語をハッピーエンドにしちゃおっかっ!
 いっくよ~! ちびアリスたち!」
 えいえいおーっと拳を掲げるアリスに、ちびアリスたちも「お~!」と元気に応えてゆく。
 巨大飛行船の甲板で、ホラーでゾンビな奴らと、可愛いらしい人形達の仁義なき大戦争が勃発してゆく。

成功 🔵​🔵​🔴​

バジル・サラザール(サポート)
『毒を盛って毒で制す、なんてね』
『大丈夫!?』
『あまり無理はしないでね』

年齢 32歳 女 7月25日生まれ
外見 167.6cm 青い瞳 緑髪 普通の肌
特徴 手足が長い 長髪 面倒見がいい 爬虫類が好き 胸が小さい
口調 女性的 私、相手の名前+ちゃん、ね、よ、なの、かしら?

下半身が蛇とのキマイラな闇医者×UDCエージェント
いわゆるラミア
バジリスク型UDCを宿しているらしい
表の顔は薬剤師、本人曰く薬剤師が本業
その割には大抵変な薬を作っている
毒の扱いに長け、毒を扱う戦闘を得意とする
医術の心得で簡単な治療も可能
マッドサイエンティストだが、怪我した人をほおっておけない一面も

アドリブ、連携歓迎




 巨大飛行船の甲板で繰り広げられる『狂気ノ科学者』と猟兵の戦い。
「さあ、行きなさい、殭屍兵」
 狂気ノ科学者が召喚した殭屍兵が甲板を覆い尽くさんばかりの大軍となって、猟兵達に迫ってくる。
「って……ゾンビに効きそうな毒ってあったかしら……?」
 群れなして突っ込んでくる敵にあたふたとしながら、白衣の裏に仕込んだ毒を探すバジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)。
「えと、えと……! 死んでいても動いている以上は神経が繋がっているということだから――!」
 呻き声と共に覆いかぶさってこようとした殭屍兵を、身を伏せることによって寸前で躱すバジル。
 シュルルッと文字通り蛇の如く這い、敵の背後に回り込みながら尾下板で足払い。
 頭から派手に転倒した敵の頸椎に、突き立てるは必殺の注射器!
「筋弛緩薬、これなら――!」
 ビクンと跳ねるように痙攣し、動かなくなる殭屍兵。効果アリだ。
 ホッっと安堵の表情を浮かべて胸を撫で下ろすバジル。
 彼女が目指すクールビューティーの道は険しくも遠い。

「ふむ……貴女からは何処か、私と似た匂いを感じますね」
 相対するオブリビオン、白衣を纏った狂気ノ科学者がバジルを興味深げに見つめる。
「貴女も、科学の発展を理解せぬ愚物どもから『マッドサイエンティスト』と呼ばれたことがあるのではありませんか?」
「うぐ……」
 図星である。ハッキリと言われ押し黙るバジル。
 さて、そんなバジルの心境を知ってか知らずか、狂気ノ科学者は親し気な調子で続ける。
「私と手を組みませんか?
 医療・科学の発展には倫理感など足枷にしかなりません。
 私のラボだったら、思う存分に薬の効果を試すことが出来ますよ?」
 と、笑みを浮かべる狂気ノ科学者に対し、バジルは吐息で応える。
 
 バジルの視界に映るのは、先ほど倒した殭屍兵である。
 きっと彼も、狂気ノ科学者による人体実験のなれ果てなのだろう。
 死した瞬間から苦悶で固定されていた殭屍兵の表情。
 バジルはその見開いた眼を掌でそっと閉じさせる。
「生憎だけど、私は怪我した人はほおっておけない性質なの」
 静かに、それでいてハッキリとした拒絶の意思を込めてバジル。
 ピクリと眉根を動かし、狂気ノ科学者は嘆息する。
「そう、残念だわ。ならばここで貴女は終わりだわ」
 バジルを取り囲むように殭屍兵が集まってくる。この数では、先程のような注射器ではもはや対応することは難しいだろう。
 だが――。
 バジルは不敵に微笑んだ。
「毒を盛って毒で制す、たっぷり味わいなさい」
【バジリスク・スモッグ】。高純度の猛毒ガスが放たれ、殭屍兵がバタバタと倒れてゆく。
 毒の霧の中で佇みながら、バジルは冷たい視線で相対する狂気ノ科学者を射抜くのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

蔵方・ラック
あ、ご令嬢!さっきそこの博士の成果物見たでありますけど!眼球ひとつも上手く造ってあげられないみたいなので、改造して欲しいなら別の人の方が……ん?手術を受けるのがメインの目的じゃない?
んー、そんじゃとりあえずその脚でこの場から逃げておいて欲しいでありまーす!

耐熱性能が高い素材!と念じて
タングステン(3380℃までは耐えられる、ダイヤモンドくらい硬くて、鉄の2.5倍重い金属)製の
盾のような形のバラックスクラップを召喚
怪力で片腕に装備、武器受けと見切りを活用して近づき
爆風に乗って高く跳んで、気球めがけて腕の熱線銃を一斉射撃して時間稼ぎ
気球が壊せたら、白い女に盾を投擲しておく 頭上注意でありますよ!


マリウス・ストランツィーニ
はあ、はあ……よし、何とか間に合ったようだな!

さあ御令嬢を放せ!
と、一応言ったが無駄だろうな。

御令嬢よ。まずは貴女が抵抗しなければ敵は倒せない。
自分を籠の中の鳥だと嘆くのは良いが……籠の中にいることで今までどれだけ守られて来たのかわかっているのか?

何でも親の言う通りにすれば良いわけではないが、貴女の立場だからこそ出来ることもある。生まれた家を変えることが出来ないのなら、自分の為に家を利用してやれ。政略結婚が嫌なら、駄々をこねるのではなくもっと己が何をやりたいのかアピールしろ!自分の翼で飛ぶのはそれからでも良いだろう!

言うべきことは言った。さあ、狂気ノ科学者よ、あとはお前を斬るだけだ。覚悟しろ!




 人間モドキ達を蹴散らしながら、船内を駆け抜ける蔵方・ラック(欠落の半人半機・f03721)とマリウス・ストランツィーニ(没落華族・f26734)の姿がある。
「ネェエエ! マッテヨウゥウウ!」
 人間モドキが眼窩から赤黒い液体を垂らしながら、呻き声をあげて飛び掛かってくる。
「……なんだか、今日は走ってばっかりでありますね。っとッ!」
 まるでムンクの『叫び』みたいな顔したソイツを、廻し蹴りでブッ飛ばすラック。
 勿論、こうしている間にも止まらずノンストップである。
「まったくだ」
 同意して苦笑するマリウス。
 流石に息も切れるというものだが、ここで止まるわけにもいかない。
 名刀・八重霞ノ太刀を振るい、道を切り開いてゆくマリウス。
「あそこでありますね!」
 階段を駆け上がると、甲板にあがるための扉が見えてくる。
「はあ、はあ……よし、何とか間に合ったようだな!」
 マリウスが扉を開くと、涼やかな風がその汗ばんだ額を撫でた。
 すでに飛行船は高空飛行へと移り、眼下にはまるでミニチュアのような帝都の街並みが広がっている。

 甲板に立つのは二人。金髪ロールのご令嬢と、病的なまでの白い肌を持つ科学者風の女。コイツこそが今回の首魁、狂気ノ科学者に違いない。
「さあ、御令嬢を放せ!」
 髪を風になびかせながら、刀の切っ先を敵に向けるマリウス。
「……追いつかれてしまいましたか」
 まるで面倒ごとが増えたとでもいう様に、小さく吐息する狂気ノ科学者。
「それに人聞きの悪い――。
 ご令嬢は、私の実験に協力してくださるのです。
 つまり、これは本人の同意の元であり、誘拐事件などでは無い――。
 貴方がたもここで手を引いて頂けませんか?」
 脱出用の気球の準備を進めながら、狂気ノ科学者は淡々とした口調でそう告げる。
(えっ? マリウスさん! なんだかグリモア猟兵の人の話と違くありませんか? 本人の同意とってるみたいでありますよ!?)
 と、ラックが小声で囁きかけてくるものの、そんなことマリウスだって初耳である。
(……察するに、敵に上手く言い包められた……というところだろう)
 新興財閥の一人娘だと聞くあの令嬢。
 親が決めた結婚。自由な意思など無いレールの引かれた人生。
 きっとこれは、ご令嬢の最初で最後の反逆なのだ。
「……まぁ、その気持ち、解らんでもないが」
 タラレバの話ではあるが、ストランツィーニ家が没落していなければ、マリウス自身もあの令嬢と同じような境遇に立たされていた可能性は十分あったといえるだろう。

 家のため、かくあるべき。

 マリウスはそれを背負って生きているが――。
 あの令嬢には、それがどうしようもないほどに重荷となってしまったのだろう。
「……マリウスさん?」
 押し黙ったマリウスを心配するように、ラックが覗き込む。
「いや、なんでもない……。しかし、」
 かけるべき言葉を探すマリウスに代わって、ラックが一歩進み出る。
「ご令嬢! さっきそこの博士の成果物見たでありますけど!
 眼球ひとつも上手く造ってあげられないみたいなので、改造して欲しいなら別の人の方がいいでありますよ!」
 明るくハッキリと告げられて、狂気ノ科学者の眉が不機嫌そうにピクリと動く。
 さて、ラックの言葉に令嬢は逡巡する様子を一瞬だけ見せたものの、まるで反抗期の少女のように、
「改造なんてどうでもいいの! 私は、ただ……! この人生を変えてほしいのよッ!」
 と、叫ぶ。
 その言葉にラックは「むむ?」と首をひねり――。
「……もしかして、怒らせちゃったでありますかね?」
 隣のマリウスに意見を求めるラック。
「いや、そうではない。あれは……そうだな、言うなれば思春期の心の叫びというヤツだ」
「むむ……むむむ?」
 余計に解らなくなるラック。
 とある事情で、喜怒哀楽の「哀」が抜け落ちてしまったラックは、自他の心の機微や痛みにはかなり鈍いところがあるのだ。
「……まぁ、手術を受けるのがメインの目的じゃないことは理解したであります」
 今はそれで良し、と納得してゆくラック。
「んー、そんじゃとりあえず、その脚でこの場から逃げておいて欲しいでありまーす!」
 あっけらかんとした調子で令嬢にそう微笑みかけるラック。
 そう。令嬢にも色々と事情があるかもしれないが、それはそれとして、この場でオブリビオンを逃がすわけには行かないのだ。
 そして――。
 続いて俯いた令嬢に呼びかけてゆくマリウス。
「御令嬢よ。まずは貴女が抵抗しなければ敵は倒せない。
 自分を籠の中の鳥だと嘆くのは良いが……籠の中にいることで今までどれだけ守られて来たのかわかっているのか?」
 自由になって実感する、不自由でも恵まれていた過去の生活。
 両親も、財も、どれだけ欲したところで今更戻ってきやしない。
「何でも親の言う通りにすれば良いわけではないが、貴女の立場だからこそ出来ることもある」
 マリウスの言葉に令嬢は顔を上げる。
「私だから、出来ること……?」
 口の中で反芻するように呟く令嬢。
「生まれた家を変えることが出来ないのなら、自分の為に家を利用してやれ。
 政略結婚が嫌なら、駄々をこねるのではなくもっと己が何をやりたいのかアピールしろ!
 自分の翼で飛ぶのはそれからでも良いだろう!」
 思ってもみなかった大胆な選択肢を提示され、令嬢は言葉を失う。
 さて、言うべきことは言った、とマリウスは視線を狂気ノ科学者に移す。
「……やれやれです」
 敵の両手には筒状の爆弾【ダイナマイトノーベル】が握られていた。
 恐ろしいまでの威力を秘めた、高性能爆薬である。
「これ以上の問答は無用のようですね」
 と、猟兵達の言葉を遮るようにして、戦闘態勢をとってゆく狂気ノ科学者。
「そのようであります!」
 自らのユーベルコードを発動しスクラップを生成してゆくラック。
 イメージするのは――。
(耐熱性能が高い素材!)
 その意志に応じて、スクラップが形を成したのは『タングステン製の合板』。
 3380℃もの熱に耐え、ダイヤモンド並の硬度と鉄の2.5倍の重量を持つという代物だ。
「よっと」
 超重量の盾を、怪力で片腕に装着するラック。
「突っ込むでありますよ! マリウスさん!」
 投擲された敵のダイナマイトノーベルが爆ぜ狂い、飛行船全体をグラグラと揺らす。その爆風の吹き荒れる最中を、ラックは盾を構えて突き進んでゆく。
「ああ!」
 マリウスもラックを信じて共に走る。
「自分が時間稼ぎするであります!」
 敵との距離が縮まったことを確認し、ラックが叫ぶ。敵の爆風を利用して、一際高く跳ぶ!
「――ッ!?」
 思わず、その姿を視線で追う狂気ノ科学者。だが、ラックが狙っていたのは狂気ノ科学者ではなく――。
「一斉射撃であります!」
 熱線銃が幾筋も迸る。敵が脱出用に準備していた気球が、ラックの射撃に撃ち抜かれて萎んでゆく。
「……! 気球を」
 無表情を崩してチッと舌を打つ狂気ノ科学者。
「頭上注意でありますよ!」
 注意を逸らした敵に、ラックはタングステンの盾を投擲して追撃。
「――くっ」
 身を縮ませて、なんとかその超重量の一撃を避けた狂気ノ科学者だったが――。

 本命の一撃は、むしろ次。

 爆破の煙から、燕のような速度でマリウスが飛び出してくる。
 地を這う刃からの、逆袈裟による一閃。
「ッ!?」
 脇腹から胸元にかけて刻まれる斬撃。狂気ノ科学者の白衣にじわりと血の朱が広がってゆく。
 殭屍兵を盾にして、逃れるように距離をとる狂気ノ科学者。
「……貴様ら、よくも」
「まずは一撃、でありますね」
 悪戯が成功したように微笑むラックと
「さあ、狂気ノ科学者よ、あとはお前を斬るだけだ。覚悟しろ!」
 刀を構え直しながらマリウス。息の合った二人の連携が、狂気ノ科学者を追い詰めてゆく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リウティナ・スピネルレッド
【Star Wind】
呼称は、シモン(f27298),リコット(f27299)だよ。

わたしはあなたじゃないから、あなたの気持ちが全部わかる訳じゃないけど……他にもっといい道を一緒に探すことなら出来ると思うからさ。例えば――とても大変かもしれないけど、家の手が届かない場所を探す旅をする!とか駄目かな……?

今回はかなり慎重に、【見切り】【第六感】や仲間の力を借りたりして、牽制をしつつ隙を探すよ。
ここぞと言う瞬間を見つけたら、【力溜め】【怪力】【鎧砕き】【限界突破】の全てを込めたUCの一撃を叩き込むよ!

※アドリブ歓迎


シモン・ピェール
呼称は、普段は相棒(f27298)時々、リウ。
普段はリコット(f27299)時々、リコ防。

少し聞かせてもらったよ。
わたしがこんな事言うのもアレだけど……都合のいい事ばっかだね。
それに、そんな戯言に自らの意思と勘違いして乗ろうとしている君も君だよ。本当に運命を変えたいなら(一瞬だけ物哀しい視線をリウに向けて)――どんな結末に向かおうとも、最後まで自身の力で足掻いてみるもんじゃないのかい?

敵の攻撃が強力みたいだし、今回はサポートに専念するよ。
UCを使いつつ【空中浮遊】して敵の隙を探り、予備動作を仲間に伝えたり、手を掴んで、回避を手伝うよ。
※アドリブ歓迎


リコット・アプリィー
【Star Wind】
呼称は、ご主人(f26107),シモンさん(f27298)です。

その通りです。貴方の運命を『取り戻す』のではなく、共に『切り開き』ましょう。

不死身の軍勢に対して、私が囮になります。
殭屍兵達を【おびき寄せ】で出来るだけ沢山引き付けた後、【リミッター解除】からのUCで一気に吸い寄せ、一網打尽致します。

※アドリブ歓迎




 迫り来る人間モドキ達を蹴散らしながら、飛行船の通路を突き進む3人。
「敵のボスは甲板に向かっているようだね~」
 人間モドキ達が押し寄せてくる方向が道標。
 駆け抜ける速度を落とさないまま、戦闘用のソルレットで人間モドキを蹴り飛ばすシモン・ピェール(一般兎(自称)・f27298)。
「グギャッ!?」
 と、金属の打音と共に敵が吹っ飛び、ボーリングのストライクのように他の雑魚を巻き込みながら倒れてゆく。
「ゴメンあそばせ~。わたしらも急いでいるのだよ~!」
 目を回した敵をひょいっと飛び越えながら、先を急いでゆくシモン達。
 階段を駆け上がり、甲板へと続く扉を蹴破る。

 甲板上には脱出用の気球の準備を進める科学者風の女と、傍らに立つ金髪ロールの少女の姿。
「よし、間に合ったみたいだね!」
 リウティナ・スピネルレッド(廻る冒険家・f26107)が安堵の声をあげる。
「はあ、はあ……! なんとか、ですが――」
 なんだか今日は走ってばかりの一日です、と思いながら、乱れた息を整えるリコット・アプリィー(清らかなる自律人形・f27299)。
「さあ! 令嬢を返してもらうよ!」
 ビシッとロングソードを突き付けるリウティナに、狂気ノ科学者は冷めた視線を返す。
「……追いつかれてしまいましたか」
 まるで面倒ごとが増えたとでもいう様に、小さく吐息をつく狂気ノ科学者。
「それに人聞きの悪い――。
 ご令嬢は、私の実験に協力してくださるのです。
 つまり、これは本人の同意の元であり、誘拐事件などでは無い――。
 貴方がたもここで手を引いて頂けませんか?」
 脱出用の気球の準備を進めながら、狂気ノ科学者は淡々とした口調でそう告げる。
「ええっ?」
 そうなの? とリウティナが令嬢に視線を向けると、彼女はバツの悪そうに俯きながら、無言で肯定を示す。
「あらら……。拘束されてないのに逃げてないから、なんかおかしいな~、って思ってたけど――」
 妙な展開になってきたね、とシモンは思いながら、
「どうするよ? 相棒」
 と、リウティナに振る。
「むむ、むむむ……」
 そんなこと言われてもリウティナだってどうしたらいいのか解らない。
「あの……どうして実験に賛同なさったのでしょうか?」
 おずおずと控えめにリコットが令嬢に問いかける。

「……変えたいのです。全てが、親の都合で決められた、私の人生を――」
 そう言って、令嬢は自らの心情を吐露してゆく。

 趣味はあらかじめ決められたものを、決められた時間だけ。
 持つべき友人だって、家柄で選ばれて。
 自由な意思などない、籠の中の小鳥のような人生。

 これまで溜め込んだ積年の不満が、結婚という人生の重大な岐路において、ついに爆発してしまったのだ。
 賛同を得たとばかりに狂気ノ科学者が微笑む。
「ご安心ください。私の実験が成功すれば、全て変えることが出来ます。
 そう――。自らの翼で貴女は新しい人生を羽ばたけるのです」
 令嬢の肩を抱き寄せ、「だから邪魔をするな」という視線を猟兵達に送ってくる。
 だが――。
「事情は聞かせてもらったけど――」
 ウサギ耳を指先で摘まみながら、飄々とした様子でシモンが皮肉に微笑む。
「私がこんな事言うのもアレだけど……都合のいい事ばっかだね」
 そもそも、その人体改造手術とやらの成功率はどれほどなのか――。
 先程見た人間モドキ達が、狂気ノ科学者の実験による「成れの果て」だと仮定すると、成功率が低いことは容易に想像がつく。
「それに、そんな戯言に自らの意思と勘違いして乗ろうとしている君も君だよ。
 本当に運命を変えたいなら――」
 一瞬だけ物哀しい視線をリウティナに向けるシモン。
「――どんな結末に向かおうとも、最後まで自身の力で足掻いてみるもんじゃないのかい?」
 と、ハッキリと告げるシモン。
 結局のところ、令嬢は今この時に至っても「他の誰かに自分の運命を委ねようとしている」ということに変わりはないのだ。
 自分では人生を変えられないと思い込んでいるから、狂気ノ科学者に変えて貰おうとしている――。
 たとえ改造手術が成功し、新しい人生を得ることが出来たとしても、それは自ら選んだ選択と言えるのだろうか?

 リウティナも頷く。
「わたしはあなたじゃないから、あなたの気持ちが全部わかる訳じゃないけど……」
 その大きな瞳で、真っ直ぐに令嬢を見つめ――。
 届くようにと願いながら、リウティナは自らの言葉を紡ぐ。
「他にもっといい道を、一緒に探すことなら出来ると思うからさ。
 例えば――。とても大変かもしれないけど、家の手が届かない場所を探す旅をする! とか、駄目かな……?」
 と、小首を傾げるリウティナの姿に、リコットはクスリと僅かに微笑む。
 なんとも「ご主人らしい」と思ったのだ。
「その通りです。貴方の運命を『取り戻す』のではなく、共に『切り開き』ましょう」
 かつて自分自身が、誰かにそうして貰ったように、リコットは令嬢へと手を差し伸べてゆく。
 一人では踏み出せなくても、きっと誰かと一緒なら進むことが出来る、そう信じながら……。
 
 だが――。これに待ったをかける者がこの場にはいる。
「……これ以上の問答は無用です」
 良くない流れを感じたのだろう。狂気ノ科学者が令嬢の前に割り込んでくる。
「邪魔をするというのなら、実力で排除します」
 狂気ノ科学者が試験管を甲板に叩きつけると、ボコボコと殭屍兵の群れが湧き出してくる。
「ま、そうなるよね~……でも、それはこっちも望むところだよッ!」
 肩を竦めながらシモンが構える。
 押し寄せてくる殭屍兵と、これを迎え撃つ猟兵。帝都遥か上空で激しい戦いが展開されてゆく。


 牽制しながら慎重に戦いを進めてゆく三人。
 だが、いかんせん殭屍兵の数が多く、狂気ノ科学者まで攻撃を届かせる機会はなかなか巡ってこない。
「私が囮になります! お二人はどうか!」
 戦闘の最中リコットがそう叫び、リウティナとシモンはその意図を察して頷きを返す。
 殭屍兵たちをおびき寄せで出来るだけ沢山引き付けた後、一気にリミッターを解除するリコット。
『ご主人の真似です。ぐーるぐるー』
 発動するユーベルコードは【龍宮誘起(リュウグウユウキ)】。
 水を纏い、まるで渦潮の如く敵の軍勢を吸い寄せてゆくリコット。
「ナイスだよ、リコット!」
 リコットの陽動撃破のおかげで狂気ノ科学者を守る殭屍兵が半減したものの――。
 未だに壁としては十分な数を残して、二人の前に立ちはだかる。
「しゃーない! 今回はわたしもサポートに専念するよ!」
 ガシッとリウティナの手を握り、空中浮遊を行使するシモン。
「わわ――!?」
 眼を丸めるリウティナに、シモンはウィンクをひとつ。
「ひとつ貸しだぜ、相棒!」
 てやっ、と殭屍兵の頭上を飛び越えるようにリウティナをブン投げるシモン。
「いってこ~いッ!」
 空中で姿勢を整え、大上段にロングソードを振り上げるリウティナ。
「おっけ~! リウちゃんに任せて~!」
「――なッ!?」
 壁を飛び越えてきたリウティナに、狂気ノ科学者が驚愕の声をあげる。

 リコットとシモンが作ってくれた勝機。
 今しかない、というこの瞬間に、持てる力の全てを込めて――。
 【力溜め】【怪力】【鎧砕き】【限界突破】。
 全身全霊でリウティナは振り下すッ!
『一味違うリウちゃんアターーック!!!』
 彗星の如き一撃が、飛行船をドンッと大きく揺らす。
「そ、そんな……このような、ことが……」
 信じられない、と眼を見開きながら、狂気ノ科学者が後ずさる。
 文句なしの一撃を加え、3人は互いに視線で頷きあうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

篁・綾
アドリブ連携歓迎で。

…籠の中の小鳥とて、自分の翼を持っているのよ。
自分では気付いていないだけで。かつての私も。そして貴女も。

【残像、空中戦】を駆使して立ち回りを。
【忍び足で闇に紛れ】間合いを詰めて接近戦に持ち込みましょう。
お嬢様を奪取する人がいる場合は【目潰し、おびき寄せ】を駆使して援護、撹乱。
誰も居ない場合は、彼女を【かばう】ように間に入りましょう。

間合いを詰めたら【2回攻撃、鎧無視攻撃】を駆使して攻撃。


あちらの攻撃のタイミングを【見切り】、回避。お嬢様をかばっている場合は【武器受け、オーラ防御、激痛耐性】で防御。
位置関係に問題がない場合は【カウンター】で指定UCを使用。
【だまし討ち】するわ




「まさか、この私が……ここまで追い詰められるとは……」
 赤黒い吐血を散らしながら、ヨロヨロと後ずさる狂気ノ科学者。
「猟兵どもめ――。こうなれば……死なばもろとも、です――」
 その瞳に狂気と覚悟が混ざりこみ、赤く禍々しく輝いてゆく。
「……この飛行船と共に、沈むがいい!」
 オレンジ色の眩く輝く石を取り出す狂気ノ科学者。
【トリニティの消えぬ太陽】。
 膨大な熱量を発生させる石を3つ同時に化学反応させ、熱量を集束させた閃光で大地すらも焼き尽くすという、狂気ノ科学者が持つユーベルコードの中でも最強威力を誇る攻撃である。
 もし発動させれば、その閃光は容易く金属型飛行船の装甲を貫き、内部ガスを引火させての大爆発を引き起こすに違いない。
「あは、あははは――!」
 太陽石を頭上に掲げながら、最後の笑い声を響かせる狂気ノ科学者。
「え、そ、そんな――!?」
 思わず悲鳴をあげる令嬢。さすがにこの結末は彼女も望むところではなかったのだろう。
 猟兵も、令嬢も、狂気ノ科学者自分自身をも巻き込んで――。
 帝都の空に、黄泉への大穴が開こうとしてゆく。
 だが、その時であった――。

『儚く消えよ、悪意の虚!』

 東風のような突風が、桜吹雪と共に吹き抜けた。
「――ッ!?」
 残像を残しながら、一瞬で間合いを詰めたのは篁・綾(幽世の門に咲く桜・f02755)。
 ヒュンと銀弧が二つ舞い。
 研ぎ澄まされた刃が、狂気ノ科学者の手首と、その悪しき頭脳を身体から断ち切った。
 高空の強い風に流された手首は、太陽石を握りしめたまま青空を舞い。

 ドンッと大気を震わせるような大爆発が、帝都の上空に刻み込まれる。

「……あ、」
 爆風に気圧されて、令嬢がぺたんと腰を抜かしてその場にしゃがみ込む。
 しだれ柳のように散ってゆく光を眺めながら、自分が命拾いしたことをゆっくりと理解してゆく令嬢。
「……大丈夫かしら?」
 刀を振って血を払い、美しい所作で納刀してゆく綾。
「私、生きてる……?」
 唇を震わせながら、なんとか言葉を紡ぎ出す令嬢。そんな彼女に綾は手を差し伸べる。
「ねえ、貴女」
 令嬢の手を握りしめながら、綾は思っていたことをゆっくりと言葉にしてゆく。
「……籠の中の小鳥とて、自分の翼を持っているのよ。
 自分では気付いていないだけで。
 かつての私も。そして貴女も」
 瞳の奥に、かつての自分を重ねながら、綾は令嬢に語り掛ける。
 「自分の、翼……」
  反芻するように令嬢は呟く。助けてもらった猟兵達全員を見渡して、
「私も、貴方たちのように飛ぶことが出来るでしょうか……? 自分自身の力で」
 自信なさげに、そう呟く。
「……それは、貴女次第だわ」
 ここで力強く「出来る」と背中を押すことができないのが、ややネガティブな思考を持つ綾らしさというところだろうか。
 だが、その優しさと、込められた想いはきっと彼女に伝わっているに違いない。


 かくして、帝都の空を騒がせた一つの事件が終わりを告げる。
 猟兵達はこの事件で失われるはずだった多くの命を救い――。
 やや自暴自棄になっていた一人の少女に、一つの人生の転機を与えることになったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年08月14日


挿絵イラスト