3
いつか、あの渡り鳥のように(作者 河流まお
6



 蒼天に浮かぶ巨大な飛行船が、帝都の街並みに影を落としながら、ゆっくりと出航してゆく。
「……は~……」
 とある一等客室から窓の外を眺めていた一人の少女が大きな溜息を一つ。
 豪華なドレスに、カールを巻いた金髪の髪。
 いかにもお嬢様然としたその少女は、知る人ぞ知る新興財閥の一人娘だったりするのだが――。まぁ、それはともかく。
「憂鬱だわ……こんなの、ただの政略結婚じゃない……」
 顔を知りもしない相手との、突然の結婚。
 家のため、家族のため――。頭では分かっているものの、そう簡単に割り切れるほどに、少女は成熟していなかった。
「……たとえば、あの鳥のように」
 窓の外を見れば、白い渡り鳥が自由気ままに空を飛んでいた。
「あの鳥に比べたら、私はさしずめ籠の鳥と言ったところかしら」
 苦笑を漏らす少女。飛行船はみるみると高度を上げ、渡り鳥を眼下へと追いやってゆく。
「私にも、翼があれば――」
 少女がそう呟いた瞬間……突然『それ』は現れた。

「それは名案ですね」

 耳元で囁かれたその声にハッと振り向くと、白い服を纏った科学者風の女の姿が居た。
 息も掛からぬばかりの距離――。
 いつのまに、と問う間もなく、白い女は言葉を紡ぐ。
「そんな貴女に、翼を授けましょう。なあに、ごくごく簡単な人体改造手術で済みますよ。
 ……拒絶反応さえ出なければ、ですが」
 少女が叫ぼうとした瞬間。万力のような力で首を掴まれた。
「――ッ! ――ッ!」
 華奢な女のものとは思えぬその握力に、少女の意識が遠のいてゆく――。


 予知の内容を語り終えた嬉乃・抹茶子が猟兵達に向き直る。
「サクラミラージュのとある飛行船内で、オブリビオンによる誘拐・殺人事件が起こります。皆さんには、このオブリビオンの撃破をお願いします!」
 と、説明も手身近に、抹茶子は転送の準備に取り掛かってゆく。
「すいません、予知のタイミングがかなり遅れました……。
 ですが、今から急いで急行すれば――。飛行船の出航に、ギリギリの滑り込みセーフで間に合う……ハズ、です」
 額に汗を浮かべながら異界への門の展開を進めていく抹茶子の姿に、事の緊急性が伝わってくる。
「今回の依頼の成功条件はあくまでオブリビオンの撃破のみとなりますが……もし可能であれば、誘拐される少女のことも助けてあげてください」
 グリモアの光が線を描き、扉を描き出してゆく。
 人生に絶望しかけているご令嬢を救うかどうかは猟兵達の行動に掛かっているが――。
 まずは第一に、
「サクラミラージュへの扉が開かれたら、先ずは乗船を急いでください! それでは、宜しくお願いします!」
 扉が開かれると桜の花弁が一枚、風に乗って飛んでくる。
 常久の桜が咲く世界・サクラミラージュでの冒険救出活劇、始まり始まりである。





第2章 集団戦 『『廃棄物』あるいは『人間モドキ』』

POW ●タノシイナァ!アハはハハはハハハハハハハハハ!!
【のたうつような悍ましい動き 】から【変異した身体の一部を用いた攻撃】を放ち、【不気味に蠢き絡み付く四肢】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD ●ミてイルヨ、ズットズットズットズットズット……!
自身の【粘つくタールが如き何かが詰まった眼窩の奥】が輝く間、【歪んだ出来損ないの四肢】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ ●アソボうヨ!ネエ、ネエ、ネエ、ネエ、ネエ……!
【嫌悪や憐れみ 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【自身と同じ存在達】から、高命中力の【執拗な触腕による攻撃】を飛ばす。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 手分けしながら一等客室を重点的に探索してゆく猟兵達。
 だが、『敵』の出現を感知したのはオブリビオン側も同じだった。
「博士! 博士ェ! 敵を見ツけタヨゥ」
「猟兵、猟兵ダ! 敵が来るヨッ!」
 耳障りな甲高い声をあげながら、蛇と人間を掛け合わせたような異形が現れる。
 『人間モドキ』、白い女が研究の過程で作り出した出来損ない達である。
「あら偶然……にしては、少し出来すぎていますね。
 もしや、こちらの動きが察知されていた……?」
 思考を巡らしながら女は令嬢を抱きかかえてゆく。
「まあ、いいです」
 白い女としては、この新しい素体さえ手に入ればいいことだった。
 つまり、無理して猟兵どもの相手する気などサラサラない。

「あとはお前たちに任せます。『好きにやりなさい』」
 主の赦しに、人間モドキたちは喜びの歓声をあげる。
 彼らにとって必要なのは、『悲鳴という娯楽』と『完全な人型となるためのパーツ』だ。
 この大勢の乗客を乗せた豪華客船の中ならば、人間モドキたちの欲求は思う存分に満たすことが出来るだろう。

 その結果、飛行船が沈むことになっても……それは白い女にとってはどうでもいいことだった。
「さて……ここから退散するにしても、まずは甲板まで出る必要がありますね」
「――! ――ッ!」
 口を押えられながら必死に助けを呼ぼうとする令嬢。
「さあ行きなさい、出来損ないども。
 もしパーツを収集して戻ってきたら、あとで縫い合わせてあげますよ」
「ハぁーイッ!!」
 溢れ出すように客室から飛び出してゆく『人間モドキ』達。
 猟兵と人間モドキ。白い女が逃亡するまでの時間をタイムリミットとして――。戦いが始まる。
蔵方・ラック
ええと、このまま乗客がパニックになったら誘拐犯も逃げやすくなるでありますよね?
うん!そりゃいかんであります!
とりあえず〈大声〉と〈鼓舞〉で客室から出ないように、一等客室方面に来ないように呼びかける!自分たち猟兵に任せておけであります!!

オブリビオンたちは……ふむ、何だか自分と近いものを感じるでありますね(自らも実験体であった事、記憶にはなくとも記録では知っている。嫌悪は湧いてこない)
ん、じゃあ、遊ぶでありますかぁ!!

UCで周囲の無機物を変形させ、絡め取るように動きを封じる
人間のパーツより、こういうのがオススメでありますよ!
そのまま締め上げるか、止めは他の仲間に頼んでもいいでありますね!


マリウス・ストランツィーニ
まずはこいつらを倒さなければ御令嬢には会えないらしい。
いや、それ以前にこのままでは乗客が危険だ
……望むところだ!人々に危害を加えることは許さんぞバケモノども!

乗客達を避難させつつ、敵が襲うのを防ぎながら銃による「零距離射撃」と剣の「切り込み」で戦う!
触腕による攻撃は私のUCで弾き飛ばし、本体にとどめを刺す!



 赤い絨毯とモダンな内装。まるでクラシック映画のセットの中に迷い込んだかのようなダイダラニック号の内部。
「それにしても広いでありますね~。とても飛行船の内部とは思えないであります」
 飛行船内を散策しながら、蔵方・ラック(欠落の半人半機・f03721)が溜息に似た感想を漏らす。
「双胴型巨大客船、ダイダラニック号。
 二基の巨大バルーンで高級ホテルを丸ごと空に浮かべた代物で、キャッチコピーは『絶対不沈の安心感。快適な空の旅を貴方に……』だそうだ。
 現在位置は中層の、この辺りだな」
 手元の地図を指差しながらマリウス・ストランツィーニ(没落華族・f26734)が一言。
「え……いつの間に手に入れたのでありますか? そんな地図」
「地図というよりはパンフレットの裏面だな。そこかしこに置いてあるぞ」
 観光地か、と思いながらも便利なので利用させてもらうことにする。
「へ~、映画館、バー、カジノ。おっと理髪店まで……なんでもござれでありますね」
 内部地図に目を通しながら感心するラック。
「まったく、豪勢なことだ」
 マリウスは苦笑し地図を折りたたむ。
 没落華族であるマリウスにとって、このような贅を尽くした施設は色々と思うところがあるのかもしれない――。
 と、まぁ、それはともかく。
 誘拐事件が起こるという一等客室の位置を確認し、二人は進む。


「ここだな」
 チーンと小気味よいベル音を響かせながらエレベーターの扉が開く。
 飛行船内部とは思えない広いエレベーターホールと、貴賓を迎えるための煌びやかな内装。
 そして、ホールから続く通路と、整然と並んだ客室が確認できる。
「このフロアのどこかにオブリビオンが潜んでいるのでありますね!」
 と、ラックが気合を入れ直そうとした、まさにその時――。
「アハはハハはハハハハハハハハハ!! ミーツケエタ!」
 甲高い笑い声が響き渡り、通路の先から芋虫のような姿をした『人間モドキ』が次々と這い出してくる。
「まずはこいつらを倒さなければ御令嬢には会えないらしいな。
 いや、それ以前にこのままでは乗客が危険だ」
 溢れ出してくる人間モドキ達の侵攻を抑えるように、マリウスは立ち塞がる。
「……望むところだ! 人々に危害を加えることは許さんぞバケモノども!」
 ストランツィーニ家に代々伝わる名刀『八重霞ノ太刀』を抜き放つマリウス。
「う、うわあああ、バケモノだぁああああッ!」
 ホールに居た一般人が悲鳴を上げる。
 その混乱は瞬く間にフロア内、いや船全体へと伝播していくことになるだろう。
「ええと、このまま乗客がパニックになったら誘拐犯も逃げやすくなるでありますよね?
 うん! そりゃいかんであります!」
 機転を効かせて、ラックは大声で叫ぶ。
「落ち着いてください!
 皆さん、客室から出ないように、一等客室方面に来ないように!
 こいつらの相手は、自分たち猟兵に任せておけであります!!」
 ビリビリと響き渡るラックの声。恐慌状態に陥りかけた人々はなんとか我を取り戻し、たどたどしい足取りながらも避難を開始してゆく。
「アソボうヨ! ネエ、ネエ、ネエ、ネエ、ネエ……!」
 人間モドキが触腕を伸ばし、逃げる一般人を捕まえようとする。
「させるか!」
 上段から振り下された八重霞ノ太刀が敵の触腕を断ち切る。耳をつんざく絶叫と共に絨毯の上をのたうち回る人間モドキ。
「ストランツィーニ家の名に懸けて、ここは通さん!」
 そのマリウスの射抜くような瞳に、人間モドキは警戒するように間合いを取ってゆく。
「タノシイナァ! コロシアイ! アハはハハはハハハハハハハハハ!!」
 狂気を宿して高らかに笑う人間モドキ達。
 それは感情の欠落した、人間のなれの果てだ。
「ふむ、このオブリビオンたち……。何だか自分と近いものを感じるでありますね」
 エレベーターホールにいた人々を避難させ終えて、改めて敵と相対してゆくラック。
「そうか? 私にはあまり似てはいないように見えるが――」
 敵の群れに銃弾を撃ち込みながら、一瞬だけラックの横顔を見やるマリウス。
「うーん、気配というか、なんというか……うまく言い表せないでありますね」
 自らも実験体だった過去。
 ラックにとってそれは『記憶』ではなく、単なる『記録』として知るものではあるのだが――。
「ネェ、お兄チャン! アソボうヨ! アソボウヨォおおおヲ! ボク、眼球ガ足りないンダ! チョウダイ! ネェ! チョウダァイ!」
 ボコボコッと肉が泡立ち、不気味に蠢き絡み付く四肢がラックへと振るわれる。
 一般的な感性で見れば、きっと吐き気を催すような醜い姿なのだろう。
 だが、ラックは不思議と、この敵に対して嫌悪は湧いてこない。

 実験体。欠落の半人。人間の、成り損ない。
 やはり、『似ている』のだ。

「ん、じゃあ、遊ぶでありますかぁ!!」
 まるで遊び盛りの子供と相対するお兄のように、ラックは微笑む。
 ラックのユーベルコード【スクラップヤード】が発動。
 周囲の配管が蔦のようにメキメキと形を変えて、敵陣をまるごと絡めとり、その動きを封じてゆく。
「人間のパーツより、こういうのがオススメでありますよ!」
「グギギ、ギ……! コレナラ!」
 動きの制限された人間モドキ達は、反撃に触腕を伸ばすが――。
「二度目だ。その技を見るのはな」
 迫り来る敵の触腕に、マリウスは退くことなく前進する。
 一瞬にして詰まる彼我の間合い。刹那の見切りでマリウスは敵の触腕を弾き飛ばした。
「――ナッ!?」
 窪んだ眼窩を驚愕で見開く人間モドキ。
『霧散せよ!』
 霧のように夢幻、その刃は視認すること叶わず。振るわれる斬撃は【拒戟刃(リフレッティ・ラ・バーラ)】。
「――ッ」
 一拍遅れて血が飛沫き、両断されたことに気が付いた敵が沈んでゆく。
「これで第一陣は制圧でありますね」
「ああ。そして……ここから先は叩き切りながら進むしかないようだな」
 ヒュンと刃から血を払い、マリウスは通路の先にいるであろう敵の首魁を睨みつけるのだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

神代・凶津
【捜し鼠】で見つけた客室に向かう途中にオブリビオンが現れやがった。どうやらビンゴのようだぜ。
「この船には一般の乗客もいます。見過ごす事はできません。」
おうよ、相棒。さっさと片付けて先に進むぞッ!

雷神霊装でいくぜ、相棒ッ!
「・・・転身ッ!」
引き上げたスピードと反応速度で一気に距離を詰めて破魔の雷撃を纏った妖刀でぶった斬ってやるぜ。
敵の攻撃は見切って避けながら逆にカウンターを叩き込んでやる。

敵を倒したら客室に向かう・・・いや、どうやら敵の親玉は甲板に向かっているようだな。
「・・・急いで追いかけましょう。」


【技能・先制攻撃、破魔、見切り、カウンター】
【アドリブ歓迎】


クロノ・ライム
人間モドキだなんて…博士とやらは酷い実験をしていたようですね。

許せませんが、まずはとりあえず乗客を落ち着かせましょう。
「お菓子の時間」で僕は機内販売員に扮して乗客や仲間にお菓子やお茶を給仕します。
お菓子を食べて落ち着いてもらい、同時にオブリビオンの動きを遅くすることで攻撃回数の増加を抑えるのです。

乗客が落ち着いたらオブリビオンのいる所からなるべく離れるように避難してもらい、
その後はオブリビオンから少し距離をとって氷属性の全力魔法で攻撃します。
火とかだと飛行船に燃え移ったら大変ですからね。
時間は限られていますが、落ち着いて行動しましょう。



 赤い絨毯とモダンな内装。まるでクラシック映画のセットの中に迷い込んだかのようなダイダラニック号の内部。
「……見つけました」
 式神【捜し鼠】を操っていた神代・桜が、静かにその瞳を開ける。
 いや、正確には、見つけたというよりは『途絶えた』と言うほうが正しいか。
 鼠の一匹が消息を絶った地点に目星をつけて、桜は歩き出す。
「それにしても、飛行船の中とは思えねぇ広さだな」
 周囲を見渡しながら神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)。
 きっと途方もない金と労力が注ぎ込まれて建造されたに違いない。
「一流のホテルをそのまま空に浮かべる、というのがこの船のコンセプトらしいですからね。なんでも映画館やカジノ、プールまで艦内にあるとか」
 サクラミラージュの観光ガイドブックの内容を思い出しながら、クロノ・ライム(お菓子に目がないクレリック・f15759)。
「そして! なんとこのダイダラニック号。本日が竣工記念の初航海なのですよ! いやー、乗ることができて感激です!」
 キラキラと瞳を輝かせるクロノ。
「なるほどな、通りで真新しいわけだぜ。
 だが、そんな記念すべき最初の飛行でオブリビオンの奴がご登場とは、ずいぶんとツイてねぇ船だな」
「ダイダラニック号……。船名もどこか不吉です」
 UDCアース出身の桜が某有名映画を思い出しながら一言。
 というわけで、沈没フラグがハンパないこの船が無事に目的地である『紐育』へと辿り着けるかは、猟兵達の活躍にかかっているのだった。


「あ、見て下さいコレ。帝都の一流レストランに在籍する三ツ星シェフが振る舞う、夕食パーティーだそうですよ!」
 機内のそこかしこに置いてある艦内案内用パンフレットを開きながらクロノ。
「おう、依頼が終わったらな~」
 名残惜しそうにするクロノをグイグイ押してゆく凶津と桜。
 中層から、一等客室のある上層へと急ぐ。やがて――。
「一等客室への階段……ここですね」
 ここを登れば、捜し鼠の一匹が消息を絶った場所のすぐ近くだ。
 意を決して階段を上ってゆく三人。
 と、その時である。

 アハはハハはハハハハハハハハハ――。

 階段の先から、奇妙な声が響いてきた。
「これは、子供の笑い声……でしょうか?」
 悪い予感がして、咄嗟に身構えるクロノ。
「どうやらビンゴのようだぜ」
 牙を剥いてニヤリと笑う凶津。

「ミーツケタァ! ネエ、アソボうヨ!」

 階段の先から現れたのは、芋虫と子供を混ぜ合わせたような、異形の生物『人間モドキ』。
「……博士とやらは酷い実験をしていたようですね」
 一目見て解る、人間だったモノの成れの果て――。
 悲痛な表情を浮かべながら、エレメンタルロッドを構えるクロノ。
「この船には一般の乗客もいます。見過ごす事はできません」
 桜もまた、妖刀を抜き放つ。
 恐らく、この階段が一つの防衛ラインとなるはずだ。ここを崩されれば、船内に大きな被害が出るに違いない。
 そして――。
「なんだなんだ? なんの騒ぎだ?」
 三人の背後、騒ぎを聞きつけた一般人たちが客室から顔を覗かせてくる。
「う、うわあああああッ! バ、バケモノだぁああ!」
 人間モドキの姿を見た瞬間、悲鳴があがる。
 連鎖するようパニックが拡大しようとした瞬間、クロノは動く。
「凶津さん、桜さん。少しの間、敵を押さえていてください。まずは乗客を落ち着かせてみます!」
「おう! 頼んだぜッ!」
 恐慌状態に陥りかけた人々の元に駆け寄るクロノ。発動するユーベルコードは【お菓子の時間(スイーツタイム)】。
「皆さん! こちらに集めたのはどれも有名なお店のスイーツばかりです。さあ召し上がれ!」
 良く通るクロノの声が響き渡る。
 機内販売員に扮したクロノが乗客や仲間にお菓子やお茶を次々と給仕してゆく。
「ほら、泣かないでください」
 小さな子供の前に屈みこみ、視線を同じ高さに合わせながら優しく笑いかけるクロノ。
「あ、ありがとう。おにいちゃん」
 6歳ぐらいの少女は、クロノから貰ったまんまるの飴玉をなめると、少しだけ落ち着いたようだ。
「ここは僕たち猟兵に任せて下さい。
 皆さんは、なるべくこの場所から離れて、乗務員さんの避難指示に従ってください」
「うん!」
 クロノの呼びかけに人々は何とか頷きを返し、この場からいそいそと離れてゆく。
「よっし、ナイスだぜッ! クロノ」
 これで戦闘に集中できる、と凶津。
「さーて、相棒。さっさと片付けて先に進むぞッ! 雷神霊装でいくぜ!」
「……転身ッ!」
 桜が凶津を装着した瞬間、妖刀に電光が迸った。
 身体能力の限界を超えて、引き上げられてゆくスピードと反応速度。

 振るわれる刃は、まさに紫電一閃。

 怒涛の如く押し寄せる敵を、まとめて切り伏せる凶津。
「オ、オギャァアアアアッ!」
 耳をつんざく人間モドキ達の耳障りな悲鳴。だが、それも長くは続かない。
「氷の精霊よ。力を貸してください」
 空気中の水分が凍結してダイヤモンドのような細やかな粒子を残す。クロノのエレメンタル・ファンタジアが追撃として放たれ、人間モドキ達を氷像に変えてゆく。
「火とかだと飛行船に燃え移ったら大変ですからね。
 時間は限られていますが、落ち着いて行動しましょう」
 飛行船内という特殊な戦場でも、柔軟に対応してゆくクロノ。
 階段から降りてくる敵を押し返しながら、三人は進んでゆく――。
「おッ、あいつが敵の親玉か!」
 人間モドキを討ち払う戦いの最中、一瞬だけ階段の先に令嬢を抱えた白い女の姿が見えた。
「どうやら甲板に向かっているようだな」
「……急いで追いかけましょう」
 逃がすものか、と一丸となって敵を打ち倒してゆく3人。
 飛行船内部での戦いは、いよいよ佳境へと差し掛かってゆく。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

リウティナ・スピネルレッド
【Star Wind】
呼称は、シモン(f27298),リコット(f27299)だよ。

さて!それじゃ本腰を入れてあらためてお仕事を始めよっか。――ってどう見ても、この船のお客さんじゃなさそうなのがいっぱいいるんだけど……
とにかく、他にもお客さんはいるし、被害が大きくなる前になんとかしなくちゃだね!

とりあえず普通の攻撃で牽制をしつつ、敵の攻撃を【見切って】ここぞってタイミングにUCで一掃するよ!
ある程度数が減ったらシモンの言う通り、誘導されながら、シモンのサポートに回って、露払いをするね!

※アドリブ歓迎


シモン・ピェール
【Star Wind】
呼称は、普段は相棒(f27298)時々、リウ。
普段はリコット(f27299)時々、リコ防。

おっ?来て早速歓迎してくれるの?流石豪華客船!サービスがなってるなぁ~。

それにしても、来て早々こんなのしてくれるって事は、もしかして敵さんは少し余裕がないのかね?って事で、こんな足止めの相手は程々にしてUCを使って行くべき場所に目処をつけつつ、【恐怖を与える】【吹き飛ばし】で敵を退かして、二人を先導するよー。

※アドリブ歓迎


リコット・アプリィー
【Star Wind】
呼称は、ご主人(f26107),シモンさん(f27298)です。

人間になりたい……?もしかして、あなた方も作られた存在なのですか……?私も作られた存在で人間になりたい気持ちは良くわかるので、同情してしまいそうです……。ですが、人であるというのは本当に見た目だけで決まるのでしょうか?私は人の体ではなく、皆様からもらった、この人の心を大切にしたいと思ってます。だからあなた方も人の体ではなく、心を……と話を続けながら、UCを使って【見切り】からの【カウンター】で向かってくる火の粉は振り払います。

※アドリブ歓迎



 高空の風が汗ばんだ身体を心地よく冷やしてゆく。
「あ、見て下さい。あそこ」
 リコット・アプリィー(清らかなる自律人形・f27299)の指さした方へと視線を移せば、そこには空港の屋上展望台があった。
「ついさっきまで、あの場所に居たのに……もうこんな遠くまで」
 展望台からは、飛行船を見送る人たちが手を振ってくれている。
「ふふっ」
 思わず、小さく微笑むリコット
 きっとそれは、この船に乗る誰かへの見送りなのだろうけど――。
 なんだか、自分自身に手を振ってくれているように思えて。
「いってきますね」
 遠ざかってゆく人々に、リコットも手を振って応える。
「おっ、どしたの? リコットの知り合いでもいたのかい?」
「いえ、そういうわけではないのですが……なんとなく、です」
 はにかむようなリコットの姿に、シモンは「変なの~」と苦笑しながらも、
「いえーい、お見送りありがとね! バイバーイ!」
 その場のノリで合わせてくれるシモン・ピェール(一般兎(自称)・f27298)。
 やがて、見送り客も、空港も米粒ほどの小ささになってゆき――。
「さて! それじゃ本腰を入れて、あらためてお仕事を始めよっか」
 気合を入れ直すリウティナ・スピネルレッド(廻る冒険家・f26107)に、シモンとリコットも「お~!」と応える。
 まずは甲板から船内に乗り込むための扉を探す。
「見つけた。あそこだね!」
 リウティナがスライド式の扉を力を込めて開くと、ゴウッと気圧差による風が吹き、三人の髪を揺らした。
「うっわ……すっごい豪華じゃん」
「ま、まるでホテルの中みたいですね」
 赤い絨毯とモダンな内装。まるでクラシック映画のセットの中に迷い込んだかのようなダイダラニック号の内部。
 誘拐事件が起こるという一等客室を探して、三人は豪華客船の内部へと足を踏み入れてゆく。


「ね~、リウ。このダイダラニック号にはカジノまであるんだってさ。ちょっとだけ遊んでいかない? わたしが活動資金を倍にしてあげるよ~」
「え~……。お仕事が終わったらね。
 ――て、そんな情報どこで仕入れたの?」
 小首を傾げるリウティナに、得意顔でウィンクを返すシモン。
「艦内案内のパンフレットがそこのラックに差さってたのだよ。
 はい、二人の分も貰ってあるよ~」
 受け取った四つ折りのパンフレットを開いてみれば、そこには艦内施設のご案内と各種クーポン券……そして裏面には船内の大まかな地図が描かれていた。
「一等客室のエリアは一階の船尾方向……この通路の先ですね」
 現在位置を確認しながらリコットが呟く。
「だいぶ探索の手間が省けたね。よーし、行こう!」
 順調な滑り出しに意気揚々と歩を進めようとする三人だったが――。
『異変』は目的地の方角からやってくるのだった。
「あれは――?」
 白熱灯で煌々と照らされている通路の先。無数の人影が此方へと向かってくる。
「おっ? 来て早速歓迎してくれるの? 流石豪華客船! サービスがなってるなぁ~」
 なんて、気楽におどけてみせるシモンだったが――。
 『そいつら』が明らかに普通の人間ではないことは、遠くからでも一目瞭然だった。
「――ってどう見ても、この船のお客さんじゃなさそうなのがいっぱいいるんだけど……」
 まるで芋虫のようにズルズルと這いまわりながら、通路を埋め尽くさんばかりの数で押し寄せてくる『人間モドキ』たち。

「猟兵、ミィイイツケタァアアアッ!」

 甲高い耳障りな声が通路内に響き渡る。
「うへ~……もはやホラー映画じゃん」
 兎耳を垂らしながらゲンナリとした様子でシモン。
「それにしても、来て早々こんなのしてくれるって事は、もしかして敵さんは少し余裕がないのかね?」
 バトルソルレットを構えて、シモンは迫り来る敵を迎え撃つ。
「ネェ、足をチョウダイ! ソの足がアレバ、ボクは人間ニ成れルンダ!」
 人間モドキの肉がボコボコと脈動してゆく。突然、敵のその腕がシモンを狙って伸びた。
 伸縮可能な触腕攻撃。相手の不意を突く人間モドキの得意技だ。
 だが――。
『視えた? 違うね。知ってた』
 ユーベルコード【Fortuna Laplace's(フォルトゥーナラプラス)】。
 まるでその攻撃を読んでいたかのように、シモンは軽快なステップを踏んでこれを回避する。
 触腕が虚空を掴む。伸びきったその腕に超硬度のバトルソルレットを叩き込むシモン。
「ウッギャぁアアッ!?」
 つんざくような敵の悲鳴。

 その騒ぎを聞きつけて、3人の背後の客室から一般客達が「なんだ、なんだ?」と顔を覗かせてくる。
「うッ、うわああああ! バケモノだぁああ!!!」
「ひ、ひいいい!!?」
 恐慌状態に陥りそうになる一般客達。
「大丈夫だよッ! この場はわたしたちに任せてー!」
 背負うものがある以上、一歩も引くわけには行かない。
 ロングソードを抜き放ち、雪崩のように押し寄せてくる敵の群れに、自ら飛び込んでゆくリウティナ。
「くらえ! リウちゃんアタック!」
 ドンッと地響きのような振動が飛行船を揺らす。大上段から振り下された重い一撃が、敵陣を二つに斬り裂いた。
「ちょ、リウ~。飛行船の中なんだから加減しなよ~?」
 船体に穴でも開いたら事件だぞ~、とシモン。
「あ、そうだったね――。
 うーん、でも他にもお客さんはいるし、被害が大きくなる前になんとかしなくちゃだし……!」
 まさに痛し痒しといったところか。
「じゃ、今回はわたしが二人を先導するからさ~。リウとリコットはわたしが討ち漏らしたヤツをお願いね~」
 と、言うが早いか、敵の触碗を撃ち落としながら先陣をきってゆくシモン。
「わかりました……。それでは参りましょう」
 リコットも頷いて、シモンに続く。
 一丸となって通路の敵を打ち倒してゆく3人。きっとこの先にこの事件の元凶である者がいるに違いない。


 数に物を言わせて押し切るつもりが、猟兵達の勢いに負けて徐々に押し込まれてゆく人間モドキたち。
「ク、クソォ……コンナトコロで……パーツを集メテ、戻れバ、人間ニ成レルのに……!」
 がむしゃらに触腕を振り回す人間モドキに対し、【流水の構え】をとるリコット。
「人間になりたい……? もしかして、あなた方も作られた存在なのですか……?」
 束ねた三つ編みが流れるように踊る。
 最小限にして紙一重。一切の無駄を省いた流れるような動きで、リコットは敵との間合いを縮めてゆく。
「アア、ボクタチハ、出来損ナイ……。デモ、人間にナレバ、博士ハ、キット認めメテクレル!」
 黒い眼窩からドロドロとした液体を零しながら、人間モドキは叫ぶ。
「そう、ですか……」
 相対するリコットは、一瞬だけ哀れむような目で人間モドキたちを見た。
 同じく、作られた存在であるリコット、彼らの人間になりたい気持ちは、痛いほど良くわかる。
 だが――。
 こうしてみている間にも、人間モドキたちの肉体はボコボコと脈動し、その末端部から徐々にグズグズになって崩れて始めているのだ。
 そう、彼らは結局、人間に似せて作られただけの肉のヒトガタに過ぎないのだ――。

 稼働限界が来ればそれで終わりの、使い捨ての、消耗品。

 人間になれば、というのも博士とやらが人間モドキたちに「やる気」をださせるために唱えた虚言にすぎないのだろう。
 敵に対して、思わず同情してしまいそうになるリコット。
「ですが、人であるというのは本当に見た目だけで決まるのでしょうか?
 私は人の体ではなく、皆様からもらった、この人の心を大切にしたいと思ってます」
 敵の変異した身体から四肢が生え出してくる。不気味に蠢く手がリコットを絡めとろうと迫るが――。
「だからあなた方も人の体ではなく、心を……」
 互いの息がかからんばかりの間合いまで詰めたリコット。敵の手が触れるよりも早く、神速の突きが放たれてゆく――。
「ゴフッ――!」
 胴体を撃ち抜かれ、人間モドキがくもった咳を漏らした。
 リコットの言葉が、最後に彼に届いたのかどうかは定かではないが――。
 力を失った敵の触碗がだらりと垂れ下がり、リコットの頬を撫でた。
「大丈夫? リコット」
 残っていた敵をオーラブレードで打ち払い、リウティナが心配して駆け寄ってくる。
  リコットは最後に倒した人間モドキをゆっくりと横たえさせて、
「大丈夫です、ご主人。行きましょう、きっとあと少しです」
 再び通路の先へと視線を戻してゆくのだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

篁・綾
アドリブ連携歓迎よ。

遊覧気分を楽しむ時間もなかったわね。
…さて、魍魎の類、と言えばいいのかしら。

ともあれ抜刀。
刀から舞い散る花を目潰しに使いつつ立ち回り。
…明らかに人体構造は無視してくるでしょうけれど、あちらの攻撃を上手く見切って、
オーラ防御に第六感、残像も駆使して回避していきましょう。
更にカウンターで桜の花吹雪を散らし、指定UCで範囲攻撃を。
味方は巻き込まないように注意するけれど。
命中させたらマヒ攻撃と幻覚による精神攻撃をかけつつ、破魔の力も乗せた
鎧無視攻撃で斬って捨てるわ。

…己が形を見失いしヒトガタ、疾く速やかに、散るがいいわ。
現世に、お前達の望みを叶えるものなどいないのだから……。


燈夜・偽葉(サポート)
★これはお任せプレイングです★
『ぶった斬ってあげます!』
妖狐の剣豪 × スカイダンサー
年齢 13歳 女
外見 黄昏色の瞳 白い髪
特徴 長髪 とんでもない甘党 柔和な表情 いつも笑顔 胸が大きい
口調 元気な少女妖狐(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、でしょうか?)

性格:
天真爛漫年下系ムードメーカー(あざとい)

武器:
刀9本
黄昏の太刀(サムライブレイド)を手に持ち
場合によっては念動力で残り8本を同時に操る

ユーベルコードはどれでもいい感じで使います

敵の動きは見切りや第六感を生かして回避
避けられなければ武器受けで対処します

多彩な技能を持っていて、問題に対していい感じで組み合わせて対処します



 飛行船を繋ぎ止めていたロープが取り外され、黒き巨大な双胴型豪華客船が空へと浮かび上がってゆく。
「たしか、誘拐事件が起こるのは一等客室だったわね」
 無事、飛行船の出港時間に間に合った篁・綾(幽世の門に咲く桜・f02755)は乱れた髪を整えて船内を探索するために歩を進めていこうとするが――。
 その時である。
「あ~、待って待ってぇ~! まだ乗りますから~っ!」
 と、息も絶え絶えに船着き場から走ってくるのは、9本もの刀を携えた白い髪の少女、燈夜・偽葉(黄昏は偽らない・f01006)。
「てぇーい!」
 と、桟橋からジャンプして飛行船に飛び乗ろうとする偽葉。
「……っと、無茶するわね。あなた」
 手摺りから身を乗り出して、綾が偽葉の手を掴む。
「あ、ありがとうございますぅ――!」
 瞳を潤ませながら偽葉。
 偽葉を飛行船に引っ張り上げて綾は安堵の吐息を吐き出す。
 そんな一連のドタバタで整えたばかりの着衣がまた乱れてしまうのだった。


 互いに簡単な自己紹介を済ませて、
「……ということは、綾さんもこの飛行船へオブリビオン退治に来た猟兵さんなのですね」
 耳をピコピコと揺らしながら偽葉は元気に微笑む。
「そういうあなたも猟兵なのね」
 対照的に落ち着いたクールな雰囲気で綾。
 まぁ、こうして出会ったのも何かの縁である。
 敵の戦力が解らない以上、バラバラに行動するよりは一緒に行動する方がなにかと都合もいいだろう。
 白と黒の妖狐。どこか対照的な二人は共に飛行船『ダイダラニック号』の探索を開始してゆく。
「さて……たしか、誘拐事件が起こるのは一等客室だったわね」
 なんだか二回目な気がする、この台詞。
「この地図によると一等客室のエリアは1階の船尾側です!」
「……いつのまに手に入れたの。そんな地図」
 地図を指差す偽葉に思わずツッコむ綾。
「搭乗口の近くに無料で置いてあったパンフレットです。
 裏面が地図でした。綾さんの分もありますよ~」
「……ありがとう」
 地図を頼りに船内を進む二人。
 赤い絨毯とモダンな内装。ダイダラニック号の内部は、まるでクラシック映画のセットの中に迷い込んだかのような雰囲気である。
 パンフレットに目を通しながら一階まで登って、一等客室がある船尾に向かって歩く。
「レストランに、映画館にカジノ……プールまであるのね。
 全く、飛行船の内部とは思えない広さね」
 贅を尽くした豪華客船の内部に溜息をつきながら、綾はパンフレットを折りたたんでゆく。
 せっかくだから色々と見物をしたいところだったのだが――。
 そう上手くいかないのが世の中ってものである。

「遊覧気分を楽しむ時間もなかったわね」

 通路の先に鋭い視線を送る綾。
 進む先から、甲高い耳障りな笑い声が響いてきたのだ。
「あれは――?」
 偽葉もまた身構える。。
「猟兵ミーツケタア。ネエ、ネエ、ネエ、ネエ、ネエ……! アソボうヨ!」
 通路の先から、芋虫のような異形が次々と現れる。博士と呼ばれるオブリビオンが放った『人間モドキ』たちだ。
「……さて、魍魎の類、と言えばいいのかしら」
 ともあれ抜刀してゆく綾。
「オブリビオンの配下ですね……!」
 偽葉もまた緋色の宝刀を抜き放って構える。
「……いくわよ」
「はい!」
 通路を埋め尽くさんばかりの魍魎の群れに、白と黒の妖狐の剣豪が飛び込んでゆく。
「ぶった斬ってあげます!」
 偽葉が念動力を操り、8本の黄昏の太刀を同時に抜き放つ。
 嵐のような剣線が幾筋も迸り、人間モドキ達を討ち払ってゆく。
「タノシイナァ! アハはハハはハハハハハハハハハ!!」
 黒い眼窩からドロリとした液体を垂らしながら、伸縮自在の触腕を伸ばしてくる人間モドキ達。相手の不意を突く、彼らの得意技だ。
「……明らかに人体構造を無視してくる気がしたわ」
 敵の触腕が綾を捉えようとした、その時――。
 綾の身体が舞い散る桜へとパッと変化した。
「――ッ!?」
 敵の触碗が虚空を掴む。
 吹き荒ぶ桜吹雪が眼に入り、敵が一瞬だけ瞳を閉じて怯んだ。
 それは刹那の一瞬。だが、その隙があれば綾にとっては十分だった。
「……己が形を見失いしヒトガタ」
 破魔の力を乗せた綾の斬撃が、袈裟懸けに振るわれる。
「疾く速やかに、散るがいいわ」
 鞘に収まった白銀の刃が澄んだ音を立てる。
「……? うウ、ガハァッ!」
 一拍遅れて、断ち切られた人間モドキの上半身が滑り落ちるようにして絨毯にゴトリと落ちる。
「現世に、お前達の望みを叶えるものなどいないのだから……」
 誰も気が付かないような一瞬だけ。
 どこか哀れむような視線を綾は人間モドキ達へと送るのだった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴