眠らぬ浜辺で宴の続きを
●黒猫の誘い、ワンモア
「さて諸君、バーベキューは好きかね?」
アトラ・アレーナ(黒猫船長・f27333)はグラスを片手に猟兵たちへ微笑みかける。
普段の紳士服を黄色いアロハシャツに着替えた怪奇の猫人は、夏のひと時を満喫するための提案を持ちかけてきた。
また何か事件かと警戒を滲ませた何人かへ、紳士らしいペテン師はいやいやと手を降る。
「安心してくれたまえ、これは予知でもなければコンキスタドール絡みの事件でもない。 宴にうってつけの島からのお誘いだよ」
宴にうってつけ……というフレーズに聞き覚えのある者は多いだろう。
その島の名は『眠らぬ宴の島』……水着コンテストの会場にも抜擢されたことは記憶に新しい。
大規模なイベントを終えたばかりの島から、また新たな宴の誘いがあったそうだ……それが冒頭で口にしたバーベキューとのことらしい。
「この島は『眠らぬ宴』の名に違わず、物資が豊富でな。 バーベキュー用の肉や野菜は当然のように備えがあるので、焼く労力さえあれば誰も彼も好きなだけ食べ放題だ」
キマイラフューチャーの遺産であるコンコンコンが難なく稼働しているため、現地の海賊に声をかければバーベキューの食材補給はすぐに対応してくれる。
それは肉や野菜に限らず、食後のデザートやフルーツの用意も万全とのこと……少なくとも飲み食いに不備はないだろう。
と、フルーツと言えば……先程からアトラの足元をばいんばいんとバウンドしている、やたらまるっこいサメがいる。
フルーツと聞いたまるいサメは、元気よく「しゃーっく!」と鳴いて大きく口を開けていた。
「……あぁ、そういえばあの島には『まんまるサメ』というサメがいてな。 こいつはフルーツが大好物なのだ」
バーベキューを楽しむついでに、島にたくさん生息するというまんまるサメに餌付けをしてみるのも楽しいだろう。
まんまるサメの大口にりんごを放り投げながら、アトラはふと思い出したように指を立てる。
「……それと、場所が浜辺だからな。 泳ぎたいならなら好きにすればいい」
物資が豊富、という話は食糧に限らない……海賊に呼び掛ければ浮き輪もビーチボールも、何ならサーフボードだって借りられるだろう。
もちろん自分で用意しても構わんが、と海遊びに興味を示さぬアトラはまんまるサメを引き連れて転移の扉を開く。
「では、宴の続きを始めようか」
四季臣
五十三度目まして、四季臣です。
この度はここまでOPを閲覧していただき、ありがとうございます。
夏真っ盛りです、浜辺でバーベキューはいかがでしょうか?
眠らぬ宴の島にて、現地の海賊が鉄板を用意して待ち構えています。
機材と食材の多くは海賊が用意してくれるので、お気軽に食べて楽しみたいお方はぜひこちらへどうぞ。
また、『まんまるサメ』と言う陸上生活も可能なサメにフルーツをあげて楽しむことも可能です。
食べるよりも海で遊ぶ、というお方についてもそれ用の遊具の準備もございます。
グリモア猟兵のアトラにお声がかかった場合、彼はパラソルを差したベンチでゆっくりと過ごしています。
ある程度連れ出すことも出来ますが、海には近寄りたがりません。
●お知らせ
こちらは夏を満喫する日常パート第1章にて完結する特殊なシナリオとなっております。
眠らぬ宴の島については、四季臣のシナリオ『大宴会にお邪魔します』をご参照下さい。
→『https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=24125』
加えてオブリビオンの驚異もないため、獲得EXPとXPが通常より少なめとなっています。
以上を踏まえまして……それでは、よろしくお願いいたします。
第1章 日常
『猟兵達の夏休み』
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POW : 海で思いっきり遊ぶ
SPD : 釣りや素潜りを楽しむ
WIZ : 砂浜でセンスを発揮する
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●眠らぬ宴の島にて
「おうおう戻ったか、我等が英雄たち!」
「水着コンテストぶりっすー」
猟兵たちが『眠らぬ宴の島』の浜辺に到着すると、そこで待っていたのは現地住民である『赤虎海賊団』の面々だ。
両手を広げて豪快に歓迎の意を示す赤毛の虎キマイラと、ぱたぱたと手を降る縞模様の猫キマイラが一歩前に歩み寄ってくる。
「知らねえヤツもいるだろうから、一応名乗っとこうか。 俺は船長のレグナだ、んでこっちのちびっこい猫はスライ。 必要なモンがありゃ俺たちに声を掛けてくれ」
「ごはんもどうぐも、まんまるサメのおやつもぼくたちが用意するっすー!」
「コラ、俺のセリフ持ってくんじゃねぇ! ……ったく、まあ、そういうこった、モノの数なら溢れるほどあるからな、遠慮なんかすんじゃねぇぜ?」
そうして案内された先では、海賊たちがちょうどバーベキューのセッティングを終えたところのようだ。
いらっしゃい、と溌剌と顔をあげたキマイラたちがささっと鉄ヘラを構えて、猟兵たちの声が掛かるのを待っている。
スリジエ・シエルリュンヌ
『赤虎海賊団』の皆さん、お久しぶりです!
お元気そうでよかった…!
『まんまるサメ』さん。それは動くときにもぽよぽよ跳ねる可愛いサメさん。
手触りもビロードのようで、とてもいいサメさん。
というわけで、フルーツをたくさん…リンゴ、蜜柑などなど…もって『まんまるサメ』さんのところへ!
大口あけてフルーツを待つところも可愛いんですよ…(フルーツ投げ)
このときは止まってるんですけど、可愛いんですよ…。ね、スライさん!!(急に話をふる)
以前とテンションが違う?
すみません、あの…コンキスタドールの驚異がないってわかってると、どうしても楽しむ方に…。
タビタビ・マタタビ
バカンス!
今年は立派な水着を仕立ててもらったから、遊び行かないとね!
バーベキュー!
海賊さんたちこんにちわ、虎さんに猫さん!
オススメをいただきます。それと、今は何だかとってもお肉が食べたい気分です……!
なんだろう、この後に備えて、パワーを蓄えとかないといけないような気がするんだ……。
もぐもぐ。
おかわり? いります!
(ばいんばいーん)
あ、これがアトラさんの言ってたまんまるサメ。
ええと、何にしようかな?
(海賊さんにフルーツを色々用意してもらう)
まずはバナナ……って他のサメさんもいっぱい来た!
ひえーボクは食べ物じゃないよ!
あ、わかってくれたっぽい……って、おもちゃでもないよ!?
助けてアトラさんー!
●お久しぶりな宴の島で
「『赤虎海賊団』の皆さん、お久しぶりです! お元気そうでよかった……!」
「海賊さんたちこんにちわ、虎さんに猫さん!」
海賊らしい活気ある歓迎に迎えられ、スリジエ・シエルリュンヌ(桜色の文豪探偵・f27365)とタビタビ・マタタビ(若き猫黒騎士・f10770)もまた挨拶を交わす。
スリジエは前に島で起きた事件に関わりのあることから海賊たちの覚えもよく、特に縞猫キマイラのスライから声を掛けられていた。
「スリジエのおねーさんおひさしぶりっすー! いっしょにまんまるサメに追っかけられたさめとものことはよーく覚えてるっす!」
「あ、あはは……その節は大変でしたね……。 と、まんまるサメさん!」
その時聞いたまんまるサメのフレーズに思いっきり吸引されたスリジエは、スライが手招くまま、まんまるサメが跳ねる先へと一直線。
一方、今年は猫の手模様が可愛らしい青い水着を仕立ててもらったタビタビは、両手を広げて鉄板へと向かっていく。
「バカンス! バーベキュー! 海賊さんのオススメをいただきまーす!」
「オススメかぁ……バーベキューと言えば、メインはやっぱり肉だろ肉!」
食べ盛りなまっくろにゃんこからおまかせオーダーを受け取った狼のキマイラが、大皿にどんと切り揃えられた肉類を豪快に焼いていく。
「いんや、肉ばっかじゃ健康が偏るぞぅ! 野菜もたんとお上がりよ!」
その横から割り込んできた亀のキマイラが、キノコやトウモロコシといった色鮮やかな野菜をどっさりと鉄板に乗せていった。
そして交わる接待係な海賊同士の目線、肉だ野菜だと睨み合う両者の軍配はいかに……むむむ、と考えた末にタビタビはフォークを天に掲げた。
「今は何だかとってもお肉が食べたい気分です……!」
「おっ、だよなぁ少年! いっぱい焼いてやっからどんどん食えよ!」
と、タビタビをがしがしと撫でる肉派の狼海賊は、ボリューム満点な牛肉からヘルシーな鶏肉などで焼き面積を広げていく。
片や選ばれなかった野菜派の亀は、「野菜も食べるんだぞ……?」と切ない目線を送りながらトウモロコシをコロコロしていた。
「おうおう、結構豪快に食うじゃねぇか」
肉も野菜も第一陣が焼き上がり、人々が舌鼓を打ち始めた頃には船長のレグナも合流してきた。
お代わり用の肉をどんと起きつつ、ひたすらもぐもぐと焼きたてお肉を頬張るタビタビをがしがしと撫でる。
その度に頭のねこ王冠が落ちそうになっているが、タビタビは元気よくおかわりをオーダーした。
「おかわりいります! なんだろう、この後に備えて、パワーを蓄えとかないといけないような気がするんだ……!」
「ははは、フラグを立てるのはやめたまえよグリモア猟兵」
きりっ、どやっとキメ顔で呟いたにゃんこへ、ベンチのアトラから声が掛かった。
「しゃーっく」
「しゃあん?」
一方、スリジエはスライと共に、まんまるサメが集まるという穴場のスポットを訪れていた。
フルーツが実る木の周辺をぽよぽよばいんと跳ねる可愛らしいサメたちは、備わった体毛によって手触りもビロードのようでとても気持ちがいい。
人の気配を察知したサメの何匹かがスリジエたちの前で止まると、きぱっと大口を開けてきた。
「こ、この……大口あけてフルーツを待つところも可愛いんですよ……」
「まんまるサメあるあるっすー」
いかにもおやつくれ、といった風なまんまるサメたちに心を撃ち抜かれつつ、スリジエは持ってきたりんごやみかんをぽいっと放り投げていく。
どっさりと口にフルーツを入れられたサメが、ばくんっと口を閉じる様はやはり鮫らしくと豪快そのものなのだが……もぐもぐと食べ終えて、もっとくれとまた口を開ける様がまた愛嬌のあること。
「普段は跳ねてるけど、この止まってる時が本当に可愛いんですよ……ね、スライさん!!」
「にゃっ?!」
ほくほくと癒されていたスリジエが、残像でも見えるような勢いで振り返るのに、スライは目をきゅっとさせて驚く。
髭も尻尾もぴんと立てて身構えたスライは、気を取り直して「あるあるっすー」と頷くと……はて、と小首を傾げた。
「スリジエのおねーさん、まえの時よりテンション高いっすねー」
「あ、すみません……あの、コンキスタドールの驚異がないってわかってると、どうしても楽しむ方に……」
「にゃはー、あやまることないっす、それもあるあるっすー」
ちょっと照れるように俯くスリジエに、こくこくと頷くスライは追加のフルーツをどっさりと用意した。
一方、その頃。
「ひえー!」
「しゃーっく!」
まんまるサメスポットへと向かおうとしていたタビタビは、道中出くわしたまんまるサメの群れにばいんばいーんと追いかけられていた。
サメ故に肉食で、タビタビくらいに小さな猫はうっかり食べちゃうのではと思われがちなまんまるサメだが、彼らの主食はフルーツである。
そんなわけでタビタビは食べ物じゃないってわかってはいる……お目当てはタビタビが持っているおやつのバナナだ。
ばいーん、と一際大きく跳ねたまんまるサメのじゃれあいタックルに、これまたばいーんとはね飛ばされるタビタビ……もしかしてバナナ付きのおもちゃかと思われているのだろうか。
「助けてアトラさんー! うひゃー!」
「……やれやれ」
飛んできたタビタビをキャッチしたアトラがバナナをどこかよそへと放り投げると、まんまるサメたちはバナナ目掛けてばいんばいーんと跳ねていく。
タビタビにとっては刺激的な邂逅となっただろうか、くるくると目を回したにゃんこへ「おやつどーも」と言うように鳴いたまんまるサメは、またどこかへと跳ねて去っていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
カイリ・タチバナ
アドリブ歓迎。
『眠らぬ宴の島』…俺様の猟兵初仕事だったんだよなー。
平和になってよかった。
アトラにちょっかいかけにいこう。
ジュースと、俺様が焼いた魚・肉・野菜も持って。
パラソルって、いい日除けだよなー。
つかアトラ、その格好似合うな。髪型そんなんだったんだ…。
水着コンテスト中には近寄れなかったが、今は夏休み――。
(近場に水着の女性がいた場合は、顔を手で覆う)
俺様、見慣れてねぇんだよ!故郷だと海女さんスタイル?ってので、絶対に全身布で覆ってたから!(純情ヤンキー)
くっそ、この前のパンケーキといい今回の水着といい、最近、アトラにいわゆる『可愛いところ』見られっぱなしな気がする…!(半分自爆な気もする)
●平和が戻った島で
「『眠らぬ宴の島』……俺様の猟兵初仕事だったんだよなー」
海賊たちのバーベキューが盛り上がる中、それに混じったカイリ・タチバナ(銛に宿りし守神・f27462)がふと独りごちる。
ゲストは座ってろと豪快な歓迎を示す海賊の多い中、上げ膳据え膳は性に合わずと自ら鉄ヘラを構え、肉も野菜も手慣れた風に焼いていく。
やるなぁ、と称賛の声をあげて笑う海賊たちの姿を見る度に、カイリはこの島に平和が訪れたことを改めて実感するのだった。
「(平和になってよかった)」
初仕事、と言えば彼にとってもそうだったろう。
カイリが自らの手で焼いた魚や肉、野菜を持って出向いたのは……パラソルを差したベンチで一時を過ごすグリモア猟兵アトラの元だった。
「パラソルって、いい日除けだよなー。 ……と、どうしたんだそいつは」
「まんまるサメにせっつかれたようでな、休憩中だそうだ」
一回り小さなベンチですやすやと寝ている黒猫人を起こさぬよう、カイリはアトラの向かいに腰を下ろす。
大皿をテーブルに置いて、一緒に食おうぜと取り分け、カイリは普段と格好の違う黒猫紳士に皿を差し出した。
「つかアトラ、その格好似合うな」
「このアロハシャツか? それはどうもありがとう」
「あと……髪型そんなんだったんだ……」
「何を今さら。 挨拶をしたとき、帽子を一度外して見せただろう?」
「いや、そういうの意外と印象に残らないものだぜ?」
ジャカランダの髪飾りを弄るアトラはそれもそうかと頷く、依頼を受ける猟兵が注視すべきはグリモア猟兵の姿ではないが故に。
そんな依頼に尽力したカイリを始めとする猟兵の活躍があってこそ、『眠らぬ宴の島』はこうして平和を取り戻し、水着コンテストを開けたのだ。
「その水着コンテスト中には近寄れなかったが、今は夏休み……」
「む、コンテストに何か問題が」
カイリの呟きを黒猫の耳は聞き逃さず、アトラが“近寄れなかった”理由を尋ねようとした時……カイリはばっと顔を手で覆う。
はて、と首を傾げたアトラが振り返った先には……なかなか露出の多い水着姿の女海賊たちがいた。
「ふむ、これはまた……どうしたんだねカイリ君、顔が赤いぞ?」
「俺様、水着とか見慣れてねぇんだよ! 故郷だと海女さんスタイル? ってので、絶対に全身布で覆ってたから!」
目線を戻したアトラが「もう行ったぞ」と声をかけたところで、カイリは顔から手をそっと離す。
荒くれ漁師たちに混じって漁をするほどにアグレッシブな守神は、案外純情のようだった。
東方文化の色が濃いカイリの出身島国では、“水着”は一般的ではないことも理由にあるようだが……それはさておき、馴染みになりつつあるグリモア猟兵はまた『可愛らしいものを見る目』で微笑んでくる。
「だあぁっ、そんな目でこっち見んな! くっそ、この前のパンケーキといい今回の水着といい……、最近、アトラにそういうとこ見られっぱなしな気がする……!」
「そんなカイリ君へ、“飛んで火に入る夏の虫”の言葉を贈ろうではないか」
銛に宿りし守神のことを、自ら災いに飛び込む虫と称して黒猫紳士が肉を食むのに対し、カイリはむぐぐと唸りを返すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
鈴木・志乃
おーレグナさんこんちゃー!
んー、この島は相変わらず活気があっていいね。何よりです。(一人で勝手にうんうん頷き)
ちょっとサメと戯れたいから、フルーツ沢山欲しいかな。どこらへんコンコンすれば出る? んー私似たようなとこ出身だからだいじょーぶコンコンシステムはワカルワカル。
んじゃ……皆危ないから近寄んないで、ねッ!!
(UC発動。無駄に計算&洗練された的確な軌道とタイミングで、サメを誘導するようにフルーツをぶん投げる。高速詠唱と念動力でフルーツを綺麗に切断。飛んで行くフルーツ、食いつくサメ。さながらイルカショーの様相に……なるといーんだけどなー【パフォーマンス】)
いやーかわいい
誰か私と一緒に来ないかな
●眠らぬ宴の上演
「おーレグナさんこんちゃー!」
「おうおう、志乃じゃねぇか! よく来たなぁ!」
鈴木・志乃(ブラック・f12101)もまた、船長のレグナを始めに熱烈な歓迎を受けていた。
基本的によそ者は歓迎、猟兵ならば大歓迎との言葉通りに相も変わらずの活気に、志乃はこくこくと頷いてみせる。
早速なんか食うかとレグナが案内をしようとした所、目的のモノを見つけた志乃はフルーツバスケットを手に取った。
「ちょっとサメと戯れたいから、フルーツ沢山欲しいかな。 どこらへんコンコンすれば出る?」
「あー、フルーツならそっちらへんだな、分かるか?」
「私似たようなとこ出身だからだいじょーぶコンコンシステムはワカルワカル」
レグナがざっくりと指差した機械を志乃が適度にスナップを利かせてコンコンすると、色とりどりのフルーツがどさどさとバスケットの中へと降ってくる。
やっぱ手慣れてんだなぁ、と目を丸くするレグナは知る由もないことだが、志乃は元祖コンコンのあるキマフュー育ちである。
コンコンのコツはね……といった説明さえ飛び出そうになった頃、たくさんのフルーツの匂いを嗅ぎ付けたらしいまんまるサメの群れがばいんばいーんと跳ねてきた。
「しゃーっく!」
いかにもおやつくれ、と言った風に大口を開けてスタンバイをしているサメたち……その位置取りはなかなか丁度いい感じだ。
フルーツとまんまるサメの間に遮蔽も海賊もいないことを確認した上で、志乃は徐にフルーツを手に取る。
「んじゃ……皆危ないから近寄んないで、ねッ!!」
まずフルーツを1つ投てき、それと同時にユーベルコード――上演が始まる。
計算と洗練が成された的確な軌道は丁度、まんまるサメが跳ねきった高さを目掛けて放たれる。
そこへ更に高速詠唱と念動力を駆使して、空中でフルーツを綺麗にカッティングしていく。
極めつけは食い意地の張ったまんまるサメたち、彼らはカットされたフルーツを目掛けてばいーんと大きく跳ね上がった。
それは一匹のみならず、二匹、三匹と……群れ全体がカットフルーツ目掛けて飛ぶ有り様は、さながらイルカショーの様相だ。
こいつはスゲェ、まるで鯨が跳ねたみてェだと、鉄板から目を離した海賊たちもそのパフォーマンスを食い入るように見ていた。
「しゃーっく!」
「いやーかわいいねぇまんまるサメくん! 誰か私と一緒に来ないかなー」
ごちそうさま、と言うようにまた跳ねるサメを一匹捕まえて、志乃はそれはもうわっしゃわしゃと撫でまくる。
普通のサメにはないビロードの手触りもっふりをこれでもかーっとばかりに堪能した頃……スライもやってきた。
「志乃のおねーさんスゴいっすー! いいさめ友になれるっすー!」
「よぅスライ、おめー前も似たようなこと言ってなかったか?」
きらきらと感激の眼差しを向けるスライを、どうどうとレグナが肩を掴んで落ち着かせる。
似たようなことと聞いたスライは一旦落ち着いて、耳も髭もぴーんと立ててからぽむっと手を打った。
「まんまるさめさんは、ごはんをきちんとあげればどこでもついてくっすよ! おきにいりの子がいたら、おねーさんの冒険に連れてってあげてほしいっす!」
「しゃーっく!」
つまりはお持ち帰りオーケー、ただしきちんと世話すること、とのことだ。
『ブラック』のパフォーマンスの1つに、まるっこくてよく跳ねるサメが加わるかどうかは……また別の話だ。
そんなバカンスの最中、グリモアが大きな驚異の予兆を告げる……フラグは見事に回収された。
強大なる敵との新たな戦いを告げる知らせにざわめく猟兵たち。
その姿を見ては何かを察したレグナは、そっと鉄ヘラを置いた。
「どうも急用らしいな? まぁいいさ、それ済ましたらまた来いよ。 お前たちが見失わないように、導の炎は絶やさず燃やし続けるからよ!」
「いってらっしゃいっすー!」
賑やかな海賊たちに見送られ、猟兵たちは宴の浜辺を後にする。
楽しい時間を心の糧にして、戦いへと向かうために。
大成功
🔵🔵🔵