ロンリー・アンサンブル・カーテンコール
#アリスラビリンス
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●アリスは最初から
絵本の中のお姫様が嫌いだった。
私なら月からの迎えは皆殺しにしたし、継母が私を恐れるなら死んであげたし、いつまでも灰に塗れて舞踏会になんていかなかった。
どうしてもハッピーエンドが理解できなかった。物語の世界にも私の幸福はなかった。
「それは君が悪いから。気味が悪いからあっちいっちゃえか。確かになあ」
森の中の音楽堂。天井代わりに広がる満点の星空へと手を伸ばす。
『いっしょにおどってうたってはなをつもうよ“ ”!ぼくらのともだち!』
私の名前を最後に呼んでくれた不思議なお友達。けれど。けれどけれどけれど。
私が喋ったら、皆が冷たい視線を向けたり反らした後に怯えていた。
結局私はどの世界にいても孤独なのだ。
皆から切り離されて、お腹が冷たくなるその気持ち悪さを『思い出した』瞬間。
うらがえりました!うらがえったのよ!うらがえったわ!
●グリモアベースには紅茶の匂いが満ちている
「アリスラビリンスに絶望の国が生まれてしまったの」
グリモア猟兵ジェット・ホークスアイはカップに紅茶を注ぐ。
絶望の国。アリスがオウガに堕ちれば唯一の帰り道である自分の扉はもう決して開かぬ絶望の扉へと変わる。絶望の扉を抱く絶望の国ではオウガが無尽蔵に産み出され、目覚めの時、弾け飛び出るのを待つばかり。
「オウガのゆりかごといった所かしら。物語を真に終わらせる方法はたった一つ。オウガになったアリスを殺し世界も殺す。アリスはもう助からない」
ジェットが紅茶を一口飲む。
「終わりの始まりのきっかけはアリスの絶望。私が予知したアリスは自分の扉を開く前に失っていた記憶を取り戻して『絶望』したわ」
何故アリスは絶望したのかと問われたジェットは少し考え、口を開いた。
「アリスは酷く『孤独』の感情に囚われ、それが絶望へと誘った」
人々が目を背けるような血と暴力の折り重なりにアリスは共感と陶酔と興奮を覚え、賢いアリスはそれが異常だと知っていた。自分の感性と価値観はあらゆる世界では受け入れられないと迷い込んだ世界で悟ったその瞬間孤独が絶望と交じり合った。
「どうか。どうかオウガと化した彼女に出会ったら、せめてもの慰めに孤独に囚われたその絶望に寄り添ってあげて」
絶望を糧に膨れ上がるオウガの群れにこれ以上餌を与えないように。
「主たるオウガを失えば、絶望の国の崩壊が始まる。内包していたオウガの群れも溢れ出る……元アリスの絶望が少しでも和らげれば、産まれるオウガの群れもきっと減るわ」
いつの間にかグリモアベースは夜空に覆われ、満月が猟兵達の頭上に輝いていた。同時に黒いドレスを纏った少女の幻影が浮かび上がる。
「アリスはもう自分の名前も忘れてオウガ『ネガ・アリス』として絶望の国の中心、音楽堂の舞台の上にいるわ。これから絶望の国、元人形劇の国へと皆を転送するわ。本当なら人形のゆかいな仲間たちが面白おかしくみんなを迎えているだろうけど月の光で皆みんな狂っている。森の中、花畑を抜けて音楽堂の舞台の上まで。まずはそこまで向かって欲しいの」
満月の光が狂気を膨らませ住民も木々も花も星空も心から狂ってる。
互いを罵り、何かに怯え、自傷他傷で原型を留めていない残骸が飛び散り、誰かが笑い転げる。目を覆いたくなるような惨状こそがアリスが孤独を感じない理想──絶望の国だとすれば、それに足を踏み入れる猟兵達にも狂気の招待状は直ぐに届くだろう。
「今宵皆様をご案内するのは狂気が正気だったアリスの終わった物語」
転送ゲートが開かれた。
満月が輝いている。
●ざまあみろ!みんなくるってせいじょうになってやがる!
いつねるのもじゆうです。どこでわめこうがじゆうです!だれをなぐろうかじゆうです!なにをしようとぜんぶぜんぶつきのひかりのもとにじゆうです!
せかいでふどうとくとふたをされてきたきょうきがこのせかいのしょうきです!
おんがくどうでまっています!ちゃんとしょうきできてくださいね!!
あなたがしたくないことは、ほんとうはあなたがしたいこと!
あなたがみたくないことは、あなたがほんとうはみたいこと!
硅孔雀
ここまで目を通していただきましてありがとうございます。
硅孔雀です。
終わってしまったひとりぼっちのアリスの物語を。
流血、不道徳、後味の悪い結末が進行しますので苦手な方はご注意ください。
●目的
オウガ『ネガ・アリス』の撃破(2章・ボス戦)及び絶望の国で生まれるオウガの群れの掃討(3章・集団戦)
●構成
第1章:冒険『狂気に満ちた満月の下』。
夜空の下、森の奥の音楽堂を目指してください。道中はいかなる行動中でも月の光が降り注ぎ、普段猟兵の皆様が抱えていた狂気が沸き上がります。
「自分が見たくない存在・事象」または「猟兵の皆様がしたくない行動」が露悪的に歪められ、幻覚の様に目の前に広がります。具現化した狂気に耐えるか身を委ねるかはご自由に。
絶望の国の住民達の五感を通じて元アリスは猟兵の皆様を見ています。話しかければある程度は会話できるでしょう。
第2章:ボス戦『ネガ・アリス』。
既にオウガになっているアリスとの対峙。決して元には戻りません。
しかし、アリスの抱えていた絶望を和らげることが出来ればそれは救いになるでしょう。第3章の開始条件に影響します。
第3章:集団戦『???』。
オウガが撃破された後、絶望の国が崩壊する中オウガが溢れだし戦闘します。
第2章でアリスの絶望が和らいでない場合、シナリオ上では成功しても大量に生まれたオウガの大半は逃がしてしまう結果になります。
●絶望の国
アリスがオウガへと落ちた事により生まれた世界。
元は『人形劇の国』。喋るぬいぐるみやパペットの愉快な仲間達が暮らしあちこちで寸劇やミュージカルが開かれる楽しい不思議の国でした。現在はアリスの絶望に合わせて夜空に浮かび上がった満月により皆狂っています。言葉は喋れますが意思疎通は難しいでしょう。戦闘力はありません。
●注意事項
各章につきまして断章の追加以降、プレイングを受付いたします。執筆状況につきましては大変お手数ですがMSページを参照していただけますと幸いです。
文体はですます調で統一。流血含む過激な描写が含まれます。ご注意ください。
第1章 冒険
『狂気に満ちた満月の下』
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POW : 狂気にただひたすら耐える。
SPD : 狂気を紛らわせたり軽減するような方法を取る。
WIZ : 狂気に陥っても問題ないような対策をとっておく。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
・断章追加後プレイングの受付をいたします。
●月の光の所業にして構いませんので楽しみましょう!
くまのぬいぐるみの養蜂家さんお元気?ガラスの目玉が取れそうですねごきげんよう。ええ、ええ。蜂さんとあんなに仲良しだったのに、手で握りつぶしてしまったから自分の目玉を抉り出したの?
いいじゃない。本当はあなた、蜂さんが好きだったのよ。
好きだったからこそコロシタクナイ。なんていうのはもう月の光の下では通用しないわ。殺したのはあなたの正気。
悲鳴をあげないで大切な蜂さん。なんていうのはもう満月の下の元では御法度よ。あなたは愛する人の絶叫と命乞いが大好き。
結論!
貴方がしたくないと心に思うことは全て本当は貴方が実行したい事!
貴方が見たくないと目を背けたいことは全て本当に貴方が見たい事!
……口から血が出てきた。腫れてくる前に次のお友達探さないと駄目ね。
お腹が減ったから針だらけの鉢さんを食べ始めたの。そんなことしたくないって?
……ああ。ああ!ようやく新しい正気を手に入れたのね!それじゃあ私が中にいる間歌いましょう。
『親友をなぶり殺しにして肉体すら残さず踏みにじる夜空』を!
●
猟兵達が転送ゲートをくぐり、アリスラビリンス──すでに終わった絶望の国へと足を踏み入れます。
絵本の中にありそうな色とりどりの可愛い木造の家が燃えていました。
ふかふかの芝生は誰かにはぎ取られ、剥がしたばかりの緑の服ごと誰かが引き裂かれています。
自分達で動けない花達はお互いに花びらで他害の首を絞め合っていました。
悲鳴に怒号、泣きわめくそれを心の底から莫迦にするような笑い声。
だれもかれもが夜空の下、満月の光が降り注ぐ中くるっていました。
手の中の黄色と黒の縞模様の何かを食みながら、己の体をがりがりとかきむしっているくまのぬいぐるみがいました。恍惚とした表情で歌っていました。
「貴方がしたくないと心に思うことは全て本当は貴方が実行したい事
貴方が見たくないと目を背けたいことは全て本当に貴方が見たい事
ああ幸せだ 幸せだ 殺したくないは狂気でころしたいが正気、正気」
猟兵の立っている地へと月の光が降り注ぎます。
誰かの心のざわめきを表現しているかのように木々と花と住民皆がげらげら笑っていました。
狂気に満ちた満月の光は決して貴方をにがさないわ!
◆◇◆
※7月29日8:31分よりプレイングの受付をいたします※
※猟兵の皆様が「自分が見たくない存在・事象」または「猟兵の皆様がしたくない行動」が露悪的に歪められ、具現化して目の前に現れます。
具現化した狂気に耐えるか身を委ねるかはご自由に。
元アリスは皆様の様子を観察し、話しかければ応えてくれるでしょう。最も、彼女は既にオウガで狂気を歓喜しています。
◆◇◆
アハト・アリスズナンバー
メアリー(f24749)と共に。◎
この国では見たくない物が正しい。
我々アリスズナンバーはアリスの物語を幸せに導く者。
ならば、目の前のアリス殺しはこの国では正しいのでしょうね。
UCで狂気を遮る透明な鎧を纏いつつ、【狂気耐性】で目の前の惨劇を無視します。
これは所詮、月の光が放つ罠。見ているアリスを殺さねばいけません。
けれどメアリは、喜んでアリスを殺すのです。
狂気に復讐の味を絡ませて、さぞかし喜んで殺すのでしょう。
ならば私も、いっそ狂ってみましょうか。
此処じゃ誰もが狂ってる。襲われた哀れなアリスは、助けに来た猟兵がオウガごと【破魔】の力で一緒に殺して、幸せになりましたとさ。
――次の哀れなアリスへ続く
メアリー・ベスレム
◎アハト(f28285)と一緒に
なんて素敵な国かしら
なんて醜悪な国かしら
えぇ、そうよ
見たくないものだからいいの!
したくないことだからいいの!
月の狂気が見せるのは
オウガに捕らわれ、弄ばれて
殺され、食べられるアリス達
反吐が出る程に悪趣味で
けれどもありふれたこの光景
メアリ自身は【狂気耐性】で耐えながら
具現化したオウガを殺して進みましょう
あぁ、それとももう既に
メアリは狂っているのかしら?
見たくないものを見せられて
したくないことをさせられて
その苦痛と恥辱は
復讐の味を引き立てる最高のスパイスだから
殺したくない、あわれなアリスだったあなた
殺してやりたい、狂えるオウガであるあなた
今から逢いに行ってあげるから
迷い込んだけだもののアリスと量産型のアリスの幸せを祈るフラスコチャイルドのお話です。
メアリー・ベスレム(Rabid Rabbit・f24749)の赤い瞳がその瞬間をとらえていました。
悲鳴と共に真っ赤に咲く生暖かい水飛沫性の花達が美しく咲きました。
牙と爪で抱き寄せられた彼女達は、引き裂かれながら囚われ、嬲られ、抉られ、最期にぱくん!花が咲いた場所からアリスは生まれ、そしてまたオウガが花を咲かせます。
繰り返されるオウガの捕食光景。無力な獲物として不思議の国に放たれたメアリーは何より見知っていました。
「メアリ、さあ行きましょう」
なまぬるい湿気に包まれ鉄錆の香り放つ花──絶命したアリスの残骸。具現化した幻想が質量を持ち侵食を開始しています。
メアリーと共にその光景を見ていたアハト・アリスズナンバー(アリスズナンバー8号・f28285)がメアリーに声をかけました。
彼女の銀の瞳もまた、花が開花する瞬間が映っていました。
(我々アリスズナンバーはアリスの物語を幸せに導く者。ならば──)
アハトは量産型のフラスコチャイルドです。彼女達の共通の記憶が今銀の光の下にいるアハトを動かす最適解を導き出しています。
絶望の国の女王となってしまったアリスの望むこの国の正常。
(目の前の……アリス殺しはこの国では正しいのでしょうね)
所詮は月の光が放つ罠。元凶となった見ている「裏返った」アリスを殺さねば物語はいつまでも続くでしょう。
「メアリ、月の光が狂気を運んでいます。それだけです」
ユーベルコード:アリスナイト・イマジネイションを発動させたアハトが透明の鎧を纏います。それは目の前で無限に繰り返される惨劇をシャットアウトするには十分でした。
「メアリ。これは」
アハトがメアリーの手を引こうとしたその時でした。
獣のような大きな牙を生やしたオウガが、幻想アリスの背後からその大きな口を開け。
「この復讐はきっと、甘くて素敵なものになるわ……だから」
ざくり。幻想のオウガは幻想アリスごとメアリーに殺されました。赤い花が二つ咲きました。ごうごうと風が吹き、赤い花が散っていきます。
「ああ。なんて──なんて素敵な国かしら。なんて醜悪な国かしら」
メアリーの口から零れる甘い吐息交じりの言葉だけが月の光の下でキラキラと輝いています。
「えぇ、そうよ。見たくないものだからいいの! したくないことだからいいの!」
暗い森の中、月の光がスポットライトの様にメアリーを照らし出します。
反吐が出るほど見た悪趣味なアリスが食べられオウガがお腹いっぱいになる光景。
見たくない殺戮を見せられて、したくない殺戮をさせられるその苦痛と恥辱はメアリーのユーベルコード:雌伏の時(リヴェンジフルモーメント)があらゆる行動に成功するために支払わないといけない対価である以上。
「さあ行きましょう! 目の前にいるオウガは皆、殺して。殺して進みましょう」
口の端をにいと吊り上げ、メアリーはアハトの手を取らず先へ先へと進みます。
「あぁ、月の光が綺麗……綺麗だから狂う。狂うから綺麗……」
『それとももう既に、メアリは狂っているのかしら?』
赤い花を咲かせ続けるメアリーに、アハトは何も言わずついていく事にしました。
メアリーが生み出す光景と行為。そこから引き出される苦痛と恥辱は彼女の復讐の味を引き立てる最高のスパイスだから。
具現化した殺戮劇を殺戮で塗り潰す狂気の道はどこまでも続きます。
(ああ、メアリは、喜んでアリスを殺すのでしょう。狂気に復讐の味を絡ませて、さぞかし喜んで殺すのでしょう)
アハトを動かすその原動は『アリスの物語を幸せに導く』と製造体として刻まれた原始の記憶。
目の前で赤が赤にまみれ、悲鳴と怒号が生まれてはメアリーによって消されていく光景。
アハトの耳にメアリーが喋っているのか、もしかしたらアハトが狂ってメアリーの声かもしれないその音が耳に入ります。
『殺したくない、あわれなアリスだったあなた。殺してやりたい、狂えるオウガであるあなた』
ぼたり。オウガだった大きな肉片が地面にぶつかります。
『──今から逢いに行ってあげるから』
裏返ったアリスの元へ美しく花を踏みつけ進んでいくメアリー。アハトは少しの間考え結論を導きました。
『ならば私も、いっそ狂ってみましょうか』
此処じゃ誰もが狂っている。そうだ、狂っているよと肉片の中の口が歌っているように。
「襲われた哀れなアリスは、助けに来た猟兵がオウガごと」
アハトが手を振るうとアリスがごぷりと赤を吐いて崩れ落ちオウガの死体と交じり合います。
「破魔の力で一緒に殺して、幸せになりましたとさ」
ぐちゃぐちゃと赤と肉をまき散らした幻想は、二人を止めるにはあっけなく消えていきました。
──次の哀れなアリスへ続く
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヘイヤ・ウェントワース
◎
POW判定
・行動
再現される過去の過ちの光景を心に刻んで
彼女との物語を終わらせる覚悟を決める
・狂気の内容
時計ウサギは信じていました
アリスが自分の扉を見つけさえすれば
オウガたちをこの世界から追い出すことが出来ると
時計ウサギは思っていました
アリスはどんな逆境にも負けず、希望の力で道を切り開くのだと
時計ウサギは勘違いしていました
自分がアリスを扉へ案内すればこの世界は救われるのだと
けれどもアリスは
元の世界の辛い出来事を思い出し、絶望の淵に沈んでしまいます
時計ウサギは気付きました
自分はアリスではない彼女自身の事を何も見ていなかったのです
時計ウサギはやってきました
今度こそきちんと彼女と向き合うために
最後の頁が破れた本を未だ持つ時計ウサギのお話です。
ヘイヤ・ウェントワース(時計ウサギの王子様(スチームパンク風味)・f19490)は森の奥へと向かいます。
ある時計ウサギは信じていました。
「アリスが自分の扉を見つけさえすれば、オウガたちをこの世界から追い出すことが出来る」と。
『……いや、いや、何よこれ……!』
ドレスはほつれ丁寧に磨かれた靴は泥だらけ。涙で汚れたアリスの顔を時計ウサギはそっと撫で、拭います。
大丈夫だよアリス。キミの絶望はボクが祓って見せる。
ある時計ウサギは思っていました。
「アリスはどんな逆境にも負けず、希望の力で道を切り開くのだ」と。
キミが記憶を取り戻す方法も、元の世界に帰る道も『 』は知っているから。希望を持ち続けれていれば何とかなるさ。
『ありがとう……優しい兎さん』
『この怖い世界はどこまで続くのかしら?』
『キミが早く自分の扉を見つければ、……だから立ち上がって』
時計ウサギはアリスの手を引き進みます。希望に満ちて救いに終わる旅路。
ですが時計ウサギは勘違いをしていました。自分がアリスを扉へ案内すればこの世界は救われるのだと。
『うさぎさん! 私、花の冠を作ってみたの! きっと似合うわ』
『ありがとう。でも、僕が必要なのは君の笑顔。自分の扉までもうすぐだよ』
『……ええ』
アリスを自分の扉の元へ送り出した時計ウサギは呆然とします。
元の世界の辛い出来事が流れ込み、アリスの真っ白な顔色が涙と共に歪みました。
手にしたしおれた花の冠がぽとりとアリスの手から落ちたその時。
アリスは裏返りました。
ああ! 愚かな時計ウサギのヘイヤ! 私は貴方の頭にこれをあげたかったのよ!
ヘイヤはようやく気が付きました。
迷い込んだアリスを自分はよく見ていて、何も見ていなかった事を!
時計ウサギと最初のアリスの物語は永遠に再現されています。
アリスの抱えきれない絶望がそのまま降り注いでくる狂気をヘイヤは真正面から受け止めます。枯れきった数百万の花の冠を決して踏まないように、歩き続けます。
「大丈夫だよアリス。物語は今日でお終いだ」
今度こそきちんと彼女と向き合うために時計ウサギはやってきたのだから。
成功
🔵🔵🔴
サァカ・パウロニア
◎ ○
POW
このせかい、とてもひどい。はやく、ありすを、みんなを、らくにしてあげなきゃ。
でも。——でも。わらいごえが、うるさい。うるさい、うるさい、うるさい——!
………………え?
わたしは、いま、なにをしようとした?
どうして、わたしは、めのまえの人(モノ)を、こうげきしようとした?
どうして、わたしは、こうげきしない?
うるさいものは、けさなきゃ。けしちゃだめ。
わたし、は。わたしは、なに?
(サァカは罪の無い人々を無差別に傷つけたくないと思っています)
美しい赤色と美しい緑色を身に纏ったミレナリィドールのお話です。
サァカ・パウロニア(ミレナリィドールの闇医者・f28606)の拘束具越しに緑色の瞳に映るのは暗い夜空と木々。そして。
「……おうち?」
屋根も壁の煉瓦も吹き飛んだ家々。よくよくサァカが見渡してみますと壊れた家は沢山ありました。
「おうい。おうい」
サァカは慌てて走ります。
(このせかい、とてもひどい)
愉快な仲間達が苦しそうに唸っています。
(はやく、ありすを、みんなを、らくにしてあげなきゃ)
「たすけなきゃ。たすけなきゃ」
サァカの頭上から月の光が落ちてきました。
わらいごえが、ごうごうとふくかぜよりみみをきりさく。
『あはは!』
うるさい。
『ふふ!』『来たわね来たわね!』
うるさい、うるさい、
『『私達を壊す人がやってきたよ! あははは!』』
「うるさい──!」
ドカーン! ガシャーン!
「………………え?」
サァカはぬいぐるみにのしかかる尖った木をどかそうとしていました。
木を持ち上げ、勢いよく──尖った先でお腹を刺してあげようとしていたのに!
「わたしは、いま、なにをしようとした?」
ぬいぐるみがにやにや笑います。
どうして、わたしは、めのまえのぬいぐるみを、こうげきしようとした?
『どうして、わたしは、こうげきしない?』『一方的に壊してお嬢ちゃん!』
サァカの狂気が芽吹こうとしていました。
「うるさいものは、けさなきゃ」『けしちゃだめ』『裏返りそうだねお嬢さん!』
愉快な仲間達が一斉に顔だけをサァカに向けます。
そして瓦礫の下から這い出て手には割れたお皿やナイフを持ってにじり寄り。
「ちがうわたしこわしたくない、いたいのはだ」「つみのないひとがいっぱいこわれるのたのしいのに」
誰かの口からサァカの声が聞こえます。
窓ガラスの破片が足に食い込みます。ばさばさ箒で頭を叩かれます。ナイフの先が肌をなぞります。
「ほら、このひとたちはわたしたちはざいにん。いっぱいこわれてこわしましょうよ」
ぬいぐるみや人形達──狂った愉快な仲間達が襲い掛かってくる。
「わたし、は」
──わたしは、なに?
問われたのなら答えましょう。
──罪の無い人々を沢山傷つける善良なサァカ・パウロニアだよ。
アリスより。
心と体の痛みに耐えていたサァカの耳に、ぐしゃりと大きな音が聞こえると、後は静寂だけが残りました。
成功
🔵🔵🔴
木常野・都月
◎
俺は、自分が理性を無くすのが、1番怖い。
狐だった頃も一応理性はあった。
でも理性を失う事は怖くなかった。
本能のまま、目の前の獲物にかぶりつけば良かったんだ。
今は違う。
猟兵という仲間と守る人と世界がある。
仲間を、守る者を、傷つけるのが怖いんだ。
理性を失くして、大事な人達が獲物に見えてしまったら。
そして、牙を剥いてしまったら。
そんなのは絶対嫌だ。
絶対に嫌だ。
自分に牙や刃を突き立ててでも我慢だ。
死んだ爺さんと約束したんだ。
UC【妖狐の通し道】で狂気を耐えたい。
どうしてもダメなら、チィに[属性攻撃]で俺の中にある狂気を抑えて欲しい。
チィは、狂気と浄化を司る月の精霊様。
多分出来ると思う。
闇夜より濃い黒を持つ妖狐のお話です。
木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)は森の奥へと向かいます。
(──おかしい)
かつて己が猟兵だと自覚するまでは木常野は狐として森の中で暮らしていました。
森の中に存在する生命は全てが生きていてそしていつかは死んでいきます。だから森には生と死がひしめいている。はずでした。
(なんだここは)
足を止めます。五感、そして精霊と心通わす全てをフル回転させますが木常野が感じたのは『無』でした。
目の前に草が生い茂っていますが、何も感じません。風が吹いているだけです。
森の中に存在するのは自分と、そして、月の光だけなのではないか。
(……これは。森が、おかしい?)
月の光が全てを吸い尽くしたかのような静寂、五感を刺激するはずの情報は今まで自分が体験してきたそれと大きく異なり。
違和感は、じわじわと木常野の心を蝕んでいきました。
『やあ狐さん。おいらのお肉まだ食べられるよ!』
物言わぬはずの子ウサギの□■が現れ、媚びへつらった笑みを浮かべます。
『何を怖がっているんですかい旦那。きつね、キツネ、狐! おいらの家族を食っちまう獣様!』
木常野が罵られます。黒い瞳をぱちぱちとさせ、木常野は自らにぶつけられた悪意を感じ取り少し前屈みになります。
彼の足が地を蹴れば狐の前足はすぐに子ウサギを捉えることができるでしょう。
『さあさケダモノ! 早くおいらを食いたいんだろ!? 殺したいんだろ!?』
「……ぁ」
月の光の下、木常野の心の底の狂気が静かに溢れ出ようとしていました。
(俺は、俺、は──が怖い)
かつて森を駆け抜け本能のままに目の前の獲物を仕留め、否、かぶりついてきた自分。
本能を制御してきた理性は確かに木常野の中に最初からありました。その理性を手放すタイミング、獣になることをかつての木常野は恐れていませんでした。
『ああそうだ! 妖狐の木常野。お前は理性を無くすのが怖いんだろう!』
──それはお前がしたいこと。本能のまま生きたいんだろう!
今は違う。俺は猟兵。そして仲間と、守る人と、世界がある。
──お前の目の前にあるもの全ては肉、餌!
違う。俺は、仲間を、守る者を、傷つけるのが怖いんだ。
──俺は美味いぞ。餌の前に理性なんて捨ててしまえ!
もし、俺が、理性を失くして、大事な人達が獲物に見えてしまったら。
そして、牙を剥いてしまったら。
「そんなのは絶対嫌だ。……絶対に嫌だ」
死んだ爺さんとの約束。仲間たちの笑顔。守るべき世界。
「チィ!」
月の精霊様のチィが捕食者と餌の間に立ちます。狂気と浄化を司る月の精霊に、木常野は祈りを込めました。
「俺の中にある狂気を、抑えて」
主人の声にチィは尻尾を一振り。月の精霊と月の光がぶつかり合うと、星空から星がこぼれ落ちるようにキラキラと輝きます。
美しい光景が、情報が、視角を刺激し木常野の心を吹き抜ける風になります。
(綺麗で心地よい……これなら)
ゆっくりと重心を移動させ、木常野が足を一歩前に出します。子ウサギ──幻想だったそれはユーベルコード:妖狐の通し道(ヨウコノトオシミチ)の前ではあっけなく崩壊しました。
月の光よりも美しくそして眩い輝きが音楽堂を照らしていました。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ネガ・アリス』
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POW : 裏返ったお姫さま(リバースド・プリンセス)
【黒く染まったプリンセスドレス】に変身し、武器「【悪夢童話(ナイトメア・テイル)】」の威力増強と、【歪んだ童話の能力・人物】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
SPD : 歪:茨姫(バロック:スリーピング・ビューティー)
全身を【黒いイバラのツタ】で覆い、自身が敵から受けた【苛立ち】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
WIZ : 歪:親指姫(バロック:サンベリーナ)
【全身を覆うツタ】から【花のつぼみに潜んだ親指大の分身】を放ち、【その可憐な姿で魅了すること】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ヘイヤ・ウェントワース」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ロンリーステージ
『はぁ? 故郷?』
それってどこよ
そんなの本当にあると思ってるの?
「……やっぱり。ないんだね。私の帰る場所」
『当り前じゃない。可哀想なわたしの友達、可哀想なもう一人のアリス。ほらずっといっしょに絶望しましょう』
ぐらぐら。ゆれるしかい。あつくなるほお。
きっと、もう、うらがえったからわたしはひとつになるんだ。
(嗚呼でも!)
目の前の人の肉食む化物の形した少女は決して私の友にはならないんだ!
孤独!どこまでも続く孤独!
(くすくすくすくすくすくす)
(げらげらげらげらげらげら)
●対峙
森の奥の音楽堂。ホールに降り注ぐ銀色の光はもう狂気を膨らませる力を持ってはいませんでした。
ステージの中央から延びる真っ黒な線。否、真っ黒な茨。
闇よりも黒いそれは渦を巻きとぐろを巻き蜘蛛の巣のように広がっていました。
その中心に立つのはかつてアリスだったオウガ『ネガ・アリス』、亜麻色の髪と黒いドレスが月の光を浴びぴかぴかと輝いています。
「こんばんわ。この世界を終わらせに来たんでしょ?」
猟兵達を茨の祭壇から見下ろしながらオウガは口を開きます。
廃墟と化したホールはしいんと静まり、オウガの声はよく響きました。
「私を殺すの?」
「壊すの? 刺すの? 潰すの? 溶かすの? 私ね、そういうの好き」
物騒な言葉を口にしながらオウガの体はふらふらと揺れます。
湧き上がる感情──歓喜を隠さずに、木霊するオウガの笑い声だけが猟兵達の前にありました。
「私だけの理想の世界で、私の夢見た殺し合いをしてくれるのね!」
ぐにゃり。オウガの影と一体化した茨が動き始めました。
『もう私自分の名前覚えてないの。お気に入りの紅茶の味も忘れたの。でも、お母様のお気に入りのティーカップを壊したときの顔は覚えているわ』
揺れる舞台の上でオウガは躍ります。
他者と決して交わらない感性の先にあったのは絶対的な孤独。
『あはハはハ! はー笑える。故郷なんて最初からなくて、友達になってくれた人形達の首を引き抜いてあげたいなんて思っちゃって、それ喋ったら虫を見るような目で見られて、結局みんなアリスとは違うんだって絶望させてくれちゃって』
アリスが辿ってきた旅路の果てに絶望の国は生まれました。
うらがえり真っ黒になったドレスの裾を掴み、猟兵達に優雅に礼をするオウガの目はぎらぎらと輝いています。
【ま、いいわ。あんた達って絵本の中じゃ勇敢な兵士ってところでしょ?】
だったら!
≪孤独で決して交わらないうらがえったアリスと血みどろに戦いあうのでした!≫
黒い茨と咲き誇る黒薔薇が猟兵達にその鋭い棘を一斉に向けました。
孤独におぼれ裏返ったアリスはもはやオウガから戻ることなく。
「……はあ。どんなに殺しあっても、私は、ひとりぼっち」
猟兵の耳に入ったちいさな呟き。絶望が滲んだ声。
木常野・都月
◎
孤独で絶望した、か。
人は群れる生き物だからな。
そういうものなんだろうな。
狐は、子育て時に群れる事もあるけれど、基本1匹で生きていくからな。
群れてると狩られやすいからという理由もあるけど、それぞれ違う個だから。
それが出来ない、群れる習性の生き物の辛い所だな。
なぁ。
仮に、人と人が同じ個なら、貴女は別の人間になってしまう。
貴女だから貴女なんだ。
違ってるのが、普通なんだ。
それで、いいんだよ。
自分以外の人からみた貴女じゃなくて、貴女が貴女を、信じてあげられないか?
UC【精霊の瞬き】を火の精霊様の助力で使用したい。
敵の攻撃は、[高速詠唱]でお願いした火の精霊様の[属性攻撃]の[カウンター]で対処したい。
妖狐の木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)は黒い蔦で覆われたステージへと登りました。
(孤独で絶望した、か)
黒い髪が揺れる光景、そして己──オウガを滅ぼしにくる猟兵の気配を察知したネガ・アリスは真っ黒のドレスを揺らし近づいていきます。
木常野の黒い瞳には少女が駆け寄ってくるようにしか見えません。
(人。巣立ちをして個として生きていく野生の獣とは異なり群れる生き物)
「そういうもの。なんだろうな」
自分が未だ『狐』だった頃傍にいたのは、狩りを教えてくれたのは『母』でした。
無条件で傍にいてくれる彼女と共に生きた木常野はそれでも彼女との別れで悲しみに包まれたことはありません。
幼い自分と共にいれば他の生物に狩られるので狐は群れません。
なにより本能でお互いが別の『個』であることが刻まれています。
(……群れる習性の生き物の辛い所だな)
木常野は彼女が抱えていた孤独の重たさを理解していました。
ですから彼女の動く姿を見ても、波打つ蔦が足元を揺らしても決して動こうとはしませんでした。
「なぁ」
オウガでアリスの存在に木常野は声を掛けました。
「仮に、人と人が同じ個なら、貴女は別の人間になってしまう」
『……は?』
苛立ったネガ・アリスが吐き捨てるように声を発するとずるずると舞台の上に広がっていたツタが動き始めました。
『なんなのよあんた。いらいらさせないで』
彼女の怒りに合わせるように動く黒いツタが木常野へとしなったムチのように飛んでいきます。
「精霊様、最速で」
チリ、と空気の焦げる匂いがしたのと同時にユーベルコード:精霊の瞬き(セイレイノマバタキ)が発動しました。
真っ暗な空間と真っ暗な地面、そして真っ暗なドレスを纏ったオウガのいる空間がぱっと明るくなりました。
『──きゃっ!』
ずしん。地面が揺れます。今にも飛び掛からんとしていたネガ・アリスが宙に縫い留められました。
めらめらと燃える火の精霊様が木常野に与えた火纏う精霊の矢が燃えています。
「貴女だから貴女なんだ。違ってるのが、普通なんだ」
自分を引き裂こうともがくネガ・アリスへと木常野は再び口を開きます。
『は、は、普通じゃない私がいいですって?』
「それで、いいんだよ」
炎が光を作るのならば地に広がるのは猟兵とオウガ二つの影です。
木常野が歩みますと彼の足元に広がる影もまた揺らめきます。
向かう先は、ネガ・アリスの元へ。
「自分以外の人からみた貴女じゃなくて、貴女が貴女を、信じてあげられないか?」
群れなす人の間で苦しんだ人だったオウガ。
違っていることに耐え切れなかった少女。せめて最後の時は己の存在に胸を張ってほしい。
『……ふ、ふふ、信じてあげたら、よかったかも、ね』
ネガ・アリスと木常野の足元から伸びた影が重なり、一つになりました。
黒いツタが、しゅるりと解け闇夜に消えていきます。
大成功
🔵🔵🔵
メアリー・ベスレム
◎アハト(f28285)と一緒
ごきげんよう
アリスでオウガのあわれなあなた
メアリはあなたが嫌いよ
だって、あんな悪趣味な劇を見せつけられたんだもの!
だから逢いに来たの
メアリはあなたが好きよ
だって、あなたに復讐するのはきっととっても楽しいもの!
だから殺しに来たの
あなたはオウガ
メアリはアリス
だけれどきっと、根っこのところで同じモノ
さぁ、楽しみましょう?
【凍てつく牙】で冷気をまとい
高速移動と【逃げ足】活かして立ち回る
イバラは凍らせ、振るう刃でバラバラに
メアリとあなた
違う出逢い方をしていればお友達になれたのかしら?
いいえ、こういう出逢い方をしたからこそ
こうして殺し合うのがこんなに楽しいの!
そうでしょう?
アハト・アリスズナンバー
◎メアリー(f24749)と共に。
ごきげんよう
アリスでオウガの死ぬべき貴方
貴方の事は何の憐れみもない。
何の慈悲もない。同情もない。
裏返ったこの世界に則り、ただ単に、殺す。
楽しみや苛立ちはメアリが引き受けるのだから。
私は、無慈悲にあなたを殺すことにした。
【援護射撃】でメアリを援護しつつ、イバラは【焼却】弾で燃やし尽くす。
UCを発動し、敵の生命吸収攻撃を避けつつ槍で【カウンター】する。
メアリが動きやすいように【スナイパー】【制圧射撃】で【体勢を崩す】事を狙う。
メアリが生かすと決めたなら、私も生かす。
だがメアリが殺すと決めたのなら、私も殺す。
私は、アリスの従者でいい。アリスの幸せだけが、そこにあれば
メアリー・ベスレム(Rabid Rabbit・f24749)が壊れた舞台の上に立ちました。
胸いっぱいに空気を吸い込んだ後言葉とともに吐き出します。
「ごきげんよう。アリスでオウガのあわれなあなた!」
舞台にメアリーの声が響きます。
この地は既に絶望の国。メアリーとオウガ、そして立つフラスコチャイルドのアハト・アリスズナンバー(8番目のアリス・f28285)以外の存在はありません。
メアリーの声はとてもよく響きました。
「ごきげんよう。アリスでオウガの死ぬべき貴方」
次に舞台の上に響いたのはアハトの凛とした声でした。
しゅるりと黒いツタがオウガのアリスの憤りを表しているかのように蠢きます。
『こんばんわ。なあに、随分挑発的ね?』
ネガ・アリスは怒っているようでした。
「メアリはね、」
空気が冷え、うっすらと白い靄がスモークのように舞台の上に広がっていきます。
「メアリはあなたが嫌いよ。だって、あんな悪趣味な劇を見せつけられたんだもの!
──だから逢いに来たの」
メアリは自分自身を抱きしめます。心の中を抉るような光景を見せられて、体も心も冷えています。
ですのでメアリは言いました。
「メアリはあなたが好きよ。だって、あなたに復讐するのはきっととっても楽しいもの!
──だから殺しに来たの」
『……なにいってるの?』
ネガ・アリスの頭の上にはてなが浮かびます。きっと浮かんでいました。
『それって矛盾ね。昔のアリスじゃない私と一緒!』
黒いスカートが翻りネガ・アリスの体が宙へと浮きました。
彼女の全身を覆うのは黒いイバラのツタです。
禍々しい棘の鞭が大きくしなりメアリとアハトの立つ場所を薙ぎ払おうとしたその時でした。
【アリスコード送信。総員、裁判の時間です】
アハトの銀の瞳が僅かに揺れ、そしてまた冷たく細められました。
量産されたアハト達。量産型個体8号から各個体へと情報が転送されます。
最適化された最新培養クローン脳、そこで瞬時に解析された情報はアハトに伝えられ。目の前のツタの軌道は全て予測されていました。
「解析完了。メアリ、アリスの幸せの物語を紡いでください」
「──ええ、アハト!」
ドカン! ドカン!
黒い空と黒いツタのある空間に赤い花がぱっと咲きます。
『キャッ! あ、熱いわ!』
ユーベルコード:アリスインデジャヴ(アリスインデジャヴ)を発動させたアハトは黒いツタの動きを予想し攻撃を避けます。そして銃から放たれた焼却弾がツタたちの間を駆け巡り、炎がアハトとメアリを照らし出していました。
(貴方の事は、何の憐れみもない)
ネガ・アリスが叫び、アハトへとツタを伸ばします。
(何の慈悲もない。同情もない)
アハトは手にした槍を回し飛んでくる勢いをそのまま利用し突き刺します。
目の前のネガ・アリスが生み出した『裏返った』世界を前に、アハトは覚悟をしていました。
今目の前にある世界の法則に乗っ取り、ただ単に、殺す。
(──楽しみや苛立ちはメアリが引き受けるのだから)
メアリ。アハトが仕えるアリス。彼女の傍に立つ私が引き受けるものは。
(「私は、無慈悲にあなたを殺すことにした」)
大きく花開く真っ赤な火。その間を駆けるのアリス、メアリー。
彼女がオウガを屠るために牙をむけるのであれば、その道を照らし出すのがアハトの役割なのです。
『ああ、もう、邪魔! 私を怒らせて遊びたいわけ!?』
メアリが大きく飛び出してもイバラがメアリの肌を裂くことはありません。
ユーベルコード:凍てつく牙(フロストファング)を発動させたメアリは極低温の冷気を纏いひらりひらりとイバラの間を移動します。
さらに冷気を纏った刃でイバラはバラバラに!
「あなたはオウガ、メアリはアリス。だけれどきっと、根っこのところで同じモノ──さぁ、楽しみましょう?」
黒いイバラの空中ステージを舞うメアリは歌い、刃を振り下ろします。
ざくざく、ばらり。どかん!
黒いイバラの舞台の上はもうしっちゃかめっちゃかです。
微笑むメアリ、笑わないアハト、そして歯を食いしばるネガ・アリス。
それぞれが個性豊かな表情を見せる舞台。
「ねえアリス。アリスでオウガのかわいそうなあなた」
『なによ!』
そんなに怒らないで、とメアリは笑い、
「メアリとあなた。違う出逢い方をしていればお友達になれたのかしら?」
キィン、と凍ったイバラが、砕け散ります。
「いいえ、こういう出逢い方をしたからこそ──こうして殺し合うのがこんなに楽しいの!」
そうでしょう?
メアリの真っ赤な瞳がきらきらと輝き。
ひゅっと何かが高速で動く音がメアリの耳に入り──オウガのアリスから伸びたイバラがメアリの足にちょうどいい足場を作っていました。
『…ふ、ふふ、ふふふふ!』
笑い声がネガ・アリスの口から漏れ、笑い声はどんどんと大きくなります。
『いいわね、ふ、それ! 楽しい、今、私、アリスと一緒にいて楽しいわよ!』
「それはよかったオウガでアリスだったあなた」
『ええ。友達と遊ぶのって楽しいのね! ……でも、あの子はどう思っているのかしら?』
オウガとメアリ、アリス達の視線がアハトへと向けられました。
降り注ぐアリス達の視線を浴び、アハトはゆっくりと顔を上げます。
アハトにとってはとてもシンプルな問題です。
メアリが生かすと決めたなら、アハトもオウガを生かす。
メアリが殺すと決めたのなら、アハトもオウガを殺す。
ですからアハトは優雅に一礼し、答えました。
(「私は、アリスの従者でいい。アリスの幸せだけが、そこにあれば」)
「あは。それじゃあ始めましょう。終わりはどこにでもあってどこにでもない!」
『ええアリスのメアリ!』
舞台の上に立った者はいつまでも幸せに踊っていましたとさ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヘイヤ・ウェントワース
◎○
SPD判定
・行動
ひたすら手の中の剣に思いを募らせ
攻撃を甘んじて受けながら
ゆっくりとアリスに語り掛けながら歩み寄っていく
目の前にたどり着いたら一気に力を開放
二人の物語にピリオドを打つ
・セリフ
キミは知って居るかな、始まりのオウガが討たれたそうだよ
これからこの世界は大きく変わっていくんだろうね
キミを呼び寄せ、苦しめた元凶はもう居ないんだ
だからもう終わりにしよう
新しい物語を始めるために僕らの物語を終わらせよう
ハッピーエンドとはいかなかったけど
もうキミが苦しむ必要はないんだ
僕のアリス、いいや『華菜(かな)』
この剣があの別れから僕が磨いた運命を断つ力だ!
『この歪んだ運命を今、断ち切る。運命改革剣!』
ヘイヤ・ウェントワース(時計ウサギの王子様(スチームパンク風味)・f19490)の赤い瞳の先に、オウガのネガ・アリスが映っていました。
「……アリス。キミはいまだに、アリスなのかい?」
あは、と歓喜で上ずった笑い声がヘイヤの耳に入ります。
『そうよ。私が絶望したアリス。ようこそ絶望の国へ!』
黒いイバラのツタが壊れた舞台を覆い、絶望に覆われたステージで踊るのはかつてアリスだった少女です。
「絶望の国、か。キミは知って居るかな、始まりのオウガが討たれたそうだよ」
『……』
「これからこの世界は大きく変わっていくんだろうね」
広い広い舞台の上、ヘイヤの声はしいんと静まり返ったそこにやけに響きます。
『はあ? それが何よ。私の帰る場所なんてない!』
主人たるオウガのいらだちに呼応した黒いイバラのツタが蠢きます。
波打つ黒がオウガを飲み込み、アリスだった少女が纏う黒いドレスが更に広がりました。ずるずるとイバラのツタが蠢く舞台をヘイヤはゆっくりと歩き始めました。
かつて震えて泣いていた『 』を彼女の扉へと導くように。
ざくり!
ネガ・アリスのスカートの裾から伸びる黒いツタがヘイヤの右腕を叩きました。
棘のついたツタはヘイヤの肌を抉り、舞台の上に赤い点が幾つもついています。
それらが続いてネガ・アリス元へ一本の線になるようにヘイヤは歩みを止めることはありません。
『いい加減にしてよ! 早く、殺し合いましょうよ!』
何本のツタがヘイヤを打ち倒し、傷をつけても、ヘイヤはネガ・アリスの元へ行こうと立ち上がります。傷だらけのヘイヤは怪我なんてしていないように優しい声を発しました。
「キミを呼び寄せ、苦しめた元凶はもう居ないんだ。だからもう終わりにしよう」
終わりにしよう。
「新しい物語を始めるために僕らの物語を終わらせよう」
ぐらり。
ネガ・アリスを取り巻く黒いイバラのツタが大きく揺れます。
するとぐにゃぐにゃと黒いイバラのツタが集まり、大きな大きな木になります。
『なによ。なにいってるのよあんた……この世界は終わらせない、アリスは一生絶望するのが!』
この国の掟なのよ!
オウガの怒りが空間を震わせ、舞台のあちらこちらから巨大なイバラのツタが柱のように生えてきます。
迷い込んだウサギを手のひらで握りつぶすように、ヘイヤはあっという間にイバラの海に飲み込まれていきました。
「……っ、は、あ」
ぎちぎちとヘイヤの胴を締め上げる黒いイバラのツタのその先に、ネガ・アリスはいました。
腕を伸ばせばネガ・アリスの頬へと触れられる距離。
されど目の前の少女は既にアリスではなくオウガ。
『ふふ、いつまでもつかしら?』
黒いイバラと黒いバラに囲まれたオウガが嗤います。
アリス、とヘイヤの唇を動かしました。
『まだ動けるの? ま、もうすぐあんたはイバラに全部飲み込まれるんだけどね!』
「……アリス。僕は、助けたいんだ。キミを。助けたいんだ」
ぎろり。オウガは苛立ち、ヘイヤを睨みつけます。
『馬鹿ねえ。この世界はもう絶望で染まっているの。助ける、なんてハッピーエンドみたいなことは絶対に起きないのよ!』
嗤うオウガ。元アリス、ずっとずっと昔にヘイヤが助けられなかった少女。
(──終わらせて、あげないと)
真っ黒に染められたヘイヤの手の中で、それがうっすらと光り始めました。
「ハッピーエンドか。確かに。二人の物語は、」
ちかちかと発する光はどんどんとその煌めきを強めみしり、とイバラを裂く音が僅かに響きます。
「ハッピーエンドとはいかなかったけど、もうキミが苦しむ必要はないんだ」
ヘイヤの腕の中で握られていた剣【螺旋剣】が力良く光ります。
光がイバラのツタを焼き切るかのように、黒を光で塗りつぶし。
『!』
ぶちぶちと黒いイバラのツタが千切れ吹き飛び、ヘイヤが飛び出します。
血だらけの手がしっかりと握っている剣。
その切先はオウガへと向けられています。
「僕のアリス、いいや華菜、この剣があの別れから僕が磨いた運命を断つ力だ!」
かな、とオウガがつぶやきました。
かな、カナ、華菜。わたしのなまえ。
まよいこんだ世界で時計ウサギさんに呼ばれてうれしかった。
『あなた、は』
ヘイヤの目の前、ネガ・アリスは茫然とした様子で立っていました。
しかしオウガの体の一部と化した黒いイバラのツタはヘイヤを黒く塗りつぶそうと動きます。
「この歪んだ運命を今、断ち切る。運命改革剣!」
ヘイヤのユーベルコード:運命改革剣(フラグ・クラッシャー)、光輝く剣が全てを白く焼き切ります。
黒だった世界は真っ白に染まっていき最後に残された黒いドレスのアリスは、己の両腕を広げ。
『……ヘイヤ。大好きな、時計ウサギさん』
そうアリスが言ったと同時に、ヘイヤの剣がアリスの胸を貫きました。
黒いイバラで覆われた舞台が砕け、溶け、消えていきます。
ぼろぼろの舞台の上に座り込むのは時計ウサギのアリスのヘイヤ。
そして、その腕の中で崩れていくのはアリスだった華菜。
アリスと時計ウサギの物語がようやく終わりを迎えようとしていました。
「……ヘイヤ、ヘイヤ」
抱きしめたら壊れそうなアリスの頬をヘイヤはそっと撫でました。
「大丈夫。僕はキミの傍にいる、から」
「ふ、ふふ、真っ黒な世界でも……星空は、綺麗」
二人は空を見上げます。狂気孕む月の光が降り注ぐ夜空に浮かぶ無数の星々。
「よかった。ヘイヤと、星が見れて……よかっ、た」
その声を残し、オウガだったアリスは完全に崩れ。
ばりん!
何かが砕け散る音が絶望の国中に響きました。
成功
🔵🔵🔴
第3章 集団戦
『星屑のわたし達』
|
POW : パ・ド・ドゥをもう一度
【ソロダンスを披露する】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
SPD : 我らがためのブーケ
いま戦っている対象に有効な【毒を潜ませた美しい花束】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : そして、わたし達は星になる
【星のような煌めきを纏う姿】に変身し、武器「【白銀のナイフ】」の威力増強と、【魔法のトウ・シューズ】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●アンサンブル・カーテンコール
絶望の国に咲いていたオウガは斃され、舞台は静かに終わりました。
主役のいなくなった舞台がするべきこと?
それは皆様への感謝を伝えるためのご挨拶。
割れんばかりの拍手をしてくださるお客様はいませんが、この絶望の国には猟兵の皆様がいらっしゃる!
これはもう、端役全員で舞台へと最期の挨拶をしなくては!
絶望の扉が砕け散る。
流れ星の如くかけらは降り注いで──オウガはあふれ出します。
ああ。しかし!オウガのアリスは救われた!星空に救われた!
これでは、数が、絶美yが、縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠
絶望は猟兵たちによって払われ、残った残滓はそれでも少女の姿で輝く。
砕けた絶望の輝きは残り僅か。
オウガを砕き、真のカーテンコールを迎えるのは──
木常野・都月
◎
沢山オウガが!
1匹も逃したくない所だけど、どれだけ出来るか…。
最善は尽くしたい。
まずは地の精霊様に頼んで[範囲攻撃]を。
オウガがいる範囲に電磁場を発生させて重力で押し潰したい。
動けなくなってるオウガに手早くUC【狐火】でどんどん燃やしていきたい。
[多重詠唱]で同じく火と風の精霊様の[属性攻撃]で、狐火が届かないオウガも燃やしたい。
必要があれば[精霊の石]から魔力を供給してでも、オウガ達を倒したい。
絶対流さないぞ。
アリスがオウガになった原因を放置出来ない。
自分達だけ都合よく逃げられると思うな。
皆燃えて骸の海に還れ。
それでも逃しそうなら、ダガーとエレメンタルダガーに持ち替えて追いかけて倒したい。
「沢山オウガが!」
絶望の国の最後の夜空、瞬く星と共にオウガ達が木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)の元へと落下します。
彼女、否、人の形をしたオウガが一斉に地に足を付けたら。
(1匹も逃したくない所だけど、どれだけ出来るか……)
木常野は黒い瞳をぱちぱちと動かし、オウガの落下地点を目視。
(……とにかく、最善は尽くしたい)
ちのせいれいさま、と木常野は唇を動かしました。
地の精霊様も降りてくるオウガにびっくりしたのでしょうか、木常野の呼びかけに応えぐらぐらとその身をゆすります。
『縺ゅ≠縲√§繧√s縺後f繧後k』
この世のどの言語とも似つかない音を発しながらオウガ達は地から発せられる電磁波が生む重力に押しつぶされていきます。
きらり、とオウガの手に握られた白銀のナイフが煌めきました。
(あれは……まさか)
バレリーナの姿を模したオウガが魔法のトウ・シューズを履いた足をピン!と跳ね、動かし。
(飛び立とうとしているとでもいうのか。絶対逃がさない)
木常野は歯をぐい、とくいしばります。
目の前にいるのは例えどんな形を──人の姿を模していたとしてもオウガなのです。
獣は狩りをします。猟兵は敵を斃します。
絶望の国の中アリスを汚し、貶め、オウガとなった原因。
「──自分達だけ都合よく逃げられると思うな」
とても静かな、そして、心を燃やす声が木常野の口から零れ、ユーベルコード:狐火(キツネビ)が発動しました。
「皆燃えて、骸の海に還れ」
木常野を中心に広がる狐火は赤く、赤く夜空の下でその身を揺らめかせオウガを次々に飲み込んでいきます。
火の勢いが足りないのならと祈りを込めれば、火を育てる風の精霊様が木常野の頬にそっと触れ、風邪を適度に送り込みます。
ごうごう。めらめら。
バキバキと音を立て火の中に消えていく音楽堂、そしてオウガの体達。
精霊様のお力を借り猟兵木常野は狩りを続けます。
キラリ、と夜空に線を残し何かが光りました。
それは軌跡。流れ星ではなく、木常野が握るダガーとエレメンタルダガー、刃の軌跡。
終わってしまった絶望の国が真の終わりを迎える時まで、狐の心の火は決して消えることはありませんでした。
大成功
🔵🔵🔵
アハト・アリスズナンバー
◎メアリ(f24749)と共に
これは盛大に振られましたねメアリ。
さて、最後の仕事です。カーテンコールと行きましょう。
メアリと共に星屑たちへと向き直ります。
この幕を閉めるには少し、面倒があるようで。
少なくともそのソロダンスは踊らせません。
踊る為のシューズをレーザーライフルで狙って【誘導弾】で【部位破壊】。
そのまま【ランスチャージ】【爆撃】【地形破壊】で【体勢を崩す】ことを狙います。
崩れたならUCを発動。
これでチェックメイトです。
残りの敵は【制圧射撃】しつつ、【焼却】します。
この舞台で踊るにはあなた達ではもう足りない。
踊りなさいメアリ。最後まで真っ赤に散らして。
私は、最後までアリスの従者ですので。
メアリー・ベスレム
◎アハト(f28285)と一緒
ふぅん?
なぁんだ、あなたにも思ってくれる人がいたんじゃない
メアリ、振られてしまったかしら?
ねぇ、とアハトに冗談めかして言いながら
あら、代わりにあなた達が慰めてくれる?
星屑のあなた達へと向き直る
引き続き【凍てつく牙】で冷気をまとい
高速移動と【足場習熟】【ジャンプ】で
崩れ落ちる世界のかけらを、自ら作った魔氷の足場を
踊るように跳び回る
毒を潜ませたきれいな花も
さっきのイバラと同じように
冷気で凍らせ、花を散らして
手許を狙って【部位破壊】!
あら、折角の花束をごめんなさい?
だけれどあなた達が花を贈られる、主役の舞台はもうお終い!
せめて最後はきれいに真っ赤に散らしてあげる!
絶望の国にオウガが落ちるその直前。静まり返った舞台の上。メアリー・ベスレム(Rabid Rabbit・f24749)は星の光をへ向け腕を伸ばしました。
キラキラと砂のように散っていった絶望の国の主であったオウガ(アリス)はもういません。
「ふぅん?──なぁんだ、あなたにも思ってくれる人がいたんじゃない」
ああ、メアリは振られてしまったのかしら?
なんて!
舞台に散ったアリス(オウガ)への言葉を吐き出し。
「ねぇ、どう思う?」
冗談めいた口調で傍に立つアハト・アリスズナンバー(8番目のアリス・f28285)へと笑みを浮かべます。
「これは盛大に振られましたねメアリ」
「ああ悲しいわ涙の川ができるくらい! アハトはメアリを慰めてくれる?」
暗闇に延ばされたメアリーの腕はアハトを抱きしめ、くすくすと響くアリスの声に従者は息を吐き。
「アリスのメアリ。従者はどこまでも一緒です」
「二人で舞台の上に立っているのなら」「ワルツ。タンゴ。情熱的にサルサ」
「もう十分踊ったつもりだけど」
メアリーの赤い瞳、アハトの銀の瞳は星空から地面へと揺れ動き。
キラキラ輝きを纏ったオウガ達が立ち上がり、周囲を囲むのをしっかりと把握しています。
「さて、最後の仕事です」
かくして舞台の上に従者が躍り出ます。カーテンコールと行きましょうと宣言すれば。
「……あら、代わりにあなた達が慰めてくれる?」
星屑の中に立つ主演女優のアリスが身構えます。
「こんばんわ星屑のあなた達。もうダンスは終わったの。絶望の国のお話はおしまい」
「幕を閉めるには少し、面倒なようで──少なくともそのソロダンスは踊らせません」
アリスと従者の真の最後の舞台が始まりました。
星屑が無数に存在するように、オウガも無数に存在していました。
しかし、そのすべてのオウガの位置を把握でき完璧に対応できるのがアハトなのです。
オウガ達が、哀れな踊り子達は踊ろうとしていました。
ばしん!
乾いた音と共にオウガの足がはじけ飛び、ソロダンスは失敗に終わりました。
「まだ踊ろうというのですか」
レーザーライフルを構えなおし、誘導弾を込めながらアハトは冷静な声色と共にオウガを屠ります。
哀れなオウガは群れを成し数でアハトを押しつぶそうとしますがそれならとアハトは得物を変え、地形ごとオウガを薙ぎ払うだけです。
声にもならない悲鳴を上げ、オウガの体勢が崩れます。
「──これで、チェックメイトです」
ユーベルコード:アリスオブゲームエンド(アリスオブゲームエンド)。
槍の一撃を受けた個所が破壊され、その衝撃は体勢が崩れていればより致命的な個所を破壊します。
地べたに投げ出されたオウガ。
天に届かない彼女達は互いの残骸を寄せ集め、手に花束を作ります。
真っ黒な千寿菊が、無数のオウガの手に花束として握られていると。
(「まるで花畑みたい」)
とメアリーは思いくすりとわらいました。メアリーは気が付いていました。
(「綺麗なきれいな花。でも、それは毒。でも」)
毒の潜む花を持つオウガ達の群れの上、空中へと飛び出すメアリーは既にユーベルコード:凍てつく牙(フロストファング)を発動させ極低温の冷気を纏っています。
(「さっきのイバラと同じように──凍らせ、散らして!」)
メアリーが舞い踊るように花畑をかけ、オウガの手許を冷気が駆け抜ければ。
「あら、折角の花束をごめんなさい?」
ぱきんぱきんと音を立てながら凍った花弁が砕け散りました。そしてオウガも砕けます。
「だけれどあなた達が花を贈られる、主役の舞台はもうお終い!
せめて最後はきれいに真っ赤に散らしてあげる!」
絶望の国の最後、カーテンコールを前にアリスのメアリは歌い、踊り、壊します。
「この舞台で踊るにはあなた達ではもう足りない。──踊りなさいメアリ。最後まで真っ赤に散らして」
オウガの群れを焼却するアハトはメアリを見上げます。
(「私は、最後までアリスの従者ですので」)
アリスから始まった物語はアリスとアリスの従者で終わろうとしています。
「メアリはアリスで、アリスはメアリ!」
アリスのカーテンコールに祝福を。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鯉澄・ふじ江(サポート)
怪奇ゾンビメイド、16歳女子
誰かのために働くのが生きがいの働き者な少女
コイバナ好き
自身が怪物寄りの存在なので
例えどんな相手でも対話を重んじ問答無用で退治はしない主義
のんびりした喋り方をするが
これはワンテンポ間をおいて冷静な判断をする為で
そうやって自身の怪物としての凶暴な衝動を抑えている
機嫌が悪くなると短文でボソボソ喋るようになる
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し
自身の怪我は厭わず他者に積極的に協力します
また、例え依頼の成功のためでも
自身の矜持に反する行動はしません
何でもやります、サポート採用よろしくおねがいします!
(流血、損壊系のグロ描写やお色気系描写もOKです)
「うーん。あと少し、ですかねぇ~」
鯉澄・ふじ江(縁の下の力任せ・f22461)はぼんやりとした様子でオウガの様子をうかがっていました。
(お話ができたらいいのですが……)
フリルが添えられたメイド服の裾を握り、どうしたものかと鯉澄は考えています。
人の形をしたオウガは誰もが人形めいた顔をして、踊り子のように己を着飾っています。美しい女性、お人形さん、それでもオウガ。
首の取れるメイドの自分と何が違うのか、心の在り方の違いがあるだけで話してみることができるのではないかと鯉澄は思いました。
(物は試しですぅ!)
「あのぅ。ちょっとお話が、」
「邨カ譛」
「へ?」
「謔イ縺励∩縲よ?偵j縲ょ?縺阪?り協縺励∩縲ょュ、迢ャ縲」
「ち。ちょっと……」
「「蟄、迢ャ蟄、鬮伜ッゅ@縺?峡繧翫⊂縺」縺」」
鯉澄の呼びかけに振り返ったオウガ達は沢山。
そして、わけのわからない聞き取れない言葉を返してきたオウガも沢山。
理解不能の声を伴うコミュニケーションを投げかけられた鯉澄はうーんと考え込みました。
「拒否されているのか肯定されているのか……難しいですねぇ」
首がもげそうになる角度まで傾け、うんうんと唸っていたところ。
「ひゃん!」
鯉澄の肌に何かが当たりそうになりました。
いつの間にかオウガ達の腕の中には美しい花束が握られ──咄嗟に、鯉澄はその身をよじり花束の群れから距離を置きます。
「やっぱり。敵は、敵。ですねぇ」
オウガの手に持つ花束には何か意味がある。否、悪意を持って花束を持っている。
冷静に判断した鯉澄はやはり戦うしかないと【おそうじモップ】を握りました。
「どーれーにーしーよーうかなっと」
ぽん!と音がしました。
先程までシンプルなメイド服を纏っていた鯉澄が一瞬煙に包まれたかと思うと。
「今日はサクラメイド服、ですぅ!」
ユーベルコード:お着換えお着換え~ですぅ!(オキガエオキガエデスゥ)の力で更なる力を持つメイド服に着替え、鯉澄は改めてオウガ達を見渡します。
キラキラと輝く衣装に包まれたオウガ達の目はなんだかギラギラ。
(……わたしの顔も、こうじゃないといいのですぅ)
自身の存在は、人ではない。もしかしなくても、怪物だ。
常日頃そう思い、自身を抑えて行動している鯉澄の赤い瞳は僅かに揺れています。
怪物──それは今は、オウガの方です。そう信じたい、そう願いたい。
今身にまとう桜の服を着ていると、なんだか心は暖かくなります。
「……えい!」
手にした【おそうじモップ】を勢いよく振り抜き、鯉澄はオウガ達から花束を叩き落とします。
一斉に振り返り、手を伸ばし自分を引き裂こうと爪をたててくるオウガ達。
「おそうじ開始しますぅ!」
怪物に向かい、鯉澄は己の得物を突き立て突撃します。
怪物ではない彼女の掃除が終わるころ。世界は静かに終わりました。、
成功
🔵🔵🔴
最終結果:成功
完成日:2020年11月01日
宿敵
『ネガ・アリス』
を撃破!
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