5
海をゆく物語(作者 紗綾形
17


●空の国
 此処は不思議な空の国。名前がないのは、必要ないから!
 何故ってこんなに果てしなく美しい世界に名前を付けるなんて、野暮じゃない?
 ふわふわ雲の絨毯の上、今日も星のきらきらさんと雲のふわふわさんはのんびり空を眺めて。

 すると、ふたりの視界にひょろりとした影が映り込む。
 星は瞬き、あなたはだあれ? 不思議そうに『彼』を見上げた。
 その世界に不似合いな黒に身を包んだ不思議な紳士は、腰を折り、被っていた帽子を胸元へ引き付けるようにして頭を下げ。

『私は猟書家。あなた方を、素敵な物語の世界へご招待しましょう』

●本の世界『海をゆく物語』
 気づけば貴方たちは、海の上に立っていた。
 広がる波の綾は、誰が落とした涙のせいでもない。
 足元は確かに水。海面。恐る恐る踏み出せば、その上を歩むことが出来るだろう。
 空は何処までも青く、果てなどないようで。
 仰げば耀く太陽には、矢印の隣。『1』と頁数が刻まれているのが見えた。
 そして海もまた、その青を映し美しい彩を持って。
 しゃがみ込み覗けば透き通るその海は、まるで宝石箱。
 あらゆる花が海の中でゆらりと芽吹き、そして彩りの石が煌く。
 美しい花を求めてさまようのはステンドグラスの蝶々に、翼のような鱗を持った鳥。
 彼らは色も種類も大きさも様々で、どの子もとても人懐こい。

 その海の中は、まるでもうひとつの空だった。
 水面を揺らし、近づいてきた星がきらきらと笑う。
『わあ! 君も此処に迷いこんだのかい?』
 彼らは貴方たちを心から歓迎し、そしてとあるお願いをした。
『ねえ、ボクたち、手伝って欲しいことがあるんだ』

●海をゆこう
「とある空の国に、猟書家って呼ばれる人が現れるみたいなんだ」
 不思議な『黒尽くめの紳士』。彼は自分を『猟書家』と名乗り、手に持つ本を開く。すると、その不思議の国いた住人たちは見たこともない別の世界――本の世界に放り込まれてしまうのだという。
 本の世界では、空に浮かぶ太陽に矢印と頁数が描かれていて、矢印の方向に進むとページがぐんぐんと進み、情景が変化していく。けれど、別の方向へと進むと、急速に生命力を失い、本の世界の住人になってしまう。猟書家が何者なのか、彼らか持っている本とは何か――それは未だ解明されていないけれど、まずは住民達をその本から生還させて欲しいのだとエール・ホーン(ドリームキャスト・f01626)は告げた。
「それでね、愉快な仲間たちはあるものを探しているみたいで」
 ある物とは、『ねじまき』だ。それはこの世界に放り込まれた時に、何故か住民たちが手にしていたもののようで。きっと大切なものだから――と、みんなの分まで預かっていたしっかり者の風のそよそよさんだったけれど――寝ぼけていた時にひゅるひゅると吹き飛ばし、海の中へと落としてしまったのだ。
「そこは本の世界だから」
 泳いでねじまきを探すのも良し、大きなステンドグラスの蝶々や鱗の翼を持つ鳥に乗って探索するのも良し、そしてねじまきを探しながらも海の花を楽しむと良いだろう。現実に存在する花も、存在しない花もきっとある。
 でもその海の中に行くには? そう、この世界は普通にしていれば水面をぴちゃぴちゃと歩くことが出来るのだけれど――泳ぎたいと願えば、足を沈め、そのまま海面の下の世界にもいくことが出来るのだ。海の中では呼吸が出来るし、会話をすることも出来る。海の中にいるという感覚以外は、地上にいるのと変わりないという。心配なら愉快な仲間たちに協力して貰えばいい。きっと手を繋いでくれるはずだ。
「ねじまきだけじゃなくって、海の花も、先で何かの鍵になるかもね? なんて」
 だからあなたが思うとびきり綺麗だと思う花を摘んで、持っていくのもいい。

 そしてどうか、その先にいる敵と戦って。無事にまたこの世界に戻って来てほしいと、エールは集まってくれた猟兵達へと頭を下げるのだった。





第2章 集団戦 『星屑のわたし達』

POW ●パ・ド・ドゥをもう一度
【ソロダンスを披露する】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
SPD ●我らがためのブーケ
いま戦っている対象に有効な【毒を潜ませた美しい花束】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ ●そして、わたし達は星になる
【星のような煌めきを纏う姿】に変身し、武器「【白銀のナイフ】」の威力増強と、【魔法のトウ・シューズ】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ねじまきを見つけた後、太陽に描かれる矢印の方向へ進めば、海中にいた者のも、海上にいたものも、ぴちゃんと元いた海の上に降り立っていた。はじめにいた頁と違うことと言えば、其処に青は存在しなかったこと。見上げれば真っ暗で、星すら瞬くことはない。空と海の境界が、酷く曖昧で。頁の描かれた太陽すら、此処にはない。代わりに暗闇に浮かび、ぼんやりと世界を照らしたのは、「戦闘番地」という崩れかかった文字だった。

 暗闇の先で、人の形をした……出来損ないの星が瞬いた。
 彼女たちは物語の主役、「星」になれなかった娘たち。
 王子様から、花を、花束を貰いたかった。踊りに誘われたかった――。

『ねえ、わたし、輝いてる?』

 だって此処は本の世界。けれどもアリスはいない。
 夜空に瞬く星も、ひとつだって存在しない!
 それならば、それならば。この世界の主役に――。

 踊る娘と戦いながら頁を進んでも、待っているのは真っ暗なページのみ。どうやら娘たちをすべて倒さない限り、その先に進むことは出来ないらしい。
 彼女たちひとりひとりの戦闘力は其処まで高いわけではない。しかし厄介なのは「我らがためのブーケ」――毒を潜ませた美しい花束を召喚する技だ。例えそれに触れることがなくとも、広がる香りによって、毒の効果が現れる者もいるだろう。毒の効果は人によって様々だが、それはきっと貴方に有効な毒だ。例えば耐えられないほどの激痛が身体にはしったり、例えば大切な人を忘れてしまったり。対応する技を使用するなら、毒にどう立ち向かうか、受け入れて戦うかを考えて行動する必要があるだろう。けれど、彼女たちは「星」になれなかった娘たち。もし花を手にしてきたものがいるならば、それを使えば或いは。少女たちの隙をつくことも、出来るかもしれない。
ヴァーリャ・スネシュコヴァ


舞い踊るような敵の攻撃に
こちらも踊るように滑って攻撃し対抗を

ふと気づけば、毒の花束が相手の手に握られていて
その香りを嗅げば、思うように身体が動かなくなって
息が苦しくなって、身体中が痛くて痛くて
思わずその場でしゃがみ込んでしまう

息を荒げながら、汗をかきながら
動け…動け、動け動け動けっ!
痛む身体に鞭打って
あの時摘んだネモフィラの花びらを
《冬ハツトメテ》で風を起こし、舞いあげる
ごめん、今だけ…俺を助けて、お願い

花で意識を引かせられたら
そのまま『霜の翁の怒り』で花束ごと凍らせてやる!

こんな暗い何もない世界で主役になったって
誰かが振り向いてくれるわけじゃない
でも、俺もこうなってたかもしれないんだよな…



 ぴちゃりと黒を踏む、弾く、跳ぶ。真っ暗闇のステージの上で。くるくると舞い踊る星に対抗するように、ヴァーリャもまた、踊るように水面を滑る。敵の攻撃力は高くないと聞いている。油断をすることこそなかったが、夜空には星すら瞬かぬ、此処はとても暗い場所。
 ふと気づいた頃には、相手の手の内には美しい花束が握られていて、口元を、鼻を覆うように手を当てた頃にはもう遅かった。
 ドクンと身体が崩れ落ちる。全身が痛い。呼吸が乱れるほどにその香りを深く吸いこんでしまって、全身を駆け巡るようにより強い激痛がはしる。震えるような呼吸を繰り返して、ぱちゃりと暗い海の境界に膝を、手をついてしまう。
 膝が沈んでいく。このまま堕ちて、戻ってこられなくなるような。
 そんなことは願ってなんかいないのに、望んでなんかいないのに。
(「心の何処かでは、望んでいるのか……?」)
 激痛は少女の意識を朦朧とさせた。ひかりが見えない。ぷくぷくと空気が浮かんで、黒の中へ――。
 と、ふわり浮かぶ。ネモフィラの青。
 優しい青が、霞む視界に浮かぶ。
 ヴァーリャは瞬いた。沈んでいる場合じゃない。
 滲む汗は海へと溶け、呼吸はあぶくとなって消えるだろう。
 それでも動け、動けと強く願う。その華奢な腕を精一杯伸ばして。
 そして少女は。

 ――青を、掴むのだ。

 沈んで息絶えたと思われた少女が、暗闇から浮かびぱしゃりと水面に立てば、驚いたように脚を止めた娘たち。その隙を逃さないとばかりに、花を空へ……冬の名を持つ扇で舞い上がらせた。
(「ごめん、今だけ……俺を助けて、お願い」)
 嗚呼、嗚呼。その青は、何て美しいのだろう。
 娘たちは目を奪われる。わたしたちが、欲しかったもの。
 わたしたちだけに贈られる花。
 花を見上げる娘たちの隙をついて、未だ痛む身体に鞭を打ちながらも、歩みを止めることはない。こんなに暗い、何もない世界で主役になれたとして、誰かが振り向いてくれるわけじゃないから。
 それに、何より――終わらせてあげらければ、と思うのは。
 その時、娘たちの前に霜が降った。生物の息吹を止めてしまうほどの冷たいそれによって、娘たちの動きは鈍く、けれども花を見上げる姿は、何処か――切なくも幸せそうにも見えて。
(「でも、俺もこうなってたかもしれないんだよな……」)
 ひらりと落ちる青だけが、哀しげに凍り付いた地へと墜ちた。
成功 🔵🔵🔴

旭・まどか


さっきとは違って随分と、暗いね
眩しすぎて痛いよりは馴染みがある分幾らかましだけれど
否応なく押し付けられるのはあまり好ましくないな

ねぇ、君たち
“借り物”の主役と成った気分は、如何かな?

喉から手が出る程欲した其
けれど、その胸に沸いた感情は本当に悦びなのかな
生憎とその手を誘って一曲踊れるような心得は無くてね
代わりといっては何だけれど、これを、あげる

舞姫には少しばかり子供っぽいかな
けれど、太陽を望むこの花の姿は
スポットライトを求める君に似ていると思わない?

さぁ、出番だよ
あの花ごと苦しまぬ様、一息で仕留めておしまい
喉元食らいつき星と花弁を、散らすんだ

願わくは、次は舞台の上で踊る君が、観られますように



 薄暗い、黒に似た景色の中で思う。
 海の底だって、星の瞬きがなくとも、もう幾分か明るい。
「さっきとは違って随分と」
 暗いね。ぽつり零した言葉が黒に堕ちれば、水面がさざめいて。
 ざわざわと心を侵していくような、言い表すことのできないような感覚。
 眩しすぎて痛いよりは馴染みがある分、幾らかましだとは思うけれど、否応なく押し付けられるのはあまり好ましくないと思う。
 誰の為でもないよ、なんて涼しい顔をしながら考える。それが自分が戦う理由。だから目の前の娘たちを還すのだと。たったそれだけだと凛と前を見据えて。
「ねぇ、君たち」
 ――“借り物”の主役と成った気分は、如何かな?
 こてりと首を傾げる。その言葉に、娘は握るナイフに力を込めた。空色のリボンが震える。それでもまどかは、言葉を紡ぐことをやめなかった。自分が間違っていることを言っているとは思わない。君たちのすべてが間違いだとは思わなくとも。
 喉から手が出る程欲した其れ。けれど、その胸に沸いた感情は本当に悦びなのかと問う。自分はそうは思わないと、だからこうして、娘たちに言葉を掛けているのだ。
「生憎とその手を誘って一曲踊れるような心得は無くてね」
 代わりといっては何だけれど。
 そっと暗闇の上を歩いた。偽りの空の中、自らの輝きを魅せようとする娘の元へ、一歩、一歩と。
 否定ばかりを口にする少年に、くるりとその切っ先を向ける。
 けれど――小さな背に隠した一輪。
「これを、あげる」
 舞姫には少しばかり子供っぽいかもしれないけれど。でもねと。
「太陽を望むこの花の姿は、スポットライトを求める君に似ていると思わない?」
 その言葉は優しく、娘の心に落ちるのだ。
 認められていく、自分じゃない誰かが。舞台の上で瞬く一番星に成りたかったのに、わたしたちはいつも輝きの足りない星屑だったような気がする。そんな記憶もとても曖昧で、それなのに、嗚呼――。
 波紋を作ったのは、彼女の一歩ではない。
 ぽたり落ちる、ひとしずく。
「さあ、出番だよ」
 捧げられた花は、あたたかく、美しかった。
 太陽に焦がれているからこそ、高みを目指していたからこそなのだとしたら――。
 あの花ごと、苦しまぬ様に、一息で仕留めておしまい。まどかが命を課せば、傍らの狼が駆けた。小さく吼えたその声は、「大丈夫、痛くないからね」そんな言葉を宿しているような、慈愛に満ちたもののように聞こえたのは気のせいだったろうか。
 娘は抵抗しなかった。ナイフを手放した手には、花しか抱かれていなかった。
(「願わくは、次は舞台の上で踊る君が、観られますように」)
 いつのまにか娘は消え、あたたかな花びらだけが水面に揺れていた。

 それはまるで、小さな星空の様だった。
大成功 🔵🔵🔵