1
そして君は空へ飛び立つ(作者 本居凪
16


#グリードオーシャン 


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#グリードオーシャン


0



●海の上で、誰かが願った
 グリードオーシャン。遥か昔、世界を越えて多くの島々が落ちてきた大海のどこか。
 嵐の中を進んできたかのようにぼろぼろになった海賊船がとある島の砂浜に打ち上がっていた。だが浜の上にも、海賊船のどこにも、船員の気配は感じられない。
 いや、耳を澄ませば、目を凝らせば、砂浜の上を漂うものと追われるものがいるのが分かるだろう。ゆらりと暗い影を引き摺って、白い骨と骨をカツカツ響かせて、深海から昇ってきた屍の魚。淵沫と誰かが名付けたそれらは砂の上を泳いでいるかのように、広げられた黒い影の中ですいすい飛び回る。ぐるぐると円を描いて、じりじりと円を狭めて、淵沫たちは追いかけていた標的――海賊船の船員たちを追い詰めていく。
 コンキスタドールの群れに襲われていても流石に船長、紅い海賊帽と布地に金釦が映えるロングコートを着た逞しい男は一歩前に出て、手に握ったカトラスを突き付けて敵の一挙一動を睨んでいるのだが、その背後では。

「ひぃぃ、船長、お、お助けを!!」
「バッカヤロー! 海賊が敵の前で情けねえ姿晒すんじゃねえや!」
「ですけど船長、これだけの数に囲まれて、逃げ場もないんですよ!」
「駄目じゃあ、もう駄目じゃあ、掟もこなせないワシらはもうここでくたばるしかないんじゃあ……すまんのう、故郷のオトンオカン……!」

 淵沫に立ち向かう船長の背後でオーイオイと船員たちが泣き叫ぶ。彼らこそ、荒れ狂う海流に逆らい嵐の間を突き進むのが得意中の得意な海の男たち……なのだが、陸上にあがるとどうにもこうにも、陸酔いが治まるまではいつもこの有様である。老いも若きも筋肉のついた髭面が震えあがって子どもの様に泣いている。とても惨憺たる絵面であった。

「ド阿呆ども、それでもてめぇら海賊かぁ!!」

 怒号一喝、船長の声が飛ぶ。

「何が相手だろうが関係ねぇ。オレの決定を、あの時の選択を、後悔にしない為にてめぇの不始末はてめぇでケリをつける、それが海賊の掟だろうよ。だいたい死んでも構わねえ、元からあの日オレらは死ぬのも覚悟で目の前の秘宝に手ぇ伸ばしたんだろぉがっ、海賊は海賊らしく、ここでくたばる腹ぁ決めとけ!」

 そう叫んで、船長は淵沫の群れの後ろに居る者を強く睨んだ。そこには、ボタボタと砂上に泥のような影を落として浮かぶ、ちいさなフェアリーの少女がいる。ぼろぼろにほつれて千切れかかっている黒く澱んだ羽からどろどろと呪詛で満ちた泥濘が垂れ落ちる。暗い顔、青白い肌、時折長い前髪の隙間から覗く瞳には痛みと悲しみの色が浮かんでいて、重ねるように憎悪でコーティングした恨めしさに満ちた視線が船長を射貫く。妖精は震える体を自分の腕で抱いている。そうしないと滴り落ちていく泥のように、自分も崩れてしまいそうだとでも言うように。

「ゆるさない。ぜんぶ、すべて、この世界も、あなたたちも」
「だからニュンフ。オレらが見つけた宝でお前を壊した責任はオレらが取る」
「わたしなんかを奪い合って、バカなデタラメ、信じちゃって……なんて愚かな海賊たち。ふふ、あは、あはは……!!」
「お前の辛かったことも、お前を泣かせた全てのことも、オレ達とのことも……ここで終わりにしよう、ニュンフ」
「ちがう、ちがうわ。死ぬのは、消えるのは……終わるのは、あなたよ!」

 砂の上、悲鳴のような声がして、カラカラと骨がぶつかる音が響く。晴れた空は青く、海はどこまでも穏やかに見える。けれど砂の上は泥だらけでぬかるんでいて、きっと誰かが涙を流しても、気付かれないまま泥に吸い込まれてしまうのだろう。

●救援上陸
 猟兵たちがこれから向かうのは『大海に輝く黄金の麦穂島』。元はアリスラビリンスから落ちてきた島らしい。丘の上にある広大な麦畑が低地の砂浜からでもわかるほど見事に生い茂り、その麦は枯れもせず刈っても同じ場所にすぐ次の麦が生えてくる魔法の麦だとか。だからなのか、この島の周囲で活動する海賊の間には御伽噺めいた嘘とも真実とも判断つかない秘宝の噂がいくつもあって、ある海賊団がこの麦穂島を縄張りと定めるまでは、実在も怪しい秘宝を巡る海賊たちの争いが絶えなかったのだという。
 今回の事件も切欠はその秘宝なのではないか――禅定・君代(君が代の為・f23011)はそう前置きをして、改めて今回の作戦内容を説明する。

「砂浜にはまるで調子の出ない船員数名と船長が敵に包囲されています。海賊たちを救助するつもりであるなら、まず周囲に広がっている配下を倒す必要がありますが……どうやらコンキスタドールのフェアリーと彼らの間にはずいぶんと深い因縁もあるらしく、お互いにこちらの存在は目に入っていないようなので、こちらから呼びかけたり攻撃されるまで気付かれる可能性は限りなく低いかと」

 つまり、奇襲をするには絶好の機会。相手の能力に不明な部分が多い以上、先手を取らない手はないだろう。奇襲を勧めるのは、正面から相手をするには少し不穏な情報もあるからだと君代は続ける。

「敵のリーダーであるコンキスタドールは海賊をひどく怨んでいるようです。理由は推測するしかありませんが、秘宝を巡って命でも狙われたのでしょうか。海賊らしい容姿や技を使う者を見ると無差別に攻撃目標にされますので、自分が該当すると思うのであればお気をつけてくださいませ?」

 厄介な話だが、戦い方によってはこの性質を逆に利用することもできるだろう。
 秘宝の呪いに侵されてコンキスタドールとなった者が元に戻る方法は無い。世界を壊す怪物になってしまった彼女は倒されなければならない。青い海の上に浮かぶ黄金の島。呪いに満ちた泥濘の底から、せめてその小さな魂だけでも救えるのなら。

「助けてあげてくださいね」

 では、よろしくお願いします。少女は言って、猟兵たちを送り出す。





第2章 ボス戦 『泥濘のニュンフェ』

POW ●これがわたしの魔法の力
【憐憫】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【闇よりも深い泥濘】から、高命中力の【精神を蝕む呪詛の塊】を飛ばす。
SPD ●ドラゴン退治の末路
自身が【敵対心や恐怖心】を感じると、レベル×1体の【邪竜】が召喚される。邪竜は敵対心や恐怖心を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ ●あなたもわたしが欲しかった?
【ニュンフェを傷つけ奪い合った強欲な人間達】の霊を召喚する。これは【呪詛を施した泥濘を撒き散らす剣】や【激痛を与える泥濘を撒き散らす鎖】で攻撃する能力を持つ。
👑11 🔵🔵🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠世母都・かんろです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


藤・美雨(サポート)
私は藤・美雨
デッドマンの猟兵さ
キョンシーじゃない、キョンシー擬きだよ

戦う時は近接攻撃を中心に
強化した肉体で怪力で暴れまわったり
装備した刃物でザクザク切り込むのが好きかな

死んでいるから怪我にはあんまり執着しない
危なくなればヴォルテックエンジンで自分を叩き起こすからね
負傷は気にせず気力で突っ走るのが好きだよ
その方が楽しい!

でも死んでるからといって人生を楽しんでいない訳じゃない
飲食とかは出来るし好きだよ
綺麗なものや楽しいものに触れるのだって大好きさ

他の猟兵に迷惑をかける行為はしないよ
例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動もしない
気持ちよく勝って帰りたいし!

あとはおまかせ
よろしくお願いするね!


●落下する、青の底
 その妖精は、世界が割れる音を聞いた。懐かしき故郷の風は遠く遥か、海鳥の鳴き声混ざる潮風が彼女の羽には重く感じた。
 知らない世界、知らない空、知らない海の知らない風が彼女の心を深く深く沈ませて、飛べていた筈の彼女は飛べなくなった。
 けれど世界は妖精の――ニュンフェの光を透かしてきらめく羽に、夢を見た。
 否、夢と言うにはぎらついた欲望を重ねて、ニュンフェを更に飛べなくさせた。擦り切れている羽は、彼女をどこへも運ばない。むしろ欲に満ちた海賊を引き寄せる目印として、ニュンフェひとりを閉じ込める籠の中で意味も無く輝いているだけだった。
 モノのように海賊から海賊へ、自分の意思と関係なく海の上をさまよい続けた妖精の羽はオブリビオンの力を得ても、結局動くことは無かった。したたり落ちる怨嗟の泥が動かないままの羽を覆って、形となっているだけだ。
 けれど結局再生しなかった羽は最早、彼女の意識からは切り離されている。
 もしかしたら、財宝が正しくニュンフェの力となってくれたなら、ほつれ千切れて壊れかけていた羽の再生も有り得たのかもしれないが。可能性は既に過去の話になってしまったし、彼女はもう諦めた。
 諦念。失望。絶望。憎悪。憤怒。後悔。否定。妖精が諦めた夢の代わりに彼女の羽を覆うのは、大凡そんなものだった。

 煮詰まりに煮詰まった妖精の感情を吐き出すように、ドロドロ、ドロドロ、泥濘が波打ち拡大していく。
 藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)も慌てて砂の上からぴょいと跳んで、引き摺られないよう足場を移す。
 いくら屍体モドキといったって、ぬかるむ足場じゃ動き辛い。

「わっ、とっと……わぁ。ぐっちゃぐちゃだね」

 さてその視線が向いたのは、足下に広がる呪泥だろうか、目の前で今も溢れ続ける憎悪だろうか。しゃらりと黒髪靡かせる。縫い目の走った首をこきりと鳴らして、美雨はニヤリと不敵に笑って、ニュンフェのどろどろに濁り澱んだ黒の瞳と、美雨の輝き失わぬ灰色の瞳が交錯する。私が相手になると、意識をさせるように、強く、強く、輝く視線が妖精を射貫く。

「……ジャマ、しないでよ、ォ……ッ!!」
『ははっ、……一思いにやらせてくれるかい?』

 広がりきった泥濘の表面に浮かび上がった魔法陣が一瞬にして砕け散り、黒き鱗の禍々しい邪竜が己が主人を守らんと、首を振り上げ牙を剥き、敵の前へと顕現する。美雨よりも倍以上はあろう巨体を揺らし、邪竜が尾を振り上げた。だが、刃物が弾かれる鋭い音がいくつか続いて、美雨の体が文字通りに――飛び跳ねた。
 人間の可動域の限界を通り越して身体を捻り、人間ではあり得ない高さまで跳躍する。少女の握る匕首は竜の硬い鱗を貫いて、その命を削り取る。
 ヴォルテックエンジンの力が漲っている美雨は止まらない。一度死んだ肉体に限界なんてものは存在しないのだ。
 ブレスを吐こうと大きく息継ぎをしたタイミングを見逃さず、喉へと一突き、そしてそのまま、力任せに押し切って、圧し切って、押し通す!
 小さな体が巨大な竜を跳ね上げる。後方で竜を操るニュンフェも巻き込んで、美雨は邪竜を吹き飛ばしたのだった。
成功 🔵🔵🔴

●思いは手から溢れて落ちた
 ニュンフェの手が空を撫でる。広げた手、伸ばしきれずに曲がった形で跳ねる指。目の前に立つ猟兵が彼女にはどう見えているのだろう。定まらない瞳孔、ぶれる視線がヒトの形を捉えて、彼女の顔が悲しみに歪む。憎しみに沈む。かつての痛みを思い出すのだろう、両手で胸を押さえても溢れだした彼女の憎悪はこの島の外に広がる嵐と同じで、暴れだしたら誰にも止められはしない。
 このままでいたって、誰もが傷つく結末しかない。止められるのは、同じ力を持つ海賊たちと猟兵しかいないだろう。
 ニュンフェの前に立つ船長は彼女のことを知っている。彼が航海の途中に見つけた、正確には他の海賊船から奪った『元・秘宝』。鳥籠の中にいた彼女の名前も知らないまま、同意も得ないで奪っていって。傷だらけだった彼女の名前と声を知るにはそれからしばらくの時間の経過と僅かな島から島への大冒険があった。いまやその冒険の記憶すら、目の前の憎悪に囚われたニュンフェには遥か夢の物語、千切られた記憶の絵のひとつになってしまっているかもしれないが、そんな日々があったのだ。
 ーー今、彼女に記憶が残っていたとしても、なかったとしても、海賊の掟は果たされなくてはならない。悲劇を繰り返してはならないし、悲劇を乗り越えてでも強くならなればこの海で生きていくことは出来ない。これは最初からずっと、そういう話なのだから。

 それでも。もう一度、船長はニュンフェの顔を見つめる。上手いこといけば良かったのになと、彼女がああなってから、何度も何度も、思っている。
 危険には巻き込まないようにしたかった。ずっと、鳥籠の中にいてさえ、傷だらけの翅で飛ぶのは辛そうだったから。俺たちの『お宝』なんだから、守る理由としては十分じゃないか。だけど彼女は秘宝扱いはイヤだときっぱり断った。傷だらけの翅でだって戦えると言った。だったら、それなら、自分で望んだ通りにするのが一番いい。そんな当たり前のこと、誰より何より、俺たち自身が一番よーーく、分かっているし知っているから、背中を押した。後悔はしないことを決めた。
 海賊は己の欲望に従って武器を取る。己の望むまま、欲しいまま、そうしたいから生きていく。その結果に何が起きたとしても、それも覚悟で力を手にした。守れる力があると信じた、いいや今でも、信じている。防御に専念していても崩れそうな膝に握った拳を叩きつけ、海賊船を率いる男は武器を手に気合いを入れ直す。
 海賊の睨みを受けた妖精の少女が涙の代わりに零すのは恨み痛み、悲しみ混じった呪いの雫。どこへもいけない傷の記憶。
 ニュンフェは苦痛に顔を歪めて、少しだけの微笑みと共に静かに言った。

 海賊なんて、この世界のどこへも還してやらない。ここで蹴散らして、ぐちゃぐちゃになって、……海の藻屑にもしてやるものか、こわくて、ふるえて、怯えて、消えて……!!