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そして君は空へ飛び立つ(作者 本居凪
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●海の上で、誰かが願った
 グリードオーシャン。遥か昔、世界を越えて多くの島々が落ちてきた大海のどこか。
 嵐の中を進んできたかのようにぼろぼろになった海賊船がとある島の砂浜に打ち上がっていた。だが浜の上にも、海賊船のどこにも、船員の気配は感じられない。
 いや、耳を澄ませば、目を凝らせば、砂浜の上を漂うものと追われるものがいるのが分かるだろう。ゆらりと暗い影を引き摺って、白い骨と骨をカツカツ響かせて、深海から昇ってきた屍の魚。淵沫と誰かが名付けたそれらは砂の上を泳いでいるかのように、広げられた黒い影の中ですいすい飛び回る。ぐるぐると円を描いて、じりじりと円を狭めて、淵沫たちは追いかけていた標的――海賊船の船員たちを追い詰めていく。
 コンキスタドールの群れに襲われていても流石に船長、紅い海賊帽と布地に金釦が映えるロングコートを着た逞しい男は一歩前に出て、手に握ったカトラスを突き付けて敵の一挙一動を睨んでいるのだが、その背後では。

「ひぃぃ、船長、お、お助けを!!」
「バッカヤロー! 海賊が敵の前で情けねえ姿晒すんじゃねえや!」
「ですけど船長、これだけの数に囲まれて、逃げ場もないんですよ!」
「駄目じゃあ、もう駄目じゃあ、掟もこなせないワシらはもうここでくたばるしかないんじゃあ……すまんのう、故郷のオトンオカン……!」

 淵沫に立ち向かう船長の背後でオーイオイと船員たちが泣き叫ぶ。彼らこそ、荒れ狂う海流に逆らい嵐の間を突き進むのが得意中の得意な海の男たち……なのだが、陸上にあがるとどうにもこうにも、陸酔いが治まるまではいつもこの有様である。老いも若きも筋肉のついた髭面が震えあがって子どもの様に泣いている。とても惨憺たる絵面であった。

「ド阿呆ども、それでもてめぇら海賊かぁ!!」

 怒号一喝、船長の声が飛ぶ。

「何が相手だろうが関係ねぇ。オレの決定を、あの時の選択を、後悔にしない為にてめぇの不始末はてめぇでケリをつける、それが海賊の掟だろうよ。だいたい死んでも構わねえ、元からあの日オレらは死ぬのも覚悟で目の前の秘宝に手ぇ伸ばしたんだろぉがっ、海賊は海賊らしく、ここでくたばる腹ぁ決めとけ!」

 そう叫んで、船長は淵沫の群れの後ろに居る者を強く睨んだ。そこには、ボタボタと砂上に泥のような影を落として浮かぶ、ちいさなフェアリーの少女がいる。ぼろぼろにほつれて千切れかかっている黒く澱んだ羽からどろどろと呪詛で満ちた泥濘が垂れ落ちる。暗い顔、青白い肌、時折長い前髪の隙間から覗く瞳には痛みと悲しみの色が浮かんでいて、重ねるように憎悪でコーティングした恨めしさに満ちた視線が船長を射貫く。妖精は震える体を自分の腕で抱いている。そうしないと滴り落ちていく泥のように、自分も崩れてしまいそうだとでも言うように。

「ゆるさない。ぜんぶ、すべて、この世界も、あなたたちも」
「だからニュンフ。オレらが見つけた宝でお前を壊した責任はオレらが取る」
「わたしなんかを奪い合って、バカなデタラメ、信じちゃって……なんて愚かな海賊たち。ふふ、あは、あはは……!!」
「お前の辛かったことも、お前を泣かせた全てのことも、オレ達とのことも……ここで終わりにしよう、ニュンフ」
「ちがう、ちがうわ。死ぬのは、消えるのは……終わるのは、あなたよ!」

 砂の上、悲鳴のような声がして、カラカラと骨がぶつかる音が響く。晴れた空は青く、海はどこまでも穏やかに見える。けれど砂の上は泥だらけでぬかるんでいて、きっと誰かが涙を流しても、気付かれないまま泥に吸い込まれてしまうのだろう。

●救援上陸
 猟兵たちがこれから向かうのは『大海に輝く黄金の麦穂島』。元はアリスラビリンスから落ちてきた島らしい。丘の上にある広大な麦畑が低地の砂浜からでもわかるほど見事に生い茂り、その麦は枯れもせず刈っても同じ場所にすぐ次の麦が生えてくる魔法の麦だとか。だからなのか、この島の周囲で活動する海賊の間には御伽噺めいた嘘とも真実とも判断つかない秘宝の噂がいくつもあって、ある海賊団がこの麦穂島を縄張りと定めるまでは、実在も怪しい秘宝を巡る海賊たちの争いが絶えなかったのだという。
 今回の事件も切欠はその秘宝なのではないか――禅定・君代(君が代の為・f23011)はそう前置きをして、改めて今回の作戦内容を説明する。

「砂浜にはまるで調子の出ない船員数名と船長が敵に包囲されています。海賊たちを救助するつもりであるなら、まず周囲に広がっている配下を倒す必要がありますが……どうやらコンキスタドールのフェアリーと彼らの間にはずいぶんと深い因縁もあるらしく、お互いにこちらの存在は目に入っていないようなので、こちらから呼びかけたり攻撃されるまで気付かれる可能性は限りなく低いかと」

 つまり、奇襲をするには絶好の機会。相手の能力に不明な部分が多い以上、先手を取らない手はないだろう。奇襲を勧めるのは、正面から相手をするには少し不穏な情報もあるからだと君代は続ける。

「敵のリーダーであるコンキスタドールは海賊をひどく怨んでいるようです。理由は推測するしかありませんが、秘宝を巡って命でも狙われたのでしょうか。海賊らしい容姿や技を使う者を見ると無差別に攻撃目標にされますので、自分が該当すると思うのであればお気をつけてくださいませ?」

 厄介な話だが、戦い方によってはこの性質を逆に利用することもできるだろう。
 秘宝の呪いに侵されてコンキスタドールとなった者が元に戻る方法は無い。世界を壊す怪物になってしまった彼女は倒されなければならない。青い海の上に浮かぶ黄金の島。呪いに満ちた泥濘の底から、せめてその小さな魂だけでも救えるのなら。

「助けてあげてくださいね」

 では、よろしくお願いします。少女は言って、猟兵たちを送り出す。


本居凪
 海へ遊びに行きたいです(夏休みシナリオのこと)。
 なので島を探しました、見つけました。無事に夏休みを過ごす為に皆さまにどうかご協力していただければと思います。いや戦争始まりましたけど!!
 そういう訳でぎりぎり人数でもさっさか頑張って書いてどんどん進めていこうと思うので、どの章でも初入り飛び入り大歓迎です。合わせ参加の方もお気軽にどうぞ!

 ●シナリオの流れ
 →海賊救出、コンキスタドールの撃破、平和な島の日常を楽しもう。
 一章:集団戦、相手は深海より滲む屍の影『淵沫』です。
 二章:ボス戦、相手はシナリオトップの妖精少女『泥濘のニュンフ』。
 三章:日常回、なにをやるかは三章到達時に開示します。
 (ヒント:シナリオタイトル)
 冒頭はシリアスですが終わり自体は明るいものになると思います。

 戦争期間中なのでどの程度の方に来てもらえるかは分かりませんが、皆さまのご参加を楽しみにお待ちしています。リプレイ傾向、文章の癖などはOPや過去執筆リプレイなども参考にご覧ください。
 執筆した時からそれなりに時間は経っていますがだいたい変わりはない筈です。
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第1章 集団戦 『淵沫』

POW ●残影
【屍と影の機動力に併せ、思念を読み取り】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD ●群影
全身を【深海の水圧を帯びる液状の物質】で覆い、自身の【種のコンキスタドール数、互いの距離の近さ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ ●奔影
【屍の持つ骨や牙】による素早い一撃を放つ。また、【屍が欠ける】等で身軽になれば、更に加速する。
👑11 🔵🔵🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


オブリビオン・ラヴクラフト
アドリブ・連携歓迎

「ブクブクブク…。」
ただ今潜水中…。
背後から仕掛けてやる。
ザバァっと海から登場する。
此処で自分以外はSAN値チェック。
「どけぇ、海の亡霊共!鎮まれぇ‼︎」
神経を逆撫でる咆哮を放つ。


●昏き深海より挑む者

「ブクブクブク……」

 砂浜で白骨纏った黒き影のものたちがゆらゆらと漂い浮かんでいるのを見つめる瞳があった。海底でぶくぶくと泡を吐き登場する絶好のタイミングを静かに狙うその男。オブリビオン・ラヴクラフト(どう見てもクト○ルフ・f29048)である。
 その身体はあまりにも長大で、異質で、猟兵と呼ぶにはあまりにも背徳的なその見目は、緑の触手を蠢かせて海底に潜む姿はおぞましきもの、見てはならぬものと人に思わせるような、混沌の象徴と呼べるものと言えよう。現に周囲を泳ぐ魚類はラヴクラフトの威容に近づいてはならないと本能が刺激されるのか、彼がこの海中に潜んでからしばらく、遠くを移動する魚群しか目撃していない。こうも遠巻きにされるのは少し寂しい気もするが、作戦を実行するのに支障が無くて丁度いい。
 まあ勝手に祀り上げられたり崇められたりするよりは言葉も分からないぶん気が楽だねと、元来内気なラヴクラフトとしてはそうしみじみと思うのだった。

「ひぃーーーーーぇぇえええー!」

 そんな彼の耳を貫く、海の中まで聞こえてくる海賊たちの野太い悲鳴。出るなら今だとラヴクラフトは遂に立つ!
 ざぱぁと海面を割って緑の肌が急速浮上、膨れ上がった丸い頭に爛々と輝く琥珀色の眼。触手の一本一本が意思を持っているかのように蠢いて、威圧するラヴクラフトの声と共に翼がぐわりと広がった。堂々たる姿はまさに異界の神の如し。

「どけぇ、海の亡霊共! 鎮まれぇ!」

 心の奥底から揺さぶる彼の声に反応して振り向いた淵沫は何体居ただろう、そして何体が耐えられただろう。淵沫の間から垣間見えた光景に、海中より現れたおぞましく吐き気を催す醜悪に、一人の海賊は悲鳴を上げる事すらできず、意識を失う。群れていた淵沫も、その魂は既に死んだものとはいえ、恐怖する感情を失ってはいないらしい。狂気に陥った淵沫は怖れ、怒り、慌てふためき群れは崩れる。
 もう、ラヴクラフトから逃れることなど不可能だ。
 砂浜に、屍たちの断末魔が響いた。
成功 🔵🔵🔴