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そして君は空へ飛び立つ

#グリードオーシャン

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#グリードオーシャン


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●海の上で、誰かが願った
 グリードオーシャン。遥か昔、世界を越えて多くの島々が落ちてきた大海のどこか。
 嵐の中を進んできたかのようにぼろぼろになった海賊船がとある島の砂浜に打ち上がっていた。だが浜の上にも、海賊船のどこにも、船員の気配は感じられない。
 いや、耳を澄ませば、目を凝らせば、砂浜の上を漂うものと追われるものがいるのが分かるだろう。ゆらりと暗い影を引き摺って、白い骨と骨をカツカツ響かせて、深海から昇ってきた屍の魚。淵沫と誰かが名付けたそれらは砂の上を泳いでいるかのように、広げられた黒い影の中ですいすい飛び回る。ぐるぐると円を描いて、じりじりと円を狭めて、淵沫たちは追いかけていた標的――海賊船の船員たちを追い詰めていく。
 コンキスタドールの群れに襲われていても流石に船長、紅い海賊帽と布地に金釦が映えるロングコートを着た逞しい男は一歩前に出て、手に握ったカトラスを突き付けて敵の一挙一動を睨んでいるのだが、その背後では。

「ひぃぃ、船長、お、お助けを!!」
「バッカヤロー! 海賊が敵の前で情けねえ姿晒すんじゃねえや!」
「ですけど船長、これだけの数に囲まれて、逃げ場もないんですよ!」
「駄目じゃあ、もう駄目じゃあ、掟もこなせないワシらはもうここでくたばるしかないんじゃあ……すまんのう、故郷のオトンオカン……!」

 淵沫に立ち向かう船長の背後でオーイオイと船員たちが泣き叫ぶ。彼らこそ、荒れ狂う海流に逆らい嵐の間を突き進むのが得意中の得意な海の男たち……なのだが、陸上にあがるとどうにもこうにも、陸酔いが治まるまではいつもこの有様である。老いも若きも筋肉のついた髭面が震えあがって子どもの様に泣いている。とても惨憺たる絵面であった。

「ド阿呆ども、それでもてめぇら海賊かぁ!!」

 怒号一喝、船長の声が飛ぶ。

「何が相手だろうが関係ねぇ。オレの決定を、あの時の選択を、後悔にしない為にてめぇの不始末はてめぇでケリをつける、それが海賊の掟だろうよ。だいたい死んでも構わねえ、元からあの日オレらは死ぬのも覚悟で目の前の秘宝に手ぇ伸ばしたんだろぉがっ、海賊は海賊らしく、ここでくたばる腹ぁ決めとけ!」

 そう叫んで、船長は淵沫の群れの後ろに居る者を強く睨んだ。そこには、ボタボタと砂上に泥のような影を落として浮かぶ、ちいさなフェアリーの少女がいる。ぼろぼろにほつれて千切れかかっている黒く澱んだ羽からどろどろと呪詛で満ちた泥濘が垂れ落ちる。暗い顔、青白い肌、時折長い前髪の隙間から覗く瞳には痛みと悲しみの色が浮かんでいて、重ねるように憎悪でコーティングした恨めしさに満ちた視線が船長を射貫く。妖精は震える体を自分の腕で抱いている。そうしないと滴り落ちていく泥のように、自分も崩れてしまいそうだとでも言うように。

「ゆるさない。ぜんぶ、すべて、この世界も、あなたたちも」
「だからニュンフ。オレらが見つけた宝でお前を壊した責任はオレらが取る」
「わたしなんかを奪い合って、バカなデタラメ、信じちゃって……なんて愚かな海賊たち。ふふ、あは、あはは……!!」
「お前の辛かったことも、お前を泣かせた全てのことも、オレ達とのことも……ここで終わりにしよう、ニュンフ」
「ちがう、ちがうわ。死ぬのは、消えるのは……終わるのは、あなたよ!」

 砂の上、悲鳴のような声がして、カラカラと骨がぶつかる音が響く。晴れた空は青く、海はどこまでも穏やかに見える。けれど砂の上は泥だらけでぬかるんでいて、きっと誰かが涙を流しても、気付かれないまま泥に吸い込まれてしまうのだろう。

●救援上陸
 猟兵たちがこれから向かうのは『大海に輝く黄金の麦穂島』。元はアリスラビリンスから落ちてきた島らしい。丘の上にある広大な麦畑が低地の砂浜からでもわかるほど見事に生い茂り、その麦は枯れもせず刈っても同じ場所にすぐ次の麦が生えてくる魔法の麦だとか。だからなのか、この島の周囲で活動する海賊の間には御伽噺めいた嘘とも真実とも判断つかない秘宝の噂がいくつもあって、ある海賊団がこの麦穂島を縄張りと定めるまでは、実在も怪しい秘宝を巡る海賊たちの争いが絶えなかったのだという。
 今回の事件も切欠はその秘宝なのではないか――禅定・君代(君が代の為・f23011)はそう前置きをして、改めて今回の作戦内容を説明する。

「砂浜にはまるで調子の出ない船員数名と船長が敵に包囲されています。海賊たちを救助するつもりであるなら、まず周囲に広がっている配下を倒す必要がありますが……どうやらコンキスタドールのフェアリーと彼らの間にはずいぶんと深い因縁もあるらしく、お互いにこちらの存在は目に入っていないようなので、こちらから呼びかけたり攻撃されるまで気付かれる可能性は限りなく低いかと」

 つまり、奇襲をするには絶好の機会。相手の能力に不明な部分が多い以上、先手を取らない手はないだろう。奇襲を勧めるのは、正面から相手をするには少し不穏な情報もあるからだと君代は続ける。

「敵のリーダーであるコンキスタドールは海賊をひどく怨んでいるようです。理由は推測するしかありませんが、秘宝を巡って命でも狙われたのでしょうか。海賊らしい容姿や技を使う者を見ると無差別に攻撃目標にされますので、自分が該当すると思うのであればお気をつけてくださいませ?」

 厄介な話だが、戦い方によってはこの性質を逆に利用することもできるだろう。
 秘宝の呪いに侵されてコンキスタドールとなった者が元に戻る方法は無い。世界を壊す怪物になってしまった彼女は倒されなければならない。青い海の上に浮かぶ黄金の島。呪いに満ちた泥濘の底から、せめてその小さな魂だけでも救えるのなら。

「助けてあげてくださいね」

 では、よろしくお願いします。少女は言って、猟兵たちを送り出す。


本居凪
 海へ遊びに行きたいです(夏休みシナリオのこと)。
 なので島を探しました、見つけました。無事に夏休みを過ごす為に皆さまにどうかご協力していただければと思います。いや戦争始まりましたけど!!
 そういう訳でぎりぎり人数でもさっさか頑張って書いてどんどん進めていこうと思うので、どの章でも初入り飛び入り大歓迎です。合わせ参加の方もお気軽にどうぞ!

 ●シナリオの流れ
 →海賊救出、コンキスタドールの撃破、平和な島の日常を楽しもう。
 一章:集団戦、相手は深海より滲む屍の影『淵沫』です。
 二章:ボス戦、相手はシナリオトップの妖精少女『泥濘のニュンフ』。
 三章:日常回、なにをやるかは三章到達時に開示します。
 (ヒント:シナリオタイトル)
 冒頭はシリアスですが終わり自体は明るいものになると思います。

 戦争期間中なのでどの程度の方に来てもらえるかは分かりませんが、皆さまのご参加を楽しみにお待ちしています。リプレイ傾向、文章の癖などはOPや過去執筆リプレイなども参考にご覧ください。
 執筆した時からそれなりに時間は経っていますがだいたい変わりはない筈です。
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第1章 集団戦 『淵沫』

POW   :    残影
【屍と影の機動力に併せ、思念を読み取り】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD   :    群影
全身を【深海の水圧を帯びる液状の物質】で覆い、自身の【種のコンキスタドール数、互いの距離の近さ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ   :    奔影
【屍の持つ骨や牙】による素早い一撃を放つ。また、【屍が欠ける】等で身軽になれば、更に加速する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

オブリビオン・ラヴクラフト
アドリブ・連携歓迎

「ブクブクブク…。」
ただ今潜水中…。
背後から仕掛けてやる。
ザバァっと海から登場する。
此処で自分以外はSAN値チェック。
「どけぇ、海の亡霊共!鎮まれぇ‼︎」
神経を逆撫でる咆哮を放つ。



●昏き深海より挑む者

「ブクブクブク……」

 砂浜で白骨纏った黒き影のものたちがゆらゆらと漂い浮かんでいるのを見つめる瞳があった。海底でぶくぶくと泡を吐き登場する絶好のタイミングを静かに狙うその男。オブリビオン・ラヴクラフト(どう見てもクト○ルフ・f29048)である。
 その身体はあまりにも長大で、異質で、猟兵と呼ぶにはあまりにも背徳的なその見目は、緑の触手を蠢かせて海底に潜む姿はおぞましきもの、見てはならぬものと人に思わせるような、混沌の象徴と呼べるものと言えよう。現に周囲を泳ぐ魚類はラヴクラフトの威容に近づいてはならないと本能が刺激されるのか、彼がこの海中に潜んでからしばらく、遠くを移動する魚群しか目撃していない。こうも遠巻きにされるのは少し寂しい気もするが、作戦を実行するのに支障が無くて丁度いい。
 まあ勝手に祀り上げられたり崇められたりするよりは言葉も分からないぶん気が楽だねと、元来内気なラヴクラフトとしてはそうしみじみと思うのだった。

「ひぃーーーーーぇぇえええー!」

 そんな彼の耳を貫く、海の中まで聞こえてくる海賊たちの野太い悲鳴。出るなら今だとラヴクラフトは遂に立つ!
 ざぱぁと海面を割って緑の肌が急速浮上、膨れ上がった丸い頭に爛々と輝く琥珀色の眼。触手の一本一本が意思を持っているかのように蠢いて、威圧するラヴクラフトの声と共に翼がぐわりと広がった。堂々たる姿はまさに異界の神の如し。

「どけぇ、海の亡霊共! 鎮まれぇ!」

 心の奥底から揺さぶる彼の声に反応して振り向いた淵沫は何体居ただろう、そして何体が耐えられただろう。淵沫の間から垣間見えた光景に、海中より現れたおぞましく吐き気を催す醜悪に、一人の海賊は悲鳴を上げる事すらできず、意識を失う。群れていた淵沫も、その魂は既に死んだものとはいえ、恐怖する感情を失ってはいないらしい。狂気に陥った淵沫は怖れ、怒り、慌てふためき群れは崩れる。
 もう、ラヴクラフトから逃れることなど不可能だ。
 砂浜に、屍たちの断末魔が響いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

桑原・こがね(サポート)
あたしを見ろォ!
登場は雷鳴と共に、派手に演出していきたいわね!
名乗りを上げて注目されたいわね!
囮役とかも嫌いじゃないわ。

こそこそしたり駆け引きするのは苦手だし、何事も正面突破の力技で解決したい!

戦うときは大体斬りかかるか、武器を投げつけるか、雷出すかのどれかね。徒手空拳も心得が無くもないわ!

さーて、雷鳴を轟かせるわよ!



●影照らす正義の光は此処にある
 淵沫の群れは今もまだ多くが健在だった。
 不安を煽るような底の見えない黒い影とキシキシと骨の擦れ合う不気味な音には荒くれの海賊たちも流石に心を揺さぶられ、ついでに揺れない足場に体も不調を訴えていて、うっかりすれば海面に浮かぶマンボウのように繊細な存在になってしまった彼らの怯えを淵沫たちも感じ取っているのだろう。
 巨大な骨の屍魚が大きくその口を開く。空っぽの頭蓋、その喉の奥からも、真っ暗な闇があふれ出で、目の前にいる海賊たちを呑みこもうと勢いつけて押し寄せて。
 そしてごうごう寄せる影波の奥では妖精が、腕を振り上げ叫んでいた。

「沈んで、沈んで、海賊なんてみんなみんな、影に呑まれてしまえばいい!」

 悲痛な叫びに呼応して、海賊を包囲する淵沫たちの輪が狭まっていく。彼らが広域に展開する影から逃げることは出来ない。だが彼らが震える魂を海の底へと引き摺りこもうとするその鼻先で、それを遮る光が生まれる。

「あたしを見ろォ!」

 空気一変、闇を切り裂く少女の声が砂浜に響いた。雷鳴轟き、突き進む銀色の稲光が淵沫を群れごと弾いて散らしていく。
 騒々しく荒々しく、淵沫と海賊の間に介入した存在――桑原・こがね(銀雷・f03679)は、砂浜に浮かび漂う骨魚の群れに向かって刀を構えて仁王立ち、風になびく金髪の間に見えたその藍色の瞳は闘志に満ちていて、強く勇ましい光が宿っている。そのままこがねは周囲の影ごと、目の前に浮かぶ淵沫を薙ぎ払う。
 彼女の眩しさで目も眩むばかりの雄姿には、敵のみならず背後で固まっていた海賊たちすらもその目を奪われているようだった。

「やるじゃねェか、剣士のお嬢ちゃん!」
「あら、どうもありがとねっ!」

 こがねは後方からの声援に応えながら更に敵陣へと切り込んでいく。

「さあさあ覚悟しなさい! 私こそは桑原・こがね!」

 そうして、大声で名乗る。この場にいる全員に聞こえる程に大きな声で、桑原こがねはここに在りと全身で告げれば、淵沫たちの牙が一斉に彼女へと向く。

「あんたたちの敵にして……あんたたちをぶっ飛ばす、雷だっ!」

 相手は一体二体どころではない数の群れ、しかし多数であろうとも、いくら機敏に動こうとも、こがね自身の思念を読み取り攻撃範囲を予測しようとも、彼女の放つ雷光の速度には敵わない。文字通り、骨の芯まで痺れさせる電撃を受けては彼らの回避行動もままならず。
 そして敵の中心へ飛び込み注目され続けることによって、自身を不利へ追い込むことで、こがねの身体能力はより研ぎ澄まされていく。
 影撃つ雷、斬り払う刃の鋭さ、こがねの勢いは微塵も弱まる事は無く、こうして淵沫とこがねの攻防は、彼女の優位で進んでいくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

有海・乃々香
アド◎

【鮫風】
あんまりむずかしいことは、ののかにはわからないけど
あそこのおじさんたちが大ピンチなのはわかるの
……おじさんたち泣いてるね、サメさん
じゃあ、助けたほうが、きっといいよね?

サメ喚び出し乱入
後方から指揮を取り、片っ端からノコギリぶんぶん体当たり
おいでおいで、サメさんたち!
食べるところはなさそうだけど、そのぶんきっと倒しやすいよ!

心配してくれた見知らぬおじーちゃんには笑顔を返し
だいじょーぶ!
ののかのサメさんたち、お肉あるから骨よりはがんじょーだもん!

……わぁ、あの海賊のおじーちゃんすごいね、サメさん!
じゃあね、じゃあね、サメさんたちは、あの反対から回って!
これだけいれば負けないね!


バッカニア・マグナ
アド◎

【鮫風】

あー、なんだ。これ見ててもどうにかなるんじゃねえか?わし要らんだろ。
必要そうな時まではのんびりして~……って、あのちっこいの、何してんだ?
おいおい、ほいほい近付くなって!

嬢ちゃん!いくら鮫が居るからってあぶねえぞ!?
いや、鮫じゃなくて!嬢ちゃんが怪我したらどうすんだよ!!
……仕方ねぇ、敵の攻撃をこっちに向けるか。
なんか海賊っぽいことすりゃいいんだっけ?
それならわし、特に何もしなくても海賊丸出しだから行けんじゃね!?よし!

ヤー・ダゥ!お前ら手ぇ貸しやがれ!!
相手が数なら此方も数だ!ぶわっはっはっ!!行くぜお前らぁ!!
やるからには嬢ちゃんや生きてるやつら、全部守って格好付けんぞ!!



●海の底は暗いから
 おいでおいでと闇が誘う。光も届かぬ暗く冷たい水底は、思うよりも余程落ち着くものだと。
 来たれ来たれと骨が鳴る。お前の被る皮も肉も棄ててしまって、我らと同じになればいいと。
 声無き淵沫から伝わる深海の気配が一層に濃く、強くなる。対峙する海賊たちは歯を食いしばり、深海に呼ばれるものかと気丈に砂を踏み締める。そしてバッカニア・マグナ(バッカじじい・f26304)は手をかざしてその光景を眺めていた。

「あー、なんだ。これ見ててもどうにかなるんじゃねえか?わし要らんだろ」

 既に戦闘は始まっている。彼らの間へ割り入ることも出来ないわけではないが、そこはホラ、年なので。一歩半の距離で戦場を俯瞰して、前線退いた老兵の様な事を言おうが、事実なのだからいいじゃないか。爺が腕を振るうより、若いのに花を持たせてやるってのもさ。

(ってわけで、必要そうな時まではのんびりして~……って、あのちっこいの、何してんだ?)

 老いたといえど朝昼晩、どんな波間にも船も島も見つけてきたその眼の良さは健在である。海と砂。骨の白と影の黒。色彩の乏しい砂浜にピンク色はよく目立つ。それがぴょこぴょこ動くちいさなこどもであるなら尚更、見逃すことは無い。

「おいおい、ほいほい近付くなって!」

 その視線にいるちっこいの――有海・乃々香(愛情欠乏症・f26728)は、バッカニアの声には気付いていない。

「あんまりむずかしいことは、ののかにはわからないけど、あそこのおじさんたちが大ピンチなのはわかるの」

 砂に膝着き身を寄せ合って震える海賊たちだったが、ぐるぐると獲物が弱るのを待っている淵沫よりも、彼らの意識は浮かぶ妖精へとずっと向いているようだった。よいよいおいおいと泣きながら妖精の名を叫ぶ彼らの声が、少し離れた乃々香のいる場所まで聞こえてくる。

「……おじさんたち泣いてるね、サメさん。じゃあ、助けたほうが、きっといいよね?」

 それがいいことなら、助けたいと乃々香は思う。自分がそうだったから。気付けば知らない場所にいて、自分も何かに追われていた。記憶の無い彼女に優しくしてくれた彼らのように、自分も誰かを助けるんだ。それがきっと、いいことだから。微かに勇気を灯したペリドットが真っ直ぐに敵を見つめれば、彼女の勇気に応えるように、力を貸すぞとちいさな背中を押す鮫の鼻先。乃々香を助けてくれた彼ら――サメさんたちはいつだって、彼女の力になってくれる。
 頷き、元気よく桃色の髪を揺らして乃々香が手を叩けば、ぎらぎらと光る回転ノコギリを生やした鮫たちが砂浜へ召喚されていく。

「じゃあ、いくよ……サメさんっ! 食べるところはなさそうだけど、そのぶんきっと倒しやすいよ!」

 戦闘準備は完了と、淵沫に立ち向かおうとする乃々香に大きな影が被さった。なんだろうと首を上へ向けたそこには不安そうな顔のおじーちゃん。
 あら、おめめ、緑色。おそろいね。彼女の顔を見つめる彼が口を開くまでのほんの一瞬、目と目を合わせた乃々香の頭には、そんな感想がぷかりと浮かぶ。

「ちょいちょい、嬢ちゃん! いくら鮫が居るからってあぶねえぞ!?」
「だいじょーぶ! ののかのサメさんたち、お肉あるから骨よりはがんじょーだもん!」
「いや、鮫じゃなくて! 嬢ちゃんが怪我したらどうすんだよ!!」
「サメさんたちがいるから、大丈夫だよ」

 初対面である少女の肩を掴むか掴むまいか、せめてと横に立つ少女よりも前へ出ようとしたバッカニアの横を乃々香は笑ってすり抜ける。
 触れるか触れないかの距離でバッカニアもようやく気付く。彼女の軽すぎる足取りと、彼の良く知る人ならぬ者としての気配。けれど幼気な笑顔はただただ明るいばかりでこれっぽっちも不安の影なんて見えない。
 そのまま戦場へ駆けていく彼女を止める気はバッカニアにはもう無かった。彼がまだ届かぬ運命の果てを既に通過している乃々香の歩幅をたった一歩で抜き去って、バッカニアは低く息を吐く。

「……仕方ねぇ、敵の攻撃をこっちに向けるか」

 まだまだわしは若いんだ、孫のような年頃のこどもに遅れちゃ恰好つかないってものだろう?さてと考えるバッカニア。あっちの気を引くにはなんか海賊っぽいことすりゃいいんだっけ?それならわし、特に何もしなくても海賊丸出しだから行けんじゃね!?よし!稲妻のごとき速さで閃いた解決法はとても単純。イッツシンプル。

「ヤー・ダゥ!お前ら手ぇ貸しやがれ!! 相手が数なら此方も数だ! ぶわっはっはっ!!行くぜお前らぁ!!」

 暗闇に見える灯台の光。そう彼の声は評されよう。何年何十年と経とうとも、彼の号令はいつだって軽快、壮大、明快で、一度轟けば海の果て、地の底、死者の国にさえ届くのだ。
 バッカニアは呼ぶ。爺になっても、骨になっても、魂になってさえ、己についてきてくれる、俺の愛しき船員(クルー)たち。
 さあ、幽霊船の上を見よ、魂だけの肉体に巡る血を滾らせて、カトラスとラッパ銃を振りかざした荒くれ共が叫んでいるぞ!
 俺達を呼んだな、キャプテン! 俺達のキャプテン・バッカニア!

「やるからには嬢ちゃんや生きてるやつら、全部守って格好付けんぞ!!」
「……、い。うるさい、お前らのせいだおまえたちのせいだっ、わたしを返して! 憎い憎い、おまえたちが憎い!!」
「そうさ、そんなに海賊憎けりゃ、わしらが相手になってやる!!」

 妖精ニュンフの足元へは泥がいっそう広がって、彼女の目が、ゆっくり、どろりと、海賊幽霊の先頭に立つ大声喧しき老人に向かう。
 妖精の視線に反応して淵沫たちも一斉にバッカニアたちに狙いを定めて、喰らいつくせと前進するが、海底より浮かび上がった屍の骨を海賊たちの刃が受け止め弾き返す、払って砕く。バッカニアも舵輪を手に一歩も退かぬ立ち回りを見せつける。

「……わぁ、あの海賊のおじーちゃんすごいね、サメさん! じゃあね、じゃあね、サメさんたちは、あの反対から回って!」

 風船のようにふわりと浮かんで、乃々香が鮫の背に飛び乗れば、回転を始めたノコギリがぶぅぅぅううんと唸り、刃の生えた巨体は屍の魚たちに向かって飛んでいく。そのまま海賊たちを狙っていた淵沫へと鮫は体当たり、彼らの骨を砕いて削って破壊する。バッカニア率いる幽霊海賊団に集中していたのも相まって、乃々香たちの奇襲は見事に決まった形となった。
 だが淵沫たちも猟兵たちに押されるばかりではない。鮫たちによって骨身を削られれば文字通り軽くなった体で鮫たちを指揮する乃々香を狙い、素早い動きで鮫の死角へ潜り込む。己の牙で回転する刃ごと鮫を喰らおうとするが、そうはさせんと幽霊船の海賊たちが淵沫に群がり食い止める。そのまま彼らによって弾き飛ばされた淵沫を待ち受けているのは、後ろへ回った乃々香と鮫たちによって木っ端微塵にされる結末。妖精が荒れ狂おうと、彼らの快進撃は止まらない。
 こうして海賊の幽霊と鮫たちの活躍もあり、一体二体と撃墜数を重ねていく二人。

「これだけいれば負けないね!」

 乃々香があげた明るい声に、海賊への怨みごとを呟き続けていた妖精ニュンフがようやく視線を彼女へ向ける。その目には嘲るような色が浮かんでいた。

「彼らは仲間が欲しいのよ。一緒に海の底へ沈む相手を仲間と呼んで求めてる。あは、あなたたちも、海賊も、仲間をつくるのが好きなのでしょう? それならなってあげたらいいのにね。伸ばした手を拒むなんて、ひどいひと」

 呟くニュンフの視線の先にいる、バッカニアと乃々香のふたり。戦友と呼べる程、わずかであれどその間に信頼が芽生えはじめているふたり。ニュンフは突然顔をくしゃくしゃに歪ませて、嘲笑を浮かべていた唇を強く噛みしめる。

「……仲間なんて。むかつく、くるしい、聞きたくもない! だからもう二度と、聞こえないくらい、浮かばないくらい、深く、深くに……沈んで消えて……!」

 空を震わせ、音は零れる。嵐を裂いて彼らの耳に届いた声は悲痛に満ちて、悲鳴にも似て、けれど妖精の頬を伝うのは涙ではなく――泥の様な、黒い闇。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

真城・美衣子
☆サポート&おまかせ専門
何を考えているかよくわからない猫っぽい少女

喋るペンダント『マキさん』

・UDCアース人や猟兵としての一般常識はある
・鋭い感覚、高い運動能力、強靭な肉体で頑張る
・ぼんやりしているけど動きは早い
・無表情で説明もないまま行動するので、奇行に見える事も多いが、本人は一生懸命

・マキさんは主に解説・交渉などの会話を担当
・PLが直接操作しない方針なので挙動はご自由に!

☆セリフ例
「にゃ」
『みーこさんは「こんにちは」と言っています』

「……すんすん」
『みーこさんはニオイを確認しているようです』

『お時間よろしいでしょうか、事件についてお話を……』
「にゃ」
『みーこさん、今は喋らないでください』



●猫よ、戦場を駆けろ
砂を蹴り上げ、冷え切った闇の中を駆け抜けて。怖ろしき影の魚が密集し、作り上げた屍たちの障壁を、今ひとりの少女が押しとおる。
 真城・美衣子(まっしろみーこ・f12199)の白い髪が闇の中でふわりと揺れて、彼女の俊敏さに追いつけない淵沫を翻弄する。ガチン、バキン、と牙の噛み合わさる音、続いて、それが折られる音。
 闇を纏う骨の鎧は折れて剥がれて、まともな形を成せてはいない。だがまだだ、美衣子の直感は、獲物を狩る猫の本能が、まだ終わりではないと告げている。
 淵沫は単なる重石となった外殻を、巨体震わせ地に落とす。より鋭く、より速く。形を変えて最適化する。シャアアアア、と低音域から高音域へ、アップデートの合図の様に淵沫は威嚇の声を発している。
 だがいくら敵の姿が変わろうと、美衣子はただ静かに見つめるのみ。
 ふと少女の胸元で緑の光が輝いて、ここまで一言も声を発さずにいた彼女のものではない女性の声が聞こえてくる。落ち着いた女性の機械音声は、美衣子のサポートをしてくれる人口知能の『マキさん』だ。

『みーこさん、どれから片付けますか』
「にゃ」
『ええ、畏まりました』

 その言葉を合図に、どこからか猫の声がする。砂浜の上で周りは海だ、野生の猫などいる訳ない。しかし数多の視線と光る眼はそこにある。美衣子の後ろから無数に飛び出すものがある。
 にゃー、にゃー、にゃー!
 美衣子が指差す淵沫目掛けて、召喚されたねこねこミサイル――爆弾を抱えた猫たち【キャット宇宙産回天(ギャラクシーキャットミサイル)】が一斉に飛び掛かる!
 ドドドオオオオオン!!
 爆発音が一気に続いて、剥がれた骨の外殻が転がる砂浜に、浮遊していた淵沫が吹き飛ばされて転がっていく。移動速度が上がろうとも、動き出す前に叩けばいい。相手から一撃を食らえば消えてしまうような力でも、その一撃よりも多くの力で押しに押されれば、一度でも崩れてしまえば、問題などどこにもないのだ。

「………」
『目標、沈黙を確認。みーこさん、次の目標を設定しますか?』
「にゃ」
『畏まりました、みーこさん』

 掌から現れたブラスターの発射口を敵の消えた場所へ向けたままの美衣子に、『マキさん』が声を掛ける。短く返した美衣子の瞳は周囲で動く淵沫へ油断なく向いている。だが決してそれは、獲物狙う獣の様に鋭く冷たい訳ではなく。
 危機に陥った誰かを助けたいと一生懸命に頑張る少女の情熱が宿った、戦う意志に満ちた目をしていたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『泥濘のニュンフェ』

POW   :    これがわたしの魔法の力
【憐憫】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【闇よりも深い泥濘】から、高命中力の【精神を蝕む呪詛の塊】を飛ばす。
SPD   :    ドラゴン退治の末路
自身が【敵対心や恐怖心】を感じると、レベル×1体の【邪竜】が召喚される。邪竜は敵対心や恐怖心を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ   :    あなたもわたしが欲しかった?
【ニュンフェを傷つけ奪い合った強欲な人間達】の霊を召喚する。これは【呪詛を施した泥濘を撒き散らす剣】や【激痛を与える泥濘を撒き散らす鎖】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠世母都・かんろです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

藤・美雨(サポート)
私は藤・美雨
デッドマンの猟兵さ
キョンシーじゃない、キョンシー擬きだよ

戦う時は近接攻撃を中心に
強化した肉体で怪力で暴れまわったり
装備した刃物でザクザク切り込むのが好きかな

死んでいるから怪我にはあんまり執着しない
危なくなればヴォルテックエンジンで自分を叩き起こすからね
負傷は気にせず気力で突っ走るのが好きだよ
その方が楽しい!

でも死んでるからといって人生を楽しんでいない訳じゃない
飲食とかは出来るし好きだよ
綺麗なものや楽しいものに触れるのだって大好きさ

他の猟兵に迷惑をかける行為はしないよ
例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動もしない
気持ちよく勝って帰りたいし!

あとはおまかせ
よろしくお願いするね!



●落下する、青の底
 その妖精は、世界が割れる音を聞いた。懐かしき故郷の風は遠く遥か、海鳥の鳴き声混ざる潮風が彼女の羽には重く感じた。
 知らない世界、知らない空、知らない海の知らない風が彼女の心を深く深く沈ませて、飛べていた筈の彼女は飛べなくなった。
 けれど世界は妖精の――ニュンフェの光を透かしてきらめく羽に、夢を見た。
 否、夢と言うにはぎらついた欲望を重ねて、ニュンフェを更に飛べなくさせた。擦り切れている羽は、彼女をどこへも運ばない。むしろ欲に満ちた海賊を引き寄せる目印として、ニュンフェひとりを閉じ込める籠の中で意味も無く輝いているだけだった。
 モノのように海賊から海賊へ、自分の意思と関係なく海の上をさまよい続けた妖精の羽はオブリビオンの力を得ても、結局動くことは無かった。したたり落ちる怨嗟の泥が動かないままの羽を覆って、形となっているだけだ。
 けれど結局再生しなかった羽は最早、彼女の意識からは切り離されている。
 もしかしたら、財宝が正しくニュンフェの力となってくれたなら、ほつれ千切れて壊れかけていた羽の再生も有り得たのかもしれないが。可能性は既に過去の話になってしまったし、彼女はもう諦めた。
 諦念。失望。絶望。憎悪。憤怒。後悔。否定。妖精が諦めた夢の代わりに彼女の羽を覆うのは、大凡そんなものだった。

 煮詰まりに煮詰まった妖精の感情を吐き出すように、ドロドロ、ドロドロ、泥濘が波打ち拡大していく。
 藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)も慌てて砂の上からぴょいと跳んで、引き摺られないよう足場を移す。
 いくら屍体モドキといったって、ぬかるむ足場じゃ動き辛い。

「わっ、とっと……わぁ。ぐっちゃぐちゃだね」

 さてその視線が向いたのは、足下に広がる呪泥だろうか、目の前で今も溢れ続ける憎悪だろうか。しゃらりと黒髪靡かせる。縫い目の走った首をこきりと鳴らして、美雨はニヤリと不敵に笑って、ニュンフェのどろどろに濁り澱んだ黒の瞳と、美雨の輝き失わぬ灰色の瞳が交錯する。私が相手になると、意識をさせるように、強く、強く、輝く視線が妖精を射貫く。

「……ジャマ、しないでよ、ォ……ッ!!」
『ははっ、……一思いにやらせてくれるかい?』

 広がりきった泥濘の表面に浮かび上がった魔法陣が一瞬にして砕け散り、黒き鱗の禍々しい邪竜が己が主人を守らんと、首を振り上げ牙を剥き、敵の前へと顕現する。美雨よりも倍以上はあろう巨体を揺らし、邪竜が尾を振り上げた。だが、刃物が弾かれる鋭い音がいくつか続いて、美雨の体が文字通りに――飛び跳ねた。
 人間の可動域の限界を通り越して身体を捻り、人間ではあり得ない高さまで跳躍する。少女の握る匕首は竜の硬い鱗を貫いて、その命を削り取る。
 ヴォルテックエンジンの力が漲っている美雨は止まらない。一度死んだ肉体に限界なんてものは存在しないのだ。
 ブレスを吐こうと大きく息継ぎをしたタイミングを見逃さず、喉へと一突き、そしてそのまま、力任せに押し切って、圧し切って、押し通す!
 小さな体が巨大な竜を跳ね上げる。後方で竜を操るニュンフェも巻き込んで、美雨は邪竜を吹き飛ばしたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​


●思いは手から溢れて落ちた
 ニュンフェの手が空を撫でる。広げた手、伸ばしきれずに曲がった形で跳ねる指。目の前に立つ猟兵が彼女にはどう見えているのだろう。定まらない瞳孔、ぶれる視線がヒトの形を捉えて、彼女の顔が悲しみに歪む。憎しみに沈む。かつての痛みを思い出すのだろう、両手で胸を押さえても溢れだした彼女の憎悪はこの島の外に広がる嵐と同じで、暴れだしたら誰にも止められはしない。
 このままでいたって、誰もが傷つく結末しかない。止められるのは、同じ力を持つ海賊たちと猟兵しかいないだろう。
 ニュンフェの前に立つ船長は彼女のことを知っている。彼が航海の途中に見つけた、正確には他の海賊船から奪った『元・秘宝』。鳥籠の中にいた彼女の名前も知らないまま、同意も得ないで奪っていって。傷だらけだった彼女の名前と声を知るにはそれからしばらくの時間の経過と僅かな島から島への大冒険があった。いまやその冒険の記憶すら、目の前の憎悪に囚われたニュンフェには遥か夢の物語、千切られた記憶の絵のひとつになってしまっているかもしれないが、そんな日々があったのだ。
 ーー今、彼女に記憶が残っていたとしても、なかったとしても、海賊の掟は果たされなくてはならない。悲劇を繰り返してはならないし、悲劇を乗り越えてでも強くならなればこの海で生きていくことは出来ない。これは最初からずっと、そういう話なのだから。

 それでも。もう一度、船長はニュンフェの顔を見つめる。上手いこといけば良かったのになと、彼女がああなってから、何度も何度も、思っている。
 危険には巻き込まないようにしたかった。ずっと、鳥籠の中にいてさえ、傷だらけの翅で飛ぶのは辛そうだったから。俺たちの『お宝』なんだから、守る理由としては十分じゃないか。だけど彼女は秘宝扱いはイヤだときっぱり断った。傷だらけの翅でだって戦えると言った。だったら、それなら、自分で望んだ通りにするのが一番いい。そんな当たり前のこと、誰より何より、俺たち自身が一番よーーく、分かっているし知っているから、背中を押した。後悔はしないことを決めた。
 海賊は己の欲望に従って武器を取る。己の望むまま、欲しいまま、そうしたいから生きていく。その結果に何が起きたとしても、それも覚悟で力を手にした。守れる力があると信じた、いいや今でも、信じている。防御に専念していても崩れそうな膝に握った拳を叩きつけ、海賊船を率いる男は武器を手に気合いを入れ直す。
 海賊の睨みを受けた妖精の少女が涙の代わりに零すのは恨み痛み、悲しみ混じった呪いの雫。どこへもいけない傷の記憶。
 ニュンフェは苦痛に顔を歪めて、少しだけの微笑みと共に静かに言った。

 海賊なんて、この世界のどこへも還してやらない。ここで蹴散らして、ぐちゃぐちゃになって、……海の藻屑にもしてやるものか、こわくて、ふるえて、怯えて、消えて……!!
政木・朱鞠(サポート)
ふーん、やっと、ボスのお出ましか…。
もし、貴方が恨みを晴らすためでなく悦に入るために人達を手にかけているのなら、不安撒き散らした貴方の咎はキッチリと清算してから骸の海に帰って貰うよ。

SPDで戦闘
代償のリスクは有るけど『降魔化身法』を使用してちょっと強化状態で攻撃を受けて、自分の一手の足掛かりにしようかな。
ボス側の弐の太刀までの隙が生まれればラッキーだけど…それに頼らずにこちらも全力で削り切るつもりで相対する覚悟で行かないとね。
得物は拷問具『荊野鎖』をチョイスして【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使いつつ【傷口をえぐる】【生命力吸収】の合わせで間を置かないダメージを与えたいね。

アドリブ連帯歓迎



●悪夢と踊るには手が足りない
 怨嗟が重なり波となる。巻き上げられた砂礫が肌を差す。熱のひとつも残っていない妖精の手が呼び寄せるのは、世界が変わろうとも塗り替えられはしなかった、彼女が知る中でも最上の暴虐と絶望の記憶。外海に広がる嵐そのもののような、存在自体が暴力の象徴。巨大な翼を広げて、現れたドラゴンが咆哮する。

「爪よ、牙よ、わたしたちの敵を裂け!」
「そうよ、こんなものから、逃げられるわけないじゃない、抗えるわけないじゃない!」

 悲痛、悲嘆の声が聞こえる。暴力に酔った陶酔の声が聞こえる。自分がそうだったように成す術もなく、強大な力に振り回されるしかないことを痛感せよと叩きつけられる竜の爪が言っている。
 重い一撃を蔓薔薇の様な棘が並んだ拷問具『荊野鎖』で防いで、政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)はビリビリと骨に響く衝撃に苦い顔。こんな砂浜にドラゴンだなんて冗談にも程がある、しかも砂の上で不安定なこと、この上ない!

「もし、貴方が恨みを晴らすためでなく悦に入るために人達を手にかけているのなら、って思ったんだけどね」

 同じ人に不安を与えた咎を清算させるのでも、相手が一方的な加害者と報復に走った被害者とでは気合いの入れようも多少違ってこよう。けれどあそこまで錯乱して混乱しているのなら、これ以上の被害を出すまえに止めてあげたほうが彼女にとっても幸いなのではないだろうか。もうひとつ幸いなことに、一瞬の隙を突くのは忍者の得意分野だ。朱鞠はふわりと金色輝く尾を揺らし、砂に足が沈みこむ前に跳躍疾駆、壁とならんとする邪竜の咆哮に追われながらも身を翻し、竜の爪が届く範囲から逃れてニュンフェへと接近する。まずは一手と、朱鞠の手で素早く振られた鎖がニュンフェに向かって伸びていく。蒼白の顔で両目を見開いて、とてもとても悲劇的な顔をした彼女は与えられる痛みを想像して、恐怖に染まった声で叫んだ。

「ヤ、ぃ、や。嫌、嫌よこないで来ないで来ないでえぇぇぇ!!!」

 怖い。鞭が飛んでくる。痛い。手が伸ばされる。ニュンフェを何度も苛んだ、悪夢がまた現れる。
 ガキン、と。朱鞠の荊鎖が掴まれる。掴んだ手は猟兵のものではない、妖精のものでもない。
 ニュンフェの足を浸す薄暗い泥濘から、欲望塗れの薄汚れた手が伸ばされる。手、手、手、空気を掴む手、泥を掻きわけ這い上がる手、手、徐々に腕から肩、頭が見えて、体までそのままずるりと泥濘から吐き出されて、手、手が。いくつもの手が、命無き者の手が、猟兵をニュンフェごと、捕まえようと伸びてくる。

「残念、そういうのはね、お断りよっ」

 叩き落とせた腕は幾本か。腕を無くしてもまだ朱鞠へ近付かんとしている屍たちからは、深く澱んだ暗い海の匂いが一層と濃く感じられた。もう一度、朱鞠が鎖を放てば棘が彼らの残った僅かな命を削り消滅させる。魂だけになっても、彼ら海賊の強欲さは薄れずむしろ魂の芯までこびりついているらしい。泥濘の中から拾い上げた剣に鎖を手にした彼らの顔は揃って自分達の宝物に手を出した盗人への怒りで歪んでいて、こっち相手のほうがよっぽどやる気も出そうね、と朱鞠の頭の隅に浮かんだ思考は戦いの最中ですぐに消えていった。

「我が魂魄の欠片よ目覚め…力を行使し見聞きせよ…急急如律令!」

 朱鞠は『忍法・繰り飯綱』で子狐にも似た分霊たちを召喚する。わらわらと寄せ集められた亡霊すべてを相手にしていてもこちらの消耗が早まるだけ。最短で迫って削り切る、せめて召喚の大元を封じる。文字通りの肉壁となっている亡霊を通り抜けんと、五感通じる子狐たちを空へと放つ。亡霊たちの意識はすべて朱鞠に向いている、遠目に見てもヤバイものが付与されている剣と鎖の隙間を抜けていくのはやや、かなり、難が多そうではあるけれど。

「私を舐めないでよね?」

 赤い瞳は輝いて、下唇を一瞬舐める。生命力溢れる彼女の身体、その一箇所だってあんな奴らに触れさせるようなヤワな忍者でも女でもない。息を短く、吸って吐いて、己の感覚研ぎ澄まし、朱鞠は本命へ向かって駆けていく。
 途端、ウオウヴヴヴ! と殺到する亡霊の手を鎖が遮り、棘が引き裂く。朱鞠は上空に潜ませた子狐の視覚を借りて背後からの斬撃を避け、回転しながら鎖で反撃、彼らを間合いの外へと弾く。彼女の速度に対応できないでいた亡霊の一体を鎖で引いて駒回しの要領で背後へと……そして己はその勢いで、より前へ!

 時間にして三分もかからず、ニュンフェの防ぐよりも速く、荊野鎖が彼女の身体を傷つける。
 鋭く、深く、抜けない棘はニュンフェの命を徐々に奪っていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニケ・ブレジニィ(サポート)
技能を、フル活用します。

仲間を守りつつサポートし、敵を倒すという戦闘スタイルです。

また、このシナリオ内で戦闘不能になったオブリビオンの肉体と魂を、ユーベルコードの『桜の癒やし』で鎮め、転生できるように祈ります。

「…もう鎮まりたまえ、あなたの名を忘れないように私は憶えておいてあげるから…」

リプレイのために、このキャラクターを自由に扱っていただいて、全く問題ありません。


ナギ・ヌドゥー(サポート)
普段はなるべく穏やかで優し気な感じで話してます。
……そう意識しておかないと自分を抑えきれなくなりそうなので。
それでも戦闘が激しくなると凶悪な自分が出てしまいますね。
オブリビオン相手なら最初から素で対峙し、手段を選ばず殺しにいきますよ。

探索行動の時は第六感などの知覚に頼る事が多いです。

日常的な行動は、寛ぐ事に慣れてないから浮いた存在になるかもしれません……

武器は遠距離ではサイコパーム、近距離では歪な怨刃、
痛みや恐怖を与える時はソウルトーチャーを使います。

己は所詮、血に飢えた殺人鬼……
それでも最後の理性を保つ為に良き猟兵を演じなければ、とも思っています。
どうぞ自由に使ってください。



◯救いを届けに花が咲く
 絶望の記憶は過去の痛みをより大きく増幅させる。海賊たちによって不当に扱われた妖精の少女が抱え続けていた怨恨は、彼女の想像を超えるほどの質量を持った邪竜になって生み出される。
 泥濘のニュンフェと呼ばれた少女にはもう自身の力を制御することは出来ない。秘宝の力はそれほどに強く彼女の心を歪ませて、海賊への復讐を叫ばせる。例え相手が枷から解き放ってくれた恩ある相手だとしても、見知らぬ介入者である猟兵たちだとしても、ニュンフェには全てが敵に見えているし、敵だと信じている。

「見ないで、来ないで、……ぜんぶっ、消えなさい!!」

 ニュンフェの輝きを失った翅がぎこちなく開かれて、彼女の足元に泥のような闇が広がっていった。
 ぶくぶくと泡立つ暗闇から伸びる白骨の腕が動くものの足を引かんと蠢いて、続く巨大な邪竜の尾が、場を一掃するように白骨の亡霊ごと猟兵たちを薙ぎ払い、敵も味方も無く巻き込んで押し潰そうとする。

「オレじゃない――消えるのはオマエだ!」

 ナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)もまた迫る脅威に動いた猟兵の一人、己の足を掴もうと伸ばされた腕を歪な怨刃で振り払えば鋸めいた鉈は骨を呆気なく砕いて吹き飛ばす。眼前で弾ける赤い血肉と枯れた骨片の砕ける音をただ聞くことは、どちらが彼にとってはマシなのだろう。銀の瞳のその奥で、宙に散らばる血肉の色を求めてしまいそうになる凶悪な己をぐっと押し留め、ナギは理性で刃を振るい、邪竜の尾により致命的な一撃を食らわないよう立ち回る。

「亡霊の攻撃は囮、本命はあの竜、といったところか」

 ぐちゃりとぬかるむ足元は、目の前で叫ぶ妖精の少女の心模様を表しているようで、単純な黒とも言えないその色は悲しみ、痛みと絶望を混ぜたかのような混沌具合。遠距離からサイコパームでニュンフェ本人を狙っても、彼女の纏う呪詛が壁となり効果は薄い。より近距離からの鋭い一撃か、あの呪詛自体を祓わなければ届かない。
 この戦闘そのものがニュンフェにとっても負担であるのは時間を経過するほどに苦しむ彼女の様子からも明らかだったが、かといってそう楽にこちらの攻撃を通してくれる筈も無い。むしろ深く傷つく程にニュンフェの操る呪いは強くなっている。苦しみから逃れられずもがいているようだとも、ナギは感じた。
 戦場の後方に立つニケ・ブレジニィ(桜の精の王子様・f34154)の感じた想いはより強く、泥濘のニュンフェの叫びを涙を、出来得るならば癒したいと彼女は願う。
 嵐のようにごうごうと荒ぶる少女の心の内を、ニケではすべて理解してあげられなくとも。寄り添い慰め、せめて今世での痛みを和らげてあげたいと、桜の精は亡霊の波に耐えながら一心にニュンフェをその緑色の目で見つめる。

「…もう鎮まりたまえ、あなたの名を忘れないように私は憶えておいてあげるから…」

 手を組み祈れば、ニケの身体を桜色の光が包んでいく。そして戦場を吹き抜ける春の風。桜吹雪が敵も味方も、戦場に立つ者すべての動きを一瞬止めて、傷を癒す。彼女の慈愛が形になったその技は、味方にとっても敵にとっても、慈悲である。
 動きを止めた亡霊たちの痛みが消える、意識が途絶える、そして二度と目覚めることは無い。眠れる彼らの命を奪う白き処刑人が今この戦場にいるからだ。
 桜吹雪が通り過ぎ、春眠を覚えた亡霊も邪竜も、喰らい尽くすナギの牙。【オーバードース・トランス】で無理矢理に覚醒させた彼の鉈と呪獣が、命を癒す暇も与えず終わらせていく。
 亡霊は既に死んだ者達だ。けれどニケは彼らの魂もまた救われるようにと思わずにいられない。死んでなお、呪いと共にあるべきだなんて者はいないはずなのだから。より広く、より遠くへと桜の花びらが届くようにとニケは深く祈るのだった。
 ナギは走る。速く、速く、より速く。桜吹雪が誘う眠気も置き去りにして。回復するよりも尚速く、己の寿命を削って。
 浮かびあがる血管、胸の鼓動が速くて痛い。頭の奥が真っ白で、喉が渇いて堪らない。
「加速しろ――限界を超えて!」

 亡霊と邪竜の壁を駆け抜けて、彼は本命へと到達する。戦場の最奥にまで広がった桜吹雪はニュンフェの傷も確かに癒そうとしてくれているのだが、それでも彼女もまた、削られていく命のほうが多かった。眠りに引き摺られ動けないニュンフェの胸へとナギは確かに狙いを定める。

「……っ、く、ぅ……」
「眠れ。そして二度とは目覚めるな」

 深々と刺さる鉈の刃、引かれて飛び散る命の色が、泥濘を赤く染めていく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

バッカニア・マグナ
アド◎

【鮫風】

あー、妖精の嬢ちゃんは、わしら海賊のせいで帰れなかったって怒っとるんか?

……そいつは、すまなかった。

だがそれが今ここで、倒さねえ理由にはならんのよ
いやーー!わしの船に来とればなぁ!こんな事にはなっとらんかったかもしれんのになぁ!
すまねぇ!海賊ってやつは、どいつもこいつも糞野郎だな!!

ダゥ!ウェイアンカー!
鮫ってのは、海の方が泳ぎやすいだろ!
下の海賊達には悪いが、ちぃと津波を呼ばせてもらうぜ!
これなら嬢ちゃんが呼んだバカ共も一緒に押し流せるしな!

……へ?わし?
あっ!?今船無ぇな!?
あーーっ鮫!鮫ちょっと背中貸してくれ!!

泥も怨みも後悔も、ぜーーんぶ流しちまえよ、妖精の嬢ちゃん。
海はどうしようもなく理不尽で、嫌になるほど優しいんだ。


有海・乃々香
アド◎

【鮫風】

もしかして
ようせいさんも『まいご』なの?
なんとなくだけど

なかま
むかつくの?
くるしいの?
聞きたくもないの?

じゃあ
『ともだち』はだめ?
まいごともだち
ののかもそうだから

行こう、サメさんたち
おじーちゃんが道をつくってくれるよ
やっぱり、海の方がはだに合うでしょ?
ああ、あと、おじーちゃんも乗せてあげて

ドラゴンなんかより、サメさんたちの方がずっと強いって、ののか知ってるもの

きっとねぇ、ののか
なんにも覚えてないけれど
抱えたもののなかに、そんな感情がひとつやふたつ増えたところで
あまり変わらない気がするのよ

だから
むかつくのも、くるしいのも
全部ののかが連れてってあげる
あなたは、好きなところへ帰ればいい



●海と空とはあんなに遠い
 剥がれ落ちていく、零れ落ちていく。強大な秘宝の力を制御するには彼女の身体は小さくて、心に沈めた憎悪は大きすぎる。不均衡な中身はヒビ割れた箱に滲んで腐らせていくだけで、決して補強はしてくれなかった。
 傾くか、傾かないか。運命は単純で、そして過去は変えられない。ニュンフェが泥濘に堕ちたのは誰のせいでもないけれど。

「あえて言うなら、俺達の――海賊のせいだったのかね」
 海に落ちてこなければ、海賊と関わらなければ。妖精の少女はああも傷つくことは無かっただろう。

「だがそれが今ここで、倒さねえ理由にはならんのよ、いやーー!わしの船に来とればなぁ!こんな事にはなっとらんかったかもしれんのになぁ!」
 バッカニアの言葉にニュンフェは無言だった。もしかしたらもう言い返すよりも睨みつけて威嚇するだけの力しか残っていないのかもしれないが、それでも海賊への色濃い憎悪は未だに彼女の中にある。
 
「すまねぇ!海賊ってやつは、どいつもこいつも糞野郎だな!!」
 どうせどいつもこいつも海の上でくたばるのが運命の、言っちまえばロクデナシ、やりたいように笑って生きて後ろの海は振り返りやしないのが俺達なので、どっかの海にはこんなこともあったろうよと、海賊爺は頷いた。
 だけど小さなこのお嬢ちゃんは、海賊じゃねえこの子どもは、浮かぶ思いもまた別なのだろう。
 乃々香は自分を乗っけてくれる鮫さんの背ビレに身を預け、うーんと考えてみる。
「もしかして、ようせいさんも『まいご』なの?」

 帰り道が分からなくて、それでもこの広い海のどこか、帰る場所を探して。でも、仲間はイヤで。くるしくて、むかついて、聞きたくないってなっちゃうの、それっていったい、なんだろう。ニュンフェの慟哭、込められた気持ちのぜんぶは乃々香には分からなくてもね。彼女にとってはダメなんだ、ってことはわかったよ。それじゃあ、と乃々香は手を上へ挙げてニュンフェへ話しかける。
 
「じゃあ『ともだち』はだめ?」
「まいごともだち。ののかもそうだから!」

 じっと。じぃっと見つめられている。乃々香の言葉の真意を探るように、割れる寸前の硝子玉みたいな彼女の目が乃々香を見つめて、けれどやっぱり返事は一言も。ぎちぎちと音を立てて立ち上がろうとする邪竜が彼女からの答えだった。そっかあ、乃々香は頷いて友だちを呼ぶ。ドラゴンなんかより、サメさんたちの方がずっと強いって、ののか知ってるもの!

「行こう、サメさんたち。おじーちゃんが道をつくってくれるよ、やっぱり、海の方がはだに合うでしょ?」
「……へ?わし?」

 唐突に自分へ向いた視線に驚いたのはバッカニア。お任せあれと胸を張れど。
「あっ!?今船無ぇな!? あーーっ鮫!鮫ちょっと背中貸してくれ!!」
 騒々しくって締まらないんだなあ、だけどこれもまた海の男ってヤツなのさ。でもって可愛い子に頼られて、それじゃあ全力見せてやろうってのも、海の男だ、思って当然!
 ごうごうと遠くから押し寄せる波の音がバッカニアの耳に届く。浜辺でまだ戦ってるだろう海賊には少し悪いが、いきなりの大波には嵐の海で慣れてるだろう。あいつらがあの死に損ないのバカ共と一緒に流されるんならそれまでよ!

「ってぇワケだ! ダゥ!ウェイアンカー!」

 鮫の背中に身を預け、記憶も居場所もふわふわと空白だらけの少女は、両手をニュンフェへと差し伸べる。そしてそっと、こぼれないよう、ちいさな手ですくうようにぎゅっと握って胸へと掌を押し当てる。
 きっとねぇ、ののか、なんにも覚えてないけれど。抱えたもののなかに、そんな感情がひとつやふたつ増えたところで、あまり変わらない気がするのよ?

「だから」

 一瞬、乃々香とニュンフェの目が合った。曇って傷だらけの硝子玉の中に小さな、ちいさな灯りが見えて、誰かがごめんねと囁くような声が聞こえたような。だから、乃々香も笑ってみせた。隣で笑うあのおじーちゃんみたいにね。

「むかつくのも、くるしいのも、全部ののかが連れてってあげる。あなたは、好きなところへ帰ればいい」
「泥も怨みも後悔も、ぜーーんぶ流しちまえよ、妖精の嬢ちゃん。海はどうしようもなく理不尽で、嫌になるほど優しいんだ」

 さあ、波が来る。すべてを流して道を開く、大海へと全てを還す波が来る。誰にも抵抗を許さない大勢力。バッカニアの轟く【海の歌】に導かれ、乃之香と鮫を乗せた【凶悪海域】が広がっていく。
 空から海へ落ちたニュンフェにもう逃げる場所は無い。彼女の体ごと、泥濘は波にさらわれて大いなる海の底へと叩き返される。折角重石にしていた憎しみも、乃々香の手が攫っていってしまう。
 元から軽い軽いニュンフェの体からは何もかもが流されて、最後にひとつ、残ってしまった小さな妖精の心もようやく、やっと、何もかもから解放される。



 そして、砂浜にはふたり。
 小さくて横たわる影がひとつと、傍に膝をついた紅色ひとつ。

「ニュンフェ。……頑張ったよ、お前は」
「ううん、だめだった。やっと飛べると思ったのに」

 ぼろぼろになった妖精の手が空へと伸びようとしたが、彼女はもう片手をあげることも出来ない。力は全て失われ、後はただ消えていくのを待つだけだ。だから妖精は、視線で彼へと願う。

「お宝。勝手に取って」
「ン、……ありがとうな、ニュンフェ」

 妖精の手首に装着された金の腕輪。人間の手に渡れば指輪サイズの小さな金環。彼らが見つけた彼女の為の秘宝を取ればそれが最後。これで妖精の存在を繋ぎ止める全ての力は無くなった。ちいさな彼女は雲一つない空を見上げて、太陽にわらって、光となって消えていく。

「あーあ、奪われちゃった」

 最後に一言こぼれたら、それでおしまい。遠い空から落ちてきた妖精はようやく、ようやく、空へと帰れたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『飛んでみよう!鳥人オリンピック』

POW   :    両手を羽ばたかせ飛距離を稼ぐ

SPD   :    足をバタつかせ宙を蹴って飛距離を伸ばす

WIZ   :    風など自然の力を利用して飛距離を伸ばす

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●君に贈る黄金の冠
 呪いは涙と共に消え、ようやくの平穏がこの島にも訪れる。
 ニュンフェを見送った海賊団は次なる島へとすぐにも立つのだと、既に出航の準備を始めていた。
 紅い海賊帽のキャプテンは猟兵たちの姿を認めて陽気に話しかけてくる。

「ヨッ、世話になったなァ!」

 不甲斐無い所ばっか見せちまったみてェで申し訳ねェや、と帽子を目深に被って感謝の言葉を告げる船長。あのままでは海賊たちも妖精の少女も破滅の未来しかなかった。猟兵たちのお陰で次のお宝を探しにいけると感謝しているようだ。

「宝探しはやめるかよォ、さっきまで散々見た通り、死んだって宝に執着するのが海賊ってヤツなんだぜ」
「……だからと言って、仲間無くしてサッサと次へなんて切り替えられネェのも確かだからさ」

 頼みがあると男は言った。島の中央、丘陵部の麦畑。『大海に輝く黄金の麦穂島』なんて大層な名前の由来になったあの丘で、ちょっとした遊びに付き合ってくれ、と。

「やることなんざ単純さァ。上にでっけぇ大砲持ってくからよ。一緒に打ち上げられてくれ、ナ!」

 いかにも海賊らしく豪放磊落、陽気に笑って、海の男は金の指輪を引っ掛けた親指で真っ青の天を指差した。

*説明ターン
 キャノンで飛ぼうぜ!黄金の海(麦畑)。
・自分を信じて大砲でドッカーン!がすべてです。細かいことは考えずにエンジョイ!
・着地は麦畑を信じてください、ここは魔法の麦畑なので耐久性だの重力だのは忘れてください。
キャッチャー・イン・ザ・麦畑、お相手がいたら受け止めてもらうのも良いと思います。それでは善き飛行を!
バッカニア・マグナ
アド◎

【鮫風】

さて、妖精の嬢ちゃんが無事旅だつのを見送ったじじいとしては、サメの嬢ちゃんがどうしたって気にかかるのだ。この嬢ちゃんは、あの嬢ちゃんの様にはならないか、と。

妖精の嬢ちゃんに言った船に来ていれば、は戯言じゃない。
少なくとも自分にそのつもりは一切無い。

自由に楽しく夢を追う南風の一人に誘うのは、ただの迷惑にならないだろうか。

そんな事を考えていればいつの間にか砲身にINしており

ドーーーン!!と馬鹿でかい音と共に自身が空へと打ち上がる。
声を上げながら空へと上がる。
「……ははっ!!うはははははは!!!」
一番上、自然とそう笑いが飛んだ。

眼下に広がる青、青、青!何を小さな事で悩んでいたのか!この広い広い空と海で!
Year!Do!Weigh Anchor!!

先ずは行動あるのみだろうが!

着地
空へ飛ぶ桃色が見えたら、キャッチ出来るか試してみよう。
そんで、聞いてみるしかねぇやな

「おい嬢ちゃん。帰るところはあるのか?サメ以外に友達とか、保護者とかおらんのか?」


有海・乃々香
アド◎

【鮫風】
サメさんに乗ってとんだことはあるけど、打ち上げられるのははじめて
サメさんはさすがに、いっしょには入れないかな
大きいもんねぇ

だから、今日はののかだけで空をとぶの
サメさんはおるすばん!

轟音と共に打ち上がる。打ち上げられる
青い空がきれい
眼下には麦穂の金と海の青
――既視感を覚える光景。あの時は、この黄金は無かったけれど

うん、ひとりで空をとぶのははじめてね
落ちるのは、2度目だけど

あの時はどうしたんだっけ、そのまま海に落ちたんだっけ
朧気な記憶を辿っていたら、誰かに受け止められた

……おじーちゃん?

受け止められたことには礼を告げ
投げかけられた問いには、小首を傾げて
……さぁて、なんと答えようか


プリシラ・アプリコット
金色に輝く大海原(麦穂の中)で。
大砲の砲弾に成り切って。

飛ぶのね。
あ・た・し。飛ぶのネ~♪(何故か歌う)

なんだかどこかで見たような光景だけど。気にしないワ!
いそいそと大砲に詰め込まれ。
お尻に中華鍋敷いて、背筋伸ばして座り。
いざ武蔵坂、じゃなくて、大海に輝く黄金の麦穂島の大空へ!

せっかくだから、グッドでナイスなブレイヴァーを召喚するわネ♪
ハぁ~い、みなさん見てる~?(カメラ目線)
ミカ……プリシラちゃん、飛びますヨ~♪

ヒャッハー!(どーん)
小麦色の髪を靡かせ~、女神舞い降る大麦原~♪
(大の字でくるくると凧のように回る)
ひゃああ~~~♪
ダイジョウブ、今のあたいはバーチャル! イタクナイもんネ!



●黄金の海へと飛んでいく
 ドカンと一発、轟音響く黄金の丘。海賊たちがえっちらおっちら運んできた巨大な大砲の黒く鈍い砲身はまっすぐ空へ向いている。誰も何も言わないで、ただ砲煙が風に流されるのを海賊たちは見上げて送る。
 ズビズビと湿っぽい音を立てる砲弾を運びながらも、彼らの大半が笑いながら言葉を交わして湿っぽい空気はどこにもない。よっこいせぇの、でテキパキと動き出した海賊たち。樽に入れられ砲弾志願者そのイチとなった下っ端海賊が既に涙で潤みきった小動物のような目をしてドクロマークの付いた大砲へわっせわっせと運ばれていく。大砲の横に立つ老いた観測手すらも運ばれてきた海賊の尻を文字通り蹴とばして、大砲の中へ追い立てていた。
 ほれほれ火薬まで湿気るだろ覚悟決めんか若いのが、ダメですぜ爺さんこいつあの子にちょっとコレだったから、ホォ、そンじゃあ三倍くらいで飛ばしてやろうか。涙をこらえて喋ることすらままならない若人はあれよあれよと砲の中。

「前方ヨォーシ、着火確認ー、ヨーソロー!」
「ウワーン俺やっぱり無、りああああああああああ!!!!!!!!!!」

 どかーんとか、ばごーんとか、とんでもない音がして、悲鳴と一緒に白い煙が薄くうすーく流れていって、やがて消えるのを見届けたなら、感傷的な時間ははい、ここでおしまいです!

 真っ黄色に実った麦の穂がさらさらさらと風に吹かれて流れる様はとても長閑で牧歌的、とはこんな風景を言うのだろう。さっきからあっちこちに海賊が逆さまになって刺さってるのも前衛的なカカシと思えばまま、ご愛敬?
 プリシラ・アプリコット(奥様は聖者・f35663)もこんな風景を楽しまんとする一人。
 金色ふわふわした耳がぴこーんと立って愛らしく。歌まで歌ってご機嫌満天、お天道様もにっこりです。

「飛ぶのね。あ・た・し。飛ぶのネ~♪」

 似たような光景をどっかで見たような、気のせいかしら、きっとそう!もしかしたらこれがデジャビュってやつかしらアラそれってなんだかお得感!ワクワクしながら大砲に詰め込まれ、うんうんと一人頷くプリシラさん。セットされた中華鍋へ自分もセット!で、準備は万端バッチコーイ!

「いざ武蔵坂、じゃなくて、大海に輝く黄金の麦穂島の大空へ!」

 そこではっと気付いたプリシラちゃん、宙へ向かってウィンクぱちり、指パッチン。グッドでナイスなブレイヴァ~こと、撮影用ドローンを呼び出してカメラ目線でわん・つー・すりー、キュー!

「ハぁ~い、みなさん見てる~? ミカ……プリシラちゃん、飛びますヨ~♪」

 カメラの向こうに手を振って、後方の着火役にも合図を送る。ドキドキの一瞬、中華鍋ごと彼女の小さな体を揺るがす衝撃。ふわっとなんて生易しい、後ろから来る爆風は彼女を大空へとテイクオフ!
 ヒャッハー!とぐるぐるぐるぐる、プリシラは小麦色の髪も尻尾も靡かせながら両手足を目いっぱい広げて凧のように飛んでいく。まるででっかい麦わら帽子が飛んでいくようだったとは目撃していた海賊の談。

「ひゃああ~~~♪」

 ひゅーーん、と飛んでいけばいつかは地面へ到着するもの、こんなにぐーるぐると回っていたら目も回って降りられないって思うかもしれない、そこの君。安心しましょう、なんたって彼女はバーチャル・エネルギッシュ・オクサマです。くるくるしゅぴーん、スタッと着地も決めて百点満点……ウソ、ほんとはゴロゴロと麦畑を転がって麦と一体になっておりました。でも大丈夫なんですよ、バーチャルだからね!

「イタクナーイ!」

 痛くはなかった、けどちょっとこそばいかもしれない?
 麦の穂をあちこち付けたまま、ご満悦でにっこり笑うプリシラ奥様なのでした。

●キャッチ・ミー、フレンド!
 きゃあきゃあと大砲でバッカンバッカン打ち上げられていく海賊たちの声が聞こえる丘の上。バッカニア・マグナはまだ少し、妖精の少女のことを思っている。あの少女が自分の船に来ていれば。真実、彼は彼女の為に何かをしていただろう、と自信を持って今も言える。だが、ただ、いつかどこかへ帰りたいと願っていたあのこを、自由に楽しく夢を追う南風の一人に誘うのは、ただの迷惑にならないだろうか。
 散々と海を荒らしても、他人の心には慎重になってしまう。そういうことを考えてしまうくらいには、彼は海も人も知っているから、彼にとってはやや難解で、ついつい迷ってしまった。
 迷ってしまったから、周囲への意識も疎かになるのだ、バッカニア。

「ムーーーー……はれェ?!」

 気付いたがもう遅い。彼の身体はとっくに砲身へと収められている!
 バッカニアを見てニヤニヤと笑う船長の顔が砲撃音と共にすぐ後方へと流れていくのをこのヤロウ!と思わずもいられなかったが、もうそんな余裕は無い。打ち上げられた空への道。風がぐんぐんと彼を空へ連れていく。
「……ははっ!!うはははははは!!!」

 眼下に広がる青、青、青!何を小さな事で悩んでいたのか!この広い広い空と海で!
 そうだろうバッカニア。海の男が何を迷うよ、どこへ迷うよ。この海でコンパス狂って舵取り迷った船の終着点なぞ決まっているじゃないか、なあ!

「Year!Do!Weigh Anchor!!」

 腕を振り上げ、高々と声を上げ。すっきりとした顔で、今度はぐんぐんと近付いて来る地表を見つめる。不思議なくらい抵抗の無い麦畑に包まれて、彼は遠くの空に見覚えのある桃色を見つけたのだった。

 さて時間は少し前後する。
 大砲で打ち上げられる列に並んだ有海・乃々香は楽しそうにサメと耳打ち、内緒話。サメの耳ってどこなのって話はまあ少しだけ置いておいてね、内緒話だ。流石の乃々香も大砲に入って打ち上げられるのは初めてだったので、好奇心できらきらと目を輝かせている。

「サメさんはさすがに、いっしょには入れないかな? 大きいもんねぇ」

 真っ黒な砲身はサメさんが頑張れたら頑張れそうだけど、今度は乃々香が入らないかもしれない。なので、仕方ないねと顔を見合わせて、乃々香はちょっと大人になって、サメさんはお留守番となったのだった。
 どきどきしながら、砲身へ入る。海賊たちは彼女の幼さに思うところあったのか、テーマパークの案内人かのように揃ってカウントダウンなどしてくれる。にこやか朗らかフレンドリー、ここ数年は見れないレアな光景であったとか。
 まっすぐに上を向く砲身。丸い穴から見える青。どーん、と大きな大きな音がして背中を押されたように飛び出す。

「青い、そら。きれい――」

 空を、飛んでいる。乃々香の眼下に広がる麦穂の金と海の青。よく知っている、見たことがある。でもあの時は、この黄金は無かったけれど。ぐんぐんと見える範囲が広くなって、乃々香の目に黄金色が飛び込んでくる。

「やっぱり、空をとぶのははじめてね」

 サメさんがいない、だけで心もとないこの両手。伸ばして見たら鳥さんみたい?ああ、でもこのままだと。
 だんだんスピードが落ちていく。あんなに背中を押していた手が離れたみたいにするっと風が足元を通り抜けてって、乃々香のからだは下を向く。これ、知ってる。二回目だ。
 鳥さんの時間はもうおしまいと言わんばかりにぐんぐんと落ちていく。前はどうしたんだっけ、忘れちゃったな、そもそも覚えていたっけな?ちいさな彼女の記憶はおぼろげだったから、とにかく落ちてみようかなって……そのつもりだったのに。
 麦畑に落ちるつもりの体は乃々香の思ったよりも高いところで停止して、乃々香の想像していたよりも硬くてかさかさしてる麦穂が彼女を包む。ううん、麦穂にしてはあったかい、じゃなくって――。

「おい嬢ちゃん。帰るところはあるのか?サメ以外に友達とか、保護者とかおらんのか?」
「……おじーちゃん? ええと、ありがとう、でいいよね」

 さっきまで一緒に戦っていたおじいちゃん。どうして私を受け止めたのかな。乃々香は小さく首を傾げてどうしようかな、と考える。……さぁて、なんと答えようか。

 遠い遠い海のお話。
 青い青い海のお話。
 ここからはじまる、誰かのお話。

 知っているのは、金色輝く麦穂だけなの。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



 海賊船は出航し、猟兵たちも『大海に輝く黄金の麦穂島』を後にする。
 いつかまたここへ訪れるかもしれないし。二度とここへは来ないかもしれない。
 風任せのそんな彼らを丘の上から麦穂が見送る。
 
 ゆれる、ゆれる、君に手を振る、麦の穂が。
 告げる、告げる、君へと感謝の言の葉を。
 この海で出会ってくれて、助けてくれてありがとう。
 それではいつかまたここで。君と会える日を待っています。

最終結果:成功

完成日:2021年12月19日


挿絵イラスト