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完熟甘果ロットン・アップル

#ダークセイヴァー #人類砦 #闇の救済者

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●とろけてあまい
 ――おいしい、おいしい。私のための果実、こんなにたくさん実ったのね。
 ――うれしい、うれしい。私がちゃあんと食べてあげる。ひとつ残らず。

 私はマーシャ、どこにでもいるヴァンパイアの女の子。美味しいものが大好き、特に『甘いもの』に目がないの。でもね、この世界はとっても貧しいから、あまり好物にはありつけない。かといって、適当なものを食べるなんて真っ平御免!
 そこで私は考えたわ。お砂糖よりもヘルシーで、甘くて美味しいもの……果糖があるじゃないって! どろりと流れるは糖度のしるし。真っ赤な色合いは新鮮さのしるし!
 都合よく勝手に『果樹園』がぽこぽこと生えはじめている。実りの季節なのかしら。嗚呼、なんて美味しいの。これだから『狩り』はやめられない。ええ、知っているわ、獲物たる彼らも同じことをしているものね。であれば、主たる私が同じ事をしても、なんの不思議もないわよね。
 邪魔な部位は捥ぎ取って、大事な部分だけを頂きましょう。一等上等なものを探して、今日も私はもぎもぎ、ひとつひとつ大事に刈り取る。響く悲鳴は最高のソース。でも、うるさすぎる外野は耳障りね。次の狙いを定めて、今度は威勢のいいものから捥ぎましょうか。溢れ出る果汁は心躍る甘さに違いない。
 ああ、かみさま。今日も美味しい果実を下さってありがとう! 心から感謝します。邪魔な肉塊も、魂も、あなたのもとに送りますから……首から上のとっておきだけは、私に下さいね?
 ――シャクっと齧った果実は、苦悶の表情を浮かべ透明な筋を頬に残していた。先ほど狩ったばかりの、前から目をつけていた期待の果実である。その甘さといったら格別で……マーシャは恍惚の笑みを浮かべ汁を啜り、齧った実を紅茶と共に飲み干した。

●希望の果実は実らない?
 ――人類砦。ヴァンパイア達に抑圧されたダークセイヴァーの民が築き上げた、希望の宿る場所。其処は上位者の支配が及ばないはずの人類の活動圏。砦の住人は本来の明るさと持ち前の強靭さ、そして未来への期待と望みを胸に、細々と、しかし確実にその活動の輪を広げ、他の村人の心へも光を挿し込んでいった。
 しかし栄光も長くは続かない。人類砦の噂を耳にしたのは、残忍で凶悪なヴァンパイアの娘。娘は其処を狩場とし、自らを討ちに向かう民を喰らいに訪れた。その様相はまさに『果物狩り』。頭だけを捥ぎ取って、溢れ出る血を啜り、頭部を咀嚼し、余った部位は砦の中へ投げ返す。恋人に送った腕輪、慣れ親しんだ刺青、生まれ付いたアザ……それぞれが持った特徴を色濃く残したまま、愛しい貌だけは二度と見ることが叶わず。真白の神が屍を積み上げ、人々の夢を摘み取る。
「私達に希望はあるのでしょうか」
 誰かが呟いた言葉に、誰も返せなかった。人類の新たな歴史という息吹は、ここで途絶え屈するのか。それを決められるのは、力を持つ者だけ――。

●グリモアベースにて
 眉間に皺をよせた小難しい顔で、斬断・彩萌(殺界パラディーゾ・f03307)は集まった猟兵たちに向き合った。
「集まってくれてありがとう、みんな。今回予知したのはダークセイヴァーの片田舎、少しずつだけど増えてきた人類砦が戦場になる」
 携帯端末から空中に照射した情報によれば、人々が築いた人類砦に真白のオブリビオンが押し寄せてくるという。元は異端の神々であった彼らは、主――今は無き首の所有者――に仕え、熟した民を捉え主のもとまで連れ去るのだとか。
「まず相手にしてもらう奴ら……そうね、便宜上『喰われた神々』とでもしておきましょうか。ナニが食われたか、なんて、そんな悪趣味なことは聞かないでね? そいつらが大量に人類砦に訪れるわ。主たるヴァンパイアが少しでも良いものを狩りとれるように、木っ端は先に掃除しておくくらいの感覚でしょう」
 砦の者たちはそれなりに武装しているものの、オブリビオンの軍勢に勝てる程強くはない。あくまで彼らは力無き民衆なのだ。彼らを救うため、今回の予知では砦の最前線……火矢や投石具、防護壁のある砦で戦うことになる。
「民衆からの援護は期待できないけど、足手まといになることもないわ。あなた達のやれることを、思い切りやっていい。砦の装備も勝手に使っちゃってOKよ」
 手元の端末を操作し、彩萌が次に出したディスプレイに『喰われた神々』の攻撃手段等の詳細が表示される。植物を操り、金属を錆びさせ、時に頭があった頃……即ち神の力を存分に発揮できていた頃の全盛期にまで力を呼び起こす異能。戦い方は猟兵各々に任せるが、相手の攻撃手段も十分に知ってしておいた方がいいだろう。なにせ一対一で戦えるとは限らない。囲まれても対処できるよう、心構えはしておくべきだ。
「首無しのカミサマどもをやっつけたら、いよいよ本命が姿を現すわ。……名をマーシャ。見た目は可憐な女の子だけど、中身はとっても残虐で残忍。無慈悲なる帝姫。その力は生半可な力では到底勝てない。それどころか、肉体を失う可能性だってある。彼女は『果実』……要するに、頭よね。それ以外には興味ないらしいけど、邪魔だと思ったら即座にその部位を捥ぎ取るくらいのことはするわ。美味しいものを食べる為なら、少しくらいの手間はなんとも思わないみたい」
 これより先、向かう猟兵は全て彼女にとって『熟した果実』なのだ。だからこそ、覚悟のないものを送り出すわけにはいかない。彩萌は文字通り頭を抱えた。
「強敵よ。人によっては今まで戦ってきた誰より強いだろうし、歴戦の猟兵でも絶対に油断できない相手。マーシャは純粋に凶気に満ちている。甘味で心を満たす為に、平気で人を屠る。会話は出来ても、人らしい常識なんてまるで通じないわ」
 出来るのは互いに譲らない信念をぶつけることだけだろう。マーシャは悦を、人々は生を得るために。ぶつかり合う魂はより洗練され、マーシャは喜々として求めるだろうが……それこそが猟兵が入りこめる隙でもある。
「くれぐれも気を付けて、なんて。私に言えるのはこのくらい。覚悟がある者だけ、残って頂戴」
 幾人かの猟兵がグリモアベースを去る。そして残った猟兵たちに向け彩萌は言い放った。
「芽吹き始めた人類砦、守るも朽ちるもあなた達次第。どうか、実らせてあげて」
 祈るように両手を組み、彩萌は強き意思持つ猟兵達を戦場へと送り出した。


まなづる牡丹
 オープニングをご覧いただきありがとうございます。まなづる牡丹です。
 今回の舞台はダークセイヴァーにて、『狩人』のオブリビオンと戦って頂きます。そういえば林檎も薔薇科でしたね。

●第一章
 『喰われた神々』。
 マーシャに頭を喰われ、その思考も思想もすべて奪われた、かつての神の成れの果て。今はマーシャに隷属する手足です。数に物を言わせ、一人に対しても複数で囲い込んでくるでしょう。

●第二章
 『マーシャ』。
 オープニングにある通り、甘いものが大好きな、ヴァンパイアの本能に従うオブリビオンです。人も他のオブリビオンも、自分以外を果実と呼び、一等おいしいところである『頭』を捥ぎ取り他の部位はすてていました。『喰われた神々』は元が神性であるたため利用されていますが、猟兵へは容赦がありません。

●第三章
 星鏡の夜、守られたのか、血塗られたのか……砦で過ごす一夜の物語り。

●特記
 2章において、プレイング最初に🍎マークを記入したキャラクターさまに限り、マーシャとの戦闘で欠損が発生します。指定箇所がございましたらプレイングに記入をお願いします。指示(NG箇所含む)が無い場合、こちらでリプレイに合う部位を選択します。一か所か複数個所かは成功率やプレイングに依存します。
 マーク記載のない方には絶対に欠損ダメージはいきませんのでご安心下さい(通常の時間経過による回復が可能なダメージ描写はありえます)。
 そのような結果であっても判定で不利益は生じません。

●プレイング送信タイミングについて
 各章ごとに断章を執筆します。第一章の受付は9月1日の8時31分以降です。
 2章以降はMSページにてプレイング受付期間を告知いたしますので、お手数ですがご確認お願いします。
 (基本的に断章を投下した次の日よりプレイングを受付致します。申し訳ありませんがそれ以前に送られたプレイングは返金とさせていただきますのでご了承ください)

 それでは、皆様のプレイングお待ちしております!
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第1章 集団戦 『喰われた神々』

POW   :    この世のものでない植物
見えない【無数の蔦】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    名称不明の毒花
自身の装備武器を無数の【金属を錆びつかせる異形】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    異端の一柱
【一瞬だけ能力が全盛期のもの】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ダークセイヴァーの人々が灯した小さな反逆の一歩、人類砦。貧しく儚くとも、其処には希望があり明日があった。ヴァンパイアに怯えるだけでなく、明確な反抗の意思を以て武器を構え、備蓄を肥やしてきたのだ。誰かの言った「なにもやらないよりも意味がある」といった言葉は、誰しもが想っていること。いや、想っていたこと。それを踏み躙るのは、やはり支配者たる者だった。

 ヴァンパイアの娘は、其処を『果樹園』と呼んだ。よぉく熟れた食べ頃の果実――爛々と光る双眸と色付いた頬、ぷっくり膨れた唇に筋の通った鼻――がとても美味しそうだと、若者から、時に熟れすぎた老人たちや青い子供まで、じっくり、ねっとり、舌鼓を打ちながら食す。
 果実たる頭を食べたなら、あとは用済みの残飯。人間が蔕や皮を残すのと同じ。余った部位をお部屋に置いておいても邪魔になるだけと、肉塊は砦の中に投げ返す。それを行うのが、先に相手する白き神々である。
 彼らは元は異端の神であったが、その力と美しいかんばせをいたく気に入った娘によって、文字通り頭から食べられてしまった。結果、娘は神の力を手にし、真白の神は何度降臨しても首から上を失ったままとなる。
 自由意思を無くした白き神を次々に召し、娘は手足として利用する様になる。一人では一度に狩れる量に限度や反撃のリスクもあるが、無尽蔵の手足があるなら話は別。
「丁度良く実入りの良い『果樹園』もあることだし、ゆっくり育ててまったりと味わいましょう。獲物は逃げない、いいえ、逃げられないわ。この私が目をつけたのだもの」
 鈴の鳴るような声音で、娘は新しい果実に手を伸ばす。震える身体、恐怖がより一層味を引き締めてくれるでしょうと、爪を剥ぎ、関節を砕き、喉を引き裂いて、しかし失血で事切れる前に一息に――ぶちっとうてなから果実を捥ぎ取った。
 どさっと倒れる肉塊には目もくれず、じゅるっと啜る果汁の甘いこと。ああ、それは捨てておいて。肥料くらいにはなるでしょう……。

 とある若者がヴァンパイアに連れ去られて数日。砦の上空でナニかを抱えた白き神が旋回し、人々が様子を見に顔をだしたところでナニかを落とし去っていく。人々は悲鳴と落胆の声をあげ、それを回収し、目をそむけたくなるような光景をひとりひとりが確認した。そうして何人かめで、嗚咽が漏れる。
「帰ってきてくれたのね」
 涙を零ししゃくりをあげる乙女の腕には、かつて人だったナニかの腕に嵌った腕輪と全く同じものが飾られていた。

 それから10日前後。周期的にはそろそろ、また白き神々が群れてこの砦にひとを攫いに訪れるだろう。常なら住人が応戦するところだが、今回は少々勝手が違う。
 猟兵という新しい果実が砦に控え、今かとその時を待っている。黄昏時、声もなくただ翼を羽搏かせる音を響かせ、無貌の神々が砦に舞い降りた。
ヴィリヤ・カヤラ
ヴァンパイアって吸血以外に
部位を食べたりするヒトもいるんだね。
父様は吸血しかしてなかったから知らなかったよ。

っと、まずは神様を何とかしないとね。
……使役されてるっぽいから神様って言っていいのか迷うけど。

敵が多数なら月輪を影で実体化させて使っていこうかな。
まず、飛んでる敵は叩き落とさないとね。
【燐火】で出来るだけ落として、
地面に落ちてきたら月輪に食べてもらっちゃおう、
食事にも丁度良いしね。
地面近くまで来た敵も月輪から蔦を伸ばして捕まえちゃうね。
敵からの攻撃は月輪で防ぎつつ、
『第六感』も使って出来るだけ避けるように頑張るね。
動くものを狙ってるなら月輪の蔦を動かして、
私は極力動かないのも良いかな。




 一括りに人間と言っても多様な嗜好があるように、ヴァンパイアにもそれが当てはまる。此度の敵は血を啜る事よりも、甘味を咀嚼することがお好みらしい。
「ヴァンパイアって吸血以外に部位を食べたりするヒトもいるんだね。父様は吸血しかしてなかったから知らなかったよ」
 ヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)がそう言うのも無理はない。一般的なイメージではそうなのだろうから。マーシャは明らかに常軌を逸している。結果として人類の希望を摘み取る形になった。
 表情にこそ出ないが、ヴィリヤは内心どろりとした感情を抱いた。――頭とは、顔とは、人にとってとても大事な部分だから。黄金の瞳がわずかに震え、真白の神々を見つめる。頭を喪ってしまったら、憎くとも、恨めしくとも、悔しくとも、睨み返す事すら出来ない。可哀そうだね、痛くて、苦しかっただろうね。その怨恨、私が晴らしてみようか。
「っと、本命前にまずは神様を何とかしないとね」
 使役されている以上、神様と言っていいのか迷うけれど。立ち止まってはいられない。放っておけばまた砦の住人が攫われてただの肉片になってしまう。此処で食い止めて、吸血鬼をおびき出す!
 羽を舞わせて真白の神が降臨する。その数5体。ヴィリヤ一人になんとも豪勢なこと! しかし、ヴィリヤの影は全てを覆う。UDCである月輪が地を這い、血と影が混じりあったらば、底の見えぬ深淵が広がった。影の中から無数の蔦が、まるで手の様にぐわりと浮遊する神々の脚に絡みつき、胴体に食い込んで、ずるりと宙から引きずり下ろす! すかさず二本の指を合わせ対象に向ければ、燐火――炎を宿した青の刃が、神の翼を切り裂いた!
 悲鳴は聞こえない。声を発する部分を、相手は持ち合わせていないのだ。どんなに苦しくて辛くても、それを誰かに伝える事すら敵わない哀れな元・神さま。
 翼を喪い月輪広がる影へと呑み込まれた真白の神は、絹が墨に染まるようにじっとりと侵食され闇に食まれた。
「神様の味はどうかな?」
 等と、物言わぬ月輪に話しかけるヴィリヤ。その声音はどこか明るく。だって、これは良い事だから。永遠に続くヴァンパイアの使役に、終わりを与えられたのだから……喜ばずしてどうしよう。
 しかし呑み込まれたのは唯の一体。残りの4体の神々はまだヴィリヤの上空をくるくると回り、攻撃のチャンスを窺っている。目もないのにどこで判断しているのか、判断付きかねるが、そちらから来ない以上先手は頂こう! 相手が『動くもの』に反応するなら、自身の行動は極力抑え、影より出でた無数の蔦を縦横無尽に鞭のようにしならせて翻弄する。
 蔦の動きに合わせ真白の神は急降下、蔦を引き千切らんと掴むが、無尽蔵の影闇から這い出る蔦が神を覆いつくす。絡めとられ、身動きがとれなくなったところを締め上げ、ずっぷりと黒に染めていく。蔦から逃れる個体にはヴィリヤが直接燐火を放ち、熱き刃が翼に火をつける。着火、爆発、炎上。ぼろぼろになった翼は飛翔能力を失い潰えるのみ。地に落ちた後も、動き回る蔦に翻弄されていく。
 ――いっそ機械にも似た、反射行動だと思った。首無しの己に恐れ逃げた(うごいた)から捕まえる。捕まえたなら主へと持ち帰る。そのルーチンが恐ろしいまでに人々を追い詰めていったのだと思うと、沸々と沸き起こる気持ち。これは怒り? いいえ、そんな人間らしい感情じゃない。ヴィリヤはダンピールだ。ならば、この感情は――侮蔑。斯様に人々を弄ぶ、ヴァンパイアへの蔑みだ。
「人らしさなんて最初から期待してないけど」
 あんまり酷いと、お仕置きするよ。幸か不幸か、耳のない神々にその声は届かない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セツナ・クラルス
…なんという惨いことを
いや、彼らを憐み、涙を流すだけでは何の解決にもならないね

終わらない悪夢を終わらせるのも私の使命
あなた方に永遠の安らぎを約束しよう
…おいで?

敵のUCの特性である無差別攻撃を有効に活用しようか
自分から離れた位置に配置した、小ぶりの灯火を素早く舞わせて囮としよう
自身の背後にも灯火を侍らせ警戒は怠らない

目立たないように気配を殺しながら敵の背後へ
掌に隠した破魔+毒の力を宿したナイフを敵の急所へ一息に
騙し討ちのようで心は痛むが徒に苦しみを延ばすこともあるまい

ヴァンパイアの傀儡となるのは今日でおしまいだよ
…今まで、よく耐えたね
あなた方の無念は我々がきっと晴らす
だから、安心しておやすみ




 なんという惨いことを。例え異端であろうとも、かつて誰かを救い給うた彼らを、今度は誰も救ってはくれなかった。なんと哀れで、哀しい結末なのか。……なんて、彼らを憐み涙を流すだけでは、何の解決にもならないね。セツナ・クラルス(つみとるもの・f07060)は飛来した黄昏を背負いやってくる真白の神々の黒影を視留めると、ぱたんと聖典を閉じて立ち上った。これから、いやこれまでもか。此処は戦場になる。幸いにして人々の避難は終わっている。敵も味方も、己自身も、思い切り暴れて良いというもの。
「終わらない悪夢を終わらせるのも私の使命。あなた方に永遠の安らぎを約束しよう」
 ……おいで。ヴァンパイアの傀儡となるのは今日でおしまいだよ。その心に灯った静かな炎は、ボゥっと揺らめきながら現実に顕現する。セツナの現在地からやや離れた場所に灯らせた小ぶりの灯火を、素早く舞わせ囮とする。神々には目が無い。もっと言ってしまうなら、『考える頭』がない。だから機械的に、あるいは本能的に、動いているものを獲物として判断する。
 神々はひらりふわりと躍る灯火に狙いを定め、縊り殺そうと掴むが、炎に実態などあるはずもなく、真白の手が焼けるのみ。熱いと感じる機能は残っていても、悲鳴をあげる器官はない。嗚呼、あまりにも酷い。どうせなら全てを喰らってやれば良かったのに! 好き嫌いはいけないよと、誰も教えなかったのか。
「まぁ、好き嫌い以前の問題だけどね、これは」
 背後に灯した火はかすりとも揺れず、ただセツナを照らしている。神々が灯火とステップを踏む中、じわり、そろりと気配を殺し、目立たないよう背を低くして接敵した。間近で見た首無しの神は、美しい造形をしているのが素人目にも分かる。さぞや、そのかんばせも輝いていたのだろう。一度、それを見てみたいと思ったけれど……その時はまた、屹度別の立場で対峙しているのだろうねと、セツナは小さく溜息を零した。
 裾に隠していたナイフを掌に収め、じっと刺殺のチャンスを伺う。そのナイフには闇を切り裂く破魔の毒が仕込まれており、急所に一突きもすれば相手は苦しむ間もなく逝くだろう。どんなに相手が凶悪人であろうとも、はたまた絶望の淵に立つ者であろうとも、善悪の境なく一瞬で。
 灯火を操り、自らを影に忍ばせる。炎に弄ばれた神々が地に伏した瞬間を狙い、セツナは黄昏の煌めきを携えグっと心臓目掛けてナイフを振り下ろした! 刃を引き抜いても血は出ない。死後硬直や血液凝固という言葉が神にも当てはまるのかは謎だが、恐らく赤かったであろう血はもはや黒く固まり、噴き出すことは無い。最早神や人ですらなく、生き物としての枠組みから外れた哀れな存在になり果てた。
「……今まで、よく耐えたね。あなた方の無念は我々がきっと晴らす。だから、安心しておやすみ」
 原初の灯火が神の身を燃やす。最初はぱちぱちと、次第に枯れ木に渡ったかのように炎は縦に伸び風に揺られて砦を照らした。もう狐火は必要ない。屍が呼び水となって次々と神々を誘き寄せる。あとは彼らの心臓を、ひとつひとつ刺していくだけで良い。
 しかし、それはそれで酷く恐ろしくもあった。オブリビオン相手だとしても、こんなに心穏やかに殺せるものかと、自分に震える。気付いた時には、真白の神々はみな篝火のように燃え盛り、セツナを囲んでいた。ああ、ああ。かみさま!
「私は――」
 呟いた言葉は誰にも届かない。でも大丈夫、あなたの心に棲まう神が、友人が、答えを知っているでしょう――。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナギ・ヌドゥー
美味しい所だけ喰らって残りは廃棄……この神々も残飯に過ぎないという事か。
飽食なるヴァンパイアめ、喰い残しは感心せんな。

この呪獣ならそんな贅沢はせん
UC「禍ツ暴喰」にてソウルトーチャーの【リミッター解除】
我が禍つ呪獣よ、動くモノ全てを喰らい尽くせ!【捕食】
この状態のコイツは動くものなら何でも反応し攻撃する
見えない無数の蔦とて動きを感知し引き裂けるのだ
敵より速く動いたらオレすら喰われかねん
奴等が喰われてる間に反対側に回り込み挟撃の形にする
あの片翼を刃で斬り落とし機動力を奪う【部位破壊】
ウジ虫の如く這いまわり呪獣の餌として果てるがいい




 贅沢、という言葉がナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)の脳裏に浮かんだ。美味しい所だけ喰らって残りは廃棄……この神々も残飯に過ぎないという事か。
「飽食なるヴァンパイアめ、喰い残しは感心せんな」
 後始末をするこちらの身にもなってくれ。ナギは錬成拷問具・ソウルトーチャーを放ち、その首輪も口輪も外しリミッターを解除。魔も聖も、動くもの全てを喰らい尽くす禍ツ呪獣と化したソウルトーチャーは、動くものなら何でも反応し攻撃する狂暴性と咬合力を持つ。ナギを狙い舞い降りた真白の神に、グジュァアと鳴き声とも言えぬ音を立て、獣は覆い被さるようにがぶりと喰らい付いた!! 手足をばたばたと振り暴れる神、藻掻けばもがく程牙が喰いこむとも知らず。
「この呪獣ならそんな贅沢はせん。全て貪りつくしてやろう」
 グチャリ、頭が無いなら手足を。それすら千切ったなら心臓を。よぉく咀嚼して胃袋の中へ。――喜べ、今日はご馳走だ。こんな奴があと3体もいるぞ。おっとオレは獲物じゃない。こいつらより早く動けばオレでも喰らおうと言うのだから貪欲だ。だが、今はそれが最も必要とされること。優雅に宙なんて飛ばせてなるものか!
 骨が砕かれ肉が破れる音を聞きながら、ナギはゆっくりと反対側に回り込み、挟撃の形をつくる。敵は複数、背後を見せては一巻の終わり。真白の神は喰われ、今まさに助けを求め手を宙へ伸ばす――。可哀そうに、その手を掴むものは誰もいない。オレも、仲間の神々も、その上位のヴァンパイアでさえ。
「さようなら、神さま」
 真白の神へ、ゴリっと肉と共に骨が砕かれる音が響く。可哀そうとは思わない。それが異端の神の末路であったというだけ。自身の教義を恨めとは口にはださないけれど、ひょっとしたら惨めな存在なのかと視線を送る。言葉を失い、頭を喪い、残されたのは悲痛な痛みだ。嗚呼、なんと『哀れ』なのだろう! しかしてそれをナギが口にすることはない。ナギは悦楽の、ヒトに似た人。凡そ人間らしい感性など、母の腹に捨ててきた。であれば、彼らが叫ぶ声ならざる声を、どうして聞き入れることが出来ようか!
「ふふ、はは……」
 神々の片翼を刃で斬り落とし、縦横無尽に蠢く機動を奪い取る。ざしゅっと断たれた羽根は赤にすら濡れず。然もなければその手足すら奪わんと怨刃を振るう――それもまた、神が定めた結末か。
 ざしゅ、と。まるで野菜を切り刻むような爽快な音を立て、神の翼を刻み、そのまま腕を掲げ首元へ。頭はなくとも首はある。その中心に狙いを定め、ダンっと一刀両断。心の臓まで突き破るほどの力で、身体を真っ二つに引き裂いた! 血を噴き出すこともなく、くたりと倒れる身体の片方を抱きかかえ、ナギは――薄らと、誰にも分からない程度に――強張った。ああ、こんなこと、人間らしくない。ぼくは、オレは、ナギは。理性を飼った獣であるのだから。
 天使じみた神々を、感情のない眼が見つめる。嗚呼、ウジ虫の如く這いまわり呪獣の餌として果てるがいいと、己の心が叫ぶ。オレは、ソウルトーチャーは、全てを喰らう。お前の哀しみも、悲しみも、痛みも、悼みも。全てすべて、消化してやる――だから、疾く潰えるが良い。これ以上苦しむ必要はない。それがナギから真白の神々へ送る、最大限の慈悲。オレという自我が保っていられる内の、唯一の温情だから――。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…頭を奪われ、身体を操られて、非道に手を染め…
元は貴方達もこの地の人々と同じ吸血鬼の犠牲者だったと思う

…だけど此処は絶望に抗う人達が住まう希望が集う地よ
今を生きる者達を害する貴方達の存在は許容できない

…その存在を骸の海に還してあげるわ、異端の神々

空中戦を行う血の翼を広げUCを発動して魔力を溜め、
"黒炎鎧、御使い、魔動鎧、魔光、破魔、生命吸収"の呪詛を付与

敵の攻撃を神殺しの●力を溜めた黒炎の●オーラで防御
神気を●追跡する●誘導弾を放つように●防具改造

自身の●生命力を吸収して神殺しの黒炎弾を乱れ撃つ早業で、
異端の神のみを浄化する●破魔属性攻撃を行う

…この一戦を手向けとする。眠りなさい、安らかに…




 光差さぬ闇の大地に住まう者は、希望という陽光を求め「光あれ」と祈った。そうして、いつしか誰かが祈るだけでは駄目だと、同志を集め小さな村落を築く。そこはほんの少し武装した唯の村であったけど、何もしないよりずっと人々の心は満たされていた。先駆者たちを見て、ひとつ、またひとつと、『人類砦』と呼ばれる村が、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)の守るべきものが増えていく。
「……頭を奪われ、身体を操られて、非道に手を染め……元は貴方達も、この地の人々と同じ吸血鬼の犠牲者だったと思う」
 だけど。いやだからこそ、今を生きる者達を害する貴方達の存在は許容できない。此処は絶望に抗う人達が住まう希望が集う地。誰にも侵させない!
 血の翼を広げ術式変換。空中戦に適した形態に切り替え魔力を翼に集中させる。ぶわりと噴き出す破魔の力を宿した魔光が美しく、妖しく、黄昏の闇に輝いた。
 真白の神々の、金属を錆びつかせる魔導がリーヴァルディに襲い掛かる! それを力を貯めた黒炎のオーラ防御で耐えうるが……服の装飾品が少し錆びついてしまった。ムっとしたリーヴァルディはぐいっと力を込めて神を圧し返しす。ああ、折角の服が汚れてしまった。帰ったら確り磨かないと。
 対ヴァンパイア用に改造した防具から、神気を追跡する魔導弾を放つ。神々の神気に触れた弾はばじゅっと炸裂し、閃光と共にじわりとダメージを与えた。しかし本命の攻撃はそれではない。これは敵の居場所を確実に捉えるための布石!
 手にした小刀で己の手の甲をザシュっと思い切り斬る。自身の生命力である血を啜り吸収して、ぐいっとそのまま甲で唇を拭った。真っ赤な口紅が美しい。引いた腕を思い切り振り払って、神殺しの黒炎弾を乱れ撃つ!! その早さ、まさに神速。目にも留まらぬ魔弾が、光と戯れる真白の神目掛けて降り注ぐ。叫ぶことすらできない神は、手足をばたばたと動かし痛みを訴える。
「そうやって藻掻く人たちも、貴方達は連れて行ったのでしょう。貴方たちも、存在ごと骸の海に還してあげるわ」
 異端の神の心は既にヴァンパイアに支配されている。それだけを浄化しようと、リーヴァルディは破魔を乗せた最大限の攻撃を神々に向け放った! 黒炎弾に触れたところから、ジュワっと抉り取られたように肉が無くなる。腕が、腹が、肩が、最初から無かったかのように歪に穴あきになる。残念なことに血すら出ない。
 可哀そう? いいえ、憐れんで等やらない。神を名乗っておきながら、人々を苦しめた。だから、これは罰。無為に苦しめるつもりはない。悪いのは全部ヴァンパイアなのだから。この一戦を、手向けとする。
「眠りなさい、安らかに……」
 黒炎弾を掌に集め、大きく育てる。棒立ちのリーヴァルディに襲い掛かろうと神の一体が背後から凶腕を振り下ろすが……リーヴァルディの身体に触れた途端焼け焦げるような熱さを伴い弾き飛ばされた。破魔の力は悪しきものを寄せ付けない。身も心もヴァンパイアの手先となった真白の神では、リーヴァルディに触れる事さえ出来ない!
「食べ残された貴方達の力、今度は私が頂く」
 手にした黒炎弾を真上に放り投げると、それは放射状に幾本ものビームを放ち、穴あきの神々はビームに触れたところから生命力を吸収され、萎びていった。後悔しなさい、ヴァンパイア。あなたの残したもので、私はあなたを倒す力を得る――!

成功 🔵​🔵​🔴​

旭・まどか
――嗚呼、なんて醜い
己が欲に従うは生物の本懐なれど
ただ無為に食い散らかす事の、なんて卑しい事だろう

堕ちた神とて、同じ事
在れる筈の無いものが在って善い姿で在れ無い事の悲劇を
此処で、終わらせてあげる

偽物には、偽物で
白腕裂き溢れる穢血を地に落として
一足先にやってきた夜から隸を生み出そう

従順ないのちを持たない其は
向こう見ずに君たちを撃ち墜とす
数匹は絶えず傍らに控えさせ
奇襲や不意打ちへの対処を命じよう
避けられれば、事無し
万が一間に合わなさそうなら身を呈させ
僕の安全を最優先に

この先もあるんだ
流す量は最低限に留め
必要とあらば他の猟兵や別の仔の協力も厭わない

だって今現在最も重要なのはアレを殲滅する事でしょう?




 理性を無くした人間は、唯の獣に等しい。では理性を、考える知能を失った神は何なのか。人以下、獣以下、単細胞以下か。いいや、それよりもっと残酷で、汚らわしい。――嗚呼、なんて醜い。己が欲に従うは生物の本懐なれど、ただ無為に食い散らかす事の、なんて卑しい事だろう。
 蔑む瞳を隠す事もせず、旭・まどか(MementoMori・f18469)は真白の神々を睨みつけた。堕ちた神とて、同じ事。在れる筈の無いものが在って、善い姿で在れ無い事の悲劇を。
「此処で、終わらせてあげる」
 偽物には偽物で。己が白腕を切り裂き、溢れる穢血で地を塗らす。どくり、じわりと、一足先にやってきた夜から隷を産み出した。闇から這い出た偽物のヴァンパイアは、まどかの血を代償に手を、足を確認すると、赤い眼がギロリと嗤った。酷く気色が悪い。嗚呼、お前たちとこの神はよくお似合いだよ。誰かの隷属で自由意思を持たないところとかね。
 従順ないのちを持たない彼らは、向こう見ずにまどかへ凶腕を振りかざす真白の神を屠る! ぐじゅっと肉が削げ落ちても、血の一滴も出ないのが惜しい。なんて人ならざる、神ならざる、いいや生き物ならざるモノなのだろうか。お前たちにやる慈悲など欠片も無い。
「植物ですら血を流すというのに、お前たちときたら何も零さないじゃないか。そんなもの、生に値しない」
 作り出された疑似ヴァンパイアが真白の神の腹を切り裂き、はらわたを引き抜く。中身まで真っ白なそれは最早神だからと形容するには困難な代物。
「汚い」
 びしゃっと飛び散る透明な体液を、まどかは靴で土に擦りつけた。醜い。不浄で、穢らわしい。僕に触れるな。数多の神々が襲いかかろうとも、絶えず傍らに控えさせた其でもって撃退。血を這わす。奇襲や不意打ちなどさせない、僕がこの眼で『視て』いるのだから……見えない奴らに後れを取ることはありえない。
 ぐわっと振りかぶられた凶腕を避けて、ぐぃっと横からくる死脚を逆手に取り、足首を持ってぐわんぐわんと振り回し宙飛ぶ真白の神へ投げ返す。地を這い蹲って襲い来る神には身を挺して守らせて。あくまでもまどかの安全が最優先。僕がいなければお前たちは存在できないのだからね。
「嗚呼、本当に――惨めだね」
 神のくせに、考える知性も失ったもの。その先にあるのは天国でも地獄でもない、過去の骸。僕がどれだけ屠ろうとも、お前たちは永遠に其処を彷徨う定め。あるいは主であるヴァンパイア……名をマーシャと言ったか。それと共に逝けるのかな。なんて、考えるだけ無駄だろう。ヴァンパイアは己の事しか考えない、下位の者がどうなろうと、知ったことではないのだから。
 この先、彼女と対峙する時が来るのだ。その為にも流す血は最低限に留めなければ。かといって容赦はしない、他の猟兵が危機を迎えたならば助けに向かうし、共闘もしよう。流れる血すら節度を以て操ろう。脈打つ鼓動は生命のしるし、お前たち無機物な生き物に負ける道理はない。
 今現在、最も大切なことは……『アレ《ヴァンパイア》を殲滅すること』でしょう? であれば……邪魔者には早々にご退場願おう――!!

成功 🔵​🔵​🔴​

地鉛・要
【アドリブ可】ベイメリア・ミハイロフ(f01781)と連携

頭が無くても魂は有るだろう。なら魂から思い出させてやれば良いんじゃないか?
まあ、状況が状況なだけに思い出すのが先か倒し倒されるのが先かって感じにはなりそうだけど

【害血大百足】を自分の体を飲み込むような形で召喚敵陣に突っ込んでの攻撃。*光属性の攻撃と巨体で*存在感を出して大百足の巨体で攻撃
ベイメリアとの対比で猟兵、砦をどちらを優先するかを見極め、猟兵の方へ寄るのならそのまま*蹂躙
猟兵よりも砦を優先するようなら砦の方まで戻り、大百足に攻撃を任せて影業と*属性攻撃を使用しての*蹂躙


ベイメリア・ミハイロフ
要さま(f02609)と
はせ参じたく存じます

神々の皆さま、どうか元の神である事を思い出してくださいませ
…耳のない今となっては、この声も届かないのでございましょうか
魂…魂にこの声が届きますでしょうか
ああ主よ、どうか、この方々をお救いくださいませ

万一砦が狙われるようならば、おびき寄せ・かばう
空中浮遊も利用し、お相手の目を引くよう行動を
オーラ防御と激痛耐性を活性化し、ゆったり動くよう努めます
お相手には第六感・野生の勘を常に活用し
行動・動きを見切り対応したく存じます

錆はもとより切る事を目的とした武器ではございません故
大勢に囲まれた際には、くるり回るように
Red typhoonにて攻撃を致したく存じます




 魂の在りかはどこなのだろうと説いて、頭と応える人などどれほどいるだろうか。きっと心臓と応える人より多いのだろうと思う。しかして、頭も心も無くとも、魂は有るだろうと地鉛・要(夢幻の果てにして底・f02609)は説いた。
「神々の皆さま、どうか元の神である事を思い出してくださいませ」
「ふむ。思い出すのが先か倒し倒されるのが先かって感じにはなりそうだけど」
 状況が状況なだけに、耳のない彼らにはこの声も届きやしない。であれば、せめて魂には届いておくれ、この願いが、声が、乞いが……ああ主よ、どうか、この真白の神々をお救い下さいませと、ベイメリア・ミハイロフ(紅い羊・f01781)は願い、魂に染み入るように、純粋な祈りを捧げた。
 簡素だが人々が少ない資材で作り上げた砦は、ところどころに血が染みついてる。真白の神は血を流さない。故に、これは此処で散っていった村人たちのもの。抗い、立ち向かった証。一時は退けることも出来たのだろう、でなければ此処に固執する理由はない。
「砦って言ってもね、丸太と火矢だけじゃ心許ないって話」
「要さまならあとはどうなさいますか?」
「まずは掘りを作るね。あとは今回みたいに空から来る敵の事も考えて、バカでかい屋根を作るとか。ああ、犬を飼いならすってのも良いな。生身の人よりは戦力になるだろう」
 すらすらと案が出てくるのは、地の頭が良いからか。それとも殺すことを最優先に考えているからか。感心するベイメリアをよそに、人を呑み込むほどの大きさの漆黒の大百足を召喚し、敵陣へと突っ込ませる! 二体を倒し主の下へ届けようと地に足を着いた真白の神に、カサカサカサと音を立てて這いずり回る大百足。相方にはなるべく見せない、聞かせないように、前に立って棒読みで「喰っちまえー」なんて声を出す要。優しいんだか、頼もしいんだか。
 後続の神々が襲いやすくなるようにと、ベイメリアは砦を狙う神々に対応する。あえて素早く動くことで相手の興味をこちらへ逸らし、組み上げられた足場や棘壁を守る。祈りを翼に形を換えて、ふわりと浮き上がれば、そのまま宙から飛来する神を受け止めた! ギチギチと、白魚の手がベイメリアんほ胸を貫かんと迫る。オーラによって防御しているが、いつまで持つか。ああ、わたくしに力があれば……!
「蹴れ!!」
「!」
 下方、砦上で戦う要が叫ぶ。咄嗟に意味を理解したベイメリアは、はしたないと思う間もなく真白の神の急所を蹴りあげた!! ぐぅっと蹲る神に対し、これ幸いと距離をとる。蹴った此方も結構痛かった。激痛に耐性があったから良かったものの、これからは考えて行動しなければなりませんね、なんて、要さま以外とで斯様なことをするでしょうか? と、疑問が浮かんではぱちんと消える。今はゆっくりと考えている暇はない。
「案外容赦ねーな、あいつ」
 ちらりと見上げた上空で苦戦しているようだったから思わず要も声を張ったが、即座に対応するとは思わなんだ。案外良いコンビになれてるか? 等と口には出さずにまた前方を見遣る。大百足は一体目の神を百の脚で雁字搦めにし、首からぐちゃりぐちゃりとかぶり着いて満足そう。しかし敵はまだ多い。
 こっちを先に仕留めて、早いところベイメリアに合流すべきと踏んだ要は、一歩前に出て大百足を腕へと戻す。大顎には真白の肉片がまだ残っていた。汚いと可愛いものを愛でるようにその肉片を拭ってやり、伸ばした腕で1、2、3と数を数える。それをじぃっと見ていた大百足は、まるで頭の良いペットのように要の首から腕に巻き付いて……シャアアッと神に向かい走り出した!! 神は上空に逃げようとするも遅い!! 蹂躙するよう命ぜられた自身の片割れは、思考速度よりも早く神の脚に噛みつき、地に叩き落す! 助けようとした2と3の神々も同じ事。ギュガッ、ゴリっと首根っこと脇腹に絡みついた幾重もの足が肢体を締め上げ、翼を喰らう。飛翔能力を失った神2は地面……ならまだ良かった。砦の尖った一本柱に突き刺さり、ビクンッと痙攣したように動かなくなる。本来の砦の役目を、十分に果たした。人々の努力は、決して無駄じゃない。
 先に血に堕ちた神を噛み砕いた大百足の援護をすべく、残った一体に属性を宿した影業を用いて蹂躙する。闇属性でも良かったが……ここはあえて、光属性で逝かせてやろう。なぁ、お前たちもかつては人々を救ってきたんだろ? だったら光がお似合いさ。この世界に『本物の光』が届くのは、当分先の話だろうけど。
 やれ、神の軍勢はまだまだ砦を破壊しようと、錆びの魔手や妖の蔦を操り攻撃の手を緩めない。多勢に無勢。要は要で敵を倒している。自分ばかり頼ってはいられない。ならばと、錆はもとより切ることを目的とした武器ではない慈悲の剣を、深紅の花弁に変え紅い竜巻を巻き起こした! 花弁は砦は傷つけず、ただ敵対するものだけを引き裂いていく。刃となった花弁を舞わせ、くるくる軽やかな足取りのベイメリアはまるで踊り子。深紅の薔薇は飛び散った血液のようで、神々の血すら凝固した肉体の代わりに流れていたのかもしれない。
「神々よ、どうか人を救って下さい。今までの罪は、私が赦しましょう」
 祈りながら踊るベイメリアの花刃を抜けて、最後の一体が決死の突撃を繰り出す! 目を見つめることは出来ないから、動きは読みにくいけれど……わたくしを狙っていることさえ分れば十分。見切って、ごちんとメイスの頭を項に叩きこんだ! どさっと倒れる、傷だらけの真白の神。ふぅ、と一息ついたところで要が、ベイメリアの足元の、気絶しただけの神を大百足に咀嚼させる。
「駄目だぜ、最後まで後始末しないと。俺達はそのために呼ばれたんだから」
「……はい。身も心も、どうぞ天に召されますよう」
 二人は次の、まだ剣劇の響く場所へと砦を伝って向かう。救済されぬ魂が、ひとつでも減りますようにと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レジー・スィニ
良い趣味してるよね。
頭は美味しかった?
アハッ、ごめんごめん。お前たちは喰われたんだよね。

果物みたいに甘くてもさ、どんなに高級な肉でもさ
腕と舌次第だよね。
俺は酒とタバコがあればいいよ。

お前たちも、カミサマなんて飽きたでしょ。
普通に戻りたいでしょ。
まとめておいで。
俺が救ってあげるよ。

喉が痛くなるから、あまり使いたくないけど。
人狼咆哮で纏めて救うよ。
カミサマってさ、人の数だけ存在するんでしょ。

俺は信じてないけど。

こんな風に神でも無いヤツに使われるなんて
あーあー、可哀想。
俺が本当の神様の所に連れて行ってあげるんだから、感謝してよね。

吠えすぎたかも。
喉が痛いや。




 頭だけ食べるなんて、ほんと良い趣味してるよね。ねぇ、其れは美味しかった? 脳漿を啜って、脳幹を食い荒らして。アハッ、ごめんごめん。お前たちは『喰われた』んだよね。レジー・スィニ(夜降ち・f24074)のからからと嗤う声が砦に響く。悲しいね、お前たちはこれを「悔しい」と思う知性さえ奪われたんだから。
 喉が痛くなるからあまり使いたくはないけれど、渾身の叫びを以てお前たちを救ってあげるよ。すぅっと息を吸い込んで、重低音と高周波の入り混じった咆哮を砦全体に響かせる。嗚呼、どこぞの猟兵が耳を塞いでいるね。いいんだよ、それで。俺の力はそうでなくちゃ。
 お前たちもカミサマなんて飽きたでしょ、『普通』に戻りたいでしょ。まとめておいでよ、俺が救ってあげる。何もしないよりはマシだ、俺が全部受け止めてあげる、――そのままお前たちを救ってやろう。
 真白の神は人狼咆哮の金切り声に体を揺らし、びりびりと破ける皮膚に恐れ慄いた。配役は須らく死を以て、だけれどせめて楽しく踊ってよ。そうじゃなきゃ、観客《おれたち》がつまらないでしょう?
 カミサマってさぁ、人の数だけ存在するんでしょう。ふふ、ちゃんちゃら可笑しいよね、そんなの。だって飢えた人も肥えた人にも、神様は存在して、それは全て別のカミサマだなんて! どっちが正しいとか、美しいとか、そんなことを俺は言いたいんじゃないよ。ただね、滑稽ってだけ。信じる者だけに具現する、そんな神様、俺は信じてないよ!
 うるさい、煩い! 首のない真白の神はレジーに対し凶腕を振り上げ、またある神は足元を崩そうと蹴りをかます。そんなもの、意にも介さない。心無き神の挙動など、レジーにとってまるで意味のないこと!
「痛いな。暴力反対」
 再び激しい咆哮を立てて、周囲の神々の翼を折る。地に落ちた神に、俊足の刀刃を突き立てて一閃。心臓を抉り肺から肩にかけて斬りあげる!
「何も出ないんだ。ふぅん」
 かつては人であった神を、何の感慨もなく屠るレジーは、果たして神の子か。あるいは人の子か。どちらでも良い、今大事なのは、このカミサマを砦に侵入させないこと。大体、こんな風に神でも無いヴァンパイアに使われるなんて、あーあー可哀想。俺が本当の神様の所に連れて行ってあげるんだから、感謝してよね。ザジュっと腹を真っ二つに引き裂き、蹴り上げて砦の外へ放る。
 追撃の神々に、三度、咆哮による衝撃波を喰らわせる。振動は真白の神の動いてない心臓を破裂させ、流れていない血流を破壊する。地に伏せた真白の神を蹴って、死んだことを確認しては、靴で無い頭を詰った。
 ……吼えすぎたかも。あー、ちょっと掠れるね。喉が痛いや。この落とし前はお前たちの主にツケとくよ。だからさ。
「お前らは、さっさと逝くと良い。じゃないと……喰い殺してしまうかも」
 レジーの嗤みは酷く歪んで、しかして優しく神々へと微笑んだ。さようなら、異端の神。今ならまだ『神』として天へ逝ける。もし抗うというのなら……それは獄より下った奈落の底の――。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジェイ・バグショット
噂に聞く人類砦の内側を初めて見て回る

明日を生きることを諦めない姿に
表情は変わらずとも好感を持つ
死と隣り合わせで生きている自分だ
希望を失わず懸命に生きる人間は好きだった

…こんな世界でも希望は消えないと、信じても良いよな。
誰に聞かせるでもない独白

拷問具
『荊棘王ワポゼ』棘の鉄輪を複数空中に召喚
【傷口を抉る】ように高速回転しながら飛翔し自動で敵を追尾

『神化せしクグーミカ』自立思考型拷問具
黒鳥のような異形の女
気味の悪い声を発しながら手にした拷問具で嬉々として敵を襲う

神ですらヴァンパイアに喰われるか…。
相変わらずタチが悪いな。

自身は絶叫のザラドを手に弱った敵にトドメをさす
重さのある一撃は身を断ち切るように




 噂に聞く人類砦の内側を初めて見て回る。名は仰々しいが、言ってしまえば少しばかり武装した村だった。交互に組み上げられた先端の尖った丸太に、警鐘櫓、弱者が率先して逃げられるよう作られた壕、戦える者が即座に構えられるよう村の至るところに配備された武器。明日を生きることを諦めない姿に、ジェイ・バグショット(幕引き・f01070)は好感を持った。
 死と隣り合わせで生きている自分。それに対し、夢を見失わなず、懸命に未来を見据え生きる人間は好きだと感じる。……こんな世界でも、希望は消えないと、信じても良いよな。等と、誰に聞かせるわけでもない独白を心中で吐いた。こんな日がずっと続けばいい……いや、願いが叶い、旭が昇る日が来ることを、他でもない、俺も祈ろう――。
 砦の外から真白の神が片翼を器用に操り降臨する。ばさりと羽搏いた翼からは羽根が舞い落ち、地を白で汚す。純白がこれほど穢らわしいことも早々あるまい。ジェイは『荊棘王ワポゼ』の茨の鉄輪を、空中に複数召喚、ギュインギュインと高速回転し神々の身体を切り刻む! 傷口を抉るように肉に喰いこむ鉄輪は、飛翔しながら勝手に真白の神を追尾した。逃げる神に、追う黒。どちらも必死……いや、意思などないか。少なくとも神の方は既に死んでいるのだから、何を恐れる必要がある。
「さっさとイってくれよ、なぁカミサマ。あんたを信じる者は、ここには誰もいやしないんだぜ」
 自動追尾に追いつかれた真白の神は、鉄輪の棘に肉を貫かれ、身体を真っ二つに引き千切られた。それでも悲鳴は上がらない。鮮血も噴き出ない。全てはヴァンパイアの仕業。『刈り取ったあとの肉片』に、神らしさも人らしさも必要ないのだから。
 なんとでも、誰でも。笑うがいい。貶すがいい。俺は今、確かに愉悦を感じている! 神を殺す事に……その先のヴァンパイアの、悔しそうな表情を想像するだけで……嗚呼、吐き気がするほど愉快だ!
 気味の悪い声を発しながら、手にしたのは自立思考型拷問具『神化せしクグーミカ』。黒鳥のような異形の、ある悪女を模した進化する拷問具。握りしめたそのクグーミカを振るい、あるいは揮い、嬉々として真白の神を襲う。ジェイはこの時ばかりは、まさしく、正しく、咎人殺しであった。人に仇なす敵を討つ、その姿を見て心酔する者はあれど、恐れ戦くものなど誰もいない。
 残り少なとなった神にワポゼを投げつけ、輪の中に肉体を収めてはギュゥっと締め上げる。ギチギチと身体に棘が喰いこみ最後には動かなくなったそれを地面に突き落とし。ヒュンヒュンと返ってきたワポゼを、犬のように撫で可愛がって、ジェイは地に堕ちた神々を見つめた。
「神ですらヴァンパイアに喰われるか……。相変わらずタチが悪いな」
 ジェイはまだびくびくと痙攣する神に、最後の慈悲をくれてやる。重さのある一撃は身を断ち切るように。首のない神は何を以て動いているのだろう、心臓か? であればと、足で仰向けに転がした神の左胸を、『絶叫のザラド』が刺し貫いた! グジュっと貫き、一回転。削ぐように持ち上げて、肉体から臓腑を切り離す。
「……なんだ、動いてないのか」
 それはそうだろう。血の循環も無いのに、行く先もないのに、鼓動するはずがない。なのになぜかそれが無性に悲しくて……ジェイはザシュっと心臓を斬り潰した。お前たちに明日は無い、だから、明日ある者を邪魔をするな――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

守流芙桜・蝶々
要くん(f16974)と一緒に行くよ

ここの雰囲気、とっても怖いね……ホラー映画みたい。
うん……離れないようにする。
要くんに迷惑かけないように、心してかからないと。
僕が要くんを守ってあげないと……だからねッ

うわあああ、顔がない人たち……!!
こ、怖くない、けど……!!
し、しっかりしなきゃ……!!
アスモデウス……よろしく頼むね。
要くんが囮になってくれるから、僕は攻撃に専念。
炎の弾丸、ガンガン喰らわせちゃうよっ
超耐久力があるみたいだけど、要くんの言う通り気にせずどんどん打ってく。
数を減らさなくちゃね。
要くんを狙う悪い花弁もアスモデウスの炎で狙い撃ち!助けられる時は助けるよ


三嵩祇・要
てふ(f22942)と

ここだけ異様な空気感あるな
嫌な予感しかしねぇ
オレからあんま離れんなよ

金属を錆び付かせるとか相性最悪なんだが
てふが居てくれるなら作戦の立てようもある
守ってあげないとってそりゃ心強いが
張り切り過ぎて無茶すんなよ

敵への攻撃はてふに任せる
敵の能力が上がるのは一瞬
ダメージが通る通らねぇは気にせずガンガン打ち込め

俺はクロックアップで囮役だ
可能な限り敵の攻撃を集める
錆び付く花弁もできるだけ避ける

おう、助かったぜ
チビでも猟兵だもんな
戦う力も守る力もちゃんと持ってる
まだこんな小さいのにえらいもんだ…
俺も負けてられねぇな




 砦には既に幾つもの神の屍が転がっていた。嫌な雰囲気だ、まるでホラー映画のようだと、守流芙桜・蝶々(🦋・f22942)は怯え、三嵩祇・要(CrazyCage・f16974)の腕に張り付く。異様な空気感は屍のせいだけではない。此処には幾つもの怨恨が渦巻いている。首を失くした神々の、あるいは人々の、ヴァンパイアへの恨みの念。嫌な予感がする、と、要は蝶々を腕中に抱え、慎重に歩みを進めた。
「此処……とっても怖いね……」
「ああ。オレからあんま離れんなよ」
「うん……」
 ぎゅうっと要の服の裾を掴みながらも、蝶々は内心めらめらと闘志を燃やしていた。どんなに危なくて怖いところだって、僕が要くんを守ってあげないと……だからねッ! なんて、年甲斐もなく正義の――要の味方ぶってみたりして。それよりも迷惑をかけないように、心して掛かる方が先決だろうと、己が一番分かっている。
 対する要はといえば、鉛のように重い雰囲気に引き摺られることなくいつも通りだ。この手の経験はそこそこある。慣れるものでもないが、今更慄くことはない。それよりも、未知の気配に揺れる蝶々のこころを護ってやる方が重要だった。少し歩きにくいが、意図して息を合わせるように歩く。裾から蝶々の鼓動が伝わってくるようだった。
 柵を飛び越え、首のない真白の神々が二人の下に降臨する。引き千切られた片翼を器用に操り、威嚇の声をあげることも無く深々と。蝶々は恐れこそしなかったが、驚いた。だって、お化け屋敷でだって首が無い人なんて見たことが無い。首だけなら見た事はあるが……顔が無いと、人間は『個』を『らしさ』と認識できないのだ。人間だって、動物だって、機械だってそう。その個を形成する一番大事な部分を、この神々は永遠に失ってしまった。
 要の服の裾をの握る力が少し強まる。引っ張られた感覚に、要は視線を蝶々にやる。この身長差では旋毛くらいしか見えないが。
「怖く、ないよ……」
「てふ」
「大丈夫――しっかりしなきゃね」
 声は震えていた。双眸には薄い膜を張り、今にも零れそうな雫を湛える。でもそれは、怖いからじゃない。もう二度と『個』を為せない神々が可哀そうだから。彼らはもう泣くことも出来ない。故に、代わりに蝶々が泣いてやるのだ。
 異形の花弁は要の武器である導雷針を錆びつかせ、触ればぼろりと崩れそうな程冒している。金属を錆びつかせる神の能力と、要の能力は相性が宜しくない。とはいえ、蝶々が居れば作戦の立てようもある。
「来るぞ、構えろ」
「アスモデウス……よろしく頼むね」
 掴んでいた裾を離し、じゃりっと前に出る蝶々のなんと勇ましいこと。でも、無理は禁物。心強くはあるけれど、張り切りすぎて無茶をしては本末転倒だ。神々の能力が上がるのは一瞬、ダメージが通る通らないは気にせずガンガン打ち込め! 攻撃は蝶々に任せ、要は戦場をひた奔る!
「オレについて来れるか――無貌の神サマよ」
 囮役を買って出た要の脚は速い。ぱちんと鳴らした指に反応し、時間はいびつに歪む。錆びつく花弁を出来るだけ集め、蝶々から視線を逸らす。時には自ら真白の神に蹴りをいれたり、錆びついた導雷針で殴りつけたり。そうやっている間に、蝶々の炎の術式が完成する!
「さぁ、炎よ花開け!」
 ぶわっと一面に咲くは炎の弾幕。全てを魅了する雨とも霧ともつかぬ弾丸の図面! 砦は傷つけず、神々だけを葬り燃やす悪魔の所業。ごうごうと燃え滾る炎は神々の衣服を、肌を、こころを焼いて、生々しい肉の焦げる音と臭いが立ち込める。
「……う、ぅぇ……」
「おい、てふ!」
「大丈夫だよ、大丈夫。僕は――」
 ――僕は弱い。だからせめて、キミが自由に動けるようにサポートしなくては。そして、要くんを傷つけるやつがいたら、僕が絶対ゆるさない。いや、僕自身が……許せない!
 ――嗚呼、なんでこいつはこんなに『強い』のか。他人の心配をしてる場合か。要は自分の甘さと、蝶々の強さに辟易した。どうしてこう、無茶をする! お前も――俺も! 炎は渦となり砦に立ち込め、周囲を飛翔する神々をどんどん焼き堕としていく。翼を焼かれ飛翔能力を失った神々を、要は滅多打ちにして回った。どれだけ数がいようと関係ない。動かないなら木偶と同じ。殴りつけては心臓を導雷針の曲がった部分で抉り出し、びしゃっと地面に叩きつける。炎はまだ止まない。これ以上は砦に引火する可能性があると、要は蝶々に近寄った。
「おい、てふ。もういい」
「――。……」
「てふ!」
「――?、ぁ……」
「大丈夫か?」
 要は屈んで蝶々に視線を合わせた。少しぼうっとしている蝶々、半分意識を悪魔に乗っ取られていた。自分でもそれを感じて、震える。今度こそ、恐怖に。
「僕……要君を助けられた?」
「ああ」
 短い返事。その分、要は蝶々の帽子をぽんぽんと叩いてやった。ありがとうと、今後もよろしくの意味を込めて。チビでも猟兵、戦う力も守る力もちゃんと持っている。まだこんなに小さいのに……えらいもんだとほんの僅かに口角を釣り上げ、一瞬の後にその様相は無くなったが、蝶々の力を認めたのもまた事実。
「俺も負けてらんねぇな」
 などと、どの口が言うのだか。守るべき者がいる者が絶対強者だと、要はまだ知らない――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

故無・屍
…躾のなってねェ上に悪趣味なガキだ、飯の好きな部位だけ摘まんで
挙句の果てに食べ残しで人形遊びか。

俺も何かを殺して生きてる以上、上からとやかく言う気はねェ。
依頼を受けた以上は斬る、それだけだ。


前線を担う猟兵の後方、討ち漏らしを片付ける役割を担う
第六感、野生の勘、見切りにて蔦の向かう先を読み取り、
UCにて近付く敵と共に、住民に向けて伸ばしてくる蔦があるなら同時に断ち切る
怪力、破魔、限界突破、2回攻撃、早業の技能にて迅速に

巻き込まれそうな住民が近くにいるようであれば、
かばうの技能にて守るよう動く



…首がねェんじゃ声も届かねェか。
これくらいはしてやる。精々迷わずに逝くんだな。

祈りの技能にて、手を合わせる


トリテレイア・ゼロナイン
己以外全てを『果実』扱い…
ここはこの世界の『希望』育てる人類砦、これ以上の収穫など騎士として許すわけにはいきません

機械馬に●騎乗し移動
常に動くことで金属腐食花の使用を敵の選択肢からの除外が狙い

攻撃手段はUCのSSWウォーマシン特殊部隊御用達の剛弓
機械馬を無線●操縦で操りつつセンサーの●情報収集で照準合わせ
●怪力で引き絞り●スナイパー射撃
胴体に風穴を開け仕留め

透明など機械には無意味
不可視植物をセンサーでのレーザー測定●情報収集で●見切り
第三の腕として●操縦するワイヤーアンカー柄尻に付けた剣で●武器受け●武器落としで斬り捨て

使役からの解放、彼らにとっても望ましかったことを願う他ありませんね…




 如何にヴァンパイアであろうとも、こうも悪食は中々いないだろう。おいしいおいしいと言いながら、過食部分は上一等。他は全部掃き捨てて、堆肥にでもしなさいと果樹園に戻してあげる。
「全く、躾のなってねェ上に悪趣味なガキだ」
 飯の好きな部位だけ摘まんで、挙句の果てに食べ残しで人形遊びか。故無・屍(ロスト・エクウェス・f29031)もまた、何かを殺して生きている以上、上からとやかく言う心算はなかった。ただ、依頼を受けた以上は斬る、それだけのこと。相手が可憐な乙女でも、首のない哀れな神でも、振るう刃は霞なく輝く。
 屍が背中を預けるは歴戦の騎士、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。機械馬に騎乗し、砦を縦横無尽に駆ける! 彼の動きといったら追いつくには素早く、しかし諦めるには緩慢で、絶妙な塩梅で真白の神々を引き付けた。常に動くことで金属腐食花の花弁に触れる事もなく、一目散に振り払う!
「あんたに前は任せる。取りこぼしは任せな」
「承知しました」
 機械馬は無線操縦で操りつつ、トリテレイアはSSWウォーマシン特殊部隊御用達の剛弓を用い、己に搭載されたセンサーの位置情報で神々へと照準を合わせる。怪力にも耐える弩はギチギチに引き絞られ、鷹の目の如く優れた射撃でまず一体を撃ち落とす! 胴体に風穴をあけびくびくと動いていた神を、屍が闇を纏い巨大化させた刃で、ドスっと腹と腰を割り割いた。悲鳴も血も出ない。一瞬震えた手足が、最後の嘆きだったのか。それすらまるでわからない。何だか人と……神と戦ってる気がしない。屍は内心、空恐ろしくなった。このまま自分の心が死んでゆくのではないのかと。死を与える事が当たり前になってしまう日々に、ふるふると頭を振る。今は、自分のやるべきことをやればいいのだ。余計なことを考えている暇はない。
「ここはこの世界の『希望』育てる人類砦、これ以上の収穫など騎士として許すわけにはいきません」
 例え蔦が透明不可視であろうとも、センサーの前では無意味。トリテレイアはレーザー測定・現実へと干渉。周辺情報取得。神の蔦腕を捉える! 第三の腕として操縦するワイヤーアンカーの柄尻に付けた剣で、シュルルっと這い寄る蔦を薙ぎ払い、斬り捨てる。容赦はいらない、敵はかつて信仰を集めし者でも、今やオブリビオンの手先なのだ。慈悲を掛けてやる必要などこれっぽっちもない。その点は、屍と共通意識だった。
「さて、やっと2体。あと何体でしょうね」
「ざっと4、5体ってトコロかね。やれるか?」
「無論。あなた様も無理をなさらず。私と違って生身ですからね」
「普通の人間よか頑丈さ。――じゃ、続きといこうか」
 再び戦場を駆るトリテレイアは、流鏑馬のように宙に舞う神々を撃ち落とし、愛馬でそれの心臓をを踏み潰す! 頭のないものにとって、次なる急所は其処だろうと踏んで。上空から忍び寄る蔦も一度剣にわざと巻き付かせ、思い切り引っ張れば釣られて地に堕ちる神。地面に来たならもう細かいことは気にしなくていい、あとは屍が始末をしてくれる。未だ蠢く蔦を、これまで培った野生の勘で見切り、動きの先を読んで躱しながら近づき……一気に腹を掻っ捌いた! 人には骨があるが、これが意外と固い、鍛えた怪力が無ければ、いくら強化人間の屍でも多少斬り断つのに手間取っただろう。残りの神々は無い顔を見合わせ逃げるように踵を返すが、お前たちが帰る場所などどこにもないと言うように、トリテレイアのワイヤーアンカーが二体纏めてぐるぐると身を捉え、動きを制限する。
「怖気づいたか、神様。今更遅いんだよ」
 破魔の力を込め、刀身に力を集中。素早く振った斬撃は2回。ザジュッ、ザシュっと神々の翼を斬り落とし、地面に落ちるより一体には早くトリテレイアの弩が心臓を射抜き、もう一体には屍の神速の早業が肩から心臓を破いた。舞い散るのは真白の羽。血も出ない、聞こえるのは二人の息遣いのみ。
「使役からの解放、彼らにとっても望ましかったことを願う他ありませんね……」
「……ふん、首がねェんじゃ声も届かねェいか、ならばせめてこのくらいはしてやる」
 屍とトリテレイアは静かに手を合わせた。頭が無くとも天に逝けること、そしてもう二度とこの地に降臨しないことを祈って――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
討てば良いのだな
いつも通りだ

破界で掃討
対象は戦域のオブリビオン及びその全行動
それ以外は「障害」故に無地され影響皆無

高速詠唱を幾重にも重ね、『刻真』『再帰』で無限に加速・循環
瞬刻で星の数の魔弾を生み、『天冥』にて因果改変
『天光』で捉える全目標へ「着弾させて」斉射、殲滅を図る

一箇所終えたら次へ
数がどれだけか解らんが、討てるだけ仕留めておけば間違いもあるまい
戦況は『天光』で随時把握し危険そうな箇所は優先して掃討

オーラを無数の薄膜状に分割し周囲に展開
全てに『絶理』『刻真』を作用させ、自身への攻撃を触れた瞬間終わらせて影響を回避
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から汲み上げる




 人も、神も、オブリビオンも。ただ其処にあるだけの存在。いつも通り、討てば良い、それがアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)の出した結論だった。
 聞くことも出来ぬ高速の詠唱が戦場を支配する。幾重にも重なった多重の術式は、世界を刻む光と万物を見通す瞳によって無限に加速する。循環された呪言は真白の神々に降り注ぎ、踊るようにもがき苦しむ。
 瞬刻で星の数の魔弾を生み出し、未来を手繰り寄せる天冥の原理にて因果を改変。万物を見通す瞳となる全治の原理で以って神々を迎え撃つ!
 しかし真白き神々もかつては『神であった』もの。その程度の因果律、軽く往なすことなど容易い! 誰が強者か、思い知らせてやろう――。来い、猟兵……その矜持砕いてみせよう!
 アルトリウスは極めて冷静だった。神からの挑発も、自信が溜め込んだ魔力も、じわりと溶け込んで。嗚呼、馬鹿らしい。
「俺の視界から消えろ」
 すべてを照らす天光が、神々の身体を貫く。着弾したそれは一斉に炸裂、殲滅を図る。びしゃっと飛び散った肉片に目もくれず、アルトリウスは真っ直ぐ砦の奥を見つめた。それは一個師団を束ねる総長。個の中の王。
「ようやっと姿を現したか」
「…… ……」
 口が無いのだから返事も無い。ただ頷く、それだけでアルトリウスには十分だった。真白の神の背後には全く同じ容をした神が蠢き、今かいまかと合図を待っている。やれ、数がどれだけか解らんが、討てるだけ仕留めておけば間違いもあるまい。戦況は『天光』で常に把握し、危険そうな箇所は優先して討伐するが吉。
 睨み合った神は腕を高く掲げ、下に振り下ろした! 威勢に任せて迫りくる神々のなんと多い事。これでは討伐してもしに切れぬ。無数の手がアルトリウスの腹に、首に、急所に迫る――!
 決死の覚悟で、右手にぐわっとオーラを無数の網膜状に分解し、周囲に展開。全てに術者を世界から切り離す術式を編み込み、更には万象を包む時の原理を包括した。アルトリウスの最後の手段、『超克』。必要魔力は世界の外側から汲みあげて、自信の術式を補う。
「……これを使わせるとはな」
 身体全体を『超克』で覆ったアルトリウスは、真白の神々に向かいその柔らかな肢体を屠った。全てに世の理から術者を切り離す楔たる断絶の原理を以て。世界の底に揺蕩い万象を包む時の原理を以て!!肉を、魂を、根源を、存在を、木っ端微塵に砕き割いた!!
 こうなることは分かっていた。自らに触れてしまえば最後、ヒト――らしく、いられないことを。それでもアルトリウスは先へと進む。この先に住まう悪しきヴァンパイアの、その身元へ――。

成功 🔵​🔵​🔴​

メアリー・ベスレム
まぁ、とっても傲慢で悪趣味で
なんてヴァンパイアらしいのかしら!
けれどメアリは果実じゃなくて狼だもの
人喰いなんて喰い殺し返してあげるから

あぁ、だけれど……
【汝は人狼なりや?】を発動し
いいえ、今のメアリは「ただの人間(アリス)」よ
今は、ね?

逃げ遅れ、隠れ損ねた住人の振りをして
哀れに逃げ惑う【演技】をしてみせて
敵をおびき寄せてから【騙し討ち】
「獣腕の人狼」に変身し
獣の狩りに刃物(金属)が必要かしら?
爪牙で引き裂いてあげるから
飛んで逃げようとするのなら
「獣脚の人狼」に変身し
【ジャンプ】で飛翔し追撃を

神様だなんて知らないけれど
人間(アリス)みたいに喰い殺された
哀れでみじめなあなた達
もうお終いにしてあげる




 頭喰らいの悪食悪鬼。まぁまぁまぁ! とってもとっても傲慢で、酷くひどく悪趣味で、なんてなぁんて『ヴァンパイアらしい』のかしら! さぞかし美味しかったのでしょうね。分かるわ、このわたし、メアリー・ベスレム(Rabid Rabbit・f24749)にもそんな頃があったもの。ふふっ嘘よ、ごめんなさい、無かったかもしれないわ。狼少女は嘘が得意なの、ご存じでしょう? ねぇあなた。メアリは果実じゃなくて狼だもの、人喰いなんて逆に喰い殺し返してあげるから。あなたこそ、首を洗って待ってなさい。その前に……あなたの喰い散らかした残飯の始末をしなくちゃね。
 砦の槍杭を打ち壊しながら、真白の神が降臨する。差し伸べるは救済ではなく死の誘い。そんなものをメアリーは手に取らない。シュルシュルと延びてくる蔦をぴょいんと躱し、高台へと飛び移る。あぁ、だけれど……今のメアリは『ただの人間<アリス>』。そう、今は。
 高台から勢いよく降り立って、「きゃああ」と声を上げながら砦の中央目掛けて走る! その様子はまるで逃げ遅れ、隠れ損ねた哀れな住人。逃げ惑う力無き人。砦の中央は円形に広くなっており、戦うには十分な距離を保つことが出来る。それがメアリーの狙い。逃げ惑う人々を追いかけてきたと思ったら、その正体はメアリ、狂暴なうさぎさん。それとも狼だったかしら?
 真白の神を十分に引き寄せるまで泣き真似をし、地に腰を下ろして嫋やかに顔を覆ってみせる。それを見る神の顔はない。ただ無慈悲に、その凶腕を振るおうと拳を掲げ――たのがチャンス! メアリーは『獣腕の人狼』に変身ッ!!
「狩りには刃物が必要かしら?」
 くるりと金属の刃をちらつかせる。舞い散った羽根がギチィと刃を錆びさせる事も厭わず、メアリは宙にナイフを放り投げた。狩刃に注意を逸らされる神。その隙を見逃すはずもなく、狩人たる狼は頭のない身体の中身を暴くように、爪牙で真っ二つに切り裂いた! 血も出ない、臓腑も脈打たない。これでは人形のようだとメアリーは想う。いいえ、人形以下ね。悲鳴のひとつもあげないんじゃ、面白くもなんともないもの。
 さぁ、ナイフなんてお飾りは捨てて。今のメアリーは『獣腕脚の人狼<メアリ>』。道具なんて必要ない!蹂躙された仲間から距離を置こうとする真白の神を、獣脚でもって追いつきその白き足に引っ掻き捕まえる! えいっと渾身の力で引っ張れば、削げ落ちる肉。神は天に助けを求めるように手を高く掲げた。その手を取るものなど誰も居ないと……あなたたちも、そう差し伸ばされてきた手を弾き返してきたでしょうにと、メアリーは脚を引き裂き、腕を齧り取った。
「神様だなんて知らないけれど、人間<アリス>みたいに喰い殺された、哀れでみじめなあなたたち。もうお終いにしてあげる」
 この場は危険と判断した真白の神は、片翼のゆったりした飛翔で宙へと舞い上がる。しかし、その動きはあまりにも緩慢すぎた。再び高台へと昇ったメアリーは、脚に力を入れて本気のジャンプ! 宙飛ぶ神の更にその上から、落ちるようにして獣脚が首を踏み躙った! 地に叩き落され蠢く真白の神に、最後の慈悲を送る。あなたたちを食べたやつを、今度は私達が味見に行くわ、と――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【梓(f25851)と】
今まで人類砦を襲ってきた奴らは
思考や信念は様々でも皆
相手を「人」と認識して絶望に陥れようとしていたけど
今回の奴にとってはただの「食料」
……しかも3時のおやつ感覚、か
こりゃ間違いなくヤバい奴だね
口調だけは軽く、不快感は内に秘め

ふむ、俺の自慢の得物も
あの花弁に触れるとダメになっちゃうようだね
まずは梓のドラゴン達に花弁の掃除を任せる
良い頃合いで自身の手を斬りつけUC発動
新しい花弁を生み出す暇なんて与えないよ
強化したスピードを以て敵の群れに飛び込み
両手のDuoで次々と薙ぎ払っていく

この大鎌は首を刈り取る為のものだけど
既にその首も無い
哀れな神々の羽根を切り落とし心臓を貫いていく


乱獅子・梓
【綾(f02235)と】
喰われて生ゴミみたいに捨てられるのと
喰われるだけ喰われてなお永遠にこき使われるのと……
どちらにしても反吐が出る話だな
今回ばかりは異端の神々にも少し同情してしまう

向こうが数に物言わせるならこちらも数で対抗
UC発動、炎属性のドラゴンを最大数召喚
俺と綾を守るように配置して
広範囲のブレス攻撃を浴びせる
炎の継続ダメージを与えると共に
うざったい花弁を纏めて燃やしていく
これなら綾も攻撃しやすくなるだろう

俺は成竜の焔の背に乗り、上空から観察
綾の死角から攻撃を仕掛ける敵
こっそり砦内部に侵入しようとする敵
などを発見次第ドラゴンを向かわせる

ただの雑用係に堕ちた哀れな神様よ
さっさとおねんねしな




 オブリビオンが一枚岩ではないように、ヴァンパイアもまた多種多様な嗜好を持つ者が多い。人を虐げる事を好むもの、人を弄ぶ事を好むもの。その中でも一等と言っていい程純粋で、それでいて残酷な娘がひとり。しゃくっと齧った頭皮は鋭い牙にかみ砕かれて脳漿を啜る。ぼたぼたと垂れる血は下々の神に掃除をさせて、一人、その甘美な果実に酔いしれる。
「こりゃ間違いなくヤバい奴だね」
 後ろ髪をくしゃっと掻きむしり、灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は口調だけは軽く、不快感はその裡に秘めて呟く。今まで人類砦を襲ってきた奴らは、思考や信念は様々でも、みな相手を「人」として認識した上で絶望に陥れようとしていた。でも、今回の相手は違う。ヴァンパイアの娘にとってはただの食糧、しかも腹を満たすためではない、3時のおやつ感覚だ。この苛立ちを上手く隠せているだろうか?
「喰われて生ゴミみたいに捨てられるのと、喰われるだけ喰われてなお永遠にこき使われるのと……どちらにしても反吐が出る話だな」
 今回ばかりは異端の神々にも少し同情しちまうね、なんて乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)はサングラスをくいとあげた。
 ひらひらと純白の羽根と花弁を舞わせ、ふわふわと浮く神々。見上げる二人は作戦を練る。
「ふむ、俺の自慢の獲物もあの花弁に触れるとダメになっちゃうようだね」
「だったら燃やしちまえばいいさ。草花は炎に弱いって、お約束だろ?」
 敵の数はざっと8体。数の上では不利だが、コンビネーションではこちらに利がある。向こうが数にものを言わせるならと、梓は炎属性を帯びたドラゴンを可能な限り召喚し、神々を圧倒する。その数凡そ80体以上! 梓と綾を護るように前後左右に数体配置して、残りは広範囲の炎のブレスを浴びせかける! 炎上した神々は狂ったように踊り、火を消そうと藻掻き苦しむ。うざったい腐食の花弁も、不可視の蔦も、纏めて燃やしてしまおう。
 ドラゴンの炎は宙を薙ぎ、地に迸り、神々を追い詰めていく。花弁は花火の残滓のようにちらちらと燃え尽きて、その力を発揮することなく灰となった。掃除が完了したなら綾の出番、自身の手の甲をビシャっと斬りつけ、【ヴァーミリオン・トリガー】を発動! 赤と黒した一対の大鎌を諸手に構え、高速移動。新しい花弁を産み出す暇など与えない。敵の群れに飛び込んで、Duoは次々と神々を屠り倒した。
「おーおー、派手にやってんね」
 梓は成竜の焔の背に乗り、状況を上空から観察。綾の死角から攻撃を仕掛けようとする者や、こっそり砦内部に侵入しようとする者が居ないか見張る。幸いにして砦内部に入ろうとする神はいなかったが、神々は数が多い、幾ら綾が神早を得ようとも、対抗できる相手には限度がある。それをサポートするようにドラゴンを向かわせ、綾の鎌の邪魔にならぬよう、それでいて隙を作れるよう指示を与えた。
「どうしたのかな、もっと抗ってみせてよ。こんな一方的に蹂躙したんじゃ、俺が悪者みたいじゃないか」
 言いながらも振るう腕は止めない綾。お前たちだって、生きたいんだろう。だからそんな――首無しになってまで、生にしがみついているんでしょう? 俺はね、戦いは好きよ。でも、弱い者いじめは嫌いなんだ。だからさ。
「演じきってみせてよ、神ってものをさ!」
 ビュルルルっと伸びた蔦が鎌に絡まる。至近距離すぎて梓のドラゴンのブレスでは綾を巻き込んでしまうだろう。いや、イチかバチか。二人の呼吸の見せ所。綾は絡みつかれたDuoの片方を思い切り上に放り投げた! 釣られて視線が――首は無いが、体の向きが――上を見る神。綾の手から離れたなら迷うことは無い、炎竜のブレスが蔦を導線として着火し、体中に回る炎に耐え切れず地面に伏す神。ヒュンヒュンと回りながら落下してくるDuoの片割れをキャッチした綾は、後方の梓にVサインを送る。戦場に於いてそんな余裕があるなんて、本当に肝の据わった奴だと梓は感心した。
「この大鎌は首を刈り取る為のものだけど、既にその首も無い。哀れな神々に、せめて慈悲をあげよう」
 神々の翼を切り落とし、心の臓を貫いていく。びくびく震えて、やがて動かなくなった。悲鳴も、涙も、血も、何も流れない。それは果たして本当に神様だったのだろうか?
「ただの雑用係に堕ちた哀れな神様よ。さっさとおねんねしな」
 上空から見ていた梓も地に足を着けて、綾に駆け寄る。思ったより元気そうだ、というより、何とも言えない雰囲気を漂わせていて……心配になる。
「綾。大丈夫か」
「何?」
「……いや、何でもない。行こう、神々は殺しつくした。あとは、悪食の娘だけだ」
 二人、ゆっくりと砦を歩いていく。地には伏した神々の屍。しかしそれを一々気にしては、この稼業はこなせない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『マーシャ』

POW   :    少し味見させて──ね?
【意識】を向けた対象に、【その生命力を投影した林檎を齧る事】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD   :    七人のこびと
【危機が迫った時に現れる7人の犠牲者】の霊を召喚する。これは【好意を持つ人のキスでしか目覚められない毒】や【毒針】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    林檎滔々仇時雨
【優雅に踊りながら毒林檎】を降らせる事で、戦場全体が【お気に入りの果樹園】と同じ環境に変化する。[お気に入りの果樹園]に適応した者の行動成功率が上昇する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は奇鳥・カイトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●腐った林檎は戻らない
 完熟の青年も、身の柔らかい乙女も、熟しすぎた老人も、まだ青い子供も、まだ生を受けていない腹の中の幼生も。私はあらゆるものを食べてきた。
 もちろん最初は全部食べていたの。でも途中から気付いたわ。どんな人間でも、身の詰まった一番上が一等美味しいのだって。だから私、美味しい果実だけを食べることにしたの。どうせ人間なんて腐るほどいるのだし、しかも、今じゃあ『人類砦』なんてものができているそうじゃない。わざわざ私のための『果樹園』を自ら作り出すなんて、なんて従順で美味しそうな果実なのでしょう。

 紹介が遅れたわね。私はマーシャ。どこにでもいる普通のヴァンパイア。いえ、普通というには少し謙遜がすぎるかしら。私は神を喰らったの。そのお陰で、とっても強靭な肉体と精神力、そして狩人としての知恵と技能を手に入れた。
 あなた達の噂はかねがね。どこぞの領主を殺したり、生け捕りの家畜たちを逃がしているのでしょう? いいのよ、それだけの強さがある相手なら、さぞかしその『果実』も美味しいのでしょう。安心して頂戴、私がじっくり、ゆっくり、味わってあげるから。その身を差し出す事、光栄に思いなさい?

 マーシャは砦の中央広場に降り立ち、猟兵達へと高らかに宣言した。数は猟兵の圧倒的有利。しかし、この娘の力は並大抵のものではない! びりびりと漂う緊張感。先に仕掛けたのは――……!


【特殊ルール】
 『🍎』マークをプレイング冒頭に記載したキャラクター様に限り、人体欠損が発生します。場所は(NG箇所含めて)プレイングに明記してください。プレイング箇所以外の欠損不可という方は、🍎マークの後ろに『×』をつけて下さい。四肢の欠損から失明、難聴といったものまで大抵のものに対応できます。もちろんピアスを引き千切られた程度の小さな欠損でもOKです。
 また、時間経過で治る程度の怪我(骨折・内臓負傷)で済ませたい方はりんごの代わりに『🌸』マークの記載をお願いします(プレイングルールは🍎時と同じです)
 !マーク記載のない肩は絶対に欠損しませんので安心して戦ってくださいませ!
 また、どのような場合でも大成功・成功・苦戦等への判定には影響しません。

 プレイングは9月9日8時31分より受け付けます。締め切りはMSページにて確認をお願いします。
三嵩祇・要
🍎(右足)他×

てふ(f22942)と

神を喰ったなんて正直戦いたくねぇな
お前に食われて有難がるほど腐ってないんでね
全力で抵抗させてもらう

てふを守り切れるのか
敵を倒すしか道はない
積極的に攻撃をしかけ敵の注意を引く

さっきぼうっとしてたてふが心配で時々意識を向けてしまう
それが仇となって
将又てふを守る為に即座に動けたのは怪我の功名か
腕でてふを引き庇う
右足で蹴りを食らわせる
その足を取られて

頭を食われる事はなかったが
死ぬほど痛い
が、痛みに怯んでる場合じゃねぇ

…!
てふの召喚した新しい悪魔に少し驚く
やっぱてふは強いな
大丈夫だ泣くな
てふのお陰で生きて帰れそうだし
どうなったって
ちゃんと家に帰してやるからな


守流芙桜・蝶々
🍎右耳の聴覚(他×)

要くん(f16974)と

人は人、果実なんかじゃない……!
アスモデウス、僕はまだ戦うよ。要くんを守ってあげなきゃ!
要くんが積極的に攻撃してくれてるから、僕もアスモデウスの炎で援護する形で戦うよ
さっきから頭がくらくらするけど、大丈夫……頑張れ、僕……。

……一瞬、何が起こったのかわからなかった
要くんが助けてくれて、でも、目の前の光景は赤く染まっていて……

無我夢中で、僕の呼び出せる一番強い悪魔を呼んでしまう
呼びたくなかったけど、でも、こうしないと、要くんが……!
何でも持っていっていい!僕の大切な人を助けて!!
僕が泣いたってしょうがないのに、溢れる涙が止まらない
ごめんね要くん……




 天上より遣わされし神の一部を喰らったヴァンパイア、マーシャ。その瞳の奥は底知れず紅昏く、見るもの全ての血の流れを見透かしているようにすら思えた。視線を合わせるだけで悪寒が走る。それでも、戦わなければいけないのだ。
「神を喰ったなんて正直戦いたくねぇな。お前に食われて有難がるほど腐ってないんでね」
「人は人、果実なんかじゃない……!」
 要は全力で抵抗の意を示し、蝶々の前にじりっと立ち塞がる。それを見たマーシャは「まぁ!」と喜びの声をあげた。
「我が身を挺して別の果実を護る。なんて素晴らしいんでしょう。素敵ね、そういうの、嫌いじゃあないわ」
 蝶々を守り切れるのか。迷っている時間はない、マーシャを倒す以外に道はないのだ。一歩踏み出て悪魔Jabal Setekhを呼び寄せた。呼ばれた悪魔は苦い顔をする。いや、彼も顔のない悪魔なのだ、実際はどんな表情をしていたかなんてまるでわからないが、雰囲気が物語っている。嫌な雰囲気だ。負ける、とは思わないが……相応の犠牲は覚悟せよ。そんな言葉が脳裏に響いて。Jabal Setekhはマーシャに向かって駆ける!
「まぁ、誰に食べられたの? 私と同じ、美食家かしら? ああ、いいお友達になれそう!」
 うっとりと呟くマーシャに隙は無い。雷電を帯びた破壊の魔術も、林檎を齧って無限に回復するマーシャには意味のない事。此処はお気に入りの果樹園、人類が希望を宿した砦。其処をヴァンパイアのものにさせるわけにはいかなかった。
「アスモデウス……僕はまだ戦うよ。要くんを守ってあげなきゃ!」
 蝶々はくらくらする頭で、使役たるアスモデウスに指示を向ける。炎で要を援護する形をとるが、照準が定まらない。ダメだ、僕は……『誰かを助けられる人』でありたいのに! Jabal Setekhの背後から炎が噴き出す、すかさず要自身が雷電を振り回しマーシャの首に巻き付ける。取った――! と思ったのも束の間、恐ろしい程の怪力で鎖を引き千切られる。
「マジかよ……」
「私は神の力を手に入れたの。こんな鎖、蜘蛛の糸にも劣るわね」
 ちらっと後ろを見る。先ほどからぼぅっとしている蝶々が気になって、目を向ければ、意識を保とうと必死な姿。この戦場には少し、早すぎたか。そう要が思った瞬間。マーシャの脚は一歩で二人の間に入り込む!
「ねぇ、あなた美味しそうね。少し味見をさせて?」
 がぶり、――喰らい付いたのは蝶々の首……ではなく要の右脚。咄嗟に蹴りを入れた形になったそれが、マーシャの牙に食い込んだ。ぶしゃっと血が出る、いいや、肉が削げ堕ちる。ガリっと脛を貫いた牙にふくらはぎを引けば、肉はブチブチブチッと音を立てて引き千切られた! ブシャッと噴き出る鮮血を、マーシャは人拭いして舐めて吟味する。
 ――クソが、死ぬほど痛い。だが死ぬわけじゃない、悼みに怯んでる場合じゃない! 蝶々を庇うように転がり、引き寄せて庇う。マーシャは血で染まった唇を両手を合わせるようにして拭っていた。
「あなた、不味くは無かったわ。でも私が食べたいのはその青い髪の子なの。邪魔しないで」
 マーシャの優しい声が要と蝶々の耳に響く。まずは邪魔な要を食べて、それから蝶々を頂く心算だ。蝶々は一瞬、何が起こったのか分からなかった。要が己を助けてくれて、でも目の前の光景は赤く染まっていて……。無我夢中で、無意識のうちに、己が呼び出せる最強の悪魔を呼び寄せてしまう。本当は呼びたくなかった、呼ぶのは恐ろしかった。でもそうしなければ友達が……要くんが、僕のせいでこれ以上傷ついてしまう!!
「古の盟約に従い参上した。汝の要求を聞こう」
 悪魔は蝶々の頭の中に直接語り掛ける。それは1秒以下の押し問答。時間の概念を覆す悪魔の所業。
「ぼくの大切な人を助けて!!」
「見返りは」
「何でも持ってって良い!!寿命でも、身体でも、なんでも!!」
「その言葉、確かに聞き入れた。契約を果たそう、若き術者よ」
 蝶々の召喚した悪魔ベルゼブブは、白の御霊から氷結の力を操りマーシャの白魚の手を凍らせる! それも一瞬だ、すぐにマーシャは氷を地面に叩きつけて割り、ヒュっと万年氷を舐める。味のしないそれをペっと吐き出して、二人を睨んだ。
「4人がかりだなんて、私も随分と買われているのね。気に入ったわ。精々その足で逃げられるところまで逃げなさい。後でゆっくり、啜ってあげる」
 興味を失くしたかのように別の獲物に向かうマーシャ。危なかった。このまま戦いを続けていたら喰らわれていたのは二人の方だったろう。
「……ってぇ」
「要くん、ごめんね、ごめん……!」
「大丈夫だ、泣くな。てふのお陰で生きて帰れそうだし。どうなったって、ちゃんとお前を家に帰してやるからな」
 ぽんぽんと蝶々の頭を撫でる要。引き千切られた右足はどこにいったのか。砦の下にでも落ちてしまったのか、周囲を見渡しても見つからない。歩くのに少し苦労しそうだな、と思いながら、Jabal Setekhに声を掛ける。
「お前、歩けるか」
「貴様よりは上手く歩行できるだろうな」
「頼む」
「……? 要君、何か言った?」
「……蝶々?」
 要を左して支えに、蝶々は右側に。であれば要の声は右耳から入ってくるはずなのに、何を言ってるかよく聞こえない。どうして、さっきまで煩い位に戦場の音が響いていたのに。
「蝶々、お前」
「?」
「耳、貸してみろ」
 問答無用で要は蝶々の右耳を掴み、普段は絶対に言わない言葉を口にした。聞こえてるなら、自分が恥ずかしいだけで済む。だが……。
「なに……? なにも、聞こえないよ」
「…… ……」
 要はそれ以上、何も言わなかった。再びJabal Setekhに身を預け、ゆっくりと蝶々と共に砦を後にする。蝶々は『何でも持って行っていい』と言った。その代償は――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

セツナ・クラルス
🍎

ねえ
あなたから見て私は『美味しそう』なのかな?
ナイフで自身の手を傷つけ
滴る血液を見せつけるように彼女の方へ掲げ、誘うように薄らと微笑んで

勿論本気で喰われるつもりはない
見切り+第六感で致命傷は避ける

…食べたね?
ふふ、私を食べたね?
このナイフには先の戦いにて使用した毒を仕込んである
ふふ、破魔毒入りの肉を食べた気分はどうかな

……『果樹園』か
つまみ食いなんてはしたないことは躊躇ってしまうが適応せねば、ね?
嘯きながら彼女に噛みつき肉を喰らう

…ふぅん、たいして美味しくないのだね
興味なさげにぺっと吐き出すと口元を拭い、
今更ながら自分の負傷箇所を見つめ
…あの子に怒られてしまうかな




 悪食の娘、その瞳に映るセツナは果たして『美味しそう』なのか、ナイフで自身の手を斬りつけて、滴る血液を見せつけるようにマーシャの方へ掲げ、薄らと微笑む。勿論本気で食われる心算などない、類稀な第六感と研ぎ澄まされた見切りで致命傷は避ける予定だ。
「私に捧げて下さるの?」
「どうでしょうね。一口、味見でもしてみては?」
 一歩というには俊足なマーシャの脚がセツナに忍び寄る。滴る血液は甘い香りを漂わせ、ヴァンパイアの本能を刺激した。ペロリ、一口舐めて……ガっと手首を噛み千切る! 反射で反対の手に握ったナイフでマーシャを切ろうとするが指でピッと受け止められる。しかし、ぶしゃっと溢れ出た血を啜ったマーシャは一度セツナから離れた。これは、普通の。甘美なだけの血じゃない!
 今更気付いてももう遅い。食べたね? この私を、喰らったね? このナイフには先の戦いで使用した毒を仕込んである。破魔を存分にねじ込んだ毒入りの肉を食べた気分はどうかな?
「……おいしくないわ、こんなもの。毒林檎だわ、腐った林檎だわ!! ああ、気分が悪い。口直しをしなければ……」
「させないよ」
 ナイフをその白魚の手目掛けて投げる! 毒の回った手は痺れ、一時であるが自由を奪う。その隙に、セツナはマーシャに近づいた。
 つまみ食いなんてはしたないことは躊躇ってしまうが、適応せねば、ね? 嘯きながらマーシャに噛みつき肉を喰らう。がじりと噛みつき抉り取った肩の肉は固くて、しかしとろけるような甘い果汁がじわりと溢れ出てくる。なるほど、触感より味を楽しむタイプか。悪いけど、たいして美味しくないなというのがセツナの感想だった。興味なさげにぺっと吐き出し、口元を上品に拭う。
「ッ――! 私は食べる側なのよ。どうしてあなたなんかに食べられなければいけないの」
「興味本位ですよ。あなただって、最初はそうだったのでしょう?」
 その通り、マーシャも最初は人を啜り齧り喰らうヴァンパイアそのものだった。それがいつしか、頭蓋を喰らう『美食家』へと変貌してしまった。セツナはマーシャを憐れんだ。もしヒトだけで満足しているならば、こんな予知には引っかからなかっただろう。もしマーシャの心が人らしく、余った遺体を埋めているようなら、このような悲劇は起こらなかっただろうと。
 しかし、すべての想像は所詮幻想に過ぎない。セツナは抉り取られた左手の手首を見て、薄らと微笑んだ。
「あの子に怒られてしまうかな」
 どうやってこの傷を癒そうか。SSWのバイオ技術? 或いはUDCアースの義手? 少しでも勢いよく振ればぶらーんと吹き飛んでしまいそうな手首を、大事だいじに握りしめ。セツナは自由になる脚でマーシャの脇腹を蹴りあげた! 「きゃっ!」なんて可愛らしい声をあげるマーシャを尻目に、じくじくと痛む左腕を庇う。さて、早く治療しないとな。雷をおとされるのは痛いのよりごめんだと、セツナの意識は既に戦場外に向けられていた――。

成功 🔵​🔵​🔴​

灰神楽・綾
【不死蝶】🌸
俺もダンピールだからちょっとした吸血欲求はあるけど
あの子は全く心惹かれないねぇ
血を啜るまでもなく分かるよ、不味そうって

ナイフを次々に投げながら接近
牽制と、敵の意識をひたすら俺に向けさせるのが狙い
齧られた林檎を通して身体に傷が増えても
激痛耐性で耐えつつ距離詰める

梓の使い魔に林檎を叩き落としてもらったら
敢えてリーチの短いナイフを持ち斬りかかる
「俺の腕に直接齧りつく」のを誘い込むようにね
Phantomによるオーラ防御で可能な限りダメージに備え

まんまと齧りついてきたら
痛みに耐え不敵に笑いながらUC発動
俺を守ってくれた紅い蝶たちは
無数の鎖へと変化し敵を捕縛
さぁ梓、あとは焼き林檎にしちゃって


乱獅子・梓
【不死蝶】
見た目は可憐な少女のようだが
中身はさぞドロドロに腐っているんだろうな
綺麗な人間を喰らって汚い血と肉になるだなんて
喰われた奴らが全く浮かばれない

敵の意識が綾に向いている隙に
使い魔の颯をそっと放つ
闇に紛れ目立たないように高速で接敵させ
…今だ!綾の射程圏内に届くかというタイミングで
死角から敵の手元を攻撃
狙いは邪魔な林檎を叩き落とすこと

しくじれば利き腕を失いかねないような
綾の捨て身の捕縛が成功したら(…正直心臓に悪い)
成竜の焔の背に乗り一気に接近
UC発動、高火力のブレス攻撃を浴びせる

ハハッ、焼き林檎か
上手いこと言ったが、そいつには似合わないな
…腐りきった林檎を焼却処分するだけだ




 薔薇色の瞳に、栗色の艶髪、小さな口は慎ましく、繊細な指は白樺の枝のよう。ヴァンパイア・マーシャはそんな、だれがどう見ても美しい娘だった。……ガワだけは。綾も梓も、その見た目と中身のギャップに反吐が出そうな程見抜いていた。
「俺もダンピールだからちょっとした吸血欲求はあるけど、あの子は全く心惹かれないねぇ」
「見た目は可憐な少女のようだが、中身はさぞドロドロに腐っているんだろうな」
「ほーんと! 血を啜るまでもなく分かるよ、不味そうって」
 その見た目に惑わされる者も、決して居なくはないだろう。破滅へ向かうと分かっていながら、首を差し出す者もいたかもしれない。それでも、この凶悪な娘に、それほどの価値等ない。
 手品のようにナイフを次々取り出して、マーシャに向かい投げつけながら接近する綾。牽制と同時に、マーシャの意識をひたすら己に向けさせるのが狙い。ナイフの当たった部位は噛り付いた林檎で即時回復されるが、その分時間は喰う。同時に毒林檎から綾へと通る臓腑への痛み、外部への裂傷。――あーあ、痛いな。こんな小娘に、苦みを味合わされるなんてね。激痛を堪えるだけの耐性がなければ、のたうち回っていたかもしれない。それを心底に押し込めて……一歩一歩、距離を詰めていく。
 敵の意識が綾に向いている隙を狙い、使い魔である颯をそっと気付かれないように慎重に放つ。闇と影に隠れ、目立たないように高速で移動させ、綾のナイフの射程ギリギリのところまで接近したら――今だ! タイミングを見計らいマーシャの背後、死角から手元の林檎目掛けて攻撃を仕掛ける! 毒色の林檎がごろりと落ちて、驚いた娘は慌てて拾おうとするが……それよりも先に綾のナイフがギラリと閃く。敢えてリーチの短いナイフに持ち替えて、娘を誘う。まるで「俺の腕に直接噛り付いておいでよ」と言わんばかりに。
 マーシャは素早く林檎を拾うと、口を開け牙を剥き出しにして、綾の顔を庇うように置かれた腕に噛り付いた! ガジュっと喰いこむ牙の痛みは、紅く光る蝶の群れを成しはらはらと痛みを拡散させる。
「――ッ、痛ったいねェ」
「綾!」
 梓の声に無言でウインクを飛ばし、痛みに耐えながら不敵な笑みを浮かべる。一度噛り付いたなら、それが命取り。
「……離してあげないから、覚悟してね」
 紅蝶の化身Phantomが、綾の意思無しでは破壊出来ない強靭な鎖となってマーシャを捕縛する。痛みこそ無いが、自由を奪われては食い破る事すら出来ない! 一度口を離しても、もう遅い。しくじったなら利き腕を失いかねないような綾の捨て身の捕縛に合わせ、梓は焔の背に乗り一気に接近。炎を司る成竜のブレスを浴びせるべく、すぅっと息を吸い込む焔。その間に綾はマーシャから距離を取り十二分に焔の力が発揮できるように場を整えた。
「梓っ、焼き林檎にしちゃってよ!」
「ハハッ、焼き林檎か。上手い事言ったが、こいつには似合わないな」
 ――精々が腐った林檎を焼却処分するだけだ。ゴゥっと吐かれた焔の烈火が、マーシャを包み込む! 彼女は動きもせず、ただ立ち尽くしその炎を受け入れているように見えた。効いていないのか? いや……。
 炎のブレスが終わった時、マーシャはそこでひたすら毒色の林檎を貪っていた。しゃくしゃく。ごくごく。彼女にとって果実とは食糧であると同時にヴァンパイアの権能を示す糧でもある。手内の林檎を喰らう事で、マーシャは炎に耐え忍んでいた。
「そりゃ反則じゃないの、お嬢さん」
「流石に簡単には倒れてくれないか」
「……熱かったわ、すごく。でも、お陰で良い焼き加減の林檎を食べられた。そこだけは感謝してあげる。さて、どちらから先に頂きましょう?」
 距離的に近いのは綾だが、再び鎖で締め付けられるのは厄介だ。であればと、マーシャの矛先は梓に向かう! 一足飛びで焔に接近した娘が牙を立てたのは……焔! 梓を庇うように身を挺して庇ったのだ。梓の怒号がとぶ!
「焔ッ!」
 墜落した焔の首からジュルっと血を啜るマーシャだが、すぐに吐き出す。どうやらお気に召さなかったよう。仮にも炎の竜、中からじゅくじゅくに焼けるのを畏れたか。
「竜なんてダメね、特に人に飼われてるようなものじゃあ。やっぱり私、あなたたちがいいわ」
 うっとりした目で梓に目を向けるが、それは綾が許さない。ジャラリ……鎖を引き摺る音がして、マーシャの背後で怒気を孕んだ言葉が紡がれる。
「梓を喰らうって? 馬鹿言わないでよ。そんなこと、俺がゆるすと思う?」
「まぁ、私の林檎を喰らっておいて、まだそんな事が言えるの」
 普通だったら、悶え苦しむのにね。なぁんて笑うマーシャはあくまで上位者。自身の勝利を確信している者の動き。どろりと蕩ける焼き毒林檎をしゃくりと齧り、綾の臓腑に噛みつく。ぐぅっと響く痛みが綾の意識を乱す。こんなところで負けてられない、俺は。俺達は――。
「人類砦の希望なんだ――ッ!」
 綾に視線を向けるマーシャへ、梓の咄嗟の蹴り。姿勢を崩したところを綾の鎖が巻き付き、砦へと叩きつける!
「綾、退くぞ」
「……」
「内臓どうなってんだよ」
「破裂。骨も折れてる。痛いよ、すごく」
「猟兵は俺達だけじゃない。今は……お前の方が大事だ」
「んー」
 マーシャが起き上がる前に、二人は手負いの焔に乗って場を後にする。残りの猟兵達が彼女を屠ってくれると信じて……――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴィリヤ・カヤラ
🍎
右目失明

マーシャさんは前から血以外も食べてたんだね。
頭は食べて体はポイ捨てなんてお行儀悪すぎるよ?

神の力も持ってるのが面倒そうだけど頑張らないとね、
人間は多いけど減りすぎると将来の吸血対象が減っちゃうかもだし。

毒の林檎も当たったら良くなさそうだから、
月輪か宵闇で当たりそうなのは弾いていくね。
敵には【四精儀】で氷の竜巻を作ってぶつけてみようか。
隙が出来たら月輪で足止めを狙って、
一瞬でも止まったら宵闇で斬りにいくね。
怪我で痛くても痛がるのも敵から目を離すのも後にして、
チャンスがあれば攻撃するけど、
死ぬ気はないから危なかったら逃げよう。
欠損部分は月輪で覆って止血するね。

アドリブ、絡み歓迎




「マーシャさんは前から血以外も食べてたんだね」
 ヴィリヤは優しい口調でマーシャに話しかける。しかし、でもね、と続けて。マーシャはなぁに?と首を傾げた。唇に手を当て、小さい子に言い聞かせるようにヴィリヤは説く。
「頭は食べて体はポイ捨てなんてお行儀悪すぎるよ?」
「だって、美味しいところだけ食べたいじゃない。体は普通なんだもの、そんなの、血を啜るのと変わらないわ」
 あくまで自分は悪くないとでも言うようなマーシャに、半分呆れる。これは、頑張らないといけないと。神の力を持っているのが厄介だけれど、戦い続ければ無傷ではいられまい。それに……人間は多いけど、減りすぎると将来の吸血対象が減っちゃうかもだし、なんてのは、ダンピールの性質か。
 林檎滔々仇時雨。優雅に踊りながら手にした林檎を宙に放れば、砦は一面果樹園と化す。それは普通の『果樹園』ではない。マーシャの考える理想の『果樹園』だ。人が蔦に絡み、首を差し出す。そんな場所。この果樹園で身を差し出しているのはかつて喰われた者達だろうか、首に大きな裂傷がある。痛々しい。
「私の果樹園に、ようこそ。ねぇ、あなたの名前を教えて下さらない?」
「私? 私はヴィリヤだよ」
「そう。ふふ……ねぇヴィリヤ、一緒にお茶会を開かない? 貴女には一等の生首をあげてもいいわよ!」
 にこりと微笑むマーシャは、同じ吸血を糧とするヴィリヤを気に入った様子で、手を差し伸べてくる。でも残念、少し悪趣味が過ぎるかな。ヴィリヤはふるふると首と手を振って、その申し出を断る。そう……と残念そうな表情をしたのも束の間、マーシャは見下すような瞳でヴィリヤを睨みつけた。
「折角同じ時間を過ごせると思ったのに、残念だわ。ならせめて、貴女を味見させて頂戴」
 グっと差し迫った娘の速度は尋常ではない! この異常な空間が、彼女の力を更に強化させている! 手を顔の前で交差させ、首を守ろうとするヴィリヤに、マーシャは細い指でその腕を通り抜け右目に手を掛ける。
 ぐぃっ――ぎゅぽ。
「ッあああああッ――!!」
 マーシャの白魚の指はヴィリヤの右目の眼球を抜き取り、しゅっと距離を取る。残った左目で確り見ろと言うように、ぺろりと抜き出した眼球を舐めあげた。まだびくびくと震え、神経が滴るそれに、ゆっくりと噛り付く。柔らかい、まるで餅のように弾力がある。「血を求める者同士、やっぱり嗜好は同じなのかしら」……そう言いながら半分喰らうと、残りは一気に口に入れ喉越し爽やかに飲み干した。右目を抜かれたヴィリヤは其処に手をやる、何も見えない、ただただ痛みと喪失感が其処にある。嗚呼、私は――失ったんだ。
「貴女、とても美味しいわ。眼だけでこれだけなんだもの、頭はさぞかし極上なのでしょう。ねぇ、一緒に食べてくれないなら、その頭……私に頂戴?」
 にこりと微笑んだマーシャはヴィリヤへ毒林檎の雨を降らせる! 当たったら良くなさそう、なんて本能で分かる。痛みを堪え、瞳から流れ出る血を代償に月輪を発動、ばちんばちんと弾き飛ばしていく。【四精儀】で地に眠る属性を呼び起こし、氷の竜巻を産み出してマーシャへと向かわせる!
 これが中々当たらない。仕方ない、こちらは片目を失っているのだから。でも、避けるという事は隙が生まれるという事。その合間を狙い、ヴィリヤは影に潜ませた月輪を腕のように使いマーシャを絡めとる。そして一瞬動きが止まった瞬間に合わせ、黒き蛇腹剣・宵闇で腹を切り裂く!!
「!!――っ、は」
 腹に直接喰らうダメージは如何ほどのものか。宵闇と月輪の拘束が解け、マーシャはその辺にあった『果実』をぶちりと捥ぎ取り林檎へと変化させると、しゃくしゃくと咀嚼する。見る間に傷口は回復したが、破れた服はそのままだ。
「……とっても痛かったわ。でも。貴女のおいしさに免じて、今回はゆるしてあげる」
 それは食した眼球への感謝か。マーシャはこれ以上ヴィリヤを攻撃する気は無いようだ。尤も、ヴィリヤ自身もかなり限界が近い。失った右目、そこから溢れる血と行使した月輪の血液、これ以上戦うのは圧倒的に不利! 右目を月輪で止血しながら、ヴィリヤは一歩後退した。
「私もまだ死ねないからね……」
 今は無理をする時じゃない。大丈夫、相手は燃えて、腹に一発喰らって、毒を貰い、氷漬けになっている。決して無傷ではないのだ。だったら、後の猟兵に任せて、今は退散しよう。戦場から離脱するヴィリヤを、名残惜しそうにマーシャは見つめていた――。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
🍎→🍎

…あーあ。酷い事をするのね、貴女
人の体をこんな虫食いだらけにして…

…ほら、こんなに血が流れて…もったいないと思わない?

引き続き【千変の型】で闇に紛れて、
神殺しの黒炎を纏う大鎌で暗殺を試みるが、
服に不具合が生じて撃退され戦闘不能に

【血の封印】とUCが発動して真の姿になり、
再度、欠損したら魂と生命力を吸収し限界突破した治癒能力で回復
魔力を溜めた怪力で敵を乱れ撃ち迎撃するわ

…この果樹園の果実は皆、貴女の犠牲者達で形作られているのね

私も少し、味見させてもらったわ?

…此方こそ挨拶が遅れたわね。私はリーヴェ
普段はこの愚かな娘の中で眠っているの

さあ、吸血鬼同士の闘争、喰らい合いを始めましょうか?




 服を破られて、少し恥ずかしそうなマーシャは、次の獲物に目を付けた。白銀の髪に紫水晶の瞳、凛々しくも微睡みを湛えたその娘――リーヴァルディを。一方のリーヴァルディは冷たい眼でマーシャを見遣る。
「……あーあ。酷い事をするのね、貴女。人の体をこんな虫食いだらけにして……」
 其処にいるのは紛れもなくリーヴァルディであるのに、いつもと様子が違う。可憐で淑女な彼女とはまるで違う、ダンピールの様相を呈した娘。
「……ほら、こんなに血が流れて……もったいないと思わない?」
「なら、私と一緒に食べましょう? 私は頭を、貴女は血を啜ればいい。それなら捨てるところは少ないはずよ」
 ああ、まるで通じない。この子には、少しお灸が必要ね。千変の型で闇に紛れながら衣服を瞬時に着替え、同時に神殺しの黒炎を纏う大鎌で暗殺を試みるが……この娘、強い! 一方的な蹂躙など目もくれず、衣服が変わる一瞬の隙をついて右手首を引き上げると、そのまま掌に噛みついた! ブシャっと溢れ出る鮮血が折角変えた衣を汚す。マーシャは指から掌までがじがじと咀嚼し、手首にたどり着いたところで暴れるリーヴァルディに気付き手を離した。
「美味しかったわ。でもあなた、もっと美味しい姿をもっているんでしょう」
 それを見せて頂戴! と、両手を広げ祝福するマーシャのなんと神々しい事! 流石神を喰らっただけのことはある。そして衣服の不都合によって撃退されたリーヴァルディは、夕焼け空に紅い月を召喚し、天空を支配する真の姿として君臨する。
「……この果樹園の果実は皆、貴女の犠牲者達で形作られているのね」
 私も少し、味見させてもらったわ? とは詭弁か、事実か。ひらりと舞って改めてマーシャと向き合うリーヴァルディだったもの。
「……失敬、挨拶が遅れたわね。私はリーヴェ、普段はこの愚かな娘の中で眠っているの」
 宜しくして下さる? と微笑み、リーヴェは魂を吸収する月光を背負い、一気に加速ッ! マーシャ目掛けて過去を刻む大鎌を片手で易々と振るう! アンドゥ、トロワで一回転。揺れるスカートは蝶のよう。残った左手でくるりと回した鎌は、マーシャの顔面に引っかかり、捉える!
「頂くわ」
「あげない」
「!?」
 マーシャは歯で喰いこむ鎌を噛んだなら、そのままがじりと刃を噛み砕く。グリムリーパー、リーヴァルディの相棒を、この娘はガリガリと、まるで固い飴を舐めるかのように口の中で躍らせた。リーヴェのたえず流れる右腕を片手で軽々と引っ掴むと、ぎゅうっと握りしめて思い切り啜る。ジュルルと一気に失血する感覚に意識が朦朧とする。
 ああでも……駄目よリーヴェ。刃を折られ、手首から先が無くなろうと。ここで立ち止まるわけにはいかないの。私は神祖なる者なのだから……! 左手を振りかぶりマーシャの鳩尾に肘鉄を喰らわせ、彼女の吸血から逃れる。さぁ、ここからが本番よ。私の刃は一つじゃない。
「こんなところで斃れるなんて、あなたも詰まらないでしょう? さぁ、吸血鬼同士の闘争、喰らい合いを始めましょうか?」
 真っ赤な月が、戦場に満ちるありとあらゆる生命を蝕んでいく――。

成功 🔵​🔵​🔴​

レジー・スィニ
🍎

ジェイ(f01070)

Hey
生きてる?

くたばってるかと思った。
アレ、神様を喰らったって、バカバカしいよね。

ジェイ、行こっか
神様だとか領主様だとか俺は知らないよ。
喰われるなら喰い返すだけ。

だよね?

頭が欲しい?ざーんねん、頭はあげらんないの。
耳くらいならいいよ。
誰の声も聞こえない。
俺のやりたいように出来る。

俺と駒吉が隙を作ってあげる。
その間にこいつを倒しちゃってよ。
懐に飛び込んでの蹴りと刀を使っての妨害。
足を狙う。

あわよくば、その場に転がってくれないかな。
邪魔なんだよね。
家畜、家畜って、それしか言えないの?

俺はグルメなの。
お前みたいな奴じゃ満足できないや。


ジェイ・バグショット
🌸
レジー(f24074)

あんな雑魚共にやられると思ったか?
寝言は寝て言えよ。
神様食ってイキってるガキか…痛いな。

あぁ、行くぞレジー。
悪食なら俺だって似たようなものだ。

レジーの言葉にニヤリと頷いて

なんだ、耳でもくれてやるなんて
随分と優しいじゃねぇか。
お前にもそんな優しさがあったんだなァ
いつものようにニヤニヤと軽口

お手並み拝見と行こうじゃねぇの。
レジーが作る隙に併せて放つ拷問具は『首刎ねマリー』
拘束具で敵を捕え、ギロチン刃が対象を切断する

落とした首を齧ってやろうか?
さぞかし甘い味がするんだろうな。

皮肉るだけで本気で齧るつもりなんて無い。
だって不味そうだろ?ヴァンパイアの肉なんて寒気がするだけだ。




 お互いこんなところで出会うとは思わなかったというのが第一印象か。あるいは、お前なら来ると睨んでいたか。ともかく、レジーとジェイは戦場でまみえ、冗談のような軽口を交わし合う。
「Hey Boy、生きてる? くたばってるかと思った」
「あんな雑魚共にやられると思ったか? 寝言は寝て言えよ」
 おや、こんな可愛いお目目が開いてるのが見えないのかい。と、三日月のように眼も口も弧を描いてレジーが笑えば、ジェイは「言ってろ」と手をふりふり、短くあしらう。敵は一体、ただそれがとてつもなく強い。普通に戦って勝てないことは本能が悟っていた。だがしかし、そこで恐れ戦いて逃げかえるような弱虫とは二人とも違った。一人では死ぬかもしれない。でも、あるいは二人なら。
「アレ、神様を喰らったって、バカバカしいよね」
「すげぇモン食って自分もすごくなった気でいるイキったガキか……痛いな」
 二人の声にムっとしたのか、マーシャはふわりと浮いて宙から紅い眼で二人を見下ろす。唇には真っ赤な口紅を、髪には鮮血を、衣服には重たいペンキを載せているのにも関わらず、その所作は優雅。がじっと先ほどの獲物の肉を貪る娘は、物語に出てくる悪魔そのものだ。
「行こっか、ジェイ。神様だとか領主様だとか俺は知らないよ。喰われるなら喰い返すだけ」
 レジーの言葉にニヤリと頷いて、ジェイは五点一式拘束特化型拷問具『ウュズミガ』を展開する。
「ああ、行くぞレジー。悪食なら俺だって似たようなものだ」
 だよねー? と言うや否や、レジーはぴょんぴょんと砦の高所を平気で駆け上がり、マーシャの飛ぶ砦中央に跳ねた! そのまま両手を握りしめ、振り上げて、がつんと脳天に拳を叩き入れようとするが……片腕で受け止められ、マーシャは鞭をしならせるようにバチンと地面に叩きつける!! がっと肺に溜まった空気が一気に抜けて、ヒュウっと一瞬目の前が暗くなった。
「少し待てよ。コイツは時間がかかるんだ、一人で突っ走ってどうする」
 折角、少なくとも、この戦場に於いては背中を預けられる仲間だというのに。早々に離脱されては困る。
「頑丈なのね。人間なら肺が割れていたでしょうに」
 ふわりとわざわざ二人の射程に舞い降りたマーシャは余裕の笑み。しゃくっと齧った『果実』は、果たしてどんな容をしていた?
「頭が欲しいの。ねぇ、どちらからでもいいわ。私に頂戴。猟兵っていうのは皆頑固で、中々そこだけは譲ってくれないの」
 くすくすと朗らかに笑う少女の邪悪な笑みに、二人とも吐き気を催す。はて、知り合いにも悪食の娘がいたが、こんな反吐が出るような笑い方はしなかった。もっと可愛く元気で……愛嬌があった。それだというのにこの娘は、上辺だけは美しく取り繕っているが、中身はどろどろの瀝青塗れ!! ああ、気持ち悪いな、こんな奴に、人々は喰われて逝ったのか――。
「頭が欲しいィ? ざーんねん、頭はあげらんないの。そこは俺にとっても大事だし。ま、でも……耳くらいならいいよ」
「なんだ、耳でもくれてやるなんて随分とお優しいじゃねぇか。お前にもそんな優しさがあったんだなァ」
 いつものようにニヤニヤと軽口を叩くジェイは、壱の手枷・弐の口枷を用意しマーシャへと差し向ける。この程度の拘束はなんのその、かといって喰らうのも煩わしいと叩き落しながら、マーシャはぎゅっと背を低くし一気にレジーへと攻寄る! 来たな、っと二人が同時に思った瞬間! 参の足枷と肆の首輪、伍の鎖が同時に発動、娘の動きを鈍らせる。しかしながら勢いを止めきることは出来ず、はしたなく大きく開いた口ががちんとレジーの耳に噛り付き……。
「……ッてぇ~」
 ギュジャっと首を振りながらも決して噛みついた歯は離さず、レジーの左耳を根元から引き千切る!! どくどくと溢れた血が耳の穴の中に入ってきて煩わしい。
「まぁまぁね」
 咀嚼しながら言う娘は簡潔に感想を言い上げた。まだジェイの拘束は続いているというのに、意に介した風もない。
 あーあ、本当に食うなんて。もう知らないよ。誰の声も聞こえない、俺のやりたいように出来る。いいや、する。お前、後悔するよ――レジーの言葉は果たしてマーシャに届いたか。
「ジェイ、俺と駒吉が隙を作ってあげる。その間にこいつを倒しちゃってよ」
「出来んのか?」
「あーあー、何も聞こえないね。作戦伝言おーわりっ!」
 レジーは駒吉を手にマーシャの懐目掛け、ごろごろと転がるように突っ込んでゆく! 耳の痛みも気にならない、戦闘意欲がどくどく出ている。
「やれやれ、言うだけ言ってあとやるのは俺かよ。ンじゃお手並み拝見と行こうじゃねぇの」
 刀と蹴りを巧みに使い分け攻め入る。上段に蹴りを、下段には駒吉の一閃を、顔面には頭突きを。踏み込んでは退いてヒット&アウェイ。段々と慣れてきたマーシャは少し食傷気味。つまらなさそうに蹴り上げられたレジーの脚を掴んで、ジェイに向かいぶん投げる! 刃が上になるように……狙いを定めてぽーんと放る!
「「うぉわ!?」」
 咄嗟に手を引っ込めるがもう遅い。ぐさりとジェイの脇腹に刺さった駒吉は、つぅーっと紅い線を作り手を濡らした。こいつは悪くない、という風に、駒吉を庇うよう抱きかかえるレジー。
「……ごめ、」
「準備完了だ。行け、レジー!」
「…… ……っ」
 何も聞こえてない。聞こえないったら! そう脳裏に焼き付けた自身の心を反復し、レジーは耳が裂けるほどの雄叫びを上げながらマーシャに斬りかかった! 一心不乱の斬りつけに軌道も何もない。照準を見誤った娘はざっくりとその腕を割かれ血を流す。ぎろりとレジーを睨みつける目にキっとにらみ返して、踊る脚に向かって再度蹴りをぶち入れた!
「ッ痛いじゃない。家畜は家畜の道を歩みなさい」
「家畜家畜って、それしか言えないの?」
「戯言。その首頂くわ」
「――させっかよ。貰うぞ、その甘い血ごと」
 準備完了。ジェイのギロチン型拷問具『首刎ねマリー』がマーシャを捕える。首を断頭台に括りつけ、もらった――そう思った刹那、拷問具がガツンとマーシャの首を刈り取る。殺した。そう思ったのに。
「あーあ、酷いじゃない。私の首は誰にも食べさせないわ」
 転がったマーシャの口が喋った。頭を失ったにも関わらず、すたすたと歩き頭の元まで行くと、ひょいと拾い上げて首を元の位置に持っていく。そして一口、しゃりっと手にした毒林檎を齧れば、首の皮がつながって、あっという間に元通り。
「化け物じゃん」
「みてぇだな。落とした首を齧ってやろうかと思ったが、マジでやらなくて良かったぜ」
 不味そうだし。それだけじゃない、ヴァンパイアの肉なんて寒気がするだけだ。その通り、こんな化け物の肉を喰らいでもしたら、どんな変調を来すかわかったものではない! 娘は首をくきくきと鳴らして調子を確かめると、改めて自分の腕から流れる血を舐めた。
「極上の美酒を流した罪、あなた達の命で償わせてあげる」
「はっ、俺はグルメなの。お前みたいなやつじゃ満足できないや」
「言えてンな。そうホイホイ美食家がいてたまるかよ」
 ジェイの腹部からどくどくと流れる血を、マーシャはじっとみつめていた。次の目標は其処になるだろう。狙いが定まっているなら対処もしやすい。レジーは駒吉を、ジェイは拷問具を構え、次の一手に打って出た――!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

故無・屍
🌸

…フン、行儀はクソだが確かに知恵も力も伊達じゃあねェらしい。
独力が強けりゃどうにかなるって相手でもねェな。

なら、俺が攻めるよりは周りの攻撃の確実性を上げる方が効率的だ。
時間と隙は作ってやる。だが、長く保つとは思うんじゃねェぞ。
精々死ぬ気で生き残れ、お前らは住民どもに希望を見せてやるんだろうが。


UCを発動、相手の攻撃を自分に引き付け、
限界突破、継戦能力、時間稼ぎ、第六感、野生の勘、見切りを用い
少しでもダメージを軽減しつつ周りの猟兵達が全力で攻撃し続けられる
時間を稼ぐ
隙を見て怪力、2回攻撃を用いたカウンターも交えて


…ッチ、馬鹿力が。
動きを止めれば意識が飛ぶな。
――なら、動き続ければいいだけだ。


アルトリウス・セレスタイト
もう食事は必要はないぞ
骸の海には飢えもなかろう

目標の様子は戦況と同時に『天光』で随時把握
必要魔力は『超克』にて“世界の外”から汲み上げる

絢爛を起動
起点は目の前の空気
因果と断絶の原理を以て戦域の空間を支配
戦域全てを、オブリビオンだけを斬る斬撃で埋め尽くす
食われた神も既にオブリビオンであれば神性も刻まれるだろう

斬るだけで簡単に死にはしなかろうが、「斬られていない時間がない」のであれば、まともな動きは期待できまい

とは言えそれだけで封殺とも思えん
『天光』で確実に見切り、『励起』で自身の能力を底上げし回避
目標消滅ないし離脱まで攻勢は継続する

※アドリブ歓迎




 行儀、最悪。しかし知恵と力は伊達じゃない。独力が強ければどうにかなるって相手でもないと、屍は周囲を見渡した。死屍累々、傷ついた猟兵が転がっている。こりゃ戦線も危ういかと思ったところで、銀髪の猟兵がマーシャの背後から襲いかかるのを目にした。
 ラッキーだ。屍は自分で攻めるより、周囲の確実性をあげる術に長けているし、その方が効率的とも知っている。それを知ってか知らずか、マーシャを挟んだ向かい、アルトリウスは『天光』の輝きで以って状況を把握しながら斬撃を放つ。
「もう食事は必要ないぞ。骸の海には飢えもなかろう」
「嫌よ。あんなところ、もう二度と還るつもりはないの。それよりも、ねぇ。あなたの果実を頂戴?」
 戦況は常に動いている。マーシャの動き、アルトリウスの動き、そして屍のサポート。全てが一つになり、状況を産み出している。先に動いたのはアルトリウス、目の前の空気を起点とし、【絢爛】を発動ッ! 因果と断絶の原理を以て戦域の空間を支配する。この血に濡れた地獄めいた場所を、オブリビオンだけを斬る斬撃で埋め尽くす!!
 それをサポートするのは瞬時に状況を理解した屍の捨て身の手札。時間と隙は作ってやる……だが長く保つとは思うなかれ。精々死ぬ気で生き残れ――お前は、お前らは、砦の住民どもに希望を見せつけてやるんだろうが。
 世界に暗夜の帳が落ちる。真っ赤だった月は隠れ、まるで世界にマーシャと屍だけとなったかのように暗転する。誰もいない、何も聞こえない。であれば、目の前の獲物を屠るのみ。
「あの子を庇ったの? ふふ、いい子ね……ご褒美に一等上等なところは最後にしてあげる」
 野生の勘を応用した見切り。第六感から紡がれる逃げの一手。時間稼ぎはじりじりと追い詰められていく。それでも屍は脚が、腕が、脳みそが焼き切れる限界まで走って、奔って、アルトリウスの攻撃が最大限のタイミングで発動する瞬間を見極め逃げる!
 しかしそれも限界がある。マーシャの鋭い爪が背後からぐじゅっと左の肺に突き刺さった。クッソ痛ェ。馬鹿か、強化人間つったってなぁ、構造は人間と変わらねぇんだぞとため息と呼吸を同時に行って――世界は開闢する。
「お前の時間、有意義に使わせてもらった」
 気付いた時には、マーシャの身体には無数の切り傷が刻まれていた。ぶしゃっと吹き上がる血に、マーシャも手を退いて自身の身体を抱きしめその場に座り込む。
「あ。あ――何……?」
「『斬られていない時間がない』のであれば、少しは効くだろう?」
 屍が作り出した暗夜の時間の間中、マーシャはずっと斬り刻まれていた。屍に蹴りを入れ、腕の骨を折り、脚の腱をきり、肺にひと杭入れたその時さえ――!
「私を……傷つけようというの。人間の分際で、家畜の分際で!」
「ん……」
「おいアンタ、油断すんなよ」
 思考を巡らすアルトリウスをぼぅっとしていると見た屍は、腰をどついて喝を入れる。それにのんべんだらりと相槌を返す概念干渉のサイキッカー。はぁはぁと肩で息をする屍へ、アルトリウスは大丈夫かと声と手を掛けるが、なんのそのと屍はその手を払いのける。
「まだ死なないのかよ、こいつぁ」
「概念の上を行く存在……神を喰らって摂理をも越えたか……?」
「ハァ!?」
「分らない。封殺できていない以上、油断すべきではない。お前、もう一度アレをやれ」
「てめぇフザケてんのか!?」
 勤めて冷静なアルトリウスに対し、屍は血管がブチ切れそうになった。お前のサポートに俺は足りなかったってか。上等だ、だったらもう一回やってやるよ。その代わり。
「次は失敗るんじゃねぇぞ」
「無論。全てを刻みつける」
 息が合っているような、ないような二人。それでも、お互いを信頼して、身を預ける。『天光』で全てを照らしたら、マーシャの動きを確実に見切りながら一歩ずつ近づいていくアルトリウス。暗夜の帳を刻一刻と使い分け、斬撃の時間を延ばす屍。もうすぐ、もうすぐ悪食の娘に手が届く――!
「汚い手で触らないで」
 バシッと跳ね除けられたアルトリウスの腕。どうして、視界には屍しかいないはずなのに。
「天光だろうが励起だろうが、光を纏っていれば、場所なんて見えて当然でしょう? どんな暗闇でも、光は一等目立つのよ。私が求める果実のようにね」
 ずずぃっと押し込まれたマーシャの凶腕を遮ったのは、やはり屍だった。脇腹に食い込む痛みが暗夜を現実へと引き戻す。肺の中に溜まった血が、ガッと口から吐き出された。
「……お前」
「ぁっ、――やれっ!!」
「ああ」
 今にも倒れそうな屍に言われるがまま、アルトリウスは再び世界中の斬撃をマーシャに浴びせようと力を集中させる。相手に避けられ、狙われるというなら、それもまた道理。であれば、私に出来ることは唯、斬るのみ。幸いにも屍が攻撃を庇ってくれたおかげでこの身は無傷である。
「その身に災いをくれてやろう」
 今度は静かに、僅かな光さえ漏らさぬように。再び暗夜へと世界は反転する。先に動いたのは――……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
🍎(頭部丸ごと)

これ以上、貴女に『命』を収穫させはしません
骸の海にお引き取り願いましょう

自己ハッキングで限界突破
機動性上げ林檎を齧られる前に接近戦
武器落とし狙いの攻撃で妨害
反撃を●怪力盾受け武器受けで防御

攻撃が重い…
…!?

頭部もぎ取られ脱力するよう機能停止し…

生憎、私の頭脳(コアユニット)は別にありまして

隙を見せれば頭を狙うは明白
殺したと思わせ●だまし討ち

マルチセンサー損失は一つ
状況把握の為の●情報収集精度は戦闘に支障無し
破損盾で殴りつけ
取り落とした己の頭を●操縦するワイヤーアンカーで回収

これが貴女が今生で最後に口にする『頭』です
心して味わう様に!

敵の顎が外れ、歯が欠ける勢いで顔面に叩きつけ




 自己をハッキングすることによる限界突破。リミッター解除。機動性を上げ、その手にした林檎を齧られる前に接近戦へと縺れ込む!!
「これ以上、貴女に『命』を収穫させはしません。骸の海にお引き取り願いましょう」
「あらやだ、機械じゃない」
 マーシャは興味が無さそうに、トリテレイアの攻撃を受けると、くるりくるぅりと回って地面へ着地した。其処は既に猟兵のものだかマーシャのものだか分からない血で汚れて、足場は悪い。しかし其れをも気にせず、マーシャはトリテレイアに軽口を叩く。
「とはいえ貴方も猟兵だものね、さぞかし美味しい血が通っているのでしょう。いいえ、油とでも言うべきかしら? 分かるわ、果実にもね、オリーブというものがあるの。知っている? あれも中々に良い味がするの。似た味だと嬉しいわ」
「生憎と、貴女の好みにはなれそうにありませんね」
「残念。では死んで頂戴――目障りよ」
 ぬるりと滑るであろう地面も意に介さず、マーシャは駆けた! トリテレイアの頭を喰らわんと全力の手刀、それを弾けばしゃくっと齧られる林檎。途端にずしっと来る精神と肉体全体にかかる負荷。攻撃が……重い……ッ!
 四方八方から飛び掛かる毒針を跳ね除け、逆に針を掴み攻撃に転換! その頭目掛けて針を渾身の力で突き刺そうとするが……一歩届かない。マーシャはにこりと笑って再び林檎を齧った。
「……!?」
 ガコン、と。可動部に亀裂が入り、ぶちぶちとチューブを引き千切りながらトリテレイアの首が捥げ落ちる。ころころと転がって来た頭部に愛おしそうにキスを落とし、マーシャはトリテレイアの頭を齧った。
「……固い。頭蓋より硬いなんて、私の専門外だわ」
 仕方なしにと電子管から流れ出る油とも電気信号だとも言えぬものを味わうマーシャ。その味わいはやはり猟兵のものであるからして、格別の味がする。ちゅうちゅうと啜り、夢中になって首元へ口付けた。
「生憎、私の頭脳(コアユニット)は別にありまして」
「!?」
 完全に機能停止したと思った頭部が喋り出して、驚くマーシャ。そこに大きな隙が生まれる!! 殺したと思わせての騙し討ち。これが最も効く相手であることを、トリテレイアは一等理解していた。
 マルチセンサー損失は一つ。頭部とは音声発信以外特別肝心な機能はない。首がなくとも音だって聞けるし、思考も出来る。身体を動かす事も出来る。状況把握の為の情報収精度に支障無し。頭のないまま盾でマーシャを殴りつける!
「これが貴女が今生で最後に口にする『頭』です。心して味わう様に!」
 ガチッと歯と歯がかち合う音がした。歯が欠ける勢いで顔面を地へと叩きつける! 二度と林檎の齧れない体になるがいい――!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

地鉛・要
🍎【アドリブ可】ベイメリア・ミハイロフ(f01781)と連携

畑を荒らす害虫害獣は何時の時代も農家の天敵だな……食い散らかすだけの癖に自分の畑だと言い張る害獣はきっちり始末しないと

相手がUCを使い次第、*早業で【監視軍蟲】で*環境耐性、毒耐性を付与させた巨大蝗の群れを召喚し毒林檎と果樹園を木も実も*大食いで捕食、蹂躙
環境自体を破壊

*毒耐性・環境耐性で耐えつつ、蟲と共に特攻
*属性攻撃と影業で攻撃し、急所に当たりそうな攻撃だけ*第六感で回避や防御
体が捥げたら影業で補強。手足が捥げた程度で意思が挫ける訳じゃ無いからな
治療は後で……あんまり無茶すると怒られるかもしれんな。……いい人なんて居ないからな?


ベイメリア・ミハイロフ
【要さま(f02609)】と🍎

身が凍り付くような邪悪でございます
小手先の技は通用しませんでしょう
しかしながら、ここは力の限りを尽くすまで

毒耐性・環境耐性を用い
敵の攻撃に対してはなるべく武器受けで対処
不可であれば激痛耐性を活用し行動を鈍らせぬように
欠損時はオーラ防御のオーラにて素早く止血を
これまで犠牲になった方々、残された方々の痛みを思えば
このような痛みなど…!

万一視力を失おうとも
第六感にて敵の居場所を見切り
範囲攻撃で周囲の林檎ごと破壊を試みます
Judgment arrowを全力魔法で打ち込み
更に早業からの2回攻撃も狙います

まあ、怒られるって、要さまのいい人に?
ならば、必ず戻らねばなりませんね




 身が凍り付くような邪悪。それを畑を荒らす害虫害獣と呼ぶか、非道徳な悪漢と呼ぶかは人によるが。ともかく、農家の天敵であることには変わりない。食い散らかすだけのくせに自分の畑だと言い張る害獣にはきっちり始末をつけないと、と要は死んだ眼で相手を誘う。控えるのは続いてベイメリア、己が武器たるcurtanaを手に背後に着いた。
「小手先の技は通用しませんでしょう」
「だろうな。羽虫も吠えれば狼になる、俺達の手で殺めるぞ」
「はい」
 果樹園と化した戦場に慣れることはない。それでも環境に適応しようと、ベイメリアは赤薔薇の花びらを舞わせて地と血に濡れる己が身を顧みる。嗚呼、なんと恐ろしいのでしょう。この娘は、人を殺したとも思っていない――唯食べて、糧とし、廃棄しただけ。それはわたくしたち人間と同じ行動に見える。悍ましい、人を人とも思わない、そんな輩がこの地を支配しているだなんて……。
「メリィ」
「……はい」
「想うな。その考えは棄てろ。お前がやるべきことは悼むことじゃないだろう」
「……はい」
 要の【監視軍蟲】が発動し、環境を味方につけた巨大蝗を召喚すると、毒林檎と果樹園を、樹も実も大食いで捕食し蹂躙する。がじりと齧ったものは人の肉なのか、マーシャの肉なのか、もう何もわからない程に、蝗の大群が駆け抜けた! 環境自体を破壊したその場に残ったのは、林檎と果実を失い呆然とするマーシャ。
「あ、嗚呼……! なんて酷いの! こんなに沢山実った果実を、一瞬で攫うなんて!」
「知るか」
 巨大蝗の陰に隠れながら、要は毒に耐えつつ特攻。満腹属性を纏わせた影業で糸を操るように繊細に攻撃し、急所に当たりそうになったら寸でで回避。しかし、避けきれるものでもないと解っている。ゴっと鈍い音を立てて、マーシャの繰り出す鋼脚の一撃で要の左足ははち切れ、ごろごろとその場を転がる。
「要さま!」
 咄嗟に、ベイメリアはその鋼脚を叩いた。守らなければいけないのに、私が、彼の人を――。何者にも心乱されぬ彼を、危険に晒すような真似はしたくなかったのに。マーシャは叩かれた脚でそのままベイメリアを蹴り上げ、右手の中心に踵を落とす。ドスっと空いた穴はまるで奈落の底。誰も見透かせない深淵。だが、これまで犠牲になった者、残された者達の痛みを思えば、このような痛みなどどうという事はない。わたくしはゴースト……真なる御魂。
 同時に、要は失った左脚にふらつきながらも影業で補強し喰いしばる。手足が捥げた程度で意思が挫ける訳じゃ無い。そう思いながら一歩前進。
「クソ痛ェわ。どう落とし前つけてくれんのコレ」
 歩くごとに血が影業を伝い地に流れ出る。あーあ、このまま失血死とか冗談じゃないんだが。巨大蝗とそのまわりをうねる大群を嗾け、自分は少し呆ける。次の一手は何だ? 何が飛んでくる?
「要さま……少し、下がって」
「なんで」
「あなたのその負傷では敵を殺しつくすことは出来ません。わたくしに、お任せを」
「お前なら出来るのかい」
「……今の要さまよりは」
「あっそ」
 素直に退く要に安堵しながら、ベイメリアは前へ出た。例えわたくしの臓腑が突き破られようとも……貴女は此処で朽ち果てるべきです! 周囲を巻き込んだあらゆる装甲を貫く光の矢が、実った林檎を次々と蹴散らし、果てにはマーシャの胸にも突き刺さる! 目にも留まらぬ早業からの二回攻撃、常人なら死を感じる間もなく果てていただろう。しかし、しかしだ。この娘は普通ではないのだ。神を喰らい、神に近づき……神の愛した果実を食べようとした娘。
「ああっ、ひどいひどいひどいひどい!! 貴方達は悪魔だわ!! 私から希望の果実を奪う悪魔よ!!」
 どうとでも、しかし悪魔呼ばわりとは如何ともしがたい。マーシャは失った果実を想いながら、一直線にベイメリアの顔面に、その麗爪を貫いた!
「ッ、あああっ!」
 この世全ての痛みを引き受け、溢れる光が瞳から零れ落ちる。きらきらと輝くそれは泣いているよう。でも悲しいかな、ベイメリアの右眼が耀くことは二度と無い。
「おいっ!」
「か、な――」
 ベイメリアに気を取られている隙を狙い、要の影業がぐわりとマーシャを包み込む。ぎゅっと収縮した其れはべっとりと娘に張り付き、小さくなって剥がれ落ちた。彼女に、林檎はもう無い。
「わたしの……果実、が……」
 わっと顔を覆うマーシャに対し、こちらも死屍累々。なにせ片方が足が千切れ、片方は失明したのだ。とはいえ、今までの猟兵のダメージもあり、相手の林檎を奪う事に成功した。
「治療は後で、と。……あんまり無茶すると怒られるかもしれんな」
「まあ、怒られるって、要さまのいい人に? ならば、必ず戻らねばなりませんね」
「……いい人なんて居ないからな?」
 軽快なやり取りが出来るだけの余裕はある。さぁ、勇士たちの後に続け、二人の戦果は、全員の戦果だから――!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

旭・まどか
🍎

神の味は、果実の味は如何だった?
筆舌に尽くし難い程、美味だった?
あの味をもう一度と希う程、極上の物だったんだろうか

より美味なるものをと求める気持ちは理解出来るよ
僕も『食事』をして生を繋いでいるから
質を求めるのは当然の事だ

けれど
『食事』には敬意を払わなきゃ
家畜には家畜なりの矜持があるんだよ

どれを選ぼうかと思考したのが運の尽き
君の手の中にある“僕”が齧られて
嗚呼――よりにもよって其処なの、と
四肢が飛ぼうが五感が失われようが構わない
“僕”は気に留めないけれど

他人の首輪に触れちゃあ、駄目でしょう?

こうなったらもう僕の手には負えない
怒り狂う“彼女”を宥める術を僕は持たないから
盛る炎と茨を眺めるのみだ


メアリー・ベスレム
🍎脚

ふぅん? とんだ美食家気取りのヴァンパイアね
はしたない、大喰らいのオウガは見てきたけれど
あなたみたいな偏食家は初めてだわ
どちらにしても、人喰いはみんな殺してあげるから

【逃げ足】活かして立ち回り
【野生の勘】で攻撃を躱して
一撃離脱を繰り返す
こういう時、狩人ならどうするかしら?
えぇ、「まず獲物の足を止める」でしょうね
足を切られる痛みは【激痛耐性】耐えながら
そのまま無様に転げて逃げられない
犠牲者の【演技】をしてみせて
油断したところを【騙し討ち】

犠牲者には犠牲者を
首狩りには首狩りを

【アリスの断頭斧】を召喚
怨念の封印は初手から最大まで解除して
【咄嗟の一撃】叩き込み
その果実(くび)落としてあげるから!




 頭を食うくせに肉は棄て、血は啜るくせに血は吸わないなんて、嗚呼なんてはしたないのかしら! メアリーはてんで呆れた。
「とんだ美食家気取りのヴァンパイアがいたものね。大喰らいのオウガは見てきたけれど、あなたみたいな偏食家は初めてだわ」
「偏食? どうして。私は私の糧になるものを食べてきただけ。誰にも文句を言われる筋合いなんて無い」
「それがこっちにはあるのよ。どちらにしても、人喰いはみんな殺してあげるから」
 ――覚悟して。言うや否や、メアリーはマーシャに向けて奔り出した! 逃げ足の速さを活かした立ち回り、野生の勘で反撃を躱して。二人の間の距離は凡そ6メートル。こういう時、狩人ならどうするかしら? えぇ、まず『獲物の足を止める』でしょうね。それはどちらが狩人でも同じ事、二人の影が重なって、スパッと切れたメアリーの左脚。同時に吹き飛ぶマーシャの右脚。
「うっああああ!」
 脚を切られた痛みを渾身の気合で持ちこたえながら、そのまま無様に転げて逃げられない犠牲者の演技をして見せる。どう? 油断したかしら。
 平素なら首が捥げても平気なマーシャであったが、あの時とは状況が違う。あらゆる攻撃を受けて、傷つき、万能の可能性を秘めた林檎を失ってしまった。もう何も、元には戻らない。
 マーシャは血に濡れた犠牲者たちを呼び出し、メアリーに毒針を投げつける! まぁ、なんて痛いのでしょう……なんて、脚を失った痛みに比べたら、あなた達如きの細針なんてヘでもないわ! あとは、ユーベルコードを紡ぐだけの時間……それさえあれば。
「……お前を屠れるのに」
「時間が必要なら、お任せを」
「誰? あなた」
「猟兵、と。今はそれだけで十分でしょう」
 マーシャを挟み込むように現れたまどかは、そんなことを声高らかに宣言した。マーシャの意識がまどかに向く。その間に、メアリーは最期の準備を始める!
「神の味は、果実の味は如何だった? 筆舌に尽くしがたい程、美味だった?」
「ええ、ええ。それはもう。もう一度あの味をしゃぶりつくしたい程にね」
 そうか、それならば、とまどかは考える。より美味なるものをと求める気持ちは理解出来るから。まどかだって、『食事』をして生を繋いでいるのだから、質を求めるのは当然と言える。けれど、いやだからこそ、『食事』には敬意を払わなきゃいけない。家畜には家畜なりの、矜持があるのだから。
 マーシャは不思議そうにまどかを見つめる。片足の無くなった今、娘の機動力は半減以下だが……それでも速い。油断したなら一気に喰らいつくされる。手にはもう毒林檎はない、であれば……直接来る!!
「ぐっ……」
「頂戴、ちょうだい。果実を……頂戴ッ!!」
 どれを選ぼうかと思考したのが運の尽き。マーシャの歯刃は“僕”を直接齧った。嗚呼――どうして。よりにもよって其処なの!! 四肢が吹き飛ぼうが五感が失われようが“僕”は気にも留めないけれど。ねぇ、他人の首輪に勝手に触れちゃあ駄目でしょう?
 一心不乱に果実を求め、伏せながらも両手で地を這うマーシャ。がざがざっとまどかの項に再び近寄り、今度こそ噛み千切らんと跳ねる! でも残念、もう僕の手には負えない。怒り狂う“彼女”を宥める術を僕は持たないから。燃え盛る炎が辺りを包み込み、茨を咲き誇らせる。どんな薔薇にも負けない一等の薔薇、嗚呼。美しい。マーシャは這いつくばってその薔薇を食べた。美味しい。なんて素朴で、可憐で、しっとりした味わいなのでしょう。こんな味を、私はずっと――。
「頃合いよ、猟兵」
「ええ、断罪を」
 薔薇に夢中になるマーシャを差し置いて、手負いの二人は視線を交わす。これで、終わりだと。
 メアリーの紡いだ【アリスの断頭斧】は、怨念の封印を解かれ禍々しく空間をねじ曲げていた。眼を合わせるのも恐ろしい、凶ツ刃。
「その果実(くび)落としてあげるからっ!」
 ダンっと斧が頚椎と骨を砕き、皮を破いてしまえばごろり……斬り落とされた首が元に戻ることは二度とない。此処は彼女の果樹園でもなければ、愛する毒林檎も無いのだから。
「果実を求めたものにお似合いの終末ね」
「……ええ」
 メアリーの言葉に、曖昧に頷くまどか。彼女は満足しただろうか、それとも呆れた? どっちだって良い、今はこの悪食を退治出来たのだから。折角だから首を砦に掲げるか、なんて考える暇もなく、サラサラと砂のように、マーシャの身体も、頭も、自然へと還っていった。
「あなたが好みそうな結末ですね」
「?」
 メアリーには分からないが、まどかがそう言うのであればそうなのだろう。“彼女”はどんなに怒っても、決して汚いものを好んだりはしない。

 ★

 斯くて、人類砦に新たな夜が訪れる。それは頭喰らいのヴァンパイアに怯えるでもなく、爛々と火を灯し、隣人と手を取り合う――そんな夜が。
 人々は語り継ぐ。この戦いで、如何な血が失われ、如何な代償が払われてきたのかを。それでも、猟兵は勝ったのだ。この悪夢から、人類という平和の果実を、護り切ったのだ!
 おめでとう、君たちは英雄だ。最後に何か言い残す事があれば、この砦に残っても良いだろう。嗚呼、その前に――怪我の応急手当くらいはしておこう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『星鏡の夜』

POW   :    わくわく過ごす

SPD   :    どきどき過ごす

WIZ   :    静かに過ごす

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●星鏡の夜
 狩人は葬られ、砦にはしばらくの安寧が訪れた。
 これからも彼らはヴァンパイアと戦うことになるだろう。その度にこうして猟兵の手を借りることがあるかもしれない。それでも、彼らが諦めずに祈り、願い、届いた結果がこれだ。それは絶対、誰にも穢す事の出来ない誇り。英雄は君達で、しかしそこに根付くのは彼ら『虐げられてきた民』なのだから。
 領主館を暴いてみれば、食べ残したネックレスや指輪が大事に仕舞ってあった。種として砦の住民へ返す心算だったのかは定かではないが、マーシャにも何か思うところがあったのか。それらを住民に見せたなら、「おかえり」と誰かが口にした。
 敵を威嚇し、警戒するための灯火も、今夜ばかりは必要ない。君達は星が煌めく夜空を十分に堪能しても良いし、傷ついた身体を休める時間に充てても良い――。
セツナ・クラルス
安全地帯に足を踏み入れると妙に負傷箇所が痛み始めた
急に不安になりきょときょとと周囲を見回して

――チッ、しゃーねぇな

半ば強引にセツナを裡に押し込み意識を交代
…うおっ!?
患部を見て改めてビックリ
あ、いや、なんでもない
ちょっと水借りるよー
心配そうな住民の視線から逃れるように水場に退散

…こりゃ失血のショックっつーよりも、精神的なショックだろ…
なんでうちの救い主サマはたいして強くもない癖に無茶すんだよ
このままじゃどっかでのたれ死んじまうぞ
まあ、そーならない為にオレがいるんだけどさぁ!
ぶつぶつ言いながら幹部を洗い止血程度の応急処置を済ませて

…まあ、説教はあとにしといてやるよ
今はゆっくり休んどきな




 暗闇の中。砦の中でも賑わいからは少し外れたところに、はぁと溜息を零しながらセツナは腰を降ろした。背中を建物の壁に預けてぼうっとしていると、妙に噛み千切られた掌から手首に掛けてが痛みはじめた。急に不安に駆られきょときょとと周囲を見回す。周りにはちらほらと砦の住人たちが祭りに勢を出している。
 ――チッ、しゃーねぇな。
 半ば強引に、ゼロはセツナの意識を裡に押し込んで選手交代。はて、と痛む患部をみれば、ごっそりと無くなっている掌と腕に驚く。道理で痛いわけだ。馬鹿野郎か、こいつは。なんで我慢してるんだよとどつきたくなる。
「うぉっ!? おいおい……勘弁しろよな……あ、いやなんでも無い。ちょっと水借りるよー」
 そう軽く言うゼロの手を見て驚き心配の眼差しを向ける砦の住人に「大丈夫」と返しながら、脱げるように井戸へと移動した。清廉な水で患部を洗う。冷たいはずの水がまるで焼けるように熱く感じるのは痛みの深さ故か。
「……こりゃ失血のショックっつーよりも、精神的なショックだろ……」
 なんでうちの救い主サマは、たいして強くもない癖に無茶をすんだよと文句のひとつも言いたくなるものだ。ゼロの声が聞こえているなら耳元で怒鳴ってやりたいくらい、怒りと嘆きが沸々と湧き上がる。このままじゃどっかで野垂れ死ぬのも時間の問題だ。まぁ、そうならないようにゼロがいるわけなのだが……それにしたって、フォーミュラーでもないオブリビオン一体にここまで毎回ボコボコにされていたのでは体が持たない。少しは加減を覚えて欲しいと、ぶつぶつ言いながら患部に止血程度の応急処置を済ませた。
「――……まぁ、説教はあとにしてやるよ。今はゆっくり休んどきな」
 意識の深層、押し込められたセツナはようく眠っているようで反応はない。あんまり心配させるなよ、こっちの寿命が縮むなんて思っても、誰にもその考えは響かない。それでも、いい。お前のココロを守ってやれるなら、それが俺の役割だからと、ゼロは星空の元で止血した幹部を摩る。
 この経験は屹度セツナにとってひとつの機転となるだろう。自分のものだけの身体じゃないって、精々自覚しろよなと思いながら、井戸を後にした。帰る場所へ還る為に、今日くらいは俺が一歩踏み出しておいてやると、悪態を零しながら……――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メアリー・ベスレム
じくじく、ずきずき
痛んで熱持つ切断面
応急処置はしたけれど
包帯は染まってまっ赤っか
まるで腐った林檎のようね

【アリス擬き】は偽物アリス
五感も思考もメアリのままに
もう一人のアリス(メアリ)を作り出す
だったら、そう
「アリスの脚」の偽物だって作れる筈?

そうして作った偽物の足で
ひょこひょこ、ふらふら
拙いけれど歩いてみせて
馴染むまでは不便だけれど
とりあえずなんとかなるでしょう

ああ、それにしても
自分が喰われる側になるなんて思いもしない
悪食偏食のヴァンパイア

脚を失っておきながら
酷い苦痛に苛まれながら
いいえ、だからこそ!
殺せたのは、復讐できたのは
とても楽しかったと息を吐く

ああ、そういえば
元の左脚はどうしたかしら?




 じくじく、ずきずき。痛んで熱を持つ左脚の切断面。応急処置こそ施したけれど、包帯は真っ赤っかに染まり上がっている。まるで腐った林檎……ロットン・アップルね。じゅくじゅくで蜜が滴り落ちてる。嫌だわ、気持ち悪い。絶対美味しくないじゃないの。
 【アリス擬き】は偽物アリス。五感も嗜好もメアリーのままに、もう一人のアリス……メアリを作り出す。そこでポっと頭に名案が浮かぶ。だったらそう、『アリスの脚』の偽物だって作れる筈? 意識を集中させて、右脚はどんなだったかしらと思い浮かべながら想像を創造する。
 そうして出来上がった偽物の脚で、ひょこひょこふらふら。拙いけれど歩いてみせた。とても普段通りとはいかないけれど、見た目だけはそれなりになったでしょう。馴染むまでは不便だけれど、とりあえずなんとかなるでしょう、なぁんて楽観的に考える。
 嗚呼、それにしても。自分が喰われる側になるなんて思いもよらなかった。あの悪食偏食のヴァンパイア、一体今までどれだけの果実を喰らってきたのかしら。彼女の話によれば、老いも若きも生まれる前の赤子さえ食べたというから、如何に貪欲なのかがわかる。自分もそのお眼鏡にかなったことが果たして嬉しいやら憎らしいやら。
 脚を失っておきながら、酷い苦痛に苛まれながらこそ。いいえ、だからこそ! 殺せたのは、復習できたのは――。
「とぉっても楽しかった!」
 最後、首を切断した時にマーシャが見せた顔が今でも忘れられない。ふふ、今日は素敵な夢が見られそうね、と大きく息を吐く。その息は空高く舞い上がって星々の輝きの内に消えた。
「ああ、そういえば元の左足はどうしたのかしら?」
 砦から落ちてしまった? それともまだどこかに転がっている? 記念に持ち帰ってみましょうか、等と冗談半分で、グラつく足取りで砦を歩くメアリー。もし見つかったなら、はく製にでもするのだろうか? それは「あっ!」と声をあげたメアリーのみぞ知る――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェイ・バグショット
レジー(f24074)

遺品か。
この世界じゃそれが返るだけでも救いだろうな。
ハハ、俺よりお前の方が悪食なんじゃねぇの?
全て喰らい尽くすって?本当に嫌なヤツだよお前は。

ヤツが何を思ってたかなんて知る必要もねぇだろ。
さぁな…、俺無機物食わねーし。
はぐらかすように軽口で返す

UDCアースは光が多すぎんだよ。
ここじゃ星が唯一の光だ。
灯りも灯せないガキだって、空を見ればそこには光がある。

お前が耳食わせるからだろうが。
つーか、大丈夫かよ…。
呆れ気味に欠けた耳に手を伸ばす
あぁ悪い、痛かった?
言葉とは裏腹に悪びれる様子など全くない

消毒代わりに酒ぶっかけてやろうか。
悪戯っこくけたけた笑って
飯くらいなら奢ってやるよ。


レジー・スィニ
ジェイ(f01070)

遺品が沢山出て来たらしいよ。
そこまでは流石に食べれなかったんだね。
俺なら遺品も纏めて食べるけどさ。

詰めが甘いのか、人の心を持っていたのかは、
今となっては誰も確かめる事ができませーん。
皮肉だよね。
ジェイ、お前ならどうする?
遺品も纏めて食べちゃう?それとも残す?

久し振りに星を見た気がする。
いつも見てるけどさー、UDCの星はこんなに凄く無いよ。

あーあー、耳は相変わらず痛いなー。
帰ったら酒でも奢ってもらおうかなー。
ついでに美味い物でも奢ってもらおうかなー。

いってぇ!触るなら優しく触れって!
皮肉には皮肉を返すよ
あーあー、ジェイが触ったから俺もう駄目かも。
冗談だけどね。




 ごろごろと出てきたという遺品の話を聞いて、二人は何とも言えぬ気持ちになった。それで死者が戻ってくるわけでもなし、哀しみが増えるだけじゃないのかと。悔恨がずっと残るだけじゃないのかと。それでも砦の者達は大事に、優しく手に取りそれらを持ち帰ったという。
「遺品、沢山出てきたらしいよ。彼女もそこまでは流石に食べれなかったんだね」
「この世界じゃそれが返るだけでも救いだろうな」
 詰めが甘いのか、人の心を持っていたのかは、今となっては誰も確かめることが出来ない。皮肉なものだ、とレジーは考えた。マーシャに人の心があったなら、別の結末もあっただろうにと。いやそれでも、彼女がヴァンパイアという本来の性質から逃れることはできない。であれば、結局こうなるしかなかったのか。どの道彼女が何を思っていたかなど知る必要はない。結果が全てだ。
「ジェイ、お前ならどうする? 遺品も纏めて食べちゃう? それとも残す? 俺なら全部食べるけど」
「全てを喰らい尽くすって? 本当に嫌なヤツだよお前は。んーさぁな……俺無機物食わねぇし」
 はぐらかすような軽口で返すジェイの言葉に、レジーは特に追及しなかった。砦に寄りかかり、顔に手を当ててフと天を見上げる。――久しぶりに、星を見た気がする。
「いつも見てるけどさー、UDCの星はこんな凄くないよね」
「あっちは光が多すぎんだよ。ここじゃ星が唯一の光だ。灯りも灯せないガキだって、空を見上げればそこに星がある」
 レジーとは反対向きに、背を砦に預けジェイもまた天を覗いた。手を伸ばせば掴めそうな眩い星が、住民も猟兵も分け隔てなく照らす。唯一無二にして絶対の光が煌めいて眩しい。
「あーあー、耳痛いなー」
 戦闘中からずぅっと痛む齧り取られた片耳の根元を、ぴょこぴょこと動かす。感覚はあれど実際に動くものはない。
「お前が耳食わせるからだろうが。つーか、大丈夫かよ」
「大丈夫じゃない。はぁ、帰ったら酒でも奢ってもらおうかなー。ついでに美味いものでも奢ってもらおうかなー」
「こいつ……」
 呆れ気味に欠けた耳に手を伸ばすジェイ。やはり触られればそれなりに痛みが走り、びくっと身を強張らせる相手に少しだけ申し訳なくなる。
「いってぇ! 触るなら優しく触れって!」
「ああ悪い、痛かった?」
 言葉とは裏腹に全く悪びれる様子のないジェイに、レジーはギュっと目を瞑りんべーっと舌を出し応戦。これでも負傷者だ、労れと言わんばかりにぐったりと砦の柵に顎をのせる。
「あーあー、ジェイが触ったから俺もう駄目かも」
「消毒代わりに酒ぶっかけてやろうか。ま、飯くらいなら奢ってやるよ」
 冗談に悪戯っぽく笑返される笑み。この片耳の傷はきっとこれからも残るのだろう。それでも良い、これはひとつの希望を繋いだ証だから。帰ったら何から注文しようか、そんなことを考えるレジーを横目に、ジェイは溜息を零す。痛みに耐えたならそれなりの報酬が必要だ。それがたかが飯程度で済むなら、少しくらい上等なヤツを奢ってやろうと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィリヤ・カヤラ
静かで星が見える所に行こう。

応急処置と思って右目は月輪で
義眼を作ってみたけど割と良いかな。
視力は戻らないし白目が黒くなっちゃうけど、
見るたびに自分がまだ弱いって思い出すし。

そういえばあの時マーシャさんが見逃してくれたのは
美味しかったからだけなのかな?
気に入られる感じもあったけど。
それだけかなって思っちゃうのは私が半分人間だからかな。
もし、猟兵じゃなかったら仲良くは
無理でも一緒にお茶する知り合いにはなれたかな?
そうなれたら嬉しかったかも。
でも、仲良くなっても頭は食べられないけどね。

この視界にも慣れる練習しなきゃいけないけど、
今はゆっくりしようっと。

アドリブ歓迎




 砦の一等高いところ。物見櫓に、ヴィリヤは独り佇む。失った右目は応急処置にと血液を媒体とするUDC【月輪】で補ってみた。今のところ、割と良い感じである。しかし、然るべきところへ戻ったら本格的な治療が必要だろう。これから先にも、右目には世話になるのだから。
 形は整ったが白目部分は黒くなり、視力も全然元に戻らない。見た目だけの瞳。見るたびに自分がまだ弱いと思い出す。相手は強敵だった。失ったものがこれだけで済んだのは、奇跡なのかもしれない。
「そういえば――……」
 あの時マーシャがヴィリヤを見逃したのは、その眼が美味しかったからなのだろうか? 今となってはなにが正解なのか分からないが……彼女は友達が欲しかったのかもしれない。同じものを食べて、美味しさを共有する仲間が。私には無理だな、なんて吐息をつく。気に入られている感じはあった。それだけじゃない、と思ってしまうのは、自分が半分人間だからか。
 もし、猟兵でなかったのなら、仲良くすることは無理でも一緒にお茶をする程度の知り合いにはなれたかもしれない。あの食に貪欲で美味しさを追求する娘の、隣で微笑めたかもしれない。そうなれたら、嬉しかったかも……でも、流石にそうなったとして頭は食べられないね!
 片方だけになってしまった視界で天を見上げる。きらきらと輝く星が少しぼやけた。血を少し失いすぎたかな、なんて思うけど、逆にぼやけた星は光を拡散して自らを大きく見せる。私はここにいるよ! と、主張しているのだ。
「綺麗だね……」
 ぽつり、呟いた言葉が誰かから帰ってくることはない。それでいい、ヴィリヤは自分の戦いをした。だったら、誰に褒められなくても、認められなくてもいい。私がこの結末を知っている限り、何も悲しくはない。今はただ、ゆっくりしよう。疼く右目が眠るまで、星の数でも数えてみようか。失った部分は大きいけれど……それ以上に何か得たことを誇りに思いながら、右目に手を翳し何度か瞬く。
「私は猟兵だから」
 その一言に、マーシャへの哀悼も、自分への喝も、未来への目標も、何もかもが内包されていたことを知るのは、夜天に眩く煌めくダークセイヴァーの星々たちのみ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…やれやれ。手酷くやられてしまったわ
こんな身体で戻ったら心配させてしまうわね…

【限定解放・血の封印】を維持して吸血鬼人格のまま、
傷口を抉るような激痛を耐性と気合いで涼しい顔をして耐えUCを発動

…それに、ようやく吸血鬼を討ち果たしたのに、
再び吸血鬼が姿を見せたら、折角の星鏡の夜が台無しだものね

…無様な姿を晒して、これ以上さらに無粋な真似をする気は無いわ

傷口に限界突破した吸血鬼の生命力を吸収して魔力を溜め、
吸血鬼の超再生能力により強引に治癒を施していき、
治療が終れば霧になり転移するまで姿を消しておく

…形を整えるのはこれぐらいで良いかしら?
あの神に汚された衣装は自分で何とかしなさいな、愚かな私?




 右の掌は齧られ無くなり、腕そのものも裂傷が酷い。満身創痍とはいかなくても、十分に重症な有様だった。もう感覚もない、ぶらりと垂れ下がる右腕を左手で持ち上げてぷら~んとしてみる。
「……やれやれ。手酷くやられてしまったわ。こんな身体で戻ったら心配させてしまうわね」
 リーヴァルディはリーヴェのまま、傷口が抉れるような激痛を気合で涼しい顔をして耐えてつつ、【血の変生】を発動。傷口に限界をも越えた吸血鬼の生命力を吸収し、魔力を貯めて、超再生能力によって強引に治療を施していく。じっとりと腕の傷口が塞がっていくが、食いちぎられた指先の再生には少々時間がかかるようだった。
「……ようやく吸血鬼を討ち果たしたのに、再び吸血鬼が姿を見せたら、折角の星鏡の夜が台無しだものね」
 そう言ってそそくさと砦の死角に身を隠すリーヴェ。無様な姿を晒して、これ以上さらに無粋な真似をする気はない。漸く腕の感覚が戻る。やはり吸血鬼は人の上位をいくもの、人間の再生能力の比ではない。ヒトデのようにじわじわと失った掌から指が再生していく。皮膚も骨も神経も、全部もっていかれた。これは時間がかかりそうだ。
「嫌になっちゃう……リーヴァルディ、愚かな娘。今は力を貸してあげるけど、いつでもそうとは思わない事よ」
 返答もないまま、リーヴェは己の裡に向かって話しかける。愛用の武器も壊れ、再び目を覚ました時この娘はどんな反応をするのか、少し楽しみですらある。嗚呼でも、グリムリーパーには悪いことをしたわね。あの悪食娘がまさか武器まで喰らうなんて。流石頭蓋ごと食べるだけのことはあったわね、なんて思いながらときがすぎるのを待つ。
 しばらくして、漸くガワだけはなんとなく五体満足になった。肩ごと腕をまわしてみたり、手を握ったり開いたりしてみたり。少し違和感があるものの、それを何とかするのはリーヴァルディの役目だ。
「……形を整えるのはこれぐらいで良いかしら? あの神に穢された衣装は、自分で何とかしなさいな、愚かな私?」
 治療が終わり、霧になって姿を消すリーヴェ。戻って来たのはリーヴァルディの意識。
「っう、――。……」
 失ったはずの指が動く。ズタボロになった腕の感覚がある。それだけで驚愕に値する。まだ少し痛む身体をよろめかせながら、リーヴァルディは砦を後にした。帰ろう、帰ればまた来られるのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

守流芙桜・蝶々
要くん(f16974)と

要くん、かなめくん……大丈夫?
僕のせいでごめんね……苦しいよね、痛いよね
血を止めなきゃ……僕、誰か呼んでくる!
!!……ごめんなさい

僕の学ランで結べば、少しは違うかな?
うう、上手く力が入らない……
ベルゼブブ、要くんの傷口を凍らせてあげて
まだ僕の大切な人守りきれてない。要くんが死んじゃったら契約違反だよ……ぐす

要くんは自分の心配をして!!
僕は要くんのおかげで無傷だよ……
もうあんな無茶しないで……要くんが傷付くのやだよ
真っ青なお顔で僕のことを気遣う要くんに涙が止まらない
うん、うん……一緒に帰ろう……


三嵩祇・要
てふ(f22942)と

応急手当の為に砦の中へ
失血が酷いし汗だらだらだし呼吸もしづらい
割と死にかけなんじゃねぇかこれ?

お前の所為じゃない
てふのお陰で助かったんだよ

てふ、どこ行く!離れんな!
オレが見てないとこで何かあったらどうする!
…怒鳴って悪かった

震える手を上から掴んでぎゅっと力を込めて止血する
凍らせてくれるのはいいが
またどっか取られるんじゃないのか?

てふは痛いとこないか?大丈夫か?

てふに怒られて少し冷静さを取り戻し
「悪かった」と返す
てふだって無傷じゃないが
今はまずゆっくり休ませてやらないと

マーシャは他の猟兵達が倒してくれたみたいだな
もう大丈夫だ、怖い事はなんもないからな
家に帰ろう




 手当の為に砦の中へ転がり込んだ要と蝶々。失血が酷い、汗もだらだらで呼吸もし辛い。意識が朦朧とする。割と死にかけかもしれないと、霞む意識の中で要は思った。しかし、考えたところで血が止まるわけでもなし、今は思考回路がどこかへふっとばないよう繋ぎとめることに必死。慌てふためく蝶々を、いっそ冷静に見遣った。
「要くん、かなめくん……大丈夫? 僕のせいでごめんね……苦しいよね、痛いよね。血を止めなきゃ……」
「お前の所為じゃない。てふのお陰で助かったんだよ」
「――僕、誰か呼んでくる!」
「てふ、どこ行く! 離れんな! オレの見てないとこで何かあったらどうする!」
「!! あ。ぁ……ごめん、なさい……」
 勝手に何処かへ行こうとする蝶々を怒鳴れば、びくっと涙目で強張る姿を見て、要は反省した。怒ってどうする。
「……怒鳴って悪かった」
「ううん……ねぇ、僕の学ランで結べば、少しは違うかな?」
 普段の蝶々は器用なはずなのに、上手く手に力が入らない。ふるふると震える手は恐怖と後悔と罪悪感でいっぱいで、今にも体中から感情が溢れ出しそうだった。その手の上から要はぎゅっと力を込め学ランで止血を続ける。
「ベルゼブブ、要くんの傷口を凍らせてあげて。まだ僕の大切な人守りきれてない。要くんが死んじゃったら契約違反だよ……ぐす」
「無茶すんな。凍らせてくれるのは良いが、またどっか取られるんじゃないのか?」
「そうなの? ベルゼブブ。これはまださっきのお願いの続きだよね?」
 聞こえるような返答こそないものの、それが肯定だった。蝶々は患部に手を翳し、ピキっと傷口を氷で固める。応急処置だが、一応血は止まった。この後然るべき機関での処置は必要だろうが、ひとまず失血で死ぬことはないだろう。
「てふは痛いとこないか? 大丈夫か?」
「要くんは自分の心配して!! 僕は要くんのおかげで無傷だよ……」
「じゃあ、良い」
「良くない!!」
 蝶々は珍しく声を荒げる。今度は蝶々が要に怒鳴る番だった。本気の怒気に、要も少々怯む。大きな瞳に雫を浮かべて、ぎゅっと瞑れば今にも零れそうな透明の哀しみの塊。
「もうあんな無茶しないで……要くんが傷付くのやだよ」
「――悪かった」
 真っ青な顔で蝶々の事を気遣う要に、涙が止まらない。ああ、僕。大切なものをみつけてしまった。もう引き返せない。どうして、傷つけてから気付くのか、僕は馬鹿だと、蝶々は自分を責める。
 一方の要も、まるで無傷とは言えない蝶々を休ませなければと考えていた。相当精神にキているだろう。ゆっくりと落ち着ける場所へ早く行くべきだ。
「マーシャは他の猟兵達が倒してくれたみたいだな。もう大丈夫だ、怖い事はなんもないからな。――家に帰ろう」
「うん、うん……一緒に帰ろう……」
 片足で上手く立てない要は蝶々に寄りかかりながら砦を後にする。家に帰ったらもっと怒られることを、彼はまだ知らない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
(飛ばされた頭部を無理矢理固定、布で覆い怪我に見せかけ)
『他世界の住人に違和感与えぬ』猟兵の異能も『正常時にある筈の物が無い状態』は誤魔化せませんからね…

領主館をUC用い探索
遺品と思われる物全て回収
宙間戦闘で遺体を回収出来ない故郷の兵士の遺族のケアもそうですが、こうした物品は『弔い』で重要な意味を持ちます

盗難防止も兼ね、遺品を探す遺族を見守り

このような形でのご帰宅、心中お察しします
…どうか、手厚く迎えてあげてください

残った由来不明の遺品は炎で清め星空に還しましょう
世界を渡ることで霊魂の存在は確認出来ても、私に扱うことは出来ません
専門家の方が居れば良いのですが…

(首無しで空見上げ)
どうか、安寧を




 領主館にて、トリテレイアは首元を布で覆い隠し怪我に見せかけて人々に混ざって遺品整理をしていた。他世界の住人に違和感を与えぬ猟兵の異能も、本来ある筈のものがない状態は誤魔化せないからだ。体があって首がない、なんてのは犠牲者だけで充分だ。
 自律式妖精型ロボを使い、領主館をくまなく探索していく。あちこちの部屋から、指輪、ネックレス、眼鏡といった頭部に関わるものが出てきた。その遺品と思われるものを全て回収し、砦へと持ち帰ろうと丁寧に扱う。
 宇宙戦闘で遺体を回収できない故郷の兵士の遺族のケアもそうだが、こうした物品は『弔い』で重要な意味を持つ。あの人はいなくても、あの人が生きた証があれば、と――そう考えて送り出す覚悟を持つ者は多い。
 盗難防止も兼ねて、遺品を探す遺族を見守っていれば、大事そうに指輪を抱える男性の姿。
「……このような形でのご帰宅、心中お察しします」
「ええ、とても悲しいですが……皆様のお陰で、漸く家内と再会出来ました。頭は喰われ、体はもう焼却されてしまいましたが、私の記憶の中では彼女の顔が鮮明に浮かぶのです。特に、この指輪を挙げた日のことなんて、昨日のように覚えています」
「……思い出がある限り、奥方様は貴方の中で生き続けますよ。どうか、手厚く迎えてあげて下さい」
 一礼し去った男の背中は、憑き物が落ちたかのように晴れやかで。本当に良かった。もちろん遺品が見つからない者だっているだろう、中には肉体が還って来なかったものすらいる。それを考えれば、両手放しでは喜べないが……悪食の娘の悪趣味なコレクションを、最後に暴いてやれたのは良かった。
 概ね領主館で遺品を漁っていた人々も帰り、残ったのは由来不明の品。トリテレイアは大小様々なそれを腕に抱えて、領主館の屋根に昇った。これらの品々は、炎で清めて星に還そう。世界を渡ることで霊魂の存在は確認できても、トリテレイアに扱うことは出来ない。専門家が居れば話は別だが、そう都合よくはいかなくて。じゃらじゃらとしたそれに、周囲に引火しないよう気を付けながら火を灯す。
「どうか還れますよう。そして次に生まれ変わるときは、ご加護がありますように」
 別に、神様に向かって言ったわけじゃない。このダークセイヴァーという世界そのものに向かって言ったのだ。上を向けばごろりと首が外れる、それを片手でキャッチして、天を見上げた。煌々と輝く星は、猟兵も住民も草木も石ころも全てを照らす。平等など似合わないこの世界で、唯一の存在だ。
「どうか、安寧を」
 零れた言葉は風にのり、ふわっと消え入るように夜へと溶けていった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

乱獅子・梓
【不死蝶】
綾と焔の応急手当を終え
宿の窓から星空を眺めつつ穏やかな時間を過ごす

お前がぽっくり逝かないように
面倒見るのが俺の仕事だからな
…なんて偉そうに言うが
綾が痛い思いをする役割ばかりさせてしまい
歯痒さと申し訳無さでいっぱいで
今回だって俺はほぼ無傷に近い
せめて俺に何か出来ることは無いかと考え

何か欲しい物やしてほしいことはあるか?
飲み物とか欲しければ貰ってくるが
手?何で…… !!?
飲み物とか、とは言ったがまさか俺の血とは…
傷口を舌でぐりぐりされると正直痛い、が
こいつの方がよっぽど痛かっただろうからな
今日は好きにさせてやる

それにしても、幸せそうに啜りやがって
人の血なんてそんな美味いものなのかねぇ…


灰神楽・綾
【不死蝶】
星がよく見えるように部屋の灯りは消す
故郷にもこんな綺麗な星空があったのか
なんて思いながら

いやぁなかなか強かったよねぇ
梓が居なかったらどうなっていたことやら

んー?梓ってば妙に優しいね
じゃあさ、ちょっと手貸してよ
梓の服の袖をめくり
顕になった手首に向かって……ガブリ
流れてくる血を満足げに舐め啜る
ああ、やっぱり梓の血は美味しいね

別に血を飲まないと死ぬわけじゃないけど
ひと時の享楽の為にこんなことをする俺は
人肉を食べないだけで、やっていることは
あの悪食の娘と同じなのかもしれない
それでも好きにさせてくれる梓
俺なんかに負い目を感じてくれる彼の優しさにつけこんで
今日はいっぱい甘えさせてもらう




 砦の中にある宿の一室を借りた彩と梓、星がよく見えるように部屋の灯りはふぅっと吹き消す。綾と焔の止血やら傷口の消毒やら筋を伸ばしたりだのの応急手当を済ませ、宿の窓から眺める星空を眺め、穏やかな時を過ごす二人。故郷にもこんな眩く輝く綺麗な星空があったのか、なんて思いを馳せる。
 寄り添い合うでもなく適当に距離をとった二人。傷も痛む、心も痛む。到底背中合わせになんてなれなかった。それを破ったのはやはり綾
「いやぁ、なかなか強かったよねぇ。梓が居なかったらどうなっていたことやら」
「馬鹿言え。お前がぽっくり逝かないように面倒見るのが俺の仕事だからな」
 なんて偉そうに返す梓だが、綾が痛い思いをする役割ばかりをさせてしまい、内心歯痒さと申し訳なさでいっぱいだった。軽口はそれを隠すためのものに過ぎない。いくらサポートが得意とはいえ、今回だって梓はほぼほぼ無傷である。せめて、何か自分に出来ることはないかと考えて綾に尋ねた。
「何か欲しい物やしてほしいことはあるか? 飲み物とか欲しければ貰ってくるが」
「んー? 梓ってば妙に優しいよね。じゃあさ、ちょっと手貸してよ」
「手? 何で……」
 梓の服の裾を捲り、顕になった手首に向かってガブリ。綾は容赦も躊躇いも無く噛みついた。
「?! ――……ぁ」
 流れる血を満足げに舐め啜る綾。どくどくと、梓を活かす為に体中を駆け巡る鮮血のなんと美味しいこと。飲み物、とは言ったがまさか自分の血とは思わなかった梓は少々面食らいながらも好きにさせる。傷口を下でぐりぐりと圧されるのは正直痛いが、綾の方がよほど痛かっただろうと考えると、不思議と抵抗する気も失せる。今日だけは好きにさせてやろう。
「ちゅう――っ、はぁ」
 綾は一応加減しながらも、綾の血を堪能した。別に血を飲まないと死ぬわけじゃない。けど、ひと時の享楽の為にこんなことをする自分は、人肉を食べないだけで、やっていることはあの悪食の娘と同じなのかもしれないと一人想う。美食を、甘美を求め、啜りあげる血の抗えない誘惑に、負けないように必死だった。
「幸せそうに啜りやがって。人の血なんてそんな美味いものなのかねぇ」
「さぁ? 知らない。大事なのは、梓の血が美味しいってことでしょ?」
 俺なんかに負い目を感じてくれる彼の優しさにつけこんでやる、と。綾はめいっぱい甘える。屹度、人の血が美味しいんじゃない。梓の血が格別なんだ。俺の舌を満たすのは、屹度梓だけだよ、とは……流石に怒られそうなので伝えないけど。この甘さをもう一度味合わなくても済むように、次の俺は頑張ってよね、と己を鼓舞する。
 綾はそんな梓の吸血行為をじぃっと見ながら、やれやれ手のかかる相棒だなんて――嫌悪のひとつもなくじっとりねっとりと血を啜られていた。星が輝く夜、温もりを交換し合う二人を知るのはお互いだけ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

旭・まどか
来るのが遅くなってすまないね
僕達は完全無欠のヒーローでは無いから
遍くすべての命を救う事は出来ない

もしもう少し異変に気付くのが早ければ
もしもう少し広く世界を見渡せていたならば

そう思わなくは無いけれど
到底叶えられもしない夢物語に傾倒し、心酔して
時間を無駄にする事こそが、一番の罪だと思うから

救える目の前のいのちを――君達を、救ったつもり

罪深い僕達を、許してくれる?

君達は、強いね
これから何度強敵が現れ、城壁を破壊されようとも
砦を築く事を已めないんだろう

その強さを、僕達は見習わなくちゃいけない
いのちあるもの、いずれそう遠く無い未来に皆息絶えるから
せめて死を前にした瞬間に悔いる事の無い様
今を、足掻こうかな




 じゃらり、仕舞われていた遺品を各人に振り分ける様子を見ながら、まどかは静かに領主館のソファに腰を下ろした。このソファもマーシャが使っていたものなのだろう。しかし、どこにも血痕などなく美しく座り心地も良いままだ。
「猟兵さん、ありがとうございます。おかげで――彼女は私のもとに帰ってきてくれました」
 砦の住民がまどかにこえをかける。その腕には大事そうに一冊の本が抱えられていた。礼を言われるような立場じゃない。だって僕は、間に合わなかった。
「――来るのが遅くなってすまないね。僕達は完全無欠のヒーローではないから、遍くすべての命を救うことはできなかった」
 もし、もう少し異変に気付くのが早ければ。もし、もう少し広く世界を見渡せていたならば、こんな結末を迎えなくてもすんだのかもしれないのに。俯くまどかに、いいえ、と砦の住民は続く。
「皆様のお陰で、砦に再び灯がともりました。皆様のお陰で、また彼女に出会うことが出来ました。この世界は残酷ですが、光もあるのだと……皆様が教えてくださいました」
「僕らが……」
 IFを考えて後悔することはいくらでも出来る。でも、眼前の救われた人からの感謝の言葉を無碍にするほど心は冷え切っていなくて。到底叶えられもしない夢物語に心酔して、時間を無駄にすることこそ、一番の罪だろう。であるなら、今回のこの役目は、確かに誰かの為の一歩に貢献したのだ。
 救える目の前のいのちを――あらゆる犠牲の上で必死に藻掻きながら苦しんだ君達を、ポっと出の僕達が救ったつもりになっている自分を……。
「罪深い僕達を、許してくれる?」
 砦の住民はそっと微笑んで、その場を後にした。遺品整理はまだ続いている。泣き出す者、愛おしそうに頬ずりする者、キスを落とす者と様々。嗚呼、君達は強いね。どんな恐怖と不幸に苛まれようとも、それに屈しない強靭な心を持っている。
 彼らはこれから何度強敵が現れ、城壁を破壊されようとも、砦を築く事を已めないんだろう。自分のみならず子供たちや来訪者に、未来を託して。
 その強さを、まどか達は見習わなくてはいけないと思う。いのちあるものは、いずれそう遠くない未来に居んな息絶えるから。せめて死を前にした瞬間に悔いる事の無い様に……今を足掻こうか。
「僕が出来ることなんてほんの僅かだけれど……世界は蝶の羽搏きでさえ変わるのだから」
 まどかのあがきも、決して無駄じゃないと信じて。世界は回る、一方通行の未来へと向かって――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

故無・屍
…仕事は終わりだ、住民どもとの関わりは依頼に含まれちゃいねェ。
英雄扱いなんざ御免被る、そんなモンは他の猟兵に任せときゃいい。

医療、早業の技能で応急処置を施した後、
UCによる技能、目立たないを併用し
誰と顔を合わせることなく立ち去る


…俺はただの殺し屋みたいなモンだ。
世界を救うだの住民を守るだの、そんなのが似合うモンでも無ェ。
住民どもに掛けられる言葉なんてものの用意もねェんでな。

精々住民どもを励まして、希望って奴を示してやりゃあいい。
ここから先も、この世界じゃ大量の人間がゴミみてェに死ぬんだろうが…、

――それでも、今ここでやった事が無意味になるってこたぁ無ェだろうよ。




 今回の依頼に於いて、猟兵の役割はオブリビオンの排除である。砦の住人との交流は依頼には含まれていない。英雄扱いなんて御免被る。そんなモンは他の猟兵にまかせときゃいいと、仕事上がりの屍は足早に砦か去ろうとする。
 早業で医療を施し、ぽっかりと開いた肺に応急処置を施した。痛みは残るが機能はある程度マシになっただろう。そのまま目立たないように闇に紛れ、誰にも会うことなく砦から脱出した。
 屍はただの殺し屋みたいなもの。世界を救うだの住民を守るだの、そんなものが似合うような陽光の世界に居るモンでも無い。仮に住民たちに声を掛けられて返す言葉も用意してないし、逆もまた然り。
 そういうのは英雄サマが、住民どもを励まして、希望ってやつをしめしてやりゃあいい。どんな素晴らしい声かけだろうが、この世界の摂理は変わらない。ここから先も、この世界じゃ、大量の人間がゴミみたいに死ぬんだろうがと思うと頭が痛くなる。
 誰にも感謝されない、誰にも視認されない。それでも、屍は構わなかった。どうせこの身は故の無い屍。誰かの為でも、己の為にも生きない骸。であれば、やはり自分のとった行動は無駄じゃあなかった。
 英雄をサポートし、英雄に花を持たせる。誰かが英雄と呼ばれることに、屍は特別嫌な気分はしなかった。むしろ――。
「あんた等こそ英雄さ」
 砦の人々の歓声に耳を傾ける。この砦を救った英雄たちを木彫りの像にしようだとか、叙事譚を作ろうなんて話まで出ている。全く、本当に元気だ。あれだけ搾取されておいて、まだ先へ進もうとしている。それはある意味、羨ましくもある光景だった。
「――今此処でやったことが無意味になるってこたぁ無さそうだな」
 お祭り騒ぎはどんちゃん続く。それを遠く聞きながら、屍はあいた肺穴に神経を集中させる。じわ……と染み入る魔力が燃え広がるように肺を修復していった。そうだ、これでいい。
 俺は誰かに祀られるような、主人公じゃない。お前らに譲るから、精々楽しみなよと、屍はダークセイヴァーの闇へと姿を消した――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

地鉛・要
【アドリブ連携可】ベイメリア(f01781)と連携

影業で出来た脚を解除し、ベイメリアが脚がくっつけるのを眺める
他の神秘や技術での治療は見た事あるが…生まれながらの光は神秘的で、ちょっと擽ったいな

大丈夫
形じゃ無くて機能が戻れば良い
傷は男の勲章…等とは言う積りは無いが、脚なんて簡単に補える程度
俺よりも怪我は大丈夫なのか?女性の顔に傷が残るのは大事なのだろ?

【監視軍蟲】で*月光属性の蝶を飛ばそう、蝶は魂の象徴
少しは慰めとなれば良いが…
砦の人達の傷はすぐには癒えないだろうが、今日目一杯悲しんで、騒いで、明日からまた動き出すだろうよ

そうだな。こうやってゆっくり話した事は無かったな
偶にはこういうのも良い…


ベイメリア・ミハイロフ
【要さま(f02609)】と

真の姿を開放
【失せ物探し】にて必死に探して
拾って参りました要さまの左足を、【生まれながらの光】を使用し
治療・接合を試みてみます

ああ、要さま
お守りすることができず、申し訳ございません
なるべく元のお姿に近づけられるよう
懸命にお祈り申し上げます

わたくしの事は良いのでございます
今は、他にも負傷なされた方々
また砦の方々の心の傷を
少しでも癒す事ができますよう
【生まれながらの光】を放ちながら、星空に向かってお祈りを

まあ、蝶、でございますか
とても…とても美しゅうございます
さようでございますね
皆さま、お強うございますもの

そういえば、要さまとは
こう、ゆっくりする事はございませんでしたね




 失せもの探しの要領で、ベイメリアは必死に要の引き千切られた左足を探した。案外それはすぐに見つかった。砦の通路に、まるでゲームのアイテムのようにぽんと置かれている。それを大事に抱え、井戸で少し砂埃を洗い流し、要の待つ砦の中へと戻った。
 影業で圧しとどめていた左足の技を解くと、どくどくとまではいかないが、じわじわと濡れる患部に脚が触れる。その刺激でビクっと体が震えるが、努めてなんとも無いように要は振舞った。生まれついての癒しの聖光を患部に浴びせ、接合と治療を試みるベイメリアを、要はじぃっと見つめた。最初はその脚を、続いてベイメリアの貌を。
 他の神秘や技術での治療は見たことがあるが、生まれながらの光ってのは神秘的で、ちょっと擽ったい。身を捩るようなものでなく、なんとなく心地良いむず痒さだった。真剣な心持ちで治療を続ける聖女は、祈りを捧げながら要に謝罪の言葉を口にする。
「ああ、要さま。御守りすることができず、申し訳ございません。なるべく元のお姿に近づけられるようお祈り申し上げます」
「あー、大丈夫。形じゃなくて機能が戻れば良い」
 傷は男の勲章……等という心算は無いが、脚なんて簡単に補える程度の範囲だ。これが両目だったり心臓だったりしたらまた話は違ってくるが、幸いにして今回はそれは免れた。ベイメリアの支援あってこそだろう。それこそ、要は自分よりベイメリアの方が心配だった。
「俺よりも怪我は大丈夫なのか? 女性の貌に傷が残るのは大事なのだろ?」
 その言葉に大きく首を振り、ゆるく否定の意を示すベイメリア。伏せた目を開き、じぃっと患部を見つめながらぽつりと言の葉を零す。
「わたくしの事は良いのでございます。今は、他にも負傷なされた方々、また砦の方々の心の傷を少しでも癒す事が出来ますよう祈らせて下さい」
「お前がそれで良いならいいけど」
 治療が進む間、手持無沙汰の要は掌からぼぅっと光り輝く蝶を召喚する。月光属性の蝶は無数の羽搏きで窓から天に昇ってゆき、周囲に幻想的な風景を作り出した。蝶は魂の象徴。此処で潰えた者、食われた者、残された者、全ての人々へ送る鎮魂となるように。
「少しは慰めとなれば良いが……」
 その蝶が向かう星空にも祈りを捧げると、ベイメリアはかなりそれっぽくくっついた……ような気がする要の患部へ手を這わす。内部の神経と血管の繋ぎは大丈夫だろう、あとは見た目だが、これは時間が解決するのを待つしかない。ひょっとしたら永久に残ってしまうかもしれないと、自身の力不足に嘆くも、要は「良い感じだ」なんて足を動かしてみせた。「そんな急に動かさないでください!」と怒られ、大人しく再び脚を伸ばす。
「蝶、とても美しゅうございます」
「……砦の人達の傷はすぐには癒えないだろうが、今日目一杯悲しんで、騒いで、明日からまた動き出すだろうよ」
「さようでございますね。皆さま、お強うございますもの」
 人類砦に確かに灯った火は、猟兵達の手によって守られた。この灯が消える事のないよう、見守っていきたいと思う。光無き世界に確かに差す希望は、人々が掴むべきだから。
「そういえば、要さまとはこう、ゆっくりする事はございませんでしたね」
「そうだな。ゆっくり話したことは無かったな。偶にはこういうのも良い……」
「わたくしでお相手が務まりますでしょうか」
「はっ、結構。いや十分だね。時間はある、折角だし少しくらい帰りが遅くなったって良いだろう」
 二人が過ごすゆったりと穏やかな時間は、先ほどのヴァンパイアとの闘いよりも余程密な時間だったとか――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年09月17日


挿絵イラスト