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滴水成氷エンドウィル(作者 玄野久三郎
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●It's always darkest before the dawn
 樹が、凍り付いている。
 白色に染まった枝に雪が積もり、そこから透明な氷のつららが垂れ下がる。
 氷の向こうに見えるのは暗い夜の色。青とも黒とも言えぬ、人に畏怖と安寧を齎す色。
 白く凍った森を夜の黒が蝕む。そこは人の命を拒む世界だった。
「うぅっ……グスッ……」
 そこに少女の泣き声が微かに響いた。誰にも届かず、今にも消えてしまいそうな声だ。
 声は複数あった。一人が泣き出せばそれが伝播し、恐ろしい光景に、痛ましい冷たさに、次々と涙がこぼれ落ちる。
 ――そこに、獣の高い遠吠えが響いてきた。
 少女たちはひっと喉を鳴らす。そして、獣に聞こえぬようにと声を抑えて泣くのだ。
「……大丈夫。大丈夫よ、みんな……」
 震える声でそう話したのは、栗色の髪を防寒具のフードで覆い、大きなリュックを背負った少女だ。
 周りにいる数名の少女達より幾らか年上の彼女は、何とか勇気を振り絞る。
「きっと今頃、捜索依頼が出ているわ。大丈夫。大丈夫……」
 しかしその勇気は、絶望に閉ざされた少女たちにとっては余りに暗い篝火であった。
 静かな泣き声が聞こえる。夜明けはまだ遠い。

●Nothing venture, nothing save
 グリモアベースにて。黒髪をポニーテールにまとめた少女、白神杏華は慌てた様子で猟兵たちを集めた。
「皆、お疲れ様。今回はアックス&ウィザーズで、緊急の依頼だよ」
 アックス&ウィザーズといえば、先の帝竜戦役の記憶も新しい世界である。
 オブリビオンフォーミュラである帝竜ヴァルギリオスは群竜大陸に倒れ、今や平和を取り戻した世界だ。
 喫緊の事態などはあまり起こらなくなった筈であるが……。
「……ある村で祭りの準備が行われてたんだ。その祭りでは、新しく成人を迎える女性のために花冠が送られるらしいの」
 しかし、その村の付近には冠を作れるほどの潤沢な花が存在しない。
 その為、例年村の少女たちが大人と共に少し遠出をして、馬車でしばらく走った先のアストレイ山の麓にある花畑で花を摘むのだ。
「だけど今回、その花を摘むために山に向かった子の中で、運悪くはぐれちゃった子たちがいたみたいなの」
 彼女らを探して大人たちは山を捜索した。
 しかし少女たちは見つからず、山の深くまで入っていってしまったのだと結論付けられる。
 さらに運の悪いことに、その山は現在、危険な獣「ナーガクーガ」の目撃情報がある山でもあったのだ。
 ナーガクーガは大の大人や冒険者が戦っても苦戦させられる獰猛な獣――とされているが、その実態はオブリビオンである。
 当然それが住み着く山に捜索に行くには、相応の準備や狩りの腕が必要となる。
 それは、平和な村に住まう彼らには到底用意できないものでもあった。
 村人たちはすぐに最寄りの冒険者ギルドに依頼を張り出したが、ナーガクーガと聞いてすぐに腰を上げる冒険者はそう多くはない。
 この依頼が受託される頃には、すでに少女たちは息絶えているだろう。そこで、猟兵の出番だ。

「皆には、この山に迷い込んだ子たちを保護して、周辺に生息するナーガクーガを討伐してほしいの」
 少女たちは現在、アストレイ山の五合目にあたる「エンドウィル氷樹林」に逃げ込んでいる。
 その氷樹林は特殊な磁場に包まれており、ワープなどの空間を移動する能力を阻害する。
 さらに林の気温は常に氷点下を下回り、ただそこにいるだけでも生存者たちの命を奪っていく場所だ。
 それらの条件が合わさり、猟兵たちは基本的に自分たちの力だけで少女を助け、そこから脱出する必要がある。
「……ただ運がいいことに、彼女たちがいるエンドウィル氷樹林は、その危険性からナーガクーガたちも近寄ることができない場所。
 だから皆の救助さえ間に合えば、彼女たちの命を救うことはできる」
 無論、氷樹林は危険な場所だ。あまり長時間滞在すれば、猟兵であってもその身に危険が迫りかねない。
 ゆえに、一度に一人で全員を逃がそうとするようなことはやめたほうがいいだろう。
「こんなところかな。現場に直接は送れないけど、その近くまで皆を転送するよ!」
 くれぐれも気を付けてね、と杏華は念を押し、グリモアによる転送を開始した。





第2章 集団戦 『ナーガクーガ』

POW ●飛びかかる影
【不意打ちの飛びかかり】が命中した対象に対し、高威力高命中の【輝く牙による食い千切り攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD ●激昂
【怒りの咆哮を上げて威嚇する】事で【興奮状態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ ●集団防衛
【強敵の出現を知らせる警戒の咆哮】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Shot in the dark
 どこかから悲鳴が響いた。
 エンドウィル氷樹林から抜け、寒気も収まってきた頃。
 白ばかりだった景色が黒と青に絆されてきた頃。
「あ、あれ……!」
 一人の少女が闇を指差す。その先で、何かが素早く横切った。

 影を纏い、夜と同化して、獣が群れを成している。
 草を分ける音、喉から発される唸り声がその獣――ナーガクーガの存在を示していた。
 それが一体どれだけ潜んでいるのか、窺い知ることはできない。
 だが、確実なことがただ一つ。
 この獣を倒さなければ、少女たちを無事に村に送り届けることはできないということだ。
ハイドラ・モリアーティ
【M】
オイオイオイ、くそめんどくせーな
こいつぁ困っちまったな兄貴。うまいことあぶりだせたりしねェ?
いんや、なんかできそーだなって思ってよ
獣っつーのは逃げたら追いかけてくるし、追ったら逃げるモンだろ
んじゃあ、兄貴がフィールドさえ作ってくれたら簡単かなって
――できんの?マジで?

冗談だろ
お姉様同等なことしやがる。ああ、くそ、湧き上がるぜ、恐怖っつうのが
視たくもねェ、クソ、あのロンドン塔だ
――いらねえ記憶だ。ハハ、いい気つけだよ
【ADDICTION】来い、ヒュドラ
出口に向かって走らされる獣どもが今日のごちそうだ
余すことなく、食らってやろうぜ、なあ!
獣に念仏なんぞ、要らねーよなァッ!!


ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
【M】
あー、想像以上に素早いな
私、足遅いんだよな……こういう奴は苦手だ……
――ん、どうした?
確かにそうか、私の国にしちまえば良いんだな!名案だぜ!流石ハイドラ!
おー。出来るぞ。ちょっと危ないから、レディたちと一緒に下がっててくれな!

そういうわけだ
私の妹には爪の一つたりとも届けさせんよ
――現世失楽、【悪徳竜】
呼び起こす冷気の中に、我らが霧の街を映し出せ
冷気の届く範囲の全てが私の国だ
視界を失った暗闇の中で、どれほど足掻けるか、見ものだな

これで好きなようにやれるぜ、ハイドラ――
……?どうした?
動けないわけじゃないなら、まあ良い……か?
おー。全部お前の餌にしちまえよ
私は肉、苦手だしな


●In a fog
 影から影へ、素早く獣が飛び移る。
 己の気配を悟らせぬよう、己の位置をわからせぬよう。
 気づかれぬうちに包囲し、距離を狭め、獲物に少しずつ傷をつける。
 それが狩りだと、獣たちは心得ているのだ。撃破しやすく、一体で突出するものなど自然界には存在しない。
 なおかつ、今は少女たちという恰好の獲物と共にいるのだ。振り切るのも難しい。
 ニルズヘッグは竜を変じさせた黒槍を手に、二歩闇に向かって踏み込む。
 それに合わせて、獣が飛び退く音が聞こえた。彼我の距離は変わっていない。

「オイオイオイ、くそめんどくせーな」
 獣の反射を目の当たりにし、ハイドラが唸る。ニルズヘッグもまた肩を竦めた。
「あー、想像以上に素早いな。私、足遅いんだよな……こういう奴は苦手だ……」
 ハイドラは闇を睨みながら、複数の頭で思考する。
 ナーガクーガと追いかけっこに興じるのは危険だ。そうそう追いつけない。
 追い付いたとして、ここを離れるのなら少女たちを守るのが疎かになる。
 結局は、こちらから動くのは難しい。どうにかしてあちらに動いてもらわねばならない。
「こいつぁ困っちまったな兄貴。うまいことあぶりだせたりしねェ?」
「炙り出す?」
「あぁ、いんや……なんかできそーだなって思ってよ」
 獣とは逃げれば追い、追えば逃げるものだ。
 その条件下において、ナーガクーガに地の利がある今の状況はいかにも不味い。
 だが、その逃げ道が限られるならば。こちらに有利なフィールドを展開できるのなら、いくらか戦いやすくなるはずだ。
 そういう説明をすると、ニルズヘッグは嬉しそうにポンと手を打った。
「確かにそうか、私の国にしちまえば良いんだな! 名案だぜ! 流石ハイドラ!」
「――は? できんの? マジで?」
「おー。出来るぞ。ちょっと危ないから、レディたちと一緒に下がっててくれな!」

 さて、とニルズヘッグが一歩前に出る。彼が翼を広げると、辺りに霧が流れ始める。
 それはエンドウィルとは別種のものでありながら、それに似た冷気を湛えていた。
 霧の向こうに、建築物が見え始める。四本の塔を携えた建物だ。
 それはロンドンの風景。人類の進化のため、全てを犠牲にしようとした「霧」。
 誰が死に、誰が苦しんでも、進歩のために吐き出され続けた「霧」。
 悪徳を含んだそれは、ナーガクーガたちの視界を奪い混乱させる。
 ――ここはどこだ?
 ――なぜ闇が、こんなにも暗い?
 ――脱さなければ。ここから……!
 ナーガクーガたちの統制が崩れ、駆け出し始める。彼らが目指すのは出口。すなわち、二体の竜が待つ前方だ。
「これで好きなようにやれるぜ、ハイドラ――? どうした?」
 ニルズヘッグは、ハイドラが片目を押さえて俯いていることに気付く。どこか体調も悪そうだ。
「冗談だろ……お姉様同等なことしやがる」
 映し出されたロンドンの光景は、ハイドラにとって好ましくない記憶を思い起こさせた。
 霧の街に満ちる悪徳と狂気。それはかつて彼女に向けられたこともあるものであり、根底に根ざす恐怖だ。

 だが、それもいい気付けだ。ハイドラは奥歯を噛みしめる。
「……来い、ヒュドラ」
 体に刻まれたタトゥーがざわめく。それらは首の長い竜へと変わると、一斉に牙を剥いた。
「余すことなく、食らってやろうぜ、なあ! ――獣に念仏なんぞ、要らねーよなァッ!!」
 それは怒りをぶつけるようであり、恐怖を誤魔化すようでもあった。
 ともかく、ナーガクーガたちと多頭の蛇がぶつかり合う。ハイドラもまた、獣の腹部に爪を滑りこませる。
 夜の闇に血飛沫が舞い、霧はすべてを覆い隠す。獣の咆哮と、グチャリグチャリと肉の音が響き渡る。
「普通に動けるようで何よりだ! たくさん食べて大きくなるんだぞ!」
 私は肉苦手だしな。などと言いながら、ニルズヘッグはニコニコと眼前の凄惨な風景を見つめていた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

禍災・火継
小鳥遊・木蔭(楔の魔法少女・f28585)と

やるわよ、木蔭。UCを起動して必要なら少女たちを守るために使うわ。
射線上に打ち込み動きを制限して、叩く。
木蔭がやりやすいように動くとしましょう。私は火力があんまりないからね…。

相手は獣、ならまぁ、人間っぽく戦いましょう


小鳥遊・木蔭
禍災・火継(残響音・f28074)と共闘する

護衛対象は火継に任せて、オレは脅威を全力で排除するとするかね!
ちょうどいいところに武器があるよなぁ、これは割と余談なんだが…衝撃を一番伝えあうのは同じ硬度の物質らしいぜ。だから、同種同士だと…試したことはないが、めちゃめちゃ痛いぜ!

っつーわけで適当な一匹に楔を打ち込み、ブン回す!
何度か遣ったらムリヤリ引き抜いて次の獲物を物色だな


● Killing two birds with one stone
 獣が唸る。
 彼らは元より、縄張りに入り込んだ少女たちを狙っていた者たちだ。
 獲物が、彼らの忌み嫌うエンドウィル氷樹林に入り込んだ。だから追うことはできなかった。
 旨そうな獲物を逃がして、腹を空かしていたのだ。その分ナーガクーガたちの飢えと怒りは強くなっている。
 獣が牙を咬み合わせた。しかしそんな威嚇も、二人の猟兵には通じない。

「やるわよ、木陰」
「おう!」
 火継が軽く手をかざすと、空中に幾本もの卒塔婆が浮かび上がる。
 それらは空中で円を描くと、幾何学上に組み合わさり、また離れていく。
 火継はまず二つ、小手調べとばかりにナーガクーガに卒塔婆を飛ばす。
 闇に向けて撃ち込まれた木板は空を切り、獣たちは軽く攻撃を躱す。
「こいつら、速いな……!」
 攻撃を躱したナーガクーガは、そのまま獲物である少女たちの元へと駆ける。
 しかし、踏み出した先。その鼻先に、天から降り来る卒塔婆が掠め、獣はすかさず飛び退いた。
「手出しはさせない……」
 さらに地面に突き刺さる卒塔婆がナーガクーガの逃げ道を塞ぐ。
 引いた先に追撃が。走った先に木板が迫り、獣はただ疲弊しながら逃げ惑う。
 それが人の知恵――誘導であると、気づくことなどできようはずもない。
「うらぁっ!」
 金属が擦れる音を立てながら、鎖が舞った。結びつけられた先端の楔がナーガクーガの一体に突き刺さる。
「ギャオオォォ――」
 楔から逃れようとするナーガクーガ。伸びる鎖の先端を握るのは木陰だ。
「おっと、そう簡単には逃げられないぜ?」
 木陰が鎖を上に振り上げると、ナーガクーガの足は地面から離れ、宙を舞う。
 重さをなくした獣の体を、木陰は振り回した。激しく空中を回転する獣は、やがて容赦なくほかの獣へとぶつけられた!
「ギャウンッ!」
 衝撃を最もよく伝えるのは同種の物質。同種の生物がそれにあたるかは定かではないが、ともかく、その衝撃は二体の獣を気絶させるのは十分だったようだ。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴