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無限氾濫瀑布探索行──崩壊雨を阻止せよ

#アックス&ウィザーズ #戦後 #群竜大陸

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●不変にして絶対なるもの
『我らオブリビオンこそが、この世界の真なる主。
 過去と死は、既に確定したものであるが故に、絶対の概念である。
 未来や生命のように、世界をおぞましき不確定要素で汚す事など無い』

 ああ、全くその通りだ、と限りなく広がる水の中にその身を沈めるオブリビオン、ヴァッフェントレーガーはかつてこの大瀑布に君臨した帝竜の言葉を追想していた。

 生物も非生物も大気や大地すら崩壊させる事が出来る彼にとって、まさしく未来や生命は不確定で脆くて呆気なく崩壊する下らないものばかりだ。そんな彼をもってしても崩壊できない物、それこそ『過去』でありオブリビオンという存在そのもの。なれば世界は、全てが崩壊した後に過去のみ存在する世界こそが、不変にして絶対であるのではないか。彼はそう考えていた。

 彼は無限に溢れ地上へと降り注ぐ水の流れの中に、一見変哲の無い石を見つけるとそれを容赦なく咥えて飲み込んだ。彼はこの瀑布に潜み、領主の目を逃れながらその石を見つけては呑み込み自身の身体に取り込んでいた。そして今、その石に秘められた魔力を十分に蓄える事ができた。これだけの魔力があれば、彼の計画は実行できる。

 そうして彼は瀑布の中にて潜伏を続ける。だが、その身体には見えにくい箇所に石のような突起が生え、そしてそこから周りの水に何かが放出され続けていた。

 それは彼の持つ『崩壊』の力。本来はこの水ですら崩壊できるが、調整する事でこの水に纏わせ、内包させ、汚染していく事に成功していた。

 そうして崩壊の水は次々に周りへ広がっていく。そしてやがては、この大陸の縁に辿りつく。そして、辿りついた先には――。

 そこから起こる大逆転の景色を夢見、彼は静かに侵蝕を続けていった。

●空から降り注ぐ不可避の破滅
「皆ー! 大変大変! アックス&ウィザーズでやっばい物語見つけちゃったよ!」

 グリモアベースにて猟兵を慌てて招集したのは、白塗りピエロメイクにピエロ衣装の少女。九十九・サイレン(再誕の18不思議・f28205)だった。ふざけた格好ではあるがこれでも彼女は真剣である。

「群竜大陸の無限氾濫瀑布って知ってる? ボクは知らない物語だけど、そこで帝竜『女禍』ってキンピカドラゴンと皆が戦ったんだよね? んで、倒した後は領主さんがそこを支配してる、ってんだけど……どうもそこで残党オブリビオンがとんでもない計画をしようとしてるんだよね。

 首魁は『崩竜・ヴァッフェントレーガー』。対象を崩壊させる力を持ってる。んで、コイツが無限氾濫瀑布のあちこちにある『月の石』っていうのを集めて取り込んでパワーアップしてるんだよ!」

 『月の石』。帝竜消滅後に稀に発見されるようになった、一目ではただの石にしか見えない物質。だがウィザードの中でも一流のものやこういった解析に詳しいものがみればその中に膨大な「月の魔力」が眠っていると判別できるとんでもない資源らしい。そして運の悪い事に、ヴァッフェントレーガーはその判別が出来るオブリビオンだった。

「強化したヴァッフェントレーガーは、瀑布の中に潜んでどんどん自分の『崩壊』の力で水を汚染しているんだ。このままだと隣接した領地にも被害がいきそうだけど、そっちは大陸自身の領地の区域による不干渉的な何かでしばらくは大丈夫みたい。でもね、やばいのは大陸じゃなくてその『下』なんだよ」

 サイレンが深刻な表情でそういうと、猟兵の何人かは思い出した。群竜大陸を簡易的に眺めた時、無限氾濫瀑布の縁からは大量の水が大陸から零れ落ちているのだと。

「そう、瀑布の水はある程度流れた後、雨として地上に降り注ぐんだよ。もし崩壊の力で汚染された水が雨になって降ったら……UDCアースでいう、『酸性雨』どころじゃない被害が地上の人々に襲い掛かるってワケ! ね、やっばいでしょ?」

 その光景を想像しただけでも怖気が走る。崩壊させる雨が降り注ぎ、人も動物も全てを崩壊させ、建物に逃げ込んでもすぐに屋根を壊して雨が人々に降り注ぐ。まさに阿鼻叫喚。先の戦争での勝利を台無しにするかのような、まさにテロのような計画。

「だから皆には汚染水が縁につく前にヴァッフェントレーガーを倒して欲しいんだ! 放出元である奴さえ倒しちゃえば、縁ギリギリまでなら汚染の影響は全部消し去れるから安心して!

 ただ、奴を探す前に皆にはまず無限氾濫瀑布にある『月の石』を見つけて貰いたいんだ。ヴァッフェントレーガーは汚染水のど真ん中にいるからこのままじゃまともに近づく事もできないし遠距離から攻撃する事もできないんだよ。そこで、『月の石』には『月の石』! こっちも月の石を持ってれば、その魔力同士で中和して汚染水の中でも留まったり攻撃を通すこともできるようになるんだ!ただし月の石の厄介な所は一目だと普通の石だって事。だから中々判別が出来ないんだよね。一流のウィザードとか、そうでなくても解析とか魔力の判別に自信がある人ならこれだって分かるらしいけど……そういうのに自信が無ければもう、直感に頼るとか、手当たり次第に石集めてきて後で詳しい猟兵に見て貰う、とかもいいかもしんないね?
 あ、ちなみに無限氾濫瀑布は基本水が広がってるだけで足場はまず無いから気を付けてね?飛んだり泳いだり、色々な方法で対処して!

 月の石をある程度集めるくらい探索を進められれば、ヴァッフェントレーガーの手下である『激浪せし水棲馬』の群れも見つかると思うよ! そいつらはヴァッフェントレーガーのいる周辺を警護してるから、そいつらを倒せばヴァッフェントレーガーの居場所もすぐ分かると思う! ……え? そいつらは崩壊しないのかって? いや、実は水棲馬たちも月の石を取り込んでて、崩壊水の影響を受けないで優雅に泳ぎまわってるんだよ。やだよね! まあ逆を言えば、その石を壊すなり抜き取るなりしちゃえば勝手に崩壊汚染水で苦しんでくれるって事でもあるけどね! でも石は身体の見えにくいところに融合してるらしいから、大量にいるわけだし見つけるには工夫がいるだろうねー。

 水棲馬さえ倒しちゃえば後はヴァッフェントレーガーを倒すだけ! ヴァッフェントレーガーも身体に月の石を融合させてるけど、その数は水棲馬より段違いに多いから一つや二つ壊しただけじゃ影響無いから気を付けてね! 何より、奴の周りは崩壊汚染水だらけだから、月の石があるとしても戦い方に気を付けないと崩壊の影響を受けちゃうからね!」

 説明を終えると、サイレンはピエロの顔型のグリモアを手に出し、猟兵たちにその光を向けた。

「折角苦労して世界を救ったってのに、それをこんな最悪の作戦でひっくり返されたらたまったもんじゃないよね! 不変の過去が絶対、だなんていうオブリビオンに、いつでも変わって不安定だけど、だからこそ面白いものがあるって教えてあげようよ!」

 そうしてピエロらしい飄々とした笑顔を浮かべると、サイレンは猟兵たちを水平線広がる無限に溢れる瀑布へと送り出した。


タイツマッソ
 新人MSのタイツマッソと申します。2作目は群竜大陸の元帝竜支配領域での残党撃破、をお送りします。

 1章は冒険で、敵の居場所、ではなく『月の石』を探索して頂きます。魔術や魔力の判別に自信のある方はそういった方法や技能を使って貰えれば一目で判別できるでしょう。そういったものに自信が無い場合は勘や根こそぎ、等でもプレイング次第ではプレイングボーナスをお付けします。無限氾濫瀑布は水平線ばかり広がる領土なので、足場は基本は無いと思っていただき、飛行や水中、水泳の準備等をお願いします。

 2章では集団戦で『激浪せし水棲馬』と戦って貰います、戦闘区域は既に崩壊汚染水だらけなので月の石が必要になりますが、1章で入手していなくても分配したと言う事で全員所持可能とします。水棲馬は瀑布の浅いところを泳いでいるので、空中や水上からでも攻撃は可能です。水棲馬の体のどこかにある月の石を見つけ、それに対処すればプレイングボーナスが発生します。

 3章はボス戦で、首魁『崩竜・ヴァッフェントレーガー』との決戦となります。ヴァッフェントレーガーは深い水中に沈み汚染を続けているので、空中や水上から戦う場合はつり出したり誘き出す工夫が必要になります。また、ヴァッフェントレーガーにも月の石が露出しているのでそれを見つけて対処したり、周りの崩壊汚染水を利用したりすればプレイングボーナスが発生します。

 1章は7月25日朝8時半からプレイング募集を開始。執筆開始は26日8時31分以降となり、それ以降のプレイング採用はタイミング次第となりますのでご了承ください。
 2章、3章は断章投稿後からプレイング募集を開始します。

 ちなみに「月の石」はプレイングで消費しようとしなければ消えずに残るので、そのまま猟兵それぞれが獲得する事ができますがアイテムとして正式に支給されはしないのでご注意ください。小石程の大きさ一個に付き金貨1150枚(1150万円)の価値があります。

 では、大量の水の広がる無限氾濫瀑布での冒険、ご参加お待ちしております。
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第1章 冒険 『群竜大陸の探索』

POW   :    地道に歩き回って情報を集めたり、あえて危険な場所に踏み込んで捜索する

SPD   :    潜伏するオブリビオンの痕跡を見つけ出し、隠れ場所を突き止める

WIZ   :    オブリビオンの行動を予測して網をはったり、偽情報で誘き出したりする

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

神代・凶津
おうおう、見渡すばかりの水平線だな。
この一面の水が汚染される前にオブリビオンをぶっ倒すのが今回のミッションって訳か。
「・・・その前に『月の石』を手に入れないと。」
おうよ、相棒。
その為には、この水ばかりの場所を移動するための足を手に入れないとな。
と言う訳で頼んだぜ、相棒。
「・・・式、召喚【鬼乗せ船】」

鬼乗せ船に乗って移動しながら月の石を探すぜ。
例のブツは他の石と見た目は変わらないらしいが、何かしらの力とかオーラとかそんな感じの物が溢れてるだろ、きっと。
第六感を研ぎ澄まして探してやる。
それっぽいのを見つけたら船に備え付けてある網で引き上げるぜ。


【技能・式神使い、第六感】
【アドリブ歓迎】


御門・結愛
ユニコーンと契約したアリスナイト。
正義の味方に憧れ、カッコいいお嬢様を演じる。
「取り戻した平穏を再び危険に晒すわけにはいかないわ」
「わたくし達が必ず止めて見せますわ!」
ベルトに付いたメダル用のポーチからメダルを取り出し詠唱と共に【天馬融合】を使用。
純白の翼を広げ、少女は空を舞う。
「まずは月の石ですわ」
ポーチからユニコーンメダルを取り出し
「ユニコーン、あなたの魔力感知で見つけられないかしら?」
目星をつけたら、さらにベルトポーチのマーメイドメダルを取り出し、ユニコーンと同時に使用します。
「ユニコーン!マーメイド!」
鮮やかな水色のドレスを身に纏い【深海適応、水中機動、素潜り】で水中に取りに行きます。



●それぞれの『相棒』

「おうおう、見渡すばかりの水平線だな。この一面の水が汚染される前にオブリビオンをぶっ倒すのが今回のミッションって訳か」
「――――!!」
(……その前に『月の石』を手に入れないと)
「おうよ、相棒。その為には、この水ばかりの場所を移動するための足を手に入れないとな……の前に……おいアンタ、大丈夫か?」

 神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)は見渡す限りの水平線を見渡しつつ今回の目的を相棒である桜と確認し、そして早速準備をする……前に、先程から隣で声にならない声を上げている人物に声を掛けた。それは凶津が先日参加した別世界での依頼で知り合った新人猟兵。

「な、な、な、なんで転移させられた先が、上空なんですのーーーーーー!!」

 御門・結愛(聖獣の姫騎士・f28538)は遥か下に見える水面に目をやる余裕もなく落下する感覚と激しい重力による初体験に襲われていた。それに対してベテランの域に入る凶津は平然としていて。

「転移って意外と雑な事多くてな、こんなシチュも結構あるぜ? それに今回は足場ないって話だろ? だからこうやって空中に出して色々やる時間くれないとあっという間に水ポチャだしな」
「そ、それなら、心の準備が、欲しかっ――!!」
「そういう文句は全部終わってからにしとこうぜ? んじゃ、という訳で頼んだぜ相棒」

 そう言うと鬼面を被った少女の雰囲気が変わる。相棒の桜に切り替わったらしい。桜は冷静に迫る水面を見据えて。

「……式、召喚【鬼乗せ船】」

 簡潔にそう言葉を紡げば、真下の水面に巨大な船が現れた。それは彼女の持つ式神の1つで、鬼が乗る幽霊船。よく見れば300以上の武装した鬼が早速出港準備や周囲警戒に走っている様子が見てとれた。

「よっし、こっちは大丈夫だ! ほれ、そっちも来たからには準備はあるんだろ? 万一落ちても大丈夫だ。安心してやれ!」
「っ! は、はい!!」

 先に冷静にやる様子を見せられ、そして万一ミスっても足場を確保する事で冷静さを取り戻した結愛は落ち着いて、ベルトについたポーチからメダルを取り出しかざした。それはカクリヨにて出会った天馬の描かれたメダル。

「翼広げ駆ける天馬、我が想像の力に依りて、風雷纏いて空を舞わん! 『ペガサス』!!」

 それはかつて初めての時アリスナイトの力と共に使用した時よりも更に天馬の特性を知り出力を安定させたユーベルコード【天馬融合(ドレスアップ・ペガサス)】。翼を広げドレスを身に纏った結愛は翼で羽搏き空に留まる。

「よっと」

 一方、凶津は船に着地し、結愛を見上げる。

「そんな感じだ。次からは一人でやれよ?」
「あ、ありがとうございます!」
「気にすんな。この前はこっちも世話になったし、その礼ってことだ。さて、じゃあ月の石探しといくか。時間もそんなにないんだ、手分けしてこの辺を探そうぜ」
「はい!」

 結愛が飛び去って行くのを見て凶津は広がる水面を見据え、式神の一部である鬼達に号令を発した。

「よぉし、出航だ野郎共!! 場所は俺が勘で辺りを付ける! お前らはそしたら網を投げ込んで、そしてとにかく石をたくさん引っ張り上げろ! 取りこぼすなよへばるなよそして急げよ! もたもたしてたら、この辺りだって危ないからな!」

 鬼面の巫女の指示に、鬼達が頷き航海を開始する。それは宛ら、鬼の海賊団を率いる鬼の船長のようでもあった。



(取り戻した平穏を再び危険に晒すわけにはいかないわ)

 空を飛び、一面に広がる水面を見詰めながら結愛は思っていた。かつてはここは帝竜という強大なオブリビオンが支配していたという。結愛がまだ猟兵になる前の事であるが、残されていた報告書にはその激闘も記されていた。生命体全てを殺さんとする傲慢な黄金竜。足場の無い不利なこの戦場で猟兵達は戦い、そして帝竜を撃破、更にオブリビオン・フォーミュラを倒しカタストロフを阻止したという。1つの世界の全てを賭けた戦争。未経験ではあるがそれは多くの猟兵がやっと勝利を勝ち取った者であったことは想像に難くないと思え、この世界の人々の平穏はその果てにやっと手に入れたものだと思った。だからこそ、それを今最悪の方法で壊そうとするオブリビオンを必ず倒さなくてはいけない、とそう改めて決意をする。

「わたくし達が必ず止めて見せますわ!」

 とはいえこの広大な場所で闇雲に探すこともできない。だが、彼女には頼りになる仲間がいた。凶津にとっての桜のような、まさに『相棒』が。

「まずは月の石ですわ。ユニコーン、あなたの魔力感知で見つけられないかしら?」

 再びポーチから今度はユニコーンのメダルを取り出し、それを指で挟むとそれを周囲に向けてみる。ユニコーンは光の聖獣。そして月は太陽の光を受けて輝く。ならば、光のユニコーンならば魔力を検知できるかもしれないと思ったのだ。半ば賭けではあったが……。

「! あっちね!」

 ある方向に向けた時ユニコーンが光り輝いた。どうやら月の魔力を探知できたようだ。すぐにそちらに向かう。

「この下……!」

 そしてユニコーンが真下を指し示す位置に立つ。恐らくこの下。だが、それは当然水中。飛行用のペガサスでは進むのは無理がある。
 だが、結愛もまたカクリヨでの事件から更に経験を詰んでいる。それはつまり、新たな相棒とも出会えたという事。

「ユニコーン!『マーメイド』!」

 それはここのような大海原の広がる異世界。そこで行われたとあるオークション。その会場で出会った人魚の描かれたメダル。
 そのメダルと魔力探知のユニコーンを同時発動、ペガサスに代わり新たな青色のドレスを装着し海へと飛び込んだ。マーメイドの力が主体となったそのドレスは結愛に潜航能力、呼吸持続能力等を与え水圧を気にする事も無く、どんどん魔力探知した方へと進むことを可能にする。ユニコーンと併用する事で、メダルを使わずとも自身の感覚で魔力を目指す。

 やがてたどり着いた先、多くの同じような石に紛れて、結愛は見つけた。膨大な魔力を内包した石を。

「これが、『月の石』……!」

 彼女はそれを手に取ると、一旦水上へ戻る為に光向けてUターンするのだった。



「いっせーの……どぉりゃああ!!!」

 鬼たちの船上にて、鬼達と一緒に何回目になるか網を思いきり引き上げた凶津。網の中には大量の石が入っており、それを船上に積み上げていた。

「ふう……これだけ獲れば、結構月の石あるだろ」
(アバウト……)
「大丈夫だって、俺の勘を信じろ!! ……お?」

 内にいる相棒に向けてサムズアップした凶津の目に、空から翼で舞い降りてくる結愛が見えた。

「おう! そっちはどうだ?」
「はい。魔力探知して、幾らか周辺を潜りまして、これほど探せました」

 そう言って、結愛は袋から数個の石を取り出した。

「へえ……確かに俺の勘も、これって感じだな! ……ちなみにだが、あそこの石の中からはどうだ?」
「あそこ? ……まあ、凄い量の石……これ全部、皆様が?」
「おう! 肉体労働くらい鬼には苦じゃねえからな! で、どうだ? これだけあるんだ。俺の勘じゃあ、最低でも10個くらいは入ってんだろ」

 そう胸を張った凶津に、石の山を回って来た結愛が、気まずそうな顔を向けた。

「…………まさか」
「えっと……ごめんなさい。多分、私と同じくらいですわ」
「マジか……くっそ、思ったよりも量少ねぇんだな……」

 何しろ戦後の調査報告でも『ごく稀に』と表現される石。全体的にもかなり発見率は低いとみるべき資源だろう。

「ま、いいさ! とりあえず自分の分は確保できたんだ。持ってない奴に分配しても余裕はあんだろ」
「ええ、あまり探しすぎて汚染が広がりすぎては仕方ないですわ。合流地点に向かいましょう」

 とりあえずの成果を上げた2人を乗せた鬼乗せ船は、捜索後のランデヴーポイントへと向かうのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トレーズ・ヘマタイト
※アドリブ自由
判別方法が正しいかだな

転移と共に筏を複数出して結合し足場とする
選択UCで水中組・魔力組の幻影複数と、太陽神の使い魔の犬幻影を召喚
水中組に石を集めさせ、魔力組はそれぞれのアプローチで見分けさせる

月は太陽の光を反射させて輝くので、石に太陽犬が触れた後に光を遮ると月の石ならば発光する可能性があるので試す

自分も石を体内に入れて●生命力吸収の要領で石の魔力を吸い、異様に魔力の多い石を月の石として判別していく

最終的に月の石の魔力を引き出す魔力波長がわかれば、魔力●属性攻撃で広範囲に魔力を送り、月の石を炙り出し水中組に回収させる

いくつ必要かもわからんし、ある程度の数は集めておかないとな

以上


マリア・フォルトゥナーテ
アドリブ、連携、歓迎

「水あるところにこの船あり!来なさいフライングダッチマン号!」

UCで召喚した幽霊船を水中から飛び出させるカッコいい演出と共に、そのクォーターデッキに飛び乗ります!

「さて!水中をも進めるダッチマンの面目躍如!悪霊船員のみんなと共に虱潰しに水の底を探しましょう!!潜航ーーーーーー!!!!」

魔力はなく、魔法も使えないので、海賊らしい、汗臭い人海戦術による体力勝負です!手当たり次第の運任せで月の石を探し回ります!

他の猟兵さん達から捜索の指示をもらえたらその様に動きます。もらえなかったら延々水中を彷徨いましょう!


アンノウン・シー
一人称は当艦、三人称にはミスターorミス+苗字、愛称はウノ
「当艦の研究に使えるかどうかわかりませんが、使わないのであれば売却して資金に充てることとしましょう」
実験調査船を持ち出して該当海域を調査します。ソナーと電探等を使って地形と地質を調査します。目的のものは該当海域由来のものではないですから、他と異なる反応が出ると思います。



●幽霊海賊船と実験調査船、そしてイカダ

 ぷかぷか、と水面広がる瀑布を漂う一隻のイカダ。その上に黒いタールの塊に、丸くて赤いボールを乗せたようなものが乗っていた。尤も、ものというより『彼』と言うべきか。

「さて、とりあえずの足場は確保した。後は判別方法が合っていればいいのだが」

 彼はブラックタールのトレーズ・ヘマタイト(骸喰らい・f05071)。転移してすぐにイカダを組み立て着水させた彼は、早速ユーベルコードを発動する。

「剣を交え、打倒し、血肉を喰らい、魂を啜り、己の一部となった災魔よ、今一度その力、この場にて示せ」

 【イリュージョン・オブリビオン】。彼が倒し喰らい取り込んだ災魔の姿と力を持った幻影を召喚する技である。彼はそれにより、水中を得意とする幻影、魔力に長け判別可能であろうと予想する幻影、そして太陽神の使い魔の犬、という幻影を召喚した。

「では頼むぞ。石を手当たり次第に集めて来い。事態は一刻を争う。崩壊した個体が現れたり、水棲馬と思われるものを発見したらすぐに帰還しろ」

 トレーズの指示と共に、水中を得意とする幻影が潜り潜航していく。幻影の五感はトレーズと共有できる。とはいえ数が多い為、先程の指示は念の為、ということになる。

「さて……ん?」

 イカダが、いや、水面が突然ざわめきだした。まさか敵か、とも思ったがそれは上空から聞こえてきた、どこかで聞いた声で打ち消された。



「水あるところにこの船あり!来なさいフライングダッチマン号!」



 途端、水面を突き破り、黒色の巨大な、船首側に口のような部分を持った幽霊船が姿を現し、やおら着水する。そしてそのクォーターデッキに上空からすたっと着地したシスター服の女性。

「ふふふふ、ばっちり決まりましたよ! 海の汚染など、この海の支配者である私の目が黒い内は許しませんとも!」

 彼女はマリア・フォルトゥナーテ(何かを包んだ聖躯・f18077)。このダッチマン号の船長であり、内部で酒場を経営(?)している。今回、海の汚染と聞いてこうして意気揚々とはせ参じた訳だが……。

「ミス・フォルトゥナーテ。『瀑布』とは、河や湖から流れ落ちる滝の事です。つまりこの領土におけるこの湖部分は海ではないと思われます。それに、雨として流れ落ちるのですから、海だった場合は地上は塩害に陥るでしょう」

 ダッチマン号の隣に移動してきたアックス&ウィザーズ製とはとても思えない最新鋭の装備である実験調査船からマリアに突っ込みの声が聞こえてきた。それはアンノウン・シー(所属不明の船・f26269)のもの。彼女はダッチマン号の船員の1人であり、元は船の中枢コンピュータアンドロイド。どうやら今は実験調査船と合体している状態になっているようだ。

「…………。ええ! ですから、ここから雨になって降り注いだ先の海! その汚染を防ぐべく、私が馳せ参じたのです!!」
「…………あえてこれ以上の追求はしないべき、と判断します」

 マリアの若干の間をアンノウンはそっとしておく事にしたようだ。

「では早速『潜って』、手当たり次第に探してきますから、そっちもお願いしますよ!」
「了解しました。くれぐれもうっかりこちらの担当海域に入ってこないよう注意をお願いします」
「そんな事しないもん!!」

 アンノウンの容赦ない忠言にマリアが涙目で言い返すが、アンノウンは無視して実験船で航行を始めた。


「もー!! …………ふふん、いいですもんね。こうなったら、アンノウンさんより私が沢山月の石を見つけちゃいますから!
 さて!水中をも進めるダッチマンの面目躍如!悪霊船員のみんなと共に虱潰しに水の底を探しましょう!!潜航ーーーーーー!!!!」

 マリアの号令と共に、ダッチマン号とその悪霊船員たちが動き出し、やがてダッチマン号が水の中に潜航を始めた。マリアはデッキに立ったままだが、ダッチマン号の加護により、まるで水などないかのように平気でデッキに立ち船員たちと共に周囲を見ていた。

「よっし、では、船員の皆さん! とにかく石ならなんでもかんでも集めてきて!」

 悪霊船員たちがダッチマン号から離れ、あるいは乗ったまま網を放ったりして石を集めていく。かなり地道でかなり脳筋な作業だが、ある意味海賊らしい根こそぎ戦術ではあった。

「ふふん。いっぱい集めればきっと月の石がある筈。わからなかったら最悪私の海賊の勘で……ん?」

 ふと気配を感じたマリアが振り向くと……そこには水中を泳ぐ姿の、どう見ても船員ではない何か。物凄い、オブリビオンっぽい。

「びゃあああああああ!? ま、まさか、もう水棲馬っていうのと遭遇したんですか!? 聞いてない! こういうのってこういう作業の後ってなってるはず、ひどい! ……あれ?」

 それに思いっきりパニクったマリアだったが、それが何か、ビニールで覆ったメモを持っているのに気づいた。

「えっと、何々……『協力要請』?」



「成程。こちらも同じ要請を受けました。協力を受け、ある程度集めて戻っては来ましたが」

 実験船と共に戻って来たアンノウンが、今度は分離して人型ユニットがダッチマン号に立っている。
 彼女は別海域で、電探とソナーで海域を探知。月の石が帝竜撃破後に出現したものであることから、他の石とは生成物質等で違いを見出せると思い探索をしていた。途中、オブリビオンのような存在から協力を受け、共に周辺の石を探査。パターンを把握し、生成物質が異なるものを見出して現在、判別作業の途中であった。

「わ、私も無くても良かったのですが、やはり船長としてそういった要請を無下にしてはいけないと思ったので! 一緒に周辺の石をそれはもう根こそぎ拾い上げていたのです!!」
「……その結果がこの量ですか」

 見れば、大量の網や袋に入った石がデッキ中に転がっている。アンノウンが拾ったものを含めれば、かなりの量。流石にアンノウン1人では合流予定時間までに全部を見るのは難しそうだが。

「問題無い。協力して貰った分、判別作業はこちらも請け負わせて貰う」

 ダッチマン号に同じく乗り込んできたトレーズ。彼はダッチマン号の潜航で危うく転覆しそうになった所を持ち直し、協力した方が効率が良いと考え、水中幻影たちにマリアやアンノウンと連携させていたのだ。

「こちらの幻影は多くが魔力に長けた種でな。判別はそれぞれの得意なアプローチに任せている」

 見れば早速判別作業を始めており、それぞれが違ったやり方を試みている。過去であるオブリビオンであっても、こうして未来を拓くよう協力することはできる。

「アレは太陽の光を持つ幻影でな。月の魔力を持つ石、と聞いて、月と同じ性質を持っていると予測を立ててな」
「?? 月でなんで太陽?」
「成程。月は太陽の光を受けて輝きますからね」

 アンノウンの言う通り、月は太陽の光を受けて地上から見える光を放つ。その性質を利用し、太陽犬幻影が光を複数の石に当て、その後体の一部でそれを遮る。すると、1つだけが光をそのまま放っていた。

「すごい! これが月の石ってことですね!」
「恐らくな。ただ、あくまでこれは予測であるし、そういう性質を持つ別の石、という可能性もありはするがな」
「うーん、なるほど……でもまだ足りなくないですか?」

 見渡せば、大分手当たり次第に取ったので、石の量は細かい物を含めて大分溜まっている。手数はまだまだ足りていないようだが。

「いや、大丈夫だ。後は自分がやる」

 そう言ってトレーズはまだ判別していない石たちに近づくと、それを掴み、自分の中に全部一気に突っ込んだ。

「ええええええええええ!? そ、それはご飯じゃないですよ!?」
「流石にご飯と勘違いして食べた訳ではないかと」

 仰天するマリアに冷静に返すアンノウン。

「ふむ……ふむ……。1つだけ生命力の量が桁違いのものがあるな……」

 何かを品定めるような言葉と共に、石が次々に体から出てきて転がり、そして最後の1つをトレーズが指のようにした部分で身体から摘み取った。

「生命力吸収の要領で全ての石からやってみた。石の性質故か、多少はありはしたが1つだけ桁違いだったのでな。恐らくはこれだろう。
 そしてこれをサンプルに魔力波長も探知できた。これを使えば……」

 トレーズがデッキから海を覗きこみ、目のような部分から淡い光を海に放射する。光が水中に辿りつくと、漂う石の中に同じような光を放つのが水上からでも確認できた。

「なるほど、魔力共鳴ですね」
「そうだ。同じ波長ならば共鳴現象が起こり得る。それを調整して光として現れるようにしておいた」
「??????? よ、よくわからないけど、つまり見つけやすくなったってことですね! よーし、判別は任せましたから、もう少し取って来」
「貴方がダッチマン号で潜ったらこの石が全て台無しになります」
「自分の水中幻影が取ってくるから不要だ」
「ぴぎぃ……」

 暗に『大人しくしてろ』と言われ、船長なのにぃ、とつぶやきながら隅っこで体育座りして判別作業を見守るマリアであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

久遠寺・遥翔
メレディノポリスから参加
アドリブ歓迎

うちの領からもそんなに離れてない
メレディウスの騎士としても放っておける事態じゃないな

事前に【情報収集】で本物の月の石の波長を把握しておく
通信で常にエルザさんと情報共有しながら探索する
UCで変身、【地形の利用】で地形を把握、最高時速7800kmの高速飛行(勿論衝撃波で周囲に迷惑をかけないように適宜調整)で飛んで回り
研ぎ澄まされた【第六感】+【視力】による霊視で月の石の波長と近い魔力が籠っていそうな石を片っ端から【早業】でかき集めていく
回収した石はある程度フェンリルに収納して数が集まったらエルザさんの船に置きに行ってまた探索へ


エルザ・メレディウス
◆メレディノポリスで参加いたします
アド◎ 絡み◎

群竜大陸の領主の一人として、お力添えいたします


UC:ミストラルを使用して、ガレー船に乗り込んだら、くまなく周囲の探索を開始です

【地形の利用】を活かして、小さな小島や岩を目印にして、海の上で迷子にならないように。
久遠寺君とは、情報を共有しながら月の石がありそうな場所をくまなく探索いたします
もしも、魔力に詳しい方がいらっしゃったら月の石についてアドバイスを聞きながら探索を。
いらっしゃらない場合は、久遠寺君の第六感に頼りながら手当たり次第の探索...を


海へ潜らなければ行けない時は、【環境耐性】に配慮して、少し前に用意した水着で潜水いたしましょう


ジーク・エヴァン
郡竜大陸に、まだあんな竜が残ってたのか
これ以上、奴らの好きにさせるわけにはいかない
竜どもとは、ここで必ず決着をつける

今回はマールシアと一緒に行こう
月の石、ってのが見た目には分からないとなると、魔力とかで見つけるのはマールシアに任せて、俺は数を集めてそれをマールシアに鑑定してもらおう
【竜盾の軍勢】を発動!
盾を裏返して盾の上にどんどん怪力を生かして石を集めて乗せていこう
石を集める場所は【第六感】で辺りをつけて、自分でも少し見てみよう
岩とかでかい石は怪力で角砕きを振るい、重量攻撃で砕いて細かくしよう

竜を倒す
そのためなら、どんな作業だろうが苦労だろうが苦じゃない
月の石を絶対に手にいれ、崩竜を、滅する


マールシア・マーフィー
まさか竜の残党がいるとは
しかも水を汚して世界に滅びを振り撒こうとしてるだって?
…ジークほどではないけど、水を汚したのは赦せないね
その報いを受けさせよう

ジークと共に月の石を探そうか
【シャーク・トルネード】!
さあ皆、ジークと一緒に集めてきてくれ!
ドリトル、僕と一緒に彼らが集めてきた石を鑑定しよう
ドリトルの【宝探し】と【第六感】を活かして探してもらおう
【動物と話す】で話し合いながら少しずつ鑑定しよう

早くあの竜を倒し、水の浄化をしないと
あの水の中に生きるのはあの竜やその眷属達だけではない
水の中を生きる者達のため、あの竜を倒す足掛かりを必ず手にいれよう
あのジークの辛気臭い顔も、ついでに何とかしなくちゃね



●護る領主、翔ぶ騎士、怒る騎士、慮る魔術師

 群竜大陸には多くの領土があり、それぞれ、あるいは兼任で領主として戦役での戦果に応じて猟兵が支配・管理をしている。彼らにとっても、今回の崩壊汚染案件は他人事ではない事であった。彼らの領地にも残党オブリビオンは潜伏している可能性があり、今回のような大規模事件を起こす可能性は十分に存在するからだ。
 そしてだからこそ、放ってはいけない、と今回参加した者達もいた。

「うちの領からもそんなに離れてない。メレディウスの騎士としても放っておける事態じゃないな」
「ええ。群竜大陸の領主の一人として、お力添えいたします。自分達の領、他の領、この領土、そしてこの下にある多くの人々の為にも」

 自らが【ミストラル】にて呼び出した、400人以上の幽霊が乗るガレー船の甲板にて、そう語った女性はエルザ・メレディウス(太陽を目指して・f19492)。その傍らに立つ青年は久遠寺・遥翔(焔黒転身フレアライザー・f01190)。2人は水平線広がる絶景なる景色、そしてその景色のどこかに潜む破滅の影があると思うと、表情が自然と引き締まるのを感じていた。

 エルザは大陸の領土の内、『岩石回廊』と『レアメタルフィールド』の兼任領主をしており、そこの開拓村落『メレディノポリス』を私財で築き上げ、今も人々を集めつつ開拓や開発を続けており、遥翔は騎士としてその手伝いをしている。
 そんな折に齎された今回の事件。遥翔の言う通り、無限氾濫瀑布は岩石回廊と2つの領土を挟んだ位置にある。大陸領土自体は少なくとも地上に被害が及ぶよりは後に影響が出ると予測されている。だがそんな事は関係ない、と2人は考えていた。開拓にとって1番懸念されるのは人が怯えてしまう事。ただでさえ残党が潜んでいる危険の高い大陸であるのに、それでも共に生活を築き上げて行こうという人々。今すぐの危険が高い、低いの問題ではなく、大陸の危機ならばそれは領主として協力を惜しむべきではない。想いや方針の違いはあるかもしれないが、同じ大陸にて領主としてあるもの。1つの領土の危機には、領土の垣根を超えても取り組む。それが新たな生活において大切な事だとエルザは思っていた。

 そしてここには2人の他に、もう1組同乗者がいた。

「すみません、領主。俺達まで一緒に乗せて貰って」
「ありがとうございます」

 領主に対する礼の姿勢で感謝を継げたのは、騎士鎧に身を包んだ少年、ジーク・エヴァン(竜に故郷を滅ぼされた少年・f27128)と、彼の友人でありエルフの魔術師、マールシア・マーフィー(海と自由を愛する海のエルフの少女・f27297)の2人だった。

「いえ、こちらとしても今回の場合、マールシアさんのような魔術師の方は助かりますから。お互いさまという事で。それに、貴方達も今回この任務にかける意気はあると思いましたからね」
「はい。……俺自身も何体もの帝竜と戦って、猟兵皆でやっとヴァルギリオスを倒した。やっと世界に平和が戻って、竜も皆追い出せた……そう、思ったのに……!」

 ガレー船の縁に手を置き、水平線をみつつも拳を握りしめたジークに、マールシアが鎮痛な表情を浮かべた。

「まさか崩竜なんて奴がまだ残っていたなんて! しかも地上で暮らす人々を滅ぼそうとしている! あの時滅ぼされたあの村みたいな事、もうさせるものか! これ以上、奴らの好きにさせるわけにはいかない。竜どもとは、今度こそここで必ず決着をつける」
「ジーク」

 かつて竜によって滅ぼされた自分がいた里の事を思い出してしまったジークの方に、そっと友人であるマールシアの手が添えられた。

「僕だって君と同じ気持ちだよ。だって、こんなに素晴らしい水が広がる景色なんだ。それを、崩壊の力で汚染しようとしている奴、許しておけないよ」

 マールシアは海辺で生まれ育っており、海とは違うがひたすら水が広がるこの景色に懐かしさもある。だからこそ、ここを穢そうとしているヴァッフェントレーガーを許さない気持ちはあった。

「……ああ、わかってる」

 抱え込み過ぎてはいけない、ときっとそう言いたいんだろう、ということはジークも察した。だが、それでもそう思いきれる程に彼は大人ではまだ無かった。彼の心には今もまだ、竜という仇の影がちらついているのだ。
 場を取り直すように、遥翔がやおら声を上げた。

「それじゃあ、しばらくこの辺りを探してみる。目印は、あの岩場でいいか。デバイスで位置は把握しながら飛んでってある程度石を集めたら戻ってくるよ」
「ええ、気を付けてね久遠寺くん。貴方のユーベルコードはあくまで空中戦闘用。あまり深く潜ってそこでオブリビオンや崩壊水に接触したら危ないから……」
「分かってるってエルザさん。無理はしないさ。それじゃあ……【天焔解放(オーバーフロウ)】――フレアライザー・ヘヴンッ!」

 遥翔の気合を入れた叫びと共に彼の身体を全体的に黒色の鎧が覆っていく。剣と融合して得た、黒き鎧を纏う力。更にその鎧の周りを漆黒と黄金の炎が包んでいく。それと共に、最高時速7800kmの高速飛行に入り、甲板から飛び立ちあっという間に見えなくなってしまった。

「……さて、こちらも待っているだけの訳にはいかないわね」

 エルザもまた彼の帰りを待つだけではなく、周囲の探索を開始する。自分の目で探すのも当然だが、古代ローマの船乗りの霊たちもまた動員する。船乗りとなれば海を探索する能力は当然必須技能の1つ。広大な瀑布で石を探すのは難しい作業だろうが、こういった場所での活動に長があるのは間違いない。

「じゃあ俺も彼ほど遠くには行けないけど、この辺りを探してみる。マールシア、頼む」
「オッケー、【シャーク・トルネード】!」

 彼女が念じると、空に56体の回転ノコギリを生やした空飛ぶ鮫が現れる。中々シュールな光景だが、これは彼女が学んだれっきとした鮫魔術。それにこの探索においては飛行能力と水泳能力を持ち合わせた鮫は貴重といえた。

「さあ皆、ジークと一緒に集めてきてくれ!」

 ジークは降りてきた1体の背に、ノコギリに触れない様に位置を気を付けながら乗ると、そのまま海面に着水しサメの群れと共に瀑布を進み始めた。



「さて、この辺りでいいか」

 少し離れた場所まで来た遥翔は、デバイスからとあるデータを頭部のクリムゾンアイにダウンロードし、疑似視覚化した。

「これが月の魔力の波長データか……まだ市場にも殆どで回ってないだろうに、エルザさんの手回しには感謝しないとな」

 今回の任務にあたり、与えられた僅かな準備時間。その間に出来る事は少なかった。だが、領が近いエルザには一旦戻りそこで共に情報収集の時間が僅かにあった。そこでエルザは領主という立場、そして自分達が月の石のように領から珍しい資源を採取しており市場にも顔がきくことから、月の石のサンプルや探すのに有用な情報を得られないかと連絡を取っていた

のだ。そうしたところ、とあるウィザードとコンタクトすることができた。残念ながら時間も無く現物は確保できなかったが、月の魔力の波長情報は得る事が出来、それを4人で既に共有してある。

「あんな限られた時間でこんなのを入手してくれるとは、流石元貴族だな……いや、これもここまでやって来た成果、か」

 だからこそ猶更それを無駄にすることはできない、と遥翔は第六感で捜索場所を決定、そして霊視で同じ波長の石を探す。

「! 見つけた!!」

 水面を漂う細かい石の数々。だがその中に1つだけ、目当ての波長のものを見つけると、その高スピードで石が沈む前に鋼翼フェンリルからプロミネンスチェインというワイヤーアンカーを発射。瞬時にワイヤーで水面から石を確保しフェンリルに回収した。

「あれだけあって、これだけか……本当に希少なんだな……!?」

 沈んでいく他の石を何気なく眺めていた遥翔だったが、その石が突然水中でぼろぼろに崩れ落ちたのを見て、硬直した。

(ま、まさか、もうここまで!?)

 崩壊汚染水。その言葉が頭を過る。幸い、船からは大分離れてきたのであそこまではまだ届かないだろう。それに、プロミネンスチェインにも影響がない以上、まだ浅いところまでは来ていない。

(待てよ。アレがここまで来ている、という事は)

 慎重に水に触れない様に、さらに深く霊視をしてみる。すると、少し遠くの当たりに、月の魔力がいくつも異常な動きをして動き回っているのが見えた。

(普通の石が渦巻きも無いのにあんなに動くワケがねえ。あれが、崩竜を護っている『激浪せし水棲馬』か!)

 月の魔力の波長を入手していなければ、恐らく分からなかった。水中潜航をしようとしていなくて良かった、と胸をなでおろし、遥翔は気づかれない様に徐々に距離を取り離脱した。

「よし、周辺地形と共に居場所は把握した。後は猟兵が合流してから一気に叩くだけだ!」

 月の石、そして重要な情報も入手した遥翔はエルザの船へと帰還飛翔を始めた。



「よし、この辺でいいか……来たれ!竜の牙を退け、竜の息吹を払いし大いなる守護の軍勢よ!」

 遥翔ほどではないが船からやや距離を取った場所に来たジークは鮫の背でユーベルコードを発動した。すると彼の持つ盾が68枚複製される。本来は守護や防衛に使う技だが、それも使い方次第である。
 盾を縦ではなく、横にして受け皿のようにすると鮫たちや自分の傍に位置付けた。

「石の捜索を開始してくれ! 水中は其方の方が専門だろうから、集める石の判断は任せる! 咥えきれなくなったらその盾にどんどん載せてくれ! くれぐれも崩壊汚染水には気を付けてな!」

 彼の号令を受け、鮫があるサメは空を、あるサメは水中を石を運ぶ用の盾と共に潜っていく。ジークもまた、周囲に石がないかどうかを探す。
 と、視界にいくつかの石が目に入った。だがそれは流されすぐに沈みいこうとしていた。

「逃がすか!!」

 ジークが咄嗟に凍結ナイフを投げ、水面の小石に命中させる。周囲の水ごと凍結させる事ですぐ沈むのを防ぎ、ゆっくり近づいて氷を剥がし石を取り出す。

「ふう……ん?」

 ふと目を移すと、そこにはこの瀑布では珍しい大岩の漂流物があった。盾に積むのは難しいサイズ。それなら、とジークは鉄塊剣である角砕きを取り出し思い切り振るった。ドラゴンの角すら砕かんとする分厚い武器は岩を粉砕し、欠片を自在に動かした盾に載せていく。

「はぁ……はぁ……」
 
 サメの背に手を置き、息を荒くするジーク。なにしろ盾全てを念力で操作するのも相当な精密作業を要求する。それでも彼は捜索の手を緩める気は無いようだった。

「竜を倒す。そのためなら、どんな作業だろうが苦労だろうが苦じゃない」

 今度こそ。今度こそこの大陸から竜を駆逐する。もう、奴らに何も奪わせも滅ぼさせもしない。その為にも、後で足りなかった等と後悔したくない。

「月の石を絶対に手にいれ、崩竜を、滅する」

 彼の目には今は、月の石、そしてその先にいる竜の影しか見えてはいなかった。



「ふう……これはどうかしら?」

 ガレー船傍で石を幾つか発見し、先日折良く作っていた黒の水着で潜り自ら石を確保して戻って来たエルザにマールシアは礼を言い、早速集まった石の鑑定を始めた。

「これは……うん、受け取った波長感覚と似てる。多分大丈夫かな。こっちは……うーん、大きいけどどうやら只の石、かな。
 これは……うぅん、ちょっと悩ましいな……ドリトル!」

 マールシアが呼ぶと、空を飛びシロイルカが現れた。マールシアにすぐくっついてくるほど人懐っこいこのイルカはメガリスの影響で飛べるようになったらしい。そして先のサメ同様、海におけるものを見る事においては先達の長がある。それにこういったお宝なものを探すのにも自信があるらしい。

「僕は判断に迷ってるんだけど……うん、うん。ドリトルもそう思う? よし、なら確保だね」

 月の石と思われるものを取り分けていくマールシアを見て、エルザが話し掛けた。

「ごめんなさいね。私も魔力判別は不得手で、貴方や久遠寺くんに任せてしまって」
「いえ、ウィザードってところは僕も自信があります。それに、水を穢す竜はやはり許せないし。それに……」
「それに?」
「……領主様。ここにいたのは生命の存在を許さない帝竜で、実際ここにはそれまで生命がいなかったんですよね?」
「ええ。女禍についての情報が開かされた時、そんな話もありました」

 オブリビオンならぬ生命を許さず、生命を殺す光線を得意としていた黄金竜。この瀑布もまた、その支配下では生命は存在しなかった。

「でも、帝竜がいなくなったなら、此処にだって生命が生まれているかもしれない。月の石なんてのが新たに見つかったんだし。だけど……」

 ぐっ、と拳を握る。崩竜の崩壊汚染水は水以外の全てを崩壊させる。ならば、この瀑布にやっと芽生えた生命もこのままでは死滅してしまう。最悪、もう既に……。
 嫌な想像を頭を振ってマールシアは振り払う。水の生命の強靭さ、危機の察知はよく知っている。きっとまだ大丈夫のはずだ、と。

「水の中を生きる者達のため、あの竜を倒す足掛かりを必ず手にいれよう」
「……そうね。彼の為にも、ね」
「……ジーク、か……」

 エルザの言葉にマールシアはもう1つの懸念が過った。ジークはやっと取り戻したこの世界の平穏、帝竜たちを倒した事、それらを引っ繰り返されたような状態でいつもの彼では無くなっている、そんな一抹の不安。今はまだいい。だが、もしも肝心の決戦でそれが裏目に出てしまったりしたら……。

(あのジークの辛気臭い顔も、ついでに何とかしなくちゃね)

 そう決意しながら水平線を見詰めるマールシア。その耳に、エルザの声が聞こえてきた。


「もしもし久遠寺くん? 状況はどう……え? 水棲馬の群れを見つけた? わかったわ、場所は……」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『激浪せし水棲馬』

POW   :    血染めの魔角
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
SPD   :    貪り喰らうもの
戦闘中に食べた【人肉】の量と質に応じて【魔力を増幅させ】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    欲深き者共へ
【欲深き人間達に対する怨嗟の呪い】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●過剰なる因果応報

 月の石探索、および判別作業を終えた猟兵達が事前の合流地点に集まった。各々の移動手段を用いた結果、色々な船が集ったある意味凄い光景にもなっている。そんな中、ある猟兵が発見した水棲馬の群れの位置情報。これで向かう先は決まった、と。各々の準備や最低限の月の石の、各猟兵への分配。余った分は取得した猟兵の自由、という事になり、一行は水棲馬の群れがいるであろう地点へと向かう。

 果たしてたどり着いた場所。その辺りはもう崩壊汚染水に満たされているようで、今まではあった小さな岩場等も全く見当たらない。
 そして代わりに、向うも猟兵に気付いたようで、水面をばしゃばしゃと音を立て、そしてそこから体を上げていたのは一見は馬であった。だが、その下半身は魚である。そして彼らが猟兵に向ける視線から読みとれる感情、それは『怨嗟』であった。

【我らを身勝手な感情で狩り尽くした人間共】
【何故味方をする。何故護る。何故我らを護ってくれなかった】
【我らを滅ぼした人間共。奴らもまた滅びるべき。それこそが奴らの受けるべき罰】
【故に我らは崩竜を護る。奴の崩壊の水にて、地上の人間を、そしてこの大陸の人間を全て滅ぼさせる為に】

 心無い冒険者たちにより、珍しさや部位の為に狙われ狩り尽くされた生物。それが彼らの元であった。オブリビオン故に、怨嗟の感情のまま不変の過去となった彼らがヴァッフェントレーガーに従ったのは一重に復讐の為に利害が一致したからのようだ。それが猟兵達に向けられた思念から読み取る事が出来た。

 大量に泳いでいるが、猟兵を駆り尽くさんとガチガチ歯の音を立てており、その為か浅い辺りを泳いでいるので、空や水上からでも攻撃は十分に届くだろう。月の石さえ持っていれば崩壊汚染水の中でも泳ぐことができ、放った攻撃も月の魔力の加護を帯びるのでそのまま崩壊汚染水の中を突き進んで相手に命中させる事が出来る。
 だが水中は水棲馬の得意とするフィールド。そう簡単に倒すことはできないだろう。

 ふと一瞬水棲馬の体の一部に堅い石のように見える突起が見えたが、それは水棲馬のタテガミで隠れてすぐに見えなくなってしまった。そう、崩壊汚染水は水棲馬にも効く筈だが彼らは恐れることなく泳いでいる。水棲馬もまた月の石を呑みこみ身体に融合させているのだ。そしてそれが、体の表面に僅かだが現れている。だがその発見は数が多く動き回っているのもあり難しいだろう。
 だがもし特定し、破壊ないし抜き取るなりの対処ができたならば、水棲馬は崩壊汚染水の影響を受けてまともに動く所では無くなる。攻撃のチャンスとなるだろう。

【滅べ!】【滅べ!】【滅べ!】
【そしてお前達も、我らのように『過去』になるがいい!】

 襲い来る水棲馬。彼らの怨嗟にどう対するかは猟兵それぞれの道。なれど排除しなければいけないのは確かだろう。そうでなければ、この先の首魁にはたどり着けないのだから。

※プレイングボーナスは水棲馬に融合している月の石を発見し対処する事。月の石の融合場所は個体により違い、見つけにくい所と大きさ、かつ水棲馬は水中を動き回っています。

※戦闘場所は既に崩壊汚染水だらけになっている水域で、足場は全くありません。月の石だけは残っている可能性がありますので回収を試みる事は可能ですが、その場合、水棲馬は魔力補強の為にその石を狙う可能性が発生しますのでご注意ください。

※SPDでは人肉は当然ですが、月の石がある特殊状況により、月の石を喰われても魔力が上昇するものとします。故に、SPDで判定するプレイングの場合、水棲馬は猟兵の持つ月の石も狙う可能性がありますのでご注意ください。

※今回からの途中参加も可能ですが、その場合は月の石は、プレイングで譲ってもらう交渉や持っている理由として妥当なプレイング、正式アイテムとしての所持が無い限りは『1個』所持とさせて頂きます。
 1章からの継続参加猟兵は2個以上の所持可能、とさせて頂きます。



※プレイング募集は28日朝8時31分以降とし、執筆開始は29日からとさせて頂き、29日からのプレイングを採用するかはタイミング次第とさせて頂きます。
御門・結愛

正義の味方として被害者達の声に動揺。
「くっ、そんな……きゃっ!?」
ユニコーンメダルが勝手に発動します。
襲いかかる黒い一角獣たちと、結愛を守る白き一角獣の幻影を見て

「わたしにできることは……」
月の石と聖剣が融合し、周囲の毒も呪いも悪意をも浄化し敵を吹き飛ばす。
「過去の怨嗟で、今を生きる人たちを消させるわけにはいかない!」
月の石を中心に二枚のメダルが、一角獣と水乙女が共鳴(ユニゾン)します。
深海を照らす月の光、水面に映る月の如く、胸元に月の石の付いた青いドレスを纏う。
ユニコーンの魔力感知で月の石の位置を捕捉、マグナムから光の魔力で作られた魚雷弾、誘導レーザーを連射する。
「あなた達を解放します」



●月光に舞う水乙女

「な、何これ……これが、恨み……!?」

 マーメイドメダルの力で水上付近を進んでいた御門・結愛(聖獣の姫騎士・f28538)は、水棲馬たちから向けられたその怨嗟の思念の数々にひるまずにはいられなかった。何せ結愛は最近まではUDCアースで普通の生活をしてきた上に、今まで相手したのは自分なりの歪んだ理想や欲の為に明確に人々に仇名す、『悪』と形容できる者達だった。だが目の前にいる異形たちは違う。この世界の人間の欲によって滅ぼされてしまった者達。それが怨嗟の元にオブリビオンとなってしまった者達。つまり被害者。そんな彼らの恨みや嘆きは、結愛にとって今までぶつけられたことのない感情であり、彼らを倒す事を迷わせるには十分な物だった。そして戦場では僅かな迷いがその動きを大きく鈍らせる。

「きゃっ!」

 真っ赤に染まった水棲馬の角が天に掲げられると、結愛の周りの水が大荒れし、その中から黒い霧のようなものが立ち込めてきた。

「な、何これ、まさか、呪い!?」

 それは水棲馬たちの恨みが籠った呪いそのもの。呪いの象徴となった血染めの魔角により、『呪属性の大波』が今引き起こされているのだ。このままでは大波に耐えても呪いに蝕まれてしまうだろう。

「くっ、そんな……きゃっ!?」

 迷いのまま上手く対応できず、大波に動きを制限された結愛に、別の水棲馬が憎染みで歪み切った顔とその歯をむき出しにして突っ込んできた。その表情の恐ろしさ、そしてそれが自分達人間に向けられていると悟り、尚結愛は動く事が出来ず……。

「グギィ!!」

 が、突撃してきた水棲馬が何かに弾き飛ばされ水面へと落ちた。結愛がカウンターした訳ではない。他の猟兵からの援護かと結愛が顔を上げると、そこにあったのは水棲馬とよく似た一角の馬、だが色合いが全く違う存在がいた。それは彼女が初めて出会ったメダルに宿る存在。

「ユニコーン!?」

 見ればポーチから光が漏れていて、うっすらとユニコーンが目の前にいた。咄嗟に庇ってくれたらしい。

【我らと似た異形だと!?】
【貴様、人間を守ると言うのか! 欲深く、獲物を狩り尽す罪深き愚か者どもを!!】

 結愛を庇う姿に水棲馬たちが怒りの思念を向けるが、ユニコーンはそれを無視し、無言で結愛を見つめた。

「あ……」

 その瞳は語っている。大丈夫、お前は正しい。だから、自分のできることを為せ。と。まっすぐにそそり立つ、決して曲がらぬ一角を天に向けて。そしてその姿が消える。

「わたしにできることは……」

 結愛が口を真一文字にし、ポーチからユニコーンメダルを取り出した。もう迷いはしない。自分を信じてくれる人がいるなら、自分が思った正義を叫ぶことができる。一本角の如き、まっすぐに掲げる正義を。

 余剰分の月の石を取り出すと、それを一角獣の聖剣に合わせる。すると月の石が聖剣に吸い込まれるように消え、そして聖剣から目映い光が周囲に放射されていく。

「グヒイイイイ!!」

 光の眩しさに怨嗟に目を濁した水棲馬たちは苦しみ目を瞑る。そして周囲に撒き起っていた呪いの嵐は、ユニコーンの聖なる光により浄化され元のさざ波に戻っていった。
 月は太陽の光を受けて輝く。輝くのならば、光を司るユニコーンとの相性は抜群でありこの親和性は当然のものとも言えた。

「過去の怨嗟で、今を生きる人たちを消させるわけにはいかない!」

 そう、結局はそこになる。水棲馬たちが狩られたのは過去。遥か何世紀も前かもしれないし、数年前かもしれない。だが、狩り尽した罪を持っている者は恐らく全体に比べれば少ないだろう。今世界のほとんどがそれとかかわりの無い、知らない人々なのはまず間違いない。例え正当な恨みだとしても、それで全てを無差別に滅ぼそうとするヴァッフェントレーガーに協力した時点で、その正当性は無い、と結愛ははっきりと心に決める事が出来た。優しさゆえに、それを断ずるのもまた独善ではとも去来した。だが、認めてくれる者がいたのなら、それを振り払う事が出来る。

「そして、もう1つ!」

 月の石を更に1つ取り出し、それをユニコーンメダル、マーメイドメダルを同じ手に持ち、空へと掲げる。
 光と海、月と関係の深い2つの属性を持つメダルが月の石を触媒にして共鳴の光を放つ。そしてそれと共に結愛が【アリスナイト・イマジネイション】を発動し、その共鳴を元にした無敵の鎧を想像し創造する!

「月から降り注ぐ光、水面に映る月となる! ユニコーン、マーメイド! ムーンライトユニゾン!! 月光水乙女鎧(ムーンライトマーメイドドレス)!!」

 元々の青いドレスの胸元に月の石が合体し、ユニコーンの力に依り各部に白色のアクセントカラーが入る。

「行きますわ!」

 結愛が勢いよく水に飛び込めば、圧倒的な遊泳スピードで水中を突き進んでいく。この辺りは崩壊汚染水だらけだが、月の光の加護をそのまま纏った結愛には元が月の魔力によるその効果は相殺され、なんら影響を及ぼす事は無い。

「後ろ、頂きます!」

 あっという間に水棲馬らの背後に回り込んだ結愛は相手が振り返る前に、天馬の雷銃(ペガサス・マグナム)からユニコーンの光の力により作られた水中用魚雷弾や湯堂レーザーを放った。全てがそれぞればらばらに飛び、そして1つずつ水棲馬の身体に命中した。

「ギ、グギイイイイイイ!!」

 一発当たっただけなのに苦しみもがく水棲馬たち。見れば、体の一部が徐々に崩れていっており、崩壊汚染水の影響を受けているのは明らかだった。

「月の石を取り込んだユニコーンの力があれば、月の光を纏う石の在処は一目瞭然ですわ!」

 結愛はユニゾンドレスの効果で月の石を一瞬で把握し、それを狙い撃ったのだ。その結果、月の石を破壊された水棲馬は崩壊汚染水でもがき苦しみ機敏な動作は不可能になっている。このまま放っておけば苦しみぬいた後、崩壊の力により崩れて消滅するだろう。だが、結愛は全員を捉えられる位置に移動すると、マグナムを構えてその先端に光を集約させていく。

「あなた達を解放します」

 オブリビオンになったが故に怨嗟の感情から逃れられぬ者達。それを苦しみ抜かせるのは結愛も心苦しかった。

「お願い、ユニコーン。例え今だけだとしても、彼らに浄化の光を!」

 マグナムからチャージした光が放たれる。それはユニコーンによる浄化の属性を籠めた光。それは直線状の水棲馬たちを呑みこみ、そして消滅させた。
 だが、結愛は確かに見た。消える直前、その身の呪いが消え去り、安らかな表情になった水棲馬たちの顔を。骸の海に戻るだけの運命とはいえ、今この一瞬だけは、確かにその怨嗟を消す事はできたのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

雷田・龍子

SPD
人派ドラゴニアンの龍子は上空から様子を窺う。
「水棲馬の特性を考えれば、猟兵が所持している月の石で誘き寄せることが出来ますね。ただ、このままでは水棲馬に融合している月の石を発見し難いでしょう。何か良いガジェットを引き当てたいですね」

ユーベルコード「ガジェットドロー」を発動。
「なにが出るかな……?」
胸の谷間に手を突っ込み、ガジェットを探る。そして取り出したガジェットを利用し、龍子が所持する月の石を狙い襲い掛かってくる水棲馬を返り討ちにしようと試みる。

「お前達の月の石は何処にある?」



●空を舞う雷竜

「少々出遅れはしましたが、私も尽力させて頂きましょう」

 雷田・龍子(人派ドラゴニアンの全力お姉さん・f14251)は空を翼で舞い、滞空しながら怨嗟のまま猟兵たちと戦闘を続ける水棲馬たちを見やった。彼女はドラゴニアン、この世界とは違う世界が発祥の竜の力持つ人間たる種族。空を羽搏ける彼女には足場の無い場所だろうがデメリットにはなってはいなかった。よってこうして水棲馬たちを見下ろす場所で俯瞰する事もできている。とはいえ、ならば水棲馬たちが攻撃できないのかと言えばそんな事は無い。

【月の魔力、よこせええええ!!】

 恨みのままに、貪欲なままに水棲馬たちが数匹瀑布から勢いよく跳ね上がり、龍子目がけて突っ込んできた。一旦水中の中に潜り、水上目がけて進む勢いのまま空中へと飛び出しているのだ。UDCアースのトビウオやラッコも行うジャンプ方法。魚の下半身を持つ水棲馬も当然可能である。だがそれは自分にとって最適な環境を捨てる事にもなる。

「失礼、お触りは厳禁になります」
「ガァッ!?」

 メイド服の龍子がメイドらしい優雅な動きでサンダーソードを使いカウンター、その背後を彼女の持つ小型竜、ドラゴネットが守り水棲馬の顔を蹴り飛ばし水面に送り返した。まさに『どうぞお帰り下さいご主人様』と言わんばかりに。

「やはり、水棲馬の特性を考えれば、猟兵が所持している月の石で誘き寄せることが出来ますね。ただ、このままでは水棲馬に融合している月の石を発見し難いでしょう」

 水棲馬は恨みのまま、自分達がされたように人間を貪り喰らう事で魔力を高める性質がある。更に今回、猟兵は上質の魔力資源である月の石を持っている。故に水棲馬は月の石も狙って突っ込んでくる。飛行手段があり、崩壊汚染水を恐れる事が無い為月の石が必要ない龍子が月の石を他の猟兵に譲渡して貰ったのも、万一崩壊汚染水が空まで飛んできたりした為だけでなく、こうして誘い出す為でもあった。とはいえカウンターだけでは決め手に欠ける。やはり月の石を破壊して自滅を狙いたいと龍子も考えていたが、先程のでも体の何処に月の石があるかは目視できなかった。

「やはりこの手でいきますか。何か良いガジェットを引き当てたいですね」

 そう呟くと、徐にメイド服に包まれた胸に思い切り手を突っ込んだ。青少年でも周りにいれば戸惑い思わず目を塞ぐ光景だが、正確には鳩尾に貼ってある四次元倉庫の紋章シールに手を突っ込みそこからガジェットを引いているだけである。動作は一重に、龍子の趣味である。多分。

「なにが出るかな……?」

 そして引き出したのは、一見サンバイザーのようなガジェット。だがその目じりの部分には何かを入れるような大きめの装置がくっついている。

「……成程。サーチバイザーですね。」

 使い方を把握した龍子はそれを目元に嵌め、そして持っていた月の石を目じりの装置に挿入した。そうすると、バイザー越しの視界にいる水棲馬たちの身体に1つずつ光点が灯っていく。

(同種の魔力や性質を感知する探索用バイザーガジェット。探索や捜索用が本来の用途でしたが、このような使い方もできましたか)

 月の魔力を解析し、同種の魔力を探知しそれを表示する。これにより見えにくく隠れているという点を無視し、月の石の位置を完璧に把握する事が出来た。場所さえわかればこちらの物。

「ドラゴネット!」

 呼び寄せられたドラゴネットが龍子の手元に来ると、その身体を銃槍ドラゴンヘッドに変え龍子の手に握られる。水棲馬が再びジャンプし喰らいついてくるがもう先程とは状況が更に違う。

「狙い撃ちます」

 スナイパーの覚えもある龍子の手に銃槍があり、そして狙うべき点がはっきり示されているのならばあとは容易い。喰らいつく水棲馬をかわし、そしてドラゴンヘッドで狙うべき光点……月の石を過たず狙い撃った。

「「「グギャアア!!」」」

 しかもかわした相手のみならず追撃で飛びかかろうとしていた水棲馬までもが月の石を穿たれ破壊され、そして落下する。そして月の石を破壊されたその体はもはや崩壊汚染水から逃れる事は出来ない。

「「「ギャアアアアアアアアア!!!!」」」

 その身体は崩壊していき、水の中へと沈んでいく。程なくその身体は完全に消滅するだろう。元はとある国で守護メイド隊長であった龍子に、襲い掛かる敵への同情の感情は無い。故に下す判断は介錯ではなく次にくる敵への迎撃姿勢。

「次です……さて、お前達の月の石は何処にある?」

 仲間を見やる事もなく、怨嗟と貪欲のまま龍子へ更に襲い掛からんとする水棲馬らを見下ろしながら、龍子は次の標的を見定め始めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジーク・エヴァン
凄い怨嗟だ
奴らも俺と同じ、復讐か
…だけど俺は止まれない
お前達を、越えていく!

マールシアがドリトルを貸してくれるらしいから彼に騎乗しよう
ごめん、結構重いかもしれないけど頼むよ
崩壊水に少しでも当たらないように、すぐ崩壊に気付けるように俺とマールシアのそれぞれ周囲に結界術を三重に多重詠唱したら行動開始!

移動はドリトルに任せ、俺は水面に奴らが顔を出したら氷結ナイフを投擲して牽制、その首を角ごと、怪力任せに角砕きのなぎ払い重量攻撃で刎ね飛ばし、グラムに喰わせる(生命力吸収)!
呪いの無差別攻撃は【竜盾の軍勢】を俺や周囲の猟兵達の前に7枚ずつ展開して守る
お前らの怨嗟は全部、俺が受け止めてやる!

連携・アド ○


マールシア・マーフィー
水棲馬
それも強い恨みを溜め込んでるね
…確かに人間達は多くの罪を犯した
だけどね
少ない悪人のためにもっと多くの命を犠牲にするわけにはいかないんだよ

ドリトル、ジークを乗せてあげて
重いけど少しの辛抱さ
僕は【海を駆ける双牙】でもう一匹の相棒と行こう
ジークが結界を張ったら、戦闘開始だよ!

数も多いし派手に爆発漁法といこうか
ジークとは別方向の彼らに爆発属性を込めたシャボンを多重詠唱
爆撃範囲攻撃で吹き飛ばす!
相棒も飛んだのを食べて良いよ

現象を起こされたらその現象とは逆の属性攻撃魔法を高速多重詠唱して相殺するよ
氷の波には炎の波さ

ジーク、君は彼らとは違う
だって君は未来を掴もうとしてる
僕ら「皆」で、最高の明日を掴もう



●『明日』

「あれが激浪せし水棲馬、凄い数だね……それも強い恨みを溜め込んでるね」
「凄い怨嗟だ。奴らも俺と同じ、復讐か」
「…………」

 【海を駆ける双牙(ユニゾン・ファング)】で召喚し、頭に月の石を括り付けたホホジロザメに乗ったマールシア・マーフィー(海と自由を愛する海のエルフの少女・f27297)と、彼女の友であるシロイルカ、ドリトルに騎乗したジーク・エヴァン(竜に故郷を滅ぼされた少年・f27128)は怨嗟のまま暴れる者達を見てそう呟いていた。

【そうだ!復讐だ!奴らの罪に、強欲に、報いさせるにはもう復讐しかないのだ!!】

 その声が聞こえたのか、ここぞとばかりに恨みをぶつけてくる水棲馬たち。だがそれでも2人はそれに目をそらさず相対する。

「お前達を狩り尽した奴らは俺も酷いと思う。……だけど俺は止まれない。お前達を、越えていく!」
「……確かに人間達は多くの罪を犯した。同じく水に生きる者としてはとても申し訳ないと思ってる。だけどね……少ない悪人のためにもっと多くの命を犠牲にするわけにはいかないんだよ」

 境遇に同情はする。罪も認める。だが、これから行う八つ当たりの虐殺を肯定する事などできはしない。そう2人は断ずる。

【黙れ黙れ黙れ!! お前たちも全て滅べ!!】

 突撃してこようとこちらに向かって泳いでくる姿を確認すれば、ジークはドリトルの背の上で準備を開始した。

「ごめん、結構重いかもしれないけど頼むよ。結界術、展開!!」

 ジークはただの騎士ではなく、術にも精通する言わば魔法騎士。自分、ドリトル、マールシア、ホホジロザメの周りに三重の結界を張っていく。これは崩壊汚染水との接触を少しでも避けて、月の石の魔力を崩竜に向けて温存しておこうという意志があった。

【その程度の壁、齧り取ってくれる!!】
「勿論、これだけじゃない!」

 結界術に構わず、ジークやドリトルに向けて襲い掛かろうと近くの水面から顔を出した水棲馬にすかさず凍結ナイフを投擲するジーク。

「ガギッ!?」

 当然そうなれば、先の探索時の石の如く、周りの水ごと凍結しその場に固められる水棲馬。氷も崩壊させる崩壊汚染水が周りにある為その拘束時間は短いだろう。だが、その短い硬直を見逃すジークではない。

「貰った!!」

 凍結したその首を容赦なくジークの鉄塊剣、角砕きが怪力で粉砕した。氷が細かい結晶となり水棲馬の肉ごと空を飛び散り、やがて消えた。

「ねえ、こんな時なんだけどさ、ジーク」
「な、本当にこんな時だな!?」

 後ろで『準備』をしているマールシアが背中越しにジークに尋ねてきた。ジークも戦士としてそれなりのキャリアがある為、会話しながら再び凍結ナイフを投げるくらいは可能だった。

「君は奴らと同じ復讐だ、って言ったね。でも僕ははっきり言うよ。ジーク、君は彼らとは違う」
「! け、けど、俺だって恨みは持ってる。里を滅ぼされた恨みを……なら、俺とあいつらは……」
「ううん、違う。ヴァルギリオスを倒して世界に平和が戻った喜び、そしてそれが引っ繰り返された怒りで、君はちょっと自分を見失ってるだけだよ。悪いだなんて言わないさ。むしろ人間なんだからそうやって不安定になるのは当然だよ。でも思い出して。帝竜ワームと戦った時、君ははっきり言ってたそうじゃないか」
「ワームと……」

 それは雷雲だらけの領域にて、傲岸不遜たる雷龍ワームを相手にした時。『邪なる心を持たぬ者はおるまい』、とワームに決めつけられた時、ジークははっきりと言い返したのだ。


『憎悪は確かにあるだろう。だが、あの人たちが与えてくれたぬくもりもある……! それを握りつぶすようなまねはできるわけがない!俺たちは、『人を護る』ためにいるんだ!』


「『人を護る』為……!」
「そうだよ。復讐の気持ちがあっても、君には護るという気持ちも一緒にあった。でも、アイツらには徹頭徹尾『復讐』しかない。アイツらが一度でも、『これ以上人間に生物が滅ぼされない為に人間を滅ぼす』だなんて言った?」
「あっ……」

 ハッ、とジークが水棲馬たちを見やった。殺された仲間に何も思わず、ただただ恨みと憎しみの為に牙を剥いてかかってくる者達。そこに護るという意志は全く存在しない。

「それどころか、アイツらの計画が成功したなら滅ぶのは人間だけじゃない。他の生物、僕らエルフ、ドワーフ、フェアリー……全てが滅ぶんだ。でもアイツらにはそんなのは見えていない。人間を滅ぼす。それしかもう無いんだ」

【滅べ!人間!】【人間を滅ぼせ!!】【人間を崩壊させよ!!ヴァッフェントレーガー!!】

「護りもせず、人間以外を見も出来ない。不変の過去に成り果てたアイツらには未来が見えていない。もう一度言うよ。君はあいつらと違う。だって君は未来を掴もうとしてる。人を護る、と君はもう決めていたんだから」
「未来……」

 そう聞いた途端、あの竜に襲われたあの悪夢、そしてそこに佇む竜の影。それの姿が少し薄らいだ気がした。見えてきたのは楽しかった里の風景。いや、これはきっとこの世界のどこかで別の村で明日あたりに行われる風景。それを、決してあんな事にしない為に……自分は戦ってきたんだと思えた。

「そしてもう1つ……さあ、準備完了だ! ジーク!」
「あ、ああ! 結界術、『一部解除』!」

 マールシアがついに準備を終え、合わせてジークが結界術を一部分だけ解除した。それはさっきの時に紛れ、密かに結界を施していたもの……それはマールシアが作り出したシャボン玉。それを波に乗せて、周囲に流していたのだ。崩壊汚染水で崩壊しないように、月の魔力で加護をし、念の為結界術も施しておいたシャボン玉が開放される。そしてそのシャボン玉にマールシアが施しておいた術式は――。

「派手に爆発漁法といくよ! 一斉起爆!!」

 多重詠唱によってばらまいた、爆発属性のシャボン玉。それが一斉に起爆し、機雷のように水面に飛沫をあげ次々と爆発していく。

「グギャアアアアアア!!!」

 爆発をもろに受けて、ある者は吹き飛ばされ、ある者はそれで月の石を破壊され崩壊汚染水で苦しむ。一方、ジークとマルーシアは結界術や鎧で爆発やまき上がった崩壊汚染水を防いでいく。結界術の使い道も、実は半分はこれを見越してのものだったのだ。

「相棒! いい位置に来たの、頂いていいよ!!」

 爆発で吹き飛ばされ空中に舞い上がった水棲馬に向けて、ホホジロザメが勢いよく飛びあがると共に喰らいつき、その身体に喰らいついた。憐れ、水棲馬は身体の境目を噛み砕かれ、馬の上半身と魚の下半身がそれぞれ水へと没した。

【許さん許さん許さん、もう喰われてなる物か!】
【逆に喰らう、喰い尽す!!】
【滅べ滅べ滅べ滅べ!!】

 怨嗟に満ちたまま、無事だったもの、なんとか動けるものが一斉に2人向けて歯をむき出しにして空中あるいは水中から襲い掛かる。防がれようと、月の石さえ奪い取れば崩壊汚染水で勝てると踏んでもいるらしい。術直後で固まっているマールシアだが、余裕そうにジークに。

「あ、さっきの続き。キミは1人じゃない。僕ら「皆」で、最高の明日を掴もう」
「!!」

 マールシアが術式を張り、ジークがそれを結界術で保護したように。数は多くても、怨嗟の感情と共にほぼ同一の存在となってしまったオブリビオンとはそれは違う在り方だった。そしてマールシアは改めて言ったのだ。キミは1人じゃない。キミの守りたい明日は、僕や猟兵皆で護る物だ、と。

「……ああ! 俺は、どこかの誰かの『明日』を護る為に、皆と一緒に戦う! だからお前らの怨嗟は全部俺がここで受け止めてやる!! 【竜盾の軍勢(ドラゴニック・レギオン)】!!」

 周囲を複製された盾が一気に展開する。そしてそれが水棲馬たちの噛み付きを受け止め、更に別の複数の盾がその身体を挟み込み空中や水中で固定する。

「ガギィ!?」
「マールシア、今だ!!」
「オッケー。そうなったらもう逃げられないね! 巻き起これ、炎の波!!」

 敵が盾で捕まった隙に炎属性攻撃魔法の多重詠唱を高速で展開。波の上に炎が一気に舞い上がり、空中も水中も水など関係なしに発生し、水棲馬を焼き尽くしていった。

「「「ギャアアアアアアア!!!」」」

 そして消し炭になった水棲馬たちの残骸が、波へと消え、そして崩壊汚染水で完全に消滅していった。
 それを眺めながら、ジークは静かに呟いた。

「……なあ。これが終わったら、コイツらを狩り尽した冒険者や依頼者達、調べられないかな……何百年も前かもしれないし、もう誰も生きてないかもしれないけどさ」
「……ううん、もしかしたら少し前かもわからないし、やるだけやってみようよ。僕だって、水で生きていた仲間を絶滅させた奴らなんて、許せないし」
「ありがと、な」

 それがせめてもの供養になれば、と思った。蹂躙され滅ぼされる気持ち。それだけはきっと同じだったと分かるからだ。

「……待ってろよ、崩竜。お前に、誰の未来も『俺達』が奪わせはしない」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

神代・凶津
おいおい、どいつもこいつも怨み辛みが溜まってんな、こりゃ。
「・・・彼等を怨嗟から解き放ちます。」
あいよ、相棒。

【鬼乗せ船】に乗って戦闘開始だ。
船は他の猟兵の足場に使ってもらって構わねえぜ。
船を常に移動させながら鬼霊達に大砲の一斉放射を指示する。
なぎ払いな、野郎共ッ!

こっちの攻撃で敵の動きが鈍ってきたら、敵の月の石がある場所を見切って狙いを定めた破魔弓の一撃を叩き込んでやる。
「・・・この一撃で怨嗟に縛られた魂が解放される事を祈って。」
相棒の霊力を込めた浄化の一射をくらいなッ!


【技能・式神使い、集団戦術、なぎ払い、見切り、スナイパー、祈り、浄化】
【アドリブ歓迎】


ラモート・アンゲルス
「なるほど。私に石は必要ありません」
UCを発動して対の所持するUC【三相一体】を発動、ローマ神話よりフェブルウスに変身します。
フェブルウスは贖罪と月の神。彼らが取り込んだのが月の石である以上この神の権能の支配下におけるはずです。
彼らが取り込んだ石と権能を使って彼らの怒りを鎮めてみましょう。
フェブルウスの祭は慰霊祭。とある戦争の戦死者を慰霊するためにあるのですから。



●亡霊よ、神の名の元に眠れ

「おいおい、どいつもこいつも怨み辛みが溜まってんな、こりゃ」

 鬼達がひしめく【鬼乗せ船】。その上で鬼面の巫女、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)は崩壊の力に満ちた水の中を恨みの視線をこちらに向けながら泳ぐ水棲馬たちを見やった。恨み、憎しみ。それは凶津、そして相棒の巫女である桜にとっても馴染みがある物だ。それらはいつしか呪いとなり、新たな魔となる。巫女にとってはまさしくそれは祓わねばならぬものだった。

(……彼等を怨嗟から解き放ちます。猟兵として、そして何より巫女として。崩竜打倒の前に、決して見過ごしてはおけない)
「あいよ、相棒。そう言うと思ってたぜ。それじゃあまずは――」
「そういった目的ならば、私も助力しましょう」
「うおぉ!?」

 突然かけられた声に凶津が驚いて振り向くと、そこには1人の少女がいた。ここまで一緒に乗せてきた覚えはない少女。むしろさっきの一時合流やそこでの追加参加要員の中にも見覚えがない人物だった。

「な、何者だアンタ。いつの間に乗ってたんだ?」
「お気になさらず。私たちはどこにでもいますし、どこにでもいないようなものですから」
「はぁ? 私たちって、1人だろ?」
(他人の事は言えないと思うけど……でもこの人……何か妙な気配を感じる。でも、敵じゃあないと思う)

 その人物――猟兵としての登録名はラモート・アンゲルス(生きた概念・f18548)——に対し、巫女である桜はなにか上手く表せない気配を感じた。だが、少なくとも今ここで敵ではない、そう思った。

「彼らを倒すよりは呪を祓い鎮めたい、という事ならご協力しますよ。私も大体は同じ目的でしたから」
「あ、まあそうだけどよ……え? いや待て、アンタ、相棒を認識して……」
「ともあれ、まずは露払いをしないといけないようですね」
「何? ……うおっ!?」

 ラモートの言葉に凶津が周りを見渡せば、ラモートに反応している間に周りを呪いの波が取り巻き、更に水棲馬たちが呪いを自分の身に充填し、今まさにそれを攻撃として放たんとしていた。

「確かに、まずはこれを凌いで動きを鈍らせねえとしようがねえか! よし、総員配置付け!! なぎ払いな、野郎共ッ!」

 凶津が船長のように指示を出すと鬼乗組員たちが大砲の設置個所に回り、準備と照準を開始する。

「少々時間がかかるようですね」
「そのくらいなら、コイツで時間稼ぐさ!」

 大砲の準備の間に凶津は懐から神楽鈴と薙刀、更に結界霊符を取り出す。

「来たなぁ!! こちとらこういった負の感情やら、不浄は専門家の巫女な相棒がいるんでな! 捌き方は心得てるんだよ!」

 水棲馬が呪いを周囲に無差別に発射、それが船にも襲い掛かるのを見て凶津は結界霊符を空へと投げ、結界を張りそれで呪いをいくらか反射した。それを潜り抜けた呪いもあるが、神楽鈴を鳴らしつつ薙刀を構え思いきり薙いだ。
 一見無駄に見えるそれ。だが、襲い掛かった呪はその一薙ぎによって霧散してしまった。

「言ったろ、専門家だってよ! 不浄を祓う神楽鈴の音、そして穢れを祓う霊鋼の薙刀! 2種合わせりゃ呪なんざ屁でも」
(! だめ、凶津! あっち!)
「何!?」

 見れば大砲準備の鬼の方へ、水面から呪の大波が押し寄せてきていた。結界の範囲外からも逃れており、しかも凶津からも遠く、薙刀の振りも間に合わない場所だった。

「くそ、陽動かよ! 間に」
「言った筈ですよ? 助力しますと」

 凶津が追加の結界を張ろうとする前に、大砲の前にラモートが翼で移動すると、盾を構えた。盾により呪いの波が跳ね返され、大砲は無事防衛された。

「ふぅ……悪いな、助かった……って、おい!? アンタ、盾が!!」
「?」

 首を傾げるラモートの持つ盾は、波の飛沫を浴びてぐずぐずと崩壊を始めていた。

「まさか、アンタ、月の石貰ってねえのか!?」
「ええ、必要ないですから。そんな事より、今が機会ですよ」
「いや必要ないって……ああくそ、野郎共! 反撃だ!!」

 平然と答えるラモートに突っ込みたかったが、攻撃が途切れた今がチャンスなのは間違いない、と凶津は鬼達に砲撃を指示した。次々に霊的な砲弾が発射され、それが包囲していた水棲馬たちを次々と吹き飛ばしていく。とはいえ、相手は自分のフィールドにいる。クリーンヒットしたわけではなく、攻撃の手を止めさせたに過ぎない。

「これで邪魔はされなさそうですね。では、まずは私から失礼します。『善なる者も人によりては疑われる』、【堕天】……グッ」

 さらに高く飛び、船の上に移動したラモートの翼、それがどんどんと黒く染まっていき、ラモート自身も苦悶の表情を浮かべた。

「お、おい!まさかさっきの崩壊汚染水がかかってたのか!? だから言ったこっちゃ」
「いえ……これは関係、ありません。対のわたしの力を使うには、これが必要なの、で」
「つ、対のわたし……?(俺にとっての相棒みたいなもんか?)」

 ラモートは黒い翼を広げる。その時、一瞬凶津と桜にはその姿が別の、角が生えた少女のように見えた。


「「『人より『 』に与えられた権能を行使する』。【三相一体(トリプルフェイス)】」」

 2人分のように聞こえる声と共に、天のラモートの背から光のようなものが放射される。それは月光のように思え、そしてその光は周囲を照らす。

「ガ……グオ……」

 すると、光に照らされた船の周りの水棲馬たちの身体の一部分が光り出し、今まで歯をむき出し憎悪に満ちていた水棲馬たちの表情が信じられないほどに和らぎ、動きをすっかり止めてしまったのだ。

「ど、どうなってんだこりゃ!?」
(これは、神の権能……? まさか、ツクヨミ?)
「いえ、日本ではありません。ローマ神話における、贖罪と月の神フェブルウス。その権能を、私に降ろしました。月を司る権能を用いれば、月の石を通して相手に干渉できます。そして月の魔力で中和できるのならば、この通り」

 ラモートが使用した【三相一体(トリプルフェイス)】。とある条件に合う神の権能を用いる事が出来るユーベルコードである。本来は彼女自身のユーベルコードではないが、【堕天】の効果により使用可能となっている。
 見れば崩壊し始めていた筈のラモートの盾の崩壊もまた止まっていた。月の石ではなく、月の魔力自体を自身に齎す事で崩壊の中和に成功したらしい。

「神の権能を降ろすったぁ……巫女だって中々できねえぞ」
「私たちはそういったものなので。そしてフェブルウスが由来となり古代ローマで行われた慰霊祭フェブルアーリア。戦死者の慰霊が行われたこの祭りの権能を持って、今彼らを鎮めています。とはいえ、あくまで慰めですし、私も今これで大分苦痛が来ていますから……禊ぎはお任せしますよ」
「……ああ! よく分からなかったが、後は任せとけ!」

 凶津が船首に立ち、そして弓を構えた。それはただの弓ではなく、霊木で作られた破魔弓。それを天に向けて構え、ラモートの権能により光り輝く水棲馬の月の石を見定める。

「相棒!」
(ええ。……怨嗟の感情のまま、変わる事が出来ないでいる魂達。骸の海に還るとしても、今ここにある魂だけでも、救われる事を願います。この一撃で怨嗟に縛られた魂が解放される事を祈って)

 巫女である桜の祈り、そして破魔の力が込められ、番えた矢が光り輝いていく。どうか怨嗟に満ちる魂に、安らぎを。

「よぉし、ありがとよ相棒! さぁ、水棲馬共! 相棒の霊力を込めた浄化の一射をくらいなッ!」

 凶津が弓を放つ。空へと昇った矢は、途中で光のまま複数に分かれ、そして全てが1本1本、水棲馬にそれぞれ空から降り注いだ。全てが過たず水棲馬の月の石を射抜き、そしてその身の呪いをも全て消し去る。

「「「アァ……ア、ア、ア……」」」

 血に染まった魔角が白く本来の色を取り戻し、その身もまた綺麗な色に染まる、いや、戻っていく。そして崩壊汚染水の影響を受ける前に、その身はゆっくりと消えて、その消えていく欠片が空へと昇っていった。もしかしたらこれらの魂だけは、骸の海へ還ることなく、怨嗟の過去から解放されどこかへ消えた、かもしれない。尤もそれは凶津にも桜にも断言できはしない。そう祈ることだけしか。



「今度こそ、貴方達に怨嗟無き安らぎを」

 もしかしたら、天へと昇っていく欠片を見守っていた、黒翼の少女だけは断言できたかもしれないが。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エルザ・メレディウス
★、絡み◎
メレディノポリスで参加致します

■WIZのミストラルをそのまま使用して、水棲馬に対して、船での海戦を仕掛けます
漕ぎ手以外の船乗りの皆様は、甲板へと。欲深き者共へ備えて盾で防御する舞台と槍投げたいに分けて、船が水棲馬に近づいたら、いざ、【槍投げ】を!
【集団戦術】を心がけて、私の指示のもと、水棲馬に一斉に槍投げします。質より量で、月の石への命中率が上がるように!

...これで相手を仕留められるとは思っていません。
私の役目は敵の目を私の船に釘付けにするための囮。。。
本命は、空です! 【だまし討ち】の準備は整いました
久遠寺君、止めを!

*他の船が同じ戦場にいる場合は衝突しないように、注意いたします


久遠寺・遥翔
アドリブ歓迎
メレディノポリスから参加
POWで判定

引き続きUCの変身状態を持続
エルザさんの船から出撃、連携して水棲馬を相手取る
敵の属性攻撃は【~耐性】各種と【オーラ防御】【拠点防御】で焔の結界を展開しを船ごと守り切る

エルザさんの攻撃に気をとられている隙をついて
敵の周囲の水を【焼却】蒸発させ【空中戦】に持ち込み
記憶済みの波長データと【第六感】【視力】による霊視から敵の月の石の位置を【見切り】
【鎧無視攻撃】【鎧砕き】で敵の肉を削ぎ【2回攻撃】できっちり石を抜き取りつつ水の中へ落とす
抜き取れずとも攻撃で的を焼き付けてエルザさん達の槍の目印にするぜ
あとは敵が尽きるまで同じことの繰り返しだ


トレーズ・ヘマタイト

【ダッチマン】で参加

数はある、上手く使っていくか

事前に集めた月の石と●武器・防具改造で味方の船や装備を補強する

前回水中組で召喚した水の魔剣士の幻影と月の石数個にドゥーズの水中用装備一式で降魔錬成
石の共鳴魔力で攻防共に強化した降魔に前線を任せる

自身は敵の石の魔力を認識次第●呪詛で手持ちの月の石と紐付けしていき、敵のUC発動に●カウンターで封印●属性攻撃で手持ちの石を封印し、呪詛経由で敵の石にも封印効果を与える
敵の体内にある分完全な封印は難しいが不安定にはなる
体内にあの魔力があれば無意識に使う、それを乱せばよくて不発、悪ければ自滅するだろう
暴走や攻撃は月の石で強化した●オーラ防御で防ぐとする

以上


マリア・フォルトゥナーテ
【ダッチマン】

アドリブ、連携、歓迎

トレーズさんの月の石で強化されたフライングダッチマン号を、再び潜航させ水中の水棲馬達の元へ向かいます。

「あなた達の境遇には同情を禁じ得ません。が…!」

手をかざして、深海の怪物クラーケンを水底から召喚し、クラーケンに月の石を渡すと同時に、両舷の砲門を開くと船首から二門の三転式カノン砲を展開します。

「その怨嗟をこちらに向けるのは過ちです!はっきりと言ってしまうと、私達を復讐に巻き込まないで欲しいってこと!せめて、海の支配者が退治してあげます!」

水棲馬の群れに突っ込んだ瞬間、腕を振り下ろし、攻撃の合図とする。クラーケンは馬を捕食し、範囲砲撃で敵を打ち砕きます!


アンノウン・シー
【ダッチマン】
 一人称は当艦、三人称にはミスターorミス+苗字、愛称はウノ
「了解」
ミスタートレーズの強化でボディ及び装備を強化して挑みます。
UCを発動。攻撃の回避もありますが、目的は月の石の場所の特定です。力の流れを把握するUCですから、敵が月の石の魔力を使用しているのなら力が流れが発生しているため場所の特定は可能であるはずです。【アンカー】で月の石を狙撃し破壊を試みます。
それで倒せないのであれば、【帆柱】に持ち替え倒します
【船闘一船流】
小帆 敵の攻撃をいなして斬る
双胴 素早く敵を二回斬る
砕氷 上から全体重乗せて斬る
胸当 間合いに入った攻撃に対し反撃する
掘削 装甲の弱いところに放つ突き技



●猟兵大海戦

「ふむ。こんな所でどうだろうか? 動きにくさや操舵のしにくさ等あれば遠慮なく言って貰いたい。時間の許す限り改良しよう」
「いえ、軽く動作試験をしましたが問題はありません。月の魔力による加護も問題無く働いています」
「ええ、こちらも問題無しです! なにせ私とフライングダッチマン号は一心同体のようなもの! どんな状態かは手に取るように分かりますとも!!」

 先の探索で行動を共にした、トレーズ・ヘマタイト(骸喰らい・f05071)、マリア・フォルトゥナーテ(何かを包んだ聖躯・f18077)、アンノウン・シー(所属不明の船・f26269)はフライングダッチマン号の上で今回も共にいた。
 トレーズは武器や防具の改造を得意としており、本来は持つだけでもいい月の石だが、それをそれぞれに装備しやすいよう、又は攻撃にそのまま力を使えるように加工していたのだ。マリアの場合はフライングダッチマン号の各所装飾に、アンノウンの場合は自身の装甲の一部に外付けパーツとして。
 そして先の探索の時に加え、更に2名。

「そちらのお2人はどうかな」
「ええ、こちらも問題は無いと思います。あの短時間でこんな精密な加工ができるなんて」
「ああ、こっちも大丈夫だ。助かったぜ、俺もどっかに握るなり適当にくっつけようと思ってたからな。これなら安心して遠慮なく動ける」

 それはダッチマン号の隣に随行しているガレー船、その甲板に立つエルザ・メレディウス(太陽を目指して・f19492)と黒鎧を纏ったままの久遠寺・遥翔(焔黒転身フレアライザー/『黒鋼』の騎士・f01190)だった。彼らは一時合流後、型は違えど大船持ち同志として共にここまで航行してきており、その際トレーズが彼女らにも月の石の加工処理や補強を持ちかけ実際にここまでの時間で間に合わせていたのだ。エルザはガレー船の装飾の一部、遥翔はアーマーの外付け部分、とそれぞれが似通っていたのも加工スピードの向上として幸いしていた。
 ちなみに月の石単体でもUDCアース換算で小石程の大きさ一個でも1150万の価値があるが、誰もが売買による利益よりも今回確実に崩竜らの企みを阻止する事を優先し躊躇いなく加工補強処理を選んだ。……もしかしたら、マリアだけはすっかり忘れていて後で気が付いて涙目になるかもしれないが、多分気のせいだろう。

「アイセンサーによる目視感知。大量発生地帯、到着しました」

 彼方を見詰めていたアンノウンが全員にそう報告した。水棲馬の布陣を事前に調べた際、1番数が多いとされたのがこのエリアであり、そこにこの2隻は向かってきたのだった。

「いよいよ開戦です!海賊としては領主の方との共闘というのは、正直肩身が狭かったりするのですが!!」
「お気になさらず。戦場では私も一猟兵に過ぎませんから」

 そして2人の船の主が甲板にて立ち、見えてきた水棲馬を見据えた。水棲馬たちも気づいたようで、浅瀬を接近する者、そして深く潜っていく者と別れていく。

「予測計算通り、浅瀬から船上を直接狙う組と深い所から船底を狙う組に別れたようですね」
「凄いな。エルザさんは戦略書も齧ってる人だから分かるが、そっちもいい戦略眼してるぜ」
「彼女は元は船の中枢コンピュータらしいからな。こういった海戦での知識もあるのだろう」

 アンノウンに感心する遥翔にトレーズが捕捉する。この流れは既に2人によって予測がされていた内の1つだった。故に、次の行動も手筈は決まっている。

「では、水中深部の方はよろしくお願いします」
「了解しました! そちらも御武運をお祈りします!」
「ふふ、シスターの方に祈られたならばそれは百人力ですね」
「そ、そそそ、そうでしょうとも!!」

 エルザに素直に感謝されるとなぜかどもったマリアだったが、気を取り直して号令をかける。

「それでは、フライングダッチマン号、潜航開始!!」

 その刹那、ダッチマン号が段々と進みながら沈んでいき、やがてマストまで全てが海中へと消える。普通なら沈没したようにしか、だがそれにしては挙動がおかしいその様子に、事前に聞いていたとはいえ残された2人も流石に目を瞬くのを止める事はできなかった。

「いや、猟兵になってからもう非常識に驚く事はないと思ったけど……流石に、どう見ても木製船が潜水艦みたいに潜航してくってのは目を疑うな……」
「世界はまだまだ広い、という事でしょうね。では、こっちも始めましょうか」
「ああ。……正直、俺としては逆の立ち位置を今もさせて欲しいんだけどな」
「あら、戦略眼をさっき保証してくれたのは嘘だったのかしら?」
「そ、それは……ああ、わかった。だが、無茶はしないでくれよ?」
「ええ、そちらこそ」

 頭を軽く抑えたポーズをした遥翔を余所に、エルザもまた手を振り、船員たちに号令をかけた。

「総員、戦闘準備!!」




「ふふふふ! 案の定、狙おうとした船底の1つが潜ってきて面を喰らっていますね!」
「むしろ面を喰らわない方が当艦は驚愕です」
「何にせよ、布陣を整えるチャンスだな」

 一方、潜航したダッチマン号。水中の水棲馬たちが潜って来た船に驚いた隙に、トレーズが先手を取る事にしたようだ。ダッチマン号の傍に探索に使用した水の魔剣士の幻影を呼び寄せ、余剰分の月の石を取り出し、更に自身が持つ機体ドゥーズの換装の1つ、水中用装備も甲板に出した。

「積み上げし物を糧として、偽りの器を生み出し、我等が道を阻む災いを、己が力を以て討ち滅ぼせ。【降魔錬成】」

 トレーズがユーベルコードを発動すると、甲板に出していた物が浮かび上がり、外の幻影の所へ移動、全てが渦を巻くように動いてやがて1つの塊となり、その姿を現す。それは月のようなごつごつとした岩を持つ人魚のような姿、それでいて装備は機械的なキメラテックな存在、トレーズ曰く物品などを合わせて造り出した降魔という存在であった。

「行け降魔。月の石による魔力共鳴で、敵を圧倒せよ」

 月のような肌を輝かせた降魔が猛スピードで敵向けて突っ込んでいき、水棲馬たちが発射した呪いをその光で跳ね除け、手にした剣で水棲馬たちを一気に薙ぎ払った。

「す、凄い力ですね!?」
「複数の月の石を入れ、更に錬成の際に調査の時に得た波長情報を仕込んで共鳴魔力を常時発生させるようにしておいたからな。かなり上質な降魔になったと自負している」
「ミスターヘマタイト。もしや、胸を張られていますか?」
「これでもな」

 スライムのようなタール体だけにわかりにくいトレーズの動作に。マリアも負けじとやおら船首の方に立つと、水棲馬たちに向き直った。

「海の支配者として、わ」
【海を支配だと傲慢な!】【許すまじ人間!】【恥を知れ人間!】【滅べ人間!】
「マジレスで話の腰折るのやめてくださいますううううう!?」
「ピンポイントに煽る発言から始めたミスフォルトゥナーテにも責任はあるかと思われます」

 涙目のマリアを見かねたのか優しい降魔が攻撃する事で水棲馬の野次を遮り、マリアはこほんと仕切り直した。

「海の支配者として、私も滅ぼされた水棲生物である貴方方に同情は禁じ得ません……が!! その怨嗟をこちらに向けるのは過ちです!はっきりと言ってしまうと、私達を復讐に巻き込まないで欲しいってこと! 更に言えばこの世界の人々全員を巻き込むんじゃありませんよ!」

 『結局海の支配者は直さないのですね』とアンノウンが心の中で突っ込んだのと同時に、マリアが頭上に手を掲げる。すると、それを合図に、水底から巨大なイカ、マリアの手なづけているクラーケンが召喚された。クラーケンはマリアが投げた、トレーズ手製月の石バンドをキャッチするとそれを頭部に器用に巻きつけた。これによりクラーケンも崩壊汚染水から身を護る事ができるようになった。
 更に、ダッチマン号の両舷の砲門を開くと船首から二門の三転式カノン砲が展開される。攻撃態勢が整ったのを見て、マリアが宣戦布告を宣言する。

「貴方達もまた海に棲む者達。ならばせめて、海の支配者が退治してあげます! 誉と受け取りなさい!!」

 結局最後まで海の支配者は直さずに、マリアがその手を降ろし、攻撃合図を出した。ダッチマン号の砲撃が次々に発射され、水棲馬を的確に狙い撃ちし、クラーケンもその巨体に似合わぬスピードで一気に水棲馬に近寄ると、攻撃の隙も与えずにその身体を触手で絡みとり、あっという間に自らの口にその身体を突っ込み、周りに血を漂わせながら捕食してしまった。
 水棲馬たちも呪いで無差別攻撃するが、クラーケンもダッチマン号も素早くまともに当てる事が出来ず、掠ってもまるでダメージが無いように見える。それもその筈。

「ダッチマン号は幽霊船。そしてクラーケンもまた闇に住まう怪物ですよ。呪いだなんて、ちょっとやそっとでは効きなどする訳ないでしょう!!」

 ふふんと勝ち誇るマリアに対し、呪いがダメならばと水棲馬の一部がその血染めの魔角を掲げ、そしてその角に魔力を充填していく。属性と自然現象を織り交ぜた現象を起こす攻撃の予兆だ。呪いは効かずとも、雷、氷、毒、属性などいくらでもある。それを渦巻きや海流に混ぜてダッチマン号に襲い掛からせようとしていた。

 が、その動きが突然びくっ、と複数同時に静止した。

「すまないな。その攻撃は既に対策済みだ」

 そう語ったのは先程から黙していたトレーズだった。彼は降魔を出した後、次の策を始めていたのだ。敵が制御の難しい属性現象を取ると読み、敵の月の石の魔力を探索時の波長情報から探知。位置はわからずとも波長さえ読めれば問題は無く、次に彼はその敵の石と自分がまだ持っていた余剰分の月の石とを、呪詛で紐づけ、要は状態をリンクするようにしておいたのだ。そして、敵が角に魔力を集中したのを確認した後、自分の傍の月の石に封印処理を発動。これにより呪いで繋がっていた敵の月の石もまた封印処理、つまり魔力が発動しない状態になったのだ。とはいえ敵体内にあるのでこれは一時的なものでしかない。だが、もしこの場で、月の石の魔力が封じられたならどうなるか。

「ガ……!!」

 答えは明らか。魔力を中和できなくなり、崩壊汚染水によりその身体が徐々に形を失っていく。そしてそれは今まさに属性現象を引き起こそうとしていた個体を狙って発動された。

「そんな状態では、とても制御など不可能だろうな」

 トレーズの言う通り、ただでさえ制御が困難な属性現象は制御できず、結果、水棲馬自身やその周りを巻き込んで雷や氷の渦や大流が発生。崩壊仕掛けていた個体はボロボロにトドメをさされ崩れ去り、無事だったものもまた属性現象により被害を受けていく。

「ってトレーズさぁん!? これ、私達も十分危ないですよね!!」
「大丈夫だ。そちらも対策してある」

 荒れ狂う属性現象がダッチマンに襲い掛かるも、降魔による魔力防御、更にトレーズ自身の月の魔力で増幅したオーラバリアがダッチマン号を覆い、属性現象を防いだ。

「よ、よかったぁ。しかもバリアができたならこれで安心……」
「いや。流石に無理矢理のブーストだからな。長くはもたないぞ」
「え」

 すう、とトレーズのバリアが消え、降魔の動きも鈍る。暴走現象の余波で動きを止めたクラーケンの脇を素早く抜け、生き残った水棲馬が歯をむき出しにマリアたちに襲い掛かってきた。

「ぎゃひいいい!?」

 マリアが素っ頓狂な声をあげた、その瞬間、喰らいつかんとした水棲馬が銃声と共に大きく吹き飛ばされた。

「ミスフォルトゥナーテ。接敵された時の為に、当艦が控えていたはずですが?」
「つ、ついうっかり……」

 その音の主は大型二丁自動拳銃【アンカー】を構えたアンノウンだった。彼女は冷静に甲板で構えていて、近づいてきた敵を狙い撃ったのだ。しかも――。

「ギャ、ギャ、ギャヒイイイイ!!」

 撃たれた水棲馬は全て、もがき苦しむと体を崩壊させながら水の中を浮かんでいった。見れば、その身体の撃たれた箇所からは細かい石の欠片がぽろぽろと落ちており、月の石の箇所を明確に撃ち抜かれたのは明白だった。

「グ、グルゥ!?」
「なぜ月の石の位置がわかったのか、と言う表情パターンですね。お答えしましょう。当艦は大群確認時に【敗北理論「ラプラスの悪魔」(ラープラーシジズ・ディーモン)】を発動し、戦場全体の力の流れの把握を進めていました。そして、貴方方の体から出て周りを包む力を探知しました。当然、これは崩壊汚染水から身を護る為の月の魔力の流れです。あとは発生源の位置を力の流れから逆算するだけ。そこを狙い撃てば後は自滅。以上、Q.E.D(証明終了)。」
「ギ、ギシャアアアアアアア!!!」

 冷静に全てを語ったアンノウンに水棲馬が殺到。撃たれる前にコイツさえ倒してしまえば、という賭けによる無謀な攻撃。当然、それが通じる訳もない。

「力の流れを把握する、と説明した筈。それは魔力のみならず、貴方方の力全ても含みます。即ち、尾による推進ならその力さえ把握してしまえば、その進路は容易に計算できます」

 水棲馬が気付いた時には、アンノウンは彼らの横をあっという間にすり抜けていて。そのアンノウンの手には、いつの間にか大太刀【帆柱】が『抜き身で』握られていた。

「船闘一船流、『小帆』」

 そして水棲馬が振り向く前に、全ての馬の身体が真っ二つに分かれていた。ちなみに、全ての太刀筋は月の石も過たず真っ二つにしていた。




 一方、水上のエルザのガレー船。こちらの戦況は芳しくなかった。

「来ます! 盾隊、防衛準備!!」

 水上の水棲馬から放たれた呪いの連続放射。それをガレー船の漕ぎ手を護るように防衛盾隊が庇うように出て、呪いを盾で防いだ。だが、一部は防ぎ切れず、呪いを受けその身を消滅させる。元々幽霊の存在とはいえ、船員がやられる様にエルザは顔を曇らせた。これが先程から何回も繰り返され、その度に水棲馬たちは満足そうな顔をし、再び発射態勢に入った。

(私をじわじわと甚振る……復讐に走った者の中でも陥る1番のパターン、ですね)

 一気に殺さず、徐々に苦しめて自らの恨みを晴らす。エルザはそんな心理を読み取っていた。それに答えるように

【ただでは殺さん。我らの絶望、少しずつ味わえ】
【下が手こずっているが、その内上がってくるだろう】
【そうなった時が貴様の最後だ。あの男の後を追わせてやろう】

 嘲りと余裕、そして恨みの籠った思念がエルザに届いた。その最後の思念に、エルザの顔が更に歪む。

「久遠寺くん……!」


 それは数分前の事。水棲馬たちはその時は呪いではなく、属性現象攻撃を発動させていた。雷の大竜巻。それでガレー船を吹き飛ばそうとしたのだ。だが、その前に黒鎧の男、遥翔が飛び出してその竜巻に突っ込んだ。エルザが止めるように手を伸ばすも間に合わず、やがて。

『ぐあああああああああ!!!』

 叫び声と共に、大爆発が起きた。炎が撒き散らされ、水棲馬の視界を一瞬封じた。だが、目を戻せばそこには竜巻は消え去ったが、男の姿も全くなく、海に落ちた様子もない。そして何より、エルザの絶望した顔が全てを物語っていた。『バカな男は雷の竜巻に突っ込み、無様に木っ端微塵になった』と。


 気をよくした水棲馬たちはエルザに決定的火力が無いと見るや否や、呪による波状攻撃に切り替え、徐々に防御船員を減らしていった。どんどんエルザを追い詰めて絶望しきらせてやろうという、まさしく復讐心に満ちているからこその悪辣なやり口だった。故に水棲馬たちはその恨みのはけ口であるエルザらから目を離すことは無かった。少しの反撃も容赦なく潰してやろう、と。

「ええ、そうでしょうね……だからこそ」






「だからこそ、決して他には目なんて行きやしない。本当、見立て通りだよ!」




 ずっとエルザに注目していた水棲馬たちに、突然空から大量の炎が吹き付けられた。水棲馬は炎上し、その圧倒的熱量に瀑布もまた一気に蒸発、更に温度が上がっていく。

「ギ、ギヒイイイイイイイ!?」

 訳のわからない惨事に水棲馬たちは混乱する。バカな、あの女からは目を離していなかった。何も妙な事をする素振りはなかったのに、と。

「当然。だって、こうして何もできずに嬲り殺しにされそうな事が私たちの役目。そうして、囮になり、水上だけに視線を集中させる事が目的だったのですから」

 さっきまで絶望した顔をしていた領主エルザがここまで仕組んだ事の結果を見て、ほくそ笑んでいた。


「全く……こういう囮とかは騎士の俺の役目だろう、っと!!」

 空を飛び、水棲馬たちに次々と黄金と黒の炎を放射していく黒鎧の姿。言うまでもなく、遥翔の姿がそこにあった。


 彼が事前に逆の方が良い、と渋っていた事。それはこの陽動作戦の事だった。水上でエルザの乗る船が注意を引き寄せ、そこを空から遥翔が奇襲しだまし討ちにする。メレディウスの騎士である遥翔としては逆の立ち位置が望ましかった。だが、戦略上、水上と飛行、どちらが目を引きやすく奇襲に向くか。それは流石に遥翔も言い返す事が出来なかった。ならばせめて、と自分が注意から外れる方法に体を張った方法を進言したのだ。

 敵が何らかの攻撃をしてきたならば、遥翔がそれを無謀に庇うように飛び出す。遥翔はその衝撃に紛れて【天焔解放(オーバーフロウ)】を発動。炎を纏い、それで身を守りつつ、それを爆発のように見せて水棲馬の目を晦ませ、その一瞬で一気に上空へ飛翔。水棲馬の視界から外れ、木端微塵になったかのように見せかけて意識から外させたのだ。後はエルザが嬲られるのを我慢して俯瞰し、水棲馬の意識が完全に船に向き切ったのを見計らい、奇襲を仕掛けたのだ。

「イグニスを一度倒したくらいで安心するんじゃねえ……なんてな」

 自嘲するように呟いた彼に向けて、熱さに耐えかねて水棲馬が水面からジャンプして飛びかかってきた。その魔角を向け、それで突き刺してやらんと。

「まんまと釣りだされてくれたな!!」

 だがそれは遥翔の想定内だった。彼は探索時に登録しておいた月の石の魔力データから、再び霊視を開始。空中機動であっさりと角をかわすと、フェンリルからプロミネンスチェインを発射。月の石付近に突き刺し、同時に月の石をからめとった。

「グギィ!?」
「この後大物が控えてるんだ。追加で月の石、頂くぜ!!」

 同時に蹴りで水棲馬を蹴り落とす。そしてプロミネンスチェインを思いきり引き、水棲馬から月の石だけを抜き取り、血塗れのそれをフェンリルに回収した。水棲馬はそのまま崩壊汚染水へと叩き落とされた。その後の末路は、言うまでもないだろう。

「「「ギシイイイイイイ!!!」」」

 次々と水棲馬が飛びかかり、遥翔へと襲い掛かる。流石にこの数は、遥翔もそう簡単には迎撃はできない。だが……水棲馬は、またもこの時点で視野が狭くなっていた。

「今です、槍投げ隊、投擲!!」

 エルザの号令と共に、ここまで誘う為に迎撃を控えめにしていた槍投げ隊が本気になり、その姿を現した。一斉に槍が放たれ、遥翔目がけて逃げ場のない空中に殺到していた水棲馬たちを次々と貫いていった。

「ギ、アグゥアアア!!」

 そして落ちていく水棲馬を、容赦なく遥翔が焔黒剣で貫いていた。

「逃がさねえよ。エルザさんを、幽霊とはいえ乗組員たちを、甚振ってくれた礼もする……だが、何よりお前らは、さっき言ったな」

 この時、水棲馬は愚かにも今やっと理解した。目の前の男は、その鎧と仮面の下に、怒りを滾らせていた事を。

「地上の人々、そして大陸の人々を、滅ぼすって……俺達の作った村の人々も滅ぼす、ってぬかしやがったよなあ!!」

 力のまま、剣を振り抜けば、水棲馬は一刀両断にされた。器用にそのままになった月の石を回収し、フェンリルに収納する。

 そう、水棲馬は既にあの時、メレディノポリスに住む2人に対しての最悪の宣戦布告をしてしまっていたのだ。

「覚悟しろよ。お前らの復讐なんて、知らない人々なんだ。だから……メレディウスの騎士として、俺は……お前達を、焼き尽くす」

 そして再び、水上の水棲馬を黄金と黒の炎が包み込んだ。





 やがて水上と水中、双方の水棲馬は全滅。程なくフライングダッチマン号が浮上してきて、メレディノポリス組と合流を果たした。お互いの無事を喜び合い、やがて集まって来た他猟兵たちと再び一時的合流。浄化や抜き取りで新たに得た月の石を共有し、希望者への分配、そして準備を終えると全員が1方向を目指し始めた。

 水棲馬の配置から予想される場所、全ての元凶『ヴァッフェントレーガー』がいるであろう地点に向けて。崩壊汚染水が大陸の端に辿りつくまで、残り時間はあまり残されてはいない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『崩竜・ヴァッフェントレーガー』

POW   :    ネーベルヴェルファー
【自身の周囲に生じた魔法陣】から【何もかもを“崩壊させる”火球】を放ち、【超遠距離からの面制圧爆撃】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    ヴィルベルヴィント
【顎】を向けた対象に、【消失や崩壊を与える速射のブレス】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    ホルニッセ
【自身の“崩壊”すらも省みない状態】に変形し、自身の【射程距離】を代償に、自身の【巨体による攻撃力や機動力】を強化する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠フォルティナ・シエロです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●『未来』を崩壊させる者

 それに気づくのに時間はかかりはしなかった。

 水中、浅くはなく、水上からの視認はまず不可能な程度の深部。そこにヴァッフェントレーガーはその身を沈めていた。だが月の石を何十も喰らい、見えにくくあるが体のあちこちに融合した月の石を生やすほどに魔力を蓄え、そして周辺を崩壊汚染水で包み込んだ彼にとっては、水上の異常を感じる事など容易かった。

 集まっている。容易く崩壊し、容易く滅びる『生命』の気配が。そして悟る。水棲馬の護衛を抜いてきた以上、相手はあのヴァルギリオスをも打倒した存在、猟兵であると。

 だからどうした。

 臆する事など無い。恐れる事も無い。自分は月の魔力を味方にし、全てを崩壊させる力を持っている。そして崩壊汚染水が大陸の端に辿りつき、雨となって降り注ぐまであと僅かだ。発生源である自分さえ倒されなければそれで自分の勝ちだ。人間は崩壊の雨に打たれ、地上は人々の悲鳴、そして不変の過去となった存在たちが増えていく。

 未来は不安定でおぞましい。奴らはカタストロフを防いだ等と言うが、お前達生命が同じく破滅を齎さないと何故言える。貴様達もまた破滅の可能性を持っている。ならば、ヴァルギリオスはそれをただ早めようとしただけと思わないのか? 生物を狩り尽した過去がありながら、それを世界にやらないと何故言える。

 故に彼は女禍の主張に賛成している。不安定でおぞましい未来や生命など、消え去るべきだ。そして世界は安定で不変たる過去に満ちる。さすれば、強い人間はオブリビオンとなる。弱く無価値な者はそのまま消える。永遠に蘇り、揺らがぬ不変のオブリビオンの世界となる。滅びの可能性という不安定な未来に怯える事など無くなる。そう、これはいわば『慈悲』だ。不安定な生命を不変に導こうと言う、慈悲だ。

 ヴァッフェントレーガーは水中で翼を広げた。猟兵たちの位置は既に掴んだ。こちら側から一方的な攻撃も可能だろう。彼の放つ炎は崩壊の炎。水も当然崩壊させる為、減衰や消火の可能性は無く、水中だろうが敵を焼き尽くし崩壊させる。炎、ブレスは崩壊の概念を持ち、防御などしても対策をしなければ防御力を無視してあっさりと崩壊させられてしまうだろう。
 そして自身の崩壊を顧みない超高機動、攻撃力形態。水中だろうが構いなく突き進むその攻撃もまた対処を間違えれば致命的な一撃になるだろう。

 おぞましい『明日』を崩壊させるべく、ヴァッフェントレーガーは猟兵に向けて戦闘体勢を取り始めた。


※ヴァッフェントレーガーは全身に数十以上の月の石を融合しており、その魔力は強力です。1つや2つを壊しても崩壊汚染水で崩壊はしません。

※ヴァッフェントレーガーの崩壊の力は『生物も非生物も大気も大地も水も崩壊させる事が出来ます』。月の石による強化もあるので、対策や対処の無い防御や遮蔽では一撃で崩壊します。

※ヴァッフェントレーガーは水上からは目視できない水中深部にいて、遠距離攻撃可能なUCを使用する際は魔力で猟兵を探知し、水中深部からでも水上を攻撃可能です。よって、空中や水上で戦闘する場合は、ヴァッフェントレーガーを地上に誘き出したり、強引に引きずり出す、水中深部にまで届き確実に命中させる方法等が必要になります。

※今回から参加した猟兵も月の石は2個以上所持可能、とします。

※プレイングボーナスは『・ヴァッフェントレーガーに融合した月の石を発見し対処する』『・ヴァッフェントレーガーの崩壊の力や周りの崩壊汚染水を利用する』の其々で別個ボーナスさせて頂きます。よって、片方だけ狙っても両方狙っても構いません。


※プレイング募集は8月2日8時31分以降から開始します。戦争期間でもある為長めに期間を取り8月5日8時30分までのプレイングはできるだけ採用し、返却はそれ以降から順次開始します。状況によっては再送をお願いするかもしれません。
雷田・赫子

WIZ
「水たまりの奥底で崩壊汚染水に隠れているわりに自信満々ですね」
空中から見下ろしている赫子。
「あなたは生物も非生物も大気も大地も水も崩壊させる事が出来るらしいですが、ならば何故あなたは【まだ】存在しているのですか?」
崩竜・ヴァッフェントレーガーを憐れむ。

敵の攻撃は【見切り】で回避を試みる。
『絶対なる忠誠心の下に出でよ精霊竜』
ユーベルコードによって虚無属性のスピリットドラゴンを召喚し、ヴァッフェントレーガーへの攻撃を試みる。

「虚無(存在しないもの)は崩壊させられないでしょう。あなたは自身の力で自壊してください」



●壊れない物その1:虚無

 水上にて備えていた猟兵達に、水中から次々と炎やブレスが発射される。それは水を容易く突き抜け、猟兵達へ襲い掛かる。当たれば崩壊する攻撃に、猟兵たちは回避行動を選び散会していく。水中から気配を探知し、防御不能の攻撃で安全に撃破していく。それは崩壊の力を持つヴァッフェントレーガー、そしてこの無限氾濫瀑布にとっては当然の選択ではあっただろう。

(ならば、引きずり出しましょう)

 露出の多い巫女服を纏い、赤き竜の翼や尾、角を称えた女性、雷田・赫子(人派ドラゴニアンの大胆お姉さん・f27088)は翼で空を舞い、ブレスを回避しながらそう思案した。

【滅べ、猟兵。そして人間共。滅んで過去となるがいい】

 水中から向けられる思念。それには傲慢な色が見て取れ、そして未来を疎い全てを過去にするべく崩壊させようという旨も既にここまでの回避中に一方的に告げられてきた。ならば、こちらの声もまた届く可能性はある。

「水たまりの奥底で崩壊汚染水に隠れているわりに自信満々ですね」
【……隠れている、だと?】

 案の定、赫子がそう呟けば、水中から思念が返って来た。普通ならば伝わりはしないだろうが、相手は強化されたオブリビオン。声も探知できるのではないかと踏んだのだ。そしてその思念には明らかに苛立ちが含まれていた。傲慢なオブリビオンならではのそれ。

「ええ、そうでしょう? 領主から隠れ、そして今私達からも隠れそうやって安全圏から攻撃をしている。大した臆病者ですね。ここにかつていた帝竜は空で堂々と猟兵達を迎え撃ったと言うのに。尤も致し方ありませんか。なにせ帝竜ではない、ヴァルギリオスにも認められなかった所詮は『ヒラ竜』でしょうから」

 攻撃が止んだ。安い挑発、といえばそれまでだが赫子はあながち間違いではないと踏んでいた。何しろ今回の作戦からしてまさに卑劣の極み。自分は広い水の中に潜み、上空の大陸から一方的に人々を崩壊させようと目論む。広範囲に一気に効果がある、という観点もあるが、敵意にも攻撃にも晒されることなく一方的に蹂躙できる、とも言える。つまりこの竜は根本的に、慎重。悪く言えば、臆病だと。

「それからもう1つ。あなたは生物も非生物も大気も大地も水も崩壊させる事が出来るらしいですが、ならば何故あなたは【まだ】存在しているのですか? 全ての存在を崩壊できる能力を内包できる存在がある。子供でもわかる矛盾でしょうに。つまり貴方は、結局は全てを崩壊させるなどできない憐れな」


【侮るなよ、小娘が】


 瞬間、水面が弾けたと思えば、その姿がついに猟兵の前に現れた。脈打つような体、溶けるような体表、巨体と翼を広げし今回の騒動の首魁、ヴァッフェントレーガーがその姿を見せたのだ。そして巨体とは思えぬスピードで挑発をした赫子向けてまっすぐに突っ込んでくる。

(回避、は――難しい。なるほど、自身の身をあえて崩壊させて重さを軽くしてきましたか)

 ヴァッフェントレーガーの身体はぐずぐずと崩壊をしていた。崩壊の力を自分に使えない、という言葉を否定しにかかり、それで速度を上げながら突っ込んできているのだ。そして自分に使っているという事はその体表も崩壊の力で満ちており、その全てが絶対回避しなければならない状態。
 見切って回避しようにも初見ではそれが難しい程のスピード。だが赫子は冷静だった。

(そもそも避けるつもりはありませんでしたから)

「絶対なる忠誠心の下に出でよ虚無の精霊竜。【精霊竜召喚(サモン・スピリットドラゴン)】」

 既に挑発した段階で準備はできていた。よって、赫子は既にその準備は終えていたのだ。
 赫子とヴァッフェントレーガーの間に、姿のはっきりとしないぼんやりとした67体もの精霊竜たちが現れる。それは壁となり、赫子の前に並び立ち、攻撃と突進を封じんとする。だがヴァッフェントレーガーは目に見えて笑みを浮かべた。

【愚かな。我が力の前には貴様らなど塵芥。無駄な足掻きと知れ】

 そして同時、ヴァッフェントレーガーと精霊竜たちが激突した。圧倒的なスピードと力に、精霊獣のうち半数以上はその一撃で消滅していく。……そう、『半数以上だけ』。つまり、残りは――。

【なん、だと】

 残りの精霊竜はヴァッフェントレーガーの身体を受け止め、赫子への接触だけは避ける事に成功したのだ。崩壊の力を持つ筈のヴァッフェントレーガーを受け止めながら。

「例え万物を崩壊できたとしても、貴方が崩壊できないものは存在する。それは、『虚無』。虚無(存在しないもの)は崩壊させられないでしょう。彼らはその虚無の属性竜。故に、力では破壊できても、崩壊の力では壊せない」

 虚無が受け止める、というのも矛盾してはいるが、虚無を伴った精霊竜、ならば可能だろう。

「そして自らの身体を犠牲にしたという事は、覆う部分までもが消えて丸見えですね」
【ッ!!】

 精霊竜に抑えられたままのヴァッフェントレーガーを尻目に、赫子が羽搏き飛んだ。その先には、ヴァッフェントレーガーの右太腿部分。そこに、ぐずぐずになった体表にまみれて石のような突起が見えていた。そう、ヴァッフェントレーガーの崩壊でも崩壊しない部分。それは月の石の融合部分しかない。

「いただきます」

 赫子のなぎなたが一閃し、月の石を破壊した。石が砕けちり、視界を舞う。

【グッ、ガァ!!】

 融合していたヴァッフェントレーガー自身にもダメージが入ったのを見た赫子はそのタイミングに合わせ、精霊竜たちに連携しての突進を命じた。ダメージと重なったのもあり、ヴァッフェントレーガーはそのまま押し出され、そして竜たちと共に再び水の中へと沈められていった。

「今はまだ1個ですが、後は後続に任せましょう。石が壊れて汚染水で崩壊するか、再び同じ技で自ら自壊するか……どちらにせよ願わくば、あなたは自身の力で自壊してください」

 それがお前に相応しい末路だ、と沈みゆく姿を見下ろす赫子の顔は無言で語っているようだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

神代・凶津
漸く今回の事件の元凶にたどり着いたぜ、相棒。
「・・・止めてみせます。」
おうよ、戦場が水中なら水神霊装だ。
いくぜ、相棒ッ!
「・・・転身ッ!」

月の石は持ったな。
鬼乗せ船から飛び込んで敵の居る水底を目指すぜ。
手に持ったこの『霊鋼の薙刀』は穢れを祓う。
俺達の周りの崩壊汚染水も
ある程度なら浄化できるぜ。

敵の攻撃は一撃もらっただけでも致命傷だ。動きを止めるな。
高速で縦横無尽に水の中を移動しながら敵の攻撃は引き上げた反応速度で見切って避けつつ、敵の月の石を見つけ出して破魔の霊力を込めた薙刀で攻撃だ。

ちぃ、流石に強敵だな。
「・・・けれど、決して負けられませんッ!」


【技能・浄化、見切り、破魔】
【アドリブ歓迎】


御門・結愛

魔力感知を使用します。
「異常な量の月の魔力反応あり。あそこに崩竜がいるわ!」
炎の弾幕に対し、右手のマグナムから目の前の一点に月の魔力弾を連射し、相殺しきれない分を月の魔力を纏わせた左手の聖剣で受け止める
「いくら圧倒的な物量でも面による攻撃なら、一点突破で止めて見せるわ!」

こちらが劣勢ならUCを使用します
「……わたくしが、道を作りますわ!」
残りの石を全て取り出すと胸元の石が輝き、砕け漂う魔獣達の残滓、周囲に眠っている石、敵味方の攻撃の余波、その全てから月の魔力を集めます。
大量の月の魔力を取り込んだ一角獣に選ばれた少女は、それに相応しい少女神の姿へ変身し、仲間達の道を作るため聖弓から光の矢を放つ



●月神の矢、水神の薙

「よし、派手に落ちたな! 今がチャンス。漸く今回の事件の元凶にたどり着いたぜ、相棒」
「……止めてみせます」

 鬼乗せ船の上で先程までは回避に努めていた神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)だったが水上に誘き出されたヴァッフェントレーガーが再び落とされたのを見て攻勢に出るチャンスと見て動き出した。
 そしてここにいるのはもう1人。

「それじゃ、援護は任せたぜ」
「ええ、わかりました」

 凶津が振り向いた先には、船に同乗している月の石を装着した青いドレスの少女、御門・結愛(聖獣の姫騎士・f28538)がいた。探索時に一緒になっていた彼女は崩竜へ向かう途中で落合い、今こうして同乗していた。

「それじゃあ、俺は直接切り込ませて貰うぜ。戦場が水中なら水神霊装だ。いくぜ、相棒ッ!」
「……転身ッ!」

 凶津は【水神霊装(スプラッシュフォーム)】を発動した。鬼面が赤から青に変わり、巫女服も青を基調とした色合いへと変化する。凶津と相棒である桜の力を1つにする事で、水中や深海に適応する、まさにこの戦いには最適の姿だった。
 奇しくも似た色合いの服になった2人は顔を合わせる。

「嬢ちゃん! 奴の位置、わかるか?」
「ユニコーン、お願い……あった! 異常な量の月の魔力反応あり。あそこに崩竜がいるわ!」

 既に覚えているユニコーンが月の魔力を頼りに探知し、崩竜のいるであろう、大量に月の魔力を探知する方を指差した。

「よっし、それじゃああっちに向かって泳ぐから嬢ちゃんは援護を……」
「!? 待って、その周りに、大量の禍々しい魔力が!!」
「何!? もう体勢を立て直したのか!?」
「……! そんな、まさか狙いは!!」

 突然月の魔力の周りに大量に出現した魔力源。そしてそこから何かが放たれようとしている。ユニコーンの検知によりそれを察した結愛は、その狙いが自分達を含めた周辺の猟兵だという事を理解した。

「いけない、このままじゃこの辺り一帯狙われますわ!」
「まずいぞ、いくらなんでもこれだと回避が」
「……ここは、私がなんとかします!!」
「あ、おい!」

 船の鬼らに少しでも回避を命じようとした凶津の横を抜け、結愛が船首へと駆けだした。片手には天馬の雷銃、もう片手には一角獣の聖剣を握りしめて。

(魔力反応からして、相手の狙いは面による制圧攻撃。先程から見ていた中だと、大量の火球を発射するパターン! なら、1番直撃が危険な物を見極めて……!)

 魔力探知を全開にした結愛は、その発生源から大量に火球が発射されたのを確認し、構えた。狙いは船の中心部目がけて飛んでくる巨大な火球。当たれば船は完全に崩壊させられるに違いない。最悪、自分達さえも。

「そんなことは、させません!!」

 チャージした雷銃から電撃球を放ち、水中で火球と激突させる。だが、月の魔力で崩壊は通さないが、水自体の性質として電気はいくらか分散してしまう。その結果、火球は多少小さくはなりはしたが、船向けて以前飛んでくる。
 そして火球が水面から飛び出してきた直後、結愛は跳躍し、その火球の一点向けて聖剣を突き出した。

「いくら圧倒的な物量でも面による攻撃なら、一点突破で止めて見せるわ!」

 多量のものなら一発一発はたいした威力ではない。こちらを狙ったと言うより周囲に手当たり次第に発射したもの。ならば、これさえなんとかすれば。

「ユニコーン! お願い、穿って!!」

 突き出した聖剣に、角のようなオーラが展開され、次の瞬間には火球を『貫いた』。ユニコーンの効果により貫かれた火球は左右に分かれ、結愛の両脇、そして船の前後をギリギリすり抜けて空へと飛んでいった。
 結愛はその反動で跳ね返され、船へと戻り転がった。そこにすかさず凶津が駆け寄って来た。

「ったく、無茶しやがる! 一歩間違ったら消えてたぞ!?」
「ご、ごめんなさい……他の方は?」
「安心しろ、だれも当たっちゃいねえよ。だが、どうにも止まる気配がねえ。仕方ねえ、一か八か、これをすり抜けて何とか泳いで近づいて……」
「……いえ。多分、なんとかできます」
「何!?」

 結愛は懐に入れておいた、余剰分の月の石を握ると、立ち上がり再び船首に立った。

(さっきのユニコーンの力を籠めた剣は確かに通用した。ならもっと、もっと力を高めて、崩壊汚染水も突っ切るほどの同じような力を撃ち籠めれば、この弾幕を貫通できる筈!)

「……わたくしが、貴方の道を作りますわ!」
「おい、一体何をする気で……なんだ!?」

 凶津が見ている前で、結愛の胸元の月の石が輝きだした。そしてそれと共に、結愛が取り出した余剰分の石もまた光を放ち始める。しかもそれだけではなく。

「アレは、さっきので砕かれた石か?」
(それにアッチに浮かんでいる、水棲馬の欠片についている石も……新しく浮かんできたあの石も、周囲のが全て光って、魔力が高まってる……まさか、魔力の共鳴?)
「それってさっき、あの黒羽っ子が月の石に働きかけたとかみたいなのか?」
(そんなところ。そして、魔力が全部あの子に!)

 先程破壊された崩竜の月の石、流れ着いた水棲馬の遺体に残っていた月の石、更には新しくここで見つかった月の石、余剰分を含めたそれら全てが共鳴し、そしてそれぞれの月の魔力が石から離れたと思えば、結愛の胸元の月の石へ集まっていく。

「お願い、私はどうなっても構わないから!あの闇を貫く力を!ユニコーン!!」

 そう叫んだ結愛の頭上に、光り輝くユニコーンが現れたと思えばその角を天に掲げる。その先には、月の姿がおぼろげに見え、そしてその月光が結愛へと注がれる。そして結愛の姿が更に変わっていく。月の意匠を更に増やし、体からは月の光を放つ。そしてその手には、銃と剣の代わりに、弓とユニコーンの角のような矢尻の矢が握られていた。

「ユニコーンが導いてくれた……月の魔力と、光の聖獣で呼び寄せた神の力……その名は、アルテミス!」
「アルテミスゥ!?」
(確かギリシアの月女神で、狩猟や狂気を司っているって)
「さっきからなんなんだ。ここは月の神のバーゲンセール会場か!?」
(でも間違いない。彼女からも、凄い神性の力を感じる……!)

 少し前に別の神の力を見ている凶津と桜は、その力が本物だと確信していた。
 結愛は意識が持って行かれそうなのを堪え、そして魔力探知で割り出した崩竜の居場所へと弓矢を構えた。

「【月女神の一矢(アルテミス・アロー)】!!」

 指が離され、矢が水中向けて放たれた。反動として膨大な月の魔力が放射され、矢は崩壊汚染水の中を突き進んでいく。崩竜が放った火球も次々と撃ち抜かれ、程なくしてそれは崩竜の元へとたどり着く。矢は、過たず崩竜の左肩付近の月の石をまっずぐに射抜いた。

【ガァアアアア!?】

 月の石ごと貫かれた崩竜は水中で動きを止める。それはあまりに致命的隙であった。


「あ……っ」

 船上では、結愛が膝から崩れ落ち、纏っていたあやかしメダルによるドレスも消え失せて元の衣服へと戻っていた。月の女神という強力な神性を降ろしての一撃は、猟兵とはいえ人間である結愛にとってはかなりの負担がかかり、彼女はほぼ全ての力を使い果たしていた。

「嬢ちゃん!?」
「……あとは、お願い、しま……」

 力なく船上に倒れた結愛に最後に向けられた言葉に凶津は足を止めた。今するべきなのは駆け寄ることではない。彼はくるりと踵を返し、水面へと顔を向けた。

「ああ、任せとけ。絶対無駄にはしねえ!」

 乗組員の鬼に結愛の介抱を指示し、凶津は水の中へと飛び込んだ。接近できる今の内に、ここで更に追撃を加えておかなければいけない。それが道を開けてくれた彼女への最大の礼になる、と。

「水神礼装、フルパワーだ!」

 水の中へ適応した凶津は、月の石で身を守りつつ崩壊汚染水の中をあっという間に潜航していく。程なくして、穿たれた崩竜の姿が見えた。やはり結愛の全力の矢は相当なダメージを与えているようだ。今なら一気に近づける、と凶津が加速を使用としたとき。

「ガアアアア!!」

 ヴァッフェントレーガーの首がこちらを向き、そして速射のブレスを凶津に発射したのだ。

(コイツ、気配だけで俺に気付いて速射攻撃に切り替えやがった! クッソォ!!)

 慌てて軌道を変え、ブレスを回避する。当然あのブレスも崩壊の属性を持っている。受けてしまえば一溜りもない。だが月の魔力でまだ強化されているヴァッフェントレーガーは、更にブレスを連射してきた。

(水神霊装は水中適応だけじゃねえ、スピードと反応速度も向上できる。だが……コイツの攻撃、命中精度が高すぎる!)

 顎が向きさえすれば間髪無く発射できる命中率の高い崩壊ブレス。まだ距離が十二分に詰まっていなかったこともあり、凶津は回避に専念することしかできなかった。

(ちぃ、流石に強敵だな)
(……けれど、決して負けられませんッ! 彼女の為にも)
(あぁ、そうだな相棒。此処でしくじったら、もう先輩面なんてできやしねえ! こっちも覚悟決めてやるぜ!!)
(ええ。二人の命、一緒に賭けよう)

 2人は覚悟を決め、霊鋼の薙刀を翳した。そして更にその先端に、結界術符を張り付けていく。やがてブレスが発射したのを見るや、凶津はそれまでと移動機動を変えた。回避ではなく、ブレスに向けての突進。諦めて自殺に走ったか、と思ったのかヴァッフェントレーガーの目が細まるのが見えた。

(ハッ、大間違いだよ、身崩れ竜!!)

 次の瞬間、突き出した薙刀の先に結界術符から結界術が展開された。ブレスを押しとどめ、だが少しずつ崩壊する。それでも凶津はそのままブレスを結界術で裂きながらヴァッフェントレーガー目がけて突っ込んでいく。ヴァッフェントレーガーの目が見開いたのを見て、凶津はほくそ笑んだ。

(驚いてるよな? 強化されたブレスならただのバリアなんて一瞬で崩壊できるってよ。月の魔力の補助もある、だが結界の触媒に使ってる霊鋼の薙刀は魔を祓う性質がある。それでお前の崩壊の力、少しでも削ぎ落してやってるのさ! 後は……!!)

 結界術が流石に限界を迎え、ついに崩壊する。だが、もう充分にまで近づいた。崩壊直前ギリギリのタイミングで凶津はコースを変え、結界だけを残して僅かに斜めに突進する。そうすれば、結界崩壊による放出された力に後押しされ、凶津の身体は一気にヴァッフェントレーガーの首元へと近づいた!

(もう1つ、貰うぜ!!)

 首を激しく動かした事で露出した、首根元の月の石。それをすれ違い様に薙刀が一閃。月の石を切り裂き完全に粉砕した。再び悶えるヴァッフェントレーガーを尻目に、凶津は水上向けて浮上を開始した。

(やれやれ、これで何とか先輩の面目は保てた、かねえ)
(この後たっぷり労ってあげるまで、しないとダメじゃない?)
(ハハ、だよな……やれやれ、『男子、三日会わざれば刮目して見よ』って言うが……女子なのに成長速度早過ぎねえか?)
(ふふ、負けてられないね)

 船上にいるであろう、少し前に見た別世界で見た姿から一気に成長したように思えてる少女を思い浮かべながら、2人は水上の光へ向けて突き進んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラモート・アンゲルス
【ダッチマン】
「急にすみませんね」
 UC【堕天】からの【三相一体】でギリシャ神話よりヘカテーに変身します。
ヘカテーは魔術と月と死の女神。月と魔術の権能でダッチマン及びメンバーの月の石を用いた強化を更に強化し、ダッチマンを守るバリアを張ります。
敵に対しては月の権能を用いて、月の性質の一つである狂気を使い敵の体内の月の石を通じて狂わせて行きます。


アンノウン・シー
【ダッチマン】
「大型用の装備を用意しましたが、苦手意識は変わりませんね……」
一人称は当艦、三人称にはミスターorミス+苗字、愛称はウノ
自分自身はダッチマンの甲板の上で装備の探照灯を構えてひたすら撃つ。
あとは残った分や集団戦で敵が取り込んでいた月の石をUCで魚に変化させ汚染水や炎の除去、敵に突っ込んで取り込ませたりします


トレーズ・ヘマタイト

【ダッチマン】

●武器・防具改造で味方の補強をし、余りの石は適度に貰う
UCでタールのローブと赤魔眼石が付いた大鎌を持つ死神の真の姿になり、纏う黒い風に私物の魔石も加えた無数の共鳴魔石が漂う

火球は月の魔力主体の魔法陣で反射、月とは鏡でもあり崩壊に抗う故相性もいい
敵の魔法陣には魔石の一部を撃ち込み陣を乱し暴発を狙う
●怪力で大鎌を振り●呪詛を敵に直に送り、敵の石と私物の魔石を繋ぎ魔力を濁らせていく

機を見て大鎌に魔石の魔力を集め死●属性攻撃で敵の肉体と魂の一部を切断し
ローブを巨大化させて●捕食し刻印の異空間に封じる

月は死と再生の象徴、故に崩壊に抗うが、濁らせ死で切断し封じれば欠損の復元もできまい

以上


エルザ・メレディウス
【メレディノポリス】
アド◎絡み◎

弱く無価値...それは貴方が決める事ではありません
人間...いえ、この世に生きるすべての生き物は、誰の目にもわからない価値を持っています
貴方の独善的な慈悲で彼らの命は奪わせません...!

■引き続き、ガレー船(ミストラル)で海戦を!
ガレー船は、月の石で補強しながら敵の攻撃でも簡単には壊れないように

【地形の利用】を活かして、小島や岩影を上手く活用して、ミストラルを操縦。敵からの攻撃は最小限のダメージに抑えます
相手が、岩陰から顔を出すまで根競べです


敵が水上へ顔を出したら、後は久遠寺君。
・・・貴方の一撃を彼に!
久遠寺君が全力を出し切れるように、UCで彼を補助します


久遠寺・遥翔
【メレディノポリス】
アドリブ歓迎

UCでラグナライザーに乗っておく
【メカニック】で予め月の石を装甲やビーム機構に埋め込み使えるようにしておき
奴の火球は【火炎耐性】【オーラ防御】【盾受け】【拠点防御】で
光の盾を船の前面に展開し船ごとなんとか守り切る

奴がエルザさんの誘いで顔を出したら反撃だ
光の盾を展開しながら【空中戦】【ダッシュ】で突っ込み
周囲の水は【焼却】し【第六感】【視力】の霊視で月の石がある所を狙い
焔の剣で斬り刻む

俺達はあんたのように定まらない未来に怯えたりはしない
いつか滅びるとしても希望を持って現在を生きる
それがわからないあんたは所詮過去でしかなく
現在にとって代わる事なんてできはしないんだ


マリア・フォルトゥナーテ
【ダッチマン】
アドリブ、連携歓迎
仲間の支援を受けて、崩壊水の効果を無効にします。

「これが最後の戦いです!大宴会で気持ちよく酔い潰れるためにも、首魁を海の藻屑にしてやりますよー!!」

悪霊船員達の士気を高めつつ、潜航を開始!
他の猟兵さん達とは別方向から敵に接近します。
敵の姿を捉えたら、UC「海の墓場」を発動し、無限に白い荒野が続く固有結界に敵を引きずり込みます。ここに捕らわれた者は、意志、欲、希望を削られ、発狂するか、無欲無心の生ける屍に成り果てます。

これにより、敵の攻撃を封じたところを他の猟兵さんにトドメを刺してもらいます!

他の猟兵が攻撃を受けそうなら、不死を良いことに、船を盾にして守ります。



●幕間

「本当によろしいのですか? この策だと、貴女が……」
「ご心配なく! 私には頼れるクルー達もいますし、そして何よりこの船は―――です!」
「…………」
「適材適所というものですよ。最後の最後に体を張るのはそちらになってしまいますし。こちらからもできるだけフォローはしますけどね!」
「……では私からも援助はします。どうか、御武運を」
「ふふふ。海賊には武運は似合いません。私達はこれから、相手の抱えたお宝を略奪しに行くのです!」

●大猟兵海戦Ⅱ

「これが最後の戦いです!大宴会で気持ちよく酔い潰れるためにも、首魁を海の藻屑にしてやりますよー!!」

 水上に浮かぶ巨大幽霊船フライングダッチマン号、その操舵をしながら海賊船長シスター酒場店長のマリア・フォルトゥナーテ(何かを包んだ聖躯・f18077)は船員たちを鼓舞するように声を上げた。

「ラモートさんは船上で術式待機! 防護を固めて、同時に『アレ』もお願いしますね!」
「ええ。急にすみませんね、乗せて貰って」
「いえいえ! 知らない仲ではありませんし!」

 崩竜決戦前にこちらの船に乗り込んできたラモート・アンゲルス(生きた概念・f18548)は、マストの近くにて佇みとある策の準備をしていた。

「トレーズさん、敵へのちょっかいとアタックはお任せします! ユノさんはトレーズさんの援護をよろしく!」
「了解した。そちらはどうだ?」
「問題ありませんミスター・ヘマタイト。炎術式の術式展開、ブレスの発射速度。先の戦闘で全て解析完了しています」

 周囲に色んな物品を置いているトレーズ・ヘマタイト(骸喰らい・f05071)、その脇にて機械機器を接続しているアンノウン・シー(所属不明の船・f26269)。二人もそれぞれの役割を確認し頷いた。

「よぉし!では行きますよ。狙いは崩竜の抱えた月の石! そして、海も地上もこの大陸も、全てを守り抜く事、です!! ダッチマン号、戦闘開」
「ミス・フォルトゥナーテ」
「今良い所だったのになんで邪魔するのお!?」
「緊急だからです。敵が術式展開、弾幕崩壊炎攻撃、来ます」
「ふぇ?」

 敵周辺の魔力展開、そして熱源上昇を探知したアンノウンがマリアに知らせる。唐突で目を点にするマリアを余所に、ラモートとトレーズは動くことにした。

「相手がマリアさんの長い話など待つ訳もありませんからね」
「うむ」
「長くないもん!? 後トレーズさんだけは否定して!?」
「そんなことはいいですから、ではやりましょうか」
「ああ。こちらも始めるとしよう」

 ラモートが翼を広げ、トレーズが周囲の物品の中心に移動する。物品の中には探索で得た余剰分の月の石も混じっている。

「善なる者も人によりては疑われる。【堕天】——からの」
「「『人より『 』に与えられた権能を行使する』。【三相一体(トリプルフェイス)】」」

 ラモートの翼が黒く染まり、更に2人分の気配が色濃くなると同時に、更に別の存在が彼女に宿る。それを眺め、トレーズは頷くように体を動かすと、周囲の装備や月の石を巻き込み黒い風が渦巻き、それがトレーズを包み込む。
 程なく、黒い風の層が薄くなり、そこに現れたのはタールのローブと赤魔眼石が付いた大鎌を持つ死神の姿。これこそ猟兵が持つ、真の姿。トレーズの場合はこれもその内の1つに過ぎない。死神の周りを、月の石や自前の魔石が取り巻いている。それをラモートは心なしじと、っと見る。

「私の前でその姿とは……確信犯ですか?」
「さて。何のことかな」
「まあ、いいでしょう。時間も無いし気にしない事にします」

 そう言い、ラモートはトレーズに製造して貰った月の石を先端に誂えた魔法杖を手に取り、それを掲げる。

「我が下ろすは、魔術と月と死の女神ヘカテー。彼の女神の力で、それぞれの月の石に宿る魔力を増幅します」

 ラモートが今回顕現させたのはヘカテーの力。魔術を司る力で、こちら側の月の石だけ活性化させようという手筈らしい。その力がダッチマン号を含めて『周囲』に展開し、包み込んでいく。

「これでダッチマン号も崩壊汚染水に長時間晒されても安全です。更に、魔術障壁も展開しておきます」
「これで護りは万全か。ではこちらも向かおうか」
「ええ、ミスター・ヘマタイト。こちらも今準備を」

 アンノウンが自身の方に分配されていた活性月の石に手を翳す。

「落ちる果実から小鳥、落ち葉から蝶、海底の泥から烏賊、生命の胚珠はこの世に満ちている。【敗北理論「自然発生説」(スポンテーニアス・ジェネレーション)】」

 アンノウンのユーベルコードは、無機物を小型の脊椎・無脊椎動物に変換するもの。月の石がみるみる間に小型の魚の群れに変わっていき、水面へと飛び込んでいく。月の石で作られているが為、当然崩壊汚染水の中でも活動できる。

「弾幕炎、来ます」
「トレーズさん!」
「ああ、了解だ」

 敵周辺の魔法陣から弾幕炎が発射されたのを検知したアンノウンが警告。それと共に、その中でも1番大きいもののコースを見切り、そこに魚たちを移動させた。いくら月の石の魚とはいえ、ただいるだけでは防ぐことはできないだろう。だが、その布陣地点にトレーズが船から飛び降り手持ちの鎌を向ける。

「月の石たる触媒を起点に、防御魔法陣展開。月は鏡とも関するもの。そして鏡は反射の属性を持つ。更に、月の石の中和により崩壊に抗う効果もある。よって」

 石魚たちを結ぶように円が描かれ、更に魔法陣が描かれる。そして、その面に炎が着弾。拮抗はするが、だがラモートにより強化され、更にトレーズが術展開しているその魔法陣に、ばら撒いているだけの炎1つでは対抗できる筈もなく。

「丁重に返却しよう」

 炎が弾かれるように水中へと戻っていく。反射の属性により、そのまま主たるヴァッフェントレーガーのいるであろう方向へ。

「そちらはどうだ?」
「だ、だだ、大丈夫ですううううう!!」

 反射しなかった分は当然そのままフライングダッチマン号へと襲い掛かるが、ラモートの障壁展開や月の石の活性による崩壊無効、更にある『後押し』により、フライングダッチマン号は無傷で顕在していた。

「ならばこのまま潜らせて貰う」
「そのまま随伴させます」

 トレーズがそのまま水へと潜り、アンノウンが操る魚たちもそれに付いていく。アンノウンはそれと共に自身の視界カメラを切り替える。それは前もってトレーズに渡し、トレーズのタール体に埋め込んでいた水中用カメラ。これによりアンノウンはトレーズと共に水中内を見る事が出来、それにより魚を適時操作する事が出来る。


「いたな」
【おのれ、貴様……】

 程なくして、潜っていったトレーズの前に焼け焦げた尻尾をだらんと下げたヴァッフェントレーガーが見えてきた。どうやら炎は見事に直撃、だがなんとか尻尾で受け止めたらしい。その尻尾も崩壊はするが、だがぐずぐずと再生している。

 お返しとばかりにヴァッフェントレーガーが再び自身の周りに魔法陣を展開する。近距離ならば防御できないだろうと再び炎を放つつもりらしい。だが、それはトレーズらの予想範囲内だった。

「魔法陣阻害陣形」
『了解。魔法陣阻害陣形、展開します』

 カメラと共に仕込んだマイクから指示を受け取ったアンノウンが魚たちを魔法陣に向けて突っ込ませる。魚は手前で曲がり、口に加えていた魔石を魔法陣向けて撃ち出し埋め込んだ。

【焼けて滅……!?】

 ヴァッフェントレーガーが炎を放とうとした瞬間、術式に異物が撃ち込まれ更にトレーズがそれを触媒に阻害術を仕込んだ為に、魔法陣が暴走。炎は放たれず、力が暴発し魔法陣が次々と爆発を起こす。中心にいたヴァッフェントレーガーをも巻き込んで。

【グオオオッ!!】
「魔法陣は精密な術式の集合だ。少しでも狂わせればこの通りだ。そして、その隙は貰う」

 爆発でヴァッフェントレーガーが怯んだ隙に、トレーズは焼け焦げていた尻尾に近づき呪詛を纏わせた大鎌を思い切り振るった。尻尾が根元から寸断され、一部についていた月の石ごとヴァッフェントレーガーから離れる。そして、トレーズのタールローブが大きく膨らむとその尻尾を丸ごと包み込み、すぐにその容積が消え失せた。

【き、きさ、ま、何を】
「呪詛の大鎌で尻尾ごと、そちらの魂の一部を切り離させて貰い、まるごと喰わせて貰った。月は死と再生の象徴、故に崩壊に抗うが、死で切断し封じれば欠損の復元もできまい。ふむ、崩壊の力か。強力ではある。だが、魂はひどく空虚なものだな」
【黙れ貴様……!!】

 自分の魂までも喰われたと言う事実、更に侮蔑のような発言に怒り心頭となったヴァッフェントレーガーは崩壊の力を伴った爪を振るった。

『させません』
【グウッ!!】

 それもアンノウンが月の石の魚たちを突っ込ませる事でその軌道を変え、攻撃を逸らす。トレーズはその間に水上向けて浮上していく。

【させるか……! 月の石をわざわざ突っ込ませるとは愚かな!】

 ヴァッフェントレーガーは、元が月の石である魚たちを突っ込まれて接触したまま取り込んでいく。魚はその過程で石に戻り、ヴァッフェントレーガーに新たな石の突起が生えた。
 だがその作業のせいで一手遅れ、トレーズは既に水上から船へと上がろうとしている。ヴァッフェントレーガーもまたその後を追う。自身から肉体と魂を奪った不届き者。直接仕留めて奪い返さなければ気が済まない。そうしてヴァッフェントレーガーは水上を目指す。



「ふう」
「ミスター・ヘマタイト。お疲れ様です。進捗は」
「ああ。ついでに月の石も頂き、そして奴も『石の魚を吸収した』」
「『そうですか』」
「こちらも準備は終えています」
「ああ、『そのようだな』」

 ある方向を見ながら、船上へと戻ったトレーズがそう呟いた直後、水面が盛り上がったかと思えば、竜の巨体が空へと飛びあがった。

【そこに、いたか……!!】

 怒り狂った表情のヴァッフェントレーガーが、再び体を崩しながら全身を崩壊の力で包みながら突っ込んできた。

「クルーには手出しはさせません! 悪霊船員たち、迎撃です!」
「こちらも術式障壁を強化します」

 マリアが指示を出し、船員たちが銃撃や大砲で迎撃。更にラモートもバリアを強化し攻撃に備えた。

【無駄だァ……!!】

 高スピードによる突進と突き出された爪、そして月の石を補充した事による崩壊の力の強化。それが全てダッチマン号に叩きこまれた。バリアはあっという間にほとんどが吹き飛ばされ、船の一部も崩壊の力で吹き飛ばされる。ラモート、トレーズ、アンノウンも力の余波で端に吹き飛ばされ、マリアは操舵輪にしがみついてなんとかし凌いだ。

「あ、ぐ……!!」
【もう一撃、これで終わ……】

 ダッチマン号にトドメを刺そうとし、ヴァッフェントレーガーが腕を振り上げようとしたその時だった。

 それは、違和感だった。ダッチマン号の、後ろ。今水上に上がるまで、そしてさっきバリアを破壊するまでは当然、何も無かったはずのその空間に。



 船が、もう一隻あった。



「これほどの至近距離。回避は不可能ね」

 それは大きなガレー船、その名はミストラル。その上には槍を構えた船員たちが多数構えており、そしてその中心に指揮をするように佇む女性がいた。

「雌伏は終わり。さあ、今です。総員、放て」

 ヴァッフェントレーガーが何かをしようとする前に、船から一斉に投げ槍が放たれた。月の石を仕込まれたそれは体表の崩壊力を突き抜け、ヴァッフェントレーガーの身体に突き刺さり、そして1本がその眼に深々と抉り刺した。

【グオォォォオオオオオオオオ!!!】

 身もだえ、空へと離れるヴァッフェントレーガー。それを見て、操舵輪にしがみつき立ち上がったマリアはほくそ笑んだ。

「やりましたね、エルザさん!」
「ええ……でも、やはり奇襲効果は抜群だったといえ、これほどの……」

 心苦しい表情で、一部を破壊されたダッチマン号を見やったのはこの大陸の領主の1人、エルザ・メレディウス(太陽を目指して・f19492)だった。


 策は既にダッチマン号が到着する前に始まっていたのだ。ダッチマン号にはエルザの船が随行しており、それをトレーズが月の石を改造した物品で魔力のジャミングをかけておいたのだ。ヴァッフェントレーガーが水中から水上を探知している方法。それはこちらが必ず持っている月の石の魔力を探知しているのではないかと。ならば、月の魔力でそれをジャミングし、水上の反応をダッチマン号やマリアらだけに誤認させることもできるのではないかと。
 ラモートがヘカテーの力でバリアを張った際、ジャミングを強化した上、視覚でもミストラルが見えない様に別のバリアと幻惑術で包み込んでいたのだ。全ては今この瞬間。海戦の戦略の1つで、岩場等に隠れて現れた敵を奇襲する方法の応用。崩壊汚染水の満たされたこの海域には月の石しか存在できない。隠れられるほどの岩場がない。別の策に切り替えるべきかとエルザが思案していた所にマリアが提案したのだ。

『なら、ダッチマン号を遮蔽にしてください! 何せ幽霊船ですからね。一隻くらいは隠せますよ!』
『で、ですが危険すぎます』
『大丈夫! ダッチマン号は不死身なのです! 完全破壊でもされなければ、少しすれば直りますから!』

 自身満々なマリアの言に押され、この無茶な作戦をエルザは共にしたのだ。尤も、エルザも護られるだけではいけない、とダッチマン号組に援護はさりげなくしていた。

「いえいえ、言った通り不死身ですから! それに、エルザさんの祝福のお蔭で大分ダメージを軽減できましたし!」
「ああ。こちらも怪我はない。水中もかなり動きやすかったぞ」
「当艦も精度を高く魚を動かす事が出来ました」
「オリンポスの祝福、複雑ではありましたがヘカテーとは相性が良かったのでこちらも助かりました」

 礼を言うダッチマン号組に、エルザが嬉しそうにしはにかんだ。
 【オリンポスの祝福】。エルザの行った演説や説得に同意したものに神々の祝福を与え戦闘力を上げるユーベルコートである。ここに到着する前に、エルザはダッチマン号組らに演説……というよりは、必ずヴァッフェントレーガーを倒し、領土も地上の人々も守りたい、という決意表明を語り、それにダッチマン号組が協力を同意する事でユーベルコードの条件を満たしたのだった。先程までの全ての行動に、エルザの祝福による戦闘力増強が伴っていた、という事である。

【貴様ら、貴様ら、貴様ラアアアアアア!! 我を謀ったな、許さん、許さんン!! 弱く、無価値で不安定な生命の分際でぇ!!】

 片目に槍(ちなみにこの槍も、事前にトレーズがミストラル船員用に月の石で補強改造したもの)が刺さったまま、ヴァッフェントレーガーが怒り狂い猛り叫んでいた。
 その様子に、ラモートは静かに口角を釣り上げ、そしてエルザはそのヴァッフェントレーガーに毅然とし。

「弱く無価値...それは貴方が決める事ではありません。人間...いえ、この世に生きるすべての生き物は、誰の目にもわからない価値を持っています」

 目を閉じれば思い出す。この大陸を支配していた強大な帝竜たち。それらを全て、多数の属性を操る強大なオブリビオン・フォーミュラ。それを猟兵たちは打ち倒し、この大陸を支配から解き放った。
 そしてその土地を、ここまで自分と『彼』や多くの仲間達や訪れた人々が力を合わせて採掘や開拓、新たに営みを作り上げていった軌跡を。そしてその中で見てきた、皆の笑顔を。

「貴方の崩壊は慈悲などではありません。貴方の独善的な慈悲で彼らの命は奪わせません...!」

 エルザ・メレディウス。侵略する竜にそう言い放った彼女の姿は、紛れも無く『群竜大陸の領主(ドラゴン・ロード)』の1人だった。


【黙れ黙れ黙れ黙れ!! コロス、ミナゴロス、崩壊させる。だが、まずは……まずはァ!!】

 瞬間、崩壊の力を更に全身に満たし、崩壊を早めていくヴァッフェントレーガーが瞬間移動したかのように移動した。それは、ミストラルのすぐ横。ダッチマン号がミストラル自体が邪魔で攻撃が出来ない、絶妙な位置。

【我の目を抉り、騙しぬき、そして我を否定してくれた貴様からだ、女ァ!!】

 崩壊の力を充填し、身体すら崩しながら振り上げる爪。

「エルザさん!!」

 間に合わない事に絶望した様子のマリアが叫び、エルザはそれでも狼狽える事無くヴァッフェントレーガーを見据え、そして今崩壊の爪がエルザ目がけて……





「『騙し抜き』、か……笑っちまうな。まだ、『騙し抜いてる途中』なのによ」




 次の瞬間、ヴァッフェントレーガーの真下の水面から突然炎が噴き出し、攻撃しようとしたヴァフェントレーガーを包み込んだ。

【な、なにグホオオッ!!】

 戸惑ったヴァッフェントレーガーの腹部に大きめの黒きロボのようなものが水面から飛び出し突っ込んだ。光の盾を展開していたそれは崩壊の力もものともせず、推進力でそのままヴァッフェントレーガーを運ぶように上空へと突き上げた。

【バカな、何者だ貴様ぁぁ!?】
「俺? 俺か? なら耳をかっぽじって聞け」

 その質問に、黒き鎧に身を包み、今は鋼翼魔装フェンリルと合体し3.5mほどのロボとなっている男は答えた。

「メレディウスの騎士――又の名を、今は【神焔合体ラグナライザー】だ!」

 久遠寺・遥翔(焔黒転身フレアライザー/『黒鋼』の騎士・f01190)。ここまで秘された最後の切り札(ジョーカー)。それが晒された瞬間だった。

「しかしエルザさん。まさか、また同じ事をさせられるとは……」
「今度は一瞬でしたし、ほとんどはマリアさんが受けてくれたのでノーカン、じゃあダメ?」
「全く……次こそはもう勘弁してください、よ!!」

 エルザに少し愚痴を漏らしながら、遥翔はその鋼の拳でヴァッフェントレーガーを殴り飛ばし、大きく距離を離した。
 彼もまたトレーズによるジャミング装備、そしてラモートによる幻術障壁によりその身を隠されていた。更にラモートの術により水中でも長時間潜めるように覆い、ミストラルのすぐ脇に潜んでいたのだ。エルザが戦略上予想した、ダッチマン号との位置取り上、ヴァッフェントレーガーが高確率で移動する地点のすぐ下に。
つまり、本命は隠していたエルザのミストラルではなく、隠していたのがミストラルのみだけと思わせての、遥翔のラグナライザーだったのだ。

 とはいえそれはヴァッフェントレーガーが接近戦を選んでの話。遠距離なら全てが台無しだったが、魔法陣をトレーズが封じた事、そして――

「上手く行ったようだな」
「ええ。当艦が突撃させ、『わざと』吸収させた月の石。あれには前もって、ミスター・ヘマタイトとミス・アンゲルスが其々『処理』をしてあったもの」
「私が月の性質の一つである狂気を使い、仕込んだ月の石を通じて狂わせて行きました。少し前に別の所でアルテミスが降りてきて影響が及んでいたのも助かりましたね」
「そして自分が仕込んだ石と魔石をリンクさせていて、奴の魔力を濁らせていっていた。冷静ならばそれは理解できただろうが」
「狂気で徐々に侵蝕していたので、それも分からず、短絡的直接攻撃に走るしか無かったという事ですね。私もそうなるよう狂気の方向性を調整しておきましたし」

 ダッチマン号組3名の仕込み。これがヴァッフェントレーガーの選択肢を狭め、予想通りの地点に誘導させることに成功し、遥翔の一撃がクリーンヒットしたのだ。

【ガ、ガァァアアアア!! ガアアアアアアア!!!】
「あ、もう狂気も限界のようですね」
「そうだな。もういいだろう。では、せーのだ」
「はい、せーの」

 空中で狂気のまま叫ぶヴァッフェントレーガーを見て、トレーズとラモートがヴァッフェントレーガーにわざと吸収させた月の石を遠隔崩壊させ、その力を削ぎ落した。

【ギィイイイイ!!ガアアアアアアアアアアア!!!!】

 だがヴァフェントレーガーはそれを意に介さず、更に崩壊を強めて猛スピードで遥翔に突っ込もうとする。流石にかなりの代償を用いたもの。狂気に陥っているとはいえ、それは回避も困難な一撃の筈。



「見苦しい、喧しい、聞くに耐えん。欲満ちぬ生死の狭間で、永久に苦しむがいい。【海の墓場(デイヴィ・ジョーンズ・ロッカー)」




 次の瞬間、周囲の風景が一変した。

 それは白色のみ広がる無限の荒野。欲を満たさず、満たす欲を許さぬ、永遠永劫の牢獄の如き精神の世界。
 そこにダッチマン号、ミストラルは空に浮くように存在し、遥翔も飛翔状態で待機。だが、ヴァッフェントレーガーだけが手足や翼、首を荒野の大地に埋められ、動けずもがいていた。

【ガ、ガアアアアアア!?】
「こ、これは一体?」
「何がどうなってんだ?」
「ふふふふ!これこそ私の【海の墓場(デイヴィ・ジョーンズ・ロッカー)】! 詳細は省きますが、要は相手の欲を満たさない絶対の領域! これでもう奴は動きまくって攻撃なんていう欲は満たせません! さあ、今です!」
「あ、ああ、わかった!」
(さっき、マリアさんのようなそうでないような声が聞こえたような……気のせい?)

 メレディノポリス組にマリアが説明し、エルザが気にかかる顔をし、説明が難しいからか事情を知ってるダッチマン号組が沈黙する中、遥翔は空中で焔黒剣レーヴァテインに炎を充填し、そして埋もれたヴァッフェントレーガー向けて突っ込んでいく。既にここまで使った霊視により、埋もれていてもその身体の月の石の位置は完全に見えている。

「崩竜。お前は未来をおぞましいと言ったな。違う。お前は嫌悪したんじゃない、恐れたんだよ、どうなるかわからない未来を。俺達はあんたのように定まらない未来に怯えたりはしない。
 この先に待つ未来が例え、いつか滅びるとしても希望を持って現在を生きる。それがわからないあんたは所詮過去でしかなく、現在にとって代わる事なんてできはしないんだ」

月の石の反応を探知した胸元付近。そこ目掛けて遥翔は突っ込むと同時に、黒焔剣を渾身の力で突き刺した。

【ギ、グアアアアアアア!】

狂気と苦痛の叫び声と共に、月の石の破壊、体内を駆け巡る炎、そして乱されていた自身の魔力の暴走反応が全て連鎖しあい、崩竜の体を爆発と炎が包み込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マールシア・マーフィー
さあ、決戦だ
まずは月の魔力を込めた残像分身を幾つか放ち、ジークの結界の外に爆撃属性のシャボンを多重詠唱して展開する
これは所謂ブースター

ドリトルに騎乗して移動するけど何分2人乗りだし崩壊の炎は危険だ
緊急時にシャボンを爆破させ、その爆風で飛んで逃げよう
ジークの結界を信じてるからこそ出来る無茶さ

そして【海王の息吹き】で周りの水を竜巻に!
これは奴を封じる檻にして奴への道
それに巻き上げてるのは崩壊水
崩壊の力には崩壊の力
崩壊水なら奴の炎を止められるかも
しかもUCを解除すれば大質量の水が奴を襲う

崩竜
君の最も恐れてる事を当ててあげよう
それは、君自身の崩壊だ
だって君の主張も魔力も、全部借り物

君には、何もないから


ジーク・エヴァン
今回もドリトルにマールシアと騎乗して移動だ
ごめんドリトル
それから俺達の周りに結界術を多重詠唱して展開
しかし爆風加速って…
マールシアも無茶するなぁ

マールシアが竜巻で崩壊水を吸い上げて奴への道を作ってくれた
ここからは俺がやる


グラム…お前も応えてくれるのか

これが、新しい力
【人剣一体・滅竜戦装】ッ!

奴の高機動形態に対抗しての高速戦闘だ
その動き、狂竜で学んでいる!(戦闘知識、空中戦)
奴の攻撃は盾の結界術で軌道を反らし、カウンターを叩き込む!

マールシアの言う通りだ
お前は空っぽだ
帝竜達のような狂気も惜しむ過去も絶対さも、何もない

俺達は空っぽな過去(おまえ)を越えて、「明日」を掴む!(部位破壊、生命力吸収)



●過去を越えて未来へ

【ハァ……ハァ……】

 無限氾濫瀑布の空を、胸に大穴を開け今や全身に崩壊が広がっているヴァッフェントレーガーが力なく羽ばたき飛翔していた。少し前の大爆発はヴァッフェントレーガーのみならず、彼を拘束していた精神世界をも破壊した。その結果、それに乗じて彼は拘束から脱し周囲の猟兵からも逃げおおせたのだ。
 生き汚い、と簡単に言える話ではある。だが、彼が逃げに徹したのも理由がある。

【あと僅かだ……あと僅かで、崩壊の水は雨となって降り注ぐ。それまで生き延びれば、我の勝ちだ……】

 彼と精神汚染水は本体とアンテナのような関係にある。彼が存在し続ければ崩壊汚染水も存在し続ける。そしてそれが大陸の端に到達し、人間たちの頭上から降り注ぐまであともう少しだと彼は感じることができた。故に屈辱だとしても撤退に徹する。そうすれば、奴らが守ろうとしたものは崩壊できる。それこそがもう死は免れないだろうと悟ったヴァッフェントレーガーの、最後の足掻きであり卑屈な目的だった。

「させるか。お前は逃がしはしない」

 だが、そうはさせないと立ちはだかるのもまた猟兵であった。
 彼の前、空に浮かぶシロイルカのドリトル、そしてその背に乗った魔術師マールシア・マーフィー(海と自由を愛する海のエルフの少女・f27297)と、騎士ジーク・エヴァン(竜に故郷を滅ぼされた少年・f27128)の二人がそこにいた。

「周囲にいるのはやっぱり僕だちだけみたい」
「ああ。もう時間が無い。俺達が、トドメを刺す!」

 周囲の探知をしたマールシアの言葉に、ジークが剣を構えて叫んだ。今、自分達に地上の人々の未来が本当に懸かった事を認識して。

【小賢しい……! 我の邪魔をするな、おぞましい生命共。残りの月の石、我に最後の力を齎せ……!!】

 ヴァッフェントレーガーもまた、彼らさえ凌げば目的を果たせると認識し、僅かとなった体内の月の石からの魔力を最大開放する。自身の寿命が縮まっていくことなどは気にもせず。そして彼の周囲に魔法陣が大量展開する。

「弾幕炎か! ジーク!」
「ああ!結界術、展開!!」

 ドリトルの周りにジークが結界術を張る。これで炎への対策はできた、と思ったその時だった。
 炎が発射される直前、ヴァッフェントレーガーが消えた。

「何!?」
「! ジーク、下だ!!」

 マールシアの声にジークが下を見ると、そこには体を更に崩壊させながら牙を剥いて襲い掛かってくるヴァッフェントレーガーがいた。そして更にその周囲から炎も連続発射されてくる。

「嘘だろ!? これ、まさか……『ユーベルコードの同時使用』!?」

 月の魔力による後先を考えない超強化。それによりヴァッフェントレーガーは弾幕炎の攻撃と高速移動による近接攻撃を同時に使用するという離れ業をやってのけたのだ。
 喰らいつかんとする牙。そして周囲の簡単に逃げられるところには炎が既に迫っている。つまり、逃げ場を封じられた。そして当然ヴァッフェントレーガーの牙もまた強化された崩壊の力が備わっている。結界術すら一瞬で崩壊できかねない程の。

【終わりだ!!】

 ヴァッフェントレーガーは勝利を確信し、喰らいつこうとする。

「そうはさせない!」

 そう言うと、マールシアが何かを念じると、ヴァッフェントレーガーとジークたちの間に何かが移動してきた。それは、いつの間にか空中に漂っていたシャボン玉。そしてそれらにヴァッフェントレーガーが迫った瞬間。

【グアアッ!!】

 シャボン玉が爆発し、ヴァッフェントレーガーの鼻っ面にダメージを与えた。そして更に、その爆発はジークらの周りの結界術に当たり、爆破の勢いで結界術ごと彼らを大きく移動させる。その結果、ギリギリで炎の範囲内から脱出した彼らの前で、炎が空振りのまま通り過ぎ、またはぶつかり爆発していった。

「ふう」
「しかし爆風加速って……マールシアも無茶するなぁ」
「そうしなくちゃ避けられなかったからね。まさかあそこまでやられるとは思わなかったけど、結果オーライだ」

 マールシアは続けて月の魔力を込めた残像分身を作り、牽制としてヴァッフェントレーガーに放った。ヴァッフェントレーガーも再び魔法陣を展開し、面攻撃の炎を発射していく。分身はヴァッフェントレーガーが怯んでいる間に作り、更に全てに月の魔力があるので、ヴァッフェントレーガーには区別がつかない。故に、全てを狙って炎を発射していくしかない。

「そしてそれなら、こうしてユーベルコードを使う隙が出来るって事さ。大海を統べし海王よ。我が祈りに応え、天地を呑み込むその息吹きを、ここに顕現させたまえ。【海王の息吹き(リバイアサン・ブラスト)】!」

 マールシアが海王への祈りを捧げると、彼女らの下にある瀑布から渦巻きが発生したかと思えば、そこから周囲の水を巻き上げ、竜巻となり空中へと舞い上がっていく。そしてその場所は、ヴァッフェントレーガーの周辺の魔法陣を過たず狙っていた。

【何!?】

 ヴァッフェントレーガーが気付いた時にはもう遅く、水の竜巻は周囲の魔法陣を全てのみ込み、発射された炎もまた水によって消されていく。本来なら、ヴァッフェントレーガーの炎は水をも崩壊させ貫く筈。だが、この水は当然ながら、ヴァッフェントレーガー自身がばら撒いた崩壊汚染水。しかも今はマールシアの制御下にある。更に言えば水中で放っていた時よりヴァッフェントレーガーの持つ石が減っていた事により、水の崩壊力の方が強くなっていたのだ。よって、炎も、そして魔法陣も水の崩壊によって崩れ去っていく。

「どうだい崩竜。君自身の振り撒いた災いにしてやられた気分は。ある世界ではこれを『因果応報』って言うんだよ」
【グ、グ……!】

 苦々しそうな顔になったヴァッフェントレーガーに、マールシアは更に畳み込むことにした。この美しい水の景色を穢し、人々を滅ぼそうとした奴には言ってやらなければ気が済まなかった。

「崩竜。君の最も恐れてる事を当ててあげよう。それは未来じゃない。それは、君自身の崩壊だ。だから君は先に滅ぼそうとした。そして、だからこそ自分が安全な場所にいて脅かされない卑怯な方法で人々を滅ぼそうとしたんだ」
【だ、黙れ……! 我は、我は恐れてなど!! 我はお前達おぞましき生命と未来を】
「だって君の主張も魔力も、全部借り物。主張は女禍に同調しただけ。魔力は月の石という格好の物ができたからそれを回収して使っていただけだ。『崩壊』の力なんて、壊すだけで何も残しはしない。空虚でむなしいだけの能力だ。むしろそんな能力を使えるだなんて、そしてそこまで体を犠牲にする事が出来るのは――キミには、何もないからだ」

 犠牲とは簡単に払えるものではない。大事な物を捨てるのにはどこかでリミッターがかかる。だが、今やヴァッフェントレーガーは身体のほとんどが崩れ始め、月の石も限界に近い。人々を滅ぼす為の生存の為にそこまで犠牲に出来てしまう。それこそが、マールシアがそれを確信した理由。簡単に捨てられるものは、何も大事な物がない、と。

【だ、だ、黙れええええええ!!!】

 激昂して襲い掛かろうとしたヴァフェントレーガーを、囲むように水竜巻が迫って来た。頭を真っ白にしていたヴァッフェントレーガーに避けるすべはなく、水の直撃を受ける。ただの水ではなく、自身の作った崩壊汚染水。そして先述の通り、月の石を破壊され続けたヴァッフェントレーガーに崩壊への抵抗力は弱くなっている。

【ギ、ガアアアアアア!!!】

 更に自身の崩壊を強めるヴァッフェントレーガー。もはや哀れにも思える姿。だが、それでも彼はまだ生きている。そして生きている限り、崩壊汚染水も残り続ける。

「く、しぶとい! まずい、予想限界時間まで後数分だ……!」
「大丈夫だ。後は俺がやる」
「ってジーク……何それ、グラムが!」

 マールシアが振り向くと、そこには今まで見た事の無い輝きを放つ魔剣グラムを構えたジークがいた。グラムとは、竜の血を吸い、竜の骨すら切り裂くとされる封印された魔剣。今までもジークと共に竜を相手にしたその剣が、信じられない程の輝きを放っていた。

「少し吹っ切れたから、応えてくれたのかな……グラムが俺の事を認めてくれたのかもしれないし、帝竜と戦った影響が今頃出たのかもしれない……だがこれだけは分かる。グラムの封印、それが今……!」

 そしてジークはグラムを構えたまま、ドリトルの背から跳躍した。ジーク単独では飛行手段なんて無い筈、とマールシアが背筋を寒くした次の瞬間。


「来たれ。怒りを剣に、決意を鎧に、希望を盾とし、我は滅竜の英雄とならん……!人剣一体!ジークフリートッ!」


 グラムの光が強まり、ジークをも包み込む。その輝きは周囲を照らし、そしてやがて消えていく。その時見えた姿は。

「ジ、ジーク、それ……」
「ああ。これがグラムがくれた新しい力。【人剣一体・滅竜戦装(ジンケンイッタイ・ジークフリート)】ッ!」

 漆黒の鎧、その背中から生えた同じく漆黒の竜翼。ジークの髪が白銀の長髪に変わり、瞳も金眼へと変化していた。そしてその手には魔剣グラムが握られていた。その姿は翼により空を羽搏き、ヴァッフェントレーガーを見据えて滞空していた。

【滅竜のグラムだと……!? バカな、貴様のような小僧が……!!】

 グラムの事を知っていたらしいヴァッフェントレーガーがその力を扱っているジークに怯んだ中、ジークは静かに語る。

「マールシアの言う通りだ。お前は空っぽだ。自分以外壊す力なんて、あまりに空しい力だよ」
【な……な、舐めるな小僧がああああああ!!!】

 激昂し、更なる高速化により水流を強引に突破したヴァッフェントレーガーがジークに迫り、崩壊の爪を突き出す。まともに受ければただではすまない。
 だがジークには経験があった。むしろこれよりもずっと速く、ずっと狂気に満ち、しかしそれでも精密と計算の入り混じった狂気の竜。今更ながら思った。敵対はしたが、本当に奴は凄い存在だった、と。

「その動き、狂竜で学んでいる!」
【なっ!?」

 ジークは部分的に結界を自身の盾に張り、そして更に限定的な加速によりヴァッフェントレーガーの懐に入る。そして、ヴァッフェントレーガーの腕の内側に結界を張った盾を叩きつけ、力を逸らすように対応した。まともには受けず、力を受け流す『計算』の戦い方。
 それはまさに、狂気と暴力の中に学習と計算、研究が入り混じっていたあの狂竜のようにマールシアには見えた。

(帝竜……敵ではあったけど、彼らも彼らなりに、ジークの経験として、今も……)

「ほらな。帝竜達のような狂気も惜しむ過去も絶対さも、何もない。この世界を犠牲にしようとしたのは許せないが、ヴァルギリオスにも目指す先があった。奴のカタストロフと、お前の無差別な先の無い崩壊を、一緒にするな」
【グッ、ガ、ガアアアアアアアアア!!!】

 怒りのまま、ジークに向けて喰らいつこうとするヴァッフェントレーガー。それを見ながら、ジークは冷静に剣を構えた。グラムが更に輝き、そしてジークの金眼が敵を捉える。


「俺がお前を倒すのは、復讐の為じゃない。俺は……いや、俺達は空っぽな過去(おまえ)を越えて、「明日」を掴む!」


 グラムを振り下ろしての、一閃。それだけで、ヴァッフェントレーガーの動きは止まった。
 刹那、ヴァッフェントレーガーの身体が真っ二つに分かれていく。その身体の最後の月の石も、同じく切り裂かれる。

 そして、ヴァッフェントレーガーの首もまた同時に切り裂かれていて、先に首が落下していく。落ちていく先は――言うまでもない。自分が穢した、崩壊の水の中。

【ガアアアアアアアアアア!!! キ、キエル、ワレガ、ホウカイ、スル……!?】

 月の石ももう無い身体にもうそれに抗える術はない。先陣を切ったドラゴニアンの予言通り、彼は自らの力により最後に自分を崩壊させていく。それはまさに彼に相応しい末路だった。


【……明日、ナド、アル、モノカ……コノ世界ノ平穏、ナド、長く、モタナイ】
「…………」
【ヤガテ、現れる……あるいは、訪れるダロウ……あら、あら、たな……フォーミューー】

 言い終わる前に、ヴァッフェントレーガーの頭部は崩壊汚染水の中に崩れて消えていった。程なく、胴体もまた空中にて崩れて消えていく。


「…………マールシア。時間は?」
「うん、オッケー。ギリギリ間に合ったよ。ほら」

 マールシアが持っていた適当な石を水に向けて放り込んだ。石は崩れることなく、そのまま漂っていた。崩壊汚染水は、ヴァッフェントレーガーの死と同時に元の水に戻ったのは明らかだった。

「そうか、良かった……」
「うん、そうだね。これでこの瀑布も、地上も、大陸も守れたね……」

 それでも重い表情のマールシア。ヴァッフェントレーガーの最後の言葉。それが苦し紛れの戯言と言いきれれば良かった。だが、それは――

「大丈夫さ」

 その肩に、ジークフリート状態のジークがぽんと手を置いた。

「例えこの先何が起こっても……俺達が、この世界も、そして他の世界も、その明日を守る、だろ?」
「……うん、そうだね!」

 マールシアも笑顔に顔を戻し、ジークと共に広がる水平線を見つけた。守り抜いた美しい景色に、輝かしい太陽の光がキラキラと反射していた。



 依頼結果
  激浪なる精霊馬の群れ、撃破。
  崩竜・ヴァッフェントレーガー、撃破。
  地上・群竜大陸他領土、影響無し。
  無限氾濫瀑布、岩の崩壊などの影響はあったが、生物の生態環境への変化は無し。
  月の石、各自取得分はそのまま配布。余剰分は希望者への譲渡。最終余剰分は無限氾濫瀑布領主へと移譲。

  報告終了。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月07日


挿絵イラスト