パリピ島の宴~バカンスは二つ名持ちとともに
● パリピ島の名物といえば
「皆様、夏です! サマーバケーションに参りましょう!」
にっこりと微笑んだアカネ・リアーブル(とびはねうさぎ・f05355)は、グリードオーシャンの一角に浮かぶ島を指差した。
「目的地はここ、パリピ島です。ここのメガリスは回収済みで、コンキスタドール達の姿も予知はされておりません。浜辺で楽しく遊ぶにはもってこいな島なのです」
白い砂浜が広がる青い海はすぐに深くなっていて、スキューバダイビングも楽しめる。珍しい深海魚や面白い海藻が浅い海まで上がってきて、観察できるかも知れない。
沖合に船を浮かべれば、美味しい魚や珍しいイカが釣れることだろう。
以前ダンスステージになっていた場所はそのまま残り、遠浅の海岸になっているため水遊びや潮干狩りにはもってこいだ。
そして、砂浜には蟹がいる。いろんな種類の蟹がいるが、そのどれもが例外なく美味しい。
遊びながら捕まえて、新鮮魚介のバーベキューを楽しむのはもはやお約束だ。準備は万端整えておくので何の心配もない。
そこまで案内したアカネは、何でも無いことのように付け加えた。
「この島に生息する生き物は皆、二つ名を持っております。蟹も深海魚も海藻もお魚も。二つ名の通りの能力と外見をしておりますので、捕まえる際はご注意くださいませ」
二つ名持ちの蟹。どこかで聞いたことがあるフレーズだ。
ご機嫌で案内するアカネの姿に、猟兵達は一抹の不安を覚える。
ここはキマイラフューチャーから落ちてきた島。真のパリピにしか封印が解けないと言われていたパリピメガリスが眠っていたのだ。ただで済むはずがない。
そんな不安を口にする猟兵に、アカネは神妙な表情で頷いた。
「もちろん。ここはパリピメガリスが眠っていた島です。パリピでカオスな呪いは健在です。確たる意思を持たない限り、例外なくカオスな結果に終わることでしょう」
やはりか! 頭を抱える猟兵に、アカネはにっこり微笑んだ。
「今回はアカネもご一緒させてくださいませ。パリピ島のバカンス、一緒に楽しみましょう!」
アカネはにっこり微笑むと、グリモアを発動させた。
三ノ木咲紀
オープニングを御覧くださいまして、ありがとうございます。
三ノ木咲紀です。
今回はグリードオーシャンの夏休みシナリオです。
舞台はパリピ島で、無人島ですがメガリスは回収済みでコンキスタドールの気配はありません。
パリピ島の宴~漁と料理と大宴会!
https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=22585
読まなくても問題ありません。
このシナリオはカオスシナリオです。話が盛り上がるためならば、プレイングの拡大解釈や大幅なアドリブやマスタリングが入る可能性があります。
プレイングの冒頭で、以下の記号でお知らせ下さいませ。
◎ ……カオス上等! どんど来い!
○ ……ほどほどカオス希望。いつも通りプレイングに沿うよ!
△ ……カオスとか嫌だから、アドリブも無しで!
特に記載が無ければ○を選択したとさせていただきます。
このシナリオは既に猟兵達によってオブリビオンから解放された島となります。
このシナリオは【日常】の章のみでオブリビオンとの戦闘が発生しないため、獲得EXP・WPが少なめとなります。
またお約束ですが、未成年者の飲酒喫煙プレイングや公序良俗に反する行為や迷惑行為、その他「それはダメだろう」と独断で判断したプレイングはマスタリングさせていただきます。
担当のアカネは、お声掛けくだされば登場します。無ければ登場しません。画面外でエプロンしてバーベキューの支度をしています。
また、この島の生物は皆二つ名を持っています。
ご指定があればその二つ名を、無ければこちらで決めさせていただきます。
○△を選ばれた場合は、普通で無難な二つ名になります。
運を天に任せてダイスを振るぜ! というお方は、ダイス表をご用意しますのでよろしければお使い下さい。
URLは後ほど。
プレイングは7/23(木)朝8:31~7/25(土)午前中くらいまでにお寄せ下さい。その後はロスタイムです。
期間外のプレイングは流れる可能性がありますので、よろしくお願いします。
それでは、素敵でカオスなひとときを。
第1章 日常
『猟兵達の夏休み』
|
POW : 海で思いっきり遊ぶ
SPD : 釣りや素潜りを楽しむ
WIZ : 砂浜でセンスを発揮する
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
※ 二つ名ボードの新作ができました。
https://tw6.jp/club/thread?thread_id=49090&mode=last50
こちらを使ってもいいですし、前回のダイスボードでも構いません。
また、ここにはないオリジナルの二つ名も大歓迎です。
乱獅子・梓
【綾(f02235)と】◎
黒系の水着姿(詳細お任せ
以前別の島では釣りをして獲った魚を食ったが
更にグレードアップして
素潜りなんてどうだろうか
俺は綾のような便利なUCは無いが
心強い相方、零が居る!
零を成竜に変身させ、その背に乗って海中を移動
島民から借りてきた銛を使って
地道に魚貝を捕っていくぞ
って何だこりゃ!?
やたらデカいカジキマグロのような魚に度肝を抜かれる
初めて見た筈なのに何で二つ名知ってるんだろうか
まぁ細かいことはともかく
俺達に出会ってしまったのが運の尽きだな
大人しく食料になってもらうぞ!
ガチバトル繰り広げる(中略
豪勢なバーベキューを堪能
もちろんお前の分もあるぞ
今回出番の無かった焔にも振る舞う
灰神楽・綾
【梓(f25851)と】◎
黒系の水着姿(詳細お任せ
素潜り漁かぁ。なかなかワイルドだね
でも釣りでは捕れないような魚介類も
見つけられそうだし良いかもね
海に潜ったらUC使用し
ナイフに「水」を透過させる性質を与える
こうすれば水の抵抗を受けなくなるから
あとはいつもの要領で狙いを定めて
ナイフ投げで獲物を狩っていくよ
すると目の前にやたら大きい魚
うわぁモンスターみたい
これは…※二つ名お任せ※の巨大カジキか
こいつを捕ったら今日の夕飯には困らなさそうだね
楽しそうな顔でナイフを構え
梓との見事な連携プレーで
カジキをゲットしましたとさ
いやぁひと仕事終えたあとのご飯は美味しいね
好みでスパイスを増し増しにしつつ食べる
● 素潜り漁はパリピの海で
どこまでも深くて透明で美しい海に、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は目を輝かせた。
釣りでは味わえない水圧と、大自然の雄大さを感じさせる海流のうねり。全身で感じるパリピ島の海は、海上で感じた海風とはまた違った感動で。
同じことを思ったのだろう。隣を泳ぐ灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)もまた、目を輝かせながら泳ぐ魚たちを指差した。
『凄いな。ダイビングと漁をいっぺんに楽しむなんて、なかなかできないよね』
『だろ?』
少し得意げに笑う梓に、綾はニコニコしながらおもむろに腕を振るう。黒地に紅い蝶を染め抜いたラッシュガードに包まれた腕は、ノールックで泳ぐ魚を仕留める。
Jackに括り付けた紐を手繰り寄せると、捕らえたのはアジで。こんな小さな魚をよくもまああんな風に捕まえられるなと感心した梓に、捕らえた魚を腰の籠に入れる綾はナイフを掲げた。
『ユーベルコードで水を透過するようにしてあるからね。水の抵抗ってやつが無いのさ』
『それにしたって凄いな! よし、俺も負けてられねぇぜ!』
対抗意識を掻き立てられた梓は、借りた銛を手に魚群に向けて泳ぎ出す。梓のように便利なユーベルコードは無いが、代わりに心強い相方がいた。
『来い、零! 魚を採るぞ!』
梓の呼び声に応えて現れた氷竜の零は、成竜の姿になると梓を背中に乗せる。零の背中を掴み、魚を追う。そっと近づき闇に紛れながら銛を突き出せば、面白いように魚が採れた。だが今の所、UDCアースで見かける海の魚とは大して違いがないように見えて正直拍子抜けしてしまう。
『パリピ島って聞いたからどんな島かと思ったけど、割と普通だな』
『そうだね。今のところは』
梓の声に綾が頷いた時、魚たちが一斉に沖へと泳ぎ去った。
あんなにたくさんいた魚たちは蜘蛛の子を散らすようにいなくなる。さすがに追いつけず見送った梓は、視界の端に見えた光に足元を見下ろした。
闇色にも見えるディープブルーの水底に、光が見える。
一つ、二つと灯る光はその数をどんどん増やしていき、ついには見渡す限りの海底が光に埋め尽くされた。
まるで星空のように見える光景に、梓は思わず感嘆の息を吐く。
『綺麗だな』
『まるで虚海みたいだね』
どこかメタなことを言う綾の言葉は聞かなかったことにしながらも、梓はしばし海底に見惚れる。その時。
『危ない!』
綾の警告に、梓は反射的に身を翻した。まるで弾丸のように飛び出してきた何かが梓の脇をかすめると、海上でジャンプする。そのまま海中に戻った魚はジャンプするほどのスピードは出ていない。銛を振るった梓は、仕留めた魚をまじまじと見つめた。
飛び出すような勢いのギョロッとした目玉が、深海魚の身体の側面でこちらを睨んでいる。魚には鱗がついていないが、皮膚はまるでタキシードでも着ているかのような色合いの模様があった。
『な、なんだ? ギョロ目の深海魚?』
『パリピウオって奴だね。見た目はグロテスクだけどとても美味しいらしい。……気をつけて!』
事前に情報を得ていたのだろう。余裕の笑みさえ浮かべる綾は、次々と飛び出してくるパリピウオ達のジャンプを避けている。慌てた梓も深海から猛突進してくるパリピウオ達の攻撃を避けながらも銛を振るった。
『知ってたのかよ!』
『情報収集は基本だからね。どこぞのフェアリーが酷い目に遭ったって惚気けてたよ』
『酷い目に遭ったのか惚気けたのかどっちだよ!』
ツッコミを入れつつ、梓は銛を振るった。知ってて教えなかった綾はさておき、この魚が旨いのならば採るのが素潜り漁というものだ。
綾も同じことを思ったのだろう。ダーツの要領で深海魚を採る綾は、密集しながらジャンプする魚に容赦なくナイフを振るっては二、三匹まとめて捕獲する。
ここで負けては男がすたる。夢中になって深海魚ハントを繰り返した梓は、ふいに静かになった海中に振るう銛を止めた。
● 海中にもドラマがありまして
静かになった海中に、綾は油断なく得物を持ち替えた。今まで盛んにジャンプしていた魚たちが、今は息を潜めている。海面近くに捕食者がいることに気付いたのかも知れない。
気配を探ってしばし。ふいに海底の星々が真っ赤に染まった。
今まで真っ白だった星ーー深海魚達の目は今、警戒の色に染まっている。黒に近い青に無数に浮かぶ赤い目は、紛れもなく血と戦いを想起させて。
これは楽しい漁になりそうだ。自然気持ちが沸き立った時、梓の警告が響いた。
『綾! あいつ!』
端的な声に海底を見ると、一匹の魚が猛突進してくるのが見えた。
赤と青と白に塗り分けられた、ヒーローのボディスーツを思わせる身体をくねらせながら、カジキマグロが海面近くに飛び出してくる。細い鋸のような角も勇ましく真っ直ぐ駆け上がってくる姿に、綾は楽しそうな笑みを浮かべた。
ほぼ無抵抗に採れていたパリピウオじゃない。なかなか楽しめそうな強者の出現は、綾の闘争本能をいやがおうにも掻き立てる。
迎撃体制を取った綾はしかし、スーパーヒーローのカジキマグロの攻撃を受けなかった。スーパーヒーローは二人には構わず突き進むと、何もない海面に鋸を突き立てる。
呻くような声が海水を震わせる。スーパーヒーローの攻撃に姿を現したのは、ダークマターを纏ったカジキマグロだった。
力強い巨体をダークマターで隠していたのだろう。筋肉質なカジキマグロはダメージを受けた様子もなく鋸をこちらに向けると、綾に猛突進を仕掛けてきた。
辛うじて回避した綾は、海中で体勢を整えるダークマターにナイフを構える。どうやらスーパーヒーローの仲間に思われたらしい。そしてあのダークマターは、攻撃を無効化してしまうようだった。
面白い。カジキマグロごときが綾を食べようだなんて、1億年早い。
楽しそうに戦闘態勢を整える綾の隣で、梓が驚いた声を上げた。
『って何だこりゃ!?』
『さしずめ【謎が謎呼ぶダークマターを纏いし力持ち】ってところかな? こっちは【逃げ足だけは超早いスーパーヒーロー】』
『へえ。こいつらが二つ名持ちの魚介類って訳な。……って、初めて見た筈なのに何で二つ名知ってるんだ? フェアリー情報か?』
『さてね。……来るよ!』
綾の警告に、梓が即応する。再び力任せに突進してきたダークマターは、巨大な口を開けると飲み込まん勢いで二人に向けて鋭い牙を向けた。
二人は一瞬目を見交わす。ナイフをFerrum Sanguisに持ち替えた綾は、開けられた口に向けて解き放った。数秒後に無数の蝶に変わったFerrum Sanguisは、口の中にもうっすらと張られていたダークマターをかき消していく。
喉の奥に感じる激痛に怯んだダークマターに、梓が銛を手にランスチャージを仕掛けた。
『これが連携だ! 大人しく食料になってもらうぞ!』
零の推進力で突き出される銛の一撃に、ダークマターを纏いしカジキマグロがぐったりと沈黙する。あのダークマターは、大変コクがあってソースにすると絶品らしい。
『やりぃ! カジキマグロゲット!』
『今日の夕飯には困らなさそうだね』
水中でハイタッチした二人は、同時にスーパーヒーローに向き合う。もう一匹捕らえてもいいが、二人の戦闘を見ていたスーパーヒーローは身体中から冷や汗を流したかのように震え上がると一目散に海底に泳ぎ去った。
『さすがは逃げ足だけは超早いスーパーヒーロー』
『まあ、これだけあれば夕飯には十分すぎるから』
綾が肩を竦めた時、警戒色だったパリピウオの目が一斉に白く変わる。あのスーパーヒーローは、パリピウオ達の用心棒だったのかも知れない。再びジャンプを始めるパリピウオたちを今度は見送った綾は、零の背中にダークマターのカジキマグロをくくりつけると梓の後ろに騎乗する。
二人と一匹を背中に載せた零は、ジャンプするパリピウオ達を避けながら岸へと泳いでいった。
● 生態系を守った勇者たち
「ウエエエエェェエエイ!」
「ウエエエエエエエエェェイ!」
口々にパリピな叫び声を上げる深海魚たちが、海面に出ては海中へと戻る。そんな光景を遠くに見た炎竜【焔(ホムラ)】が、興味津々にカジキマグロのステーキを覗き込んでは顔を上げる。
そんな姿に手を伸ばして頭を撫でてやった梓は、焼きたてのカジキマグロステーキにソースを掛けるとテーブルに置いた。同じお皿を並べて3つ。
「もちろん、お前の分もあるからな。零もお疲れ様。颯はまた今度頼むな」
嬉しそうな焔に目を細めた梓は、豪勢な食卓を眺めた。
浅い海で採れた札束海藻のサラダやエビやイカ、ホタテやギョロ目の深海魚のクリームグラタンにカジキマグロの刺し身やタタキなどなどなど。
所狭しと並べられたごちそうに目を輝かせた時、ふいに海のほうが騒がしくなった。
いつの間にかBGMと化していた独特の鳴き声(?)が、一つにまとまる。一斉に声を上げたギョロ目の深海魚達が海中から飛び出すと、二つに分かれてハート型のアーチを描きながら大きくジャンプする。
ハートの外側を沿うように、ひときわ大きなギョロ目の深海魚がジャンプしてきた。
王子様らしい白く凛々しい姿の深海魚と、お姫様らしいウエディングドレスのようなヒレをなびかせた深海魚がハートの中央でキスを交わす。
方向を変えた王子様とお姫様は、手に手を取り合うと沈む夕日を背に海へと戻る。
さっき見たスーパーヒーローのカジキマグロも、二匹を祝福するように海面をジャンプしている。その様子に、一つの仮説が飛び出した。
「ええと。あのスーパーヒーローはさしずめ、王子様の護衛だったのかな?」
「どうだろう。この海は不思議がいっぱいだ」
笑いあった綾は、梓に向けてグラスを掲げる。
乾杯と共に始まった二人の宴を盛り上げるように、深海魚たちは夜通しジャンプをし続けたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
栗花落・澪
【金蓮花】【ダイス:赤3青0】◎
綺麗な海ー!泳ご泳ご!
直接でも大丈夫かな?
折角人魚になれるんだし
あれ、見せた事ないっけ?
ちょっと待っててね
海中に向かって歩きながら【指定UC】
下半身を魚に変化
特性のお陰で呼吸も出来る
こっちだよ、クロウさん
後ろ向きに泳ぎながら手を引いて案内
魚達の集まる場所へ
珍しいお魚がいっぱいだぁ
あっ、あの子可愛いー!
もふ魚を見つけたらそっと触りときめいたり
あまりの可愛さに夢中で忘れているのです
悪魔召喚士の異名を
海の悪魔といえばつまりタコでは?
みゃーっ!クロウさんー!
取ってぇ…手に、タコ…とってぇ…(涙目
ぴゃーあぁー!!(救助が来るまで叫ぶ
うにょうにょは苦手なんだよぉ…
杜鬼・クロウ
【金蓮花】◎
ダイス赤0青4
水着は全身参照
澪、あんまはしゃいでっと転ぶぞ(兄貴風吹かす
しかし海綺麗だなァ
海ン中潜れるすきゅーばーだいびんぐってヤツをヤろうぜ!
エッ人魚?お前が?
澪の人魚姿に驚く
人魚姫の童話の様に澪と海中散策
綺麗な魚達を観察
すると明らかに異質な謎魚発見
人魚姿のお前も悪くねェな
お、厨二心擽る生物だなァ!(目爛々
闇のオーラを感じるし顔見えねェが
なら俺は光のオーラで対抗だな、来いよ(捕獲する気満々
澪!?
タコ…
何か、アレだな
すぐ救助せず暫く様子見
鳴き声可愛…面白いから
でも兄貴なので助ける
蛸へ蹴りかます
澪、それでも男か!
ちったァ気合い見せろ!
ったく、世話が焼けるぜ
最後はBBQで美味しくぺろり
● 人魚姫と泳ぐ海
目の前に広がる青い水平線に、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は感激したように駆け出した。
穏やかな波が寄せては返し、夏の日差しは眩しいが湿度が低くて不快な感じはしない。純白の砂浜が足裏に熱く心地よい。
海風を受けながら波打ち際ではしゃいた澪は、砂浜にパラソルを立てていた杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)に大きく手を振った。
「綺麗な海ー! 泳ご泳ご!」
「澪、あんまはしゃいでっと転ぶぞ」
「だーいじょうぶ……わっと!」
「澪!」
はしゃいだ声を上げていた澪の姿が、ふいに消える。慌てて駆け寄るクロウに、立ち泳ぎで海面に浮かんだ澪は大きく手を振った。
「大丈夫! 突然深くなっててびっくりしただけ」
「驚かすなよな」
「ごめんごめん。でも、海の中もめちゃくちゃ綺麗だよ! ねえ一緒に泳ごうよ!」
笑顔で顔の前に手を立てる澪は、安心したようなクロウに海を指差す。さっき一瞬見た海中は、驚くほどの透明度と豊富な魚達の姿が綺麗で。興奮した澪の姿に、クロウも楽しそうに頷いた。
「そんなに綺麗で深ェのかよ。なら海ン中潜れるすきゅーばーだいびんぐってヤツをヤろうぜ!」
「やろうやろう! 直接でも大丈夫かな? 折角人魚になれるんだし」
「エッ人魚? お前が?」
「あれ、見せた事ないっけ?」
驚くクロウに逆に驚く。そういえば、見せたことはなかったかも知れない。深海の色を映したロングパレオを翻しながら海へと潜るクロウの手を取った澪は、詠唱と同時に光に包まれた。
眩しい光が、泡のようにくるくると澪の回りを踊ってしばし。身につけていたデニム地のショートパンツ色の人魚になった澪は、上半身の白いシンプルなシャツはそのままにクロウに手を差し出した。
『人魚姿のお前も悪くねェな』
『でしょ?』
褒めてくれるクロウに、得意げに微笑んだ澪は差し出された手を取り泳ぎだす。
後ろ向きに泳いでいると、クロウの表情がよく見える。泳ぎながら通り過ぎる魚たちの姿も、心なしか楽しげで。
たくさんの熱帯魚や魚たちが泳ぐスポットに到着した澪は、無限に広がる青の景色を思う存分楽しんだ。
● パリピの姫と泳ぐ海
鑑賞スポットに到着してしばし。ふいに魚たちが沖へと泳ぎ去った。「遊んで遊んで」というようにつついてくる熱帯魚も、興味津々にクロウをつついていたタチウオも、弾かれたように沖へと泳ぎ去ってしまう。
あっけにとられたクロウが周囲を見渡してしばし。まるで死の海と化してしまったかのような青だけの世界に、ふわりと毛玉が浮かび上がった。
黒にも見える海底は底が知れない。闇色にも見える水底からポン、ポポン! と浮かび上がる白い毛玉に、澪は目を輝かせながら手を伸ばした。
『わー! 珍しいお魚がいっぱいだぁ。あっ、あの子可愛いー! おいでおいで!』
澪の呼びかけに、毛玉がふんわりと近寄ってくる。水の中を漂うふわもこのマリモは拳大からビーチボール大まで様々なサイズがいて、生き物なのか植物なのかも判別し辛い。
パリピ島には、独自の進化を遂げた生き物達がいるという。今までUDCアースと似た魚たちだったから、この推定白マリモはおそらく独自の生き物だろう。
『ああ、水の中でも感じるこのもふもふ! このふわもこ感! かわいいよぉ』
『それはいいが、少しは警戒を……』
『水の中でももふもふだったら、地上だとどうなのかな? どう思う? クロウさん!』
『知らねェよ』
澪は手にしていたビーチボールと同じくらいのサイズの推定白マリモに手を伸ばして、無邪気にもふもふしている。夢中でもふる澪の姿はかわいいが、さすがに警戒感が薄いんじゃないか? とも思う。思うが、マリモは現状危害を加えそうな気配はない。
注意深く観察していたクロウは、ふいに感じる視線に推定白マリモをまじまじと見た。
マリモの中央に、目がある。つぶらな瞳でこっちを見る姿はマルチーズのようだが、想像よりも目玉がギョロッとしているような気がしたのは気のせいだろうか?
そんな推定白マリモに惹かれたのか、一匹の魚がこっちへと泳ぎ寄ってきた。目が異様に大きなギョロ目の深海魚だが、まるでウェディングドレスのようなヒレを持っている。
夢中でもふもふをつついているギョロ目の深海魚に、澪は無邪気に手を伸ばす。モフ好きというところでシンパシーでも感じたのか、人魚姿の澪はパリピ島の魚的には普通なのか。仲良く並んでもふもふを堪能している姿は、見ていて微笑ましい……のか?
溜め息をついて見守っていたクロウは、ふいに近づく気配に背後を振り返った。
そこには、闇がいた。
漆黒のモヤのように見えるダークマターの塊の奥には何かいるようだが、どんな生き物なのかはここからでは分からない。
ダークマターが、ふいに突進を仕掛けた。そのスピードで振り払われたダークマターの奥から現れたのは、一匹の魚とヒトデだった。
いわゆる五芒星型のヒトデのような生き物に騎乗した巨大な深海魚は、正しくスターライダー。
『って、スターライダーってまんまかよ!』
ツッコミを入れるクロウには構わず、【謎が謎呼ぶダークマターを纏いしスターライダー】がエンジンを吹かして(?)猛突進を仕掛ける。もふにとろけるウェディングドレス姿のギョロ目の深海魚に狙いを定めたスターライダーの轢き潰しに気付いた澪が、ギョロ目の深海魚との間に割って入った。
『この子を狙ってるの!? ギョロちゃんは渡さないからね!』
いつの間に愛称をつけていたのか。ギョロ目の深海魚を庇った澪の姿に、スターライダーはヒレをパチリと鳴らした。
音が伝わったのかどうかはさておき。スターライダーの合図に、もふもふの推定白マリモたちは一斉に震え出す。振動が海を揺らし、魔法陣のような陣形が描かれると、モフたちは水底へと沈んでいく。
その時、ふいにタコ足が襲いかかってきた。
海底から現れたタコ足は、澪の身体を絡め取るとヌメヌメの吸盤で吸い付いてくる。その気色悪さに、澪はもはや顔面蒼白になっていた。辛うじて腕は自由だが、もがいても叩いても離してくれそうにない。
『みゃーっ! クロウさんー! 取ってぇ……タコ……とってぇ……!』
『澪!?』
タコの姿に気付いたクロウが急いで泳ぎ寄ろうとする行く手を、スターライダーが遮る。見ればギョロちゃんもタコ足に捕まっているようで、最初から狙いはあのギョロちゃんだったことが伺えた。
『さっきも思ったが、厨二心擽る生物だよなァ! 闇のオーラを感じるし顔見えねェが、相手に取って不足はねぇ! ……澪!』
『ぴゃーあぁー!!』
クロウの呼びかけに、パニックを起こしていた澪は顔を上げる。泣きそうな顔で鳴いている澪の姿も可愛……もとい面白いが、今はそれどころではない。
『澪、それでも男か! 見ろ! ギョロちゃんも捕まってるぞ! このまま連れてかれてもいいのかよ!』
『!!』
クロウの檄に、澪が目を見開く。ヴェールを振りながらタコ足から必死に逃れようとしているギョロちゃんの姿に、少し冷静さを取り戻せたようだ。
『分かったよ。うにょうにょは苦手だけど、ギョロちゃんはボクが守る!』
『ちったァ気合い見せろよ! 俺の相手はお前だ!』
ギョロちゃんを助けようと動き出した澪から視線を外したクロウは、ダークマターのスターライダーと相対する。闇に隠れて様子が分からないが、こういう手合の扱いは慣れている。
『テメェの属性は闇か。なら俺は光のオーラで対抗だな、来いよ』
クロウの挑発に、スターライダーはクロウに猛突進を仕掛ける。同時に詠唱を終えたクロウは、召喚した八咫烏に騎乗すると攻撃をヒラリと回避。
カウンターの要領でダークマターの奥にいるスターライダーを、光属性を載せた玄夜叉(アスラデウス)だったもので貫き振り抜く。刺し貫いたスターライダーを捕獲したクロウは、八咫烏を澪の許へと飛ばした。
ギョロちゃんを救助した時点で気力が尽きた澪のタコ足を、クロウの推進力で強化した蹴りで切り裂く。自由になった澪は、慌てて全身をさすってうにょうにょの感触を忘れようと努めていた。
『ったく、世話が焼けるぜ』
『だって、だってうにょうにょは苦手なんだよぉ……』
涙目になる澪を、ギョロちゃんがつつく。お礼を言うようなギョロちゃんに微笑んだ澪は、ヴェールのようなヒレと握手する。
『ギョロちゃんが無事で良かったよ。バイバイ!』
何度も礼を言うような仕草のギョロちゃんは、澪とクロウの頬にキスをするとそのまま深海へと泳ぎ去る。
その綺麗な背びれに、澪は大きく手を振った。
● パリピ島のロイヤルウェディング
バーベキューの準備が終わった澪は、海の変化を指差した。
あれからふいに海が騒がしくなり、海底からジャンプするギョロ目の深海魚達で埋め尽くされたのだ。海上に出るなり「ウエエエエエエエエェェイ!」とパリピな重低音を上げる深海魚たちは、やがて一箇所に集まると左右に分かれながら一斉に大きくジャンプした。
海上に大きなハート型のアーチができる。ハート型になったギョロ目の深海魚達の外側を滑るように上へとジャンプする二匹の深海魚の内の一匹に、澪ははしゃいだ声を上げた。
「あれ、ギョロちゃんじゃないかな?」
「本当だ。ギョロちゃんじゃねえか」
ウェディングドレスみたいなヒレは、正しくウェディングドレスだったようで。ギョロちゃんはハート型のアーチを登り切ると、反対側から昇ってきた王子様然としたギョロ目の深海魚と空中でキス。
そのまま二匹仲良く手を取り合って海へ戻っていく様は、正しくロイヤルウェディングと呼ぶにふさわしく。澪はひと夏だけの友達に、大きく手を振った。
「ボク達、いいことしたのかな?」
「じゃねぇの? さ、メシにしようぜ!」
「さっきのスターライダー? 美味しいのかな?」
楽しくバーベキューの席についた二人の背後で、パリピな叫びは夜通し続いたのだった
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
真宮・響
◎
話題のパリピ島へバカンスに来たよ。話に聞いた通り賑やかそうな場所だねえ。まあ、嫌な予感がしないでもないが、存分に楽しもうかね。
料理の準備をしてるなら素材を採らないとねえ。
なんだがこいつ等(海に居る生き物)やたらと歌が上手いうえに踊ってるんだが?あたしも一緒に歌いながらステップして採ろうか。むむ、こいつ、ガタイがいい上に力が強い?海産物のくせに生意気な!!(大人げなく喧嘩腰)
ふ~っ・・・手間がかかったが幾らか取れたよ。ああ、料理も任せときな。これでも食べ盛り育ててるから得意だ。むしろ作るのは任せて若い奴はどんどん食べな。これからに備えて力を付けるんだ。
真宮・奏
◎
件で有名なパリピ島へ晴れてやってきました~!!(周りを見渡して)うん、楽しそう!!バーベキューの用意も出来てますね。
さて、バーベキューの素材を調達しないと。むむ、黒くて頑丈そうな上に強そうな蟹さんが3匹・・・黒光りする魚さんが4匹・・・いずれも美味しそうです(じゅるり)なんか強そうなオーラ纏っていますが、美味しいバーベキューの為に!!…ゲットです~(お腹の音がぐ~っ)
バーベキューは幾らでも食べれますので、あるだけ頂きます!!皆で楽しむバーベキューの味は格別ですね!!
神城・瞬
◎
パリピ島の話は聞いていました。楽しそうだったので家族のバカンスに最適だと思いまして。(周りを見渡して)確かに、楽しく過ごせそうですね。
バーベキューの用意が出来てるようなので、素材の調達を・・・むむ、外見は蟹なのに、とても強者のオーラが・・しかも堅そうで群れを率いると・・しかし、皆のバーベキューの為に・・・あ。(いつもの癖で蟹が凍ってしまい、冷凍ガニに)
すみません、冷凍ガニになってしまいましたので、溶かすのは僕がやります。これじゃバーベキューになりませんし。まあ、ハプニングはありましたが、皆で過ごすバカンスは楽しくて、幸せな時間になるかと。
藤崎・美雪
◎
アドリブ他者絡みツッコミ全振り大歓迎
おかしいな
パリピメガリスは回収したはずなのに
まだカオスでパリピな呪いは健在…どころか悪化してるだろコレ!
ん?
足元を歩くのは【金剛甲羅の世紀末覇者と呼ばれし悪魔召喚士】なカニだと?
何だこのゴツくて固そうなカニは!!
というかカニがアスモデウスとか召喚するのか!?
…それは勘弁してくれ…(頭を抱える)
まあ、なんやかんやで鋼鉄製ハリセンぶちかましてどうにか捕らえて
さばいて焼きカニやカニグラタンにするか
もふもふさん、ご飯づくりを手伝ってくれ(料理、優しさ+指定UC)
…この島の海産物が美味いのはわかっているだけに
なぜこんなにカオスな生態系になってしまったのかが解せぬ
彩瑠・翼
◎
ユディトさん(f05453)と
カニとの縁なんてとか言いながら
結局この夏もこの島に来ちゃったんだね、オレ…(目を逸らし
でももう何度目かのカニだし、オレだって成長してる!
もうすぐ誕生日だし、身長も約8cm伸びたし!
ゆ、ユディトさんの修行合宿だって
この夏は乗り越えられる、はず…!(色々言い聞かせている
って言ってたらカニ…、
最初からテンション高いし!(ひぃぃ
…ユディトさん、オレ、もう逃げていい?
(涙目。情熱と勇気と気合いの逃げ足スタンバイ中
うん、定番だよね、わかってた(涙
ここは覚悟決めてUCとランスチャージで突進するよ!
誕生日合宿…
(どっちも嫌と言いかけ飲み込み
ユディトさんの笑顔にそっと涙してみる)
ユディト・イェシュア
◎
翼くん(f22017)と
また一緒に来れましたね
季節は夏
まさに合宿にぴったりですね!
ここのカニは美味しかったですから
俺たちは食材の確保です
アカネさんとエリシャさんが美味しく料理してくれます
あれは…ダークセイヴァーにいそうなカニですね
でも成長した翼くんなら朝飯前ですね(無茶ぶり
え、逃げる?
翼くん
時に勇気ある撤退も必要です
でも今はその時ではありません
このカニも翼くんと合宿したくて現れたに違いないです
もし辛いことがあるのなら
思い出してください
あの魔法の言葉を…!
もちろん危険が及びそうなら俺も手伝いますから
お疲れ様です
翼くんはもうすぐ誕生日ですよね?
記念にまた合宿しましょう
山と海とどっちがいいですか?
エリシャ・パルティエル
◎
また来たわよパリピ島!
アカネちゃん水着姿も可愛い!
あたしも今年は着てみたの
は、恥ずかしいけど…バカンスだしね
ね、アカネちゃん
お料理する前に少し遊びましょう
あたしは泳いだことないけど
ちょっとだけ海に入って水遊びよ
みんなが獲ってきた食材をお料理しましょう
BBQもいいわよね
…なんだか個性的な食材ばかり
アカネちゃん落ち着いて
ゆっくりやればできるからね
信じられないのはわかるわ
でもこの怪しげな食材がものすごく美味しくなるの
陽里も何か獲ってきてくれるの?
あたしも行こうかな
この漁網があればいろいろ獲れるのよ
休暇に来たのに疲れてない?
砂浜で波音を聞いてのんびりしましょ
陽里と一緒に遊びに来れただけで充分嬉しいの
櫟・陽里
大人になると水着になるのもきっかけが必要だったりしてさ
こーやって誘ってもらうとありがたい
のんびりリゾートを満喫
砂浜で寝転んで“何もしない時間を楽しむ”
皆の楽しそうな声を聴きながら…楽しそ…いやむしろ
阿鼻叫喚なのでは…??
起き上がり見回す
前にも増してカオスなのでは…??
◎
アカネちゃんの頼みは断らないよ!
エリシャ(f03249)の水着姿はもちろん嬉しいけど
顔に出さないよう気を付けなきゃな?
食材獲ってくりゃいい?
頼まれりゃ悪い気はしないしせっかくだから良いトコ見せたいし
…なんて下心で不用意に手を出していい海じゃなかったパリピ島
食後にエリシャを散歩に誘おうと思ってるけど
そこまで無事でいられるだろうか…
● 夏だし、遊ばないとね!(フラグ)
燦々と夏の日差しが降り注ぐパリピ島。
久しぶりに浜辺に立ったエリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)は、帽子を手で押さえながら大きく伸びをした。
「また来たわよパリピ島!」
「また来ましたねパリピ島!」
隣に立つアカネ・リアーブル(とびはねうさぎ・f05355)も、一緒になって伸びをする。以前来た時はグリモアの保持に専念しなければならなかったのだが、今回は一緒に遊べるのだ。嬉しくもなるというものだ。
目を見交わして、微笑み合ってしばし。アカネは新調したエリシャの水着にはしゃいだ声を上げた。
「エリシャ様の水着、とてもよくお似合いです! エメラルドグリーンが綺麗で、星飾りもすごく素敵です」
「ありがと。あたしも今年は着てみたの。は、恥ずかしいけど……バカンスだしね。アカネちゃん水着姿も可愛い!」
頬を染めたエリシャは、大きく開いたパレオの裾を慌てて合わせる。白いラッシュガードで腕や胸元を隠す様子が、なんだか可愛らしく見えてしまう。
キャッキャとはしゃぐ二人に目を細めた真宮・響(赫灼の炎・f00434)は、設置の終わったキャンプテーブルをそっと撫でると二人に声を掛けた。
「さて。皆食材を探しに行ったし、料理を始めるにはまだ時間がある。二人とも、少し遊んでくればいいよ」
「え? ですが人数が人数ですし……」
「なぁに、構いやしないよ。若い女の子が二人、お料理ばっかりしてちゃいけないよ。ちゃんと遊ばないとね。料理なら手分けすりゃすぐだからさ」
頼もしく笑う響の声に、エリシャはアカネと顔を見交わす。頷き合ったアカネは、響に微笑んだ。
「ありがとうございます、響様」
「行きましょう、アカネちゃん。あたしは泳いだことないけど、ちょっとだけ海に入って水遊びしましょう」
「参りましょうエリシャ様!」
響に会釈して白い砂浜に駆け出す二人を、響は手を振って送り出す。
この微笑ましいやり取りがカオスの始まりであることに、この時点では誰も気付いていなかった。
● 波打ち際のパリピウオ
アカネと二人で水を掛け合ったり波打ち際ではしゃいだりしていたエリシャは、ピチピチと必死に跳ねる魚の姿に歩み寄った。
そこには、見たことのあるギョロ目の深海魚がいた。
鱗の模様こそ違うものの、特徴的な大きなギョロ目と響く「ウエエエエエエエエェェイ!」という重低音な叫び声は紛れもなくパリピウオで。
「ねえアカネちゃん。ここにいるのって、パリピウオじゃないかしら?」
「そうですね。ですが、何か様子がおかしいです」
訝しんだアカネが言う通り、そのパリピウオは以前見かけたパリピウオとは様子が違っていた。どうやら山の方から這って波打ち際近くまでやってきたらしい。何かあったのだろうか。
「パリピウオって、空気中でも生きていけるのね」
「王子様みたいな気品が漂っていませんか?」
アカネの指摘に、エリシャも頷く。白い鱗に覆われた皮膚は王子様のような金色の房飾りみたいたものが付いているし、王冠状のものが頭の上に乗っている。空気中で呼吸ができるのは、どうやらアリスナイト・イマジネイションを使っているようだった。
「何か事情でもあるのかしらね? 捕まえてみましょう」
ツッコミどころはそこじゃない気もするが、慣れというのは恐ろしい。エリシャが王子様のパリピウオを抱き上げた時、爆音が響いた。
パリピメガリスがあった神殿に続く階段から現れたのは、五芒星形のヒトデに乗ったパリピウオ。ヒトデを魔法のじゅうたんのようにして空を飛ぶ【船を飲み込むほど大きなスターライダー】は、エリシャと王子様のパリピウオを掻っ攫うとそのまま砂浜を駆け去った。
● お姫様を助けるのは王子様の役目でして
時は少し遡る。
ぞうさんジョウロで愛車の宇宙バイク・ライをピカピカに磨き上げた櫟・陽里(スターライダー ヒカリ・f05640)は、満足そうに頷くと砂浜に座った。
「たまにはこういう、何もしない時間もいいもんだよな!」
大人になると水着になるのもきっかけが必要だったりして、こーやって誘ってもらうとありがたいものなのだ。
今年新調した黒と黄色のボクサーパンツの水着と揃いのラッシュガードは、ライとお揃いの色合いで超気に入っている。
目の前をキャッキャとはしゃぎながら通り過ぎるエリシャとアカネの姿に思わず崩れる頬を立て直す。水着姿がちょっと恥ずかしそうなエリシャもかわいい。
しばらく続くのどかな時間を楽しんだ陽里は、ふいに響く悲鳴に顔を上げた。
「どうした?」
「陽里様! エリシャ様が、エリシャ様が【船を飲み込むほど大きなスターライダー】に連れて行かれてしまいました!」
砂に足を取られながら訴えるアカネの指の先には、平らな星型の分厚い絨毯のようなものに騎乗しながら飛び去ろうとする巨大な魚の姿。ヒトデ型だからスターライダーなのだろうが、あんなのと一緒にされるのは業腹だ。だから意地でもパリピウオと呼ぶ!
「アカネちゃんは上から状況を教えてくれ!」
「はい!」
陽里の判断は早かった。ライに跨った陽里はエンジンを掛けると、どんどん遠くなるパリピウオの姿に追いすがった。
遠くに見えるパリピウオと一緒に乗せられているのは、確かにエリシャだ。ここで見逃してしまったらどうなるか。パリピ島の恐ろしさは、暴力ではなくパリピな斜め上にあるのだ。
オラトリオの飛行能力を生かして上空へ飛び立ったアカネが、陽里に状況を伝える。空を飛ぶパリピウオは道などあってないもので、陽里を撒こうとあちこちを飛び回る。
大きいが意外と小回りが効いて、ヒラリヒラリと飛び回る。アカネのナビでどこに逃げるかの当たりをつけた陽里は、ライのエンジンを噴かせた。
「待て!」
叫んだ陽里は、付かず離れずパリピウオを追いかける。パリピ島上空を旋回した陽里は、狙いの場所に近づくとパリピウオを追い込んだ。以前翼とユディトが釣りをした崖。ここならばスピードを落とすし状況も把握しやすい。
「エリシャ!」
大声でエリシャに声を張る。こちらを振り返ったエリシャは、陽里のジェスチャーに頷いた。
直後に放たれる漁網が、パリピウオを包み込む。驚いたパリピウオがバランスを崩して海へと転落する前に、ヒトデから飛び出したエリシャに陽里は手を伸ばした。
「陽里!」
「捕まれ!」
伸ばしたエリシャの手首を掴み、強く引き寄せる。間一髪漁網から逃れて胸に抱き寄せたエリシャの鼓動に、心底安堵の息を吐く。
「良かった、無事で」
「ありがと、陽里」
エリシャを膝に抱いたままホバー機能で海面を走った陽里は、片手でエリシャを支えるように抱き寄せた。
● パリピウオの王子様、海へ還る
砂浜に戻り、ようやく落ち着いたエリシャはずっと抱いていたパリピウオを海へと返した。一緒にパリピウオに捕まった仲だ。食べる気にはなれない。
「パリピの海にお還り」
王子様のパリピウオを放流したエリシャに感謝するように、一度だけ海面を跳ねる。遠ざかる魚影を見送ったエリシャは、陽里の隣に座った。
「ありがと、陽里。……休暇に来たのに疲れてない?」
「全然。エリシャこそ、せっかくのバカンスにこんなことになって……」
「陽里と一緒に遊びに来れただけで充分嬉しいの。あんな風に空を飛ぶのもいいけど、たまには砂浜で波音を聞いてのんびりしましょ」
「そうだな」
笑いあった二人は、砂浜に座ると潮騒に耳を傾ける。やがてパリピウオ達の「ウエエエエエエエエェェイ!」という重低音な声とジャンプ音を聞くと、パリピ島だなぁと和んでしまう。
交わされる他愛のない会話。二人きりの空間で、二人だけでのんびりする。それが何より贅沢な時間だった。
静かな時間を楽しんでしばし。砂浜から聞こえてくる叫び声に、二人は顔を上げた。どうやら王子様誘拐計画が失敗に終わったのを悟った誘拐犯達が、何か行動を起こしたらしい。
「阿鼻叫喚で前にも増してカオスなのでは……??」
「そうね。……戻りましょうか」
「だな」
頷きあった二人は、手をつないで歩き出す。
途中漁網にかかって浜辺で伸びているパリピウオを捕獲した陽里は、仲間たちの許へと帰っていった。
● 嵐の前は静かなもので
時は少し遡る。
明るい日差しが降り注ぐパリピ島は吹き抜ける風も心地よく、真っ白な砂浜がずっと向こうまで続いている。
引き潮で顕になった白砂に熊手を差し入れた藤崎・美雪(癒しの歌を奏でる歌姫・f06504)は、さっきからずっと掘っている砂から一抱えほどもある巨大な貝を掘り出した。
「おお! 見ろ、こんなに立派な貝が採れたぞ!」
「こちらも大漁です。美味しい酒蒸しができますね」
はしゃいだ声を上げる神城・瞬(清光の月・f06558)が、アサリがたくさん入ったバケツを得意げに掲げる。中を覗き込んだ美雪は、そこにいる粒揃いのアサリ達に目を輝かせた。
「凄いな瞬さん。早速砂出しをしよう」
「夕食が楽しみですね」
小脇に抱えた大ぶりの貝をどうやって砂出ししようかと思案した美雪は、一瞬我に返る。
心から楽しそうに微笑む瞬の姿に微笑みを返すと、どこからともなくハリセンを取り出した。
「……って、パリピ島がこんなに静かな訳がないだろう! 何だ? 持ち上げて落とす作戦か? その手には乗らんぞ!」
「み、美雪さん落ち着いてください!」
虚空に向かって鋼鉄製ハリセンでツッコミを入れる美雪に、瞬は慌ててとりなす。思わず肩で息をした美雪は、我に帰るとこめかにみ指を当てた。
「済まない。まさかこんな平穏無事に始まるとは思ってもみなかったのでな。だがまあ、そうか」
手をぽむ、と叩いた美雪は、神殿跡のある山を振り仰いだ。あそこに封じられていたパリピメガリスのせいでカオスな生き物がいたのだったら、回収された今は普通の生態系が戻ったに違いない。
「きっとパリピな呪いはメガリスの回収と同時に解かれて……」
そう言った美雪は、神殿に続く階段から船を飲み込むほど大きなスターライダーが爆走して去っていくのを遠目に見ると、そっと目をそらした。何も見ていない。見ていないぞお。
「さて瞬さん。一度ベースに戻って……」
後ろを振り返った美雪は、陰る日差しに現れた巨大な蟹の出現を悟り大きくうなだれた。顔を上げたくないが、仕方がない。現実とは向き合わなければ。
そこにいたのは、巨大な蟹だった。金剛甲羅と呼ばれる透明な甲羅に覆われた巨大な蟹は内臓が見え隠れしているのだが、その内臓というのがどう見ても世紀末覇者と呼ばれた漢の顔にしか見えない。
猛牛の角を生やした面長の漢が、水晶のような甲羅の中からこっちを睨んでいる。カオスさ加減が加速した【金剛甲羅の世紀末覇者と呼ばれし悪魔召喚士】の姿に、美雪は寄せた眉根をグリグリもみほぐす。
「言ってる傍から何だこのゴツくて固そうなカニは!!」
「美雪さん! 来ます!」
思わず頭を抱えた美雪の隣で、瞬は臨戦態勢を整える。美雪を守るように蟹の前に立った瞬は、六花の杖を構えて油断なく相対する。ジリジリと距離を取る蟹に向けて少し楽しそうな声を上げた。
「これが、噂に聞くパリピ島のパリピカニなんですね。さすがは……」
「あぁ。これがパリピ島の……」
「【金剛甲羅の世紀末覇者と呼ばれしビーストマスター】ですね」
「【金剛甲羅の世紀末覇者と呼ばれし悪魔召喚士】だ」
同時に二つ名を口にした瞬と美雪は、異なる二つ名の後半部分に顔を見合わせた。慌てて周囲を見渡すが、この蟹以外にパリピカニはいそうにない。
「てことは、この蟹は……」
「ゲコクジョー!!」
美雪の声に応えるように、パリピカニはハサミを合わせる。
その聞き覚えのあるが新パターンの鳴き声ともつかない声(?)に呼応するように、静かな海はパリピウオのジャンプに埋め尽くされた。
● ビーストマスターにして悪魔召喚士な世紀末覇者は金剛甲羅
海から響くパリピな重低音の叫び声を背にした瞬は、相対した巨大な蟹の姿に油断なく六花の杖を向けた。
「外見は蟹なのに、とても強者のオーラがしますね。しかも堅そうです。ビーストマスターということは、群れを率いると……」
「あ、そういうことを言うと……」
「イデヨパリピボーール!」
美雪のツッコミを背中で聞いた瞬は、打合される蟹のハサミ音が描く魔法陣に目を見開いた。
現れたのは、七つのボールだった。握りこぶし大の大きさの、黒騎士の鎧を思わせる透明感のある玉の表面には、オレンジ色に染め抜かれた星型が一個から七個描かれている。
現れた七つのボールは、砂浜へ一斉に散っていく。あれが何かは分からないが、見覚えのある星マークから察すると七つ集めるとどんな願いも叶えてくれるパリピボールのような代物だろう。
「あの召喚された七つのボールは、集めるときっと恐ろしいことが……」
「大丈夫ですか?!」
冷静に分析をする瞬は、呼びかける声に顔を上げた。見ると、瞬の方へ向かって奏と響が駆け寄ってくる。ここは無理に追うよりも、二人に任せるのが得策だ。
「その七つのボールを捕まえてください!」
「分かったわ!」
頷く奏にボールの回収を任せた瞬は、目の前の敵に集中した。あのボールについては、もう何の心配もいらない。それだけの信頼関係は十分に築いているのだから。
美雪もそう思ったのか、七つのボールから視線を外すとまるで弱点を言い当てるユディトのように蟹に指を指した。
「経験からすると、金剛甲羅は物理攻撃無効、世紀末覇者は物理攻撃最強だ!」
「ニゲロパリピボーール! イデヨカニモデウーース!」
美雪の声に応えるように、蟹が再びハサミを打ち鳴らす。世紀末覇者の顔の上に現れたのは、ソロモン72柱の一柱。によく似た蟹。
「カニがアスモデウスとか召喚するのか!?」
「させません! 貫いてみせます!」
美雪のツッコミを背中で聞いた瞬は、即座に詠唱を開始する。六花の杖を金剛甲羅の世紀末覇者に向けると、氷の槍を解き放つ。
詠唱の途中で放たれた氷の槍が、金剛甲羅の世紀末覇者を凍りつかせる。途中まで現れていたアスモデウス……ならぬカニモデウスの不気味なカニ足と顔半分だけが、氷柱の中に取り残されているのはシュールとしか言いようがない。
「すみません、冷凍ガニになってしまいました。溶かすのは僕がやりますので、調理はお願いします」
「ああ。……って、このカニモデウスの蟹脚も食べるのか!?」
美雪のツッコミに、瞬は改めて凍らせた蟹を見た。中途半端なところで召喚が止まった蟹はなかなかにグロテスクで、本当に食べられるのか? と疑いたくなってくる。
だが、海産物は美味しいらしい。美味しいものは美味しく食べなくては。
「皆のバーベキューの為です」
「……それは勘弁してくれ……」
頭を抱えてしゃがみ込む美雪をよそに、瞬はどうやって溶かそうか思案を巡らせた。
● 信頼のパリピボール
時は少し遡る。
調理の下準備を終えた奏は、広がるのどかな海の景色に思い切り伸びをした。
青い海はどこまでも続き、燦々と降り注ぐ日差しは暑いくらいだが湿度が低いため不快には感じない。
遊びに行ったエリシャとアカネの代わりに手伝いを申し出たのだが、親子二人だけでお喋りしながら支度をするのはとても楽しくて。あっという間に終わってしまった。
潮干狩りに行った瞬と美雪もまだ帰ってこない。崖の方へ向けてヒトデと陽里とアカネが飛んでいったが、きっとユーベルコードで遊んでいるのだろう。
「若い者は思い切り食べて遊んで、強くならなきゃね」
「そうね」
頷いた奏は、遠くに見える瞬と美雪の後ろ姿をチラリと見た。日差しの下、水着姿で二人仲良く潮干狩りをしている姿というのは、なんだか気になって仕方がない。
チラチラと二人を見る奏の姿に気付いた響は、少し微笑むとエプロンを外した。
「さて、瞬の様子でも見に行こうか」
「え? でも普通に潮干狩りしてるだけじゃ……」
「いいんだよ。ここは噂に聞くパリピ島だろう? 嫌な予感がしないでもないんだ」
「そっか。なら、しょうがないね」
頷く自分の頬が少し赤くなってる気がするのは気のせいだし暑さのせいだ。仲良く海辺へ向かった奏は、再びやった視線の先にいる闖入者に目を見開いた。
視線の先に、巨大な蟹がいる。なんだか黒っぽくて大きくて、強者のオーラが半端ない。考えるよりも早く、奏は駆け出した。
「大丈夫ですか?!」
「その七つのボールを捕まえてください!」
「分かったわ!」
瞬の声に一瞬戸惑うが、彼が言うのだから何かいるのだろう。立ち止まった奏は臨戦態勢を整えると、ボールとやらの襲来を待った。その時には意識から巨大な蟹の存在は無い。援軍よりもボールを頼んだのだから、あちらは大丈夫だと判断したのだろう。
立ち止まった響もまた、瞬の声に熊手を構える。やがて跳ねるように飛んできた七つのボールの姿を止めようとしたその時、妙な声を聞いた。
「ゲコクジョー~!」
一瞬だけ振り返ると、そこには妙な蟹がいる。意識をそちらに向けた奏を叱咤するように、響が声を上げた。
「気を散らすんじゃないよ! ボールは任せた! アタシはあの 【歌と踊りが超得意な力持ち】を相手にするよ!」
「分かったわ!」
頷いた奏は、変化したボールに目を見開いた。七つのボールは七匹の海産物になっている。
「黒くて頑丈そうな上に強そうな蟹さんが3匹と、黒光りする魚さんが4匹か。むむ……いずれも美味しそうです」
美味しそうと思った途端にお腹がなる。相手がボールじゃなくて、ボールのディテールを残した七匹の海産物ならば、ゲットしてバーベキューにするだけだ。
「なんか強そうなオーラ纏っていますが、美味しいバーベキューの為に!! ……ゲットです~」
お腹の音を鳴らした奏は、襲い来る七匹の海産物相手に駆け出した。
● ラップバトルには情熱の歌
参道から現れた巨大な蟹は、響の前に立ち止まると大きな蟹爪を振り上げた。
「ゲコクジョー~!」
蟹爪のギザギザが絶妙に噛み合い、妙な声を上げる。蟹爪をジャキジャキと打ち鳴らした蟹は、そのたびに「インボー!」「ゲコクジョー!」と妙な音を立てて自己主張してくる。それはいつしか節を取り、テンポよくラップを歌っているように砂浜に響いた。
「なんだこいつ。歌ってるのかい?」
「ゲコクジョー! インボー! ウミノハケーン! ワレラー!」
歌われる大変都合の良い韻を踏まないラップを聞いた響は、十本脚がタップするノリノリのリズムに楽しそうに合わせてステップを踏んだ。
「なんだかよく分からないけど、やたら歌と踊りが上手いじゃないか。いいねいいね! 好きだよそう言うの!」
蟹の刻むリズムに合わせて、響がステップを踏む。響が乗ってきたと見るや、【歌と踊りが超得意な力持ち】は興奮したようにダンスバトルを申し込んできた。
長い足を利用して、巧みなステップを踏みながら大きな蟹爪を振る。蟹とは思えないくらい華麗なステップを踏む【歌と踊りが超得意な力持ち】の姿に、響も負けじとステップを踏んだ。曲はどうやらヒップホップに似た曲調で、それに合わせて響も思い切り歌を歌った。
蟹の曲に合わせて、情熱を込めて歌う。心の底から沸き上がってくるような情熱を歌に乗せていると、いつしか【赫灼のアパッショナート】となり【歌と踊りが超得意な力持ち】に向けて響かせる。
やがて伴奏は止み、華麗なステップを踏んでいた脚も止まり、響の歌声に聞き惚れている。いくらガタイが良くて力持ちでも、それを活かせる状況になければ意味がない。
歌がクライマックスに差し掛かった時、響は赤く光るブレイズフレイムを蟹に突き刺した。
響が蟹を仕留めた時、奏もまた最後の一匹に止めを刺していた。
● 修行がんばる青少年
一方その頃。
パリピ島とは思えないのどかで気持ちの良い時間に、彩瑠・翼(希望の翼・f22017)は心から安堵の息を吐いた。
波打ち際にいる蟹に最初は驚いたけれど、そこにいるのは普通の蟹でたやすく捕まえられる。また釣りをしても良かったけれど、この間ひどい目にあったばかりだから今回はやめとく。上空を陽里とヒトデとアカネが飛んでいるが、多分ユーベルコードで遊んでるんだろう。
良かった。この島の生き物がパリピだったのは、あのメガリスのせいだったんだ。回収したんだから、もうここは普通のリゾートアイランドに違いない。
のんびり歩く翼の隣で、ユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)はニコニコしながら拳を握りしめていた
「また一緒に来れましたね。季節は夏。まさに合宿にぴったりですね!」
「え、が、合宿!?」
驚いて思わず声が上ずる翼は、慌てて言い募った。せっかく理想的なリゾートアイランドになってくれたパリピ島だもの。海で遊びたいし山で昆虫採集もしたい。
浜辺でのんびり時間を過ごしたりしたいのに、そこに「合宿」の二文字が来たらとたんに鍛錬になってしまう。話を、話を逸らさなければ。
「そ、その前に食材取らないと、ネ!」
「そうですね。ここのカニは美味しかったですから、俺たちは食材の確保です。アカネさんやエリシャさん達が美味しく料理してくれます。ですから、こういう隙間時間にも鍛錬を怠らないようにしないと。合宿ですから」
合宿ですから……。宿ですから……。ですから……。
善意100%の聖者の笑みで言うユディトの声が、脳内に再びリフレインする。
そうか。このバカンスが合宿だったんだ。カニとの縁なんてとか言いながら結局この夏もこの島に来ちゃった時点で、もう合宿は決定だったんだ。
さよなら、翼のバカンス。またいつかどこかで会えるといいね。
バカンスという甘い響に別れを告げた翼は、名残惜しそうに遠い目でその背中を見送るとギュッと手を握りしめた。
「でももう何度目かのカニだし、オレだって成長してる! もうすぐ誕生日だし、身長も約8cm伸びたし!」
色々言い聞かせながら、現実を受け止める。それしか、ないじゃないか。
「ゆ、ユディトさんの修行合宿だって、この夏は乗り越えられる、はず……!」
「やる気になったんですね翼くん! その意気です! 俺もできる限りお手伝いしますから、頑張りましょうね!」
「う、うん。でもお手柔らかにね……?」
翼が首をすくめた時、山から得体の知れない気配が駆け下りてきた。
● VS蟹は慣れたもの
やる気を見せた翼に微笑んだユディトは、現れた蟹の姿に目を細めた。
現れたのは二匹。外見から察する二つ名は 【重低音の叫び声を上げるギョロ目の黒騎士】と【鱗至上主義な陰陽師】といったところか。
「あれは……ダークセイヴァーとサムライエンパイアにいそうなカニですね」
「そ、そうだね」
やっぱり出たんだ! という表情で二匹の蟹を見つめる翼の肩を、ユディトはぽむと叩く。
「でも成長した翼くんなら朝飯前ですね」
「え、ええ? オレ一人で倒すの!?」
「もちろん、俺も手伝います。ですがやはり、実戦経験は積まないと」
「えぇー……」
改めて見る蟹は、どちらも大きくて強そうな姿をしている。こちらに気付いた二匹の蟹は、ハサミをじゃきん! と振り上げると重低音の叫び声を上げた。
「ゲコクジョー! インボー! ウミノハケーン! ワレラー!」
「最初からテンション高いし!」
とても分かりやすい声を上げる蟹達に、翼が涙目で怯えている。周囲に式神を飛ばしながら狩衣を翻す陰陽師に狙いを定めたユディトは、【黎明の導き】を詠唱した。
見えてくるのは、陰陽師の弱点。遠距離攻撃とデバフを掛けることが得意だが、やはり弱点は直接攻撃。ついでに見た黒騎士は、防御力が高くて魔法攻撃に弱い。
「翼くんは陰陽師をお願いしますね。俺は黒騎士を牽制しますから」
「お、お願いされたって……わっ!」
逃げ腰な翼に与しやすいと見たのか。陰陽師はおもむろに九字を切ると、式神を翼にとりつかせた。
途端に泣きそうな顔になった翼は、ユディトを見上げるとローブの裾を引っ張った。
「……ユディトさん、オレ、もう逃げていい?」
「え、逃げる?」
翼の言葉に、ユディトは目を見開く。涙目で情熱と勇気と気合いの逃げ足をスタンバイさせる翼は、きっとあの式神を受けて弱気になっているのだろう。力づけてやらなければ。
「翼くん。時に勇気ある撤退も必要です。でも今はその時ではありません。このカニも翼くんと合宿したくて現れたに違いないです」
「えぇ!? そ、そうなの?」
翼の問に、二匹の蟹は「違う違う」と言わんばかりに爪を横に振る。
「違うって」
「もし辛いことがあるのなら、思い出してください。あの魔法の言葉を……!」
「あの、魔法の言葉……」
幾度目かに力説するユディトに、翼は困惑したような顔をする。あの魔法の言葉ってどの魔法の言葉なんだろう? そんな疑問が浮かんだようだが、諦めた翼は頭をかくんと下に下げた。
「うん、定番だよね、わかってた。ここは覚悟決めて……いでよ! 魔法の戦闘鎧! アリスナイト・イマジネイション!」
ユーベルコードで喚び出した世界で一番かっこいい鎧を纏った翼は、ランスチャージで陰陽師へ向けて突進する。覚悟を決めた翼の槍は、陰陽師の殻を貫き沈黙させる。
この調子ならば、黒騎士も大丈夫だろう。心を鬼にして押しやった黒騎士を二撃目で倒した翼は、疲れたようにその場にくずおれた。
「お疲れ様です」
「ユディトさん……オレ、やったよ」
「はい。よく頑張りました」
にっこり微笑むユディトに、翼は照れたように頬を掻く。その笑みに力強い自信を感じたユディトは、予てより温めていた計画を翼に告げた。
「翼くんはもうすぐ誕生日ですよね? 記念にまた合宿しましょう」
「えぇ!? た、誕生日合宿……!?」
「山と海とどっちがいいですか?」
「ど、どっちも……」
「どっちも?」
「……どっちでもいい」
「そうですか。ではまた、準備しておきますね」
辛うじて答えた翼に、ユディトは満足そうに微笑んだ。
● そして始まる宴のひととき
なんやかやあって全員が集まり、にぎやかに調理が始まった。
いつの間にか例の「ウエエエエエエエエェェイ!」という重低音の叫びを上げながらジャンプするパリピウオの姿も見えるが、もうあれは風物詩でBGMの一つと見ればいい。
テーブルに所狭しと料理を並べた響は、目を輝かせる奏に瞬が取ったアサリの酒蒸しを手渡した。
「さあ、できたよ。これ運んで」
「わあ、美味しそう!」
「凍らせてしまった蟹は、本当に半解凍でいいんですか?」
「いいんだよ。この暑さだ。食べる頃には溶けてるよ」
訝しげな瞬から蟹を受け取った響が、おおらかに頷く。世紀末覇者の内臓はカニ殻と一緒にスープの具にしてある。金剛甲羅は透き通っていてきれいだから、半解凍の蟹脚を刺し身にして盛り付ける。
響とは別の調理台にいた美雪が、ユーベルコードで召喚士たもふもふさんに焼きたてのグラタンを手渡した。
「もふもふさんや。カニグラタンができたから運んでおくれ。……例によってギョロ目が睨んでいるがな!」
大きなダンスガニの甲羅を器にして作ったカニグラタンが、いい匂いを立てながらもふもふさんに手渡される。美雪特製のカニグラタンはほっぺたがとろけるほど美味しいという自信はあるが、この味を出すには目玉を潰してはいけないというレシピはどうにかならないものか。
もふもふさんがよいしょと運ぶカニグラタンを見送った響が、感心したように頷いた。
「カニグラタンなんて、この設備でよくできたね」
「まあ、何回か作ってるからな」
遠い目をした美雪は、遠い目ついでに遠くを見ると、小さく手を挙げた。
バーベキュー串の準備をしていたエリシャとアカネが、両手に大きなお皿を持ってこちらにやってくる。魚を捌くアカネの手付きがあまりにも危なっかしくて見ていてハラハラしたが、エリシャのアドバイスでどうにかこうにか捌ききれたらしい。
「おまたせしました! バーベキュー串です!」
「ありがとう。そこに置いとくれ」
響が指差したテーブルにお皿を置いたアカネは、どこか呆然とした顔で呟いた。
「お待たせして申し訳ありません。個性的なお魚ばかりで驚いてしまって……」
「信じられないのはわかるわ。でもこの怪しげな食材がものすごく美味しくなるの」
真面目な顔をしたエリシャが、焼き場へ向かう。それを制した響は、二人を席へと押しやった。
「響さん? 焼くのを手伝い……」
「作るのは任せて若い奴はどんどん食べな。これからに備えて力を付けるんだ」
力強く言った響は、空を見上げる。アリスラビリンスでは既に戦争が始まり、これから戦いはどんどん激しさを増すだろう。頷きあった猟兵たちは、騒がしくなる海を見た。
一箇所に集まったパリピウオ達が一斉に声を上げジャンプすると二つに割れ、空中にハート型を描き出す。ハートの外側を大きくジャンプした王子様とお姫様のパリピウオが、中央でキスをすると方向を変える。
手に手を取って海へと帰った二匹を祝福するように重低音の叫びを上げ続けるパリピウオ達を遠くに見た陽里は、見覚えのあった王子様の姿に目を細めた。
「あれって、エリシャとアカネちゃんが助けた王子様じゃね?」
「そうね。多分、間違いないわ」
真顔で頷くエリシャに、ユディトが目を細めた。
「そのつもりはありませんでしたが、俺達はこのパリピ島の秩序を守ったんですね」
「……この島の海産物が美味いのはわかっているだけに。なぜこんなにカオスな生態系になってしまったのかが解せぬ」
しみじみツッコミを入れる美雪に、全員が深く頷く。気を取り直した奏は、場の空気を入れ替えるように明るい声を出した。
「さ、乾杯しましょ! おなかすいちゃった!」
「そうですね。……今回も乾杯の音頭は翼くんにお願いしましょう」
「え? オレ? オレ、今回も何もしてないけど……」
ユディトの指名に戸惑ったように自分を指差す翼に、全員がニコニコしながらグラスを掲げる。照れたように頭を掻いた翼は、皆を見渡すと少し上ずった声を上げた。
「えっと、その、お疲れさまでした。乾杯!」
「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」
グラスが打ち鳴らされ、宴が始まる。
夕日を浴びた猟兵達のパリピ島の宴は、夜遅くまでにぎやかに続くのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵