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狂える大蛇と甘い菓子

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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「……これは、どうしたものか……」
 『アックス&ウィザーズ』世界のとある辺境の村。その側に広がる、森の奥……の手前。
 つい最近の異常な森の成長が一段落し、その後の経過を確認に来ていた老猟師が途方に暮れていた。

「川がここまで暴れてしまっていては、先に進めぬではないか……」
 老漁師の眼前に流れるのは、激流と化した川。かつて森の動物達が喉を潤す為に利用していた清流の面影は、どこにも無い。
 誰かが通したのだろう、川を渡すようにロープが張られているが……そのロープを結ばれた木にまで水が被りそうな程の、凄まじい勢いと広がり具合である。

「一体、この森に何が起きているんじゃ……」
 老猟師の嘆きの声が、激流の音に飲まれて消える。
 森の異常な成長が収まったと思ったら、今度はこの川の激流化である。
 自らの理解を超えて立て続けに起きる森の異常に、老猟師はただ途方に暮れるのだった……


「お集まり頂き、ありがとうございます」
 グリモアベースに集まった猟兵達を迎え入れたのは、グリモア猟兵、ヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)。
 整った顔にふわりとした笑みを浮かべ、今回集まってもらった理由を告げる。

「実は、『アックス&ウィザーズ』世界のとある辺境の森に、異変が生じているようでして……」
 現場となっている森は、この世界には良くある森だ。豊かな森林に動植物が生命を育み、近隣の村落の民の憩いの場であり生活の糧でもあるそうだ。
 そんな土地だが、この時期には一つの奇妙な風習がある。曰く、森の奥地にのみ生育する木の実を収穫し、気になる異性に贈るというイベントが存在するのだという。
 ……ん? その森、ちょっと前に事件が無かったか? と集まる猟兵の中から疑問の声が溢れる。

「そうなんです。実はこの森、以前から異変が発生していまして……」
 以前の事件とは、森の奥地に棲み着いたオブリビオンにより、森が異常成長を起こした現象の事である。
 その事件は猟兵達の活躍によりオブリビオンが撃破された事で解決を見たはずなのだが……事件は、まだ終わっていなかったようなのだ。

「森の中には小川が流れているのですが……今度はその川が、以上に成長してしまっているのです」
 件の川は、本来は労無く渡れる様な小川であり、森の動物達の憩いの場でもあったらしい。近隣の村々も、その川を水源としている所があるそうだ。
 そんな川が、一般人では渡るのが憚れる様な激流と化してしまっているそうだ。

「原因は、既に分かっています。……『水の大蛇』と呼ばれるモンスターの仕業です」
 『水の大蛇』は元々この川の水源地、森の奥地にある湖に住まう主なのだそうだ。危険なモンスターではあるが、近寄らなければ襲われる事も無かった為に、近隣の人々や動物達ともある程度の棲み分けが出来ていたそうなのだが……

「近年の、オブリビオンの活性化により、その性質に歪みが生じてしまったようなのです」
 『帝竜ヴァルギリオス』と『群竜大陸』の復活を受けて、今『アックス&ウィザーズ』世界では到る所でオブリビオンが活性化してしまっている。
 この大蛇の活性化も、その一つ。恐らく、先日の『花と息吹の竜』が近場に棲み着いてしまった為、そのあおりを受けてしまったのだろうとヴィクトリアは推測する。
 ……ともかく、今回はこの『水の大蛇』の討伐が主目的となるようだ。

「現場が分かっていますので、転送先は大蛇の棲む湖のすぐ側になります。ですが、大蛇を討つ前に……」
 湖の周辺には、『レッサーデーモン』と呼ばれる人型の悪魔が数体存在しているとヴィクトリアが告げる。
 何故こんな場所にいるのかは判らないが、放置していて良い影響がある筈が無いので、先に駆除をして欲しいそうだ。

「戦いが終われば、森の異変の原因は全て根絶出来るはずです。静かになった森をゆっくり歩いて……この村までくれば、例のイベントのご相伴に預かれる様に、手配をしておきますね?」
 地図を指し示して説明するヴィクトリア。例のイベントとは……木の実を想い人に渡す、というアレの事である。
 木の実は、その果汁が『チョコレート』に近い風味と味わいがあり、加工する事で美味しいお菓子が作れるのだとか。気分が乗れば、参加してみるのも良いだろう。勿論、食べてみるだけでも大歓迎だ。
 ……ここまでを、ふわりとした微笑みのまま説明して。直後、空気を変えるようにヴィクトリアは表情を真剣な物に変えた。

「……『水の大蛇』がこのまま活性化し続ければ、川の下流が大洪水によって流されてしまいかねません。そうなる前に、阻止したい案件です」
 森の周辺全ての営みを護る為、皆さんのご協力をお願いします。そう言って、ヴィクトリアは丁寧に頭を下げるのだった。


月城祐一
 バレンタインに絡めた訳ではありません(目反らし)
 カップルなんて水に流されてしまえとか、そんな事考えてません(震え声)
 どうも、月城祐一です。……考えてないったら考えてないってば!

 今回は、森林の奥地に赴いて頂きます。戦闘メインのお話になるはずです。
(前回の事件というのは https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=2429 になります。読まなくても問題はありませんが、宜しければ)

 第1章は集団戦。森の中で羊の頭と鳥の翼を持つ悪魔が相手になります。
 悪魔とは言いますが、いわゆる『野良』です。森の中での戦闘という所を考えると良いかも知れません。

 第2章はボス戦。『水の大蛇』戦となります。
 戦場は湖畔。地の利は相手にありますので、その辺りを考えて頂ければ。

 第3章は、村での『チョコレート(もどき)』の試食などを楽しめます。
 事件解決のおよそ1~2日後、猟兵達は森をのんびり楽しんで帰ってきたというテイで始まります(その間に、村の若い衆達は『試練』を突破したという事になります)
 ヴィクトリアが上手い事話を纏めてくれるので、村人達も喜んで例の木の実と作られたお菓子をお裾分けしてくれます。
 菓子作りにチャレンジするも良し、用意されたお菓子を味見してみるも良し。行動例はあまり気にせず、お好きなようにお楽しみ下さい。
(第3章はお声掛けがあればヴィクトリアがお相手いたします。宜しければ、お声掛け下さい)

 それでは、皆様のご参加、お待ちしております!
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第1章 集団戦 『レッサーデーモン』

POW   :    悪魔の三叉槍
【手にした三叉槍】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    金縛りの呪言
【手で複雑な印を結んで】から【呪いの言葉】を放ち、【相手を金縛り状態にさせる事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    呪いの鎖
【投げつけた三叉槍】が命中した対象を爆破し、更に互いを【呪われた漆黒の鎖】で繋ぐ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 『水の大蛇』が棲むという、湖の側。転送された猟兵達は、周囲の森を探り歩く。
 先に、悪魔を駆除して欲しいとグリモア猟兵は言っていた。その姿は、随分と目立つ姿だそうだが……

 程なくして、猟兵達はそれぞれ悪魔と対峙する事になる。羊の頭と鳥の羽を持つ悪魔、『レッサーデーモン』だ。
 森の中での戦闘となる。足場や射線に気を使いながら……本番前の前哨戦が、始まった。
ヴィリヤ・カヤラ
何度も異変に襲われるのは生活してる人が大変だし、何とかしないとね!

森の中だから足元に気を付けて戦わないとだね。
それと、木があるから、
ある程度は隠れるのも可能性かな?

戦闘時は連携できる方がいれば連携重視。
敵の呪いは【呪詛耐性】で多少弱めたり出来るかな…。
戦闘は【目立たない】で木に隠れながらジャッジメント・クルセイドで攻撃していくね。
隠れられそうになければ氷晶も混ぜて足止めを狙いつつ攻撃。

鎖で繋がったら黒剣の宵闇を
蛇腹剣に変形させての攻撃も混ぜていくね。
ちゃんと物理攻撃も出来るんだからね!

アドリブと他の方との連携も歓迎。


アーサー・ツヴァイク
※協力アドリブ大歓迎

森の中で戦うのは初めてだな…。
身を潜めて敵を撃つってのもいいが…俺はそこまで射撃戦特化じゃねーし、飛び道具よりは接近戦の方がいいか。

とりあえず敵に【挑発】かけて【ダッシュ】で接近。敵の攻撃を新装備:バスターホーンで受け止めるぜ! おっと、俺のバスターホーン…見た目は盾だが…つーか普通に盾だが、A&Wのファンタジーな力で…ハンマーに早変わりだぜ! その腹筋で受け止めてられるもんなら、受け止めてみな!

相手に無理やり接近できたら、追い打ちだぜ。新入りにいいカッコばかりさせられねぇからな。俺もド熱いのを一発…ぶちかますぜ!!





 豊かな自然に包まれた湖畔地帯。ピクニックには最高のロケーションと言える環境だ。
 だが、今はそんな環境を満喫は出来はしない。異常に成長した森林、暴れ川へと変じた清流、立て続けに起きた異変に、苦しむ民が現実にいるのだ。

「何度も異変に襲われるのは生活している人が大変だし、何とかしないとね!」
「あぁ、そうだな。しかし、森の中か……」

 素直な気持ちでやる気満々、と言った風情のヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)に同意しつつも、アーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)の表情はどこか悩ましげだ。
 それと言うのも……

「森の中で戦う、ってのは初めてだな……身を潜めて敵を撃つ、ってのもいいが」
「木を遮蔽物にして、隠れながら、ね。でも、その武器だと……」
「ああ。今回は接近戦の方がいいか」

 肩を竦めるアーサーの手には、今回用意してきた新装備が。名は、バスターホーン。一見すると一角獣の角飾りが雄々しい、巨大な盾なのだが何やら仕掛けがあるらしい。
 そんなアーサーに対して、ヴィリヤの方は遠距離への攻撃手段はいくつか持つが……その辺は、臨機応変に対応できると自負している様子。
 ともあれ、簡単だがお互いに立ち回りを確認する二人。こういった確認作業は即席でコンビを組む上では欠かせない作業なのだが……その、最中だった。
 ガサッ、と茂みが揺れて。その陰からヌッと現れるのは黒い影。

「あっ」
「お?」
『!?』

 黒い影……羊頭の悪魔、レッサーデーモンの唐突な登場である。警戒が不十分な状態でのエンカウントに、ヴィリヤとアーサーのみならず、レッサーデーモン側も間の抜けた反応を晒してしまう。
 そんな中、いち早く動いたのはヴィリヤだった。指先をレッサーデーモンの胴に指向し天からの光を放とうと……したその瞬間、身を翻しその場を飛び退く。三叉槍が、彼女の立っていた地に突き刺さり、爆発する。

「ヴィリヤ!」
「大丈夫! でも、これは……!」

 アーサーの声に無事をアピールするヴィリヤだが、その足には漆黒の鎖が絡みついている。鎖の先には、レッサーデーモンの左腕が。どうやらヴィリヤが光を放とうとするその直前で、悪魔が呪われた槍を投擲したらしい。
 右腕に再び呪われた槍を生み出しながら、レッサーデーモンが厭らしげに口を歪ませる。今のは避けられたが、動きを封じられれば次の槍は避けられまい、とでも言いたげだ。
 確かに、鎖から感じる呪いの力に対しては耐性が効くのか、そこまでの不快感は感じないが……物理的に動きを封じられてしまっては、次の一撃を避ける事は難しいだろう。
 端的に言えば、窮地である。だがヴィリヤの表情に焦りは無い!

「それ以上はやらせないぜ!」

 なぜなら、アーサーが動き出すのをその眼でしっかりと見ていたからだ。
 アーサーはデーモンの投擲する槍の射線に飛び込むと、その槍を盾を使って弾き返す。再び爆ぜて鎖が生み出されるが……アーサーの身に絡みつくより早く、アーサーが悪魔との距離を詰める!
 その一瞬の早さに、驚愕の面持ちを見せるデーモン。その表情が、更なる驚きの色で染まるのは、この直後だった。

「俺のバスターホーンは、見た目は盾だが! この世界のファンタジーの力で……!」

 瞬間、光り輝くバスターホーン。光が収まったそこにあるのは、一振りの戦鎚!

「ハンマーに、早変わりだぜ!」

 なんじゃそりゃ!? と言わんばかりに目を見開くデーモン。実際、その変形プロセスは一切不明であるが……実際に、そういう武器なのだから仕方がない。
 アーサーは戦鎚を腰だめに構えると……

「その腹筋で受け止められるもんなら、受け止めてみな!」

 デーモンの無防備な胴を粉砕するような勢いの一撃を叩き込む!
 ヴィリヤを蝕む鎖も衝撃に負けて弾け飛び、デーモンは勢いそのままに吹き飛ばされるか……と、思いきや。右手を拘束されて無様に地に落とされる。

「私だって、ちゃんと物理攻撃も出来るんだからね!」

 デーモンの右手を拘束したのは、ヴィリヤの蛇腹剣、宵闇だ。鞭の様なしなやかさと、剣の鋭さを持つその剣で、デーモンの右手を拘束したのだ。
 やられたら、やり返す。そう言わんばかりにその拘束を強めるヴィリヤ。デーモンは逃れようともがくが、もがけばもがくほどに剣の刃で徒に身を傷つける事になってしまう。
 ……そして、生み出される隙。そんな隙を見逃す程、猟兵は甘くはない。

「追い打ちだぜ! ……ド熱いのを一発、ぶちかます!」

 聖痕に宿る、太陽の力。その力を拳に込めて、アーサーが超高熱の一撃を放つ!

「この手に宿る太陽の力、受けてみやがれえええええ!!!!」

 裂帛の気合と共に放たれた拳が、動けぬデーモンの横っ面を見事に捉えると……その高熱の前に、デーモンの羊頭が弾け飛んだ
 先手を打たれても動じず、冷静に連携に徹したヴィリヤ。その連携を受け、火力を遺憾なく発揮したアーサー。
 二人は見事に、デーモンの一体を討滅したのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トレーズ・ヘマタイト
※協力アドリブ自由

レッサーデーモンか、飛ばれれば厄介だが、森ならばやりようもあるか
背中の羽は飾りではないな?

UC:インビジブルで透明化し、タールの肉体とUC:バウンドボディの伸縮自在の肉体を駆使して音もなく移動する

レッサーデーモンを発見したならば奇襲を行う

戦闘時はUC:ブラッド・ガイストで装備を強化
白剣の酸【属性攻撃3】で確実に削り、刻印とナノマシンで強化された【怪力3】の触手による拘束や殴打などをしていく

敵が飛んで逃げるようならバウンドボディで周囲の木々とデーモンを繋ぎ、ゴムのような原理で逆に地面に叩きつける

止めは黒剣で、倒したなら肉体も取り込む、死体から呪いなどが発生しても困るのでな

以上


サンディ・ノックス
共存が無理でも棲み分けできていたのなら理想に近いと思うんだよね
オブリビオンの影響で歪んでしまったのは残念
倒すしかないなら倒す、そういうお仕事だもの

大蛇には同情の念もあるけど悪魔には興味しかないなぁ…主に食用として
俺は魂を啜るのが好きな種類の黒騎士だから諦めてね?

同業者がいたら協力するよ
周りに合わせるのは日常茶飯事だから上手くやるさ

武具と一体化
黒基調で赤いラインが入った全身甲冑姿へ変身し戦闘

朔(ワイヤー)の【投擲】が小回りもきくし使いやすいかな
丈夫な枝にひっかけて移動や回避の補助
敵の武器に巻きつけて奪い取りも狙えそう
『解放・夜陰』の水晶は小さいし自在に操れるから森でもいつもの性能を発揮できるはず




 樹上の葉が、枝が、風も無いのに独りでに揺れる。……いや。よくよく見れば、木に掛かる影があることに気がつくはずだ。
 影の正体は、その身を透明化するユーベルコードを使い探索を行っている猟兵だ。

(レッサーデーモンか。飛ばれれば厄介だが、森ならばやりようもあるか)

 ブラックタールの猟兵、トレーズ・ヘマタイト(骸喰らい・f05071)は、その身体の特性を活かして無音の探索術を見せる。バウンドボディのユーベルコードも織り交ぜつつ、木を飛び交う姿がもし見れたのなら……素早い影が飛ぶようにしか見えなかっただろう。
 彼がこうして樹上を飛び交うのは、羊頭鳥翼の悪魔の翼……空を飛ばれる事を警戒した故の事なのだが。現状、空を行くのは森に住まう鳥ばかり。悪魔の姿は、見る影も無い。

(まさか、背中の羽は飾りだったか。……む?)

 空中への警戒が空振りに終わりそうな事に、どこか残念そうな感想を抱くトレーズの耳(彼の耳に当たる感覚器がどこにあるのか、という興味は尽きないが)に、何やら物音が聞こえてくる。動物が獣道を行く様な物ではない。もっと大きな……何かが相争うような。そんな物音だ。
 この状況で、そんな物音を立てるような手合と言えば……トレーズは再び木を蹴って、音の方角へ身体を飛ばした。


 視点は移り、その物音の現場。漆黒に赤のラインが入った全身甲冑を纏う男が、羊頭の悪魔と対峙していた。
 全身甲冑の男は、猟兵だ。名をサンディ・ノックス(飲まれた陽だまり・f03274)と言う。今は全身を甲冑で飾り判らないが、その鎧の下は柔和な表情の似合う中性的な少年だ。
 彼もまた、今回の依頼を受けてこの地に降り立ち、単独で森を探索していた所……こうして、偶然悪魔と遭遇したらしい。

(……大蛇はまぁ、同情の念もあるけどね)

 鎧の下で、サンディは思う。
 泉の大蛇と周辺の森に棲む者達は、共存こそ無理ではあったが緩やかな棲み分けは出来ていたのだ。多種多様な生命が行きていく上での、ある種の理想に近いと彼は考える。
 そんな理想形を、オブリビオンの影響で歪まされてしまったのは……残念であるとも思っていた。
 残念ではあるが……そこで何か手心を加えようとは思わない。倒すしか無いなら、倒す。サンディの務めとは、そういう仕事なのだから。
 ……そう。大蛇『には』ある程度の同情の念は抱いているのだ。なら、目の前の羊頭の悪魔には?

(コイツら……レッサーデーモンには、興味しかないなぁ)

 主に、食用として。鎧の下のサンディの口元が、禍々しく歪む。
 彼の猟兵としての本質は、『黒騎士』。呪われた武具を纏い、討ち滅ぼした相手の魂を啜る、呪われた騎士の力を振るう者だ。
 眼の前の悪魔の魂の味は、どんな物なのか。サンディのレッサーデーモンに対する興味は、そこだけしか無かった。
 ……そんなサンディの狂気じみた殺気を感じたのか。悪魔は一瞬たじろぐ様な素振りを見せるが……たかが一人と見て、気を取り直したか。手に携える槍を構えると、投擲する。
 迫りくる槍は、護りの構えもとらないアーサーに直撃し、爆発。煙が湧き立つが……呪いの鎖は、生じない。

「──俺は魂を啜るのが大好きな種類の黒騎士だから」

 頭上から響く声に、ハッと顔を上げる悪魔。その視線の先には、太い木の枝にワイヤーを掛けて宙吊りとなったサンディの姿が。
 槍が当たる、その瞬間。ワイヤーを放ち、巻き上げる事でその場から一瞬で離れたのだろう。宙吊りとなったまま、サンディが言う。

「……諦めてね?」

 その言葉と共に、悪魔の身体に次々に叩きつけられる水晶の数々。闇の属性を持つそれは、悪魔との親和性も高いように思えるが……耐性を越える量を叩きつけられては、どうしようもない。羊頭の悪魔はその身をズタズタに裂かれ、地に崩れ落ちる。

「見えないまま、気付けないまま逝けたんだから。幸せだったろうね」

 地に降り立ち淡々と呟くサンディ。足元に転がる躯には、もう興味を示さない。
 だが、そんな彼の背に迫る、黒い影。茂みを掻き分け現れたのは、今討ち倒した者とは別の悪魔だ。悪魔は地に降り立った直後の、サンディの背に迫り……頭上から飛び降りてきた影に、押し潰された。
 悪魔を押し倒した影は瞬く間に黒い塊である正体を露わにすると、纏う武器の封印を解除。携える酸の剣と、ナノマシンと刻印で強化された触手が躍動し、拘束する悪魔を削り、嬲り、殴りつけて、制圧する。
 影の登場から悪魔の制圧まで、要した時間は10秒に満たないほんの僅かなものだった。透明化した身体と、自身の質量を活かした奇襲攻撃が、これ以上無いほどに綺麗にハマった結果の完璧な制圧劇であったと言えるだろう。

「……猟兵か。邪魔をしてしまったか?」
「いいや、手間が省けて助かったよ」

 悪魔の死体が呪いを溢し、森を穢しても困ると。斃した悪魔をその肉体に取り込みながらのトレーズの声に、鎧姿を維持したままのサンディが答える。
 声を掛け合う二人だが、その振る舞いから警戒の色は抜けていない。何故なら……
 戦闘音に誘われたのか。ガサリッ! と、茂みが再び揺れて、新たな悪魔が現れる。そんな悪魔の姿を見やり、二人の猟兵は武器を構えた。

 ……結果を言おう。二人はこの後も、数体の悪魔を見つけ、その全てを仕留める事に成功する事になるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

向坂・要
まぁ、人里の近くにいてほしい連中じゃありませんねぇ

森の中、ってんならあっちもそんなに動き回れねぇでしょ
羽とか邪魔そうですしねぇ

分体(小振りな鉱物製の狼)の方が小回りが効くんじゃねぇですかね

こちらは【目立たない】様に身を隠しつつ【スナイパー】【鎧無視攻撃】【毒使い】や風や大地のルーン(ラドやヤラ)の【属性攻撃】で攻撃
接近されりゃ【零距離射撃】や体術も組み合わせ

どうやら呪いの攻撃も複雑な印を結ばにゃならねぇらしい
なら、そんな暇も与えなきゃいいだけ、ってね

アドリブ、絡み歓迎




 即席のチームを組みつつ、猟兵達が各所で羊頭の悪魔を狩り進める中。樹々に身を隠しながら単独行動を取る猟兵がいた。
 いや、単独行動というと語弊があるか。猟兵の周りには、多数の鋼鉄製の小さな狼が屯している。鋼鉄製の少狼の総数は実に100に迫る数。既に湖畔の周囲に散っており、悪魔や猟兵達の動向や戦いぶりを探っている。

(森の中、ってんなら悪魔もそんなには動き回れねぇでしょ。羽とか、邪魔そうですしねぇ)

 事前に知らされた悪魔の容姿。確かにその姿は、この深い森の中を動くには邪魔になりそうなパーツが多い姿だ。
 とは言え、猟兵達にとっても同じ事が言える。慣れぬ森の中での行動は意外な所に落とし穴が潜んでいたりするものだ。それらを警戒しながらだと、見落としも出るかもしれない。
 だからこそ、探索行動は複製した自らの分体を念力で動かす事で任せようと、向坂・要(黄昏刻・f08973)は考えていた。
 だが、彼の目論見は現状ではあまり上手くいっていないと言って良いだろう。他の猟兵が戦果を挙げる中、彼が撃破した悪魔は未だゼロだ。
 ……これだけ多くの分体、その手数を以ての捜索に悪魔が引っかからないというのは……実際の所、巡り合わせ、運が悪かっただけなのだが。その事実を要が知る由も無い。

(ふむ……ま、いいでしょ。下手に戦いが起きるよりゃ平和な方が……うん?)

 戦果を挙げていないという事実に対しても、特に動揺を覚えないのが彼の美点であり長所であるだろうか。
 常人ならば焦りを覚える状況ではあるが、独特な感性と視点を持つ事でその冷静さを意地し続ける要。だからこそ、分体の1体に生じた異変に、即座に気が付くことが出来た。

(すぐ近くにいる分体か。ダメージを受けて……ふむ)

 この状況で、分体であるとは言え鋼鉄製の狼に傷を付けられる相手など、そうは居ない。どうやら目当ての悪魔が食いついたようだと見て、要は口元に手をやるとジッと集中を高める。
 件の分体を此方の側へ誘導しつつ……集中を高める毎に、携える短刀に刻まれたルーン文字が薄く輝き、力を高める。
 呪いを生み出すにしろ、槍を投げるにしろ。相手は何らかのアクションを取らねば、攻撃には移れない。ならば、こちらが取るべき攻撃の手は一つ。
 ……暫しの後、ガサリと茂みが揺れて。茂みから傷ついた鋼鉄の狼と、それを追い掛ける悪魔が飛び出すと、要の『眼下』を通過していく。そのタイミングを見計らい……目立たぬ様に隠れていた樹上から飛び降り、悪魔の後頭部に、短剣を突き立てた。
 突き立てられた短剣は、大地と風のルーンの力を受けて硬度と切れ味を増してある。刃は簡単に悪魔の頭部を割り、頭の内部を毒で満たし、破壊した。
 相手が攻撃にアクションを取らねばならないのなら、その隙も与えぬ早業で仕留めれば良い。要自身が自らの存在を隠しつつ、相手にも気付かさない様に誘導したからこそ、その狙いは見事に果たされたのだ。

「……大蛇もそうですが、人里近くには居て欲しい連中じゃありませんからねぇ」

 頭部を砕かれ崩れ落ちる悪魔を尻目に、短刀の穢れを振り払う要。
 ……これ以後、彼はレッサーデーモンと遭遇する事はなかった。目立った戦果を挙げる事は適わなかったが、それでも着実な成果は上げたと胸を張って良いだろう。

苦戦 🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『水の大蛇』

POW   :    水の身体
【液体の身体により】、自身や対象の摩擦抵抗を極限まで減らす。
SPD   :    口からの水弾
レベル×5本の【水】属性の【弾丸】を放つ。
WIZ   :    身体の復元
【周囲の水を体内に取り込み】【自身の身体を再生】【肥大化を行うこと】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は宇冠・由です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●狂える水の大蛇
 湖畔側の森の中。居着いた悪魔達を猟兵達は探り出し、狩り果たした。本番前の前哨戦を、猟兵達は見事にこなしたのだ。

 やがて、悪魔を狩った猟兵達が湖畔に顔を出す。深い森に抱かれた湖は、普段ならば美しい景観を猟兵達に見せたはずだ。
 だが、今。猟兵達の目の前に広がる景色は、水嵩を増して周囲の土を汚泥に変えた濁った湖の姿だった。そしてそんな湖の中央には、無意味に暴れ狂う一匹の大蛇の姿。
 水で身体を構築された大蛇は、湖畔に足を踏み入れた猟兵達に気が付くと、狂った咆哮を一つ上げて猟兵達に挑みかかってくる。

 眼前には水を力に変える狂った湖の主。地の利は敵に在り。
 ぬかるむ足場に気を使いながら、猟兵達はこの強敵を討ち果たすべき、戦いを挑むのだった。
ヴィリヤ・カヤラ
湖の主を倒すのは少し気が引けるけど、
放ってもおけないし頑張るしかないよね!

戦闘時は敵の動きをよく見て行動。

どう見ても敵の方が有利だから、
湖に引き込まれたりしないように気を付けるね。
氷が効くなら【氷晶】をメインに使って攻撃と牽制、
効きにくいなら【ジャッジメント・クルセイド】で頑張ろうかな。
剣か宵闇を蛇腹剣に変形させて届くなら、
剣での攻撃も混ぜていくね。
自身または、連携をとれる人がいて怪我をしたら【輝光】で回復。
…回復時は宝石を投げるなら湖に落ちてもしょうがない精神で!
少し勿体ないけど宝石の予備はあるし。

アドリブ、連携歓迎。


アーサー・ツヴァイク
※引き続き協力アドリブ大歓迎

アイツは水が体なのか…? 簡単に殴らせてはくれなさそうだな…
足場が悪い上に水の体で普通の攻撃は通用しなさそうだ。だったら、今度は遠距離から攻撃するぜ!

俺のレイシューターは太陽のエネルギーをぶっ放す武器だ。弾丸だけなら水の身体を貫通しちまうだろうが…「熱」は摩擦に関係ないぜ!
バンバン撃ちまくって、アイツの水の身体をまとめて吹き飛ばしてやるぜ!

水の体とは言え、おそらくどこかに核となる物体があるはずだ。何とか水の身体を引き剥がし続けて、敵の弱点を狙いやすくしよう。
いっそのこと【一斉発射】とフルバーストを駆使して、全部まとめて撃ってみるのも手だな…やってみるか!


サンディ・ノックス
※連携アドリブ歓迎

想像以上の暴れ方だ
苦しそうにさえ見えるよ
今、楽にしてあげるからね

水に有利になりそうな力は持っていないから
持っている力で最善を尽くしつつ相手の弱みを探ろう

引き続き武具と一体化、黒の甲冑姿で戦闘
主武器は僅かでもリーチを稼ぐために鎖鎌に変形

足場が悪いし移動は最低限
敵の攻撃を【見切り】回避する程度

『解放・夜陰』で攻撃し敵の気を引き【おびき寄せ】る
近付いて来れば回避後【カウンター】を狙う

『解放・夜陰』の水晶はまず敵の全身に散らして攻撃
次に1か所(目、あるいは全身攻撃した際に明らかに嫌がった場所)を集中攻撃
どちらが効果的か【戦闘知識】も駆使して観察・考察し、有効と判断した方法で攻撃を継続


トレーズ・ヘマタイト
※協力アドリブ自由

水蛇か、物理が効かないとなると出来ることは限られるが、やれることはしよう

UC:イリュージョン・オブリビオンで道中に取り込んだレッサーデーモンを最大数召喚、金縛りの呪言や呪いの鎖で水蛇を妨害しつつ湖から引き離すように動かす
自分はUC:インビジブルで透明化し湖に移動、刻印に可能な限り入れてきた吸水材を使い水蛇の補給を断つ
その後はタイミングを見てUC解除、UC:ブラッド・ガイストで装備を強化、白剣にタイプメデューサを入れ石化属性にし、災魔の腕の強化スタンガンと合わせて行動を阻害し削っていく

災魔の腕には災魔の魂を鎮める力があるが期待はできんか

吸水材は手順を踏めば水を取り出せる物だ

以上





 猟兵達が湖畔に踏み込む、その少し前の事。
 この場に集まった猟兵達が一堂に介し、樹々に身を隠しながら大蛇の様子を伺っていた。
 目的は、大蛇の戦力評価とそれぞれの動きの摺り合わせだ。

「アイツは、水が身体なのか……?」
「物理でどうこう、というのは中々難しいか。 出来る事が限られるが、やれることはしよう」

 アーサーが湖で暴れる大蛇を見て受けた印象は、『簡単に殴らせてはくれない相手』という物だった。トレーズの受けた印象も、概ね似たような物。
 実際に、大蛇の身体は湖の水で構築されているらしい。頭頂部こそまだ澄んだ色をしているが、水面に触れる部分は濁っている様な印象を受ける。
 ……身体が水で出来ている。つまり、物理的な衝撃でダメージを与えるのは難しい。だがそれならそれで、いくらでも選択肢を持つのが猟兵という存在だ。

「水で出来ているのなら、凍らせてみたりとか……」
「逆に熱で蒸発させる、って手も有りだな」

 掌の上で氷の刃を遊ばせながらのヴィリヤに対し、アーサーは武器を持ち替えて射撃戦の構え。彼の今度の武器はどんな仕掛けがなされているのやら、である。
 そんな中、一人ジッと大蛇の様子を伺い続けているのはサンディだ。先程も共に行動した、トレーズが彼の様子に気付き声を掛ける。

「どうした、何やら浮かない顔をしているが」
「あぁ、うん。想像以上の暴れ方をしているな、って」

 サンディの言葉に、皆が大蛇に視線を向ける。大蛇は鎌首を擡げて湖のあちらこちらを徘徊し、無駄に吠えてはその身で水面を叩く。
 何も知らぬ者が見れば、癇癪を起こした子供が暴れるような見苦しい様にも見えなくもないが……

「ここまで酷いと、いっそ苦しそうにさえ見えるよ」

 サンディの眼には、大蛇が苦しんでいる様に見えていた。
 ……猟兵達ならば、そう見える理由も判る。彼らは皆、その理由を知ってこの場にいるのだから。
 世界規模、いや他世界規模での、オブリビオンの活性化が、その原因だ。眼前の大蛇もまた、そのあおりを受けて狂ってしまったというのだから。
 静かに暮らせていた者ですら狂わせる、世界の歪み。その脅威を、猟兵達は今目の当たりにしているのだ。

「早いところ、楽にしてあげないとね……」
「そうね。湖の主を倒すのは気が引けるけど、頑張るしかないよね!」

 哀れみの色の強いサンディの言葉に続くのは、割り切る様に明るいヴィリヤの声。
 気が引けるという言葉通り、彼女にとっても恐らく本意ではないのだろう。だが、大蛇を倒さねば周囲の全ての生命に影響が及ぶ事態である。そしてその事態は、この地の生態系の頂点であった大蛇にとっても、本意ではない筈だ。
 だから努めて、ヴィリヤは明るく振る舞う。そんな彼女の配慮に同意するようにアーサーはニヤリと笑い、トレーズも同意するように頷く動作を見せた。

 斯くして、猟兵達は大蛇の眼前に躍り出る。彼らは果たして、どの様に戦うのか……



 湖の畔に現れた影が……5と、少し。その多くは、このところ湖の周囲を彷徨いている小物共か。残りの二つは、見たことの無い影だ。
 まぁ、良い。この狂いそうな不快感を誤魔化せるのならば、小さな者共と遊ぶのも悪くはない。精々、長く保ってくれよ?

 ……果たして、大蛇がそう思ったのかは定かではないが。湖畔に足を踏み入れたアーサーとサンディ、その他大勢の姿を見た大蛇が、咆哮を一つ天に向けると凄まじい勢いで此方に突進してくる。

「さて、まずは最善を尽くしつつ、相手の弱みを探らないとね」
「あぁ。……にしても、こいつらと肩を並べる事になるとはなぁ」

 再び黒の甲冑と一体化したサンディの声に同意しつつ、アーサーは肩を並べる者達に胡乱げな視線を向ける。
 肩を並べるその他大勢……羊頭の頭、人の身体、鳥の翼と呪われた槍を持つ、異形の悪魔。その数5体のレッサーデーモンである。
 先程まで命のやり取りをしていた連中だが、今この場にいる連中は先程の連中であってそうではない。彼らの正体は、トレーズがその身を魂ごと取り込み、使役する幻影だ。
 戦いとは、数。質の面では若干心許無いが、囮役にはなるだろうとトレーズがアーサーとサンディの二人の盾役として喚び出したのだ。
 そのトレーズ本人は、というと。囮役達から少し離れた場所で、透明化して待機中である。ヴィリヤも彼と共に待機している。二人の出番は、もう少し先だ。
 ……作戦の第一段階。まずは囮を用意して、陸地の方へ大蛇を誘き寄せる。出来れば陸地に完全に上げてしまいたいが……相手が自ら地の利を捨てるとは思えないので、そこまでは望まない事にしていた。

「とりあえずは、第一段階は成功した、って見ていいのか?」
「そうだね。後はどれだけ、気を引けるか……っ、来る!」

 ──ォォォォオオオオオオオン!!!!
 サンディの言葉と同時に、湖畔地帯に響き渡る大蛇の咆哮。鎌首を擡げつつ此方に泳ぎ来る大蛇の周囲の水が吸い上げられ、大蛇の身体が肥大化していく。
 その大蛇の行動を阻害し、気を引きつけようと。横一線に並ぶデーモン部隊が一斉に印を組むと……口から漏れ出るのは、人の喉では表現できない呪いの言葉。相手を金縛りとし、行動の自由を奪う呪言を唱えるが……次の瞬間だった。
 ヒュン! という風切り音が戦場を駆け抜けると、並ぶデーモン内の一体の上半身が消滅する。次の瞬間、周囲に撒き散らされるのは膨大な量の飛沫。
 ……一撃。肥大化する事でパワーを増し、金縛りを力ずくで突破した大蛇の口から放たれた水弾の一撃が、炸裂したのだ。再召喚された存在が元より弱体化しているとは言え、その威力足るや恐るべき物である。

「チッ……!」
「この……! 喰らいやがれ!」

 その威力を前にして、囮役が長くは持たない事を悟ったサンディが舌打ちと共に闇の属性を纏う水晶を放てば、連携する様に大型の射撃武器を発砲するアーサー。
 だが、二人の攻撃を持ってしても、大蛇の纏う水の層を一枚、二枚と剥がすだけだ。
 そして再び放たれる水弾。直撃し、消し飛ぶデーモンを横目に見ながらも……アーサーとサンディ、二人の表情に、焦りの色は見えなかった。



 戦闘開始から数分。既に大蛇は陸地のほど近くまで接近してきていた。
 既に呼び出されたデーモン部隊は全滅。囮役はアーサーとサンディの二人だけとなっており、双方とも少なくないダメージを受けていた。
 ……だが、その犠牲は決して無駄ではない。なぜなら大蛇がここまでやって来れば、作戦の第二段階へ移れるのだから。

「……準備は、いいか?」
「えぇ。やってやりましょ!」

 トレーズの声に、ヴィリヤの明るい声が答える。
 大蛇の身体の半分はまだ水に浸かったままだが、その姿勢は陸地で粘る二人組を直接牙に掛けんと随分と前のめりになっている。
 作戦の第二段階。陸地に接近した大蛇を凍らせ、動きを封じる。そして同時に、『吸水材』を投与。再生力を奪う。
 ……やるならば、今しかない!

「……いけ!」
「任せて! ……氷よ、射ぬけ!!」

 透明化を解除したトレーズの合図に、ヴィリヤが駆けて、跳び跳ね……高い位置から、氷の刃を投擲。狙うのは、今まさに大蛇が乗り上げようとしている、岸辺だ。
 その狙いは違わず、100本の氷の刃が大蛇の胴を包み込む様に氷の壁を作り……大蛇自身が保つ水分をも奪い、その壁を厚くしていく!
 だが、大蛇が今まで取り込んだ水の量は膨大だ。そして肥大化した事で、パワーも増している。力づくで氷の壁を打ち壊そうと、その身を捩るが……!

「水が相手ならば……こういうのは、どうだ?」

 飛び跳ねるヴィリヤとは対象的に、地を這うように大蛇に迫ったのはトレーズだ。
 動きを封じられ暴れる大蛇に取り付くと、身体に刻む刻印に封じられた物品を放出する。その中身とは……

「科学の力、思い知るが良い……!」

 その物品とは、『吸水材』。吸収性ポリマー、高吸水性樹脂、高分子吸収体とも呼ばれる、科学の産物である。
 その最大の特徴は、自重の数百倍から数千倍もの水分を吸収し、保持するという特性だ。混ざり物があると吸収効率が落ちるのが難点ではあるのだが、トレーズはそんな物質を18立方メートル分溜め込んで、持ち込んで来たのだ。
 水の大蛇は、その身体を水で出来たモンスターだ。そんな相手に対してこの攻撃がどれ程有効か。語るまでも無いだろう。
 取り込んだ水を見る見る奪われ、吸水材が限界を迎えた時には大蛇のパワーの殆ど奪われてしまったのだ。
 ……だが、まだ水面下にある下半身から水分を供給すれば、大蛇の側にはまだ勝ち目がある……が、そこは抜け目の無い猟兵達だ。

「悪いけど、君はここまでだよ」
「せめて、これ以上苦しまないようにしてあげるわね」

 ヴィリヤの蛇腹剣と、サンディの鎖鎌が、凍りついた部位を両断、粉砕し、水分の供給を断つ。
 そして分かたれた上半身、水分を失い苦しむ仕草を見せる大蛇の頭を……

「ここまで弱っちまったら、もう耐えられないだろ? ……フルパワーで、ぶちかます!」

 アーサーが大型銃、太陽の力を糧として動く愛銃『レイシューター』の全力射撃を見舞い、消し飛ばした
 ……水分の多くを失っていた大蛇の頭部は、その膨大な熱の前に耐える事が出来ない。蒸発の瞬間も知覚出来ぬまま、一瞬で逝けた筈であろう。

 ……正面を切って大蛇と戦えば、地の利を持たぬ猟兵達は恐らく苦戦を強いられた。攻撃は当たらず、一方的に嬲られる展開となったかも知れない。
 だが、地の利というその穴を埋める様に、個々の持つ特徴と、準備をもって動いた結果……猟兵達の努力は、本来不利となるはずだった展開を引っ繰り返すに至ったのだ。

 ……ともあれ、狂える大蛇は討ち倒された。これでこの森を襲い続けた異変は、終わりを迎える事だろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『幻想的な食材でレッツクッキング!』

POW   :    私は食べ専です。豪快に食べる!

SPD   :    幻想的な食材も、私の技量にかかればたちまち美味しい料理に!

WIZ   :    まさにファンタジーな料理を生み出してしまう。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 森の異変を産んでいた、『花と息吹の竜』、そして『狂える水の大蛇』は、討ち果たされた。静かになった深い森は、遠からずその姿を元の平和な姿へ戻していく事だろう。
 そんな森を、猟兵達は歩いていく。ここまで楽しめなかった森の景色と、日が暮れる姿を、夜の静けさを心身に刻むように、散策していくこと、2日。森を抜け、件の村へ辿り着いた。
 この村で、グリモア猟兵が例の木の実とその加工品を楽しめるように手配をしてくれているそうだが……?

「おぉ、おぬし達が例の冒険者かね?」

 村の入り口で声を掛けてくるのは猟師風の身形をした老いた男性。この老人が、件の老猟師であろうか。

「おぬしらがあの湖のヌシを止めてくれたおかげで、川も何とか渡れるくらいに収まりおったよ。約束の通り、宴の準備は整えておる。さ、こっちじゃよ」

 グリモア猟兵がどう説明したのかは定かではないが、少なくとも村人達は猟兵達に好意的に接してくれる。例のイベントで使われる木の実は豊作で、猟兵達にお裾分けをしても十分な程だ。
 さて、この木の実を料理しようか? それとも、村人達が作る菓子を堪能しようか? 平和が訪れた村での、ささやかな一時が訪れようとしていた。
アーサー・ツヴァイク
※最後までアドリブ協力大歓迎
【POW】判定…だけど料理もするぜ!
調理用の道具はウェポン・アーカイブで召喚だ!

で、料理だけど…木の実の果汁を暖めたらホットチョコレートみたいな感じになりそうじゃん? 冬だしな、温かい飲み物とか欲しいだろ!
後は俺が持ってるこの…蜜ぷにシロップ! 二つの世界の食材が組み合わさったら、どんな味になるんだろうな…とりあえず飲み物に混ぜて飲んでみよ。
…飲み物に変えれば、真っ正面から木の実を渡せない人でも想いを伝えられるんじゃないかな。村の人も試してみるといいぜ!




 村の各所では、意中の異性に木の実を捧げて思いを告げる光景が繰り広げられている。またどこかで歓声が上がり、新たなカップルの門出を祝う声が響く。
 そんな中、村の中央。普段は村人達の交流の場となっているであろう広場では、各家庭から椅子や机が持ち出され、余った木の実や作られた菓子が並べられてちょっとしたお祭り気分と言った感じであった。

「おぉ、本当にチョコレートみたいな風味がするんだな」

 そんな菓子の一つ(素朴な見た目の焼き菓子だ)をアーサーは手にとって口にすると、口に広がる風味に目を細める。
 事前に聞いていた通り、加工した木の実(村人が言うには、木の実を潰し、濾した液体を菓子種に加えているそうだが)は確かに猟兵達の知るチョコレートに近い風味と味わいを感じられた。甘みを加えれば、より近い感じになるだろうか?
 そんな甘味を楽しみながら、んっ? とアーサーは片眉を上げる。視線の先には、どことなくぎこちない所作を見せる一組の男女。どうやら木の実の試練を超えて結ばれたは良いが、距離感を掴みかねている様子。
 ……そんな悩める者達を前に、何もせずにはいられないのが、アーサーという猟兵である。

「……っと、ただ貰うだけじゃ申し訳ないな。お返しに、俺も一品作らせてもらうぜ!」

 そう言って用意するのは、小さな手鍋と木の実の果汁に……蜜ぷにシロップ。アルダワ魔法学園世界のダンジョンで良く見られる、あの蜜ぷにから採れるシロップだ。
 手順は簡単だ。手鍋に果汁を入れて、焦がさないようにゆっくりと温めて。程よい所でシロップを加えれば……

「……冬だしな。温かい飲み物とか、欲しいだろ!」

 寒い冬には有り難い、ホットチョコレート(もどき)の出来上がりだ。
 二つの世界の食材が組み合わさるとどうなるか、と味を見てみれば……

「うん、悪くないぜ。ほら、みんなもどうだ?」

 鼻を擽る香気。口に含めばまず舌を刺激する苦味をシロップの甘さが柔らかく包み込んでいく。口当たりも柔らかで飲み易く、喉を下ればホッと暖かな溜息が自然と零れていきそうだ。
 村人達にも好評な様子で、寒さに凍える身体を温める甘露に彼らの笑顔は絶えない。そしてその甘露を飲んだ事を切欠にしてまた一組、新たな交流が育まれていく。

(……飲み物に変えれば、真正面からじゃダメな人でもと思ったけど。この様子なら、大丈夫そうかな?)

 そんな村人達の様子を見て、アーサーの表情も和らぐ。
 村を脅かす脅威も消えて、これからはまた平和な日々が続くだろう。今日誕生したカップル達も、新たな暮らしと、生命を紡いでいく事になるはずだ。
 そんな明るい未来を思い描きながら、アーサーはまた一組のカップルに、手製の飲み物を注いで渡してあげるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
お菓子って持って帰れるかな
渡したいヒトが何人かいてね
無理なら作り方を覚えて帰ろう

転送やイベントに参加できるよう話をしてくれたことにお礼言いたいし
菓子作りにヴィクトリアを誘う
「俺、料理はあまり経験がないから勝手がわからないんだけど
ヴィクトリアさんはできるほう?」

作りたいのは小さい、気軽につまめるような菓子
一口チョコよりチョコクッキーのほうが木の実で作るには向いてるかな
きっちり分量を守るのが大事らしいから丁寧に作業していく

持ち帰るものは
試食して食べられないレベルだったら村人作の菓子を
食べられるなら自作を
更に1つ小物がほしい…渡したい相手の中に食事できない子がいるんだ
村の特産品があれば譲ってほしいな


ヴィリヤ・カヤラ
村が無事で良かった!
折角だからお菓子作ってみよう。
うーん、何にしようかな。

クレープにしよう!
生地に果汁を混ぜてチョコ風味にして焼いたら、
クリームやイチゴとか酸味のある果物を巻いたら完成!
巻かないで生地で包むのでも良いかも、
この辺はお好みでかな。。
簡単だからやってみたい村の子供がいたら一緒にやってもいいし、
忙しくなければヴィクトリアさんも一緒にどうかな?
あと少し試してみたいのがチョコレートドリンクかな。
ミルク足しても美味しいしね。

あとは楽しく過ごせたら良いかな。

アドリブ、他の方との絡みは歓迎。





「村が無事で良かった!」

 村の各所で目に映る笑顔溢れる光景に、心のそこから嬉しそうに声をあげるヴィリヤ。
 ヴィリヤはこの依頼の当初から、村の住人や討伐すべき大蛇に対しても思いを馳せていた。そんな心優しき彼女だからこそ、目の前で広がる光景は何よりも嬉しいと思える物なのだろう。
 そんなヴィリヤも折角の機会だからと、村の広場で机の上に具材を広げてお菓子作りにチャレンジする構え。挑戦する一品は……

「……クレープにしよう!」

 具材や興味津々にこちらを見る子供達を見ると、簡単な物が良いだろうと決断。
 手早く生地の素を用意すると、果汁を加えてチョコ風味に。フライパンに生地を落とし、薄く伸ばして焼き上げ、具材を乗せてくるりと巻き上げて……

「完成、っと!」

 田舎の村には物珍しい華やかな甘味に、わっと歓声を挙げる子供達。そんな明るい騒ぎを耳にして、近寄ってくるのは一組の男女。

「いい香りですね。クレープ、ですか?」
「あっ、ヴィクトリアさん! それにサンディさんも!」

 この地に猟兵達を導いた銀髪のグリモア猟兵、ヴィクトリアだ。その隣には、ヴィリヤと共に一連の戦いを潜り抜けた戦友、サンディの姿もある。
 どうやら賑やかな村を二人でいろいろ見て回っていたらしい。今回はお疲れ様でした、と頭を下げるヴィクトリアに、いえいえこちらこそ、と応じるヴィリヤ。だが直後、サンディを見て何かに気付いた様に声を掛ける。

「サンディさん、どうかしたの? そんな難しい顔をして」
「あ、うん。ちょっと考え事を、ね」

 サンディは今回のイベントのお土産を持っていきたいヒトが何人かいるらしく、何を持って帰ろうかといろいろと考えていたらしい。
 その為に意見を聞かせて欲しいという彼の悩みに、女性陣二人はふむ、と思案顔を浮かべて……

「ホットチョコレートとかクレープは、流石にお土産には向かないからね……」
「そうですね。やはりここは、焼き菓子……クッキー辺りが良いかと」
「そっか。でも俺、料理はあまり経験がないからなぁ……ヴィリヤさんは見て判ったけど、ヴィクトリアさんは出来るほう? 良かったら、教えてくれないかな?」

 教えを請われたヴィクトリアは、やや困惑しつつも。「私で宜しければ……」と受け入れる構え。
 斯くして、ヴィリヤの隣の空いているテーブルに具材を広げて。サンディのお土産作りにチャレンジである。

「やっぱり、気軽に摘めるサイズが向いてるかな?」
「そうですね。一口サイズで食べ切り易い方が、良いと思いますよ」

 お菓子作りは分量遵守、レシピ通りが鉄則であると。サンディは慣れぬ手付きではあるが丁寧に作業を進めていく。
 料理初心者にありがちなアレンジはせず、贈る相手の事を思っての確実な作業。生地に果汁を加えた上で、刻んだ木の実の皮も菓子種に混ぜ込むと言ったアドバイスをした以外は、ヴィクトリアの出番はほぼ無い仕事ぶりであった。
 そうして出来たクッキー生地を焼き上げれば、周囲に漂うのは甘く香ばしい焼き菓子の香り。濃い褐色の焼き菓子はまさしくチョコクッキーその物だ。
 クレープを完売したヴィリヤも交えて試食をすれば、抱いたその感想は確信に変わる。

「……うん、美味しい! 木の実の皮も、チョコチップみたいな感じね!」
「そうですね。香りの補強にもなってくれれば、と思って提案したのですけれど……成功して良かったです」
「良かった、これならしっかりお土産として持って帰れそうだ……あ、でも。あともう一つ、欲しいのがあるんだ」

 サンディの言葉に、クッキーの成功に笑顔を浮かべた女性陣二人が首をかしげる。

「実は、渡したい相手の中に、食事が出来ない子がいるんだ。その子にも何かあれば……」

 あぁ、と納得する女性陣。
 猟兵と一括りに言っても、その種族・出自は多岐に渡る。中には一目見てヒト型ではない者もいるし、食事を必要としない者もいる。
 サンディの思い描く相手も、そういった種族の者なのだろう。しかしそうなると、また何かを探さねばならないが……

「……あ。ちょっと、思い当たる事が。少し、外しますね?」

 言うやいなや、小走りにその場を後にするヴィクトリアに、今度はヴィリヤとサンディの二人が首をかしげる。
 ……そうして暫くして、その場に戻ってきたヴィクトリアの掌には一包の布袋が。

「ヴィクトリアさん、これは?」
「村の方に、木の実の皮を包んで頂きました。後は、これを持ち帰って乾燥させて、綺麗な袋に入れれば……」
「……あっ、サシェにするのね!」

 サシェ。いわゆる、香り袋の事だ。乾燥させたハーブや香料を袋詰した物で、クローゼットやベッドサイド、バッグなどに置く小物類である。
 ヴィクトリアはクッキーに混ぜ込んだ皮からヒントを得て、余っていた皮を貰ってきたのだと言う。皮からも仄かにチョコレートの香りがする。乾燥させれば、その香りはより引き立つだろう。
 実際のチョコレートの香り成分には、リラックスを促す成分も含まれているそうだ。この木の実の香りが現実の物と成分が同じは定かでは無いが、代用品にはなってくれるかもしれない。
 ……この試みが上手くいけば、この村の新たな特産品とも成りうる試みだ。試してみる価値は、あるだろう。

「ヴィクトリアさん……ありがとう。助かるよ」
「いえいえ。お土産を渡す皆さんが喜ばれると良いですね」
「きっと喜んでくれるわよ。だって、サンディさんが渡す人達の事を考えて、頑張ったんだもの!」

 ヴィリヤの言葉に、ヴィクトリアも、そしてサンディも。確かに、そうだね、と。微笑みを浮かべて、笑い合う。祭りの空気が続く村に、また一つの笑顔が咲いたのだ。
 ……この笑顔に満ちた村も、数多の猟兵達が幾多の困難を超えた結果の物。猟兵達はまた一つ、今を生きる民達の笑顔という未来を、護ることに成功したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月15日


挿絵イラスト