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暁ノ海

#グリードオーシャン #お祭り2020 #夏休み #モフリス島


●明けない夜はない
 どうして夜は、静かなのだろう。
 どうして夜は、考え事が多くなるのだろう。

 夜は不思議だ。普段考えない事が突如頭の中でぐるぐる回り出す。
 そうなった時は海に行くと良い。この島の海はとても美しいんだ。
 海岸の砂は月光で静かに輝き、透明にも近い澄んだ緑色の海はただただ波の音を響かせる。
 そんな自然と一体化し、ぼーっとそれらを眺めるだけでも、不思議と気持ちは変わるものだ。少しだけ軽くなるかもしれない。
 そうやって気持ちの整理をし終えると、次に眺める事になるものは日の出だ。
 オレンジ色の太陽が顔を覗かせ、空と海の色を徐々に変えていく光景は、何物にも変えられない感動を与えてくれるだろう。

 たまにはいいじゃないか。少しでも『世界は美しい』と感じても。

●怜の情報
 それぞれが涼しげな衣装を身に纏い、賑やかな雰囲気を見せる猟兵達。水着衣装の柳屋・怜(千年狐・f05785)もまた、ふわりと自慢の尻尾を揺らしながら笑みを見せる一人であった。
「皆に少々、誘い事と行こうか。グリードオーシャンにある、とある島なのだが」
 怜が猟兵達に紹介したのは『モフリス島』。以前猟兵が平和を取り戻した島の一つだ。
「小さな島ではあるが、何と言ってもこの場所は海と海岸が美しいという事で有名な観光地であるそうだな。そして小耳に挟んだ噂だが……特に夜の風景が素晴らしいらしいぞ」
 キラキラと輝く砂浜と、エメラルドグリーンの海が荒んだ心を洗うと言われ、船乗りだけでなく町の人々からも愛されている場所だ。そんな海を星空の下で眺めるのも一興だろう。
「確か、今夜が満月だとか。丁度良い機会ではないか、我と一緒に向かってみないか? 我は月夜が好きである」
 夜の海岸に向かっても、決して何かがある訳ではない。逆に言えば誰もいない。あるのは月夜に漂う静かな波の音だけだ。
「たまには夜更かしも良いではないか。常日頃戦場に赴く我々には……そういう時間も大切であるぞ」
 それに、何もしない事を突き通すのも案外一興であるぞ。そう怜は猟兵達に微笑みかける。
「海が美しいとの事ならば……さぞかし夜明けも美しいのだろうな」
 興味があるなら声を掛けるといいだろう。島の黄昏時は、もうすぐだ。


ののん
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 このシナリオは【日常】の章のみでオブリビオンとの戦闘が発生しないため、獲得EXP・WPが少なめとなります。
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 お世話になります、ののんです。

 ●状況
 グリードオーシャンが舞台となります。
 1章で完結する平和なシナリオです。
 モフリス島は過去執筆したシナリオに登場したものですが、知らなくても全く問題ありません。

 ●当シナリオについて
 分かる方に伝えるとするならば、これはイベシナです。

 真夜中、美しい海岸にて物思いに耽ったり、誰かとお話したり、散歩したりなど、ゆったりとした時間をお過ごし下さい。
 プレイングには真夜中~夜明けまでの出来事を書いて頂ければと思います。
 昼間はたくさん遊んでいた、という設定でもOKです。飲食持ち込みOKです。
 フラグメントの選択肢は一例ですので無視して頂いて構いません。

 もしご要望があれば、柳屋・怜(f05785)と過ごす事もできます。

 ●プレイングについて
 受付期間は特に設けておりません。

 キャラ口調ですとリプレイに反映しやすいです。
 お友達とご一緒する方はIDを含めた名前の記載、または【(グループ名)】をお願い致します。
 同時に投稿して頂けると大変助かります。

 以上、皆様のご参加お待ちしております。
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み』

POW   :    海で思いっきり遊ぶ

SPD   :    釣りや素潜りを楽しむ

WIZ   :    砂浜でセンスを発揮する

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馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前の関係は戦友。
今は第一人格『疾き者』(生前:忍者。のほほん)が出ている。
一人称:私/私たち

服装は着流しで。ふふ、まだ腹部の傷跡と精神的折り合いがついてないのですよー(四人共通の生前致命傷)
悪霊で猟兵となってから、初めての経験って結構あるんですよねー。
海もその一つ。私たちの故郷は内陸で、海は伝え聞くものでしたからー。

これからお互い、『知らなかった面』を知ることもあるでしょうねー。それでも歩みは止めませんよねー、私たち。
…だって、この美しい世界を、守るために戦えるのですから。

※他の『静かなる者』『侵す者』『不動なる者』も、同じ風景を見ている。
思いは同じ。



 気付いた時には、世界は夜を迎えていた。
 しかしこの島は明るい。それは街灯の灯りでも、建物の灯りでもない。満月と星空に照らされた海と砂浜が輝いているのだ。

「見事な満月ですねー」
 着流しに身を包んだ男、馬県・義透(多重人格者の悪霊・f28057)は海を眺め微笑む。誰かが忘れたのであろう椅子を拝借し、腰かける。
「月夜の海とは……なるほど、これほどまでに趣があるとはねー」
 特に何かが起こる事を待っている訳でも、期待している訳でもない。気が遠くなるほど何処までも広がり続ける海を眺め、それに感動するだけ。それが義透にとっては楽しく感じた。
「これが潮風、海の匂い、涼しさ……」
 海に映る月と星々はほんのりと緑色に染まり、ゆらゆらと揺れる。その音と風が何とも涼しく気持ち良いと感じたのだが。
「……また増えてしまいましたねー、今になって知る事のできた事が」
 本来ならば、ここに自分が居る事はなかったのだろう。ざわざわと彼の体の中の『彼ら』も、同じ感情を抱く。

 義透は既に故人である。いや、そもそも馬県・義透という名前の男は本来存在しない。彼の体は四人の悪霊が形作ったものなのだ。
 かつて彼らは戦友同士だった。しかし故郷の壊滅と共に命を落とした。死にきれなかった彼らは……癒えぬ腹部の傷跡を残したまま、いつの間にか一人の人間の姿を得ていたのだった。
 猟兵として新たな体を得て、世界を渡り歩いた結果、生前では叶わなかった事がたくさん経験できた。
 今、視界に広がる海もまた、その一つなのである。内陸に住んでいた彼らとは、無縁の風景なのだから。

 これからも知らない世界を訪れ、たくさんの知らない事を知る事になるのだろう。それは残酷な事であったり、悲しい事であったりするかもしれない。
 だが、義透は知っている。決してそれだけではない事を。
「それでも歩みは止めませんよねー、私たち」
 ……だって、この美しい世界を、守るために戦えるのですから。

 世界の果てが橙色に染まる。満月は沈み、太陽が昇る。義透は椅子から立ち上がり、新しい日を知らせる輝きを迎えた。
「私たちもこれからお互い、『知らなかった面』を知ることもあるでしょうねー」
 まだまだ縁は長く続きそうですねー、と、彼は『他の三人』に語り掛け、朝日に染まる顔を笑わせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【梓(f25851)と】
浜辺のど真ん中にレジャーシートを敷き
持ち込んだドリンクやらおつまみやらを出す
真夜中に誰も居ない浜辺で酒盛りだなんて
なんだか悪い子になった気分だねぇ
笑ってそんな事を言いながら乾杯
俺はお酒はあまり得意じゃないから最初の一杯だけ

海に映り込む月の光の帯がとても綺麗
波の動きに合わせて小刻みに光が揺れる様を
規則的な波の音と共にボーッと眺めていると
それだけでも時間が過ぎていきそう
そうしたら焔と零が海で遊びだして
規則的な景色が不規則なものに変わったけど
これはこれで見ていて楽しい

どれくらい時間が経ったのか
空はやがて青と橙の美しいグラデーションに
こんな景色を二人占め出来るなんてね


乱獅子・梓
【綾(f02235)と】
月見は秋にするイメージだが
真夏にやるのも乙なものだろう
こんなに綺麗な満月なんだ
酒でも飲みながらじっくり眺めたいしな
乾杯し、缶ビールをぐいっと味わう

月を眺めていたら
ドラゴンの焔と零がひょっこり顔を覗かせる
つまみの匂いに釣られてきたなこいつら
こんな事もあろうかと多めに持ってきておいた
差し出すと嬉しそうに勢い良く食べ始める二匹
おい、全部食い尽くすなよ!
食ったら腹ごなしに泳いできてもいいぞ
と提案すると二匹は波打ち際で水遊び
月の光に照らされてシルエットだけが
見えるのがなんだか面白い

…ああ、もう夜明けなのか
満月とはまた違った見事な景色だ
一晩で二つも見られるだなんて相当な贅沢者だな



「こんな風にするなんて……まるで海でピクニックしているみたいだなぁ」
「これは月見だ、月見。真夏にやるのも乙なものだろう」
 真夜中の海岸にて、灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)と乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は酒盛りをしていた。賑やかだった昼間とは反対に、真夜中では誰もおらず静かだ。だから景色がよく見える場所に堂々とレジャーシートを敷き陣取る事ができたのだ。
 シートの上に座り、持ち込んだ飲食物を適当に並べる。酒の缶を手に取ると、互いに缶を掲げ、飲み始める。
「真夜中に誰も居ない浜辺で酒盛りだなんて、なんだか悪い子になった気分だねぇ」
「そうか? こんなに綺麗な満月、酒でも飲みながらじっくり眺めたくなるじゃないか」
「ま、そうだね。海に浮かぶ月をこうやって見上げる事なんて、なかなかできなさそうだ」
 何者にも邪魔される事なく、そして警戒する事もなく、ただ穏やかな時間だけが存在する夜の空間など何時振りだろうか。そしてそれが、案外退屈だと感じない事も初めて知ったかもしれない。
 他愛ない短い会話をぽつりぽつりと交わしては、ぼんやりと二人で海と月夜を眺める。規則的に聴こえる波の揺れる音。空から真っ直ぐに降り注ぐ白い光と、波に合わせて小刻みに揺れる白い光。何処へ目と耳を向けようと飽きない風景に、ただただ時間が過ぎていく。けれど、それを決して無駄だとは思わない。

 綾がやっと最初の一缶を飲み終えた頃、もぞりと何処かから現れたのは梓のドラゴン、焔と零だ。
「あれ、寝てたんじゃなかったの? 起きちゃったのかな」
「はは。さては……つまみの匂いに釣られてきたな? こいつら」
 仕方ない奴らだな、と笑顔で二匹の頭を撫でる梓。ドラゴン達は嬉しそうに主に甘え始める。ころりと転がっている様子からすると、まだ少し眠気が残っているのだろうか。
「こんな事もあろうかと多めに持ってきておいたんだ。ジャーキー食べるか?」
「ん、ナッツとかも食べるかな……」
 二人がつまみの入った袋を開けると、匂いで気付いたのかすぐさま反応を示し、揃って顔をつまみの方へと向ける。
「キュー!」
「ガウ!」
「おい、全部食い尽くすなよ!」
 ジャーキーやナッツの入った袋に飛び付く二匹。静かであった空間に少しだけ賑やかさが戻ってきた。
「目が覚めたか? 何なら腹ごなしに泳いできてもいいぞ。あまり遠くへ行かないならな」
 梓のその言葉に喜びの表情を見せる焔と零。二匹は海の浅瀬へと勢いよく飛んでいくのだった。

「……不思議だね」
 再び海を眺めていた綾。だけど、最初に見始めた時とは大分違う。
「焔と零が海で遊んでるだけだけど……時間が違うだけで、こんなにも見え方が変わるんだね。驚いたよ」
 そう聞いた梓は、改めて二匹の様子を眺めてみた。月と星の輝きが映った海で、二匹の小さな影が泳いでいる。小さな影が光の形を歪ませ、水飛沫を輝かせるその様子は微笑ましく、そして幻想的だ。
「……夜遊びって楽しいな」
 梓の問い掛けに、そうだねぇ、と綾はやんわりと笑った。

「おい、綾、見たか?」
「勿論。もうそんな時間だったんだね」
 二人の顔に自然と笑みが零れる。遠い遠い海の向こう側から太陽が顔を覗かせたのだ。徐々に変わり広がりゆく海の色は、夜とはまた違う美しさを教えてくれた。
「一晩で二つも見られるだなんて、相当な贅沢者だな」
「ああ、凄いな。こんな景色を二人占め出来るなんてね」
 夜と朝が交差するこの瞬間を、いつまでも二人で。
 今日も美しい世界は、新しい一日を迎える。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

伊高・鷹介
鷹&ド】で参加/月夜の砂浜でデート。ドロレスに何か決意めいたものを感じたので、敢えて人気のない場所を待ち合わせ場所に。少し早めに来て指輪を手に深呼吸。指輪の交換という、男女の関係としてはほぼ最上級の行為に喉はカラカラ、心臓はバクバク。それでもドロレスを目にすると不思議と気持ちは落ち着き、少しの会話の後「ずっと大切にする、という気持ちを込めて」と指輪を彼女の指にはめる。/が、その後のドロレスの行動にこちらもアワアワ。涙ぐんだところで思わず彼女を抱きしめてしまう。

※アドリブなど歓迎です。


ドロレス・コスタクルタ
【鷹&ド】で参加。

夜の海デート……2人だけの秘密を持つことにドキドキしながら待ち合わせ場所へ。かなり緊張しながら指輪の交換をする。

実は「生まれて初めて家族以外の異性を『さん』付けで呼ぶ」という一大決心を心に秘めていた。ドロレスなりに、この夏に2人の関係を進めたいと悩んだ末の結論だった。

「ずっと大切にする」との言葉と指輪を贈られながら、自分も指輪を渡しつつ「ありがとうございます……鷹介さん」と言おうとして、緊張のあまり声が裏返って『さん』を『ひゃん』と言ってしまう。

恥ずかしさと情けなさで真っ赤になりつつ涙ぐむ……ところを彼氏に慰めてもらって、笑顔で2人の思い出がまた一つ増えたことを喜ぶ。



 波がぶつかり合う音、潮が満ち、引いていく音。それ以外の音は何一つ存在しない。真夜中の海はとても静かだった。
 より人気のないヤシの木の下で伊高・鷹介(ディフェクティブ・f23926)は一人立っていた。彼に限っては海の音だけではなく心臓の音も耳に入ってくる。それはとても騒がしく、緊張感を更に高めていく。
「(もうすぐか)」
 手のひらの中には大切な指輪。落とさないように、無くさないようにと力強く握りしめては汗ばみ熱くなる体。今にも爆発しそうで逃げたくもなる。
 こんな調子では言葉すら発せない。だが、今夜は決意の日。視界に広がる夜空と海、二つの満月を眺め、『その時』が来るまで鷹介はゆっくりと深呼吸を行う。

 どれ程時間が経ったのかは分からない。待ち合わせの場所へ、彼女は訪れた。
 ドロレス・コスタクルタ(ルビーレッド・f12180)も緊張しているのか、顔を赤らめながらゆっくりと歩き、鷹介の元へと向かう。
 自身の胸に当て強く握りしめるその拳の中には、恐らく指輪がある事だろう。
 二人が近付き、対面するまでにはとても長い時間が経ったように感じられた。それは互いに、普段よりもわざと遅く歩いたからだ。
 決意したはずの気持ちもいざ本番を目の当たりにすると揺らいでしまう。それは決して嫌であるという事ではなく、恥ずかしいという気持ちで押し潰されそうだったからだ。

 本番の時間はやって来る。対面し、足を止めた二人は自分の心臓の音だけを聞き、黙っていた。しかし不思議な事に、ちらりと相手の顔を見た途端、今にも爆発しそうだった心臓が徐々に落ち着きを取り戻し始めたのだ。
 やっと二人の耳から心臓の音が消えていき、さらさらと海の音が聞こえ始める。月の光に照らされた相手の顔が美しく尊く見える。
 沈黙が続いていた中、最初に声を発したのは鷹介だった。鷹介は手のひらをゆっくりと広げ、輝く指輪を右手の親指と人差し指で持つ。
「……ずっと大切にする、という気持ちを込めて」
 広げられた左手は、ドロレスの手を待っていた。ドロレスも深く深呼吸をした後、静かに頷き左手を乗せた。指輪は薬指にそっとはめられる。
 ドロレスも握り締めていた指輪をそっと広げて鷹介に見せると、相手の指にはめて指輪を送った。
 交換された指輪は白く美しく輝いていた。それは大切な人との決意の証。交わされたこの想いに、どちらも嘘偽りなどなく。
「……ありがとうございます……」
 絞り絞ったドロレスの言葉。赤く染まった頬に一筋の涙が流れる。
「……鷹介ひゃん」
 しかし、嬉しさと緊張のあまり声が裏返ってしまった。慌てて口を覆うドロレスと、驚いて赤面する鷹介。
「……もっ、申し訳ありません。生まれて初めて、家族以外の異性を……さん付けで呼ぶと決心したのに……っ」
 ああ、恥ずかしい。そして何とも情けない。ドロレスは泣きながら顔を下に向ける。その姿に鷹介も戸惑ってしまったのだが、すぐにそれも笑顔に変わり。
「……ありがとな」
 彼女の体を抱き締めた。それは温かく、とても嬉しくて。

 心が何かで溢れそうになった。ドロレスは涙で濡らした顔を思い切り笑わせた。そうして二人で笑い合い、抱き締め合った。
 幸せな二人の出発を祝うかのように、遠くから橙色の太陽が顔を覗かせる。
 世界はまた、新たな日を迎える。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雛瑠璃・優歌
【永歌】
ぼうっと海を見てた
「静か…」
あれ、あそこに居るのは
「…こんばんは、逢海さん」
左右異色の瞳、夜に見ると昼とはまた違う綺麗さ
「あの、よかったら少しお話しませんか」

そんな風に誘ったくせに用事なんてないから
「満月の下の海ってこんなに明るいんですね、あたし、海初めてで」
ぺたぺた波打ち際を歩くのに付き合わせて
「小さい頃から舞台の為のお稽古か、家に居るかで」
何でこんな話
「今は猟兵のお仕事もしてますけど、」
おかしいよね
「…あたし、」
疲れちゃった
「ごめんなさい、変なお話しちゃって」

聞こえた声が温かくて
泣きそうになるのを堪える
「そう、ですか。嬉しいな」
貴方には助けられてばっかりだから
役に、立てたんだったら


逢海・夾
【永歌】
一度は見たかったんだよな、海
やっと、逢いに来れた
逢海から、自分からは逃げられないと、分かったからな
…最初に見た海がここでよかった
思い出せる海がこんなにも綺麗なら、きっとなんだって出来る

今気付いたかのように振り向いて、言葉を返す
…見つめられると落ち着かねぇが、悪意は感じねぇからな
「あぁ、いいぜ」
色々とあるようだからな、吐き出していけばいいさ
かわりにこの景色を詰め込めば少しは気も晴れるだろ

…そこで飲み込んだら意味がないだろ、謝るな
「変じゃねぇだろ。オレも初めてだぜ、海」
足元より、オレより、もっと見たいものがあるだろ

「そうだ。この前の菓子、ありがとな」
会って渡したら随分喜んでたぜ、助かった



 月の夜、碧色の海にて。

 優しくぶつかり合う波と波の音。弱い風に吹かれて舞う輝く砂。それ以外の音は何一つ存在しない。
 そんな空間に雛瑠璃・優歌(スタァの原石・f24149)はいた。こんな真夜中に何故ここへ立っているのかは忘れてしまった。彼女はただただ広大な海を眺める。
「静か……」
 ずっと見ていると吸い込まれてしまいそう。空と海に浮かぶ二つの満月は永遠に見ていられるような気がして。

 空の月を眺め、月から流れる星々を目で追い掛け。すると辿り着いた先にいたのは白い狐。
「……こんばんは、逢海さん」
 優歌はそっと声を掛けた。海を見つめていた狐、逢海・夾(反照・f10226)は少し時間が過ぎてから、やっと彼女の方へと顔を向け、あぁ、と一言だけ返す。
 明るい時間に見る姿とはまた異なる彼の瞳に、何処か美しさを感じ。優歌は思わず、言葉を続けた。
「あの、よかったら少しお話しませんか」
 突然の誘いの言葉に夾は目を細めつつも、静かに微笑みを見せつける。
「あぁ、いいぜ」

 海の涼しさを風が運んでくれた。並んだ二人は髪を揺らしながら、永遠に続きそうな砂浜に足跡を残していく。
 優歌は彼に話し続ける。
「満月の下の海ってこんなに明るいんですね、あたし、海初めてで」
 なんて事ない内容だ。たまに波打つ海水に足を濡らされながら、ただただそれを並べていく。
「小さい頃から舞台の為のお稽古か、家に居るかで」
 あれ、何でこんな話、
「今は猟兵のお仕事もしてますけど、」
 おかしいよね、
「……」
 ……、
「……あたし、」
 疲れちゃった。
「ごめんなさい、変なお話しちゃって」

「変じゃねぇだろ。オレも初めてだぜ、海」
 何故謝る。謝るな。そこで飲み込んだら意味がないだろ。
「一度は見たかった。そう思ってここへ来た。色々とあるようなら吐き出していけばいいさ」
 吐き出して、この景色を見ればいい。そうしたら少しは気も晴れるだろう。何故なら。
「思い出せる海がこんなにも綺麗なら、きっとなんだって出来る」
 そう思えるようになるだろうから。足元より、オレより、もっと見たいものがあるだろうから。

 ……ああ、そうだ。オレは彼女に用事があった。
「この前の菓子、ありがとな」
 助かった、と。

 どうしてだろうか、夾の声が涙を誘う。それを堪えるのに必死だ。
 彼の言った通り、優歌は再び海へと顔を向ける。気付けば月は海のベッドに潜り、遠くから太陽が顔を覗かせていた。
 新しい、眩しい朝の始まりだ。星々も灯りを消し、闇色が少しずつ橙色に変わってゆく。
 ――なんと美しい風景だろうか。
「そう、ですか」
 彼女はゆっくりと言葉を述べる。
「嬉しいな」
 二人は微笑みながら迎える。新しい日に染まる、この世界を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月27日


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト