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あなたが救世主足らんことを

#アポカリプスヘル #救世主の園

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#アポカリプスヘル
#救世主の園


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●救世主
 そこは救世主の園と呼ばれているらしいということが奪還者(ブリンガー)たちの間では噂になっていた。
 清浄なる大地が広がり、まさにオブリビオンストームによって人類の文明が崩壊する前の豊かな大地が広がっているらしい。
 そこにいけば闘う必要もなく、豊潤な大地の恵みを享受できるというのだ。しかし、そんな楽園のような場所が、まだアポカリプスヘルに残っているとは考えられない。
 文明の終末より後、尾ひれの付いた噂に過ぎず、探すだけ徒労に終わるだろうと殆どの者は思っていた。

 だが、その殆どの者が見向きもしない情報に縋る者たちもいた。
 やせ細った大地。文明の残滓から必死の思いで運んできた物資でさえ、野盗(レイダー)たちに強奪されてしまう。そんな拠点に生きる者たちにとって、耐えかねるように拠点を後にし、難民として荒野を放浪する先にある希望が、その噂であった。

 救世主の園。
 そこだけが彼等の希望。野盗に襲われること無く、明日の食糧を憂うことなく生きていける拠点。それを求めて荒野を移動する。
 道程は厳しいものばかりだ。ありとあらゆる危険が満ち溢れている。
 野盗もそうであるが、オブリビオンストームに飲み込まれて暴走した機械達も恐ろしい。いつまたあの黒き竜巻が襲ってくるとも限らない。
 生命の保証はない。
 けれど、このまま拠点にこもっていても、希望は見出だせない。

 ならば、行くしかない。
 それだけしか選択肢がないというのなら。希望がないというのなら。
 ―――救世主の園を目指すしかないのだから。

●ノブレス・オブリージュ
 暗黒の竜巻が猛り狂う荒野。
 その竜巻の名は文明を崩壊させた元凶、オブリビオン・ストーム。だが、暗黒の竜巻が雨を降らせ、その地は不浄とは無縁の清浄たる大地へと変わる。
 猟兵であったのならば、その暗黒の竜巻が本来の意味でのオブリビオン・ストームではなく、擬似的なものであり、ユーベルコードによって生み出されたものであるとわかるだろう。
「皆を守ってあげるよ。恵みの雨で皆に住みよい居場所を作ってあげるよ。皆に良い世界を。皆に。皆に。皆に―――」
 暗黒の竜巻が消えていく。
 荒れ果てた荒野は雨に浄化されるようにして豊かな土地へと変わっていた。

 その中心に立つ一人の少女が居た。
 優しく微笑む姿は、まさに救世の聖人そのもの。利己は一切なく、ただ他者のために己の力を使う。
 人を救わねばならないという定められた意志によってのみ、己の行動を決定する。そういう風に彼女は造られていた。
 誰しもが彼女を聖女と崇めるだろう。
 誰しもが彼女の微笑みを向けられたいと思うだろう。
 誰しもが彼女に救われたいと願うだろう。

 その全てを彼女―――救世童隷『ジフテリア・クレステッド』は受け止め、救うだろう。
「皆を救わなきゃ。どんなことをしても救ってあげなきゃ。たとえ―――」

 そう、たとえ彼等が望まなくても、あらゆる苦しみ、あらゆる痛みから救わなければならない。
「殺してでも救ってあげなきゃ」
 世界の救済。それこそが彼女の製造目的。だが、彼女はすでにオブリビオンである。過去の化身が思い描く救世のため、あらゆるものは救済の前には歪められる。
 倫理も何かも。まずは救われなければ。
 静かに、静かに、彼女は『過去』に歪んでいく。歪な救世主は、ノブレス・オブリージュを謳う―――。

●難民キャラバン
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
 ほほ笑みを浮かべ、頭を下げる。不慣れであった頃の彼女を知る者がいれば、慣れ親しんだ所作であろう。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件は文明の荒廃した世界、アポカリプスヘルです」
 アポカリプスヘル、暗黒の竜巻、オブリビオン・ストームによって文明が荒廃した世界。明日を生きる人々は拠点を構え、奪還者(ブリンガー)たちが文明の残滓から持ち帰った仏師によって生きながらえている。

 そんな世界においてまた事件が起こってしまうのだという。
「はい。アポカリプスヘルに生きる人々は皆、拠点の中で野盗、オブリビオン・ストームから身を守りながら生きています。それ故に脆弱な拠点を捨て、新しい拠点へと旅立つ人々も少なくはありません。もっと住みよい土地を、と考えるのは自然なことなのです」
 今回の事件また、そうした新しい拠点……『救世主の園』と呼ばれる拠点を目指す難民となった人々のキャラバンに起こる悲劇だというのだ。
 拠点を捨て、奪還者(ブリンガー)たちの間で噂になっているという『救世主の園』と呼ばれる清浄なる豊潤の大地へと向かう難民キャラバンを護らなければならない。

「皆さんは難民キャラバンの皆さんに雇われた奪還者(ブリンガー)として彼等に動向していきます。道中は厳しいものですから、迫る脅威……オブリビオン・ストームの気配や周囲の索敵などをお願いします。また物資の不足からストレスを感じていらっしゃる難民の皆さんの心のケアや不満の解消をしていただきたいのです」
 こうした世界に対する積み重ねが、いつか花開き文明の荒廃した世界を救う礎になるからだ。
 ナイアルテは成すべきことが多いことを詫びる。
 ここからが本題なのです、と難民キャラバンの護衛だけでも相当な苦労が想像されるが故にナイアルテは申し訳無さそうな顔をする。

「目的地である『救世主の園』に到着するのですが、そこは野盗(レイダー)の要塞とは言い難い豊潤な大地こそあれ、難民の皆さんを攫おうと襲い来る軍用ロボット犬『ゲルマーネン』が存在します。どうやら、彼等は難民の皆さんを生死問わずに攫うことをを目的としていて、抵抗するならば人々が死亡しても構わないとプログラムされているようです」
 野盗(レイダー)が人々を奴隷にするために生かしたまま捉えることはよくあることだが、とにもかくにも生死問わずに攫おうとするのは不可解であると言う。

「彼等を退けた後に現れるオブリビオン……フラスコチャイルドのオブリビオン、です。彼女がこの『救世主の園』と呼ばれる地の主です。彼女は元は救世主として製造されるはずだったフラスコチャイルドの廃棄物……彼女は、この地に人々を集め『救済』することを望んでいます」
 過去に歪められた救世主の謳う救済。
 それがまっとうであるとは思えない。配下であるレイダーの挙動を見ても、それは明らかであろう。

「その思いは本物なのでしょう。ですが、歪められた思いはいつだってそうです……人を傷つける」
 だからこそ、彼女を止めてほしいとナイアルテは頭を下げる。
 同じフラスコチャイルドとしての思いを隠し、それでも、と。歪んだ思いがもたらす悲劇を止めてほしいと、彼女は猟兵たちを送り出すのだった―――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はアポカリブスヘルでの事件です。新たな拠点を目指す難民キャラバンを護衛し、たどりついた新天地より襲い来る歪んだ救世主の手から彼等を救うシナリオになります。

●第一章
 冒険です。
 皆さんは難民キャラバンの護衛としてやってきた凄腕奪還者(ブリンガー)として人々に認知されています。見ただけで凄腕とわかるので、皆さんは大変人気です。
 彼等の新天地への道程に散らばる脅威を排除したり、物資不足や様々な人間関係から来るストレスなどのケアを行いながら進んでください。

●第二章
 集団戦です。
 新天地『救世主の園』へと到着したものの、難民の人々を殺してでも連れ去ろうとする野盗(レイダー)オブリビオンが襲来します。
 軍用ロボット犬『ゲルマーネン』と呼ばれるジャーマンシェパード型の軍用ロボット犬です。数の多い敵から難民の人々を守りながら戦わなければなりません。

●第三章
 ボス戦です。
 この地の主、救世童隷『ジフテリア・クレステッド』との戦いになります。
 彼女自身は真剣に救世を考えており、それ以外のことは気にもかけません。それが己の製造された最大の目的であるからです。
 人々を苦しみや悲しみ、痛みから救うためならば、殺してでも救わなければらないという破綻した考えに取り憑かれています。
 それはオブリビオンと化したがゆえの歪みです。凶行を重ねる彼女を打倒しましょう。

 また第二章で難民の人々を救出していれば、武器を手に取り支援をしてくれます。それほど強くはありませんが、地形を利用して戦ってくれます。

 それでは荒廃した世界を生き抜く人々を助けるため、アポカリブスヘルにてオブリビオンを打倒しましょう。
 皆様の物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 冒険 『難民とキャラバン』

POW   :    迫る脅威を排除する

SPD   :    索敵を行い危険を回避する

WIZ   :    人々の不満を解消する

イラスト:鳥小箱

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 脆弱なる拠点を捨て、荒野を行く難民たちのキャラバンがあった。
 彼等の装備は乏しく、荒野を進むのには多少の無理では覆らないものだった。けれど、彼等には希望がある。
 この荒野の続く先にある『救世主の園』。

 豊かで清浄なる大地が広がっており、そこには『救世主』と呼ばれるフラスコチャイルドが主として人々を迎え入れてくれるのだ。
 その道程に同行してくれる凄腕の奪還者(ブリンガー)たちも集まってくれた。
「ああ、これで明日の食糧を考えなくても済むはずだ……かの地へと辿り着くことができれば―――」
 難民の人々は大なり小なり、心の中にそんな思いを抱えていた。
 だが、すがる希望があるからといって、長く苦しい生活によって積み重ねられた不満やストレスが解消されるわけではない。

 難民キャラバンのあちこちで諍いの耐えない日々。
 聞こえてくる怒声一つだけでも、幼い子供たちにはストレスであろう。行く道は厳しい。
 けれど、それでも彼等は新たなる拠点……『救世主の園』へとたどり着かなければならないのだから―――。
政木・朱鞠
私自身の考えだと…この世界に平等に暮らせる場所が有るのかはちょっと疑問を持っているんだよね。
でも、希望を踏みつけない様にその疑問は口を閉ざしておくよ。
それに…一筋の希望って物があるなら、この旅で心を折ってしまわぬよう奪還者として全力で頑張らないとね。

WIZで行動
一時的な気休めにしかならないかもしれないけど、子供達のストレスを少しでも解してあげたい。
『忍法・火煙写身の術』の分身に【化術】で小さな狐さんに変装させて鬼ごっこや隠れんぼの様な遊びを仕掛けてみようかな。
分身には戦闘力を逃げ足という武器に全振りで【時間稼ぎ】や【フェイント】を駆使して子供達に満足して貰えたら良いんだけど。

アドリブ連帯歓迎



 真に安息の地というものが、世界のどこにあるのかを知る者は少ない。
 そもそも安息というものが一体どんな物であるだろうか。
 例えるならば、それは強固な防壁に囲まれた城であるかもしれない。如何なるものをも寄せ付けぬ強固なる城塞。然りである。
 そこならば安息と呼ぶに相応しいかもしれない。
 けれど、時として人は洞窟のような岩に囲まれただけの雨露を凌ぐだけの洞穴にでさえ安らぎを見出すことができる。

 同じ安息を得る地でありながらも客観視するとまるで違う2つ。
 それと同じように人の心に平等という概念はあれど、その平等が絶対的な価値観で持って共有されることはない。
「私自身の考えだと……この世界に平等に暮らせる場所が在るのか……」
 それには少しの疑問が付きまとうのだと、言葉を切ったのは、政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)であった。
 何故中途半端に言葉を区切ったのかと言えば、それは時として他者の希望を踏みつけてしまう行為にもなってしまうからだ。
 彼女の心のなかには平等なる場所に疑問が浮かぶ上がる。そんなもが本当にあるのだろうかと。

 けれど、それは彼女の疑問であることを彼女自身がよくわかっていた。
 今まさに荒野を移動する難民キャラバンの人々。彼等が生命をつなぎ、明日を望むのは『救世主の園』と呼ばれる一筋の希望があるからだ。
 彼女の言葉は凄腕の奪還者(ブリンガー)としての言葉となって彼等の心に響いてしまう。それは彼等にとて強すぎる衝撃となってしまうだろう。
「奪還者として全力で頑張らないとね」
 言葉の裏側には、この旅で彼等の心を折ってしまわぬようにという配慮があった。荒野の旅は続く。

 よくみれば、難民キャラバンには小さな子供らもいる。
 荒れ果てた荒野において子供らの生命は貴重であり、なおかつ弱々しいものだ。だからこそ護らなければならない。
 難民キャラバンの移動が止まり、休憩を挟む。その間に彼女のユーベルコード、忍法・火煙写身の術(ニンポウ・カエンウツセミノジュツ)によって召喚された小型の狐火で模った分身が現れる。
「一時的な気休みにしかならないかもしれないど……」
 狐火で模った分身達は次々と小さな狐へと変じ、子供たちの周りへと駆けていく。 子供たちは見慣れぬ動物に興味を惹かれ、あちらこちらから集まってくる。捕まえようとするもの、物珍しそうに遠巻きから眺める者。それぞれの反応を見てから、分身した狐たちが、おいでというようにしっぽを振って荒野を駆ける。

「子供たちのストレスを少しでもほぐしてあげたい……なら、小さな子たちはいっぱい運動すればいい。狭い拠点ではなくて、目一杯広い荒野なら、思いっきり駆けることだってできるでしょう」
 荒野を飛ぶように跳ねながら駆けていく子供たち。
 追いかける狐は時折しっぽを振ったり、立ち止まったりを繰り返し子供らとの距離をつかづは慣れず保つ。
 時には子供らの間をするりと抜けて、頬を撫でるしっぽの感触に歓声を上げる子供たち。

 久方ぶりに聞いた子供たちの明るい声は、難民キャラバンの大人たちをも笑顔にさせる。
 あんなふうに笑う我が子の顔を見るのは久しぶりなのだろう。
 朱鞠は子供たちに満足してもらえたらと思っていた。
 けれど、彼女の行いは子供たちだけでなく、彼等の両親にもまた作用していく。広がる笑顔の輪は、確かに彼等のささくれた心をほぐしていくことだろう。

 些細な出来事であったかもしれない。
 狐を追いかけ回して荒野を駆ける子供たちの記憶は、もしかしたら薄れて消えていくかもしれない。
 けれど、彼等が今心に抱える不安やストレスだって忘れてしまえる。
 ならば、彼女はきっと微笑むだろう。
 子供たちの笑顔を見れば、それで十分なのだと―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神楽火・未夜子
キリエ(f01297)といっしょ。

「みゃこちゃん、すごうで? ん。どーんと、まかされた」
 みんな、きゅーせーしゅのその、つれてく。でも、それ、どこにあるかわかる?
「わかんないのか。じゃあ、さき行って、さがしてくる。行こ、キリエ」

<SPD スナイパー>
キリエのバイクにのせてもらって移動。スナイバーライフルを望遠鏡のかわりにして、野盗が来てないかさがす。
「……いた。前のほう、ちょっと右」
 いったん別行動。キリエが正面から行くから、みゃこちゃんは別のほうからねらい撃ち。
「オブリビオンじゃないから、殺さないように……」
 武器をもってる手をねらって撃つ。後はキリエがなんとかしてくれる、と思う。


神楽火・綺里枝
未夜子(f27423)ちゃんと行動いたします。

「確かに、ユーベルコードの分だけわたくし達の戦力は高く見積れますが……あまり調子に乗ってはいけませんよ、未夜子ちゃん」
わたくし達に地の利はないのですし、先が見えないからこそ慎重に――って、聞いていませんね。
「まあ、仕方ありません。では、偵察に行って参ります」

<POW 運転、切り込み、おびき寄せ、念動力>
未夜子ちゃんを後ろに乗せて、バイクでキャラバンより先行します。
野盗を発見したら別行動を取ります。わたくしが囮になって、未夜子ちゃんが数を減らし、最後にわたくしが念動力で制圧するという作戦です。
「殺しはしません。ですが、少し反省して頂きます」



 アポカリプスヘル、それは文明の崩壊した世界である。
 そこに住まう人々は拠点なしで生きられず、拠点があったとしても頻発する野盗(レイダー)の来襲を防ぐための防備がなければ物資を奪われ尽くしてしまう。
 そんな世界に生きる人々にも希望はある。それは『救世主の園』と呼ばれる豊潤な大地。汚染されていない清浄なる大地は、どんな人々でも受け入れる楽園として奪還者(ブリンガー)たちの間で噂話として広まっていた。
 けれど、大半の者たちは眉唾ものであると取り合わなかった。しかし、それでもそこに一縷の希望を見出す者たちにとっては、探し求めずにはいられないのだ。

 難民のキャラバンを守るのは凄腕の奪還者たち……つまりは猟兵達である。
「みゃこちゃん、すごうで? ん。どーんと、まかされた」
 神楽火・未夜子(ちいさなフリーシューター・f27423)の姿は確かに未だ幼い少女と言っていい見た目であったが、彼女からあふれる雰囲気は凄腕の奪還者のそれと同じようにアポカリプスヘルに生きる人々は感じていた。
 彼女の言葉に疑いを持つことはしない。
 ただ、少し心配になってしまうだけであるが……そこに同じように難民のキャラバンを守るためにやってきた猟兵、神楽火・綺里枝(メイデン・オブ・シグナム・f01297)の姿を認め、難民の大人たちは胸を撫で下ろす。

「確かに、ユーベルコードの分だけわたくし達の戦力は高く見積もれますが……あまり調子に乗ってはいけませんよ、未夜子ちゃん。わたくし達に地の利は無いのですし、先が見えないからこそ慎重に―――」
 そう嗜める綺里枝の言葉に素直に頷く未夜子。その姿は共通点こそ見受けられないものの、姉妹のように映ったことだろう。
 彼女たちの力のほどは、難民たちが疑うものではない。
「みんな、きゅーせーしゅのその、つれてく。でも、それ、どこにあるかわかる?」
 って、聞いてませんね、と綺里枝が肩を落とす。
 だが、彼女はそれでいいのかもしれないとも思っていた。下手に行動を束縛するのではなく、未夜子の行動を誘導する方が適切な道に導けるだろうからだ。

「わかんないのか。じゃあ、さき行って、さがしてくる。行こ、キリエ」
 マイペースな彼女に合わせるように綺里枝はデュアルパーパスタイプのバイク、アスタラビスタT991のエンジンを始動させる。後ろのシートに未夜子を乗せ、キャラバンより先行するように荒野を駆け出していく。
 小刻み良いエンジン音と回転数を上げてくタイヤが轍を作りあげていく。何処を見ても荒野しかない。
 あるのは荒れ果てた文明の残滓ばかりであり、残るのは乾いた大地ばかり。この先の本当に汚染されていない豊潤な大地があるのかと疑うほどだ。

 だが、そんな荒野にも生きる者たちはいる。
 他者から奪い、他者を虐げる存在。野盗だ。その一群はオブリビオン化した者たちではないが、難民キャラバンを見ればきっと略奪行為を働くに違いなかった。
「……いた。前のほう、ちょっと右」
 手にしたスナイパーライフルのスコープを望遠鏡代わりにして周囲を索敵していた未夜子の声が届く。
 軽やかにバイクのシートから飛び降り、荒野を駆けていく。一旦別行動を取るのは、綺里枝を囮にするためだ。

 けたたましいバイクのエンジン音をわざとあげ、正面からバイクで突っ込んでいく綺里枝。その姿に野盗達は色めきだつ。彼女の乗るバイクは、彼等の持つそれはとは違い、上等そのものである。
 そんなバイクにまたがるのが女性であれば、奪うのは容易であると彼等が考えるのは予想するまでもない。
 しかし、そんな彼等の思惑は一瞬で御破算になる。

「オブリビオンじゃないから、殺さないように……」
 彼女のユーベルコード、ヘッドショットが発動する。囮となった綺里枝のバイクとは別方向から放たれる銃弾。
 狙うのは野盗の武器を持つ手。野盗といえど、オブリビオンではない。殺すわけにはいかない。
 一瞬で弾丸が狙い過たずに野盗たちの手を撃ち抜いていく。武器を取り落し、バイクから転げ落ちていく彼等を尻目に綺里枝のはなった念動力が駄目押しのように上から制圧するように覆いかぶせる。

「殺しはしません。ですが、少し反省していただきます」
 即座に野盗の一群を制圧した二人。
 生命までは取らないが、これより此処を通り抜ける難民キャラバンには手出し無用であると誓わせ、念動力で抑え込んでいた野盗たちを開放する。
 これでひとまずの進路の安全は確保できたことだろう。これよりまた進む先に障害は発生するだろうが、未夜子はあっけらかんと言葉を紡ぐ。
「なんとかなるし。キリエとみやこちゃんがなんとかするから」

 その言葉は難民キャラバンの人々を安心させるには十分なものであった。
 こんな時、理由も説明できない、根拠も開かせない相手には、彼女の言葉は心の芯を捉えることだろう。
 こういう所をみれば、綺里枝もまた彼女の行動を誇らしく思うのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユージィーン・ダイオード

―ム。『救世主の園』か。
似たような噂は昔から絶えず聞く(アポカリプスヘル出身者)
それは人が夢見た逃避という名の幻想か…いまだ到達できぬ理想郷か。

◆迫る脅威を排除する

―ム。
【偵察】に出していたスカウトボールが障害と思しき機影を確認した。
排除してくる...(難民に向かって笑顔で答えたつもりが、鉄面皮すぎて逆に怖がれる)

バギーに乗って確認した機影に向かう。
―ム。このままではキャラバンにぶつかる恐れがあるか。
欺瞞装置を起動(【目立たない】【迷彩】)
敵機がこちらに気が付く前に【先制攻撃】で殲滅(ターミネイト)する。
零式直接支援火砲で【爆撃】
目標の沈黙を確認。帰投する。



 誰もが夢見る楽園。
 それはいつの時代も変わらずに存在する見果てぬ地。絶望の最中において、小さな光がまばゆく輝くように見えるのと同じで、楽園の如き新天地を人は夢見る。
 それを愚かだというのであれば、その言葉を使う者は幸せである。
 どん底を知らぬがゆえに希望を見出す必要がないからだ。

 ならば、どん底を知る者は常に見上げるものである。届かぬと言われ続けた天上の月を掴むように常に手を伸ばし続ける。
 その先に訪れるのが失墜か、または絶望なのだとしても。
「―――ム。『救世主の園』か。似たような噂は昔から絶えず聞く」
 アポカリプスヘル世界出身のユージィーン・ダイオード(1000万Gの鉄面皮・f28841)にとって、そのたぐいの噂は良く耳にするものであった。
 知っているのか! と食い気味で身を乗り出す難民キャラバンの人々を前にして、ユージィーンは落ち着け、と手で制する。
 彼にとって、その噂話はどちらかと言えば、否定的な立場になるだろう。

『救世主の園』「楽園』。それは人が夢見た逃避という名の幻想か。未だ到達できぬ理想郷か。
 そう考えてしまうのが現実主義というものだ。本当にあるのかわからない楽園を求めるのは否定しない。そうしなければ生きていく希望を見出だせない者だっている。
 人間とはそういう生き物であるのだから。
「―――ム。偵察に出していたスカウトボールが障害と思わしき機影を確認した。排除してくる……」
 もっと『救世主の園』についての話を聞きたがっていた難民たちに断りを入れてからユージィーンは偵察用のドローンから伝達された情報を元に脅威の排除へと向かう。
 難民キャラバンの人々は少しでも『救世主の園』の情報を得て安心がしたいのだろう。気持ちはわかる。だから、彼は笑顔を浮かべて彼等に応えたつもりだった。

 結果として言えば、彼の鉄面皮すぎる表情が怖すぎて、却って彼等を不安に陥らせてしまったということは、いくらフルボーグ型のサイボーグとなった彼でも多少は傷ついたかもしれない。
「―――ム。こままではキャラバンにぶつかる恐れがあるか」
 使い捨てのバギーに搭乗し、荒野を駆けるユージィーン。欺瞞装置を起動し、荒野に紛れるようにして姿を隠す。
 どうやらオブリビオンではないが、AIが暴走している車両のようだった。スカウトボールからの情報でそれはすでにわかっていた。
 これを放置して入れば、必ず車両は難民キャラバンへと突っ込んでくるだろう。AIに気取られる前に目標を破壊しなければならない。

 ユージィーンは零式直接支援火砲を構える。
「敵機がこちらに気がつく前に殲滅(ターミネイト)する―――」
 躊躇いはない。やるべきときにやるべきことを成す。それが彼のくそ真面目すぎる性分だった。
 それはサイボーグとなった後でも変わらない。
 彼の『1000万Gの鉄面皮』は、引き金を引いても、ぴくりとも動かなかった。放たれた火砲からミサイルが飛び出し、暴走する車両を爆砕する。
 爆炎が上がり、その効果の程を確認してからユージィーンは欺瞞装置を解除し、バギーをUターンさせる。

「―――目標の沈黙を確認。帰投する」

大成功 🔵​🔵​🔵​

リジューム・レコーズ
この荒野にそんな場所があるなんて…
そして案の定オブリビオンが待ち構えていると
いずれにせよ私の任務は人々を守護り敵を倒す事だけです

【POW・アドリブ連携歓迎】

進路上の先行偵察を行います
私には単独での飛行機能とレーダーシステムが備わっていますから、早期警戒機のように上空からの情報収集に当たりましょう
まだ本格的な戦闘が発生するとは考え難い状況ですが、念の為HDDを起動しておきます
偵察だけにしても速力を確保するに越した事はありませんし、万が一襲撃の兆候があったとしても超高速で急行出来ますからね
脅威となる対象を発見したら勿論排除します
セントルイスとヘレナのダブルトリガーで速やかに撃破しましょう



 ―――そんなに都合の良い大地が本当にあるのだろうか。
 その噂を聞いた者たちは皆、一度はそんな風に考えることだろう。汚染されていない、オブリビオン・ストームの危険に怯える必要もない。豊潤なる大地、『救世主の園』。
 だが、藁にもすがる思いの者には、そんな自分たちの希望を陰らせる情報を聞きたくないとばかりに耳を塞ぐ。
 そして、足を荒野へと進めるのだ。その先にどんな苦難があったとしても、進まねば人々は決して辿り着くことなどできない。

「この荒野にそんな場所があるなんて……」
 リジューム・レコーズ(RS02・f23631)にとっても、その情報は驚くべきものであり、そして、グリモア猟兵から伝え聞く情報と照らし合わせてみると、案の定という感想が出てくる。
 結論から言えば『救世主の園』は存在している。清浄なる豊潤な大地。
 だが、そこに待ち受けるのはオブリビオンである。そこに難民キャラバンの人々がたどり着いたとしても、待ち受けているのは凄惨なる悲劇だけであろう。

 だが、それでもリジュームは人々を護ることを選択した。
 進む先に敵がいるというのならば、それを打ち倒す。それが彼女の選択であり、彼女が出来る最大の人々への援助だった。
 彼女は空へと舞い上がる。
 フライトユニットの独立したエンジンが唸りを上げ、彼女の白い機体を荒野の上を飛ぶ早期哨戒機のように情報を収集していく。
「まだ本格的な戦闘が発生するとは考えがたい状況ですが、念の為―――」
 彼女のユーベルコード、HDD(ハードデストラクションドライバー)が発動する。強固なバリアで体を覆うのは、哨戒機のように役割を果たす彼女が真っ先に攻撃の的にされるからだ。
 彼女が落されては、敵の接近という重要な情報が後続の猟兵や難民キャラバンに伝わらない。

 それがキャラバンにとって、どれだけの損害を齎すかわからない。だからこそ、彼女は万全を期して強固なバリアを身に纏うのだ。
「万が一、襲撃の調光があったとしても、私ならば超高速で急行できますし、離脱もまた然り」
 そうこうしていると、あちこちで散発的に野盗や暴走車両の接近を知らせるアラートがなる。
 しかし、一瞬でそれらは沈黙する。他にも斥候に出た猟兵達がいるのだ。これならば、リジュームの役割を十分に果たすことが出来る。
 各猟兵たちの展開している位置を把握し、また薄い場所を示して急行してもらうことも出来る。

「カバーするのも私の役目です」
 二丁の荷電粒子スマートガンを構え、リジュームは荒野のどんよりとした空を飛ぶ。心地の良い光景とは言い難い。
 見下ろす大地には、あちらこちらにオブリビオン・ストームによって破壊された文明の残滓残っている。
 きら、とリジュームの視界に光ったものがあると認識した瞬間、彼女のレーダーシステムが警告音を響かせる。

 一瞬の判断だった。
 彼女のフライトユニットの主翼が複雑に動き、変則的な空中機動で地上より飛来した弾丸を躱す。
「―――! 廃棄された固定砲台! なるほど、文明が崩壊してもなお動く者に狙いをつけているのですね。もしものこともあります……排除しておきましょう」
 不規則に空中で軌道を変えながら、迫る弾丸を躱し、構えた荷電粒子砲の引き金を引く。

 小規模な爆発が起こり、彼女がさらにキャラバンの進行方向をゆく。
 これより先に待ち受ける苦難をできるだけ早く、そして取り除けるようにと―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
◆SPD
宇宙バイクに乗って、進む先を偵察する
障害や危険があれば早めに進路変更を提案し、心理的な負担を減らしたい
その場で対処できる障害ならキャラバンが追い付く前に排除しておく

同時に、キャラバンの難民たちが安全に休めそうな場所を探す
休息もろくに取らずに進めば心身共に疲労する
そうなれば精神的な余裕が無くなり、いずれ不満の噴出や仲間内での諍いに繋がる
休憩中も警戒を続け、難民たちはしっかり休ませる
気を張らずに過ごせる時間を作ればストレスも軽減できるかもしれない

“凄腕奪還者”として働き、難民たちの不安を取り除きたい
…現時点で出来るのはこんな事くらいしかないと歯痒く思っても、それを表に出すべきではないだろう



 空をかける宇宙バイクにまたがり、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は荒野を見下ろしていた。
 散発的に起こっている戦闘はオブリビオンではない野盗や暴走車両などを猟兵が排除していることによって起こったものばかりであった。
 オブリビオンとの本格的な戦闘はないが、こうやって難民キャラバンの進路を阻む障害を取り除くことは猟兵たちにとっても必要なことであった。
 障害がなくなれば、進行に余裕ができる。
 余裕ができれば精神を圧迫する負荷も軽減できるはずだ。
「休息もろくに取らずに進めば心身共に疲労する……当たり前の話であるが」
 そう、当たり前の話であるが、それでも人は己の思った以上の力を時として発揮する。もう動けないはずの身体が動くこともある。
 気力という力がそれを成すのであれば、その代価は生命だ。

「疲労すれば精神的な余裕がなくなる。いずれ不満の噴出や仲間内での諍いに繋がる……」
 それは野盗の襲撃以上に猟兵達が恐れていたことだった。
 難民キャラバンの足を進めさせるのは、己たちの存在ではない。彼等の持つ希望が、それを成し得るのだ。
 いつだってそうだ。
 人の足を止めるのは暴力や争いではない。諦観だ。
 諦めは人の足を容易に止めるし、一度止まってしまった足をもう一度踏み出すには、膨大なエネルギーが必要となる。

 だからこそ、シキは宇宙バイクを駆り、キャラバンの進路方向を偵察する。彼一人では本来カバーしきれぬ範囲であったが、集まった猟兵達との連携に寄って、つつがなく行なわれていた。
「よし……とまれ」
 偵察のついでにキャラバンの難民たちが安全に休める場所を見つけ、そこへと誘導していく。
 そこでならば、多少は彼等の休息も可能であろう。
 子供たちは猟兵たちのケアによって笑顔を取り戻しつつ合った。それが彼等の難民キャラバンの一団の雰囲気を柔らかなものに変えていた。
「……現時点ではこれが最良か」

 難民キャラバンの人々が休憩している間にもシキは警戒を怠らない。
 このアポカリプスヘルの荒野において、不測の事態はいつだって起こりうる。野盗や暴走車両などだけではない。
 暗黒の竜巻、オブリビオン・ストームの脅威だって以前存在しているのだ。
 その現状にシキは歯がゆいと感じていた。
 今できることはこれしかない。もっと劇的なことができればよかったであろうが、猟兵と言えど、その力には限界がある。

「思っていたとしても、おくびにも出せないがな」
 そう、シキを含め猟兵達は『凄腕奪還者』とアポカリプスヘルの人々に認識されている。
 ならば、そう振る舞うのがシキにとって彼等への最大の安心材料を与えることになるだろう。だからこそ、シキは己の力の限界を歯がゆくは思えど、それを表に出さない。
 悟られてはならない。


 さあ、もう少しだ、とシキは難民たちに声をかけてから再び宇宙バイクで空へと飛び上がっていく。
 まだまだ『救世主の園』へと至る道程は長く険しい。難民キャラバンの人々の体力が持つのかどうかも怪しい。
 けれど、それでも難民キャラバンの人々を送り届ける。
 それが『凄腕奪還者』として、彼等を励まし続けると決めたシキの成すべきことだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アンノット・リアルハート
救世主として作られた……か、ちょっと気になるわね。私も連れていってもらいましょう

ただ、キャラバンの人達を手助けはしても楽を覚えさせたくはない。この世界でそれを知ってしまうと後が辛いでしょうし

なので主に行うのは長時間の移動で身体に不調が出た人に対する【救助活動】、その際【コミュ力】で何人かの大人と子供をまるめこんで助手として働いてもらって、私の持ってる簡単な医療知識を伝えましょう
私達がいなくなった後、自分達だけでこの世界を生き残れるようにね

希望する人が居れば選択UCを使ってしっかりとした勉強ができる空間を作り出しましょう
ただ、この中で楽をしようとする人が居たら外に追い出すけれどね



『救世主』。その言葉を聞いた時、人はどんな思いを抱くだろうか。
 不信感だろうか。それとも縋るべき希望と思うだろうか。そのどちらにしたとしても、『救世主』という言葉は特別な力を持つ。
 人の世を救うのが、『救世主』というのであれば、正しく今、難民キャラバンの人々が目指すのは、彼等の心を救う大地であった。

 汚染のない土地。豊潤なる大地。それはアポカリプスヘルに生きる人々が欲して止まないものである。
 野盗に物資を奪われない。生命の危険を感じなくても済む。それだけでいいのだと、あるのかどうかもわからない希望にすがり、広野を行く。
 そのたくましさを見て、アンノット・リアルハート(忘国虚肯のお姫さま・f00851)は難民キャラバンへの同行を決意した。
「救世主として作られた……か、ちょっと気になるわね」
 その言葉の意味を考える。
 彼女にとって『救世主』とは一体どんなものであろうか。亡国の王女の複製体たる彼女にとって、それは特別な意味を持つのか。それは彼女自身にしかわからない。
 けれど、彼女が成すべきことははっきりとしていた。

「私達猟兵の力は確かに難民キャラバンの人々よりはあるでしょうけど……手助けはしても楽は覚えさせたくはない。この世界で、それを知ってしまうと後が辛いでしょうし」
 魚を与えるのではなく、魚を釣る術を齎す。
 アンノットの考えは至極まっとうなものである。今はいいかもしれない。猟兵たちの助けを借りて、彼等は難民キャラバンとして目的地へと近づいている。
 けれど、猟兵達がいなくなってしまったら?
 途端に何もできなくなってしまう集団が出来上がってしまっていたのでは、本末転倒だ。
 文明の荒廃した世界であればなおのことである。

 故に彼女が導き出したのは、救助活動の術を齎すということである。
 これだけの長期間の移動だ、すでに数人以上の数に登るキャラバンの人々の体には大なり小なりの不調があるはずだ。
 彼等に対する救助活動と、簡単な医療知識を授けるのだ。
 これならば、今後彼等も自分たちでなんとかしていけるだろう。早速アンノットは何人かの大人と子供を引き入れる。
 比較的身体が丈夫であり、かつ知識を吸収するのに柔軟な頭を持つもの。若者と子供が適任だろう。
「私達がいつまでもいるとは限らないから。自分たちで出来ることは自分たちでしようって思うでしょう? なら、学ぶ時間は私が作ってあげる」

 此方の夢よ、望む未来を与えたまえ(デイドリーム・ガーデン)とアンノットのユーベルコードが発動する。
 それはアンノットの持つ星型のペンダントに触れた彼等を抵抗しない限り、彼等の望みが現実となった世界へと吸い込むのだ。
 この中であれば、知識欲旺盛な彼等が医療知識を習得することができる。
「自分たちだけで生きていける。生き残ってやるっていう気概があるのなら、まずは必要とする知識を身につけなさい。望むのなら私がそれを与えてあげる」

 星型のペンダントの中で、彼等はしゃかりきになって医療知識を体得していく。
 この世界の中で楽をしようとするものがいたのならば、外に追い出して叱り飛ばしてやろうと思っていたけれど、中の様子を伺うに、その必要はなさそうだった。
「いつだって、人の足を進めさせるのは知りたいっていう欲求よね。役に立ちたい、誰かのためにっていう思いがあればこそ……だから、がんばりなさい」
 与えるのではなく、齎すでもなく、彼等自身の手で掴み取らせる。
 それがアンノットの与えるもの。

 いつかきっと彼等の得た知識が誰かを救うはずだと信じて―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アハト・アリスズナンバー
悲しい物ですね。造られた救世主に意味などないのに。
同じフラスコの子供だからこそ、意味にすがる気持ちもわかります。
ですがこの世界の希望は自分たちで作っていくのです。救世主の園……そんな土地があるのなら、そこからやり直すのも手ではありますが
まずはその希望だけは絶やさないように、動きましょうか。

POW
迫る脅威はUCを使用して盾になりましょう。
【焼却】、【爆撃】、【砲撃】で派手に撃ちあなた達では勝てないことを教えてあげます。
ただ相手はオブリビオンではないので殺さない程度に。
敵がまだ抵抗するようなら【誘導弾】と【ランスチャージ】で迎撃。

アドリブ連帯歓迎



 清浄なる豊潤な大地。
 それをアポカリプスヘルの人々は求めて止まないだろう。暗黒の竜巻オブリビオン・
ストームが文明の全てを何もかも破壊しつくしてから、この荒野が広がる世界において人々が求めるものは多かった。
 しかし、そのどれもがどれほど求めたとしても手の届かないものばかりへと成り果てた。
 希望は散々に潰えた。
 人々の心のなかには常に絶望がつきまとっていた。けれど、それでも人々は望んだのだ。
 救世主を―――。

「悲しいものですね。造られた救世主に意味などないのに。同じフラスコの子供だからこそ、意味に縋る気持ちもわかります」
 アハト・アリスズナンバー(アリスズナンバー8号・f28285)はアリスズナンバーと呼ばれるフラスコチャイルドの量産型の一体である。
 グリモア猟兵に寄って齎された情報の中にある『救世主の園』に存在するフラスコチャイルド型のオブリビオンを思えば、そのような言葉が紡がれる。
 造られた救世主。
 それが世界を救済するために造られた存在であることはわかっている。
 それを望む人々が居て、それを成すために生まれた存在。けれど、そこに悲しみを見出すのは、同じフラスコチャイルドだからだろうか。

「ですが、この世界の希望は自分たちで作っていくのです」
 希望は齎されるものではない。
 特に文明が崩壊したアポカリプスヘルであれば、なおさらである。この世界に生きる人々一人ひとりが胸に抱く等身大の希望。それこそが、世界を一歩一歩良いものへと変えていくのだと、アハトは知っていた。
「救世主の園……そんな土地があるのなら、そこからやり直すのも手ではありますが……」
 どちらにせよ、なんとしても難民キャラバンの人々をそこまで送り届けなければならない。
 人々一人ひとりが希望を抱えて生きていくのだとすれば、その希望の一つたりとて絶やしてはならない。
 そのためにアハトは猟兵として、この地にやってきたのだから。

 そんなアハトの目の前にいるのは野盗の群れ。
 彼等は単身でやってきたアハトを前にして物資を差し出すように要求していた。あまりにも理不尽な要求。
 だが、アハトにその要求を呑むだけの理由はどこにもなかった。
「―――あなた達では私には勝てないことを教えてあげます」
 ユーベルコード、アリスナイト・イマジネイションによって想像された戦闘鎧が彼女の身体を覆っていく。
 野盗たちの持つ銃火器程度では傷一つ付かぬ鎧。
 彼等の集中砲火を浴びてなお、無傷で立っているアハトを前にして彼等は後ずさる。尋常ならざる耐久力。縦断を打ち込まれてもなお、傷一つ付かない彼女を前にして、欲望の限りを働いてきた野盗達はアハトが放つ荷電粒子砲の爆撃じみた砲撃に晒され散り散りとなって散らばっていく。

「オブリビオンではないからといって殺さない程度、というのは加減が難しいですね……まだ抵抗するようなら―――」
 彼等は野盗と言えど、ただの人間たちばかりである。
 オブリビオンではない以上、無益な殺生は控えるべきであるし、逃げるのならば追う必要もない。こちらは難民キャラバンが問題なく進められばいいのだから。
「……警告する必要もありませんでしたね」
 進路はクリアになった。
 野盗たちの群れはアハトの戦闘力の前に這々の体で逃げ出すしかなかったのだ。

 こうしてアハトは難民たちと進む。
 造られた『救世主』が生み出した大地。『救世主の園』、そこから希望を持って逃れてきた人々の再出発とするために―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
只の噂、若しくはレイダーの撒き餌の可能性も加味しても向かわざるを得ない…
これまでの彼らの労苦と苦悩が偲ばれます

騎士として、この旅路を守護しなければ
…この世界ではブリンガーと名乗る方が有効でしたね

UCによる●情報収集で索敵や探査
迫る脅威を撃退しつつ●世界知識と照らし合わせ道中で役立つモノ…燃料・食料・機械部品を発見出来たら最上でしょう
種族柄、睡眠はほぼ不要、寝ずの番も担当
奪還者達の睡眠時間も確保しストレスケアも行えます

幼い子供達の一時の娯楽として私物の本の読み聞かせもいたしましょう

『騎士が握るは輝く聖剣。それを邪竜に振り下ろし…』

申し訳ありません、敵襲のようです
ですが直ぐに戻ります
ご安心ください



 奪還者たちの間で時折上がる噂話『救世主の園』。
 それはアポカリプスヘルに生きる人々にとって、すがりたくなるほどの希望であったのは間違いない。
「只の噂、もしくは野盗(レイダー)の撒き餌の可能性も加味しても向かわざるを得ない……これまでの彼等の労苦と苦悩が偲ばれます」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の言葉は尤もであった。彼でなくても、そう考える者はいるだろう。それだけに出来すぎた話であり、うまい話であるのだ。
 うまい話には裏がある。
 そう考えるのが人の常であり、大抵の場合は裏があるものだ。だが、逼迫した状況を抱える者たちにとってはどうだろうか。

 藁にもすがる思い。一縷の希望にすがりたくなるほどに追い詰められてしまったアポカリプスヘルに生きる人々。
 彼等はそれでも明日を望む。明日が欲しいと。だからこそ、荒野をゆく。危険がどれだけ迫ってこようとも、それでも足を踏み出さねばならない。
「騎士として、この旅路を守護しなければ……この世界では奪還者(ブリンガー)と名乗るほうが有効でしたね」
 この世界において、猟兵は凄腕の奪還者として彼等の瞳に映る。だからこそ、無理に訂正するのではなく、奪還者として通したほうがすんなりと受け入れられるものだ。

 トリテレイアは早速、自律式妖精型ロボ 格納・コントロールユニット(スティールフェアリーズ・ネスト)から排出された妖精型偵察ロボットを空へと放つ。
 荒野をゆく難民キャラバンにとって偵察は有効であり、急務である。
 何人もの猟兵たちのおかげで、お互いの担当する領域がかぶらないように展開することによって相互に情報の共有が執り行えるのは、猟兵としての連携の賜物であろう。
 迫る脅威も順調に排除できている。
 これならば、自身は偵察の情報を統括し、共有する中継点として動けばいいと判断したトリテレイアは己のデータベースにある世界知識から道中で役立つもの……つまりは燃料、食糧、機械部品を妖精型ロボットたちに探索させる。
 文明の残滓として残っている廃墟の中を探れば、何か見つかるかも知れないと判断したのだ。
「ふむ……何かしら発見できればと思いましたが、保存食の類ですか……有機生命体にとって食は最優先事項であり、いさかいの種でもありますからね」
 食糧が大いに越したことはない。
 そうでなくても、この集団……難民キャラバンの物資は乏しいのだ。食糧が手に入ったことは余裕に繋がる。

「食糧の問題は、クリア……したとはいませんが、当座を凌ぐ事は可能でしょう。あとは―――」
 ぐるりとアイセンサーを見回すと、そこに映ったのは物珍しそうにトリテレイアを見上げる難民の子供たちの姿。
 彼の姿はウォーマシンであるが、違和感を持たれることはない。猟兵とはそういう存在なのである。
 だが、それでも大柄な彼の姿は物珍しいのだろう。恐怖感を抱かれていないということに安堵しつつ、トリテレイアは子供らのストレスケアもまた大事なことであろうと判断し、手招きする。

 彼の電脳に残された騎士道物語。
 それは在る種の娯楽作品でも在る。痛快であり、豪快。勧善懲悪。それはこの世界のどこにもないものであるからこそ、子供らの心を刺激した。
「騎士が握る輝く聖剣。それを邪竜に振り下ろし……」
 トリテレイアは子供らに囲まれながら、私物の本の読み聞かせを行う。
 文字が読めなくても、聞くことによって物語を頭の中に再生していくだろう。彼等の心の中に御伽噺のような物語はどんな意味を齎すことだろう。
 この荒廃した世界においても、騎士道は芽生えるのだろうか。いや、きっと芽生えるはずだ。

「……申し訳ありません。敵襲のようです」
 偵察型妖精ロボットの索敵に引っかかる障害となる存在を察知し、トリテレイアは読み聞かせを中断する。
 不満そうな声を上げる子供らをなだめてトリテレイアは出陣する。
「ですが、すぐに戻ります。ご安心ください」
 その言葉、その所作はまさしく騎士。
 その姿に子供らは憧れを抱くことだろう。こうした一歩一歩が、荒廃した世界に清涼なる風を送り込み続ける。

 そうすればいつの日にか、この大地にもまた騎士が生まれることだろうと信じて―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
キャラバンの人々を護る為、頑張ります!

普段はキャラバンに同行して響月を楽器演奏し、ヒーローズアースで有名な、明るくて元気が出るような曲を選んで吹奏し、皆さんを力づけます。
また天候操作を行って、暴風雨は力を弱め、峻烈な日差しは雲で和らげるようにします。

野盗が出てくれば「大丈夫です。私達が護りますから。」と皆さんを安心させるよう宣言してUC起動。
状態異常力を強化し、響月による【(葬儀で吹奏する厳かな曲の)楽器演奏・音の属性攻撃・マヒ攻撃・範囲攻撃】で野盗全体を無力化します。
それに耐えて迫るようなら【雷の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱・神罰・範囲攻撃】で落雷発生。

一度目は警告、二度目は本気で放ちます!



 未だ見果てぬ荒野の先にある『救世主の園』と呼ばれる希望を夢見て、人々は進む。
 荒野の道は厳しく、到底、難民キャラバンの人々だけでは到達することは出来なかったことだろう。
 それほどまでにアポカリプスヘルの荒野には危険が満ち溢れていた。
 野盗の群れ。暴走車両、AIの暴走した機械……様々な脅威は難民キャラバンを餌食にしようと襲い来る。
 けれど、それを散々に打倒してきたのが猟兵……人々の瞳に映るのは凄腕奪還者(ブリンガー)としての猟兵の雄姿であった。

 大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)もまた、その一人である。
 淑やかな所作、振る舞い。溢れ出る神気の如き雰囲気は、彼女を凄腕奪還者以上の存在として、人々に認識させた。
 清涼なる黒髪は、アポカリプスヘルにおいてはあまりにも美しいものであり、憧れの対象であった。
「キャラバンの人々を護る為、頑張ります!」
 そんな彼女は猟兵であり、神でもある。その身が護ると決めた意志は固く、どんな障害であっても、その意志を手折ることはできないだろう。
 野盗の群れがキャラバンを強襲したとしても、彼女は慌てずに対処する。できるだけ人々に安心を与えるようにと高らかに宣言するのだ。
「これより神としての務めを果たします―――大丈夫です。私達が護りますから」
 それは宣言であり、ユーベルコードの詠唱であった。
 輝くのは詩乃の神力であり、天地に宿りし力。
 そして何より人々の願いと想いである。その輝きを持って詩乃の力は増大する。それこそが、彼女のユーベルコード、神事起工(シンジキコウ)である。

 そんな彼女が奏でるのは、響月。
 神代に存在した不死の怪物の骨を漆と金で装飾した龍笛が奏でるのは、魂に染み渡る厳かな音色。その音色は、野盗たちの心をへし折るには十分であった。
「一度目は警告、二度目は本気で放ちます」
 そんな彼等の眼前に内放たれるのは、雷撃が呼び起こす落雷。凄まじい轟音と共に穿たれる大地。
 一撃目は彼女の言葉通り威嚇である。当てるつもりはない。もしも、これでも向かってくるのならば、と詩乃の青い瞳が野盗の群れを見据える。

 神の偉業は、人の手によって制御できない力に寄ってのみ成される。
 詩乃の竜笛が奏でる音は、野盗たちを散り散りになって放逐する。彼女は戦い終えると、再び自愛に満ちた神としての顔を浮かばせる。
「さあ、明るい曲を奏でましょう。皆さんの元気がでるように―――」
 再び奏でられる笛の音色。
 それは野盗に効かせた曲とは打って変わって、旅路の不安を吹き飛ばすようなものであった。
 彼女の音色がキャラバン中に響き渡る限り、人々の心に暗雲は訪れないだろう。

 たとえ、本当の雷雲がキャラバンに迫ったとしても、彼女の神としての力……天候操作によって荒野に吹き荒れる風は止み、強烈な日差しは雲で和らげる。
「皆さんは必ず『救世主の園』まで送り届けます……それが私の努めですから」
 だから、気にせずにと彼女の神の威光に膝をつく難民キャラバンの人々を嗜める。彼女にとって人の祈りと願いこそが力の根源。
 人の希望が、それを紡ぐのならば、詩乃はいつだって微笑みを絶やさずに、彼等のために戦うだろう。

 この旅路の果てにある、彼等の抱く希望を護るため、詩乃は戦うと決めたのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナターシャ・フォーサイス
楽園を謳う方が、我ら以外にも存在するとは…
目的を同じくするものとして、親近感を覚えますが。
それが哀れな魂となり、歪められたものならば…
使徒として、在るべき道へと導いて差し上げねばなりません。

けれど、生けるものが道半ばで倒れぬようにすることもまた使徒の責。
ゆえに、使徒として救いを与えましょう。
凍えるなら衣服を、飢えるなら食を、迷えるなら至るべき場所を。
天使達と共に準備し、分け与えるのです。

我らは楽園の使徒。
約束された幸福の前では、争うことなど不毛なのです。
ですから、どうか矛をお収めください。
…それとも。
我らと同じ使徒となり、我々と共に歩むのならば…
望むのならば、分け与えましょう。



『救世主の園』。
 それはアポカリプスヘルに生きる人々にとっての楽園が具現化したような大地である。汚染されていない清浄なる大地。
 作物育たぬ枯れた荒野にあって、豊潤なる大地が広がるという。そこでなれば、慢性的に不足しがちな食糧の問題もまた解決できることだろう。
 だが、本当にそうであろうか?
 誰もが心のなかに疑念を抱く。そんなうまい話があっていいのだろうかと。騙されているのではないかと。もしかしたのならば、『救世主の園』なんていう楽園は存在しておらず、この旅路が無駄になるのではないだろうかと。

 それはもっともな考えであった。
「楽園を謳う方が、我ら以外にも存在するとは……目的を同じとするものとして、親近感を覚えますが」
 ナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)にとっても『楽園』とは特別ものであり、祈りを奉ずる対象であった。
 そんな『楽園』がアポカリプスヘルに存在するというのであれば、それは喜ばしいことであるとナターシャは考えていた。
 けれど、グリモア猟兵から齎された情報を聞けば、それは次第に哀しみに変わっていく。
 確かに『救世主の園』は存在している。
 けれど、そこに座すのはフラスコチャイルド型のオブリビオン。その道程は厳しいものばかりであり、難民キャラバンの人々だけではたどり着けないだろう。
 もしも、奇跡的にたどり着けたとして……その末路は言うまでもない。

「それが哀れな魂となり、歪められたものならば……使徒として、在るべき道へと導いて差し上げねばなりませせん」
 オブリビオンである以上、戦いは避けられないだろう。
 猟兵がそうであるように、オブリビオンもまた猟兵は滅すべき存在。けれど、その『救世』の思いは、祈りは偽りではなく、歪められただけである。
 それを正したいと思ったのだ。
「けれど、生けるものが道半ばで倒れぬようにすることもまた使徒の責。ゆえに使徒として救いを与えましょう」
 彼女のユーベルコード、限定解放:大天使の翼(アンロック・エンジェリックフェザー)が発動する。
 その全身は機械天使へと変化し、天使を呼び、難民キャラバンの休憩地点に結界を張り巡らせる。

 休憩のひと時であっても、虎視眈々と野盗の群れは人々から物資を奪おうと狙っている。結界を貼れば、悪しき心を持つ者たちは近寄れないだろう。
「凍えるなら衣服を、飢えるなら食を、迷えるならば至るべき場所を……さあ、天使達よ。分け与えるのです」
 呼び寄せた天使たちが次々と結界内の難民たちに必要な物資を届けていく。
 彼女の言葉通り、彼等が必要としているものを与えていく。それこそが、彼女の奉じる祈りの結果であった。

 そして、結界に阻まれ難民キャラバンを襲うことも出来ずに立ち往生していた野盗の群れの前に顕現する機械天使となったナターシャの姿。
 彼女の姿は機械天使であれど、神々しく輝く。
「我らは楽園の使徒。約束された幸福の前では、争うことなど不毛なのです。ですから、どうか矛をお納めください」
 告げる言葉は慈悲のものであった。オブリビオンではない野盗たちにとって、その姿、その言葉こそが彼等の他者から欲望のままに奪うという行為を改めさせるものであった。

「……それとも。我らと同じ使徒となり、我々と共に歩むのならば……望むのならば、分け与えましょう」
 戦い、滅ぼす以外の道をナターシャは示す。
 同じ思いを共有し、祈りを捧げるのであれば隔てる事無く与える。そして、共に進む道を提示する。
 それはまさしく聖女の如き寛容さで野盗の一群を改心させ、信仰の力に寄って野盗をも『楽園』へと導く。

 彼女の祈りは、本物であった。
 だからこそ、信仰の力は正しく発揮される。彼女の揺らがぬ信仰は、世界が違えど正しく人々の心に染み渡っていくのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『軍用ロボット犬『ゲルマーネン』』

POW   :    噛撃分析
【噛みつき 】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【行動データ】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD   :    制限解除
【遠吠えをする 】事で【高速戦闘モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    戦闘機動
【予め思考回路にプログラムされた連続攻撃 】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。

イラスト:飴村いぬた

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 そこは、確かに在った。
 ただの噂話ではなかった。『救世主の園』―――難民キャラバンがたどり着いた先にあったのは、噂と同じ……いや、それ以上に清浄なる大地であった。
 豊潤な大地が示す通り、そこかしこに荒野の残滓すら見受けられない緑豊かな大地が広がっている。

 喜び、歓声のあがる難民キャラバン。
 だが、そんな喜びを引き裂くように凄まじい咆哮が響き渡る。それは獣の咆哮。狼のような、遠吠えのような―――。

「グルァァァァ―――!!!」

 一斉に響き渡る咆哮は、『救世主の園』へと至らんとする難民キャラバンを包囲するように疾駆する軍用ロボット犬『ゲルマーネン』のものであった。
 かの軍用ロボット犬は、これまで遭遇した暴走車両や機械とは桁違いの戦闘力を持っていた。一瞬で猟兵達はわかる。
 あれはオブリビオンであると。互いに互いを滅ぼさなければならない存在。

「―――……清浄なる大地に不浄なる猟兵がやってきた。なら、彼等を、人々を救ってあげなきゃ。救わなければいけないの。たとえ、死んでも救うわ。私はそのために造られたのだから……さあ、あなたたち、行きなさい。彼の者たちを、殺してでも救うの―――」

 群として迫る軍用ロボット犬『ゲルマーネン』。
 その奥に控える一人の少女の声が響き渡る。間違いない、あれがこの『救世主の園』の主―――救世童隷『ジフテリア・クレステッド』。

 過去に歪められし、救世の徒である―――!
アンノット・リアルハート
……あら、あの女の子が噂の救世主かしら?
ちょっと呼び掛けてみましょう、ねえ貴女!こっちの声が聞こえる!?

飛び掛かってくるオブリビオンを『ノイギーア・シャッテン』による【早業】【カウンター】で捌き、『継承のリボン』で拘束
それと平行して救世主の少女に呼び掛けてみましょう

貴女、親の顔は覚えてる?
生まれて最初に感じたことは?
救うって、何をするつもり?
私も貴女と同じ、救うために作られたモノだから。貴女のことを知りたい

返答があるかはわからないけど、答えによって私が何をするべきか変わるから

拘束した犬達は……可哀相だけれど、戦闘の意思が消えないのなら選択UCでまとめて両断しましょう



 荒野に広がる清浄なる大地『救世主の園』。
 その光景に歓喜の声を上げた難民キャラバンの人々は、すぐに絶望の表情へと変わる。現れるのは彼等を包囲するように展開するオブリビオン軍用ロボット犬『ゲルマーネン』。
 元は軍用ロボット犬として人々の生活を守っていた存在だ。けれど、今は違う。暗黒の竜巻、オブリビオン・ストームによって歪められた過去の化身であり、人に牙剥く存在である。
 その最奥に位置する『救世主の園』に立ち、彼等に指示を出しているのが、ここの主であるオブリビオン救世童隷『ジフテリア・クレステッド』であろう。
「殺してでも救う。死んでも救う。それが私の役目だから。苦しみも哀しみも、何もかも救い上げる。たとえあなた達が死んでも関係ない。私は救う存在だから」
 その言葉はもはや過去に歪められた存在であることを隠すこともない。

 そんな彼女に声を届かせようとする猟兵がいた。
「ねえ貴女! こっちの声が聞こえる!?」
 アンノット・リアルハート(忘国虚肯のお姫さま・f00851)は飛びかかってくる軍用ロボット犬の牙を亡国の守護竜ノイギーアの影が姿を変じた槍でもって捌き、いなしていく。
 数で押し、俊敏さで持って猟兵を翻弄しよとする軍用ロボット犬の牙を躱しながら、伸縮自在のリボンで次々と拘束していく。
 拘束されてもなお、軍用ロボット犬の抵抗は凄まじい。もがくたびに継承のリボンとよばれる伸縮自在のリボンでさえ軋むのだ。

「貴女、親の顔は覚えてる? 生まれて最初に感じたことは? 救うって何をするつもり?」
 その問いかけは確かにオブリビオン、ジフテリアへと届いていた。
 造られた救世主たるフラスコチャイルドの瞳がアンノットを捉えていたからだ。
 アンノットは確かめたかった。
 返答があるかどうかはわからない。確証もない。けれど、その言葉によってアンノットは己が何を成すべきかを決めようとしていた。
 それは彼女自身の選択
「―――私も貴女と同じ、救うために造られたモノだから。貴女のことを知りたい」
 過程は違えど目指すものが同じであれば、通じるものが在るはずだ。
 それを信じたい。

 けれど、その想いは過去に歪められた存在の前にして、いかなる響きを奏でたことだろうか。
「『救う』。人を『救世』する。ただそれだけが私の目的。それ以外に感じることはないし、人の苦しみ、哀しみを開放することこそが『救世』。何者にも優先されること。そう、たとえ死んでも、殺してもでも救う」
 微笑む姿は、まさに救世の徒。
 聖人の如き微笑みを浮かべてなお、紡ぐ言葉は狂っていた。結果として『救世』できればいい。
 過程を見ていない。そこに人の意志の介在を感じない。紛れもなく骸の海より出でし、過去の化身。
 己の欲求以外に興味はなく、他者がどれだけ傷つこうとも、関係がないのだ。

「―――そう」
 アンノットは、未だ抵抗し戦う意志を失わない軍用ロボット犬を見下ろす。
 王国騎士近衛流『布剣』(ナイトアーツ・シュヴァリエリボン)。それは拘束していた継承のリボンによって鋼すらも切り裂く一撃。
 軍用ロボット犬たちが次々とバラバラに両断され、荒野に崩れ落ちる。
 霧散し消えていく存在。過去が未来を食いつぶすのが、この世界だというのならば。

 アンノットが選択したことは、きっと辛く厳しい道であったことだろう。
 けれど、いつだってそうだ。
 正しい道は、いつだって辛く厳しい道であるのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユージィーン・ダイオード

―ム。来たか。

レフトアームのシリンダーの出力を上昇(怪力)
バギーやトラック、バラックやがれきなどを倒して集め簡易的な拠点を作成。
ここに隠れていろ。
猟兵は…こんな時に居る!!
アサルトライフルとビームキャノンを装備に選択。
拠点にした瓦礫の上に上がり、同時射撃で【乱れ射ち】の【弾幕】をはり接近を防ぐ。
ユーベルコード:ヴァリアブルウェポン発動(手数が必要と判断。目からビームを連続発射)
スカウトボールを飛ばし【偵察】…情報確認。後方へ回っている個体を確認。【誘導弾】発射。着弾を確認...。



アドリブ許可歓迎



「―――ム。来たか」
 強化型駆動システム『パワー・シリンダー』が内蔵された機械腕が唸りを上げて、使い捨てであったバギーやトラック、バラックや周囲に在った瓦礫を押し倒し、簡易的な拠点を構築する。
 ユージィーン・ダイオード(1000万Gの鉄面皮・f28841)は、そのフルボーグたる力を遺憾なく発揮し、即座に対応していた。

 それはあっという間であった。
『救世主の園』へとついにいたった難民キャラバンの人々。
 歓喜に湧く声が、絶望の声に染まったのは、すぐのことだった。彼等を包囲するように響く遠吠えの咆哮。
 それは軍用ロボット犬『ゲルマーネン』の人の生命い牙立てようとする、殺戮の咆哮であった。
 構築した拠点の中に難民キャラバンの人々を避難誘導するユージィーン。鉄面皮であるが、彼の心根は長い旅路の中で人々に知れ渡っていた。少しおっかないけれど、優しい人。
 だから、彼等はユージィーンの言葉に疑うこと無く従う。
「ここに隠れていろ。猟兵は……こんな時に居る!!」

 逃げ遅れた人々の姿を捉えた瞬間、彼は荒野を蹴っていた。
 救う。そう決めたからには、どんな障害があろうともそれを成す。それは己がそう評するように『くそ真面目な男』であるからだ。
 アサルトライフルとビームキャノンを構える。逃げ遅れた人々を襲わんと飛びかかる軍用ロボット犬の胴体を撃ち抜く弾丸と火線。
 その一撃を受けて空中で爆発四散するロボット犬の残骸をくぐり抜けて逃げ遅れた人々を抱えて、構築した拠点の中へと駆け込む。
「ここは護る……だから、ここより外に出るんじゃない」

 ぶっきらぼうな物言いだった。
 けれど、人々にはそれで十分だった。彼が、猟兵がどれだけ人々のために心を配ってくれたのかを人々は忘れない。
 ユージィーンはそのまま拠点にした瓦礫の上に上がり、アサルトライフルとビームキャノンの引き金を引き続ける。
 拠点の中に人々がいるとわかるのだろう、次々と集まってくる軍用ロボット犬たち。
 その集まり方は砂糖に蟻が群がるようであった。

「ユーベルコード・ヴァリアブルウェポン発動―――」
 同時にスカウトボールを空へと飛ばし、俯瞰した情報は彼のサイボーグたる演算速度に寄って多角的な視界を得て、死角をなくす。
 次々と放たれる弾丸と火線。
 さらに内蔵兵器である瞳から放たれる熱線が、次々と軍用ロボット犬たちを殲滅していく。
 飛行ドローン、スカウトボールからの情報で自身の後方に回り込もうとする個体を察知すれば、誘導弾を発射し近づけさせない。
「着弾を確認―――次」
 波状攻撃のように軍用ロボット犬たちが襲い来る。
 けれど、どれだけの波が襲ってこようとも、ユージィーンは怯むことはない。
 表情に少しの焦りも、不安もない。

 そこに浮かんでいたのは、『1000万Gの鉄面皮』たる彼の動かぬ表情。
 成すべきことを成す。
 そのために取れる手段は躊躇なく放つ。それが難民キャラバンの人々を護るための最善手であるからだ。
 銃撃と咆哮が交錯し、瓦礫拠点を中心に、軍用ロボット犬たちの残骸が山積するまでユージィーンの圧倒的な殲滅が続くのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

政木・朱鞠
予想通り簡単に受け入れてくれるわけないよね。
だって、貴方は抗う術のない人達を篩にかけるフリして身勝手な『救済』で未来を潰すためのズルい罠を仕掛けているんだから。
とりあえず、目の前のワンちゃん達には骸の海に帰ってもらうよ。

戦闘【SPD】
ゲルマーネンの『制限解除』に対してスピード勝負になるけど『忍法・狐龍変化身』を使用して仮初めだけど真の姿の足部分を再現して機動力に特化した強化状態で牽制しながら隙を作りたいね。
本攻撃では拷問具『荊野鎖』をチョイスして、【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使い【傷口をえぐる】で体に鎖を絡めて動きを封じながら締め上げてダメージを与える戦法を取ろうかな。

アドリブ連帯歓迎



 人々が渇望して止まなかった清浄なる豊潤な大地。それが今、目の前に広がっている。『救世主の園』は単なる噂話ではなかったのだ。
 汚染されていない大地だけでも貴重そのものである。さらには作物を育てるのに適した肥沃なる土地。
 そのどれもがアポカリプスヘルに生きる人々の希望を育むには十分なものであった。だが、その希望は次の瞬間、絶望へと落ちる。
「救いましょう。人々を『救世』しましょう。必ず救うの。どんなことをしても、どんな結果になろうとも最期には救ってあげるの」
『救世主の園』の奥、獣の咆哮響かせる大量の軍用ロボット犬『ゲルマーネン』の群れを従えるようにして、この地の主である救世童隷『ジフテリア・クレステッド』の姿があった。

 彼女の言葉はすでに過去の化身、オブリビオンとしての言葉。そこには歪められた『救世』への信条だけがあった。
「予想通り簡単に受け入れてくれるわけないよね」
 政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)はオブリビオンの出現に逃げ惑う人々を護るために駆け出す。
 遠吠えが響くのは、軍用ロボット犬の制限解除であろう。互いにスピードを持って他を制圧する術を持つのならば、真っ向勝負になる。
「抑えし我が狐龍の力…制御拘束術第壱式にて…強制解放!」
 ユーベルコード、忍法・狐龍変化身(ニンポウ・コリュウヘンゲシン)によって仮初であるが、己の足を真の姿へと変ずる。
 その圧倒的な脚力を持って、彼女は荒野を駆け抜ける。

「何故逃げるのです? 救われるのに。痛みも、苦しみも何もかもから開放されるのに、何故逃げるのです? 一瞬。たった一瞬で皆救われるのに―――」
 ジフテリアの声が奥から響く。
 猟兵達が難民キャラバンの人々を救わんと、あちこちで活動を開始している。そう、『救世主の園』の主ジフテリアはすでに過去に歪められた存在。過去の化身である。
 その『救世』の方法が正しいわけがない。
「だって、貴方は抗う術のない人たちを篩にかけるフリして身勝手な『救済』で未来を潰すためのずるい罠を仕掛けているんだから」
 その問いかけに応える朱鞠の言葉はきっとジフテリアには届かないだろう。問答は無用である。
 手にした蔓薔薇のごときランダムスパイクのついた鎖を振るう。
「とりあえず、目の前のワンちゃん達には骸の海に還ってもらうよ」

 鎖が生き物のようにうねり放たれ、軍用ロボット達を縛り上げては、その機械の身体を砕くように引き絞られる。
 また振るった鎖は彼等の俊敏な動きであっても避けることのできない速度で放たれるのだ。
 それは全て彼女の真の姿、狐龍としての力を限定的ではあるが開放した力の前では、どれだけ速度をあげようとも逃げることは出来ない。

「纏めて―――!」
 蛇のように鎖が空中で軌道を変え、軍用ロボットたちの身体を次々と拘束していく。数珠つなぎのようになった軍用ロボットたちを猟兵としての戦闘力が支える膂力で持って引き絞り、振り回しながら荒野に叩きつける。
 鉄の拉げる音がして、軍用ロボットたちは鉄くずに成り果てる。まだまだ数は多い。けれど、荒野を迅雷の如き速度で持って駆け抜ける朱鞠の姿を捉えることのできる軍用ロボット犬はいなかった。

「どれだけ早くなろうとも、狐龍の前には止まって見える……さあ、早く骸の海にお帰り」
 怒涛の連撃が放たれ、次々と霧散してい消えていく軍用ロボット犬たち。
 けれど、まだまだ戦いは続く。これだけの数を圧倒してもなお、この後に控える『救世主』ジフテリアとの戦いが待ち受けているのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
ジフテリアさんの声を聞き、「人を救うのは何時だって人自身です。私達はその行動をそっと後押しするだけ。選択と結果を押し付けるのは救世とは申しません。」と詩乃なりの在り様で反論する。

人々を後ろに下がらせて、【かばう】事が出来るようにしてUC起動。
敵は素早い行動と牙が武器なので、桜の花びらを以って敵の群れの足を【範囲攻撃】。
動きを封じて攻撃能力を低下させる。
その上で【第六感と見切り】で攻撃を読み、天耀鏡による【盾受けとオーラ防御】で受け止める。

桜の花びらによる浸食と攻撃を進めつつ、【風の属性攻撃・全力魔法・衝撃波・高速詠唱・範囲攻撃】により、空気を巨大な鉄槌と化して、上空から敵の群れを圧し潰します!



 それは歌うような声っだった。救世童隷『ジフテリア・クレステッド』の声が、大群と言ってもいいほどの無数の軍用ロボット犬『ゲルマーネン』を指揮するように響き渡る。
「『救世』をしましょう。そうしましょう。人々を救う。ただそれだけのために私は造られたのだから、正しく『救世主』となりましょう。この手に余る者は少しもなく。誰も彼も救うの。等しく全て。そう、それこそ―――殺してでも救いましょう」
 その言葉はあまりにも歪んだ言葉であった。
 造られた生命で在るがゆえに、造られた意味を見いださなければ、己の存在意義すら確かなものとして感じられない。
 それを悲しいと思うのは、きっと他者だけだろう。

「人を救うのはいつだって人自身です。私達はその行動をそっと後押しするだけ。選択と結果を押し付けるのは救世とは申しません」
 その言葉に真っ向から対峙するのは、大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)であった。神たる身。その言葉は彼女なりの在り方であった。
 彼女が猟兵となってから得た経験、神としての生き方。その在り方が彼女の言葉を紡がせる。
 一斉に駆けてくる軍用ロボット犬の群れの数は膨大である。
 対するこちらも難民キャラバンの人々の数も膨大であり、彼等を守りつつ戦うというのは至難の業であった。

 あの軍用ロボット犬たちは難民キャラバンの人々の生命を是非は問わない。殺してでも救うというジフテリアの言葉通り、どんな手段を講じたとしても人々の生命の安否は関係ないとばかりに襲いかかるだろう。
「そんなことは、させません―――!」
 詩乃は人々を自分の後ろに下がらせる。
 それは女性の身ながら、猟兵として戦うことを決めた彼女自身の選択であった。その身をとして戦うと人々の前に立つ。
 手にした神力宿る薙刀を構え、圧倒的な高速移動と機動でもって襲い来る軍用ロボット犬たちを迎え撃つ。
「今より此処を桜花舞う佳景といたしましょう」

 彼女の構えた薙刀が無数の光をまとう桜の花弁へと姿を変える。
 それらは荒野を滑るようにして滑空し、地を這う第じゃのように軍用ロボット犬たちの足を攫う。
 放たれた桜の花弁が次々と軍用ロボット犬の足を散り散りに浄化消滅させていく。大地に這うようにして滑る軍用ロボット犬たち。
 通常の生物であれば、そこで終わりであったことだろう。
 だが、彼等は機械の身体を持つ犬型のロボットである。足がなくなろうとも関節さえ生きていれば、その体は関係がないと言わんばかりに、その牙を剥くのだ。

「そこまでして、人の生命を『救世』しようと―――奪おうというのですか!」
 彼女の周りに浮いていた天耀鏡が、その神鏡の威光を以てオーラと成して、牙を突き立てようとする軍用ロボット犬の攻撃を防ぐ。
 硬い壁にぶつかったように次々と詩乃へと襲いかかり、群がる軍用ロボット犬たち。その姿に一種の哀れささえも彼女は感じる。

「正しく機能していれば、人の助けとなるはずだった存在でありましょう……ですが、オブリビオンとして過去より出でし者であるのならば」
 桜の花びらが空へと舞い上がる。それは詩乃の操る風の力によって大気中の空気を圧縮させる。花弁が再び薙刀の姿へと戻った瞬間、彼女の手が振り下ろされる。
 それは彼女の操る風の神力により顕現せし、不可視の鉄槌。
「この一撃で、骸の海へと還しましょう!」

 その巨大なる一撃を以て上空より軍用ロボット犬たちの群れを圧し潰す。
 機械の体故に軋む音が盛大に響き渡り、荒野に一つのクレーターが出来上がる。完全に機能を停止した軍用ロボット犬たちの残骸。
 さらにそのさきに、倒すべき『救世主』がいる。その瞳を見据え、詩乃は駆け出すのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アハト・アリスズナンバー
まさかでした。この地にまだこんな緑がある場所が存在するとは。
ですが、このままでは間違った救済をされてしまいますね。死は救いではない事など、フラスコチャイルドが一番知ってるでしょうに。

POW
基本的にはレーザーライフルで皆さんを【援護射撃】します。
【誘導弾】で動いた敵を足止めしつつうち貫きましょう。

飛び掛かるオブリビオンにはランスで【カウンター】します。
その際に噛みついてくるようならUCを起動。その歯を破壊しましょう。
また、他に敵の動きが無いかドローンを設置して飛ばしておいて、
視覚外から攻撃が来るならドローンで【騙し討ち】です。

アドリブ連帯歓迎



「まさか、こんな―――」
 その地を見ての第一声は驚愕のものであった。アハト・アリスズナンバー(アリスズナンバー8号・f28285)の瞳に映る『救世主の園』。その清浄なる豊潤な大地は、彼女の想像を超えていた。
 フラスコチャイルドである彼女にとって、アポカリプスヘルとは荒廃した大地である。どこまでも続く荒野。作物の育たぬ大地。
 だというのに。
「この地にまだこんな緑ある場所が存在するとは」
 驚きを隠せない。
 難民キャラバンの人々は、この光景を希望にしていたのだ。まさに、希望そのもの。彼等の奮闘は間違いではなかった。

 けれど、声が響く。『救世主の園』の主、救世童隷『ジフテリア・クレステッドの歪んだ『救世』への想いが、過去の化身として蘇ったことにより力を伴って発露する。
 彼女の言葉は、軍用ロボット犬『ゲルマーネン』の大群を難民キャラバンへと差し向ける。咆哮が轟き、群れ成す軍用ロボット犬の凶悪なる牙が人々へと襲いかからんと荒野を疾駆する。
「……ですが、このままでは間違った救済をされてしまいますね。死は救いではない事など、フラスコチャイルドが一番知っているでしょうに」

 造られた生命だからこそ、尊ぶべきものがある。
 それを知るナハトにとって、ジフテリアの言葉は理解しようとしてもできるものではなかった。
「―――だから、その『救世』を止めます」
 手にしたレーザーライフルを構え、アハトもまた打って出る。
 難民キャラバンの人々は軍用ロボット犬から逃げ惑っている。猟兵達が作り上げた急増の拠点へと彼等を誘導しながら、アハトは彼等の逃げ道を作るべく火線を放つ。
 飛びかかる軍用ロボット犬の鋭い犬歯を銃身で受け止め、手にしたアリスズナンバーランスによって、その機械の体の態勢を崩すように吹き飛ばす。
「チェックメイト。貴方はもう詰んでます」
 ユーベルコード、アリスオブゲームエンド。それはアリスズナンバーランスによって放った一撃が触れた場所を破壊する致命の一撃。
 機械の身体が拉げる音がして、軍用ロボット犬が大地に崩れ去る。

 すでに飛ばしていたドローンから情報を受け取りながら、死角から襲い来る軍用ロボット犬たちの群れをたちまちにランスで薙ぎ払う。
 ユーベルコードのちからがこもった一撃は、その牙を叩き折り、戦闘力を確実に奪っていく。
「私達の瞳が二つだけだと、思わぬことです」
 難民キャラバンの人々の退路を確保し、彼等が拠点に駆け込むための時間を稼ぐ。
 それゆにアハトはその場から動くことは出来ない。彼女が動けば、軍用ロボット犬たちのターゲットが人々に向く。
 故に不退転の決意でもってアハトは、己の持ち場を死守する。群れ成す軍用ロボット犬たちの数は一向に減らない。

 一体どこから湧いてくるのだといいたく鳴るほどの大量の敵。
 けれど、彼女に恐怖はない。敗北の焦りもない。あるのは純然たる生命の謳歌。戦い、もしも己が破壊されようともオリジナルの個体に記憶は引き継がれる。
 だから恐れがないのかと言われれば違う。
「生命は戦うからこそ、光輝く。命のきらめきを知らぬ灰色の過去に負ける道理などないのです」
 次々と襲い来る軍用ロボット犬たちをいなし、破壊し、アハトは戦い続ける。
 それが己の生命の輝きだというように、誤った『救済』をもたらそうとするジフテリアに見せつけるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神楽火・未夜子
キリエといっしょ。でも、他のひとといっしょでもいい。

<高速詠唱>
「オブリビオン、出てきた。それなら、ほんき出す」
ダイモンデバイスに『獄炎』の弾丸を装填。ゲルマーネンに銃口を向けて引き金を引く。
「やっちゃえ、アスモデウス」
あとはキリエとアスモデウスにおまかせ。みゃこちゃんは乱戦に巻きこまれないように距離をとる。


神楽火・綺里枝
引き続き未夜子ちゃんと行動しますが、他の方と連携できるようならそれでも構いません。

<なぎ払い、おびき寄せ>
「ええ。オブリビオンであれば慈悲は無用。全て消えて頂きます」
後方の未夜子ちゃんに敵が向かわないよう積極的に前に出て、接近戦を挑みます。
ユースティティアの不凋花で敵をまとめて薙ぎ払いつつ、アスモデウスの攻撃に合わせて神輝鋼華嵐剱舞を使用。一挙に殲滅を図ります。
「あの方達は希望があると信じて進んできた。それを阻むのならば、わたくしは容赦いたしません」



 人が希望を見出す時、その瞳に映るのは輝く光であろう。
 ならば、過去の化身が現在を食いつぶし、未来への道を閉ざすのならば、その瞳に映るのは絶望だけであろう。
 絶望の光は人々を照らさない。その光を絶やさぬようにと人々の希望を、薪のようにくべるだけである。
 故に過去の化身たるオブリビオンの瞳に希望はない。あるのは絶望だけ。しかし、救世童隷『ジフテリア・クレステッド』の瞳に映るのは爛々とした光であった。
 希望の光ではない光。
「救いましょう。人々を救いましょう。何もかもから救いましょう。世界を救済するために、まずは人々から『救世』するの。苦しみも哀しみも、何もかも」
 その瞳に宿るのは狂気の瞳。あるのは過去に歪められた『救世』のみ。思いは本物であろう。けれど、取る手段があまりにもかけ離れている。
 哀しみ苦しみから逃れるための手段としての死を振りまくだけの存在へと成り果てているのだ。

「オブリビオン、出てきた。それなら、ほんき出す」
 召喚魔銃ヴィルデ・ヘーア、リボルビングライフル型のダイモンデバイスを天へと掲げるようにして、神楽火・未夜子(ちいさなフリーシューター・f27423)は宣言する。
 そのダイモンデバイスに籠められた弾丸の名は『煉獄』。
「ええ。オブリビオンであれば慈悲は無用。全て消えていただきます」
 その紅き瞳が捉えるのは、無数の軍用ロボット犬『ゲルマーネン』の大群。
 その数は土煙を上げて荒野を疾駆することからも、相当な数であろう。だが、神楽火・綺里枝(メイデン・オブ・シグナム・f01297)は退くわけにはいかなかった。

 彼女たちの背後には難民キャラバンの人々が逃げ惑っている。
 猟兵の一人が構築した急場しのぎの拠点へと逃げ込むまでの時間を彼女たちは稼がなければならない。それに、綺里枝は言った。
 オブリビオンに慈悲は無用であると。時間を稼ぐ―――それだけで済ませるわけがない。
「やっちゃえ、アスモデウス」
 天に掲げていた未夜子のダイモンデバイスの銃口がまっすぐ駆け込んでくるように襲い来る軍用ロボット犬へと向けられる。
 ユーベルコード、悪魔召喚「アスモデウス」。
 それはリボルビングライフルの銃口から放たれる『煉獄』の弾丸より召喚される悪魔『アスモデウス』の召喚。

 顕現する煉獄の悪魔の焔が、軍用ロボット犬たちの群れを焼き払う。
 炎の煽りを受けて、次々と機能不全へと陷っていく。それはあまりの光熱にセンサーやバランサーなどが破損したせいだ。
「好機……参ります」
 不滅なる正義の呪いかけられし白銀の聖剣を手にした綺里枝が切り込んでいく。動きの鈍った軍用ロボット犬たちを一刀の元に切り捨てながら、煉獄の悪魔『アスモデウス』が放つ炎に巻き込まれないように立ち回り、次々と軍用ロボット犬たちの群れをむさんさせていく。

「あの方達は希望があると信じて進んできた。それを阻むのならば、わたくしは容赦いたしません。無垢なる正義の花よ、悪を断つ剣となりて舞え!」
 彼女のユーベルコード、神輝鋼華嵐剱舞(オリハルコン・ランページ)が発動する。白銀の剣は、黄金に輝く不凋花の花弁へと姿を変え、荒野に吹き荒ぶ花嵐のように軍用ロボット犬たちの群れを包み込んで、切り裂いていく。

 未夜子は乱戦に巻き込まれぬように後方よりの射撃によって綺里枝を援護する。彼女たち二人に死角はない。
 互いの位置を把握し、戦うのは家族という絆があるからだろう。
 視界に互いの姿が見えなくても、手にとるように分かる。どのように動けば、どのように相手が動くかわかるのだ。
 それはまるで絢爛なる舞踏のようであった。花びらが舞い、炎が吹き荒れる。
 その舞台の中心にて舞い飛ぶように戦う綺里枝。

 彼女たちの戦いは、難民キャラバンの人々の瞳にどのように映っただろうか。
 希望を前にして絶望を知った彼等の瞳には、新たなる希望の炎が映っていた。その炎の演舞が消えぬ限り、彼等の瞳にもまた希望の光は潰えない。
 二人の戦いは、もはや二人だけのものでなくなっていた。
 大勢の難民キャラバンの人々の希望、そのために戦う、希望のための戦いになっていたのだ―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
キャラバンの難民への被害は最優先で防ぐ
いざとなれば、自分やバイクの車体を盾にしても構わない
焦りから危険な行動を取ろうとする難民には声をかけて落ち着かせたい

敵の攻撃は接近戦に特化している
それを念頭に置いて、近付いて来るものを片っ端から撃ち抜く(『スナイパー』)
囲まれても焦らず敵の位置を把握
周囲の敵だけを狙ってユーベルコードを発動
戦いながら把握しておいた敵の位置へ向けた『範囲攻撃』で一気に片付けたい

こちらが焦りを見せれば難民へ不安が伝わる
ここまでと同様、どんな戦況でも慌てず堂々と戦ってみせる
何があってもこちらの優位は揺らがないと
後に控える更に協力な敵に対応する為にも、そう彼らに印象付ける必要がある



 恐怖に駆られた集団というものは、脆い。
 どれだけ強固な絆や希望によって構成された集団であっても、己の生命を守ろうとする本能には逆らえない。つまりは、恐怖というストレスの前に抗える者は、そう多くはないのだ。
 救世童隷『ジフテリア・クレステッド』の言葉は、たったそれだけで希望の地である『救世主の園』を目指して厳しい道程を乗り越えてきた難民キャラバンの人々の心を恐怖で染め上げるには十分すぎる力を持っていた。
 圧倒的な力。圧倒的な数の軍用ロボット犬『ゲルマーネン』の大群。
 それを見てしまえば、難民キャラバンの人々は絶望に打ちひしがれるだろう。けれど、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)の考えは違った。

 真に心折られた者たちは、足を止める。逃げ出すことはしない。難民キャラバンの人々は今、生命を諦めないように走っている。己の生命を護るために、一秒でも長く。
 それを絶望に染まったとは言わない。
「なら、俺のやることはシンプルだ」
 息を吸い込む。力をためるのと同じようにシキの肺に空気が溜まっていく。吐き出すように彼の声が荒野に響き渡る。
「―――落ち着け! 焦りは危険を呼び込む。落ち着いて、走れ。後ろは気にするな。そのために俺たちがいる」
 その声は荒野に逃げ惑う人々の心を打った。
 彼の言葉は不器用なものであったかも知れない。器用とは程遠かったかもしれない。けれど、これまでの旅路は、決して彼の言葉を軽いものにはしていなかった。

 人々は恐怖にかられていたし、未だ振り払うこともできなかった。
 けれど、心の中に灯る日は消えていない。シキの言葉に彼等は逃げ惑うことをやめ、猟兵の一人が構築した急増の拠点へと走っていく。
「それでいい……」
 シキはそれを見送ると手にしたハンドガン、シロガネのトリガーを引く。
 軍用ロボット犬『ゲルマーネン』は接近戦に特化したオブリビオンである。ならば、相手の旨味を消しつつ、こちらの利を押し付ける。
 彼目掛けて飛びかかる個体を片っ端からハンドガンで撃ち抜いていく。

 地面に崩れ落ちる軍用ロボット犬の残骸を気にした様子もなく、次々と敵の位置を把握しながらハンドガンの連射が始まる。荒野を疾駆し、近づく個体のみを撃破しながら、シキは軍用ロボット犬たちの位置を把握する。
 その視線は次々と狙うべき標的を見定める。
「ここで焦りを見せれば難民へ不安が伝わる」
 ならばシキがすべきことは一つである。
 ここまでと同様に、どんな戦況でも慌てず堂々と戦ってみせること。それを成して見せる。そうすれば、難民たちの動揺は収まる。

「何があってもこちらの優位は揺らがない」
 彼の瞳が全ての軍用ロボット犬たちの姿を捉えた瞬間、ユーベルコードが輝く。
 ―――ブレイズ・ブレイク。
 それは一瞬の内に狙いすました連続射撃を放つユーベルコードである。
 すでにシキの瞳には彼の視界に収まる全ての軍用ロボット犬の姿が捉えられていた。ユーベルコードは、その技量の底上げである。
 放たれた銃弾は過たず全て、軍用ロボット犬のメイン回路を司る頭部へと吸い込まれていく。

 それは一瞬の出来事だった。
 たった一発ずつの弾丸で、あれだけの大群を御してみせたのだ。
 シキはいつもと変わらぬ顔をして、次なる群れを目指して駆けていく。その姿が難民の人々へと与えた影響は多大なるものであった。
 ある者は奮い立ち、ある者は安堵する。
 猟兵としての戦いは常に誰かのために戦う。
 世界に選ばれた戦士であったとしても、いつだって誰かのために戦う。それが誇らしいと思ったことがあるのかは、わからない。

 けれど、シキのとった行動は確かに難民の人々の心に新たなる希望の光を灯したのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナターシャ・フォーサイス
WIZ
貴方がたが、この楽園の護り手なのですね。
素晴らしい場所ではありますが…その思想は、歪なもの。
貴方がたが過去から蘇りし哀れな魂であるならば、祓い導かねばなりません。

人々に危害が及んではいけませんし、まずは天使を呼び結界を張りましょう。
皆様へは反射の加護を。
仇成すものへは天使達と共に【高速詠唱】【全力魔法】【範囲攻撃】の聖なる光を。
貴方がたのその力を封じ、我らが楽園へと導くのです。
貴方がたも自らの役目に従うのなら、本来在るべき正しき役目に従うのです。

倒すのではありません。
こことは異なる…我らが救い、我らが楽園へと導くのです。
そのために罪と闇を祓い、道を示すのです。
次はジフテリアさん、貴女も。



 大群成す軍用ロボット犬『ゲルマーネン』の数は、まさに大群というに相応しい数であった。
 荒野を駆ければ、それは一陣の砂塵のように土煙を上げる。その威容は難民キャラバンの人々の心に恐怖を齎す。
「貴方がたが、この楽園の護り手なのですね」
 静かに一歩を踏み出したのは、ナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)であった。
 彼女に瞳は依然、変わらず『救済』の輝きに満ちている。彼女の祈りは、全て『楽園』へと奉じられる。
 そこに一片の曇りも、陰りもない。あるのは祈りだけだ。
「素晴らしい場所ではありますが……その思想は、歪なもの。貴方がたが過去から蘇りし哀れなる魂であるのならば、祓い導かねばなりません」

 彼女の言葉は力ある言葉。
 守護結界が展開され、逃げ惑う難民キャラバンの人々を護る障壁となって軍用ロボット犬の侵攻を妨げる。
 その守護結界は厚く、彼等の牙では到底破ることは敵わない。
「人々に危害が及ぶのは本意ではありません……まだ見ぬ楽園、その一端。我らが同胞を救い誘うため、光を以て導きましょう」
 ユーベルコード、召喚:楽園の祝福(サモン・グレイス)によって召喚された天使達が天空より舞い降りる。
 その神々しき光景は、どんよりと曇った空を割り、天使の梯子のごとき差し込む光と共に荒野に降り注ぐ。

「貴方がたの、その力を封じ、我らが楽園へと導くのです」
 天使立ち寄り放たれる闇祓う光が一斉に軍用ロボット犬たちを照らし出す。本来であれば、ナターシャの体は軍用ロボット犬たちの放つ戦闘機動によってずたずたに引き裂かれていただろう。
 目にも留まらぬ拘束連続攻撃は、聖女の柔肌を切り裂き続けたはずだ。
 けれど、彼等はギシリと音を立て、その場に立ち尽くすことしかできない。そう、天使たちの放つ光が彼等の行動を阻害している。封じているのだ。
「貴方がたも自らの役目に従うのなら、本来在るべき正しき役目に従うのです」

 恐れなど何もないというようにナターシャは一歩を踏み出す。
 目の前には立ち竦む軍用ロボット犬の姿。その距離であれば、彼女の喉笛を掻ききることなど造作も無いだろう。
 けれど、一歩も動かない。
 かつては人々の暮らし、生活を護るために製造されたであろう軍用ロボット犬。けれど、オブリビオン・ストームによって歪められた役割は人々を傷つけるものへと変貌していた。

 それを悲しいとは思わないかもしれない。
 けれど、その本来の存在意義を歪められたことを『救済』したい。それだけの願いがナターシャの言葉となって放たれる。
「倒すのではありません。此処とは異なる……我らが救い、我らが楽園へと導くのです。そのために罪と闇を祓い、道を示すのです」
 手を差し伸べる。
 動かなくなった軍用ロボット犬たちの額に次々と触れていくナターシャ。彼女が次の個体へと足を踏み出す度に、霧散して消えていく軍用ロボット犬たち。
 それは払われた歪み故か、骸の海、はたまた彼女の言うところの『楽園』へと導かれたのか。

 ナターシャの戦いは静かに終わりを告げた。
 彼女の瞳が捉えていたのは、最期の敵。否。彼女にとっては救うべき存在。
「次はジフテリアさん、貴女も―――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

リジューム・レコーズ
殺してでも救う?
死が救いというならそれを自ら実践すればいい!
いえ、させますよ!私が!

【WIZ・アドリブ連携歓迎】

まずは犬型兵器群を排除しないと…
犬型だけあって機動力と集団戦闘能力に長けていそうですね
連続攻撃のモーション自体も高速ですが回避してしまえば隙だらけですね
わざわざ接近戦に持ち込む理由もありませんしスピードで振り切ってしまいましょう
敵は追撃しながら私を取り囲み最終的に追い詰める魂胆なのでしょうがそんな戦術は見え透いています
むしろ一網打尽を狙う上では好都合です
可能な限り多くの目標をレンジ内まで引き付けた後ホーミングレーザーを発射
これだけの誘導弾をこの距離で撃たれれば、逃れる術は無いでしょう



「救いましょう。殺してでも救いましょう。必ず救ってみせます。どんなことをしても、『救世』するのです。そうすれば、みんなみんな苦しいことも、悲しいことからも開放されて、本当に自由になるのですから」
 救世童隷『ジフテリア・クレステッド』の微笑みを絶やさぬ笑顔から紡がれる言葉は、どこまでいっても歪んでいた。
『救世主の園』はまさに、人々の希望そのものの大地であった。
 汚染されていない清浄なる土地。枯れ果てていない豊潤な大地。どれもがアポカリプスヘルに生きる人々にとって渇望して止まないものだ。
 けれど、その『救世主の園』の主であるジフテリアは、『過去』に歪んだ存在。過去の化身、オブリビオンである。
 彼女の言葉に偽りはない。けれど、歪んだ『救世』の思いは、どうしようもなく歪んでいたのだ。

「殺してでも救う? 死が救いというなら、それを自ら実践すればいい。いえ、させますよ! 私が!」
 リジューム・レコーズ(RS02・f23631)の激情に駆られた声が響き渡る。けれど、それはウォーマシンたる彼女の疑似人格の演出に過ぎない。
 だが、その言葉に偽りはない。たとえ演出であるのだとしても、彼女の炉心が燃えている。
 許せないという思いは、彼女の炉心に火を灯し続ける。
 戦い続けることでしか得られないものがあるというのならば、此の手でつかみ取るその日まで戦い続けるのみ。

 飛翔し、大群成す軍用ロボット犬『ゲルマーネン』の群れを見下ろす。
「まずは犬型兵器群を排除しないと……犬型だけあって、機動力、集団戦闘能力に長けているようですが―――」
 一気に荒野を滑空し、距離を取るリジューム。
 すでに多くの猟兵達が難民キャラバンの人々を逃してくれている。彼女がすべきは、軍用ロボット犬たちの殲滅であり、難民キャラバンの人々を守る防衛ラインを底上げすることだ。
 しかし、その彼女のスピードに追従するように荒野を駆ける軍用ロボット犬たち。彼等の機体のポテンシャルはわかっていたつもりであるが、中々に引き離せない。

「追撃しながら私を囲む……それが狩りという形態を借りた戦術なのでしょうが」
 空中で反転するリジュームの瞳が次々と軍用ロボット犬たちをロックオンしていく。マルチロックシステムによって、視線誘導でロックが完了する。
 瞬間、リジュームの手にした荷電粒子スマートがの二丁が、指向性拡散荷電粒子砲(ホーミングレーザー)として機能する。
 放たれる荷電粒子の光線がロックした軍用ロボット犬たちを猛追しはじめる。
 どれだけ荒野を駆け抜けたとしても、高い追尾性能を持った荷電粒子光線を振り切ることはできない。

「その戦術は見え透いています―――逃さないッ!ホーミングレーザー!」
 散々にリジュームをおかけ回した彼等の機動速度では振り切ることなどできないことを彼女は計算していたのだ。
 それ故に彼等は深追いと言ってもいいほどにリジュームに引きつけられ、一網打尽にされてしまうのだ。
 光線が彼等の体を貫き、爆散させていく。金属片が降り注ぐ中を変幻自在なる機動でもって飛び抜けて、リジュームはさらなる群れを目指して飛ぶ。

 一体たりとて、防衛ラインを越えて難民キャラバンの元へとたどり着かせはしない。
 彼女の炉心は益々燃え盛る。
 此の衝動のままに飛翔する彼女の瞳に映ったのは、オブリビオン、ジフテリアの姿。その瞳が互いに交錯する。
 相容れぬ者同士が相対し、互いの言葉を持ってしてもまだ理解することなどできない。それが猟兵とオブリビオンという存在である。

 ならば、最後は互いの全力を持って雌雄を決する他ないのだ―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
センサーの●情報収集で敵分布把握
優先順位を素早く●見切り脚部スラスタでの●スライディング移動で急行
難民やキャラバン奪還者を●かばいます

非戦闘員は車両内部へ! 
戦闘員は私に続いて迎撃
先ずは四つ足の機動力を封じます!

UCを●スナイパー射撃
脚部付近で炸裂させ薬剤で脚を凍結
これなら奪還者でも撃破可能でしょう
攻撃は●武器受け●盾受けし●怪力で弾き飛ばし
UCの射撃で追撃
戦況を有利に傾ければ次の戦場へ

再生された大地…『救世』の意志は本物なのでしょう
仮に生前の思考が蘇ったならば、己が行いに一番苦悩するのは彼女なのかもしれません
製造目的から逸脱したこの身もある意味狂っていると言えますが、あの狂気を止めなくては



 その身に宿る狂気の色は何色であろうか。
 旅路の果てにたどり着いた『救世主の園』はまさしく、楽園であった。汚染されていない大地であるということ、作物を育てるに適した肥沃なる大地であるということ。
 その全てが文明が崩壊した世界において高水準で保たれている―――いや、ここまで作り上げた、と言ったほうが正しいだろうか。
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は己のアイセンサーから捉えられる情報を分析し、そう判断していた。
「……いけません! 非戦闘員は車両内部へ! 戦闘員は―――」
 襲い来る軍用ロボット犬『ゲルマーネン』の姿。
 まさしく大群といってもいいほどの土煙を巻き上げて荒野を駆ける軍用ロボット犬たちの威容は難民キャラバンの人々の心を恐怖に染め上げる。

 難民キャラバンと言えど、防衛のために戦う戦闘員もいたはずだ。けれど、彼等の心は軍用ロボット犬たちの威容によって足を止めさせてしまっていた。
 トリテレイアは、己が機械の身であること、彼等が生身の人間であることを忘れたつもりはなかった。
 けれど、ウォーマシンたる彼にとって、生命在る者というものは、痛がり屋である。痛みを知れば知るほどに有機生命体は、足を止める頻度が高くなる。
 誰しもが痛みを知っているからこそ、痛みを恐れるのだ。

「非戦闘員の保護を頼みます」
 トリテレイアは、それだけを言葉にして戦場へと急行する。
 脚部スラスターを吹かせ、荒野を滑空するように飛ぶ。トリテレイアはわかっていた。それ以上の言葉は必要ないのだと。言葉にしてしまえば、彼等の心を手折ってしまうのは、己の言葉である。
 だから、トリテレイアは奮起する。
 己が機械の騎士であるのならば、己は人々に希望を齎す戦いをしなければならないと。

「先ずは四足の機動力を封じます!―――氷の剣や魔法ほど華はありませんが……武骨さはご容赦を」
 格納されていた銃火器に装填された超低温化薬剤封入弾頭(フローズン・バレット)が斉射される。
 軍用ロボット犬『ゲルマーネン』たちの強みは機動力と数である。
 あの数で機動力を武器に面で攻撃されてしまえば、トリテレイアに難民キャラバンの人々を護るすべはなくなってしまう。
 だからこそ、ここで敵の機先を制する一撃を、先手として取らなければならなかった。

 放たれた銃弾は軍用ロボット犬たちの足元、脚部を狙って放たれ、彼等の機動力を一気に削ぐ。
 弾丸は分子運動を低下させ急速凍結させる、特殊弾頭である。大地に張り付くように凍結した彼等の足は、もはや使い物にはならないだろう。
「これならば、そちらの利は全て消えたも同然です。御覚悟を!」
 凍結し、身動き取れぬ軍用ロボット犬たちの群れを次々と格納銃器の射撃に寄って、確実に打ち砕いていく。
 次々と数を減らし、大群が、群れに、群れが個体へと変わる頃、トリテレイアは次なる戦場へと飛び込んでいく。

「再生された大地……『救世』の意志は本物なのでしょう……この大地を見ればわかります。ですが、仮に生前の思考が蘇ったならば、己が行いに一番苦悩するのは彼女なのかもしれません」
 その可能性は低いであろう。
 けれど、万が一ということもある。たとえ相手がオブリビオンだとしても、その苦悩、懊悩を前にして己の剣はいかなる軌道を描くだろうか。
 その揺れ動きもまた己が―――。

「製造目的から逸脱したこの身もある意味狂っていると言えますが」
 わからないでもないと判断してしまう電脳。
 それこそが、己の身を狂っているのかも知れないと判断してしまう。けれど、その狂いこそがトリテレイアをトリテレイア足らしめているゆらぎなのであるかもしれない。
 故に、トリテレイアはアイセンサーを『救世主の園』の主、ジフテリアへと向ける。

「あの狂気を止めなくては―――」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『救世童隷『ジフテリア・クレステッド』』

POW   :    癒しの風で皆を守ってあげるよ
【猟兵のみに毒性を発揮する致死性の毒ガス】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
SPD   :    お姉ちゃん、皆を助けるためにあの子達を喚んで
戦闘力のない、レベル×1体の【擬似オブリビオンストームで生まれる姉妹達】を召喚する。応援や助言、技能「【復興活動」・「戦闘力がないなりの猟兵暗殺】」を使った支援をしてくれる。
WIZ   :    恵みの雨で皆に住みよい居場所を作ってあげるよ
【擬似オブリビオン・ストームから恵みの雨】を降らせる事で、戦場全体が【猟兵のみに毒性を発揮する清浄で豊かな土地】と同じ環境に変化する。[猟兵のみに毒性を発揮する清浄で豊かな土地]に適応した者の行動成功率が上昇する。

イラスト:星野はるく

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はジフテリア・クレステッドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 全ての軍用ロボット犬『ゲルマーネン』の群れは霧散し、骸の海へと還っていった。
 その最奥、『救世主の園』の緑あふれる大地に立ち、猟兵たちへと赤い瞳を向けるのは、救世童隷『ジフテリア・クレステッド』であった。
 その顔に微笑みはすでになかった。
 あるのは、猟兵に対する敵意だけ。

「―――みんなみんな、あなた達の影に隠れてしまった。猟兵という世界の毒に、皆染まってしまったのね」
 ジフテリアは頭を振る。
 今まで微笑みを向けていた相手は、猟兵たちを含めた難民キャラバンの人々ではなかった。彼女の微笑みは、『救世』の意志は、アポカリプスヘルに生きる人々にだけ向けられていたのだ。
 そこに猟兵は含まれていない。
 彼女の瞳には、最初から正しく猟兵たちを異物として見ていた。排除すべき存在として。

「あなたたちが、彼等にもたらしたものは、全て毒。汚染されてしまったというのなら、清浄なる者へと戻さなければならない。どんなことをしてでも、救う。彼等を救い、世界を『救世』するのは、わたし……」
 ジフテリアの背後に浮かび上がるフラスコ。
 その中に浮かび上がる歪なる胎児。その胎児の中に蠢くのは、擬似的にもオブリビオン・ストーム……暗黒の竜巻たる力の源そのもの。

 荒れ狂う風が『救世主の園』に吹き荒れる。
「さあ、あなた達という毒を排除して、彼等に『救世』を。毒に侵された部分は排除して、新しい生命の息吹を―――」
 清浄たる大地に、猟兵だけを狙い撃ちにした力が吹き荒れていく。
 これこそが、歪んだ『救世主』の力。

「―――『救世』をはじめましょう」
ユージィーン・ダイオード

オブビリオン「救世童隷『ジフテリア・クレステッド』を確認...殲滅を開始する。」
狂った救済に耽溺した純粋者よ。
永遠に――眠れ...。


これ以上の火力で緑や大地を汚すのは本末転倒...。
デザートイーグルを選択。
――――武装展開(コンバンット・オープン)
欺瞞装置(【目立たない】【迷彩】)を起動。
敵オブビリオンの索敵圏内から離れると、デザートイーグルで「ヘッドショット」する。
狙いは…頭部…。HITを確認。
気が付かれたか。
だが問題ない。計画どうりだ。
秘密裏に出撃させていたスカウトボールをフラスコ付近に飛翔を確認...コマンド入力...自爆せよ(【爆撃】【破壊工作】)



 救世童隷『ジフテリア・クレステッド』は言う。
 猟兵は毒であると。
 世界の『救世』を目的として造られたフラスコチャイルドである彼女にとって、猟兵という存在は本来手を取り合う存在のはずだ。だが、『過去』に歪められた彼女の想いは変わらずとも、その手段を歪ませる。
「お姉ちゃん、皆を助けるためにあの子達を喚んで」
 背後のフラスコの中で巨大な胎児が蠢く。
 掲げた手のひらから発生する小さな暗黒の竜巻―――疑似ではあるが、確かにあれはオブリビオン・ストーム。
 徐々に大きくなっていく暗黒の竜巻から現れたのは、ジフテリアと同型のフラスコチャイルドの姉妹たち。
 彼女たちからは戦闘力を感じない。けれど、歪められた存在である彼女から生み出された姉妹たちは即座に行動を開始する。

「これ以上の火力で緑や大地を汚すのは本末転倒……」
 ユージィーン・ダイオード(1000万Gの鉄面皮・f28841)は火力よりも確実性を選択肢、自動拳銃を手にした。
 オブリビオンとの戦いである以上、最大の火力で持って事にあたるのが効率的であろう。だが、その判断は間違っていない。
 強すぎる力は、緑や大地を汚染する。焼き払われてしまえば、再び元の荒野に戻る他ない。それでは意味がないのだ。
 難民キャラバンの人々が希望とする大地を、傷つけてしまうわけにはいかない。

「―――武装展開(コンバット・オープン)」
 欺瞞装置が起動し、ユージィーンの体を世界から覆い隠していく。
 フラスコチャイルドの姉妹たるジフテリアが擬似オブリビオン・ストームから呼び出した姉妹たちが迫る。
 彼女たちに戦闘力は感じないが、脅威である本体―――ジフテリアを叩けば力の源を喪ってむさんすることだろう。
 狙うのは、頭のみ。

「オブリビオン、救世童隷『ジフテリア・クレステッド』を確認……殲滅を開始する」
 その瞳に映るのはジフテリアの姿。
 なんな普通の少女と変わらぬ姿かたち。何を間違えてしまったのかわからない。けれど、彼女が狂った救済に耽溺したのは、彼女自身が純粋であるからだ。
 救世を目的とし、救世主足らんとするように製造された存在。生命。
 それを哀れに思うことはない。
 ただ、彼女の生命に安らぎはあったのだろうか。

 答えは否である。
 彼女の生命が在る限り、世界を『救世』し続けなければならない。『救世』が目的である以上、彼女の生命はそれ以外のことに遣われることはない。
 ならば、その生命に安らぎがあるはずもない。あるとすれば、それは死せる瞬間だけであろう。
 ジフテリアと姉妹たちの索敵圏外から見据えるユージィーンの瞳。
「狙いは……頭部……」
 引き金を引く。
 放たれた弾丸は一瞬で、ジフテリアの頭部に吸い込まれるようにして直撃する。
「HITを確認……―――!」
 だが、そのユーベルコード、ヘッドショットによって放たれた一撃は彼女の頭をわずかに傾ぐだけに終わった。
 それが圧倒的な存在へと成り果てた過去の化身、オブリビオンとしての実力なのであろう。『救世主』として存在する歪な存在なのだ。

「気が付かれたか。だが問題ない。計画通りだ」
 ユーベルコードによる狙撃は布石。
 本命は、スカウトボール……超小型の偵察用ドローン。無音で飛行するそれをジフテリアに気が付かれぬ内に接近させること。
「確認……コマンド入力……自爆せよ」
 彼女の背後に控えるフラスコに取り憑いた瞬間、爆発が起こる。それはスカウトボールに内蔵させた自爆装置を起動した瞬間だった。
 フラスコの表面にヒビが入っている。あれが姉妹たるフラスコチャイルドたちを生み出す力の源泉であるというのならば、後に続く猟兵達のために、そこにダメージを与えておこうと思ったのだ。

「永遠に―――眠れ……」
 それだけが彼女たちに残された最後の安らぎ。
 この大地、『救世主の園』を作り上げたのは、他ならぬジフテリアである。過程がどうであったかは関係がない。
 誰が為し得たのかも関係ない。あるのは純然たる結果。
 荒れ果てた荒野を、ここまで再生したのは―――確かに救世童隷『ジフテリア・クレステッド』であったのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神楽火・綺里枝
未夜子ちゃんと連携して戦います。

「わたくしは、貴女の救世を否定します」
否定せねばなりません。オブリビオンは絶対の悪、世界に存在してはならぬもの。
「時は逆巻かぬのが世界のさだめ。たとえ現在がどれほど辛苦に満ちていても、それを覆すことは神にだって許されない」

<環境耐性、毒耐性、乱れ撃ち>
敵のユーベルコードを発動させた上で、その環境を『不凋紅華神聖苑』で上書きします。
上書きを終えて毒素が消えるまでは耐性で凌ぎましょう。未夜子ちゃんのユーベルコードに対応して召喚されるであろう敵は、マクニールX73の連射で迎え撃ちます。
「より良き未来のために過去を壊して現在を護る。それがわたくしの正義でございます」


神楽火・未夜子
キリエといっしょ。

「みゃこちゃん、いちゃだめなの? どうして?」
んー。それ、こまるね。みゃこちゃんもキリエも、ここのひとたち、まもりたいって思ってるのに。
「きゅーせー、むずかしい。でも、キミが言ってるのはまちがい。だって、オブリビオンがいたら世界がきえちゃう」
「世界をすくいたいなら、きえちゃだめ。ちがう?」

<呪殺弾、スナイパー>
『憑魔の弾丸』を使って、ジフテリアを狙い撃ち。
「ん。わかった。キミはエブリス、ね」
じゃあ、この弾の属性は「叛逆」。誰かがやってくれる救世を拒んで、自分達の力で未来を創る意志の顕れ。
準備ができたら、キリエが他の敵を押さえてくれてる間に撃つ。
「世界を救うのは、キミじゃない」



 背に負うようにして存在する巨大なフラスコが爆発に寄って軋みを上げる。
 フラスコの表面にはヒビが入り、その中に存在する巨大な胎児のような何かが痛みに震えるような声を上げた。
「ああ、なんてこと。お姉ちゃん―――」
 救世童隷『ジフテリア・クレステッド』はフラスコのひび割れに指を添える。そのフラスコもまた彼女の力の一部。『救世主』足らんとする力の源泉。
 故に再び掲げた手のひらが生み出すのは疑似オブリビオン・ストーム。暗黒の竜巻が生み出され、徐々に空を暗雲でもって覆い隠していく。
「恵みの雨で皆に住みよい居場所を作ってあげよう……」
 それは清浄なる大地を潤す恵みの雨であった。
 だが、その雨に濡れた清浄なる大地は、猟兵のみを害する大地へと変貌する。
 彼女にとって猟兵こそが世界の異物であり、毒である。それを排することが、彼女にとっての『救世』であるのだ。

「わたくしは、貴女の救世を否定します」
 否定しなければならない。オブリビオンとは絶対の悪、世界に存在してはならないもの。神楽火・綺里枝(メイデン・オブ・シグナム・f01297)にとっても、世界にとっても、オブリビオンとは世界を破壊する者である。
 過去の化身たるオブリビオンにとって現在と言う世界は食いつぶし、未来の可能性をも己の欲望のための足がかりにしかすぎない。
「時は逆巻かぬのが世界の定め。たとえ現在がどれほど辛苦に満ちていても、それを覆すことは神にだって許されない」
 そう時は後戻らない。巻き戻すこともできない。それが世界の摂理であり、自然なことである。
 だからこそ、過去より這い出るオブリビオンの存在は世界を破壊する存在にほかならないのだ。

「みやこちゃん、いちゃだめなの? どうして?」
 それは純粋な疑問であった。神楽火・未夜子(ちいさなフリーシューター・f27423)は猟兵のみに毒となる雨が降りしきる大地から離れ、ジフテリアに問いかける。いてはいけない者。理由があるのならば、教えてほしいという純粋な問いかけにジフテリアは、その瞳を向ける。
「あなたたちは毒。人々に毒を齎す。私の『救世』の妨げになる。人は苦しみからも、哀しみからも開放されないといけない。救わないといけない。私が、私であるために、殺してでも救わないといけないの」
 だから、あなたたちは邪魔な存在、と言葉を返す。
 降りしきる雨は猟兵へと害を成す。これでは近づくことも出来ない。
「んー。それ、こまるね。みゃこちゃんもキリエも、ここのひとたち、まもりたいって思ってるのに。きゅーせー、むずかしい。でも、キミが言ってるのはまちがい。だって、オブリビオンがいたら世界がきえちゃう」
 未夜子とジフテリアの言葉は平行線だった。
 決して交わらない。世界が在りきの人であるか、人ありきの世界であるかの違いに互いが交わり、融和することなどあり得ないように、猟兵とオブリビオンの間にはあまりにも大きな隔てりが存在している。
「世界が消えてしまえば、『救世』が成るでしょう。だって、『救済』を求める人が存在しないのだから、救うべき世界はどこにもない。『救世』の終わりは、世界の終わり。それを望む人々がいればこそ―――だから、私は終わらなかった」

 綺里枝が、その言葉を断ち切るようにユーベルコードを発動させる。
「ここは無垢なる光と切なる祈りの庭。闇黒なるもの全て、須く去るべし」
 不凋紅華神聖苑(アマランス・カテドラル)―――それは、赤い不凋花の花びら舞い散る邪悪を退ける聖域。
 猟兵のみに毒となる雨が降りしきる『救世主の園』を覆う、赤い不凋花は上書きするようにジフテリアの領域を侵食し、塗りつぶしていく。
 降りしきる雨は止み、当たりには赤い花びらだけが存在する。
「これで、毒素は消えます―――未夜子ちゃん!」

 難しい顔をして、未夜子がダイモンデバイスを掲げる。
 ユーベルコード、秘術『憑魔の弾丸』(デーモニシェ・クーゲル)。その弾丸に籠められし悪魔の力は。
「ん。わかった。キミはエブリス、ね」
 籠められし悪魔の力は『叛逆』。
 誰かが成してくれる『救世』を拒んで、自身の力で未来を創るという意志の顕れ。誰かに任せっきりではない。自分自身の足で、手で、歩み掴み取るための一撃。
「世界をすくいたいなら、きえちゃだめ。ちがう?」
 銃口がジフテリアに定められる。

「救われた世界は、人が居る限り、いつの時代にも救いを求める人が居る。なら、『救世』は終わらない―――!」
 ジフテリアの背後に負うフラスコから発生した暗黒の竜巻、疑似オブリビオン・ストームから現れるフラスコチャイルドの姉妹たちが未夜子の一撃を阻止せんと荒野を駆ける。
 だが、彼女らが未夜子へと至ることはなかった。
「より良き未来のために過去を壊して現在を護る。それがわたくしの正義でございます」
 綺里枝の手にした自動詠唱機構を強化された試作型アサルトカービン銃から放たれた弾丸が、フラスコチャイルドの姉妹たちを打ち貫いていく。
 その背後で静かに未夜子が言う。

「世界を救うのは、キミじゃない」
 それは妄執とも言える『救世』に取り憑かれた哀れなるフラスコチャイルドの末路を暗示する言葉だった。
 製造された目的も、その目的を果たそうとする純粋なる想いも、何もかもが過去に歪められた哀れなる存在。
 その存在に手向ける言葉とともに放たれた弾丸が荒野に響き渡る。『叛逆』の力籠められし弾丸は、ジフテリアの胸を穿つ。

 人は人の力で持って己を救うことができる。
 誰かに与えられた安寧はいつしか誰かの支配を生み出す糧にしかならない。
 ならば、ねだってはならない。勝ち取らなければならない。
 そこにあるのはいつだって、逆境に『叛逆』する意志。それを忘れぬ限り、人は死んでしまうかもしれないが、負けてしまうことは絶対にないのだ―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アンノット・リアルハート
わかった、貴女は目的しか持っていないのね
なら私のすることは決まったわ

敵UCに対して【カウンター】で選択UCを発動、戦場を迷宮で上書きすることで毒の影響を無くす
そして迷宮の効果によって人が救われる瞬間のイメージや思いを相手に刻みます

夢を叶えた時
目標を達成することができた時
愛する人と結ばれ、その結晶を残した時

これは全て未来へと続くもの、今の貴女には手に入らないもの
手が届かないものを教え、渇望させる
それが人の思いを無視した貴女にこの迷宮が与える罰よ

そうして相手の動揺を誘った隙に【早業】で相手の胸に『ノイギーア・シャッテン』を投擲、有効打を与える

この光景を暖かいと思えるようになったら、また会いましょう



 一発の銃弾が救世童隷『ジフテリア・クレステッド』の胸を穿つ。
 それでもジフテリアの体は大地に伏すことはなかった。倒れない。それどころか、彼女の体を介して現れる疑似とは言え、暗黒の竜巻―――オブリビオン・ストームが呼ぶ雨雲は、『救世主の園』に雨を降らせる。
 汚染物質を流し、清浄なる大地へと変えていく恵みの雨。
 けれど、それは猟兵にとっては猛毒そのものの雨である。例え、限定的な雨であったとしても、その雨に猟兵が晒されれば無事ではすまないだろう。
「あぁ……毒も何もかも雨が流し来てしまえばいい。私は『救世』する。必ず『救世』してみせる。世界を元の清浄なる世界へと戻してみせる―――元の、元の、元の」
 けれど、ジフテリアの記憶領域の中に『清浄なる世界』はない。
 当然だ。彼女が製造された時、世界は既に荒廃し、汚染され尽くしていたのだから。そこに『清浄なる世界』など存在していない。

「わかった、貴女は目的しか持っていないのね。なら私のすることは決まったわ」
 アンノット・リアルハート(忘国虚肯のお姫さま・f00851)は、ジフテリアの言葉に頭を振る。
 猟兵だけを狙い撃ちにした毒性だとしても、アンノットが足を止める理由にはなっていない。雨が降るというのならば、その大地を書き換えてしまえばいい。
「これは裁きの夢、投獄する幻想、されど道を改める最後の試練―――裁きの夢よ、悪しき罪人に罰を与えたまえ(デイドリーム・ジャッジメイズ)」
 彼女のユーベルコードが、毒性の雨降りしきる大地を迷宮へと書き換えていく。
 悪しき物を閉じ込め、罪に応じた罰を下す魔法で出来た、その迷宮は猟兵に対する毒性を持った雨を完全に上書きし、その効果を発揮しない。

 迷宮には二人。
 ジフテリアとアンノットだけが存在している。
 その迷宮の壁には人が救われる瞬間のイメージが、思いが、様々と映し出される。それはジフテリアにとって、馴染みのないものであったかも知れない。
「これは―――」
 夢を叶えた時、目標を達成することが出来た時、愛する人と結ばれ、その結晶を残した時。
 ありとあらゆる人の思いが魔法に寄って映し出されている。
 人が救われるということは、こういうことを言うのだとアンノットのユーベルコードが示す。
 その光景にジフテリアは見惚れるように視線を向けていた。
 自分が伸ばしたとしても手に入れることのできない幸せを、目の前の魔法が映し出している。

「これは全て未来へと続くもの、今の貴女には手に入らないもの。手が届かないものを教え、渇望させる。それが人の思いを無視した貴女にこの迷宮が与える罰よ」
 アンノットにとって、人の思いは己を形作るものである。
 自分の体は人の願い、思いが作り上げたものであるからこそ、彼女の力は常に全力で振るわれる。
 こうありたかったという夢の結晶が彼女だというのならば、ジフテリアは対極にあるものだろう。
 こうありたいと願うことすらできずに消えていった過去。
 その思いは本物であったのかも知れない。けれど、与えられた役割をこなすことばかり。手段と目的が混同してしまったのは、過去に歪められてしまったからか。

「わたしは―――、―――」
 その言葉はか細く紡がれた。
 瞬間、アンノットの手にしたノイギーア・シャッテン―――王国の守護竜が姿を変えた槍を投擲する。その一撃はジフタリアが防御に伸ばした手を貫き、その胸へと至る。
 銃撃に寄って出来た銃創を押し広げるようにして槍の穂先が突き刺さる。
「わたしは、救世主足らんとするだけの存在」
 その目的だけが、人の生きる理由ではないはずだ。きっと彼女が過去に置き去りにしてきたものが、今、迷宮の中に浮かぶ光景の中にある。

「この光景を暖かいと思えるようになったら、また会いましょう」
 別れの言葉はいつだって切ない。
 それと同じように、アンノットが繰り出した一撃もまた―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
◆POW
キャラバンの難民が協力してくれるなら有難く受ける
攻撃の好機を齎してくれるかもしれない
一応そちらへ被害が及ばないようにだけ注意して行動する
まぁ相手は救世を掲げるあのオブリビオンだ、この場で難民たちを殺すことはないかもしれないが
あれにとっての排除するべき毒は、猟兵だろうからな

幸い、操る毒は難民たちに害を及ぼすことはなさそうだ
毒ガスを使い始めたら自分の回避に専念して『見切り』、敵の疲労を待つ
疲労して動きが鈍った隙に射線を確保
ユーベルコードで反撃する

…もし真っ当に役割を果たすことができていたら、本当の救世主になれたかもしれないな
今となっては、その在り方がこれ以上歪む前に、止める事しかできないが



 銃撃と槍の一撃に寄って、救世童隷『ジフテリア・クレステッド』の胸には穿たれた傷跡が生々しく残っている。
 それはまるで彼女のオブリビオンとしての生き方を現しているかのような、虚のようであった。
「―――わたしは、救う。救う存在。『救世主』足らんとしているだけ。癒しの風で皆を守ってあげるだけたいと思う気持ちは、間違っているというの?」
 風が吹く。猟兵にのみ効果を発揮する毒ガスが彼女の周辺に充満していく。彼女は立ち止まったまま、その胸に空いた虚のように、うつろな瞳を周囲に向ける。
 そこにあったのは―――。

「そうか、戦うと決めたか。なら、有り難く受けよう。俺たちの攻撃の好機を作り出してくれると期待している」
 シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は猟兵たちの活躍に寄って、戦う勇気を得た難民キャラバンの人々の戦闘員たちと瓦礫の拠点の中で作戦を立てる。
 ジフテリアが己の傷を癒そうと使用したユーベルコードは毒ガスを纏う風である。彼女自身は動かず傷を癒やしていくつもりなのだろう。
 けれど、その充満した毒ガスは猟兵にとってのみ、毒性を持つ脅威である。
「まぁ相手は救世を掲げるあのオブリビオンだ。この場で難民たちを殺すことはないかもしれないが……油断だけはするな」
 打ち合わせて、難民キャラバンの戦闘員たちとシキは別れて駆け出す。

「あれにとっての排除するべき毒は猟兵だろうからな……幸い、操る毒は難民たちに害を及ぼすことはなさそうだ……そこを突く」
 シキたち猟兵にとって、最悪とはジフテリアの傷が完全に癒えてしまうこと。そして、その再生していく傷の進行を遅らせるために、難民キャラバンの戦闘員たちに協力を仰いだのだ。
 軍用ロボット犬や、道中で襲ってきた野盗達から巻き上げた武器を手に難民キャラバンの戦闘員達がジフテリアへと攻撃を放つ。
 その一手は、はっきりと言って有効打にはならない。
「……どうして、そんなことを?無駄なのに、どうして」
 ジフテリアは信じられない物をみる目をする。
 すくべき対象である難民キャラバンの人間たちが自分に銃を向けている。それが理解できない。毒であるのは猟兵であるのに。

 それでも自分に向かってくるのが何故なのかわからない。
 何故。
「わたしは、ただ……『救世主』足らんとしただけ」
 あなた達を救いたいと思っただけ。必ず救う。それが、あなた達の生命を奪うことになったのだとしても、必ず救う。
 その瞳が、狂気に輝く。
 毒に侵されたのならば、救わなければならない。猟兵という毒にそまった人々を―――。

「……もし―――」
 その声は思いの外近くから聞こえた。
 シキの鋭い瞳とハンドガンの銃口がジフテリアを捉えていた。そのハンドガンに装填されているのは、規格外の威力を持つ特注弾。
 難民キャラバンの戦闘員たちの協力を得て、生み出した隙。それをシキが見逃すわけがなかった。
 寡黙な彼が言葉を投げかけてしまったのは、そこに心のゆらぎがあったのかもしれない。オブリビオンという歪みさえ無ければ、と思わずには居られなかったのかも知れない。
 引き金を引いた瞬間、轟音が響く。デストロイ・トリガー。それは特注弾による圧倒的破壊を生み出す銃撃。
 弾丸はジフテリアの胴を吹き飛ばし、大穴を空ける。呆然と彼女が自身の腹を見やる。

「あ―――れ……?」
 こんなにも傷ついているのに、何故、自分は死なないのか。わからないと言った、呆然とした顔。
 致命傷のはずだ。本来なら即死のはず。なのに、なんで自分は。それは認めがたい事実。自身がすでに『救世主』ではなく。

「もそ、真っ当に役割を果たすことが出来ていたら、本当の救世主になれたかもしれないな。今となっては、その在り方がこれ以上歪む前に、止めることしかできないが」
 シキの言葉は静かに荒野に響いた。
 過去の化身たるオブリビオンとなったことを自覚した、かつての『救世主』足らんとした少女の意義は、ここに崩れ落ちた。
 傷が、ふさがっていく。
 癒しの風は、彼女の体を倒れさせることを拒否していた。戦い続けなければならないと。

「それを止めるために、俺たちが来たんだ―――」
 一人の少女が『救世主』足らんとする、その歪さを正さんとするために―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

政木・朱鞠
私達が世界の毒ならば、貴方は『救世』と思っている過ぎた薬で世界を蝕むだけの存在だね。
自分勝手にもっともらしい事を言って、希望を求める罪なき人を惑わした咎はここで幕引きとさせて貰うよ。
私の浄化の炎を篤と味わって火傷しながらオヤスミナサイなさいませ救世主様。

戦闘【POW】
相手の『癒しの風で皆を守ってあげるよ』の毒ガスは厄介だけど、身勝手な救済法なんて焼き尽くしてやるよ。
武器は拷問具『荊野鎖』をチョイスして、技能をいかして【鎧砕き】で防御を緩めて【串刺し】にして【傷口をえぐる】流れでダメージを狙うよ。
『忍法・煉獄炮烙の刑』の炎でジフテリアの体を囲うように配置して追い打ち攻撃だよ。

アドリブ連帯歓迎



 自覚なき過去の化身は、己の成り果てたものがなんであるのかをわかっていなかった。オブリビオン、それこそが世界を破滅に導いた元凶。
 あの暗黒の竜巻が生み出した災厄。
 疑似とはいえ、その暗黒の竜巻を何故自分が扱えるのかを考えたこともなかった。暗黒の竜巻が生み出す偽りの癒やし。
 猟兵にのみ毒性となり得る風は、彼女の体を癒やしていく。胴に開けられた風穴も見る見る間にふさがっていく。
「わたしは、『救世主』。わたしが『救世主』たらんとしなければ、世界の救世は成し得ない。猟兵は毒、毒、毒……だって、あんなにも、わたしには禍々しい存在に思えるのに―――」
 その瞳に映る猟兵の姿は己の意識の中に、アレが敵であるということを教えている。倒さなければならない敵。滅ぼさなければならない敵。

「私達が世界の毒ならば、貴方は『救世』と思っている過ぎた薬で世界を蝕むだけの存在だね」
 政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)にとって、救世童隷『ジフテリア・クレステッド』の言葉はあまりにも身勝手な言葉に聞こえた。
 その思いは本物であったかも知れない。世界の救済。それが目的として製造されたのだから、正しい行動であったのかも知れない。
 けれど、過去に歪められてしまった思いは、もはや正しき思いではない。
「自分勝手にもっともらしい事を言って、希望を求める罪なき人々を惑わした咎はここで幕引きとさせて貰うよ」
 彼女の身体が駆ける。

 目の前に迫る毒ガスの瘴気は厄介極まりないものであった。
 難民キャラバンの人々にとっては毒でもなんでもないのだけれど、猟兵である彼女にとっては猛毒である。
 下手に近づいてしまえば、その猛毒の餌食になることは明白であった。
「私の紅蓮の宴…篤と味わいなさい…貴方の罪が煉獄の炎で燃え尽きるその時まで…」
 ユーベルコード、忍法・煉獄炮烙の刑(ニンポウ・レンゴクホウラクノケイ)が発動する。
 召喚された劫火を纏った銅製の拷問具、荊野鎖が蔓薔薇の如き棘を持つ鞭となって、繰り出される。
 毒ガスの範囲外からの攻撃。

 ジフテリアは動けない。
 猟兵たちの攻撃に寄って多大なるダメージを負っているのだ。今はそれを癒やすことに専念している。
 だからこそ、彼女をこの場から動かすわけにはいかない。炎の蔓薔薇の如き鎖がジフテリアを囲い込む。
 両腕を巻き込んで巻き付く鎖が帯びた炎が、彼女の傷口を抉る。
「あっ、ぐ―――! わたしは、救わなければ。何をしてでも、世界を、人を、救わなければ―――!」
 咆哮する。あれだけの攻撃を受け、未だ炎に寄って燃え盛っているというのに、ジフテリアの掲げる『救世』への想いは一欠片も変わらない。

 それが歪んだがゆえの思いの強さであることは、皮肉でしかない。
 彼女の身体を囲い込んだ炎が、毒ガスの如き大気を燃やし尽くしていく。朱鞠の鎖が緩まることはない。
「私の浄化の炎を篤と味わってやけどしながらおやすみなさいませ、救世主様」
 ユーベルコードの炎が鎖となってジフテリアを拘束し続ける。
 これ以上の過ちを犯す必要はないのだというように。
 けれど、それでも、ジフテリアは止まらない。自身が世界を救世するまで、その哀しき暴走の末路の果てに至るまで。

 その道程の最後が、世界の破滅だとしても、止まることを知らない。
 しかし、その哀しき末路に幕を下ろすのが猟兵であり、朱鞠の成すべきとなのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナターシャ・フォーサイス
WIZ
彼らは影に隠れたのではありません。
我らが救い、我らが楽園へと導いて差し上げたのです。
そも、救うべき相手を選別するなどそれは傲慢。
救世を謳うなら…そこに直りなさい。
使徒として、救いが何たるかを教えて差し上げましょう。

恵みの雨は、生けるものへの救い。
ゆえに、我々への毒性のみを打ち消しましょう。
さらに天使達を呼び、皆様へ加護を授けるのです。

…さて。
我らが救済とは、生けるものも哀れな魂も、等しく救うべきもの。
貴女のように、選別するなどないのです。
そうして至るは、幸福の約束された楽園。
…ここは、貴女と同じですね。
教義に歪んだ貴女も、元は同じく救いを齎すべき存在。
歪みを祓い…我々と共に歩みましょう?



 体に穿たれた傷は癒えた。
 けれど、その身を苛む鎖の炎は未だ消えず。えぐられるような体の痛みを感じながらも、救世童隷『ジフテリア・クレステッド』は咆哮する。
 それは絶叫であったかもしれない。その叫びは大気を震わせ、疑似ながら暗黒の竜巻、オブリビオン・ストームによって引き寄せられた雨雲が清浄なる土地へと変貌させる雨を降らせる。
 だが、この雨は猟兵にとって毒性を持つ。猟兵にしか効かない猛毒の雨。
「わたしは、違う。違う。わたしは救世主足らんとしている……人々を救う存在。なのになぜ、人々は隠れてしまうの」
 その瞳在ったのは、もはや狂気である。
 己が世界を荒廃させたオブリビオンとなっていることも自覚できなかったがゆえの悲劇であるのかもしれない。
 いや、そもそもが、間違っていたのかも知れない。

「彼等は影に隠れたのではありません。我らが救い、我らが楽園へと導いて差し上げたのです」
 静かな声が響き渡る。
 ナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)の声は、降りしきる雨の中の荒野であっても凛と通っていた。
「そも、救うべき相手を選別するなど、それは傲慢。救世を謳うなら……そこに治りなさい。使徒として、救いが何たるかを教えて差し上げましょう」
 互いに救済と楽園を奉ずる者。
 一人は救世を成そうとし、一人は祈りを奉じる。
 同じ場所を目指していながらも、彼女たちの道は決定的に違っていた。交わってはいけない場所で交わってしまっていた。

「恵みの雨は、生けるものへの救い。故に我々への毒性のみを打ち消しましょう」
 ナターシャのユーベルコード、召喚:楽園の光翼(サモン・ピュリフィケーション)によって、戦場に輝く羽根が舞い散る。
 それは、この戦場を猟兵のみに毒性を発揮する雨に濡れた大地という特性を打ち消すもの。
 曇天を割って、天使の梯子の如き光と共に降臨するのは、光り輝く天使。

 それを見上げるのはジフテリアである。
 光を反射し、その瞳はキラキラと輝いていた。けれど、それは狂気の輝き。天使の姿を見たこともなければ、それが救済の徒であるという認識もない。
 わかるのは、己の力の一旦であるオブリビオン・ストームによって生まれた雨雲と降りしきる雨に寄って濡れた猟兵に対する毒性を発揮する大地が尽く霧散して無効化されたという事実。
「わたしの、大地、が……私の救世が、わたしは救おうとしただけ。わたしがわたしであるための存在意義が、それであるから、それを成そうとしただけなの」

 その言葉にナターシャは頭を振る。
「我らが救済はとは、生けるものも哀れな魂も、等しく救うべきもの。貴女のように、選別することなどないのです」
 ナターシャの体に降りしきる力増す光。
 それはユーベルコードの光。彼女は今、戦うわけでもなく、言葉によってのみ成り立つ悟りの戦いに赴いている。
「そうして至るは、幸福の約束された楽園……ここは、貴女と同じですね。教義に歪んだ貴女も、元は同じく救いを齎すべき存在」

 かつてはそうであったが、今はそうではないもの。
 それが救世童隷『ジフテリア・クレステッド』というオブリビオン。それはすでに歪みきってしまっている。
 ナターシャが挑む悟りの戦いは、その言葉によってのみ成される。
「歪みを祓い……我々と共に歩みましょう」

 手を差し伸べる。
 その行為は、ナターシャの信仰が勝った瞬間であった。
 敵に対しても手を差し伸べる。対するジフテリアは、猟兵を毒と認識する。それは、今も変わらない。変えられない。
 あるのは、目の前の猟兵と、己の認識の齟齬。
 前にも、後にも進めない。

 その魂が救われるというのであれば、それはきっと、骸の海へと還っていった時だけであろう。
 今はその時ではない。
 だから、ナターシャは待つだろう。共に進もうと、歩もうと差し伸べた手が取られるその時まで―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リジューム・レコーズ
毒?どちらが?
散々死をまき散らしておいて!
次は貴女が救世を実践する時です
拒否はさせない…自ら産み出したエゴの罪を贖えばいい!

【SPD・アドリブ連携歓迎】

擬似的とは言えオブリビオンストームを制御下に置くとは
しかも完全支援型の増援まで…
放置すると本体の処理に支障が出そうですね
だったら纏めて排除するまで
エクステンションコネクターを各兵装に接続
射撃モードをセントルイスは照射、ヘレナは拡散に設定
目標の配置状況は既にレーダーで把握済みです
マルチロックオンし全部同時に消し去ります
増援を排除したらジフテリア本体を攻撃します
セントルイスを速射、ヘレナを収束に切替
貴女の身体を!心と魂ごと撃ち砕いてやるッ!



 救いを差し伸べる手があった。
 敵であるというのに、それでも救わんとする手。だが、その瞳に映ったのは毒。世界を犯す毒。救世童隷『ジフテリア・クレステッド』にとって、猟兵とは、どうあっても相容れぬ存在であった。
 救世主にを救う存在は如何なるものか。
 答えはない。
 けれど、目の前の猟兵は―――。
「……それでも、あなた達は毒。わたしの瞳映るのは、世界を、人々を犯す毒にしか、見えない―――」
 背に負うようにしたフラスコの中の胎児が蠢き、疑似オブリビオン・ストームを呼び起こす。その暗黒の竜巻の向こう側から現れるのは、フラスコチャイルドの姉妹たち。
 彼女たちの瞳は、ジフテリアと同じであった。
 どこまでも過去に歪められた存在。それがジフテリアというフラスコチャイルドの末路であった。
 もしも、その存在定義が『救世主』でなかったとしたら、違った結末もあったのかもしれない。
 だが、それは詮無きこと。

「毒? どちらが? 散々死を撒き散らしておいて!」
 次は貴女が救世を実践する時、とジフテリアの言う『死』を彼女自身に与えんとリジューム・レコーズ(RS02・f23631)はその青き瞳でもって、ジフテリアを捉える。
「擬似的とは言え、オブリビオン・ストームを制御下に置くとは。しかも完全支援型の増援まで……」
 彼女の疑似人格は怒りに燃えていたが、そのバックグラウンドでは冷静に戦局を把握していた。
 オブリビオン・ストームより生み出せしフラスコチャイルドの姉妹たちの戦闘力はほぼ問題にならないだろう。しかし、油断ならないのは、戦闘以外の能力だ。
 これを放置してしまえば、本体であるジフテリアへの対応に支障が出てしまう。

「だったら纏めて排除するまで―――!」
 エクステンションコネクターが彼女の全ての兵装に接続される。電力で稼働する全ての兵装へと電力供給可能な兵装をすべてつなぎ合わせる。
 二丁の荷電粒子スマートガンに接続される彼女のアーマードレス。
「プラズマリアクター接続完了、エネルギー供給開始」
 彼女の疑似人格は、怒りに震えていた。
 自分たちを毒と呼ぶ。
 けれど、己の行いを鑑みることはないジフテリアの姿に、怒りを見出したのは何故か。その理由を疑似人格は答えない。
 いや、理解しているのだ。彼女の言う『救世』とは決定的なところでエゴなのである。
 誰かのためではなく、己のために行う『救世』。目的と手段は変わり果て、過去に歪められている。それを悲しいと思うわけでもなく、許せないと思うのは、ある意味で正しい。

「射撃モードをセントルイスは照射。ヘレナは拡散に設定」
 彼女の電脳とリンクした映像データがライフリングを形成していく。視線誘導に寄ってマルチロックされたフラスコチャイルドの姉妹たちの姿を彼女は逃さない。
「配置状況はすでに把握済み―――一気にカタをつけます!」
 放たれる荷電粒子の火線。
 次々と打ち貫かれていくフラスコチャイルドの姉妹たち。彼女のセンサーに全ての動体反応が沈黙した瞬間、彼女のサイドブースターが火を噴く。

 空を駆け抜ける彼女の姿は、真白き流星そのものであった。
 速射モードと収束モードに切り替えられた荷電粒子スマートガンが放つ光線は、守りを排除されたジフテリアへと迫る。
「わたしは、おわらない―――終わらない『救世』をずっと、つづける! もっと、もっと、救いたい―――!」
 荷電粒子の雨の中、それでもジフテリアは抵抗をやめない。
「貴女の体を! 心と魂ごと打ち砕いてやるッ!」
 それでもやめないというのならば。
 リジュームの砲撃は終わらない。躱され、放つ。その攻防はあまりの速度に大地は焼け焦げていく。

「拒否はさせない……自ら産み出したエゴの罪を償えばいい!」
 強烈なるエゴのぶつかりあい。
 それがオブリビオンと猟兵の戦い。互いのどちらかが滅ぼされるまで続く戦い、
 そこに救いが在るのだとすれば、戦いの結果に寄って護られるものがあるということ。
 人々の安寧は、この戦いの果てに成るだろう。
 だからこそ、リジュームは止まらない。止まるわけにはいかない。その誤った『救世主』を打ち砕く、その時まで―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アハト・アリスズナンバー
貴方のそれは救世でも何でもない。死をばら撒くだけのバグです。
過去に縛られた貴方をここで終わらせましょう。

相手の毒ガスには【環境耐性】を使用して、【ダッシュ】でそのまま突撃。
【マヒ攻撃】弾を撃ちつつ相手の動きを止めます。
相手が疲労していたら【ランスチャージ】で【串刺し】にしながら、【傷口をえぐる】を使いつつUCを起動します。
死をもって救いとするなら、私が共に行ってあげますよ。
次の私に入れ替わったら、遠くから【スナイパー】を使用し【貫通攻撃】弾でフラスコの破壊を試みます。

この世界は未来を生きる人によって救われるべきです。
自分の信じた救世を胸に抱いて、もう休みなさい。



 荷電粒子の雨が降り注ぐ大地にあってもなお、救世童隷『ジフテリア・クレステッド』は怯むことはなかった。
 己の敵、世界の毒、猟兵を打倒し、己の存在意義である『救世』を成そうと戦い続ける。
「わたしは、もっと、もっと救う―――! 世界の毒に蝕まれたとしても、わたしは、もっと、救いたい! 人を、世界を、一人残らず救済するまで―――!」
 癒しの風が吹き付ける。
 それは疑似オブリビオン・ストームより齎された清浄なる風。彼女の荷電粒子に焼かれた体をたちまちに癒やしていく。
 だが、その癒しの風は、猟兵に対してのみ猛毒のガスとなって荒野へと充満していく。その風の向こう側で、アハト・アリスズナンバー(アリスズナンバー8号・f28285)の銀の瞳がきらめく。

「貴方のそれは救世でもなんでもない。死をばら撒くだけのバグです」
 彼女の言葉は聞き覚えがあった。ジフテリアは、他の猟兵も同じことを言っていたと首を傾げる。
「おかしなことを言うのね。わたしはただ、救っているだけ。救うために『死』が必要ならば、それを選ぶだけ。死が救済である者だっているでしょう? 人の心にある楽園の形が、それぞれ違うようにね」
 フラスコチャイルド同士のシンパシーであったのかもしれない。ジフテリアは微笑む。凄絶なる微笑みであった。
 バグ。
 そうアハトは評した。それは間違っていない。彼女の理屈はバグっている。それが過去に歪められた結果であることは疑いようがない。
 だから―――。

「過去に縛られた貴方をここで終わらせましょう」
 毒ガス満ちる荒野をアハトは駆ける。
 環境耐性に優れたフラスコチャイルドであるがゆえの突撃。一気に距離を詰め、突撃するレーザーライフルの荷電粒子が放たれ、ジフテリアの動きを止める。
 アリスズナンバーランスを構え、毒ガスの中を突っ切るようにしてジフテリアに肉薄する。
 荷電粒子の火線によってジフテリアは、その場に釘付けにされている。構えた槍が、過たずジフテリアの体を貫く。
 だが、その槍を両手でつかみ、微笑むジフテリア。痛みに、その体は悶ているだろう。けれど、それでもジフテリアは微笑んでいた。
 同じフラスコチャイルド。
 言う成れば、姉妹であるであろうと。だから、この痛みも、想いもきっと理解してくれると。
「……死をもって救いとするなら、私が共に行ってあげますよ」
 オウカ・コード。
 それは禁忌のユーベルコード。儚く散る桜花嵐のごとく爆発が、アハトとジフテリアを中心に引き起こされる。
 爆風が大地を穿ち、ナハトの体は粉々に吹き飛んでいた。

 胴に突き刺さったままの槍を引き抜き、ジフテリアは傷ついた体の儘呆然としていた。
「すくい……救ったはずなのに」
 訪れるはずの充足感がない。あるのは虚空の如き虚しさ。はじめてでったのかもしれない。わかり会える存在であると。
 同じフラスコチャイルドだからか。それとも―――。

 次の瞬間、ジフテリアの背後のフラスコが弾け飛ぶ。
 一瞬の出来事だった。放たれた銃弾は、はるか遠くの高台から放たれていた。
「―――!」
 ジフテリアの視線が向いた先には、自爆攻撃を引き起こしたナハトの存在が合った。
 何故、と思った瞬間、背後のフラスコが他の猟兵に寄ってヒビを入れられていた銃弾の後から広がり、一気に割れて崩れ落ちる。
「おねえちゃん―――!」
 続く銃撃に、フラスコの中の胎児もまた打ち貫かれ、霧散して消えていく。
 これで、ジフテリアの力は大きく削がれたことだろう。

 オウカ・コード。
 それはアハト・アリスズナンバーの驚異なる成り立ちに寄ってのみ成されるユーベルコード。
 一つが破壊されれば、オリジナル個体が破壊されない限り、今までの記憶を統合した個体が出現する。引き継がれた記憶のコンバートが終了し、新たなアハトの視線が、ジフテリアを見下ろす。
「この世界は未来を生きる人によって救われるべきです。自分の信じた救世を胸に抱いて、もう休みなさい」

 ―――そのために『私』が共に逝きましょう。そう短くつぶやいた言葉は、桜の花の如き儚さで、荒野に吸い込まれていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
もし『過去』の歪みを取り除くことが出来たなら…
いえ、この大地で人々が暮らす際、彼女の尽力を想う者がいない等と騎士として道義や礼儀に悖る…
論理的では無い思考ですね

キャラバン奪還者の援護背に戦闘
怪力で大盾なぎ払い大風でガス吹き飛ばし接近

何故救うべき人々が己に銃を向けるのか
今一度振り返る時です!

アンカーで捕縛しUC突き立て
思考中枢の『過去』をナノマシンで除去
思考正常化試行

私達、そしてこれまでこの地を訪れた奪還者への所業
今なら正しく理解出来る筈
その胸を苛む罪の意識…『痛み』が貴女への罰です

そして、『人の痛み』知るこの刹那の貴女は
確かに『救世主』足り得ます

貴女の救世は彼らに託されるのです
…お疲れ様でした



 慟哭が響き渡る。
 背に負うようにして存在していたフラスコが破壊され、姉と呼んだフラスコの中の胎児が霧散して消えていく。救世童隷『ジフテリア・クレステッド』は叫んだ。
「あああ―――! どうして、どうして、わたしは救おうとしたの! ずっと、一人でも多く!」
 その慟哭は、歪んでいたが真摯なものであった。
 救うという意志が歪んでしまったがゆえの暴挙。世界を救世するという存在定義。製造されたという過去。
 そのどれもが世界を救おうという意志の元に生み出されたものであった。
 なのに歪んでしまった。
 否、正しき思いがあったとしても、間違えていたのだ、手段を。

「もし『過去』の歪みを取り除くことが出来たのなら……いえ、この大地で人々が暮らす際、彼女の尽力を想う者がいない等、騎士としての道義や礼儀に悖る……論理的ではない思考ですね」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の電脳がエラーをはじき出す。
 それはウォーマシンたる彼にとって正しいとはいい難い感情であったのかも知れない。論理的ではないと自身で断じているが、それでもと電脳の片隅が発する。それをエラーというのならば、その体はきっと騎士道精神で持って稼働しているのだろう。

 難民キャラバンの人々がトリテレイアの進む道を援護するように背後から道中で野盗から奪った武器を手に射撃を加えてくれている。
 大地に充満している猟兵にのみ毒性を発する毒ガスを大盾で薙ぎ払い、吹き飛ばしながらトリテレイアはジフテリアに接近する。
「あなたは―――! あなたは、毒! わたしにとっての、毒! わたしは救う! どんな手段をもってしても、それがわたしの存在意義!」
 視線とアイセンサーがかち合う。
 その瞳は狂気に彩られていたが、戦う相手を間違えてなどいなかった。互いに滅ぼし合う間柄。オブリビオンと猟兵。
 決して相容れぬ存在。

「では! 何故救うべき人々が貴方に銃を向けるのか、今一度振り返る時です!」
 放たれたワイヤーアンカーがジフテリアの体を拘束し、アンカーが大地へと突き刺さる。
 それは動きを止める一手。
 胴の格納スペースから取り出したのは特殊な短剣。剣をマウントし、手にした短剣―――慈悲の短剣(ミセリコルデ)をジフテリアの体に突き立てる。
「私達、そしてこれまでこの地を訪れた奪還者への所業。今なら正しく理解出来る筈。その旨を苛む罪の意識……『痛み』が貴方への罰です」

 その短剣はオブリビオンの悪影響を除去するナノマシンを放つ。
 突き立てられた切っ先からジフテリアの体の中に流れ込むナノマシンは、その『過去』を除去せんと駆け巡っていく。
 思考の正常化。
 それがトリテレイアの選んだ道だった。もしも、意識が正常化したのならば、罪の意識に耐えられないだろう。

「―――わたし、は、救う―――……『救世主』たらんと、人を、救う」
 ジフテリアの体の中をナノマシンが駆け巡っている。
 けれど、その瞳に宿った狂気は消えない。過去に捻じ曲げられた性質。それは、捻じ曲げられたとしても、変わることのなかった本質。
『救世』。
 それが彼女に課せられた使命であり、存在意義。

 その狂いは、元より。
 だというのに、何故彼女の狂気に彩られた瞳から涙がこぼれ落ちているのだろうか。トリテレイアは理解しただろうか。
 いま、彼女は『人の痛み』を知ったのだ。
 それは刹那のことであった。ナノマシンは次々と効力を打ち消されていくのがわかっていた。
 それでも、この瞬間、一瞬だけでも、ジフテリアは真に。
「あなたは救世主足り得ます」

 その言葉は慰めではなかった。事実であった。
「貴女の救世は、彼等に託されるのです」
 受け継がれるものがある。例え、やり方が、生まれた理由がいびつであったとしても、育まれた大地はアポカリプスヘルに生きる人々の希望足り得るだろう。
 彼女亡き後、大地は実りを宿り、人々は互いに助け合って生きていく。それが小さな一歩だとしても、偉大なる一歩であることをトリテレイアは知っていた。

 その歩みを止めぬ者こそが希望を抱くものなのだとすれば、ジフテリアは、その一歩を踏み出す大地を産み出した、正しく『救世主』であったのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
「ジフテリアさん、ありがとう。
この土地をキャラバンの人々に与える事で、貴女の救世は為されます。
『救わないといけない』は貴女に課せられた呪い。
今度は貴女が救われる番です。」
と彼女に感謝し、人々を護り、彼女を呪いから解き放つ事で、彼女を救います。

UC発動し、UCによるオーラで毒ガス無害化。
それで足りなければ【薬の属性攻撃】を周囲に展開して毒を中和。

UCの飛行能力と【空中戦】で一気に接近。
彼女の通常攻撃は【第六感と見切り】で読んで、天耀鏡による【盾受けとオーラ防御】で防ぎます。

煌月に【光の属性攻撃と浄化】を籠め、【なぎ払い】の一撃で彼女を倒します!
最後は彼女の手を握って安らかな眠りを【祈り】ます。



「わたしは、『救世主』たり得ない―――」
 その否定の言葉は、救世童隷『ジフテリア・クレステッド』というオブリビオンの存在意義を根本から覆すものだった。
 荒廃した世界を『救済』するために製造されたフラスコチャイルド。
 その『救世主』足り得るスペックを有していながらも、『過去』に歪んだ過去の化身。哀しき怪物の成れの果て。
 猟兵達が紡いだ希望を前に、存在意義は崩落していく。

 在るのは、ただ己の成してきた行いへの自己否定のみ。

「ジフテリアさん、ありがとう。この土地をキャラバンの人々に与える事で、貴女の救世はなされます」
 大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)の身を包む若草色のオーラが周囲に存在していた猟兵にのみ害を成す猛毒のガスや雨を浄化消滅させていく。
 彼女の神性解放(シンセイカイホウ)された力が、ありとあらゆる危害あるものを浄化していくのだ。
 これこそが、神性を開放した真なる詩乃の力。植物を司る女神足る所以。
 ジフテリアは、顔を上げる。
 戦い、傷つき、根本から己の存在意義は最初が間違っていたことに、彼女の意志はすでに戦いから離れていた。
「『救わないといけない』は、貴女に課せられた呪い。今度は貴女が救われる番です」

 そんな彼女に詩乃は感謝の言葉を贈る。
 彼女は戦うわけではない。一度は差し伸べられた手を振り払った。けれど、それでも伸ばされた手が、詩乃の手と重なる。
 彼女の一人の想いだけでは、届かなかった結末。
 猟兵が戦い、己たちの信念のもとに戦った結果。それが、今、結実する。
「私たちは互いに猟兵とオブリビオン。間違いありません。ですが―――それでもと、言うのが猟兵なのでしょう」
 互いに必要なのは攻撃の手ではなかった。
 薙刀も、神鏡も必要ない。

 真に必要なのは、祈りと差し伸べる手。
 一人では成し得ないことも、他者と共にあるのならば、成すことができる。
「否定することは、簡単なことです。肯定することも同じでしょう。数多の傷があったことでしょう。数多の言葉が貴女に降り注いだことでしょう。その一つ一つの積み重ねが、『今』の貴女を照らしている」
 足元から崩れていくジフテリアの体。
 猟兵の猛攻の前に、いつ消えてもおかしくなかったのだろう。
 それでも食らいついていたのは、その歪められとはいえ、世界を『救世』しようとした想いが本物であったからだ。

 そうでなければ、『救世主の園』は、ここまで清浄で放縦なる大地にはならなかったことだろう。
 だからこそ、詩乃は感謝したのだ。
 敵であるジフテリアに。その救世主足らんとした行いの全てに。失われた生命もあるだろう。それが還ってこないことをもわかっている。
 けれど、せめてと詩乃が願うのは、ジフテリアの安らかな眠りであった。

「わたし、わたし、わたし、は―――」
 ぼろぼろと崩れていくジフテリアの手を詩乃は握りしめる。
 霧散していく。骸の海へと還っていくのだろう。再び同じ形をしたオブリビオンが現れるかもしれない。
 けれど、このひと時だけは。

 詩乃は微笑んで見送る。
 祈り以て、願いを以て。次なる生が訪れた時、その生命が―――。

「あなたが救世主足らんことを―――祈ります」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月25日
宿敵 『救世童隷『ジフテリア・クレステッド』』 を撃破!


挿絵イラスト