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帝竜のいない世界で ~夏のひとときを、清流の側で~

#アックス&ウィザーズ #戦後

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#戦後


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 剣と竜と魔法の世界。『アックス&ウィザーズ』と猟兵達が呼ぶ、その世界。
 世界を滅びに導かんとした『帝竜』は猟兵達の活躍の前に討たれ、竜の野望は露と消えた。
 世界滅亡(カタストロフ)の危機は、防がれたのだ。

 だが、しかし。この世界から争いが消えたのかと言えば、そうではない。
 確かに『帝竜』は討たれた。だが『帝竜』が滅びれば自動的に元からこの世界で生きるモンスターが消え去る訳でも、オブリビオンの残党が消え失せる訳でも無いのだ。
 ……世界各地には、今もまだ危険な存在達が多くいる。この世界で活動する冒険者達ですら手に負えない程の。

 ──故に、猟兵達の力も。まだこの世界は、必要としているのだ。



「沢遊びに、興味はありませんか?」

 グリモアベースに集まる猟兵達に、にっこりと語り掛ける銀髪のグリモア猟兵。
 ヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)の表情には、一点の曇りも無かった。
 ……あれ、今回依頼の案内じゃないの? と集まる猟兵達に疑問が浮かぶ。

「あ、ご安心下さい。一応、依頼の案内ではありますので」

 そんな疑問に苦笑を浮かべながら、ヴィクトリアが言葉を紡ぐ。
 ヴィクトリア曰く、今回猟兵達が赴く事になる世界は『アックス&ウィザード』世界。
 『帝竜戦役』を勝利した事でカタストロフの危機は去った物の、全ての危機が去った訳ではないらしく。この世界に今も残り暗躍するオブリビオンや、原生する危険なモンスターによる被害は頻発しているそうである。
 とは言え、一時程の厳しい状況ではない。猟兵が対処に赴かずとも、現地に生きる冒険者達でなんとか出来る程度には、脅威の格は抑え込まれているのだとか。
 ……では、わざわざ猟兵達に声を掛ける必要は無いのでは、と。居並ぶ猟兵の口から疑問の声が漏れるのは、当然のことだろう。

「いえいえ、こんな簡単な依頼だからこそ、ですよ」

 そんな疑問に対するヴィクトリアの微笑みと、続く説明を聞けば、疑問も氷解して消えるだろう。
 今回の舞台となる地は、辺境の山地。自然豊かな深い森を抱くその山地は、近隣の村落に水を供給する清流の源泉が湧き出す地でもあるらしい。
 そんな地に最近モンスターが棲み着き縄張りとしてしまったらしい。
 そのモンスターの名は、『棘蜥蜴』。湿地帯や密林に生息する、巨大な蜥蜴型のモンスターである。

「……幸い、今現在は付近の村落の住民に目立つ被害はありません。ですが、放置して万一が起きては後の祭りとなりますので……」

 近隣の村落は、森の木々を伐採し、獣を狩り、清流の魚を獲って生計を立てる者が殆どだ。
 必然、住民が森に踏み入ればそこを縄張りと主張する『棘蜥蜴』と争う事になる。
 そうなれば、無力な住民たちでは対処は困難だ。怪我人で済めば良し、最悪の場合は死者が出る可能性もあるだろう。
 そんな問題が起こる前に、対処……この場合、『棘蜥蜴』を駆除してしまわねばならないのだ。

「とは言え、相手は現地の冒険者でも労せず対処が可能な程度のモンスター。皆さんならば、苦労せずに対処出来るでしょう」

 現地の森に転送されて暫くすれば、『棘蜥蜴』は縄張りに踏み入れた者を排除する為に自ずと姿を見せるだろう。
 そうしてノコノコと姿を表した『棘蜥蜴』を駆除し、森の安全を確保すれば任務は終了である。
 しかしここで、「ですが」、と。ヴィクトリアが言葉を続ける。
 ……ただ敵を駆除して終わりでは、なんとも味気が無いという物。
 折角、自然豊かな森の地へと脚を運ぶのだから。『それっぽい事』を、してみるのはどうだろうか?

「具体的には……そうですね、今回の相手である『棘蜥蜴』は、その肉が中々の美味であるそうですので」

 清流の河原でバーベキューなど、如何でしょうか? と微笑むヴィクトリア。
 『棘蜥蜴』のその肉は、元の姿さえ知らなければ女性にも大人気、という程には美味であるそうな。
 その肉を主軸に、森の恵みであるキノコや山菜、そして清流を泳ぐ川魚などを頂くバーベキュー……実に夏っぽい、慰安のひとときに向いた行事ではないだろうか?

「これまでの日々の慰労。そしてこれから始まるだろう更に厳しい戦いへの鋭気を養う為にも……」

 皆さんに楽しんで頂ければ、幸いです。
 そう微笑んで礼をして、ヴィクトリアは猟兵達を転送する準備に移るのだった。


月城祐一
 夏だ! 山だ!! バーベキューだ!!!
 どうも、月城祐一です。実はインドア派です(ブチ壊し発言)

 今回は、時期ネタ水着依頼……と見せかけて、通常依頼。
 アックス&ウィザーズでの依頼となります。
 以下、簡単な補足を。

 第一章は冒険章。
 自然豊かな山地。そこを流れる清流に棲む警戒心の強い川魚に挑んで頂きます。

 この章の本旨は『『棘蜥蜴』を誘き出す事』。
 明るく楽しく森や川を楽しめば、自然と敵は侵入者に気付き集まって来ます。
 川魚を狙ってみたり、水着で水遊びに興じてみたり、はたまた森に踏み入り森の恵みを収穫してみたり……。
 この時の内容次第で、この後のお楽しみの充実具合が変わります。
 フラグメントに囚われず、色々と楽しみつつ試してみると良いでしょう。

 第二章は、集団戦。清流側の河原での戦いです。
 敵はOPで触れています通り、『棘蜥蜴』の群れとなります。

 棘蜥蜴は湿地帯や密林、鉱山に棲むとされる大型の蜥蜴です。
 その鱗は高い耐火・耐水性を誇る厄介な敵ですが、流石に猟兵相手には力不足。
 普段出来ない戦い方の実験など、色々と試してみると良いでしょう。
 但し、森の環境を破壊するような派手すぎる物はご遠慮下さい。

 第三章は、日常章。
 戦闘後の河原でのお楽しみの時間となります。

 メインの食材は『棘蜥蜴』のお肉。
 その他食材の充実具合は第一章の結果が反映されます。
 調味料や飲み物などは、ヴィクトリアが手配します。
 ご要望があれば三章プレイングにてお声掛け下さい。

 また、上の理由で三章はヴィクトリアが待機しております。
 何か言いたいことがある方、交流してみてもいいかな、とお考えての方はお気軽にお声掛け下さい。
(特にお声掛けが無ければ料理に汗を流したりしています)

 これまでの激しい戦い。その激しさはこれから更に勢いを増すだろう。
 そんな戦いの日々に備える為に……清流の傍らで、鋭気を養うのはどうだろうか?
 皆様のプレイング、お待ちしております!
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第1章 冒険 『巨大魚の影を追え!』

POW   :    ダイナミックに挑戦

SPD   :    スピーディーに行動

WIZ   :    エンジョイに冒険

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 転移を終えた猟兵達が降り立ったのは、小石で覆われた河原であった。
 耳を傾ければすぐ側には水の流れる音。ぐるりと周囲を見渡せば深い緑に覆われた森の木々。
 間違いない。この地こそが今回の舞台。『棘蜥蜴』が棲み着いたという森なのだろう。

 さて、今回の猟兵達の務めは『棘蜥蜴』の駆除である。
 彼らは森に侵入者が立ち入ればその存在を察知し、自ずと集まってくるはずである。
 ……だが、ただ待つのも時間が勿体ない。
 どうせなら、より楽しく明るく森と触れ合い、敵を誘き寄せるくらいはしても良いだろう。
 
 居並ぶ猟兵達はどうするべきかと、腕を組んで考える。。
 川には清流に棲む川魚がいるはずだ。上手く獲れればこの後のお楽しみにメインが一つ増えるだろう。
 それにこの時期であれば、森にも様々な恵みがあるはずだ。それらはきっと良い添え物となって、全てを終えた後の食卓に彩りを与えてくれるはず。
 戦いの後の、お楽しみを脳裏に思い描きながら。猟兵達は、それぞれに頷き動き出すのだった。

 ====================

●第一章、補足

 第一章は冒険章。
 自然豊かな山地に流れる清流と、清流を抱く森林地帯での一幕です。

 立地環境は、OP他で振れている通り。
 川は清流の言葉通りに澄んでおり、川魚が多くいます。
 森は深く豊かであり、探せば森の恵みをすぐに見つける事が出来るでしょう。
 そんな森と川の環境を楽しみながら、『棘蜥蜴』を誘き寄せるのが本旨となります。
 フラグメントの内容に囚われず、楽しみながら色々とやってみると良いでしょう。

 それでは、皆様の楽しいプレイングをお待ちしております!

 ====================
鳳凰院・ひりょ
俺は帝竜戦役後に猟兵になった新人
戦役がいかに大変な戦いだったかは先輩猟兵達から多少なりとも聞いている
厳しい戦いに向け、新人である俺ももっと力を付けておきたい
そういう意味では今回の討伐対象の棘蜥蜴はいい実戦経験になるんじゃないかと思い参加してみた
棘蜥蜴の肉は美味しいというのも興味が湧いたのもあるけれど

さて、まずはどうしようか?
せっかくだし、森へ入って恵みを分けてもらおうかな?
ライオンライド発動し黄金のライオンの背に乗り森に入る
これだけでも目立つだろうから、棘蜥蜴の誘い出しにはもってこいだと思う
高い所の採取品はライオンの上から採取可能だし、森で得た戦利品はライオンの背に乗せれば沢山運べるだろう





「よっ……」

 夏の日差しが差し込む森の中で、青年の声が響く。
 黄金の鬣が目に鮮やかな獅子に跨る男の名は、鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)。この辺境の山地に訪れた猟兵の一人である。
 そんな彼が伸ばした手の先には、桃に良く似た甘い香りを放つ野生の果実。
 たわわに実るその果実。森が齎す恵みの一つに感謝を捧げつつ。

「……っと」

 ひりょは優しく手を掛け捥ぎ取り、果実の状態を確認する。
 表面に虫食いや傷も無く、そのまま商店に並んでいても可笑しくない見た目。味の方もきっと、中々のはずだ。

「成果は上々、って所かな」

 うっすらと浮かぶ汗を拭うひりょ。跨る獅子の背には既に数種の野草やキノコが載せられていた。
 ひりょの言葉通り、森の恵みの収穫は上々の成果であると言って良いだろう。

(……こんな風にのんびり出来るのも、先輩猟兵達の活躍のお蔭なんだよなぁ……)

 そんな収穫物を眺めながら想うのは、つい先日この世界を襲った大戦の事。
 ひりょは、当時の事を直接は知らない。彼が猟兵として覚醒したのは帝竜戦役の後であり、彼が知る帝竜戦役とは先輩猟兵達の語った伝聞の上の事である。
 だが、その伝聞だけでも。世界の破滅を防ぐ戦いの激しさは、ひりょに大きな衝撃と……それ以上に、ある種の覚悟を抱かせていた。
 すなわち、これからの厳しい戦いに向けて更なる力を得なければ、と。
 そんな想いを胸に懐き、ひりょはこの地に降り立ったのだ。

(そういう意味では、棘蜥蜴は良い実戦経験になるんじゃないか、と思ったんだけど……)

 鮮やかな鬣を誇る獅子に跨りながら周囲を伺ってみるも、怪しい気配は感じられない。
 森の中であっても目立つ黄金の獅子は棘蜥蜴の誘い出しにはもってこいだと思っての召喚であったのだが、今の所は空振りという状況であった。
 ……これは、失策だったのだろうか?

「──いやいや。『暫くしたら』、って言ってたし」

 胸中に過る苦い思いを首を振って打消す。
 事前の説明を思い出せば、グリモア猟兵は確かに『現地の森に転送されて暫くすれば~』と言っていた。
 つまりはまだ相手が気付いていないか、単純にまだその時ではない、という事なのだろう。

「……そういう事なら、もう暫く散策を続けようか」

 合図を送るかのように、跨る獅子の腹をとんと蹴れば。獅子は主の意を汲みゆっくりと歩き出す。
 さてさて、他にはどんな森の恵みがあるだろうか。そう言えば棘蜥蜴の肉は美味しいらしいが……。
 戦いに向けた決意はある。だがお楽しみの時には、肩の力を緩やかに抜いて。
 その経歴こそ短くとも。ひりょの精神は確かに、立派な猟兵のそれであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鍋島・小百合子
アドリブ絡みOK

戦続きだった故心に余裕を持てなかったからのう
久しい休みと参ろうか

この川はなんであろう?
どんな魚がおるのじゃろう?
こんてすとの時に着用していた水着鎧を纏い、少し潜って手掴みしてみるとしよう

川を潜水(息止め、水中機動、水中戦、環境耐性併用)して泳いでいる魚を見かけたら隠遁(目立たない、忍び足併用)しつつ狙いを定め薙刀で串刺し
後でわらわとヴィクトリア殿と皆でたらふく食えるようにできるだけたくさん獲るとしようかの
にしても…わらわの世界では見かけぬ魚ばかりじゃのう?
どんな味か楽しみぞ


防人・拓也
「魚獲りか。軍人時代のサバイバルで良く獲ったものだ」
と言って、早速腕捲りし、ズボンの裾をまくって素足で川の中に入る。
「………」
獲物の魚が来るのを静かに待ち、目の前を通り過ぎた瞬間に
「!!」
と目を見開き、早業で手で掴み獲り、事前にUCで召喚しておいた自身の分身に投げる。
「下処理、よろしく」
「任せろ」
とやり取りし、分身の方もナイフでパパっと鱗取りや内蔵取りなどの下処理を早業で終わらせる。
「さぁ、次を頼むぞ」
「ああ、思う存分獲らせてもらおうか」
と何故か本体と分身はともにメラメラと燃える。この後、次々と本体が凄い勢いで魚を獲り、それを分身が負けじと次々と素早く下処理していくのだった。
アドリブ・連携可。





 一方、こちらは猟兵達が降り立った河原の側。
 直ぐ側を流れる渓流を前にして、鍋島・小百合子(朱舞の女丈夫・f04799)と防人・拓也(コードネーム:リーパー・f23769)の二人が腕を撫していた。

「魚獲りか。軍人時代のサバイバルで良く獲ったものだ」
「この川は、なんであろう? どんな魚がおるのじゃろうな?」

 野戦服の腕を捲り、ズボンの裾を捲くって素足をなる拓也。
 その口ぶりこそ常の冷静沈着なそれのままだが、かつての日々を思い起こしたか。拓也の口の端は懐かしげな笑みの形を作っていた。
 対する小百合子は武者鎧……ではなく。武者鎧をモチーフとした水着鎧の出で立ちである。
 激戦続きの日々故に、ここ最近は心に余裕を持てなかった事を小百合子は自覚していた。
 故に、(依頼ついでであるとは言え)久方ぶりの休暇にその表情は明るかった。過日のお祭りで着用した水着鎧に身を包み、楽しむ準備は万端だ。

「俺は浅瀬でやるが。そっちはどうする?」
「うむ、わらわは……少し深い所へ行くとするかの」

 ではな、と告げて清流に飛び込んで行く小百合子。白い肌と赤の水着が清流の中に沈み、消えていく。
 ……渓流の水量は中々多く、流れも複雑だ。素人が飛び込めば危ういかも知れないが、そこは猟兵である小百合子だ。
 水場での戦いもお手の物な彼女にしてみれば、この程度の流れならば問題なく適応出来る程度の物。
 特に問題なく泳ぎを進めていくその様子を、拓也の目はしっかりと捉えていた。

「っと。余所見ばかりもしてられんか」

 見事な泳ぎを見せる小百合子から視線を外し、今度は自身の周囲の周囲に意識を向ける。
 流れる清流。透き通る水に気配を溶け込ませるかのように。細く、長く、息を吐く。
 そのままじっと、気を静めてその瞬間を待ち……。

「──シッ!!」

 目を見開くと同時に鋭い呼気が響けば、拓也の腕が目にも留まらぬ素早さで水面を掬い取る。その掌には一匹の川魚が掴み獲られていた。
 ……川魚というのは、意外と警戒心が強いもの。そんな存在を無闇矢鱈と追い回しては、労力を無駄とするだけである。
 故に、拓也は待ったのだ。自身の気配が川の清流に紛れ、警戒を解いた魚が側を通るその瞬間を。
 そんな拓也の狙いは見事に嵌って。まずは一匹、見事に成果を得る事に成功したのだ。

「下処理、よろしく」
「任せろ」

 そうして獲った魚を河原に投げれば、いつの間にやらその場にいた拓也の分身が受け取って。その手に握るナイフで、鱗や内臓を的確に外す下処理を進めていく。
 その手並みに、迷いはない。サバイバルで良く獲ったと言うかつての経験が伺えるかの様だ。

「さぁ、次を頼むぞ」
「ああ、思う存分獲らせてもらおうか」

 久方ぶりの感覚にやる気が刺激されたのか。言葉こそ常と変わらぬ調子であるが、拓也の身体からは溌剌とした活気が滲み出る。
 時を待ち、腕を振るい、魚を獲り、下処理を行う……その勢いは、中々のハイペースで続いていく。

(岩魚な山女魚、虹鱒辺りと似ておるが……やはりわらわの世界では見かけぬ魚ばかりじゃの?)

 一方、深みに潜る小百合子は、近くを過ぎる川魚の群れをじっくりと観察していた。
 世界は違えど環境が似れば、棲まう生物も似てくるのか。この清流に棲む魚達のその姿は、小百合子の知る魚のそれとどこか似通ってはいるが……そのどれもが、僅かに違う。
 ならば、その味はどうか。多くの世界で様々な食を楽しんできた小百合子は、その辺りに強い興味を抱いていた。

(まずは、一匹……)

 流れる清流の中に潜み続けていた小百合子が、動く。
 地に突き刺し支えとしていた薙刀を引き抜き、足の動きだけで器用に水流に抵抗し……。

(──フッ!)

 刺突、一閃。刃が水流を切り裂いて、その先にいた岩魚に似た川魚を見事に串刺す。
 更に、一閃。もう一閃……薙刀を突き入れれば、その度に川魚が刃に貫かれていく。

(後で皆でたらふく食えるように、出来るだけ沢山獲るとしようかの)

 健啖家の多い猟兵だ。必要になる食材もきっと多くなるはずだ。
 ならば皆の為にも、出来るだけ多くの川魚を獲っておかねばなるまい。

(……どんな味か、楽しみぞ)

 この後に待つ、お楽しみの時間。その時の為にも。小百合子は水の中で、やる気を滾らせ薙刀を振るう。
 ……お楽しみの際にメインが欠けるという悲劇は、小百合子と拓也の活躍により見事に回避される事になるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

スフィーエ・シエルフィート
※アドリブ・連携等歓迎

棘蜥蜴とは穏やかではないね
棲み分けが出来れば良いのかもしれないが、そうもいかないから無情なものだ

折角だし水着で少々川遊びと行こうか(服装は2020年水着JC参照)
銃とサーベルは近くに置いてね

まずは川に足を入れて、水の感触を楽しもうか
水の冷たさ、川の流れ、せせらぎの音……年寄り臭いかもしれないが、穏やかに楽しむのも良いものさ
他の子達が水を掛けて来たり、遊びに誘って来たら応えるがね

充分に水のせせらぎを楽しむか、遊びに誘われたら指定UCを使って妖狐に変身だ
悪戯妖術(属性攻撃+フェイント)で川の水を跳ね上げて、驚かせてみたり、川魚を取ってみたりしよう

何、これも仕事の内さ





 川辺に腰掛け、素足を水に浸す
 水の冷たさ、川の流れ、耳を微かに擽るせせらぎの音、川辺を吹き抜ける爽やかな風。
 初夏の森と川から感じる空気の全てを、スフィーエ・シエルフィート(愛と混沌のストーリーテラー・f08782)は全身で満喫していた。

(年寄り臭いかもしれないが、穏やかに楽しむのも良いものさ。とは言え……)

 水のせせらぎを満喫しながらも、スフィーエは憂う。
 これから猟兵達が見える事になる『棘蜥蜴』。猟兵や熟練の冒険者からすれば、脅威とはなり得ぬ存在だ。
 だが、しかし。この世界に生きる大部分の戦う術を持たぬ人々からすれば、命を脅かされる危険な存在であるのだ。
 そんな存在がこの地に棲み着いたというのだ。穏やかな話ではない。
 ……ヒトの領域と、モンスターの領域。明確な棲み分けが出来れば良いのだが、そうはいかないのが世の常である。

「……無情なものだね」

 一言呟き、嘆息するスフィーエ。再び吹き抜けた風が彼女の艷やかな髪を揺らす。
 風に遊ぶ髪を軽く手で抑えたスフィーエの出で立ちは、過日の祭典で纏っていた水着。
 今年の為にと新調したその水着は、極端に肌が露出した過激なデザイン。少しでも動けば豊満な母性の象徴がまろびでそうな程である。
 人によっては過剰過ぎるとも思える程に肌を露出するこの水着。だが両性的な顔立ちと出で立ち、立ち振舞が特徴的なスフィーエが纏えば、不思議と品のある様に見えてくるから不思議なものだ。

「……?」

 そうしてどれほど、水と森の空気を楽しんでいただろうか。ふと聞こえた少女たちの黄色い声に、細めを開けて視線を向ける。
 視線の先にいたのは、スフィーエから一回り程年少の少女達。共にこの地に足を踏み入れた猟兵である。
 どうやら果敢に魚獲りに挑んだものの、川底の石に足を滑らせてビショビショになってしまったらしい。
 ……芳しくない結果に、少女達は身を寄せ合い何やら相談している。どうやら何か策を弄するつもりらしい。

(楽しんでいるようで何よりだね。さて……)

 そんな少女たちの奮闘に薄い微笑みを浮かべつつ、スフィーエもゆっくりと立ち上がる。
 このまま水辺でゆったりと時が過ぎるのを楽しむのも良いが、一応は依頼を受けた身である。
 ある程度は働かねば……大人として、少女達に合わせる顔が無くなってしまうというものだ。

「時には、人の姿を捨てようか──!」

 身体の内に宿る力を開放し、変じた姿は七尾の妖狐。
 悪戯妖術に特化したその力を振るい、適当に近くを泳いでいた川魚の群れを驚かし、川の下流側……少女達の方へと誘導する。
 少女達の策が上手くハマれば、これで彼女たちの漁果は大量間違いなし。
 ハマらなければ……その時はまぁ、その時に考えるとしよう。

(子供を導くのも、大人としての仕事の内さ)

 さて、結果はどうなるか。
 少女達の方へと向けたスフィーエの瞳には、柔らな光が輝いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

クロエ・アスティン
【太陽の家】
はい、太陽の家の皆様と遊びに来たであります。
川遊びということで、水着コンテストで用意した真っ白なすくみずに着替えてきたであります。

さて、まずは棘蜥蜴をおびき出すために目一杯楽しむ必要があるのでありますね!
それでは、釣りをしている人の邪魔にならないように川下でつかみ取りにチャレンジしてみます!
泳いでいる魚を捕まえようとしますが中々うまくいかず、それどころかコケで足をすべらせてバシャーンと丸濡れに
み、水着に着替えておいて正解だったであります
結局、1匹も捕まえられず申し訳ない気分で皆様のところに戻るであります

※アドリブや連携も大歓迎


ミフェット・マザーグース
「太陽の家」のみんなといっしょ!
サワ遊び? サワー? サマー? 川遊び?
お魚、お肉、山キャンプ……それなら
ミフェットは「怪力」でしっかりしたバーベキューセットを持っていくよ!

クロエがお魚をとるって言うから、ミフェットも合わせて水着に着替えていくね
釣りをするヒトの邪魔にならないように、ぱしゃぱしゃ魚とり……

これはまずいかも!
お魚を待ってるザイーシャのために、全力でお魚とりするよ!

UC【バウンドボディ】
髪をほそく長ーく伸ばして「ロープワーク・罠使い」で魚とりの網にするよ!
ザイーシャも手伝いにきてくれたから、クロエにお魚を追い込んでもらって捕まえよう!
みんな水でぬれちゃったけど、水着だから平気だね!


ザイーシャ・ヤコヴレフ
WIZ【太陽の家】
太陽の家の皆と一緒に遊んじゃうよ
ふぅん…お魚捕りね
うん、分かった♪
濡れても良いように、アリスクロスをサメさん水着に変えて遊んじゃうよ

うーん…中々難しいね
そうだ、良いこと思い付いちゃった
あのね、私のガラスのラビリンスで罠を作るの
入り口をおっきくして、出口は小さくすればお魚さんはそこから出ちゃうでしょ?
その瞬間を狙って捕まえちゃうの
ヴィーシャ達が日曜日の夜に必ず見ているテレビ番組でこんな感じにやってたけど、上手くいくかな?
上手く行って捕まえたら、私がお魚さんの下拵えしておくね

ここを…つーってして、ワタをぶちっと取るだけ
これは周りに撒いちゃって、トカゲさんをおびき寄せる餌にしよっと





「わっ、ひゃぁぁぁぁっ!?」

 水のせせらぎを切り裂く様な、少女の悲鳴。
 黄色いその声が川面に響いた次の瞬間。バシャーン! と音も高く水音が鳴り響く。

「く、クロエーっ!?」
「大丈夫、クロエ?」

 川底の苔生した石に足を滑らせ転倒した少女、クロエ・アスティン(ハーフドワーフのロリ神官戦士・f19295)に駆け寄ってくるのは、ミフェット・マザーグース(沼の歌声・f09867)とザイーシャ・ヤコヴレフ(Кролик-убийца・f21663)。
 クロエ、ミフェット、ザイーシャの三人は、この地に猟兵達を送り込んだグリモア猟兵の家で共に生活する間柄。歳の近さも相まって、その距離感は仲の良い姉妹のように近かった。

「み、水着に着替えておいて正解だったであります……」

 そんな二人の心配するかのような声と差し出された手に、この場での最年長であるクロエとしては申し訳ない気持ちで一杯だ。
 真白いスクール水着(例のお祭りの為に用意した逸品だ)に身を包み、意気揚々と川魚の掴み獲りに挑んだのにこの体たらく。
 この場の最年長であるクロエとしては、悔しいやら情けないやらといった複雑な気持ちである。

「むむっ。クロエでも難しいなんて。これはまずいかも!」
「うーん……中々、難しいね」

 そんなしょんぼりとした表情のクロエを前に、ミフェット(紺のスク水姿着用中)とザイーシャ(フリルの多いビキニに鮫をモチーフとした羽織物)は顔を突き合わせて意見を交わす。
 真っ向勝負では、クロエの様に魚に翻弄されるばかりである。
 ならば、何らかの策を講じるべきだ。でも、その策とはどうすれば……?

 ──三人で一緒に掴み取り? いや、クロエの二の舞だ。
 ──普通に釣りにする? 釣り、出来る? 道具は?

 復活したクロエも混じり、あーでもない、こーでもないと意見を交わすが、そのどれもがいまいちピンと来ないものばかり。
 これはどうしたものかと、三人が思考の迷路に入りかけた、その時だった。

「──あっ、そうだ。良いこと思いついちゃった」

 閃いた、と。ザイーシャが明るい声を発したのは。
 ピコーン、と効果音が聞こえる様なその声は、暗闇を照らす蛍光灯の様に明るい物。そんな表情を見れば、クロエとミフェットの期待も高まる。
 ……ところで、肝心の思いついたその『良いこと』とは、一体……?

「あのね、私のユーベルコードでね……?」

 ザイーシャの思いついた策は、簡単に言えば迷路を構成するユーベルコードを利用した追い込み漁だった。
 入り口を広く、出口を小さくしたガラスの迷宮を水中に構築し、魚を迷宮に追い込んでの進行方向を誘導。後は出口から出てきた魚を獲るだけである。
 ……いつだったか、ザイーシャの母親代わりの女性が見ていたテレビ番組でこんな感じの漁具が紹介されていた事を、彼女は覚えていたのだ。

「それじゃあ、ミフェットは出口のところで網を作るね!」
「で、では自分は、魚を追い込むでありますっ!」

 テレビで紹介されていたというその言葉は、少年少女に対する説得力としては最上級に近いもの。
 ザイーシャの案に一も二もなくミフェットとクロエも賛成し、それぞれにバシャバシャと水を掻き分け動き出す。
 ガラスの迷宮を創り出したザイーシャが下処理の準備の為に一旦河原に上がるのを横目に見つつ。ミフェットは自身の髪をうねうねと細く長ーく引き伸ばし、迷宮の出口に網を張る。

(こうして、こうして……)

 ミフェットはブラックタールの猟兵だ。その身体はあくまで人の体を擬態したものであり、本来その身体は不定形。
 そんな身体の特性に、ユーベルコードの力も合わせれば。その身体は望む形に変幻自在、魚捕り用の網にすることなどお茶の子さいさい、と言った所である。

(サワ遊び。サワー? サマー? 川遊び?)

 川の魚に、森の恵み。この後のお肉も揃えば、山キャンプの食材は完璧だ。
 ミフェットが一生懸命頑張って持ち込んだ、しっかりしたバーベキューセットが活躍する時は、刻一刻と近づいている。
 楽しい時間の到来を待ち侘びているかのように、ふんふんふーん、と鼻歌を歌うミフェット。
 だが鼻歌交じりの作業でありながら、網作りには一切の妥協も無い。
 この作業は、ロープワークや罠の知識を持つミフェットにとって手慣れた物。そう大した時間もかからず網の準備は整った。

「……うん、クロエ! 準備できたよっ!」
「了解でありますっ! では、いくでありますよーっ!」

 準備完了を告げるミフェットの声に、リベンジに燃えるクロエの脚がバシャバシャと川辺を蹴り上げ水しぶきを上げる。
 激しい音と衝撃は、水中の魚達を激しく刺激し……クロエから遠ざかる様に、逃げ惑う。
 その進行方向の先にあるのは水中では視認しづらい透明な壁。魚達は壁にぶつかり、その壁に沿うように進んでいく。

(あれ? なんだかさっきより、魚の数が多い様な気がするであります……?)

 そんな中、クロエがふと違和感に気付く。先程よりも、周囲を泳ぐ魚の数が多いような気がしたのだ。
 ……クロエは、知らない。先程自身が上げた黄色い悲鳴が、とある猟兵の耳に入った事を。
 そして仲間達との仲の良さそうなその様子を微笑ましげに見守られていた事と、こっそりとした手助けを受けていた事を。

(……まぁ、魚が多いのは良いことでありますっ!)

 そんな事情を知らぬから、細かい事を考えずにクロエは動く。
 バシャバシャッ! と激しく水しぶきを立てて、また新たな川魚を迷路に誘導。ミフェットの張る網へと追い立てれば……。

「わっ、わわっ!」

 ミフェットの触手で作られた網は、たちまちの内に魚で埋まる。
 文句なしの大戦果に、ミフェットは目を白黒させて慌てた声を上げてはいるが……暫くすれば、その表情は笑顔に変わるだろう。

「それじゃあ、あとは……」
「ザイーシャのところに、もっていこうねっ!」

 魚でパンパンになった触手網を、二人で抱えて河原へと戻る。
 河原からこちらを見るザイーシャと目が合えば、自然と楽しげな笑顔と声が川辺に響く。
 戦いの前の一時を、三人の少女は確かに満喫し、楽しむのだった。

 ……なお、その後。魚の下処理で取り分けたワタを棘蜥蜴を誘き寄せる餌にしようと考えたザイーシャの手により、河原の一角は少々生臭い匂いが漂う事になるのだが……そこはまぁ、必要な犠牲であろうか。
 諸氏には少しだけ、我慢して頂きたい所である。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アネット・レインフォール
▼静
竜は去った
きっと勇者達も報われたに違いない

だがしかし…忘れてないだろうか?
そう、まだやり残した事がある

簡単な依頼と
彼女は最後にそう言った

元来、蜥蜴は雑食や肉食である事が多い
誘い出すなら数が必要となる

ならば…エキシビションマッチと行こうか!(爽

▼動
相手が水中戦を仕掛けてくるなら
此方も圧倒的物量で対抗せざるを得ない…!

【無限ノ絆】で墓標で見た過去の勇者達を無数に再現

全員に釣竿を持たせ新たな爆釣伝説の火蓋をきる

魚影の濃さや岩陰に留意
釣竿に変えた葬剣を小刻みにフェイントし
勇者達がドン引く程度の爆釣や大物を狙う

彼らの視線が痛い気もするが…きっと感慨深いのだろう
だが餌はやらんぞ?

性格崩壊・アドリブ歓迎





 厳しく、激しかった、『帝竜戦役』。
 一ヶ月に及ぶ世界の命運を左右する死闘の果て、猟兵達は遂に帝竜の王を討滅し、世界の滅びを見事に防いだ。
 ……かくして、この世界から竜は去った。かつての戦いで散った、数多の勇者たちのその魂も。きっと報われたに、違いないだろう。

「……だが、しかしだ。まだやり残した事がある」

 川の上流にて、アネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)がポツリと呟く。
 そう。アネットにはまだこの世界でやり残した事があるのだ。
 思い出すのは、初めて群竜大陸に踏み込んだあの日。『魂の祝祭』の加護を得るために催された宴から始まる、あの冒険。
 ……あの時、森の番人の配下であった空飛ぶ魚を相手にした際、アネットは大陸に挑んだかつての勇者たちへと思いを馳せていた。
 相打ちとは言え、帝竜討伐を成し遂げた勇者達。その成果は、彼らがあの呪われた地での食糧事情を克服していた事実の証明でもある。
 その事実を実証するべく、空飛ぶ魚に対してアネットが振るったのは竿へと返事させた剣であったのだが……その成果が芳しいものでは無かったのは、今も彼の心の棘となって残っていた。

(そうだ。あの時の失敗を、俺はまだ挽回していない──!)

 ……元来、蜥蜴とは雑食や肉食である種が多い。そんな彼らを誘い出すのであれば、餌となる物は多い方が良いはずだ。
 それに、今回の依頼自体は簡単な物だ、と。この地にアネットを送り届けたグリモア猟兵はそう言っていた。
 ならば、だ──。

「──エキシビジョンマッチといこうか!」

 釣りに興じても問題は無いはずだ、と。
 爽やかな笑顔を浮かべたアネットが釣り竿を振り上げ、糸を飛ばす。

 ──チャポンっ。ポチャッ、チャポポポンっ!

 飛ばされた針が沈み、僅かに響く水跳ねの音が多数続いた。
 気がつけばその場に立つ人影が増えていた。アネットと並び立つ様に、無数の人影が釣り竿を振って糸を飛ばしていたのだ。
 人影の正体は、アネットが大戦の折りに心通わせた勇者達の幻影。義の名の下に集い、不退転の覚悟を以て同胞らの進む道を支え続けた烈士達である。
 ……が、そんな彼らであっても竿を武器として与えられ、ただ只管に魚を釣り上げろと命じられれば困惑は不可避。戸惑いの表情のまま、釣り竿を振るい続けていた。

(これで、此方も物量の面では対抗出来るはずだ。後は……)

 川魚は警戒心が強く、そして機敏だ。そんな彼らを多く釣り上げる為にアネットが考えた策が、この烈士の幻影達である。
 とにかく数を。圧倒的物量攻撃を、と。川面に浮かぶウキの数は列を成し、遠目に見れば一本の線として見える程だ。
 ……物量は、これで大丈夫。数は幻影たちに任せるとして……。

(釣り人であるならば、出来るだけ大物を狙いたい所だが)

 アネットとしては、かつての苦い思いを払いたい。その為にこの地に脚を運んだのだ。
 故に、アネットが狙うのは……この川のヌシ。大物狙い、一点突破である。
 真剣な表情でフェイントを掛けるかのように竿を手繰るアネット。剣気すら滲むその眼差しの鋭さに、烈士達の表情には戸惑いを通り越して呆れの色が浮かんでいた。

「……なんだ? 餌はやらんぞ?」

 だが、そんな彼らの呆れはどこ吹く風と。アネットは鋭い視線は川面を向くままだ。
 どこまでも真剣なアネットのその表情。新たな爆釣伝説を築かんとするアネットの挑戦は、始まったばかりであった。

 ……なお、その釣果についてはアネットの名誉の為に、触れない事にしておこう。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『棘蜥蜴』

POW   :    集団遊猟
技能名「【追跡】【地形の利用】【トンネル掘り】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
SPD   :    探知器官
技能名「【暗視】【見切り】【失せ物探し】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ   :    鱗色変化
技能名「【目立たない】【忍び足】【迷彩】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 ある者は森の恵みを。またある者は川魚を求めて。
 猟兵達はそれぞれに夏の森と清流に触れ合い、親しみ……ゆったりとした時間を過ごした。

 だが、忘れてはいないだろうか。猟兵達が、この地に訪れたその目的を。
 川遊びも、バーベキューも。全てはその務めを果たす事で得られる余録の様な物であるという事を。

 ──ガサッ、ガササッ!

 聞こえる葉擦れ。森の各所から聞こえる下生えを掻き分けるようなその音に、猟兵達の意識が切り替わる。
 そう。猟兵達の本来の目的は……この地に棲み着いた、厄介な魔獣の駆除であるのだ。

 ──シャーッ!!

 力強い四肢、鋭い歯と爪、大柄な体躯に頑健そうな鱗をびっしりと生やし、首筋には名の由来である棘がある。
 間違いない。彼らこそが今回の駆除対象である魔獣、『棘蜥蜴』だ。
 ……現れ出た棘蜥蜴は、猟兵達を威嚇するかの吠え立てる。
 まるでこの地の領有権を主張するかのような態度だが……彼らは後からやってきて棲み着いた厄介者。遠慮の必要は無い。
 猟兵達はそれぞれに武器を構え、厄介者を打つべく戦いに挑むのだった。

 ====================

●第ニ章、補足

 第ニ章は集団戦。
 辺境の森に棲み着いた厄介なモンスター、『棘蜥蜴』の討伐戦となります。

 棘蜥蜴の特徴は、OPで触れた通り。
 一般人が相手をするには危険なモンスターですが、猟兵相手には流石に非力。
 簡単に一蹴出来る程度の相手です。普段できないアレコレを試すには、丁度いい相手であると言えるでしょう。

 戦場は、特に希望が無ければ猟兵達が最初に降り立った河原の辺りとなります。
 足元は小石が転がっていますが、気にする程の物ではありません。
 視界も開けており、戦いやすい環境であると言えるでしょう。

 ただし、もしプレイングでご指定があれば戦場を移す事も可能です。
 森や川の中、その他この地にありそうな環境ならお応えできるかと思います。
 色々試してみたいとお考えの際は、プレイングにどうぞ。

 遂に現れた、討伐対象のモンスター。
 森に棲み着き勝手に領有権を主張する厄介者を、猟兵達はどう討つか。
 皆様の熱いプレイング、お待ちしております!

 ====================
鳳凰院・ひりょ
あれが棘蜥蜴か
迎撃する場所はそのまま河原で
ここの方が俺としては戦いやすい
転がっている石を触媒に固有結界・黄昏の間を発動

風の疑似精霊に自分の周囲に風の防壁を展開指示
敵が触れれば風によって身を切り刻まれる、攻防一体の壁だ
これなら身を潜めて接近して来られても対処できる

そのうえでこちらからの攻撃は
水の疑似精霊に空中に大量の氷柱を生成させ敵に雨の様に降り注がせる
氷柱の乱れ撃ちだ
今回は火の疑似精霊は攻撃自体には不参加
この後に蜥蜴の肉を入手する必要がある、消し炭はまずい
相手の位置情報を無理ない範囲で探ってもらおう

地の疑似精霊には接近戦用に控えておいてもらう
退魔刀をダイヤモンドコーティングし強度・鋭利さを強化





(……あれが、『棘蜥蜴』か)

 猟兵達を威嚇するかのように吠え立てる『棘蜥蜴』。その姿を、ひりょが睨む。
 地を踏む四肢は力強く、体を覆う鱗はいかにも頑健そう。鋭い歯や爪、首筋の棘も凶悪そうだ。
 だが、しかしだ。

(それ以外は、特に脅威は無さそうだね)

 そう。棘蜥蜴の武器とはその特徴のみ。つまり、極論を言えば。棘蜥蜴の歯や爪、棘にさえ気をつけていれば明確な脅威とは成り得ないのだ。
 その程度の脅威でしか無い棘蜥蜴が、何故一般人の脅威となるのか。その理由とは……。

「……いや、その『能力』は、ちょっとだけ厄介か」

 ひりょの目の前で河原を転がる石の紛れる様に姿を晦ます棘蜥蜴のその姿が、理由を示していた。
 ……棘蜥蜴には、高い追跡能力と探知能力、迷彩能力が備わっているらしい。
 成程。この能力と武器を併せれば、一般人にとっては大きな脅威となるだろう。
 だが、まぁ……それが通じるのは、あくまで一般人や駆け出しの冒険者まで。熟練の冒険者や、ましてや猟兵に通じる程の脅威では無い。
 それは例え、棘蜥蜴の相手が経験が足りぬと自覚をするひりょであっても同じこと。
 そう。猟兵である、ひりょならば。

「『ここの方』が、俺としては戦いやすいからね」

 実力不足を覆す為の鬼手の幾つかは、持ち合わせているのだから。
 『迅雷』の銘を持つ愛刀を抜き放つひりょ。その切っ先を地に転がる石へと突き入れ、叫ぶ。

「──場よ、変われ!」

 その言葉を鍵にして、ひりょの内に宿る力が解き放たれれば。転がる石に力が宿り、疑似精霊へと姿を変えていく。
 【固有結界・黄昏の間(コユウケッカイ・タソガレノマ)】と名付けられたこの力は、ひりょの持つ鬼手……ユーベルコードの一つ。
 その特性は、『自身の周囲の無機物を四大元素の疑似精霊に変換し、操作する』という物だ。
 ……この河原には無数の小石、無機物が多く転がっている。と言う事は、ひりょの力の及ぶ対象がそれだけ多く存在しているという事である。
 つまり、どういう事かと言うと。この地の環境を利用したのは棘蜥蜴だけでは無く、ひりょもまた環境を味方としているという事である。
 ……環境を活かし奇襲が嵌れば、棘蜥蜴にも億に一つの勝ち目はあったかも知れないが。こうなってしまえば、その勝ち目は完全に潰えてしまう。

 ──シャッ、ギッ!?

 迸る血飛沫。姿を晦ましていた棘蜥蜴がひりょの周囲で風精霊が構築した防壁に触れ、その身を切り裂かれたのだ。
 そうして吹き出た血霞を、今度は水精霊が固めて凍らせ、お返しと言わんばかりに鳴き声の場所へと叩き込めば。

 ──ゲギッッ!?

 血氷の矢を受けた棘蜥蜴達が次々と、断末魔を上げてズンッ、と重い音を立てて地に転がるばかりである。
 ……念の為、ひりょ自身も土精霊の力で愛刀の刃をコーティングし接近戦に備えていたのだが。その刃を振る必要も無い、完全勝利であった。

「……よし。それじゃあ、棘蜥蜴の肉を回収するとしようかな」

 棘蜥蜴が完全に斃れた事を確認し、コーティングされた刃で棘蜥蜴を解体するべく。ひりょがゆっくりと動き出す。
 ……とは言え、どうやって解体したものか。戦闘よりもこっちの方に気を使いそうな事実に、ひりょの口からは知れず溜息が溢れていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

防人・拓也
「うむ、見た感じは生食厳禁な奴だな。まぁ、生食したいという勇者がいるなら止めはせんが…」
と感想を言う。
「…はっ!? まさか、ヴィクトリアの奴…生食で食べてみたいから俺達にこいつらを狩れと…?!」
と言い出すが、すぐにそんなことはないだろうと思い直し、戦闘開始。
「さて、なるべく綺麗な状態が望ましいだろうし…打撃で仕留めるか」
と言い、『ブレイブ・ソルジャー』を発現。指定UCで敵を纏めて攻撃。
「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリィィー!!」
とブレイブ・ソルジャーが叫びながら殴り、止めにフィニッシュブロー。
「さて、血抜きはしておかないとな」
とナイフで仕留めた敵の大動脈を切る。
アドリブ・連携可。





 現代社会では、蜥蜴という生物は食用として見做される存在では無い。
 だが、それは『食べられない』という事とイコールでは無い。とある民族では大型の蜥蜴の丸焼きは御馳走とされるし、とある国では(真偽は不明だが)食用蜥蜴を養殖してもいるらしい。
 つまり、蜥蜴とは食べられる生き物であるのだ。

「……見た感じは、生食厳禁な奴だな」

 そんな事実を脳裏で思い描きつつ、生食したい勇者がいるなら止めはしないが、とも内心で呟く拓也。
 恐らく拓也は、軍人時代に極限状態に置かれた野外訓練か何かで食す機会があったのだろう。棘蜥蜴を見る拓也の目は、完全に食材を見るそれであった。
 ……ちなみに、蜥蜴に限らずであるが。野生動物の殆どは生食厳禁である。野生動物の多くは寄生虫のキャリアであり、生食すれば最後、寄生される事が不可避であるからだ。
 当然、サバイバル知識を持つ拓也もその事を知っている。そして知識があるからこそ……。

「──ハッ!? まさか、ヴィクトリアの奴。生で食べてみたいから、こいつらを狩れと……!?」

 そんな妄想が脳裏を過ぎったりもしたが、いやいやそんな事は無いはずだ、と。頭を振って、妄想を打消す。
 ……一応断っておくが、この妄想に根拠は無い。常識人であるあのグリモア猟兵が、そんな無茶な事を考えているなどという事は無いはずだから安心して頂きたい。

 ──シャァッ!!

「っと。冗談も程々にしておかんとな」

 吠え立てられた声。そして同時に空を切り裂く蜥蜴の爪を軽やかに躱しつつ拓也が呟く。
 ……中々に、活きの良い食材だ。これならば……。

(なるべく綺麗な状態が望ましいだろうし、打撃で仕留めるか)

 瞬間、拓也の身体に満ちる生気が蠢く。立ち上る生気は闘気となり、闘気はヒトの形を創り出す。
 『ブレイブ・ソルジャー』と名付けられたそのヒト形は、拓也が発現した守護霊に似た存在だ。近接威力と精密動作に優れたその特性を活かせば……!

 ──ゴッ! ゴガガガガガガガガガガガガガッッッッッ!!!!!

 目にも止まらぬ速度と正確さで、無数の拳打(ラッシュ)を放つ事など容易な事!
 ……闘気が放つ拳打の衝撃は、拓也に挑んだ蜥蜴の体内組織を破壊するに十分足る物だった。
 崩れ落ち動かぬ棘蜥蜴を見下ろしながら、本体の拓也がナイフを構える。

「さて、血抜きはしておかないとな」

 そのままナイフを一閃、棘蜥蜴の頸動脈を切り裂けば、たちまちの内に河原に血が流れて行く。
 ……食材の質は、丁寧な下処理から。魚獲りの際にも見せたその手際を、拓也はここでも見せつけるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鍋島・小百合子
SPD重視

あれが討伐対象の蜥蜴共かえ
食料が魚だけとは侘しい故彼奴等の肉も土産にするとしよう

「森の中が恰好の狩場じゃな、ほほ」
目立たないよう水着鎧の上に外蓑を着用し隠密重視(忍び足、闇に紛れる併用)で臨む
蜥蜴に気取られぬよう木に登りつつ視力と暗視と偵察を駆使して索敵
蜥蜴を見つけたらUC「魔弓神狙射」発動にてこちらに気づいていない敵の頭部を狙撃(スナイパー、目潰し、部位破壊併用)
敵に居場所を察知されぬよう射た場所からすぐに移動する
他の猟兵との連携を図る場合は援護射撃に終始する

仕留めた蜥蜴は持ち帰るが…焼けば食べられるのかえ?
ついでに木の枝も拾い集めておき、獲った魚を刺す串を作りながら立ち去ろうかの





(……あれが、討伐対象の蜥蜴共かえ)

 清流を抱く森。その樹上に、小百合子がいた。
 その姿は、先程までの瑞々しい肌を晒した水着鎧の姿ではない。木々の緑に紛れ込む様な外套を羽織り、地形の中に溶け込んでいた。
 服装の選択、物音を立てぬ繊細さ、そして気配の誤魔化し方。小百合子の隠形は非常に高いレベルで成立しており、そう簡単には見つけられぬ物であった。
 だが、しかしだ。

 ──シュー、シュゥゥゥ……。

 小百合子の眼下には、荒々しい吐息のままに徘徊する棘蜥蜴がいた。
 鋭く目を凝らして見れば、蜥蜴達は目を、鼻を、舌を慌ただしく動かしている。その様子は、まるで何かを探すかの様だ。
 ……いや、事実彼らは探しているのだ。『この近くに潜んでいる侵入者』、小百合子のその姿を。

(成程、彼奴等の探知能力も中々の物よ。じゃが……)

 近くに敵が潜んでいる事に確信を得ているような蜥蜴達の振る舞いに、小百合子が感じたのは僅かな驚き。
 だが、それだけだ。敵はこちらの存在を察知はしているが、その正確な居場所までには気付いていない。
 ならば、だ。

(我は番える、祝福の矢を。確実に──)

 音もなく取り出し構えるは、霊木を削り作られた一張の弓。
 魔を祓う力を宿すその弓に、静かに、だが力強く矢を番え……。

(──狙い、射抜く!)

 思い描くは、敵の頭蓋を射抜く矢の姿。
 正射必中の精神のもと放たれた一矢は、ヒュッと細い音を立てて翔んで。
 まるで吸い込まれるかのように。蜥蜴の頭蓋を射抜き、貫いた。

 ──ッ! シャーッ!?

 何が起きたかも判らぬままに斃れた仲間を見て、別の蜥蜴が警戒を促すかのように吠え立てる。
 そうして矢の飛び来た方へと視線を向けるが、既にその時には、その場に小百合子の姿は無い。矢を放ったその直後、小百合子は別の木へと音もなく飛び移ったのだ。
 ……そして。

 ──ヒュッ……ドスッ!

 今度はまた別の方から、必中の矢が飛来すれば。また別の蜥蜴が、その頭蓋を砕かれ斃れ伏す。
 こうなれば、蜥蜴達は最早混乱するばかり。そう高い知性も無い彼らでは、この状況を打破する策を見出す事も叶わない。

「森の中は格好の狩場じゃな、ほほ」

 最後の棘蜥蜴の頭を射抜き、小百合子の口の端が満足げな形を作る。
 ……さて、後は仕留めた蜥蜴を持ち帰るのみ。
 どの様に調理をすれば良いだろうか。とりあえず、焼けば良いのだろうか。
 そう言えば、獲った魚の事もある。木の枝を集めて、串を作って……。
 この後に待つお楽しみの時間を思い描けば、小百合子のその表情は一層明るく輝くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スフィーエ・シエルフィート
※アドリブ・連携等歓迎

漸くやってきたね
竜を相手というには少々物足りないが……侮って良い相手でもないか

さて、この棘蜥蜴は迷彩能力などに優れているのだったね
というわけで、【指定UC】を発動!
……あの水着にプリンセスティアラは似合わない?
気にしてはいけないよ

背景に溶け込んだところで実体が消えるわけじゃあない
軽く飛んでから七色に光り輝く翼で周囲を照らして、出来た影を狙おう

攻撃は青い氷属性の精霊銃でピンポイントに頭部、或いは脚を撃って確実に動きを止めよう
氷の弾丸なら、鈍らせることもできるかもしれない(属性攻撃&スナイパー)

上手く脚を封じたら地の重力を宿したサーベルで急降下の兜割
Be Gone!……ってね





 蜥蜴という生き物は、しばしば竜と同一視される生き物である。
 とは言え、その格の違いは明白だ。特にこのアックス&ウィザーズ世界においては、竜という存在は『帝竜』を筆頭に生態系の頂点に立つ存在であるのだから、比べるのも烏滸がましいとも言える。
 ……そんな存在を、猟兵達はつい先日相手に回し、そして打ち破ったのだ。討伐対象である蜥蜴程度では、相手とするには少々物足りなく感じる事だろう。

「……とは言え、侮って良い相手でもないか」

 侮り緩みそうになる警戒心を引き締めるかのように、スフィーエが呟く。
 確かに、棘蜥蜴のその力はかの『帝竜』達と比べれば雲泥の差。猟兵としての力を振るえば、鎧袖一触蹴散らす事は出来るだろう。だがそれでも、決して油断し侮ってはいけないのだ。
 古来より、圧倒的弱者が強者を屠るという逆転劇は枚挙に暇が無い。この場においては圧倒的な強者である猟兵と言えど、万に一つという可能性は付き纏うのだ。
 ならば、ここは確実に……!

「お姫様だから望むのさ! お姫様だから戦うのさ!」

 豊満な肢体を惜しげもなく晒す水着姿のまま、バッと腕を振るい叫ぶスフィーエ。
 芝居がかった所作と台詞。その仕草を鍵として、スフィーエの頭を飾るティアラが顕れて、身体に宿る力が開放される。
 今のスフィーエは、幸福な結末の為に戦うスタイリッシュなお姫様。英雄譚に憧れた、一人の戦姫であるのだ。
 ……妖艶な水着に、ティアラはちょっと違和感もあるが。そこはまぁ、気にしてはいけない所である。
 
「──誰より何より、ハッピーエンドって奴の為にね!!」

 派手なその振る舞いに意識を惹きつけられたか、力強く四肢を踏み込み迫る棘蜥蜴達。
 そんな彼らを嘲笑うかのように。ニヤリと笑んだスフィーエが跳べば、その身体を舞い散る花弁が包み込み、虹色に輝く光の翼へと変じていく。

(棘蜥蜴は、迷彩能力などにすぐれているのだったね。ならば、この状況なら……)

 グリモア猟兵として磨き上げた洞察力が、敵の長所を鋭く見抜く。
 その見立ての通り、蜥蜴達の姿が見る間にボヤけ、河原を転がる石に紛れ込んでいく。
 空を翔んだスフィーエに自らの攻撃が届かぬ事を悟ったか。姿を眩ませての仕切り直しを図ったらしい。
 だがそう動く事もまた、スフィーエの予想の範疇だ。

「……そう来ると、思っていたよ!」

 愛用の二丁拳銃の内の片割れ、水属性の精霊銃を構える。その筒先が狙いをつけた先は……ジリジリと動く、黒い影。
 よく狙わずとも、敵の攻撃を気にせずとも良い状況ならば。放つ銃弾は次々と、蜥蜴の身体を射抜き、その動きを止めていく。
 ……敵の迷彩能力は、確かに大したものである。だが背景に溶け込んだ所で、その実体までが消えてなくなるわけでは無いのは当然の事である。
 スフィーエは、その事に当然気づいていた。故に彼女は空を翔び、その光の翼を輝かせて周囲を照らして、敵の実体が作り出した影を浮かび上がらせた。
 後は、その影を射抜けば。必然、蜥蜴の身体も同時に射抜かれる寸法である。
 ただ派手に目立つために、スフィーエはスタイリッシュなお姫様に変じた訳では無いのだ。

「──Be Gone! ……ってね」

 最後に残った一体の頭を、重力を宿すサーベルで兜割りに処して。刃に付着した血を振り落とす。
 その姿は妖艶であり、しかし凛々しくもあり。スフィーエ・シエルフィートという女性の二面性が垣間見れる一瞬であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アネット・レインフォール
▼静
さて、キチンと仕事はしないとな

…しかし天然の魔獣が相手というのも珍しい。
この世界の魔獣は食料目的だけではない。
皮や棘等も立派な素材となる筈だ。

だが…そうなると単純に討伐とはいかない。
最良で無傷、あっても少ない方がいいだろう。

そうなると――

し釣そ
よりう
う、だ


▼動
場所は川辺か湿地帯に着目

爆釣は兎も角だ。
物陰や泥に潜んでいる事を推測し
葬剣をルアー付の釣竿にして誘い出そう。
有効なら魚を餌にも検討。

ヒット後は【夢想流天】を流込むが前回とは一味違う。
範囲攻撃で周囲一帯を巻き込み釣果を上げよう。

肉に臭みが残る可能性を考慮し
血抜きぐらいはしておく

…まあ最悪、緋槍を投擲&ブッ刺し巻き取る手法も…

アドリブ歓迎





 し釣そ
 よりう
 う、だ
 。

 ……そんな台詞を言ったか言わなかったのかは定かでは無いが。
 次に釣り人アネットが選んだポイントは、清流の側にある湿地。
 川が増水した際に水が流れ込む、自然が作り出した遊水地の様な場所であった。

「……まぁ、爆釣は兎も角だ」

 (勇者の幻影達が)釣り上げた魚を捌き、その切り身を釣り針に通す。
 竿は愛刀を変じさせた物。その竿を振り被り……釣糸を、投げ放つ。
 飛んでいった糸と餌は、そのまま湿地の泥濘の上に浮かぶ。後はこのまま、根比べだ。

(……しかし、天然の魔獣が相手というのも珍しい)

 流れる静かな時間。そんな中で頭にふと浮かんだのは、今回の相手の事。
 普段はオブリビオンを相手とする事が中心の猟兵である。ただのモンスターが相手という今回の話は、中々珍しい部類であると言えるだろう。
 モンスター。魔獣。様々な呼ばれ方をする、この世界に原生する生物。彼らの存在は、一般人にとっては大きな脅威あると同時に、その生活を潤す重要な資源でもある。
 例えば、今回の相手である棘蜥蜴。肉は食糧であり、防火防水性の高い皮革はなめし加工を施せば立派な防具や日用品へと変わる。その特徴的な棘もまた、何らかの品の素材となるはずだ。

(だが、そうなると。単純に討伐とはいかないな)

 討伐するのは、簡単だ。だが獲られる素材を活用しようと言うのならば。
 ……出来れば、無傷。それが無理としても、可能な限り傷は少ない方が良いだろう。

(その為の、釣りなのだがな……)

 知らず、苦笑を浮かべるアネット。
 そう、アネットは別に遊びで釣りに興じている訳では無い。出来る限り棘蜥蜴に傷を付けずに討伐を果たす為に、釣りという手段を選んだのだ。
 ……いやまぁ、前回といい今回といい、釣果の通算記録が割と寂しい結果なのを気にしていないと言えば、嘘になるのかもしれないが。

(──む?)

 そうして暫く釣糸を伸ばして、どれ程の時間が過ぎただろうか。
 ピクリ、と。アネットの片眉が動いた。
 感じたのは、獲物を狙う狩猟者の意思。だがその意思が向けられているのはこちらでは無く、釣り竿の先。
 その意思の発生源は……湿地の泥中!

 ──ザバァッ!!

 アネットの直感が全てを見抜いたその瞬間、湿地の泥が爆ぜ上がる。
 泥の中から跳び上がったのは、紛うこと無き棘蜥蜴。どうやら泥中に潜み獲物を待ち構えていたらしい。
 勢いも鋭く、大口を開いて切り身に飛びかかる棘蜥蜴。だが、罠に掛かったのは相手の方だ。
 パクリ、と切り身を一飲みのすれば、アネットの握る竿に確かな手応えが生まれて。

「──漆式・夢想流天」

 刹那、握る竿に繋がる糸と針を通して流されたのは、熟練の剣士にして冒険者であるアネットが練り上げた特殊な闘気。
 痛みを伴わぬ静謐なる闘気は、敵の肉体を傷つけずにその生命のみを傷つける物。
 棘蜥蜴が針を飲み込んでいた事もあって、闘気は敵の体内深部に即座に浸透する。
 ビクリ、ビクリと痙攣する棘蜥蜴。だがそう時を置かずにその痙攣も止まり……あっさりと、その生命は断ち切られる事になる。

「悪く思うな……ん?」

 棘蜥蜴が動きを止めたのを認め、立ち上がるアネット。
 獲物を回収しようと動き出した、その時。泥中に蠢く何かを、アネットは見る。
 じぃっと目を凝らせば、蠢くその正体は棘蜥蜴の身体の一部。どうやら今の一体に通した闘気の余波で、身体の自由を奪われてしまったらしい。
 ……せっかくだ。泥の中で藻掻く連中も、獲物として確保させて貰うとしよう。
 
「……何にせよ、後は血抜きぐらいはしておくか」

 傷一つ無い棘蜥蜴の亡骸。その頸動脈を刃を入れて下処理を進める。
 ……魚の釣果はともかくとして。棘蜥蜴の駆除と確保という面では、アネットの挙げた成果は上等な物であると言えるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロエ・アスティン
【太陽の家】
無事、棘蜥蜴をおびき出せたみたいでありますね!
後々の為に、1匹残らず狩らせてもらうであります!

せっかくなので女神様から新しく賜った力を試してみるであります!
新しく覚えたUC【戦女神の戦士】を使い、戦女神様に仕えた英霊達を呼び出します!
英霊達には棘蜥蜴の頭や首などを狙ってもらい一撃で倒してもらいますね。

ザイーシャ様もサメ(?)を召喚されたみたいですね。
英霊の皆様、逃げられないようにあちらに蜥蜴達を追いやってくださいであります!

……それにしても、過去の英霊様達もスタイルよいでありますね(自分のするぺたーんなスク水姿を見下ろして溜息を))

※アドリブや連携も大歓迎


ミフェット・マザーグース
【太陽の家】のみんなといっしょ!
トゲトカゲ、ザイーシャの狙い通りに集まってきたね
村のヒトたちのためにも、ここでみーんなやっつけちゃおう!

UC【嵐に挑んだ騎士の歌】
クロエが応援の戦士をいっぱい呼んでくれたら、ミフェットは応援するよ
リュートを構えて「歌唱・楽器演奏・鼓舞」でトゲトカゲ退治を歌にしよう!

♪トゲトゲトカゲ トゲトカゲ
トゲのえりまき鋭くツンツン 大きなキバはガブガブガブリ
だけど弱点トゲトカゲ 首のつけねはトゲナシトカゲ!

どんどん出てくるトゲトカゲだけど、劣勢になったら逃げちゃうかも
ザイーシャが川の方から手招きしてるから、クロエといっしょに誘導しよう!

♪シャークコンダがガブガブガブリ!


ザイーシャ・ヤコヴレフ
●SPD
【太陽の家】

美味しそうなお魚の匂いに釣られて来たね…棘蜥蜴(カルゥチカ・ヤーシリツァ)
私もクロエのように、新しいUCで遊んでみようかな?
だって、今の私はサメの魔女(バーバ・ヤーガ)
シャークマンサーだもん

でも、うーん…どんなサメさんを呼ぼうかな?
あ、そうだ
鮫って、ミズチって読めるんだってね
でも、蛟って書いてもミズチなんだって
漢字の辞書でそう書いてあったよ

だから…うふふ
川のルサールカ、森のレーシイ
その加護を王蛇となってサメに与えて
シャークコンダ!

じゃーん
アナコンダみたいなおっきい蛇ザメさんだよ
ピット器官だったかな?
これでどんなに逃げたり隠れたりしても、【追跡】してどんどん絞め上げちゃうよ♪





 河原の一角に積み上げられた、川魚のワタ。
 そこから漂う生臭い匂いに、多くの棘蜥蜴達が吸い寄せられる様に集まりつつあった。
 ザイーシャが目論んだ誘き寄せの罠は、上々の成果を挙げられたと言っていいだろう。

「美味しそうなお魚の匂いに釣られて来たね、棘蜥蜴(カルゥチカ・ヤーシリツァ)」
「ザイーシャの狙い通り、だねっ!」
「後々の為に、一匹残らず狩らせてもらうであります!」

 その成果に満足気に笑うザイーシャ。ミフェットとクロエも、家族の挙げたお手柄に嬉しそうに笑む。
 後は、この森の周辺に住まう人々の為に。眼の前の厄介者である棘蜥蜴の群れを駆除しようとやる気は十分なご様子だ。
 ……とは言え、だ。

「……でも、ちょっと数がおおいね?」

 どうしよう、と小首を傾げるミフェット。
 ミフェットがそう言う通り、棘蜥蜴の数は両手両足の数を遥かに超えていた。どうやら森に潜んでいた残りの棘蜥蜴達が、此処に一斉に集まってきているらしかった。
 ……よくよく見れば、その大きさはまちまちだ。どうやら繁殖し、群れを大きくしている途中であったと見える。
 もう少し放置していれば、森中に棘蜥蜴が闊歩する事になっていたかもしれない。そうなれば、近隣の一般人に被害が出るのは避けられなかっただろう。
 実は割とギリギリのタイミングで、猟兵達はこの地に降り立っていたのだ。

「うぅーん……あっ、そうだ。こんな時こそ、戦女神様から賜った新しい力を試してみるであります!」

 とは言え、そんな事実は今この場にいる少女達には分からぬ事。
 まずは目の前の敵をどうするかべきか。唸り悩んでいたクロエであったが、何か良案を思いついたらしく表情が変わる。
 髪飾りに輝く聖印に触れ、次いで手を胸の前で組み合わせる。
 信仰する神へと、捧げられる敬虔なる祈り。口からは聖句が紡がれて……。

「──戦女神様に仕えし英霊達よ! 女神に仇名す者を断つ剣となれ!」

 ──エインフェリア!
 助力を希う呼び声が、声も高らかに天に響く。
 無垢なる少女のその声に、天に座す戦女神は快く応えるだろう。
 虚空に漂う聖気がより集まり、ヒトの形を作り出し……天使の翼持つ戦乙女の軍団が、顕れる。

「英霊の皆様! 無辜の民を守る為、その御力をお貸し下さいであります!」

 敬虔なる信徒であるクロエのそのお願いに、見目麗しい戦乙女達が武器を構えて突き進む。
 剣が、槍が、槌が……ありとあらゆる武具が、抜群の連携の下に振るわれる。
 その猛攻の前に、棘蜥蜴が抗う術は無い。驚き姿を晦まそうと目論む個体もいたりはしたが、無意味に終わる。

(これが、戦女神様の元に召された英霊の御力……!)

 圧倒的なその力を前に、クロエの胸に宿るのは強い憧憬。
 挑戦や困難に抗う者に加護を与える、戦女神。その信仰に生き、殉じた者達に対する、純粋な憧れだ。

(……それに、皆スタイルよいであります……)

 その力もそうだが、戦乙女達は皆凛々しく、そして美しい。
 対する自分はと言えば。悲しいかな、するぺたーん、という擬音が似合う体型である。
 思わず溜息が零れそうになるが……即座に首を振る。

(じ、自分だって、まだまだこれからでありますから……ッ!)

 そう、クロエはまだ14歳。成長期はまだまだこれからだ。
 諦めずに前を向き続ければ、戦女神もきっと加護を与えてくれる……と、良いなぁ。

(クロエの新しい力(ユーベルコード)、キラキラしてて、きれい……!)

 そんなクロエを他所に、奮闘する戦乙女達。
 纏う聖気をキラキラと輝かせる勇ましいその姿に、興奮したかのように目を輝かせたのはミフェットだった。

(クロエが喚んだ応援の戦士さんを、いっぱい応援しなくちゃ!)

 戦乙女の英霊達の働きは、まさに圧倒的。
 不利を悟ったか、姿を晦まし逃亡を図ろうとする棘蜥蜴のその動きも関係なしに、一方的に蹂躙し続けている。
 だが、それでも。万が一が発生して棘蜥蜴を取り逃がしてしまう可能性はゼロでは無い。
 この地に生活の糧を頼る、近隣集落の人々の為にも。棘蜥蜴は、一匹残らず仕留めねばならない。
 ……すぅ、と深く息を吸うミフェット。その手に構えたのは愛用のテナーリュート。
 張られた弦を爪弾いて、奏でられた音色に併せてソプラノボイスが詩を紡ぐ。

 ──トゲトゲトカゲ トゲトカゲ
 ──トゲのえりまき鋭くツンツン 大きなキバはガブガブガブリ
 ──だけど弱点トゲトカゲ 首のつけねはトゲナシトカゲ!

 ミフェットが歌いあげるその唄は、共感する者の力を引き上げる異能の力を秘めた唄。
 棘蜥蜴を仕留める戦乙女達の勇姿を称えるその内容を聞けば、当然戦乙女達の力は引き上げられる。
 ……一段と強くなった、戦乙女からの圧。それを受け続けている棘蜥蜴としては、堪らない。不利どころか勝機はゼロと悟り、本能の赴くまま我先にと。バラバラと逃走を始める始末である。

(あっ、ダメ! トゲトカゲが、逃げちゃう!)

 そんな敵の姿を目に、唄を続けるミフェットの表情に焦りの色が浮かぶ。
 戦乙女達は、圧倒的に強い。だけれど敵がこうもバラバラに逃げてしまえば、取り逃がす可能性が高くなってしまう。
 どうすればいいか、と。ミフェットの視線が周囲を探り……川の中に、勝機を見出す。

「英霊の皆様! あちらの方に、蜥蜴達を追いやってくださいでありますー!」

 その勝機を同時にクロエも見たのか。声を上げ、身振り手振りで戦乙女へと呼び掛ける。
 その求めに従う様に、戦乙女達は戦列を組んで蜥蜴を追い立てる。取り逃がした敵は……大丈夫、いないようだ。
 ……さてさて、その視線の先にいたのは。

「うふふ……」

 可愛らしいフリルの水着に、鮫を模した羽織り物を纏ったザイーシャだった。
 ……クロエが新たな力をお披露目したように、ザイーシャもまた新たな力をお披露目しようと考えていた。
 お誂え向きに、今の衣装はその力にピッタリだ。
 そう、今のザイーシャは『鮫の魔女(バーバ・ヤーガ)』。鮫を使役する者、シャークマンサーなのだ。

「川のルサールカ、森のレーシイ……」

 ルサールカ。スラブ神話に伝わる水の精霊。
 レーシイ。こちらもスラブ神話に伝わる、森の精霊。
 清流と森。この地に揺蕩う精霊たちの加護を、思い描いた鮫に籠める。
 ……ところで、鮫(サメ)という漢字は『ミズチ』とも読めるのだと、ザイーシャは先日漢字の辞書を読んで知ったそうだ。
 そして同じ『ミズチ』と読む漢字に、『蛟』という字がある事も、知ったのだとか。
 『蛟』とは、伝説上の蛇の事。そんな存在と、『鮫』は同じ読みが出来るのだから……。
 

「その加護を、サメに与えて王蛇として──シャークコンダ!!」

 いささか強弁の感は拭えないが、こんな『わたしのかんがえたさいきょうのサメ』だって、出来るという事である。
 じゃーん、と現れたのはザイーシャ曰く『シャークコンダ』。サメの頭にアナコンダの太く長い胴を持つ、その筋のヒトが大喜びしそうなデザインの鮫である。
 しかもこのサメ(と呼んでいいかは疑問だが)、蛇の特徴であるピット器官も標準搭載。どんなに姿を晦まそうと、天然のサーモグラフィの前では無意味である。

「いっちゃえ、シャークコンダ♪」

 牙を剥き、胴をくねらせシャークコンダが棘蜥蜴に挑みかかる。
 牙で切り裂き、胴で締め上げる。そんな様子を目にしたミフェットが。

 ──シャークコンダがガブガブガブリ!

 と唄を紡いだりしたものだから、その暴れっぷりは更に勢いを増していき……最早やりたい放題、と言った様子。
 その様子には、蜥蜴を追い立てた戦乙女達も流石に困惑を隠せない様子であった。
 ……ともあれ、棘蜥蜴達はこうして追い詰められ、戦乙女とシャークコンダの猛攻の前に一匹残らず駆除されたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『モンスターステーキ!!』

POW   :    がっつりワイルド。素のままで

SPD   :    大航海の味。胡椒を振りかけて風味を味わう。

WIZ   :    ソースをかけて。種類は千差万別。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 辺境の森林地帯に棲み着いた厄介者。『棘蜥蜴』は、猟兵達の活躍の前に一匹残らず駆除された。
 これで近隣集落に暮らす人々に、危険が及ぶ可能性は潰えた。人々の平和な日常は、守られたのだ。

 さて、これで猟兵達の仕事はとりあえずは終了である。だが今回のお話は、ここからが本番だ。
 川魚は、充分獲れた。森の恵みもしっかり確保し、メインとなる棘蜥蜴の肉も、不足はない。
 調理用のバーベキュー台も中々に立派な物が持ち込まれている。調理に支障も無いだろう。
 後は火を熾せば、準備は万端と。そう言って、問題は無いだろう。

 河原の一角に転移の光が輝けば、この場に皆を送り届けたグリモア猟兵が姿を現すだろう。
 彼女が抱えるのは、調味料や飲み物が詰め込まれたクーラーボックス。他にも色々と手荷物を持ち込んでいる様子が伺える。
 ……夏の太陽が、西の空へと傾いていく。夕暮れの日差しを浴びながら、お楽しみの時間が始まろうとしていた。

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●第三章、補足

 第三章は、日常章。むしろ今回の依頼はここが本番。
 戦闘後の河原でのお楽しみの時間となります。

 メイン食材は『棘蜥蜴』のお肉。
 現実の蜥蜴は割と鶏ささみ肉に近い、癖の無い食味であるそうです。
 とは言え、棘蜥蜴はファンタジーの生物。大柄でもあるので、色々と味を楽しめる事でしょう。
 その他、川魚や森の恵み(キノコ、山菜、果物)等の数も充分確保されています。
 また、飲み物や各種調味料などはヴィクトリアが用意しております。
 (酒類含め)大抵の物は用意してあるそうなので、お気軽にお声掛け下さい。
 但し、公序良俗に反する行為はマスタリング対象となります。その点のみご了承下さい。
 
 なお、上の理由で三章はヴィクトリアが待機しております。
 何か言いたいことがある方、交流してみてもいいかな、とお考えての方はお気軽にお声掛け下さい。
(特にお声掛けが無ければ料理に汗を流したりしています)

 感じる激しい戦いの予感。だけれど今は……のんびりと。
 皆様の楽しいプレイング、お待ちしております!

 ====================
鍋島・小百合子
POW重視
アドリブ絡みOK

一仕事終えた後の飯は格別よのう
ささ、腹いっぱいにごちそうに預かるとするかの

ほほう!これが蜥蜴の肉焼きか!
ほんに美味そうな匂いが漂うのう

……柔らかい食べ応えで…まるで鶏のてんぷらを食べているようじゃのう…うましうまし

お、ヴィクトリア殿。下ごしらえお疲れ様じゃ
よければ休憩がてらわらわの獲ってきた魚の串焼きを一緒に食べぬかえ?
大食いなれど一人で堪能するには心に腹が満たぬからの
塩を振りかけて食べるとよい味になるぞ
ヴィクトリア殿はどのような味が好みで?わらわにも教えてたもれ

ここ最近は戦続きであったが食べる時こそ至福の時間になれるのじゃ
そのくらいの余裕を持ちたいのう


鳳凰院・ひりょ
アドリブ&他の猟兵さんとの絡み歓迎

せっかくなので、ヴィクトリアさんと交流してみたいかな?
料理をしているヴィクトリアさんをお手伝いする
「俺も得意、というレベルではないですが料理は出来るので、手伝いますね」
1人で暮らしている関係で出来なくはないです、はい
まぁ、流石に血抜きとかは出来ないので、他の方がやってくださったのは凄くありがたかったけれど(汗

俺が取って来たキノコや山菜類も美味しく調理しなきゃね!
お酒は飲める年齢にはなったけど、今日は飲み物はお茶くらいがちょうどいいかな

自分も食べるけど、ヴィクトリアさんもせっかくだし食べてもらいたい
こうした機会に巡り合えた事に感謝しつつ楽しく過ごす


アネット・レインフォール
▼静
さて、食材は十分ある

BBQなのでキャンプ飯とはやや趣が異なるが
食事には少なからず気を使う。

猟兵が力を発揮する上で重要なものだからな。
問題は何を作るかだが…。

ここはアレを買ってきて貰おうか――

▼動
蜥蜴はスパッと捌くとしてだ。
折角だし色々な味を試したい所だな

アースに売ってる黄金印のタレや岩塩、
部位によっては生姜焼きやタルタルもいいだろう。

流石のヴィクトリアも調味料の種類までは
用意してない気がするので伝えておく。
調味料を受取ったら手早く焼き上げて
酒で乾杯し次の戦いに備えるとしようか。

余った食料や素材があれば近隣の村へおすそ分けにでも。
別世界の調味料を使った料理の反応とか見てみたいしな

アドリブ歓迎


スフィーエ・シエルフィート
・WIZ
※アドリブ・絡みOK

やれやれ、ようやっと終わりかね(銃とサーベルを収めながら)
暴れるのは久々だから少し疲れたが、無事に倒せたようで何よりさ

さて、何度か報告書では見たが実際に食べるのは初めてなのだよね
まずは焼いてそのまま味見しておこう
……ふむ、確かに良くも悪くも癖がないね
沢山動いた後だ、塩気が欲しいから味の濃いソースでも掛けて楽しもう
勿論、合間に野菜も挟んでおくことも忘れずにね
合わせるものは川の水で冷たく冷やした赤ワインあたりかね

あとはヴィクトリア君も労わねば
焼いた肉と野菜でも差し出しながら、ね
「お疲れ様。君も転送周りの諸々で大変だったろう。しっかり休んで英気を整えてくれたまえよ」


クロエ・アスティン
【太陽の家】
ふぅ、棘蜥蜴が大量でありますね。これだけあればお腹いっぱい食べられそうであります!
料理はそこまで得意じゃないですがお手伝いくらいはできるでありますよ!

バーベキューの準備が完了したらヴィクトリア様もお呼びして、女神様にお祈りしていただきます!
はふはふ、肉汁が滴って非常に美味しいであります!

お肉を堪能していたらミフェット様が山盛りでおかわりを……?
えっ?英霊様達みたいに……?うぅぅ、ミフェット様の無垢なやさしさがつらいであります(涙目)
(ちらっとヴィクトリア様やザイーシャ様なんかもみて)やけ食いです、これはもうやけ食いするしかないであります!

※アドリブや連携も大歓迎


ミフェット・マザーグース
おにく、おにく♪ おさかな、トカゲ♪
ヤサイにキノコも一緒に焼こう!
とくせいソースをたっぷりつけて、バーベキュー味のできあがり!

WIZで判定
持ち込んできたバーベキューセットを展開して「料理」!
クロエの戦乙女がやっつけてくれたトカゲのお肉をザックリ準備
ザイーシャが下ごしらえしてくれたお魚と一緒に、もりもり焼いていくよ
ヴィクトリアや【太陽の家】のみんな、他の猟兵さんにもドンドン振る舞おう!

あっ、そーだクロエ! はい、お肉だよ! 大盛り!!(どーん)
えっとね、女戦士さんたちのこと……ほら、クロエ見てたから……
いっぱい食べたら、クロエもあんな風にドーンっておっきくなれるよ!

あ、ザイーシャちゃんも、ほら!


ザイーシャ・ヤコヴレフ
●WIZ
【太陽の家】
キノコ、山のお野菜、果物かぁ
ねぇねぇ、クロエ、ミフェット
これで美味しいソースを作ってみようよ
お料理はソースで決まるって、お家にあったお料理の本にも書いてあったし、これでヴィーシャにご馳走を作ってみない?
じゃあ、クロエはヴィーシャを呼んできて、ミフェットはお肉を焼く準備
私はお肉の下拵えとソース作りだね

えーと…確か最初はお肉を叩いて柔らかく、だったかな?
魔法のナイフをウォーハンマーに変えて叩いちゃえ
次は香辛料を振りかけて下味を…あれ?
お塩と胡椒、どっちが先だったかな?
お肉が馴染んでいる間に、ソースを魔女みたいにお鍋で作って…うーん、こんな感じかな?
(味と出来栄えはダイス判定)





「おにくっ、おにくっ♪ おさかなっ、トカゲ♪」

 夕暮れ時の日差し、川面を抜ける涼風、軽やかな少女の笑い声。
 お楽しみの慰安の時間に、ミフェットの口からは楽しげな唄が紡がれる。
 持ち込んだバーベキューセットには、先程確保したトカゲ肉がどっさりと。
 川魚や山菜、キノコも併せれば。焼台の上は実に賑やかな様相であった。

「棘蜥蜴が大漁でありますね!」

 これだけあれば、お腹いっぱい食べられそうであります!
 そう語るクロエの顔も、満面の笑み。料理はそこまで得意では無いがお手伝いくらいは出来ると、水着の上にエプロンを纏ってやる気充分である。

「……うーん」

 そんな楽しげな二人を横に、ザイーシャが唸る。
 その目が見つめるのは、キノコ、山菜、そして果物。森の恵みは簡単な調理で充分美味しく頂けるのは、間違いないだろう。
 だが、しかしだ。それでは少々味気がないように、ザイーシャに感じられていた。
 ……身寄りの無い自分達を快く自宅に住まわせ、優しく見守る母親代わりの彼女の様に。
 これらの食材に一手間加えて、美味しいご馳走にする事が出来れば……。

「……ねぇねぇ、クロエ、ミフェット」

 二人の名をザイーシャが呼び、続けて案を提じれば。クロエとミフェットも、笑顔でその提案に乗ってくれるだろう。
 太陽の名の元に集う、三人の少女。さてさて、彼女達は一体何を作ろうと言うのか……。

(……三人だけで、大丈夫でしょうか?)

 そんな三人を心配そうに横目に見つつ、ヴィクトリアの手は止まらない。
 捌かれた肉に塩胡椒や各種ハーブに調理酒、タレなどで下味をつけつつ、持ち込みのアルミホイルを広げて川魚と山菜、バターを一纏めに包んでいく。どうやらホイル焼きを用意するつもりらしい。
 迷いと無駄の少ないその動き方は、料理に慣れている人間のそれである。

「俺も得意、というレベルでは無いですけど。料理は出来るとは思ってたんですが……」
「あぁ、中々の手際の良さだ」

 一人暮らしであるひりょであるから、ある程度の料理の技量はある。
 故に、お手伝いにとヴィクトリアの隣に立った訳だが……彼女の明らかに手慣れているというその動きに、その口からは思わず驚きの声が零れ落ちた。

「ふふ。まぁ、私は家族の分をやらなければいけない立場ですから。慣れ、でしょうね」
「そうだな。何事も慣れ……経験が、肝要だ」

 そんなひりょの驚きに、ふわりと笑むヴィクトリアが答えれば。反対側で蜥蜴肉の血抜きや解体など言った下処理に汗を流していたアネットもまた、同意するかのように頷きを返す。
 慣れ、経験。経験を積み重ねる事でヒトは学習し、その物事に最適化した思考や視点、体の動きを作る事が出来るのだ。それは、猟兵の戦いにも通じる要素である。
 理外の力のぶつけ合いである猟兵の戦いにおいて、重要なのは発想力。その力をどの様に使うかが、まず問われる事になる。
 だが、しかし。間近に迫るような大戦においては、小手先の発想など意味を成さぬ強力な力を振るう敵が相手となる事も、多々あるのだ。
 そんな時に猟兵を支えてくれるのが、過去の経験だ。積み上げた経験で、発想力を支える土台を固めれば。圧倒的な暴威に晒されようと、そう簡単に崩される可能性は大きく減じるのだ。
 ……今日の棘蜥蜴との戦いで、ひりょはその発想力の片鱗を示していた。だからきっと、今日の経験、次の経験と積み重ねれば。遠からず、精鋭の列に名を連ねるのは間違いない。
 故に、ひりょには今後も経験を積み重ねて。一歩一歩、着実に歩んで欲しい物である。
 ……とは言え、だ。経験というのにも色々種類があるもので。

「……血抜きの経験とか、してみるか?」
「いえ、それは、ちょっと……遠慮しておきます」

 アネットの唐突な誘いには、流石のひりょも冷や汗を浮かべつつ固辞するしかない。
 まぁいきなり蜥蜴の血抜き体験とかはハードなので、致し方なしであろう。
 そんなひりょの反応に残念そうな表情を見せるアネット。だがすぐに気を取り直し、下処理を進める手を動かしていく。
 食事とは、生命が生きる以上欠く事の出来ない要素である。
 だが、ただ食事を摂るだけではいけない。旨い食事、楽しい食事でなければ、ヒトの心身は癒やされないのだから。
 ……猟兵も生命である以上、そこを妥協してはいけないとアネットは考えていた。腕利きの戦士は、少なからず食事に気を使うものなのだ。
 故に、ヴィクトリアもその辺りに手を抜くことは無いとは思っていたのだが。

(……それでも、ここまで色々と調味料を取り揃えているとはな)

 ヴィクトリアはアックス&ウィザーズ世界出身であり、今もこの世界に居を構えているという事を、アネットは先日聞いていた。
 故に、ヴィクトリアの手元にはこの世界基準の調味料くらいしか無いだろうと予想し、他の世界にちょっとした買い物をお願いするつもりであったのだが……。
 そんなアネットの予想は、いい意味で外されたのだ。

「黄金印のタレに、岩塩。醤油に味噌に調理酒、バター、ミックススパイスに……他にもあるのか」

 持ち込まれた調味料は、見たことのあるパッケージの物やそうでもない物など。良く言えば多種多様、悪く言えば雑多に取り揃えられていた。
 聞けば、ヴィクトリアが家で面倒を見ている少女達にはアース系世界出身の者もいるそうで。彼女達の為にアース系世界の味を学ぶ内に、色々と増えてしまったのだとか。
 ……更に深く聞けば、彼女の家には業務用発電機が常備され、限定的ながら家電も使えたりする事実が判明したりもするだろう。
 順調にアース系世界からの文化侵略を受けているらしい、そんなアイニッヒ邸の家庭事情であるが。まぁそこは、今回の話とは関係ない所である。

「と、とにかく。下準備も終わりましたし、焼いていきましょうか?」

 家庭事情を暴かれつつある事に謎の羞恥を覚えたか。恥ずかしげに頬を薄紅に染めたヴィクトリアが、炭火で加熱された網の上に肉を敷く。
 じゅぅぅぅ、と響く音。肉の脂と漬け込まれたタレが加熱されれば、食欲を刺激する煙が立ち昇る。

「おぉ、ヴィクトリア殿。下ごしらえ、お疲れ様じゃ」
「やれやれ、ようやっと終わりかね」

 そんな香りに引き寄せられるかのように、川辺にいた小百合子とスフィーエが歩み寄る。
 小百合子の手には、串打ちされた先程獲った川魚。どうやら今の今まで川辺で下処理を進めていたらしい。
 後で一緒に食べぬかえ、と笑顔を浮かべる小百合子の申し出には、では一段落しましたら、と微笑むヴィクトリアである。
 スフィーエの側はというと、「暴れるのは久々だから少し疲れたよ」と苦笑を浮かべつつ、その手には清流に冷やされた赤ワインのボトルが握られていた。
 双方、川辺のバーベキューを楽しむ準備は万端と言った様子である。

「お二人も、お疲れ様でした。さぁ、どんどん焼いていきますから遠慮なくどうぞ?」
「ほほう! これが蜥蜴の肉焼きか! ほんに美味しそうな匂いが漂うのう」

 そんな小百合子とスフィーエの様子に労いの微笑みを浮かべつつ、ヴィクトリアの手は止まらない。
 味をつけた肉にはしっかりと火を通す。台の脇に置かれたホイル包みからは溶けたバターの芳しい香り。フライパンでは山菜とキノコが炒められ、目に鮮やかな彩りを添えている。
 どれもこれも、美味しそうではあるが……今日のメイン中のメインは、棘蜥蜴の肉。
 では遠慮なく、と一言断って。小百合子がシンプルに塩で味付けされた肉を一切れ箸で掴み、口へと運ぶ。

「……むぅ、柔らかい食べ応えで……まるで、鶏のてんぷらを食べているようじゃ」
「ふむ、確かに淡白で……良くも悪くも、癖がないね」

 味を確かめる様に噛み締める小百合子。
 棘蜥蜴のその肉は、牛や豚の様な癖も無く、柔らかく淡白な味わいだった。
 とは言え、旨味が無い訳でも無い。噛み締めれば肉の繊維は解れ、その中の旨味が感じられる。
 その味わいに近い物を上げるとすれば、小百合子の言う通り。鶏むね肉を使った鶏のてんぷらの様な味わいであった。
 同じ様に蜥蜴肉を口に運んだスフィーエも、味を確かめるかのように目を閉じ頷く。
 スフィーエが口にしたのは小百合子が食した部位と比べるとより淡白な部位。
 脂肪の風味が少なく癖のないその味わいは、鶏のささみ肉に良く似ている。

「……成程。何度か報告書では見たが、実際に食べるとこういう感じなのだね」

 グリモア猟兵としてスフィーエは数度、棘蜥蜴の関わる案件に関わった事がある。
 とは言え、実際に食すのは今回が初めてだ。味わい、食感、口腔を満たす香り。
 その全てを確かめて、飲み込んで。開かれたスフィーエの知性に溢れる瞳は、また一つ未知を知れたという様に満足げな光を浮かべていた。
 ……さて、基本的な味は知れた。ではこの肉には、どんな味が合うだろうか。いや、今日は沢山動いた後であるし、まずは塩気を欲しがる身体の欲求に従うのも一興だろうか。

「ヴィクトリア君、今度は味の濃いソースの物が良いかな。あぁ、野菜も忘れずにね?」
「おぉ、では妾も同じモノを頂こうかの!」

 スフィーエからのリクエストを聞き、笑顔でかしこまりましたと返すヴィクトリア。
 小百合子の注文も同時に受ければ、焼台に更に肉が乗って音が鳴り、香りが漂い食欲は更に刺激される。
 漂う香りはスパイスとニンニクの風味がガツンと聞いた、アース世界で定番の調味タレ。
 その香りを嗅げば、スフィーエと小百合子の目には興味深そうな色が浮かぶだろう。

「俺達も食おうか。飲み物はどうする? 酒は飲めるか?」
「あぁ、いや。お酒は飲める年齢にはなったけど……今日はお茶くらいがちょうどいいかな」

 そんな女性二人の食事横に、年若い男達も動き出す。
 クーラーボックスから酒とお茶を取り出し、乾杯と打ち付け合うアネットとひりょが、それぞれに肉を頬張り言葉を交わす。
 経験豊富な練達の剣士であるアネットと、猟兵の道を歩み出したばかりのひりょ。
 出身も経歴も、まるで違う二人であるが。どうやらこの場を介する事で、それなりに打ち解けられているようだった。

「ヴィクトリア様、ヴィクトリア様っ」
「……あらっ、クロエさん? 何かありましたか?」

 猟兵達の楽しげな食事と交流を、微笑みを浮かべて見守るヴィクトリア。
 そんな彼女に声を掛けたのは、ハーフドワーフの神官少女、クロエであった。

「実は……ザイーシャ様の提案で、ヴィクトリア様に御馳走を作ろうと!」

 先程、クロエ、ミフェット、ザイーシャと。三人で肩を寄せあい相談していたその内容。
 それは、日頃自分達のお世話をしてくれるヴィクトリアの為に、御馳走を作ろうという提案であった。
 掃除、洗濯、炊事。そして猟兵としての仕事。ヴィクトリアが日々多忙である事を、三人は良く知っている。
 だからこそ、この機会に日頃のお礼をと。三人のその心遣いに、ヴィクトリアの頬が緩む。

「……ふふっ、そうですか。でしたら、是非とも頂かないといけませんね?」

 クロエに手を引かれ少女達の使う焼台へと足を運べば、そこには満面の笑みを浮かべるミフェットと、一仕事を終えたという様に汗を拭うザイーシャの姿。

「ヴィクトリア、いつもお疲れ様っ!」
「ヴィーシャ、ほら、食べて、ねっ?」

 二人の少女が勧める皿の上には、平たく叩かれ伸ばされた蜥蜴肉に、果物が香るソースが掛けられた一皿。
 ……正直、見た目にはよろしくない。叩かれた肉は完全に潰れており、下味の付き具合も疎ら。市販のタレに果物を追加したソースも果物の主張が若干強く、肉と合わせると味のバランスが崩れてしまう出来である。

「どう、ヴィーシャ。美味しい?」
「えぇ。ありがとうございます」

 だが、それでも。味はどうかと尋ねるザイーシャに答えたヴィクトリアの表情は、微笑みのままだ。
 味の善し悪しは二の次。少女達が自分の事を思って作ってくれた料理という、その心意気こそがヴィクトリアにとって何より嬉しい物であるからだ。
 その答えを聞けば、三人の少女はお互いに笑顔を浮かばせて。手を叩きあって、喜び合って。
 そして母と慕う女を囲い、賑やかに食事を始めるだろう。
 ……今、クロエがヴィクトリアとザイーシャに視線を向けて涙目になった。手の持つ皿にはミフェットが山盛りに盛った肉の山。
 どうやらいっぱい食べれば大きくなれるよ、と。ミフェットの無垢な善意による一刺しを受けたらしい。
 うわぁん、と泣きながら肉を貪るクロエの姿は……まぁ、家族の内の団欒の一幕、と言って良いだろう、うん。

 ──猟兵達は、識っている。この平穏なひとときは、もうすぐ終わるだろうと言う事を。
 迫りつつある戦いはきっと、過去に類を見ない程に厳しい物になるだろうと言う事を。
 だからこそ、この平穏なひとときを。同じ物を食べ、飲み、言葉を交わし……今日という機会に、感謝を抱くのだ。

 迫りつつある、大戦の空気。
 その空気をひしひしと感じつつも……今、この時だけは。猟兵達は、穏やかな時間を満喫するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月02日


挿絵イラスト