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星往く河に花束を

#アックス&ウィザーズ #戦後 #挿絵

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#戦後
#挿絵


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●残夏の気配
 少女は一枚の紙を差し出した。
「宝の地図」
 そしてそれを集まってくれた人数分、机の上に置いた。量産されていた。
 少女──トスカ・ベリル(潮彩カランド・f20443)はこっくりと肯いた。
「宝、の正体は、一夜だけ姿を現す、妖精達の町。……という、伝説」
 実に曖昧な説明に、怪訝な視線が返るけれど、トスカは一顧だにしない。だってぜんぶ言っちゃったらつまらないでしょう? と。
「簡単に言うと今回の依頼は、『遊びながら探して』、『戯れながら戦って』、『楽しみながら散策する』の」
 だから気軽な気持ちで来ていいよ、と。
 トスカは浅瀬色の瞳を瞬いた。
「スタート地点は河。浅くてひろーい河なの。川底は丸くてやさしい石。深さは膝より下ってところかな。その河──アイウォーラ川、って名前なんだけど。アイウォーラ川に、花が咲くの」
 形としては桔梗のような、けれど色合いは様々らしい。
 川端であろうと、水底であろうと構わず咲くその逞しい花を集めて欲しいのだと、少女は言う。
「いくつか集まったら、お花と星が大好きな妖精さん──オブリビオンなんだけど──が現れる。引き続き浅瀬での戦闘になるから、鬼ごっこを楽しんでもらえたらと思うよ」
 もちろん、ユーベルコードを使う必要はあるが、
「綺麗な効果のユーベルコードを見せてあげれば、結構満足して消えるみたい。もちろんオブリビオンであることに変わりはないから、普通に倒してもらっても構わないよ」
 疑似生物である彼女は容赦がない。
 それでね、と一向に気にする様子なく話を続けた。
「妖精さん達がみんな水に還ったら、不思議な港町への道が拓けるんだって。辿り着く頃には夜になってるかもね」
 つまり宝探し中の時間帯は『夕方』ということになるが、照りつく太陽の陽射しはアイウォーラ川近辺の気温はまだまだ真夏日だ。例え夕方でも夜になっても、寒いということはないだろう。
「不思議の町。どんなだろうね」
 ちいさく笑って、トスカは告げる。楽しみだね、と。


朱凪
 目に留めていただき、ありがとうございます。
 水辺大好き、朱凪です。

 まずはマスターページをご一読ください。

▼OP補足
 1章についてはOPのとおり。追加情報はありません。
 2,3章については幕間を追加しますのでお待ちください。
 水着やら濡れても良い格好でのご参加を推奨します。濡らしたりします。ただしラッキースケベ等は描写しませんので期待しないでください。

▼進行
 ゆっくりのんびりペース。
 【 https://tw6.jp/club/thread?thread_id=40083&mode=last50 】にて募集期間等ご案内しますので、ご確認いただけましたら幸いです。

▼その他
 3章のみ、お誘いを受けた場合に限り、トスカも同行できます。

 では、水辺を満喫するプレイング、お待ちしてます。
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第1章 冒険 『古びた宝の地図』

POW   :    怪しいところを片っ端から探す

SPD   :    広く浅く手がかりから探す

WIZ   :    じっくり検討してピンポイントに探す

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

都槻・綾
f01136/オズさん

宝石めいた飛沫に
ひかり揺らめく水面

底まで透けて見える澄んだ流れへ
川縁からそっと手を浸し
指先を清涼に染む

呼ばう声は日向のあなた

えぇ
今――、

参りますと
眩げに双眸を細めて合図を返す
一幅の絵画の如き景色とひとつになれるのなら
濡れるのを厭うはずもなく
上衣ばかり脱いだ水干袴で水の世界へ

掲げてくださった青磁の星に破願
オズさんから零れる笑顔も
きらきら、綺麗

天の川を渉れるなんて
童話の中に飛び込んだみたいですねぇ
織姫や彦星もこんな風に
胸を弾ませながら逢瀬を重ねたのかしら

問いに笑んで応えるのは
勿論、

――ぽかぽかな蒲公英色

ふたつの彩りを集めて花束にしましょう
きっと
あなたと手を繋ぐような
温かな心地


オズ・ケストナー
f01786/綾

わあ、花がたくさんだっ
地図仕舞い靴を脱いで袖を捲り
よーしっ
川の中へ

アヤ、きもちいいよっ
手招く
ぬらしたらたいへんな服だって考えるより先に
アヤならきてくれるって思ってたから
近づく声が嬉しい

川から摘むのは青磁に似た色
アヤの色のおほしさまっ
雨に濡れた後みたいに雫が落ちるのもきれいで
ふふ、と満足気

星の揺れる川眺め
空じゃないけど、あまのがわだねっ

わくわくな気持ちならきっと織姫と彦星にだって負けてない
優しい笑みにつられるばかり

アヤはほかにどんな色がほしい?

せっかくだからアヤのすきな色をあつめたい
答えにぱっと浮かべる喜色
うん、うんっ

みーつけたっ
二色ならべて顔見合わせ
零れる笑顔にぽかぽかになって



●慫慂
 水の流れる音。
 浅い瀬特有の跳ねるような澄んだそれは胸の裡をくすぐっていくみたいで、都槻・綾(糸遊・f01786)は緩く口角を和らげた。
 指先を水面にくぐらせてみたなら、ちゃぷちゃぷと強くはない水流が茜色に染まり行く空とは裏腹に涼を届けてくれる。
「アヤ、きもちいいよっ」
 明るく晴れやかな声にいざなわれて顔を上げたなら、黄金と赤橙の混ざり合う空の下、透明な雫の弾ける浅瀬の中で、ほわり笑って手招く姿。金糸の髪にあたたかな色が差してそれはまるで、一幅の絵画。
 オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)の呼び声に綾は目を細めた。
「えぇ、今──、」
 水干袴もそのままに足を踏み出したなら、ひとの身を得て初めて温度を知った膚に水の感触が面白い。
 濡れたら大変な衣服だとかそんなことを考えるよりも、彼ならきっと同じ場所へ並んでくれると知っていたからこそ嬉しい。やわく笑ったオズはふと我に返った。
「わ。アヤ、アヤ、ぬれちゃうよっ?」
「ああ。本当ですねえ」
 自らは靴も脱いで袖も捲った姿だ。口許に両手を添えて言うけれど、当の綾はまるで気にした様子もない。
 すぐ傍まで来た彼の袴は既にじっとりと水を吸って動きにくそうではあるけれど、最早それも彼らしいとオズは気にしないことにして両手を広げ周囲を示す。
「ね、みてみてアヤっ。おほしさまみたいな花がいっぱいだよっ」
 空じゃないけど、あまのがわだねっ。
 つられるように川の中腹で見渡したなら、「あぁ──」川縁に点々と咲く桔梗のような花々が種々の色合いで水中にも揺れているのが見える。
「天の川を渉れるなんて、童話の中に飛び込んだみたいですねぇ。織姫や彦星もこんな風に胸を弾ませながら逢瀬を重ねたのかしら」
「アヤもわくわくする? わたしもね、とってもわくわくしてるよ」
 それはきっと、織姫と彦星にだって負けないくらい!
 だって懐に仕舞ったのは宝の地図。
 逢っておしまいじゃない。出逢いの先にあるのは別れじゃない。
 零れる笑みを隠す必要もなく。そっとその先にあるはずの新しい出逢いに想いを馳せたオズのキトンブルーが見付けたのは、
「! アヤの色のおほしさまっ」
「私の?」
 ぱしゃんと水柱を立てて、逃げるはずもない星を捕まえる。そうして水から連れ出した星は青磁色。雨降りのあとみたいに雫が滴るのもきれいで。
 差し出して見せる花も、ふふと誇らしげな彼の笑顔も、眩しいくらい。
「アヤはほかにどんな色がほしい?」
 折角ならきみのすきな色を集めたい。そんな想いもまっすぐに伝わるからこそ胸に届くぽかぽかを──あなたにも。
「──ぽかぽかな蒲公英色」
 綾の応えにぱあっと笑顔を咲かせたオズは「うん、うんっ」張り切って星の河へと向き直る。
 ふたりで水底へと視線を凝らして幾許か。みーつけたっ、と見付けた星を寄せたなら。
──私の彩りも蒲公英色と並んだなら、こんなにあたたかな気配になるのですね。
 欠けたままの綾とまるで手を繋ぐような心地が包み込む。隣のオズへと顔を見合わせたと同時にどちらからともなく咲いた笑みは、花束よりも鮮やかで晴れやかだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネムリア・ティーズ
ボクも準備してきたよ
水にふれるのはだいすきなんだ

夏に仕立てて貰ったばかりの水着を翻して
はじめて見る大きな川に、そっと足首をひたす
ひんやりして気持ちいいな

流れる水はきらきらしているんだね
それに涼しいおとがする

知らないものばかりの宝探し
新しい物語をひらくみたいで、わくわくがとまらない
妖精たちの町はどんな風かな?

あ…花を探して集めるんだった
ふまないように気をつけないと

金色のひかりがたゆたう水面に目をこらすと
水底を彩る星の花がみえた
目にとまったのは夕暮れ色にも染まらない
雲のような真白の花

…つんでしまうのはかわいそうだけど
集めるのなら、すきないろがいいから

なるべく少なく済むように小さな花束をつくりたいな


リリヤ・ベル
たからさがし。たからさがしなのです。
レディたるもの、すてきを見つけるのはお手のものですとも。
普段よりも軽いワンピースに、麦わら帽子をきゅっとかぶって。
川の縁から、たからさがしをはじめましょう。

素足でまるっこい石を踏みながら、おはなを探して、てくてくと。
じいっと地面を見つめてもふしぎとみつからないのに、
気を緩めると視界の端に咲くのです。
見失わないよう、そうっと掬ってゆきましょう。

花に目が慣れてきたら、今度は浅瀬に足をひたして。
水のなかにきらきらと沈んでいるすがたは、ほんとうに宝物のよう。
ふしぎな場所には、ふしぎなおはなが咲くのです。
もっともっとおおきなふしぎまで、連れて行ってくださいましね。



●きらきら
 ふうわりと白緑のワンピースが風を孕んで泳ぐ。
 小さな両の手できゅっと広い麦わら帽子のつばを掴みリリヤ・ベル(祝福の鐘・f10892)は広がる光景へと大きな瞳を輝かせた。
──たからさがし。たからさがしなのです。
 帽子の上に飛び出した三角の耳がぴるぴると揺れる。
 僅か飛沫の届く、川縁のまるっこい石の上を素足で踏み少女はふかふかの尾を揺らす。
「レディたるもの、すてきを見つけるのはお手のものですとも」
 胸を張って宝の地図から顔を上げたリリヤの前で揺れた白。セーラー服をベースにしたフリルの水着。リリヤの視線に気付き振り向いたのはネムリア・ティーズ(余光・f01004)。
「……やあ。キミも、宝探し?」
「ええ、そうなのです。けれど」
 くてり首を傾げて続きを促すネムリアに、むむむとリリヤはむずかるように首を振って見せた。ミルクティ色のふわふわな髪が揺れる。
「じいっと地面を見つめてもふしぎとみつからないのに、気を緩めると視界の端に咲くのです。だから」
 見失わないよう、そうっと掬わないといけないのです。
「そうなんだ」
 ちいさな少女の言葉をまっすぐに受け止め、ネムリアは宵空色の瞳を瞬いた。短い相槌の中に感嘆を滲ませて、気をつけるねと肯く。
 そうして向き合うのは広く大きなアイウォーラ川。ネムリアにとってこんな大きな川を見るのも初めてだ。そっと足首を浸してみたならさらわれていく熱に、ちょっぴり驚いたあと口許が緩む。
──ひんやりして気持ちいいな。
 水に触れるのはだいすきだ。
「流れる水はきらきらしているんだね。それに涼しいおとがする」
 新しい物語の頁を繰るようなわくわくが止まらない。少し水を蹴ってみたら、夕焼けを受けてあたたかな色に弾けた。それが綺麗で、何度か繰り返す。
「あ……。花を探して集めるんだった」
 思わず夢中になってしまった己を思い出して、ネムリアは踏まないように気をつけないと、と水面へと目を凝らした。膝まである長い銀糸が水面に流れて煌めく。さっきの少女が教えてくれた言葉を思い返す。そうっと、そうっと。
「……あ」
 水滴を零しながら手に咲いた星は、夕暮れ色にも染まらぬ雲のような真白。
──……つんでしまうのはかわいそうだけど。
 集めるのなら、すきないろがいいから。
「ボクのところに来てくれて、ありがとう」
 僅か瞼を伏せて摘んだ花にそう告げて。そう言えばやわらかな色合いの少女も星を手にすることが出来ただろうかと振り返った川縁では、ひたりと少女も水に足を差し入れたところだった。
 ぴぴぴっと震える耳を微笑ましく見遣って、ほんの少しだけ浅瀬の歩き方に長じた娘はリリヤへと手を差し伸べた。レディたるもの、お礼はきちんとお伝えして。
 重ねた手に引かれて少しずつ進む川の中。目を凝らしたなら川縁で風に揺れていたのと同じ花が、きらきらと水底に揺れている。
──ほんとうに宝物のよう。
 転ばないように、気を付けて。そうっと摘んだのは碧色の星。
「ふしぎな場所には、ふしぎなおはなが咲くのです」
 ぱちぱちと瞳を瞬くリリヤにネムリアも更なる『ふしぎな場所』へと想いを馳せる。
「妖精たちの町はどんな風かな?」
 こっくり肯いてリリヤも、碧の花を額に当てた。
「もっともっとおおきなふしぎまで、連れて行ってくださいましね」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レイッツァ・ウルヒリン
ティアさん(f26360)と

急がなくてもお花は逃げないよ、ゆっくり探そう
っとと、大丈夫?レディ(転びそうになった君を抱きかかえる様に支える)
ジェントル僕です、えへん

本当に色とりどりで綺麗だなぁ、見惚れちゃうね
今日は誘ってくれてありがとう
こんな綺麗な光景を、君と見れたのが嬉しいや
(何に見惚れたか、なんて野暮な事は言わないで)

水を掛けられて僕も負けじと水を飛ばす
といっても、女の子に水をかけるなんてそんな意地悪はできないから控えめに
君を濡らすのは飛沫と僕だけでいい

んー、僕はピンクの花を探そうかな
なんでかって?ふふ、秘密
見つけたら一凛摘んで君の耳元へ運びふふっと笑う
宝物なんて、案外近くにありそうだね


ティア・メル
レイッツァちゃん(f07505)と

レイッツァちゃん!すごいよ!綺麗っ
ぱしゃぱしゃと遠慮なく川に足を浸して
っんに!
間一髪だったよ…!
えへへへ、ジェントルマンだね
助けてくれてありがとう

君の体温に浸っていたいけど、お仕事お仕事っ
んーん、ぼくがレイッツァちゃんと来たかったから
ご一緒してくれてありがとう

流れる水が冷たくて心地良くて
悪戯心がむずむず
少しだけ掬って、えい
わわわ!水も滴る良い男だね
いつだってかっくいーけどさ
ふふふーぼく、せせらぎとレイッツァちゃん彩になってるのかな

ぼくは薄紫色
理由はお互い内緒だね
花を抱え一輪だけ君の耳上辺りに
お揃いっ
幸せで楽しくて、頬は緩みっぱなし
これ以上の宝物ってあるのかなー



●涼雨
「レイッツァちゃん! すごいよ! 綺麗っ」
 揺蕩う海色の瞳に水面の反射をめいっぱいに宿し、ティア・メル(きゃんでぃぞるぶ・f26360)は飛沫を蹴立ててぱしゃぱしゃと川へと駆け込み、くるりと振り返った。
 ──と。
「っんに!」
 川底は丸くてやさしい石。濡れた素足は捉え損ねて橙の空もくるりと回った。
「っとと」
 ぱたぱたぱた、とティアが蹴上げた雫の落ちる中、しっかと背に回された掌のぬくもりと力強さ。さらりと顔のすぐ傍で流れた赤紫。
「大丈夫? レディ」
「か、間一髪だったよ……!」
 悪戯っぽく片目を瞑って見せたレイッツァ・ウルヒリン(紫影の星使い・f07505)に、どきどきする胸を押さえてティアは背中につきそうな水面をちょっぴり振り返ってから、離れていく体温を僅かに惜しみつつもにっこり笑って改めて足を水に浸した。
「えへへへ、ジェントルマンだねっ、助けてくれてありがとう」
「ジェントル僕です、えへん」
 だからお手をどうぞ? なんて。お嬢さんに改めて手を差し出して。
「急がなくてもお花は逃げないよ、ゆっくり探そう」
「ん、そうだね!」
 ふたりでゆるりと確かに進んでいく、水流の中。
 ゆらゆらと踊る星型の花々は鮮やかで。
「本当に色とりどりで綺麗だなぁ」
 見惚れちゃうね。
 ぽつり零してちらりと盗み見るのは、濃桃に縁どられた横顔。緩む口許はいつもと同じだから隠す必要もなく、偽りを乗せない舌も普段と変わらず。
「今日は誘ってくれてありがとう。こんな綺麗な光景を、君と見れたのが嬉しいや」
 「んーん、」ふるる、僅かに波打つ髪が揺れてティアもいつもどおりに相好を崩した。
「ぼくがレイッツァちゃんと来たかったから。ご一緒してくれてありがとう」
 揃ってふやりと笑みを交わす。
 穏やかな赤橙と黄金の空の下、あったかな空気と相反するような、足をくすぐっていく川の水が冷たくて、心地良くて。くすぐられたのは足だけではなく、悪戯心。
 花を摘む──ふりをして、
「えいっ」
「わ」
 掌に掬った水を彼に掛ければ、きらきら光るから。
「わわわ! 水も滴る良い男だね。いつだってかっくいーけどさ」
「やったね?」
「に!」
 負けじとレイッツァがやり返すけれど、控えめになるのは仕方がない。散る飛沫が彼女の髪を彩るのに、彼は目を細めた。
──君を濡らすのは飛沫と僕だけでいい。
「ふふふー」
 彼の心が映り込んだみたいに、ティアはこっそり含み笑い。
──ぼく、せせらぎとレイッツァちゃん彩になってるのかな。
 ひとしきり遊んで、お仕事お仕事と向き合ったのは空の茜色が濃くなり始めた頃合い。
 ぼくは薄紫色を探すけど、レイッツァちゃんはなに色を探すの。と問われて「んー、」レイッツァはわざとらしく口角を吊り上げた。
「僕はピンクの花を探そうかな」
 なんでかって? ふふ。見合わせた顔はふたり揃っておなじいろ。
「理由は」
「秘密」
「だねっ」
 だってそんなの、言うまでもない。
 狙いどおりを見つけたなら、互いに浅瀬を駆け寄って耳の上に挿す一輪の──それぞれの髪色した星の花。
「お揃いっ」
「うん、『お揃い』」
 ふたつの意味で揃ったそれへ、ふたりで似た笑顔を咲かせて。
「宝物なんて、案外近くにありそうだね」
「これ以上の宝物ってあるのかなー?」
 それを探すのもまた、格別な宝物になりそうだ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

千波・せら
探しものなら得意だよ。
綺麗な物ならいつもより見つけやすいかもしれないね。

どんな花かな。
妖精が好きな花だから、きらきらとした綺麗な色かも。
川の中に手を入れて、手探りで探してみるよ。

あ!これはもしかして!
この花かも!青い色だから分からなかったな。
こっちにも見つけたよ!
これは紫色。

色んな色があるんだね。探せば虹色も見つかるかな?
虹色の花はどこかな。
見つかるまでは諦めないよ。

少し大きな石の間に挟まっていたりしないかな。
赤色の花、ピンク色の花、黄色の花も見つけたよ!
この花だけで虹が出来そうだね。

少し休憩をしたら、また花を探すよ。
虹色の花!どこかな!


スウィーピィ・スウィークス
……妖精の町かぁ。楽しそうだね。
あまくておいしいもの、あるかしら。

お昼寝を終えて、夕涼みのお散歩気分。
スーは元よりセイレーン。
水は大好きだし、海雪の外套は濡れたってへいきさ。

ふわきらぱちぱち【しゅわふぃりあ】で呼んだ泡たちと
おしゃべりしながら花を探そうかな。
浸かってしまってもいいけれど、水上歩行もきっと楽しい。
けん、けん、ぱ、と跳ねてみる。
いやそれにしてもきみたちはかしましいな。楽しんでるならいいけども。

花、花、きれいな花はどこかしら。
外套の裾にたくさん集まれば、
泡たちと一緒に浮かべてあげたら、きらきらふわふわもっと素敵さ。
妖精たちも一緒に踊るかな?


キトリ・フローエ
妖精達の町だなんて
行ってみたいに決まってるじゃない!
もちろん、水着に着替えていくわ

おおきなみんなには浅くても、あたしにはそこそこ深い川
でも、一応泳げるから問題ないのよ
ざぶんと潜ったら涼しくてとっても気持ちが良さそう
水中に咲くお花はとっても綺麗なんでしょうね
お魚さん達に身振り手振りで挨拶しながら
お星さまみたいなお花を探しに行くわ
お魚さんと水の中で競争するのも楽しそう!
めいっぱい泳いで夏の名残を満喫して…
ところで、お花はどれくらい集めればいいかしら?
トスカはいくつかって言っていたから
そんなに多くはいらなさそうだけど
もし両手で持ちきれないくらい必要なら
フェアリーランドの壺にしまいながら集めていくわね



●奔放不羈
 んん。お昼寝を終えて、小さく伸びをしたスウィーピィ・スウィークス(シロッピィ・ホイップテイル・f29236)は河を渡る涼やかな風にほんのり口角を緩める。
 ふわと揺れるのは虹色の光を反射する外套。
 その肩の近くを煌めく燐光零しつつ水着のレースを揺らして舞い飛ぶキトリ・フローエ(星導・f02354)は、
「妖精達の町だなんて、行ってみたいに決まってるじゃない!」
 あたし達フェアリーとは違うのかしら、と期待にアイオライトの瞳を輝かせた。
「……妖精の町かぁ。楽しそうだね」
 あまくておいしいもの、あるかしら。スウィーピィが零せばキトリだけでなく、千波・せら(Clione・f20106)もついつい笑顔になる。不思議の町のスウィーツなんて楽しみでしかない。
「探しものなら得意だよ。綺麗なものならいつもより見つけやすいかもしれないね」
 なぜなら彼女は探索者。
 宝探しへの道程だって楽しめる。
「ええ、頑張りましょ!」
「うん。水は大好きだよ」
 互いに顔を見合わせたなら、彼ら彼女達はめいめいに広い河へと足を踏み入れた。

「おいで」
 小さく告げて喚ぶのはうわさ好きの海底の泡たち。ふわふわきらきら、ぱちぱちぱち。スウィーピィは周囲に浮き上がった泡たちのおしゃべりに耳を傾けつつ、ソーダ水の足で水面へとひたと歩き出す。
「うん、うん。──ああ、そうだね。それも楽しそう」
 爪先で跳ねれば波紋が渡る。けん、ぱ、けん、ぱ。時折くるんとターンも挟んで、透明な境界の上を、茜色の空を背景に踊る。
 耳許ではぱちぱちぱちぱち、泡たちも光を乱反射。
「いやそれにしてもきみたちはかしましいな。楽しんでるならいいけども」
 ちょっぴり眉を寄せて笑みを零しながら、目的も忘れはしない。
「花、花、きれいな花はどこかしら」

 虹色の光を弾くスウィーピィの姿に、なるほどとせらは肯く。力を貸してと囁いたなら水面にも似た澄んだ色の鉱石の脚に潮風が巻いて彼女の身体が浮き上がった。
「どんな花かな」
 妖精が好きな花だから、きらきらとした綺麗な色かも。目星をつけて河の中腹辺りまで飛んだなら、「あ! これはもしかして!」水の中に、異なる動きを見つけてぱしゃんと流れへ足をくぐらせた。
 腰を折って両手も沈めて、屈折率の違いに思うように届かない花の茎をなんとか指先に捕らえた。──この花かも!
「わ。青い色だから分からなかったな」
 水面を割ってまみえたのは星型の花。色も相俟って本当に桔梗のようだけれど、桔梗は水中には咲かない。この形。一度目が覚えたから、せせらぎの中に揺れるそれは最初よりもずっと簡単に見付けられた。
「これは紫色。……いろんな色があるんだね。探せば虹色も見つかるかな?」
 そう思った途端、胸に湧き上がったわくわくに突き動かされてせらは飛沫をあげて浅瀬の中を駆け出した。
 川底の少し大きな石を転がしてみたり、再度、風を纏って空から見下ろしたり。
──どこかな。見つかるまでは諦めないよ!
 上がる口角は留まることない楽しさを映し出す。

 深さは膝より下。そう案内されたけれど、フェアリーたるキトリにはほとんど身の丈と同じくらい。
 彼女も河の中央辺りまでは風に乗って、この辺りかしらとざぶん! ──ちゃぽん!
 身を包む流れは冷たくてやわらく、心地良い。水中でふるり翅を震わせて、彼女は泳ぎ出す。こう見えて水泳は得意なのよ? ふふりと誇らしげな笑みを見せる相手は、どこか驚いているように見える川魚だ。
──こんにちはっ。
 茜色の光の差す水面を見上げて、翅を動かす。水の抵抗で動きにくいけれど、魚はただじっと彼女を見たあと、すいと泳ぎ去った。驚かせた? いいえ、ついて来い?
──なら負けないわよ!
 負けん気を眦に宿して彼女は水を掻く。さざ波の影が水底に揺れるのを見下ろしキトリは思いを馳せる。
──水中に咲くお花はとっても綺麗なんでしょうね。
 その中を泳いだなら、どれだけ心が躍るだろう。
──ベルにも見せてあげたいわ。

「みぃつけた!」
 ちゃぷっ、と水面に顔を出したキトリの腕には鮮やかな藍色の星の花。めいっぱい水泳を堪能した彼女を心地良い疲労が包み込むけれど、達成感には敵わない。
「ところで、お花はどれくらい集めればいいかしら? トスカはいくつかって言っていたから、そんなに多くはいらなさそうだけど」
 首を傾げるキトリの手を引いて肩の上にお招きして、せらも手にいっぱいの花を彼女に見せた。
「赤色の花、ピンク色の花、黄色の花も見つけたよ! この花だけで虹が出来そうだね」
 周囲に泡たちを浮かべたまま、水面にしゃがみ込んだスウィーピィも外套の裾に種々の色合いの花を従えて、ふぅわり満足気な笑みを刷く。
「きらきらふわふわ、素敵だろ?」
 これだけあれば、妖精たちも一緒に踊るかな?
 揺蕩うような問いに、返す言葉は決まってる。
 ──ええ、きっと!
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロキ・バロックヒート
亮(f26138)と

宝の地図を握り締めて
服が濡れるのも気にせず川を進む
水が気持ち良いね

川をゆくひとの中に見覚えのあるいろ
あの海で会った夏のにおいがする君
亮“ちゃん”って声かけて
ロキだよって笑って名乗る
ふふ、初めまして?よろしくね
自己紹介がちょっとあべこべだけど
次に会ったら名前を“音”にするって言ってたもの
亮ちゃんも花探し?
じゃあ一緒に探そうよ

花を摘むばかりも良いけれどさ
ちょっと隙をみつけたら
えいって悪戯に水でもかけてみて遊ぶよ
倍ぐらい仕返しされてぽかんとしてから笑う
あぁほんとだ
花が逃げちゃったねなんて

ねぇこれもしあわせの欠片探しになるのかな
ふふ、そうかもね
すてきな宝を
欠片を見付けられたら良いな


天音・亮
ロキ(f25190)

貰った宝の地図手に歩く水の中
浸した足がたてる音に耳澄ませ息を吸う
心地いい
波に揺れる花に手を伸ばした途中
あれ、きみは…
いつかの海で会った蜂蜜色の瞳の“まだ名前のないきみ”

届いた音に笑顔が零れる
そう、そっか。きみの名前は──
初めまして、ロキ!

勿論と頷いて一緒にとりどりの花を集めよう
んぶっ!やったなー!
仕返しに倍の水をかけてやるんだ
気付けば集めた花は水面遊んでゆらゆら
集め直し、だね…あははっ

私は探してるよ
どんな時でも、どんな場所でも、誰といても
ロキが見つけたいと思うなら
いつだってどこでだってそれは欠片探しになるんじゃないかな

ふふ、ほら!行こうロキ!
「宝」探しは始まったばかりだよ!



●続・幸福論
 残夏の陽射しにキャップをかぶり直して、天音・亮(手をのばそう・f26138)は手にした宝の地図へと視線を落としながら流れる水の中へと歩を進める。
 ちゃぷちゃぷと弾けて散る小さな飛沫の音が耳に快い。
 顔を上げて、深呼吸をひとつ。ああなんて──、
「、」
 ふとその晴色の瞳が見付けたのは一輪の水中花。喜色を浮かべて手を差し伸べた、そのとき。
「亮“ちゃん”」
 呼ばれた名に顔を上げた亮は「あれ、きみは……」思わず目を見開いた。
 吹き抜ける河の風に長い夜色の髪を揺らすのは、いつかの海で会った蜂蜜色の瞳の“まだ名前のないきみ”。
 呼び返すことが出来ずにただ嬉し気に口を開いただけに留まった亮の表情に、服の裾が濡れるのも構わずざぶざぶと波を足で掻き分けて傍に来た男は自らの胸に片手を添えて、口角を上げて見せた。
「ロキ、だよ」
「!」
 顔は知ってる。過去も考え方も知ってる。だけど名前は、名前だけは、知らなかった。
「そう、そっか。きみの名前は──……初めまして、ロキ!」
「ふふ、初めまして? よろしくね」
 次に会ったら名前を“音”にできると思うと、伝えていたもの。 待ってくれていた夏のにおいがする彼女に精一杯の誠意と感謝を籠めて眦を和らげるロキ──ロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)。
「亮ちゃんも花探し? もしそうなら一緒に探そうよ」
 握り締めた宝の地図だという紙を見せたなら、鮮やかな笑顔と共に「勿論!」と快諾が返った。
「水が気持ち良いね」
「そうだね、ロキ」
 殊更その音を舌に乗せる彼女に、少しくすぐったくもあって。
 ちらと盗み見たその横顔は水中の花を摘むことに夢中でほとんど水面につきそうだったから。
「えいっ」
「んぶっ!」
 ちょいっ、と掬った水は彼女の頬にクリティカルヒット。ぱたぱたと雫を滴らせながら亮はにぃ、と口角を吊り上げた。
「やったなー!」
 それっ、と両の掌に掬ったのは、倍返し!
 ばしゃん! と顔面に弾けた水の塊に、ロキは瞬くことも出来ずに蜂蜜の双眸を真ん丸にして──それから、くしゃりと相好を崩した。冷たいのにあったかい。変だな。
 笑い合った視界があんまり綺麗だから、はたとふたりで我に返れば、周囲にふよふよと浮かんで流れていくのは捕まえたばかりの色とりどりのお星さま。
「「……」」
「集め直し、だね……あははっ」
「あぁほんとだ、花が逃げちゃったね」
 失敗した──なんて脳裏を過ることすらないのは、彼女が幸せの代弁者だから、だろうか。
 濡れた前髪を掻き上げて「ねぇ」ロキは問う。
「これもしあわせの欠片探しになるのかな」
 彼の問いに、亮は微笑む。
「私は探してるよ。どんな時でも、どんな場所でも、誰といても」
 その言葉は以前と変わらず、迷いがない。
「ロキが見つけたいと思うなら、いつだってどこでだってそれは欠片探しになるんじゃないかな」
「……ふふ、そうかもね」
 そのまっすぐな言葉を、聴いていたいと今は思うから。
「すてきな宝を、欠片を見付けられたら良いな」
「ふふ、ほら! なら行こうロキ! 『宝』探しは始まったばかりだよ!」
 河往く星を追うように彼女が駆け出す。だから彼は、笑ってその背を追う。
 一緒に探すと、約束したから。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

グァーネッツォ・リトゥルスムィス
まだまだ暑いから河の涼しさで爽快になれそうでラッキーだぜ♪
(今年の水着コンテスト参加と同じ水兵風水着着用)

ドワーフの中でも低身長なオレ目線だと深さはそれなりにありそうだから
溺れない様に気を付けて歩いたり泳ぎつつ
どうせ採取するなら行き来が大変な河の真ん中へ最初に向かうぜ
うひゃー、ちゅべたーい!
でもそれがいいぜー♪
(小竜になってる竜槍のファンも楽し気に水面を撫でながら飛行)

全部取らない様に斑に採取をし、更に草花や茎根を傷付けない様に丁寧に取る様にするぞ
その時間をかける分だけ長く息止めして潜るが、自然を大切にする挑戦心でUCを発動させて元気山盛りだ
採取した花はファンに河端に運んで貰って共同作業だぜ♪


クロム・ハクト
なるほど星の散りばめられた川か。
どこかの世界で空の星の帯を川に例えた話も聞いた記憶があるが。

宝探し、というものはやはりどこか惹かれる様子。
服装は耳も含めて昨夏と同じそれ。

集めるのは白や黄色。惹かれる色(白)なのもあるが、星の色だと感じたから。

花に気を取られて、あるいは足に触れる川の流れや石の感触に気を許して
油断して思わぬ段差に転ぶ、などはあるかもしれない。
濡れた際は他人にかけない範囲でしっぽなど震わせて水を払う。

絡み・アドリブOK



●燿爍
「なるほど星の散りばめられた川か」
 さやりさやりと上流から流れてきた花。誰かが折角摘んだそれを、取り零したのだろうか。色鮮やかな星々がゆっくりと過ぎて行くのをクロム・ハクト(黒と白・f16294)は見送った。
 誰かのものであるのなら、誰かが追ってくるかもしれないから。
──どこかの世界で空の星の帯を川に例えた話も聞いた記憶があるが。
 地上の河に星が咲くというのは初めて見る光景だ。興味深いとクロムの水に潜ったままの尻尾が水の抵抗を受けながらもゆらりと揺れる。
 それに、宝探し。
 我知らずぴるりと耳が震えたなら、蒼い硝子のイヤーカフがしゃらと揺れた。任務、ということを思えばまるで必要のない行為。それでも胸が躍るのは、どうやら己がその行為を好意的に──あるいは興味関心を以て受け止めているらしいと最近になって知った。
 ならば遠慮する必要もない。
──星を、探そう。
 自分だけの、星を。
 そうして視線を巡らせたとき、ばしゃばしゃと水を蹴って河へと進んで来る小さな姿が視界に入った。
「、」
 瞬時、その誰かが転んだのかと思ったクロムは身動ぎしたが、すぐにそれが杞憂であることを理解した。
「うひゃー、ちゅべたーい! でもそれがいいぜー!」
 晴れやかな声を上げる相手──グァーネッツォ・リトゥルスムィス(超極の肉弾戦竜・f05124)の身長はクロムの半分程度しかなかったけれど、それは彼女がドワーフだからだ。
 白と赤の水兵のようなデザインの水着で澪になっているだろう河の中心へと進んでくる彼女の足取りは豪快なようでいて、とても慎重であり注意深い。そこに彼女の自然への配慮が窺えた。
 己を見るクロムの視線に気付いて、グァーネッツォは屈託のない笑みを向けた。
「よぉ、宝は見付かったか? まだまだ暑いから、河の中の探索ってのも爽快だな♪」
「いや、」
 応えようと首を振って、それから否定すべきか同意すべきかに迷う彼に構わず、彼女は掌を水面近くでなにかを撫でるような仕種をした。
「お。お前もまだ見付かってねぇのか。なあファン。お前も一緒に探してくれよ」
「──? ……ああ、」
 クロムは思わず目を凝らして、そこに限りなく存在感を希薄にした小型の竜が居るのを確認した。グァーネッツォからの求めに応じ嬉しそうにする姿は彼女の相棒なのだろう。
 竜が水面を滑るように飛んでいくのを見遣り、彼も水中へと視線を凝らす。
──探す、なら。
 白だろうか。彼が以前から惹かれる色。
 あるいは、星というのだから、黄色か。
「……、あ、」
 揺れた。
 水面を幾多と彩る白波に紛れて見えた気がして身を乗り出し──「!」川底のまるい石に足が滑った。
 ぱしゃん! と水柱。
「おおっ? だ、大丈夫か?」
 ぱらぱら、きらきら。空へ飛んだ雫が降ってくる中、ちょうどファンへと摘んだ水色の花を手渡そうとしていたグァーネッツォが振り向いて問えば、クロムは「……ふ。っはは」己の失態に小さく笑みを零し、ぶるると濡れた髪と耳を震わせ雫を飛ばした。
「──ああ、……確かに気持ちいいな」
 その手には一輪の白い星を捕まえて。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セト・ボールドウィン
綾華(f01194)と

宝探しだって
綾華、はやく花集めに行こっ

急がなくてもなくならないと思うけど…
でもさ、わくわくするじゃん?

いろんな色の花は見てるだけでも楽しいけど
ちょっと迷っちゃう
んー、どうしようかな

白に黄色、濃い青色
みてみて綾華。きれーでしょ
綾華のはどんな色?

リリアライトだ!
初夏。一緒に過ごした村と、不思議で可愛い生き物たちを思い出す
へへ、楽しかったよねえ

きらきらの水面を覗き込めば、底にも花がゆらゆら
水中花みたい。涼しそう
ね、綾華。川の中も入ってみようよ
言いつつ靴を脱いで、水の中へ

わ、すげー気持ちいい
片手を差し出す
綾華も。ほら

ぎゅっと手を繋いだら、何となく嬉しい
了解っ!もっときれーなやつね


浮世・綾華
セト(f16751)と

はいはぁい
そんな急がんでも――
急がないとなくなっちゃったりする?

ふふ、でもセトといっぱい楽しみたいしねえ
分かったよと後を追い

うん、綺麗だなぁ
ほんと、桔梗に似てる

青に、黄色に――
合わさると星空みたいだな?
深い青の夜空に黄色い星がきらきらさ

俺のは、これ
摘んだ花はひととき
共に過ごした村で、森で見た空色の花に似て

リリアライト色~
こっちもきれーでしょ、と対抗するみたいに笑って

水中花。確かにゆらゆら揺れて、花も気持ちよさそ
水は少しだけ苦手意識があるけれど
そんな苦手意識も楽しい思い出に勝ることはなく

緋を細め伸ばされた手を取る
おお…ふは、つめてー

よっし
さっきよりももっと綺麗なの、探そうぜ



●清韻
 手渡された宝の地図を握り締めて、川縁を駆ける姿が若芽色の上衣を翻して振り返り、声を張る。
「綾華、はやく花集めに行こっ」
 宝探し。心が躍る響き。はやくはやくと手招くセト・ボールドウィン(木洩れ陽の下で・f16751)の年相応に弾ける笑顔に、
「はいはぁい」
 普段どおりの緩やかさで浮世・綾華(千日紅・f01194)は口角を緩め、軽く首を傾げて見せる。ちょっと待ってねえ。おにーさん水際では気を付けてーの、なんて。
「そんな急がんでも──、……急がないとなくなっちゃったりする?」
 見遣る広い広い河には、他の猟兵の姿もちらほら。それどころか顔見知りもちらほら。ちょっぴり口許隠してふふと笑ってセトへと視線を戻せば、彼は翳りのない表情で森色の瞳をぱちぱちと瞬いた。
「急がなくなくてもなくならないとは思うけど……でもさ、わくわくするじゃん?」
 綾華はわくわくしない? 俺はするよ。一切の屈託のない表情で彼が言うから、さすがの綾華も肩を竦めて見せた。
「俺もセトといっぱい楽しみたいからねえ。分かったよ」
 降参降参、なんておどけてみせて少年の背中を追って辿り着いたのはちゃぷちゃぷと水が丸い石に当たっては弾けて消えていく水際。
 見える? としゃがみ込んで指差すセトの示す先を同じく隣に並んでしゃがんで見遣れば、透明な水と空の境界の下で明るい色の星型が揺れているのがなんとか見える。
「うん、綺麗だなぁ。ほんと、桔梗に似てる。けどマジで陸にも水中にも咲くんだな」
 半ば呆れが紛れ込む感嘆を零す綾華に、セトはただただそれを幸いと河原に咲く花々の傍へ駆け寄ってとりどりの花を見下ろした。
 橙、赤、白、水色に藍、他にも、他にも。
「んー、……どうしようかな」
 見ているだけでも楽しいけれど、
──ちょっと迷っちゃうな。
 俺が花束を作るなら? どんな世界を創ろうか?
「みてみて綾華!」
 めいめいに花を摘んで、幾許か。そうしてセトが集めたのは濃い青をベースにして、白や黄色のアクセントが目に鮮やかな花束ひとつ。へえ、と綾華は眉を上げた。
「星空みたいだな? 深い青の夜空に黄色い星がきらきらさ」
「きれーでしょ。綾華のはどんな色?」
「俺のは、これ。リリアライト色~」
 それは澄み切った空色の星。こっちもきれーでしょ、と見せて告げる花は、しばらくの時を過ごした村に咲いていた花とは違い、発光はしないけれど。
「! へへ、楽しかったよねえ」
 不思議で可愛い生き物たちとも一緒だった初夏の思い出にセトも相好を崩す。夜空色の花束にリリアライト色を一輪差したなら、空色の一等星。
 花束を作り上げたあと、ふたりは再びアイウォーラ川へと視線を遣った。茜色の斜光に照らされてきらきらと輝く水面と、水中に揺れる鮮やかな花々。
 涼しそう、とセトが零せば、確かに花も気持ちよさそ、と綾華も返す。ならば選ぶ道はひとつだけ。
「ね、綾華。川の中も入ってみようよ」
 いそいそと靴を脱いだなら、綾華が僅かに零した声にも構わずセトはぱしゃんと浅瀬を踏んだ。清い流れがさよさよと熱を奪っていくのに、
「わ、すげー気持ちいい。……綾華も。ほら!」
 「、」水への苦手意識に躊躇ったのもほんの一瞬。煌めく水の音はどこまでも澄んでいて、咲う友の笑顔にいざなわれたなら、断る理由なんてない。
 緋色の眸を細め、同じように靴を脱いで裾を捲って。差し出された手へ手を重ねて水へと一歩。
「おお……ふは、つめてー」
 おっかなびっくりの彼の手を離さぬよう、しっかと繋いだ手からは間違いのない歓びも伝わってきて、セトは思わず嬉しさに頬を緩めた。
「よっし、さっきよりももっと綺麗なの、探そうぜ」
「了解っ! もっときれーなやつね」
 それが見付けられたならきっとそれ自体が輝かずとも、心の中で輝く星になるだろう。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

終夜・嵐吾
せーちゃん(f00502)と

お花探しじゃって。水も冷たくてきもちええね
では早速…えーい!(水を蹴り上げて顔面狙いでばしゃ)
ふははは! あ、お花みっけ
おお、これは可愛らしい。綺麗な藍色しとる~
おや、せーちゃんびしょ濡れじゃね!

ぎゃっ!この箱、おもいきり!!(いや、わしもやったけど)
あっ、さっき見つけた花がどっかに…いやあったわ、尻尾にくっついておった
そうじゃね、わしのふわもこが残念に…あとでふこふこに手入れすればええしのって、またっ
うぐっ、鼻からみずっ(いたい)
せーちゃんめ~!(大はしゃぎでやりかえす)

と、遊びつつ花も色々集まったの
淡い色に濃い色に~
こんだけ持って居ったら妖精さんもでてくるじゃろ


筧・清史郎
らんらん(f05366)と

ほう、花か
花は俺も好きだ、ではいざ探そう…(蹴られた水をかぶる)
…らんらんも見つけたか?俺が見つけた花は琥珀の色合いだ
(濡れているが水属性なので余り気にしていない)

びしょ濡れ…?ふむ、言われてみれば
楽し気な友を見遣り首傾げ、らんらんもびしょ濡れになりたいのか? と思い
ならば、と遠慮なく友目掛け水をばしゃり!(3倍返し)
ふふ、らんらんもずぶ濡れだな
花なら此処に…自慢のふわもこ毛並みもぺたりとなってしまっているぞ(くすりと笑み)
今の時期、水遊びも涼しくて良いな(水の追撃を容赦なく浴びせつつにこにこ)

様々な色の花が集まったな
ああ、これだけ集めれば、妖精さんもきっと来るだろう



●淙々
 肩に掛けた羽織が風に揺れ、僅か裾が濡れるのも構わず、ふたりは水を往く。
「お花探しじゃって」
 水も冷たくてきもちええね、なんて終夜・嵐吾(灰青・f05366)がぱっしゃぱっしゃと長い尾で水面を叩けば、筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)も「ほう、花か」と紅い瞳を細めた。
「花は俺も好きだ、ではいざ「では早速」探そう、「えーい!」……」
 ばっしゃあぁああ。
 花を探さんとちょうど腰を屈めた清史郎の顔面目掛け嵐吾が思い切り水を蹴り上げた。当然、水は顔どころか上半身水浸しである。
「ふははは! あ、お花みっけ」
 しかも悪心しかないうえに心も移り気。ごくあくである。
 ぱたぱたと滴る雫もそのままに動きを止めたように見える清史郎へ構うことなく嵐吾はちゃぷりと腕を沈めて星を狩る。
「おお、これは可愛らしい。綺麗な藍色しとる~」
 見て見てせーちゃん、せーちゃんにそっくりじゃよ。全く反省のいろもなく清史郎の髪の横に添えて見せる嵐吾に、けれどあっさりといつもどおりの笑みを浮かべて相手も嵐吾の左頬へと濡れた星をとんと当てて見せる。
「……らんらんも見つけたか? 俺が見つけた花は琥珀の色合いだ」
「おや、せーちゃんびしょ濡れじゃね!」
 そこで初めて気付いたみたいにわざとらしく声を上げる嵐吾。やはりごくあくだ。
「びしょ濡れ……? ふむ、言われてみれば」
 ところが清史郎に気に障った様子は一切なく。まるでこちらも彼に言われて初めて気付いたみたいな顔で瞬くと、からからと笑う友の顔を見つめたならふむと彼は得心した様子で肯いた。
 そして取り出したるは蒼の扇。開花桜乱。生み出すのは最大級の衝撃波!
「ぎゃっ! この箱ッ、」
 ざっばああああああああああああああああああああ。
 悲鳴すらも掻き消す津波の如き水の壁が嵐吾を呑み込んだ。猟兵じゃなければしんでるくらいだ。
「ふふ、らんらんもずぶ濡れだな」
 どうだ、望みどおりか? 独自解釈の答え合わせを求めるものの、噎せ込む友から返答はない。
 暫時の間を挟んで、はっと嵐吾は我が身を振り返った。
「さっき見つけた花がどっかに……いやあったわ」
 毛足の長い尻尾に絡んでいたのを発見して安心したのも一瞬のこと。
「自慢のふわもこ毛並みもぺたりとなってしまっているぞ」
「そうじゃね、わしのふわもこが残念に……ま、あとでふこふこに手入れすればええしの……って、」
 微笑んで告げたなら、怒っていない様子の友の姿になるほど楽しんでもらえたようだと更に独自解釈をこじらせた清史郎は情け容赦なく扇を振るった。
「またっ?! うぐっ、鼻にみずっ、みずがっ」
──確かにわしもやったけど! ここまでせんでも良くない?!
「せーちゃんめ~!」
 振り上げる手はけれど、友を捕まえるのではなくて再び水を跳ね上げて。
 吊り上がりっぱなしの口角に、回答は間違っていなかったようだと結論が出る。
 そうして散々河の水を掻き混ぜて巻き起こして弾き飛ばして。おとなげない大人ふたりがようやく落ち着きを取り戻した頃には断ち切れてしまった星の花たちを幾多と拾い摘むことができたから。
「こんだけ持って居ったら妖精さんも」
「ああ、きっと来るだろう」
 出てきたならば同じように歓迎したら良いのだろうか。そんなふうに清史郎が思ったかどうかは、彼のみぞ知る。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーシー・ブルーベル
【彩夜】

一夜だけ現れる街……だなんて
ワクワクするわ

今年買った水着を用意して、じゅんびはバッチリ
はあい、気を付けるわ
お花をたくさん集めればいいのよね
川の中でも咲いているなんて、ふしぎ
咲く前にめいっぱい息を吸っている、とか?

気を付けて川の中に入り、水面に顔がつく程近づけて
あ、星の形みたいなお花がある!
キキョウもこんなお花なの?
川底に広がる星々は天の川のよう
赤、オレンジ、青
手をのばして星をそっととるの
十雉さんはどう?
わ、すごい
ルーシーももっとがんばらないと

途中幾度となく川端を振り返る
苺、苺、見て見て!
こんなに集めたの
両手に抱えて見せに行くわ
花冠……ステキね
ありがとう
うふふ、みんなとても似合ってる!


宵雛花・十雉
【彩夜】

一夜だけ姿を現すか、浪漫があんなぁ
この夜が終わっちまったらどこに行くんだろうな、この町は

水着姿になってお嬢さんたちの後をついて
気分は保護者かはたまた引率者か
あんまりはしゃぎすぎてハメ外すんじゃねぇぞ、お二人さん

咲く前にめいっぱい…成る程なぁ、そいつぁ花も上手いこと考えたモンだ
なら、そろそろ息継ぎさせてやんないとな

楽しそうに花を集めるルーシーちゃんを微笑ましく見守って
オレも手近な花を拾ってこ
色とりどりの星が咲く川はまさに天の川だな
お、随分たくさん集めたなぁ
へへ、どうだい?オレもなかなか集まったろ

おう、お帰り苺ちゃん
って…オレの分もあんの?
ありがとよ
こりゃいいねぇ
男ぶりが上がったみてぇだよ


歌獣・苺
【彩夜】
妖精さんの町…きっと素敵な町なんだろなぁ…!

一応水着は着てきたけど…水の中はあまり得意じゃないから、私は川端でお花集めしてるよ!
ときじ、ルーシーのことよろしくね♪

2人と別れて川端を探索していると
たくさんの星型の花が咲いている場所を見つける。
わぁ…!これだけあれば、『あれ』作れるかも!ふふ、2人ともびっくりするかな…♪

あぁ、どれも本当に綺麗…
まるで万華鏡の中にいるみたい。
…安心する。
ルーシーには、青と黄色
ときじには、オレンジと…白かな
私は赤と……藍色。よし、できた!

おーいっ!…わっ!
ルーシーもときじもすごい!すごい!
いっぱい取れたね!
私もね、ほら!
ボリューム満点の花冠!
2人にもあげるね♪



●彩夕
 なんだありゃぁ。遠くに上がる水柱を見遣る宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)の前で、ぽふんと肉球の手を合わせて、歌獣・苺(苺一会・f16654)はまだ見ぬ『宝』へと期待に瞳を輝かせる。
「妖精さんの町……きっと素敵な町なんだろなぁ……!」
 こっくりと肯くのはルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)。

「一夜だけ現れる街……だなんて。ワクワクするわ」
「浪漫があんなぁ。この夜が終わっちまったらどこに行くんだろうな、その町は」
 想いを馳せても想像にはキリがない。せめてこのお嬢さんたちの期待を裏切らないようなものであればいいなあ、なんて思いつつ、水際に寄ったふたりへ十雉は声を掛ける。
「あんまりはしゃぎすぎてハメ外すんじゃねぇぞ、お二人さん」
 気分はまるで引率者かはたまた保護者。「はあい、気を付けるわ」なんてルーシーから返答があるものだから、その気持ちはいっそう強くなる。
「……どう、苺?」
 ルーシーが窺えば、そっと水面に足を伸ばした苺はその黒い毛並の足をぴぴぴぴっ、と振って飛沫を払った。
「んんん……やっぱり私は川端でお花集めしてるよ! ときじ、ルーシーのことよろしくね♪」
「はァいよ」
 一応水着は着て来たけれど、試してみてもやはり水は得意じゃない。ごめんねと大好きな友達に謝れば、ううんと彼女も首を振る。
「お花をたくさん集めればいいのよね」
「うん、私もめいっぱい集めるからね!」
 屈託なく微笑む苺の笑顔に、ルーシーも眦を和らげた。
──水の中以外にも咲いてるお花で、よかった。

 ワンピースみたいな水着の白と青のスカートを揺らしながら、ちゃぷちゃぷと河の中腹まで歩いていくルーシーを、苺に託された十雉は付かず離れずの距離で追う。
「川の中でも咲いているなんて、ふしぎ。咲く前にめいっぱい息を吸っている、とか?」
 足許に気を付けつつくてりと首を傾げて言う彼女に、ふ、と小さく十雉は笑みを零す。
「咲く前にめいっぱい……成る程なぁ、そいつぁ花も上手いこと考えたモンだ。……なら、そろそろ息継ぎさせてやんないとな」
「息継ぎ」
 クリスタルブルーの左目が瞬き、それから彼女は水面に顔を浸けるのではないかと思うくらいに近付けて水中を覗き込んだ。今日は結った髪がちゃぷりと水に潜る。
「……あ、星の形みたいなお花がある!」
 ぱっ、と顔を上げたルーシーの髪が飛沫を煌めかせるのに、十雉も「どれ」と覗き込み嘆息の声を零した。
「桔梗に近い形ってんなら、これだろうなぁ」
「キキョウもこんなお花なの?」
「水ん中には咲かねェけどな」
 からりと悪戯っぽく告げたなら、そうなのね、と彼女は生真面目に肯いた。それから、もう一度水の中を覗き込む。
 透明なあおの中。夕焼けの赤橙が差し込んで、水面の波が影となって水底に降り注ぐ中で揺れる、いくつもの色彩。お伽噺みたいな星の形が流れに揺れる。
「天の川みたい」「まさに、だな」
 ルーシーの感想に同意を零して、彼女が水底へ手を伸ばすのを微笑ましく眺めつつ、彼自身も足許をくすぐるように揺れる茎へと指を絡めた。
 小さな彼女の手に収まったのは、赤にオレンジに青の星。息を詰めるような心地だったことに気付いてルーシーが吐息を零して顔を上げたとき、
「お、随分たくさん集めたなぁ」
 十雉の称賛が届いて、「十雉さんはどう?」振り向いた彼女の瞳に映ったのは、もっとたくさんの花々。
「へへ、どうだい? オレもなかなか集まったろ」
「わ、すごい。ルーシーももっとがんばらないと」
 流れに負けないようにこの花の茎はしなやかで強いのだ。十雉は薄く笑った。
「ちょいとコツがあるんだよ」

 ふたりから離れた苺も、少し歩いて星の集まる場所を見つけた。色も種類も豊かで、「わぁ……!」思わず彼女の名前どおりの苺色の瞳も輝いた。
「これだけあれば、『あれ』作れるかも! ふふ、ふたりともびっくりするかな……♪」
 早速その星々の傍にそっと座って、そのうちの一輪に触れる。風にさややと揺れる姿はまるで万華鏡の中にいるようで見惚れる心地。
──あぁ、どれも本当に綺麗で……安心する。
 せっせと摘み取ってはひとつひとつ丁寧に。時折何度も何度もルーシーが河半ばから手を振るのに、「おーいっ」笑って応じて、幾許か。
「よし、できた!」
 誇らしげに苺が胸を張るのと、
「苺、苺、見て見て! こんなに集めたの」
 両手いっぱいの星の花を抱えてルーシーと十雉が川縁に戻って来たのが、同時だった。
「……わっ! ルーシーもときじもすごい! すごい! いっぱい取れたね!」
「おう、苺ちゃんもお帰り。首尾はどうだい?」
 大きな花束を羽織っていた襯衣で包んだ十雉が問えば、苺は満面の笑みを返して件の『あれ』──ボリューム満点の花冠をそれぞれへと差し出した。
「私もね、ほら! ふたりにもあげるね♪」
 ルーシーには青と黄色で。十雉にはオレンジと白。私には赤と……藍色!
 ぽすり、ぽすりと乗せた冠はまるで妖精の王様のよう。
「……ステキね。ありがとう、苺」
「って、オレの分もあんの? はは、ありがとよ、こりゃいいねぇ。男ぶりが上がったみてぇだよ」
「ええ、みんなとても似合ってる!」
 うふふ、と口許を覆ってルーシーがしあわせそうに笑うから、十雉と苺もつられたように柔らかな笑みを交わし合った。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティル・レーヴェ
紅殿(f01176)と

様々な彩に満ちたお花がこんなにも!
流れに揺らめく様も愛らしく
なんぞ物語の中のよう
へへ、おんなじ気持ちじゃな

紅殿は何色のお花を集めるの?
在るだけ沢山?お好きな色?
妾はそうじゃな
紫と、それから…

わぁ!素敵なお色が沢山!…みんな色?
それは素敵で温かな花束になるのぅ
妾の色も?へへ、嬉しい!

うん!紫は好きなお色なの
妾の眸の色で大好きな花の色で
そうして其方の瞳とも揃いじゃな

あ!折角水着で来たのだもの
川でも遊ぼう?
素足で入れば
まぁるい石の優しい感触
戯れにパシャッと水かけて
驚いた?…っと!
やり返されるのも楽しくて
花のシャワーにもつい見惚れ

はっ!流れるお花待て待て!
追いつつ白と紅も集めよう


朧・紅
ティルさん(f07995)と紅人格で

ぅやぁ!
野にも川にもお花がいっぱいですよティルさんっ
物語の中みたいです
同じ感想を持てば笑い合って

わくわくの心で共に花へと駆ける

僕は…
そうですっ
みんな色のお花を両手いっぱいにっ
薄緑のお花を摘めばティルさんの髪色
瞳色の紫にスズランの白
黄色に紅、銀やキトンブルーに琥珀、濡羽色
友色集め

ティルさんは紫、お好きなのです?
わぁ、お揃いっ
うれしーですねっ

わぁい
川遊び楽しそうっ
お花持ったままばしゃり
足の裏くすぐったいですね
ぅやん!?
驚きましたよぅ
そぉれっお返しです!
お花のシャワー
ひわふわ花舞う中のティルさんは妖精さんみたい

はっ
お花集めが目的でした
花咲く川面でお花と追いかけっこ



●朋華
「ぅやぁ!」
 辿り着いたアイウォーラ川の光景に、朧・紅(朧と紅・f01176)は驚嘆の声を零す。
「野にも川にもお花がいっぱいですよティルさんっ」
「様々な彩に満ちたお花がこんなにも!」
 川縁にも緑が散在してその先端には星型の花が風に揺れ、目を凝らしたなら澄んだ水の底で鮮やかな色彩が手招くように流れに身を任せているのが判る。
 ティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)も思わず藤色の瞳をまんまるにした。
「なんぞ物語の中のよう」「物語の中みたいです」
 ふたり同時に零れた言葉に彼女達は顔を見合わせて、噴き出したなら「へへ、おんなじ気持ちじゃな」同い年で同じくらいの背丈の少女たちはどちらからともなく素足になって水の中へと駆け込んだ。
 心地良い水の冷たさに頬を緩め、髪を高い位置でひとつに結んだティルは首を傾げる。
「紅殿は何色のお花を集めるの? 在るだけ沢山? お好きな色?」
「僕は……」
 ちらと見遣れば色鉛筆のケースを開いたみたいな選び放題の懊悩。決まらないからと、紅は「ティルさんは?」と問いを返す。
「妾はそうじゃな……。紫と、それから……」
 迷いなく選択された色。それがどこか眩しい気がして、紅はぱちりと瞬いた。
「ティルさんは紫、お好きなのです?」
 すると普段は大人びた印象を受ける彼女の表情が、年相応にぱあっと緩んだ。
「うん! 紫は大好きなお色なの」
 妾の眸の色で大好きな花の色で……。そこまで指折り数えて、そしてティルはひたと紅の瞳を見据えた。
「そうして其方の瞳とも揃いじゃな」
「わぁ、お揃いっ! うれしーですねっ」
 両手を叩いて合わせて、紅も破顔する。一緒はうれしいものだ。
 では宝探し開始とばかりにそれぞれに水底へ手を伸ばす頃にもまだ紅の狙いは定まっていなかったけれど。広い広い河を見渡したとき、そうですっ」紅の脳裏に名案が閃いた。
 そして少しすると紅の手には薄緑に紫、白、黄色に紅、銀やキトンブルーに琥珀、濡羽色の星々が鮮やかに咲き誇っていた。
「わぁ! 素敵なお色が沢山! 紅殿はすごいのぅ」
「えへへ、これはみんな色なんですっ」
「みんな色?」
「これはティルさんの髪の色、こっちは瞳の紫、こっちはスズランの白ですっ。他にも、僕と仲良くしてくれてるみんなの友色なんですっ」
 まっすぐに好意だけを詰め込んだ花束の姿に、ティルは「妾の色も? へへ、嬉しい!」と返しつつその双眸をそっと細めた。
「それは素敵で温かな花束じゃのぅ」
 たくさんの花を摘んだなら、それだけでおしまいにするのはもったいない!
 折角の水着なんだからと川縁に摘んだ花を避難させたなら、
「それっ」
「ぅやん?!」
 戯れに掬った水を紅へと掛けた。大仰なほど彼女は飛び跳ねて、雫が散る。
「驚いた?」
「驚きましたよぅ、そぉれっお返しです!」
「……っと!」
 やりましたね? と紅の菫色の瞳が挑戦的に輝いたかと思うと、彼女は避難させたはずの星々を、ティルの頭上へとぱあっと放った。
「わ……」
 ふわふわ、くるくる。種々の色合いの花のシャワーにティルはすっかり見惚れ、仕掛けたはずの紅も花舞う中のティルの姿がまるで妖精さんみたいで──、
「「はっ!」」
 だめだめ! 流れるお花待て待て待て!
 ふたり同時に目的を思い出したなら、ゆらゆらと遠のいていく星々を追ってまた水の中を駆けていく。
──紫と、それから。
 雫散る中、ティルはこっそり思う。見付けたら白と紅も集めよう、と。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

テティス・カスタリア
【錨海】
「宝探し…花探し?」
花で良い筈、多分
オーブは…ちょっと邪魔
仕舞っておく(UC発動)
「ガイ、勝負…する?」
多分船長とかなら、こういう事する
ガイも、きっと好き
どっちが、多く見つけられるか
浮いたまま、手だけ水に入れて集めていく
「ぁ、でも」
集めた花、持ってるとくしゃくしゃになるかも
「…このお花、シルヴィにあげちゃだめ?」
船は、みんな女の子
そう聞いてる
…物は好き、特に、“想い”が生きてる物は
ガイみたいなヤドリガミも、シルヴィも
「シルヴィ、お花。あげる」
ガイが採ったのとは少し離してカヌーの中に花を収めてく
あ…数えるの忘れてた
でも
「いっか」
最後に見られるもの…何だろう
ガイとシルヴィが楽しめるといいな


ガイ・アンカー
【錨海】
アドリブ◎

宝への道を征くには花を集めればいいって訳か
…ほう?
テティスが勝負事なんて珍しいな
確かに船長なら言い出しかねん
勿論、俺もそういうのは歓迎だ
よく見てるな、と褒めるように肩を軽く叩く
さあて、折角のお誘いだ
相手してやる

野生の勘で花を探して集めるか
しかし…俺の手だけじゃ持つにもちと限界が…
テティスの言葉に瞬き一つ
シルヴィアに?…ああ、なるほど
ボトルから船を出して着水
いいぜ、花はこいつに乗せて行くか
シルヴィアも喜ぶだろうよ
お転婆だが「お嬢さん」だしな

ははは!気付けば船が花だらけだ
似合ってるぜ、シルヴィア
…勝負?ま、どっちが多くても構わねえさ
最後にはいいもんが見れる
テティスも楽しみにしてな



●花の乙女
 錨と水精は海賊船では遡れぬほど浅い河を前に僅かの驚きを隠さなかったけれど。
「とりあえず宝への道を征くには花を集めればいいって訳か」
 腕が鳴るぜと現在は海賊としての生を謳歌しているガイ・アンカー(Weigh Anchor!・f26515)は利き腕を回し、テティス・カスタリア(想いの受容体・f26417)はくて、と首を傾げた。
「宝探し……花探し?」
 花で良い筈、多分。ガイの言葉に肯きつつ、いつも肌身離さない花舞うオーブをじっと見つめる。ちょっと邪魔になる。大切なものだから、仕舞っておくことにする。
 王冠状のガーターリング、そこに嵌った青い宝石に触れるとオーブは音もなく吸い込まれて消えた。
「ん、これで、いい」
 ぽつり、零して。さっさと浅瀬に足首まで浸けているガイの背を追い、つんとその腕を突いた。
「ガイ、勝負……する?」
「……ほう?」
 突然の申し出に、ガイの眉が跳ねた。海賊船に乗っている、けれどテティスは海賊ではない。
「テティスが勝負事なんて珍しいな」
 だからこそガイが素直な感想を零したなら、彼はぼんやりとした瞳の奥にちいさな光を灯した。
「多分船長とかなら、こういう事する」
「ああ……確かに船長なら言い出しかねん」
 ふたりの脳裏にはおそらく同じ自信に満ちた顔が浮かんでいることだろう。
「ガイも、きっと好き」
「勿論、俺もそういうのは歓迎だ」
 よく見てるな。ぽんと肩を叩いて褒めたなら、テティスの銀の髪がさらりと流れた。
 勝負は簡単。どちらが多くの花を見付けられるか。
「さあて、折角のお誘いだ。相手してやる」
 きらと輝く力強い海色の双眸。互い、水の扱いには慣れている。
 開始の合図と共にめいめいに花を探し始めたふたりにはけれど、誤算があった。ふたりは水の扱いに慣れ過ぎていて──、
「……ぁ」
「む、ちと限界が……」
 水面に浮いたまますいすいと摘んでいくテティスと野生の勘で星の声を聴くガイの両手は、すぐにいっぱいになってしまったのだ。
「ガイ」
 扱いにさえ拘らなければ、まだ“積む”ことは可能だろう。けれどそれでは花が可哀想だから。
「……このお花、シルヴィにあげちゃだめ?」
 テティスの提案に、「シルヴィアに?」ガイは思わず瞬きをひとつ。シルヴィアとは、彼の所持するボトルシップだ。無論ただの装飾品ではない。ボトルから船を一艘喚び出すことのできる代物である。
 そこまで考えたなら、彼の意図も読める。
「……ああ、なるほど。いいぜ、花はこいつに乗せて行くか」
 ひとつ肯くとガイはボトルを開いた。途端、蜃気楼が溶け出るみたいにしてセーリングカヌー『シルヴィア』が河へと着水した。
「シルヴィアも喜ぶだろうよ。お転婆だが『お嬢さん』だしな」
 両腕に抱えた花を摘み込んだなら、ぽんと船の側面に触れてガイが口角を上げる。すいと泳ぎ寄ったテティスもまたこっくりと肯き、カヌーの縁に乗り上げて声を掛けた。
──船は、みんな女の子。そう聞いてる。
「シルヴィ、お花。あげる」
 そうして積めば、色鮮やかな花々で着飾った『娘』はどことなく嬉しそうに見える。
──……物は好き、特に“想い”が生きてる物は。
「ははは! 花だらけだ。似合ってるぜ、シルヴィア」
「……あ……数えるの忘れてた」
 豪快に笑うガイ。はたとテティスが落とした言葉に、ん、と反応したものの小さなことを気にするような器の小さい男ではない。
「勝負か? ま、どっちが多くても構わねえさ。最後にはいいもんが見れる」
 また肩を軽く叩かれる。最後に見られるもの……何だろう。そうは思えど、感情が揺さぶられることは、今のところまだ、ないから。
──ガイとシルヴィが楽しめるといいな。
 ごく自然にそう念じた彼の心でも読めるとでもいうのか。ガイはに、と笑みを刷いた。
「テティスも楽しみにしてな」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リュカ・エンキアンサス
オリオお姉さんf00428と

確かに、宝探しは冒険に欠かせないね
……ん、お姉さんはロマンチストだ
と、言いながら。何となく水着に気分で麦わら帽子をかぶってゴリゴリ黙々花を摘む。
草むしり感半端ないけど……ん?

え。ああ。本当だ
熱中してて気づかなかった
うーん……そうだね。夜になる一歩手前は、こういう色になるかも
だったら夜の色は……こんな感じ?黒に近い花
黒は何となくお姉さんの色だから、こういうのも似合うんじゃないかな

んー。魚?狩る?
なんて、時々話をしながら
端から順番に摘んでいくので、適当でとりとめのない色合いになる
こうすると、黒って目立つなあ
?ほら。どうぞ。お姉さんが一番目立ってるよ
なんて冗談めかして


オリオ・イェラキ
リュカさま【f02586】と

宝探しは冒険の醍醐味
リュカさま、わたくしもうずっと心がときめいておりますの
今年の水着を纏って星形の花と戯れましょう

ひとつ、ふたつ。優しく摘んで
リュカさまあちらにも…?
ふふ。黙々と作業する姿が微笑ましいですわ
ね、リュカさま。リュカさま
見て、この花はリュカさまの瞳の色と同じですわ
夜へ炎のように鮮烈な蒼を染めた彩り
あの太陽が沈んだら、同じ空が観られるのかしら

そう言えば川ですもの、魚も見られたら楽しそう
なんて話にも花咲かせ
片腕に抱える程の花を摘みますわ
リュカさまはどんな色合いの花束になったかしら
わたくしの?…あら、リュカさまもロマンチストね
微笑んでありがとうと柔らかな御礼を



●宵と深更
「宝探しは冒険の醍醐味……リュカさま、わたくしもうずっと心がときめいておりますの」
 胸に両の手を添えて、オリオ・イェラキ(緋鷹の星夜・f00428)が実に雄弁な瞳でそう告げたなら、リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)は差し込んでくる斜陽に麦わら帽子の角度を変え、
「確かに、宝探しは冒険に欠かせないね」
 普段と全く変わらぬ声音で返す。いつものことなのでオリオも特に気に留めない。
「さあ、星形の花と戯れに参りましょう」
 マーメイドラインのパレオを翻し、ぱしゃぱしゃと浅瀬を往く後ろ姿を見送りリュカは零す。
「……ん、お姉さんはロマンチストだ」
 けれど彼とて宝探しが嫌いなわけではないのは既に知れている。
──これが食べられるならいいんだけどな。
 水着ならば濡れても構わない。浅瀬にしゃがみ込み、見つけ次第手当たり次第わしわしゴリゴリ花を摘んでいくリュカ。
──草むしり感半端ないけど……。
 そんな彼とはまるで正反対に、オリオは水と戯れるように底を覗き込んでは、丁寧な手付きでそうっと手折る。そして顔を上げて、
「あら、リュカさま。あちらにも……? ……リュカさま?」
「……ん? え。ああ。本当だ。熱中してて気づかなかった」
 ごめんねと軽く謝る彼に、彼女はちいさく握った拳を口許に添えてころころと笑った。
「ふふ。黙々と作業する姿が微笑ましいですわ」
「お姉さんって変わってるね」
 そうですか? とやわい笑みを崩さない彼女に、特にそれ以上告げることもないから、ふたりは新しく見つけたポイントへと移動する。
 澄んだ水の向こう。さやさやと揺れる花々は鮮やかで。
 「……この色の違いはどこから来るのかな……」なんて風情もなにもないことを考えるリュカのパーカーの袖をオリオがついついと引いた。
「ね、リュカさま。リュカさま。見て、この花はリュカさまの瞳の色と同じですわ」
 そう言って彼の顔の前に差し出すのは、紺碧の星。
「夜へ炎のように鮮烈な蒼を染めた彩り……、あの太陽が沈んだら、同じ空が観られるのかしら」
 囀るみたいになんでもないことのようにすらすらと謳うオリオに、「うーん……」思い返す。あまりまじまじと自分の瞳の色を見るということもないけれど、
「そうだね。夜になる一歩手前は、こういう色になるかも」
 さすがのリュカもやや視線を落とし気味。そうしたら「あ、」見つけた、濃藍の星。
「だったら夜の色は……こんな感じ? 黒は何となくお姉さんの色だから、こういうのも似合うんじゃないかな」
「まあ、嬉しいですわ」
 黒薔薇咲く彼女の髪を思えば彼の印象はまず間違いはない。ふぅわりと破顔する無垢な喜色にまぁいいかとリュカも摘んだ濃藍を手許の束の中に押し込んだ。
 そう言えば川ですもの、魚も見られたら楽しそう、と話題を転じる彼女。んー。魚? 狩る? さっき居たよ。なんて返す彼。
 そうこうして、幾刻か。
 別に厳選したつもりはないが、ある程度落ち着いた色合いに纏まった自らの花束を満足気に見下ろして、オリオは振り返った。
「リュカさまはどんな色合いの花束になったかしら?」
「んー……」
 こちらも厳選する気など皆無であるが、草むしりもかくやという様子で摘んだものだから表現するならば『とりとめもない色合い』としか言えない状態だ。
 けれどやはり目立つのは一輪摘んだ、黒にも近い濃藍。
「……こうすると、黒って目立つなあ。ほら。どうぞ」
 お姉さんが一番目立ってるよ。なんて。冗談めかして口角を緩めて見せたなら、ぱちぱちとオリオは大きな瞳を瞬いた。
「わたくしの? ……あら、まあ。リュカさまもロマンチストね」
「……なんだ、聴こえてたの」
「ふふ、いいえ? ──ありがとうございます」
 笑みを隠しもせずに首を振ったなら、深更の女はどこか呆れている宵色の瞳の少年から花束を受け取り礼を述べたのだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ディフ・クライン
友の要(f08973)と一緒に、今年の水着で
【WIZ】

水底にも咲くなんて強い花だ
これを集めればいいのか

そうかもしれない
じゃあ、オレが川に入ってみようか
水中に咲く花を集めてみたいんだ

neige
肩に姿を現したシマエナガ姿の雪精を呼んで
一緒に探してくれるかい
飛んで、空からも探して
上からはどう見える?川がカラフルに見えるのかな
優しく摘んだ花をそっと抱えて、花束のようにして

見て、要
カラフルでとても綺麗だ

宝探しなんだって、要
辿り着く不思議の街はどんなところなんだろう
色々想像しながら道を探るのも
…「楽しい」、かな
胸の内に微かに兆す沸き立ちのようなものに名前をつければ
オレにも感情が咲いたように思えるだろうか


向坂・要
友人のディフ(f05200)とご一緒させてもらいますぜ
水着に上着着用(昨年の水着イラスト参照)(本体と同じ木肌の様な紋様が胴体に刻まれている)

ふむ、花を、ですかぃ
こういう時は手が多い方がいい、って言いますからねぇ
【第六感】やUCにより生み出した分体により拡大した感覚も使い探索

やっぱり水辺や川の中が多いんですかねぇ

と、それなら水中はお任せしますぜ
と分担して探索

見つけたらUCや【念動力】、自身の手で採取

妖精の国、ってのは確かにどんなもんか興味はありますねぇ
確かにこれは「ワクワクする」って奴で「楽しい」って奴なんだと思いますぜ

感情を胸に咲かす友につられたのか己の胸にも温かな気持ちが宿るのを自覚して



●色づくセカイ
 澄んだ音を立てて流れ往く水に指先を浸して、ディフ・クライン(灰色の雪・f05200)はその瑠璃色の瞳をそっと細めた。
「水底にも咲くなんて強い花だ」
 それは称賛であったかもしれないし、あるいはただの事実だったのかもしれない。
 立ち上がり「これを集めればいいのか」と告げる声音は普段と変わらず平坦で、だから向坂・要(黄昏通り雨・f08973)もいつもどおりに応じる。
「ふむ。花を、ですかぃ」
「妖精が、来るらしいから」
 ひとつ肯くディフに肩を竦めて要は『本体』を錬成ヤドリガミで複製していく。
「こういう時は手が多い方がいい、って言いますからねぇ。ところで、やっぱり水辺や川の中が多いんですかねぇ」
 ヤドリガミたる彼の本体は鉱物を削って彫られた細工物であるからして、別に水が苦手ということはない。ただ好きではない、それだけ。それだけだ、けれど。
「そうかもしれない。じゃあ、オレが川に入ってみようか。水中に咲く花を集めてみたいんだ」
 そう告げた友に、へえと微かに眉を上げたのは仕方のないことだと思う。
「それなら水中はお任せしますぜ」
 とん、とすれ違いざまに彼の肩に手を置いて、要は川縁を下っていく。
 ひとりになったディフは、ネージュ、と呼ばわった。先程友が触れた場所にひょこりと現れるのは、此度はシマエナガの姿をした雪精。
「一緒に探してくれるかい」
 穏やかな口調で依頼したなら、白くふかふかの小鳥──型の精霊は小さな翼を開いて茜色の空へと舞い上がる。
──上からはどう見える? 川がカラフルに見えるのかな。
 識ることのできない世界へ思いを馳せつつ、水面を割って彼は河の中心辺り、ネージュがくるり旋回する場所を目指す。
 一方で要も川縁にて点在する星の花をひとつひとつ摘んでいく。堂々と咲いて探す必要すらないようなものから岩場の蔭でひっそりと咲くものなど、同じ植物の生態とは思えぬほど千差万別で、なるほどなるほど、とひとりごちながら要は星を追った。
「見て、要」
 彼らが合流したのは、茜色の空にも随分と夜の気配が忍びこんで来た頃合いだった。
 それでもまだ残る陽の光に照らされたディフの摘んだ花束は、
「カラフルでとても綺麗だ」
「ええ、まったくです」
 普段から黒を纏う彼の手の中に、色とりどりの色彩が溢れているのが物珍しくて小さく笑った要に、変わらぬ表情のままディフは首を傾げ──「いえ、なぁんにも」あっさりとはぐらかされた。
 特に強く追及するつもりもない彼は、摘んだときと変わらぬ優しい手付きで花束を胸にいだいて、肩のシマエナガの小さな頭を軽く撫でた。
「宝探しなんだって、要」
 僅か顎を上げて澄んだ紫の瞳を細めた要の促しに、微かディフも肯く。
「辿り着く不思議の町はどんなところなんだろう。色々想像しながら道を探るのも、……『楽しい』、かな」
 人形の胸の裡に僅か燻るような、兆す沸き立ちのようなものに名前を付けてみたなら、
──オレにも感情が咲いたように思えるだろうか。
 星の花探しよりも手探りな彼の様子に、木肌の様な紋様の刻まれた胴体を覆う羽織を肩に掛け直して、要も返す。
「妖精の国、ってのは確かにどんなもんか興味はありますねぇ。ええ──確かにこれは『ワクワクする』って奴で『楽しい』って奴なんだと思いますぜ」
「……ワクワク……たのしい」
 まだ“落ちて”はいないのだろう。けれど懸命に手繰り寄せようとする友の姿に、要も己の胸の裡にあたたかな気持ちが宿るのを覚えるから。
「ま、とりあえず進んでみましょうや。一緒にね」
 彼は自らも摘んで寄せた花束を、夜を迎え始めたアイウォーラ川へと差し向けた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『花と星の妖精』

POW   :    花を操る
自身が装備する【色とりどりの花】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
SPD   :    森の恵み
【食べると幻覚が見えるキノコ】【硬く巨大なきのみ】【どっしりと実った果実】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    星詠み
【占い】が命中した対象に対し、高威力高命中の【様々な結果】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●夕影の妖精
 めいめいに詰んだ花を──花束を差し向けたなら、水面から、岩陰から、岸辺の草の間から、妖精達が姿を現した。
「お花をくれる? じゃあお花をあげる」
「それ以外にきれいなものを見せてくれる?」
「そしたら──ひみつの道を教えてあげる」
 きゃらきゃらと笑う妖精達に、猟兵達は意を得たりと肯き合う。
「捕まえてみて!」
 わあっと逃げ出した妖精達の向かう先は、もちろんアイウォーラ川。浅瀬を駆けて彼らと息を合わせれば妖精達はより喜ぶだろう。水が苦手? なら川岸に妖精をおびき寄せるような工夫をしてみて!
「ねえ、それとも占いをご希望?」
 結果に責任は取らないけれど!
 きゃら、きゃら、きゃら。
 あくまで楽し気な妖精達はどこまでも無邪気だ。当初の話のとおり、美しい効果を伴うユーベルコードを見せてあげれば満足するだろうし、通常どおり攻撃をしてもいい。
 つまり──楽しんだ者が勝者だ。
 
歌獣・苺
【彩夜】
綺麗なUCかぁ…
だったらスカイダイビングした時のあれで決まり!

さぁさぁ妖精さん!集まって~!今からとっても綺麗なお花の花火!見せちゃうよ♪見ないときっと…後悔するよ!

ときじ、ルーシーをおんぶしてあげてくれる?
そしたら私の首に腕回してね。
それじゃ、いっくよー!
『これは、皆を希望に導く謳』!

そう叫びながら大きなドラゴンに変身し二人を乗せて空高くまで飛び上がると大きな羽を広げ大量のガーベラの花を撒き散らす
ルーシー!ときじ!今だよっ!

さ!最後は2人で仲良く花火の中へスカイダイビング!行ってらっしゃい!(2人を背中から落とす)

水面ギリギリで2人をキャッチしてまた飛び上がる

…ふふ、楽しかった?


ルーシー・ブルーベル
【彩夜】

妖精さん、ごきげんよう
この花輪はだめだけど
他のお花だったらあげるわ

ドラゴンになった苺の背に……えっ、おんぶ?
えと、お言葉に甘えておじゃまします
十雉さんに力をいただいて
苺のガーベラと合わせて
青い花びらを夜空に咲かせましょう

花びらを繰り、
ホンモノの花火みたいな放射状やお魚の形にしてみたり
お二人はどんな形にしてみたい?
ええ、おまかせあれ!
妖精さんのリクエストもお応えするわ
占いは……そうね、ルーシー達とあなた達がこれからめいっぱい楽しめるかしら?

えっ、苺!?
天地がひっくりかえって目の前に水面が迫るも
わあわあ言いながら十雉さんにしがみつくだけ

……びびビックリした
もう、妖精さんよりイタズラさんね!


宵雛花・十雉
【彩夜】

スカイダイビング?
よく分かんねぇけど面白そうじゃん
オレも乗ったよ

まずは花火の客引きだな
寄ってらっしゃい見てらっしゃい
世にも珍しい花火大会だよ
なんと本物の花を打ち上げるときたもんだ
そこの妖精のお嬢さん、見ないと損だぜー?

あいよ、じゃあルーシーちゃんオレの背中にどうぞ
しっかり捕まってなよ

苺ちゃんが竜になりゃあ振り落とされないようにしがみつく
いやぁ、こいつはいい眺めだ
ド派手な花火を打ち上げられるように
2人をUCで強化するぜ
星型花火にも出来るかい?

今って…
き、聞いてねぇぞ!?
落とされたら花火の中へ強制ダイブ
悲鳴上げて落ちつつも
ルーシーちゃんは離さねぇ

し、死ぬかと思った…
ったくド派手すぎだっての



●フォーリンフラワー
「お花をくれる?」
 無邪気にそう告げて小さな手を無遠慮に突き出してくる妖精へ、青と黄色の花冠を頭に乗せたルーシー・ブルーベルはちょこりと水着のスカートを持ち上げてご挨拶。
「妖精さん、ごきげんよう。この花輪はだめだけど、他のお花だったらあげるわ」
 みて、たくさん摘んだの。お友達が摘み方を教えてくれたから。そう言って差し出す花に妖精たちもにっこり。
「きれいなものを見せてくれる?」
「それとも占いをする?」
 きゃら、きゃら、きゃら。笑う妖精たちへと視線を合わせて、ルーシーはこてりと首を傾げた。
「そうね、……『ルーシー達とあなた達はこれからめいっぱい楽しめるかしら?』」
 大きな期待と僅かの確信を持って伝えた問いに、妖精たちは手にした星の花を覗き込むようにして、それからくすくすと悪戯っぽく笑い合う。
「そうだね!」
「だめだめ、ないしょないしょ!」
「……?」
 それはルーシーの想定していた反応とはほんの少し、違っていて。瞬く彼女に構わず、妖精たちは飛び回る。
「綺麗な技、かぁ……」
 もふもふの手を顎に添えて、歌獣・苺は最近『綺麗』を感じた出来事を思い返す。そうして浮かんだのは、蝶と共に躍り上がった空。
「うん! だったらスカイダイビングした時のあれで決まり!」
 「スカイダイビング?」ぽむん、と手を打った彼女の大きな独り言に、宵雛花・十雉は短い眉を少し下げるけれど。『綺麗』にあてがあるならありがたい。
「よく分かんねぇけど面白そうじゃん。オレも乗ったよ」
「え、ほんと? ありがとときじ!」
 私だけじゃどうにもならないから助かる! なんて苺が笑えば、こっちの科白だよと彼も口角を緩め、「さて、んじゃアまずは」と浅瀬の空を飛び回る妖精たちへと声を張り上げた。
「寄ってらっしゃい見てらっしゃい、世にも珍しい花火大会だよ。なんと本物の花を打ち上げるときたもんだ! そこの妖精のお嬢さん、見ないと損だぜー?」
「さぁさぁ妖精さん! 集まって~! 今からとっても綺麗なお花の花火 !見せちゃうよ♪ 見ないときっと……後悔するよ!」
 十雉と苺が精を出して客寄せするのに、「ほんと? あれほんと?」「後悔する?」妖精たちがざわめく。だからルーシーも頑張ってお手伝い。
「本当よ。見てくれたら嬉しいわ」
 そうして観客が期待をめいっぱい籠めた視線を向けて来る中、苺はこれでよしと満足気に辺りを見遣って、そして振り向いた。
「ときじ、ルーシーをおんぶしてあげてくれる?」
「えっ、おんぶ?」
「あいよ。じゃァはい、どうぞ」
「えっ、えっと、……じゃあ、お言葉に甘えておじゃまします」
「しっかり捕まってなよ」
「そしたらときじも私の首に腕回してね」
「えっ、そ、その状態の苺ちゃんの首に?」
「? そうだよ?」
 えっえっ。だってだって。十雉とルーシーが想定外に戸惑うのにも構わず、苺は十雉の腕を掴んで「それじゃ、いっくよー!」我関せずとばかりに──最大の当事者だが──、大きく息を吸い込んだ。
「『これは、皆を希望に導く謳』!」
 それは希望の輪舞曲。その時望んだ姿になれる苺のユーベルコード。此度彼女が望んだのは、友達を空高くへといざなう巨大な竜の姿。大きくばさりと翼を打つ度、ガーベラの花弁が茜色の空へと舞い躍る。
 十雉とルーシーが想定していたのは、聞かされていたのは、この姿だ。
 身を叩く強風と揺れに夢中でしがみついていたのはしばらくの間。薄らと瞼を開けたなら、広い広い川へ茜から最後の黄金の光が差し込んで鮮やかに輝く水面に、幾多の花弁が降っていく。
「いやぁ、こいつはいい眺めだ」
 ぽつり零した十雉の後ろでは、声はなくともルーシーがこくこくと肯くのが判る。
「ルーシー! ときじ! 今だよっ!」
「よぉし。魅せてやんな、ルーシーちゃん。とびっきりの花火をな」
 彼の言葉はそのものがユーベルコード。鼓舞の意図がそのまま仲間の能力を増強する。
 ルーシーは身に借りた力が満ちるのを感じながら、十雉の首に回した腕の指を動かす。ぴょいと彼女の肩に乗り上げたのは青いうさぎさん。さあ打ちあがれ。
──青い花びらを空に咲かせましょう。
 うさぎさんが彼女の肩から高く高く跳んだ先で弾けて、ガーベラの花弁を覆うみたいに降り注いだのは釣鐘水仙。
 任意の相手を狙い討つことのできる力を利用して、ホンモノの花火みたいに放射状に散らしてみたり、あるいはお魚の形を象ったり。
「お二人はどんな形にしてみたい?」
「星型花火にも出来るかい?」
「いちご、いちごは?」
「ええ、おまかせあれ!」
 彩る花火の形は自由自在。眼下ではさすがにドラゴンの高度にまでは飛べないらしい妖精たちの小さな小さな姿が、こぞって花火に釘づけになっているのが見える。
 それを苺の変身する竜の首の傍から覗き込んで眦和らげるふたりへ、苺が笑った。
「さ! 最後はふたりで仲良く花火の中へスカイダイビング! 行ってらっしゃい!」
「えっ、苺?!」
「き、聞いてねぇぞ?!」

 そして竜は突然の背面飛行!
 背に乗っていたふたりはあっというまに花火の環を通り抜け、川へと真っ逆さま!

 悲鳴のユニゾン。しがみつくルーシーを決して離すまいと十雉も腕に力を籠めた。
 目に留めることもできぬ疾さで飛んでいく景色、迫る水面。なにせこの川は浅いのだ、墜ちたら猟兵と言えども無事では居られない。
「「……ッ!!」」
 ふたりが衝撃に耐えんと固く瞼を閉じたそのとき。羽搏きと共に、大きな翼がふたりを掬い上げた。もちろんそれは竜と化した苺。
 彼女の脚が川面を裂いて派手に水飛沫が散った。
「……びびビックリした……」
「し、死ぬかと思った……」
「ふふ、楽しかった?」
 未だばくばく言う心臓を抑えつけるふたりに、苺のあっけらかんとした声が届く。楽しい? 楽しさなんて感じる暇もなかった。
 なかった、……はずだけど。
「もう、妖精さんよりイタズラさんね!」
「ったく、ド派手すぎだっての」
 どうしてだろう。怒る気にもなれないのは、──楽しかったから、なのかもしれない。
 気が抜けたと緩む表情は確かに、笑っていたから。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ガイ・アンカー
【錨海】
アドリブ◎
『68』

ちっこいのがわらわらと…
…ん?
テティスの提案を頷きながら聞く
─応、任せな

生憎、俺が見せられる綺麗なものなんてテティスと花で飾ったシルヴィアぐらいでね
ま、遊んでやるくらいはしてやるよ
妖精共を追いかける…と見せかけ
【蒼海の錨鎖】で鎖を川底に螺旋を描くように伸ばし
一気に水と川の石を空へと巻き上げる!
ほれ、あとは任せたぜ。テティス

─錨の頃、海中で見た魚群のような星の群れに
俺も目を惹かれる…が、
…おい。星型が俺の方にも来てないか?
気ぃ抜けそうな声援に髪をガシガシと
お前なぁ…わあったよ
お望み通り、俺に降ってくる星型は錨でフルスウィングだ
宙と水に還れってな!
…はは、お気に召したかい


テティス・カスタリア
【錨海】
『75』
「…何かいっぱい来た」
海精とは大分違う性分みたい
…ふむ
「ガイ、ちょっと手伝ってほしい」
ガイの耳元でごにょごにょ

オブリビオンだけど
殲滅しなくていいなら雑把にやる
巻き込むのは巻き込んで、残っても技に満足してくれればいい…筈
「望む未来、描く星」
オーブは仕舞ったままだから、久々に腕振りで力のベクトルを操作
ガイが巻き上げてくれた川の石、全部星型のエネルギーに変えて
「…流星分解」
夜になるのもきっと待てないようなタイプ…なら出し惜しみの無い流星群、見せてあげる
一度宙を魚の群れみたいに泳がせてから
「降れ」
…あ、ガイに、避けてって言うの忘れた
打ち返せたりするかな
「がんばれー」
おー(ぱちぱちぱち)



●水底の星は空を墜つ
 セーリングカヌー『シルヴィア』にたっぷり積んだ星の花の周囲にも、妖精たちは現れては花籠と化した彼女に羨望の眼差しを送り続けていた。
「……何かいっぱい来た」
「ちっこいのがわらわらと……」
「お花、お花くれる?」
「それかきれいなもの見せてくれる?」
 海賊船の乗船者であるふたりの視線は妖精そのものの存在への興味よりも、奇異なもの──宝へと繋がるものだという認識からあまり逸れることはないらしく。
「……海精とは大分違う性分みたい」
 お愛想程度の興味を差し向けたテティス・カスタリアは「……ふむ」と口許に拳を寄せて、それから水面を浮いたままガイ・アンカーへと近付いて相手の耳へ声を届ける。
「ガイ、ちょっと手伝って欲しい」
「……ん? ふんふん……、──応、任せな」
 妖精たちに聞かれないようにこっそりと作戦を受け取って。
 にぃ、とガイは口角を上げて錨を繋ぐための太く重い鎖を肩に担いだ。
「生憎、俺が見せられる綺麗なものなんてテティスと花で飾ったシルヴィアぐらいでね。ま、遊んでやるくらいはしてやるよ」
「えー、くれないのー」
「じゃあ捕まえてみてよ!」
 唇を尖らせた個体さえ、すぐにきゃらきゃらと笑い出して水面を滑るみたいにして飛んでいく。
 錨そのものとはまだ繋いでいない。それでも、船を繋ぎ止めるための鎖だ。生半な重さではなく、当然ガイとしては慣れた重量ではあるものの、身軽に逃げていく妖精を気軽に追えるかと言えば、そんなことはないわけで。
「ははっ、速いなお前ら! なら俺も道具を使わせてもらうか」
 あっさり認めて鎖を水に浸ける。蒼海の錨鎖──アンカーチェーン。ただでさえ長い鎖の射程や威力を三倍に跳ね上げるユーベルコード。
 川底を這うように自我でも持つかの如く滑り出す結びの鎖は螺旋を描き──、
「そらっ!」
 逞しい腕がその鎖をいとも簡単に見える動作で引く。たったそれだけで螺旋が巻き込んだ水流ごと、川底のまるい石達が空高く舞い上がった。
「ほれ、あとは任せたぜ。テティス」
「……ん、」
 降りしきる大粒の水滴はほとんど豪雨のような様相だったけれど、テティスにとってはあるもないも変わらぬ程度の事象だ。
──オブリビオンだけど、殲滅しなくて、いいなら。
「望む未来、描く星」
 技の精密さは、さほど必要ない。討ち漏らしがあったとしても技自体の美しさに満足してくれればいい、……はず。
 うん、とひとつ肯いてテティスは腕を持ち上げる。普段力を制御しているオーブは現在銀王冠の中だから、久々に誘導するのに腕を使う。
 上空高く飛ばされたはずの川底の石達は重力に従い既に勢い乗せて落下のさ中。その落石群へと掌を向ける。
「……流星分解」
 彼の囁く程度の詠唱に、石の質量達は大小様々な星型のエネルギーへと変換された。
──夜になるのもきっと待てないようなタイプ……なら出し惜しみの無い流星群、見せてあげる。
 くるり、手首を捻る動きで星々のエネルギーが中空を魚の群れのように回遊する。その様に錨だった頃に海中で見た魚群を思い起こして、ガイもただそれを凝視した。
「降れ」
 命令は簡潔。
 持ち上げた腕を妖精たちに向けて振り下ろす。と。
「……あ」
 その、『妖精たち』の傍には。
──ガイに避けてって言うの忘れた。

──……おい。俺の方にも来てないか?
 至極自然な流れで、ガイ自身も気付く。ここは『範囲内』だと。
「がんばれー」
「お前なぁ……!」
 まったく気の抜ける声援にガイはガシガシと髪を掻き交ぜ、「わあったよ」。
 そのいつもどおりのぼんやりした瞳に宿った好奇心と、揺るぎない信頼を勝手に感じることにして。
──お望み通り、フルスウィングだ。
「宙と水に還れってな!」
 超大な錨を、全身を使って叩き込む。石の質量をエネルギーに変換したその力は決して小さなものではなかったけれど、全力で叩き付けた錨によって彼を襲った凶星は散り散りに飛んで消えた。
「おー」
 ぱちぱちぱち。驚く様子は一切なく、ただ『彼ならばできて当然であったろうことの質が良かった』という称賛の拍手に、ガイにも特にマイナスの感慨は湧かない。
「……はは、お気に召したかい」
「ん。美しかったと思うよ。……ところでどうしてガイの方が濡れてないのかな」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

天音・亮
ロキ(f25190)と

ロキは何かあの子達が喜びそうなUC使える?
私はまだ早く走るしか脳がなくてさ
ステージは用意するからあとはお願い!

さあ、追い掛けっこなら負けないよ!
soleilのヒールをカツンと鳴らして響く駆動音をBGMに
妖精達を一点におびき寄せる様に速さで誘導していく
巻き起こる風で花弁が舞い飛んで
蹴り上げた川の水が飛沫をあげて
暮れ時の空に夕日が差し込む水玉がほら、綺麗でしょ?

ステージが整ったならきみの隣へ
ロキの出番だよ
きみが思うまま、きみが綺麗だと思う景色を私にも見せて
はーい拒否権は無しでーす
なんて笑って背中を押そう

大丈夫
きみが生みだす景色は、きっと

ああ、ほら──


ロキ・バロックヒート
亮ちゃん(f26138)と

お花は気に入ってくれたみたいだね
妖精たちが喜びそうなものかぁ
俺様は逆に走ったりとかちょー苦手でさ
うんと考えるからそちらは亮ちゃんにお願いするよ
さぁいってらっしゃい

さてどうしようかなって
妖精たちと追いかけっこするさまをのんびり眺めて
そのうち眼を奪われる
あわいオレンジの舞踏会
水と風がおとを奏でて
駆ける君も妖精みたいで
あれぇもう終わり?
君のステージも綺麗で素晴らしかったのに

拒否権なしかぁって笑って
じゃあ―神様が見せてあげる
空に手を伸ばして光を招く
世界を灼くはずの眩い白は
川に水飛沫に反射してきらめいて
織り成しそらに浮かぶはにじいろの
花と妖精たちと―君に灯る【祝福】となるだろう



●その身に出来ること
 集め直した星の花を嬉しそうに連れて行く妖精たちの姿にロキ・バロックヒートは軽く吐息を零した。
「お花は気に入ってくれたみたいだね」
 星の花で満足した子たちはそれでいい。あとはきれいなものを見られるとわくわくしている残りの妖精たちだ。
 うーん、と天音・亮は首を捻る。陽光を縒ったような金糸がさらりと肩を流れる。
「ロキはなにかあの子達が喜びそうなユーベルコード使える?」
「……喜びそうなものかぁ」
 彼は救済と滅びを司る破壊神。喜び、という感情と繋がるものならば救済だろうが。
 歯切れの悪い回答をするロキに、亮は相変わらずの明瞭さで両の手を合わせた。
「私はまだ早く走るしか能がなくてさ。ステージは用意するからあとはお願い!」
 彼女の言葉にけれどロキは感心を露わに、黄金の瞳を瞬いた。
「俺様は逆に走ったりとかちょー苦手でさ。うんと考えるからそちらは亮ちゃんにお願いするよ」
 さぁ、いってらっしゃい。
 そう送り出されたのなら、手加減も情けも必要ない。
 期待されれば応じるのがヒーローだ。軽く膝を曲げて、伸ばして。上げた視線は力強い光を灯して輝く。
「さあ、追いかけっこなら負けないよ!」
 踏み抜いた水面。底のまるい石に武装ブーツの踵をカツンと鳴らしたなら水中であろうとその音は鮮やかに耳に届く。駆ける疾風──マカニ。超速の移動を可能とする亮の得意技だ。
 きゃあきゃあと声を上げて広い川へと散るように逃げていく妖精たち。
「こっちは行き止まりだよ」
 その行く手へと回り込む疾さで立ち塞がれば、妖精たちは弾けるように笑って方向を変える。
「止まったら捕まえちゃうよ!」
 ひとりの右手に現れたかと思えば、ひとりの左側に顔を出す。そうしてひとところへと誘導していく。
「……」
 さてどうしようかな、と。約束どおりにのんびり考えるつもりだったロキの目は、いつしか亮の姿にすっかり奪われてしまった。
 長い脚が迷いなく水面を割り、弾ける雫が茜に差す夕陽に輝く。彼女の速度につむじ風が巻き起こり、どこからともなく舞い込んだ花弁と共に金糸の髪が躍る。
 ほら、綺麗でしょ? 誇らしげにさえ見える笑顔は鮮やかで。
 それはまるで、水と風がおとを奏でる、あわいオレンジの舞踏会。
──駆ける君も妖精みたいで、
「あれぇもう終わり?」
 君のステージも綺麗で素晴らしかったのに。気付けば舞踏を終えて軽い足取りで傍へと戻ってくる彼女の姿に、ちゃらりと首枷の鎖を鳴らしてロキが首を傾げる。
「もうって、私は役目を果たしたんだから、次はロキの番だよ」
 さすがに息のひとつも乱れてはいないけれど、見れば河半ばに集められた妖精たち。あっと言う間だったと感じるほど、ただ彼が見入っていたという証左だろう。
 彼女はスピードに特化しただけのヒーローなのではない。パフォーマンス──魅せる術に秀でたヒーローだ。
 ちょっとした岩場に腰掛けていたロキの手を引いて立たせて、亮は笑う。
「きみが思うまま、きみが綺麗だと思う景色を私にも見せて」
 はーい拒否権は無しでーす、なんて言いながら背中を押したなら、拒否権なしかぁ、とロキも諦めたようにぱしゃぱしゃと浅瀬を数歩。
「じゃあ──神様が見せてあげる」
 甘やかな声が囁いて茜に紺が混ざり始めた空へと伸ばした右手。大丈夫。確信にも近い思いで亮は期待を籠めてその手の先を見つめる。
──きみが生み出す景色は、きっと。
 そこからまっすぐに川へと降り注いだ眩い白光の筋。
──ああ、ほら、
 分厚い雲の隙間から差し込む一条の光のような、けれど空に雲はないからこその奇跡はなにものをも傷付けることなく、彼女の呼び起こしたつむじ風の残滓に踊らされていた雫に、川面に反射して幾多と煌めいて、弾ける、にじいろ。
 どうだい、と。
 ロキは光を背に、両の手を広げて亮へと振り向く。
「花と妖精たちと──君に灯る祝福となるだろう」
 かみさまの表情は、逆光になってわからないけれど。亮はただ、拍手を贈った。
「素敵だったよ!」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

グァーネッツォ・リトゥルスムィス
88
相手はオブリビオンだけど平和に、何より楽しく解決できる手段があるなら取らない訳にはいかないぜ

水着の上から商竜印の竜騎士装備を身に着け、炎雷氷の三属性を駆使して
小さな灯や電気を半透明の氷で閉じ込めたキラキラの球を何個も作るぜ
灯や電気も赤い炎に蒼炎、黄色い雷に紫電と色とり様々だ

これだけでも綺麗だけどここからが本番!
大道芸のパフォーマンスのように球をオレとファンの早業でジャグリングしながらも妖精達と追いかけっこだ
妖精達が逆に寄って来たくなる程アグレッシブに、それでいてビューティフルにファンと息を合わせて
場の空気が最高潮になったら球を砕いて小さな花火の完成だ!
どうだろう、満足して頂けただろうか?


千波・せら
13

妖精が沢山!
綺麗な物もお花もあげるよ。
私に任せて!

……わ!水に濡ちゃう……!
イタズラが大好きな妖精なんだね!
よーし、私もやっちゃうよ!
覚悟してね!

氷属性。
氷の結晶を具現化させて、それから天候はそよ風。
優しく吹く風に具現化させた氷の結晶!
妖精たちの水飛沫も相俟って、キラキラの粒が増えて綺麗でしょ?

もっともっと、水飛沫をあげよう!
濡れたらちょっぴり寒くなるけど
綺麗だから何度でもやりたくなるよね。
何度でもやっちゃおう!

寒くなったら水辺を離れて一緒に遊ぼう。
何をして遊ぶ?
お花を摘んで花束にしちゃう?

妖精と遊ぶのも楽しいな。


クロム・ハクト
こんな時のためにももう少し華のあるものでも使えたなら良かったか
無いものを嘆いても仕方ないが

まねっこで満足してもらえるとは思わないが
それでも興味(足止め或いは誘い込みなど)になればいい
使うのはオペラツィオン・マカブル
きれいや派手になりそうなのはきのみで水柱が立つかも程度か
攻撃系UCは摘まずにいた花も巻き込みかねないことを考えると気が引けたのもある

子供(?)を満足させるというのも難しいもんだな
(というより妖精だしオブリビオン、というのはさておきつつ)

他の人のUC或いは活かし方には感心示し

アドリブ・絡みOK



●逸楽、創意工夫
 至るところから顔を出した存在に、千波・せらは咄嗟に両手を口許に添えた。
「すごい、妖精が沢山!」
「ねえ、お花をくれる?」
「それとも他のきれいなもの?」
 きゃらきゃらと警戒心なく近付いてくる姿に、せらは丸くなった瞳を今度は和らげる。
「綺麗な物もお花もあげるよ。私達に任せて!」
「ああ! オレも精一杯綺麗なものを見せてやるぜ!」
 グァーネッツォ・リトゥルスムィスも傍で大きく肯き、ぐっと拳を握って見せる。相手がオブリビオンでも平和に、なにより楽しく解決できる手段があるなら取らないわけにはいかないと。
 戦うことは好きだが、それ以外の楽しみも充分に知っている彼女は心に決めている。
 意気込む娘達の一歩下がったところで、クロム・ハクトは僅かに耳を下げた。
 彼は使命に生きてきた処刑人だ。正直な気持ちで言うなら魅せる技など荷が重い。確実性と効率性こそが優先されるべきと磨き続けてきた。
──こんな時のためにもう少し華のあるものでも使えたなら良かったか。
「……無いものを嘆いても仕方ないが」
 もちろん、だからと言って諦めるつもりはない。
 手段がないなら創るまで。やりようはある。顔を覗き込んで来る妖精のひとりに、まあ期待せずに待っててくれ、と控えめに言いたい気持ちで肯いて見せる。
「まずはオレからいくぜ!」
 そう言ったグァーネッツォの装いは、水着の上に商竜印の竜騎士装備。金銭で契約した商竜から借り受けた炎竜の手袋・氷竜のマフラー・雷竜の履物は、高い契約金だからこそその性能は折り紙付きだ。
 髪に揺れる珊瑚も相俟って、海の龍の如きいでたちで、彼女はまず薄くけれど溶けない氷の球体をいくつも創り出した。そしてその球体を両手で包み、意識を集中する。
 炎の熱と、雷の電流と、氷の冷気を纏う彼女の瞳が鮮やかに輝いて──両の掌を開いたとき、そこには、
「すごい! 火が入ってる!」
「こっちはパチパチしてるよ!」
 小さな小さな燈火や雷──それも赤や蒼の炎に、黄色に紫の電光と取り揃えたそれらを閉じ込めた氷のボールに、妖精たちはかぶりつきだ。
 ついでにクロムとせらもその不思議な氷を目を丸くして見つめている。
「すごいな……あんな使い方もできるのか……」
「ね! 勉強になるなぁ……!」
 無垢で熱心なまなざしに「へへ、」グァーネッツォもさすがにちょっぴり照れてしまうけれど。
「けどオレの技はここからが本番! ──ファン!」
 “ファントムドラゴン”を呼んだなら心得たとばかりに相棒は素早く距離を取り、彼女もファンが振り返ると同時に氷球を順に投げ上げ、自身も駆け出した。
「えっ?」
 思わずせらが声を零す。けれど放られた球体をファンは器用に鼻面で翼で尻尾で、駆け出した彼女の行く手へと打ち返す!
 それはまるで大道芸人同士の息の合ったジャグリング。
 駆ける彼女の先を飛ぶ妖精、あるいは彼女達を追う妖精。滑りやすい足許にも構わず、グァーネッツォは炎と雷の球体をいくつもいくつも空を舞わせ──そして。
「さあ、クライマックスだぜ!」
 いっとう高く放り出した球体。それを目掛けて次の球体をぶつけたなら弾けた炎と雷が茜の空に咲いた。
 息つく間もなく次々と投げては幾多の花火が空を彩り、最後のひとつが弾けたのを見届けてから、彼女は妖精たちへと腰を折って見せた。
「どうだろう、満足して頂けただろうか?」
 ほんの一瞬の、間。
 そのあと、どっ、と場が沸いて、拍手の代わりに妖精たちがめいめいに水面を叩いたり蹴り上げたりするものだから、たいへんな量の水がグァーネッツォのみならずせらまでを呑み込んだ。
「わ!」
「わー?!」
「おい、掴まれ!」
 危うく足を取られて流れに捕まるところだったのを、クロムの繰る白黒熊猫のからくり人形が救い出す。
「こ、これが称賛なの?」
 イタズラが大好きなんだね、とちょっぴり呆れた気持ちでせらは濡れた髪を掻き上げるけれど、湧き上がるのは笑ってしまいたい気持ちの方が強かった。
「よーし、私もやっちゃうよ! 覚悟してね!」
 胸の前でそっと包んだ自らの手。
 それをそっと開いたなら、そこに生まれていたのは氷の結晶。エレメンタル・ファンタジア。属性が決まったなら次は天候──そよ風。
 生まれたばかりのそよ風は氷の結晶を連れて、妖精たちが巻き上げた水飛沫との共演に輝く。
「どう、キラキラの粒が増えて綺麗でしょ?」
「きれい、きれい!」
 きゃらきゃらと妖精たちは無邪気に喜んで、ついでにまた水面を叩く。けれどせらも、もう学習している。むしろ、妖精たちが求めているのなら。
「もっともっと、水飛沫をあげよう!」
 夜に差し掛かった時間ではあるけれど、綺麗だから何度でもやりたくなる気持ちも理解できるから。
「何度でもやっちゃおう!」
「よし。それなら俺も手伝えそうだ」
 応じたのはクロム。傍らに寄り添う妖精に声を掛けて、彼が喚び出してもらったのは、硬く巨大なきのみを初めとした、森の恵み。それを受けて──からくり人形から排出することができるユーベルコード、オペラツィオン・マカブル。
「もちろん、まねっこで満足してもらえるとは思ってないが」
 妖精たちよりもいっそう、魅せることを目的とした使い方をすることはできる。クロムは限界まで高く熊猫を跳ばせて、そして川面に向けて巨大なきのみを打ち出した。
 重力の加わったきのみは水面を突き破り、大きな水柱を立てて激しく飛沫を散らした。
「あははははっ! すごいね!」
 思わずと言った様子でせらが笑い、飛沫に“被爆”されたグァーネッツォも目を丸くしてから笑った。当然クロムは思い掛けない効力にうろたえ謝罪したが、元より濡れることを前提として向かっている猟兵達が気にする様子は一切なかった。
 森の恵み自体が攻撃を目的としたユーベルコードではないこともあり、周囲や仲間への所謂『ダメージ』は一切ない。それを確認して、クロムは小さく安堵の息を吐いた。
 水飛沫を立てるだけなら攻撃するだけでも可能だ。けれどそれを敢えて選ばなかったのは、未だ水の中に咲いているはずの星の花や、周囲に泳いでいる川魚たちを巻き込みたくなかったからだ。
 これできのみによる被害が出ていたら本末転倒だったが、クロムの読みは正しかったと言えた。
 精霊も激しく舞い上がったきらきらの飛沫に満足気に笑っている。
──子供を満足させるというのも難しいもんだな。
 そう思うクロムとて(目覚めてからの記憶が正しければ)まだ十五年程度しか生きていないわけではあるのだが、彼自身の嘘偽りない感想だった。相手がそもそも妖精だったりオブリビオンだったりすることは、一旦横に置いておいて。
「寒くなったら水辺を離れて遊ぶのもいいよ。なにをして遊ぶ? お花を摘んで花束にしちゃう?」
 しゃがんで妖精たちと視線を合わせて、せらが提案したなら彼らは「ううん、」と首を振った。
「たくさんきれいなものを見せてもらったから、ひみつの道に案内するよ!」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

向坂・要
ディフ(f05200)と

そうですねぇ
折角のお誘いですし乗らない手はありやせんね

集めた花を共に妖精へ

あちらさんのおめがねに適えばいいんですがね
なんて言葉と裏腹に楽しげな声色で

友達の描く水上に煌く星に感嘆の口笛1つ
へぇ
そういうことなら…

巨大な白狼の姿に転じれば大気に宿る水の精霊の力も借りて
生み出された氷の星や空をも足場に自在に駆け虹を描き

良かったら乗っていきますかぃ?
足には自信がありますぜ?
なんて友を誘い
妖精と戯れ

83


ディフ・クライン
要(f08973)と一緒に

妖精が遊ぶことを望むのなら
オレは遊んであげたいな
要、構わないかい?
じゃあ行こうか

浅瀬に入り妖精に歩み寄り、カラフルな花を束ねたブーケを差し出して
この花、受け取ってくれるかな
膝をついて、彼女達の欲しい儘に贈ろう
それから綺麗なもの
雪精のneigeを肩に呼び手伝ってもらおうか
「…君はネージュ。極寒の雪精。氷の粒を作ろう。この空にばら撒いて、星を作ろう」
空に氷の粒を撒いたなら、夕焼けの陽に煌いて綺麗かな

そうしたら…要、走る?
大きな白狼に転じた友に瞬いて
縦横無尽に駆ける様を目で追い

…うん、じゃあ乗せてくれるかい
ひらり友の背に飛び乗ったなら
妖精と共に川を思い切り駆け抜けようか



●双白
 広い川の半ばへと身軽にと飛んでいく妖精たちを見送って、ディフ・クラインは緩やかに瞬いた。
「……妖精が遊ぶことを望むのなら、オレは遊んであげたいな」
 そして緩慢な動きで同道の友を振り返る。
「要、構わないかい?」
 そのいつもと変わらない青い眼差しに、向坂・要は「そうですねぇ」ぴるりと三角の耳を震わせた。
 塞がれていない左目がちらと茜色の空を泳ぐいくつもの姿を捉える。
「折角のお誘いですし乗らない手はありやせんね」
 ワクワクな気持ちはもちろんまだ消えていない。口角を上げて応じた要の返答にディフは肯き、彼はもう一度水面を掻き分けて浅瀬を行き、要はそれを見送る。
「あちらさんのおめがねに適えばいいんですがね」
 なんて嘯きながらも、楽し気な声音で要は川面に向けて摘んだ花を掲げて見せたなら、寄って来た妖精たちにディフが浅瀬に膝をついて花束を差し出した。
「この花、受け取ってくれるかな」
「もらうもらう!」
 くるくるとスカートのような衣服を揺らした妖精たちが彼に近寄って行き、カラフルな花を好き好きに引き抜いていく。
 すっかり手許からなくなった感触を、軽く指を握り開いて追ってから。それから綺麗なもの、だね。ディフは肩に停まったままのシマエナガの形を取った雪精へ視線を向けた。
 その嘴をそっと撫でる。
「……君はネージュ。極寒の雪精。氷の粒を作ろう。この空にばら撒いて、星を作ろう」
 空は茜。夕焼けに夜の融け始めた時間帯。煌めく透明は光を弾いて綺麗だろうか。
 ディフの命を受けて、翼を広げた小鳥は大きく円を描くように空へと舞い上がりながら鷲の如き大きさへと膨れ上がり、その大きな翼を羽搏く度に煌めく氷の雨が降る。
 それは想定どおりに中空へ舞う星となって輝いた。
 軽快な口笛をひとつ。浮かび上がる景色への感嘆を籠めたその意を正しく汲み、ディフは胸に片手を添え、軽くけれど恭しい礼を返す。
 きれい、きれいとはしゃぐ妖精たちは、岸辺の要を振り返った。
「きみは? きみは?」
「まあ、そういうことなら……」
 小さく肩を竦めて笑って見せてから、要は瞼を伏せた。──偉大なる精霊よ。胸の裡で呼ばう。解き放つ力は大地と共にありしもの──シュンカ・マニトゥ・ウゼン。
 身がみしみしと音を立てて軋る。初めて見る友の様子に思わず瞬くディフの前で、要の姿は白銀の毛並を持つ大狼へと変貌した。
 開いた左の紫。水は苦手だ。けれど大気に宿る水の大精霊の加護も受けて得たこの身であれば。狼は逞しい脚を水面に踏み出す。それは沈むこともなく、ひたりと水面を踏んで波紋が渡る。
 狼の口許が吊り上がり、同時に彼は強く水を蹴った。空へと駆け上がった白銀の狼は、雪精によって舞い散る氷の星をも足掛かりに高く素早く跳んで、その軌跡に虹を描く。
 茜に幾多と引かれていく虹色の橋を、少しばかり口も開けて目で追う友のなかなか見ることのできない無防備な──あるいは幼さの滲む表情に、要は笑う。
「良かったら乗っていきますかぃ? 足には自信がありますぜ?」
 ぱしゃ、と。
 ディフの傍の水面に降り立ったなら、弾ける水滴は想定以上に強くて自らにも通り雨の如く降り注ぐから、要はその巨体を大きく震わせて水気を払う。
 当然飛沫はディフを直撃したけれど、彼は特に表情を変えることもなく「……うん、」こっくりと肯いた。
「じゃあ乗せてくれるかい」
「お安い御用ですぜ。驚いて落っこちねぇようにしてくださいや」
「判った」
 からかう要の口振りにも生真面目て応じるディフも、もはや想定内。小さく笑みを零して白銀の狼は白い鷹の泳ぐ空へと再び駆け上がった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キトリ・フローエ
『28』

追いかけっこね、負けないわよ!
高度は低めに、時々水面を翔けたり潜ったりしながら
妖精達の速さに合わせて飛んでいくわ
水の精霊に呼びかけて輪を作ったり
他にも一緒に遊ぶ子がいたら動きを合わせましょう
一人よりも二人、皆で遊んだほうがうんと楽しいわ!

折角だからラッキーアイテムか何かを占ってもらおうかしら?
結果に一喜一憂しつつ
差し出した手を取ってくれたなら、一緒にダンスも楽しそうね
勿論、めいっぱい濡れても大丈夫よ!
心ゆくまで遊んだなら空色の花嵐を
遊んでくれたお礼に、お花はお花でも
とっておきのきらきらしたお花を見せてあげるわ
お星さまのお花もとっても綺麗だけど
あたし達のお花だって負けないくらい綺麗なのよ


ネムリア・ティーズ
こんなに隠れていたんだね、少しびっくりした
はじめまして、ちいさいひと
ボクともあそぼう?

おいかけるのって楽しいね
水辺を走るのもはじめてだけれど
ぱしゃり、はねる水音が面白くて、夢中になってかけてゆく

追跡はとくいなんだ
ころばないように走り方を覚えるのも

ふふ、つめたい
すごいね、こんなこともできるんだ
びしょぬれになっても楽しい

お返しだよ
すくうように水面を蹴り上げて
きらめく飛沫が気を引く間に【胡蝶廼彩色】

見て満足してくれるなら、銀の粉がふれないように蝶をとばすよ
遊び足りないのなら、あざやかな夢を、キミに
輪になって蝶が舞う
月のひかりと一緒に踊ろう?

眠ったキミを優しくつかまえたい
道案内のお礼になったかな

◆65


リリヤ・ベル
碧の花はふしぎへの切符。
ひたひた、ぱしゃぱしゃ。転ばないよう、妖精さんを追いかけましょう。
わたくしはレディですけれどおおかみなので、追いかけっこはとくいなのですよ。
水をかぶったってへっちゃらです。
おかげさまで、おみずには慣れましたもの。

妖精さんは、おはながおすきですか?

鐘を鳴らして呼ぶのはみどり。
いろとりどりの、花の雨。
たくさんたくさん降らせましょう。
水のなかに咲くおはなもすてきですけれど、空に咲くおはなもきれいですもの。
すきないろは、なにいろでしょう。
おおきな花束をつくるのです。

かわいらしくとも、わかりあえないものだとしても。
それでも、納得して還っていただけるなら、それがよいのです。

【31】



●ひとりと、ひとりと、ひとり。
──碧の花はふしぎへの切符。
 差し向けた可憐に揺れる花をリリヤ・ベルがぱちぱちと瞬きつつ見つめる横で、わ、と思わず澄んだ宵空色の瞳を丸くしたのはネムリア・ティーズ。
「こんなに隠れていたんだね、少しびっくりした」
「ふふ、びっくりした?」
「びっくりさせた?」
 周囲に現れた妖精たちがきゃらきゃらと笑うのに、ネムリアはそっと水着のスカートを抓んで挨拶をする。
「はじめまして、ちいさいひと。ボクともあそぼう?」
「遊んでくれるの?」
「なら、捕まえてみて!」
 翅も翼もないのに川の上へと飛んでいく姿に、キトリ・フローエはきらきらと大きな瞳を輝かせた。
「追いかけっこね、負けないわよ!」
「ええ。わたくしはレディですけれどおおかみなので、追いかけっこはとくいなのですよ」
 青と薄桃の翅をそよがせて、水面近い場所を飛ぶキトリを追うように、ワンピースの裾を揺らしてリリヤの素足が水底のまるい石を踏む。
 最初こそ滑ったり転んだりしないように慎重だった足取りも、学習を繰り返せば次第に軽く踊るようなそれへと変わっていく。
 ひたひた、ぱしゃぱしゃ。跳ねた水すら楽し気に。
──おかげさまで、おみずには慣れましたもの。
 若菜色の双眸を和らげてちょっぴり振り返る先はネムリア。くるり、ちょうど妖精へと手を差し伸べて水際でターンしたところだった彼女の、煌めく銀糸が弧を描いて散った雫と躍る。
 視線が合ったなら、ネムリアはふふと小さく笑った。
「おいかけるのって楽しいね。水辺を走るのもはじめてだけれど、音も、触れる感触も、なにもかも」
「ええそうね! あたしも自分よりちいさいひとを追いかけるのはなかなかないできない体験よ」
 水を切るみたいな速度で細い手を伸ばして。すんでのところで急ブレーキした妖精が、悪戯心いっぱいにめいっぱい水面を叩いたから、伸ばした手ごとキトリはびしょ濡れ!
 勢い余って水に潜った彼女は、くるくるっと回転しながら中空へと舞い戻り笑った。
 その回転で翅を包んだ水滴達が周囲に散る。
「やったわね!」
「きみの大きさはボクらと近いもの、慣れてるよ!」
「占い結果、転倒にご注意っ、だよ!」
 キトリをからかった妖精たちは、そのままネムリアの足許から間欠泉のような水柱──ただしサイズは彼女の腰くらい──を呼んで、思わず足を引いた彼女はひっくり返ってしまいそうになるのをなんとか堪えた。
 その雫はちょっぴりリリヤの鼻先もくすぐったけれど、へっちゃらだ。
 やりましたね、とやり返したい気持ちはむずむずしたけれど。レディたるもの、そんなことはしないのですと胸を張る彼女の揺れる耳をキトリは微笑ましい気持ちで眺めた。
 ぱたぱたぱた、と収まっていく水柱に、ふふ、とネムリアは笑みを零す。
「つめたい。すごいね、こんなこともできるんだ」
 お返しだよ。言って掬い上げるように蹴り上げた水に、きゃらきゃらと妖精達が笑う隙に月の魔力籠めて喚び出したのは、白銀に輝く無数の蝶。胡蝶廼彩色。
「わあ」
 妖精たちが小さな手を叩いて喜ぶのに、キトリも微笑んだ。今なら捕まえるのは簡単だけど、満足させる方法なら彼女も持っている。
「遊んでくれたお礼に、お花はお花でも、とっておきのきらきらしたお花を見せてあげるわ。お星さまのお花もとっても綺麗だけど、あたし達のお花だって負けないくらい綺麗なのよ。──ベル、あなたの花を見せてあげて!」
 花蔦絡む杖をひと振り。白銀の蝶が舞う、紺差す茜色の空に巻き起こったのは、無数の煌めく青と白の氾濫。空色の花嵐──アズール・テンペスト。
「すごおい!」
 無論、仲間のユーベルコード同士が相殺し合うことはない。花嵐の中でも優雅に舞う蝶の共演に夢中になる妖精たちの傍へ、そっとリリヤが腰を折って顔を寄せる。
「妖精さんは、おはながおすきですか?」
 ならばと鳴らすのは、真鍮の鐘。ラルルルラ・ラルララ・ラル──うたうみたいに鳴り響いた音と同時に茜色の空から舞い降るのはみどり。花の雨。
 青と白と白銀を邪魔しないように碧と水色と紺の花弁を選んだならそれは雨に相応しい彩りとなって頭上を覆う。
「水のなかに咲くおはなもすてきですけれど、空に咲くおはなもきれいですもの」
 よろこんでもらえたら嬉しい、と口許を綻ばせたリリヤの傍で、
「きれい、きれい!」
 妖精たちは無邪気に飛び回って歓びを表現する。ふしぎです。水に浸かる足はつめたいのに、あたたかいのです。
「……すきないろは、なにいろでしょう。おおきな花束をつくるのです」
 赤だ黄色だとめいめいに周囲から声が上がるのを見守りながら、ネムリアの蝶が空で輪を描く。
──もしもまだ遊び足りないのなら、あざやかな夢を、キミに。
「さあ、月のひかりと一緒に踊ろう?」
「ええ、一緒にダンスも楽しそうね」
 ネムリアとキトリが差し出した手に、妖精たちの遠慮のない手がわあっと群がるものだから、水辺のダンスフロアは輪舞の様相。
「道案内のお礼になったかな」
 やわらかくネムリアが言えば、きゃらきゃらと返る笑い声はなによりの答えだろう。
 色とりどりの花が舞い、白銀の蝶が舞う空の下。
 水を蹴って雫を散らして、妖精と踊る。
 物語の中みたい。ぽつりと零したネムリアに、お伽噺の中から抜け出してきたリリヤはこっくりと肯く。たとえ相手が、わかりあえないものだとしても。
──それでも、納得して還っていただけるなら、それがよいのです。
「……しらなかったのです」
 こんなにうつくしい、続きがあるなんて。
 ふたりの言葉に、キトリはそっと目を細める。そして手を取ったばかりの妖精に、悪戯っぽい笑みで片目を瞑って見せた。
「折角だからラッキーアイテムかなにかを占ってもらおうかしら?」
「ラッキーアイテム? そりゃあもちろん、」
 星を散りばめた綿飴だよ!
 妖精の言葉と同時、茜色の世界は水に溶けた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

終夜・嵐吾
せーちゃん(f00502)と
65

おや、楽しそうにしとる妖精さんたちの登場じゃね
お花あげよ、たくさんあるんよ
む、汝にはこの黄色いのが似合いそう、いややはり赤も似合うの…
と、似合いの花を選んでやりつつ

綺麗なものがみたいか、ならわしは炎を見せてあげよ
こうして躍らせると楽しかろ、と狐火操って遊ぶ
せーちゃんも綺麗なのみせてあげるとよい

おお、占いをしてくれるんか?
ならお願いしよかな~

びしょ濡れになっても気にせず、遊んですでに…尻尾は残念な毛並みになっとるしの
ふふ、かわかすのはの…家に尻尾乾かし器があるんじゃよ
その後の梳くのをせーちゃんにお願いしよ
楽しく妖精さんたちとおしゃべりして遊ぶのがええね、せーちゃん


筧・清史郎
らんらん(f05366)と
【54】

おいで、妖精さんたち
様々な彩りの花が摘めたからな
好きな色を訊ね、望みの色やそれに合う色を差し出そう

らんらんの炎は確かに美しいな
では俺は桜吹雪を舞わせよう
扇開き、舞う様に桜花弁たちを招く
らんらんの炎と戯れさせ踊らせば尚綺麗かと

星が詠めるのか?
では俺も占って貰おう
ふむ……成程(結果に真剣に頷く

元々濡れる事は厭わないが
らんらんの尻尾は、後で確り乾かして梳けば元通りだ
だから今は妖精たちと存分に遊ぼう
尻尾乾かし器…それはふかふかになりそうで興味深いな
ふふ、梳くのは任せてくれ(ついでにもふる気
ああ、お喋りはとても好きだ
そっとつかまえた妖精さんの髪に、花を一輪飾ってやろう



●桜焔
 きゃら、きゃら、きゃら。
 あちこちから顔を覗かせた姿に、終夜・嵐吾はぴこりと耳を跳ねさせた。
「おや、楽しそうにしとる妖精さんたちの登場じゃね」
「ああ本当だ。おいで、妖精さんたち」
「ほら、お花あげよ、たくさんあるんよ」
「そうだな。様々な彩りの花が摘めたからな」
 筧・清史郎も共に手を差し伸べたなら、ゆーらゆーらと嵐吾の尾が揺れる。ひとを甘やかすことに生きがいを見出した妖狐にとってこの妖精たちの懐っこさは好ましいのかもしれない。
「む、汝にはこの黄色いのが似合いそう、いややはり赤も似合うの……」
「ボクには? ボクには?」
「わたし赤がいい、赤ー」
「ああ、ああ、順にな」
 しゃがみ込んだ嵐吾の上にのしかかったり尻尾をくいくいと引っ張ったりしている妖精たちに、清史郎も星の花をひとつひとつ渡していく。
 そしてすっかり花がなくなった頃、欲張りな妖精たちは例によって『きれいなもの』が見たいと所望したから、「そうじゃな、」よいしょと嵐吾は膝を伸ばした。
「ならわしは炎を見せてあげよ」
 ぽ、ぽ、ぽ、ぽ、ぽ。
 百に近付くほどの数の狐火が夜の近付き始めた川の上に浮かび上がる。
「こうして躍らせると楽しかろ」
 浮かぶだけではなく、それをすべてばらばらに動かすことすら可能。指揮者の如く指先振るってみれば、幾多と踊る炎の揺らめきに妖精たちはきゃあきゃあと歓声を上げる。
「らんらんの炎は確かに美しいな」
「せーちゃんも綺麗なのみせてあげるとよい」
 お手の物じゃろ? と細められる琥珀色の左目に、無論と返す言葉さえ必要ない。懐から扇を取り出したなら、ふわと舞うように仰ぐ。するとその蒼天色の扇は弾け──乱れ舞う桜花へと姿を変えた。
 こちらも攻撃対象を指示することは可能だが、此度は敢えて繰らない。そうすれば嵐吾の喚んだ狐火に煽られてひらり、ふわり、花弁は生き生きと舞い踊った。
 すると、ふたりの腰程度の高さをふよふよと寄ってきた妖精がいた。彼の言葉に耳を傾けてみたならば、
「星が詠めるのか?」
「ん? つまり? ──おお、占いをしてくれるんか? ならお願いしよかな~」
「では、俺も占って貰おう」
「あ、あのね、」
 水難注意、って出てるの。
「「え」」
 ばっしゃあぁあああ。
 ここの妖精たちは拍手の代わりにめいめいに水面を叩いたり蹴り上げたりするのが慣習らしく。
「「……」」
 元より濡れることを厭わぬ箱と、既に濡れねずみな狐。気にしない。濡れることについてはもはや気にしないとも。でも。
「これ拍手?! ひどくない?!」
 髪から尻尾から大粒の水滴を零しながら吼えた嵐吾に、けれど妖精たちはきゃっきゃと笑うばかり。
 清史郎もぼたぼたと雫を滴らせながら、残念な毛並になった嵐吾の尻尾──すっかり細くなってしまったそれ──へと視線を落とす。
「まあ、後で確り乾かして梳けば元通りだろう」
「んん、まあ、尻尾はの……。ふふ、家に尻尾乾かし器があるんじゃよ」
「尻尾乾かし器……それはふかふかになりそうで興味深いな」
 温風でも送るのだろうか。あるいはなにかの機械に挟むのだろうか。純粋な好奇心を瞳に宿すいちばんのともの表情に、嵐吾は妖精からの仕打ちについても一旦うっちゃっておくことにする。
「その後梳くのをせーちゃんにお願いしよかの」
「ふふ、任せてくれ」
 乾かしたばかりの彼の尻尾は如何ほどにふかふかになるだろう。梳りながらその手触りを堪能しようと僅かばかり違う意図で力強く肯く清史郎の思惑に気付かぬまま、ふたりはさてと再び妖精たちへと向き直った。
「憂いがないなら今は存分に」
「ああ。おしゃべりして遊んでやろか」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朧・紅
ティルさん(f07995)と紅で

わっ
妖精さんかわいーっ
友色のお花どーぞですよ♪

捕まえたら道と占い教えて下さるのです?
わぁい、負けませんですよぅ
ティルさん参りましょう!
息を合わすにはまだ出逢ったばかりで…
勢い余って突貫
ほっぷすてっぷバッシャーン
川へ身を躍らせれば大きな水しぶき
ティルさんまで濡らしちゃいませんよーに
丸い石に足を取られたら転んじゃいそう
【22】
むぅ逃げられました

わ…あっ
羽根が、お花が…きれいっ
ほぅと吐息、踊る心で僕も想造するの
星降る鱗粉零れる蝶の乱舞
二人で紡ぐ幻想の世界
はいですティルさんっ
目配せすれば息合わせ
見惚れてる妖精さんつかまえたっ

僕もぼくも
占ってくださいですねっ
(結果お任せ


ティル・レーヴェ
93

紅殿(f01176)と

鮮やかな花と戯れた
ひと時の余韻を胸に
差出すのは先に集めた3色の花束

追いかけっこに意気込むも
妖精殿の愛らしき姿に出遅れて
先行く彼女の飛沫を浴びれば小さく笑う
ほほ、これは負けておれぬな

妖精殿はお綺麗なものがお好き?
ならばこんなのは?と
翼広げて宙浮けば
広げた翼より出し羽根
自在に舞う白が地に水にと落ちたなら
花咲く陣へと姿を変える
星花と違う彩も楽しんで?

紅殿の見せる星降る蝶に
煌く眸向け乍ら
彼女の技に拍手を贈り
ね?2人で合わせてみよう?
綺麗が重なればきっともっと!

満ちる綺麗に満悦乍ら
今じゃ、紅殿!
次こそせーので捕まえたっ!

妖精殿の占いも気になるよぅ
ご褒美にひとつ見せてはくれぬか?



●それはまるで加護のように
「わっ妖精さんかわいーっ」
 様々な場所から現れた妖精たちの姿に、朧・紅は長い髪を跳ねさせた。
 花を所望する彼ら彼女達に、「はいっ、友色のお花どーぞですよ♪」拾い集め直した花束を惜しみなく与える紅の少し後ろで、ティル・レーヴェはその美しかった光景を瞼の裏に思い浮かべて。
 その余韻を胸に、紫と、白と紅の花束を手渡す。
「うむ。大切にして欲しいのじゃ」
「ありがとう! そしたら追いかけっこだよ!」
「占いを希望するなら捕まえてみて!」
 受け取るなりぴょーいっ、と河の上へと飛んで逃げていく妖精たちに、紅は小さな両手をぐっと握った。
「捕まえたら道と占い教えてくださるのです? わぁい、負けませんですよぅ」
 そしてぱっと「ティルさん参りましょう!」振り向いたかと思ったときには既に前を向いていて、妖精たちの舞に目を奪われていたティルは思わず出遅れて。
 ほっぷすてっぷ、バッシャーン!
 中空に浮く妖精目掛けて勢い良く跳び出した紅の足が踏み抜いた川面。全方向に散った雫がまるで通り雨のようにざぁっ、と頭上に降ったけれど。
「むぅ逃げられました……。……、あっあっ、ティルさん大丈夫です?」
「ほほ、これは負けておれぬな」
 そう小さく笑って見せるものの、不思議とほとんど濡れてはいない事実に紅も安堵の息を零す。
 それからもふたりはまるくて優しい石を跳ぶように踏みながら河の中を駆け回ったけれど、まったく以てどうしたことか、ほとんどと言っていいほど濡れることはなく。
「ふわゎ、僕たちアイウォーラさんに愛されてるみたいです!」
「ならばお綺麗なものがお好きな妖精さんだけでなく、アイウォーラ殿にも感謝を伝えねばならんのぅ」
 こんなのは? 告げたティルが開く、純白の翼。本来ならそこから射出されるはずの羽根は勢いを殺し、ひぃらりふぅわりと優しく水面に川辺に舞い降りる。
 途端にそれを起点として広がるのは癒しと防護の花纏う魔法陣。
「わ……あっ……! 羽根が、お花が……きれいっ」
 紅の紫の双眸が喜色に輝いて、思わずほぅと吐息が漏れる。ティルは唇に笑みを刷く。
「星花と違う彩も楽しんで?」
 彼女の言葉のとおり、妖精たちも花咲くように方々で開く陣の鮮やかさに目を奪われている。よぅしと紅も瞼を伏せて想像する。想造する。きれいなもの、うつくしいもの。
 軽く切って浮かんだ指先の血から飛び立ったのは、きらきらと白銀の鱗粉零れる幾多の蝶。
「わぁ……っ」
 ひらひら、ひらひら。不規則に空を泳ぐ姿に、ティルの瞳も釘づけで。髪をくすぐるみたいに傍を掠めたそれに、思わず拍手を贈る。
「紅殿。ね? ふたりで合わせてみよう?」
 綺麗が重なればきっともっと!
 きらきら輝くのは蝶だけではなく。ティルの瞳にもそれと同じ以上の耀きが灯っているのを見て、紅も破顔する。
「はいですティルさんっ」
 花開く癒しの魔法陣の上を舞い躍る白銀の鱗粉を零す、澄んだあかの蝶。茜が紅掛空色へと移り変わる天涯の下、ふたりで紡ぎ上げる幻想の世界。
「わぁあ」
「すごいきれい!」
 逃げ回ることなんてすっかり忘れて妖精たちもその光景に夢中で。魔法陣の灯りに照らし出されるその横顔を一瞥して、それからティルは紅へと目配せひとつ。紅も抜かりなくこくりと肯いて。
「今じゃ、紅殿! せーのっ」
「妖精さんつかまえたっ」
「わー!」
「つかまった!」
 きゅうっ、と両の手の中に収まった妖精たちはきゃらきゃらとどこまでも楽し気に笑うから、ティルはその顔を覗き込む。
「妖精殿の占いも気になるよぅ。ご褒美にひとつ見せてはくれぬか?」
「僕もぼくもっ、占ってくださいですねっ」
 すると妖精はなにを占おうか? なんてくすくす笑ったあと、特にふたりに希望がないのを見てとると、じゃあ、と小さな手をアイウォーラ川へと差し向けた。
「たぶんふたりはこのあと、とってもびっくりするよ!」
 詳細を聞くよりも先に。
 河の水が壁のようにざばりと立ち上がって、ふたりを呑み込んだ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
f01786/綾

ひみつのみちっ
期待に思わずアヤの方を見る
ぱっと笑って頷き

花もきれいなものも、みせるよっ
逃げる妖精に
アヤ、おいかけっこだっ
手を取って走り出す
ふふ、きものをかわかしてるヒマ、なかったね

花を踏まないようぱしゃり駆けて
わあ、みんなはやいっ
零れるのは笑顔ばかり

それならねえ
せーのっ
おひさま色の花が溢れる
わたしのすきなきいろの花
風に吹かれて舞ってみんなの元へはらはら降る
ね、きれいでしょ?

川から生まれる羽搏きをくるり見回し
声を上げずにはいられない
たくさんの色を連れて飛び立つ鳥が
あんまりきれいだから

すごい、アヤ、すごいっ
花の色も空の色も笑顔も全部
ずっととおくまで届けられそう
大きく手を振り見送って


都槻・綾
f01136/オズさん

オズさんと眼差しが合えば
意を得たりと片目を閉じ

ね、勿論
素敵な提案に乗らない手は無いですねぇ

共に駆けながら
浅瀬の砂利に足を取られることさえ楽しく
ころころ笑み綻ぶ

こんなに清らかな流れだもの
濡れるのさえも心地良くて
半ば水遊びみたいに爪先で水を弾いたなら
跳ねる飛沫も、ほら
一緒に笑っているかのよう

えぇ、綺麗ですねぇ

ひかりが花弁になったが如くの彩りへ
眩げに目を細めて手を差し伸べる

感嘆の吐息で微笑んで
花に添える為に詠い紡ぐは鳥の調べ
川面より幾多の清澄な水の羽搏きが飛び立ち
夕影の彩を、オズさんのおひさま色を、
映して煌いて彼方へと向かう

鮮やかな幻で
妖精さんを魅せましょう
喜んで頂けると良いな



●黄昏色の渡
 妖精さん達がみんな水に還ったら、不思議な港町への道が拓ける。
 最初にそう聞いていたけれど、妖精の口から聞かされたなら、わくわくが跳ね上がるのは仕方ない。
「ひみつのみちっ」
 ぱぁっ、と笑みを咲かせてオズ・ケストナーは都槻・綾へと振り返り、綾は当然のように悪戯っぽく片目を閉じて見せた。
「ね、勿論、素敵な提案に乗らない手は無いですねぇ」
「うんうんっ、花もきれいなものも、みせるよっ」
 オズも両の手をきゅっと握って妖精たちと約束を交わす。すると妖精たちも心得たとばかりに河の上へと飛んでいくから、
「わあ、みんなはやいっ、アヤ、おいかけっこだっ」
 咄嗟に同道者の手首を掴んで水の中へと駆け出した。袴の裾が水面を跳ね上げる音に、
「あっ、」
 ぱちり、瞬いたキトンブルー。けれど見遣った相手の表情が笑みに綻んでいるのを見れば、オズも共に口角を緩めた。
「ふふ、きものをかわかしてるヒマ、なかったね」
「ええ。けれどこんなに清らかな流れだもの。濡れるのさえも心地良いですし、ほら」
 ぱちゃりとわざと蹴り上げて見せた雫は最後の斜光に輝いて。
「一緒に笑っているかのようでしょう」
「ほんとうだっ」
 純粋無垢なオズの反応が、綾には僅かばかりくすぐったい。己にないもの、否、あったかどうかすら判らないもの。
 花を踏まぬように気を配りながら河の中を駆け往く背中に手を引かれながら、けれど決して厭うものではないと胸の裡に浮かぶあたたかさは彼からいただいた彩りだ。
 足許に注意しながらでは浮いている妖精に追いつくことは至難の業だ。
「それならねえ……せーのっ」
 君ニ常花ヲ。捧ぐのは風に躍るおひさま色の花。それは逃げる妖精たちの傍にも漂って、オズはにっこりと笑って見せる。
「わたしのすきなきいろの花。ね、きれいでしょ?」
「きれい、きれい!」
「かわいいね!」
「ねえ、きみもそう思うでしょ?」
 くるくるっ、と近付いてきた妖精が綾の顔を覗き込めば「えぇ、綺麗ですねぇ」それを捕らえようなんて無粋はせず、綾ははらはらと舞い散る花弁のひとつへと掌を添える。
 このひかりを縒ったような花弁に似合うものはなんだろう。
 思案巡らせるのは微かの間。
 詠い紡いだ調べに彼の背の水面よりざぁっ、と空を覆って響いたのは鳥の羽搏き。その澄んだ翼は残光の黄金を、夜を滲ませた紅掛空を、そしておひさま色の彩りを纏い煌めいて旋回。それから風を連れて空へと往く。
「わぁ……っ、」
 思わず感嘆の声が零れて、けれどそれ以上の言葉が出なかった。
 たくさんの色を連れて飛び立つ鳥が、あんまりきれいだったから。

「すごい、アヤ、すごいっ」
 やっとそう告げて術者を振り向くことができたのは、鳥の群れがすっかり空の彼方へと消えゆくのを大きく手を振って見送ったあとだ。
「花の色も空の色も笑顔もぜんぶ、ずっととおくまで届けられそうだったよっ」
「ふふ。喜んでいただけて幸いです」
 ふくふくと笑みを浮かべて、さて妖精さんたちの反応はいかがかしら、と窺ってみたなら、目の前のキトンブルーと同じ輝きを宿したいくつもの瞳が返ってきた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オリオ・イェラキ
『72』
リュカさま【f02586】と

まあ、可愛らしい方々ですわ
ごきげんようと花を一輪差し出して
この子達と…遊べば良いのかしら
ふふ。確かに警戒は必要ですわね
大丈夫ですわ、もしリュカさまに何か在るようでしたら
わたくしが護りますもの

きれいなものなら観せて差し上げますわ
わたくしの流星と夜の花を
妖精達を避けて降る雨に、水陸問わず咲く夜薔薇
如何かしらわたくしの彩りは…あらリュカさま
とても可愛らしい鯨、素敵な星座ねと目を輝かせて
皆わたくしの薔薇園で踊りましょう
パレオひらひら、妖精達もリュカさまもご一緒如何?

まあ占いも出来ますの?でしたらそう
次はどの世界で楽しい冒険ができるのかしら
リュカさまも共にと笑いながら


リュカ・エンキアンサス
『28』
オリオお姉さんf00428と

可愛い……可愛い?
無邪気で可愛い子供とか、碌なもんじゃないけど(と、若干警戒気味
とはいえ、お姉さんがその気なら、
こちらも無粋にならないように……、
星鯨、頼んだ
(探照灯から、水面とか平たんな場所を選んで星座の鯨を映し出す
この鯨たちが……踊るぐらいかな?
(お姉さんの花びらに合わせて、なんとなく踊ったりできたら
こう、バックダンサー的にできたらいい
風情のあるものは、お姉さんにはかなわないからね
いや俺は、芸事の類はできない(お誘いには若干難しい顔で

占いには、そんなの宛にならないとか言いながらも興味はある
そうだね。どうせなら楽しいことがいいから
楽しいことの道標を頼もうか



●星影
「まあ、可愛らしい方々ですわ」
 ごきげんよう、とオリオ・イェラキは一輪の星の花を現れた妖精へと差し出す。
 けれどその背後でリュカ・エンキアンサスは露骨に嫌な顔。否、露骨と言ってもリュカのことなので眉間にくっきりと皺が一本刻まれた程度だが。
「可愛い……可愛い? 無邪気で可愛い子供とか、碌なもんじゃないけど」
 幸いこの妖精たちは積極的に害をもたらす類の存在ではないようだが、『いたずら』なんて言葉では誤魔化されない過去の経験により、この手の妖精相手に彼は警戒心──敵意と言っても過言ではない──を捨て切ることができない。
 捕まえてみて、と言葉を残して河へとすっ飛んで行った妖精たちを見送って、「遊べば良いのかしら」と首を捻っていたオリオも、振り返りリュカの眉間の線を見付けて小さく口許を綻ばせた。
「ふふ。確かに警戒は必要ですわね。……大丈夫ですわ、もしリュカさまになにか在るようでしたらわたくしが護りますもの」
「いや、あいつらの性質の悪いところは護るとかそういうことじゃ、……いや、いいや。ありがとう、お姉さん」
 厚意を無下にするのも良くはない。説明が面倒になったとかそんなことはきっとない。
 オリオが妖精たちの舞う河へと向き合うのを見遣り、それから彼は周囲へと視線を走らせた。
「きれいなものなら観せて差し上げます」
──わたくしの流星と夜の花を。
 さあ、傘は差さずに御覧になって。口上を述べてオリオはそっと両の手を開く。星降る雨と宵花溜り──スターリーパドル。
 降り注ぐ流星群は妖精たちを器用に避けて、川面に岸辺に、星屑煌めく黒薔薇の幻影を咲かせていく。
 如何かしら、わたくしの彩りは。そう夜色の眦を細め、リュカへと再度振り向いた彼女は、「あら、リュカさま」そこに投影されていた小さな鯨たちの姿に頬を緩めた。
 それは探照灯『星鯨』により照らし出された青く碧い星座の鯨。
──お姉さんがその気なら、こちらも無粋にならないように……。
「とても可愛らしい鯨、素敵な星座ね」
「気に入った? なら良かった」
「ええ、とても──ほら、御覧くださいませリュカさま。満足してくれたみたい、」
 ふわとパレオを揺らして顧みる。そこには幾多の妖精たちが集まってきていて──、
 ざっばあああああああああああああああああああああああああ!
「リュカさま?!」
「……」
 説明しよう。ここの妖精たちは拍手の代わりにめいめいに水面を叩いたり蹴り上げたりするのが慣習らしく。つまり満足すれば称賛代わりに水を掛けて来る、ということだ。
 ただの勢いか、それとも『いたずら』か、はたまた偶然か。
 この日最大の水の勢いを受けたリュカは、ぼたぼたと水滴を垂らしつつ「……やっぱり好きになれないな、この手の奴らは」低い声で呟いた。
「ま、まあ、まあ。ほら、皆わたくしの薔薇園で踊りましょう。妖精たちも、リュカさまもご一緒いかが?」
 ぱしゃり、水滴を散らしてオリオが浅瀬でターンして見せるのに、リュカは吐息ひとつで切り替えつつも、今度は違う意味での難しい顔で首を振った。
「いや俺は、芸事の類はできない」
 そもそも戦場に置いて魅せる類の技を駆使する傭兵ではない。折角の場を無様な動きで台無しにすることこそ無粋だと彼は知っている。
「できるのはまあ、この鯨たちが……踊るくらいかな? 風情のあるものは、お姉さんにはかなわないからね」
 そう言って『星鯨』を操作したなら、黒薔薇の幻影の上を、オリオの足許を、星座の鯨が泳いで揺れる。
 淡い光に浮かび上がり緩やかに舞うオリオの姿は、リュカも素直に綺麗だと思えた。

 すっかり妖精たちが満足した頃。オリオは彼らからの提案に両の指を合わせた。
「まあ、占いも出来ますの? でしたらそう……次はどの世界で楽しい冒険ができるのかしら」
「……まあそうだね。どうせなら楽しいことがいいから、楽しいことの道標を頼もうか」
 そんなもの宛にはならない。そうは思うけれど、好奇心がないわけではない。覗き込むリュカたちの前で妖精はきら、きらと手許に星を浮かべた。
「きみ達の言うセカイは判らないけど……次の冒険は、水の底だよ!」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セト・ボールドウィン
綾華(f01194)と

へへ。いーよ。何して遊ぼっか
遊ぶなら、俺らも全力でいくよっ

綾華の出した花吹雪に、思わず笑顔になる
あったかい色。俺、すげー好き。これ

それじゃ俺もっ
UCで出すのはシャボン玉液と骨だけのうちわ
うちわ骨を液につけてふわって扇げば、シャボン玉がいっぱい
これも俺の好きなやつ。どうかな?

鬼ごっこ!
よっし、負けないよ
何てったってこっちは二人なんだから

綾華の花吹雪に合わせて、俺は川の方へ
濡れるのはへいき。全力でやらなきゃつまんないもん
ときどき綾華と視線を合わせて、川岸へ追い立てるように
綾華、そっちから回り込んで。挟み撃ちしよう

追いついた!
受け取った花束を妖精達に差し出す
へへ、俺らの勝ちだね


浮世・綾華
セト(f16751)と

いいよ
遊んでやろーじゃないの
でもそうだなぁ
楽しく遊ぶんなら痛いのはなしだろ
ってわけで、ほら

舞い吹雪かせる、おひさま色の花
邪気を取り払えたなら
愛らしい友人を傷つけることもないだろう

好きと言われれば目を細めて
彼が生むシャボン玉に笑みを深くした
すげー、きれい
よし!俺もと扇を手に仰ぐ

っと、俺らが鬼なわけ?
まぁいっか
俺とセトにかかりゃあよゆー

駆けたり跳ねたり
更に花を舞い吹雪かせ
彼らの行く手を阻むように
挟み撃ち?おっけー、任せろ
それならと川岸の方へ向かいつつ
気遣いには心温り

先程の花たちは可愛く紐で結わえて彼に委ねた
セト、花

セトと視線を合わせ笑ってから
教えてくれるんでしょ
ひみつの道



●for you!
 妖精たちのお誘いに、浮世・綾華とセト・ボールドウィンは顔を見合わせ、そして同時に返す言葉は打ち合わせるまでもなく決まっていた。
「いいよ、遊んでやろーじゃないの」
「へへ。いーよ。なにして遊ぼっか」
 遊ぶなら、俺らも全力でいくよっ、と拳を握ってみせるセトに、「でもそうだなぁ」と綾華は空を仰ぐ。
「楽しく遊ぶんなら痛いのはなしだろ。ってわけで、ほら」
 万が一にも愛らしい友人を傷付けることがないように。優しい祈りが形取るのは、おひさま色の花弁。Blumen für dich。こちらと戦おうという意思、を奪うユーベルコード。
「あ。俺、すげー好き。これ」
 ぽつり告げたセトが相好を崩して言うのに、綾華もあたたかい気持ちで眦を細める。
「それじゃ俺もっ」
 綺麗なやつを見せたらいいんだよね? 意気込んで生み出したいい感じのなにか──今回は、シャボン液と骨だけのうちわ。そのうちわを液につけて煽げば、暮れかけの空に幾多の虹色の球体がふよふよと浮かび上がった。
「これも俺の好きなやつ。どうかな?」
「すげー、きれい」
「きれい、きれい!」
「きみもこれ使えるんだね!」
「よし、俺も──ん? きみも?」
 扇を取り出し、シャボン玉が落ちて割れてしまわぬよう煽ごうとした綾華は、めいめいに感嘆を零す妖精たちの言葉に思わず目を瞬いた。
 けれど妖精たちは「じゃあ、ひみつの道を知りたかったら捕まえてみて!」とぴょーいと河の方へと飛んで行ってしまう。
「鬼ごっこ! よっし、負けないよ」
 なんてったってこっちはふたりなんだから。にっと笑うセトに釣られて、綾華も一旦違和感を放り出す。
「っと、俺らが鬼なわけ? まぁいっか」
 俺とセトにかかりゃあよゆーよゆー。ふたりで視線を交わしたなら、ふよふよと飛んでいく妖精たちを追って駆け出した。

──ほんと、あったかい色。
 綾華の喚ぶおひさま色の花弁を見上げつつ、河の半ばまで入って妖精を追うセトは緩む口角もそのままに走り続ける。
 蹴立てる水は、既に紅掛空色へと移り変わった空の下で白銀に見える。
 ちらと見遣れば、川岸では綾華が更に花嵐を呼んで、川縁を逃げようとする妖精たちを追い込んでいる。
 こちらの視線に気付いたか、かち合う目。どちらからともなく、やっぱり笑う。
「綾華、そっちから回り込んで。挟み撃ちしよう」
「おっけー、任せろ」
「させないよー!」
「へへ、させないのを、させないよ!」
 そして、
「──追いついた!」
 セトの手の中に、わーつかまったー、ときゃらきゃら笑う妖精がひとり。
 はらり、はらり、おひさま色の花弁が散る中、近付いてきた綾華もそれを認めて、それからセトの肩をぽんと叩く。
「……ありがとな」
「ぅん? なにが?」
「なんでもなーい。ほらセト、花」
 そう言って綾華は可愛く紐で結わえた星の花束を彼に委ねる。なにも言わずに、綾華が水に入らなくても良い方法を選んでくれた気遣いに気付けないほど愚かではないけれど。
 それを改めて口にするほど、無粋でもないから。
 「?」軽くセトは首を傾げつつ、受け取った花束に目を細めると、妖精を手放しその前へ花束を差し出した。
「へへ、俺らの勝ちだね」
「くやしー、でも遊んでくれてありがとー!」
 きゅう、と花束を抱き締める姿にセトと綾華は顔を見合わせ、笑み交わして。
 それから綾華はその小さな額をつんとつついた。
「教えてくれるんでしょ、ひみつの道」
 すると妖精は「もちろんだよ!」と花束を抱き締めたまま、ふわりと河の上空へと舞い上がった。
「招待するよ、ひみつの港町に!」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『摩訶不思議な夜に』

POW   :    竜の骨付き肉、大海蛇の串焼き。一風変わった料理を食べ歩く。

SPD   :    揺蕩う星が浮かぶ街並みや川。幻想的な風景を見に行く。

WIZ   :    お喋りな本、勝手に動くペン。摩訶不思議な魔法具店に行ってみる。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ひみつの道
 港町。
 港とは、川や海の出入り口である。そしてあるいは、『行き着く場所』。
 妖精たちが猟兵よりもらった花を──花束をアイウォーラ川に捧げると、浅いはずの河から水の壁が立ち上がり、彼ら彼女たちを呑み込んだ。
──溺れる!
 いいえ、大丈夫。
 猟兵たちの周囲には空気の膜がちょうどシャボン玉のように包み込み、不思議と割れてしまうこともなくゆぅらりゆらりと河を下っていく。川底に咲いた星の花も、すっかり夜に近付いた紺色の空に小さく瞬き始めた星々も望むことができる。
 ゆぅらりゆらり。
 そうして揺られて、幾許か。
 河の終わりはさして高くもない段差があって、猟兵入りのシャボン玉は、とぽんと沈み──そのまま沈んで、沈んだ。
 そこに広がっていたのは、同じようにシャボン玉入りの妖精たち。かと思えば、猟兵達と同じように様々な風貌のヒトが居て、愛想よく手を振る。
 この夜のために同じく星往く河をくだってきた商人なのだろう。彼らのシャボンには、それぞれの商品がたくさん積まれている。
──聴こえる?
 聴こえるとも!
「さあ、なにをご所望かな? 星入りのぱちぱち弾ける綿飴がおすすめだよ!」
「さあさあ食べ歩き──いや、食べ浮かびはどうだい? 海竜のステーキも、食べやすいように串焼きにしてあるよ」
「いやいやそんなものよりうちの雑貨はどうだね。泡煙草に星の花酒……おっと、お子様にゃちょいと早いがね!」
「いやねぇ、そんなことより、シャボンでの散歩はいかが? 星花茶をお供に巡るとあたたかいわよ。まあ、そんなに深くは行けないけれど」
 海の中は、同じようにシャボン玉に包まれた灯りがそこここに浮いていて、しんとした静けさも堪能することができるだろう。
「さあ、ひと晩だけの海中港町。好きなように楽しんでおくれ」
 
ルーシー・ブルーベル
【彩夜】
苺、苺
だいじょうぶ?
きっと妖精さんたちが守ってくれるわ

あら
十雉さんもお水、苦手だったのね
ふたりのご様子を見て
ルーシーもふたりに手をのばしましょう
みんなで繋いでいれば怖くないわ。ね?

そうしていれば別世界
まあ、ごあいさつして下さってるの
手をぶんぶんふり返すわ!

目に入ったのは雑貨屋さん
様々な不思議なものを扱っているのだそう
入ってみる?
ええ、だいすき!

2人とも見て!
色々なガラスペンがたくさん!キレイね
ふふ、そうね
おそろいってステキな響き
ルーシーもさんせいよ
お店の方に幾つかオススメして頂いた中から……これ!
軸が青と黄色のグラデーション
お手紙書くのが楽しくなりそう
みんなはどんなものを選んだのかしら


歌獣・苺
【彩夜】

こ、こんなのに
飲まれたら…っ。
咄嗟にルーシーを抱き寄せ、
ときじも…うっ、
身長がたりないっっっ!
どうしよう…!
ときじもお水怖いのに…!

あわあわしてるうちに水に飲まれそうになり
咄嗟にときじの手を握る
溺れーーー
てない?
ってわわ!泡の中…?すごい!

……はっ!ご、ごめんときじ!
手、握りすぎちゃった…
折れてない?
ふふふ、よかった…!

わぁわぁ、見て!
手振ってくれるよ!おーい♪

がらすぺん…?うん!いいよ!
『おそろい』は何でも嬉しいもん♪

うぅ、種類が多くて悩む…
へ!?2人とも決まったの!?
えぇと…!店員さん!
私にはどの『がらすぺん』が
いいと思う…?

わぁ…綺麗!ありがとう…!
また『おそろい』増えちゃった♪


宵雛花・十雉
【彩夜】

え、み、水!?溺れる…!
水の壁に呑み込まれると無我夢中で手を伸ばす
繋がれた手に縋るように掴んで

次に目を開けた時には見知らぬ世界
た、助かった…
って、さすがに折れるほど貧弱じゃねぇよ!
苺ちゃんに反論しつつも一緒になって手を振り返す

へぇ、色んなもんが売ってんだなぁ
女性陣はたぶんこういうの好きだろ
オレも嫌いじゃないけどさ

ガラスペンか
硝子工芸ってのは綺麗でいいよな
そうだ、折角だからお揃いで買おうぜ
そしたら今日ここに来た記念になるし
3人の友情の証、なんつって

んじゃあオレもいくつかオススメして貰った中から選ぼ
これ、オレンジと紫のグラデーションのやつにする
へへ、2人のもらしくていいなぁ
大事に使うよ



●彩光
(え、み、水?! 溺れる……!)
(こ、こんなのに飲まれたら……っ! ときじも……うっ、身長がたりないっっっ!)
(苺、苺、だいじょうぶ?)
(どうしよう……! ときじもお水怖いのに……!)
(あら、十雉さんも? だいじょうぶ、きっと妖精さんたちが守ってくれるわ)
(──っ!!)

 きつくきつく握り締められた手と手と手。
 目を開けばそこは、海の底。
「溺れ──て、ない? ってわわ! 泡の中……? すごい!」
 ぴょこ、と耳を跳ねさせて歌獣・苺は周囲を素早く見回した。彼女の声に恐る恐る瞼を開いた宵雛花・十雉は「た、助かった……」縋りついた手もそのままに肩の力を抜く。
「……はっ! ご、ごめんときじ! 手、握りすぎちゃった……折れてない?」
「さすがに折れるほど貧弱じゃねぇよ!」
「ほんと? よかった……!」
 自らを包み込む虹色に彩りを変えるシャボン玉にふよふよ触れば、波の向こう側で妖精が笑って手を振ってくれたのを見て、苺の表情がぱあっと晴れた。
「わぁわぁ、見て! 手振ってくれるよ! おーい♪」
「まあ、ごあいさつして下さってるの」
 苺の腕の中でぱちぱちと瞬いていたルーシー・ブルーベルもぶんぶん手を振れば、十雉も傍の少女達に倣う。
 そうして海の底を漂い、他のシャボン玉を覗き込んだルーシーは、クリスタルブルーの左目を輝かせた。
 気の良さそうなお姉さんが悪戯っぽく片目を瞑り、手に取って見せてくれたのは可愛い小物容れ。彼女のシャボンの中には、様々な雑貨がところ狭しと並んでいた。
「へぇ、色んなもんが売ってんだなぁ。女性陣はこういうの好きだろ」
「ええ、だいすき! ……十雉さんは好きじゃない?」
「や、オレも嫌いじゃないけどさ」
 そんなことを嘯く十雉を苺が突きつつ、三人のシャボンが雑貨屋シャボンへと近付く。
「ふたりとも見て! 色々なガラスペンがたくさん! きれいね」
 あまりと揺らがぬルーシーの表情、けれども雄弁な声音がわくわくを映し出す。「がらすぺん……?」日用使いの筆記具ではないがゆえか、苺は首をちょっぴり捻り、十雉は「へ、」と眉を上げた。
「硝子工芸ってのは綺麗でいいよな」
 そこに並ぶのは繊細なペン先や握りやすいように捩じられたりあるいは角を作られたりした美しいフォルム。硝子自体の澄んだ彩りはもちろんのこと、中に砂金のような煌めきを閉じ込めたもの、あるいは敢えて気泡を残してあるもの、様々だ。
「そうだ、折角だからお揃いで買おうぜ。そしたら今日ここに来た記念になるし」
 三人の友情の証、なんつって。
 おどけたように肩を竦めて見せながら、首筋にやんわり熱が昇るのを十雉は気付かないふりをして。
「うん! いいよ! 『おそろい』は何でも嬉しいもん♪」
「ふふ、そうね。おそろいってステキな響き。ルーシーもさんせいよ」
 ガラスペンならこの辺りだね。商人のお姉さんが言って、ひとつひとつ箱に入ったそれの蓋を開けて、ずらりと三人の前に並べ置いていく。
「握り心地を優先するならこの辺。書き心地が細いのはこの辺り。これは硝子の中に宝石の粒が入った値打ちものだよ」
 そんなふうにお姉さんが伝えてくれるのに、「うぅ、種類が多くて悩む……」苺はふかふかの両手を合わせて視線をうろうろ、うろうろ。
「あ、……これ!」
「んじゃあオレも。……お、これ、」
「へ?! ふたりとも決まったの?!」
 迷いなく選んでいくふたりに置いてけぼりにされないよう、苺は必死に探すけれど。そもそも使ったこともない筆記具。なにが良いのか、どれが合うのか、判らない。
「えぇと……! 店員さん! 私にはどの『がらすぺん』がいいと思う……?」
 最終的に、彼女はお姉さんへ泣き付いた。すると商人はルーシー、そして十雉の選んだペンをちらと見遣って、それからうっすらと笑みを刷いた。
「そちらのお嬢さんは青と黄色のグラデーション。晴れ抜いた空みたいなやさしい陽光、希望の色。お兄さんはオレンジと紫のグラデーション。これから夜が来るみたいな最後の夕陽、密やかな愉しみ。ならお姉さんは……そうね。桃色と紺のグラデーションはいかが? 夜を過ごして朝を迎える、清浄な想い」
 貴女にとって『夜』がどんな意味かは知らないけれど、これなら『空色』でお揃いね。そう告げる彼女に、苺の瞳はまんまる。
「わぁ……綺麗! ありがとう……! また『おそろい』増えちゃった♪」
「ふたりのもらしくていいなぁ。──大事に使うよ」
「ええ、お手紙書くのが楽しくなりそう」
 三人揃って箱入りのガラスペンを手に顔を見合わせたなら、誰からともなく笑顔の花が咲き揃った。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

終夜・嵐吾
せーちゃん(f00502)と

おおお、すごいの。シャボンの中におればわしの尻尾も残念にならなさそうじゃ
今は濡れてしぼんでしまっておるけどな
ふふ、では帰ったら約束通り頼もう

さて、せーちゃんどうするかの!
ここにまた来れるかどうかわからんし、めいっぱい楽しも
そいじゃ早速――海竜のステーキ貰ってこよ
せーちゃんは何を、ってもう持っとる!早い!

ほほうぱちぱち弾ける綿飴?
ほんとにぱちぱちするんか~?
ぱちぱちする飴とかは駄菓子屋でも売っとるか
どんな感じ?
うん、一口もらう
なるほど――ぱちぱちじゃね!
半分こ?もちろんええよ

お、酒もあるて。星の花酒!
星花茶も気になるが…まずは一杯いっとこ!
確かに乙
では乾杯!


筧・清史郎
らんらん(f05366)と

シャボン玉の中とは、これは面白い
らんらんの尻尾は約束通り、乾かした後で俺が梳いてやろう
もふもふしながらな(微笑み

さて、どうするか…
そう言う間に見つけたのは、星入りのぱちぱち弾ける綿飴
俺は甘い物がとても好きだ(とんでもない甘党
ひとつ、一等大きいものを頂こうか(にこにこ

しゅわり甘い口溶けに、ぱちぱちが効いていて良いな
ふふ、らんらんも一口どうだ?
この辺がよりぱちぱちしそうだぞ(微笑み
らんらんはステーキからいくのか
ふむ、串焼きも良いな……らんらん、半分こしよう

星の花酒か、それは良い
海の中で乾杯というのも、なかなか乙なものだな
ああ、乾杯
友と共に、摩訶不思議な夜を存分に楽しもう



●きみと弾ける
「おおお、すごいの」
「ほう、これは面白い」
 ふぅよりふよりと浮かぶシャボン玉。その内側で終夜・嵐吾は尻尾を振る。
「この中におればわしの尻尾も残念にならなそうじゃ」
「らんらん、こら、らんらん。水が飛ぶ。目に入る」
 それは既にすっかり濡れそぼっているものだから、同じシャボンの中にいる筧・清史郎は薄い笑みを浮かべたまま言う。
「その尻尾は約束通り、乾かした後で俺が梳いてやろう。もふもふしながらな」
「ふふ、では帰ったら約束通り頼もう」
 互いに笑み交わしたあと、商人達のシャボン玉が幾多と浮かぶ場所に来ると、嵐吾の尾も更に速度を上げた。
「さて、せーちゃんどうするかの! ここにまた来れるかどうかわからんし、めいっぱい楽しも」
 なにせ、この港町は一夜限りなのだという。
「そいじゃ早速──」
「さて、どうするか……」
「お兄ちゃん達、星入りのぱちぱち弾ける綿飴はどうだい?」
「なるほど。ひとつ、一等大きいものをいただこうか」
 甘いものに目のない甘党・清史郎は息をするように購入する。硬貨を差し出そうとシャボンに拳を押し付ければ、そのままゆるりとシャボンの膜が伸びて、商人側のシャボン玉と繋がった。
「せーちゃんはなにを、……って、もう持っとる! 早い!」
 彼に背を向けて行き交う商人シャボンを覗き込んでいた嵐吾が振り向けば既に友の手にあるふわふわに思わず目を見開いた。
「ほほうぱちぱち弾ける綿飴? ほんとにぱちぱちするんか~? ぱちぱちする飴とかは駄菓子屋でも売っとるからなあ?」
 どんな感じ? ひと抓みを口に運んだ清史郎の顔をわくわくと嵐吾が覗き込む。
「しゅわり甘い口溶けに、ぱちぱちが効いていて良いな──お、」
「わわっ、」
 清史郎が言の葉を舌に乗せたなら、きらきらと光の星の花が咲く。
「おお、……ふふ、らんらんもひと口どうだ? この辺がよりぱちぱちしそうだぞ」
 きらきら、さらさら。
 色とりどりの星が喋る度に浮かんでは消える。
「うんうんっ、ひと口もらう!」
 ぱくりと含んだなら、口の中でぱちぱちっと確かに弾ける感覚。けれどお楽しみは更にその先。
「なるほど──ぱちぱちじゃね!」
 告げた言葉と共に弾ける星々。ふたりで共に笑い合えば、更なる星がシャボン玉の中に弾けて。
「らんらんはステーキか? ふむ、串焼きも良いな……らんらん、半分こしよう」
「半分こ? もちろんええよ。──お、酒もあるて。星の花酒!」
 星花茶も気になるが……まずは一杯いっとこ! そう言って嵐吾が突き出す猪口を、当然のように清史郎も受け取る。
「星の花酒か、それは良い。……海の中で乾杯というのも、なかなか乙なものだな」
「確かに乙じゃの」
 とととと、と注いだなら、猪口の底に星の花のような影がゆらり。揺らしてみるとすぐに掻き消えるそれは、幻想なのだろうか。
 ふたりで瞬きそれからどちらからともなく杯を掲げる。
「では乾杯!」
「ああ、乾杯」
 喉に通した酒は花蜜のように甘く、それでいて躍る心を更に灼いた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

グァーネッツォ・リトゥルスムィス
何から何まで吃驚仰天で呆気に取られてたけど目的地に着けたんだな
トスカの言ってたとおりこんなに素敵な場所はまさに大秘宝だ♪

花探しや妖精との交流で動きまくってお腹空いたから
商人さん達から色んな料理を食べ浮かべしたいけど
泡越しに商品やお金を渡し合えるのだろうか?
……おお、こうやるのか、これも初体験だぜ!

んー、ジューシーな海竜串焼きにあっま~い星入り綿飴、
喉越し爽やかな星花茶とどれも最高だぜ♪
(ファンも味と量のどちらも満喫しながら食していく)
特に花を持った妖精そっくりのクッキーが
かわいくて食べるのが勿体ない、でも食べちゃう!
しかも一個ずつ味が違って摩訶不思議でおいしい♪
よーしまだまだ食べ浮かぶぞー♪



●大満喫!
 ぷかり、ぷかり。
 大きなシャボン玉に包み込まれて、ゆったりと河を流れていたグァーネッツォ・リトゥルスムィスは小さな段差を落ちて、──沈んで。
「お……おお……!」
 周囲に浮かぶシャボン玉達に黄金色の大きな瞳を輝かせ、なにからなにまで驚きの連続で呆気に取られていた彼女はようやく我に返った。
「それは確かに、大秘宝だ♪」
「さあさあお嬢さん、海竜のステーキはどうだい?」
 商人が差し出してくる串には肉汁滴るぶ厚い肉の塊。交差に入った焼き目が香ばしく、グァーネッツォは思わず喉を鳴らした。
 なにせ、夕方からずっと花探しや妖精達との交流で浅瀬とは言え水の中を走り回っていたのだ。感じる空腹はそれなりにある。
 ぜひに、とは思ったけれど、商人のシャボンと彼女のシャボンは当然、別。
──どうやってやりとりすりゃいいんだ?
 ちょっぴり首を傾げた彼女の疑問を理解したのだろう、商人の方から串焼きを持ったままの腕を伸ばしてくる。
 シャボン玉を突き破る──かと思えた腕は、ぐぅっと泡を纏ったまま伸びてグァーネッツォの泡へと到達し、そしてその部分だけくっついた。
「……おお、こうやるのか、これも初体験だぜ!」
 串焼きの商人にはその手に硬貨を渡し、そして彼女は様々な商人シャボンへと近付いて今度は彼女から腕を伸ばす。
 海の中を濡れずにやりとりするのも不思議なモンだなと感心しながら、どんどん買い集めていく彼女の肩の上で、ファンもわくわくと身を乗り出していた。
「んー、ジューシーな海竜串焼きに、あっま~い星入り綿飴、喉越し爽やかな星花茶と、どれも最高だぜ♪」
 ほら、ファンも。差し出した串へとファンの牙が食い込んで引っ張り抜く。噛めば香辛料のからみが舌を刺すけれど、それを上回る肉汁の甘みが口いっぱいに広がる。
「お、親父、それは?」
「クッキーだよ、妖精クッキー。買うかい?」
 透明な袋にいっぱい詰め込まれたのは、さっき共に遊んだ妖精達が星花を抱えた様子が抜き出されているクッキー。一も二もなく購入して、グァーネッツォはひとつを抓み出して眺める。
「うわー、かわいくて勿体ない、……でも食べちゃう!」
 さくっ、と噛んだなら、弾ける香りはバニラみたいな甘さ。もうひとつ抓んでみたなら見目には大した差はないのに、味はなんとチョコレート!
 摩訶不思議なクッキーに舌鼓を打ちながら、星花茶を口に運べば舌はすっかりリセットされるから。
「よーしまだまだ食べ浮かぶぞー♪」
 相棒と共に、彼女は更なる商人シャボンを探して揺蕩い往く。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロム・ハクト
シャボンでの散歩で行けるところまで

不思議な港町だけあって、本当に色々なものが集まってるんだな
なんだか可愛らしく不似合いな気もしたが、「星入り」の言葉に惹かれて綿飴を。
(星系なら他のものもまんまと惹かれてしまっているかも)
最初の一パチはちょっとびっくり。

行けるところまで言ったら地に映る揺らめき見つめ、空見上げ。
静かに浸りつつも、祭りのそれらを手にした自分に苦笑しつつ。

食べ物シェア・アドリブ・絡みOK



●ゆらり揺られ
 きんいろの瞳が、もの珍しくて、定まらない。
「不思議な港町だけあって、本当に色々なものが集まってるんだな」
 クロム・ハクトは隣の相棒にも見せてやるつもりでシャボン玉の向こう側へと顔を向けてやる。
 未だ、新しい食べ物──特に菓子類というものに馴染みはないが、勧められたなら断ることも難しい程度には、彼にも沸き立つ好奇心がある。
 自らには可愛らし過ぎて不似合い、のような気もしたけれど、『星入り』と聞けば心惹かれて購入した綿飴には、確かに小さな小さな金平糖のような、色とりどりの星が散りばめられている。
──ぱちぱち弾ける?
 それは一体、どういうことなのだろう。
 商人の宣伝文句は正直、今ひとつぴんと来ていなかったが、クロムはそれでも手を伸ばす。文字通りに雲を掴むような感触も彼にとっては不可思議なものではあった。が。
 ──ぱちぱちっ。
「!」
 舌の上で正しく弾けた感覚に、思わず肩が跳ねた。その後も、ぱちぱちっ、ぱちぱちっと口の中で星が踊るよう。
「……すごいな、!」
 感想を零したなら、それと同時にきらきらと星型の幻影のようなものが浮かび上がってはさらさらと消えた。
 はぁ、と息を吐いてもきらきらきらっ、と星がシャボン玉の中に浮かぶ。
 流れに任せるままに流れてきたシャボン玉は、町の灯りも僅かに遠く薄暗い場所に辿り着いていて、唇から零れる星が海底の“空”に映える。
 夜と闇しかない普段過ごす世界にどこか似ていて、けれどなんと違うことか。
 しばらく星を零しては消えていく様をぼんやりと眺めて、その感慨に浸っていたクロムだったが、綿飴が尽きて振り返ったときには、勧められるままに購入した星花のお茶や、星を喚ぶことのできるという謳い文句だった笛だとかの、普段の己なら手にすることもないだろう品々がシャボン玉の中にあるのに、小さく苦笑する。
──祭りにはしゃぐ、というのも。
 似合わないと言ってしまえばそこまでだが、それをくだらないと言えるほど彼は世界を嫌っていないから。
──まあ、たまには。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティル・レーヴェ
紅殿(f01176)と

ふわりと泡に包まれる感覚が
不思議で心もわくわくと
隣の彼女の歓声に頷いて

ほんに、ほんに!
海の中の港町なんて夢のよう!

青い世界で目を惹く
鮮やかな林檎飴を見つけたなら
交わした会話を思い出し
揃いとふたつ買い求め
ひとつは彼女へ渡してたもぅ?

珍しき品に興味惹かれつ
煌く瞳で語られたなら
己の藤色も煌めき頷く

冒険には素敵なおやつが必要、と
此処だけの菓子を見廻し探し
両手に満たす

とん、と
泡がぶつかる衝撃に瞬いて
意図察すれば此方もぽよん
ひとつの泡になれるといい
並んで齧る林檎飴は
甘酸っぱさも増す心地

紅殿凄い!
妾も貰うていいの?わぁ!

集う生き物達もその周囲の景色も
笑顔の彼女も
全てがなんと眩い想い出か


朧・紅
ティルさん(f07995)と

わぁ
海の中の港町きれーっ

色んなものがあるですねぇ

わっりんご飴っ
一緒にと話した言葉を
真っ先に求めてくれて
笑顔零れ
ありがとですっ

海竜のステーキ?
…もしや海竜さん居るですか?
ねっティルさん
わくキラお目目を向け
行きましょです
星入り綿飴に
店主お勧めお菓子をいっぱい買って
それと…

流れる海景楽しみながらぷかぷか進む
ティルさんお菓子ご一緒に…ぅゆ?
泡の壁邪魔ですね
ぅやっと体当たり
コロンと泡に入れたなら
りんご飴ガジるのです
カリじゅわおいし~ですね♪
お勧めお菓子も共に楽しく舌鼓

海の子のごはんも買ってきたの
海竜さん達おいで~です
ぅやぁ
あの子も綺麗
わっ手から食べました♪
ティルさんもどーぞっ



●海中冒険譚
 とぽん、と沈み込んだふたつのシャボン玉。その先に広がっていた、
「わぁ、海の中の港町きれーっ」
 まるで乗り物の窓に張り付くみたいに朧・紅が言ったなら、
「ほんに、ほんに! 海の中の港町なんて夢のよう!」
 ティル・レーヴェもふんわりシャボン玉に包まれる感触にわくわく、そわそわ。二対の紫がきらきら輝いて、ふたりは辿り着いた先の世界に夢中。
 あ、あっちになにかあるですよ! ほ、こちらにも面白そうなものが。はぐれてしまわない程度に好き勝手に、あっちにふらふら、こっちにふらふら。
 灯りに照らされた青い世界で、けれどいっとうティルの目を惹いたのは、鮮やかに艶めいた、澄んだあかいろ。
「もし、それをふたつ。……ひとつは彼女へ渡してたもぅ?」
 秘密めかしてそう伝えたなら、店員は心得たとばかりに肯いて紅のシャボン玉へと近付いていく。
 突然手渡されたそれは、
「わっりんご飴っ」
 それはかつて交わした会話。一緒にと伝えたその言葉を、憶えていたのは自分ばかりではなかったとすぐに悟り、誰から、なんて聞く必要もなく紅はティルへと振り返る。
「ありがとですっ!」
 なによりも優先して求めてくれたことが嬉しい。喜色に咲いた少女の笑みに、ティルも満たされる心地で笑み返した。
「さあさあお嬢さんがた、海竜のステーキはどうだい?」
 微笑ましいふたりの様子に、抜け目ない商人が割り込む。
 すると紅はぱちぱちとその大きな瞳をまんまるにした。
「海竜のステーキ? ……もしや海竜さん居るですか?」
「おお、居るとも。ステーキにできるくらい大人しい気性のやつだが、あんまり近付くと危ないからね。こうして──」
 純粋な少女の問いに、調子に乗った商人がどうでもいいことをぺらぺらと話し出すが、紅の興味は“ステーキ”にはなかった。
「ねっティルさん、行きましょです!」
 ──海竜に会いに!
 わくわく、きらきら。
 輝く双眸はやっぱり、ふたりぶん。
「ならば冒険には素敵なおやつが必要じゃの」
「ですですっ、えぇっと、それと……」

 めいめいに両手いっぱいのお菓子を買い揃え、改めて合流したなら、ティルは少し首を傾げた。
「……ぅん? 紅殿の泡、その大きさじゃったか?」
「え? な、なにか違うです?」
「うぅん、どうであったかの……」
「あ、それよりティルさん、お菓子ご一緒に……ぅゆ?」
 灯りに照らされた静かな海中をぷかり、ぷかり。ふたつ並んだシャボン玉で寄り添おうとしても、ぽよんと遮る透明な膜。
「泡の壁邪魔ですね」
 むむ、と寄った眉間の皺。僅かに揺れるシャボン玉と紅の言葉に意図を察したティルも紅と息を合わせて、
「ぅやっ」「それ」
 ──ぽよんっ。
 互いに体当たりをしたなら、ふたつのシャボン玉がひとつになって、紅の身体が転がり込む。
 これで本当の隣で一緒に食べられる。にっこり笑ってさっそくふたりで取り出すのは、もちろん林檎飴。
「カリじゅわおいし~ですね♪」
「うむ」
 思い切り齧れば薄い飴の膜の向こうに瑞々しい果汁が溢れ出す。甘くて酸っぱいその味が増す心地でティルも眦を和らげた。
 そうして波に揺られて幾許か。
「ぅやぁ」
 海中に緩やかに現れた首の長い竜の姿に、紅が思わずと言った様子で声を零した。手にしていた星入りの綿飴がスカートの上に落ちてしまったくらいだ。
 大きさは完全に見上げるほど。けれど穏やかな表情と細やかな碧の鱗に、綺麗、と感想が漏れた。
 けれど、紅はこれを待ち望んでいたのだ。
「海竜さん達おいで~です」
 海の子のごはんも買ってきたの、と。だが。
「ぅゆ……実は、手から食べて欲しかったですけど、危ないよって言われたです。それで実は、シャボン玉に空気を足して大きくしてもらったです」
「? つまり?」
「こうするといいって教えてもらったです!」
 ちょっぴりシャボン玉の端っこに寄って、しっかり海竜達に餌を見せて腕をぐっと突き出す。シャボンは割れず、腕の分だけ飛び出す形になるので、そこに餌を残して迅速に腕を抜く。すると、
 ──ばくん!
「「──!」」
 その飛び出した部分ごと、海竜がシャボンを食べた。
 想定はしていたけれどその勢いと迫力に、零れ落ちそうなくらい目を見開くふたり。しかしほんの少しもすれば「紅殿凄い!」とティルは素直に感嘆した。
 褒めてもらえたなら、紅にも笑顔が戻る。
「ティルさんもどーぞっ」
「妾も貰うていいの? わぁ!」
 海竜以外にも周囲に集まってきた海の生物たちに囲まれて、ふたりはシャボンの大きさに注意しながら少しずつ少しずつ、触れ合わぬふれあいを楽しむ。
 集う生き物達もその周囲の景色も、笑顔の彼女も。
──全てがなんと眩い想い出か。
 ティルは瞼に焼き付けるようにゆっくりと瞬きをして。
 そして海中冒険譚は、未だ、続く。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネムリア・ティーズ
ふふ、ちいさいひとも浮かんでる
とってもふしぎで、ステキな魔法だね

ふしぎの町はいつからあるんだろう
一夜だけでもって、だれかが星にお願いしたのかな
ふわふわ浮かぶ想像と、楽しい気持ちがふくらんで
今日のことを日記に書くだけで物語になりそうだ

弾けるわたあめ、たばこに、お酒
お店を通り過ぎるたびにみんなの顔を思い出すけれど
おみやげは最後にしようかな

えっと、トスカ、だよね?
ボクはネムリア、よければ一緒におさんぽしたいなって
苦手じゃなければ星花茶をごちそうさせてほしいな

今日はありがとうって
ステキな場所につれて来てくれたお礼をしたかったの

夢みたいだけど、ずっと忘れない
キミがくれた地図と、今日の思い出がボクの宝物だ


キトリ・フローエ
シャボン玉越しに見える光景に目を輝かせながら
あっちへ行ったり、こっちへ行ったり
海の中にこんなに素敵な街があるなんて!
妖精さんが教えてくれたラッキーアイテムの
星を散りばめた綿飴を探しに行くのよ
いつもならフェアリーサイズで十分だけど
今日は少し大きくしてもらおうかしら?

トスカを探して見つけられたら名前を呼んで彼女の元へ
一緒に綿飴、食べましょう!
おおきなトスカにはそれでもきっと小さな綿飴だけど
この素敵な世界に招いてくれたお礼におすそ分け
他にも一緒の子はいるかしら?それなら勿論、皆に
口に入れるとね、ぱちぱちして美味しいのよ
トスカが気になる物はある?探しに行きましょう!
シャボン玉に揺られ、暫しの海中散歩を



●不思議の町散策
 ちいさなシャボン玉の中で、キトリ・フローエはぱたぱたと美しい翅を震わせ、流れていく光景に瞳を輝かせた。
「ねぇベル、海の中にこんな素敵な街があるなんて!」
 傍らに寄り添う花の精霊へと振り返りながら、彼女は決める。めいっぱい楽しむべく、漂うことを。
 そんな彼女よりもまだ更に小さな妖精たちもシャボン玉の中に収まって浮かぶ姿にネムリア・ティーズは目を細める。
「ふふ、ちいさいひとも浮かんでる」
 その様はとてもふしぎで、──ステキな魔法だと。
 流れるのに任せて、シャボン玉の中で座った彼女も新しく出逢う景色と世界に静かながらも溢れ出るわくわくが止まらず、前のめり。
──ふしぎの町はいつからあるんだろう。
 一夜だけでもって、だれかが星にお願いしたのかな。
 例えば海の底の妖精が祈って。それを叶えたいと願った星が花になって、河に落ちて。その願いを摘んだ河の妖精が、花束を届けに河を往く。……それは、なんて。
 ふわふわと浮かぶ想像に、自然と口許が綻ぶ。
「今日のことを日記に書くだけで物語になりそうだ」
 真白の日記帳を埋める一輪の花物語。想うだけで胸の裡があたたかい。
 元気の良い商人達も、そう思って眺めれば物語の登場人物。どうだいと差し出される品々も珍しくて、楽しくて。
 星の弾ける綿飴に、泡の浮かぶ煙草に、星の花のお酒。それらを見つける度に、知己達の顔が浮かぶけれど。
「……おみやげは最後にしようかな」
 今は。
 胸の傍で“それ”を握り締めて、きょろりとネムリアは視線を巡らせた。

 同じくキトリも視線を彷徨わせていた。目指すは妖精が教えてくれたラッキーアイテム。星を散りばめた綿飴!
 それはオススメされるだけあって特産であるらしく、少しすればすぐに見つかった。
「どれくらい詰めようか?」
 ドワーフの商人が腕まくりしてみせるのに、彼女はちょっぴり考えて。
「今日は少し大きくしてもらおうかしら?」
 そうして手に入れたそれは、ひと抱えもある。決して急に食い意地が張ったわけでは、もちろんなくて。いいえ、美味しいものは大好きだけれど!
「あ、トスカ!」
「キトリ」
 見付けた姿を呼べば、ふわふわの耳を揺らして振り返る顔見知り。
 傍に寄ったなら、どこか誇らしげでさえある様子でキトリは抱えた袋の中のふわふわを両手で突き出した。
「一緒に綿飴、食べましょう!」
「……いいの?」
「ええ、もちろん」
 おおきな彼女には、それでもきっと小さな綿飴だけど。
「この素敵な世界に招いてくれたお礼に、おすそ分けよ」
 微笑むキトリのやさしい声音に、トスカもゆるり、眦を和らげる。
「口に入れるとね、ぱちぱちして美味しいのよ。それに見て!」
 ぱくりとちょっぴり千切って口に入れて「ほら」と言ったなら、色とりどりの星が喋る度に浮かんでは消える。きらきらきら、さらさらさら。
「舌で弾けるだけじゃないんだね」
「そうなの!」
 じゃあひと口、と。ひと抓み千切って食べたトスカの口からも、「ほんとだ」喋る度に星が零れては落ちる前に消えていく。
「えっと、トスカ、だよね?」
 さらり、銀糸を流してネムリアが声を掛けたのは、そんなとき。
 ぽろぽろと星を零すふたりの様子に思わず宵空色の瞳を瞬くけれど、綿飴のせいなの、とキトリが笑ったなら得心した面持ちで肯いて。
「ボクはネムリア、よければ一緒におさんぽしたいなって」
 初めましてのご挨拶。ぺこりと頭を下げた彼女に、トスカもこっくんと頭を下げる。
「もちろん。……キトリも一緒、いい?」
「こちらこそ、もちろん、だよ」
「ふふ。じゃあ改めて、あたしはキトリ。良ければあなたも綿飴をどうぞ!」
「わ、ありがとう。苦手じゃなければ、星花茶をごちそうさせてほしいな」
 そう告げた彼女に、「ありがとう」と返しつつ、トスカはキトリを見る。
「じゃあわたしは、キトリにごちそうしよう」
「あら、じゃあ、あたしはネムリアにごちそうするわね」
 くすくす、娘達は笑い合って。
 小さなカップに入った星花の浮かぶ鮮やかな紅茶を手に包んで、ひと息つく。さっぱりした味わいは喉に身体に優しい。
 揺れる白の花弁を見下ろして、ネムリアは改めてトスカへと視線を遣った。
「今日はありがとうって、ステキな場所につれて来てくれたお礼をしたかったの」
 わかるわ、と告げるキトリにネムリアも淡く笑み返す。
「夢みたいだけど、ずっと忘れない。キミがくれた地図と、今日の思い出がボクの宝物だ」
 今は仕舞ってある“それ”。
 彼女のまっさらな言の葉に、トスカは垂れた耳をもふもふ触る。
「……わたしが言いたいくらい」
 ふたりの様子を微笑ましく見つめつつ、お茶に舌鼓を打って。キトリはカップが空になるのを見計らって、ふわっと浮かび上がって両の手を開いた。
「トスカ、それにネムリアも。他にも気になるものはある? 探しに行きましょう!」
 だってこの街はひと晩だけの宝物だから。
 彼女の提案に、ふたりはしっかと肯いた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロキ・バロックヒート
亮ちゃん(f26138)と

ぱちぱちする綿飴を子供みたいに楽しんで
つられるように天を仰ぐ
楽しかったなぁ
感想は重なるようで

うん、実は神様なんだよ
びっくりした?
確かに神様っぽくないかもなんてお道化て

俺様もちょっとだけ知ってるよ
夏のにおいがして
ヒーローだって名乗ってて
ほんの少し前までふつうの女の子で
うんと速くてダンスが上手
そして―
(傷付いても手を伸ばしていたい、大切なものがある)
これは君と同じよう口に出さず仕舞い込んで

“ロキ”のことが知りたいの?変なのって笑う
じゃあ亮ちゃんも見せてよ
まだまだ知らないことだらけ
自分を見せるのも君を知るのも
きっと同じこと

星の花酒?飲む飲む
星の一粒のような第一幕に
かんぱーい


天音・亮
ロキ(f25190)と

残り少ない星入り綿飴を手に
河の空を眺める
きみが見せてくれた光の虹色が目に焼き付いている
真似る様に天に手を翳す
きれいだったなぁ

初めて会った時も神様みたいな事言うなって思ってたけど
本当に神様だったの?
ちょっと驚いた、ふふ

でもだからって変わらないんだ
私が知ってるのは
水平線眺めてぽつんと佇むきみ
ふざけて水をかけてくるきみ
欠片の探し方を教えてほしいと言ったきみ
それだけ
まだ全然知らない事ばかりで
そこに神様としてのきみはいないから

あ、見てロキ
星の花酒だって、気になる!一緒に飲もう!

だからこれからも
私は“ロキ”を知っていきたい
他でもないきみ自身

ひとまずは欠片探しの第一幕目に
乾杯!なんてね



●“きみ”
 海の底から眺める空は、揺蕩う水面にほんものの星の姿を溶かして揺らして、薄暗くてどこかおそろしいのに、水底から照らされる灯りによってあたたかい。
(あ、見てロキ、星の花酒だって、気になる!)
 一緒に飲もう! 袖を引いて鮮やかに笑った天音・亮に、断る理由なんてひとつもないから、飲む飲む、とロキ・バロックヒートも応じて。
 ひととおり巡って、すきなものを買って。
 亮とロキは、シャボン玉に包まれたままふよふよと流されるままに流れていた。
 いつしかすっかり減った星入りの綿飴を抓みながら、見上げた水面。けれどその蒼穹の瞳に焼き付いているのは、彼が見せてくれた祝福の虹色。
「……きれいだったなぁ」
 まるで真似るみたいになぞるみたいに右手を翳す亮に、つられるみたいにロキも“空”を煽ぐ。口の中で弾けるぱちぱちは、いろんな“初めて”を心の底から湧き起こすみたいで、自然と口角が上がった。
「……楽しかったなぁ」
 零した感想に亮の視線が向けられる。同じに返したならどちらからともなく、くすぐったい気持ちで笑み交わす。
「初めて会った時も神様みたいな事言うなって思ってたけど、本当に神様だったの?」
(じゃあ──神様が見せてあげる)
 きみが言ったことを疑うわけじゃない。確認ですらなく、ただの感想。
「うん、実は神様なんだよ。びっくりした?」
「うん、ちょっと驚いた、ふふ」
 彼女に馴染みのある世界にも神は居るから、神という存在自体に驚きはない。ただ彼がそうだという事実が、ちょっぴり彼女を揺らした。
──だって、
「確かに神様っぽくないかもね」
 くすくすと肩を揺らしてお道化てみせるロキに、亮は唇を笑みの形にしたまま軽く首を振った。
「……私が知ってるのは水平線眺めてぽつんと佇むきみ。ふざけて水をかけてくるきみ。欠片の探し方を教えてほしいと言ったきみ。──それだけ」
 まだ全然知らないことばかりで、そこに“神様としてのきみ”はいないから。
 きみが神様だろうがなんだろうが、関係ないんだ。
 なにも変わらないんだ。
──だから。
 いつだって迷いなくまっすぐに伝わってくる亮の言葉に、ロキは蜂蜜色の双眸を和らげ「俺様もちょっとだけ知ってるよ」と返す。
「……夏のにおいがして、ヒーローだって名乗ってて。ほんの少し前までふつうの女の子で、うんと速くてダンスが上手。そして──、」
 改めて隣を見れば、曇りのない蒼穹の瞳がきらと光る。まぶしいなぁ、なんて。感じるのは知っているから。
──傷付いても手を伸ばしていたい、大切なものがある、君。
 音にはしない。
 けれど彼女も、続きを促すこともない。
 ねえロキ、さっきの飲も! にこり笑い取り出すのは徳利と猪口。見て見て亮ちゃん、変わった酒器。ロキ、器の底に星の花みたいな影が見えるよ。あ、消えた? そんなやりとりを交わしながら互いに杯を手にしたなら、亮は悪戯っぽく笑った。
「これからも私は“ロキ”を知っていきたいよ。他でもない、きみ自身のことを」
「“ロキ”のことが知りたいの?」
 変なの、って。戯言弄ぶ神はそう言うけれど。
 同じだけまっすぐに、視線を返すのは彼の真摯の顕れ。
「じゃあ亮ちゃんも見せてよ」
 まだまだ知らないことだらけだから。
 自分を見せるのも君を知るのも、きっと同じことだから。
「それじゃ、ひとまずは欠片探しの第一幕目に──乾杯!」
「かんぱーい」
 衒いのない亮の声に、ゆるいロキの声が重なる。かちんと合わせた杯に満ちた酒が揺れて、光が弾けた。
 それはまるで、星の一粒のように。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

テティス・カスタリア
【錨海】
正直驚いた
「あの花、鍵だったのかも」
オブリビオンは過去の存在だから、今を生きる人が大半忘れた事も覚えたまま…
そんな事考えてぼーっとしてた
ガイの声ではっとする
「ガイは、どうするの」

食べ飲みは、本当は要らない
元がただの深海水だから
でも、美味しいって笑う人の気持ちが解るようになりたいと思えば食べる事もする
「……」
貰ったお茶をちびちび飲みつつずっとガイを見てる
煙草…吸いたいのでは(首傾げ)
「?」
ぁ、煙くない
泡をつついて、割れたらきょとん

今この時間が『お宝』だって言うのなら
ガイと同じように楽しんでみたい
ガイの気持ちとおんなじになってみたい
「…うん」
何か最近考える事読まれる様になってきた、気がする


ガイ・アンカー
【錨海】
アドリブ◎

ぼんやりとしてるテティスに苦笑し
…何考え込んでるか知らんが。ほれ、行くぞ
お宝はこの港町での一夜だろ?
なら、あとは楽しむだけよ

お宝をさらに見つける気分で港町を浮かぶように
ほお、泡煙草に星の花酒…両方買いだ
テティスは星花茶にしときな、と買って渡す
泡煙草を指で遊びながら酒を楽しんでる、と
…あー…何となく、水精のテティスの前では吸わないようにしてたんだよな
泡ってぇなら…煙じゃねえのだろう
泡煙草を咥えて一服
はは、海の中で煙草を吸うとはな…こら。煙草の泡で遊ぶな
─夜は長い
お前が俺と同じ気持ちになりてえなら、とことん付き合ってやるし教えてやる
テティスの水の髪を軽く撫でる
ちゃんとついてきな



●揺蕩
 大きく包まれたシャボン玉の如き泡の中。
 ぼんやりとしている青藤色の瞳はいつものまま、テティス・カスタリアは流れゆく景色が河から親しき海へと移り変わっていくのを眺める。正直、驚いていた。
「あの花、鍵だったのかも」
 摘んで、捧げた星の花。
 受け取った妖精たち──オブリビオン。
──オブリビオンは過去の存在だから、今を生きる人が大半忘れた事も憶えたまま……。
 それはいつもの“ぼんやり”とはまた違う横顔だったから、ガイ・アンカーは小さく苦笑しつつ目の前に広がる海中の港町を指差した。
「……何考え込んでるか知らんが。ほれ、行くぞ」
「、ガイは、どうするの」
 信頼する彼の声に我に返った──見目はなんら変化もないが──テティスは、指し示される先よりもガイの顔を見て、くてと首を傾げた。
 そんな水精の様子に錨はなにを今更、とでも言いたげに笑って眉を寄せて見せた。
「お宝はこの港町での一夜だろ? なら、あとは楽しむだけよ」
 そうして無論初めてであるはずのシャボン玉の操縦も意のままに、ゆらりゆらりと泳ぎ出すのに、特に反対意見もなくテティスも随伴する。
──これ、無いほうが、速い、けど。
 緩やかな移動に、そっとシャボンの膜に掌を添える彼の思考にも気付くことなく、ガイは商人のシャボンを覗き込んで口角を上げた。
 新しく見る世界はいつだって眩しくこの得た目に映る。触れる異文化は海賊の醍醐味でもある。
「ほお、泡煙草に星の花酒……両方買いだ」
「毎度あり!」
「テティスは星花茶にしときな」
「ん、」
 ガイから当たり前のように差し出されるカップに注がれたあたたかな液体。見目は紅茶によく似ていて、星の花が一輪浮いている。揺れるあかい水面を受け取って、両手に包みながらテティスはそれを見下ろす。
 本当は、なにを口にする必要もない。彼はセイレーン。彼を構成するのは深海のソーダ水だ。でも。
 ちびり、口に運ぶ。渋みはなく、爽やかな飲み心地が喉を通る。
「……」
 ガイが購入した酒を徳利から猪口に注げば、猪口の底に星のような幻影が踊る。揺らめけば消えるそれをテティスにも見せて、杯を煽るガイが「ん、甘い酒だな」と眉を跳ね上げ、まあ悪くはないかと舌に転がすのを、ただ見つめる。
 美味しい、ということなのだろう。美味しい、と笑うひと達の気持ちも、判るようになりたいと思えばこそ、テティスは紅茶をちびりちびりと飲み続けた。
 そして、見ているからこそ、よく判る。猪口を片手に、海中の様子を堪能しながら──もう片方の手で弄ぶ、葉巻のようなそれ。
「ガイ、煙草……吸いたいのでは」
 「、」図星。何気ないテティスの問いに、彼は瞬時動きを止めて、「……あー……」どこか困ったみたいに首を傾げた。
「なんとなく、水精のテティスの前では吸わないようにしてたんだよな」
「?」
 どうして。好きにしたら、いい。雄弁なそのとろりと揺蕩う瞳が言うから、ガイは刃物を取り出して吸い口をカットし銜えて、吸い込みながら火を点ける。
──泡ってぇなら……煙じゃねぇのだろう。
 この逃げ場のないシャボンの中、特に穢れを移し込みやすそうなテティスを前に煙を吐き出すことは躊躇われたけれど、煙ではないのであれば。
 吐き出す吐息に乗ったのは、まさしくシャボン玉のような、細かな泡たち。
「はは、海の中で煙草を吸うとはな……こら」
──ぁ、煙くない。
 興味をそそられて泡を突けば、ぱちんと割れたそれにきょとんとするテティスへ、ガイは「煙草の泡で遊ぶな」と注意をしたりして。
 ただふたり、静かに海を揺蕩う。
 船の上からはなかなか見ることはないけれど、ふたりにとっては見慣れた景色。
 ひとしきり泡煙草の泡を目で追ったあと、その光景に見入るテティス。
──今この時間が、『お宝』だって言うのなら。
 ガイと同じように楽しんでみたい。ガイの気持ちとおんなじになってみたい。
 そう願う。
 そんな彼の水の髪を、ぽんとガイは軽く撫でた。
「──夜は長い。お前が俺と同じ気持ちになりてえなら、とことん付き合ってやるし、教えてやる」
 な、と覗き込むように向けられた視線。まっすぐで揺るぎない。
「ちゃんとついてきな」
「……うん」
 こっくり、素直な想いで肯いて。
 だけどちょっぴり、内心で首も傾げてみたりして。
──何か最近考える事読まれる様になってきた、気がする。
 ……まあ、それも。
 ゆらり揺れるうちに、海の中に泡と共に浮かんで消えた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ディフ・クライン
要(f08973)と【WIZ】

しゃぼんに包まれればゆるり瞬いて
波に飲まれた時はびっくりしたけど
こんな風に誘われるなんて、まだまだ世界は不思議でいっぱいだ
妖精の魔法なのかな
乱暴にしなければ、きっと割れないさ

海中に浮かぶシャボンの市
ヒトの不思議か妖精の不思議か
これがきっと、浪漫というやつかな?
そうだね、楽しそうだ
実感は出来なくとも、せめて理解は出来るよう
行ってみよう、要

無表情のままでも興味はある
しゃぼんを寄せて店に寄り

そうだね、記念に何か欲しい
いつでもこの光景を思い出せるように
日常使い出来るものだといいな
万年筆か、いいね
なら変わったインクはあるかな
ああ、星の花酒も気になるね

アドリブ歓迎・商品お任せ


向坂・要
ディフ(f05200)と
【wiz】

へぇ
と興味深げに己を包むシャボンを指で軽く突きつつ楽しげに周りを見渡し
(これどうなってんですかね?)なんて割れる心配が過ぎるもその時はその時で

感情というやつはまだまだ共感(わから)ないことも多いが好奇心はわりと旺盛ところもあり
シャボンや並ぶ店などなんとも「楽しそう」で

こんなところに市がたつとは
ヒトってのは面白いもんだ
なんで感想抱きつつ

同じく興味深げな友とふらりふらりと店を覗き

なんかお土産でも買って行きますかぃ?
今日、という日の記念に、ね

なんてのんびりお誘いかけつつ万年筆あたりを探してみますかね

アドリブ歓迎
商品お任せ



●それは快然と
「波に飲まれた時はびっくりしたけど。こんな風に誘われるなんて、まだまだ世界は不思議でいっぱいだ」
 妖精の魔法なのかな、と。揺られるシャボン玉の中で、ディフ・クラインはゆっくりと瞬いて。
──これどうなってんですかね? 割れたりしねえんでしょうか。
 まぁるく包み込んだシャボン玉を悪戯っぽく軽くつついて、それが割れることなく指の形に外側へ伸びるのを見たなら、軽く安堵を胸に向坂・要は興味深げに口角を上げる。
 そんな彼に「乱暴にしなければ、きっと割れないさ」穏やかな声音でディフが告げて、見遣るのは海の中に広がる港町。
 海中に幾多のシャボンが浮き、その中には多くの商品を抱えて商人たちが声を張り上げ、客を呼ぶ。
「……へぇ」
──こんなところに市がたつとは、ヒトってのは面白いもんだ。
 それを欲と呼ぶか、あるいは。
「これがきっと、浪漫というやつかな?」
 ヒトの不思議か妖精の不思議か。目を細めた要に、ディフが言う。
 年月経てヒト型を得たヤドリガミと、蒸気造りの人形。互い、感情というものについてはまだ共感〈わか〉らないことも多いけれど、それでも胸の内側を揺らすものはある。
「……なんとも『楽しそう』なことで」
「そうだね、楽しそうだ。行ってみよう、要」
 実感はできなくとも、せめて理解はできるように。
 常に薄く笑み刷く要と、表情の動かぬディフは根本のところで同質だ。“外”へ対する興味を持ち続けていることも、踏み込んでいくことのできる行動力も、また。
 だから今このときはこの世界に身を任せて、ふたりはシャボン玉に乗ったまま、いくつかの店をふらりふらりと覗いていく。
 明るい声音の商人たちがあちこちから声を掛けてくるのを、たまには応じて、たまには断って。
 そうしているうちにじんわりと、音立てぬこのココロに『楽しい』が浸透すればいい。そう思う。
「なんかお土産でも買って行きますかぃ? ──今日、という日の記念に、ね」
 たった一夜だけの不思議の町。
 に、と歯を見せる要の提案に、迷いなくディフも小さく肯いた。
「そうだね、記念に何か欲しい」
──いつでもこの光景を思い出せるように、日常使い出来るものだといいな。
 それは既に、微かなりとも“揺れた”証左なのだろうか。
 やわらかな心地を覚えながらも芽生えた願いに、共振するものがあったろうか。言葉にせずとも要が覗いた雑貨屋の中。
「ああ、こいつなんて如何です?」
「万年筆か、いいね」
 深い紺藍に砂金の如き煌めきが散ったそれは、夜空の星々のようにも見える。
「なら変わったインクはあるかな」
「星花の彩り、なんて名前のがありますぜ」
 シャボン越しにやりとりする彼らの様子に商人のおばあさんがくすりと笑ってインク瓶を開けて、紙にひと筋の線を引いたならその軌跡は、
「……虹色?」
「角度によって色が違って見えるんですかぃ?」
「いいや、これは見たひとの気持ちを映し出すインクなのさ」
 嘘か真か、判りはしないけれど。
「へぇ、面白い」
 そう言って揃いで手にすれば、早速なにかを書いてみたいと更に浮き立つ気持ちを覚えながら彼らはまだ、揺れて流れていく。
「ああ、星の花酒も気になるね」
「いいですね、一献やっていきましょうや」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オリオ・イェラキ
リュカさま【f02586】と

リュカさま、わたくしシャボン玉に入るの初めてですわ
しかも海へ行けますのね。ね、楽しそう
目が輝いて

夜空の星に見惚れていたら沈み込み
まぁこんな所に沢山…本当に街のようですわ
気儘な海中散歩にお店巡り
海竜のステーキ?なんて美味しそう
陸の竜も美味でしたもの、是非頂きましょう
飲み物は星の花酒を、リュカさまのジュースと乾杯したいの

武器を?ふふ、リュカさまらしいですわ
勿論ご一緒しますの。綿飴つまみながら、楽しげに
いつも扱われてるその銃に合う弾はございまして?
わたくしでも扱える銃はあるかしら
対物…?是非今度撃ち方教えて下さいませ

後は共に海の星を眺めましょう
今夜も好い冒険が出来ましたわ


リュカ・エンキアンサス
オリオお姉さんf02586と

そうなの?
シャボン玉って、なんだかおもしろいね
沈んでいくのは…落ち着かないけど
ちゃんと制御効く?

本当だ、なんだか不思議な景色だね
お姉さん、ドラゴンステーキだって。これって魚介類分類なのかな…
うん、勿論貰いに行こう
俺は何か炭酸のジュースでも貰うから…乾杯

折角だから武器でも見に行かない?
変わった弾丸とか
使えなくとも見るのは楽しいし…
ええ、お姉さんが銃?
…俺は対物ライフルを推す
絵面だけで使いやすいかどうかは全く保証しない
ただ、ごついのが似合うと思ったから

散々お店を冷かしたら、後は星を見てゆっくりしようか
……いい景色だね
うん、今回の旅も楽しかった。海の底もたまにはいいね



●海往き
「リュカさま、わたくしシャボン玉に入るの初めてですわ」
「そうなの?」
 しかも海へ行けますのね。ね、楽しそう。そう瞳を輝かせるオリオ・イェラキの言葉に思わずそう返して──そういうものかとリュカ・エンキアンサスは自らの経験を顧みた。様々なユーベルコードを自在に操る猟兵の中にいると、感覚が狂ってくる。
「そういう経験、とっくにしてそうだよ」
 お姉さん、よく似合うから。特になんの気なしに告げるリュカに「まぁ、ありがとうございます」とオリオも他意なく礼を述べて。
 ゆらり揺られるシャボン玉に背を預けつつリュカは、「確かになんだか面白いよね」とふよふよとシャボン玉の膜を掌で押す。水を押したような感触だけはあるけれど、無論、濡れることはない。
「ちゃんと制御きく?」
 沈み込んだときに潰れたりしない? 危機管理能力は普段どおり。張り巡らせた警戒も眼前に幾多の灯りのシャボンが見え始めた頃には、彼らを包んだシャボン玉は乗り物としての信頼を得ることに成功していた。
「まぁこんな所に沢山……本当に街のようですわ」
「本当だ、なんだか不思議な景色だね」
 周囲は完全に海の中。小さな魚が泳いだりしている中に浮かんだ大小様々なシャボン玉に、ひとやひとじゃないものが詰み込まれて浮いていて。
「お姉さん、ドラゴンステーキだって」
「海竜のステーキ? なんて美味しそう。陸の竜も美味でしたもの、是非頂きましょう」
「お姉さんって結構豪快だよね。ところでこれって魚介類分類なのかな……」
 まじまじと串に刺さった肉を見つめて思案するリュカの隣で、迷うことなくオリオは硬貨を手渡して購入する。
 滴る肉汁が水着に零れないように注意する彼女の代わりにリュカは彼女の欲した星の花酒と、手近なところにあった『星泡』と名付けられたジュースを手にする。
「まあ、そちらは?」
「泡って言ってたからには炭酸なのかなと思って」
 特段の興味もないままリュカが言えば、オリオは興味津々で覗き込む。簡易のグラスに注がれたそれは確かに底からたくさんの気泡が浮かび上がってきていたが、水面で弾けるときに星の幻影を生んでいく。
 星花の酒も、猪口に注いだなら猪口の底に瞬時ゆらりと浮かんだ星の花。揺れると掻き消えるそれに、「……飲んでもだいじょうぶ?」リュカの警戒心が発動したのは言うまでもないけれど。
「……乾杯」
「ええ、乾杯!」
 オリオが心より楽しそうに杯を掲げるから、そのまま杯を合わせる。
 香辛料のたっぷり掛かった肉は柔らかく、甘い脂は炭酸の感触が──あるいは花蜜のように甘い酒が洗う。
「折角だから武器でも見に行かない? 変わった弾丸とか」
 使えなくとも見るのは楽しいし……。と食べながらも周囲へと視線を巡らせる彼に、ふふりとオリオは相好を崩す。
「リュカさまらしいですわ。勿論ご一緒しますの」
 振り返ったときに彼女の指先にあったのはぱちぱち弾ける星型の金平糖のようなものがたくさん散らされた綿飴。
「……お姉さんそれいつ買ったの」

「これは?」
「それは敵に射ち込んだらそこ星が散る弾丸だよ」
「殺傷力は?」
「まるでないね!」
「……。……ふーん」
「ふふ。いつも扱われてるその銃に合う弾はございまして?」
 低くなったリュカの声音にも我関せず、オリオがリュカさま楽しそう、と彼の顔を覗き込む。そして、大きな商人のシャボンの中にあるいくつもの武器に視線を遣った。
「わたくしでも扱える銃はあるかしら」
「ええ、お姉さんが銃?」
 思わず帽子のつばの下で、リュカの眉が跳ねた。想像する。オリオに、銃。
「……俺は対物ライフルを推す」
 彼が意見を颯爽と翻すまで僅か数秒。
 長く柔らかな漆黒のスカートを揺らしながら、厳めしい造りの大型銃を構えてぶちかます姿──靡く長い髪。絵になる。
 絵になる、というだけで、使いやすいかどうかは全く保証しない。ただ似合うと思ったから、それだけの理由だ。
「対物……? なら是非今度撃ち方教えて下さいませ」
 けれどオリオはそう言って微笑んだ。

 結局、武器はなにも買うことはなく。
 静かな場所へと移動したシャボン玉の中で、ふたりはゆるりと星を──海面に揺らめく灯り達の反射を見上げた。
「……いい景色だね」
「ええ、今夜も好い冒険が出来ましたわ」
 ありがとうございますと告げる彼女に、うん、と気負いなく彼も肯いて。
「今回の度も楽しかった。……海の底も、たまにはいいね」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
f01786/綾
トトもいっしょにいこっ

商人に手を振って
膜の向こう
張り付くようにしてきょろきょろ

ここが、宝の地図の場所
わたしたちが登場人物になるの?
ふふ、すてきだね

トトっ
星の花の炭酸水を注いだら
かんぱいっ
アヤ、わたしもおさけのむっ

泡煙草はふしぎそうに見守る
ぷかぷかしてる
煙を視線で追いかけて

それじゃあ、いこうっ
あれもこれもと食べうかび
だって食べたことがないものがたくさんだから
わけっこしようっ
これもおいしいよ

アヤの持つ万年筆を覗き込み
わあ、きれいっ
トトもおそろいにしようっ
きらり瞬く星の彩
掲げて見つめて

願いを聞けばトトと顔合わせ笑む
綴られた隣にアヤの名を
星の形で三人の名前を包んで

もちろんっ
やくそくだね


都槻・綾
f01136/オズさん
トトさんも

心惹かれて止まぬ景色や品々を
好奇心いっぱいに眺める

宝に出逢えた私達も
伝説の一部として
後の世に伝わるのかしら

茶目っ気含んだ笑みで乾杯
掲げるは星の花酒
泡煙草は二人の許可を得てから一服

綿飴や串肉を皆で分け合えば
美味しさも喜びも倍増
きっと満開の笑顔

記念に揃いのものを見繕ってみたいな、と
探して手にしたのは星の万年筆
流れるようにさらりと記せる鮮やかな書き心地も
掌に確りと馴染む重さの軸も
宙を融かした紺青の墨も
此の夜を象るもののよう

早速、と綴るのはお二人の名前

またこうして
共に過ごす時間を頂戴出来ますか、と
ふくふく笑って

ねぇ
流れ星に祈るよりも確かに
この我儘な願い、叶えてくださる?



●それは物語の一頁
 トスカを誘って、都槻・綾とオズ・ケストナーは鮮やかな港町の中をゆらり、ゆらり、夢中で“歩く”。
 目に留まるすべてが珍しくて、新しくて。
 面に顕れる表情に差はあれど、胸の裡で跳ね上がる鮮やかな虹色の好奇心は、皆が共有していると、青磁とキトンブルー、そして浅瀬色の瞳が雄弁に語る。
「あっ手をふってるよっ、おーいっ」
 ぶんぶんと手を振り返すオズは、乗り物の窓に張り付くみたいにしてシャボン玉の膜へと顔を寄せる。
 だってここが、宝の地図の場所。
「宝に出逢えた私達も、伝説の一部として後の世に伝わるのかしら」
 ふくふくと笑う綾の言葉に、オズも振り返る。
「わたしたちが登場人物になるの? ふふ、すてきだねっ」
 星を摘んで、そして河を渡って海の港町で笑うお話。あたたかくてわくわくする物語になっていたらいいなと、まだ見ぬ本の装丁へと思いを馳せたなら、更にわくわくする。
「はいトトっ、これっ」
「……なに、これ?」
「星の花の炭酸のジュースらしいよ。『星泡』って言ってたの」
「では、私はこちらを」
 茶目っ気たっぷりに掲げたのはいつの間にやら手にしていた星の花酒だと謳われていた徳利。あっ、とオズも嬉しそうな声をあげる。
「アヤ、わたしもおさけのむっ」
「おや、お相伴してくださる? それは素敵」
 猪口に注げば、その底にふぅよりと浮かんだ星花の幻。「わっ」「あら」瞬いたオズと綾が猪口を揺らしたなら、それはあっという間に掻き消えてしまうけれど。
「かんぱいっ」
「ええ、乾杯」
「乾杯」
 杯を合わせたなら、花蜜のように甘い味が喉を灼く。酒とジュースに舌鼓を打ちながら、ぷかりぷかりと浮かび、流れていく。
「アヤ、煙草すうんだねっ」
「嗜む程度ですね」
 許可を得て購入した泡煙草をふかしたなら、煙の代わりにぽぽぽぽ、と浮かび上がるのは細やかな泡だ。不思議そうに見つめるオズとトスカの様子に、綾は小さく微笑んで。
「それじゃあ、いこうっ」
 オズの掛け声で、彼らは食べ浮かびを堪能する。あれもこれもと、目移りしてしまう。
──だって、食べたことがないものがたくさんだから。
 この町はこの夜にしか、ないらしいから。
「わけっこしようっ、これもおいしいよっ」
「ええ。こちらの串肉も美味ですよ」
「綿飴、綿飴楽しいよ」
「たのしい? おいしい、じゃなくて?」
「それは楽しみですね」

 そうしてめいっぱいに楽しんで、食べて、身体も心も満たしたあと。
 ふと覗いた、雑貨屋の中。
──記念に揃いのものを見繕ってみたいな、と。
 思うほどには、私の心もくすぐられたようです。なんて。こっそり笑みを含みながら綾が探したのは、星の万年筆。
 流れるようにさらりと記せる鮮やかな書き心地も、掌に確りと馴染む重さの軸も、宙を融かした紺青の墨も。
──此の夜を象るもののよう。
 設えたような出逢いに眦を和らげた綾の手許を覗き込んだオズは「わあ、きれいっ」と純粋に瞳を輝かせた。
「ええ、お揃いにしてはいかがかしら、と」
「おそろいっ、いいねっ。トトもおそろいにしようっ」
「うん」
 こくこくと肯く彼女も含めて、三人それぞれに同じもの。
 購入して早速、いつもの帳面を開いた綾がそこに記すのは、ふたりの名前。
「またこうして、共に過ごす時間を頂戴出来ますか」
 それは彼にしては珍しく、まっすぐな──。
 ふぅわりと笑って、彼はふたりの顔を見る。
「ねぇ、流れ星に祈るよりも確かにこの我儘な願い、叶えてくださる?」
 そうすればオズはトスカを顔を見合わせて、そしてどちらからともなく破顔して。
「もちろんっ、やくそくだね」
 綴られたふたりの名の隣に綾の名前を、迷いない星の色で彩った。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リリヤ・ベル
ぷかぷかふわふわ。
ぜんぶがふしぎな日の行きつく先は、
やっぱりふしぎな街なのです。

ひとびとも、ものも、物珍しくて目移りしてしまう。
ひとつふしぎを見つけると、あとからもすてきが見つかるのです。
端からぐるりとお散歩をしましょう。
ふしぎな品とおはなしを、どうぞお聞かせくださいな。

おはなしをあれこれうかがって、おみやげには、お茶の葉を。
お酒は飲み過ぎてはいけませんし、わたくしがご相伴できませんもの。
聞いていただきたいことが、たくさんあるのです。
秋の夜長をあたたかく過ごせるように、おすすめをいただきましょう。

ひみつの場所が終わる時間まで、もうすこし。
思い出が泡と消えないように、しっかり憶えてゆくのです。



●穏やかで、鮮やかな
 大きな若芽色の瞳は、ただきらきらと輝いて。そわそわと大きな耳が動く。
 揺れるシャボンの内側で、リリヤ・ベルは流れていく景色を夢中で見つめた。
 ぷかぷか、ふわふわ。
──ぜんぶがふしぎな日の行きつく先は、やっぱりふしぎな街なのです。
「さあ、こっちは喋る魔法の本だよ」
「こっちは海竜のステーキだ。最高の焼き加減はいかが?」
 海の中なのに聴こえる声も不思議なら、シャボン玉の中で売られている品々もなにもかもが不思議で、思わずきょろきょろ、目も耳も足りないくらい。
「こちらはなんですか?」
 ふしぎな品とおはなしを、どうぞお聞かせくださいな。
 リリヤは湧き立つ好奇心のままに、ぜんぶのお店を回るくらいの想いでゆっくりゆっくり、商人たちの語る言葉へと耳を傾ける。
 読むひとの心を映し出すインクに、鮮やかな彩りのガラスペン。
 海竜達は大人しくて、けれど近付くと危険。ステーキにするときには香辛料をたっぷり掛けると美味しくて香ばしくてほっぺたが落ちるのだという。
 弾ける星の綿飴は、食べたら口から星が零れるの?
──ひとつふしぎを見つけると、あとからもすてきが見つかるのです。
 拾っても拾っても重ねても重ねても飽きることなく、尽きることのない興味はたくさんたくさん彼女の中に物語を紡ぎ上げていく。
「さあ、星花茶はいかがかね?」
 ゆったりとシャボンの中の台に頬杖をついた老年の男性が声を掛ける。周囲には麻袋にたくさん詰め込まれた茶葉が見えた。
──こちらを、おみやげにいたしましょう。
 リリヤの中で、ぱちりとなにかが填まった気がした。
──お酒は飲み過ぎてはいけませんし、わたくしがご相伴できませんもの。
 茶葉を計ってもらって、美味しい淹れ方を伺って。
「本当は星花をひとつ浮かべるんだが、お土産用ならこれをあげよう」
 そう言ってもらったのは、ドライフラワー。乾燥してなお色褪せないそれは、物語の栞にぴったりだ。

 聞いていただきたいことが、たくさんあるのです。

 いつだって浮かぶのは優しい蒼。
 夏を越えて、秋の夜長をあたたかく過ごせるように、美味しく淹れたお茶を供に、物語を紡ごう。
ひと夜の夢が終ってしまうまで、あと少し。
──思い出が泡と消えないように、しっかり憶えてゆくのです。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月03日


挿絵イラスト