爽涼フルーティー・サマー
●サマーフルーツの島
――今回のスイカも良い出来だ。
軽く叩けば、ボンボンと済んだ音が響く。
完熟している証拠である。まさに今が食べ頃だ。
傍らには、今朝収穫したばかりの新鮮なサマーフルーツの山。
こちらも最高の仕上がりだ。
ああ、見ているだけで心が躍る。
広い砂浜をぐるりと見渡せば、ビーチいっぱいに並べられた沢山のスイカ達。
その周囲に、せっせと落とし穴や網罠を仕掛けながら、島民達は笑い合う。
今年もこの時期がやって来た。
さぁ、エクストリームスイカ割り大会の開幕だ。
●夏の海へ
「猟兵ちゃん達やっほー! 夏休みマンキツしてっかにゃー?」
スイカの入ったネットをぷらぷらさせながら、ジンガ・ジンガ(尋歌・f06126)は猟兵達へと明るく問い掛ける。
「今日は、俺様ちゃんもバカンスのお誘いに来たじゃんよ。夏のオモイデにひとつどーお?」
その背後に映し出すは、グリードオーシャンの島のひとつ。
コンキスタドールの脅威もない、長閑で平和な夏の島。
「なんかこの島ね、夏の果物がめっちゃめちゃたーくさん穫れんだって。特にスイカ」
これもその島のヤツなんだけど、とジンガはネットの中からスイカを取り出し、猟兵達によく見えるよう掲げ持つ。
形良く、立派に育ったそのスイカは、遠目で見てもはっきりと分かるほど縞目が鮮明で、果皮の色艶も美しい。
きっと中には、甘くて瑞々しい果肉がこれでもかというほど詰まっていることだろう。
「だからなのか、エクストリームスイカ割り大会が名物なのね」
――エクストリームスイカ割り大会。
ビーチに設置された数多のスイカを、誰よりも多く割った者が勝者だという、その島の伝統競技。
素早く、美しく、鮮やかに――だが豪快に。時に他者を妨害しつつ、支給された良い感じの棒を繰り、スイカ割りの技術を競う夏の風物詩である。
スイカの中には凄まじく硬い精巧なダミーが混ぜられていたり、周囲には落とし穴を筆頭に簡単なトラップが仕掛けられていたりと、一筋縄では行かないとかなんとか。
尚、最後は美味しく食べることが鉄則であるので、スイカを跡形もなく粉砕することや、妨害のために辺りを爆破するようなことは御法度だ。
「あとは、サマーフルーツをそりゃもう豪快に使ったスイーツも色々あるらしーわヨ!」
一級品なのはスイカだけではない。
マンゴー、パパイヤ、パイナップル。桃にライチにブルーベリー、メロンやさくらんぼ――その他諸々。
さんさんと輝く太陽の下、味濃く育った夏が旬の果物達。
大会の会場には、フルーツカクテルやパフェ、ゼリーにタルト、フレッシュジュース等、様々なスイーツを味わえる出店が軒を連ねているという。
勿論、素材そのままで食べても最高に美味しいそうだ。
「今回はなーんにも起こんねーみてェだし、俺様ちゃんものんびり羽伸ばせそーだわ! ……ってワケで、お互いイイ夏休みになるとイイわね?」
何食べよっかなー、なんて鼻歌交じりに笑みながら、ジンガはグリモアを起動する。
光の先に踏み出せば、其処はもう果実の島。
存分に休暇を楽しもう。
鱈梅
こんにちは、鱈梅です。
明るくわいわい夏休みを満喫する感じのお話になります。
精一杯努めさせていただきますので、どうぞ宜しくお願い致します。
●このシナリオについて
このシナリオの舞台は、既に猟兵達によってオブリビオンから解放された島となります。
また、このシナリオは【日常】の章のみでオブリビオンとの戦闘が発生しないため、獲得EXP・WPが少なめとなります。
●島について
美味しい夏の果物がめっちゃ沢山穫れる島です。
特にスイカは穫れる量も多く、出来も最高です。
エクストリームスイカ割り大会と、サマーフルーツを豪快に使ったスイーツが名物です。
もちろん獲れたても美味しい。とてもおいしい。
●エクストリームスイカ割り大会について
めっちゃ硬いダミーやトラップを予測して回避しつつ、割って割って割りまくる。
全員に良い感じの棒が配られます。目隠しは特にありません。ぐるぐるは回ります。
もし大会参加者が複数いた場合、最終的にダイスで勝者を決めます。運です。
一般の海賊とか島民も参加しているので、危険行動や妨害工作は程々に。
●出店について
オープニングにあるような夏のフルーツや、それらを使ったスイーツが味わえます。
夏に穫れるものであれば、大抵のものはあります。
●できること
スイカ割り大会をエンジョイしたり、夏のフルーツやスイーツを楽しんだりできます。
勿論それ以外もやろうと思えば出来ます。
行動例はあくまで例ですので、食べ物を大事にしつつ、ご自由にお楽しみいただければと思います。
もしご希望があれば、ジンガもひょっこり顔を出します。
何もなければ、どっかでのんびりスイカ食べてると思います。
今回、断章追加はありません。
キャパ等に限りがありますので、書けそうな範囲での採用になるかと思います。
全採用の確約は出来ませんが、再送はいつでも歓迎しております。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『猟兵達の夏休み』
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POW : 海で思いっきり遊ぶ
SPD : 釣りや素潜りを楽しむ
WIZ : 砂浜でセンスを発揮する
👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
タビタビ・マタタビ
(アドリブ・絡み歓迎)
スイカ割りに来たよ!
……って、エクストリームって何……??
えと……ケットシーサイズの棒はありますか……?(小声)
よーし、いざ出陣!
日頃、剣を使って戦ってるからね、動かないスイカなら……。
硬ッ!? ダミー!?
でも本気で攻撃すると本物スイカが粉々になっちゃうし……。
ここは【第六感】。
わかる……本物の気配が……
きゅぴーん!
そこだ!
(ずぼっ)
えええぇぇ落とし穴ー!?
えええぇぇまたしても何かしらのトラップ!?
ま、負けないぞ、スイカ割りキングに、ボクはなる……!
ふう、なんとか頑張ったよ……
スイーツで一休み。
おっきな欲張りパフェで、色んな素敵フルーツをまとめていただきます!
●エクストリームスイカアクション
瑞々しい果物の香り溢れる浜辺の中央、一際賑わう特設会場。
青空の下、太陽の光を浴びて艷やかに輝いているのは、ごろごろと無造作に並べられた数多のスイカ達。
「わぁ、すごいなあ……これ全部スイカ割り用のスイカなのかな?」
ごった返す人々の中、タビタビ・マタタビ(若き猫黒騎士・f10770)は目の前に広がる光景に目を瞬いた。
隣で素振りをしている麦わら帽子の島民も、彼処で準備運動している海賊らしき者も、たぶん皆スイカ割りの参加者なのだろう。
これだけ沢山あれば皆に行き渡るだろうし、自分も思い切り楽しめそうだ。
「よーし、ボクも頑張るぞー!」
エントリーした時に貰ったゼッケンを身に付けながら、タビタビは気合を入れ直す。
尚、この時。
まだ彼は、看板の『スイカ割り』という言葉の前に『エクストリーム』が付いていることに気付いていなかった。
『さーて、今年もこの季節がやって参りました! いやぁ、今回はどんな戦いが見られるんでしょうねぇ!』
『そうですね、どうやら、心なしか例年よりも初めて見る顔が多いようです。これは一波乱あるかもしれませんね』
『確かに確かに! さぁ、この地に集いし戦士達よ、俺達にまだ見ぬスイカアクションを魅せてくれ! ――エクストリームスイカ割り大会の開幕だーーーーッ!!!!』
実況と解説を担う島民達の開会宣言に、参加者達が雄叫びを上げる。
熱狂と興奮に包まれる会場。面食らうタビタビ。
「……、エクストリームって何……??」
これは、もしかして、自分の想像していたスイカ割り大会とは何かが違うのではないか。そんな予感が頭を過る。大正解である。
だが、ここで怖気付いては騎士の、そして勇者の名折れ。
「……うん、どんな大会だって負けないぞ!」
「そろそろ始まりまーす! Aブロックの方はスタート位置にお願いしまーす」
「はーい!」
驚きはあったが、もう切り替えは大丈夫だ。
きりりと顔を引き締めて、タビタビは配られたちょうど良いサイズの棒を握りしめた。
『それでは――Aブロック、はじめッ!!』
号令が響くと同時に、一斉にぐるぐる回転し、スイカへと駆け出す参加者達。
「よーし、ボクも……いざ出陣!」
規定数回り終えたタビタビも、軽く頭を振ると、小柄な身体を活かしながら手近なスイカの元へと走り寄る。
(日頃、剣を使って戦ってるからね、動かないスイカなら……!)
他の参加者が追い付かぬうちに、まずは1つ目。
狙いは良好。この軌道ならば確実に芯を捉えられるはず――だったのだが。
「硬ッ!?」
ガキィンッ!!、と弾かれる棒。仰け反る身体。痺れの走る手。
この感触はスイカのそれではない。
「……まさか、ダミー!?」
素早く周囲に視線を走らせれば、同じようにダミーの洗礼を受けている他参加者達。
中には赤い果肉を撒き散らしながら割れている物もあるが、見た目的には全く区別が付きそうに無い。
(焦るな。意識を……意識を研ぎ澄ませるんだ……)
タビタビは冷静に目を閉じ、第六感を呼び覚ます。
探るのは、本物のスイカには満ちているであろう生気。
これだけ立派なスイカだ、感じ取れないはずは――ない!
(わかる……本物の気配が……!)
タビタビはカッと目を開くと、きゅぴーんっと来た方角へと走り出す。
その先には、生気溢れるつやつやのスイカ。あれだ。あれは絶対本物だ。
「そこだ!」
裂帛の気合と共に、タビタビは地を蹴り勢い良く棒を振り下ろす。
ぱかん、と小気味好い音。今度こそ割れるスイカ。
タビタビの顔に思わず笑みが浮かぶ――が、
ずぼっ!
「えええぇぇ!? 落とし穴ー!?」
スイカは割れたが、穴には落ちた。
ものっすごい良い顔のまま、綺麗に落ちた。
「ま、負けないぞ、スイカ割りキングに、ボクはなる……!」
そうして、この一勝負が終わったら、絶対にさっき見かけた特大欲張りフルーツパフェを食べるのだ。食べるったら食べるのだ。
頑張れタビタビ、負けるなタビタビ。
恥ずかしさで赤く染まった頬をぺちぺち叩くと、タビタビはめげずに残りのスイカへと立ち向かっていくのであった。
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◆Result◆
*ダイス目=割った個数*
タビタビ・マタタビ:26
大成功
🔵🔵🔵
アリエ・イヴ
【☠️B】アドリブ◎
ヴィヴィ、今日は…フルーツ食べ放題だぞ!
ヴィヴィに目線を合わせてニヤリと笑う
握った手を開けばそこには大量の金貨
食い過ぎだって止めるヤツらは今はいねえ
ここらの甘味、全部制覇してやろうぜ
ヴィヴィと一緒に屋台を回る
まずはパフェと…酒もあんのか
水分がないと人は死ぬからな、うんうん
酒も一緒に買って
ハッ…、すっげーうまいなこの果物
ペロリと平らげ次に
がっつり甘味の合間合間にフルーツそのものやシャーベットを挟んで口直しに
甘味が足りなきゃ蜂蜜をかければいいだろう
ヴィヴィもいるか?
それと…あとでエスタに作ってもらう為に
土産でいくつか買っていくか
スイカ割りにいった面子の割ったスイカももちろん食う
エスターテ・アレグレット
【☠️A】
勝敗お任せ
僕は大して強くないけど、さすがにアトラムくんと組んでの2対1なら勝てる気がする
……ほどほどにやるかな
えー、西瓜の近くって罠しかけられてんのか
あえて罠発動させるから、その隙にアトラムくんに割ってもらえばいいかな
「んじゃ、よろしく頼むっすよ」
罠は見切りで回避っと
うわ、シェフィくん今僕のことねらった?
あー、舐められてんのも癪だし、そっちがそのつもりなら、少しは本気だしますか
サプリメントを摂って体を「調律」
妨害されるよりも、罠が発動するよりも早く西瓜を棒で割る【戯れるように】
終わった後は西瓜を食べる。けど、味わかんねぇ……
まぁ、アリエくんたちが美味しそうに食べてるから良しとするか
ヴィヴィアン・ステアリング
【☠️B】アドリブ◎
食べ放題……甘美な響じゃのう、船長!
船長と視線を合わせてニヤリと笑い、取り出したるはへそくり。
いつもならアトラムに虫歯だ腹痛だ糖尿だと脅され雷を落とされるが、今日は自由! 自由なのじゃ!
はわわ、船長、あそこにすごい立派なマンゴーが!!
おおう、この屋台のパフェもあっちの屋台のフルーツたっぷり練乳かき氷も……!!
更に追い蜂蜜とは……流石船長、ワルじゃのう最高じゃのう!!!!!
テンション⤴︎︎︎⤴︎︎︎でフルーツを色んな形で堪能しつつスイカ割りメンバーをひやかし・応援。
「アトラムもエスタもがんばえー!!
陰険眼鏡なんぞに負けるでないぞー!!」
割られた西瓜にレモンと塩をかけて堪能。
シェフィーネス・ダイアクロイト
【☠️A】アドリブ◎
勝敗お任せ
(西瓜割りは私情だが厭な思い出が残る
大会に参加した所で私に利は皆無だが)
彼奴らの中の忌まわしい記憶を払拭出来るなら二人掛かりでも構わん
今後を見据えた上で勝負に乗ってやる迄
勝つのは私だ
どんな手を使ってでも
西瓜割りにしてはガチ
二丁拳銃を器用に回す
銃弾に似せたBB弾用意
メガリスの眼鏡で何処に西瓜あるか確認
西瓜には近づかず罠回避
【金葩の禍】で複数の西瓜に制圧射撃
中心部から棘生やし花開く様に華麗に割る
余裕があれば他者へ妨害
狙うは弱そうな下っ端(アレグレット)
ヴァントルスが庇い立てするならそれも良し
最後は西瓜が沢山のったフルーツパンケーキ食す
(…あの二人の胃袋は異次元なのか)
アトラム・ヴァントルス
【☠️A】
勝敗お任せ
スイカ割り大会に参加しに来ましたが、見知った獲物もいるようですね。
あれは根に持っていますね、どうもこちらを舐めて頂いている様なので、そのまま甘えてエスタと共に。
罠が厄介ですがエスタの対応に合わせてこちらがスイカを割る方向で。
多少の罠なら義手で受けてしまえばそんなにダメージもないでしょう。
確実に一個ずつ割っていこうと考えてますが…どうもエスタ自身を狙っている人もいますね?
避けながらもスイカの対応をしてもらっていますが、エスタが危ない時は罠なりスイカなりを【投擲】して守りましょう。
「団の者に手を出すのはやめてもらえませんかね、ハニー?」
2対1だからと迷ってましたが負けませんよ。
●海賊達と甘味の海
Bブロック試合開始より少し前。
会場に併設された沢山の出店達を、わくわくの隠しきれぬ顔でぐるりと見渡す男が2人。
アリエ・イヴ(Le miel est sucré・f26383)とヴィヴィアン・ステアリング(Steady!・f26342)である。
「ヴィヴィ、今日は……フルーツ食べ放題だぞ!」
「食べ放題……甘美な響じゃのう、船長!」
視線を合わせ、ニヤリと笑んで。
お互い取り出したるは、大量の金貨にとっておきのへそくり。
「いつもならアトラムに虫歯だ腹痛だ糖尿だと脅され雷を落とされるが、今日は自由! 自由なのじゃ!」
「ああ、食い過ぎだって止めるヤツらは今はいねえ。ここらの甘味、全部制覇してやろうぜ!」
それこそ、重たい財布を空にしてやる勢いで。
本日は大盤振る舞いだ。出し惜しみなどするものか!
さて、何処から攻略するべきか。
何しろ、目に映る全てがお宝の山だ。
「おにーさーんたちーっ、ウチの自慢のパフェ食べてかなーい? 今なら特盛大サービスしちゃう!」
「船長、特盛! 特盛じゃと! 食べねば損では!?」
「ついでにお酒なんてどう? お天道様の下、真っ昼間から飲む1杯……最高よ?」
「お、酒もあんのか……水分がないと人は死ぬからな、うんうん」
「そぉそ、水分水分! あ、キミにはスイカジュースね。こっちも勿論極上の一品だから!」
談笑の後、出てきたのは様々な果物がこれでもかと言うほどに盛られたスペシャルパフェ。
はじまりには相応しい、旬のフルーツ全部盛り。背の高いグラスにぎゅぎゅっと夏が詰められている。
頂上に鎮座するアイスは、フルーツ系ではなく敢えてのバニラ。柑橘系のソースとタッグを組んだそれが、個性の強いフルーツ達を包み込み、纏め上げ、見事な調和を生み出している。
まさに語源の通り、完全なデザート。実に美味い。
「はぁー……口の中で夏が弾けとる……」
「こっちの酒もうまいな……」
口いっぱいに幸福を頬張るヴィヴィアンの隣、アリエが口にしているのは暑い夏にぴったりのスイカモヒート。
新鮮なスイカの瑞々しい甘みの中で光る、ミントやライムの爽やかさがまた絶妙だ。
酒の染み込んだスイカも最高に美味い。これぞ大人の楽しみであろう。
後でエスターテにも作ってもらおう。そうしよう。
「はわわ……船長、あそこにすごい立派なマンゴーが!!」
特盛パフェの最後の一口を飲み込んだヴィヴィアンが、早くも次の獲物を船長に指し示す。
「おおう、この屋台の桃パフェも、あっちの屋台のフルーツたっぷり練乳かき氷も……!!」
「そっちも良いが、あのパイナップルもすげぇうまそうだな……ん? 何だあのフルーツポンチ、器まで果物で出来てんのか?」
「ふおおっ、そっちのブルーベリータルト、見たことないくらいぎっちりブルーベリーが詰まっておる……!!」
「――よし、ヴィヴィ。あっちの端から順に行くぞ!」
風向き良好。面舵、取舵、ヨーソロー!
船長の指揮の下、時に操舵輪の赴くままに。海の愛し子達は甘味の海を駆け抜ける。
がっつりスイーツを味わう合間合間に、フルーツそのものやシャーベットを挟み口の中をリフレッシュ。
これで何時でも新鮮な気持ちで甘味を楽しめるという寸法だ。
「ハッ……、すっげーうまいな、この果物!」
中には名も知らぬ物もあったが、そこは流石サマーフルーツの島が厳選した一品。
濃厚な甘味と、蕩けるような柔らかい食感がやみつきになりそうだ。
手の中のそれをペロリと平らげ、追加で注文した分を土産の一員に加えると、アリエはヴィヴィアンを伴い次の店へとスライドする。
其処で振る舞われていたのは、マスカルポーネクリームたっぷりフルーツサンド。
口当たり良く、程好い酸味と濃厚だが上品な甘さが舌を楽しませる。
「このままでも充分うまいが……」
貪欲な舌は更なる甘味を求めている。
故に。
「ここに、これを、こうだ!」
――蜂蜜である。
このフルーツサンドを一目見た瞬間分かった。絶対合う。小瓶の中の蜂蜜が「合わせろ」と叫んでいる。
惜しみなく蜂蜜を振り掛け齧りついてみれば、先程まで優雅に微笑んでいた貴婦人は、豪快で大胆な海の女へとその姿を変えていた。
美味い。合わないはずがなかった。
「ヴィヴィもいるか?」
「更に追い蜂蜜とは……流石船長、ワルじゃのう最高じゃのう!!!!」
これにはヴィヴィアンのテンションも更にアゲアゲ。これが自由の味か。
「そろそろ次の試合が始まる頃か?」
「そうじゃのう、ぼちぼち行った方が良さそうかのう」
少し名残惜しいが、ここら一帯の甘味は粗方味わい終えた。ちょうど良い頃合であろう。
2人は残りのフルーツサンドを胃袋に放り込むと、スイカ割り大会の応援席へと向かったのであった。
●夏と眼鏡と因縁のスイカ
エクストリームスイカ割り大会・Bブロック。
開始の合図を待っていたシェフィーネス・ダイアクロイト(孤高のアイオライト・f26369)の脳裏に、先日の厭な思い出が蘇る。
浜辺に鎮座した、己の身長の2倍以上もある超巨大なスイカ。
ただのスイカ割りではつまらないだろう、と周囲にごろごろ転がされた数多の砲弾。
目隠しがあったとは言え、妙な力が働いたとしか思えないレベルで軌道が逸れ、砲弾へと吸い込まれていった己の攻撃達。
挙句の果てに「お揃い」等と――
(ああ、やはり汚点だ、あれは)
スタート位置に並んだ他の参加者へと、シェフィーネスの意識が向けられる。
視線の先には、少し離れた場所に並ぶ既知の顔。
アトラム・ヴァントルス(贖罪の咎人・f26377)とエスターテ・アレグレット(巻き込まれる男・f26406)――あの時、スイカ割りに参加していたメンバーの一部。
(大会に参加した所で私に利は皆無だが)
彼奴らの中の忌まわしい記憶を払拭出来るなら。
シェフィーネスは配布された棒を放り捨て、慣れた獲物へと手を伸ばす。
「……勝つのは私だ」
そう、例えどんな手を使ってでも。
「――見知った獲物もいるようですね」
アトラム達もまた、シェフィーネスの姿に気付いていた。
眼鏡越しに向けられた射抜くような視線。眉間に深く刻まれた皺。
考えなくても分かる。めちゃめちゃ殺る気満々なのが見て取れる。
「あれは根に持っていますね」
ついでに、どうも此方を舐めて頂いている様である。
どうします、とアトラムは隣でゆるく伸びをしているエスターテへと問う。
「僕は大して強くないけど」
強くはないし、正直ほどほどにやる気しか無かったが。
「さすがに、アトラムくんと組んでの2対1なら勝てる気がする」
エスターテは、返答と共に手で弄んでいた棒をぱしりと握り直す。
うん、結構良い棒だ。存外手に馴染む。
「では、お言葉に甘えて……行きましょうか」
「そうすね。……あー、みんなスイカ割るの好きなんですねぇ」
浜辺に競技開始の号令が響く。
さぁて、その勝負、受けて立とうじゃないか。
「ぅおあッッ!!!!」
「……うわ、」
開幕早々、エスターテの目の前で他参加者が突如地面に開いた穴へと豪快に吸い込まれていく。
「えー……スイカの近くって罠仕掛けられてんのか」
やだなあ、なんてぼやきつつ、なんとなく穴の内部へと目を遣ってみる。
深い。子供の悪戯レベルでは確実にない。
脱出を難しくするためだろう、どうやら意地悪くもすり鉢状の構造となっているらしい。制作者の本気と拘りが窺える。
「このレベルの罠が其処此処にあるすると、些か厄介ですね……」
「んー……なら、僕があえて罠発動させるから、その隙にアトラムくんに割ってもらうってのはどうっすか」
「エスタが良いのなら、それで」
「んじゃ、よろしく頼むっすよ」
すり合わせが終わると同時に、2人は手近なスイカへと駆け出した。
方針が決まったなら、後は実行に移すのみ。
括り縄をバックステップで躱し、ドロップネットは切り裂いて。
虎挟みを冷やかしつつ、落とし穴を飛び越え次の地点へと渡る。
全てを最小限の動きで避けながら、エスターテは足先の感覚と直感を頼りに仕掛けられていた罠を発動させていく。
その後に残ったスイカは、アトラムがひとつひとつ堅実に処理して回る。隙のないコンビネーションである。
『うーん、見事なコンビプレイ! 惚れ惚れしていまいますね!』
『着実にスコアを稼いでいますね。相方の勝利は自分の勝利というわけですか……良い、実に良い』
瞬く間に場を支配していく2人の姿に、会場中が釘付けになっていく。
一方。
(本物は……あれか、)
他の参加者たちが四苦八苦しながらダミーや罠と戦う中、シェフィーネスの眼鏡――メガリスは次々とダミーのスイカを看破していく。
見分けさえ付いてしまえば、後は簡単。
両手に構えた拳銃を器用にスピンさせ、その重さを確かめる。
装填されているのは銃弾に似せたBB弾。一般人も多い中、さすがに実弾は使わない。
シェフィーネスは目星を付けた複数のスイカへと銃弾の嵐を放つ。
「――Loose lips sink ships.」
零された言葉。直後、銃弾が命中したスイカ達の中心部に生まれる棘。
棘は果肉を、果皮を突き破り、花開くようにスイカを割りながら外界に向けて急激に成長していく。
太陽の下、白い浜辺に鮮やかな赤色が咲き乱れる。
『おーっとぉ、あれは銃かーッ!? 禁じ手に出る選手が今年も出たぞぉーッ!』
『いやぁ、盛り上がってきましたねぇ。勝利に貪欲なその姿勢、まさにエクストリームスイカ割りですね』
『棒ではないためエクストリームポイントは下がりますが、スタイリッシュポイントは加算されます!』
『後は、賽の女神が微笑むかどうかですね』
シェフィーネスの魅せたスタイリッシュアクションに、大いに沸き上がる会場。
激闘は更に加速していく。
(さて、)
一気に大量のスイカを仕留めたシェフィーネスの視線が、順調にスコアを重ねていく2人へと向けられる。
ルール上妨害は認められている。だってエクストリームスイカ割りだから。
ならば、狙うは弱そうな下っ端だ。
もし庇い立てするならそれも良し。どちらにせよ、1人減ることに変わりはない。
「エスタ!」
躊躇なく引かれたトリガー。足止めの制圧射撃。
その行動に逸早く気付いたアトラムの声に、反射的にエスターテは身を反らす。
肩をBB弾の群れが掠めていく。あと少し遅ければ直撃していた。
「うわ、シェフィくん今、僕のことねらった?」
殺る気満々なのは開始前から知っていたが、直で来たか。
「……そっちがそのつもりなら、少しは本気だしますか」
面倒くさいが、舐められているのも癪だ。
取り出したサプリメントを手早く口内へと放り込む。
最適な状態に調律されていく身体。体内の隅々まで廻るそれ。
地を蹴る。1歩ごとに加速する。
妨害されるよりも、罠が発動するよりも早く、速く、捷く、疾く。
「――遊んであげるっすよ」
戯れるように、撫でるように、目にも留まらぬ速さで繰り出される棒。
エスターテの通った道を示すかの如く、一瞬の間を置いて面白いほど軽快に割れていくスイカ達。
だが、シェフィーネスの照準は焦ることなく冷静にエスターテを追い続ける。
そもそもの話、エスターテが居ようが居まいが、彼の行く手にはまだ割られていないスイカがあるのだ。
それを割るついでに、ちょっと顔見知りの下っ端も巻き込まれるだけのこと。奴の運が無いだけだ。ほら、何の問題もない――
「団の者に手を出すのはやめてもらえませんかね、ハニー?」
耳震わす声。次いで、己へと急速に近付いてくる空気を切り裂く鈍い音。
逆光の中、飛んできたのは丸々とした質量のある塊――がっつり重いダミースイカ。
「ッ、ヴァントルスか!」
シェフィーネスは咄嗟に後方へ跳び退き、飛来物から逃れる。
直前まで居た場所へと着弾したダミースイカにより、砂煙が巻き起こる。
「2対1だからと迷ってましたが……エスタ自身を狙うのならば遠慮は要りませんね」
投擲者――アトラムは足元に転がっていたダミースイカを再度掴み上げると、眼前の獲物へ静かにそう告げた。
此処からは己が障害の処理係だ。
アトラムは時に砂煙のカーテンでシェフィーネスの視界を塞ぎながら、エスターテを守るように立ち回る。
躱しきれぬ弾は、手袋に包まれた左手で叩き落して防ぐ。下はメガリスで出来た義手だ。ダメージはほぼ無い。
『これはッ、これは何という苛烈な弾幕合戦だーッ!! 果たして勝利はどちらの手に渡るのかーッ!!』
「アトラムもエスタもがんばえー!! 陰険眼鏡なんぞに負けるでないぞー!!」
実況の間隙を縫って応援席から飛んできた聞き慣れた明るい声援に、エスターテとアトラムの口元に思わず笑みが浮かぶ。
「負けませんよ」
シェフィーネスがBB弾を装填する合間。
僅かに生まれた隙を突き、アトラムは三度ダミースイカをシェフィーネスへと投げ込んだ。
●勝負終わって
数多の観客達を熱狂の渦に巻き込んだ激闘の後。次ブロックまでのインターバル。
戦いを終えたエスターテとアトラムは、合流したアリエ達と共に、参加賞の受け取り口近くに作られた飲食スペースを訪れていた。
簡易テーブルの上に広げられたのは、今しがた戦場でしこたま割ってきたばかりの数玉分のスイカ。
「やっぱり参加賞もスイカなんっすね」
それにしても大量だ。何人前だ。この面子なら余裕で食えるだろうけど。
事実、アリエとヴィヴィアンは観戦前に大量の甘味を食べたことを感じさせない軽やかさでスイカに舌鼓を打っている。
「さすが名産! ホントうまいな、このスイカ!」
「塩もレモンもよく合うのう! いくらでもいけるのじゃ……!」
「だからと言って、余り食べ過ぎないように。……既に何か食べてきてますよね?」
もりもりスイカを皮だけにしていく2人に、アトラムがぴしゃりと釘を刺す。船医には何でもお見通しであった。
その光景を眺めながら、エスターテもまたスイカを口に運ぶ。
味覚の無い己には、皆のように甘味や酸味を感じることは出来ないけれど。
でも、まぁ。
(アリエくんたちが美味しそうに食べてるから、良しとするか)
これはこれで、悪くない。
和気藹々と騒ぐ4人から、少し離れたテーブル。
敢えて其処に位置取ったシェフィーネスは、ゆったりとフルーツパンケーキを味わっていた。
メインとして参加賞のスイカを盛りに盛った豪華な仕様のそれは、生地にもスイカジャムが混ぜ込んであるスイカ尽くしの一品。
もっちりふんわり、そしてどこか懐かしい味のそれが、炎天下の中で戦い抜いた身体に沁みる。
ふと、ちらりと視線をアリエ達の方へと向ける。
――先程、テーブル上を埋め尽くさんばかりに並べられていたはずスイカが、もう半分以下に減っている。
(……あの2人の胃袋は異次元なのか)
半ば呆れた顔でスイカを齧りながら、シェフィーネスはBブロックの集計結果が出るのを待つのだった。
---
◆Result◆
*ダイス目=割った個数*
1st/エスターテ・アレグレット:47
2nd/シェフィーネス・ダイアクロイト:31
3rd/アトラム・ヴァントルス:25
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ダンド・スフィダンテ
【1F】
鳴り響くスタートの合図!走り出す!
と、同時に何故かある落とし穴!!展開が速い!!!
ぶぇっ!!!
まって躊躇なく踏んでったね!?!
うっわ速っ!
もーー、よいしょっと おっ、ミューズもスイカ割っ…どうして等分で割れてるの!?食べやすいね!!?
あ、スイカ残ってる。わーい俺様も割、れない!かっった!?へ?ダミー?うぐぐ……
(その後も罠に引っ掛かったり妨害には容易く当たったりと散々なので、開き直ってフルーツ食べる事にしました!わーいみんながんばれー!)
このフルーツ美味しいな!いくつか買って帰るか!(むぐむぐ、ハッピー!)
喉乾いて戻ってくるだろうし、二人の分も用意しておくか!(惨状未だ気付かぬいっぬ)
ジェイクス・ライアー
【1F】
(ぐるぐる)何が悲しくてスイカ割りだ。優雅にバカンスを楽しみたかった(そこまで酔わない強いぞ三半規管)
スタート直後にトラップとは容赦のないことだ
(生憎のビーチサンダル。いつものように空を走ることも出来ない。仕方ないのでダンドを犠牲に回避!)
襲いくるトラップもスマートに避け、着実にスコアを重ねつつ目立たぬよう鋼糸を張り、周囲を足を引っ掛け転がし何食わぬ顔
さて、その間にスコア稼ぎでも…
…(めっちゃ糸切られる気配)
(ぶちっ)
ァアあン!??多々羅ぁアアア!!!!口に果物詰め込んで夏のお得ギフトにされてぇようだなぁあ!!あ"!!?(愛用武器こわされて怒り沸騰棒ぶんぶん!!グッバイスイカ割り!!)
多々羅・赤銅
【1F】
剣豪、筆を選ばず?いや刀かそりゃ(ぱしんっ)こんないい棒待たされたら、もう何でも斬っちゃるぞ♡
今スッフィー即落ちてなかった?器用??
トラップを掻い潜りハイスコア出して行こうぜ剣刃一閃!柔も硬いもみんな等しく8等分よ!
ずえしゃぁ(一斉転倒)
んえ〜〜邪魔(ぶつんぶつん斬り斬り斬り)
ごめーん私のダチがムキになってるっぽいわはは(絡まった人を助ける)は、(危機の予感)あっほら見て(指さしつつ)クッソムキになってる(立ち上がる)私に!!!!(逃走!!!!!!)
いいじゃん別に糸くらい換え無えのーー!?!?えー!?私が夏のスイーツ果実!?どこをとってもジューシィー!?やーん褒めるじゃーーーん!!!!
●真夏の紳士淑女withイッヌ
休憩を挟み、トラップの再建や増設、整備を終えて。いよいよエクストリームスイカ割り大会もCブロックへと差し掛かる。
「剣豪、筆を選ばず? ……いや、刀かそりゃ」
準備完了のアナウンスを聞いた参加者達が、良い位置を求めて我先にとスタート位置に並ぶ中。
多々羅・赤銅(ヒヒイロカネ・f01007)もまた、配布された棒をぱしん、ぱしんと弄びながら示された位置に立つ。
軽く振ってみれば、空気が裂ける小気味良い音が鳴る。うんうん、良い良い。
「こんないい棒待たされたら、もう何でも斬っちゃるぞ♡」
棒マイスターでも居るのだろうか、やたら己の手に馴染む。これならスイカ斬りも余裕余裕。
「……何が悲しくてスイカ割りだ。優雅にバカンスを楽しみたかった」
その横で開始を待つのはジェイクス・ライアー(驟雨・f00584)。
ぶつぶつと不平を述べながらも、スタートの合図が鳴り響くと同時にちゃんとルールに則ってぐるぐるバットに勤しみ始める。偉い。
「ミューズもジェイクス殿もやる気満々だな! 俺様も負けてられないな」
ダンド・スフィダンテ(挑む七面鳥・f14230)も気合いを入れてぐるぐると回る。
素質でもあるのか、案外早い。その姿はまさに巨大ドリル。
ささっと規定数回り終えると、ダンドは2人よりも先にスタートラインを越えて駆け出した。
白い砂浜、其処此処に飛び散っている赤い果汁。うーん、爽やか一番乗り。
そんな戦場の景色を楽しんでいられたのは僅か数歩分。
ラインから数mも離れないうちに、ダンドは速攻で落とし穴の中へと消えた。
「展開が速い!!!!」
『いきなり来ました! ライン越えたら2秒でトラップ【ドアtoドア】だーーーーッ!!!!』
『エクストリームトラップ職人・ベン爺さんの孫娘、島期待のホープであるハンナの十八番ですね。いやぁ、それにしても良い落ちっぷりだ』
『お手本のような気持ちの良い落ち方でしたね! 最早芸術と言っても過言では無いでしょう!』
ダンドを皮切りに、次々と期待のホープ・ハンナの必殺トラップの餌食になっていく他参加者達。
もうスタートライン周辺はボッコボコである。
「スタート直後にトラップとは、容赦のないことだ」
「ぶぇっ!!!!」
落とし穴から這い出そうとしたダンドの頭が、再び地に沈む。
ジェイクスである。
ぐるぐるバットの後にも関わらず、その足取りには少しのブレもない。
さすが紳士、立ち振舞が優雅。紳士たる者、三半規管も強くなければならぬのだ。
「まって躊躇なく踏んでったね!!?? ――うっわ速っ!」
瞬く間に遠くなるジェイクスの背中。
今日はビーチサンダルだからね、足場必須だったからね。しょうがないね。
「今スッフィー即落ちてなかった? 器用??」
落とし穴を掻い潜りながら、赤銅もダンドを越えていく。
向かう先は、穴と穴の間に取り残された小さな空間。辿り着ければ高スコア確実のスイカ密集地帯。
「ハイスコア出して行こうぜ! 柔も硬いもみんな等しく8等分よ!」
言うが早いか、良棒一閃。
直後、赤銅の宣言通りぱかぱか均等に切断されていくスイカ達。
斬り口も実に美しい。絶対に後で食べやすい。
「もーー、よいしょっと……おっ、ミューズもスイカ割っ……、……どうして等分で割れてるの!? 食べやすいね!!?」
漸く穴から脱したダンドも目を見張る鮮やかさ。
返答代わりに笑顔ひとつ残して、赤銅鬼は次のスイカの元へと駆けていく。
それを見送り、ダンドは軽く砂を払いながら棒を握り直す。
「あ、スイカ残ってる」
ふと向けた視線の先。見落とされたか、ひっそりと転がっていたのは中々に立派なスイカ。
「わーい、俺様も割――れないッッッッ!!」
わくわく気分で棒を振り下ろしたダンドに非情な現実が襲い掛かる。残り物に福など無かった。
「かっっっっっっった!!??」
力isパワーを跳ね返す硬さ。思い切り行ってしまったのもあって、めっちゃ手が痺れる。
そういえばルール説明の時にダミーが混じってるとか言ってたような。
「うぐぐ……」
これにはダンドもしょんぼりイッヌ顔。
だが、競技はまだ始まったばかりである。
出遅れた分を取り戻そうと、ダンドは2人の後を追うのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ダンドを犠牲にトップへと躍り出たジェイクスは、着実にスコアを重ねていく。
参加者を振るい落すように手加減ゼロで襲い来るトラップ群をスマートに避けつつ、周囲へと目立たぬように愛用の鋼糸を張り巡らせる。
絶妙な高さに仕掛けられた鋼糸の存在に気づける者は殆ど居ない。あっという間にごろごろ転がされていく他参加者達。
『来た来た来た来たー! 発動済のトラップ地帯に出現した新たな罠! 参加者同士の蹴落とし合いの始まりだーーー!』
『誰かが足元に何か仕掛けたようですね。この状況では非常に効果的と言えるでしょう』
一斉転倒した面子の中には、勿論赤銅とダンドの姿もあった。良い具合に掛かったようだ。
「さて、」
後は未発動の罠にだけ集中すれば良い。これでスコアが稼ぎやすくなった。
ジェイクスは何食わぬ顔で、まだ割られていないスイカの元へと移動しようと踵を返した――の、だが。
「んえ~~~~、邪魔~~~~」
「……、」
思わず脱力するような、聞き覚えのある女の声。次いで、ぶつんぶつん鋼糸が斬られていく気配。
考えるまでもない。赤銅である。
鋼糸が変に絡まり身動きの取れない人々を助け起こして回りながら、赤銅は豪快に笑う。
「ごめーん! 私のダチがムキになってるっぽい! わはは――――は、」
「――ァアあン!?? 多々羅ぁアアア!!!!」
「あっほら見てクッソムキになってる!! 私に!!!!」
びしびし感じる殺気。轟く怒号。あ、これ逃げた方が良いやつだ。
赤銅は素早く立ち上がると、紳士の顔をブチ捨ててキレ散らかすジェイクスからの逃走を全力で試みる。
やっべぇな紳士めっちゃ速い。ビーサンに砂浜なのに速い。本気の紳士めっちゃ速い。都市伝説になれる。
愛用の武器を壊され、怒り大沸騰のジェイクスの脳内には最早スイカ割りのスの字も残っていない。
対スイカウェポンは対赤銅ぶっ叩き棒と化した。
「いいじゃん別に糸くらい換え無えのーー!?!?」
「口に果物詰め込んで夏のお得ギフトにされてぇようだなぁあ!!」
「えー!? 私が夏のスイーツ果実!? どこをとってもジューシィー!? やーん褒めるじゃーーーん!!!!」
「あ"!!?」
ついに詰め切られた距離。発生する激しい打ち合い。一歩も引かぬ両者。
あまりの激しさに、良い感じの棒がみしみし音を立てている。元々スイカ用だからね。
『すごい! もの凄い戦いだ! 熱い! これは熱いぞ!』
『まさか、エクストリームスイカ割りの場でこのような凄まじい戦いが見られるとは。どちらが勝つんでしょうね、これ』
グッバイスイカ割り、ハロー脳天割り。
俺達の夏はこれからだ。
その頃。ダンドは開き直ってスタート位置に戻り、のんびりスイカをもしゃもしゃしていた。
おいしい。スイカおいしい。甘くて爽やか。
「兄ちゃん、棄権かい? まぁ、初っ端から良い引っ掛かりっぷりだったもんなー」
どこか哀愁漂うダンドを慰めるように、近くの観客席に居た気の良い地元のおっちゃんが笑う。
「これでも食って元気出せよ、俺のカミさんが外の出店で売ってるヤツなんだけど」
あたたかい言葉と共に差し出されたのは、瑞々しく光るカットフルーツの盛り合わせ。
「え、貰ってしまって良いのか?」
「良いよ良いよ、俺からの参加賞だよ」
「なんだかすまないな……、……このフルーツ美味しいな!」
蕩けるマンゴー、濃厚なピーチ。果汁溢れるパイナップル。こちらのライチも実に美味。
スイカとはまた違う爽やかさが堪らない。
「そうだろ! なんたってウチのフルーツは島一番だからな!」
「おいおい、そいつは聞き捨てならねぇな! 島一番はウチだって!」
「待て待て待て待て、そう簡単にナンバーワンの座を渡してたまるかよ。兄ちゃん、オラのとこのも食ってくれ!」
ダンドの反応に気を良くしたか、島民達は我も我もと様々なサマーフルーツを空になった器に積んでいく。
「こっちも美味いなぁ……いくつか買って帰るか!」
ついでに、喉乾いて戻ってくるだろうし、二人の分も用意しておこう。
島民達から感じる情熱とフルーツの美味しさでハッピーな気分のダンドが、背後に広がる惨状に気付いたのは、それから10分程してからだったという。
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◆Result◆
*ダイス目=割った個数*
1st/ジェイクス・ライアー:65
2nd/多々羅・赤銅:44
3rd/ダンド・スフィダンテ:02
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(※途中での誤送信申し訳ありません、失礼致しました※)
笹鳴・硝子
【エクストリームスイカ割り大会】
「人は何故西瓜を割るのか――浜辺(そこ)に西瓜があるからです」
働かざる者、食うべからず
ってのもありますし、なにより楽しそうなので参加しましょうね!
皆で!(UDC、戦霊込み)
万が一頭数が増えるのを咎められたらユーベルコード【梟師】で精霊【磐具公】を降ろします。これで頭数は1です。1+1=2ですが、1×1=1ですからね、セーフセーフ
ぐるぐるーって回ったら世界が斜めに見えるくらいに目を回します
これは…初めてお酒の飲んだ二十歳の誕生日と同じ足取り…
でも大丈夫、【磐具公】は霊なので目を回したりしないんですよ
ダミー?トラップ?
大丈夫【磐具公】は以下略
(アドリブOKです)
●笹鳴ファミリー西瓜の乱
エクストリームスイカ割り大会も、ついに最終Dブロックを迎えた。
己の出番を終えた人々も応援席に加わり、祭りは最後の賑わいを見せている。
「人は何故西瓜を割るのか――浜辺(そこ)に西瓜があるからです」
整備し直され、新たに並べられた数多のスイカを見つめながら、笹鳴・硝子(帰り花・f01239)は静かにそう呟いた。
晴天の海辺、良い感じの棒、そして大きく立派なまんまるスイカ。
それらが揃っているならば、ついスイカ割りをしたくなる。それが人間、それが真理だ。
ならば、それに逆らう必要が何処にあろう。
「働かざる者、食うべからずってのもありますし、なにより楽しそうなので参加しましょうね! 皆で!」
『はーい!』
元気に答えたのは、傍らの『弟』――UDC『晶』。その隣には、物々しく頷く戦霊・磐具公。
太陽の下、揃いの手作りゼッケンを付けてスタートラインに仲良く並んだ艶やかな黒い花と、影の獣の仔と、古代蝦夷の戦士の姿に、会場がざわつく。
「いやいやいやいや、駄目ですよ! 皆さん出るなら、別々に選手登録してください!」
その光景にすっ飛んでくる大会スタッフ。
曰く、ルール上連携プレーは可能なのだが、得点は個人加算のため、チームとしての出場は出来ないとかなんとか。
「……ルールなら仕方ないですね。――来たれ磐具公、」
渋々、硝子は自身に磐具公を降ろす。若干残念そうな顔で硝子の一部となっていく磐具公。
これで頭数は1なのでセーフのはずだ。
『おねえちゃんがんばれー!!』
応援席へと移動した晶からのエールを受けながら、硝子は改めて開始位置に着く。
この背にあるのは3人分の想い。
あと参加賞も3人分くれるらしい。言ってみるもんだ。
ならば後は勝利を手にするのみ。
『さぁ、最終決戦のはじまりだーーー!! 最後までレッツ・エクストリィィィィム!!!!』
響く合図。時は来た。
硝子とその身に宿した磐具公は、他参加者と共に全力でぐるぐるバットを始めるのであった。
開始から数秒後。
硝子は完全に酔っていた。
なんだか世界が斜めに見える。三半規管よ、あなたはそんなに弱かったのか。
「これは……初めてお酒を飲んだ二十歳の誕生日と同じ……」
硝子の脳裏に懐かしい思い出が蘇る。
あの時も確かこんな感じだった。目に映る世界はその姿を変え、足元はおぼつかず、意識も身体もふわふわと浮いているような、そんな感覚。
「……でも、大丈夫」
今の硝子は1人ではない。磐具公が一緒なのだ。
古代蝦夷にスイカ割りがあったかはともかく、磐具公は霊なので目を回したりはしないのだ。
磐具公は文字通り硝子の手足となって、硝子をスイカの元へと導き始める。
『はっ、速い!! 千鳥足なのに速い!! まるで何者かが取り憑いているかのような動き!! 彼女は一体何者なんだーー!!??』
『というか、実際に取り憑いてましたね、さっき』
硝子の身を借りた磐具公は、蝦夷の戦士パワーでトラップもダミースイカも、ついでに本物のスイカもばさばさ斬り捨てていく。蝦夷の戦士はすごいのだ。
ちなみに、スイカを燃やすのは御法度な為、今回炎は封印している。蝦夷の戦士は出来る戦士なのだ。
『おねえちゃんかっこいいー!! その調子ー!!』
最後のスイカがぱかんと割れる。
地獄のぐるぐるバットから怒涛の追い上げを見せた硝子は、見事Dブロックの覇者となったのだった。
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◆Result◆
*ダイス目=割った個数*
笹鳴・硝子:50
大成功
🔵🔵🔵