商港旅街、イサナノオオゼ~夏、海家開きの陣~
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諫魚の島、イサナノオオゼ。
互いの力を誇示し合い、海を吠えさせ山を荒ませていた山の獣神と海の竜神の諍い、というよりも天災レベルの喧嘩を止めたイサナの伝承が残る島。
だが、なんだかんだと、その後も小競り合いのようなものは続き、イサナによって『ある提案』が為される事となった。
さて、季は夏。
カッ、と照りつける日差しが、黄金とダイヤを砕いてばら撒いたような砂浜を輝かせる季節。まだ、空が白み始めた早朝のイサナノオオゼの浜は、しかし、活気に満ちていた。
開かれた海。広い海水浴場にあって当然の、しかし、よく考えれば「お? なんか変じゃね?」と首をひねるような光景が広がっている。
海の家がある。
海の家がある。
立ち並ぶは、小ぶりな海の家、海の家、海の家、海の家……。
簡素な一階建ての造り、内装は全て同じ。
畳座敷と椅子座席、合わせて二十人程度が収納可能な小店舗が列を成している。
大波が来れば一斉に押し流されてしまいそうな力無いように見える海の家は、釘の類は無く、柱同士を柔らかな材質の僅かに澄んだ白い木の紐のようなもので固定しているだけ。
だが、その屋根の下で支度をする住民たち等は、崩れる事などないと知っているように支度を始めていた。
その店舗達の前には、幟が立っている。普通『氷』とか『海の家』とか、後はメニューだったりが描かれているだろうそれに文字は無く。
緑地に白の正方形模様、もしくは青地に白の菱形模様が一列に染められているだけ。
互い違いの色で隣り合った店主は、店先に炭焼きの網を設置しながらに好戦的な笑みを浮かべ合って、拳を突き出し合う。
同じ色の店では互いの売出し方を協議し、平和な海辺にバチバチと火花が散っていた。
『山の獣神と海の竜神、代理戦争をすることにしよう』
イサナによって為された提案とは、つまり、――『海の家勝負』であった。
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「というわけで、外部からも参加してもいいらしいよ」
興味があれば行ってみてもいいんじゃないかな。とルーダスは言う。
要するに数日をかけて行われる祭りで、商い勝負は、最終日にどちらの組の勝ちかが決まる。
勝敗の決め方は、投票制だ。店の投票箱に白木に似た素材の札を投入してその数を競う単純な勝負。
札は一人につき五枚配られ、配布場所で互いを『結ばれる』ため、不正に札をもらおうとしても、投票した札は手元に戻ってくるとの事だ。
ともかく、趣向を凝らした独創的な海の家、客を呼べる海の家であれば文句なしに歓迎されるだろう。
もし出店するならば、緑旗『山の獣神陣営』、青旗『海の竜神陣営』どちらについても良いが、どちらかにつく必要があります。
当然、客として海水浴場や海の家巡りを楽しむのもいいだろう。
「なんにせよ、熱中症対策は万全に」
ルーダスはそう言って、鼻を鳴らしてこう締めくくる。
「愉しんでくるといい」
オーガ
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同シーン登場希望の際は、プレイング頭にグループ名(例:【イサナ】)を記載願います。
Aと一緒に海の家を切り盛りするB、Aの店に冷やかしに行くB、等も同グループとして扱います。
変な海の家をやって人を呼ぶのも、めちゃくちゃおいしいご飯を出すのも、ゆったりと普通に焼きそばとかを焼いたりしながら閑古鳥を鳴かせるのも、お好きに。
飲酒の描写などは、MSの勝手な裁量で判断します。
書けそうなプレイングを好きに適当に書きます。
よろしくお願いします。
第1章 日常
『猟兵達の夏休み』
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POW : 海で思いっきり遊ぶ
SPD : 釣りや素潜りを楽しむ
WIZ : 砂浜でセンスを発揮する
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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陽射しが降り注ぐ海岸に人が集まる。
島民も、海賊も、行商も。皆水着で命の取り合いもなにも忘れて、心の洗濯を行っている。
そして、猟兵と呼ばれる、この世界の新入り達もまた例外ではなく。
忙しい夏の休暇が始まりを告げていた。
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『商港旅街、イサナノオオゼ』にて登場した島を舞台としています。
一章のみのシナリオです。
戦闘シナリオではないので経験値は少なめになっています。
同系統のシナリオを八月にも一本お出しする予定です。(祭りの第二部、後半戦という形になるかと、未定ではありますが)
書き始めは、20日頃なのでそれくらいまでに送っていただけるとありがたいです。
よろしくお願いいたします。
※追記
執筆開始の日付ですが、勝手ながら『7月27日から』に変更させていただきます。
よろしくお願いいたします。
神奈木・璃玖
山の獣神と海の竜神の代理戦争が海の家対決とは、なかなか面白い趣向ですね
この勝負、参加せねば『商人』としての名折れです
是非とも私も海の家を出して、参加いたしましょう!
陣営は『海の竜神陣営』にします
私が参加するには『山の獣神陣営』には絶対に負けませんよ
『海の家』ということはやはり食べ物や飲み物を売るのがベストでしょうね
特に冷たい飲み物やかき氷はこの暑い中でよく売れるでしょう
眷属の狐(「御饌津の使い」)も頑張って働いてくださいね
看板狐としてお客さんたちを【誘惑】して呼び込みを頼みますよ
もふもふで撫で心地抜群な彼らを撫でても構いませんよ
もちろんお代は……わかってますよね?(【取引】)
「はい、ありがとうございます」
零さないよう、お気をつけて。と眼鏡の奥で柔和に笑んで見せるのは、一人の妖狐だった。
肩に緩くウェーブを描いて流れる銀色の髪。一房黄金が混ざるそれを頭の後ろで束ね上げている。シャツを中ほどまで巻き上げて、やや涼やかな恰好ではあるが、それでも、ピシ、と折り目正しく見えるのは、その佇まいから滲み出る雰囲気というものなのだろうか。
彼、神奈木・璃玖(九尾の商人・f27840)は、そうして来店したお客へと声をかけながら、その手を休めることはない。
さて、ならば、その出来上がったかき氷をどう提供するのか。
璃玖が、かき氷を置いた網篭がひょいと持ち上げられて、緩やかに揺れながら低い視点で客席へと進んでいく。
そして、その籠が注文客の机に乗せられる。と同時に。
「キャー! 可愛いーっ!!」
黄色い声が上がった。
自然、そんな声に視線が集まれば、そこには網篭を咥え持った狐が、女性客へとかき氷を提供しているのだ。
艶のいい毛並みに、滑らかにそよぐ太い尾。クウ、と鳴いて首を傾げたのは、ただの狐ではない。
その従業員たちは璃玖の眷属たる御饌津の使いである狐たちだ。
「あ、あの!!」
「はい、なんでしょうか?」
と意を決したように、その女性客は天井に突き刺そうとしたのか、という勢いで片腕を上げていた。突然の行動に、璃玖や狐たちだけでなく、他の客も彼女へと注目する。
学生だろうか、先生に発言の許可を求めるかのような仕草に、璃玖はひとつ笑みを零して頷いて見せると、そこで漸く他の客の眼を集めている事に気付いたようで、少し顔を赤らめる。
「撫でても、いいですか?」
赤面しながらも、しかし、沸いた欲を諦めなかった女性の視線は、璃玖ではなく空の篭を咥えて、小首をかしげる狐の眼に吸い込まれていた。
璃玖は、おかし気に少し肩を揺らしてみせた。
その初々しい姿に好感を覚えないことも無いだろう。そうして、彼は彼女へと笑いかける。
「ええ、勿論構いませんよ」
と頷き、それとと付け加える。
「お代は……分かっていますよね?」
そう言えば、女性はポシェットから慌てて札を取り出して、それを見て、す、と狐が側へと歩を進める。
暑い日の冷たい食べ物。確実に外さないその人気と共に、札が璃玖の店に集まっていく。
商売に長けた彼の手腕で、その代金が高い、などとは思う事もないのだろう。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクトル・サリヴァン
【海の竜神陣営】
うーん平和な争い。
旅人の俺達が手を出すのもアレかもだけど竜神様には助けて貰ったし。
丁度こんな格好でもあるし店を出してみよっか。
凝ったのは難しいのでシンプルに。
出店見た目はシャチっぽく、提供するのは新鮮な海の幸の鉄板焼き、焼きそばと手堅く。
ただし調味料は他世界、UDCアースとかから安価に持ち込んだのを使いつつ、現地の人の口に合わせいい感じに。
元が新鮮ないい素材だしね、前買い物した時に好みの方向性は掴んでる…!
もし前来た時の顔見知り居たらサービスするよー、その代わり口コミお願いしてみたり。
…ナガハマ君、ショウ君にユウキちゃん元気かなーと料理作りながら思ったり。
※アドリブ絡み等お任せ
「うーん、……平和!」
青い旗を立てた店の中で、シャチの獣人はそう零していた。
アロハシャツに、トランクス型の海パン。ちょこんと頭に麦藁帽を被るというより乗せているヴィクトルは、山に続く街並みを見る。
デフォルメした麦わら帽を被ったシャチの正面イラスト。それを描いた看板を店先に設置して、ヒレを付けたり、白と黒の塗装などで簡単ながらに外見をシャチっぽく変えた店の中で、ヴィクトルはジュージューと音を立てる鉄板の前に立って、、やや懐かしさすら覚えていた。
行き摺りで縁のあった島。コンキスタドールの起こした事件があった島ではあるが、この島の住民でそれを知っている、もしくは気付いているのはごくごく少数だろう。
故に、ヴィクトルの姿を見ても感謝を述べる島民はいない。
だが、それこそが、この島に訪れた危険を防いだという証でもあるのだ。
「ん……?」
と、ふと視線を感じ鉄板から目を上げると、そこには、何処かで見たことのある男性が立っていた。
「……誰だっけ?」
浮き輪を抱えた海パン姿の彼も、ヴィクトルに心当たりがあるようで、じいっとヴィクトルと目を合わせ、そして。
ポム、と手槌を打つ。
「ああ! 前土産屋の前で話した兄ちゃん!」
「あー、そっかあの時の」
以前、事件の調査の際、この島に危険な場所は無いかと、尋ねた時の海賊だった。海賊姿と程遠い姿で上手く結びつかなかったらしい。
「海賊なのに、浮き輪?」
「……ガキのだよ」
「ああ」そういえば、結構懐かれていたなあ、と思い出す。前も思ったが、海賊という字面に合わない男だ。
「何かの縁だし、サービスするよ。何人分いる?」
「買う事は決まってんのかよ……、いや、でも美味そうだな……」
と、近づいてきた男が、鼻を鳴らして立ち上る香りに喉を鳴らした。
「美味いよー、喜ばれる事間違いなし」
自信満々にヴィクトルは言う。素材は、当然新鮮な海の幸。既に前回の訪問で味の好みの方向性は掴んでいる。他世界の調味料でそれを再現しつつ、真新しい風味をプラスして調和を持たせて、新鮮味があり、しかし、特別感のある味に仕上がっている。
風味が焦げと混ざり、鼻腔を通って脳を殴りつける。中々逃れられないだろう。
「それじゃ、口コミも宜しく」
「はいはい、分かったよ」
誘惑に負けたのか、幾つかの包みを浮き輪とともに抱えた男は、後ろ手に手を振りながら歩み去っていった。
直後、その背に幾人かの少年の跳び蹴りが放たれた光景を傍観するヴィクトルの横から。
「上手い事買わせんなあ……」
と感心するように、男の背を眺めながら鮫魚人がヴィクトルの前に現れた。少し前から見ていたのだろうか、彼は子供を振り払う男にくつくつと笑っている。
「ナガハマ君、来てたんだ」
「まあな、息抜きは必要だろ」
一時期は猟兵の鉄甲船に同乗していた深海人。もともと一人で旅をしていただけあって、匿っていた少年の家族を助けてからは、一人で行動している事が多いようだ。
「元気してる?」
「おう、どうにかな。まあ、足取りはまだ掴めねえけど」
そういうナガハマに思い出すのは、一度も声を聴かずじまいの少女の姿。
「ユウキちゃんか」
「ああ、まあ死んじゃねえだろ」
メガリスの力は強大だ。捕まったとしてもその適合者は殺されるより、使われる事の方が大半だ。それは少女とて変わらない。
そう言ったナガハマは、暗くなりかけた雰囲気を自分で払拭するように、それで、と数種類の醤や香辛料が焼ける匂いを放つ鉄板を指さす。
「じゃあ、焼きそば一つ。サービスしてくれるんだろ?」
「宣伝、してくれたらね?」
おう、勿論。と返る言葉に、ヴィクトルはイカの胴に野菜やエビを詰め込んだ詰め物料理を焼きそばの上に、乗せていた。
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暑い夏が始まりを告げている。
大成功
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